【シャニマス】P「よし、楽しく……」- Straylight編- 【安価】

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33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/07(月) 23:03:56.40 ID:zasX3y6FO
P「名前とかは聞いたことのある店ばかりだな」

愛依「プロデューサーってさ、アイドルのプロデュースしてるんだよね?」

P「そりゃそうだが」

愛依「それならさ、衣装とかの話でファッションとか考えるんじゃない? って思ったんだけど」

P「いや、デザインとファッションは俺の中では別というか……」

P「ましてや、アイドルのことじゃなく自分のこととなるとな……」

愛依「……そっかそっか! じゃあ、うちも教えがいあるわ!」

愛依「まずはここ入ろ。ほらほら」


愛依「うーん……」

P(食い入るように服やマネキンの着飾ったやつを見てるな……)

P「愛依は、こういうファッションとか、結構好きなのか?」

愛依「まあ、嫌いじゃないかな。アイドルやるようになって、衣装さんといろいろ話すうちに知ったってカンジ?」

P「なるほどなぁ――まあ、そうだよな」

P「アイドルって仕事は――歌って踊って魅了してというのが基本っちゃ基本だけど、俺としては、それ以外にもいろんなことを学んでもらえたら……なんて思うかな」

愛依「へー……」クスッ

P「ど、どうかしたか?」

愛依「なんでもなーい。ほら、ちょっと上下選んでみたから試着してよ!」

P「お、おう……ありがとう」
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/07(月) 23:05:01.20 ID:zasX3y6FO
>>32 訂正:

愛依「プロデューサー、ひょっとしてファッションとか興味ない感じ?」
→愛依「プロデューサー、ひょっとしてファッションとか興味ないカンジ?」
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/07(月) 23:19:05.04 ID:zasX3y6FO
愛依「どーおー?」

P「……」

愛依「プロデューサー?」

P「き、着てみた……」シャーッ

愛依「おお! 結構決まってるくない?」

P「そうかな……はは、ありがとう」

愛依「あ、プロデューサー照れてるっしょ〜。貴重なとこ見ちゃったな〜」

愛依「……うん、うん。見れば見るほどいいわ。うちすごくね?」

愛依「色の組み合わせと……ここに入ってるラインとか、可愛いわ〜」

P「か、可愛い……?」

P「よく女の子ってメンズとかレディース問わず「可愛い」って言うけど、どういう感想なんだそれは」

愛依「うーん……、あはっ、うちもわかんない!」

愛依「とにかく可愛いもんは可愛いってカンジ? 細かい理屈とかはいいんじゃね?」

P「愛依はファッション関係のコラボもできるかもな」

愛依「マジ!? それ楽しそうじゃん!」

愛依「……あ、でも、うちってクールキャラでアイドルやってるし……テンションのメリハリとか頑張んないとだな〜」

P「それだけ自分の仕事のこと考えてくれてるなら、俺としては安心だよ」

P「まあ、仕事のことはともかく――」

P「――服、選んでくれてありがとうな。買うよ、この組み合わせで」

愛依「いいの? うちの趣味で選んじゃっただけだけど」

P「まあ、俺はもともと自分のファッションには興味なかったしさ」

P「愛依が俺の服選んでくれるなら、もうそれが俺のファッションでもいいかな……なんて」

P「だから、愛依がいればいいよ。俺が服を選ばなくてもさ」

愛依「!」

愛依「……そっか」

P「愛依?」

愛依「もー、……しょーがないから、そうしてあげる!」ニカッ

愛依「ほら! そしたら、次行こ次! プロデューサーに似合いそうな組み合わせ、まだあるんだ〜」グイッ

P「えっ、ちょっ、愛依の買い物は……」

愛依「これもうちの買い物だし!」

愛依「うちとプロデューサーの! 買い物でしょ」

P「……ははっ、そうだな」
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/07(月) 23:29:55.22 ID:zasX3y6FO
愛依「……」

P「うぐぐぐぐ……」

愛依「あの……さ、うちもなんか悪かったっていうかー……」

愛依「うちも持つよ? いまさらだけど、プロデューサー、うちの着せ替え人形してくれただけだし……服だけなのにそんなに持たせちゃって……」

P「だ、大丈夫だ……それに、一旦車に積みに戻るためにいま移動してるわけだし……」

P「俺は荷物持ちだ……気にするな」

愛依「……」

愛依「じゃ、じゃあ、さ」

愛依「こうしよ? ね?」

P「?」

愛依「一回止まって荷物下ろして」

P「……あ、ああ」ドサッ

愛依「このでっかい袋に、小さいのをまとめて……っと」

愛依「これとこれと……それからこれ、プロデューサー持ってくれる? うちはこれとこれ持つからさ」

P「わかった」

P「この一番大きいのはどうするんだ?」

愛依「こうする……」

愛依「ほ、ほら! 片方はうちが持ってるから、もう片方持ってよ」

愛依「そうすれば、一緒に持てるっしょ」

P「そ、そうだな……」

愛依「……」

イッセーノセー
キャッキャッ

P(ふと、小さい子ども1人を連れた親子連れ3人が目にとまる)

P(父親と、母親と、それから子ども――)

P(――両親の間にはさまって、それぞれ片腕ずつを持ってもらった子どもは、タイミングよく両親にひっぱられてブランコ遊びをしている)

P(よくある、微笑ましい光景だ)

P「なんか、俺たちは荷物だけど、持ち方はなんとなく似てるよな」

愛依「っ! ちょ、ちょっとなに言ってんの……もう」

P「愛依?」

愛依「別に何でも……ほら、早く駐車場行こうよ……」
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/07(月) 23:42:14.30 ID:zasX3y6FO
P(それからも、愛依といろいろな店をまわった)

P(レストランで昼食をとり、生活雑貨やインテリアなど、いろいろ――)

P(――買い物という漠然とした目的で来たが、それゆえに何をしても楽しかった)

P(それに、愛依が楽しそうで、なんだか嬉しいという気持ちとともに、安心感を覚えていた)

P(芸能界という世界に踏み込んでいる以上、アイドルである彼女――彼女らはストレスを抱えているんじゃないかと思っていたからだ)

P(今日は……来てよかったな)

P(俺のためにも)


愛依「よーっし、これで最後!」

P「スーパーか」

愛依「じゃ、がんばってこ! プロデューサー!」

P「ああ、そうだな」


愛依「あとは――……って、あ」

P「何かあったのか?」

愛依「あはは……いや、あそこにさ、おもちゃ付きのお菓子のコーナーあるなって」

P「ああ……食玩か」

愛依「弟が欲しがることもあったからさー、なんかそれ思い出しちゃった」

愛依「プロデューサー、言っとくけどおもちゃ付いてるお菓子は買わないからね……なんて。……ん? って、あれ?」

愛依「いない……あっ!」

P「これ……近所だと売り切れになってるやつ……」

P「ほ、欲しい……!」

トントン

P「はい? ……あ」

愛依「……」ニコニコ

P「いや、違うんですよ」

愛依「はぁ……まあ、別に買ってもいいけどさ」

愛依「意外とコドモっぽいとこあんだね」

愛依「冬優子ちゃんあたりに話したら……」

P「やめてください」

愛依「うそうそ、別に言ったりしないって!」ケラケラ
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/07(月) 23:52:56.65 ID:zasX3y6FO
〜駐車場〜

P「ふぅ……やっと詰め込めたぞ……」

ピトッ

P「冷たぁっ!?」

愛依「あはははっ、いいリアクションじゃん!」

P「め、愛依か……」

愛依「はい、お疲れさま。プロデューサーはコーヒー好きかなって思って、そこの自販機でアイスの缶コーヒー買ってきた!」

P「愛依……」

P「ありがとう……」グスッ

愛依「ちょっ!? 泣いてんの!?」アセアセ

P「……ふっ、嘘泣きだ」

愛依「え?」

愛依「も、もう……本気でおかしくなっちゃったのかと思ったんですけど!」

P「ははっ、すまんな」

愛依「……」

愛依「……なんていうか、さ」

愛依「こう、なんてお礼したらいいか……」

P「そんなこと気にするなって。俺がしたくてしたんだからさ」

愛依「だ、だけど……!」

P「ほら、愛依に缶コーヒーももらえたし。気にするなら、これが報酬ってことでいいよ」

愛依「うちが言いたいのはそういうことじゃなくて……」

P「?」

愛依「……」

愛依「……ま、いまは――いいっか」ニコッ

愛依「これからもうちがプロデューサーの服選んだげるから!」

愛依「……だから――」

愛依「――一緒に買い物! ……また行こ」
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/07(月) 23:53:32.60 ID:zasX3y6FO
とりあえずここまで。
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/08(火) 00:01:14.99 ID:WgCvgV8No
おつおつ
前作効果でニヤニヤとビクビクが同時に味わえる
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/08(火) 21:51:20.05 ID:fbuS5T5i0
〜事務所〜

あさひ「うーん……」

冬優子 ポチポチ

愛依「zzzZZZ」

P カタカタ

あさひ「むむむ……」

冬優子 ポチポチ

愛依「zzzZZ……フガッ」

P カタカタ

あさひ「あーっ! わかんないっす!!」

冬優子「もう! うっさいわねー……さっきから何うなってるのよ」

愛依「っ!? な、なに!?」ガバッ

P「はは……にぎやかだな」

あさひ「わかんないっす……」

冬優子「はぁ……」

冬優子「はいはい、何がわかんないっての?」

あさひ「いま、星はどこにあるのかが……わかんないんすよ」

あさひ「夜には見えるのに……太陽が昇ってるときには見えないじゃないっすか!」

冬優子「はあ? あんた何言ってんのよ」

冬優子「見えてないだけでいまもあるわよ――あの青空の上に」

あさひ「見えて……ない……?」

冬優子「そうよー。わかったら大人しくしてなさい」

愛依「ふわぁぁぁ……ねみ……。んーっ。寝ちゃった……zzzZZZ」バタリ

あさひ「でもでも、冬優子ちゃん」

あさひ「もし星が夜にだけ現れて……太陽が出てくると消える……それなら――」

あさひ「――不思議で、面白いことじゃないっすか?」

冬優子「あんたね……話聞いてたの?」

冬優子「いつ出てきていつ消えるとかじゃないのよ。いつもあるの。見えるかどうかが時間によって違うだけ」

あさひ「冬優子ちゃんは、それ、自分で確かめたことあるんすか?」

冬優子「それは……ないけど」

あさひ「これは……調べる必要がありそうっすね!」

冬優子「ふゆは付き合わないからねー、やるにしても、あんた一人でやってなさい」

あさひ「えー」

あさひ「愛依ちゃーん」ユサユサ

愛依「んー……あと5分……」

あさひ「つまらないっすー!」
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/08(火) 22:00:02.88 ID:fbuS5T5i0
P カタカタ

あさひ テテテ

あさひ「プロデューサーさん!」

P「お、あさひか。どうした?」

あさひ「昼の間……星はどうなってるっすか?」

P「そうだな……」

P「……」

P「……今度、調べてみようか、一緒に」

あさひ「わーい! やったー!!」

冬優子「あんた正気なの? その中学生を相手にするわけ?」

P「まあ、プロデューサーである前に……大人だしな。子どもの疑問に答えてやりたい気持ちはあるよ」

冬優子「ふーん……ま、頑張んなさい」

P「ふっ……」

冬優子「な、なによ、急にほくそ笑んで」

P「ま、じきにわかるさ」

冬優子「……?」
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/08(火) 22:18:39.16 ID:fbuS5T5i0
〜某高原地帯〜

P(今日は早朝から地方でストレイライトとして出すアルバムのジャケット用の撮影だ)

P(事務所の持つ素材を撮るためのロケでもある)

P(撮影は順調に進んだ)

P(特に問題もなく)


P「3人とも、お疲れ様」

愛依「あ、プロデューサー。おつかれ〜」

冬優子 キョロキョロ

冬優子「……ふぅ。お疲れ様」

あさひ「おつかれっす!」

あさひ「いや〜、楽しかった〜!」

あさひ「超でかい芋虫っぽいクリーチャーがいたっす! 撮影中に低い姿勢でポーズとったら見つけたんすよ!!」

冬優子「……」

冬優子「はっ……! ま、まさかあんた、それ……」

愛依「あー大丈夫。うちがちゃんと言っておいたから」アハハ...

