提督「観光するか」 金剛・瑞鶴・響「はいっ!」 空母棲姫「…………」

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99 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2020/09/11(金) 01:16:38.16 ID:XckqZ6hX0
今回はゆっくりと投下していきますねー。

>>98
敵キャラが味方になったら能力が明らかに下げられるアレならセーフ。たぶんセーフ。
100 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2020/09/11(金) 01:17:16.06 ID:XckqZ6hX0
提督「──さて、金剛も落ち着いた事だ。どうやってここまで来たのか詳しく教えてくれるか」

金剛「……感情を表に出し過ぎまシタ」

瑞鶴(それっていつもの事じゃ?)

響(むしろいつものって抑えてたのかな……)

金剛「……簡単に言うと、テートクから頂いたマネィで段ボール三つを追加で秘密配送して貰ったデス」

瑞鶴「私達は解体されたって事にしているわ」

提督「いくらあの無能な総司令部と言えどバレるような気もするが。そもそも誤魔化すとして、解体された時に生まれる資材はどうしたんだ?」

響「建造妖精さんが調達するって言ってくれたよ。アテがあるんだってさ」

瑞鶴「総司令部の人達への解体報告も妖精さんがしてくれるわ。まあ……嘘の報告なんだけどさ」

────掘っ立て小屋

監査員A「……さて、総司令部からの命令でここへ来たが、面倒だな」

監査員B「まあそう言うな。状況を書類に纏めて提出するだけだろ? 前の艦娘全解体を記録する事よりかはマシだ」

監査員A「ああ、あの鎮守府のな……。まあ、今回は三隻だけだから確かにマシか。──おっ」

建造妖精「やーやー」ヒラヒラ

監査員B「妖精か。艦娘を呼んで来い。解体の記録を取る」

建造妖精「もうやったよー」

監査員A「……は? あの提督、勝手に解体したのか?」

建造妖精「ううんー。艦娘の子が『提督が居ないのならば私達も居る意味がありません』って言って解体を懇願してきたんだよー」

監査員B「それで解体した、と」

建造妖精「そだよー。私の役目ももう終わりだから、じゃねー」テテテ

監査員A「あ、待て!」タッ

監査員A「……居ない?」

監査員B「どうした?」

監査員A「いや……廊下に出たと思ったら消えて……」

監査員B「ああ……こりゃ本当に提督も艦娘も居なくなったって事か」

監査員A「どういう事だ?」

監査員B「妖精っていうのは提督と艦娘が居る場所に住み着く。鎮守府として機能しているかどうかって事らしい。そうなると妖精も消えるって話だ。あの妖精は鎮守府として最後の仕事をしたって所か?」

監査員A「……不気味な話だな」

監査員B「実際、妖精がどういう存在なのか総司令部でもよく分かっていないらしいぞ。もしかしたら過去の英霊だったりしてな」

監査員A「…………」

監査員B「そう怖がるな。俺達はここの状況を書類に纏めて帰って安酒を煽るだけだよ」

監査員A「……そうだな。そうするか」

────提督の家

提督「……そうか。建造妖精には最後まで迷惑を掛けてしまったな」
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/11(金) 01:22:58.40 ID:X+FgtjLto
過去の英霊説浮上……!
102 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2020/09/11(金) 01:38:09.87 ID:XckqZ6hX0
金剛「……テートク」

提督「どうした」

金剛「テートクは、困った事があったら言ってこいって言っていまシタよね?」

提督「ああ。間違いなく言った」

金剛「……私達は今、帰る家を失って困っているデス。どうか、助けてくれまセンか……?」

提督「何を馬鹿な事を」

瑞鶴「…………っ」ビクッ

提督「助けるも何も、いつものようにお前達と暮らすだけだろう? ただ場所が変わっただけだ」

金剛「!」パァッ

瑞鶴「…………」ホッ

響「その言い回しも、いつものよう、だね」

提督「そうか?」

瑞鶴「提督さんってちょっとだけ不安にさせてから安心させるのよね」

金剛「ふふ、テートクの悪い癖デース」ニコ

響「すぐに分かるけどね」

提督「……そうか」

空母棲姫「──ほら、提督をイジメないの。貴方達は部屋で休んでなさい」

提督「そうだな。不安定な体勢で荷台に揺られて辛かっただろう。広いとは言い難いが、三人が寝転がるくらいならば問題は無いぞ」

金剛「二人は何かするのデスか?」

空母棲姫「この家のお掃除よ。私達も深夜に帰ってきたばかりだから、そこの部屋だけしか掃除していないの」

提督「今日一日は掃除をメインで終わらせるつもりだ。それと、服を買わなくてはならないか」
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/11(金) 01:50:14.05 ID:SzYBma5Xo
1つの部屋で一夜を明かし一緒にショッピングだと……許せる!
104 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2020/09/11(金) 01:57:58.47 ID:XckqZ6hX0
瑞鶴「え? それって私達の事?」

提督「そうだ。流石にその恰好で外を出歩くと艦娘だとすぐにバレる。艤装を完全に下ろし、普通の服を着ていればまずバレんよ」

響「やけに自信があるんだね」

提督「目の前に実証者が居るからな」チラ

空母棲姫「……私ですか」

提督「ああ。お前の変わりっぷりは凄かった。本当にあの空母棲姫とは思えないくらいだったよ」

瑞鶴「そうよね。私達と違って堂々と歩き回ったんでしょ? なら充分に実績があるじゃない」

空母棲姫「……そんなに上手くいくものかしら」

提督「多少は髪型も変えさせて貰うがな」

響「司令官がしてくれるのならば私は喜んで」

提督「ああ。毎日はしてやれないだろうが、出来る限りやろう」

響「期待しているよ」

提督「──さて、お前達も正座は疲れただろう。部屋に入って寝ておきなさい」

三人「はいっ」ピシッ

……………………
…………
……
105 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [sage saga]:2020/09/11(金) 02:03:18.48 ID:XckqZ6hX0
>>101
友永隊などの装備があるので、もしかしたら妖精さん達は過去の英霊の方々なのかもしれない、という妄想です。
……今になって思えば、瑞鶴と瑞鳳を愛する作者がそのような設定を使っていたような気が。設定が被ってしまった。

