【ミリマス】私とあなたで叶える魔法

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43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/09(水) 23:33:16.28 ID:FP9CMTOT0
「【Welcome!!】 来い!」

無理やり身体を動かし杖を抜きながら叫ぶ。

唱えた呪文は呼び寄せ呪文。

まだ足はまともに動かない。だったら飛べばいい。私は魔法使いなんだ!

飛んできたホウキにつかまり魔王に突っ込む。

「可奈!? そんな無謀だ!」

「破れかぶれの突撃か? 無駄に決まっておるだろう」

張られた防御魔法に阻まれて魔王に触れることもできない。けれど近くに行ければそれでいい。
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/09(水) 23:37:31.35 ID:FP9CMTOT0
「ジュリア、麗花! 私とあいつを魔王城まで飛ばすから手伝って! 後は私一人でやる!」

魔王の防御魔法。それに阻まれながらも魔法を構成し始める。

「でも!」

私一人を送り出すことにためらうジュリア。見捨てられないと戻ってきてくれたのにそんなことしたくないよね。

ごめん、でもこれしかないんだ。

「お願い!」

「やろう。ジュリアちゃん!」

「麗花っ! くそっ! わかったよ!」

私の頼みに加えて麗花が珍しく真剣な顔で呼びかけるのを見てジュリアも覚悟を決めてくれた。
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/09/09(水) 23:41:48.26 ID:FP9CMTOT0
「たかだか学生の魔力3人分で我を飛ばせるとでも?」

「私たちだけの力でやるなんて言ってないわよ」

結界が張られている学校の内部へ魔王が来られた。

つまり今この場は魔王を学園と魔王城の間で移動させる魔法が発動された痕跡があるはずだ。

そしてここには魔王の魔力が充満している。さっきから準備していた魔法はそれを利用するためのもの。

魔王の魔力を使って魔王を飛ばす魔法を逆再生する。

足りない分は2人の魔力と私自身を使って。

「「「【Flyers!!!】」」」

ジュリアと麗花と私の3人の魔法が発動する。

46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/09/10(木) 00:16:33.35 ID:EGkFzpej0
―魔王城―

薄暗い城の庭。そこに私と魔王は飛んできていた。

ホウキは特攻と転移の衝撃で折れている。ごめんね。でももう足は動く。ありがとう。

「まさか我が魔力だけでなく、我が魔法すら利用するとは」

「これでも学園きっての天才と謳われてるのよ。私は」

「見事だ。だがそれが何になる。貴様一人だけ先に無駄死にするだけだ」

また魔王の眼光が私を射抜く。

だけどもう怯みはしない。

「覚悟を決めたか。名前くらいは覚えておいてやろう」

「私は魔王を封印した英雄の末裔、可奈! お前をもう一度封印するものだ!」
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/10(木) 00:23:07.95 ID:EGkFzpej0
―数分後―

「はあああああ!」

「無駄だ!」

攻撃魔法を放つも魔王の防御を貫くことすらできない。

「きゃっ!」

襲い掛かる魔法を城壁を盾にして防ぐが、くだけた破片が私を襲う。

こちらの攻撃は通らず、封印魔法を使う余裕もない。

一方的に嬲られるだけのワンサイドゲーム。

それでも私はいまだに致命傷を負うことなく立っていた。
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/10(木) 00:27:49.53 ID:EGkFzpej0
地形を利用し、防御魔法を駆使しているとはいえうまく行き過ぎている。

「何かがおかしい?」

時々一瞬だけど魔王の動きが鈍っているのだ。そのおかげでどうにか粘れている。

「もしかして?」

一つの仮説が浮かぶ。

本来だったらまだおばあちゃんのかけた封印は溶けていない。もしかしてまだ封印は完全には溶けていない?

魔王が前回封印されたのはこの魔王城。

なら皮肉にもこの場所が今魔王が最も弱体化する場所なの?
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/09/10(木) 00:32:50.48 ID:EGkFzpej0
それならやっぱり私の命をかければ再封印のチャンスはある!

