高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「1時間だけのカフェで」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/08/23(日) 18:58:24.97 ID:JFe/mPB/0
――おしゃれなカフェ――

北条加蓮「藍子。いいお知らせと残念なお知らせがあるんだけど、どっちから聞きたい?」

高森藍子「それは〜……できれば、残念なお知らせは聞かないようにする、ということには、できませんか?」

加蓮「できません」

藍子「ですよね……。……加蓮ちゃんがお話したい方からでっ」

加蓮「うまく逃げたな?」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1598176704
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/08/23(日) 18:59:08.34 ID:JFe/mPB/0
レンアイカフェテラスシリーズ第132話です。

<過去作一覧>
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「膝の上で」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「最初にカフェで会った時のこと」

〜中略〜

・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「癒やされるカフェで」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「目先と足元を確かめ直すカフェで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「日常的なカフェで」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「汗の跡が残る場所で」

お話の性質上、今回はほんのちょっとだけ短めです。
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/08/23(日) 18:59:36.86 ID:JFe/mPB/0
加蓮「じゃあいいお知らせから。藍子ちゃんに急なお仕事が入りました。新作カメラのキャンペーンだそうです」

藍子「わあっ……! もしかして、モバP(以下「P」)さんに相談してみたからかな……言ってよかったっ」

加蓮「相談したんだ」

藍子「はい。なかなかやりたいことって思いつかなくて……それで、自分の周りにあるものを、もう1回、確認し直してみたんです」

加蓮「藍子と言えばカメラだもんね」

藍子「でも、部屋にはいろいろなものを置いていたので、確認し直すことで、悩んじゃうことにもなってしまいました」

加蓮「贅沢な悩みだ」

藍子「サイドチェストの上に、加蓮ちゃんが置いたままにしていたマニキュア、中身が入ったままだったら、違う相談をしていたかも……」

加蓮「藍子にネイルのお仕事? 甘い甘い。それはまだ甘いよ」

藍子「ふふ。やっぱり?」

加蓮「せめて水着のグラビアを堂々と受けられるくらいにならなきゃ」

藍子「う……それは。……って、水着のことと、ネイルのお仕事って関係しているんですか?」

加蓮「……さすがに私も、プールや海ではネイルは外すなぁ」

藍子「そうですよね……?」
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/08/23(日) 19:00:07.18 ID:JFe/mPB/0
加蓮「さて、残念なお知らせですが」

藍子「ごくっ……!」

加蓮「1時間後にPさんが迎えに来るんだって」

藍子「1時間後に、Pさんが……えっ? それって、今から1時間後にってことですか?」

加蓮「今から1時間後に」

藍子「な、なるほど〜。それは……あっ。それは確かに、ちょっぴり……ほんのちょっぴりだけっ。悪いお知らせかもしれませんね」

加蓮「せっかくオフの日を合わせたのにね。Pさんも空気読めてないんだー」

藍子「オフの日を合わせてくれたのも、Pさんですから」

加蓮「そうだけどね」

藍子「そうですか〜……。1時間後……。1時間後……」

加蓮「そわそわする?」

藍子「……お仕事だって聞いたら、足のつけ根のあたりとか頭とかが、熱くなっちゃって……でも、迎えに来るのは1時間後なんですよね」

加蓮「1時間の間、藍子ちゃんは蒸し風呂状態だねー。どうする? クーラー、強くしてもらう?」

藍子「ううんっ。それは、わがままですから」

加蓮「そっか」

藍子「かわりに、加蓮ちゃんが気を紛らわせてください。何かお話とか、あとは――あっ、でも、アイドルのお話をされたら、もっと体が熱くなっちゃうかも……?」

加蓮「藍子。それは藍子がキラキラしているアイドルである限り、逃れられないことだよ。諦めなさい」
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/08/23(日) 19:00:36.77 ID:JFe/mPB/0
藍子「う〜……。そわそわする〜……。そういえば、以前、加蓮ちゃんにも似たことがありましたよね」