あさひ「愛依ちゃんに持っていっちゃだめって言われちゃったっす……」

冬優子「愛依、ナイス」

愛依「ま、ほら、あさひちゃん」

愛依「虫さんも自分の住んでるとこにいさせてあげないとかわいそうっしょ」

愛依「だから、ね?」

あさひ「うー……そういうもんすかね……」

P「はは……」

P「そういえば、思ったよりも撮影が早く終わったな……よし」

冬優子「このあとになにかあるの?」

P「まあな。みんな、これからはオフだろ?」

P「ちょっと、俺と出かけようぜ」

あさひ「面白いことっすか!?」

P「そんなところだ。というわけで、出る準備をしてくれ」
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/08(火) 22:27:53.37 ID:fbuS5T5i0
〜某天文台〜

冬優子「……はぁ」

冬優子「呆れた」

P「まあ、時に素朴な疑問というものは……とことんまで追究すべきなのさ」

愛依「プロデューサー、覚えてたんだ」

あさひ「星……!!」

あさひ「あ、でも……ここで何ができるんすか?」

P「それは……入ってからのお楽しみだ」


冬優子「なんか、イベントみたいのやってるみたいね」

P「ああ、そうなんだ」

愛依「へー、あんまこういうとこ来ないけど、なんか楽しそうかも!」

P「たまにはいいもんだろ」

P「ほら、あさひ。先に行って何やってるか見てきていいぞ」

あさひ「はいっす!」タタタッ

あさひ「……!」

あさひ「『昼の星 観察会』……!」

P「さ、昼に星はどうなってるか――」

P「――自分の目で、確かめてみよう」

P(撮影のための日程っていうのもあるけど――天気が良くて本当によかった……)
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/08(火) 22:51:53.96 ID:fbuS5T5i0
あさひ「……」

冬優子「あいつ、すごい集中力で覗いてるわね」

P「まあ、あさひだからな」

愛依「ああなったあさひちゃんはすごいよねー。レッスンでも時々あんなカンジになってるなー」

あさひ「……」

あさひ「あ――」


あさひ「――見えた」


P「どうだ? 何か見えたか?」

あさひ「はいっす! 金星が見えたっす!」

あさひ「プロデューサーさんも見るっすか?」

P「そうだな。どれどれ……」

P「……あ、見えた」

P「よいしょっと……他にもいろんな星が見れるらしいぞ。ほら、もう少し頑張ってみな」

あさひ「! ……もっと探すっす!」

あさひ「んーっ……」

P「あ、隣が空いたな」

P「冬優子と愛依もそっちで見たらどうだ? せっかく来たんだしさ」

冬優子「……」

愛依「あ、じゃあうちも見るー」

冬優子「……ふゆも、見るわ」


愛依「おっ!? もしかしてこれかなー……」ムムム

愛依「プロデューサー! これって何?」

P「うーん……木星かな」

P「こっちの方を見ると太陽系内惑星以外のほかにもいろんな恒星が見れるぞ」

愛依「マジ!? 冬優子ちゃんっ、一緒に探そ〜」

冬優子「う、うん……」

愛依「ここ、覗いてみて」

冬優子「んっ……」

冬優子「……ほんとだ、見えた」

愛依「ね? すごいわ〜」

冬優子「ほら、交代――」パッ

冬優子「――って! 顔近……」

愛依「あ、ごめん……すぐ覗けるようにって……」

冬優子「……」

愛依「……」

冬優子「……他の星さがそ」

愛依「そ、そだね……」
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/08(火) 23:18:41.33 ID:fbuS5T5i0
あさひ「ふぅ……いろんな星見つけたっす〜」

P「どうだ? 昼に星を見た感想は」

あさひ「とりあえず、後で冬優子ちゃんに謝るっす」

あさひ「冬優子ちゃんの言ってたことは本当だったっすから」

P「ははっ、そうか」

P「まあ、星は夜にだけ現れているっていう考え方も、俺は嫌いじゃなかったぞ」

P「なあ、あさひ。あそこには……何がある?」

あさひ「何って……まぶしっ。た、太陽っす」

P「そうだな」

P「じゃあ、普通にこっちの方を見てくれ」

あさひ「?」

あさひ「はいっす」

P「いま、真っ直ぐ立って前を向いてる状態で、あさひの目には太陽が見えてるか?」

あさひ「いや……見えてないっす」

P「そうだよな。まあ、窓とか何かに反射してるとかじゃなけりゃ、そうだ」

P「ってことは、いま、太陽はないんじゃないか?」

あさひ「……」

P「太陽は見えてない……だから、太陽はいま存在しない」

P「どうだ?」

あさひ「……その発想はなかったっす」

P「まあ、太陽だと周りを照らしてるからって反論ができるし、本来なら夜に月を題材にして話すべきなのかもしれないな」

P「見えてるものがすべてっていうと、極端な話、こういうことにだってなるんだ」

P「だからさ、思うんだよ」

P「見えてないけど大切なものって、きっといつだってあるんだろうな――って」

あさひ「見えてないもの……見えてるもの……」

あさひ「大切な……」

P「アイドルって、五感では語れないものがたくさんあるはずなんだ」

P「俺は、あさひがそれを想像する中で何を見つけてくれるのかを、心から楽しみにしてるよ」

あさひ「……えへへ、そうっすか」

あさひ「わたし、いま、面白いこと見つけたっす!」

P「お、どんなことなんだ?」

P「よかったら、聞かせてくれよ」

あさひ「プロデューサーさんっす!」

P「……俺?」

あさひ「そうっす! プロデューサーさんは面白いっす!」

あさひ「いろんな話をしてくれて、わたしのお願いも聞いてくれて……」

あさひ「アイドルを――教えてくれて」

あさひ「こんなに……、こんなにわたしのこと考えてくれる人、はじめてっす」

あさひ「……」

あさひ「わたし、アイドル頑張るっす! いままで以上に……」

あさひ「面白いこと探し、続けたいっすから」

あさひ「もっと、プロデューサーさんが一緒が……いいっすから」ボソッ
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/08(火) 23:24:52.81 ID:fbuS5T5i0
冬優子「プロデューサー!」

P「!」

愛依「うちらはもう満足したよー。そっちは?」

P「そうだな、あさひ次第だけど……どうだ?」

あさひ「大満足っす!」

P「そうか。それは良かった」

P「それじゃあ、帰ろうか」

P「帰り道は長いから、遠慮せず寝ちゃっていいからな」

あさひ「あ、わたし、助手席がいいっす!」

P「長時間だからな……あさひは車酔いするのか?」

あさひ「別に……あ、まあ、そんなとこっす」

P「?」

P「冬優子と愛依は、それで大丈夫か? 車酔いとかで助手席希望とかは……」

冬優子「ふゆは後ろでいいわ。遠慮なく寝させてもらうもの」

愛依「うちも後ろでいいよー、ふわぁぁ」

P「じゃあ、あさひが助手席だな」

あさひ「えへへっ」ニコッ

あさひ「はいっす!」
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/08(火) 23:25:34.18 ID:fbuS5T5i0
とりあえずここまで。
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/09(水) 01:49:20.73 ID:APXinu5Ko
おつー
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/09(水) 14:58:51.49 ID:xAoQ7Aec0
>>41 訂正:

あさひ「つまらないっすー!」
→あさひ「つまんないっすー!」
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/09(水) 22:59:28.14 ID:9kONRju3O
笑顔がまぶしいね
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/09(水) 23:41:36.27 ID:xAoQ7Aec0
〜テレビ局〜

P(今日はバラエティ番組の収録だ)

P(最近はこうしたタレント的な露出も増えてきたな――うまくいくように俺もがんばろう)

P フラッ

P「……っ」

P(疲れてるのかな……実際、最近ちゃんと休めていなかったかもしれない)

P(あいつらの収録が終わって車で送ってやれば今日の仕事は終わりだ――)

P(――それまでもってくれ)


P(終わったみたいだな)

P「お疲れ様。3人とも、今日もよかったぞ」

冬優子「ふぅ……これくらい普通よ」

冬優子「普通じゃなきゃ、いけないの」ボソッ

愛依「おっつかれー! いやー、あの司会者の人マジで面白かった!!」

あさひ「あっ、プロデューサーさん! お疲れっすー」

P「はは……俺が心配する必要はないよな。もう」

冬優子「……あんた、大丈夫? 顔色悪いわよ」

P「え? そ、そうか?」

愛依「ほんとだ……。プロデューサー、体調悪かったりしない?」

P「だ、大丈夫だよ」

P「ちょっと自販機でコーヒーでも買ってくる」

P「お前らはしばらく休んでてくれ。一番頑張ったのは、そっちなんだからさ……」

冬優子「ちょ、ちょっと……!」

愛依「行っちゃった……ね」

冬優子「……」

あさひ「……」
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/09(水) 23:49:29.61 ID:xAoQ7Aec0
〜テレビ局、ロビー〜

P「……と」

P「コーヒーは……、130円……」

P「財布財布……」

P グラッ

P「あ、あれ――……?」

P(ああは言ったけど――体調、やばいかもな)

P「早く買おう」

パラパラ...

チャリィンッ

ドサッ

P「……?」

P(ゆ……か? なんで――こんな低い視線……)

P(これじゃまるで……倒れてるみたいじゃないか……)

P「……」

P(すまない……3人とも……)

P(見栄なんて張るもんじゃないな……)
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/09(水) 23:57:31.83 ID:xAoQ7Aec0
〜病院 病室(個室)〜

P「……」

P「……っ、んん」

P ムクッ

P「ここは……」

P(そうか――俺は、倒れたのか)

P(過労だよな……ったく、自分だって身体が資本みたいなもんなのにな)

P(こんなんじゃ……冬優子に怒られちまう)

P(このままじゃ……愛依に心配させちまう)

P(あさひには悲しい顔……させちまうかもな)

P「次あいつらにあったら――なんて言えばいいんだろうな」
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/10(木) 00:17:05.69 ID:wj8hTx9z0
翌日。

〜病院 病室(個室)〜

コンコン

アレ? サンカイダッケ?

コンコンコン

P「はは……」

P「はい、どうぞ」

ガララ

愛依「あっ、プロデューサー……」

冬優子「……」

P「……ありがとう。見舞いに、来てくれて」

P「俺がいない間も、仕事は大丈夫だったか? レッスンは問題なく受けられたか?」

P「そうだ……明日の予定……」

愛依「ちょっ、プロデューs――」

冬優子「――ふざけないで」

P「冬優子?」

冬優子「こんなになって、さんざん心配させておいて……それでも仕事が大事なの?」

P「それは……お前たちがちゃんとアイドルやっていくために……」

冬優子「ばかにしないで……!」

冬優子「ふゆは……ふゆたちは……あんたにおんぶにだっこじゃないとどこにも行けないアイドルなんかじゃない!」

冬優子「あんたがプロデュースしてるアイドルは……そんなに頼りない?」

冬優子「そんなに――情けない?」

冬優子「あんたの思うストレイライトって、そんなものなの?」

愛依「冬優子ちゃん……」

冬優子「それに、自分の面倒も見れないような人間がふゆたちをプロデュースするなんて……笑えるわね」

P「それを言われると……返す言葉もない……」

冬優子「自分の頭の中だけで完結させんじゃないわよ……目の前にいるアイドルを、ちゃんと見なさいよね」

冬優子「そんなこともわからないプロデューサーなんて……グスッ」

冬優子「い、いらないんだから……っ」ポロポロ

愛依「まあまあ、冬優子ちゃんもそこまで! まっ、うちも似たようなこと思ってたけどね」

愛依「冬優子ちゃんが全部言ってくれたカンジするし、もういいやー!」

愛依「とにかく、プロデューサー? ちゃんと休まなきゃ駄目だかんね?」

P「わ、わかりました……」

冬優子「ふ、ふん……ちゃんと反省すること」

冬優子「また、ふゆたちの好きな――ストレイライトのプロデューサーになって、事務所に来なさい」

愛依「そーそー。うちも、うちらが好きなプロデューサーを待ってたいかな」

P「すまなかった……」

P「見失ってたもの、ちゃんと見つけてから、またプロデューサーとして会いに行くから――」

P「――待っていてくれ」
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/10(木) 00:36:13.58 ID:wj8hTx9z0
冬優子「でも、あんまり待たせんじゃないわよ」

冬優子「あんたがいない間、代わりにはづきさんがプロデューサーの仕事してくれてたけど、結構手際良かったわよ」

愛依「あ! それある!」

愛依「あんまりもたもたしてっと……取られちゃうかもね〜。プロデューサーの座、ってやつ?」

P「あはは……死守してみせるよ」

P「……そういえば、あさひは来てないのか?」

愛依「あー……」

冬優子「……」

P「用事があって来れなかったとかそんなところか?」

愛依「い、いや、そうじゃないんだけどね」

冬優子「あいつ、来てたのよ。病院まで」

P「?」

冬優子「プロデューサーに会いに行くついでに面白いこと探すとかわけわかんないこと言ってお見舞いにはノリノリで……」

冬優子「出発する前にはしゃいじゃって、バスで爆睡するほどだったのに――」


〜病院 廊下〜

冬優子「ちょっと遠いわね、あいつの病室って」

愛依「この廊下を最後まで行って隣の建物……だっけ?」

あさひ「うーん、なんかないっすかね〜」キョロキョロ

冬優子「あんたね……場所を考えなさいよ。ったく」

冬優子「それにしても静かね」

愛依「確かにね〜」

あさひ「……」

あさひ スンッ

冬優子「急に止まって何やってんのよ。ほら、行くわよ」

あさひ ボーッ

愛依「あさひちゃん?」

ガララ スーッ

冬優子「あ、看護師さんと患者さん……車椅子ね。ほら、道空ける」サッ

愛依「はーい」

あさひ ジーッ

冬優子「さ、行くわよ」

あさひ「……っす」

冬優子「なんですって?」

あさひ「い、いやっす! いや……いやいや嫌イヤァッ!!」

冬優子「ちょ、ちょっと……! いきなりどうしたってのよ!」

愛依「あさひちゃん大丈夫?」

あさひ「ひぐっ……ううっ……」ポロポロ

あさひ「あああぁぁぁっ!!!!」ダッ

愛依「あさひちゃん!?」

冬優子「……追いかけるわよ、愛依」

愛依「う、うん……」


冬優子「――ってことがあって……でも、追いつけなくて、見失った。LINEで『わたしに構わずお見舞い行ってほしいっす』って来たから、とりあえずあんたに会いに来たけどね。こっちから送って待っても返信来ないし」
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/10(木) 00:51:08.05 ID:wj8hTx9z0
P「そうだったのか……」

