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勇者「魔王は一体どこにいる?」続編
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1 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/14(月) 22:22:22.39 ID:JwosRg690
勇者「魔王は一体どこにいる?」の続編です
続編なので前作読まないと分からない事が多々あるかと思いますのでご注意ください
ちなみにSS書くのはほぼ初心者なので読みにくいのはご勘弁下さい
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1600089742
2 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:28:12.15 ID:JwosRg690
エルフの繁殖
それは精霊樹への祈りによって行われ
その希少な果実の実より生れ出たエルフは純血種として誕生する
しかし彼らは生殖器を持たない訳ではない
体構造の似た人間との間でその生殖器を用い
まれに亜種を生む事がある
ハーフエルフ
人間とエルフの特徴を持ち合わせた種ではあるが
純血種の下位として扱われ
エルフ界では忌み嫌われる存在となっている
特に人間の特徴を色濃く持った子は
災いを招くという理由で
誕生して直ぐに森を追放され遺棄される運命を持つ
その子は
生まれた時から不幸だった
エルフの特徴をほとんど持っていない奇形種
醜くい小さい
そして人間の中でも勇者の特徴として言い伝えられる青い瞳
その瞳は直ぐに封印され
盲目となったその子は
魔物への捧物として森の外へ遺棄されたのである
3 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:28:44.08 ID:JwosRg690
『トアル町』
妖精(そのまま真っすぐ歩いて…)
妖精(あーーぶつかる!止まって!)ドンッ
ごろつき「おい…気をつけろ!!」
旅人(す、すいません)ガクブル
ごろつき「聞いてんのかゴルァ!」
旅人(あぅ・・あぅ)
妖精(立って歩くのはもう少し練習が必要だね…立てる?)
旅人(大丈夫…もう少し壁寄りを歩いてみる)
ごろつき「ケッどこの言葉をしゃべってやがる!キチガイか?」
妖精(僕達の言葉とは違うんだよ)
旅人(何を言ってるのか分からないや…怒ってるのかな?)
妖精(離れた方が良さそうだね)
ごろつき「ん?盲者か?一人でブツブツ気持ち悪りぃんだよ!」
通行人「どうした!?」
ごろつき「あぁ何でもねぇ、盲目の精神病者だ、体当たりして来やがった」
旅人(何かマズイ雰囲気になってきた…走れるかな?)
ごろつき「謝りもしねぇで良くわかんねぇ事言ってやがる。気持ち悪りぃ」
通行人「目が見えてなさそうだなぁ…君!隠者は道の真ん中を歩くもんじゃない」グイ
ごろつき「そうだ!!隠者らしく隅で物乞いでもやってろ」
妖精(今行けるよ…走って!!)タッタッタ
ごろつき「お、おい!!聞いてんのか」
4 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:29:12.01 ID:JwosRg690
『路地』
妖精(ちょっとここら辺で休もうか?)
旅人(……)
妖精(気にしてるのかい?)
旅人(僕はどういう風に見えているのかな…)
妖精(気にしてるとキリが無いよ?人間の町は人の心も汚れてるから)
旅人(う、うん)
妖精(早く僕を見える人を探さないとね)
旅人(さっきの人達も見えてなかったみたいだね)
妖精(人の多い所に来れば居るかもしれないと思ったんだけど…)
旅人(言葉が通じないと人間の町も不便だなぁ…)
妖精(また今日も野宿になりそうかぁー)
旅人(慣れてるから良いよ)
シュン!ポカッ!
旅人(痛っ)
婆「やい!浮浪者め!こんな所に居られると商売に影響が出るんだよ!!」
女「おばあさんおやめ下さい」グイ
婆「あっちへお行き!!シッシッ」ポイッ ポカ
旅人(…イタタ)
女「何も石を投げなくても…ごめんな…さ??」
女「あなた…目が?見えないのね?瞳が無い…」
妖精(…行こうか)
旅人(人目を避けた方が良さそうだね)
女「え!?何?…どこの言葉?」
婆「ほれ見ぃ異教の言葉に違いない…こんなのが居ると異端審問されかねんぞい」
女「おばあさん…私が何とかしますからお店に戻ってください」
婆「シッシッ」ジロリ
旅人(……)
チャリーン
女「これで許してね…おばあさん行きますよ」
妖精(お!?銀貨!!やったね儲け〜♪)
---人間の世界ってこういう物なのかな?---
5 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:29:38.14 ID:JwosRg690
『屋台』
妖精(もう少し右…そう!それ!後は…アレとコレと)
妖精(銀貨を台の上に置いて待てば良いよ)チャリーン
店主「おぉ?金は持ってるんだな?釣りはこれだけだ」
妖精(右手を差し出して…うん!それで良い)ジャラリ
旅人(こういう時何て言えば良いの?)ヒソ
妖精(あ・り・が・と・う)
旅人「あり、が、と…う」
店主「お、おぅ。まぁ…何ていうか体に気をつけな!!」
旅人「ありが…とう」
店主「用が済んだら行った行った」
妖精(買い物出来たね!!)
旅人(うん…緊張したよ)
妖精(これでしばらくは飢えないで済むね)
旅人(良かった)
タッタッタ
妖精(ん?)
女「あ!居た…探したんだから」グイ
旅人(え?あ…チョット)
女「付いてきてね?あなたをかくまってあげる。こっちよ」
6 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:30:58.49 ID:JwosRg690
『倉庫』
女「入って」ギー ガチャン
妖精(親切な人も居るもんだね。今日はここで夜を過ごせそう)
旅人(大丈夫かなぁ?)
女「どこの言葉を話しているの?あなた目はどうしたの?」
女「…それにしても、その動物の毛皮で作ったフードと羽織…臭うわね」クンクン
女「洗濯してあげるから脱いでもらって良いかしら?」
旅人(何て言ってるの?)
妖精(えーと…)
女「顔を良く見せて…」ファサ
!!!ズザザッ!!!
女「待って!!怯えなくて良いの…ほら…構えないで?…落ち着いて?」
旅人(どうすれば?)
妖精(フードと羽織を脱いでだってさ。洗ってくれるみたい)
旅人(あぁ…そういう事か)
女「暴れないでね?」ファサ
女「え!?あなた…女?こんな姿で…汚れてるけど…でも素は良さそうね」
妖精(人間からみると君は女に見えるみたいだね)
旅人(そう言ってるの?驚いた口調だけど)
妖精(まぁ仕方ないさ。合わせてあげたら?)
女「ちょっと待っててね」ガコン ギー
旅人(…隠し階段か何かかな?)
7 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:31:28.13 ID:JwosRg690
『数分後』
女「お待たせ…こっちに入って?」クイッ クイッ
旅人(何だろう?来いって事かな?)
妖精(そうだよ。行ってみたら?)
旅人(この閉ざされた空間は苦手だよ。歩きにくい。風が読めない)
女「あ…そうか目が見えないのね…手を」グイ
妖精(僕の羽音があれば分かる?)パタパタ
旅人(助かる)
女「あなた…いつも一人でお話してるの?あ…ここ階段。気を付けて」
旅人「ありがと…う」
女「え?話せる?」
旅人「ありがとう…ありがとう」
女「他には?」
旅人「ありがとう」
女「フフッ…それで充分なのかもね」
娘1「あ!!来た来た」
娘2「見せて〜」
娘3「あんたは早く着替えなよ」
娘4「水汲んで来たよ〜」
女「こっちよ」グイ
女「娘1〜!!着替えと水をこっちに持って来て」
娘1「はーい。お姉ぇその子どうしたの?」
女「後で話すから早く持ってきて」
娘2「水持って行くね」
女「お客さん来る前にあなたは早く準備しなさい!!娘1〜!早くー」
8 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:31:59.50 ID:JwosRg690
『小部屋』
女「…じゃぁ私は一旦部屋を出るから今着てる物を全部脱いでこっちの籠に入れておいて」
女「水はこれしかないから大事に使ってね。特に髪の毛の汚れを落としておいて…分かる?」
女「えーと…こう…こうする…」ヌギ ゴシゴシ ジャブジャブ
女「んーー目が見えない子にどうやって教えるかなぁ…」
女「まぁ何とかなるか!!えーと着替えはこっちね?」サワサワ
女「ああぁ時間がない…後でね?」ギー バタン タッタッタ
旅人(なんだか…慌ただしいなぁ)
旅人(この水で洗って着替える…で良いのかな?)
妖精(そうだよ。随分水浴びはしてなかったからね)
旅人(この着替えには替えたくないなぁ)
妖精(面白そうだからあの女に合わせてみようよ)
旅人(だってコレ…触った感じかなり薄手の…旅には向かないというか…)
妖精(あの女の人の物かな)
旅人(んんんー)
妖精(それを着てれば隠者に見えないと思えば易いと思うけどね)
旅人(仕方ないかぁ…)
妖精(似合うと思うよ…エルフ達はみんなそういう格好をしてる)
旅人(僕はエルフでは無いと思うけど)
妖精(何度も言ってるけれど僕には分かるよ…君からエルフの様な匂いがする)
妖精(風や音を感じる感覚は普通の人間には難しい)
妖精(黄泉の狭間を感じる君は間違いなくエルフに関係するよ)
旅人(またその話か…もういいよ着替えるよ)
9 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:32:34.62 ID:JwosRg690
『別の部屋』
女「…そう。あまりに不憫に思って連れてきたら女だったのよ」
娘1「目が見えない…かぁ」
娘2「よく今まで暮らせてこれたね」
娘3「あんまり面倒事は背負わない方が良いんじゃない?」
女「でも放っておけないでしょ?あのまま路地に居たら異教徒とか言われて捕まるのがオチよ」
娘4「番台の婆さんにはどう説明するの?また怒られるよ?」
女「稼ぎが在れば良いのよ」
娘4「そんなに急にお客さんが増えると思えないけどなぁ…最近みんなケチだし」
女「本人に覚悟が必要だけど…私たちの仲間が一人増えると思えば良いのではなくって?」
娘1「あぁーそうかぁ…目が見えないのは良い事とも言えるのかぁ」
娘2「娘1さぁ…その子見て来たんでしょ?やって行けそうなの?ここで」
娘1「超美人…私達の誰よりも」
娘3「ええ!?そんなに?ムキー!!」
娘4「早く見てみたいなー」
女「仕事が終わったらあとで髪を揃えてあげようと思うの…その時に」
娘1「お姉ぇは今日早いの?」
女「いつもの男よ…さっさと終わらせて戻ってくる…あなた達も病気にだけは気を付けて」
娘1「分かってるよ!新規さんは十分確認する」
娘3「お姉ぇは良いなーお金持ち相手で」
女「あなたも良い相手見つけなさい?…そろそろ行くわね」タッタッタ
娘4「あ!!お姉ぇ!!薬忘れてるー」
女「今日はいらないわ!!あなたが使って!!」
10 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:33:26.99 ID:JwosRg690
『小部屋』
旅人(…なんか落ち着かないなぁ)
妖精(ケラケラケラ似合ってるよアハハハハ)
旅人(そういう意味じゃないよ)
妖精(あーごめんごめん。まさかそんなに肌が出てるとは思ってなかったから)
旅人(エルフは肌をあまり出さない事くらい知ってるよ。だからそうじゃなくて…)
妖精(じゃぁ何?)
旅人(ここは地下だから人の気配が少ないのは良いけど)
妖精(けど?)
旅人(風の音も木々の音も感じ難い…無機質な物がどこにあるか分からないんだ)
妖精(僕が飛んでいないと音の反射も感じ無いかい?君が音を出せば良いだろう?)
旅人(だから落ち着かないんだよ)
妖精(虚無に吸い込まれそう?)
旅人(こういう場所は嫌いだよ…野宿の方がずっと落ち着く)
妖精(目が見えても、見たくないものまで目に入るから落ち着かないのは一緒だよ)
旅人(…人間の町に慣れなければいけないのかな)
妖精(魔女を探すなら慣れなきゃいけないね…相手は人間なんだから)
旅人(僕一人で探さなきゃいけない?)
妖精(黄泉の狭間からあまり遠く離れた所に妖精は行けないよ…知ってるでしょ?)
