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【シャニマス】P「よし、楽しく……」- Straylight編- 【安価】
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220 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/14(土) 02:18:02.06 ID:9M/IlCWfO
P(とりあえず暇になったから適当に歩いてみてるけど、冬優子に言われて一緒に過ごすことになった以外にここに来る理由がなかったから、あてもなく彷徨ってる感じだな……)
ザワザワ
P「……?」
P(何やらあそこのイベント会場に人だかりが……)
P(……行ってみよう)
P(えっと、何のイベントなんだ? 調べてみるか)ポチポチ
P(ってこれ、トオルのユニットのイベントなのか!)
P(冬優子と一緒に出かけてて、一時的に別行動とはいえトオルのイベントに参加するのは……少し気が引けるな)
P(でも、幼馴染が主役のイベントだし、同業者の仕事も気になるんだよな……)
P(どうしよう)
「あのー……、ちゃんと列に並んでくれます?」
P「え? あ、いや――」
P(どうする? 関係ないからって言って抜けるか? でも、気になるのは確かだし……)
「いま列動いてるんで、進んでくださいよ」
P「――はい、すみません」
P(出れなくなった……)
P(これは不可抗力だ。そう思うことにしておこう)
トオル「ふふっ、ありがと」
トオル「つぎー……」
P「よ、よう」
トオル「なにそれ、ウケるわ」
P(握手会の列だった……)
トオル「ほら、ぼーっとしてないでさ」
トオル「手、出しなよ」
トオル「そういう企画だから」
P「え? ああ……」
P「はい」
トオル「うん」
トオル ニギニギ
P「……」
トオル スリスリ
P ダラダラ
トオル「……」
P「あ、握手ってこんなんだったか?」
トオル「さあ? どうだろ」
トオル「なんか、変な汁出てるね。Pの手」
P「汁っていうなよ、汗だよ。手汗な。棒が1本ないだけでえらい違いだよ」
トオル「緊張してる?」
P「……まあな」
トオル「そっか」
221 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/14(土) 02:36:57.34 ID:9M/IlCWfO
トオル「ふふっ……握手っていいね」
トオル「こんなんだったんだ。Pの手って」
P「あ、ああ……」
P「ほら、あんまり俺ばっかりだと後ろの人に悪いからさ……」
トオル「そういうこと言うんだ」
P「言うよ。今は仕事してるんだろ?」
トオル「はいはい」
トオル「ごめんね、なんか」
P「謝らなくてもいいけど……」
トオル「ばいばい。またね」
P「ああ。また、な」
P(トオルとの距離が離れていく)
P(俺が自意識過剰じゃなければ、トオルの表情は名残惜しげで――)
P(――……俺もそんな顔をしているんだろうか?)
P(まだ冬優子からの連絡はないな……)
バッ
P「!?」
P(急に視界が真っ暗に……!?)
「だーれだっ」
P(そしてお決まりのやつ!)
P(いや、しかしこの声……冬優子じゃないぞ)
P(というか、うちの事務所の子じゃない……?)
「あは〜。わからない〜〜?」
P(あ、もうわかった)
P(この話し方は――)
P「――ヒナナちゃん……であってたよな」
ヒナナ「やは〜♡ せいか〜い」パッ
ヒナナ「よくわかったね〜〜?」
P「ま、まあな」
P(めっちゃいい匂いした……)
P「……」
ヒナナ「まだそんなに会ったことないのに〜……やっぱ、ヒナナがお兄さんのこと好きだからかな〜〜?」
ヒナナ「相思相愛〜?」
P「いや、そのりくつはおかしい」
ヒナナ「あは〜、そうだね〜〜」
ヒナナ「でも〜……さっきみたいに触れるのは初めてだから〜〜、ヒナナ、ドキドキしてたりして〜〜〜〜」
P「それもおかしい」
ヒナナ「え〜〜! そこまで言わなくてもいいのに〜〜〜〜……」
ヒナナ「ヒナナがお兄さんのこといいな〜って思うのは本当だよ?」
P「そうじゃなくて――」
P「――肩、叩いたことあるからさ、俺」
222 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/14(土) 03:08:52.84 ID:9M/IlCWfO
ヒナナ「……やは〜」
P「だから、触れるのは初めてじゃないぞ」
P「まあ、どっちからって話なら別だけどな」
ヒナナ「お兄さんはなんでそう思うの〜?」
P「同じだったからな」
P「舞台装置のところで誰かの肩を叩いた時も……さっきと同じ匂いがした」
P「それで確信したよ」
ヒナナ「え〜、ヒナナ匂うかな〜〜?」スンスン
P「良い匂いだった」
ヒナナ「あは〜、なんかそれエッチだね〜〜。セクハラ〜」
P「それを言われると痛い……」
P「というか、隠す気ないのか」
ヒナナ「?」
ヒナナ「なんで〜?」
P「……いや、なんでもない」
P「もちろん、匂いだけじゃないんだ。それはあくまでも確信するに至ったというだけで」
P「そもそも、あの時に――ステージ本番の時に――「あの場所」に誰かいるなんておかしいんだよ。たとえ裏方でもな」
P「事前に決められた手はずでは、「あの場所」には本番で動かさないやつしか配備されてなかったから」
P「緊急事態とかなら裏方のスタッフがいるかもしれないけど、決勝ステージはすべて順調にいってた」
P「わざわざ「あの場所」に行こうとした人間しか、あそこにはいないというわけさ」
ヒナナ「ふ〜ん」
P「「あの時」、「あの場所」で自由に動けた人間の中に……ヒナナちゃん、君はいる」
P「だって――“君はあの大会に参加してない”んだから」
P「大会に出ていない関係者だから、「あの時」に「あの場所」にいることができたんだ」
P「俺は君を予選会場で見たことがない。その場でも、名簿でも」
P「予選に出ていなければ、当然、あの大会に参加していないことになる」
P「トオルと一緒にいてユニットがどうとか言ってたから、君もアイドルを続けてるもんなんだと思ってた」
P「舞台装置での件があってから、個人的に調べてみたんだよ」
P「ヒナナちゃん……君、活動休止中らしいじゃないか」
ヒナナ「そんなことまで知ってるんだ〜……」
P「ああ。まあな」
冬優子『え、えっと……今日はどんな用件で?』ピキッ
トオル『そこにいる人に会いに来た』
ヒナナ『ヒナナは付き添いだよ〜〜』
P「初めてうちの事務所にトオルと来たときに言ってたことが、まさか文字通りの意味だったなんてな」
ヒナナ「ひどくないですか〜? お前は態度がなってないから、アイドル休んでしばらくトオル先輩の付き人でもやってろ〜〜だって!」
ヒナナ「しかもアイドルに復帰しても絶対にトオル先輩と同じユニットにはしてやらない〜とか言われて……こんなのしあわせ〜じゃない〜〜」
P「そっか……そこまでの事情は知らなかったよ」
P「オフィシャルには、あの大会にはユニットが同じだと出れないが……まあ、どの道、君はあの大会に出られる立場になかったんだ」
P「……それも、大会が終わってから調べていくうちに知った」
223 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/14(土) 03:36:34.66 ID:9M/IlCWfO
P「他のアイドルの子たちがヒナナちゃんがいても何も不自然に思ってなかったのは、おそらく、君が、トオルと同じ事務所に所属していて、いつもトオルといる元アイドルだからだろう」
P「同じ事務所の仲間が決勝に応援しに来てるって思うもんな」
ヒナナ「あ〜、ひどい〜〜。ヒナナ、別にアイドルやめてないもん!」
P「そうだったな……悪い」
ヒナナ「も〜、そういうお兄さんはヒナナ嫌い〜〜」
P「……なぜ」
ヒナナ「?」
P「なぜ、冬優子のステージで事故を起こそうとした……?」
P「あの現場は、あと少しでワイヤー群が解けて大事故になる寸前までいってたんだぞ」
P「もし、そうなってたら、冬優子は……」
P「なあ、答えてくれ」
P「なんでなんだ」
ヒナナ「う〜ん」
ヒナナ「……見ればね〜、わかったんだ〜〜」
ヒナナ「決勝はあの2人が優勝と準優勝だろ〜って」
ヒナナ「お兄さんのアイドルの人がいなければ、トオル先輩は確実に優勝できるな〜って思って」
ヒナナ「ヒナナはトオル先輩が好きだから――」
ヒナナ「――トオル先輩が優勝してしあわせ〜ってなってくれたら、ヒナナもしあわせ〜になれるかな〜……って」
ヒナナ「あれ〜? なんかおんなじようなこと前も言った気がする〜〜」
ヒナナ「誰にだっけ〜? まあ、いいけど〜」
ヒナナ「ヒナナはね、ヒナナがしあわせ〜って思えることだけでいいの」
P「あれで事故が起きてたら、大怪我じゃ済まないんだぞ……!」
ヒナナ「そうなんだ〜……やは〜〜、そうかもね〜〜〜〜」
P「お前――」
ヒナナ「それって悪いことなの〜?」
P「――は……?」
ヒナナ「誰だってしあわせ〜ってなりたいでしょ〜〜? ヒナナなら、ヒナナがしあわせなのがいちばんさいこ〜♡ ……って」
ヒナナ「しあわせになるために動いてなにが悪いのかな〜〜」
P「人が……! っ、人の命を……君は何とも思わないのか?」
ヒナナ「悪いことなんじゃなくて、しちゃだめですよ〜ってなってること……ってだけなんじゃないかな〜〜?」
ヒナナ「ルールって、そういうことかなって思ったり〜」
ヒナナ「はあ……やっぱ、ヒナナはヒナナのことしかわからないな〜……」
ヒナナ「友だちがしあわせ〜ってなればヒナナもしあわせ〜になるかなって思ったけど、うまくいかないね〜〜……」
P「話にならない……」
ヒナナ「あ〜、そういう顔しないで〜〜」
ヒナナ「ヒナナの好きなお兄さんでいてほしいな〜」
224 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/14(土) 03:47:45.49 ID:9M/IlCWfO
P「そんなんでいいのか? 俺がこのことを他の誰かに言ったら、君は……」
ヒナナ「やは〜、そんなことされたら、ヒナナ、しあわせ〜になれない〜〜」
ヒナナ「でも大丈夫〜〜。だって――」グイッ
P「!?」
ヒナナ ボソボソ
P(急に近づかれ、囁かれる)
P(短いメッセージが耳打ちで直接脳内に送信されたかのような感覚がした)
ヒナナ「――あは」パッ
P「……っ」
ヒナナ「やは〜、そろそろ戻らなきゃ〜〜」ニパァッ
P「……」
ヒナナ「またね〜」テテテテテ
ヒナナ「あ、そうだ!」ピタッ
P「……?」
ヒナナ「次に会うときは、ヒナナの好きなお兄さんでいてね〜!」
ヒナナ「じゃ、ばいば〜い」フリフリ
ヒナナ テテテテテ
P「……」
ヴーッ
P(着信――冬優子からのメッセージだ)
P(5分後にラジ館……了解、っと)
P「行くか……」
ワァァッ
P(トオルがいる方から歓声が聞こえる)
P(あの子は……――向いてなさそうだが――補助の仕事でもしてるんだろうか)
P(いろいろと思うことはある。それでも――)
P(――とても、歓声のする方に振り返ろうとは思えなかった)
フワリ・・・
P「!?」ゾクッ
P(また“あの香り”がする――ような気がした)
P バッ
P タッタッタッ
P(思わず振り払い、早歩きで冬優子との待ち合わせの場所に向かう)
P(冬優子に今すぐ会いたい――そう思いながら)
225 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/14(土) 03:48:15.48 ID:9M/IlCWfO
とりあえずここまで。
226 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/11/14(土) 09:44:10.37 ID:FsWpDvZ9o
ひえぇ、…
おつつ
227 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/19(木) 00:37:14.74 ID:h4Eug96fO
>>223
訂正
ヒナナ「あ〜、そういう顔しないで〜〜」
ヒナナ「ヒナナの好きなお兄さんでいてほしいな〜」
→
ヒナナ「あ〜、そういう顔しないで〜〜」
※
>>224
でも同様のセリフがあるため。
228 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/19(木) 01:02:09.37 ID:h4Eug96fO
P「はぁっ、はぁっ……」ドタドタ
P(人混みがすごくて時間ギリギリになりそうだ……)
P「すみません……通ります、すみません……」グッグッ
P(早く冬優子に会いたい)
P「く、……っ」ダッ
P(待ち合わせ場所のラジ館前は――ここでいいんだよな)
P(冬優子は……あれ、どこにいるんだろう)
P キョロキョロ
P「……!」
P(頭に手を当ててしゃがむ女の子が1人――冬優子だった)
ヒナナ『ヒナナはね、ヒナナがしあわせ〜って思えることだけでいいの』
P「ま、まさか!」
P(俺は駆け寄る)
P「おい、冬優子!」
冬優子「え? あ、プロデューサー……」フラッ
P「大丈夫か!? 何かあったのか!?」
冬優子「っ、つつ……」
冬優子「大声上げないで……頭に響くから」
P「あ、すまん……」
冬優子「……」
冬優子「ふゆなら、平気」
P「本当か?」
冬優子「貧血だから。ちょっとは落ち着いてよね」
P「そ、そうか」
P(考えすぎか……? まあ、ただの貧血だっていうなら……)
冬優子「ふぅ、よいしょっ……と」
P「……買いたいものは買えたのか?」
冬優子「おかげさまで。バッチリよ」スチャ
冬優子「よし、じゃあ気を取り直して続き……ね!」ダキッ
P「お、おい、腕組むのはやりすぎなんじゃないのか?」
冬優子「マスクしてるしメガネもかけたから大丈夫でしょ。帽子もあるしね」
P「そういうもんなのか……?」
冬優子「あーもう、うだうだしてないでさっさと行くわよ!」
P「行くってどこに?」
冬優子「さあね! どこでもいいわ!」
P「どこでもって……」
冬優子「本当にどこでもいいの――」
冬優子「――あんたと一緒なら、それで」
229 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/19(木) 01:33:52.45 ID:h4Eug96fO
P(それから、冬優子に引っ張られる形で、街中を巡った)
P(メイドカフェ、ゲーム、マンガ、アニメ、他にも……なんでもござれといった感じで手当たり次第に行った――)
P(――パーツショップではしゃいでいたのは俺だけだったが)
冬優子『本当にどこでもいいの――』
冬優子『――あんたと一緒なら、それで』
P(冬優子が言ってくれたことは、本当に、文字通りの意味だったんだろう)
P(一緒にどこかに行く、一緒に何かをする――そういった漠然とした充実を、いまここで求めているかのように)
P(冬優子は終始嬉しそうだった。楽しそう、というより、そう表現するのがふさわしい)
P(思えば、俺と冬優子は、ほとんどの場合、仕事くらいでしか一緒の時間を過ごせていなかった)
P(俺も冬優子も――いや、俺なんかはたいしたことなくて、冬優子が――ひたすらに突っ走ってきたんだ)
P(今は、ただ、ゆっくりと歩を進めるだけでいい)
冬優子「ん……っと! 結構まわったわね」
P「そうだな。密度の濃い1日だった」
P(刹那、冬優子と離れていたときの記憶が――)
冬優子「どうしたのよ。固まっちゃって」
P(――いや、今は思い出さなくていいだろう)
P(目の前にいるのは、一緒に歩んでいるのは、俺が……なのは)
P(冬優子なんだから)
P「冬優子に見蕩れてたんだ」
冬優子「んなっ!? 不意打ちでそういうこと言うなっての……」
P「不意打ちじゃなければいいのか?」
冬優子「あ、揚げ足取るなっ……もう!」
P「あ、待ってくれよ。冬優子」
冬優子「待たない! ほら、駐車場行くわよ」
冬優子「当然、送ってくれるんでしょ?」
冬優子「ちゃんと……最後まで一緒にいなさいよね」ボソッ
230 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/19(木) 02:03:45.41 ID:h4Eug96fO
〜駐車場〜
P「もう荷物はないか? トランク閉めるぞ」
冬優子「いまので最後よ。ありがと」
P「先に乗っててくれ」ダンッ
冬優子「うん……」ガチャ・・・バン
P「よいしょっと……」ガチャ
バンッ
P「じゃ、エンジンを――」
ギュ
P「――と」
冬優子「……」
P「手掴まれてるとエンジンかけられないよ」
冬優子「……っ」
P「?」
冬優子「ねえ、ふゆの顔に何か付いてる感じがするんだけど」
P「そうか? 特に何も付いてるようには見えないが」
冬優子「……よく見て」
P「ん?」クルッ
チュッ――
――パッ
P「……」
冬優子「……っ、やば。糸……」
P「冬優子……」
冬優子「あの時、あんたが言おうとしたこと――今なら言ってもいいわよ」
冬優子「ううん。言って」
冬優子「ふゆが、聞きたいの」
P(俺が言おうとしたこと、それはきっと――)
P『俺は、そんな冬優子が――』
冬優子『ストップ! それ以上言ったらふゆはここで死ぬわよ……』
冬優子『……恥ずかしさで』ボソッ
P『――……それなら、今は黙っておくよ』