冬優子「まあ、あさひのことは、はづきさんにも相談してこっちでなんとかしてみるわ」

冬優子「あんたも、あいつに連絡するくらいならいいけど、その身体で探しに行こうだなんて思わないでよね」

P「あ、ああ……さっきの言葉は刺さったし、ちゃんと養生するよ」

冬優子「そ。ならいい」

愛依「あっ、やばっ!」

愛依「冬優子ちゃん、バスの時間……!」

冬優子「っ、そうだった……! ここ、そんなにバス多くないのよね」

P「気をつけて帰るんだぞ」

冬優子「いまのあんたに言われるのは……ふふっ、まあ、それくらい聞いておいてあげる――」

冬優子「――またね」

愛依「まったねー、プロデューサー!」

P「おう」

ガララ

P「……」

P「あさひ……」

P(ふと、あさひが時々する悲しい表情を思い出した)

P(俺は、あさひの何を知っているんだろう)



あさひ「花火……花火に心があったら、どう思ってるんすかね」

あさひ「打ち上げられる瞬間とか、自分がどんなに綺麗な花火だって知ってても、飛ばされたら最後……じゃないっすか」

あさひ「花火は綺麗っす。でも、わたしは花火にはなりたくないっす」


あさひ「はいっす! わたし、いい子にしてるっす!」


あさひ「今日のことは一生忘れられないかも!」


あさひ「こんなに……、こんなにわたしのこと考えてくれる人、はじめてっす」



P「……早く、元気になって、あいつにも顔を見せてやらないとな」
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/10(木) 00:52:08.55 ID:wj8hTx9z0
とりあえずここまで。
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/10(木) 00:55:44.02 ID:FP9XzIy2o
おつおつ
やはりあさひか…
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/10(木) 10:14:50.13 ID:bbVhqnrFO
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/13(日) 21:41:51.08 ID:UZX7kixFO
数日後。

〜病院 病室(個室)〜

P「短い間だったけど、この部屋ともおさらばだな」

P(この数日間、社長やはづきさんからも、しっかり休むようにと、仕事に関する連絡は一切来なかった)

P(俺がいない時に何か問題が起こらないかと心配にもなったが――)

P(――愛依も言ってたように、はづきさんがうまくやってくれているようだ)

P(そもそも、そんな心配をすること自体が傲慢だ)

P(俺がいなくてもある程度機能してるってことなのだから)

P(では、俺がいる意味とは一体何だろう)

P(あいつらにとって、俺はどんな存在でいられるんだろう)

P(俺じゃなきゃいけない――そう言うための根拠が欲しかった)

P「……って、悲観してどうする」

P(あいつらをここまでプロデュースしてきたのは他でもない俺なんだ)

P(俺が胸張ってプロデュースしてやらないと、これまで俺についてきてアイドルをやってきたあの3人に失礼だろう)

P「俺がやってきたこと、俺がやろうとしていること……」

P「……俺が認めてやらないでどうするんだ――ってな!」パシン

P「よし」


〜病院 廊下〜

P(やっぱ正門まで遠いんだよな……)

P「……」

P(静か、だよな。ここ)

P「……?」

P(通り過ぎようとした個室の扉が、なぜか気になった)

P(正確には、扉の横――うっすらと、文字列のようなものが見えた気がした)

P「落書き……なのか? でも、読めないな……外国語だろうけど、英語じゃないよな」

P(英語でなくても、メジャーな外国語なら何語かぐらいわかるのに、それでもさっぱりだった)

P「アイ……ド……リ?」

P(そんなふうに俺が落書きを凝視していると、看護師に声をかけられてしまった)

P(落書きを見ていたことを話すと、どうやらその看護師は例の落書きを拭いて消すために洗剤と雑巾を持ってきたのだと言う)

P(結局、誰かのいたずらだったという結論に2人はたどり着き、その場を後にした)
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/13(日) 22:07:54.05 ID:UZX7kixFO
〜事務所〜

P(病院帰りに顔を出そうと思って来てみたけど、はづきさんしかいなかった)

P(社長はテレビ関係のお偉いさんとの話し合いでいないらしく、ストレイライトの3人はラジオの収録があるのだという)

P「スケジュール表は……、と。あった」

P「3人はもう帰ってくる頃か」

P「待ってみようかな」


冬優子「お疲れ様でーす」

P「おっ、冬優子じゃないか」

冬優子「……って、あんた、来てたんだ」

P「まあな。退院したから、家に帰るついでに顔出してみようと思ってさ」

P「愛依とあさひは一緒じゃないのか?」

冬優子「愛依なら夕飯の当番とかで急いで帰ったわよ」

冬優子「あさひは武装商店見つけるやいなや飛び込んで行ったわね。夢中になってこっちの言葉に耳貸さないから置いてきたわ」

P「置いてきたってな……」

冬優子「悪かったわね」

P「なにが?」

冬優子「愛依でもあさひでもなくて、ここに来たのがふゆで」

冬優子「別にあんたがいるかもと思って会いに来たわけじゃ……ない……んだから」ボソッ

P「ははっ、そんなことないぞ。会えて嬉しいよ」

冬優子「なっ、何言ってんだか!」

P「あと、ありがとうな。お見舞いに来てくれて」

P「改めてお礼を言わせてくれ」

冬優子「お礼はいいから、……これからもちゃんと気を抜かずにプロデュースしなさいよね」

P「ああ! これからもよろしくな」

P「……そうだ。あれから、あさひはどんな感じだ?」

冬優子「あの中学生ならいつも通りよ。ほんと、あれはなんだったんだって思うわ」

P「そうか……」
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/13(日) 22:49:10.00 ID:UZX7kixFO
冬優子「あっ、そうだ」ガサゴソ

冬優子「はい、これ」

P「これ……『魔女っ娘アイドルミラクル♡ミラージュ』の……」

冬優子「そ。円盤」

冬優子「言ったでしょ。ふゆが貸してあげるって」

冬優子「かばんが重くなるから、とりあえず今日はこれだけ貸しておくわ」

P「ありがとう、冬優子。楽しみだよ」

冬優子「……ふふ」ニコ

冬優子「ええ! 超面白いから、期待してなさい!」

P「そうだな……うん。このキャラの絶対領域、これは期待できる」

冬優子「ちょっ、あんたね……!」

P「何か問題でも?」

冬優子「開き直ってんじゃないわよ。いい? 視野を広く持つこと! それぞれのキャラが特別でキラキラしてて、魅力的で――」

冬優子「――そんなアイドルの女の子たちがみんなで力を合わせてもっとキラキラするところに本質があるの!」

冬優子「そんな局所的な見方はやめて、大域的に考えるのよ!」

冬優子「も……もちろん? まあ、みんな可愛いから? なんて言うか、そういう……その……ゴニョゴニョ」

冬優子「とにかく! 劣情禁止! わかった?」

P「わからない」

冬優子「なんでよ!!」

P「冬優子……お前は1つ大切なことを忘れている」

冬優子「なによ、初心者のくせに偉そうに言ってくれるじゃない」

P「確かに俺はこの作品の初心者ではあるが、作品のキャラに注目する上で普遍的なことがあるはず……そうだろう?」

冬優子「……どういうことよ」

P「大域的なものは局所的なものの集積だということを……!」

P「キャラ1人1人の一部を見ていき、その1つ1つを評価していくことで全体像――キャラの魅力というものが推し量れるんだ!」

冬優子「あー、頭痛くなってきたわ」

P「全体像を正確に見るには、その一部を詳細に把握することが重要なんだよ……」

冬優子「で、結論は?」

P「絶対領域が好きで何が悪いんだ」

冬優子「絶対領域が好きなのは悪くないけど、自分のプロデュースしてる未成年アイドルの前でそれを語ることは悪いことね」

P「この社会は……寛容じゃないんだな……」

冬優子「社会人にもなって自分の趣味全開で暴走するやつには、そりゃ優しくないわね」

P「易しくもない……人生ハードゲームという感じだ」

P「冬優子……悪いのは俺じゃなくてこの社会なんじゃないか?」

冬優子「…………はああぁぁぁ…………」

P「どうしたんだ冬優子、なんかのモンスターみたいだぞ」

冬優子「モンスターって……あんたのほうが十分危険な存在よ」

P「そうだ。ひょっとして……うん。俺が社会をプロデュースしてやればいいのでは?」

冬優子「何言い出すのかと思えば……」

P「その後で言うんだよ」

冬優子「?」

P「よし、楽しく暮らせたな」

冬優子「やかましいわ」
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/13(日) 22:55:15.44 ID:UZX7kixFO
冬優子「って、もうこんな時間……」

冬優子「そろそろ帰るわ」

P「じゃあ送っていくよ――って、あ……」

P「今日は出勤しに来たわけじゃないの忘れてた……」

P(いつもの仕事モードで、つい車がある前提で話しちまった)

冬優子「ぷっ、あははっ」

冬優子「ほんと、仕事人間ね」

冬優子「でも……ありがと」

冬優子「じゃあ、さ。駅まで送って」

P「わ、わかった」
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/13(日) 23:35:47.74 ID:jXVW61C8O
>>365
お前は71以上のコンマ出るまで延々とやり直すって言いたいのか?
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/13(日) 23:36:35.14 ID:jXVW61C8O
>>365
お前は71以上のコンマ出るまで延々とやり直すって言いたいのか?
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/13(日) 23:37:02.51 ID:jXVW61C8O
ごば
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/13(日) 23:52:59.52 ID:UZX7kixFO
P「いや、しかし……」

P「暑いな……」

冬優子「しばらく外に出てなかったんだから、まあ、余計にそう感じるのかもね」

P「夜は涼しいもんじゃなかったのかよ……」

P「さっき自販機あったから、あの時に買っておけばよかったんだろうなぁ……」

P「そうすれば、いまこうして乾きに苦しむこともなかったのに……なんてな」

冬優子「……」

P「冬優子……? どうしたんだ?」

冬優子「あの時、ああしていたら――」

冬優子「――こんなことにはならないで、もっと良い結果になってたかもしれないのに」

冬優子「そう思うことって、あるわよね」

P「俺の飲み物のことなら心配しなくてもいいんだぞ? まあ、駅ももうすぐだしな」

冬優子「あんたはさ、そういうの、ないの?」

冬優子「今だって十分良い……でも、あのとき、もっとこうしていたら、こういう決断ができていれば……」

冬優子「今はもっと良くなってたかもしれないのに、って……そう思った経験」

P「……」

冬優子「変なこと言ってごめん。なんか、今のあんた見て、ふと思っちゃって」

P「いいさ。構わないよ」

P「そうだな……そりゃ、あの時もっと頑張ってたら――とか、あの時諦めなかったら――とか、そういう経験はたくさんあるよ」

P「「今だって十分いいけど、あの時こうしてたら、今はもっと良くなってたかもしれないのに」……か」

P「今が十分いいなら大丈夫だよ。明日を、来週を、来年を、数年後を、そしてもっと先の未来をも良くするために――」

P「――今この瞬間から、これからを大切に歩んでいけば、きっと後悔なんてしないし、どうどうと胸を張っていける」

P「俺はそう思うよ」

P「自分で自分を肯定してやれるだけで、いろいろと楽になるんじゃないか?」

冬優子「そっか……そうよね」

P「そうだとも」

P「あの時ああしていれば、こうだったのに――なんてのは中学で勉強する英語の仮定法の例文で十分だよ」

P「過去は大切だし忘れちゃいけないようなものだってある。でも、常に向き合っているのは過去ではなく――」

P「――今から続いている未来だよ」

冬優子「……話したら楽になったわ」

冬優子「はぁ……ふゆの弱さ、見せすぎてるわね、ほんと」ボソッ

P「え?」

冬優子「なんでもないわよ」

P「見せすぎてる……だと? 絶対領域なのに見せすぎって空事象じゃないのか……? いや、あるいは……」

冬優子「なんでそこだけ聞こえてんのよ!」

冬優子「もうっ、締まんないだから……」

冬優子「……ふふっ」

冬優子「ばーか」ニコッ
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/13(日) 23:54:11.80 ID:UZX7kixFO
とりあえずここまで。
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/13(日) 23:55:20.32 ID:cPSY4cIQo
おつおつ
ほんと上手いなふゆと冬優子
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/14(月) 00:50:22.70 ID:DhU/V5IbO
>>63 訂正:
P「易しくもない……人生ハードゲームという感じだ」
→P「易しくもない……人生は高難度ゲー、という感じだ」
※P「易しくもない……人生ハードモードという感じだ」と打とうとして生じた誤植なのですが、直しても微妙なものに見えたので、少し変えました。


>>68 訂正:
冬優子「なんでそこだけ聞こえてんのよ!」

冬優子「もうっ、締まんないだから……」



冬優子「なんでそこだけ聞こえてんのよ!」

冬優子「っていうかふゆの絶対領域の話じゃないから! いい加減その話題から離れなさいよね」

冬優子「もうっ、締まんないだから……」

※セリフ1つ入れ忘れました。
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/17(木) 19:59:26.95 ID:hITll6Xv0
〜事務所〜

P「こんにちはー……」

P(今日は営業だったけど……懇意にしてもらっているとはいえ苦手なんだよなぁあの人……)

P(とても疲れた……)

P(まだ仕事残ってるけど、少し休んでからでもいい――よな?)

P「はづきさん――は、いない……か」

P(そういえば今日ははづきさんのオフだったっけ)

P「誰もいないのか?」

P(ソファーで横になるかな……少し、少しだけだから……)

P「これ……アイマスクか」

P(はづきさんが使ってたやつだよな。勝手に使ったら怒られるかなぁ)

P(まあ、バレなきゃいいか?)