旅人(自信が無いよ…)
妖精(君を導く人が現れればやって行けるさ)
旅人(あ!!あの人が来る)
コンコン ガチャリ
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:33:59.46 ID:JwosRg690
女「あら?また一人でお話?…あなたは不思議な子ね…明かりも付けないで」
女「ん?光る虫?…が居るようね?蛍かな?」
女「明かり付けるわね」シュボ
女「似あってるじゃない…でも髪が伸びっぱなしね」
女「…にしても私が言った事は理解してそうね。言葉は通じる?あなたは誰?どこから来たの?」
旅人「…」
妖精(この人…妖精をすこし見えてるかも)
女「え?何?誰?…あなた?」キョロ
女「気のせいね…今からあなたの髪を揃えてあげる…分かる?こう」チョキチョキ
女「おとなしくしていてね」
女「入っていいわ」
旅人(向こうに居た4人が来る様だ)
妖精(見世物だねぇ…辛抱しときなよ)
娘1「お姉ぇの洋服は少し小さいね」
娘2「うゎぁ本当だ綺麗」
娘3「ムキー!!ムキー!!」
娘4「前髪伸びすぎだね」
女「目が見えてないから気にならないのかもね」
娘4「あ!本当だ…瞳が無い」
女「さぁ切るわよ…おとなしくしててね?」チョキ
旅人(どうしよう…)
妖精(髪の毛くらいどうって事ないよ。やらせておきなよ)
娘1「ねぇこの子何しゃべってるのかな?こんな言葉聞いた事無いよ」
娘2「エルフだったりして?あれ?でも耳が長くないなぁ」
娘3「瞳が無いとなんか気持ち悪いね」フフリ
女「アイレンズの赤いやつが合った筈…探してきて」チョキ
娘4「あれ高いんじゃないの?良いの使って?」
女「良いのよ。どうせみんな使ってないのでしょう?」チョキ
女「ハイ!終わり!アイレンズまだぁ〜?」
娘1「持ってきたよ!」ホイ
女「さぁ仕上げに…これはあなたの瞳の代わり」ペタ
旅人(あ…なんだこれ)
女「心配しないで?すぐ慣れるわ。ちょっと立って見て?」グイ
娘達「わおおぉ」
12 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:34:29.84 ID:JwosRg690
『翌日』
チュンチュン
旅人(あの女の人は協力してくれるかな?)
妖精(僕のことをしっかり見ることが出来れば話は通じるかもね)
旅人(もう少し黄泉の狭間に近づかないと?)
妖精(満月の夜だと確実かな)
旅人(まだ先だね…ずっとここに居る訳にもいかないだろうし)
妖精(他にもう少し探してみようか)
旅人(…そうだね)
トントン ガチャリ
女「おはよう。早起きなのね」
女「少し外を歩いてみる?…でもね?あなたの話す言葉…これは他の人に聞かれてはいけないわ」
旅人(何て言ってるの?)
妖精(外に連れて行ってくれるらしい。でもしゃべらないでって)
旅人(おかしい人と思われる?)
妖精(多分そうだよ)
女「ほら…また独り言…誰かとお話をしてるの?それとも何かの呪文?」
女「お口チャック…私のいう事が聞けて?」チャック
妖精(首を縦に振れば良いよ)
旅人「…」コクリ
女「!?あら…分かるのね?」ニコリ
女「私の手を放さないでね…目が見えないと歩くのに困るでしょう?」グイ
女「こっちよ」トコトコ
娘1「あ!お姉ぇどこ行くの?その子も一緒?大丈夫?」
女「少しお話をしてみようと思うの…孤児院の方までお散歩しながらね」
女「あなたたちは休んでいなさい?」
娘達「はーい」
女「さぁ…こっちよ。この階段を上がって…」
13 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:35:07.38 ID:JwosRg690
『宿屋』
婆「その子はだれだい?見ない顔だねぇ」ジロリ
女「…はい。昨日から仕事を見せてます」
婆「ほぅほぅ新しい子かね?良く見つけて来たねぇ…こんなべっぴんを」
女「はぁ…まだ決まった訳では無いですけれど」
婆「若さだけが売りの俗な商売女…いやだねぇ」
女「……少し出かけてきます」カラン タッタッタ
婆「ちゃんと稼がせるんだよ!!」
『露店のある路地』
女「あなたには見えてないでしょうけど、この路地の奥に孤児院があるのよ」
女「途中で食事をしていきましょう」
武器屋店主「お!?どこ行くんだい?女!!」
女「いつもの孤児院周りよ」
武器屋店主「そうかい。また遊びにいくなー」ノシ
防具屋店主「今日は2人で散歩かい?」
道具屋店主「おぉーまた可愛いねーちゃん連れてるなぁ?新入りかー?」
女「…みんなあなたを見てるわね?」
旅人「…」
パン屋店主「買い出しかね?」
女「パン2つ…それと肉と野菜も付けて。お代はここに」ジャラリ
パン屋店主「まいど!!連れの子は誰だい?」
女「ひ・み・つ。またねー」ノシ
女「行きましょ」トコトコ
女「ここのベンチで食事をしていきましょ?」ハイ モグ
旅人「…」
女「んー何かおかしいなぁ…目が見えていないのならもっとゆっくり歩くと思って居たのに…」
女「段差にも躓かないし…どうして悠々と歩けるのかしら?慣れるとそういう物なの?」
女「あとあなたの周りに小さな光がチラチラしてるのは何?魔法か何か?」
女「本当…不思議な子ねぇ。ほら早く食べて?」グイ
旅人「…」モグ
チュンチュン
女「どうしてかしら?小鳥たちもあなたに興味があるの?」
旅人「…」ポイ ポイ
チュンチュン
14 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:35:43.56 ID:JwosRg690
『孤児院』
ザワザワ ザワザワ
女「えっ!!あれは法王庁の馬車…まさか…」
旅人「???」
女「人が集まってる…あなた!私から離れないでね」グイ タッタッタ
男「!!おぉ…女か!!マズイことになった」
女「子供達は?」
男「全員馬車の中だ」
女「どうして中に入れたの!?あなたは何を…」
男「無理やり入ってきやがった…隠し部屋もバレてたんだ…誰か密告しやがった」
女「もう!!何してたのよ!!どうしよう…」
男「こんな朝っぱらから法王庁が直々に来るとは思ってねぇよ…手が出せねぇ」
女「私が言いに行く!」
男「待て!!やめておけ!!お前もとっ捕まるぞ」グイ
女「このままあの子たちを見捨てるつもり?」
男「俺だって何とかしたい…だが相手が悪い…今は無理だ」
法王の使い「これは神のご意思なのです。あなた達は神に選ばれたのです。大変喜ばしい事なのですよ?」
子供達「え〜ん;;」
法王の使い「神の御許でのお仕えが許されたあなた達は神のご加護が約束されます。祈るのです。さぁ祈るのです」
タッタッタ
女「子供たち!!無事?」
法王の使い「!?」
子供たち「たすけて〜〜」
法王の使い「助けてとは何事ですか!!神の御許へ行くのですよ?」
女「法王の使い様…どうか子供たちがもう少し大きくなるまで待って頂けないでしょうか?」
法王の使い「法王庁の決定は神のご意思。それは絶対。神のご意思に背く事を何と言うか言ってみなさい」
女「…」
法王の使い「あなたぁぁ!!それとあなたもぉぉぉ」
旅人「???」
法王の使い「言えないのですか?」
女「…」
法王の使い「教えてあげましょう!!…それはあなたが罪人であるからに他ならないぃぃ!!」
法王の使い「私に許しを請うのであれば神の名の下慈悲を下しましょう」
法王の使い「本来であれば八つ裂きの刑になるところですが…鞭打ちの刑に致しましょう」
法王の使い「神の御慈悲に感謝するのです。さぁ祈りなさい」
15 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:36:22.61 ID:JwosRg690
ヒソヒソ何が慈悲だよ
ヒソヒソ狂ってやがる
ヒソヒソ誰か何とかしてよ
ヒソヒソ巻き添え食らうぞ
妖精(もう!!黙ってみてられないなぁ…逃げよう)
旅人(良くない事が起きてるのはわかるけど…)クンクン
妖精(説明は後…こっちへ)
旅人(あの女の人はどうする?)
妖精(良いから早く!!)ダダッ
法王の使い「待ちなさ〜い!!あなたぁぁぁ!!聞きましたよ呪いの言葉をぉぉ」
女「あ!!ダメ」
法王の使い「衛兵!!あの女を捕まえなさい!!」
衛兵「ハッ!!」
16 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:36:51.84 ID:JwosRg690
『孤児院の前』
男「だから言わんこっちゃねぇ!!女!!今の内だ!逃げろ!!」
女「あの子…目が見えてないの…すぐに捕まるわ」ダダッ
男「誰なんだ?あの女は?」
女「追う」ダダッ
男「おい!今は逃げる時だろ!!面倒ごとに首突っ込むな!!」
女「ああぁ!!危ない!!」
男「!!?」
衛兵「待てぇー」
ピョン クルクルクル シュタッ
女「ええっ!?…木に…飛び乗った」
男「なんだあの女!!えらく身軽じゃねぇか…」
衛兵「囲め囲めぇ!!」
旅人(1,2,3,4,5,6…)クンクン
衛兵「もう逃げられないぞ」
旅人(この匂い)
妖精(気付いたね?風上からゴブリン)
旅人(多い…これは大きな戦いになる…小鳥たちが言ってた通りだ)
衛兵「邪教徒めぇ!!呪文をやめろぉ!!」
旅人(振り切るならゴブリンの方に向かった方が良さそう)
妖精(距離は読める?)
旅人(もうすぐそこに来てる…戻るよ)タッ シュタッ
衛兵「捕らえろぉ!!」
ピョン クルクルクル シュタッ
男「うぉ!!戻って来た…なんだありゃ四つ足で走ってやがる…ウルフか?」
女「信じられない…あの子」
男「おい待て!!どうする気だ!!?どこに行く?」
女「あわわ…衛兵が来てる」
男「ええぃ!!追うしかねぇな…行くぞ」ダダッ
17 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:37:28.97 ID:JwosRg690
『孤児院』
ゴブリン「グエーグエーギギギ」
衛兵「散開!!散開!!」
法王の使い「ぐぬぬぬ…これは邪教徒の仕業…あの女は何としても捕えなければいけなぁぁい!!」
衛兵「法王の使い様!!ここは私共が引き受けます。馬車にて御退避下さい」
法王の使い「ふむ…わかりました…これも神の御心…あなた達の事は法王様にご報告をしておきます」
法王の使い「これを打破し、何としてもあの女を捕らえるのです」
衛兵「ハッ!!全隊第一戦闘態勢を取れぇぇ!!騎兵を前面に移動!!」
タッタッタ
男「…何か様子がおかしいぞ?」
女「ちょっと…アレ」
男「ゴ、ゴブリン!?おいおぃ…大変な事になってるじゃねぇか…どうなってんだ?」
女「これは…チャンスかもしれないわ」
男「おい!あのウルフみてぇな女は突っ込んで行くぞ?」
女「…あの子がゴブリンを呼んだのかしら?」
男「それしか考えられんが…しかしそんなに早く呼べるものか?」
女「でもこの状況は利用しないと…子供たちを連れ出したいわ」
男「分かった!俺が馬車に入ってる牢のカギを開ける…その間近づく奴を何とかしてくれ」
女「!?あの子…旋回してる?」
男「掻き回してる様だな…ありゃ目が見えてないのはウソだ…いくぞ!!」
18 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:38:03.42 ID:JwosRg690
『馬車』
カチャカチャ カチャカチャ
男「ちょっと待ってろ…今出してやる」
男「他の子供たちはもう一つの馬車の方か?」
男「チッ見当たらねぇな…逃げたか」ガチャン
男「開いた!!出ろ!!」
男「おい!!女!!子供たちを連れてけぇ!!」
女「いけない…衛兵が押されてる…町の方までゴブリンが」
男「子供たち!!泣いてねぇでしっかり歩け!!」
子供たち「え〜ん」
女「こっちよ…早く」
男「宿屋の地下か?」
女「そこにしか行くところが無いわ」
男「よし…俺が先に町まで走る!!戦える奴を集めてくる!!」
女「おねがい…わたし達は迂回して宿屋の地下に行くわ」
男「…にしても法王庁の衛兵は役に立たなさすぎだな」
女「おぼっちゃまばかりよ」
男「じゃ!後は頼む!行ってくる」
女「生きてたら酒場で!」
男「分かってる!じゃぁな」
19 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:38:34.80 ID:JwosRg690
『孤児院』
シュタタッ シュタタッ
旅人(1,2,3,4,5,6…22)
妖精(その服はやっぱり動き難そうだねフフ)
旅人(足回りがキツイ)
妖精(そろそろ逃げようか)
旅人(この数のゴブリンだと町の方まで行きそうだね)
妖精(一旦戻って隠れて様子見る?)
旅人(着替えは返してもらいたいかな)
妖精(夜まで待って取りに行こう)
旅人(この町はもう離れた方がよさそうだね?)
妖精(僕は楽しんでるよ)
旅人(そうかい?)