「ちょこまかとした動きは得意なようだな。ならまずはそこから封じようか」

魔王が空に魔力を飛ばすと空の様子が一変する。雨が降り、雷が、雹が降り注ぐ。

「それを待っていたのよ」

天候干渉。恐るべき魔法だけど、魔王がそれを好んで使うことは伝承で知っていた。

「天候全部を支配するなんて芸当っ! 私にはできないけどっ! そういうのを捻じ曲げる技術ならっ!」

磨いてきてるのよ、と最後まで言い切ることなく呪文を唱える。

「【Singin' In the Rain Together!(あめにうたおう♪)】」
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/10(木) 00:39:36.31 ID:EGkFzpej0
降り注ぐ雨を無害な音符に変える変化魔法。

対策に練習していた呪文の一つ。

攻撃翌力こそないけれど視界を奪うことくらいはできる。

「どこに行った!?」

そしてこの一瞬にすべてを賭けるんだ。

「―青き炎よ螺旋を描き今羽開け― 『Eternal Spiral』!
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/09/10(木) 00:46:09.25 ID:EGkFzpej0
「ははははは! やったわ!」

魔王の肉体が渦に飲まれて消えていくのを見届ける。これでしばらくの間は魔王の脅威は消えるはずだ。

「流石にしんどいわね」

ふらつきしゃがみ込む。【Eternal Spiral】は魔力ではなく生命力を代償とした呪文。

練習で使ったときもふらふらでしばらくろくに移動もできなくなっていた。

あれ? 練習と同じ?

「なんで私、生きてるの?」

この魔法を使ったご先祖様は皆成功と同時に亡くなったと聞いている。

私がすごかったから生き残った? そんなはずはない。もっと熟練したご先祖様たちですら生き残れなかったのだから。

「貴様が封印に失敗したから以外にあるまい?」

二度と聞きたくなかった声が背後から絶望を告げる。
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/10(木) 00:50:36.60 ID:EGkFzpej0

「そんな」

振り向いた先にはいたのは確かに魔王だった。

「封印の影響じゃなかったの」

「ほう、そこまで見抜いていたか。いや確かに影響『も』あったぞ」

「きゃあああ!」

魔法すら使わない蹴りで私の身体が地面を転がる。

「身代わり、ね」

魔王の答えで予想が確信に変わる。私たちが今まで相対していたのは本体ではなく、分身。

だからそれを封印しても私の命はつきないし、魔王もこうして平然としている。

「そうだ。こんな状況で不用意に天敵の前に身を晒すのは何があるか分からんからのう」

目論み通り行ったことに愉快そうに魔王が笑う。
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/09/10(木) 00:53:33.26 ID:EGkFzpej0
あーあ……ここで終わりか。

私はまだ生きている。けれど魔力ではなく生命力を放出する魔法だから二発目は当分打てない。つまり打つ手はなくなった。

「お手上げよ。まさか魔王がこんな狡い手を使うとはね」

「まさか本当に必要だったとは思わなかったがのう。それだけの価値は貴様らにはあった。あの世で誇るがいい」

魔王の手にまた魔力が収束する。

ごめんなさい。ジュリア、麗花、歌織先生、みんな。

絶望的な状況だけどきっと気が付いた先生たちが戻ってきてくれれば翼を逃がすことくらいはできるだろう。

まだ封印の影響があるのならすぐに魔王が世界を滅ぼすこともないはず。

勝手だけど後は頼むわよ、翼。
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/10(木) 00:58:19.55 ID:EGkFzpej0
Side翼

「おい、大丈夫か?」

「いたたたた。魔王は!?」

魔王と戦っていたはずの私は談話室のソファで目を覚ました。

「魔王ならいない」

「助かったの? ってあれ。可奈は?」

ジュリアが俯く。まさか!?