P「おやすみなさい……」

P(アイマスクをつけてからソファーで横になり、しばしの間、仮眠をとることにした)
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/17(木) 20:27:20.69 ID:hITll6Xv0
「あ……え、えっと……」

――普段とは違う視点。

「きょ……今日は……えと……」

――他の人たちは下からこっちを見ている。

「あ、ありが……と」

――うちは……何を見てんの?

「……」

――見渡す限りの眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼。


P「うわあぁぁっ!?!?」ガバッ

「わっ!? びくった……」

P「っ!? く、暗い! 目の前が真っ暗だ!!」

「ちょ、落ち着きなって」

P「だ、だって目が覚めたはずなのに何も見えないんだ!」

「アイマスクしてるからっしょ。ほれ――」パッ

P「――あ」

P「っ、まぶしい……」

「……もう」

愛依「プロデューサーって、案外、天然……ってヤツ?」

P「そ、そうなのかな……」

愛依「それか、疲れてんじゃない? ちょうど今まで寝てたわけだし」

P「まあ、確かに疲れたから仮眠を取ってたけど」

P「愛依はどうして事務所に?」

愛依「レッスン終わってから暇でさ。今日はうち1人でだったし、友だちは都合悪いしで――」

愛依「――なんとなくここ来てみたってコト」

P「そうか」

P「……というか、なんか変じゃないか?」

愛依「変って、何が?」

P「俺は愛依がいないときからソファーで寝てたけど」

P「愛依はいまソファーにいるよな」

愛依「そだね」

P「俺がソファーを独占してる形だったのにそれはおかしくないか?」

愛依「だって、事務所来てからプロデューサーが起きるまで膝枕してあげてたかんね」

P「膝枕か……なるほど」

P「って、膝枕と言ったか!?」

愛依「言ったけど……」

P「ものすごいスキンシップをとってしまった……プロデューサーとアイドルなのに……」

愛依「まあ、他の人に見られてないし、大丈夫じゃん?」

愛依「プロデューサー、ソファーで寝苦しそうにしてたからさ」

愛依「うち、寝かしつけるのちょー得意だから」

愛依「他に誰もいなかったし、膝枕でもしてあげようかなーって」

愛依「もしかして……嫌――だった?」

P「いや、そんなことはないぞ。ありがとう」
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/17(木) 20:48:27.63 ID:hITll6Xv0
P(よく眠れた――と言って良いのだろうか)

P(妙な夢を見た。自分の経験ではない、誰かの見た光景の夢……)

愛依「プロデューサー?」

P(まさか、な)

P「愛依の膝のおかげで残りの仕事も頑張れそうだよ」

P「ありがとう」

愛依「ばっ!? ……ひ、膝のお陰とか、わけわかんないし」

愛依「まあ、疲れが取れたならいっかな」

愛依「うちさ、スーツのままソファで寝苦しそうにして横になってるプロデューサー見て思ったんだよね」

愛依「うちがいつもすっごく楽しいのは、プロデューサーのお陰で」

愛依「プロデューサーが連れてきてくれたアイドルの世界で、あさひちゃんと冬優子ちゃんに会って」

愛依「うちのアレなところ、プロデューサーはアイドルとしてのキャラってことで形にしてくれて」

愛依「ほんと、感謝してもしきれないんじゃねって……」

愛依「プロデューサーはうちにいろいろしてくれる――」

愛依「――けど、うちがプロデューサーにしてあげられてることなんて、ない……」

愛依「だからさ、まあ、なんての? 貢献ってやつ?」

愛依「何言ってんだろうね、うち。はは……」

愛依「でも、何かしてあげたかったからさ」

P「愛依……」

P(いつもは明るくおおらかな愛依が――表情を暗くしていく)

P「別に気にすることなんてないぞ。貸し借りでプロデュースやってるんじゃないんだ」

P「それに、愛依が俺のプロデュースするアイドルでいてくれれば、それでいいよ」

愛依「……プロデューサーは優しいよね」

愛依「でも、駄目なんだよね。それじゃうちが納得いかないから」

愛依「だって、だって……さ」

愛依「うちが楽しく過ごせば過ごすほど、プロデューサーが……」グスッ

愛依「どんどん……疲れて、苦労しちゃうみたいで……」ポロポロ

愛依「そんなの、うちはやだよ……!」

P「あの、愛依……」

愛依「うちにはそう見えてんの! それが……うちは……」

P「……愛依は、俺にどうして欲しいんだ?」

P「プロデューサーとして、アイドルのためなら苦労だって疲労だって耐えてみせるくらいの気持ちではあるさ」

P「それでも、愛依がそんな俺を見るのが辛いっていうなら」

P「愛依がどうして欲しいか、聞かせてくれ」
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/17(木) 23:15:47.74 ID:cvyn3jfSO
愛依「……」

愛依「うちがプロデューサーにどうして欲しいか……」

P「今すぐに聞かせてもらえなくてもいい。愛依なりに言葉にできるようになったらでいい」

愛依「……うん」

愛依「わかった。そうする」

愛依「あー! 暗いのやめやめ! らしくないよね、こういうの」

P「愛依は普段通りなのがいいよ。そのほうが俺は安心する」

P「アイドルとしてクールなキャラを演じてる愛依もいいけど、俺がアイドルにしたいって思ったのは、自然体の和泉愛依って女の子だからさ」

愛依「そ、そういう言い方されると……照れる」

愛依「……さっきも言ったけど、さ」

愛依「毎日がすっごく楽しいんだよね」

愛依「ほんとに、楽しいんだ……」

愛依「でさー、なんか思ったんだよね」

愛依「楽しい――よりもすごい、それ以上のことってなんなんだろーなって」

愛依「で、まあ、頭良くないけどうちなりに考えて……」

愛依「それって、しあわせっていうんじゃないかなって」

愛依「前にさ、一緒に買い物行ったじゃん?」

P「ああ。ショッピングモールに行ったよな」

P「愛依に服を選んでもらった」

愛依「そそ。そんときね」

愛依「親子3人で仲良しの人たちを見て……あの人たちはきっとしあわせなんだろうなって思った」

愛依「それを思い出したときに、しあわせって楽しいだけじゃないのかなって」

愛依「もっと、楽しい以外の何かが必要なのかなって」

愛依「そんな気がしたんだよね〜」

P「楽しい以外の何か、か……」
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/17(木) 23:48:54.07 ID:cvyn3jfSO
P「愛依の考えたことは、きっとそう簡単に解決する話ではないのかもしれない」

P「幸せが何なのか――それは、たぶん俺にもよくわからないから」

P「でも……そうだな」

P「幸せっていうのは、どんなに頑張っても1人では掴めないんじゃないかって思う」

愛依「2人いればいいってこと?」

P「2人以上、かな。3人でもいい。俺と愛依が見た家族は3人だっただろ」

愛依「あ、確かに」

P「2人でも幸せになれると思うけどね。大雑把に言えば、重要なのは、まずは1人じゃないってことだと思うんだ」

P「そして……自分が1人と思わないこと」

P「自分が……独りだと思わないことだ」

P「絆のないところに、幸せは生まれないと思う」

P「って、わかってないくせに何語ってるんだろうな、俺は」

愛依「ううん。プロデューサーの言ってること、なんとなくだけどわかるかも」

愛依「いまでもさ、ステージであがっちゃうの、克服できてないけど」

愛依「原因は昔のことだとしても、いま治せてないのは、うちがステージで1人だと思ってたからなのかもなーって」

愛依「だってさ、何も敵に囲まれたとかじゃないじゃん? やばい場所に置いてけぼりにされたとかでもないし」

愛依「うちには……ファンも、あさひちゃんと冬優子ちゃんも、なによりプロデューサーがいるのにさ」

愛依「……よし、決めたっ!」

愛依「楽しい以上の何か――目指してみるわ」

愛依「あと、しあわせにも、なってみたい……いつかね」ボソッ

愛依「今日はありがとね。プロデューサーのおかげで元気出た!」

愛依「うちがプロデューサーを癒してあげたかったんだけど〜……やっぱプロデューサーには敵わないな〜」

P「愛依が元気になったなら良かったよ」

P「俺はプロデューサーなんだ。アイドルのために頑張るのは、当然のことなんだよ」

P「……」

P「……って、何か忘れてるような気がするな」

愛依「そういえばプロデューサーさ、ずっと寝てたけど、仕事は大丈夫なん?」

P「……それだ」

P「タイマー設定しないで寝たからだ……! い、今何時――ってもうこんな時間か!?」

愛依「結構やばい感じ?」

P「とりあえず徹夜しないと駄目みたいだ……」

愛依「そっか〜〜……」

愛依「じゃあ、うちも事務所泊まる!」

P「いやいや、そういうわけにはいかないだろう」

愛依「今日は大丈夫! うち以外は全員家いるから」

愛依「友だちの家泊まったことにしておくから、ね?」

愛依「夜食も作ってあげるし、うちでも手伝えることがあればお仕事も助けるし、疲れたらまた膝枕してあげるしさー」

愛依「ねね、悪くないっしょ? うちさ〜、今日は帰ったってたぶん楽しくないし、明日1日オフなんだよね〜」

P「はぁ……。駄目って行っても帰らないんだろうなぁ……」

愛依 ジーッ

P「……他の人には絶対に内緒だからな」

愛依「やったね。テンションあがる〜」アハハ

愛依「そんじゃ、ま、頑張ってこ〜」
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/17(木) 23:49:39.05 ID:cvyn3jfSO
とりあえずここまで。
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/17(木) 23:54:38.99 ID:MY8bT3n0o
おつおつ
ええ子や……
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/24(木) 19:37:26.78 ID:fhkxREW7o
待ってる
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/25(金) 03:21:31.52 ID:b3DzZl5pO
>>1です。

>>79 ありがとうございます。

前作(noctchill編)でも時々ありましたが、忙しさゆえに時間が取れず、更新が滞ることがあります。お話自体は出来上がっているので、今後も読んだいただける方は待ってくださると嬉しいです。
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/25(金) 07:32:27.52 ID:Zodp5AGEo
りょーかい
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/26(土) 00:45:10.94 ID:ajgReNLiO
数日後。

〜事務所〜

P カタカタ

冬優子 ポチポチ

あさひ ポチポチ

冬優子 ポチポチ

あさひ「!」

あさひ「冬優子ちゃん!」

冬優子「うわっ、びっくりした……」

冬優子「あんたね……いきなり驚かさないでくれる?」

あさひ「ちょうどわたしもスマホ持ってるんすよ!」

冬優子「だから?」

あさひ「最近始めた対戦ゲームがあって、それを一緒にやって欲しいっす!」

冬優子「めんど……」ボソッ

冬優子「あのねえ、ふゆはふゆでスマホ使ってやってることがあんのよ」

冬優子「今は付き合ってられないの」

あさひ「そうっすか……」

愛依「まぁまぁ、あさひちゃん、それならそのゲーム、うちとやらない?」

あさひ「いいんすか!?」

愛依「ちょうど暇だったし、いいよー」

あさひ「やったっすー!」

P(今日は午前中にレッスンで午後は休みだというのに、どこかに遊びに行く様子もなく事務所でリラックス、か)

P(まあ、あいつらにとってここが居心地の良い場所になってるなら、いいのかな)

はづき「あ、プロデューサーさん」

P「はづきさん――どうしました?」

はづき「ちょっと今いいですかー?」

P「あ、はい。大丈夫です」
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/26(土) 00:57:59.48 ID:ajgReNLiO
はづき「こういうプロジェクトがありまして……」ガサゴソ

はづき「はい、これが資料ですー」

P「ありがとうございます……」

はづき「……」

P「……」ペラッ


P「アイドルユニットのメンバーが1人でどれだけ輝けるのか――ですか」

はづき「そうなんです」

はづき「この大会は、言うなればW.I.N.G.のソロバージョンって感じでしょうか」

はづき「ただし、出場の条件として、普段は主にユニットで活動しているアイドルが1人で出ること――があります」

P「あえてそうすることで、ユニットとしての活動は個々のウィークポイントを隠すための手段ではないことを示せ――と言われているような気分ですね」

P「直接そう書かれているわけでも言われたわけでもないですが」

はづき「はい……」

はづき「この283プロダクションにも声がかかってまして、それでプロデューサーさんにお伝えした次第です」

P「……」

P「出ない、という選択肢はあるんでしょうか」

はづき「その選択肢は存在しているけども与えられていない、と言えば良いのか……」

はづき「最終的な判断はプロデューサーさんが下すことになります」

はづき「私から何か言うつもりはありません」

はづき「……プロデューサーさんの決めたことを、全力でサポートしますよー」

P「……」

P「わかりました」

P「あいつらと話してきます」
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/26(土) 01:16:46.75 ID:ajgReNLiO
P「3人とも、少し、いいか?」

冬優子・あさひ・愛依「?」

P「実は――」


P「――というわけなんだ」

P「だから……」

P「……」

愛依「?」

冬優子「何よ、らしくないじゃない」

冬優子「要するに、その大会にふゆたち3人の中の誰か1人が出るってことなんでしょ」

冬優子「……っ」

愛依「あの、さ……2人ともなんでそんな深刻そうなん?」

愛依「W.I.N.G.の1人ヴァージョンってこと――だよね?」

冬優子「それだけじゃないわ……!」

冬優子「この大会に出れば、1人でユニットの何もかもを背負うのよ」

冬優子「プロデューサーも言ってたでしょ、普段ユニットで活動してるアイドルが1人で出るんだ、って」

冬優子「勝てば天国負ければ地獄とはこのことよ」

愛依「そ、そっか……そだよねー……」

愛依「なんか……ごめん」

愛依「でも、それならあさひちゃんが出れば――」

冬優子「――わかってんのよ!」

愛依「っ!?」ビクッ

冬優子「わかって……るのよ」プルプル

冬優子「そうだけど……そんなの悔しいじゃない……!」

冬優子「これはふゆにとってチャンスでもあるのよ」ボソッ

冬優子「……ごめん。愛依にあたってもなんにもならないのにね」

冬優子「ごめん……」

愛依「いや、うちもあんま考えなしにしゃべってたし……」

P「まずは落ち着いてくれ」

P「俺は、誰が出ても構わないと思っている」

P「誰が出ようと、俺が勝たせてやるまでだ……」

P(愛依は冬優子に事の深刻さを知らされて若干ビビッちまってるな)

P(でも、愛依だって勝てる可能性は十分にあるんだ)

P(才能という意味では、確かにあさひは最強だろう)

P(それでも、あさひは完璧じゃない――完璧であろうとしていたのだとしても)

P(冬優子は――これを自分がのし上がるチャンスだと思っている)

P(だが、それは同時に、高いリスクを孕んでいる。それを冬優子はよくわかっているんだ)

P(だから、冬優子は「出たい」とは口に出せていない……)

P(あさひは特に意見なし、か……)

P「あさひ。お前はどう思う? 出たいか?」

あさひ「どっちでもいいっすかね。面白ければ出たいかもしれないっす」

冬優子「っ……!」グッ

愛依 アワアワ
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/26(土) 01:21:08.13 ID:vTb+QeTIO
うわあ重そうな話だ…
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/26(土) 01:29:19.04 ID:ajgReNLiO
P(3人の話し合いで決めさせるのは無理かもしれないな……)


P『誰が出ようと、俺が勝たせてやるまでだ……』


P(ははっ、随分と強く出たもんだな、俺)

P(でも、その気持ちがあるのは本当だ)

P(俺は、ストレイライトのプロデューサーとして、あいつらを必ず輝かせなければならない……!)

