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【ミリマス】私とあなたで叶える魔法
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1 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/09(水) 01:13:58.78 ID:FP9CMTOT0
ミリマスのSSです。
奇跡を起こすよ♪マジカル☆パワー!ガシャで登場した世界をイメージしたお話です。
上記ガシャ以外も含めたカードやコミュで演じた役柄をイメージした性格になっているため普段とは異なる性格、口調になっている子が多数います。
ご理解いただけますと幸いです。
補足:
誕生日ですが小鳥さんの出番はありません。小鳥さんごめんなさい。そしておめでとうございます。
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1599581638
2 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/09(水) 01:20:26.14 ID:FP9CMTOT0
「また勝手な事して! このニンゲン!」
「何よ! ちょっと試してみただけじゃない!」
もう何度目だろう。翼というこの人間界出身の素人が原因で実験に失敗したのは。
「試す前に基本から身につけなさい! まさかあなたの頭の中身はこのほっぺたと同じでからっぽのフニャフニャなの!?」
翼のほっぺたをぐりぐりとする。
「ふんだ。可奈のほっぺただってグニャグニャじゃない!」
「痛い! そういうこと言ってるんじゃないの!」
すると翼は私のほっぺたをつかんできた。
3 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/09(水) 01:25:09.42 ID:FP9CMTOT0
「ちょっと可奈、翼やめろってば!」
ジュリアが慌てている。またあの子は心配性なんだから。って
「やれやれ! やっちゃえ!」
「ちょっと! うるさいわよ! 麗花!」
翼の手を振り払ってヤジを飛ばす麗花をにらむ。
「えー、そっちのが盛り上がるよ?」
「私は翼がアホやるのをいい加減にしろって言ってるの! 喧嘩をしたいわけでもないしましてやあんたたちの見世物になりたいわけでもないの」
「ふうん。それならこっちにばっかり注目してていいの?」
抗議する私に麗花が後ろを指さす。
「いいのって何がよ! ……はれっ!? ああああああまたいない!?」
4 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/09(水) 01:31:28.75 ID:FP9CMTOT0
これだからもうあの子は嫌いなのよ!
余計なことをするわ、教えてあげようとしたらすぐ噛みついてくるわ。
そのくせ本気でやり合おうとしたらすぐ気まぐれでいなくなる。
何より納得いかないのが彼女が私のバディだってことだ。
5 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/09(水) 01:36:33.96 ID:FP9CMTOT0
―昼休み―
「まったくもう。お昼休みもほとんどないじゃない」
後片づけの手伝いを申し出たジュリアを帰らせ結局一人で後片付けをした私はある場所に向かっていた。
「よいしょっと」
校舎の隙間にある小さな花壇の前にあるベンチ。そこにお弁当とプチシューの袋を二つもって向かった。
小さな友達がいたらいいなと期待しながら。
「みゃーお」
「シッポいたのね。おいで」
黒猫のシッポ。この学園には何匹も猫の一匹で他の猫とよくケンカしてたところが最初の出会いだ。
気難しい子で最初はひっかかれたりしたもののどうにも放っておけずに餌をあげたりしてたら仲良くなっていた。
6 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/09(水) 01:42:00.51 ID:FP9CMTOT0
「はい、どうぞ」
シッポ用に持ってきたプチシューの袋を開いてシッポの前におく。
そして自分用の袋からプチシューを1つ食べる。
お弁当の後に食べる予定だったけれどせっかくシッポがいるんだし先にこっちにしましょう。
「みゃーみゃー」
「だーめよ。あなた、クリーム食べたらお腹壊しちゃうでしょ」
私の分のプチシューにも前足を伸ばしてくるのをメッっと軽くたたいて止める。
猫にとって私たちが食べる生クリームはあまりよくないらしい。
だから私の分とシッポの分は別に作ってある。
7 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/09(水) 01:46:36.30 ID:FP9CMTOT0
「みゃー」
それにしても今日はやたらおねだりするわね。
シッポはプチシューが特にお気に入りだからそれ用に準備しているけどお弁当も半分くらいは猫が食べられるものを入れてある。
こっちも分けてあげようかしら。そう思ってお弁当箱に手をかけたけれど
