【シャニマス】P「よし、楽しく……」- Straylight編- 【安価】

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/05(土) 15:44:32.58 ID:TUxOY/VZ0
・シャニマスのSSです。二次創作や解釈違いを敬遠される方はブラウザバックを推奨します。

・ストーリーは、途中提示される選択肢を安価で選ぶことによって分岐することがあります。

・エンディングにたどり着いたら冒頭に戻ります。

・前作は
【シャニマス】P「よし、楽しく……」-noctchill編- 【安価】 https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1594223305/
ですが、読まなくても大丈夫です。また、前作を読まれた方々におかれましては、このスレでの前作のネタバレになるレスはご遠慮願います。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1599288272
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/05(土) 16:08:12.01 ID:TUxOY/VZ0
P(人の才能を見抜く――だなんて、簡単なことじゃない)

P(世の中に天才は一定数いるけど、それでも圧倒的な天才だらけじゃないから)

P(天才にもいろいろいる。天才なのに知名度が低いなんてまったくもって珍しいことじゃないんだ)

P(才能に貴賎はないが、才能ごとの中では貴賎はある)

P(アイドルで言えば、そう……歌、ダンス、演技、見た目――なんでもいい。放っておいても人をひきつける圧倒的な天才……)

P(そんなものをお目にかかれる機会なんて巡ってくるのだろうか……俺は、そう思っていた)

P(けど、思ったよりも早く――)


「よっ……ほっ……っと」


P(それは、偶然か、必然か)


「――ここは……こう?――」


P「!」

「――っと……うん、決まった!」

P「君、ちょっといいかな?」

「? わたしっすか?」

P「ああ、さっきのダンスって――」


P(――一瞬で“それ”だと確信できる存在に、俺は出会ったんだ)
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/05(土) 16:41:58.15 ID:TUxOY/VZ0
〜事務所〜

P「おはようございます」

あさひ「あ! プロデューサーさん!」

P「お、あさひか。どうした?」

あさひ「これ、見てくださいっす!」

P「これって……石、だよな」

あさひ「ただの石じゃないっすよ〜?」

P「どんな石なんだ……?」

あさひ「それはっすね〜……」

愛依「おっ、あさひちゃんじゃ〜ん。なになに? また何か持ってきたの?」

あさひ「これっす!」

愛依「石……? しかもわりとでかめの」

あさひ「これ、冬優子ちゃんにそっくりなんすよ!!」

愛依「ぶふっ!」

あさひ「わっ! 愛依ちゃんきたないっすよ。いきなり噴き出してどうしたんすか?」

愛依「い、いや……だって……」プルプル

あさひ「プロデューサーさんはどうっすか!? この石、似てるっすよね? 冬優子ちゃんに」

P「ど、どうなんだろうな……」

あさひ「えーっ、みんなわかんないんすかねー」

あさひ「この辺の輪郭とか、そっくりだと思うっす!」

P「ただのゴツい岩の一部にしか……」

愛依「あっはっはっはっは!! ひーっ、ちょーウケる……」ククク...

あさひ「むぅ」

P「……なあ、あさひ。一つ聞きたいんだが」

あさひ「なんすか?」

P「それ、冬優子には言ってないよな?」

あさひ「もちろん――」

P ホッ

あさひ「――最初に伝えたっすよ?」

P「……」

あさひ「今朝早起きして走ってたら河川敷の近くで見つけたんすよ! ゲットしてすぐ報告っす!!」

愛依「あー……。ねえ、プロデューサー?」

P「なんだ?」

愛依「今日のうちらの予定って、どうなってたっけ?」

P「午後からレッスン。現地集合も可」

愛依「あはは…………やば」

あさひ「今日もがんばるっすよ! 愛依ちゃん」
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/05(土) 17:16:01.78 ID:TUxOY/VZ0
夕方。

P カタカタ

P「ふぅ……」

P(そろそろ、あいつらが戻ってくる頃か)

P(というか、冬優子怒ってるだろうな……)

P(ちゃんと仲直りしててくれよ)