P(……)

P(一応、聞いてみるか)

P「どうだ? 誰が出るとか、決まりそうか?」

冬優子「……」

あさひ スンッ

愛依「……」

P「俺が、決めてもいいのか?」

冬優子「ふゆはあんたの決定に背かないわよ」

愛依「うちも……選ばれたら……その、ちょー頑張る」

愛依「あはは……なんかうまく言えなかったけど、でも――

愛依「――そのときは絶対勝つから」

P「あさひはどうだ?」

あさひ「プロデューサーさんにまかせるっすよ」

P「わかった」

P「俺は……」


1.愛依を選ぶ。
2.冬優子を選ぶ。
3.――この選択肢はロックされています―― 

選択肢↓2(いま選べるのは1.か2.です)
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/26(土) 01:31:06.45 ID:UFX7QFbx0
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/26(土) 01:31:30.92 ID:vTb+QeTIO
2
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/26(土) 01:55:44.85 ID:Q0S0sXW9o
やはり、あさひ…か?
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/26(土) 02:04:25.02 ID:UFX7QFbx0
愛依だけは無害だろうなあと信じられる
冬優子は、割と微妙
あさひは真っ黒
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/26(土) 02:06:50.72 ID:IEeppdbDO
久々にロック情報を見たよ

さぁ、運命スタート
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/26(土) 02:34:28.62 ID:8+gcnYsAO
P「……冬優子」

冬優子「!」

P「出てみないか」

冬優子「そう……ふゆを選ぶのね」

P「強制はしないよ」

冬優子「別に出るのが嫌ってわけじゃないのよ」

冬優子「むしろ……ありがとう、というか……」ボソッ

冬優子「とにかく、あんたのこと、信じてるから」

冬優子「信じさせて……」

冬優子「ふゆも――死力を尽くすわ」

P「ああ、一緒に頑張っていこう」

愛依「うち、全力で応援するから……だから!」

愛依「……って、なんからしくないよね、こんなの」

冬優子「アイドルとしての愛依なら、別にらしいって言ってもいいんじゃない?」

愛依「ううん。いまのうちは、本当のうちとしても冬優子ちゃんのことと向き合いたいから」

愛依「だから、……うん。さくっと勝ってきてー!」

冬優子「はいはい。ご期待に添えるよう頑張るわ」

あさひ「……」

P(あさひは無言か……まあ、あさひのことだから、本当に気に留めていないのかもしれない)

P「いままで通りにユニットとしての活動も普通にあるからな」

P「冬優子は大会に向けてユニットとは別のスケジュールも組むことになるが……」

P「……ストレイライトは何も変わらないさ」

P「いつだって、お前らが一番だよ」

冬優子「もうっ、かっこつけちゃって……」
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/26(土) 02:53:04.68 ID:8+gcnYsAO
数十分後。

P(あれから、自然に3人は、今日は解散、という流れになった)

P(冬優子だけが事務所に残った――まあ、残ってくれたほうがこちらとしては都合が良いけども)

P「冬優子、ちょっといいか」

冬優子「……奇遇ね」

冬優子「ふゆも、ちょうどあんたに話があったのよ」

P「そうか。それなら良かった」

P(社長は――今日は不在だ。はづきさんは仕事をしている)

P「よし、場所を変えよう」


P「って言っても、倉庫だけどな」

冬優子「きゃー♪ ふゆったら、プロデューサーと密室で2人きりでドキドキしちゃってます……!」

冬優子「……っていうのはまあいいとして」

P(いいのか……)

冬優子「あんたからでいいわよ」

P「ああ……」

P「決して易しい道ではない――いや、はっきりいって厳しい道だ」

P「それは、お前があさひじゃないからではない」

P「あさひだって、簡単にクリアできるものではないんだ、今回のは」

P「それでも、俺は冬優子と勝ちたい」

P「勝って……ストレイライトは単なるアイドルユニットを超える価値があるってこと、証明したいんだ」

P「俺のエゴがないわけじゃない……それでも」

P「冬優子と証明したい」

冬優子「……」

冬優子「……はぁ」

冬優子「あんた、なに当たり前のこと言ってんの」

冬優子「当然でしょ、そんなの」

冬優子「それに、あんたのエゴじゃないわよ」

冬優子「……じゃ、ふゆの番ね」

冬優子「これは、ふゆにとってのチャンスなの」

冬優子「負けは許されない……それでも、勝てばふゆはもっとアイドルとして輝くことができる……!」

冬優子「あいつにだって、負けない……!」

冬優子「だから、お願い」

冬優子「ふゆを勝たせて」

冬優子「あんたのしたいこと、ふゆに叶えさせて」

冬優子「それが、言いたかったことよ」
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/26(土) 02:57:43.61 ID:8+gcnYsAO
P「ストレイライトの全部を背負うことになるって、冬優子は言ったよな」

P「確かにその通りだ。だけど……」

P「冬優子にはそれができる」

P「いや、冬優子だからできるのかもしれない」

P「俺は、ストレイライトのために、愛依でもあさひでもなく、冬優子を選んだんだ」

冬優子「……そ」

冬優子「ま、これくらい乗り超えてみせるわよ」

冬優子「ううん。乗り超えられるの」

冬優子「あんたがいてくれるから、ね」ニコッ
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/26(土) 02:58:09.51 ID:8+gcnYsAO
とりあえずここまで。
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/26(土) 03:06:25.37 ID:UFX7QFbx0
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/26(土) 03:11:09.79 ID:Q0S0sXW9o
おつー
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/29(火) 00:40:19.14 ID:MhITpKdNO
1ヵ月後。

〜大会 予選会場〜

P(最初の予選の日がやってきた)

P(参加登録しているアイドルは実におよそ1500名だという)

P(この大会は3回の予選と1回の決勝で構成されている)

P(まず、1回目の予選で参加登録したアイドルたちがランダムに4つのグループに振り分けられる)

P(各グループにおける上位20%が2回目の予選に進むことができる)

P(2回目の予選では、残ったアイドルたちが再びランダムに4つのグループに振る分けられ、やはり各グループの上位20%が次に進むことになる)

P(3回目も同様だ)

P(最後の決勝では、それまでの審査員に加えて大御所をゲストに迎えたメンバーによって優勝と準優勝が決定される)

P「……」

P(最初の予選に向けて、冬優子はこれまで以上にレッスンや自主練・自主トレに励むようになった)

P(無理をしないか心配だったが……いまのところは大丈夫そうだな)

P(愛依は冬優子を応援したり精神的なケアをしたりしてくれた)

P(冬優子もそれにかなり救われていたようだ)

P(あさひは……まあ、相変わらずだが、やはりその天才としての努力やパフォーマンスは本物で――)

P(――冬優子は、それを今まで以上によく見ていると思う。才能への嫉妬や力量の差による悔しさだけではなく、自分が成長するための参考にしようと懸命になっているんだ)

P(ストレイライトは、確実にユニットとしての成長を見せている)

P(あとは……この大会で結果を残して、ユニットがごまかしのための在り方でないことを証明すれば……)

P(俺も、胸を張っていかないとな)

P(あいつらが一番頑張ってるんだから)

P「……お」

P(1回目の予選のグループ分けの番号が発表になった)

P「グループ3だってさ、冬優子」

冬優子「そ……まあ、どうだっていいわ」

冬優子「勝ち残って、結果を残すだけなんだし」

P「ははっ……そうだな」

冬優子「そろそろ控え室に行くわ」

P「まだ、スタンバイまでは時間あるぞ?」

冬優子「……ううん。いいの」

冬優子「ふゆにかかれば、1回目の予選なんて余裕よ」

冬優子「そのための努力をしてきたんじゃない……」ボソッ

冬優子「だから、あんたはただ、ふゆが出てくるのを待って、ふゆが歌って踊るのを見て、ふゆが勝ち残るのを見届ければいいのよ」

冬優子「それとも、自分のアイドルが信じられないの?」

P「……そんなわけ、ない」

P「わかった」

P「帰りの車で土産話が聞けるのを楽しみにしておくよ」

P「それでさ、勝ち残ってテンション上がったまま話すんだ」

P「だから……行ってこい、冬優子」

冬優子「ふふっ……ええ!」
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/29(火) 00:52:40.51 ID:MhITpKdNO
〜グループ3 控え室(大部屋1)〜

冬優子(まだ、あんまり人がいないわね)

冬優子(かえって好都合かも……今のうちにリラックスしておこうかしら)

冬優子「ふぅ……」

冬優子(勝ち残るのを見届ければいい……か)

冬優子(自分のアイドルが信じられないのか、とも言ったわね)

冬優子(あいつが、そう言われたらそれ以上何も言ってこれないのわかってて……)

冬優子「……」

冬優子(ふゆだって不安よ)

冬優子(これまでにないくらい練習もトレーニングもした。それなのに――)

冬優子(――あいつには、まだまだ、全く及ばない……!)

冬優子(あいつを今まで以上に観察して、その才能の一部でもふゆのものにしちゃえって思ったのにね)

冬優子(見れば見るほど天才というものを思い知らされるだけじゃないの)

冬優子(あんなやつが他にいたとしたら、ふゆは勝ち残っていけるの……?)

冬優子(そうやって思わないわけ……ないじゃない)

冬優子(怖い……)

冬優子(ふゆを支えてくれた愛依にあわせる顔がないような結果になることが怖い)

冬優子(あさひの才能が頭をよぎって恐れるあまりに身体が動かなくなることが怖い)

冬優子(なにより――)

冬優子(――プロデューサーを、裏切るようなアイドルになってしまうんじゃないかって……それが一番怖い)

冬優子「?」

ヒグッ、グスッ、ウウッ

冬優子「……」

冬優子(そうよね。泣く子、いるわよね)

冬優子(泣きたい子だってたくさんいるはず)

冬優子(ふゆは……どうなんだろう)

冬優子「泣けたら……楽なのかしら」ボソッ
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/29(火) 01:10:27.28 ID:MhITpKdNO
数十分後。

冬優子(しばらく楽にしてたけど、なんか時間が経つと逆に落ち着かなくなってくる……)

冬優子(何気なく控え室を出てうろうろしてるけど、特に目的があるわけじゃないのよね)

モウヒカエシツイッタホウガイインジャナイカ?

ウッサイ……ベツニマダジカンアルデショ

冬優子(なんか、プロデューサーと揉めてるアイドルがいるわね)

ア、オイ!

ハァ……ナニカ?