「ふ〜ん♪ ふ〜ん♪ ふ〜ん♪」
「みゃ!?」
「あ! シッポ!」
突如聞こえてきたヘタクソな歌声。それにびっくりしてシッポは逃げて行ってしまった。
「あれ、こんなところに花壇なんてあったんだ。きれいー」
私たちの憩いの時間を邪魔した音痴の正体は翼だった。
しかも不愉快なことにここを目指してきたわけじゃなくてたまたま辿り着いたらしい。
8 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/09(水) 01:51:40.95 ID:FP9CMTOT0
「あれ、可奈? それ、お昼ごはん? 早く食べないと午後の授業始まっちゃうよ?」
「あなたが失敗した後始末してたから今まで食べられなかったのよ!」
「ごめんごめ〜ん」
人に迷惑かけといてまともに悪びれもしない。
ほんっとイラっとする。
「お昼は静かに食べたいの。ヘタクソな歌は迷惑だからどっか行ってくれない?」
「ヘタじゃないもん!」
「何度も同じ手は聞かないわよ!」
また人のほっぺたをつかもうとする手を払う。
「むううううう!」
「だからムダよ!」
むきになってまたつかんで来ようとするのを再度払い、おでこを突っつく。
そんな応酬をしばらく続けていくが
キーンコーンカーンコーン
「あ、行かなくちゃ。じゃあね!」
翼はまた一瞬で切り替えて去っていく。
「あー、もう! お昼食べそこねたああああ!」
最悪だ。
9 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/09(水) 01:57:27.29 ID:FP9CMTOT0
―放課後―
私は寮監の先生に相談をお願いしたものの今は忙しいとのことで時間つぶしをするために図書館に向かっていた。
「あの子、やっぱりバカですね。杖を壊したどころか忘れてって」
「前から気にくわなかったしちょうどいいですわね。隠すのはこのあたりでいいかしら」
廊下を歩いていると実験準備室から妙な会話が聞こえた。
壊れた杖? そういえばあの実験の時、確か翼の杖が折れてたけど……まさかね。
「何やってるのよ」
「あ、可奈さん。翼のやつ杖を教室に置き去りにしてたんですよ」
「あのニンゲン、生意気でしょう? 可奈にも噛みついてばかりですし。たまには痛い目見せてやらないと」
実験準備室に入ると2人のクラスメイトが翼の杖をもってロッカーを物色していた。
翼の忘れた杖を隠して慌てる様子を見てやろうとでも考えていたのだろう。
10 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/09(水) 02:01:28.92 ID:FP9CMTOT0
ったく好き勝手やってるくせに隙だらけだからこんなことになるのよ。
「くだらないことはやめなさい」
「え? どうしてですか?」
「可奈だってあのニンゲンのこと嫌いでしょう? 実はそうでもないとでも仰るのかしら」
翼がキライかって? そんなこと考えるまでもない。
好き勝手やって人に迷惑かけて。
「確かにね、私はあいつのことはダイッキライよ」
「でもね。そういう裏でこそこそやってるのはそれ以上に気にくわないのよ!」
「はあ?」「えっ?」
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/09(水) 02:07:53.63 ID:FP9CMTOT0
驚く二人に続けていう。
「そもそもね。あいつに痛い目を見せるだけなら魔法でやり合えば簡単なのよ」
「けどねニンゲン相手になら勝って当然でしょ。そんな勝ち方もせっこい嫌がらせも何の意味もないわ」
「わかりましたわ」
「ごめんなさい」
大人しく反省する二人。
置きっぱなしの杖を見て衝動的にやってしまっただけで本来悪いことをするタイプじゃないのだろう。素直に聞き入れてくれた。
「杖を持ったまま翼と顔を合わせたら気まずいでしょう? 私が教室に戻しておいてあげる。渡しなさい」
翼の杖をかっぱらって実験室を出ていく。
12 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/09(水) 02:11:16.29 ID:FP9CMTOT0
「ここでもダメかー」
「やっと見つけた。翼」
「可奈? どうしたの」
しばらく歩き回り、校舎の隅にある落とし物預かり場の前で翼を見つけた。
「これ、落ちてたわよ」
「あ、私の杖! 教室に忘れてたのかと思ってた。ありがとう」
本来なら私が盗んだとか疑ってもいいだろうにそんな素振りは微塵も見せない。
少しは警戒心を持ちなさいよ。
「ニンゲンにはわからないかもしれないけどね、杖って大切なものなのよ。粗末にするんじゃないわよ」
「ん? 大切だよ」
無駄だと思いながらも注意だけしてみたところに予想外の答えが返ってきた。
13 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/09(水) 02:16:07.28 ID:FP9CMTOT0
「だから、直してもらいたいなって。杖の修理屋さん探してたんだ」
よく考えたらお昼休みに出会った花壇も授業のためには来る必要がない場所だ。もしかして一日中修理屋さんに探してた?