あさひ「ただいま戻ったっす!」

愛依「たっだいま〜」

冬優子「あー、ほんっとに疲れたわ……」

P「おかえり、3人とも」

あさひ「プロデューサーさんプロデューサーさん!」

P「ん? どうしたんだ?」

あさひ「今日のレッスンなんすけどね、冬優子ちゃんすごかったんすよ!」

あさひ「なんていうか、迫力がはんぱなかったっす!!」

冬優子「……あんたに怒るのに体力使うくらいなら、レッスンでストレスもろとも発散させてやろうと思っただけよ」

愛依「とか言って〜、ほんとは怒るつもりもなかったんじゃないの〜?」

愛依「冬優子ちゃん優しいし」

冬優子「そんなんじゃないわよ」

冬優子「……思い出したらまたイライラしてきたわね」

P「ま、まあ、あさひも悪気があったわけじゃないんだろうし、な?」

冬優子「それが余計にタチわるいっての」

冬優子「まあいいわ。ちょっと休ませて」ボフッ

あさひ「あ! じゃあわたし、冬優子ちゃんのとなりに座るっす!」

あさひ「とーう!」ボフッ

冬優子「ちょっ……! 暑いからあっちいきなさいよ、ほら、しっしっ」

あさひ「……っ」ショボン

冬優子「……」

冬優子「……嘘よ。ちょっとくらいなら、いいわ」

あさひ「!」パァァァ

あさひ「わーい! 冬優子ちゃんの隣ゲットっす!」ダキッ

冬優子「抱きつくことまでは許可してないわよ! ちょっとって言ったじゃない! ……もう」

愛依「いいねいいね〜、見てて微笑ましいわ」

P「なんだかんだで仲良いんだよな」

愛依「ね。うち、あの子たちとアイドルできてよかった」

愛依「さーってと、うちも混ぜてもらお〜」

冬優子「ちょっ! あんたまでなに抱きついてんのよ!」

P(3人とも笑顔だ。このユニットにしてよかった)

P(あさひは天才で、冬優子と愛依は決してそうではない。けど、それは2人があさひの引き立て役という意味なんかじゃなくて……)

P(裏表のないあさひと、2面性のある冬優子と愛依――)

P(――強い光と濃い影が、綺麗なグラデーションを成して魅力的なものになっているんだ)

冬優子「……ったく、暑いわねもうっ!」

冬優子「プロデューサー! もっとクーラー効かせて!」

P「ははっ、はいよ」ピッ
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/05(土) 17:43:49.99 ID:TUxOY/VZ0
P カタカタ

あさひ「……」ジーッ

冬優子「……」

あさひ「……」ジーッ

冬優子「……なによ」

あさひ「私のほう、見てほしいっす」

冬優子「もう……なに――って顔近っ!」

あさひ「……」ジーッ

冬優子「な、なんなのよ……」

冬優子「綺麗な顔してんだから見つめられたらやばいっての……」ボソッ

あさひ「冬優子ちゃんって、髪の毛のここを……こうすると」

あさひ「ほら、やっぱりクワガタみたいっす!」

冬優子「……」

P(……)

あさひ「んー、アゴの長さ的にはメスのクワガタっすかねー。あ、冬優子ちゃんがしゃくれてるって意味じゃないっすよ?」

冬優子「わかってるわよ……」

愛依「なんか面白いこと思いついちゃった系? あさひちゃん」

あさひ「そうなんすよ。ほら、冬優子ちゃんクワガタっす!」

冬優子「もうどうでもよくなってきた……」

愛依「じゃあ私は……」

P(愛依が後ろ髪を前に……?)

愛依「ヘラクレスオオカブトじゃー!」グワァーッ

あさひ「あははっ! すごいっす! これでバトルできるっすよ、冬優子ちゃん!」

冬優子「あー、はいはい。よかったわねー」

愛依「うちにしては結構グッドアイデアだったくない?」

あさひ「うーん……」

あさひ「色合い的には、サタンオオカブトのほうが近いっす」スンッ

愛依「サタ……? そ、そうなんだ……あさひちゃんものしり〜」

冬優子「愛依もよく付き合ってられるわね」

愛依「下の子たちの面倒見てるからさー、うちも楽しいし」

冬優子「ふーん、そういうもんかしら」
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/05(土) 18:37:36.85 ID:TUxOY/VZ0
P「ははっ、お前ら仲良しだな」