妖精(後でゆっくり教えてあげるよ。人間たちの話していた事をさ)
旅人(少しだけ分かるようになってきたよ)
妖精(へぇ)
旅人(人間は言葉の中に感情が含まれているんだ…だから何を言ってるのか想像がつく)
安心、不安、感謝、幸福、欲望、恐怖、勇気…
全部言葉の中に隠れているんだ
その日
ゴブリンの襲撃で法王庁の衛兵は壊滅した
町からの守備隊によりゴブリンを撃退したものの
被害は大きく30名程の死者が出た
20 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:39:03.14 ID:JwosRg690
『酒場』
ガヤガヤ痛てぇぇ
ガヤガヤなんで急にゴブリンが
ガヤガヤお前の所は大丈夫だったのか?
ガヤガヤ母ちゃ〜んうぇっうぇっ
ガヤガヤ酒でも飲まねぇとやってらんねぇ
ガヤガヤまた襲ってくるかも知れんなぁ
女「…あの子無事かしら?」
娘「お姉ぇまだ気にしてるの?」
女「不思議な子だったなぁ〜…」
カラン コロン
男「よう!無事だったか」
女「あなたもね!?平気?」
男「ここもすっかり難民キャンプみてぇになったな」
女「あら?怪我してるじゃない」
男「あぁ大したこと無い…それより子供たちは?」
女「下で寝てるわ」
男「例のウルフ女は?」
女「それは私の方が聞きたい」
男「居なくなったか…」
女「どうしたの?気になるの?」
男「いやな…あんな立ち回りをする奴は見たことが無くてな」
女「私も驚いた」
男「四つ足で走る女…これだけでオカシイんだが、あの運動量があり得ない」
女「もののけ…ね…あ!!そうそうあの子は初め動物の毛皮を羽織ってたの」
男「ほぅ」
女「灰色の毛皮だったから…多分ウルフね」
男「…なるほど人の姿をしたウェアウルフって訳か…だとしたらあり得る」
女「目の中に瞳が無いのは何か関係が?」
男「さぁな?目が見えてないようには思えんが?」
女「私もおかしいと思ったのよね…」
男「その毛皮は何処にある?見せろ」
女「下にあるわ…来て!目立たないように裏の倉庫からね」
21 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:39:52.10 ID:JwosRg690
『宿屋の地下』
キャッキャ アハハ
男「…子供たち起きてるじゃねぇか」
女「おかしいわね」
男「こっちか?」
子供1「妖精さん待てぇ〜」
子供2「いじめちゃだめだよぅ」
子供1「もっとお話ししてよぅ」
子供2「え〜どうしてぇ?おねんねしないとダメ〜?」
男「ん?誰と話ししてるんだ?」シー
子供1「明日も来る〜?」
子供2「うん…うん…でもさぁ信じてくれるかなぁ?」
子供1「…分かったぁこうすれば良い〜?」
子供2「動かないよ〜これで良い?」
ガチャリ
男「誰と話しているんだ?」
子供1「来たぁぁ」
子供2「妖精さんが居るの〜ウフフ」
男「妖精?…寝ぼけてんのか?…はやく寝ろ」
女「待って!子供たちの後ろ…あなた帰ってきてたのね」
男「ん?暗くて見えんが…ウルフ女か?」
女「やめて!子供たちを人質にするなんて…」
男「おぃおぃ穏やかに行こうぜ、こっちは丸腰だぜ?」
子供1「妖精さんがね?大人たちとお話がしたいんだって〜」
男「そいつぁ妖精じゃねぇだろ」
子供2「違うの〜ほらここを飛んでる」
男「見えん!」
女「待って…小さな光…もしかしてこれが?」
男「お前も何言ってんだ?妖精だと?」
子供2「ほらぁやっぱり信じないよ?」
22 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:40:25.61 ID:JwosRg690
女「お話続けて?」
子供1「え〜とね?この人は妖精が見える大人の人を探してるんだって」
子供1「言葉が違うから妖精さんからお話ししたいけど」
子供1「見つからなくて困ってるんだってさ〜…これで良い?」
女「あなた達は妖精さんの声が聞こえるの?」
子供2「聞こえるよ〜ウフフ」
女「驚くことばっかりね…」
男「まぁ事情が分からんでも無いが…そのナイフをまず下ろせんか?」
女「そうね…私たちは何もしないからお願い」
子供1「妖精さんがナイフしまってだってさ…え?これは言わなくて良いの?」
旅人「…」スッ
男「ふぅ…穏やかにな?穏やかに…女!!お前も妖精が見えるんだな?」
女「分からない…でも耳を澄ませば少し聞こえる気がするわ」
ヒソヒソ ヒソヒソ
女「え?蝋燭?狭間に近づく?何かしら…蝋燭を灯せば良いのね?」
男「なんだ?蝋燭なら持ってるぞ…」チッチ シュボ
ユラユラ ユラユラ
23 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:40:56.80 ID:JwosRg690
『小部屋』
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----
それから母ウルフが寿命で亡くなる前に言い残した言葉が
「お前は森の秩序を乱してしまうから森を出なさい」と…
言葉が通じないのに一人で森から出るのは危険だから
僕が一緒に居て目の代わりとこうやって通訳をしてるんだ
でも僕は黄泉との狭間から遠く離れる事が出来ない
だから協力してくれる人を探しているって訳さ
女「ちょっと待って?黄泉との狭間というのは?」
妖精「んー人間の言葉でいう「あの世」と「この世」の狭間…かな?本当は少し違うんだけど」
妖精「この世で死んだ後にその魂は狭間を通ってあの世に行くんだよ」
妖精「妖精たちはみんな狭間に住んでいるんだ」
妖精「狭間はこの世界のどこにでもあるけど、遠くなったり近くなったりする」
妖精「例えば昼間より夜の方が近い、新月よりも満月の方が近い…」
女「…この蝋燭の灯も狭間に近づける為?」
妖精「そうだよ」
女「理解できた気がするわ…それで…魔女を探してるって言ったわね?」
妖精「古代の魔法の中に千里眼という魔法があってね…その魔法で目が見える様になるんだ」
女「魔女は…もう居ないかもしれない」
妖精「どうして?」
女「もう何年も前から法王庁からの魔女狩りが続いていて…魔法が使える人はみんな焼かれてしまったわ…」
妖精「困ったなぁ…」
女「…」
24 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:41:31.80 ID:JwosRg690
男「…ん?話は終わったか?」
女「大体事情は把握できたわ」
男「俺にはお前が独り言を話してるようにしか聞こえんが…魔女を探してるんだな?」
女「そう言ってるわ」
男「大分遠くになるが…光の国「シン・リーン」に魔術院があったはずだ…生き残りが居るかもな」
女「遠すぎるわね…」
男「んむ…」
女「案内は無理そうね」
男「でもな?魔物がまた来るかも知れんことを考えると、子供たちをいつまでもここに居させる訳にもイカンとは思う」
女「…そうね」
男「…」
女「そういえば…私たちの自己紹介をしてなかったわ」
女「私は女盗賊、そしてこっちの男が盗賊…あなたの名前は?」
妖精「僕は妖精!!彼に名前は無いよ…必要が無かった」
女盗賊「名前が無いと呼び方に困るわ?」
盗賊「何でも良いだろ…ウルフ女にしとけ」
女盗賊「…どうも話によると女ではないらしいの」
盗賊「なぬ!?…オカマだってぇのか?」
女盗賊「私の勘違いで女装させてしまったみたいフフ」
盗賊「おいおぃ…もっと男らしく行けやぁ!!」ジロジロ
女盗賊「私が悪いのゴメンね?」
盗賊「…わかった…男らしく!!…そうだ!今からお前は剣士だ」
盗賊「剣士と妖精!!それで良いな!?」
---剣士、妖精、盗賊、女盗賊が仲間になった---
25 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:42:42.86 ID:JwosRg690
『翌日』
チュンチュン
盗賊「よう!やけに起きるの早えな…着替え持ってきたからこれに着替えろ」
剣士「…」
盗賊「それからその赤い目ん玉…娼婦が付ける物だ!どうせ見えねぇなら黒く塗ってやるから外せ」
盗賊「オカマみてぇで気持ち悪い」
剣士「…」
盗賊「…」
盗賊「んあぁ!おい!女盗賊!ちぃと面倒見てくれー」
女盗賊「話は通じてると思うわー。妖精さんが通訳してるから反応鈍いだけと思うの〜」
剣士「…」ヌギヌギ
盗賊「…なんかテンポが合わんな」
剣士「…」ゴソゴソ ポイ
盗賊「このウサギみてぇな赤い目ん玉が変わるだけで女くささが無くなる筈だ…」ヌリヌリ
盗賊「…にしても目ん玉が無ぇと気味悪りぃなヌハハ…ほらよ!」ポイ
剣士「…」ゴソゴソ
盗賊「おぅ!ちったぁマシになったな…後は…そうだお前の毛皮…こりゃかなりの上物だぜ?」
剣士「…」ゴソゴソ
盗賊「おぉぉ山賊の様だが随分男らしいじゃねぇか」
女盗賊「その毛皮はね…母ウルフの一部だと言ってたわ」
盗賊「形見か…そりゃ大事にしないとな」
女盗賊「汚れて灰色になってたけど、洗濯したら白くなったわ」
盗賊「母ウルフは大型の白狼だったって訳か…ぬはは…「白狼の剣士」シブいな」
女盗賊「それなら私は「女狐盗賊」?フフ」
盗賊「俺は…なんだ…俺は!!…ん〜思い付かん…まぁ良い」
女盗賊「それで…今日は何か考えがあって?」
盗賊「あぁ…ちぃと考えたんだが…商隊に話を付けてくる」
26 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:43:14.46 ID:JwosRg690
女盗賊「どうするの?」
盗賊「どうせここに長い事居られないなら子供たちをセントラルに連れて行く」
女盗賊「商隊で行くのは目立ちすぎでは無くって?」
盗賊「そうだ…普通に行っても入国で引っかかるのは分かってる」
女盗賊「無理に決まってるじゃない」
盗賊「奴隷商人のフリをするんだ…子供達と娘4人、それからお前も奴隷になってもらう」
女盗賊「え!?」
盗賊「俺が奴隷商人のフリをして全員まとめて入国だ…鍵開けはまかせろ」
女盗賊「剣士はどうするの?」
盗賊「一緒に行くに決まってるだろ…傭兵役だ…俺と一緒に行動する」
女盗賊「…うまく行きそうね?」
盗賊「一つだけお前にやってもらわなければいけない事がある」
女盗賊「何?」
盗賊「お前は役人にコネがあったな?」
女盗賊「えぇ…」
盗賊「奴隷商人のパスを入手してくれ…出来るか?」
女盗賊「…やってみるわ」
盗賊「じゃぁ決まりだな…剣士を連れて行くぜ?…来い!剣士」
27 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:43:42.72 ID:JwosRg690
『街道』
盗賊「俺の後ろから離れるなよ?」スタスタ
剣士「…」スタスタ
盗賊「…よしここなら見晴らしが良い…少し説明してやる」
お前は方角は分かるか?
ここから見えてるんだが、東にあるのが多分お前が来たであろう森だ
その森は南北にずっと続いていて素人が入っても簡単には出て来れねぇ
まぁお前なら知ってるな?
そして今居る場所がトアルという町…商隊の中継点だ
ここから南に3日ほど行くと海に出る
そこにあるのがこの大陸の首都セントラルだ…中立国になっている
貿易の中心地で他のどの国よりもでかい…そして法王庁もセントラルにある
北の方角には砂漠が広がっている…30日ほど行くと火の国シャ・バクダ
その途中にはトアルと同じ様な商隊の中継点がいくつかある
シャ・バクダから気球に乗って森を東へ抜けると光の都シン・リーン
お前が目指すのは恐らくシン・リーンだ…しかし遠すぎる
盗賊「俺たちがお前にどこまで付き合えるか分らんが…今の所シン・リーンに行く予定は無い」
剣士「…」
盗賊「まぁ…しばらくは行動を一緒にした方がよかろう」
盗賊「行くぞ」
盗賊「そうだ…お前に盗賊の極意を教えてやる」
盗賊「フードを深く被れ」ファサ
剣士「…」ファサ
盗賊「そうだ…顔を不用意に見せるな」
盗賊「次に歩き方だ…少し前傾で肩を張れ…これで暴漢には合いにくい」スタスタ
剣士「…」スタスタ
盗賊「その調子だ…もしも暴漢に出くわしても絶対に逃げ腰になるな」
剣士「…」??