オマエナラカテル! ソレガイイタカッタ

ソウデスカ、デハ

冬優子(あの子、こっちに向かってきたわ)

冬優子(この方向って……ふゆが来た道――グループ3の控え室の方向だわ)

冬優子(同じグループなのかしら)

冬優子(……まあ、別に気にすることないじゃない)

冬優子(いまは自分のことを考えるのよ、ふゆ……)

冬優子「あ、自販機……」

冬優子(何買おうかしら)
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/29(火) 01:36:34.93 ID:MhITpKdNO
〜グループ3 控え室(大部屋1)入り口付近〜

冬優子(結局、水を1本買って戻ってきたわ)

ウーン

冬優子(あれ? さっきの子……)

冬優子(どの部屋に入ればいいのか、わからないのかしら)

冬優子(同じグループでもいくつか部屋が分かれてるし)

冬優子「あのー……大丈夫、ですか?」

「あ……」

冬優子「結構分かりづらいですよね〜同じグループでも、さらに部屋がわかれてますし」

「はい……。すみません、私、これなんですけど」

冬優子「……これは、ふゆと同じ部屋ですねっ」

「あ、そうなんだ」

冬優子「それなら話がはやくてよかった〜。じゃあ、ふゆについてきて下さいね」

「ありがとうございます」


〜グループ3 控え室(大部屋1)〜

冬優子「はいっ、ついた〜っと」

冬優子「あ、自己紹介がまだでしたよね」

冬優子「283プロの黛冬優子です! よろしくね、……えーと」

「……マドカ」

冬優子「マドカちゃんっていうのね」

マドカ「別に覚えなくていいですよ」

冬優子「どうして?」

マドカ「どうせ私は負けるし、今後会うこともないかもしれないので」

冬優子「そ、そんなこと言わないでよ〜」

マドカ「……」

冬優子「アイドル、楽しくないんですか?」

マドカ「別に」

冬優子「別にって……」

マドカ「プロデューサーが勝手に盛り上がってるだけ」

マドカ「だから、私は別に……」

冬優子「そ、そっか……なんかごめんね? ふゆ、余計なこと聞いちゃったかも」

マドカ「気にしないでください」

マドカ「では、私は向こうのほうで適当に過ごしてるので」

マドカ「部屋、教えてくれてありがとうございました」

マドカ「さよなら」

冬優子「うん……ばいばい」
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/29(火) 01:51:30.84 ID:MhITpKdNO
冬優子(なんだったのかしら、あの子)

冬優子(無理やりアイドルにされたとか、そういうことなの……?)

冬優子(負けることしか頭にないみたいだったわね)

冬優子(ふゆは、勝つことしか頭にないっていうのに)

冬優子「……」

冬優子 パンッ

冬優子(他人のことなんて気にしてる場合じゃない、か)

冬優子(イメトレでもしようかしら)


冬優子(なかなか出番にならないわね……イライラしてきたわ)

冬優子(緊張とかどうでもよくなってきたかも……)

冬優子(人がたくさんいる大部屋だと息苦しい……外に出て気分転換でもしよ……)
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/29(火) 02:05:55.24 ID:MhITpKdNO
〜グループ3 控え室付近廊下〜

冬優子(外の空気で深呼吸したらだいぶ楽になったわ)

冬優子(あの部屋に居続けても良くなさそうね)

冬優子(出番までは……あと1時間か)

冬優子(どっか軽く振り付けの練習でもできるスペースはないのかしら)

ンダトコラァッ

冬優子「!?」

冬優子(ど、怒号……よね、今の)

冬優子 ソローッ

「あんたさっきから何? 舐めてんの?」

マドカ「そんなんじゃ、ありませんが」

マドカ「離してくれませんか。私なんかに構ってたら時間がもったいないんじゃないですか?」

「っ……!」

「あんたさ、さっきの、もういっぺん言ってみなよ」

マドカ「あぁ……あれ」

マドカ「笑っておけば何とかなる――アイドルって楽な商売」

マドカ「たしか、そう言いました」

「このっ!」

マドカ「っ」

冬優子(まずいわね、あれ殴られるわ)

冬優子(どうする……? 助けにいくの?)

冬優子(今日初めて会ったようなアイドルを? それも――)


マドカ『笑っておけば何とかなる――アイドルって楽な商売』


冬優子「っ!」グッ

冬優子(――あんなこと、言う子……)


冬優子『ふゆ、みんなを笑顔にしたいです! ――とか言っておけば、好感度上がるでしょ?』


冬優子(……助けないといけないじゃない)

冬優子「あの〜」

「……誰」

冬優子「さすがにそうやって揉めてると問題になっちゃうんじゃないかな〜って、ふゆ、思うんですけど……」

「チッ……、なにあんた、チクろうっての?」

冬優子「そんなこと言ってないじゃないですか〜」

冬優子「でも、今日は大事な大会ですし、それ以外でエネルギー使うのは……それこそ後になってむかーっなりますよ」

冬優子「だから、どんな気持ちも自分の出番で爆発させちゃいましょうっ、ね?」

「ハァ……、こんなの助けても何にもならないわよ」

「まあ、私のためにもならないか」

「ほら、うせろよ。もう顔見せんな」バッ

マドカ「ぐっ」ドサッ

「……」スタスタ
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/29(火) 02:21:33.33 ID:MhITpKdNO
冬優子「マドカちゃん! ……大丈夫?」

マドカ「あの人の言う通り」

冬優子「え?」

マドカ「私を助けたって、何にもなりませんよ」

マドカ「自分の出番に出れても出れなくても負けるようなアイドルなんて、倍率を下げる効果を持ちませんし」

冬優子「……そんなんじゃ、ないよ」

マドカ「あなたも聞いたんでしょう。私の言ったこと」

マドカ「アイドル舐めてるんですよ、私は」

マドカ「あなただって、私に怒りを覚えてもいいはずなのに」

冬優子「ふゆね、マドカちゃんの思ってること、なんとなくわかっちゃうかもしれないんだ」

冬優子「ううん。ふゆが勝手にそう思ってるだけなのかも」

冬優子「アイドル舐めてたって意味じゃ、ふゆも人のこと、言えないから……」

マドカ「……」

冬優子「でも、ふゆは負けないよ」

冬優子「ふゆは勝ちに来たの。ふゆがふゆとしてアイドルやっていけてるって証明したいから」

冬優子「そう思わせてくれる人がいたんだ」

冬優子「ふゆのプロデューサーなんだけどね……あ、これは秘密だよ」

マドカ「プロデューサー、か……」

マドカ「いい人に巡り会えたんですね」

マドカ「……」

マドカ「私も、そんな風に思えたら……」

冬優子「それならマドカちゃんだって勝てるよ! さっきつっかかってきた人なんて相手にならないんじゃないかな」

冬優子「マドカちゃん可愛いし、ほら、もっと笑おう? ね?」

マドカ「なにそれ……わけわかんない」

冬優子「え〜、そんなことないよ〜」

マドカ「さっきの人の去り際くらい意味不明」

冬優子「?」

マドカ「だって、さっき私に怒ってた人、うせろって言ったのに自分から去って行ったから」

冬優子「ぶっ!」

マドカ「わっ」

冬優子「ご、ごめんね……あははははは!」

冬優子「あー、おかしい。はは……」

冬優子「マドカちゃんって面白いね」

マドカ「そんな風に言われたこと、ない」

冬優子「可愛くて面白いなんて反則だな〜、これはふゆのライバル……」

マドカ「もう、本当に何言って……」

マドカ「……あ、出番、あと少しだ」

冬優子「ああは言っても、出るんだよね?」

マドカ「出ないとプロデューサーも事務所もうるさいでしょうし、出たほうが身のため、くらいには」

冬優子「そっか。いってらっしゃい、マドカちゃん」

マドカ「……」スタスタ

冬優子「勝ったら……!」

冬優子「2人とも勝ったら、またお話しようね〜!」
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/29(火) 02:44:10.65 ID:MhITpKdNO
〜グループ3 控え室(大部屋1)〜

冬優子(なにやってんだろ)

冬優子(またお話しようね、か……)

冬優子(2人とも勝ったら……)

冬優子「よしっ」

冬優子(今度こそ集中集中。ふゆの出番まであと20分……確実に勝ち残るために、もう1回通しで振り返りよ)

冬優子 フリフリ

冬優子 キュッキュッ

冬優子 スタッ


予選終了後。

P「冬優子、お疲れ様」

冬優子「プロデューサー、ふゆの出番、ちゃんと見てた?」

P「当たり前だろ」

P「あれを見せられたら、心配なんて吹き飛んださ」

冬優子「なによ、やっぱり信じてなかったんじゃない」

P「信じてたよ。それでも、もしものことを全く考えないほど楽な思考してないんだ」

冬優子「……冗談よ。それでも信じてたって言わせたかっただけなんだから」

P「ははっ、そうか」

冬優子「結果発表までどのくらいあるの?」

P「予選はその日のうちに結果が出るからな……とはいえ、あと2時間くらいはある」

P「現地で結果を知ることもできるし、専用ページにログインして見ることもできる」

P「疲れてるんならもう車出すけど、どうする?」

冬優子「いいわ。ここで、自分の目で結果を見るから」

P「わかった。こんな場所だからテイクアウトになってすまんが、ほれ、夕飯だ」

冬優子「……ありがと」

P「とりあえず休もう。今は勝ち負けとか、これからのこととか、考えなくてもいいんだ」

P「飯食いながらどうでもいい話でもしてようぜ」

冬優子「それもそうね……あ、あそことか、テーブルと椅子があってちょうどいいんじゃない?」

P「だな」

冬優子「……」


P(2時間後、1回目の予選の結果が発表された)

P(冬優子は、無事通過できた)

P(結果を知ったときの冬優子は、声を震わせながら――)


冬優子『当然の結果よ』


P(――と言った)

P(とりあえず、最初の関門はクリアした)

P(この調子で勝ち進んで行こう)



――――第1回予選 グループ3 通過者一覧――――
………………… ………………… …………………
………………… 283プロ黛冬優子 …………………
………………… ---プロ マドカ …………………
………………… ………………… …………………
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/29(火) 02:44:50.30 ID:MhITpKdNO
とりあえずここまで。
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/29(火) 02:58:55.69 ID:cTSFepA30


円香出てくるとかワクワクしてきた
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/29(火) 07:18:43.24 ID:O23T+iVko
おつおつ
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/29(火) 11:59:33.75 ID:73UPMUXDO


意味不明でにこにーの嫁を思い出したがな
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/29(火) 17:04:17.24 ID:MhITpKdNO
1ヵ月後。

〜大会 予選会場〜

P(2回目の予選の日がやってきた)

P(1回目の予選を通過してから、冬優子のメンタルは安定しているようだ)

P(淡々と練習を重ね、今に至る――良い状態・状況なんだろう)

P(特に俺が口を挟むこともなかった)

P「……」

P(どこか……寂しさを感じているのだろうか、俺は)

P(冬優子が1人でもやっていけそうなくらいに立派になってしまうと、俺の出る幕はなくなるような気がして――)

P(――それは、喜ぶべきことのはずなのにな)

P「それにしても……」

P(……減った)

P(上位20%しか残らないというのは形式的な手続きとして知っていたが、ここまで人が減るものなのか)

P(第1回予選のときとは違い、会場は静けさすら感じ取れるほどだった)

P(第3回はもっと人が減るんだろうな)

P「……お」

P(2回目のグループ分けの番号が発表になった)

P「グループ4だって」

冬優子 キョロキョロ

P「どうしたんだ?」

冬優子「えっ? あ、いや……なんでもないわよ」

P「?」

P(何か――あるいは誰か――探してるのか?)

冬優子「グループ分けの発表のページ、ふゆにも見せてもらえる?」

P「あ、ああ……これだ」

冬優子 ジーッ

冬優子「……あ」

冬優子「今回は違うんだ」ボソッ

P「何が違うって?」

冬優子「ううん。なんでもない」

冬優子「もう行くわ。早めに入っておいて損はないし」

P「ははっ、前回もそうだったな」

冬優子「……前回とは、違うわよ」

冬優子「ふゆね、不思議と落ち着いてるの」

冬優子「この前は、強がってた部分もあったけど……」

冬優子「あんたは、今度こそそこで、待っていればいいの」

冬優子「じゃ、行くわ」

P「ああ。行ってこい」
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/29(火) 17:46:22.05 ID:MhITpKdNO
〜グループ4 控え室〜

冬優子(前回は1つのグループでいくつもの大部屋を使ってたというのに――)

ガラーン

冬優子(――もう、2回目にして1つのグループで大部屋1つとはね)

冬優子(前回は同じくらい早く来てももう少しくらはにぎやかだったと思うけど……)

冬優子(……まあ、勝ち残るっていうのは、そういうのを目の当たりにするってことでもあるのよね)

冬優子「……」

冬優子(あの子はどのグループにいるのかしら)

冬優子(別のグループみたいだけど……)

冬優子(気にしてもしかたない、か……)

ヒグッ、グスッ、ウウッ

冬優子「……あ」

冬優子(あれ、前回もふゆと同じ部屋で泣いてた子……よね)

冬優子(勝ち残ったんだ)

ネエ、アレミテヨ

ナンカナイテナーイ?

ナキタイコナンテイッパイイルノニ、カッテダヨネー

ピャウッ!?

冬優子「チッ……雰囲気も胸糞も悪いわね」ボソッ

冬優子(これ以上場の空気を悪化させるんじゃないわよ、ったく――)

「ねぇ、あんたさぁ」

「ぴゃ!? ななな、なんですか……?」

「泣きたい子なら他にもいるのよ。なのに、そうやって目立つように泣いちゃって……」

「ご、ごご、ごめんなさい……っ」

「申し訳ないと思うなら一人で目立たないところで泣いてろよ、ほら、出てけって」

「そ、そんな……」

冬優子(――世話の焼ける)

冬優子 スタスタ

冬優子「あっ、ここにいたんだねっ」ダキッ

「ぴゃ? だ、だr……ってむぎゅ」

冬優子「探したよ〜、ほら、ここだと他の人に迷惑だし、ふゆとお外でお話してよ? ね?」

「は、はい……」
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/29(火) 18:04:25.82 ID:MhITpKdNO
〜予選会場 ロビー〜

冬優子(とりあえずここまで来れば……)

冬優子(って、ふゆったらまた何してんの!? もう……)

冬優子(また人助け……ううん、これはあの場の空気を悪くしたくなかったふゆのわがまま)

冬優子(そう……よね)

「うう……わ、わたしになにか用ですか?」

冬優子「ごめんね。ふゆは別にあなたを怒ろうとか、そういうんじゃないの」

冬優子「あそこにいたら……ね? あんまりいい気持ちしなかったじゃない?」

「ありがとうございます……」

冬優子「283プロの黛冬優子ですっ。あなたは?」

「は、はいっ、わたしは――」

コイト「――コイト、です」

冬優子「コイトちゃんっていうんだ。よろしくね!」

冬優子(それにしてもこの子……)ジーッ

コイト「な、なな……なんでしょうか……」

冬優子(か、可愛い……)

冬優子「……推せるっ!」

コイト「わぁっ!? び、びっくりしました……」

冬優子(やばっ……!)