「可奈ちゃんなら私たちを守るために魔王を連れて魔王城に行ったよ」

「おい、麗花! 翼はさっきまで倒れていたのに今言うことないだろ!」

そっか。だったら

「行かなきゃ!」
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/10(木) 01:05:04.98 ID:EGkFzpej0
「なんでそんな無茶しようとするんだ。大体お前はいつも可奈と喧嘩してただろう!」

「本気にならないわたしにも可奈は真っすぐ向き合ってくれてたんだよ」

人間界出身のわたしをどう扱うかみんなが戸惑う中、可奈は最初からニンゲンの素人だといいながらも真っ向から一人の人間としてぶつかってくれた。

それがとってもうれしくて。だから最近の無気力な可奈が悲しくて勝負を挑んでいた。

「待てよ。可奈はもう……生きてないのかもしれないんだ! あいつの覚悟を無駄にする気か!」

「生きてるよ」

だって可奈は私がこの世界で見た一番すごい魔法使いだから。

「ジュリアーノも私を心配してくれてるんだね。ありがとう」

「はあ? 心配なんかしてないから。ってかジュリアーノってなんだよ」

慌てる彼女を見てクスリと笑う。

結構甘いよね。彼女も。戻ってきたら甘えてみよう。

きっとハッピーな毎日が待ってるだろうな。

大丈夫、私たちは戻ってきて楽しい魔法生活をもう一回始めるんだ。
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/10(木) 01:09:12.89 ID:EGkFzpej0
「そもそも行くってどうするんだよ。魔王城なんていろんな魔法に妨害されて見えてる方に向かったって中に入れやしないぞ」

ホウキで飛んでいくだけじゃダメなの!? どうしよう。

「あれー? あなたは? こっちにおいでー」

そんなとき麗花が指差した方向に何かがいた。それは私を誘うような動きをする。

「もしかして?」

物陰から現れた――に私はついていった。

Side 翼 END
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/10(木) 01:16:49.09 ID:EGkFzpej0
「安心するがいい。お前以外もすぐに逝く。寂しい思いはさせない」

「あーら。ありがとう。あなたも追いかけてきてくれるのね。ただ生憎だけど天国と地獄じゃ会えないわよ」

せめて最後まで目を逸らすものか。魔王をにらみつける。

「さらばだ。英雄の末裔、可奈よ」

「【ロケットスター☆】!」

終わりを覚悟したその時、何かに身体が引っ張られた。

その直後背後で魔弾が爆発する音が聞こえる。

「ギリギリセーフ! 間に合ったあ!」

「な、な、な! バッカじゃないの? あなたがここに来たら意味がないじゃない! 翼!」
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/10(木) 01:22:37.50 ID:EGkFzpej0
魔王から少し距離をとったところでホウキに乗った翼が手を放し私は地に足をつけた。

「そもそもどうやってここまで来たのよ」

魔王城には普通の手段では入ることすらできない。私がやったように魔王そのものの魔法を利用するか、どうにかして魔法を無効化するか。
後は何か魔法的に目印になるものでもない限りは。

「この子が教えてくれた!」

翼のローブから黒い影がひょこりと顔を出して私の方に飛び乗ってくる。。

「シッポ!?」

まさか、よく一緒にいたせいで私の使い魔としてパスが通っていたの?

「来れたにしても来る必要ないでしょ。なんで来たのよ」

「わたしはね。たのしいハッピーライフが送りたいの」

「はあ?」

意味不明な答えに思わず私まで間の抜けた声が出る。
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/10(木) 01:26:35.91 ID:EGkFzpej0
「それだったらなおさらこんなところに来たらダメでしょ!」

「え? だって来なかったら可奈がいなくなっちゃうでしょ。そんなのつまらないもん!」

「あーはっはっはっ!」

ああもう本気でおめでたすぎるのね。この子。こんな状況なのに思わず大笑いしてしまった。

でも、確かにそうね。

独りよがりの私が一人にならなかったのは彼女がいたからだ。

イライラしてばかりだけどもしかすると楽しかったのかもしれない。

「さて、あなたはどうなってもいいけどこの子を帰らせてあげないとね」

「にゃーお」

にやつくのを誤魔化すために肩に乗るシッポを撫でる。

「ちょっと隠れててね。シッポ」

なんか負ける気がしないや。
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/10(木) 01:32:28.42 ID:EGkFzpej0
「英雄の末裔と選ばれし少女の共闘か。だが、切り札がすべて不発に終わった貴様らが揃ったところで我に敵うとでも?」