盗賊「武器を抜くフリをして相手をビビらせろ…そして相手のスキを探せ」
盗賊「よし!着いたぞ」
盗賊「ここで待ってろ…馬車を調達してくる」
剣士「…」
28 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:44:09.98 ID:JwosRg690
『酒場』
ガヤガヤ ガヤガヤ
女盗賊「娘1!水を汲んで来て」
女盗賊「娘2!包帯がもう無いから代わりの物を作って頂戴」
女盗賊「娘3!消毒用のお酒がもう無いから水を使って!!」
女盗賊「娘4!貼り付いた衣服をはがしてあげて!!」
ガヤガヤ痛てぇぇぇ
ガヤガヤ早くしてくれぇ
盗賊「戻ったぜ…又怪我人が増えてる様だな?何かあったのか?」
女盗賊「近くの村から避難してきてるらしいわ」
盗賊「魔物が来てるのはここだけじゃ無いって事か」
女盗賊「その様ね…手が足りないの!!手伝って!!」
盗賊「お、おぅ…馬車が調達出来た…裏の倉庫に入れてある」
女盗賊「いつ出発?」
盗賊「明後日の朝だ…例のやつは間に合うか?」
女盗賊「今晩会う約束をしたわ…多分大丈夫」
盗賊「落ち着いたら身の回りの整理をしとけ」
女盗賊「フフ私達は何も持ってないわ…大事な物は体だけよ」
盗賊「まぁ俺も何も持ってないんだがなヌハハ」
女盗賊「おしゃべりばかりしてないで手を動かして!」
盗賊「ほいほい…」
女盗賊「こんな時に魔法が使える人が居てくれれば…」
盗賊「ん!?…何か…夢で見た事がある気がするぞ」
女盗賊「あなたが夢の話?フフ合わないわ」
盗賊「回復魔法を連発する奴がな…だが顔も名前も覚えてねぇ」
女盗賊「何言ってるのよ…手を動かして!!」
盗賊「わーってるよ」
29 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:44:44.42 ID:JwosRg690
『小部屋』
剣士(…ひとまず彼達と一緒の方が良いね)
妖精(理解してくれそうで良かったね)
剣士(光の都シン・リーンだっけ?)
妖精(目が見えなくても不自由しないなら無理に行かなくても…)
僕は生まれた時から見えるということがどういう事なのか知らないんだ
母さんがどんな姿をしてたのか
妖精の君がどうなのか、森、人間、僕の手や足だって
触った感触で僕の心の中に描いてる物
本当はどういう物なのか知りたい
綺麗ってどういう事?醜いってどんな風?
色って何?赤い瞳って何?母さんが白狼だった事も何の事か分からない
よく夢を見るんだ
すごく大事な事をしてる夢
その中に出てくる人が誰だったのかも分からない…思い出せない
すごく大事な事を、忘れてはいけない事を思い出せないのは
きっと今の僕が見えるという事がどういう事なのか知らないからだと思う
その形を見て、顔を見てみたら
大事な事を思い出す気がするんだ
わかるかい?
妖精(わかったよ…魔女を探そう)
剣士(うん…君には本当にお世話になってる)
妖精(わかればヨロシーーー♪)
剣士(ありがとう)
妖精(一つだけ君に教えてあげるよ)
剣士(なに?)
妖精(見えない方が、大事な事が何なのか分かる事だってあるんだよ)
剣士(覚えておくよ)
---すごく大事な事を言われた気がする---
---きっと目が見えない運命に理由がある---
30 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:45:17.92 ID:JwosRg690
『宿屋の倉庫裏』
---夜---
盗賊「よし!全員馬車に乗ったな?」
女盗賊「私で最後よ…みんな静かにしてね?」
盗賊「鍵かけるぞ」ガチャリ
盗賊「しばらく苦痛かもしれんが我慢してくれ」
盗賊「眠たかったら寝てて良いぞ」
盗賊「剣士!お前は傭兵のフリをして俺に付いて来い」
女盗賊「完全に夜逃げねフフ」
盗賊「商隊の詰め所に着いたら囚人の様に振舞ってくれ」
女盗賊「分かってるわよ」
盗賊「特に子供達は笑わせないように注意してくれ」
盗賊「商隊と合流したら出発は夜明けだ」
盗賊「寝れるときにしっかり寝ておかないと3日間の移送はかなりしんどいぞ」
女盗賊「檻の中は私に任せて」
盗賊「頼む…じゃぁ行くぞ」グイ ヒヒーン
ガラゴロ ガラゴロ
31 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:46:11.60 ID:JwosRg690
『商隊の詰め所』
商隊長「積み荷の確認をする」
盗賊「あぁ問題ない…あまり他には見せない様に頼む」
商隊長「荷物は何だ?」
盗賊「大きな声では言えんが…奴隷と食料だ」
商隊長「…」ジロリ
盗賊「他には大したもん積んでねぇ…見てくれ」バサ
商隊長「…女、子供か…いくらで売るんだ?」
盗賊「すでに売約済みだ…細かいことは聞きっこ無しで頼む」
商隊長「ケッ…行っていいぞ。夜明けに出る。この馬車は先頭の次に付け」
盗賊「わかった…ところで今回は馬車が多い様だが何運んでるんだ?」
商隊長「遺体だ」
盗賊「あぁ…法王庁の衛兵か」
商隊長「そうだ…金持ちの考えそうな事だ」
盗賊「金持ちのぼっちゃんを馬車一台に積み上げる訳に行かねぇってか…まったくもって無駄だな」
商隊長「奴隷商のお前が言う事かと言いたい所だが…まぁ同感だ」
盗賊「わるいわるい…野暮な事聞いたな…商隊、安全に頼む」
---朝---
盗賊「出発するぜ?」グイ ヒヒーン
ガラゴロ ガラゴロ
盗賊「トアルの町はこれでおさらばだ…子供たち!!馬車の隙間から最後に見ておけ」
盗賊「おまえたちの故郷だった場所だ」
子供達「え〜ん;;とーちゃーん…おかあちゃーん」
女盗賊「もう!!泣かせないでよ」
盗賊「これで良いんだ…こうやって大人になる」
32 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:47:13.76 ID:JwosRg690
『商隊1日目』
ガラゴロ ヒヒーン ブルル
盗賊「今日はここでキャンプだとよ」
女盗賊「柵は一応あるのね…」
盗賊「簡易中継点だな…魔物が来なきゃ良いが…」
女盗賊「寒いわ」ブルブル
盗賊「湯を沸かしてやる…待ってろ」
女盗賊「鎖に繋がれて移送されてると…なんだか気力が無くなっていくわ」
盗賊「そうか」
女盗賊「奴隷にされた人達はこうやってやつれて行くのね」
盗賊「だろうな…明日の身を案じながら絶望と戦うんだな」
女盗賊「戦う?…その気力が無くなって行くと思うわ」
盗賊「そうか…甘いのは俺の方か…絶望しながら憎悪や憎しみが沸くんだな」
女盗賊「そう…そんな感じ」
ヒラヒラ
妖精「…そして死んだ後その魂は無念を抱えて狭間を彷徨う」
女盗賊「!?妖精さん?」
妖精「魂の行く先は黄泉」
女盗賊「狭間に近づいてるのね?」
妖精「その魂が黄泉で実体化した物が魔物」
女盗賊「妖精さんどこに居るの?」
妖精「魔物がちょっとしたきっかけで狭間に迷い込んで」
盗賊「ん?ブツブツ聞こえるな」
33 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:47:42.79 ID:JwosRg690
妖精「狭間が遠くなった時にこの世界に取り残されるんだよ」
女盗賊「因果…人間たちの行いが魔物を呼んでるのね」
妖精「そう…そうやって「あの世」と「この世」は調和しているんだ」
女盗賊「その調和を乱しているのはもしかして…」
妖精「人間だよ…そして崩れた調和を戻すための大破壊が魔王の復活」
女盗賊「え…」
妖精「でも200年以上昔のお話」
女盗賊「…私の兄が言っていた事と同じ…本当にそんな事があったのかしら」
盗賊「んあ?兄?…あいつか盗賊ギルドマスター」
盗賊「話がよくわからんな…兄がどうした?」
女盗賊「剣士と妖精を兄に会わせた方が良いかもしれない」
盗賊「…なんだ急に!行き先が反対方向じゃねぇか…あいつはシャ・バクダに…」
女盗賊「そうね…話が急すぎるわね」
盗賊「まぁゆっくり考えてからにしろ」
----------
盗賊「湯を持って来たぜ」
女盗賊「ありがとう」
盗賊「水袋に小分けして今日はそれを抱いて寝ろ」
盗賊「毛布は今ある分しか無ぇから牢の中に牧草を多めに入れてやる…っよ」ガッサ ガッサ
盗賊「これで良いな?…あとは静かにしてろ」
ヒソヒソ ヒソヒソ
ムキー
ヒソヒソ ヒソヒソ
盗賊「特に娘たち4人…文句ばっかり言ってねぇでガマンしろ」
34 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:48:23.60 ID:JwosRg690
『商隊2日目』
ガラゴロ ガラゴロ
盗賊「延々と馬のケツ見てるのもいい加減飽きるな…剣士!お前何か話せねぇのか?」
剣士「…」
盗賊「大した良い眺めでも無ぇしなぁ…」
女盗賊「久しぶりに模擬戦でもやってみたら?体なまってるのではなくって?」
盗賊「こいつとか?…んむ…面白そうだな」
剣士「…」???
盗賊「よし!今日のキャンプで一回やってみるか」
剣士「…」???
盗賊「まぁ心配すんな…木の枝を使って戦闘の立ち回りをやるだけだ…怪我しない程度にな」
盗賊「魔法とかそういうのは無しだ…使えるかどうか知らんが」
盗賊「武器の使い方を知らないなら教えてやる…まぁ一回やると大体適正は分かるな」
盗賊「お前も男ならちったぁ戦える様になった方が良い」
---夜---
盗賊「暗くなっちまったな…焚火付近でやるか…ホレ!」ポイッ
剣士「…」パス
盗賊「その枝が剣替わりだ…ゆっくり行くぞ?…防いでみろ」カン カン コン
盗賊「…そうだ!そんな感じだ」
盗賊「もう少し早く行く!!構えろ」ダダッ カンカン コン
盗賊「やるじゃねぇか…次は打ち込んで見ろ」
剣士「…」スッ
盗賊「おいおい待て…四つ足になんのか?それじゃ枝持てねぇんじゃねぇのか?」
剣士「…」
盗賊「…まぁ良い来てみろ」
剣士「…」スッ ピョン カン
盗賊「!!うぉ…あぶねぇ」タジ
盗賊「お前のその低い踏み込み…すげぇじゃねぇか!!」
35 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:48:49.40 ID:JwosRg690
もう一回やってみろ!!
うぉ!!いで!!
んのやろう…
もう一回だ!!
うらぁ!防いだぞ!!その後どうする!?
何ぃ…飛ぶのか
わかった本気出してやる…コイ!!