そういえばこの先は購買部だ。探しているのならここだろうと落とし物預かり場に来たけど翼が見つかったのはたまたま?
ってことは杖がなくなっていたころにすら気が付いてなかったの?
心配して損した。
「はーああ」
思わずため息がもれる。
「どうしたの?」
「なんでもないわ」
それにしても修理屋の場所くらい誰かに聞けばすぐわかっただろうに。
いつも考えるより先に動くのよね。この子は。
14 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/09(水) 02:21:02.74 ID:FP9CMTOT0
「私の杖、直せるよね?」
珍しく心配そうにしている。杖だけ渡して終わりのつもりだったけど仕方ない。
「ブラックスミスのロコさんのところに行きなさい。あの人なら大体のものは直してくれるわよ」
羊皮紙に簡単な地図を描いて渡す。
「ほんとー!? よかったー!」
「壊したり、置き去りにしてるような杖を直せることがホントにうれしいの?」
「うれしいよ! こんな素敵な世界に私が来れたことの証なんだから!」
ああもう調子狂うなあ。やる気あるんだかないんだかわからない。
「じゃあさっさと直してもらってきなさい。もうすぐお店の時間終わりよ」
「はーい。行ってきまーす」
杖を抱えてまるで飛び跳ねるように杖屋に向かう翼。
またヘタクソな鼻歌を歌いながら。
っとそろそろ先生のところに行かないと。ったく本の一冊も読めなかったわ。
15 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/09(水) 02:24:57.42 ID:FP9CMTOT0
―寮監室―
「待たせてごめんなさいね。可奈ちゃん」
翼に杖を渡した後、私は寮監を務める歌織先生の部屋に来ていた。
「それで、要件は何かしら?」
「単刀直入に言います。翼とのバディを解消してください」
「あら。そんなに翼ちゃんと組むのが嫌だった?」
「……はい」
杖が直せると聞いた彼女の笑顔が浮かんで一瞬返事が遅れる。
「どんなところが嫌だったのかしら?」
「元々実力がある私と素人のあの子が組むのがおかしいんですよ。しかも私の言うことも全然聞かないで好き勝手やって失敗するし」
ちょっとだけわいた迷いを振り切るように強く言う。私はこんなんじゃダメなんだ。
16 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/09(水) 02:30:22.39 ID:FP9CMTOT0
「私はあんな子のために無駄に時間を使ってる余裕なんてないんです!」
それに私にグチグチ言われてるよりももっと近い技量の子と一緒に失敗しながらワイワイやってる方がいいはずだ。
私とぶつかり合ってるせいで生意気な子だという印象まで抱かれてしまってる。
魔法世界に来れたことを喜んでるあの子はきっと私とじゃなければもっと楽しくみんなとやれているはずなんだ。
って違う! あいつのことなんて関係ない。
17 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/09(水) 02:34:33.75 ID:FP9CMTOT0
「余裕がないってのは『魔王』についてよね?」
「はい」
『魔王』、数百年前に突如この大陸に現れ暴虐の限りを尽くした最強の魔法使いにしてこの世界の災厄。
圧倒的な魔翌力に加えて再生の固有魔法で致命傷を受けても蘇り誰も倒すことができなかった。
ただ一人私のご先祖様が命を賭した魔法で『魔王』を封印することに成功することでこの大陸の平穏をもたらしたのだ。
けれどそれからも数十年に一度魔王は封印を破り復活している。