P(――あの時のだ)
P「冬優子は、皆を笑顔にできる最高にキラキラしたアイドルで」
P「好きなものを心から大切にできる、優しい女の子で」
P「そして、俺の好きな……愛する人だ」
冬優子「……た」
P「ふ、冬優子?」
冬優子「あんたからそう言ってもらえるのを、待ってた……!」
冬優子「グスッ、……違うわね。ふゆったら、変なこと言ってる」
冬優子「待ってたのに、あんたはもういつでも言ってくれるって気づいて……ふゆはなんだかそれを聞くのに怖気づいて……」
231 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/19(木) 02:28:25.69 ID:h4Eug96fO
冬優子「……」
冬優子「あーもうわけわかんない! ほんと、バカね! 黛冬優子!」
冬優子「ただ、素直に言えばいいだけじゃない。ふふっ」
冬優子「ありがとう! ふゆ、そう言ってもらえて本当に嬉しいの!」
冬優子「ふゆも――黛冬優子も」
冬優子「私も、あんたのことが好き」
冬優子「大好き」
冬優子「超好き」
冬優子「好き、好き、好き好き好き……」
冬優子「スゥ……」
冬優子「愛してるのよおおおおお!!!!!」
冬優子「はぁ……はぁ……」
冬優子「どう? ふゆの返事は」
P「ボーカルレッスンの賜物だな。車内だし、鼓膜がやられるかと思った」
冬優子「は?」
P「じょ、冗談だよ……睨まないでくれ」
P「その、なんだ。つまり俺たちは……相思相愛、ってことでいいんだよな?」
冬優子「っ! そ、そうね」
P「恋人同士……なんだよな?」
冬優子「ま、まあ? 相思相愛で告白してOKなら、そうなるわね」
P「よろしく……」
冬優子「あ、よろしくお願いします♡……って違う!」
P「とりあえず落ち着けって。一旦冷静になろう」
冬優子「ふゆは冷静だから!」
P(どこが……)
冬優子「彼氏彼女って言ってもどうすればいいのよ……! もう……」ボソボソ
冬優子「恋人になったらいろんなことが待ち構えてて……」ボソボソ
P「冬優子」
冬優子「ひゃい!?」
冬優子「……な、なに」
P「ゆっくりでいいんだ。焦ることなんてない」
P「始まったばかりなんだからさ」
P「これから、時間をかけて考えればいいんじゃないか?」
P「今まで2人でなんだって乗り越えて来ただろ? これからも、それは変わらないよ」
P「ずっと一緒なら、大丈夫」
冬優子「そっか……そうね」
冬優子「ふゆ、あんたがいればなんでもできるんだった」
冬優子「うん……うん! 安心してきた」
P「ははっ、それは良かった」
冬優子「そうね……あんたはそんな調子だから、本当に今まで通りでいいわよ」
P「なんだよそれ」
冬優子「こ、恋人らしいことは、その……ふゆが頑張って積極的になってやるっつってんのよ! さっきみたいにね!」
冬優子「ガチ恋させてやるって言ったの、覚えてるわよね! まだまだ、こんなもんじゃないの! ふゆはこんなところで止まらないんだから!」
232 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/19(木) 02:49:26.96 ID:h4Eug96fO
数分後。
P「えっと……冬優子の家を目的地に設定して……」ポチポチ
P「ルートは……これにして、っと……」ポチポチ
P「よし、これでいいな」
P「……」
P「そういえば……明日からまた仕事だな」
P「忘れないうちにはづきさんにメールして企画書関係まとめておいてもらうか……」ガサゴソ
P「……あれ。ない」
冬優子「?」
P「仕事用のスマホ……ここに入れておいたはずなんだが……」ガサゴソ
P「まずいぞ。あれをなくすと困るのに……」ダラダラ
冬優子「……あ」
冬優子「それって、これなんじゃない?」つスマホ
P「それだ! 良かった、見つかって……」
冬優子「ちゃんと落とさないようにしまっておきなさいよね」
P「ポケットへの入り方が甘かったのかな。車の中で落とすと暗くてなかなか見つからないんだよなぁ」
冬優子「いや、あんた――」
P ポチポチ
P「〜〜〜! あー、来月に冬優子が出る企画の名前、なんでこんな長いんだよ……!」ポチポチ
P「でもこの企画がうまくいけばまた冬優子をキラキラさせてやれる……うおぉぉぉ……」ポチポチ
冬優子「――ま、頑張んなさい」
冬優子「ふゆも頑張んないとね、明日から」
冬優子「……あんたと、一緒に」ボソッ
冬優子「ふふっ」ニコッ
233 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/19(木) 02:50:17.17 ID:h4Eug96fO
とりあえずここまで。
234 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/11/19(木) 07:41:59.67 ID:0clfO11DO
おめ
そして、ヒナナのそれはどう影響するんだろう
235 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/21(土) 00:55:08.74 ID:qQJmCYDOO
10年後。
〜都内某所、マンションの一室〜
P「ははっ。セレブな物件を手に入れたと思ったら、段ボールだらけだな」
冬優子「引っ越してきたばかりなんだから、当然でしょ」
冬優子「ほら、さっさと荷解きするわよ」
P「そうだな」
P「とりあえずこんなもんでいいんじゃないか」
冬優子「そうね。全部出しても置く場所がないし、最低限必要なものを設置する、と……」
P「棚系のものを先に入れておいて良かったな」
冬優子「今日手が空いてる人がいないなんてね。まあ、忙しいのはいいことでしょ」
P「うちもおかげ様でデカくなったからなぁ……」
冬優子「ふゆのおかげね」
P「ああ、まったくだ」
冬優子「……正面から肯定されると、恥ずかしいんだけど」
P「本当のことなんだし、誇っていいんだぞ」
冬優子「誇ってるわよ。それでも、ふゆがやってこれたのは、っ……」
P「?」
冬優子「……あ、あんたのおかげだから!」
P「ありがとう、冬優子」
冬優子「……はいはい。もう」
冬優子「ふゆはあっちの小物とか本をやっておくから、あんたは大きめの荷物を先に片付けておいて」
P「了解だ」
P「こ、これで最後……っ!」
ドシン
P「はぁっ……、老いを感じるなぁ」
P「おーい、冬優子。大きめのは全部終わったぞー」
シーン
P「冬優子?」
P スタスタ
P「冬優子、本気出してデカめの荷物をすべて片付けてやっt……」
冬優子「……」
P「……それは」
冬優子「ストレイライト」
冬優子「懐かしいもんが出てきたの。ふゆと、愛依と、あさひと、それからあんた」
冬優子「全員で取った写真」
P「その段ボールって冬優子の私物をまとめたやつだよな」
冬優子「そ。その中にあった、ふゆが持ってた写真」
冬優子「思い出の画像を現像してフレームに入れておくなんて、ふゆのやることじゃないみたい」
P「あれから……結構経つよな」
冬優子「ほとんど10年、じゃない?」
P「そうだな……。それくらいになるか」
冬優子「……」
236 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/21(土) 01:14:04.56 ID:qQJmCYDOO
P「3人揃って笑顔……ってわけじゃないな。まったく」
P「冬優子なんてほら、顔が引きつっt――って痛い。痛いから。叩くな叩くな」
冬優子「あんたが余計なこと言うからでしょ!」
P「悪かったって。……うーん、愛依は全然変わらないな。それに――」
冬優子「あ、ごめん。悪いんだけど、夕飯のテイクアウト頼んでおいて」
P「――っと、そういえば結構いい時間帯だもんな」
P「冬優子は何が食べたい?」
冬優子「激辛麻婆豆腐」
P「中華ね。はいよ」
P「注文終わったら手伝いに戻るから。ちょっと待っててくれ」
P スタスタ
冬優子「……」
冬優子「ほんと、いつぶりなんだか」
冬優子「懐かしいなんてもんじゃないっての」
冬優子「……」
冬優子「……あんたは」
冬優子「あんたは、それでよかったの?」
冬優子「納得の行く結末だと、心から思えたって言うの?」
冬優子「……」
冬優子「……っ。なんてね、ふゆがそんなこと言うのは変な話よ」
冬優子「そう。本当……」
冬優子「……やめやめ! 他にも荷物はあるんだから、これ1つに構ってらんないわ」
冬優子 ガサゴソ
冬優子「あ」
冬優子「これ、……ふふっ」
冬優子「そっか。ふゆ、これも大切だったんだ」
冬優子「1人でユニットを代表した大会に出て優勝したときの……写真」
冬優子「これも、懐かしすぎるっての」
冬優子『あんたがいてくれたから、ふゆはここまで来れた』
冬優子『みんなを笑顔にできるようなキラキラしたアイドルになれたのよ、あんたのおかげでね』
冬優子『感謝してもしきれないわ』ギュウウウッ
P『そう言ってくれるのは……嬉しいな。けど――』
P『――他の誰でもない、冬優子の努力と想いもこの優勝には欠かせなかった』
冬優子「そうね、あの時は――」
冬優子『だから、今日は、その……ふゆの抱き心地でも覚えていってから帰りなさいよね』
冬優子『………………ふふっ、だいすき』ボソッ
冬優子「――っ!!! 〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」プルプル
P「冬優子、注文終わったぞ」スッ
冬優子「うわぁっ!?!?」
P「ど、どうした?」
冬優子「な、なんでもないっ!!」
237 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/21(土) 01:35:33.12 ID:qQJmCYDOO
P「ふぅ……ようやく落ち着けるな……」
冬優子「はい、お疲れ様のコーヒー」
P「お、ありがとう」
冬優子「悪かったわね。結局、ほとんどあんたに運ばせちゃって」
P「まあいいよ。嫌いじゃないんだ、こういうの」
P「冬優子も……ソシャゲ? フリマ? なんだか知らんがスマホいじりに勤しんでたみたいだしな」ハハッ
冬優子「あ、あれは違うの! 別にサボってたわけじゃ……」
P「いいんだよ。気にしてないから」
P「力仕事、雑務……どんと来い、だ」
冬優子「だーかーらー、そうじゃなくって理由は他に――」
ピンポーン
冬優子「――……インターホン?」
P「あ、出前だよ。さっき頼んだやつ」
P「ちょっと出てくる。冬優子はそこで休んでていいぞ」
冬優子「いや、休むのはあんたの方……ってもう行っちゃったし」
冬優子「ほんと、相変わらずね、“プロデューサー”は」
P「いやぁ、食った食った」
P「肉体労働の後の飯の美味さは何ものにも代えがたいな……」
冬優子「食べてもいいけど、健康診断で引っかかるんじゃないわよ」
冬優子「その……、っ、あ、あんた1人の身体じゃ、ないんだから……」
P「冬優子……」
冬優子「な、なに?」
P「前よりも結構食べるようになったか?」
冬優子「……は?」
P「腹が、な……」サスサス
冬優子「って、こら! 無断でさするの禁止!」
P「あ、すまん」
P「うーん。あれ、でも、せっかく頼んだ激辛麻婆豆腐は残してるし……体調がすぐれないのか?」
冬優子「あんたってやつは……もう」
冬優子「まあ、言い出せなかったふゆも悪いんだけど」ボソッ
P「?」
冬優子「お腹出てるの、見間違いじゃないわよ」
冬優子「言ったでしょ。あんた1人の身体じゃないって」
冬優子 ピラ・・・
冬優子「や、優しくさすってみて」
P「……」サスサス
冬優子「……」
P「……?」
冬優子「いるわよ」
P「え?」
冬優子「いまさすったところ。人がいるって言ってんの」
P「あ。そういうことか。……って、いや、人がいる、とかいう絶妙に怖い言い方やめろ」
238 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/21(土) 02:17:06.75 ID:qQJmCYDOO
P「じゃ、じゃあ……」
冬優子「そ。あんた、父親になったの」
冬優子「ふゆは母親」
P「冬優子……!」
冬優子「わ、悪かったとは思ってるわよ。言い出すタイミングがわからなかったから」
冬優子「引越しの作業をほとんど任せちゃったのも、辛いのを残したのも、そういうことだから……」
冬優子「か、感想は?」
P「いきなりで驚いたけど、……うん。すごく嬉しい」
P「そっか……そっか……!」
冬優子「……っ」テレテレ
P「抱きしめても……いいか?」
冬優子「や、優しくね」
P ギュ
冬優子「んっ」
P「冬優子……」
冬優子「……なーに」
P「呼んでみただけだ」
冬優子「ふふっ、なによ、それ」
P「嬉しすぎるからか、言葉が見つからなくてな」
冬優子「あっそ」
冬優子「……ふゆ、何でもできるのよ」
冬優子「あんたが、いるから。全然不安とかなくて」
冬優子「むしろ……うん、これからが楽しみなくらい」パッ
P「?」
冬優子「ありがと、P」
冬優子「あんたはこれまでふゆにたくさんのものをくれた……」
冬優子「ほんとに、数え切れないくらいよ」
冬優子「今度は! ふゆがあんたにあげていく番」
P「ははっ、別に、単なるギブアンドテイクな関係ってわけじゃないだろ?」
冬優子「そうだけど、ふゆが納得いかないの! いいからあんたはおとなしくふゆから受け取っておきなさい」
P「そっか。じゃあ、そうするよ」
P「それで、一緒にどうなるかを見守っていこう」
冬優子「あんた……わかってんじゃない!」
冬優子「待たせたわね、プロデューサー」
冬優子「これからは、あんたがプロデュースしてふゆが動くだけじゃない」
冬優子「あんたとふゆの、2人がプロデュースしていくんだから! ふゆたちの人生をね! だから――」
冬優子「――ふふっ、楽しみにしてなさい!!」バッ
P「ああ、楽しい人生にしていこう!」
P(ふと、冬優子がアイドルを始めた頃を思い出す。あの頃は、本当にいろんなことがあって大変だった)
P(それでも、かけがえのない時間であったことは確かだ。そんな記憶が、やはり、とても懐かしい)
P(なぜそんなことを思ったか――偶然にも、楽しそうな冬優子が左手を顔の近くに寄せるようなポーズになって、それがストレイライトの宣伝用に撮った写真みたいだったからだ)
P(あの時と違うのは、冬優子の左手薬指に俺があげた指輪がはまっていることだろうか。そう思うと、回想によって止まっていた時が、また、流れ始めたような気がしてくる)
P(時間は止まることなく流れていく。過去から現在へ、そして、現在から2人の未来へと。そんな中で、俺は、いつだって冬優子と一緒に過ごしていく幸せを噛み締めながら生きていくんだ)
239 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/21(土) 02:18:20.84 ID:qQJmCYDOO
黛冬優子のエンディングにたどり着きました。
冒頭に戻ります。
240 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/21(土) 02:19:27.80 ID:qQJmCYDOO
P(人の才能を見抜く――だなんて、簡単なことじゃない)
P(世の中に天才は一定数いるけど、それでも圧倒的な天才だらけじゃないから)
P(天才にもいろいろいる。天才なのに知名度が低いなんてまったくもって珍しいことじゃないんだ)
P(才能に貴賎はないが、才能ごとの中では貴賎はある)
P(アイドルで言えば、そう……歌、ダンス、演技、見た目――なんでもいい。放っておいても人をひきつける圧倒的な天才……)
P(そんなものをお目にかかれる機会なんて巡ってくるのだろうか……俺は、そう思っていた)
P(けど、思ったよりも早く――)
「よっ……ほっ……っと」
P(それは、偶然か、必然か)
「――ここは……こう?――」
P「!」
「――っと……うん、決まった!」
P「君、ちょっといいかな?」
「? わたしっすか?」
P「ああ、さっきのダンスって――」
P(――一瞬で“それ”だと確信できる存在に、俺は出会ったんだ)
241 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/21(土) 02:20:44.74 ID:qQJmCYDOO
〜事務所〜
P「おはようございます」
あさひ「あ! プロデューサーさん!」
P「お、あさひか。どうした?」
あさひ「これ、見てくださいっす!」
P「これって……石、だよな」
あさひ「ただの石じゃないっすよ〜?」
P「どんな石なんだ……?」
あさひ「それはっすね〜……」
愛依「おっ、あさひちゃんじゃ〜ん。なになに? また何か持ってきたの?」
あさひ「これっす!」
愛依「石……? しかもわりとでかめの」
あさひ「これ、冬優子ちゃんにそっくりなんすよ!!」
愛依「ぶふっ!」
あさひ「わっ! 愛依ちゃんきたないっすよ。いきなり噴き出してどうしたんすか?」
愛依「い、いや……だって……」プルプル
あさひ「プロデューサーさんはどうっすか!? この石、似てるっすよね? 冬優子ちゃんに」
P「ど、どうなんだろうな……」
あさひ「えーっ、みんなわかんないんすかねー」
あさひ「この辺の輪郭とか、そっくりだと思うっす!」
P「ただのゴツい岩の一部にしか……」
愛依「あっはっはっはっは!! ひーっ、ちょーウケる……」ククク...