カン カン コン ビシ イデッ
ピョン クルクル シュタ ビシ アダッ
ダダッ カン ポカ イダッ
盗賊「ぜぇぜぇ…わかったわかった…お前にゃ敵わん」
盗賊「お前の剣筋は普通の剣士では無い事がよく分かった…はっきり言う…お前はすげぇ!!」
盗賊「今日はもうヤメだ…おぉイテテ」
36 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:49:17.82 ID:JwosRg690
『馬車』
女盗賊「フフ完敗だったわね…怪我してない?」
盗賊「大した事は無いんだが…見てみろ…」
女盗賊「あら…急所にばかり当たってる様ね?」
盗賊「目が見えてないのは大したハンデでは無いな…ありゃ」
女盗賊「ここから見てても分かったわ…四つ足の地面を這う様な飛び込み」
盗賊「あぁ…たまげた…そこからの切り上げが見えんのだ」
女盗賊「戦い辛い?」
盗賊「そういうレベルでは無い…勝負にならん…速すぎる」
盗賊「普通は剣筋や目の動き、体の動きで攻撃の来る方向がある程度分かる筈なんだが…」
盗賊「ノーモーションであの速さは避けれん」
盗賊「低い所からの切り上げで…見ろ…内股、内腿、脇腹…痛い所にばかり当てて来やがる」
女盗賊「目で見て戦っていないからかしら?」
盗賊「…そうかもしれん」
女盗賊「あなたも教えてもらったら?」
盗賊「シャクだがそうさせて貰う」
女盗賊「フフ素直ね」
盗賊「いやな…悪いがあいつに勝てる戦士は限られると思うぞ…力こそ無いが動きがパネェ」
女盗賊「本当不思議な子ね」
盗賊「白狼の剣士…その名の通りだ」
37 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:49:46.13 ID:JwosRg690
『商隊3日目』
ガラゴロ ガラゴロ
盗賊「おい見ろ!見えてきたぞ!中立の国セントラル」
盗賊「日没前には入れそうだな…今日は旨い物食えるぞ!もうちょい辛抱しろ」
ヒソヒソ ヒソヒソ
アーデモナイ コーデモナイ
ムキー ムキー
ヒソヒソ ヒソヒソ
盗賊「入国するまでは奴隷らしくしててくれぃ」
盗賊「あと剣士!何かあっても威圧的に振舞え…ナメられると暴漢に後を追けられる」
盗賊「女盗賊!もしはぐれたら貧民街の酒場で合流だ…おい聞いてんのか?」
----------
盗賊「なんだありゃ…200いや500くらい居るな?」
女盗賊「何?」
盗賊「兵隊だ…戦争にしちゃ少くねぇ…二個中隊ほどか」
女盗賊「何かあったのかしら?」
盗賊「物騒だな…今から移動するとなると夜行軍になるんだが何やってんだ?」
女盗賊「魔物退治かしら?」
盗賊「移動し始めてる…すれ違う形になるぞ!おしゃべりはここまでだ」
----------
38 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:50:15.56 ID:JwosRg690
盗賊「ちぃ…商隊の先頭が止まりやがった…面倒だな」
盗賊「ちょいと足止めだ!おとなしくしてろよ?」
女盗賊「ちょっと…向こう側」
盗賊「ん?」
女盗賊「あの馬車」
盗賊「…法王庁か…面倒には巻き込まれたくねぇ」
女盗賊「この様子からすると大規模な奴隷狩り…」
盗賊「神様気取りの体の良い奴隷狩りな…糞くらえだ」
女盗賊「こっちに来ない事を祈るわ」
盗賊「法王庁が手薄なスキにお宝頂くって考え方もある」
女盗賊「前向きなのね」
盗賊「俺ぁ泥棒だ…子供たちを盗まれっぱなしじゃ気が済まねぇ…利子付きでキッチリとな」
----------
盗賊「ふぅ…行ったか」
女盗賊「夜行軍の理由はどう考えて?」
盗賊「トアルの孤児院に来たのも朝っぱらだ…目立たん様に行動してるんだろ」
女盗賊「あの数ではどのみち目立つのでは無くって?」
盗賊「ふむ…夜は狭間が近いと言っていたな?関係あるかも知れんな」
女盗賊「考えすぎでは?」
盗賊「まぁ…理由はわからんが…素人ではない軍隊の行動だから必ず理由はあるな」
39 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:50:44.74 ID:JwosRg690
---門---
門番「荷物とパスを確認する!!」
盗賊「これがパスだ」ポイ
門番「荷物は…奴隷か…この後どこに行くんだ?」
盗賊「中央広場で取引相手を待つ…すでに売約済みなんだ」
門番「む…おかしいぞ。中央広場で奴隷の取引は禁止の筈だ」
盗賊「…知るかよ!そこに指定されてんだよ」
門番「取引相手は誰だ?」
盗賊「…言える訳ねぇだろが」---マズイ---
門番「衛兵を呼ぶ」
盗賊「おい待てよ!面倒事にすんなよ」(剣士!威圧するフリ行け!)ヒソ
門番「む…なんだこいつは」タジ
盗賊「そいつはアサシンだ…法王庁のな」
門番「脅迫か?」
盗賊「…もう分かるだろ?取引相手が誰だか」
門番「…話は聞いていない」
盗賊「あぁぁ面倒だな…俺がゲロったのバレたらお前もタダじゃ済まんぞ?」
門番「衛兵!衛兵!」
盗賊「っち…法王の使いだ!本当は法王庁に直接運ぶ予定だったんだが予定が変わったんだとよ」
盗賊「さっき門の外で法王の使いに会ったんだが、今引き取れないから広場で待てと指示されたんだよ」
盗賊「もう知らねぇからな?」
盗賊「俺ぁ厄介事には関わりたくねぇ…馬車ごと置いていくからお前らで何とかしろや!」
衛兵「どうした!?」ダダダッ
盗賊「上等な奴隷移送させておいてこの扱いかよ!!」ペッ
門番「……この商人を中央広場までお連れしろ…法王庁の御指示だ」
衛兵「はぁ?何でお前が指示するの?指示書はどうした?」
盗賊「分かれば良いんだよ…俺がゲロったのは秘密にしてくれ…裁判なんて御免だぜ」
衛兵「ゲロった?」
盗賊「…見てくれ…これが運んでる物だ」
衛兵「女、子供か」
盗賊「どういう意味か分かってんだろ?俺も本当は関わりたくねぇ」
衛兵「……付いて来い!!荷は隠せ!!」
40 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:51:10.88 ID:JwosRg690
『中立の国セントラル』
ガヤガヤ ガヤガヤ
盗賊「ぶはぁ!!ヒヤッとしたぜぇ」カチャ カチャ
盗賊「今鍵開けてやるからな…出たら一旦人ゴミの中に入って皆別行動だ」カチャ カチャ
女盗賊「もう膝が痛くて…」
盗賊「金は持ってるな?」カチャ カチャ
女盗賊「大丈夫よ」
盗賊「集合場所は貧民街のカク・レガという酒場だ。俺は馬車を預けてから行く」カチャ カチャ
女盗賊「剣士は?」
盗賊「お前が手を引っ張ってやってくれ。忙しくて面倒見切らん」カチン
女盗賊「わかったわ」
盗賊「開いたぞ!!自由だ!!出て走れ!!」
女盗賊「行くわよ!!剣士!!手を!!」グイ
わ〜い
ウフフ〜
キャッキャ
ムキー
盗賊「ようし!!ひとまずこれで安全だな…あいつら速攻居なくなったな」
---旨い物でも食うかぁ!!---
41 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:51:43.37 ID:JwosRg690
『中立の国セントラル』
ガヤガヤ ガヤガヤ
盗賊「ぶはぁ!!ヒヤッとしたぜぇ」カチャ カチャ
盗賊「今鍵開けてやるからな…出たら一旦人ゴミの中に入って皆別行動だ」カチャ カチャ
女盗賊「もう膝が痛くて…」
盗賊「金は持ってるな?」カチャ カチャ
女盗賊「大丈夫よ」
盗賊「集合場所は貧民街のカク・レガという酒場だ。俺は馬車を預けてから行く」カチャ カチャ
女盗賊「剣士は?」
盗賊「お前が手を引っ張ってやってくれ。忙しくて面倒見切らん」カチン
女盗賊「わかったわ」
盗賊「開いたぞ!!自由だ!!出て走れ!!」
女盗賊「行くわよ!!剣士!!手を!!」グイ
わ〜い
ウフフ〜
キャッキャ
ムキー
盗賊「ようし!!ひとまずこれで安全だな…あいつら速攻居なくなったな」
---旨い物でも食うかぁ!!---
42 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:52:17.22 ID:JwosRg690
『酒場カク・レガ』
カラン コロン
マスター「いらっしゃいませ。お一人様ですか?」
盗賊「あぁ…カウンターで良い!!何がある?」
マスター「サボテンのテキーラが旬になりますが…」
盗賊「それで良い…ボトルで持ってこい」
マスター「かしこまりました」
盗賊「この店には女は居ねぇのか?」
マスター「あいにくこの辺りでは稼ぎが少なくて…その…中央の方に人が集まっておりまして」
盗賊「ヌハハそりゃ丁度良い…」
マスター「はい??」
盗賊「ここで連れと待ち合わせてるんだが…それらしい奴は来てねぇか?」
マスター「今日はまだ見えてない様です」
盗賊「そうか…待たせてもらう」
マスター「かしこまりました…ごゆっくりと」
盗賊「…ところで」
マスター「はい?」
盗賊「夕暮れ前に法王庁が大軍連れて外に出ていくのを見たんだが…何か知らんか?」
マスター「はぁ…このところ客足が遠のいておりまして…」
盗賊「まぁ仕方ねぇな…女が居ねぇと情報も集まらんだろうな」
マスター「よくご存じで…」
盗賊「…」ジロリ
マスター「な、何か?」
盗賊「口は堅い様だな」
マスター「御冗談を…」
盗賊「まぁ良い…女5人雇えるか?」
マスター「5人!?」
盗賊「上玉だ…まぁ本人達にやる気を聞いてみるのが先なんだがな」
マスター「どちらの女性で?」
盗賊「もう直ぐ来ると思うが…育ちは悪いが容姿は保証する」
43 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:52:50.65 ID:JwosRg690
ペチャクチャ
お姉ぇここで合ってるの〜?
あいつさぁ!!同じくらいじゃないの?
でも好みだなぁウフフ
この階段の下?
ペチャクチャ
盗賊「噂をすりゃ何とやら…来たぜマスター」
マスター「いらっしゃいま…」
娘1「あ!!いたー!!」
娘2「何このシケた店…」
娘3「みーっけウフフ」
娘4「ちょっと休んで良い〜?」
女盗賊「待った?」
マスター「…」
盗賊「…と、まぁこんな感じだ」
----------
44 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:53:20.40 ID:JwosRg690
盗賊「子供たちはどうした?」
女盗賊「近くの宿屋で剣士が付いてくれてるわ…もう寝てると思うけど」
盗賊「そうか…宿代はどうだ?」
女盗賊「それ程高くはないけれど…あまり長く居れる程余裕は無いわね」
盗賊「この人数じゃしょうがねぇか」
女盗賊「そうね…でも働く場所には困らないと思うわ」
盗賊「この店で女5人雇ってくれるとよ!!なぁマスター!!」
女盗賊「それはありがたいけれど大丈夫かしら…」
盗賊「稼ぎゃ良いんだよ!前とさして変わらん」
女盗賊「あなたはどうするの?」
盗賊「俺ぁ泥棒だ…稼ぎ方はそれしか無ぇ…ただ今は情報が欲しい」
女盗賊「盗賊ギルド支部は今機能してるのかしら?」
盗賊「さぁな?普段顔出さねぇ奴がノコノコ行って相手されるとは思わんがな」
女盗賊「それもそうね…」
盗賊「金が無くなるまでゆっくり情報集めが先だ」
女盗賊「そういえばさっき宿屋で妙な噂を聞いたわ」
盗賊「お!?」
女盗賊「近くで魔女が出たらしいの…捕まえたら金貨一袋らしいわ」
盗賊「近くというだけでは動けんな…それから金貨一袋ってのもケチくさい話だ」
女盗賊「その魔女の特徴が…赤い瞳」
盗賊「ぶっ!!…そりゃまさか」
女盗賊「噂が広まるのって早いものねフフ」
盗賊「…」
女盗賊「ん?どうしたの渋い顔して?」
盗賊「ぃぁ…まさかとは思うが…法王庁は魔女狩りに行った訳ではあるまいな?」
女盗賊「…可能性としては…有りね」
盗賊「二個中隊の軍隊だと近隣の村は蹂躙されるぞ」
女盗賊「考えたくないわね」
盗賊「そうだな…考え過ぎと思いたい!夜行軍の理由とも結び付かねぇし…」
盗賊「いや!そもそも魔女なんか俺は見てねぇ!」
盗賊「ぬあぁぁ何だか腹がムカムカする」
45 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:54:02.05 ID:JwosRg690
『数日後』
---夜---
タッタッタ
盗賊「剣士!付いてきてるな?」
剣士「…」
盗賊「よし…お前はここで待機だ」
盗賊「俺はあの屋敷に入って金目の物をかっぱらって来る」
盗賊「追手が出て来たらお前は俺の逃げ道を確保してくれ」
盗賊「逃げるルートは今通って来た屋根を伝って中央の方向に向かう」
盗賊「出来るな?追手を軽く掻き回すだけだ…[
ピーーー
]なよ?」
剣士「…」
盗賊「よし!10分で戻る!」タッタッタ
---10分後---
ガチャーン パリーン
居たぞ!そっちだ!追え!
ガタガタ タッタッタ
盗賊「見つかったぁ!!剣士!!頼む!!」タッタッタ
衛兵1「ピーーーーー!!」
剣士「…」---笛!?---
衛兵2「おい!!そこのやつを捕まえろ!!」
剣士「…」ピョン ドシ
衛兵2「ぬぁ!!お前も仲間かぁ!!」
衛兵3「捕まえろ!!」
衛兵4「どうした!?」
衛兵1「こいつら泥棒だ!!囲めぇ」
46 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:54:35.50 ID:JwosRg690
ピョン クルクル シュタッ
衛兵1「もう一人逃げてる!!屋根に登ってるぞ!」
衛兵2「分かったぁ」
剣士「…」ピョン ドシ
衛兵2「ぐぁ…邪魔をするな!」
剣士「…」ヒョイ
衛兵2「おのれちょこまかと…衛兵!衛兵!」
衛兵1「ピーーーーー!!」
ピョン ピョン ピョン
衛兵3「何ぃぃ!!もう屋根の上に」
衛兵「追えーーー追うんだぁぁ」
47 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:55:36.36 ID:JwosRg690
ピョン クルクル シュタッ
衛兵1「もう一人逃げてる!!屋根に登ってるぞ!」
衛兵2「分かったぁ」
剣士「…」ピョン ドシ
衛兵2「ぐぁ…邪魔をするな!」
剣士「…」ヒョイ
衛兵2「おのれちょこまかと…衛兵!衛兵!」
衛兵1「ピーーーーー!!」
ピョン ピョン ピョン
衛兵3「何ぃぃ!!もう屋根の上に」
衛兵「追えーーー追うんだぁぁ」
48 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:56:15.27 ID:JwosRg690
『中央広場』
ピョン タッタッタ
盗賊「よし!追いついて来たな!?ちぃと荷物が重い…こっちを持て」ポイ
剣士「…」パス
盗賊「まだ衛兵は追ってきてるな?」
盗賊「中央の人混みでお宝の半分をバラ撒け…人に揉まれる前に逃げるぞ!!」
盗賊「俺からはぐれるなよ?行くぞ」タッタッタ
衛兵「まてぇぇぇぇぇ」
ガヤガヤ ガヤガヤ
ん?なんだ?白いフード?