そのたびに再封印を行っていて最後にそれをしたのは私の祖母、やよいおばあちゃんだ。
おそらく次に世界を救うのは私の役目。
そのためには一刻も早く封印魔法を完璧に身に着けないといけない。
それにもう一つ私の原動力はある。
18 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/09/09(水) 02:37:32.99 ID:FP9CMTOT0
>>17
の修正
「余裕がないってのは『魔王』についてよね?」
「はい」
『魔王』、数百年前に突如この大陸に現れ暴虐の限りを尽くした最強の魔法使いにしてこの世界の災厄。
圧倒的な魔力に加えて再生の固有魔法で致命傷を受けても蘇り誰も倒すことができなかった。
ただ一人私のご先祖様が命を賭した魔法で『魔王』を封印することに成功することでこの大陸の平穏をもたらしたのだ。
けれどそれからも数十年に一度魔王は封印を破り復活している。
そのたびに再封印を行っていて最後にそれをしたのは私の祖母、やよいおばあちゃんだ。
おそらく次に世界を救うのは私の役目。
そのためには一刻も早く封印魔法を完璧に身に着けないといけない。
それにもう一つ私の原動力はある。
19 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/09(水) 02:40:37.82 ID:FP9CMTOT0
「あなたが一族の使命を大切にしていることを知っているわ。でも、予言を知っている?」
あくまで噂レベルだけどとある魔法使いが最後に詠みあげたとされる予言があった。
今から14年前の夏に生まれたある少女が魔王を完全に滅ぼすと。
この学園に入ってからちょっとずつ調べていくうちに私はその予言が実在するものだと確信していた。
予言が指し示す『選ばれし少女』は誰?
同級生で私に勝るどころか並ぶ人すら誰もいない。
何より私は英雄の末裔だ。
当然私に決まっている
ご先祖様が、おばあちゃんが成し遂げられなかった悲願は必ず成し遂げるんだ。
だから必死に技を力を磨いてきた。
20 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/09(水) 02:43:01.46 ID:FP9CMTOT0
「災厄を終わらせる『選ばれし少女』のことですか?」
ここで話すということはやっぱり。確信を真実に変えるチャンスだわ。
「やっぱり知っていたのね。なら話が早いわね」
けれど次に続いた言葉は私の期待していたものではなかった。
「彼女が、翼ちゃんがその子なのよ」
「翼が『選ばれし少女』?」
ワタシジャナイ?
目の前が真っ暗になる。
21 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/09(水) 02:47:31.15 ID:FP9CMTOT0
「14年前の夏、人間界で生まれた魔翌力を持つ金髪の少女だけが魔王を永久に滅する。そういう予言が出たの」
崩れそうな体を意思でつなぎ止める。
「魔王なら私が!」
「あなたにできる可能性があるのはあくまで封印でしょ。私たちは魔王を殲滅したいのよ。魔王が復活するたびに人々が恐怖に慄くのなんてもう終わりにしたいの」
そうだ。私たちの一族に伝わる魔法はあくまで封印術。予言を希望に磨いてきたけれどいまだにそのきっかけすらつかめていない。
「けれど人間界出身の翼ちゃんが一流の魔法使いとなるのは困難なことよね」
「そうです。だからあんな子に任せるなんて!」
「だから可奈ちゃんみたいな優秀な子に彼女の見本となって教えてあげてほしいのよ。今は言うことを聞いてくれなくても失敗していくうちに目の前に正解があれば成長も早いでしょう?」
それって翼の踏み台になれってこと?