あさひ「むぅ」
P「……なあ、あさひ。一つ聞きたいんだが」
あさひ「なんすか?」
P「それ、冬優子には言ってないよな?」
あさひ「もちろん――」
P ホッ
あさひ「――最初に伝えたっすよ?」
P「……」
あさひ「今朝早起きして走ってたら河川敷の近くで見つけたんすよ! ゲットしてすぐ報告っす!!」
愛依「あー……。ねえ、プロデューサー?」
P「なんだ?」
愛依「今日のうちらの予定って、どうなってたっけ?」
P「午後からレッスン。現地集合も可」
愛依「あはは…………やば」
あさひ「今日もがんばるっすよ! 愛依ちゃん」
242 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/21(土) 02:25:54.46 ID:qQJmCYDOO
夕方。
P カタカタ
P「ふぅ……」
P(そろそろ、あいつらが戻ってくる頃か)
P(というか、冬優子怒ってるだろうな……)
P(ちゃんと仲直りしててくれよ)
あさひ「ただいま戻ったっす!」
愛依「たっだいま〜」
冬優子「帰ったわよー……」
P「おかえり、3人とも」
冬優子「あ。ん゛ん゛っ。あーさーひー……」
あさひ「そうだ、プロデューサーさん!」
P「ん? どうしたんだ?」
あさひ「今日のレッスンなんすけどね、冬優子ちゃんすごかったんすよ!」
あさひ「なんだか、いつもより迫力があった気がするんす!!」
冬優子「はぁ……あんたに怒るのに体力使うくらいなら、レッスンでストレスもろとも発散させてやろうと思っただけよ」
愛依「とか言って〜、ほんとは怒るつもりもなかったんじゃないの〜?」
愛依「冬優子ちゃん優しいし」
冬優子「別に……そんなんじゃないわよ」
冬優子「あ、思い出したらまたイライラしてきたわね」
P「ま、まあ、あさひも悪気があったわけじゃないんだろうし、な?」
冬優子「それが余計にタチわるいっての」
冬優子「まあいいわ。ちょっと休ませて」ボフッ
あさひ「あ! じゃあわたし、冬優子ちゃんのとなりに座るっす!」
あさひ「とーう!」ボフッ
冬優子「ちょっ……! 暑いからあっちいきなさいよ、ほら、しっしっ」
あさひ「……っ」ショボン
冬優子「……! 嘘よ。ちょっとくらいなら、いいわ」
あさひ「!」パァァァ
あさひ「わーい! 冬優子ちゃんの隣ゲットっす!」ダキッ
冬優子「だ、抱きつくことまでは許可してないわよ! ちょっとって言ったじゃない! ……もう」
愛依「いいねいいね〜、見てて微笑ましいわ」
P「なんだかんだで仲良いんだよな」
愛依「ね。うち、あの子たちとアイドルできてよかった」
愛依「さーってと、うちも混ぜてもらお〜」
冬優子「ちょっ! あんたまでなに抱きついてんのよ!」
P(3人とも笑顔だ。このユニットにしてよかった)
P(あさひは天才で、冬優子と愛依は決してそうではない。けど、それは2人があさひの引き立て役という意味なんかじゃなくて……)
P(裏表のないあさひと、2面性のある冬優子と愛依――)
P(――強い光と濃い影が、綺麗なグラデーションを成して魅力的なものになっているんだ)
冬優子「……ったく、暑いわねもうっ!」
冬優子「プロデューサー! もっとクーラー効かせて!」
P「ははっ、はいよ」ピッ
243 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/21(土) 02:29:24.42 ID:qQJmCYDOO
P カタカタ
あさひ「……」ジーッ
冬優子「……」
あさひ「……」ジーッ
冬優子「……なによ」
あさひ「わたしのほう、見てほしいっす」
冬優子「もう……なに――って顔近っ!」
あさひ「……」ジーッ
冬優子「な、なんなのよ……」
冬優子「綺麗な顔してんだから見つめられたらやばいっての……」ボソッ
あさひ「冬優子ちゃんって、髪の毛のここを……こうすると」
あさひ「ほら、やっぱりクワガタみたいっす!」
冬優子「……」
P(……)
あさひ「んー、アゴの長さ的にはメスのクワガタっすかねー。あ、冬優子ちゃんがしゃくれてるって意味じゃないっすよ?」
冬優子「わかってるわよ……」
愛依「なんか面白いこと思いついちゃった系? あさひちゃん」
あさひ「そうなんすよ。ほら、冬優子ちゃんクワガタっす!」
冬優子「もうどうでもよくなってきた……」
愛依「じゃあうちは……」
P(愛依が後ろ髪を前に……?)
愛依「サタンオオカブトじゃー!」グワァーッ
あさひ「あははっ! すごいっす! これでバトルできるっすよ、冬優子ちゃん!」
冬優子「あー、はいはい。よかったわねー」
愛依「うちにしては結構グッドアイデアだったくない?」
あさひ「はいっす! 色合い的にもバッチリっす!」
愛依「そうっしょそうっしょー。うちってばものしり〜〜」
冬優子「……愛依もよく付き合ってられるわね」
愛依「まあねー。下の子たちの面倒見てるからさー、うちも楽しいし」
冬優子「ふーん、そういうもんかしら」
244 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/21(土) 02:33:38.14 ID:qQJmCYDOO
P「ははっ、お前ら仲良しだな」
あさひ「プロデューサーさんも見るっすか? 冬優子ちゃんクワガタ」
P「ここからでも見えてたよ。立派なアゴだよな」
冬優子「あんたまでノッってんじゃないわよ……ったく」
あさひ「冬優子ちゃん……クワガタ……」
P「どうしたんだ? あさひ」
あさひ「うーん、何か思い出しそうなんすよね」
冬優子「……最高に嫌な予感がするんですけど」
あさひ「あっ!」
冬優子「……」
愛依「なになに? どしたん?」
あさひ「この前愛依ちゃんと冬優子ちゃんに見せた幼虫!」
愛依「あー……」
冬優子「はぁ……」
あさひ「もう成長したと思うんで、今度持ってくるっすよ!」
冬優子「持ってこなくていいわよ!」
あさひ「えーなんでー!?」
冬優子「なんでって、こっちがなんでって言いたいわよ」
あさひ「せっかく冬優子ちゃんと冬優子ちゃんのバトルが見られると思ったのに……」
冬優子「あんた、「この幼虫、冬優子ちゃんみたいっす」とか言ってたけど、ふゆとおんなじ名前つけてんじゃないでしょうね……」
あさひ「えー、いいじゃないっすかー。可愛いんすよ?」
冬優子「そういう問題じゃないっての」
愛依「五十歩? 譲っても、もう成長したなら幼虫じゃないっしょ〜」
冬優子「愛依、もう五十歩とおつむが足りてないわよ。出直してきなさい」
愛依「あちゃ〜、結局譲るんだったっけ?」
冬優子「スマホあるんだからググっときなさい……はぁ」
あさひ「冬優子ちゃん急におむつの話なんかしてどうしたんすか? まさか……っ!」
冬優子「あさひちゃんっ、ま・さ・か、のあとには何を言うつもりなのかな〜?」
あさひ「冬優子ちゃんはおもらs――むぐっ」
P「おむつじゃなくておつむだぞ、あさひ」
あさひ「むーっ、プロデューサーさんが急にわたしのほっぺをむぎゅっと……! してきたっす」
P「ほら、もう暗くなってくるから、3人とも帰ったほうがいいぞ」
あさひ「プロデューサーさんは帰らないんすか?」
P「まだ仕事が残ってるからな」
愛依「プロデューサーも大変だよねー……マジで感謝しかないわ」
P「いいのいいの、プロデューサーってのはそういう仕事なんだよ」
P「よし、今日のストレイライトは解散だっ」
245 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/21(土) 02:34:36.91 ID:qQJmCYDOO
とりあえずここまで。
246 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/11/21(土) 05:39:25.88 ID:2AlFtdtto
とりあえず冬優子ルートおつ
普通にこれだけで一つの作品だしお得感がでかい
途中から存在感か消えたのこり二人が気になるが……
247 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/22(日) 00:31:39.86 ID:snwx+kQHO
〜仕事帰り 車内〜
P「今日のラジオ、あさひらしく場を盛り上げられたじゃないか。よかったぞ」
あさひ「あ、そうなんすか? そういうのはよくわかんないっす!」
あさひ「わたしは、ただわたしが思ったことを答えたり話したりしただけっすから」
P「そうか。まあ、それがあさひだよな」
P(しかし、テレビ局で一緒にゲスト出演してた芸人にあさひがからまれちゃったから、随分と帰りが遅くなったな……)
P(……あいつ、絶対にあさひの見た目にしか興味ないぞ)
P(あさひの魅力はそんな単純なものじゃない。見た目は大事だが、もっと内在的なところが重要なんだ)
あさひ「あ、……雨」
ポタ・・・ポタ・・・
P「ああ、みたいだな……」
あさひ「どうしたんすか? 元気ないっすね、プロデューサーさん」
P「いや、なんでもないよ」
ザァァァァァ
あさひ「おおっ!?」
P「集中豪雨か? いきなりだな」
P「風もなかなかだし、大荒れだ」
P「なかなか止まないな、雨」
あさひ「プロデューサーさん! あれ、見て欲しいっす!」
P「もう少しで信号だからちょっと待っててくれよー」
あさひ「う〜〜、はやくはやく〜〜!」
P「ほら、一旦停止だ……っと。どれどれ」
P「あれは……着物を着た人たち、だな」
あさひ「そうなんすよ! なんであの人たちは着物来てるんすかね?」
P「時期的に成人式や入学式じゃないだろうし、うーん」
P「……あ、そういえばこの辺って、今日行われる花火大会の開催場所の近くだったような」
あさひ「花火大会……!」
P「可哀想に……たぶんあの子たちは花火大会に行こうとして着物を着て出てきたんだろうけど、雨で延期か中止になってしまったんだな」
あさひ「花火って雨の中で打ち上げられないんすか?」
P「花火が打ち上がるかどうかっていうより、お客さんの安全を守れるかどうかということなんだろう」
P「火薬とかを使って打ち上げるわけだから、突風や落雷があれば、かなりの危険が伴うんじゃないか?」
あさひ「天気が悪くても安全に打ち上げられる花火とかないんすかね〜」
P「ははっ、あったらいいだろうな」
P「まあ、打ち上げ花火ではないけど、手持ち花火なら問題ないと思うぞ」
あさひ「プロデューサーさん、持ってるっすか?」
P「いや、持っては――」
P(気分転換には……なりそうだな)
P「――いないけど、せっかくだし買って一緒にやろうか」
あさひ「! はいっす! プロデューサーさんと花火〜、やったっす〜〜!」
P(とりあえず嬉しそうだ)
248 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/22(日) 01:15:01.03 ID:snwx+kQHO
〜いつもの河川敷〜
P(郊外に出たら普通に悪くない天気だったな)
P(もう暗い時間帯だし、花火をするには良い状況だろう)
あさひ「プロデューサーさん、早くやるっすよ〜!」
P「ああ。ちょっと待ってな。いまチャッカマン出すから」
あさひ ソワソワ
P「ほら、花火出して」
あさひ「はいっす」
P「よっ……」
ボッジジジ・・・
あさひ「うーん、なかなか始まんn――」
ボシュゥゥゥ
あさひ「――おおっ!!」
あさひ「あはははっ、綺麗……!」
P「そうだな……」
あさひ「プロデューサーさんも一緒にやるっす!」
P「え? 俺もか?」
あさひ「やらないんすか?」
P(はしゃいで、楽しそうにしているあさひを見るだけで満足してた……とは言いづらい)
P「……やる」
あさひ「わたしの花火の火、使っていいっすよ。はいっ」
P「ありがとう、あさひ」
ジジジ・・・
P「……」
ボッ! シュゥゥゥ
P(手持ち花火なんて、いつぶりだろう)
P(学生のときだろうか。少なくとも、社会人になってからは、やっていないと思う)
あさひ「わあっ! プロデューサーさんもおんなじ花火っす〜〜」
P「同じ?」
あさひ「色と形がおんなじなんすよ。お揃いっすね!」
P「ははっ、そうか」
シュゥ
あさひ「あ、終わっちゃった……」
P「まだまだたくさんあるぞ。やるか?」
あさひ「!」
あさひ「はいっす!」
あさひ「プロデューサーさんが買ってくれた花火の色と形……全部知りたいっす!」
P「わかった。じゃあ、一緒に見ていこうな」
あさひ「ワクワクっす〜。楽しみ〜」
P「じゃあ、次はこの違うデザインのやつを……」
249 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/22(日) 01:35:22.69 ID:snwx+kQHO
シュゥッ
あさひ「あ……」
あさひ「……」シュン
P「ど、どうしたんだ? あさひ」
あさひ「え? あ、その……」
あさひ「終わっちゃった、っす」
あさひ「……」
P「あさひ……」
あさひ「プロデューサーさんと、もっと色んな花火を見てみたいんすけどね」
P「花火、好きなのか?」
あさひ「どうなんすかね。それはよくわかんないっす」
あさひ「花火が好きかはわかんないっすけど……」
あさひ「プロデューサーさんと見る花火は、楽しくて、もっとやりたい! っていうのはわかるっす」
あさひ「けど、それも最後だったっすかね……」
P「この王道の綺麗な花火セットは、な……。でも、ほら、これ」
あさひ「?」
P「線香花火ってやつだ」
P「さっきまでのやつみたいな派手な花火じゃないが、風情があって、なかなかどうして良いものだと思うぞ」
あさひ「プロデューサーさん……」
P「これも、一緒にやろう」
P「はい、まずは1本」
あさひ ワクワク
P「じゃ、火をつけるぞ」
あさひ「どうなるんだろう……!」
P「あんまりはしゃいじゃダメだぞ? 見守るんだ」
あさひ「見守る?」
P「まあ、見ればわかると思うよ」
ジュジュジュジュジュ・・・
あさひ「わわっ! なんかバチバチなってきたっす」
P「そう。でも、おとなしいんだ、こいつは」
あさひ「そうっすね。さっきやった花火とはまるで別物っす」
パチッ・・・パチパチッ
あさひ「あ、はじけたっす……」
P「たぶん、しばらくは何回かそうなるよ」
バチバチバチバチバチ
あさひ「あははっ、元気になったっすね!」
P「この、徐々に……控えめだけどしっかりはじけていって、ほど良い力強さで形をなすのが好きなんだ」
P「派手な見た目ではないけど、でも、人の心を動かす何かを持ってるんじゃないかって思えて……」
あさひ「プロデューサーさん」
P「どうした?」
あさひ「この花火、なんだか温かいっす」
あさひ「優しい、花火っすね」
P「そうだな……癒してくれる花火だよ」
250 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/22(日) 02:03:20.13 ID:snwx+kQHO
あさひ「不思議っす。癒されるって、どんな感じなのか、全然言葉にならないのに……」
あさひ「いま、わたしは確かに癒されてるんだなって思えるんすよ」
あさひ「癒されてるって、温かい……?」
あさひ「プロデューサーさんは、線香花火を見て温かくなるっすか?」
P「ああ。俺も、たぶん、あさひと同じことを感じてる」
P「現象としての熱じゃない、心に響く温かみを」
あさひ「……」
P「……」
あさひ「……」ニコッ
P「……」ハハッ
あさひ「プロデューサーさんっ!」
P「どうした? あさひ」
あさひ「これ、実際に手で触ったら、きっと温かいっすよね」
P「台無しだよ。そりゃ激熱だろうよ。絶対にやるなよ」
あさひ「でも、触ってないのに熱いって本当にわかるんすか?」
あさひ「みんなが熱いっていうからそう思いこんでるだけ……ってことはないんすかね」
P「深いことを言ってるけど、熱いのは本当だから、頼むからここではこらえてくれ」
あさひ「しょうがないっすね〜〜」
P ホッ
P(でも、ふとした瞬間に実行にうつしそうで怖いんだよな……)
P(ちょっと話題をすりかえて興味をそらしてみるか)
P「いまあさひが持ってる線香花火の熱はな、理論上は冬優子や愛依に届いてるかもしれないんだぞ」
あさひ「冬優子ちゃんや愛依ちゃんに……?」
あさひ「じゃあ、いま2人は大やけどしてるんすか?」
P「あ、いや、そういうことじゃなくてな」
P「適当な仮定の下での熱の広がり方を記述する方程式に熱方程式っていうのがあるんだ。拡散方程式の一種とも言える」
P「で、その拡散方程式ってやつの解は無限伝播性を持ってるんだ」
P「そういう意味で、例えば、あさひが持ってる線香花火の熱によって、もしかしたらアキバで歩き回ってる冬優子や学校帰りの愛依の、周りの温度をごくわずかに上げるんだ。理論上はね」
あさひ「じゃあ、花火をやる度に他の場所や人も熱くしてるんすね」
P「ほとんど0だが0じゃないような程度には、……ははっ、そうなのかもな」
あさひ「なんか、アイドルみたいっすね」
P「そう、なのか……?」
あさひ「アイドルって、ステージの前にいる人だけを相手にしてるわけじゃないし」
P「! ……そうだな」
あさひ「家にいる人だって、電車に乗ってる人だって、それに……病院にいる人だって……ライブ配信とか収録ではげまされるかも……」
P「あさひ……」
あさひ「どうなんすかねー」
P「それこそ、ゆっくり考えていけばいいさ。時間はあるんだから」
あさひ「時間……」
P「ああ」
あさひ「そういえば、さっきプロデューサーさんが言ってた熱なんちゃらって、どうしたらわかるんすか?」
P「大学で理系の学科に進めば……専門によっては習うかな。それか、自分で調べたり勉強したりしてもいいと思うぞ」
251 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/22(日) 02:14:44.38 ID:snwx+kQHO
あさひ「大学って、学校……っすか」
P「?」
あさひ「い、いやっ、なんでもないっす!」
あさひ「それよりプロデューサーさん! さっき、自分で調べてもいいって言ってたじゃないっすか」
あさひ「本とか読めばいいんすかね?」
P「まあな。独学で勉強するっていうのもありだとは思うぞ」
あさひ「じゃあ、今度一緒に図書館とか本屋さんに行って欲しいっす!!」
P「ははっ、そうだな。そのうちな」
あさひ「約束っすよ?」
P「あさひがいい子にしてたらな」