魔王が悠々と飛んでくる。

わざわざ私たちの会話を待ってくれてたらしい。余裕の表れだろうけど勝ち誇りすぎなのよ。

「魔王なんてたいそうな名前名乗ってるのに知らないの?」

「敵うか敵わないじゃなくて叶えるのよ」

「「私『たち』は魔法使いだから!」」
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/10(木) 01:36:43.02 ID:EGkFzpej0
「いい。一発で決めるわよ」

翼に魔王と長時間やり合う技術はない。

私に魔王の防御を崩す火力はない。

長引けば勝ち目はない。

「防御と指向性の調整は私がやる! だからあなたの全力、打ち込みなさい!」

「貴様らの魔法などくらいはしないが無駄なあがきに付き合うのもいい加減飽きた」

魔王は漆黒の魔弾を連射してくる。分身の時では溜めが必要だった威力を一発一発が持っていた。

だけど私には教えてもらったものがある。
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/10(木) 01:39:30.42 ID:EGkFzpej0
それは魔王と戦う前のやよいおばあちゃんに持つように言われたもの。

幼いころの私、いや少し前までの私はそれをちゃんと理解してないままだった。

それでも不完全なままでもみんなを守りたいと小さいころから磨き続けた。

災厄をはねのける私の魔法を。

そして選ばれてなくてもいいと本当は臆病だと認めたうえでまた立ち上がれた。変われたことで完成した。

「【The Charm(おまじない)】!」
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/10(木) 01:47:07.04 ID:EGkFzpej0
「なぜ、真っ向からのぶつかり合いで我が魔法が弾かれる! 半人前の魔法使いごときの魔法に!」

攻撃が防がれ続けることに初めて魔王が焦りを見せる。

だれにも負けないおまじない。それは一族の使命を自覚するより先に私が目指した私だけの魔法。

たとえ魔王の攻撃だって簡単に破らせてやるものか!

一度で大半の魔翌力を消費するうえに攻撃翌力は一切ない魔法ゆえにさっきまでは使えなかった。

だけど今の私は一人じゃない!

次の一撃のために必死に残った魔翌力をかき集める。

「本気なんて、わたしらしくないかもしれないけど……可奈と一緒なら世界だって守れるんだから!」

「―We proud of us― ぶちこみなさい!」

魔法に特性を付与する詠唱を一節唱える。

「―We are arriving at the world―」

翼もまた準備が終わる。

「【Believe my change!】 いっけえええええええ!」「くらいなさい!」
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/09/10(木) 01:52:36.26 ID:EGkFzpej0
>>63の修正

「なぜ、真っ向からのぶつかり合いで我が魔法が弾かれる! 半人前の魔法使いごときの魔法に!」

攻撃が防がれ続けることに初めて魔王が焦りを見せる。

だれにも負けないおまじない。それは一族の使命を自覚するより先に私が目指した私だけの魔法。

たとえ魔王の攻撃だって簡単に破らせてやるものか!

一度で大半の魔力を消費するうえに攻撃力は一切ない魔法ゆえにさっきまでは使えなかった。

だけど今の私は一人じゃない!

次の一撃のために必死に残った魔力をかき集める。

「本気なんて、わたしらしくないかもしれないけど……可奈と一緒なら世界だって守れるんだから!」

「―We proud of us― ぶちこみなさい!」

魔法に特性を付与する詠唱を一節唱える。

「―We are arriving at the world―」

翼もまた準備が終わる。

「【Believe my change!】 いっけえええええええ!」「くらいなさい!」


65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/09/10(木) 01:56:14.62 ID:EGkFzpej0
私たちが放った魔法は同時でなく私の魔法が先行していた。

「防御に気を取られて攻撃魔法に回す魔力が不足、その上タイミングまでずれた。最後の最後で失敗したな! 英雄の末裔よ!」

先に私の魔法を迎撃した後に、そのまま翼の魔法を拡散させるつもりだろう。魔王が吠えながら私の魔法を受け止めようとする。

「だーれが攻撃魔法だって言ったかしら?」

「何っ!?」

受け止められる直前私の魔法は円柱状に広がり、魔王を覆う。遅れてきた翼の魔法ごと。

「拡散されなきゃアンタにだって効くんでしょ!」

かき集めた魔力は先ほど使った【The Charm(おまじない)】のもの。

魔王が拡散する翼の魔法を無理やり弾き返すことで集約させて再度魔王へと打ち出す。

何度だって。
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/10(木) 01:59:48.49 ID:EGkFzpej0
「負けないわよ!」

「わたしだって!」

魔王が倒れる前に私が負けたら失敗、魔王じゃなくて私と翼で競い合うおかしな光景。

私たちはぶつかりあうだけで支え合うことなんてできないけれどそんな私たちだからこそ辿り着ける!