あさひ「プロデューサーさんも見るっすか? 冬優子ちゃんクワガタ」

P「ここからでも見えてたよ。立派なアゴだよな」

冬優子「あんたまでノッってんじゃないわよ!」

あさひ「冬優子ちゃん……クワガタ……」

P「どうしたんだ? あさひ」

あさひ「何か思い出しそうなんすよね……」

冬優子「最高に嫌な予感しかしないわね」

あさひ「あっ!」

冬優子「……」

愛依「なになに? どしたん?」

あさひ「この前愛依ちゃんと冬優子ちゃんに見せた幼虫!」

愛依「あー……」

冬優子「はぁ……」

あさひ「もう成長したと思うんで、今度持ってくるっすよ!」

冬優子「持ってこなくていいわよ!」

あさひ「えーなんでー!?」

冬優子「なんでって、こっちがなんでって言いたいわよ」

あさひ「せっかく冬優子ちゃんと冬優子ちゃんのバトルが見られると思ったのに……」

冬優子「あんた、「この幼虫、冬優子ちゃんみたいっす」とか言ってたけど、ふゆとおんなじ名前つけてんじゃないでしょうね……」

あさひ「えー、いいじゃないっすかー。可愛いんすよ?」

冬優子「そういう問題じゃないっての」

愛依「五十歩? 譲っても、もう成長したなら幼虫じゃないっしょ〜」

冬優子「愛依、もう五十歩とおつむが足りてないわよ。出直してきなさい」

愛依「あちゃ〜、二千五百歩譲るんだったっけ!」

冬優子「なんでかけちゃったのよ……てか計算速いし」

あさひ「冬優子ちゃん急におむつの話なんかしてどうしたんすか? まさか……っ!」

冬優子「あさひちゃんっ、ま・さ・か、のあとには何を言うつもりなのかな〜?」

あさひ「冬優子ちゃんはおもらs――むぐっ」

P「おむつじゃなくておつむだぞ、あさひ」

あさひ「むーっ、プロデューサーさんが急にわたしのほっぺをむぎゅっと……! してきたっす」

P「ほら、もう暗くなってくるから、3人とも帰ったほうがいいぞ」

あさひ「プロデューサーさんは帰らないんすか?」

P「まだ仕事が残ってるからな」

愛依「プロデューサーも大変だよねー……マジで感謝しかないわ」

P「いいのいいの、プロデューサーってのはそういう仕事なんだよ」

P「よし、今日のストレイライトは解散だっ」
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/05(土) 18:38:44.30 ID:TUxOY/VZ0
>>5 訂正:

あさひ「私のほう、見てほしいっす」
→あさひ「わたしのほう、見てほしいっす

愛依「じゃあ私は……」
→愛依「じゃあうちは……」

失礼しました。
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/05(土) 18:39:33.68 ID:TUxOY/VZ0
>>7
あさひの訂正後のセリフの最後のかぎかっこが抜けてました。
あさひ「わたしのほう、見てほしいっす」
が正しい訂正後のセリフです。
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/05(土) 18:40:24.31 ID:TUxOY/VZ0
とりあえずここまで。
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/05(土) 22:42:13.45 ID:aXFfzdNvo
おつ
ストレイライト来たぁぁぁ!
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/05(土) 22:50:54.65 ID:RCoEqf2r0
今度はあさひが犯人かな?
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/06(日) 00:19:12.19 ID:MH4OcvTc0
〜仕事帰り 車内〜

P「今日のラジオ、あさひらしく場を盛り上げられたじゃないか。よかったぞ」

あさひ「あ、そうなんすか? そういうのはよくわかんないっす!」

あさひ「わたしは、ただわたしが思ったことを答えたり話したりしただけっすから」

P「そうか。まあ、それがあさひだよな」

P(しかし、テレビ局で一緒にゲスト出演してた芸人にあさひがからまれちゃったから、随分と帰りが遅くなったな……)

P(……あいつ、絶対にあさひの見た目にしか興味ないぞ)

P(あさひの魅力はそんな単純なものじゃない。見た目は大事だが、もっと内在的なところが重要なんだ)