あさひ「はいっす! わたし、いい子にしてるっす!」
ジジジ・・・ポトッ
あさひ「あ、終わっちゃった」
あさひ「……」
あさひ「花火って、あんなに綺麗なのに、すぐに終わっちゃう……」
P「?」
あさひ「花火……花火に心があったら、どう思ってるんすかね」
P「花火に、心が?」
あさひ「火がついてはじけていくときとか、自分がどんなに綺麗な花火だって知ってても、それが始まったら最後……じゃないっすか」
P「あさひ……」
あさひ「花火は綺麗っす。でも、わたしは花火にはなりたくないっす」
P「もし、さ……手持ち花火がずーっとそばではじけ続けて光を放ち続けてたらどう思う?」
あさひ「それは迷惑っす! なんていうか、興醒めっす〜〜……」
P「花火はさ、綺麗なのにすぐ終わっちゃうって思うんじゃなくて――」
P「――すぐに終わるからこそ美しい……そう思ってもいいんじゃないか?」
あさひ「……」
P「もちろん、はじけている間は文句のつけようのないくらい綺麗だと思う」
P「けど、それが短い間の出来事だって、俺たちは知ってるから……」
P「だから、綺麗だ――って、心の底から感動できるんじゃないかと、俺は思うよ」
P「もし、花火に心があったとしても……」
P「その気持ちが悲しいものだと決め付ける必要は、ないんじゃないか?」
あさひ「プロデューサーさん……」
あさひ「……えへへっ、そうっすね。そうかもしれないっす」
あさひ「まだ、あるっすか? 線香花火」
P「ああ。あと3、4本はあるぞ」
あさひ「! やりたいっす!」
P「ははっ、そうか。……そうだな。よし、俺もやるよ」
252 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/22(日) 02:21:46.20 ID:snwx+kQHO
あさひ「……すべて終了、っす」
P「なんだかんだ買った花火を全部使っちゃったんだな……」
あさひ「線香花火……またできるっすかね」
P「できるさ。また買って、今日みたいにやればいいんだ」
あさひ「プロデューサーさんがいてくれたから、今日はいろんな発見ができた気がするっす!」
P「それは良かった。俺も、あさひに気づかされたこととか、あると思うよ」
あさひ「いやーっ、今日は楽しかったっす! ありがとうございますっす! プロデューサーさん!」
P「俺のほうこそ、あさひと一緒に花火ができて、たくさん話もできて、楽しかったよ。ありがとうな」
あさひ「はいっす!」
あさひ「今日のことは……きっと、一生忘れられないっす!」
P「ははっ、でも、そのうち、彼氏とかと一緒に花火やって、今日の楽しさが上書きされるかもしれないぞ? ……なんてな」
あさひ「……」
P「あさひ?」
あさひ「……なんでもないっすよ〜。さ、帰るっす」タタタタタ
P「ああ、車停めたところに向かおう……って足速っ!? ま、待ってくれよ」
あさひ「プロデューサーさん! 今日の記憶は、上書きなんてしてやらないっすよー!」
あさひ「それでも上書きしたいって思ったら、そのときは、また、プロデューサさんと花火をやるっす!!」
253 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/22(日) 02:22:19.92 ID:snwx+kQHO
とりあえずここまで。
254 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/11/22(日) 06:55:40.89 ID:rVgl7amuo
おつー
255 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/24(火) 01:24:49.06 ID:Ys/YOZGbO
〜事務所〜
P「買い物?」
愛依「そうなんだよね〜……。お兄とお姉は出かけてて夜まで帰ってこないとか言い出すし、かと言ってさすがに下の子たちを振り回すわけにも……ね」
愛依「男手があると助かるなーって思うんだけど、どう?」
愛依「ほら、明日って日曜じゃん? だから……プロデューサーも空いてるかなーって」
P「まあ、空いてはいるぞ」
愛依「あ、別に疲れてるとかなら無理にとは言わないし……!! プロデューサーさえよければ……」
P「いや、別に構わないぞ」
P「行こうか」
愛依「ほんとっ! やった! マジ助かるわ〜」
愛依「サンキューね」
翌日。
〜某大型ショッピングモール〜
愛依「……」
P「どうかしたのか?」
愛依「なんか……こんなでっかいところに来たの久しぶりでさ」
愛依「めっっっっちゃテンション上がってる……!」
P「ははっ、まあ、今日は愛依の好きなようにしたらいいさ
P「俺は車出して荷物持ちするために来たつもりだし」
愛依「ほんと感謝しかないって! 車もあれば量とか気にせず一気に買えるしさ」
愛依「それに、普通にちょっとでかめのスーパーとかだと思ってたら、まさかこんなところに連れてきてくれるとは思わなかったっていうか!」
P「楽しそうでなによりだよ」
P「ほら、買い物に来たんだろ? まずは何を買うんだ?」
愛依「そんじゃねー――……」
256 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/24(火) 01:26:44.70 ID:Ys/YOZGbO
愛依「食べ物とかは最後に買いたいし、最初はこの辺からかな〜」
P「なるほど、服屋か」
愛依「ちょっ、確かにそうだけど、その呼び方はやばいっしょ」ケラケラ
P「じゃあ……ブティック?」
愛依「まあ、それでいい……のかも? てか、メーカーとかブランドで呼ぶもんじゃね?」
愛依「プロデューサー、ひょっとしてファッションとか興味ないカンジ?」
P「うーん、正直よくわからん……」
愛依「あ、じゃあうちがプロデューサーの私服選んだげるわ!」
P「え、でも愛依の買い物に来てるのに……いいのかよ」
愛依「いいのいいの! いいから行こ!」グググ
P「あ、ちょ、わかったから、押すなって……」
P「これは……」
P「名前とかは聞いたことのある店ばかりだな」
愛依「プロデューサーってさ、アイドルのプロデュースしてるんだよね?」
P「そりゃそうだが」
愛依「それならさ、衣装とかの話でファッションとか考えるんじゃない? って思ったんだけど」
P「いや、デザインとファッションは俺の中では別というか……」
P「ましてや、アイドルのことじゃなく自分のこととなるとな……」
愛依「……そっかそっか! じゃあ、うちも教えがいあるわ!」
愛依「まずはここ入ろ。ほらほら」
愛依「うーん……」
P(食い入るように服やマネキンの着飾ったやつを見てるな……)
P「愛依は、こういうファッションとか、結構好きなのか?」
愛依「まあ、嫌いじゃないかな。アイドルやるようになって、衣装さんといろいろ話すうちに知ったってカンジ?」
P「なるほどなぁ――まあ、そうだよな」
P「アイドルって仕事は――歌って踊って魅了してというのが基本っちゃ基本だけど、俺としては、それ以外にもいろんなことを学んでもらえたら……なんて思うかな」
愛依「へー……」クスッ
P「ど、どうかしたか?」
愛依「なんでもなーい。ほら、ちょっと上下選んでみたから試着してよ!」
P「お、おう……ありがとう」
257 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/24(火) 01:30:59.20 ID:Ys/YOZGbO
愛依「どーおー?」
P「……」
愛依「プロデューサー?」
P「き、着てみた……」シャーッ
愛依「おお! 結構決まってるくない?」
P「そうかな……はは、ありがとう」
愛依「あ、プロデューサー照れてるっしょ〜。貴重なとこ見ちゃったな〜」
愛依「……うん、うん。見れば見るほどいいわ。うちすごくね?」
愛依「色の組み合わせと……ここに入ってるラインとか、可愛いわ〜」
P「か、可愛い……?」
P「それなんだけどさ」
P「よく女の子ってメンズとかレディース問わず「可愛い」って言うのは、どういう感想なんだ?」
愛依「え? うーん……、あはっ、うちもわかんない!」
愛依「とにかく可愛いもんは可愛いってカンジ? 細かい理屈とかはいいんじゃね?」
P「愛依はファッション関係のコラボもできるかもな」
愛依「マジ!? それ楽しそうじゃん!」
愛依「……あ、でも、うちってクールキャラでアイドルやってるし……テンションのメリハリとか頑張んないとだな〜」
P「それだけ自分の仕事のこと考えてくれてるなら、俺としては安心だよ」
P「まあ、仕事のことはともかく――」
P「――服、選んでくれてありがとうな。買うよ、この組み合わせで」
愛依「いいの? うちの趣味で選んじゃっただけだけど」
P「まあ、俺はもともと自分のファッションには興味なかったしさ」
P「愛依が俺の服選んでくれるなら、もうそれが俺のファッションでもいいかな……なんて」
P「だから……うん、そうだな。愛依がいればいいよ。俺が服を選ばなくてもさ」
愛依「!」
愛依「……そっか」
P「愛依?」
愛依「もー、……しょーがないから、そうしてあげる!」ニカッ
愛依「ほら! そしたら、次行こ次! プロデューサーに似合いそうな組み合わせ、まだあるんだ〜」グイッ
P「えっ、ちょっ、愛依の買い物は……」
愛依「これもうちの買い物だし!」
愛依「うちとプロデューサーの! 買い物でしょ」
P「……ははっ、おう!」
258 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/24(火) 01:53:27.07 ID:Ys/YOZGbO
愛依「……」
P「うぐぐぐぐ……」
愛依「あの……さ、うちもなんか悪かったっていうかー……」
愛依「うちも持つよ? いまさらだけど、プロデューサー、うちの着せ替え人形してくれただけだし……服だけなのにそんなに持たせちゃって……」
P「だ、大丈夫だ……それに、一旦車に積みに戻るためにいま移動してるわけだし……」
P「俺は荷物持ちだ……気にするな」
愛依「……」
愛依「じゃ、じゃあ、さ」
愛依「こうしよ? ね?」
P「?」
愛依「一回止まって荷物下ろして」
P「……あ、ああ」ドサッ
愛依「このでっかい袋に、小さいのをまとめて……っと」
愛依「これとこれと……それからこれ、プロデューサー持ってくれる? うちはこれとこれ持つからさ」
P「わかった」
P「この一番大きいのはどうするんだ?」
愛依「こうする……」
愛依「ほ、ほら! 片方はうちが持ってるから、もう片方持ってよ」
愛依「そうすれば、一緒に持てるっしょ」
P「そ、そうだな……」
愛依「……」
P「っと……お、これは楽だな」
愛依「あ」
P「?」
イッセーノセー
キャッキャッ
P(ふと、小さい子ども1人を連れた親子連れ3人が目にとまる)
P(父親と、母親と、それから子ども――)
P(――両親の間にはさまって、それぞれ片腕ずつを持ってもらった子どもは、タイミングよく両親にひっぱられてブランコ遊びをしている)
P(よくある、日常の中の微笑ましい光景だ)
P「なんか、さ」
P「俺たちは荷物だけど、持ち方はなんとなく似てるよな」
愛依「っ! ちょ、ちょっとなに言ってんの……もう」
P「愛依?」
愛依「別に何でも……ほら、早く駐車場行こうよ……」
259 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/24(火) 01:57:58.49 ID:Ys/YOZGbO
P(それからも、愛依といろいろな店をまわった)
P(レストランで昼食をとり、生活雑貨やインテリアなど、いろいろ――)
P(――買い物という漠然とした目的で来たが、それゆえに何をしても楽しかった)
P(それに、愛依が楽しそうで、なんだか嬉しいという気持ちとともに、安心感を覚えていた)
P(芸能界という世界に踏み込んでいる以上、アイドルである彼女――彼女らはストレスを抱えているんじゃないかと思っていたからだ)
P(今日は……来てよかったな)
P(俺のためにも)
愛依「よーっし、これで最後!」
P「スーパーか」
愛依「じゃ、がんばってこ! プロデューサー!」
P「ああ、そうだな」
愛依「あとは――……って、あ」
P「何かあったのか?」
愛依「あはは……いや、あそこにさ、おもちゃ付きのお菓子のコーナーあるなって」
P「ああ……食玩か」
愛依「弟が欲しがることもあったからさー、なんかそれ思い出しちゃった」
愛依「プロデューサー、言っとくけどおもちゃ付いてるお菓子は買わないからね……なんて。……ん? って、あれ?」
愛依「いない……あっ!」
愛依「……」
愛依「……あははっ、もう」
P「これ……近所だと売り切れになってるやつ……」
P「うーむ……」
P「ほ、欲しい……!」
トントン
P「はい? ……あ」
愛依「……」ニコニコ
P「いや、違うんですよ」
愛依「はぁ……まあ、別に買ってもいいけどさ」
愛依「意外とコドモっぽいとこあんだね」
愛依「冬優子ちゃんあたりに話したら……」
P「やめてください」
愛依「うそうそ、別に言ったりしないって!」ケラケラ
260 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/24(火) 02:01:35.53 ID:Ys/YOZGbO
〜駐車場〜
P「ふぅ……やっと詰め込めたぞ……」
ピトッ
P「ぅぉ冷たぁっ!?」
愛依「あはははっ、いいリアクションじゃん!」
P「はぁっ、はぁっ……め、愛依か……」
愛依「はい、お疲れさま。プロデューサーはコーヒー好きかなって思って、そこの自販機でアイスの缶コーヒー買ってきた!」
P「愛依……」
P「ありがとう……」グスッ
愛依「ちょっ!? 泣いてんの!?」アセアセ
P「……ふっ、嘘泣きだ」
愛依「え?」
愛依「も、もう……! マジでおかしくなっちゃったのかと思ったんですけど!」
P「ははっ、すまんな」
愛依「……」
愛依「……なんていうか、さ」
愛依「こう、その……」
愛依「うち、プロデューサーにどうお礼したらいいのかな……」
P「そんなこと気にするなって。俺がしたくてしたんだからさ」
愛依「だ、だけど……!」
P「ほら、愛依に缶コーヒーももらえたし。気にするなら、これが報酬ってことでいいよ」
愛依「うちが言いたいのはそういうことじゃなくて……」
P「?」
愛依「……」
愛依「……ま、いまは――いいっか」ニコッ
愛依「これからもうちがプロデューサーの服選んだげるから!」
愛依「……だから、さ――」
愛依「――一緒に買い物! ……また行こーね」
261 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/24(火) 02:32:48.72 ID:Ys/YOZGbO
とりあえずここまで。共通ルートでは、一部、ほとんど同じ話になっているところもありますが、長い目で見ていただければと思います。
262 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/11/24(火) 07:26:56.99 ID:kSmNtRU30
おつ 楽しんで見てます
263 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/11/24(火) 07:44:46.41 ID:P33DYGKDO
乙
まだ誰ルートってわけじゃないのね
264 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/11/24(火) 09:51:04.91 ID:b6z+nu1ZO
おつおつ
265 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/25(水) 01:25:46.32 ID:8rx8EiIvO
〜事務所〜
あさひ「うーん……」
冬優子 ポチポチ
愛依「zzzZZZ」
P カタカタ
あさひ「むむむ……」
冬優子「あ、そうだ。ここは……」ポチポチ
愛依「zzzZZ……フガッ」
P カタカタ
あさひ「あーっ! わかんないっす!!」
冬優子「もう! うっさいわねー……さっきから何うなってるのよ」
愛依「っ!? な、なに!?」ガバッ
P「ははっ、にぎやかだな」
あさひ「わかんないっす……」
冬優子「はいはい、何がわかんないっての?」
あさひ「いま、星はどこにあるのかが……わかんないんすよ」
あさひ「夜には見えるのに……太陽が昇ってるときには見えないじゃないっすか!」
冬優子「はあ? あんた何言ってんのよ」
冬優子「見えてないだけでいまもあるわよ――あの青空の上に」
あさひ「見えて……ない……?」
冬優子「そうよー。わかったら大人しくしてなさい」
愛依「ふわぁぁぁ……ねみ……。んーっ。寝ちゃった……zzzZZZ」バタリ
あさひ「でもでも、冬優子ちゃん。もし星が夜にだけ現れて……太陽が出てくると消える……それなら――」
あさひ「――不思議で、面白いことじゃないっすか?」
冬優子「あんたね……話聞いてたの?」
冬優子「いつ出てきていつ消えるとかじゃないのよ。いつもあるの。見えるかどうかが時間によって違うだけ」
あさひ「冬優子ちゃんは、それ、自分で確かめたことあるんすか?」
冬優子「それは……ないけど」
あさひ「これは……調べる必要がありそうっすね!」
冬優子「ふゆは付き合わないわよ。やるにしても、あんた一人でやってなさい」
あさひ「えー。あ、愛依ちゃーん……」ユサユサ
愛依「んー……? あと3分……」ムニャムニャ
あさひ「もー、つまらないっすー!」
あさひ テテテ
あさひ「プロデューサーさん!」
P「お、あさひか。どうした?」
あさひ「昼の間……星はどうなってるっすか?」
P「そうだな……今度、調べてみようか、一緒に」
あさひ「わーい! やったー!!」
冬優子「あんた正気なの? その中学生を相手にするわけ?」
P「まあ、プロデューサーである前に……大人だしな。子どもの疑問に答えてやりたい気持ちはあるよ」
冬優子「ふーん……あっそ! ふふっ、ま、頑張んなさい」
266 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/25(水) 01:48:58.08 ID:8rx8EiIvO
〜某高原地帯〜
P(今日は早朝から地方でストレイライトとして出すアルバムのジャケット用の撮影――のはずだった)