どん!!おい!気を付けろ!!
バッサー キラキラキラ
うぉ!!金貨だ!うぉ!!宝石だぁ!
バッサー キラキラキラ
うおぉぉぉ金だぁぁぁ
バッサー キラキラキラ
衛兵「ぬぁ!どけ!!お前らどけぇ!!」
大衆「金だ金だぁぁぁぁ」ドヤドヤ
衛兵「んがぁぁ…」
盗賊「剣士!トンズラするぞ!!」タッタッタ
剣士「…」タッタッタ
盗賊「ぬははチョロいな…おっと俺としたことが…フードがはだけちまう所だったぜ」
盗賊「フードは深く被れ…盗賊の極意だ」ファサ
剣士「…」ファサ
49 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:56:58.28 ID:JwosRg690
『酒場カク・レガ』
ガヤガヤ
マスター「いらっしゃいませ」
盗賊「おう!マスター!ちったぁ客が入ってる様だな」
マスター「おかげさまで」
女盗賊「あら?いらっしゃい…飲んで行く?」
盗賊「あぁ頼む!剣士の分もだ!おい…例のやつ出してやんな」
剣士「…」ヨッコラ ドン
女盗賊「何かしら?」
盗賊「おしゃれな洋服だ!20着はある…その貧相な洋服じゃ客の入りも悪いだろ」
女盗賊「あら?気を使ってくれたのね?」
盗賊「それからコレはお前にだ」ポイ
女盗賊「ネックレス?」パス
盗賊「虹のしずくという物だ…偶然見つけたもんでな」
女盗賊「フフフ盗んだ物でわたしの気を引けると思って?…でも嬉しいわ…似合う?」
盗賊「幸運を呼ぶ物だそうだ…大事にしろ」
女盗賊「娘たち!?お土産を持ってきてくれたわ…おいで」
ムギャー ワタシコレ イマキガエテイイ?
エー アレモコレモ コッチカナ アッチカナ?
イーナイーナ キャー ズルイ ワタシモー
ムキー コレニアウ? エ? オッパイミセロ?
50 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:57:26.78 ID:JwosRg690
盗賊「それからマスター!これで客に旨い酒出してやってくれ」ジャラリ
マスター「かなり多い様ですが良いのですか?」
盗賊「騒がしてる迷惑料だと思ってくれ」
女盗賊「どこに行ってたのよ」
盗賊「まぁな…今日の収穫はその洋服20着がメインだ…残りは剣士がほとんど捨てちまったヌハハ」
女盗賊「フフらしいわ」
盗賊「でもな?金貨一袋ぐらいは残ってる…お前が預かっとけ」ドン ジャラ
女盗賊「助かるわ…これで子供達を孤児院に預けられそう」
盗賊「あぁその方が安全だ」
女盗賊「他には何か収穫はあって?」
盗賊「まだ無いな…地理が大体わかって来たぐらいか」
盗賊「あぁそういや貴族居住区は割と警備が良いな…笛ですぐに衛兵が飛んでくる」
女盗賊「あまり無理は出来ないっていう事ね?」
盗賊「んむ…極力隠密で動く必要がある」
女盗賊「私に何か出来て?」
盗賊「逃げ道のルート確保は剣士で問題ない…俺が鍵開けをやっている間の見張りが欲しい」
女盗賊「分かったわ…次はいつ?」
盗賊「目標を決めたらまた連絡する」
51 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:58:01.12 ID:JwosRg690
『貴族居住区』
盗賊「あそこの建屋だ」
女盗賊「もう少し夜が更けるまで待ったら?」
盗賊「いぁダメだ逃げ道で人に紛れんと足が付く」
女盗賊「中に人が居るのでは無くって?」
盗賊「…多分居ねぇ筈だ。この時間は貴族どもは食事パーティーに出てる」
女盗賊「今がチャンスね」
盗賊「剣士!この間と要領は一緒だ。お前はここで待て」
盗賊「必ず10分で戻る。それまで隠れていてくれ。ここを通れんとえらく大回りする事になっちまう」
剣士「…」コクリ
女盗賊「大分意思疎通出来るようになってきたわね?」
盗賊「無駄口叩いてないで行くぞ!来い!」タッタッタ
女盗賊「鍵開けの間に見張ってれば良いのね?」
盗賊「あぁ…裏の勝手口から行くぞ」
----------
??「よし!情報通り手薄な様だ…この通路の奥からアクセス出来る」
??「待って…誰かいる」
??「む…去るのを待つか」
??「あたし見てこよーか?」
??「むぅ…私が行こう…出来れば戦闘は回避したいのだがな」
??「奥の区画はここしか入るところ無いよ?」
??「仕方あるまい…一発で仕留める…クロスボウのボルトは何発持ってる?」
??「4…」
??「私が奴の背後に回って仕掛ける…やり損じた時はお前はここから援護するのだ」
??「アイアイサー」
??「私が仕掛けるまで動くな」
??「りょ」
----------
52 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:58:38.29 ID:JwosRg690
??---妙だな…奴は何をしているというのだ…動かんな---
??---殺したくは無いのだが…えぇぃ邪魔な奴め---
??---恨むなよ--- シュン!!
剣士「…」---何か…来る--- ピョン ヒラリ
??「何ぃ!?奴は後ろが見えるいのか?」---援護撃て!--- シュン シュン
剣士「…」---挟まれている?--- ピョン クルクル シュタ
??「外したか!!えぇい!!笛を吹かれる前に!!」タッタッタ ブン
剣士「…」ヒラリ
??「お前は只者では無いな?法王庁の者か!?」ブン
剣士「…」 クルクル シュタ
??「最後の2本!!」シュン シュン
剣士「っつ!」ヒラリ
??「…一旦引くぞ」タッタッタ
??「わーーてるってコッチ!!」タッタッタ
??「今日は引き返す…あんなのが居るとは想定外だ」
??「追って来てないヨ」
??「衛兵では無いのか…同業者と見るか…いゃ」
??「あんな目立つ格好で?白い毛皮」
??「むぅ…作戦を変えるか…正攻法では城まで行けん様だ」
??「敵だったのかな?」
??「貴族居住区にあれほどの者が居るとなると下手に手は出せん」
----------
タッタッタ
盗賊「戻ったぜ!うまく行った…ん?」
剣士「…」フラ
盗賊「何かあったのか?…む?ボルトが落ちてんな」
女盗賊「あなた!血が出てるじゃない!どうしたの?肩ね…」
盗賊「衛兵には見つかってねぇ…今のうちにズラかるぞ」
女盗賊「走れて?…肩を」グイ
剣士「ぁぁぁ」
女盗賊「…ダメよ!抜いてはダメ…少しの辛抱よ」
盗賊「下から戻ろう…わざわざ屋根上行くこともあるめぇ」
女盗賊「見たところ大事には至ってなさそう…止血できればすぐに良くなるわ」
盗賊「ボウガン使うって事は同業者の可能性が大きいな」
女盗賊「相手は逃げてしまった?」
盗賊「引き際が早いのはプロだ…どこかで狙ってるかもしれんから建物の陰を走る」
女盗賊「後を付けられる可能性はどう考えて?」
盗賊「あぁ…仕方ねぇから中央で金バラ撒いて紛れる」
----------
53 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:59:19.08 ID:JwosRg690
??「白いのが来たよ!?あと仲間が2人」
??「やはりここを通るか…私達を追っているか?」
??「わかんない…どうする?」
??「行くさ…私の邪魔をしたからにはツケは払ってもらう」
??「もうボルトが無いよ?」
??「構わん…何者なのか探る」
??「なんかオシャレな感じ」
??「白いのがリーダーと見るか?…フフ…お手並み拝見と行こう」
??「なんか歩き方がおかしい…ボルト当たってたかな?」
??「…そうだな…ぃゃしかし四足歩行…だと?何なのだあいつは…」
??「走って行っちゃうよ」
??「屋根伝いに追う」
??「中央の方向」
??「むぅ…人通りを避けんか…逃げられるなこれは」
??「あ!!!何かバラ撒いてる」
??「ちぃ…こうも予想外が続くとはな」
??「あぁぁ人混みに…」
衛兵「居たぞ!!屋根の上だ!!ピーーーーーー」
??「笛か!仕方ない私たちも人に紛れるぞ…後は分かるな?」
??「いちいちウルサイなぁ…分かってるって」
衛兵「ピーーーーー」
54 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 22:59:50.51 ID:JwosRg690
『酒場カク・レガ』
ワイワイ
盗賊「…じゃ頼むぜ?」
マスター「話はつけておきます」
盗賊「明日には荷物も持って行きたいんだが…よろしく頼む」
娘「あ!お姉ぇ!!おかえりぃ」
盗賊「お?戻ってきたな…どうだ剣士の具合は?」
女盗賊「ボルトを抜くのにちょっと体力消耗しちゃったけど…しばらく安静にしていれば直ぐに良くなるわ」
盗賊「痛がってたか」
女盗賊「当たり所が悪くなくて良かったわ…もしも体に当たっていたらボウガンの貫通力だと命に係わるから」
盗賊「まぁ無事なら良い」
女盗賊「ボウガン使っていたのは2人だったそうよ」
盗賊「ふむ…同業者に間違いなさそうだが、いきなりボウガン撃つってなると盗賊ギルドの者では無さそうだな」
女盗賊「何かの抗争かしら?」
盗賊「殺してでもあそこより先に進みたい何かがあると見た…きなくせぇ」
女盗賊「まだ関わるつもり?」
盗賊「いや…しばらく休業だ」
女盗賊「その方が良いわ」
盗賊「十分稼いだからなヌハハ明日は引っ越すぞ」
女盗賊「あぁマスターが言ってた裏の空き家ね」
盗賊「聞くところによると下水へ行く抜け道があるらしい…俺達にはもってこいだ」
女盗賊「家の中に?」
盗賊「どうやら前住んでた奴が地下にだれか監禁してたらしく、そいつが逃げる為に壁に穴開けたんだとよ」
女盗賊「フフなんだか気持ち悪いわね」
盗賊「良いじゃねぇか!下水も俺たちのモンだ…引っ越した後は下水がどこに繋がってるか探検だ」
女盗賊「私は降りるわ」
盗賊「ケッ…勝手にしろやい」
55 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 23:00:39.12 ID:JwosRg690
『酒場カク・レガ』
ワイワイ
盗賊「…じゃ頼むぜ?」
マスター「話はつけておきます」
盗賊「明日には荷物も持って行きたいんだが…よろしく頼む」
娘「あ!お姉ぇ!!おかえりぃ」
盗賊「お?戻ってきたな…どうだ剣士の具合は?」
女盗賊「ボルトを抜くのにちょっと体力消耗しちゃったけど…しばらく安静にしていれば直ぐに良くなるわ」
盗賊「痛がってたか」
女盗賊「当たり所が悪くなくて良かったわ…もしも体に当たっていたらボウガンの貫通力だと命に係わるから」
盗賊「まぁ無事なら良い」
女盗賊「ボウガン使っていたのは2人だったそうよ」
盗賊「ふむ…同業者に間違いなさそうだが、いきなりボウガン撃つってなると盗賊ギルドの者では無さそうだな」
女盗賊「何かの抗争かしら?」
盗賊「殺してでもあそこより先に進みたい何かがあると見た…きなくせぇ」
女盗賊「まだ関わるつもり?」
盗賊「いや…しばらく休業だ」
女盗賊「その方が良いわ」
盗賊「十分稼いだからなヌハハ明日は引っ越すぞ」
女盗賊「あぁマスターが言ってた裏の空き家ね」
盗賊「聞くところによると下水へ行く抜け道があるらしい…俺達にはもってこいだ」
女盗賊「家の中に?」
盗賊「どうやら前住んでた奴が地下にだれか監禁してたらしく、そいつが逃げる為に壁に穴開けたんだとよ」
女盗賊「フフなんだか気持ち悪いわね」
盗賊「良いじゃねぇか!下水も俺たちのモンだ…引っ越した後は下水がどこに繋がってるか探検だ」
女盗賊「私は降りるわ」
盗賊「ケッ…勝手にしろやい」
56 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 23:01:20.17 ID:JwosRg690
『隠れ家』
ヨッコラ セト
盗賊「ふぅ…これで最後か?」
女盗賊「あとは着替えだけよ…後で持ってくるわ」
盗賊「剣士!お前は休んでろ」
剣士「…」イテテ
盗賊「俺はちぃとしたの下水見てくるぜ…あとの片づけは女盗賊と娘たちに任せた」
女盗賊「娘たち〜!!ベット移動させて頂戴」
娘たち「ええぇぇぇぇ!?」
盗賊「じゃぁ行ってくるな!」
剣士「…」ノソ
盗賊「お?お前も行くか?」
女盗賊「昨日の今日なのに平気なの?」
盗賊「まぁゴロゴロしててもつまらんだろ…付いてこい」
盗賊「あぁそうだ!金は好きな様に使っていいぞ…宝石だけは残しとけ」
女盗賊「あら?良いの?」
盗賊「どうせパクッて来た金だ!全部使っちまえ!!ヌハハ」
娘たち「ぬぉぉぉぉっぉぉぉぉみなぎってキターー」
盗賊「行くぞ!!」タッタ
57 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 23:01:49.96 ID:JwosRg690
『下水』
ピチョン ピチョン
盗賊「こりゃ迷路だな…あっちが海側…セントラル全域に下水が入り組んでるな」
盗賊「剣士!ちょっと待ってろ…地図買ってくる」
剣士「…」コクリ
盗賊「ここを動くなよ?迷子になるぞ」ダッ
---しばらく後---
盗賊「悪ぃわりぃ…こいつがなかなか手に入らなくてな…糸だ」
剣士「…」??