あさひ「空、暗いっすね」

P「ああ、すまんな、いろいろと……」

あさひ「どうしたんすか? 元気ないっすね、プロデューサーさん」

P「いや、なんでもないよ」

ヒューッ

ドォンッ

あさひ「おおっ!!」

P「何かあったか?」

P「なんか音が聞こえたけど」

あさひ「花火! 花火っすよ!」

P「近くで花火大会でもやってるのかな」

あさひ「気になるっす〜! もっと近くで見てみたいっすよ! プロデューサーさん!」

P(まあ、気分転換だと思えば、ちょうどいいか)

P「よし、じゃあ、向かってみるか」

あさひ「やったっす! これで近くで見れる〜」
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/06(日) 00:45:18.98 ID:MH4OcvTc0
P「しかし……すごいな、人の数が」

あさひ「……」

P「もう花火大会は始まってるみたいだし、いい場所はとっくにとられちゃってるよなぁ……」

あさひ キョロキョロ

あさひ「……」ウーン

P「あさひ?」

あさひ「! あそこっす!」

P「え?」

あさひ「プロデューサーさん! わたしについてきてくださいっす! 行くっすよ!!」

P「あ、おい、ちょっと待て――……」


あさひ「ここならしっかり見えるっす」

P「あんなところからよく見つけたな……しかも人ごみの中を難なく通って来れたぞ」

あさひ「人の流れがあったっすよ。じーっと見てたら、それが変わらなかったんで、そこからうまく進んでいけば避けられるって思ったっす!」

あさひ「なんていうか、こう……道が見えたっす」

P「はは……こりゃすごいな」

P(昔読んだアメフトの漫画を思い出すな)

あさひ「あとはなんとなく、花火大会に来てる人が行かなそうな場所を、周りの人を観察して考えたっす」

あさひ「そうしたら、ここかなって思って」

P「おかげで俺もちゃんと花火を見れるよ。ありがとな」

あさひ「礼には及ばないっすよ! プロデューサーさんと一緒に見たいから頑張ってここに来たっすから」

P「あさひ……」
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/06(日) 01:13:38.48 ID:MH4OcvTc0
ドォーン

バチバチバチバチ

ヒュールルル

ドォォォン

あさひ「いろんな色、いろんな形……」

P「綺麗だよな、花火」

あさひ「うーん、それもそうなんすけど……」

あさひ「わたし、あの仕組みが気になるっすよ!」

P「打ち上げる仕組みか? それとも、光る色の仕組みか?」

P「あとは、どうやって形を作ってるのかとか……」

あさひ「全部気になるっす! ……けど、まあ、いまはあの色の原理に興味があるっす」

P「ああ、それなら、俺でも少しは教えてやれそうだ」

あさひ「知ってるんすか!?」

P「理科で習うからな」

P「炎色反応っていうんだ」

P「燃えてるのは金属……だったはずだ」

あさひ「金属って、あの鉄とか金とかってやつっすか?」

P「まあ、そんなところだな。もちろん、他にもいろんな金属がある」

P「金属の種類によって色が変わるんだぞ」

P「色っていうのは、光の波長の違いと言ってもいいんじゃないかな」

あさひ「色は光……光は色……?」

P「まあ、ちゃんとしたことは理科の先生に聞くなり本を読むなりしてくれ」

P「とにかく、光があって、それが物体を照らすと、物体の表面で光の一部が吸収されて残りが反射されるんだ」

P「それが俺たちの目に届いて、はじめて「見た」って思うんだよ」

P「見えてる色の違いは、目に届いた光の波長の違いだから」

P「花火に使われてる材料によって、それが変わると、まあ、いろんな色に見えるって感じなんじゃないか?」

P「もう随分と前の記憶だし、適当な説明だけどな」

あさひ「いいや、プロデューサーさん! めっちゃ面白そうっす!!」

あさひ「もっとないんすか!? 光の……色の話!!」

P「ええ……そんなに覚えてるかな……」

P「……花火は炎色反応って現象なわけで、金属に関する反応で――」

P「――金属原子にエネルギーが与えられて基底状態から励起状態になると、特定の波長の光を一番強く発するから……」

P「エネルギー準位の遷移がどんなもんかで……放出されるエネルギーの大小で……発する光の波長が変わるとか、そんなところ……か?」

あさひ キラキラ

P(興味津々JCだ! 視線が花火より眩しい……。それだけにちゃんと教えられてないのが心苦しい……)