P(というのも、現地に到着したとたんに天候が悪化し、延期になってしまった)
P(事務所の持つ素材を撮るためのロケでもあるから、割りに重要な撮影でもあったんだが……)
P(もしかしたら、外での撮影は取りやめて、すべてCGを使った演出に変更になるかもしれない――なんて話も浮上している)
P(ストレイライトのイメージとも合っているという考えによるものだ)
P(……それにしても)
P(天気がよければあさひを……3人を天文台に連れて行って、『昼の星 観察会』に参加させてやりたかったな)
P「3人とも、わざわざ早起きして出向いてくれたのに……すまない」
愛依「あ、プロデューサー……プロデューサーが悪いわけじゃないんだし、謝る必要なんかないって!」
冬優子「愛依と同意見。天気は悪いけど、この場に悪者なんて1人もいないわよ」
あさひ「……」
P「そう言ってもらえると助かる……ん? どうしたんだ、あさひ」
あさひ「いや、これ……」
冬優子「!!!」
愛依「あちゃー……」
あさひ「超でかい芋虫っぽいクリーチャーっす。どしゃ降りになる前に地面を調べてたらいたんすよ」
冬優子「はぁ……前言撤回。悪者ならここにいるじゃない」
愛依「ほら、あーさーひーちゃんっ」
愛依「虫さんもさ、自分の住んでるとこにいさせてあげないとかわいそうっしょ?」
愛依「だから、ね?」
あさひ「うー……そういうもんすかね……」
あさひ「愛依ちゃんに怒られちゃったっす……」
冬優子「愛依、ナイス」グッ
愛依「怒ってないってー。一緒に行ったげるからさ、帰してあげよーよ」
あさひ「はいっす……」
P「はは……」
P「思ったよりも早く帰ることになっちまったな……」
冬優子「なに浮かない顔してんのよ」
P「いや、その……サプライズ的に、天気が良かったら撮影後に天文台に連れて行ってやろうと思っていたんだが……」
冬優子「もしかして、この前あさひが言ってたやつのこと?」
P「あ、ああ……」
冬優子「……はぁ」
冬優子「呆れた」
P「時に素朴な疑問というものは……とことんまで追究すべきなんだよ」
冬優子「はいはい。ご高説どうも」
P「……」
冬優子「ま、まあ? 覚えていてあげてるってのは、優しいんじゃない?」ボソッ
P「えっ?」
冬優子「あーもー! 何度も言わせないで」
冬優子「……」
冬優子「……あんたの、優しい気持ち。何も間違ってなんていないわよ」ボソッ
267 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/25(水) 02:19:53.90 ID:8rx8EiIvO
〜事務所〜
P「ただいま戻りました……」
愛依「たっだいまー!」
冬優子「あんた車の中で爆睡したからってテンション高すぎじゃない……?」ハァ
あさひ「……」
P「こっちに戻ってきたら普通に良い天気だし、なんだかなぁ……」
はづき「あ、プロデューサーさん、ストレイライトの皆さんも……おかえりなさい」
はづき「聞きましたよー。今日は災難でしたね」
P「はい……また練り直しかもしれません」
はづき「そ、そうですかー……」
P「……」
はづき「とりあえず上がってください。仕事も一旦はいいですから、休んだほうがいいですよ」
P「すみません。そうします」
あさひ「……」
冬優子「ソファーソファー……」
はづき「プロデューサーさん以外もまいっちゃってますかね〜?」
愛依「あはは……冬優子ちゃんは寝足りなくて機嫌悪いだけだと思うけど」
愛依「あさひちゃんは捕まえた虫逃がすように言ってからあんな調子だし……」
愛依「プロデューサーは……なんていうか……」
はづき「? 何かあったんですか〜?」
愛依「冬優子ちゃんから聞いた話だと、プロデューサーが撮影の後にうちらを天文台に連れて行こうとしてたみたいでさー」
愛依「あさひちゃんが星に興味持ってたから、そのためのサプライズ……ってカンジ?」
愛依「だから、プロデューサーは2重にしんどいんだと思う……」
はづき「そんなことが……」
愛依「なんかみんな暗いし、うちとしては元気出して欲しいんだけどなー」
はづき「……! そうだ」
愛依「?」
はづき「あ、愛依さんも上がって休んでてください」
はづき「私はちょっと野暮用が〜」
268 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/25(水) 02:44:11.57 ID:8rx8EiIvO
夜。
P「ふぅ」
P(あれから少し休んで仕事に取り組んだけど……あんまり進められなかったな……)
P(3人はどうせ暇だからと自主練に行って、それもさっき終わって戻ってきて、また事務所でくつろいでるという感じだ)
P(時計は……)
P「……って! もうこんな時間か!」
P「3人とも、そろそろ帰らないと……もういい時間だぞ」
冬優子「もう少し休ませてよ。練習終わってすぐだし」
P「そ、そうは言ってもな……」
冬優子「ふゆたちが心配なら、仕事帰りのついでであんたが送ってよ。今日は車あるじゃない」
P「でも、俺の仕事なんて何時に終わるかわからないぞ?」
冬優子「……あーもーやめやめ。ふゆ、まだやることあるから。じゃ」ポチポチ
P(やることって、スマホをいじってるだけじゃないか……)
愛依「はいそこまで! 2人ともカリカリしないー」
愛依「気持ちはわかるけどさー、お互い疲れてるからイライラしちゃってるだけっしょ?」
冬優子「ふん……」ポチポチ
P「……」
あさひ「ふわぁ……愛依ちゃん……?」
愛依「あ、ごめん、起こしちゃった?」
あさひ「うーん……」ヌボー
愛依「寝起きのあさひちゃん、かっわいー」ナデナデ
あさひ「あー……う−……目が回るっすー……」
愛依 ウインク
P「ははっ……すまないな、愛依」
P「はぁ」
P「流石に、俺も休憩するか……」
トントン
P「? ……あ、はづきさん」
はづき「プロデューサーさん、ちょっといいですか〜?」クイクイ
P「はい……? まあ、ちょうど休もうとしてたところなんで大丈夫ですけど」
はづき「見てもらいたいものがありまして〜」
P(仕事関係の話か?)
P「わかりました。いま行きます」
はづき スタスタ
P スタスタ
269 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/25(水) 03:08:19.19 ID:8rx8EiIvO
〜事務所、倉庫〜
はづき「はい、これ、どうぞー」
P「え、これって……」
はづき「天体望遠鏡です〜。結構良いモデルなんですよ?」
P「はぁ……でも、なんでこれを?」
はづき「愛依さんから聞いたんです。今日のこと」
P「今日の……あ、ああ……ははっ、そうでしたか」
P「なんとも情けないというか、格好つかないというか、そんなところですよ」
P「もしかしたら、今日のことは、仕事を踏み台にして遊びに興じようとした罰なのかもしれませんね……なんて」
P「……」
はづき「プロデューサーさんは、優しい方です」
はづき「あさひさんのため……だったんですよね〜?」
P「俺はあさひのために何ができるのか……時々、そんなことを考えます」
はづき「プロデューサーさん……」
P「ユニットをプロデュースしてる人間がこんなことを言ってはいけないのはわかってる……それでも」
P「あさひの才能は――」
P『!』
あさひ『――っと……うん、決まった!』
P『君、ちょっといいかな?』
あさひ『? わたしっすか?』
P『ああ、さっきのダンスって――』
P「――っ。いえ、やっぱり、なんでもありません」
P「……俺なんかがあさひを理解してやろうなんて、そもそもおかしい話なのかもしれない」
P「それなら……そうだったとしても……、あいつを受け入れてやって、寄り添ってやるべきだと思うから」
P「アイドルの仕事に関することであっても、そうでないことであっても……」
P「ははっ、まあ、今回は大失敗でした」
P「……」
P「驕ってましたかね。結局、1人で盛り上がって、1人で落ち込んでるだけですし」
はづき「あさひさんにしてあげられることはまだありますよ」
はづき「もう〜、何のために私がこれを用意したと思ってるんですか〜?」
P「……ま、まさか」
はづき「事務所があるここならー……天気は抜群に良いですよ」
はづき「屋上で天体観測、しましょう〜」
270 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/25(水) 03:09:10.51 ID:8rx8EiIvO
眠すぎるので一旦ここまで。
271 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/11/25(水) 08:21:03.86 ID:K7lU5vbso
おつー
272 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/27(金) 02:09:34.46 ID:tGhwdT7hO
〜屋上〜
P「……」
P(空気も澄んでいるし、天体観測には申し分ない天候だ……)
あさひ「はづきさん、これが望遠鏡なんすか?」
はづき「そうですよ〜。それも、結構いいやつ、です」
あさひ「……」
はづき「分解したり壊したりはしないでくださいね〜。高いんですからこれ」
あさひ「なんでわかったんすか!?」
はづき「〜♪」
冬優子「あさひ……あんた、ほんと元気ね」ハァ
愛依「まぁまぁ、いいんじゃん?」
愛依「プロデューサーがやろうとしてたコト、できそうなんだしさー」ヒソヒソ
冬優子「はぁ……」
冬優子「……まあ、それもそうね」
あさひ「とぉーう!」バッ
P「……」
あさひ「?」
P「……」
あさひ「プロデューサーさん、どうしたんすか? ぼーっとして」
P「え? あ、いや……なんでもないよ」
P「あさひこそ、どうしたんだ? なんだか楽しそうじゃないか」
あさひ「もちろん楽しいっす!」
あさひ「だって、プロデューサーさん、覚えててくれたから!」
P「あさひ……」
P『そうだな……今度、調べてみようか、一緒に』
あさひ『わーい! やったー!!』
P「……ははっ。そうか、……うん。そうだよな」
あさひ「約束守ってくれてうれしいっす!」
P「そう言ってもらえてなによりだ」
P「さ、まだまだこれからだぞ?」
P「望遠鏡のセッティング、一緒にやらないか?」
あさひ「やるっす!」
P「よし! そうこなくっちゃな」
P「はづきさん、あとは俺がやりますよ」
はづき「あ、そうですかー?」
P「はい」
P「あさひ、壊すのは禁止だけど、ちゃんとした使い方で触る分には観察し放題だからな」
あさひ「ほんとっすか!? やったー!」
はづき「……やりましたね、プロデューサーさん」ヒソヒソ
P「ええ、まあ……そうですね」ヒソヒソ
P(とりあえず今は、あさひの笑顔が見れれば、それで……)
273 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/27(金) 02:36:04.07 ID:tGhwdT7hO
あさひ「……」
冬優子「あいつ、すごい集中力で覗いてるわね」
P「まあ、あさひだからな」
P(やはり……というか、集中力がすごいのは相変わらずだな)
P(セッティングが終わって望遠鏡を覗かせたら、そこでずっとはり付いてるんだもんなぁ)
愛依「ああなったあさひちゃんはすごいよねー。レッスンでも時々あんなカンジになってるし」
あさひ「……」
あさひ「あ――」
あさひ「――見えた」
P「どうだ? 何か見えたか?」
あさひ「アメンボっす!」
P「アメンボ……?」
あさひ「プロデューサーさんも見るっすよ! ほら、真ん中らへんにある……」
P「どれどれ……」
あさひ「見えたっすか?」
P「ああ」
P「これは、オリオン座だな」
あさひ「オリオン座?」
P「ああ。よいしょ……っと」
P「星座だよ。1等星や2等星が多いからここでもよく見えるんだ」
P「ギリシア神話のオリオンの姿に見立ててオリオン座って呼ぶんだよ」
あさひ「よくわかんないっすけど……アメンボじゃないんすね」
P「ははっ、何に見えるかっていう意味での正解はないと思うぞ」
P「日本では鼓に見えるからってことで鼓星なんて言うしな」
P「あさひにとってアメンボなら、アメンボでもいいんじゃないか?」
あさひ「そうっすか。じゃあ、あれはアメンボっすね!」
あさひ「星座……面白そうっす……」
あさひ「他にも知ってるんすか? プロデューサーさん」
P「ああ、そうだな……どれ……」
P「オリオン座の周りにいろいろあってな。あれがぎょしゃざで、反時計回りにふたご座、こいぬ座……」
あさひ「プロデューサーさんが覗き込んでるからわたしが見れないっす〜」
あさひ「あれとか言われてもわからないっすよ」
P「す、すまん。いまどくかr――」
あさひ「どこなんすか? 星座」ズイッ
P「――っ!?」
P(望遠鏡から顔を離したその瞬間――)
あさひ「あ……」
P(――2つの青い目と、目が合った)
P(日本人離れした綺麗な顔立ちに目が離せなくなる)
あさひ「じ、じーっと見られると……その、照れるっす……」
P「あ、いや! そういうつもりじゃ……」
P(……どういうつもりも何もないだろう。ただ、あさひに釘付けになっていただけじゃないのか)
あさひ「……っ」モジモジ
274 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/27(金) 02:55:44.07 ID:tGhwdT7hO
P(あんなに顔が近づいたことなんて、今までなかったが……)
P(文字通り目と鼻の先で見たあさひの顔が脳裏に焼きついてまったく消えようとしない)
あさひ「えっと、プロデューサーさん。星座……」
P「あ、ああ……オリオン座の周りにな……」
P(それから、星座のことを教えてやった)
P(無我夢中になって話していたが、それはまるで自分が自動案内の音声を発しているかのようなもので……)
P(おそらく星座のことなんか1ミリも頭の中にはなくて、あるのは芹沢あさひという女の子のことだった)
P(あさひを解ろうとした)
P(あさひに寄り添ってやろうとした)
P(あさひの内在的な部分に注目していろいろなことを考えてきた……それが、今――)
P(――それまで無意識下であまり意識していなかったあさひの見た目に、自分の全神経が集中しているような、そんな感覚に陥っている)
P(ああ、俺は……本当に……)
P(まだまだ、芹沢あさひという女の子のことを、知らないんだ……)
冬優子「ふぅん。あれが冬の大三角……」
愛依「冬優子ちゃんー、そろそろ代わんない?」
冬優子「もうちょっと待って。……んもう! あいついろいろと紹介しすぎなのよ」
冬優子「ここまで来たら全部見てやるわよ……」
愛依「寒いから早くー……」
冬優子 ムムム
P「すまないな、あさひ」
あさひ「? なんで謝るんすか?」
P「昼に星を見せてやりたかったんだ」
P「あさひ言ってたろ?」
あさひ『もし星が夜にだけ現れて……太陽が出てくると消える……それなら――』
あさひ『――不思議で、面白いことじゃないっすか?』
P「ってさ」
P「結局、その疑問を解決してやることができなかったから……」
あさひ「確かに、そうかもしれないっす」
P「ああ、ごめん……」
あさひ「でも、たぶん星は昼にもあるっすよ」
あさひ「どの星も、周るように動いてたっす!」
P「それはそうだが……気づいたっていうのか……?」
あさひ「?」キョトン
P(すごい集中力で望遠鏡を覗いてはいたが……)
あさひ「だから、たぶんそうかなっていうのはわかったんで、いいんすよ」
あさひ「それも、プロデューサーさんと、こうして天体観測できたから……」
あさひ「プロデューサーさんが悪いことなんて何もないっす」
あさひ「むしろ、いいことだらけっす!」
P「あさひ……」
275 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/27(金) 03:03:35.19 ID:tGhwdT7hO
あさひ「星が昼間に見えないのも……何か意味があるのかもしれないっす」
あさひ「うーん、なんでなんすかね?」
P「ははっ、なかなかロマンチックな問いだ」
P「……」
P「確かに、見えるものがすべてじゃないってことは……あるのかもな」
P「見えてないものにも意味がある……見えていないのには理由がある……」
P「見えてないけど大切なものってのが、いつだってあるのかもしれない」
あさひ「見えてないもの……見えてるもの……」
あさひ「大切な……」
P「アイドルってさ、五感では語れないものがたくさんあるはずなんだ」
P「俺は、あさひがそれを想像する中で何を見つけてくれるのかを心から楽しみにしてるよ」
あさひ「……えへへ、そうっすか」
P「ああ」
あさひ「そうだ!」
P「どうしたんだ?」
あさひ「わたし、いま、面白いこと見つけたっす!」
P「お、それは気になるな」
P「よかったら、聞かせてくれ」
あさひ「プロデューサーさんっす!」
P「……え?」
P「お、俺?」
あさひ「そうっす! プロデューサーさんは面白いっす!」
あさひ「いろんな話をしてくれて、わたしのお願いも聞いてくれて……」
あさひ「アイドルを――教えてくれて」
あさひ「こんなに……、こんなにわたしのこと考えてくれる人、はじめてで……」
あさひ「わたしを、ひとりぼっちにしない……」
あさひ「……」
あさひ「わたし、アイドル頑張るっす! いままで以上に」
あさひ「面白いこと探し、続けていきたいから……」
あさひ「そこには、プロデューサーさんが一緒に……いてほしいっす」ボソッ
276 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/27(金) 03:04:24.91 ID:tGhwdT7hO
とりあえずここまで。
277 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/11/27(金) 09:04:30.83 ID:wXI2fbqcO
おつおつ
どことない不安…
278 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/11/27(金) 20:32:04.70 ID:H/8OLw280
乙
はづきさんいるのに冬優子がふゆじゃないのおかしくない?