冗談じゃない。
「そんなっ――」
「英雄の子孫として、ね。まさか自分が世界を救えないならどうでもいいなんて思ってないでしょう?」
「っ!」
私は!
「失礼しますっ!」
気が付いたらその場から逃げ出していた。
22 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/09/09(水) 02:50:33.55 ID:FP9CMTOT0
>>21
修正
「14年前の夏、人間界で生まれた魔力を持つ金髪の少女だけが魔王を永久に滅する。そういう予言が出たの」
崩れそうな体を意思でつなぎ止める。
「魔王なら私が!」
「あなたにできる可能性があるのはあくまで封印でしょ。私たちは魔王を殲滅したいのよ。魔王が復活するたびに人々が恐怖に慄くのなんてもう終わりにしたいの」
そうだ。私たちの一族に伝わる魔法はあくまで封印術。予言を希望に磨いてきたけれどいまだにそのきっかけすらつかめていない。
「けれど人間界出身の翼ちゃんが一流の魔法使いとなるのは困難なことよね」
「そうです。だからあんな子に任せるなんて!」
「だから可奈ちゃんみたいな優秀な子に彼女の見本となって教えてあげてほしいのよ。今は言うことを聞いてくれなくても失敗していくうちに目の前に正解があれば成長も早いでしょう?」
それって翼の踏み台になれってこと?
冗談じゃない。
「そんなっ――」
「英雄の子孫として、ね。まさか自分が世界を救えないならどうでもいいなんて思ってないでしょう?」
「っ!」
私は!
「失礼しますっ!」
23 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/09(水) 02:54:47.34 ID:FP9CMTOT0
Side 歌織
「ずるいこと言うじゃないか、歌織」
可奈ちゃんが出ていくのを見送った後、声がして振り向くと昔なじみがいた。
「リオ、盗み聞きとは趣味が悪いわよ。エルフってのはもっと品性のある生き物じゃなかったかしら」
「今の私がそんな柄じゃないのもわかっているだろう?」
昔は堅物だったのにどうしてこんなことになったことやら。
「あの子は自分の血筋に誇りを持っている。それを盾に取られたら不満の一つも言えないに決まってるじゃないか」
「だったら親友が死ぬのを目の前で見せつけられて、その孫まで死にに行かせろって言うの?」
そんなこと絶対認められるものですか。
24 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/09(水) 02:58:38.24 ID:FP9CMTOT0
「別にあの子を死なせろってわけではないさ。予言にすがる気持ちもわかる。たださっきのお前は教師としてあの子に向き合っていたか?」
リオは私の両肩に手を置いて諫めるように言う。
確かにさっきの私は私はあの子の祖母、やよいの友人として向き合っていた。
けれどその指摘が正しいからこそ、私はこの気持ちを抑えられない。
「私はもう誰も魔王の犠牲になんてなって欲しくないのよ!」
「それは私も同じだ」
肩に置かれた手に力が入った。
「あっ」
そうだ。やよいを救えなかったことを悔やんでいるのは私だけじゃないんだ。
あの時関わったみんな、ずっと後悔し続けてる。
「今夜は付き合うから少し落ち着け。あずさが酒場に予約を入れてくれているんだ」
Side 歌織 END
25 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/09(水) 03:02:19.61 ID:FP9CMTOT0
―翌日―
「なんであいつが」
「どうした、可奈? 元気ないな」
「悪いけどほっといて。何でもないから」
「かーなちゃん。花火大会しない? 空に打ちあがるのも楽しいよ!」
「そんな気分じゃないわ勝手に……え? 打ち上げるじゃなくて打ちあがる?」
「あわわ? また爆発しちゃった!」
「マンゴドラの根っこは鍋を火にかけてから2分40秒後に入れるの。火をつける前に入れたでしょ。次は気を付けて」
「あれ? 怒らないの?」
「別にもう慣れたわよ、こんなの」
あの日歌織先生のところに行ってから私はからっぽだ。
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