冬優子「あっ、ご、ごめんね。コイトちゃん可愛いから、つい……」

コイト「か、可愛いだなんて……そんな……えへへ」

コイト「お世辞でも……う、嬉しいです。ありがとうございます」

冬優子「ううん。お世辞なんかじゃないよ。本当に可愛い」

冬優子(伊達に勝ち残ったわけじゃない、か)

冬優子「コイトちゃんはどう? 大会は順調?」

コイト「え、ええ……まあまあです、たぶん……」

冬優子「そっか」

コイト「わたし、だめだめなんです」

コイト「プロデューサーさんも友だちもいない……こんな一人ぼっちで放り出されても……」

コイト「泣いてることしか、できませんから……」

冬優子「それでも、最初の予選には勝てたから、ここにいるんでしょ?」

コイト「そ、それは……まあ、いっぱい練習しましたから……」

コイト「でも、わたし一人にできることなんて……」

冬優子「……」

冬優子「もうっ、暗いのやめやめ! もっと楽しくなきゃ、ね?」

コイト「楽しく……」

冬優子「そうだよっ。コイトちゃん、もっと笑わなきゃ!」

コイト「あ、あはは……はい」

冬優子「コイトちゃんが笑顔になるときってどんなときなの〜?」

コイト「わたしが……」

コイト「……あ、飴っ」

冬優子「?」

コイト「飴、好きで……食べると思わず……な、なんて……えへへ」
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/29(火) 18:11:16.38 ID:MhITpKdNO
冬優子「いま持ってないの?」

コイト「も、もちろん持ってます! これ……」

冬優子「わぁ〜っ、いっぱい持ってるんだね」

コイト「はい。あむっ」

コイト「……」

コイト ニパァッ

冬優子 キュン

コイト「あ、飴あげちゃいます……! どうぞ」

冬優子「いいの?」

コイト「さっき、た、助けてくれた……お礼です」

コイト「迷惑だったらごめんなさい」

冬優子「ううん。ありがとうっ。じゃあ、これもらっちゃうね」

コイト「はいっ」

冬優子(飴……か。久しく食べてないわね)

コイト ニコニコ

冬優子(……さっきまで泣いてたのに、この子、こんな顔もできるんだ)

冬優子(でも、それは作り物じゃない、きっと本物の……)

冬優子「……」

冬優子 パクッ

冬優子「……」

冬優子「……おいし」

冬優子(今度からのど飴以外も買ってみようかしら)
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/29(火) 18:26:54.19 ID:MhITpKdNO
「……あ」

冬優子「あ」

コイト「あっ――」

コイト「――マドカちゃん」

マドカ「コイト、こんなところにいたんだ」

マドカ「それに……」

冬優子「マドカちゃん久しぶり!」

マドカ「あなたも……」

マドカ「コイト。控え室にいなかったから探したんだけど」

コイト「ご、ごめんね……」

マドカ ジーッ

マドカ「……涙の痕……泣いたの?」

マドカ「まさか、泣かしたやつらが……」

コイト「も、もう大丈夫……! だから」

コイト「助けてもらったんだよ」

冬優子「えへへ……」

マドカ「はぁ……」

マドカ「まあ、無事ならいいけど」

マドカ「そろそろ出番だから、私は行くけど、コイトは大丈夫なの?」

コイト「う、うん……頑張るから……」

マドカ「……そう」

マドカ スタスタ

冬優子「マドカちゃん……」

コイト「し、知り合いだったんですね」

冬優子「この前の予選でちょっとね」

冬優子「コイトちゃんは……」

コイト「あ、わ、わたしは、お、幼馴染……だから」

冬優子「そうなんだ〜!」

コイト「事務所も一緒なんです。というか、ユニットも」

冬優子「仲良しなんだねっ」

冬優子「マドカちゃん、コイトちゃんのことすごく心配してくれてたみたいだし」

コイト「は、はい。昔からずっとこんな感じで……」

コイト「マドカちゃんには、心配かけてばかり……」

コイト「ほんとうは、マドカちゃんとか、プロデューサーさんにも、わたしがいないとだめだめだねって言えるくらい……強くなりたいんです」

コイト「でも、そんなの無理で……わたしは泣き虫だし、ちっちゃいし、臆病だし……」

コイト「だめだめなのはわたしで、アイドルをやっていくうちに治ると思ったんですけど……」

コイト「もっとだめだめになっちゃったかもしれないです」グスッ

冬優子「コイトちゃん……」
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/29(火) 18:55:02.04 ID:MhITpKdNO
冬優子「ふゆはね、コイトちゃんは強いと思うよ」

コイト「ぴゃ? な、なんでですか……?」

冬優子「自分の弱さを知ってることって、ふゆは強いと思うもん」

冬優子(自分が情けないところなんて、目を背けたくもなるわ)

冬優子(でも、この子はきっとそうじゃない……)

冬優子「そういう強さがあるから、最初の予選に勝って、こうしてふゆと出会えたんじゃないかな」

冬優子「コイトちゃんと知り合えたのも、コイトちゃんの強さのおかげだねっ」

コイト「え、えへへ……そうですかね」

コイト「……」

コイト「わたし、焦っちゃってるんです」

コイト「アイドルをやっている人たちには、いろんな才能を持った人たちがいて」

コイト「努力だって人の何倍も何十倍もしてる人たちがいて」

コイト「みんな……すごいなって」

コイト「わたしなんて、頑張らないと、きっと置いていかれちゃう……」

コイト「事務所の方針で……マドカちゃんと同じユニットのわたしも、そ、その、特例……で出てますけど……」

コイト「……わたしが出たって、き、きっと迷惑をかけるだけなんじゃないかって、そう思っちゃうんです」

冬優子「……」

冬優子(その言葉を聞いて、ふと、脳裏にはあいつの顔が思い浮かぶ)

冬優子(天才、努力家、すごいアイドル……全部あてはまるバケモンが)

冬優子(もし、283プロも裏技とかを使ってストレイライトからあいつとふゆを出していたら……)

冬優子(……そんなことはあり得ないとしても、考えるだけでゾッとする)

冬優子「ふゆもそうだよ」

コイト「えっ?」

冬優子「同じユニットにすごい人がいて、いつも置いていかれないように頑張るの」

冬優子「って言っても、いつも置いていかれっぱなしなんだけどね〜。あはは……」

冬優子「今もね。その子のことを考えると、自信をなくしそうになっちゃうときがあるの」

冬優子「でも……ふふっ。コイトちゃんを見てたら、ふゆも頑張れるって、そう思ったんだ」

冬優子「だって、コイトちゃん、今まですっごく頑張ってきたんでしょ?」

コイト「……」

冬優子「そんなコイトちゃんを見たら、ふゆだって頑張りたくもなるよ」

コイト「わ、わたし……頑張れてますか……ね」

冬優子「うんっ! 予選に勝てたのだって、ここまでアイドルをやってこれてるのだって、コイトちゃんの力だよ」

冬優子「この大会は、ユニットは関係ないんだもん」

コイト「だめだめ、なんかじゃなくて……わたし……ちゃんと……グスッ」

冬優子「大丈夫……きっと大丈夫だよ」ナデナデ

コイト「わっ、わたし……っ!」ポロポロ

コイト「ふ、不安でした……怖かったです……。みんなすごくて、頑張ってても置いていかれて、居場所なんかなくなっちゃうんじゃないかって……」ポロポロ

コイト「それでも、アイドルだって、お、お勉強だって、いっぱいいっぱい……頑張ってきたんです……!」ポロポロ

コイト「それを……わかってくれる人なんて……いなくて……」ポロポロ

冬優子「ふゆが知ってる――わかってるよ。コイトちゃんが頑張ってること」

冬優子「それに、マドカちゃんだってきっとわかってくれるって……ふゆは思うな」

コイト「え、えへへ……そう、ですよね」ポロポロ

冬優子「あ、ふふっ、また笑ってくれたね。そうだよ。そういう顔してなくっちゃ……ね?」
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/29(火) 19:06:30.01 ID:MhITpKdNO
冬優子「落ち着いた?」

コイト「は、はいっ。お化粧まで直してくれて、ありがとうございます……」

コイト「今日会ったばかりなのに……なんか、えへへ」

冬優子「ふふっ、変なの……って?」

コイト「べ、別に変とは……言ってません、よ」

冬優子「気にしなくていいのに」

冬優子(本当に変……ふゆ、大会でライバルになるような子に、こんな……)

冬優子(敵に塩を送るようなことして、なにがしたいんだろ……)

冬優子(でも、不思議ね)

冬優子(時間の無駄とか、後悔とか、そういうのは全然思わないんだから)

冬優子「……ほんと、なんなんだろうね」アハハ

冬優子「そろそろ控え室戻ろっか」


〜グループ4 控え室〜

冬優子(コイトちゃんをいびってたやつらはもう行ったみたいで良かったわ)

冬優子「さて、と……」

冬優子(出番まであと少し……最後の追い込みよ、ふゆ)


冬優子「……」

冬優子(まあ、こんなものね)

冬優子「じゃあ、行きますか」

コイト テテテテ

コイト「あ、あのっ」

冬優子「あっ、コイトちゃん。どうしたの?」

コイト「さ、ささ……」

冬優子「?」

コイト「……3回戦で会いましょう!」

コイト「そ、それを、言いに来ました……」

冬優子「コイトちゃん……」

コイト「えへへ……2人とも勝てるって、思ったから……」

冬優子「ありがと。うんっ、頑張ってくるね」

コイト「はいっ! い、いってらっしゃい!」

冬優子「ふふっ、いってきます」ニコッ

冬優子(……あ)

冬優子(いまの笑顔は、ふゆの本物だったかも)





――――第2回予選 グループ4 通過者一覧――――
………………… ………………… …………………
………………… 283プロ黛冬優子 …………………
………………… ………………… ---プロ コイト
………………… ………………… …………………
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/29(火) 19:07:50.10 ID:MhITpKdNO
とりあえずここまで。
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/29(火) 19:16:18.65 ID:Dx0meAr+o
おつおつ
……ヒナくるか
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/29(火) 22:30:09.18 ID:73UPMUXDO
次がトオルでラストがヒナナじゃなかと?
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/30(水) 01:26:05.53 ID:fdpjqGKU0
ハーレム系主人公ふゆこ
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/10/07(水) 20:02:47.79 ID:Ht8p8gLoO
>>1です。10月中旬ごろの再開を予定しています。
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/07(水) 20:22:24.37 ID:cfvfYZuwo
はいな
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/10/11(日) 00:36:05.96 ID:UbGTNLKm0
1ヵ月後。

〜大会 予選会場〜

P(予選も3回目に突入した)

P(これが、最後の予選となる)

P(前回の予選を終えてから、冬優子はさらに成長したように見える)

P(アイドルとしての“ふゆ”と1人の人間としての“冬優子”のバランスが良くなった……と言えば良いんだろうか)

P(冬優子のアイドルとしての振る舞いに、疑いようのない「本物」を感じる)

P(……良い。これは良いことだ)

P(手ごわい審査員を相手にしても、今の冬優子なら完璧に魅了することができるんじゃないだろうか)

P(勝てる……勝てるぞ……!)

P(冬優子の成長を、俺は、自分のように嬉しく思っていた)

P「もう、俺の出る幕なんてないんじゃないか? ――ははっ、なんてな……」ボソッ

P(実際、予選を勝ち進むに連れて、俺がアドバイスすることはほとんどなくなっていた)

P(冬優子もレッスンや自主トレに熱心に取り組んでいる。余計な口出しになるくらいならしたくなかった)

P(最近、冬優子との会話自体があまりないよな……)

「――あ」

P(業務連絡のほうが多くなってきてるよな……)

「ねえ」

P(よし、本番前に冬優子の様子を見に行ってみるか)

P(邪魔になりそうならすぐ退散すればいいだけだし)

「……聞いてる?」

P「え? わ、私でしょうか……?」

「ふふっ。なにそれ」

P「っと、君は――」


冬優子(3回戦ともなると、とても静かね……)

冬優子(それもそっか……もう、勝ち残ってるアイドルは、100人を余裕で下回ってるんだし)

冬優子(……今回も、例によって出番までちょっと暇なのよね)

冬優子「あ、そうだ」

冬優子(あいつにグループ分けの番号聞きに行かなきゃ)

冬優子「……」

冬優子(そういえば、最近、そもそもあんまり話してないような……)

冬優子(って、なになに!? ふゆってば、あいつと話せなくて物足りなさを感じてる!?)