279 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/28(土) 01:21:43.89 ID:2BR33GPKO
>>278
>>1
です。ご指摘ありがとうございます。少なくともストレイライト以外の“アイドル”に関しては「ふゆ」として振舞っていると思うのですが、はづきさんに対してどうであったかが思い出せませんでした(そういうわけで、冬優子とはづきさんの間でのやり取りを書いていません)。とはいえ、はづきさんの前で「ふゆ」として振舞うことが確実な場合、何箇所か冬優子の態度として不自然なところがあるかもしれません。すみません。
ひとまず、以下のいずれかの場合だと一時的に思っていただければと思います。
・はづきさんがいるところでは冬優子のセリフはすべて小声、あるいは応答する相手がいない場合には脳内での呟き(そのとき、「」→())になっている(にしても事務所で気を抜きすぎ?)。
・実はあるタイミングではづきさんに猫かぶりがバレているor隠そうとしなくなったという世界線でのお話。
・はづきさんが奇跡的に冬優子の本来の態度を観測していない(一応、セリフがない間にその場にいないだとか別の方向を向いていてかつ周りの音を意に介していないだとかのこじつけは思いつきますが、だいぶ無理やり)。
お手数おかけします。
自分でももう少し調べてみます。はづきさんに対する冬優子の態度を決定付けるものを見つけた方は教えてくれると助かります。
280 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/11/28(土) 01:50:46.25 ID:L+yU04myO
冬優子朝コミュEに、冬優子がPと社長を間違えるというのがあって
そのうちのGOOD選択肢が「社長とはづきさんには猫かぶりのままでいいのか?」
応答が「あったりまえでしょ!社長ってことは、この事務所で一番偉いんだから!」
「ふゆのことを気に入ってくれたら、きっといい仕事をいっぱい持ってきてくれるわよね!」
なんで、(本編に関しては)GRAD辺りを含めても、ストレイ外にはボロは出さないんじゃないかと思います
あんまりバレすぎると、あの信念は何だったんだ…何のために二つの仮面を受け入れたんだ…ってなりそうですし
ただ前提として、二次創作はそんなガチガチにしなくても良いと思います
281 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/28(土) 02:29:48.44 ID:jI/iU3Ir0
>>280
>>1
です。ご指摘ありがとうございます。言われて、自分でも手元のスマホ版で確かに確認しました。はづきさんには猫かぶりってことで良さそうですかね……。
282 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/28(土) 02:37:56.76 ID:jI/iU3Ir0
>>267
訂正:
P「ただいま戻りました……」
愛依「たっだいまー!」
冬優子「あんた車の中で爆睡したからってテンション高すぎじゃない……?」ハァ
→
P「ただいま戻りました……」
愛依「たっだいまー!」
冬優子「あんた車の中で爆睡したからってテンション高すg……って、やばっ」
冬優子「……愛依ちゃん元気だね〜♪」
愛依「冬優子ちゃん、顔、ひきつってるって」
冬優子「ソファーソファー……」
はづき「プロデューサーさん以外もまいっちゃってますかね〜?」
愛依「あはは……冬優子ちゃんは寝足りなくて機嫌悪いだけだと思うけど」
→
冬優子「はづきさんお疲れ様ですっ。ふゆ、ちょっと疲れちゃったので上でおやすみさせてもらいますね♪」
冬優子「……」フラフラ
はづき「プロデューサーさん以外もまいっちゃってますかね〜?」
愛依「あはは……冬優子ちゃんは寝足りなくて疲れてるだけだと思うけど」
283 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/28(土) 02:42:12.97 ID:jI/iU3Ir0
>>268
訂正:
P「流石に、俺も休憩するか……」
トントン
P「? ……あ、はづきさん」
→
P「流石に、俺も休憩するか……」
冬優子 ポチポチ
冬優子「……!」
冬優子 ガサゴソ
P(なんだ? 冬優子のやつ急に行儀良くして……)
トントン
P「? ……あ、はづきさん」
P(ああ……はづきさんが来たからか)
284 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/28(土) 02:44:36.10 ID:jI/iU3Ir0
>>272
訂正:
冬優子「あさひ……あんた、ほんと元気ね」ハァ
愛依「まぁまぁ、いいんじゃん?」
愛依「プロデューサーがやろうとしてたコト、できそうなんだしさー」ヒソヒソ
冬優子「はぁ……」
冬優子「……まあ、それもそうね」
→
冬優子「あさひのやつ……なんであんな元気なんだか」ヒソヒソ
愛依「まぁまぁ、いいんじゃん?」
愛依「プロデューサーがやろうとしてたコト、できそうなんだしさー」ヒソヒソ
冬優子「はぁ……」
冬優子「……まあ、それもそうね」ボソッ
285 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/28(土) 02:48:19.57 ID:jI/iU3Ir0
>>272
訂正:
P「はづきさん、あとは俺がやりますよ」
はづき「あ、そうですかー?」
P「はい」
P「あさひ、壊すのは禁止だけど、ちゃんとした使い方で触る分には観察し放題だからな」
あさひ「ほんとっすか!? やったー!」
はづき「……やりましたね、プロデューサーさん」ヒソヒソ
P「ええ、まあ……そうですね」ヒソヒソ
→
P「はづきさん、あとは俺がやりますよ」
はづき「あ、そうですかー?」
はづき「じゃあ、私はやることがあるので、事務所に戻ってますね〜」
P「わかりました」
P「あ、そうだ……あさひ、壊すのは禁止だけど、ちゃんとした使い方で触る分には観察し放題だからな」
あさひ「ほんとっすか!? やったー!」
はづき「……やりましたね、プロデューサーさん」ヒソヒソ
P「ええ、まあ……はい」ヒソヒソ
はづき「では、失礼しますね〜」
286 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/28(土) 02:53:19.57 ID:jI/iU3Ir0
一旦ここまで。訂正で終わってしまいました。何卒ご容赦のほどを……。
次は話の続きを書いていこうと思います(お話はできています)。
287 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/11/28(土) 08:36:34.60 ID:PZscIPiFo
おつおつ
288 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/11/28(土) 17:20:18.43 ID:7fRd4zsk0
俺君が希望になってたらエンディングも変わってたの?
六章の自由行動はどう動くのが正解だったの?
289 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/11/28(土) 17:20:46.93 ID:7fRd4zsk0
誤爆しました
申し訳ありません
290 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/29(日) 02:02:08.28 ID:fyTN298t0
〜テレビ局〜
P(今日はバラエティ番組の収録だ)
P(最近はこうしたタレント的な露出も増えてきたな――うまくいくように俺もがんばろう)
P「……っ?」フラッ
P(あれ、疲れてるのかな……。実際、最近ちゃんと休めていなかったかもしれない)
P(あいつらの収録が終わって車で送ってやれば今日の仕事は終わりだ――それまでもってくれ)
数時間後。
P(……終わったみたいだな)
P「お疲れ様。3人とも、今日もよかったぞ」
冬優子「ふぅ……これくらい普通よ」
冬優子「普通じゃなきゃ、いけないの」ボソッ
愛依「おっつかれー! いやー、あの司会者の人マジで面白かった!!」
あさひ「あっ、プロデューサーさん! お疲れっすー」
P「はは……俺が心配する必要はないよな。もう」
冬優子「……あんた、大丈夫? 顔色悪いわよ」
P「え? そ、そうか?」
愛依「ほんとだ……。プロデューサー、体調悪かったりしない?」
P「だ、大丈夫だよ」
P「ちょっと自販機でコーヒーでも買ってくる」
P「お前らはしばらく休んでてくれ。一番頑張ったのは、そっちなんだからさ……」
冬優子「ちょ、ちょっと……!」
愛依「行っちゃった……ね」
冬優子「はぁ……」
あさひ「……」
〜テレビ局、ロビー〜
P「……と。コーヒーは……、130円……」
P「財布財布……」
P グラッ
P「あ、あれ――……?」
P(ああは言ったけど――体調、やばいかもな)
P「早く買おう」
パラパラ...
チャリィンッ
ドサッ
P「……?」
P(ゆ……か? なんで――こんな低い視線……)
P(これじゃまるで……倒れてるみたいじゃないか……)
P(……いや、本当に倒れてるんだな)
P「……っ」
P(体が動かないだけじゃない。頭痛と吐き気のようなものもある)
P(……すまない、3人とも)
P(見栄なんて張るもんじゃないな……)
291 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/29(日) 02:05:41.59 ID:ZsOW8Y/qO
〜病院 病室(個室)〜
P「……」
P「……っ、んん」ガサッ
P ムクッ
P「ここは……」
P(そうか――俺は、倒れたのか)
P「はぁ……」
P(やっぱ、過労だよな……)
P(ったく、自分だって身体が資本みたいなもんなのにな)
P(こんなんじゃ……冬優子に怒られちまう)
P(このままじゃ……愛依に心配させちまう)
P(あさひには悲しい顔……させちまうかもな)
P「次あいつらにあったら――なんて言えばいいんだろうな」
292 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/29(日) 02:14:53.30 ID:ZsOW8Y/qO
翌日。
〜病院 病室(個室)〜
コンコン
アレ? サンカイダッケ?
コンコンコン
P「はは……」
P「はい、どうぞ」
ガララ
愛依「あっ、プロデューサー……」
冬優子「……」
P「……ありがとう。見舞いに、来てくれて」
P「俺がいない間も、仕事は大丈夫だったか? レッスンは問題なく受けられたか?」
P「そうだ……明日の予定……」
愛依「ちょっ、プロデューs……」
冬優子「ふざけないで」
P「……冬優子?」
冬優子「こんなになって、さんざん心配させておいて……それでも仕事が大事なわけ?」
P「それはっ……。お前たちがちゃんとアイドルやっていくために……」
冬優子「ばかにしないでくれる?」
冬優子「ふゆたちはね、あんたにおんぶにだっこじゃないとどこにも行けないアイドルなんかじゃないのよ」
冬優子「あんたがプロデュースしてるアイドルは……そんなに頼りないの?」
冬優子「そんなに……情けない?」
冬優子「あんたの思うストレイライトって、そんなもんなわけ?」
愛依「冬優子ちゃん……」
冬優子「まったく、自分の面倒も見れないような人間がふゆたちをプロデュースするなんて笑えるわね」
P「それを言われると……返す言葉もない……」
冬優子「自分の頭の中だけで完結させんじゃないわよ。あんた、プロデューサーなんでしょ?」
冬優子「目の前にいるアイドルを……ちゃんと見なさいよ」
冬優子「そんなこともわからないプロデューサーなんていらないんだから」
愛依「って、まあまあ、冬優子ちゃんもそこまでにしとかない?」
愛依「……ま、うちも似たようなこと思ってたけどね」アハハ・・・
愛依「冬優子ちゃんが全部言ってくれたカンジするし、もういいやー!」
愛依「とにかく、プロデューサー? ちゃんと休まなきゃ駄目だかんね?」
P「わ、わかりました……」
冬優子「ちゃんと反省すること。いいわね」
冬優子「そうしたら、その……ふゆたちの好きなプロデューサーになって事務所に来なさいよ」
愛依「そーそー。うちも、うちらが好きなプロデューサーを待ってたいかな」
P「本当にすまなかった……」
P「見失ってたものをちゃんと見つけてから、またプロデューサーとして会いに行く。だから――」
P「――それまで、待っていてくれ」
293 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/29(日) 02:29:35.09 ID:ZsOW8Y/qO
冬優子「あ、でも、待たせすぎんじゃないわよ」
冬優子「あんたがいない間にはづきさんがプロデューサーとしての仕事してくれてたけど、結構手際良かったんだから」
愛依「あ! それある! あんまりもたもたしてっと……取られちゃうかもね〜。プロデューサーの座、ってやつ?」
P「あはは……それは……うん、死守してみせるよ」
P「そういえば、あさひは来てないのか?」
愛依「あー……」
冬優子「……」
P「用事があって来れなかったとかそんなところか?」
愛依「い、いや、そうじゃないんだけどね」
冬優子「……はぁ。あいつ、来てたのよ。病院までは、ね」
P「?」
冬優子「プロデューサーに会いに行くついでに面白いこと探すっすー……とかわけわかんないこと言ってお見舞いにはノリノリで」
冬優子「出発する前にはしゃいじゃって、バスで爆睡するほどだったのに――」
〜病院 廊下〜
冬優子「……遠いわね。あいつの病室」
愛依「えーっと、この廊下を最後まで行って隣の建物……だっけ?」
あさひ「うーん、なんかないっすかね〜」キョロキョロ
冬優子「あんたね、場所を考えなさいよ」
冬優子「……静かね、ここ」
愛依「確かにね〜」
あさひ スンッ
冬優子「ちょっと、急に止まって何やってんのよ。ほら、行くわよ」
あさひ ボーッ
愛依「……あさひちゃん?」
ガララ スーッ
冬優子「あ、看護師さんと患者さん……車椅子なのね」
冬優子「ほら、2人も道空けて」サッ
愛依「はーい」サッ
あさひ サッ
あさひ ジーッ
冬優子「さ、行くわよ」
あさひ「……っす」
冬優子「なんですって?」
あさひ「い、いやっす! いや……いやいや嫌イヤァッ!!」
冬優子「ちょ、いきなりどうしたってのよ」
愛依「あ、あさひちゃん大丈夫?」
あさひ「ひぐっ……ううっ……」ポロポロ
あさひ「あああぁぁぁっ!!!!」ダッ
愛依「あさひちゃん!?」
冬優子「……追いかけるわよ、愛依」
愛依「う、うん……」
冬優子「――ってことがあって……追いつけなくて、見失った。LINEで『わたしに構わずお見舞い行ってほしいっす』って来たから、とりあえずあんたに会いに来たけどね。こっちから送って待っても返信来ないし」
294 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/29(日) 02:42:50.08 ID:ZsOW8Y/qO
P「そうだったのか……そんなことが」
冬優子「あさひのことは、はづきさんにも相談してこっちでなんとかしてみるわ」
冬優子「あんたも、あいつに連絡するくらいならいいけど、その身体で探しに行こうだなんて思わないでよね」
P「あ、ああ……さっきの言葉は刺さったし、ちゃんと養生するよ」
冬優子「そ。ま、安静にね」
愛依「……あっ、やばっ!」
愛依「冬優子ちゃん、バスの時間……!」
冬優子「そうだった! そうそう、ここ、バスがあんまり来ないのよね」
P「ははっ……じゃあ、急がないとな」
P「その、なんだ。……気をつけて帰るんだぞ」
冬優子「いまのあんたに言われるのは……ふふっ」
冬優子「まあ、それくらい聞いておいてあげる――」
冬優子「――……また、ね」
愛依「まったねー、プロデューサー!」
P「おう」
P「またな」
ガララ
P「……」
P「一体、あさひに何があったっていうんだ」
P(ふと、その時……あさひが時々する悲しい表情を思い出した)
P(俺は、あさひの何を知っているんだろう)
P(何を理解しているというのだろう)
P(前にも、似たようなことを思った)
P「病院で嫌なことでもあったのかな……」
P(俺は、ここまで大きい病院にお世話になったことは今までなかった)
P(まあ、近所の開業医にかかっていたくらいだ。小さい頃は注射が怖かったな。痛いし)
P(あさひも、そういうことで病院が怖いとか……?)
P(今度聞いてみて……もいいことなんだろうか、これって)
P(だめかもしれない)
P「はぁ」
P「あさひ……」
あさひ『花火……花火に心があったら、どう思ってるんすかね』
P『花火に、心が?』
あさひ『火がついてはじけていくときとか、自分がどんなに綺麗な花火だって知ってても、それが始まったら最後……じゃないっすか』
P『あさひ……』
あさひ『花火は綺麗っす。でも、わたしは花火にはなりたくないっす』
あさひ『今日のことは……きっと、一生忘れられないっす!』
あさひ『こんなに……、こんなにわたしのこと考えてくれる人、はじめてで……』
あさひ『わたしを、ひとりぼっちにしない……』
P「……早く、元気になって、あいつにも顔を見せてやらないとな」
295 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/11/29(日) 02:44:15.61 ID:ZsOW8Y/qO
とりあえずここまで。
296 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/11/29(日) 02:55:09.77 ID:PdgAaoqXo
おつおつる
いったいなにをみたあさひ……
297 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/11/29(日) 03:19:54.19 ID:uxOCFJND0
あさひもループしてんじゃ?