加蓮「あったねー。私の時は30分だっけ? ホントに急な撮影が入ったってヤツ」

藍子「懐かしいなぁ。そっか。あの時の加蓮ちゃんの気持ちって、こういうことだったんですねっ」

加蓮「……私、そこまでそわそわしてた覚えないんだけど」

藍子「そうでしたっけ」

加蓮「どっちかっていうと藍子に悪いなーって思ったり、あとお母さんにイライラしてたんじゃなかったっけ。あの時の私」

藍子「う〜ん……。加蓮ちゃんは、はしゃいでいましたけれど……。そうそう。ドラマでの、自分の役について嬉しそうにお話してましたっ」

加蓮「そうだったかなぁ。覚えてないや」

藍子「加蓮ちゃん、ずっと大忙しですもんね。しょうがないです」

加蓮「1つ1つのことは大切にしてるつもりだけど、時間の流れが早すぎて……。大切なものを抱え込むだけで、精一杯だよ。私」

加蓮「もし私が零しちゃってたら、藍子が拾って、どこかにしまってあげててね」

藍子「はい。大丈夫、覚えていますよ。加蓮ちゃんの……嬉しそうにお話する表情っ。あとは、すっごく充実しているって言った時の、加蓮ちゃんの弾んだ声も――」

加蓮「やっぱいいや。全部捨てて」

藍子「そんなことできませんよ〜」
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/08/23(日) 19:01:06.98 ID:JFe/mPB/0
加蓮「やっぱりアンタはアンタのものを拾い集めてなさい。私の分は私が持っておくから……そうでもしないと、相変わらず人のことばっかりでしょ」

藍子「それも大丈夫っ。私のことも、ちゃんとしていますから。……ちゃんとできていますよね?」

加蓮「知らなーい。Pさんにでも聞けば?」

藍子「ああ、すねちゃった……。……くすっ♪ でも……そっか。加蓮ちゃんを、1人にさせちゃいますね」

加蓮「独りは慣れてるけどさ。なんか……ちぇっ、って感じ」

藍子「ちぇ、って感じ」

加蓮「ばーか」

藍子「ふふ。ごめんなさいっ」

加蓮「そこで嫌味ったらしくならないのが藍子だねー」

藍子「……いやみ?」

加蓮「忙しくてごめんなさーい。今をときめくアイドルですので! ……的な。うっわ、やっぱこういうの全然似合わない」

藍子「よく分かりませんけれど……自慢気になってしまう、ってことでしょうか」

加蓮「そういう感じー」

藍子「なるほど〜。ちょっと、やってみますね」

加蓮「……うん?」
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/08/23(日) 19:01:36.61 ID:JFe/mPB/0
藍子「えっと。……わ、私は、すごいアイドルですからっ。ええと……とにかく、すごいんです!」

加蓮「…………」

藍子「そうじゃないですね。こういう時は、どんっ、と堂々として……それから、具体的なことを言うといいんでしたっけ」

藍子「ごほんっ。私は、すごいアイドルなんです。この前も、握手会をやらせて頂いて、たくさんのファンが会いに来て下さいました! いっぱいお話も聞かせてもらったし、応援してるよって言ってもらえて――」

加蓮「……分かった分かった。いいよもう」

藍子「それから……えっ? 分かりました。じゃあ次は、加蓮ちゃんの番ですねっ」

加蓮「は?」

藍子「え? だって、加蓮ちゃん、何かお話したいことがあるんじゃ……?」

加蓮「……??」

藍子「???」

加蓮「あー……もしかして、私が喋りたいと思ってるから藍子の話を遮ったって思ってる?」

藍子「そうですけれど……」

加蓮「分かった。現場に行く前に氷水をかぶっておきなさい」

藍子「……そんなことしたら風邪を引いちゃいます」

加蓮「バカは夏風邪を引かないから大丈夫よ」

藍子「どういう意味ですか〜っ」
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/08/23(日) 19:02:07.32 ID:JFe/mPB/0
加蓮「氷水は冗談として、どう? 落ち着くことはできた?」