盗賊「測量しながら進むぞ…この地図の上に下水の見取り図を書き込む」
盗賊「ちぃと大変なんだがな」
盗賊「お前は風の流れてる方向はしっかり分かるな?」
剣士「…」コクリ
盗賊「指さしてくれ…なるほどそっちか…次はこの三差路はどっちだ?…そうか」
盗賊「よし!進むぞ…あとは…」
58 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 23:02:21.41 ID:JwosRg690
---数日後---
盗賊「分かってきたぞぉ!!ここの水は貴族居住区の堀から落ちてきてる水だ」
盗賊「つまり堀に捨てればここで回収できる訳だ…うまい具合に枝が引っかかってるから全部あそこで回収出来る」
盗賊「よし!次行くぞ…ここの梯子は城の方まで繋がっていそうだ」
盗賊「だが何かおかしい…こんなに高さが必要な理由がわからんな…奥にでかい空間でもあるってのか?」
盗賊「うむ…風の向きもそっちから出てるな」
盗賊「剣士!ついて来れてるか?ん?」
剣士「…」ユビサシ
盗賊「なんだ?あぁ鉄格子か…これ以上行くのは無理だってか」
盗賊「ちぃと鍵が付いてないか見てくる」
盗賊「無ぇな…ナムサン」
剣士「…」ユビサシ
盗賊「ん?まだ何かあんのか?…動物の死体か?骨が散らばってんな…こりゃ奥は魔物の巣になってんのか?」
盗賊「おい!今こそ妖精の出番だろ居るなら出てこい」
剣士「…」フリフリ
盗賊「ったく役に立たねぇ妖精だな…戻るしかねぇか」
盗賊「この鉄格子の隙間は俺じゃ入れんな…剣士だと行けそうなんだが…女盗賊に協力してもらうしか無ぇな」
盗賊「剣士!今日は一旦戻るぞ」
59 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 23:02:47.61 ID:JwosRg690
『隠れ家』
盗賊「うはぁ…随分汚れたな」
剣士「…」フリフリ
女盗賊「二人とも一回水で流してきてよ…臭いわ」
盗賊「あぁ分かった…後で酒場に行く」
女盗賊「剣士もびしょ濡れじゃない」
盗賊「そりゃそうと随分色んなもの買いこんだな?」
女盗賊「良いから早くいって!!鼻が曲がりそう!!」
盗賊「あいあい」
『酒場』
ワイワイ ガヤガヤ
マスター「いらっしゃいませ」
盗賊「おぉマスター繁盛してるじゃねぇか」
マスター「おかげ様で」
盗賊「空いてるかぃ?」
マスター「カウンターでしたら」
盗賊「いつもの酒2つ頼む」
マスター「あいわかりました」
ポロロン ポロロン ♪
ぃょ〜う アンコール
盗賊「お前は盗賊業は半端だが色んな事が出来るな…いつピアノを覚えた?」
女盗賊「只の趣味よ」
盗賊「手伝って貰いたい事があるんだが…」
女盗賊「まさかあの下水?」
盗賊「そのまさかだ」
女盗賊「私は降りるって言ったわ」
盗賊「まぁ聞いてくれ」
女盗賊「…」
盗賊「下水の見取り図を作ってるんだが、どうやら城か法王庁まで繋がってそうなんだ」
女盗賊「休業するのでは無くって?」
盗賊「いや…まぁ…俺ぁ子供たちを盗まれてしまってだな…行方が気になるのだ」
女盗賊「…」
盗賊「あの中に心臓の悪い子が居てな…どうしても気になる」
女盗賊「それで寝る間も惜しんで探索って…わけね」
盗賊「今のところ危険は無い…と思う」
女盗賊「自信無さげね…いいわ。やってあげる」
盗賊「すまん」
60 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 23:03:20.28 ID:JwosRg690
『隠れ家』
---夜---
盗賊「今日は一応フル装備で行く…もしかすると戦闘になるかもしれん」
盗賊「剣士の肩の具合はどうだ?」
剣士「…」コクコク
盗賊「大丈夫そうだな…お前はロングソードとナイフを持て」
盗賊「女盗賊はいつもの弓だな」
盗賊「俺はダガーと泥棒用の道具一式だ」
盗賊「下水の見取り図はコレだ…海側に向かえば貧民街周辺に出るから、もしはぐれても何とかなる」
盗賊「今から行くのは…恐らく法王庁周辺だ…手薄な今しかチャンスは無いと見ている」
盗賊「目標は子供たちの安否確認と出来れば救出…だが俺は途中からそこには行けん」
盗賊「途中の鉄格子から奥は女盗賊と剣士で行ってもらわねばならん」
女盗賊「フフかなり危険じゃない」
盗賊「剣士が居れば何とかなる…と思う」
剣士「…」
盗賊「夜が明ける前に戻ってくるぞ…出発だ!!」
61 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 23:04:00.99 ID:JwosRg690
『下水』
ピチョン ピチョン
女盗賊「よくこんなところまで探索したわね…臭くてもう鼻が利かないわ」
盗賊「そこから落ちてくる水は貴族居住区の水で割とキレイだ…汚れを落としておくと良い」ジャブジャブ
女盗賊「奥にある鉄格子が言ってたやつね」
盗賊「そうだ…いまからこの鉄棒で少し曲げる…うらっ!!」グイ グイ
女盗賊「この鉄格子を切るのは時間がかかりそうね」
盗賊「これで入れるか?」
女盗賊「んんん…何とか入れた」フゥ
盗賊「剣士も行けるか?」
剣士「…」グイ グイ
盗賊「行けそうだな?よしここで別行動だ…俺はこの鉄格子を道具で切って遅れて向かう」
盗賊「地図から察するに左手沿いに行けば法王庁方向の筈だ…俺も後で左手沿いに追う」
女盗賊「わかったわ…剣士は私から離れないで?」
剣士「…」コクリ
女盗賊「じゃぁ気を付けて」タッタッタ
----------
女盗賊「おかしいわ…どうして骨が散らばっているのかしら」
妖精「…るよ」
女盗賊「妖精の声…狭間が近いのね?」
妖精「…が彷徨ってる」
女盗賊「誰が?」
妖精「沢山の魂が彷徨ってる」
女盗賊「どういう事?ここは墓場だと言うの?」
妖精「それに近い何か…」
女盗賊「上に登る梯子!!…地図で行くと此処は…法王庁の内堀の筈」
女盗賊「妖精さん?先に様子を見ることは出来て?」
妖精「おっけー見てくる」パタパタ
女盗賊「どう?」
妖精「誰も居ないよ」
女盗賊「助かるわ」
妖精「言うことが盗賊とは違うね〜〜♪」
----------
62 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 23:04:33.37 ID:JwosRg690
女盗賊「さすがに深夜というだけあって誰も居ないわね?…法王庁の居住区はどこかしら?」
剣士「…」ユビサシ
女盗賊「え?こっち?あなた人の気配がわかるの?」
妖精「剣士はとても耳と鼻が利くんだよ…目が無い代わりにね」
女盗賊「ム…中から寝息が聞こえる…沢山人が居そうね」
妖精「見てくる〜」ヒラヒラ
女盗賊「私も見える場所無いかしら…」
妖精「中に100人位人がいるよ。大人も子供も」
女盗賊「困ったわ…子供たちだけ連れて帰る訳に行かなさそうね」
妖精「全員足かせが付いてるよ」
女盗賊「鍵開けも必要なのね…私も中を見てみたい」
妖精「動いてる人は居ないみたいだけど」
女盗賊「そこの窓から見えるかしら?」ヨッ
女盗賊「100人も居ると子供たちがどれなのか分からない」
妖精「あ!!」
剣士「…」スラーン チャキ
女盗賊「え!?」
妖精「あぶなーい!!」シュン シュン
剣士「…」ピョン クルクル ヒラリ
??「そこまでだ…」
女盗賊「あ…」ゴクリ
剣士「…」タジ
??「剣を下に置いてもらおうか…さもなくばこの女の命は無い」
女盗賊「剣士…ごめん…」ゴクリ
剣士「…」タジ
??「クロスボウで狙われているのも忘れないでもらいたい物だな」
妖精「まじやば…まじやば…」オロオロ
??「なに!?妖精までお前たちの仲間だと?お前たちは一体何者だ」
??「おぉぉ妖精は高く売れる〜♪」
女盗賊「…この声は」
63 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 23:05:03.59 ID:JwosRg690
??「答えて貰おうか…お前達の目的を…なぜ私の行く先で邪魔をしようとする!」
女盗賊「兄さん?」
??「何?…まさか」
妖精「アレレ?どういう展開?」
??「お前は…妹か!!」
??「ちょちょちょ…どうなっちゃってんの?どうするのこのクロスボウ」
??「顔を見せてみろ!!」ファサ
女盗賊「…」ゴクリ
??「なぜこんな所に居る!?私はお前に盗賊は止めろと言った筈だ!」
剣士「?」タジ
女盗賊「なぜここに居るかは私の方こそ聞きたいわ…兄さんはシャ・バクダに居なくてはいけないのでは無くって?」
兄「ちぃぃ時間が無い…私は今からここを爆破するのだ…」
女盗賊「中に子供たちが…」
兄「戻る気は無いと言うのか?…まぁ良い混乱に乗じて子供だけ連れて帰るんだ」
??「もう時間無いよ?そろそろ爆発するよ」
兄「ええぃ子供だけ連れてもう戻ってくるんじゃない!!分かったな!!」ダッ
女盗賊「兄さん!!貧民街の酒場『カク・レガ』待ってるわ」
兄「…お前も逃げる準備をしろ…巻き込まれるな」ダダダッ
64 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 23:05:39.18 ID:JwosRg690
『下水』
ギコギコ ギコギコ ギコギコ ギコギコ ポキン
盗賊「ふぅぅぅやっと切れた…これで俺も…フン!フン!」グイ グイ
盗賊「ぬぁぁ…ギリギリ…通れ…いや通る」ズル
盗賊「あーいててスリ剥いちまった…急がんとな」タッタッタ
ドーン!! ドーン!! ドーン!!
盗賊「うぉ!!何だ何だぁぁぁ」パラパラ
盗賊「真上か!?こりゃヤバイ事になってそうだ…大丈夫か!?あいつら」ダッシュ
盗賊「急げ急げ急げ急げぇぇぇぇぇ」ダッシュ
盗賊「何なんだここは人骨ばかりじゃねぇか!!」
盗賊「お!!居た!!無事かぁ!?女盗賊」
女盗賊「ここの梯子から子供たち下すの手伝って!!」
盗賊「俺が受け止めるから落とせ!」
女盗賊「ほら!子供達飛んで!!」ピョン ゴスン
盗賊「いでぇ!!ちょ・・」
女盗賊「早く!!」ピョン ピョン ゴスン ゴスン
盗賊「ぐぁ!…ひでぶ!!…おい!足かせ付いてるなら先に言ってくれ…死ぬ」
女盗賊「…私の背中につかまって…降りるわよ?」ノソノソ
盗賊「おい子供たち…足かせの鍵外すから動くな」カチャカチャ
女盗賊「剣士!もう限界よ!!あなたも来て!!」
ドーン!! ドーン!! ドーン!!