298 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/11/29(日) 06:03:13.04 ID:+PTtwATDO
入院患者が神の土地を買って動かなくなったのを見て、プロデューサーがダブったのかな
299 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/12/03(木) 00:51:07.99 ID:s4oAjQDsO
数日後。
〜病院 病室(個室)〜
P「短い間だったけど、この部屋ともおさらばだな」
P(この数日間、社長やはづきさんからも、しっかり休むようにということで、仕事に関する連絡は一切来なかった)
P(俺がいない時に何か問題が起こらないかと心配にもなったが、愛依も言ってたように、はづきさんがうまくやってくれているようだ)
P(そもそも、そんな心配をすること自体が傲慢だ)
P(俺がいなくてもある程度機能してるってことなのだから)
P(では、俺がいる意味とは一体何だろう)
P(あいつらにとって、俺はどんな存在でいられるんだろう)
P(俺じゃなきゃいけない――そう言うための根拠が欲しかった)
P「……って、悲観してどうする」
P(あいつらをここまでプロデュースしてきたのは他でもない俺なんだ)
P(俺が胸張ってプロデュースしてやらないと、これまで俺についてきてアイドルをやってきたあの3人に失礼だろう)
P「俺がやってきたこと、俺がやろうとしていること……」
P「……俺が認めてやらないでどうするんだ――ってな!」パシン
P「よし」
〜病院 廊下〜
P(やっぱ正門まで遠いんだよな……)
P「……」
P(静か、だよな。ここ)
P「……?」
P(通り過ぎようとした個室の扉が、なぜか気になった)
P(正確には、扉の横――うっすらと、文字列のようなものが見えた気がした)
P「落書き……なのか? でも、読めないな……外国語だろうけど、英語じゃないよな」
P(英語でなくても、メジャーな外国語なら何語かぐらいわかるのに、それでもさっぱりだった)
P「アイ……ド……?」
P(そんなふうに俺が落書きを凝視していると――)
「あの、どうかなさいましたか?」
P(――看護師に声をかけられてしまった)
P「あ、いえ……ここに文字が書いてあるなって」
「ああ、これですか」
「これは、前に、ここに落書きした人がいたみたいで」
「お掃除もかねて、そろそろ消さないとな……って」
P「そうだったんですか」
P「それで、洗剤と雑巾を」
「はい。……なんて書いてあるんでしょうね?」
P「さあ……私の知らない言語なのでなんとも。ただ――」
「――アイドル」
P「ははっ……はい」
P「綴りはほとんどそれだなって」
300 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/12/03(木) 01:03:27.58 ID:s4oAjQDsO
P「アイドルが好きな子が書いたんですかね」
「どうなんでしょう。私、つい最近ここに来たばかりでして。よいしょっと……」
「この扉の向こうは2人部屋でして、ベッドは1つ空いてて、今いらっしゃるのはもう1つのベッドの寡黙なご老人なので」フキフキ
「アイドル好きって感じじゃ……ないかと」フキフキ
P「そうなんですね」
「あ、ごめんなさい。つい話しすぎました。普段は忙しくて話し相手がいないものですから」
P「は、はあ……」
「ここだけの話、ってことでお願いします」
P「わかりました」
「今日は面会で来られたんですか?」
P「いえ、実は今日が退院日なんです」
「そうだったんですね」
「お大事に」
P「はい。ありがとうございます。それでは……」
P(看護師に見送られ、その場を後にした)
〜事務所〜
P(病院帰りに顔を出そうと思って来てみたけど、はづきさんしかいなかった)
P(社長はテレビ関係のお偉いさんとの話し合いでいないらしく、ストレイライトの3人はラジオの収録があるのだという)
P「スケジュール表は……、と。あった。……3人はもう帰ってくる頃か」
P「待ってみようかな」
ガチャ
冬優子「お疲れ様でーす」
P「おっ、冬優子じゃないか」
冬優子「……って、あんただけか。来てたのね」
P「まあな。退院したから、家に帰るついでに顔出してみようと思ってさ」
P「愛依とあさひは一緒じゃないのか?」
冬優子「愛依なら夕飯の当番とかで急いで帰ったわよ」
冬優子「あさひは武装商店見つけるやいなや飛び込んで行ったわね。夢中になってこっちの言葉に耳貸さないから置いてきたわ」
P「置いてきたってな……」
冬優子「……悪かったわね」
P「なにが?」
冬優子「愛依でもあさひでもなくて、ここに来たのがふゆで」
冬優子「別にあんたがいるかもと思って会いに来たわけじゃ……ない……んだから」ボソッ
P「ははっ、そんなことないぞ。会えて嬉しいよ」
冬優子「なっ、何言ってんだか!」
P「あと、ありがとうな。お見舞いに来てくれて」
P「改めてお礼を言わせてくれ」
冬優子「お礼はいいから、……これからもちゃんと気を抜かずにプロデュースしなさいよね」
P「ああ! これからもよろしくな」
P「……そうだ。あれから、あさひはどんな感じだ?」
冬優子「あの中学生ならいつも通りよ。ほんと、あれはなんだったんだって思うわ」
P「そうか……」
301 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/12/03(木) 01:12:45.51 ID:s4oAjQDsO
冬優子「って、もうこんな時間……」
冬優子「そろそろ帰るわ」
P「じゃあ送っていくよ――って、あ……」
P「今日は出勤しに来たわけじゃないの忘れてた……」
P(いつもの仕事モードで、つい車がある前提で話しちまった)
冬優子「ぷっ、あははっ。あんたって、ほんと、仕事人間ね」
冬優子「でも……ありがと」
冬優子「じゃあ、さ。駅まで送って」
P「わ、わかった」
数分後。〜外〜
P「いや、しかし……」
P「今日は暑いな……」
冬優子「しばらくまともに日に当たってなかったからそう感じるのかもね」
P「あ、さっき自販機あったな……。あの時に何か買っておけばよかったんだろうなぁ……」
P「そうすれば、いまこうして乾きに苦しむこともなかったのに……なんてな」
冬優子「……」
P「冬優子……? どうしたんだ?」
冬優子「あの時、ああしていたら――こんなことにはならないで、もっと良い結果になってたかもしれないのに」
冬優子「そう思うことって、あるわよね」
P「俺の飲み物のことなら心配しなくてもいいんだぞ? まあ、駅ももうすぐだしな」
冬優子「あんたはさ、そういうの、ないの?」
冬優子「今だって十分良い……でも、あのとき、もっとこうしていたら、こういう決断ができていれば……」
冬優子「今はもっと良くなってたかもしれないのに、って……そう思った経験」
P「……」
冬優子「変なこと言ってごめん。なんか、今のあんた見て、ふと思っちゃって」
P「いいさ。構わないよ」
P「そうだな……そりゃ、あの時もっと頑張ってたら――とか、あの時諦めなかったら――とか、そういう経験はたくさんあるよ」
P「「今だって十分いいけど、あの時こうしてたら、今はもっと良くなってたかもしれないのに」……か」
P「今が十分いいなら大丈夫だよ。明日を、来週を、来年を、数年後を、そしてもっと先の未来をも良くするために――今この瞬間から、これからを大切に歩んでいけば、きっと後悔なんてしないし、どうどうと胸を張っていける」
P「俺はそう思うよ」
P「自分で自分を肯定してやれるだけで、いろいろと楽になるんじゃないか?」
冬優子「そっか……そうよね」
P「そうだとも」
P「あの時ああしていれば、こうだったのに――なんてのは中学で勉強する英語の仮定法の例文で十分だよ」
P「過去は大切だし忘れちゃいけないようなものだってある。でも、常に向き合っているのは過去ではなく、今から続いている未来なんだからさ」
冬優子「……うん」
冬優子「なんか、話したら安心したわ」
冬優子「はぁ……ふゆの弱さ、見せすぎてるわね、ほんと」ボソッ
P「え?」
冬優子「なんでもないわよ。ふふっ」クルッ
冬優子「……明日からも、お仕事頑張りましょうねっ。プロデューサーさん!」
302 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/12/03(木) 01:13:29.26 ID:s4oAjQDsO
冬優子「って、もうこんな時間……」
冬優子「そろそろ帰るわ」
P「じゃあ送っていくよ――って、あ……」
P「今日は出勤しに来たわけじゃないの忘れてた……」
P(いつもの仕事モードで、つい車がある前提で話しちまった)
冬優子「ぷっ、あははっ。あんたって、ほんと、仕事人間ね」
冬優子「でも……ありがと」
冬優子「じゃあ、さ。駅まで送って」
P「わ、わかった」
数分後。〜外〜
P「いや、しかし……」
P「今日は暑いな……」
冬優子「しばらくまともに日に当たってなかったからそう感じるのかもね」
P「あ、さっき自販機あったな……。あの時に何か買っておけばよかったんだろうなぁ……」
P「そうすれば、いまこうして乾きに苦しむこともなかったのに……なんてな」
冬優子「……」
P「冬優子……? どうしたんだ?」
冬優子「あの時、ああしていたら――こんなことにはならないで、もっと良い結果になってたかもしれないのに」
冬優子「そう思うことって、あるわよね」
P「俺の飲み物のことなら心配しなくてもいいんだぞ? まあ、駅ももうすぐだしな」
冬優子「あんたはさ、そういうの、ないの?」
冬優子「今だって十分良い……でも、あのとき、もっとこうしていたら、こういう決断ができていれば……」
冬優子「今はもっと良くなってたかもしれないのに、って……そう思った経験」
P「……」
冬優子「変なこと言ってごめん。なんか、今のあんた見て、ふと思っちゃって」
P「いいさ。構わないよ」
P「そうだな……そりゃ、あの時もっと頑張ってたら――とか、あの時諦めなかったら――とか、そういう経験はたくさんあるよ」
P「「今だって十分いいけど、あの時こうしてたら、今はもっと良くなってたかもしれないのに」……か」
P「今が十分いいなら大丈夫だよ。明日を、来週を、来年を、数年後を、そしてもっと先の未来をも良くするために――今この瞬間から、これからを大切に歩んでいけば、きっと後悔なんてしないし、どうどうと胸を張っていける」
P「俺はそう思うよ」
P「自分で自分を肯定してやれるだけで、いろいろと楽になるんじゃないか?」
冬優子「そっか……そうよね」
P「そうだとも」
P「あの時ああしていれば、こうだったのに――なんてのは中学で勉強する英語の仮定法の例文で十分だよ」
P「過去は大切だし忘れちゃいけないようなものだってある。でも、常に向き合っているのは過去ではなく、今から続いている未来なんだからさ」
冬優子「……うん」
冬優子「なんか、話したら安心したわ」
冬優子「はぁ……ふゆの弱さ、見せすぎてるわね、ほんと」ボソッ
P「え?」
冬優子「なんでもないわよ。ふふっ」クルッ
冬優子「……明日からも、お仕事頑張りましょうねっ。プロデューサーさん!」
303 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/12/03(木) 01:19:06.10 ID:s4oAjQDsO
〜事務所〜
P「こんにちはー……」
P(今日は営業だったけど……懇意にしてもらっているとはいえ苦手なんだよなぁあの人……)
P(とても疲れた……)
P(まだ仕事残ってるけど、少し休んでからでもいい――よな?)
P「はづきさん――は、いない……か」
P(そういえば今日ははづきさんのオフだったっけ)
シーン
P「あれ?」
シーン
P「誰も……いないのか?」
P(それなら、ソファーで横になるかな……)
P(少し、少しだけだから……)
P「あ」
P「これ……アイマスクか」
P(はづきさんが使ってたやつだよな)
P(うーん、勝手に使ったら怒られるかなぁ)
P「……」
P(まあ、バレなきゃいいか?)
P「っしょっと……」
P「おやすみなさい……」
P(アイマスクをつけてからソファーで横になり、しばしの間、仮眠をとることにした)
304 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/12/03(木) 01:21:50.12 ID:s4oAjQDsO
「あ……え、えっと……」
――普段とは違う視点。
「きょ……今日は……えと……」
――他の人たちは下からこっちを見ている。
「あ、ありが……と」
――うちは……何を見てんの?
「……」
――見渡す限りの眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼眼。
P「うわあぁぁっ!?!?」ガバッ
「わっ!? びくった……」
P「っ!? く、暗い! 目の前が真っ暗だ!!」
「ちょ、落ち着きなって」
P「だ、だって目が覚めたはずなのに何も見えないんだ!」
「アイマスクしてるからっしょ。ほれ――」パッ
P「――あ」
P「っ、まぶしい……」
「……もう」
愛依「プロデューサーって、案外、天然……ってヤツ?」
P「そ、そうなのかな……」
愛依「それか、疲れてんじゃない? ちょうど今まで寝てたわけだし」
P「まあ、確かに疲れたから仮眠を取ってたけど」
P「愛依はどうして事務所に?」
愛依「レッスン終わってから暇でさ。今日はうち1人でだったし、友だちは都合悪いしで――」
愛依「――なんとなくここ来てみたってコト」
P「そうか」
P「……というか、なんか変じゃないか?」
愛依「変って、何が?」
P「俺は愛依がいないときからソファーで寝てたけど」
P「愛依はいまソファーにいるよな」
愛依「そだね」
P「俺がソファーを独占してる形だったのにそれはおかしくないか?」
愛依「だって、事務所来てからプロデューサーが起きるまで膝枕してあげてたかんね」
P「膝枕か……なるほど」
P「って、膝枕と言ったか!?」
愛依「言ったけど……」
P「ものすごいスキンシップをとってしまった……プロデューサーとアイドルなのに……」
愛依「まあ、他の人に見られてないし、大丈夫じゃん?」
愛依「プロデューサー、ソファーで寝苦しそうにしてたからさ」
愛依「うち、寝かしつけるのちょー得意だから」
愛依「他に誰もいなかったし、膝枕でもしてあげようかなーって」
愛依「もしかして……嫌――だった?」
P「あ、いや、そんなことはないぞ。ありがとう」
305 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/12/03(木) 01:33:28.31 ID:s4oAjQDsO
P(よく眠れた――と言って良いのだろうか)
P(けれども、妙な夢を見た。自分の経験ではない、誰かの見た光景の夢……)
愛依「プロデューサー?」
P(……まさか、な)
P「愛依の膝のおかげで残りの仕事も頑張れそうだよ」
P「ありがとう」
愛依「ばっ!? ひ、膝のお陰とか、わけわかんないし!」
愛依「……まあ、疲れが取れたならいっかな」
愛依「うちさ、スーツのままソファで寝苦しそうにして横になってるプロデューサー見て思ったんだよね」
愛依「うちがいつもすっごく楽しいのは、プロデューサーのお陰で」
愛依「プロデューサーが連れてきてくれたアイドルの世界で、あさひちゃんと冬優子ちゃんに会って」
愛依「うちのアレなところ、プロデューサーはアイドルとしてのキャラってことで形にしてくれて」
愛依「ほんと、感謝してもしきれないんじゃねって……」
愛依「プロデューサーはうちにいろいろしてくれる――」
愛依「――けど、うちがプロデューサーにしてあげられてることなんて、ない……」
愛依「だからさ、まあ、なんての? 恩返しってやつ?」
愛依「はは……何言ってんだろうね、うち」
愛依「でも、何かしてあげたかったからさ」
P「愛依……」
P(いつもは明るくおおらかな愛依が――表情を暗くしていく)
P「別に気にすることなんてないぞ。ギブアンドテイクなだけでプロデュースやってるんじゃないんだ」
P「それに、愛依が俺のプロデュースするアイドルでいてくれればさ……うん、それでいいよ」
愛依「……プロデューサーは優しいよね」
愛依「でも、駄目なんだよね。それじゃうちが納得いかないから」
愛依「だって、……だってさ!」
愛依「うちが楽しく過ごせば過ごすほど、プロデューサーが……」グスッ
愛依「どんどん……疲れて、苦労しちゃうみたいで……」ポロポロ
愛依「そんなの、うちはやだよ……!」
P「あの、愛依……」
愛依「うちにはそう見えてんの! それが……うちは……」
P「……愛依は、俺にどうして欲しいんだ?」
P「プロデューサーとして、アイドルのためなら苦労だって疲労だって耐えてみせるくらいの気持ちではあるさ」
P「それでも、愛依がそんな俺を見るのが辛いっていうなら」
P「愛依がどうして欲しいか、聞かせてくれ」
愛依「……」
愛依「うちがプロデューサーにどうして欲しいか……」
P「今すぐに聞かせてもらえなくてもいい。愛依なりに言葉にできるようになったらでいい」
愛依「……うん」
愛依「わかった。そうする……」
愛依「あー! 暗いのやめやめ!」
愛依「らしくないよね、こういうのはさ」
P「ああ。愛依は普段通りなのがいいよ」
P「そのほうが、俺は安心できるかな」
306 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/12/03(木) 01:40:22.07 ID:s4oAjQDsO
愛依「でさー、なんか思ったんだよね」
愛依「楽しい――よりもすごい、それ以上のことってなんなんだろーなって」
愛依「で、まあ、頭良くないけどうちなりに考えて……それって、しあわせっていうんじゃないかなって」
愛依「前にさ、一緒に買い物行ったじゃん?」
P「ああ。ショッピングモールに行ったよな。愛依に服を選んでもらったときだろ?」
愛依「そそ。そんときね」
愛依「親子3人で仲良しの人たちを見て……あの人たちはきっとしあわせなんだろうなって思った」
愛依「それを思い出したときに、しあわせって楽しいだけじゃないのかなって」
愛依「もっと、楽しい以外の何かが必要なのかなって……そんな気がしたんだよね〜」
P「楽しい以外の何か、か……。愛依の考えたことは、きっとそう簡単に解決する話ではないのかもしれないんじゃないかって思うよ」