藍子「……そういえば、私、もうちょっとしたらPさんが迎えに来てくれて、キャンペーンのアイドルになるんですよね」

加蓮「そうだねー」

藍子「思い出したら、また熱く……。も〜っ、加蓮ちゃんっ」

加蓮「ふふっ。せっかく忘れられてたのに」

藍子「あと何分くらいだろ……まだ40分くらいあります。なのに心臓がドキドキ言ってます……」

加蓮「慣れたことでも、それが起きるまでの待機時間とかが長ければ長いほど、必要以上にドキドキしちゃうもんね」

加蓮「藍子だって、ちょっとしたいいことなのに時間をおいて思い出したら、なんだかすごく大きかったことみたいに思えてきたり、そういう経験あるでしょ?」

藍子「確かに……。この前だと、目玉焼きを作ろうとして、卵を割って、その時に混ざっちゃった卵の殻が、綺麗に取り出せたんですっ。あの日は、1日ずっと嬉しかったなぁ……」

加蓮「……思ったよりものすごく小さなことだった」
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/08/23(日) 19:02:37.04 ID:JFe/mPB/0
藍子「加蓮ちゃんも、そういうことがあるんですねっ」

加蓮「んー、まぁ……。……なんか嬉しそうだね?」

藍子「はい。加蓮ちゃん、よく後ろ向きなお話や、ネガティブなことを言っちゃうことが……ふふ。最近は、そんなことはないのに。勝手にそう思い込んでしまいます」

加蓮「ま、シリアスをやらせたら業界トップの加蓮ちゃんですから♪」

藍子「それ以外でもトップになれているのに……。だから、そんな加蓮ちゃんから、いいこともあったんだって改めて教えてもらえると……なんだか、嬉しくなっちゃうな」

藍子「あっ。これが、私にとって今日の、ずっと思い出せる嬉しいことになりそう♪」

加蓮「……なんだかなぁ。バカみたいって思うけど、こうも喜ばれたら言えないじゃん」

加蓮「しかも、藍子が楽しそうにしてることが……とか思っちゃうし。私」

藍子「……? 加蓮ちゃん、さっきから小声で何を――」

加蓮「なんでもなーい。私達って幸せ者だねって話」

藍子「はいっ!」

加蓮「食いつき凄っ」
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/08/23(日) 19:03:07.11 ID:JFe/mPB/0

□ ■ □ ■ □


藍子「〜〜♪」パラパラ

加蓮(あれからもう少しのんびりして、気付いたらもう30分を切って……それどころか20分もないみたいだけど)チラ

藍子「〜〜〜♪」パラパラ

加蓮(……ま、時間になったら教えてあげよっか。タイマーだけセットしとこ)ガサゴソ

加蓮「何か食べるの?」

藍子「せっかくカフェに来たんですから、何か注文しなきゃ。すみませ〜んっ」

加蓮「わ、こら。私まだ決めてないのに!」

藍子「そうでしたね。ごめんなさい、店員さんっ。……あの、そこで待っていなくても、注文が決まった時に、またお呼びしますよ?」

加蓮「たはは。ずっとそこに立ってたらマネキンに間違われちゃうよ。まあカフェにマネキンはないけど」
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/08/23(日) 19:04:06.87 ID:JFe/mPB/0
藍子「ありますよ?」

加蓮「……あるの?」

藍子「店長さんが独自に考えたコーディネートを、マネキンに着せているカフェ。インテリアとして、置いているみたいです」

加蓮「コーデをかぁ。その店長さんが着ればいいじゃん」

藍子「そのカフェの店長さんは……ちょっとだけ、自分の見た目に自信がないみたいで」

加蓮「あぁ」

藍子「でも色々な服の組み合わせを試してみたり、いろんなゲームの……メイク? で、ファッションを試すのが好きだったって、お話されていました」

藍子「そんなある時、友だちの方から、マネキンを置いてみるのはどうか、って提案されたそうです」

加蓮「よく思いついたね、その友達の人」

藍子「提案してもらえたのにも、ちゃんと理由があるんですよ。……加蓮ちゃん、何だと思いますか?」

加蓮「お、クイズ? えーっと……。その人がアパレルデザイナーとか?」

藍子「おしいっ」

加蓮「惜しいんだ。じゃあ……マネキンそのものを作ってる人?」

藍子「せいかいですっ」

加蓮「へー。そんな人もいるんだね」
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/08/23(日) 19:04:36.85 ID:JFe/mPB/0
藍子「正解した加蓮ちゃんには、景品として……」ガサゴソ