あさひ「プロデューサーさんっていろいろ知ってるんすね〜!」

P「昔ちょっと触れたくらいで、大したことないよ。いまの説明にも自信はないし」

あさひ「むむ……」

P「どうかしたのか?」

あさひ「ふと思ったっす……この金属はこういう色に光ります――っていうのはわかるんすけど、逆はどうなんすか? 色から金属がわかったりはしないんすか?」

P「……随分と面白い質問だな。俺も知りたいよ……。スペクトルの違いだっけか? なんかそんな話を聞いた気がするけど……忘れた」

あさひ「俄然興味が湧いてきたっす!」

P「ははっ……まあ、俺が話した内容は中高の理科で勉強するだろうし、学校で教わりたいなら理系に行けばいいと思うぞ」
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/06(日) 01:16:23.38 ID:MH4OcvTc0
あさひ「学校……っすか」

P「?」

あさひ「い、いやっ、なんでもないっす!」

あさひ「それよりプロデューサーさん! さっき、本を読めばいいって言ったっすよね?」

P「あ、ああ……まあな。独学で勉強するっていうのもありだとは思うぞ」

あさひ「じゃあ、今度一緒に図書館とか本屋さんに行って欲しいっす!!」

P「ははっ、そうだな。そのうちな」

あさひ「約束っすよ?」

P「あさひがいい子にしてたらな」

あさひ「はいっす! わたし、いい子にしてるっす!」
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/06(日) 01:34:18.13 ID:MH4OcvTc0
ヒューゥゥゥ

ドドォンッ

あさひ「……」

P「……」

ヒュルルルル

ドドドォッ パラパラパラ...