P「幸せが何なのか――それは、たぶん俺にもよくわからないから」
P「でも……そうだな。幸せっていうのは、どんなに頑張っても1人では掴めないんじゃないか?」
愛依「2人いればいい……とか?」
P「2人以上、かな。3人でもいい。俺と愛依が見た家族は3人だっただろ」
愛依「あ、確かに」
P「2人でも幸せになれると思うけどな。大雑把に言えば、重要なのは、まずは1人じゃないってことだと思うんだ」
P「そして……自分が1人と思わないこと。特に、自分が……独りだと思わないことだ」
P「絆のないところに、幸せは生まれないと思う――って、わかってないくせに何語ってるんだろうな、俺は」
愛依「ううん。プロデューサーの言ってること、なんとなくだけどわかるかも」
愛依「いまでもさ、ステージであがっちゃうの、克服できてないけど」
愛依「原因は昔のことだとしても、いま治せてないのは、うちがステージで1人だと思ってたからなのかもなーって」
愛依「だってさ、何も敵に囲まれたとかじゃないじゃん? やばい場所に置いてけぼりにされたとかでもないし」
愛依「うちには……ファンも、あさひちゃんと冬優子ちゃんも、なによりプロデューサーがいるのにさ」
愛依「……よし、決めたっ! 楽しい以上の何か――目指してみるわ」
愛依「あと、しあわせにも、なってみたいかな……いつかね」ボソッ
愛依「今日はありがとね。プロデューサーのおかげで元気出た!」
愛依「うちがプロデューサーを癒してあげたかったんだけど〜……やっぱプロデューサーには敵わないな〜」
P「愛依が元気になったなら良かったよ。俺はプロデューサーなんだからさ、アイドルのために頑張るのは当然のことだ」
P「……って、何か忘れてるような気がするな」
愛依「そういえばプロデューサーさ、ずっと寝てたけど、仕事は大丈夫なん?」
P「あ!! くっそ……タイマー設定しないで寝たからだ……! い、今何時――ってもうこんな時間か!?」
P「……はぁ。とりあえず徹夜しないと駄目みたいだ」
愛依「そっか〜〜……じゃあ、うちも事務所泊まる!」
P「いやいや、そういうわけにはいかないだろう」
愛依「今日は大丈夫! うち以外は全員家いるから」
愛依「友だちの家泊まったことにしておくから、ね?」
愛依「夜食も作ってあげるし、うちでも手伝えることがあればお仕事も助けるし、疲れたらまた膝枕してあげるしさー」
愛依「ねね、悪くないっしょ? うちさ〜、今日は帰ったってたぶん楽しくないし、明日1日オフなんだよね〜」
P「はぁ……。駄目って行っても帰らないんだろうなぁ……」
愛依 ジーッ
P「……他の人には絶対に内緒だからな」
愛依「やったね。テンションあがる〜」アハハ
愛依「そんじゃ、ま、頑張ってこ〜」
307 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/12/03(木) 01:40:57.61 ID:s4oAjQDsO
とりあえずここまで。
308 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/12/03(木) 02:10:05.45 ID:sU+0ECO+o
おつおつ
309 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/12/04(金) 01:12:38.74 ID:keDxaytnO
数日後。
〜事務所〜
P カタカタ
冬優子 ポチポチ
あさひ ポチポチ
冬優子 ポチポチ
あさひ「!」
あさひ「冬優子ちゃん!」
冬優子「うわっ、びっくりした……」
冬優子「あんたね……いきなり驚かさないでくれる?」
あさひ「ちょうどわたしもスマホ持ってるんすよ!」
冬優子「だから?」
あさひ「最近始めた対戦ゲームがあって、それを一緒にやって欲しいっす!」
冬優子「駄目」
あさひ「え……」
冬優子「ふゆはふゆでスマホ使ってやんなきゃいけないことがあんの」
冬優子「だから付き合えない。悪いわね」
あさひ「そうっすか……」
愛依「ん〜? どしたん?」
あさひ「冬優子ちゃんとやろうと思ったゲームがあったんすけど、断られたっす」
愛依「あー……」
冬優子 ポチポチ
愛依「そうだ! じゃあさ、あさひちゃん、そのゲーム、うちとやらない?」
あさひ「! いいんすか!?」
愛依「ちょうど暇だったし、いいよー」
あさひ「やったっすー!」
P(今日は午前中にレッスンで午後は休みだというのに、どこかに遊びに行く様子もなく事務所でリラックス、か)
P(まあ、あいつらにとってここが居心地の良い場所になってるなら、いいのかな)
はづき「あ、プロデューサーさん」
P「はづきさん――どうしました?」
はづき「ちょっと今いいですかー?」
P「あ、はい。大丈夫です」
P(なんだろう……)
310 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/12/04(金) 01:16:03.24 ID:keDxaytnO
はづき「こういうプロジェクトがありまして……」ガサゴソ
はづき「はい、これが資料ですー」
P「ありがとうございます……」
はづき「……」
P「……」ペラッ
P(はづきさんから渡された書類に目を通していく)
P「……これは」
P「アイドルユニットのメンバーが1人でどれだけ輝けるのか――ですか」
はづき「そうなんです」
はづき「この大会は、言うなればW.I.N.G.のソロバージョンって感じでしょうか」
はづき「ただし、出場の条件として、普段は主にユニットで活動しているアイドルが1人で出ること――があります」
P「あえてそうすることで、ユニットとしての活動は個々のウィークポイントを隠すための手段ではないことを示せ――と言われているような気分ですね」
P「直接そう書かれているわけでも言われたわけでもないですが」
はづき「はい……」
はづき「この283プロダクションにも声がかかってまして、それでプロデューサーさんにお伝えした次第です」
P「……」
P「その、こういう質問は良くないのかもしれませんが」
P「出ない……という選択肢はあるんでしょうか」
はづき「その選択肢は存在しているけども与えられていない、と言えば良いのか……」
はづき「最終的な判断はプロデューサーさんが下すことになります」
はづき「私から何か言うつもりはありません」
はづき「それでも……」
はづき「……プロデューサーさんの決めたことを、全力でサポートしますよ〜」
P「……」
P「ふぅ……」
P「……」
P「わかりました」
P「あいつらと話してきます」
311 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/12/04(金) 01:57:43.17 ID:keDxaytnO
P「3人とも、少し、いいか?」
冬優子・あさひ・愛依「?」
P「実は――」
P「――というわけなんだ」
P「だから……」
P「……」
愛依「?」
冬優子「何よ、らしくない」
冬優子「要するに、その大会にふゆたち3人の中の誰か1人が出るってことなんでしょ」
冬優子「……」
愛依「あの、さ……2人ともなんでそんな深刻そうなん?」
愛依「W.I.N.G.の1人ヴァージョンってこと――だよね?」
冬優子「それだけじゃないわよ」
冬優子「この大会に出れば、1人でユニットの何もかもを背負うんだから」
冬優子「プロデューサーも言ってたでしょ、普段ユニットで活動してるアイドルが1人で出るんだ、って」
冬優子「勝てば天国負ければ地獄とはこのことよ」
愛依「そ、そっか……そだよねー……」
愛依「なんか……ごめん」
愛依「でも、それならあさひちゃんが出れば――」
冬優子「――わかってんのよ」
愛依「っ」ゾッ
冬優子「そうよ。愛依の言うとおり」
冬優子「そうだけど……そんなの、悔しいと思わないの?」
冬優子「これはふゆにとってチャンスでもあるんだから」ボソッ
愛依「うち、そこまで考えられてなかったわ……ごめん」
P「ま、まずは落ち着いてくれ」
P「俺は、誰が出ても構わないと思っている」
P「誰が出ようと、俺が勝たせてやるまでだ……」
P(愛依は冬優子に事の深刻さを知らされて若干ビビッちまってるな)
P(でも、愛依だって勝てる可能性は十分にあるんだ)
P(才能という意味では、確かにあさひは最強だろう)
P(それでも、あさひは完璧じゃない――完璧であろうとしていたのだとしても)
P(冬優子は――これを自分がのし上がるチャンスだと思っている)
P(だが、それは同時に、高いリスクを孕んでいる。それを冬優子はよくわかっているんだ)
P(だから、冬優子は「出たい」とは口に出せていない……)
P(あさひは特に意見なし、か……)
P「あさひ。お前はどう思う? 出たいか?」
あさひ「どっちでもいいっすかね。面白ければ出たいかもしれないっす」
冬優子「……」
愛依 アワアワ
312 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/12/04(金) 01:59:26.79 ID:keDxaytnO
P(3人の話し合いで決めさせるのは無理かもしれないな……)
P『誰が出ようと、俺が勝たせてやるまでだ……』
P(ははっ、随分と強く出たもんだな、俺)
P(でも、その気持ちがあるのは本当だ)
P(俺は、ストレイライトのプロデューサーとして、あいつらを必ず輝かせなければならない……!)
P(……)
P(一応、聞いてみるか)
P「どうだ? 誰が出るとか、決まりそうか?」
冬優子「……」
あさひ スンッ
愛依「……」
P「俺が、決めてもいいのか?」
冬優子「ふゆはあんたの決定に背かないわよ」
愛依「うちも……選ばれたら……その、ちょー頑張る」
愛依「あはは……なんかうまく言えなかったけど、でも――そのときは絶対勝つから」
P「そうか」
P「あさひはどうだ?」
あさひ「プロデューサーさんにまかせるっすよ」
P「……わかった」
P(決めないと、だな)
P「俺は……」
1.愛依を選ぶ。
2.冬優子を選ぶ。
3.――この選択肢はロックされています――
選択肢↓2
(とりあえずここまで)
313 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/12/04(金) 02:02:14.74 ID:geU4b5Cs0
おつ
ノクチルの時も思ったけど、同じ子ばっか選んだらどうなるんだろ
安価は下
314 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/12/04(金) 02:07:06.46 ID:WGk6Gy1Uo
まあ1
おつ
315 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/12/04(金) 06:50:17.19 ID:TP541CDDO
和泉さんと
316 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/12/05(土) 11:48:21.97 ID:4/Arhol7o
乙
317 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/12/09(水) 00:55:31.64 ID:g/2P+SkJO
P「……愛依」
愛依「え!? あ、うち……?」
P「どうだ、出てみないか」
愛依「うちが、ストレイライトを……」
P「強制はしないよ」
愛依「……」
P(愛依には大きすぎるプレッシャーだろうか)
P(愛依は……ただ弱いというわけではないが、脆い部分を抱えている。それでも……)
P(たとえそうだったとしても、俺は愛依と挑戦してみたい)
愛依「プロデューサーは……」
愛依「うちなら、勝てるって思う?」
P「ああ。そのつもりだよ」
愛依「あはは……プロデューサー、即答じゃん」
P「もちろん。俺は、愛依がストレイライトを背負えるって信じてるからさ」
愛依「!」
愛依「……そっか」
愛依「……」
愛依「っしゃ!」パシ
愛依「うん、やってみるわ!」
愛依「あんまし不安に思ったって、うちらしくないもんね」
愛依「それに、プロデューサーに「信じてる」なんて言われちゃったらさー……」
愛依「やらないわけにはいかないっしょ!」
P「愛依……」
P「ありがとう。一緒に頑張っていこう」
冬優子「ん゛っ、んんっ」
冬優子「2人で空気作ってるところ悪いけど、ふゆたちがいることを忘れんじゃないわよ」
P「あ、冬優子」
愛依「ふ、2人の空気って……もー! 冬優子ちゃん何言ってんのー!」
冬優子「愛依」
愛依「?」
冬優子「頑張んなさい。応援、してるから」
冬優子「大会に出るのは1人でも、ストレイライトは3人……ううん」
冬優子「プロデューサーと4人で1つだってこと、覚えておきなさい」
愛依「……うん」
愛依「サンキュー、冬優子ちゃん」
あさひ「……」
P(あさひは無言か……まあ、あさひのことだから、本当に気に留めていないのかもしれない)
P「そうそう、いままで通りにユニットとしての活動も普通にあるからな」
P「愛依は大会に向けてユニットとは別のスケジュールも組むことになるが……」
P「……ストレイライトは何も変わらないさ」
P「いつだって、お前らが一番だよ」
愛依「おっ、プロデューサーイイコト言うじゃん」
冬優子「かっこつけちゃって……」
318 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/12/09(水) 01:29:16.31 ID:vCwokJiKO
数十分後。
P(あれから、自然に3人は、今日は解散、という流れになった)
P(愛依だけが事務所に残った――まあ、残ってくれたほうがこちらとしては都合が良いけども)
P(しかし、大丈夫かな)
P(愛依が残ったのは偶然というか、なんというか……)
P(……遅いな)
ジャーッ
ガチャ
P「!」
愛依「……あ」
P「愛依――」
愛依「いやー難産だったわー! バスンとしてスッキリってカンジ?」
P「――そ、そうか」
P(? その目元は……)
愛依「どしたん? プロデューサー」
愛依「うちの顔になんかついてる?」
愛依「あ、さすがに引いちゃったとか?」
P「愛依」
P「お前、泣いただろ」
愛依「!?」
愛依「な、何言って……」
P「その……化粧が崩れてたから」
愛依「……あ」
P「視界が霞んで直しきれてない」
愛依「そ、そっかー! ま、ばれちゃしょうがない……か」
愛依「ごめん、プロデューサー」
愛依「こんなところ見せちゃって」
P「別に、トイレで泣いてたことをどうこう言うつもりはないんだ」
P「むしろ、謝るのは俺のほうかもしれない」
P「俺が愛依に大会出場を促したから……」
愛依「ち、違う……!」
愛依「プロデューサーはなんも悪くないから!」
愛依「……どうしちゃったんだろうね、うち」
愛依「いままでこんなことなかったからさ。人前に出るのが怖いことはあっても」
愛依「狭い個室で1人になって、プロデューサーがうちを選んでくれたことがめっちゃやばいことだって思って」
愛依「でさ、気づいたら涙止まんなくなってて……」
愛依「こんなうちでホントに良かったのかな……」
P「……確かに、ここからは決して易しい道じゃない――いや、はっきりいって厳しい道だよ」
P「それは、お前があさひや冬優子じゃないからではない」
P「あさひだって、冬優子だって、簡単にクリアできるものではないんだ、今回のは」
P「それでも、俺は愛依と勝ちたいって思ったから」
P「勝って……ストレイライトは単なるアイドルユニットを超える価値があるってことを、愛依と証明したいんだ」
P「俺のわがままだって怒ってくれてもいい。愛依が拒否したら、そのときは何も言わずに受け入れるつもりだよ」
319 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/12/09(水) 02:03:29.77 ID:vCwokJiKO
愛依「うちがプロデューサーに怒るなんてナイナイ」
愛依「むしろ、ありがとって思ってる。プロデューサーのためにも、うち、頑張りたい」
愛依「ううん、絶対頑張る。頑張って、勝って、たっくさんの人にストレイライト最高って言わせる……!」
愛依「……だからさ、はい」
P(手を差し出して……握手か?)
P「ああ――」スッ
ニギッ・・・グイッ
P「――え」
P(立ち上がって手を差し出してきた愛依と握手をしようとした瞬間――愛依に引っ張られ……)
P(前方に軽くバランスを崩した俺を愛依が受け止めるような形で……)
ギュッ
P(強く、けれども弱く、抱きしめられた)
P「め、愛依……?」
愛依 ギュッ
P「そ、その、いきなりで、なんていうか……」
愛依「いま事務所にいるのはうちとプロデューサーだけっしょ」
P「それはそうだが……」
愛依「ごめん、プロデューサー。お願いだから、いまだけは何も言わないで」
P「……」
愛依「っ」ギュウゥッ
P(抱きしめる力が強くなる。一方で、愛依の手が震えているような気もする)
P(弱さを感じる――これから挑むモノからのプレッシャーやユニットを背負うことへの不安がある)
P(強さも感じる――勝ってやるのだという決意と揺るぎない想いが確かに存在している)
愛依 スッ
愛依「プロデューサー……」
P「お、おう……」
愛依「……すぅー、はぁー……っし。もう大丈夫」
愛依「うちもプロデューサーと勝ちたい気持ちでいっぱいだってわかった」
愛依「一緒にトップアイドル目指すって、こういうコト……でもあるんだよね」
P「今まで俺たちが歩んできた道を思い出せばいいさ」
P「たくさん勝って、時には失敗も経験して……どれも意味のあることだっただろ?」
P「これからだってそうだよ。きっと、さ」
愛依「だね。また頑張るだけじゃん?」
P「ははっ、その意気だ」
愛依「うん!」
愛依「……あ、時間やばっ! そろそろ帰んないと」
愛依「じゃ、プロデューサー、またね!」ダッ
P「ああ、またな」
愛依「っとと、言い忘れてたわ」
愛依「その……抱きついたこと、ナイショ、だかんね。ひみつっていうか、……忘れちゃってもいいから」ゴニョゴニョ
愛依「ば、ばいばい!」タタタッ
P(そんなことを言われた余計に思い出すじゃないか……!)
P「……柔らかかったな」
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