「くそおおおおお!」

魔王は私の魔法を破ろうとするもののそうすると翼の魔法をノーガードで受けることになる。かといって翼の魔法を弾けば弾くほど翼の魔法の密度は上がる。

既に魔王は打つ手がなくなっていた。

そして限界まで集約された翼の魔法に私の魔法が飲み込まれながらも最後に一度だけ弾いて完成する。

「「【STANDING ALIVE】!」」
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/10(木) 02:02:33.39 ID:EGkFzpej0
「あわわわわ! 壊れてる!?」

「そりゃ、ぶっ壊れるわよ。ここは魔王の居城。魔王の魔翌力が尽きた以上動かすものはないもの」

足場がどんどん崩れていく。また分身だったりしたらどうしようかと少し心配していたけれどどうやらあれは一体だけでよかったらしい。

「先に帰っててシッポ。【Singin' In the Rain Together!(あめにうたおう♪)】」

降り続いていた雨の一滴を音符に変えてシッポを乗せる。このまま学園まで送り届けてくれるはず。

どんどん小さくなるシッポを見送ってからしゃがみ込む。
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/09/10(木) 02:05:20.51 ID:EGkFzpej0
「あれ? 可奈は帰らないの?」

「ちょっと疲れたわ。少し休んでから帰るわよ」

今ので完全に魔力がすっからかん。

浮遊魔法も転移魔法も呼び寄せ魔法も使えない。

まだ翼には余力がありそうだし一人でも帰れるわよね。丈夫だから最悪このまま落ちても死にはしないでしょう。

「そうなの? じゃあ乗って!」

そんな私の状態に気がついたのかそうじゃないのか翼はホウキにまたがり後ろを指差した。

翼はここまでホウキで飛んできたんだっけ。魔王城の魔法も消えたし普通に学園まで飛んで帰れるのか。
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/10(木) 02:11:35.13 ID:EGkFzpej0
「でーも意外。可奈が素直に私のホウキ乗ってくれるなんてね」

「私は疲れてるの。別に同じホウキに乗ったからって、あなたを認めたとか、そういうわけじゃないから!」

そんな私の態度をどう受け止めたのか翼が上機嫌で歌いだす。

「魔王を〜倒したぞ〜♪ 本当だぞ〜♪ きっと毎日ハッピーライフ〜♪ 楽しみだ〜♪」

「ちょっと、下手な歌歌わないでくれる?せっかくアンタのホウキの乗り心地が、すこしはマシになったところなんだから」

「えー。ハッピーなときは歌った方が楽しいよ? 第一、可奈の方がもーと歌下手でしょ?」

「はっ? あなたの前で歌ったことなんてないでしょ! なんでそんなこと言えるのよ」

「シッポちゃんの前で歌ってるの聞いたことあるよ! 流石にあれよりは私の方が上手だと思うな」

「ななななな! やっぱり翼なんて嫌いよ!」

誰もいないと思って油断してた。まさかこっそり聞いてたなんて!
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/10(木) 02:19:13.10 ID:EGkFzpej0
「あーみんなが見えてきたよ!」

「ってちょっと落ちる落ちる! 人を乗せてるんだから速度を考えなさいよ!」

そうこうしているしているうちに学校が見えてくる。

「でも、ようやく終わったわね」

背負っているものがなくなって残っているのは達成感だけ。

それがなくなったらきっと私はからっぽ。

何をすればいいかも正直分からない。

「終わり? これからだよ! 面倒なことも片付いてこれからは楽しいことがいっぱいだから! 可奈も今度からいっぱい遊ぼうね!」

「私も?」

「当然!」
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/10(木) 02:21:09.92 ID:EGkFzpej0
ああそうか。別にからっぽでもいいのか。