盗賊「上はどうなってんだ?」カチャカチャ
女盗賊「兄に会ったわ」
盗賊「なんで又セントラルに…この爆発はあいつの仕業か」カチャカチャ
女盗賊「多分ね」
盗賊「こりゃ面白くなってきたな」カチャカチャ
女盗賊「もう!!こんなに派手にやっては被害が大きすぎるとどうして考えないのかしら…」
盗賊「子供たち4人だけか…大分衰弱してるな…背負って行くしかあるまい」
盗賊「俺が2人背負ってやる…ズラかるぞ」
---よう!お前は何とか無事だったな---
---心臓苦しくねぇか?---
---落ち着いたら旨い物食わせてやる---
65 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 23:06:07.18 ID:JwosRg690
『セントラル外れ』
女海賊「ねぇ!私も連れてってよぉ」
アサシン「遊びでは無いのだぞ?」
女海賊「いいじゃん」
アサシン「では付いてこい…あまりはしゃぐな」スタスタ
女海賊「あの白い奴ってさぁ…仲間かなぁ?」
アサシン「私の妹と一緒に行動している以上、敵では無い…むしろ今は人手が欲しい」
女海賊「あの身のこなしは只者じゃないよね〜」
アサシン「暗殺者の攻撃をこう何度もかわされてしまっては…認めざる負えんな…世の中には私たちより出来る者が居るという事を」
女海賊「私のクロスボウは百発百中なんだけどなぁ…」
アサシン「自惚れは死を招くぞ?」
女海賊「今度はボルトに炸裂弾仕込む!!絶対当てるんだから!!」
アサシン「もう敵では無い…しかしその向上心は君を強くする」
女海賊「ねぇねぇ…ここら辺ってさぁ…」
アサシン「お前にも見えるか…彷徨う魂を」
女海賊「ゾンビが出てきそう」ブルブル
アサシン「墓標は無いが…ここは墓場だ…この先に貧民街がある」
女海賊「走っていこうよぉ〜気持ち悪い」
66 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 23:06:44.26 ID:JwosRg690
『酒場カク・レガ』
ワイワイ ガヤガヤ
女盗賊「いらっしゃい…ま…兄さん!」
アサシン「…女になったな」
マスター「いらっしゃいませ。お二人様ですか?」
アサシン「良い店だな…空いているかね?」
マスター「奥の方へどうぞ」
女海賊「へぇ〜女の子いっぱい居るんだ」
アサシン「ワイン酒2つと果物を頼む」
マスター「かしこまりました…ごゆっくりと」
----------
アサシン「怪我は無いようだな?子供たちは連れて出られたのか?」
女盗賊「4人だけね…後は…」
アサシン「捉えられていた者たちは自力で脱出している者も多い…心配するな」
女盗賊「どうしてあんな事を…」
アサシン「拿捕されている者たちの解放と…法王庁への抵抗組織があるという民衆へのアピールだ」
女盗賊「やりすぎでは無くって?」
アサシン「人への被害は最小限に収めているつもりだよ」
女盗賊「盗賊ギルドが先導しているのかしら?」
アサシン「いや…ギルドは関わっていない…私が個人的に行っている」
女盗賊「シャ・バクダの本部はギルマス不在で良いのかしら?」
アサシン「ギルマスの代わりなどいくらでもいるのさ…出来るやつに任せている」
女盗賊「そう…いつからセントラルに?」
アサシン「…それは私の質問だよ…まだ盗賊を続けているのか?」
女盗賊「好きでやっている訳では無いわ…生きる為に仕方ないのよ」
アサシン「お前は医術や音楽の才がある…まっとうに生きて幸せになるのだ」
女盗賊「兄さんの方こそまだ勇者暗殺を考えてるの?」
アサシン「…兄さんというのはもう止めにしないか?むずがゆい…アサシンで良い」
女盗賊「もう勇者暗殺なんて馬鹿な事考えるのを止めて?昔の兄さんに戻って?」
アサシン「ハハ勇者暗殺は目的では無い…手段の一つだ」
女盗賊「なら他の手段を選べば良いのでは無くって?」
アサシン「…そうだな…魔王の復活を阻止する術が他に在れば…な」
女盗賊「…大破壊こそ魔王の復活と…妖精が話してくれた」
アサシン「それだ!!どうやって妖精を仲間にした?私はそれを聞きに来た」
女盗賊「…兄さん…私を気遣って来たのではなくて…利用しようとしているのね」
アサシン「すまない…言い方が悪かった」
女盗賊「もういいわ!!出て行って…」
女海賊「あ〜あ女心分かってないなぁ…この場合アサシンが悪い」グビ
67 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 23:07:15.28 ID:JwosRg690
女盗賊「…」
アサシン「…紹介が遅くなった…こっちは女海賊だ…私の助手をしている」
女海賊「どもども!!」ビシ
女盗賊「初めまして…兄がお世話になっています」ペコリ
女海賊「ねぇねぇ妖精が見えるってどういう事か知ってる?」
女盗賊「え!?知らないわ?どういう事かしら…」
女海賊「普通の人が見えない物が見える…言い方を変えると特別な人…もっと言い方を変えると狭間に行くことの出来る人」
女盗賊「それがどうしたというのかしら?」
女海賊「妖精はそういう人を導く役目を持ってんの」
女盗賊「私たちは導かれてる?」
女海賊「どうしてだと思う?…それはね魔物と仲直りする為」
女盗賊「仲直りだなんて…そんなに簡単に行くとでも思って?」
アサシン「女盗賊…お前はいつから妖精が見えてたんだ?子供の頃からか?」
女盗賊「兄さんはずっと見えてた…の?」
アサシン「妖精を追いかけて…200年前シャ・バクダが滅んだ理由を知ったのだ…子供の頃にな」
女盗賊「…それでずっと一人で戦っていたの?」
アサシン「私たちは妖精の導きに従い…魔物たちとの調和をしなければならない」
女盗賊「調和…」
アサシン「人間は殺しすぎなのだよ…それは憎悪しか生まない…やがて魔王を生んでしまう」
女盗賊「勇者暗殺と話は逆行するのでは無くって?」
アサシン「勇者と魔王は対なるもの…勇者を封じれば魔王も生まれない…そうやって調和を保つ」
女盗賊「そんなの屁理屈だわ…第一勇者がどこにいるのかさえ分かってないじゃない…魔王だって」
アサシン「雲を掴むような話に聞こえると思うが…シャ・バクダでかつて起きた事と同じ事象がいくつかある」
女盗賊「…それを調べにセントラルに来た…そういう訳ね」
アサシン「分かってくれるか?」
----------
68 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 23:07:42.92 ID:JwosRg690
盗賊「いょぅ!!やっぱり来てたか」
アサシン「盗賊か!!お前まで居たのか…どうりで手際が良い訳だ」
盗賊「ギルマス直々にどうしたってんだ?」
アサシン「あぁ…色々あってな」
盗賊「女盗賊!?どうしたんだ?ふくれっ面で…」
女盗賊「構わないで欲しいわ…」
盗賊「こっちの娘は誰だ?アサシンの女にしちゃ…お前ロリコンだったのか?」
アサシン「あぁ紹介する…ドワーフの女海賊だ…工作専門で私の助手だ」
女海賊「ハロハロ〜」グビ
女盗賊「剣士はどうしていて?」
盗賊「んぁ…ありゃ今まで一緒にいたんだがどこ行った?」
アサシン「…私に気付いたか…警戒しているな」
女盗賊「剣士!?大丈夫よ…今はもう敵ではないの…出ていらっしゃい?」
剣士「…」ソロリ
盗賊「そりゃそうと女盗賊と女海賊は名前がかぶってて混同するな」
アサシン「私もそう思うな…女盗賊!お前に盗賊は似合わない…もうやめておくんだ」
女盗賊「そんなの私の勝手よ」
盗賊「まぁスリも鍵開けも出来んしなぁ…どっちかってーと医者とか踊り子なんだが」
女盗賊「そんなのイヤよ」
盗賊「ハンターはどうだ?お前は弓使いだろ?」
女盗賊「もう!!勝手にして」プン
盗賊「あぁ分かった分かった…やっぱりお前は女盗賊だ…中身は医者だが…それで良いな!?」
女盗賊「私はこれで失礼するわ!…お店の方が忙しいの」プリプリ
アサシン「ところで剣士君…君はどういう人間なんだね?」
剣士「…」
女海賊「うん!!近くで見るとやっぱりカッコイイね!!」
アサシン「見たところその毛皮は白狼…むぅ??…目をどうした?」
盗賊「ちぃと話は長くなるんだがな…」
----------
----------
----------
カクカク シカジカ
69 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 23:08:27.36 ID:JwosRg690
アサシン「…盲目の狼少年という訳か…盲目であれほど戦えるとはな」
盗賊「お前はどうしてセントラルに来てる?」
アサシン「古き時代の秘宝『いのりの指輪』を探している」
盗賊「なんだそりゃ?古代の魔術師が使ってたとかいうやつか?それがセントラルに?」
アサシン「魔王の復活にはいのりの指輪が関わっている筈なのだ」
盗賊「なんでセントラルにあると思ってんだ?確かな情報は何かあるのか?」
アサシン「前にも言ったことがあると思うが…」
私はシャ・バクダが200年前に滅んだ理由を探していた
何度もシャ・バクダの遺跡に足を運び見つけたものが
古い古文書と地下に巨大なカタコンベ
私はそのカタコンベで彷徨う魂が渦を巻いているのを見た
200年たった今でもだ
大量の骸は数え切れる物ではない…数百万の骸が
残虐な拷問ののち遺棄されたのは見て明らかだった
古文書に記されていたのは
神々の戦い…つまり精霊と魔王の戦い
そのどちらも人々の祈りによってこの世界で実体化するらしい
いのりの指輪を使って…
盗賊「何だお前魔王にでもなるつもりか?」
アサシン「違う!誰かが魔王を復活させてしまう前に指輪を破壊したいのが第一」
アサシン「第二は魔王と対になる勇者を暗殺…もしも魔王が復活してしまったなら…」
盗賊「おまえの言うことは決定打が無いな…女盗賊が反対するのも理解できる」
アサシン「…知っているか?セントラルの地下に巨大空洞があることを?」
70 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 23:08:58.06 ID:JwosRg690
盗賊「なぬ!?」
アサシン「私はそこでシャ・バクダと同じ過ちをしているのでは無いかと疑っている」
盗賊「むぅぅ…」
アサシン「何か知っているのか?」
盗賊「下水の見取り図を作っていたんだがな…法王庁の下に怪しい区画がある」
アサシン「下水から行けるのか?」
盗賊「近くまでは行けるが…その奥まで繋がっているかは行ってみないと分からねぇ」
アサシン「私が見てくる」
盗賊「待て待て焦るな…そのいのりの指輪のありかは分かってないのか?」
アサシン「確たる情報は無いが…法王が切望しているという噂は聞いたことがある」
盗賊「その指輪を使って魔王を祈ると復活する…そういう話なんだな?」
アサシン「憎悪の渦が実体化する…古文書にはそう書いてある」
盗賊「勇者の方はどうなんだ?何か手掛かりは無いのか?」
アサシン「無い…」
盗賊「ぐはぁ…話になんねぇな本当…雲を掴む様な話だ…女盗賊の言う通りだぜまったく!!」
アサシン「ただ分かっているのは200年前の大破壊の時、魔王が倒される間際に精霊を夢幻に封印したという事」
盗賊「なんだか良くわからんが…それは関係の無い話だと思わんか?」
アサシン「いや…精霊は夢幻に封印されてもなお祈りを続けているのだ」
盗賊「夢幻の意味が分からん」
アサシン「勇者は精霊の祈りによって生まれる…この意味が分かるか?…勇者は夢幻から来る」
盗賊「昔話だぞ!?そんなもん信じてんのか?」
アサシン「これは事実…私は石となり眠る精霊をこの目で見た」
盗賊「どこにあんだ?」
アサシン「光の都シン・リーン」
盗賊「…そこで勇者を待つってのか?アホらしい…」
アサシン「そうだ…いつまでも待っている訳に行かないからこうやって魔王復活の兆しを探している」
盗賊「…ともあれ、その話じゃ今いまどうすりゃ良いか皆目見当がつかん」
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