藍子「景品として?」ガサゴソガサゴソ

藍子「……景品、ええと。景品として……」

加蓮「……ほったらかしにしてごめんね店員さん。そういう訳で、また後で注文するから、今はいいよ?」

藍子「店員さん? これは……わあっ。綺麗なバッジ♪ この波のバッジって、海沿いのカフェが、夏の間だけみなさんにお配りしている記念品ですよねっ」

加蓮「藍子ってホント、カフェのことならなんでも知ってるねー。……え、私にくれるの?」

藍子「正解した景品みたいですよ。よかったですね、加蓮ちゃんっ」

加蓮「……ふふっ。ありがと、店員さん。注文、私はココアでお願いしますっ」

藍子「じゃあ、私も!」
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/08/23(日) 19:05:06.62 ID:JFe/mPB/0
加蓮「藍子の分はミニサイズにしてあげてね。この子、後でたぶん車移動するし」

藍子「……?」

加蓮「いやいや……。だからこの後撮影なんでしょうが」

藍子「……あっ」

加蓮「忘れてたの……? そわそわするからって。不安だなぁ、もう」

藍子「ま、まあまあ。まかせてくださいっ」

加蓮「任せてられるか! そんなんだから、藍子のスケジュールが私に送られてくんのよっ」

加蓮「っていうかなんで藍子のスケジュールが私に送られてくんのよ! 何も考えないでカフェで一緒してるよって返信したけどさ、よく考えたらおかしいでしょ」

藍子「最近、アイドルのことで、加蓮ちゃんにも相談に乗ってもらったり、一緒に作戦会議をしたり……そのことをお話したからかもしれませんね」

加蓮「私が忙しかったらどうするつもりだったのよ、Pさんは……」

藍子「もしも加蓮ちゃんから返信がなかったら、私に直接連絡していたのかもしれません」

加蓮「……真面目に説明されるとそれはそれで笑えてくるわね」
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/08/23(日) 19:05:36.65 ID:JFe/mPB/0
藍子「あっ、店員さん。ココア、ありがとうございますっ」

加蓮「サンキュっ。あははっ! 藍子のコップ、すごくちっちゃい!」

藍子「本当っ。コップというより、カウンターに乗せるインテリアみたい」

加蓮「それもカフェで見た話?」

藍子「そうですよ。他にもカップや、大人の方が使われるジョッキ、それにお皿にコースターも。すべてミニチュアサイズで、カウンターの上に飾られているんです。面白かったなぁ……」

加蓮「なんだか、小人の家みたいだね」

藍子「小人の……あっ、確かに。昔見た絵本みたい」

加蓮「ココア、いただきまーす。ずず……うんっ、甘いね♪」

藍子「ごくごく……。ふうっ。リラックスできる甘さ……♪」

加蓮「そういえばバッジかぁ……。どっかにつけよっかな」

藍子「せっかくですから、つけてあげてください」

加蓮「カバンにでもつけとこっと」カチャカチャ
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/08/23(日) 19:06:06.99 ID:JFe/mPB/0
加蓮「海沿いのカフェとか、ミニチュアが飾られたカフェとか……あとマネキン? カフェって、まだまだいっぱいあるんだね。行ってみたいなー」