「どうかしたの? 可奈」

「ううん、何でもない」

だって昨日の悪友は今日の、―――だから。なんて思っても言ってやらないけど。

いまだに魔法界のことをあんまり知らない魔法使いとして空っぽの翼。

詰まっていたものがなくなってからっぽな私。

そのからっぽな箱の中身をいっぱいにすることが私とあなたの叶える魔法だろうから。
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/10(木) 02:31:47.03 ID:EGkFzpej0
終わりです。

お読みいただきありがとうございました。

今回のガシャSSRを見て書きたくなったのですがガシャ期間最終日までかかってしまいました。
9/9中の完成目標と言いながら申し訳ありません。

可奈も翼も今回の衣装イラストセリフのすべてが素敵で大満足。
可奈Pとしては劇中の役としてのセリフ以外にもコミュやマスターレッスンで可奈らしさを感じられて二度おいしいカードでした。
SSRカードのメンバーでのMTWがいくつかあるのでぜひとも今回のものも実装されないかなと祈っております。


呪文に楽曲名を利用させていただきましたが一部そのままでは呪文っぽくないので無理やり英訳しております。
あめにうたおう♪はItunesStoreの英語版ページにあったものから。
おまじないは英訳候補から迷ったけどシンプルに。
流星群に関してはあれはそのまま日本語のがいいかなと。

魔翌翌翌力の罠に複数回引っかかり何度も修正入れることになったのも申し訳ありません。

73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/09/10(木) 02:34:20.35 ID:EGkFzpej0
過去作です。

【ミリマス】笑い飛ばすような君の夢を見せて
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1597161616/

可奈「一年後の私はどうなるのかな」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1597685688/

最後の最後までsaga入れ忘れをやらかす学習能力のなさを露呈しましたね...
74 : ◆NdBxVzEDf6 [sage]:2020/09/10(木) 02:35:01.84 ID:41l/B97T0
ええ話だった、可奈覚醒後のコミュとか好きだったし奇跡を起こすよ♪マジカル☆パワー!ガシャで書いてくれて感謝
乙です

>>2
可奈役 矢吹可奈(14)Vo/Pr
http://i.imgur.com/DCHPo4q.png
http://i.imgur.com/V2e307c.png

翼役 伊吹翼(14)Vi/An
http://i.imgur.com/mie5cEN.png
http://i.imgur.com/OdQhp9c.png

>>3
ジュリア役 ジュリア(16)Vo/Fa
http://i.imgur.com/zAwcDIw.png
http://i.imgur.com/pTQNoec.png

麗花役 北上麗花(20)Da/An
http://i.imgur.com/d7E4wce.png
http://i.imgur.com/mjWz14U.jpg

>>5
シッポ役 北沢志保(14)Vi/Fa
http://i.imgur.com/F5TR3kN.png
http://i.imgur.com/4s2FnME.jpg

>>15
歌織役 桜守歌織(23)An
http://i.imgur.com/vMM1ZnF.png
http://i.imgur.com/HAO7vrU.png

>>23
リオ役 百瀬莉緒(23)Da/Fa
http://i.imgur.com/pulW1Hj.jpg
http://i.imgur.com/0yDBjEg.png

>>28
「ロケットスター☆」
http://www.youtube.com/watch?v=k2D3TuakVKs

>>39
「Believe my change!」
http://youtu.be/PjT37P4HfyM?t=95

>>41
「流星群」
http://www.youtube.com/watch?v=Hstu1RmC0BU

「FIND YOUR WIND!」
http://www.youtube.com/watch?v=g3SIc6VwaVU

>>43
「Welcome!!」
http://youtu.be/mv1UDSZI6kM?t=97

>>45
「Flyers!!!」
http://www.youtube.com/watch?v=Frh5-k6SvVI

>>49
「あめにうたおう♪」
http://www.youtube.com/watch?v=KabTHBernx8

>>50
「Eternal Spiral」
http://youtu.be/8bqWDBTHRTA?t=108

>>62
「おまじない」
http://www.youtube.com/watch?v=QtKJ1W3R2Z8

>>66
「STANDING ALIVE」
http://youtu.be/ArkzdJspB4Q?t=88
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/10(木) 19:02:11.47 ID:0WLjbqNfO
おつ
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