冬優子(そんな少女漫画的思考……)

冬優子「……」

冬優子(こ、これは番号を聞きに行くだけ……そう、それだけよ)

冬優子(それだけ……なんだから)

冬優子 スタスタ
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/10/11(日) 00:59:52.12 ID:UbGTNLKm0
冬優子(あ、いたいた――)

冬優子(――って、誰かと話してるじゃない)ササッ


P「久しぶりだな」

「お互い様、だね」

P「まさか、こんなシチュエーションでまた会えるとは思ってなかったよ」

「わたs……僕もだよ」


冬優子(と、とっさに隠れちゃったけど……)

冬優子(誰……? アイドルの子かしら)

冬優子(まあ、ふゆがあの子を知らないように、あの子だってふゆのことは知らない、か……)

冬優子(それにしても――)


P「ははっ、今でも自分のこと僕って言ってるのか?」

「ううん。そうでもない」

P「そうでもない……?」

「うん。普段は、私。アイドルのときも、私。でも、今は、そのどっちでもないから」

P「? そ、そうか……」


冬優子(――綺麗な人)

冬優子(あいつにとって、あの子はどういう存在なのかしら)

冬優子(って、気にしてもしょうがないわよね)

冬優子(さっさと番号聞いて控え室に行けばいいのよ)


冬優子「プロデューサーさんっ」

P「お、冬優子か。……そうだ、ちょうど、さっきは様子を見に行こうとしていたんだった」

冬優子「そうなんですね! ありがとうございますっ」

冬優子「ふゆ、グループの番号を知りたいなって」

P「そうだよな。ちょっと待っててくれ」

P「あ、そうだ。紹介するよ。こいつはトオルっていって……」

「とっても仲良しな俺の幼馴染」

P「そうそう――って、仲良しなら、しばらく疎遠にはなってなかっただろ」

P「今のお前は、アイドルのトオルだしな」

トオル「ごめんね? なんていうか、言ってみたかっただけ」

P「ははっ、なんだそりゃ」

P「トオル、こっちは、俺がプロデュースしてるアイドルの黛冬優子だ」

冬優子「283プロの黛冬優子ですっ。よろしくお願いします、トオルさん!」

トオル「よろしく……」

冬優子「プロデューサーさんの幼馴染だなんて、すごいですね〜」

トオル「ふふっ、いいでしょ。……なんて」ボソッ

冬優子(は?)イラッ

冬優子(なんか今、さりげなく自慢されたわよね。ふゆの地獄耳が聞き取ったわよ)

冬優子(なんなのこの子……)

冬優子(って、今はアイドル! アイドルのふゆなんだから……落ち着け落ち着け……)

冬優子「そ、それで! プロデューサーさん、番号はいくつですか?」
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/10/11(日) 01:22:14.63 ID:UbGTNLKm0
〜グループ2 控え室〜

冬優子「……」

トオル「……」

冬優子「…………」

トオル「…………」

冬優子「………………」

トオル「………………」

冬優子(なんで同じグループなのよ!!)

冬優子(しかも、1グループに15人くらい上に今回から大部屋じゃなくなったから距離が近いじゃない……)

冬優子(それならできるだけ離れたところに座ればいい――というわけにもいかなかったのよね)

冬優子「……」


冬優子『……お、おんなじグループ、なんですねっ』

P『冬優子、顔が引きつってるぞ』ミミウチ

冬優子『う、うっさい……!』ボソッ

冬優子『そ、それじゃあふゆは、控え室に行こうかなー……』

トオル『ぼk……私もそろそろ行かなきゃ』

トオル『あ、そうだ』

トオル『ねえ』

P『なんだ?』

トオル『私のプロデューサーになってよ』

冬優子『は、はあっ?! ……ってヤバっ』

P『えっと、何を言ってるんだ? トオル』

トオル『うちのプロダクションの……えっと、あのおじさん……いや、とにかく偉い人がね』

トオル『あのプロデューサーは是非うちに欲しい……とか言ってて』

トオル『だから、そういうこと』

冬優子『プロデューサーさん? ちょっといいですか?』グイッ

P『お、おい、引っ張るなって……』

冬優子『今の話、どういうことなのよ……!』ヒソヒソ

P『知らないって。突然言われて俺も混乱してるんだ』ヒソヒソ

冬優子『ふ、ふーん。どうだか』ヒソヒソ

P『本当なんだって』ヒソヒソ

冬優子『幼馴染との久々の再会と思わぬヘッドハンティングでニヤニヤしてんじゃないわよ』ヒソヒソ

P『そんなことないって……。何を怒ってるんだ……』ヒソヒソ

冬優子『怒ってないっての……! バカ』ヒソヒソ

トオル『えっと、あの……』

P『あ、ああ……すまんな、なんか』

トオル『ううん。こっちこそ、突然言い出してごめん』

トオル『でも、私は――』

トオル『――この話を受けてくれたら嬉しい、かな』

トオル『まあ、そういうことだから』スタスタ

P『あ、おい、トオル……って、冬優子もいつの間にかいなくなってるし……。はぁ……』


冬優子(ぐだぐだやってたおかげで控え室の場所がほとんど埋まって隣同士になるしかない――なんて)
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/10/11(日) 02:02:36.16 ID:UbGTNLKm0
冬優子・トオル「あの……」

冬優子「あ……」

トオル「あっ」

冬優子「えっと、どうかしましたか?」

トオル「名前……」

冬優子「?」

トオル「黛――千尋さん」

冬優子「洛山高校3年の“新型の幻の6人目(シックスマン)”……ってアイドルとしては斬新過ぎるし違うかなぁ……」

冬優子(「つーか 誰だお前」って言ってこの場を去りたくなってきたわ)

トオル「えと、黛……真知子さん?」

冬優子「ふゆは古美門法律事務所の弁護士ではないかなー……」

冬優子(朝ドラのヒロインなら、仕事としては魅力的だけど)

冬優子(まあ、あれは馬鹿にされて言われてるだけだったわね)

冬優子「もうっ、黛冬優子だから……!」

トオル「ふふっ、ごめんごめん」

トオル「あ、はじめましてだから、敬語のほうがいいんだっけ」

冬優子「ふゆに聞かれても……」

冬優子(調子狂うわね……)

冬優子「じゃあ、お互い敬語は無しってことにしよ?」

トオル「……うん。わかった」

冬優子「……」

トオル「……」

冬優子(どっちかが出番来るまでこれって……嘘よね……?)
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/10/11(日) 02:21:27.50 ID:UbGTNLKm0
冬優子「幼馴染って言ってたよね」

トオル「あ、うん」

冬優子「よく一緒に遊んでたの?」

トオル「まあ……そう、かな。もう、だいぶ前になっちゃったけど」

トオル「あの人は、まだ中高生だった」

トオル「公園で一緒に……ジャングルジムで遊んでた」

冬優子(中高生男子が小学生以下の女子とジャングルジムで遊ぶってどうなのよ)

冬優子(この子が、昔は活発な女の子だったとか?)

冬優子(まあ、どうでもいいけど)

トオル「それから、しばらく疎遠になって、いろいろあって私はアイドルになって……」

トオル「……それで、偶然、仕事の現場にあの人がいるのを見つけた」

トオル「他のところで、プロデューサーやってた」

冬優子「……」

トオル「なんかね、評判良いみたい」

トオル「私のいるプロダクションにも噂が届くくらいに」

冬優子「そう、なんだ……」

冬優子(あいつ、仕事できるもの……そんなの、むしろふゆが誇ってもいいことなのに……)

冬優子(そこから続く話題が、それを妨げる)

トオル「それで、私のとこの偉い人が引き抜きたいって言ってたから」

トオル「もしそうなったら、私のプロデューサーになって欲しいなって」

トオル「そう思った」

冬優子「……っ」

冬優子(なによ。なんなのよ、これ……)

冬優子(焦り? 不安? 怒り?)

冬優子(得体の知れない居心地の悪さと息苦しさ……)

冬優子(本番前だってのに……! こんなとこでストレス抱えてられないのに……!)

トオル「別に、プロデューサーを取っちゃおうってわけじゃなくて」

トオル「プロデューサーから来てくれたら、嬉しいなって」

トオル「だから、気にしないで、いいと思う……」

冬優子「っ!」ダッ

トオル「あ……」
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/10/11(日) 02:43:43.94 ID:UbGTNLKm0
〜グループ2 控え室付近廊下〜

冬優子「……っ」ズカズカ


トオル『プロデューサーから来てくれたら、嬉しいなって』

トオル『だから、気にしないで、いいと思う……』


冬優子(ふざけんじゃないわよ……!)

冬優子(幼馴染だかなんだか知らないけど、勝手なこと言って……!)

冬優子(自分から来てくれたら嬉しい? そんな言い方、余計にたちが悪いっての!)

冬優子「……」ハァハァ

冬優子(……なんでこんなにむかついてるのかしら。ふゆにとって、あいつは……プロデューサーは……)


P『嘘をつくことと、嘘であることは、違うと思う』

P『俺は、嘘をついてでも嘘であろうとはしない冬優子を――全力で“推してる”』

P『冬優子には、冬優子を否定して欲しくない』

P『自分が好きだと思ってる対象が自分を否定してたら、悲しいだろ?』


冬優子(ああ言われて、ふゆは……)


冬優子『ふゆはあんたに推されるくらいじゃ足りないから!』

冬優子『ガチ恋させてやるんだから――ちゃんとふゆのこと、見てなさいよね!』


冬優子(……そう言った)

冬優子(アイドルとプロデューサー? ……笑わせるわね)

冬優子(ふゆにとっては、最早、あいつはただのプロデューサーじゃない)

冬優子「……そっか」

冬優子(そういうことか)

冬優子(ふゆは、気づいてないふりをしていただけ……)

冬優子「あ、時計……って嘘!? 思ったより出番まで時間ないじゃない!?」

冬優子「戻らなきゃ――」


「冬優子!」バッ


冬優子「――……」ピタッ

P「はあっ……はあっ……」ゼエゼエ

冬優子「……あんた、こんなとこで何してんのよ」

P「もともと……冬優子の様子を見に行こうと思ってたんだ」

P「ほら、その……最近あまり関われてなかっただろ? 話す機会だってあんまりなくてさ」

P「今の冬優子なら、もう俺なんか必要ないんじゃないかって思ったこともあった」

P「この大会で勝ち残っていく中で、冬優子は、格段に、確実に、成長してたから」

P「でも……それでも、俺は」

P「俺は、黛冬優子のプロデューサーだ。これまでも、これからも」

P「冬優子が要らないって言っても、俺は、ずっとお前のプロデューサーでいつづけたい。冬優子を支えたいんだ」

P「それを、伝えたくて……」

冬優子(あーあ……余計にあんたが必要になっちゃった。ただでさえ、ふゆはあんたにいて欲しいのに)

冬優子「ばーか」ニコッ

冬優子「そんなの、当たり前じゃない!!」
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/10/11(日) 03:01:30.74 ID:UbGTNLKm0
冬優子『ばーか』ニコッ

冬優子『そんなの、当たり前じゃない!!』


P(そう言って、冬優子は走っていった)

P(去り際、その顔は確かに笑っていた。笑って……くれた)

P(その時――俺は、“冬優子に応えられた”気がした)


P(予選3回戦――黛冬優子のパフォーマンスは、他のアイドルのそれを凌駕していた)

P(俺がプロデュースしてたのはこんなにも魅力的なアイドルだったのかと、実感させられた)

P(それは、俺が冬優子のプロデューサーだからとか、俺が既に冬優子に魅了されていたからとか、そういうことだけではないはずだ)

P(冬優子は自分のために輝こうとするアイドルだ)

P(冬優子は誰かのために輝けるアイドルだ)

P(そして、最早、何者も恐れない、何者とも比べられない)

P(俺に言わせれば、真に唯一無二で最強のアイドルだ)

P(そんなものを見せられたら、誰だって圧倒されるに決まってるのだから)



――――第3回予選 グループ2 通過者一覧――――

………………… 283プロ黛冬優子 …………………
___プロ トオル 
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/10/11(日) 03:01:59.38 ID:UbGTNLKm0
とりあえずここまで。
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/11(日) 04:20:17.48 ID:rB29iPhDO
たんおつー



noctchillのみんなも通っているわけか……
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/10/18(日) 23:42:56.75 ID:6fesmXWL0
数日後。

〜事務所〜

P(最後の予選が終わった)

P(冬優子は、決勝に向けて最後の追い込みをかけている)

P(俺の心配することなんて何もない)

P(俺は、冬優子のプロデューサーとして在ればいい)

P(あとは、冬優子を信じて、自分のやりたいようにやらせるだけだと思った)

P「……っと、そろそろだな」

タッ、タッ、タッ

P「おかえり」

冬優子「……ただいま」

P「……」

冬優子「……」

P「……」

冬優子「……聞かないの?」

P「何をだ?」

冬優子「レッスンはどうだったのかって」

P「聞かなくても、見ればわかるからな」

P「俺は冬優子のプロデューサーなんだから、言わなくても通じることってあるよ」

P「話すことが少なくなっても、それは距離ができたからじゃなくて、話すまでもなく通じるようになったからなんじゃないかと思ってさ」

冬優子「ばか」ボソッ

冬優子「……」

冬優子「ふふっ……あっそ」

P「ああ」

冬優子「……ソファー、座るわね」

冬優子「っしょっと」

冬優子「……」

P「……隣、なんだが」

冬優子「うん」

P「近くないか?」

冬優子「嫌なの?」

P「そういうわけじゃないけど……」

冬優子「じゃあいいじゃない」

冬優子「……来るところまで来ちゃったわね」

P「来るべきところに来たんだよ」

P「それに、まだ終わりじゃないぞ?」

冬優子「わかってるわよ。決勝でしょ」

冬優子「なんかね、緊張とかプレッシャーとか……そういうの、ないのよね」

冬優子「本番でどうなるかは知らないけど」

冬優子「なんか、変に怖いもの知らずになった気がするわ」

冬優子「ふゆに似合わず、ね」ボソッ

冬優子「あーあ、ふゆがこうなったのも、あんたのせい――」

冬優子「――ううん、あんたのおかげね」
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