あさひ「花火って、あんなに綺麗なのに、すぐに終わっちゃう……」

P「?」

あさひ「花火……花火に心があったら、どう思ってるんすかね」

P「花火に、心が?」

あさひ「打ち上げられる瞬間とか、自分がどんなに綺麗な花火だって知ってても、飛ばされたら最後……じゃないっすか」

P「あさひ……」

あさひ「花火は綺麗っす。でも、わたしは花火にはなりたくないっす」

P「もし、さ……花火がずーっと空ではじけ続けて光を放ち続けてたらどう思う?」

あさひ「それは迷惑っす! うるさいし、星を見たいときに邪魔になるっす!」

P「花火はさ、綺麗なのにすぐ終わっちゃうって思うんじゃなくて――」

P「――すぐに終わるからこそ美しい……そう思ってもいいんじゃないか?」

あさひ「……」

P「もちろん、打ち上げられてはじけたその瞬間は文句のつけようのないくらい綺麗だと思う」

P「けど、それが一瞬の出来事だって、俺たちは知ってるから……」

P「だから、最高に綺麗だって感動できるんじゃないかと、俺は思うよ」

P「もし、花火に心があったとしても……」

P「その気持ちが悲しいものだと決め付ける必要は、ないんじゃないか?」

あさひ「プロデューサーさん……」

あさひ「……えへへっ、そうっすね。そうかもしれないっす」

ヒューッ

ドドドドドド

あさひ「うわーっ! すっごいっすー!」

P「特大サイズだな」

あさひ「結構続いてるっすよ」

P「確かにな。まあ、花火らしい時間ならちょっとくらい長くはじけててもいいんじゃないか」

あさひ「あ、人が帰り始めたっすね」

P「なんだかんだ最後まで見ちゃったのか……」

あさひ「いやーっ、今日は楽しかったっす! ありがとうございますっす! プロデューサーさん!」

P「俺のほうこそ、楽しかったよ。ありがとうな。ここに連れてきてくれて」

あさひ「今日のことは一生忘れられないかも!」

P「そのうち、彼氏とかと花火大会に来て、その記憶も上書きされるかもしれないぞ? なんてな」

あさひ「……」

P「あさひ?」

あさひ「……なんでもないっすよ〜。さ、帰るっす」タタタタタ

P「ああ、車停めたところに向かおう……って足速っ!? ま、待ってくれよ」

あさひ「プロデューサーさん! 今日の記憶は、上書きなんてしてやらないっすよー!」

あさひ「それでも上書きしたいって思ったら、そのときは、また、プロデューサさんと来るっす!!」
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/06(日) 01:35:12.07 ID:MH4OcvTc0
とりあえずここまで。
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/06(日) 01:57:13.94 ID:PTdwa/n3o
おつおつ
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/06(日) 05:20:14.74 ID:br22CDsDO
上書きとか単語が出ただけでびびるわ
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/06(日) 09:19:42.17 ID:UFB6fyTAo
楽しみ
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/07(月) 00:19:48.26 ID:zasX3y6FO
〜事務所〜

冬優子「あのっ、プロデューサーさんっ」

P(む、嫌な予感がする)

P「いまは忙しいから駄目だ」

冬優子「ちょっと! まだ何も言ってないじゃないのよ!」

P「……なんでしょうか」

冬優子「あんたがとってきたこの仕事よ!」

冬優子「はづきさんから企画書見せてもらったの。ほら、見なさい!」

P「いや、見なくても内容は知ってるけど……」

冬優子「『魔女っ娘アイドルミラクル♡ミラージュ』のイベント出演て――……」

冬優子「……っ」

冬優子「こんなの……」

P「やらないのか? この仕事を」

冬優子「それは……」

冬優子「……」

冬優子「ちょっと来て」グイッ

P「あ、おい……」
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/07(月) 00:38:08.24 ID:zasX3y6FO
バタン

冬優子「……」

P「……」

冬優子「誰も……、いないわよね」

P「そうなんじゃないか?」

冬優子「――……っ」

冬優子「……怖いって言ったの、覚えてる?」

冬優子「ふゆがこのアニメを好きって言うのが……怖いって」

P「……ああ、覚えてる」

冬優子「この仕事、出ればきっと、本音であろうとなかろうとこれを「好き」って言わざるを得なくなる」

冬優子「これって、そういう仕事でしょ」

冬優子「そんなの、ふゆにとっては、もっと怖いわよ」

冬優子「……だって、だって」

冬優子「アイドルのふゆとして言ったら、皆に好かれるふゆとして嘘をつくことになる!」

冬優子「黛冬優子として言ったとしても……アイドルのふゆは嘘だって公に宣言するみたいで……」

冬優子「嫌とか嫌じゃないとか、好きとか嫌いとか、そういうんじゃないの……」

冬優子「……怖い、のよ。ただ、怖い……」

P「…………今日の午後の予定は変更しよう」

冬優子「え?」

P「個人レッスンを入れていたが、あれはキャンセルする」

冬優子「ちょっと、何勝手なこと言ってんのよ」

冬優子「ふゆは、あいつに……っ。と、とにかく! 遅れをとるわけにはいかないのよ!」

冬優子「バケモンにだって……できるなら負けたくなんてないのよ……!」

冬優子「そのために時間はたくさん使わないといけないの」

P「そうか」

P「で、それだけか?」

冬優子「は?」

P「それ以上ないなら早く外に出る支度をしてくれ。連れて行くところがある」

冬優子「……なによ! プロデューサーだからってふゆの気持ちまで……!」

P「俺は、プロデューサーとして、冬優子のことを思って行動しようとしてるまでだ」

P「俺が信じられないのなら、レッスンに行けばいい。そうしても、俺は止めない」

冬優子「……そんなの」

冬優子「そんなの……ずるいわよ」

P「どうするんだ?」

冬優子「……行く」

冬優子「時間の無駄だったら、承知しないから」

P「わかった。じゃあ、行こう」
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/07(月) 00:48:47.31 ID:zasX3y6FO
〜某オタクの聖地〜