藍子「ホントですかっ? じゃあ今度一緒に行きましょう!」

加蓮「き、急に乗り出してきたね。ま……藍子が連れてってくれるなら?」

藍子「もちろんです♪ ふふっ。また、加蓮ちゃんと一緒にカフェ巡りですね」

加蓮「えー、またあちこち行くの? 楽しいけど、あれちょっと落ち着かないよー」

藍子「大丈夫です。穴場のカフェも、ばっちりおさえていますから」

加蓮「じゃあ……3回に1回くらいはここでっ」

藍子「いいですよ。それに……ううん。加蓮ちゃんの行きたい時でいいんです。ここでゆっくりしたいなって思った時には、ここでゆっくり、時間を過ごしましょう?」

藍子「遠くまで歩いていくのも、楽しいですけれど……どこへ行くか決めるのは、その時の気分次第でもいいんです。無理に、とは言いませんから」
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/08/23(日) 19:06:36.62 ID:JFe/mPB/0
加蓮「藍子の話、これまでいっぱい聞いてきたつもりなのに。まだまだ知らないことってたくさんあるんだねー」

藍子「私もですよ。加蓮ちゃんとお話する度に、どんどん世界が広がっているみたい。前に聞いたお話でも、違った印象になったり……。だから私、お話を聞くのって好きなんです♪」

加蓮「私は藍子の話を聞きたいんだけどー?」

藍子「私だってそうですよ〜。加蓮ちゃんのお話、もっともっと聞きたいな。私が話す番は……3回に1回くらいでっ」

加蓮「ハマった?」

藍子「えへへ。3回に1回くらい。なんだか、いい響きっ」

加蓮「ごめん、それはちょっと分かんない」

藍子「じゃあ、加蓮ちゃんにとっては4回に1回くらい?」

加蓮「そうじゃなくて」
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/08/23(日) 19:07:06.75 ID:JFe/mPB/0
加蓮「……、」チラ

加蓮「5分前。Pさん、表の通りまで来てくれるんだって。どう? もう出る?」

藍子「そうですね……。そうしますね。ココアの残りだけ、頂いて――」ゴク

藍子「ふうっ。……ねえ、加蓮ちゃんっ」

加蓮「うん。何?」

藍子「いつもは、3回のうちの2回。私が、加蓮ちゃんのお話を聞く番。でも……」

藍子「次に会う時は、3回のうちの1回にさせてください。今日あったこと――これから起こること。きっと、いっぱい加蓮ちゃんにお話したいなって、思うことになりますから!」

藍子「ううんっ。お話したいって思えるように、頑張ってきますっ」

藍子「……なんて言うと、ふふ。ちょっとだけ、アイドル失格かも」

加蓮「ホントだよ。ほら、ファンと、期待してくれているお客さんの方を向いてきなさい」

藍子「アイドルでいる間は、そうしています。だから……私が、あなたの友だちでいる時は、あなたにお話できるといいなって気持ちで……。私にとっては、どちらも私ですから!」

加蓮「……そっか。じゃあ楽しみに待ってるよ。アイドルの高森藍子ちゃん?」

藍子「……も〜。加蓮ちゃんのいじわる」
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/08/23(日) 19:07:36.81 ID:JFe/mPB/0
加蓮「じゃあ、今回はお互い言いたいことはまだまだ足りないってことで」

藍子「それ以上は、楽しみにとっておきますね」

加蓮「行ってらっしゃい」

藍子「行ってきます!」
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/08/23(日) 19:08:08.20 ID:JFe/mPB/0
<店員さん、今日もありがとうございましたっ

<からんころーん


加蓮「ん? 着信……タイマー? そっか。タイマーをセットしてたんだった。いらなかったけどね」ガサゴソ

加蓮「アイドルでいる間、かぁ」

加蓮「5分前に行動……。そう考えると、カフェにいるのに私は半端にアイドルモードだったってことだ」

加蓮「今回は仕方ないとこあるんだろうけど、そういうとこ、藍子はすごいなぁ」

加蓮「それなのに、私を追いかけて……か」

加蓮「……ふふっ。藍子じゃないけど、むずむずしちゃうね」

加蓮「たまにはアイドルらしくなく、思いっきり甘えたり、どこかに遊びに誘ったりでもしよっかな? なんて、それは今じゃないっか」

加蓮「……だからー。店員さん? 気を遣おうとすんなっ。あっち行け、マネキンっ」シッシッ


【おしまい】
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