冬優子「……ここで何しようってのよ」

P「まあ、適当にブラつく」

冬優子「仕事――……いや、ふゆの場合はレッスン? と、とにかく、サボって散策してるだけでしょ!」

P「そんな大声出して――もあんまり目立たないのがいいと思わないか」

冬優子「そりゃ……ここには存在感の塊みたいなのがたくさんあるし」

冬優子「で、ほんと、ここでどうしようってのよ」

冬優子「別に、その……ふゆだってよく来るし……。あんたに案内されるようなのはないわよ」

P「ああ。案内をしてやろうとかいうつもりもない」

冬優子「ならなんで……」

P「お、あそこでなにやらイベントがあるみたいだな。よし、行くぞ冬優子!」

冬優子「あっ、ちょっ、待ちなさいよ!」

冬優子「これじゃあただの……デートみたいじゃない」ボソッ

P「早く来いよー」ブンブン

冬優子「うっさいわねっ。いま行くわよ」タタタ
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/07(月) 01:09:41.01 ID:zasX3y6FO
P「耳が幸せだ……」

冬優子「あんた……その、声豚だったわけ?」コゴエ

P「悪いか?」

冬優子「べ、別に悪いなんて言ってないわよ……。こっちこそ、悪かったわね、なんか」

P「さ、次行くぞ次」スタスタ

冬優子「早歩きやめなさいよ! しかも速っ」

冬優子「……もうっ」タタタ


P「おおっ! すげぇな……ゲームだといくら3Dといえど死角やら影やらがあるからさ」

P「ここは……こうなってたんだな……」

冬優子「これ、ふゆでも元ネタがわかんないんだけど」

P「まあ、最近のじゃない上に、若干マニアックだからな」

冬優子「ふーん」

P キラキラ

冬優子「……」

P「しかし……」

P「ゲームか……久しくやってないな……」

冬優子「さすがにあんたでもオフの時間くらいあるんじゃないの?」

P「まあ、それはそうなんだけどさ。せっかくなら時間かけてじっくりやりたいと思うし、そうすると普段のオフじゃ時間足りないし……」

冬優子「ゲームが好きなのね」

P「うーん、ちょっと違うかな」

冬優子「?」

P「ゲームそのものというより、作品が好きなんだよ」

P「世の中いろんな作品があるけど、中には自分と重ねるようなものもあって――」

P「――いや、なんなら、この作品は、あるいはこのキャラは、俺自身なんじゃないか、なんてな」

P「自分の在り方に影響を与える不可分な存在がアニメとかゲームって、何も不自然じゃないよ」

冬優子「!」

P「それを否定するやつがいたら……苦しいよな――」

P「――辛い、よな」

冬優子「……っ」

P「あ、そろそろ次行くぞ」スタスタ

冬優子 タタタ
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/07(月) 01:20:06.76 ID:zasX3y6FO
P「おお! しばらく見ないうちに単行本がこんなに……」

P「あっ、こっちは外伝が出てるだと……買おうかな……でも読む時間が……」

冬優子「……ふふっ」

P「ん? どうした冬優子」

冬優子「なんでもないわよ。なんか、あんた見てたらおかしくなってきただけ」

P「俺のオタクムーブに対する嘲笑か?」

冬優子「ううん。そんなんじゃない。てか、あんたはオタクとしてまだまだよ。下には下がいるんだから」

P「上には上が――って言ってやれよ、そこは」

冬優子「知らないわよ。絶対値でもとっておきなさい」

冬優子「ふゆが言いたいのは、別にあんたをあざ笑うつもりで笑ったわけじゃないってこと」

冬優子「そう……全然違う」

冬優子「ふゆは、ふゆに笑ったのよ。ふゆ自身のことが、おかしくなったの」

冬優子「ほら、次は何を見るの?」

P「そうだな……こっちだ」スタスタ

冬優子 タタタ
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/07(月) 02:02:06.96 ID:zasX3y6FO
冬優子「ここ……。っ」

冬優子「……ここにあんたの好きな作品があるっての?」

P「好きな作品はないかな」

冬優子「じゃあなんで来たのよ」

P「好きになりたい作品なら、あるから」

冬優子「……!」

P「どこにあるんだろう……」キョロキョロ

冬優子「……」

冬優子「こっちよ」ボソッ

P「え?」

冬優子「ついてきて。そうすればあんたが探してるの、たぶん見つかるから」

P「わかった。ついていくよ」


P「よくわかったな。俺の探してるやつの場所」

冬優子「まあね。これでしょ?」

P・冬優子「『魔女っ娘アイドルミラクル♡ミラージュ』」

P「ご名答」

冬優子「もう……あんたって……ほんと……」

P「冬優子がそれを好きだと言うことについてどんな思いを抱いてるか――それについては、求められない限り俺は口を出さない」

P「でも、プロデューサーとして、俺は冬優子のことを知りたいと思う」

P「だって、俺は、プロデューサーである前に、冬優子のファン1号だからさ」

P「好きだとか、“推す”だとか、そう思ったら、つっぱしらずにはいられないんだ」

P「周りに何と言われようと、あるいは周りに隠していようと――」

P「――俺だけは俺を否定しないから」

P「……冬優子が自分を嘘だと思ったとしても、好きなものを好きだと言うのが怖いのだとしても」

P「冬優子が黛冬優子としてではなくふゆとしてアイドルをしてることとか、冬優子が好きだと思うことは、その姿勢自体は嘘じゃないだろう」

P「嘘をつくことと、嘘であることは、違うと思う」

P「俺は、嘘をついてでも嘘であろうとはしない冬優子を――全力で“推してる”」

P「冬優子には、冬優子を否定して欲しくない」

P「自分が好きだと思ってる対象が自分を否定してたら、悲しいだろ?」

P「どうだ? ……なんか、長く喋っちまったけど」

冬優子「っ……ほんとに……語りすぎなんだから」

P「騙ってはいないけどな」

冬優子「うっさい……もう、メイク崩れちゃう……」ポロポロ

冬優子「あんた、ひょっとしてふゆのこと好きでしょ」ポロポロ

P「当たり前だ。今日はこの街で自分なりにオタクムーブをかましてきたが――俺が今日一番オタク発揮したいのは、黛冬優子ってアイドルだからな!」

P「というわけでこれから「ふゆ」ってアイドルについて順を追って語っていくんだが……あ、場所変える? 今度の仕事の場所に移動した方がっぽいかな?」

冬優子「ちょ、ちょっと待って! 本人の目の前で語られるだけでも恥ずかしすぎてどうにかなりそうなのに、もうメイクがやばいから……! てか気の遣い方おかしいでしょ!」

P「メイク? マスクしてるんだしいいだろほっとけよそんなの」

冬優子「なんで急に雑になるのよ!」プンスコ

P「まあ、さすがに冗談だ」

冬優子「ほんっと、最悪で最高のプロデューサーに振り回されてるわよ、ふゆは。……ふふっ」

冬優子「花を摘んでくるから、そこで待ってなさい!」
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/07(月) 02:13:34.89 ID:zasX3y6FO
冬優子「おまたせ。それで? このコミックスを買おうっての?」

P「ああ。アニメだと自分の余裕のある時間との兼ね合いが難しそうかな、と」

冬優子「それで、アニメの代わりに漫画で?」

P「そういうことだ」

冬優子「甘いのよ!」

冬優子「このコミックスとアニメじゃ、違うところがいっぱいあるんだから!」

P「アニメのほうがいいのか?」

冬優子「は? 何言ってんの? どっちも最高に決まってるじゃない」

冬優子「これから語りまくってやるんだから覚悟しなさいよね! 好きになりたいなら、それくらい余裕でしょ?」

P「ははっ、臨むところだ」

冬優子「……」

冬優子「……ほんと、ありがと」ボソッ

P「え? なんだって?」

冬優子「標準的ラノベ主人公には聞こえなくていいことよ」

冬優子「あ、そうだ。あんた、ここにあるの、買わなくていいわよ」

冬優子「ふゆが全部持ってるから貸したげる。ありがたく全部見て読むこと、いい?」

P「了承っ」

冬優子「秋子さんで答えなくていいから。似てないし」

冬優子「……ふふ」

冬優子「プロデューサー!」ビシッ

冬優子「ふゆはあんたに推されるくらいじゃ足りないから!」

冬優子「ガチ恋させてやるんだから――ちゃんとふゆのこと、見てなさいよね!」
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/09/07(月) 02:16:00.76 ID:zasX3y6FO
とりあえずここまで。
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