>>103
今回は正妻空母になれるかどうか。極めて高いポテンシャルを秘めているけど、金剛さんという極厚超高の壁が立ちはだかっているからどうなるやら。
106 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2020/09/11(金) 02:18:45.37 ID:XckqZ6hX0
提督「……意外と壊れるものなのだな」グツグツ

空母棲姫「水道は一部のゴムを、ガスは配管の入れ替えだったわね。……使っていると壊れないのに、使わないと壊れるだなんて不思議ね」

提督「本当にな。だが、ガス業者がちょうど手隙で助かった。おかげですぐにガスも直せて使えるようになった」グツグツ

空母棲姫「水道も簡単な修理だったのが幸いね。……電気の配線系統は大丈夫なのかしら」

提督「そこも不安だな……。今は使えているから大丈夫だろう、と電気業者も言っていたが……」グツグツ

空母棲姫「視てくれるのは明日の夕方だったでしょうか」

提督「ああ。明日の夕方は家に居ないといけないな」ザァッ

空母棲姫「……ところで、この太い麺がうどんですか?」

提督「そうだ」ポタポタ

空母棲姫「見るからに柔らかそうです……。貴方が苦手と言っていたのも少し分からないでもないわ」

提督「母が作った伊勢うどんは柔らかくし過ぎた可能性もある事から今回は少し早めに上げているが、どうなるやら」キュポッ

空母棲姫「あら、良い香り……。これが伊勢うどんのつゆ?」

提督「そうだ。こんなにも柔らかい麺も、醤油と見間違えるようなつゆも伊勢独特なんじゃないか?」トクトク

空母棲姫「食感は食べてみないと分からないけれど、味の方は期待しても良いかもしれないわね」

提督「私も随分と久し振りなものだ。……さて、後はきざみネギを乗せて完成だ」ソッ

空母棲姫「これが伊勢うどん……。確かに普通のうどんとはかなり違うわ」

提督「後は皆がどっちを好むか、だな」スタスタ

空母棲姫「戸を開けるわ」スッ

提督「ありがたい。──出来たぞ。伊勢うどんだ」

瑞鶴「待ってたわ! もうお腹ペコペコよー……」

響「ほう。これは珍しい。本当に混ぜて食べるんだね」

金剛「今まで見てきたうどんと全然違うデス……。これが郷土料理というものなのでショウか?」

提督「郷土料理と言われると少し難しいな……。まあ、こういううどんもあるって思ってくれたらそれで良い」
107 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2020/09/11(金) 02:39:02.44 ID:XckqZ6hX0
空母棲姫「器は熱いから気を付けなさいね」コトッ

提督「配膳も終わったな。──では、頂こう」

三人「いただきます!」

空母棲姫「いただきます」

提督「……む?」コネコネ

四人「…………」ジー

提督「……どうした?」コネ

金剛「初めて食べるデスから、まずはテートクの食べ方を見て予習しておかないと、と思ったのデース」

瑞鶴「私も。混ぜて食べるって言われても、自分が思い描いているやり方と同じかどうかは分からないもん」

響「中央に添えられたネギも一緒に混ぜるんだね」

空母棲姫「ネギをどうするかは好き好きがあるような気がしないでもないわ」

瑞鶴「あっ、例えば後乗せにするとか?」

空母棲姫「その方が薬味としてのネギが機能するかもしれないもの」

金剛「では、私はテートクと同じく一緒に混ぜてみるデース!」コネコネ

瑞鶴「私は一旦端に置いて……こう、して……っと」コネコネ

響「……そこまで器用に避けられそうにないかな」コネコネ

空母棲姫「む。巻き込んでしまったわ……」コネ

提督(……伊勢うどんでここまで真剣に食べ方を考察している姿を見るのは初めてだ)チュルッ

金剛「!! ワーォ! これはとってもベリィグッド!」チュルッ

瑞鶴「んー……確かに麺がすっごい柔らかいわね。本当にうどん? って思っちゃうかも」チュル

響「……悪くはないとは思うね。かけうどんに飽きたら伊勢うどんが良いかなって感じると思う」チュル

空母棲姫「つゆが美味しいので麺の柔らかさはあまり気にならない程度ね。これはこれで有りだと思うわ」ツュル
108 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2020/09/11(金) 02:50:56.20 ID:XckqZ6hX0
提督「ふむ……。私は他に食べる物が無かったら喜んで食べると言った所か」

瑞鶴「ふーん? って、それって褒めているようで貶してない?」

提督「やはりうどんはコシがある方が良い」

金剛「柔らかくて食べやすいデスよ? 味も醤油の塩辛さと砂糖の甘さが混ざっていて、ブラーボゥ!」

響「金剛さんは大好評だね」

提督(……柔らかい、素材にたれを掛けただけ。イギリス料理に通ずるものがあるのか……?)

金剛「これは七味とも合いそうな味デスね?」

提督「言われてみれば確かに七味を掛ける人が多かった気がしないでもない」

空母棲姫「確かうどんを買いに行った時に一緒に買っていたわね。取ってくるわ」スッ

瑞鶴「……行動が早いわね」

響「なんか凄く慣れた感じだけど、司令官はどう仕込んだの?」

提督「聴こえていたら怒られ──ああ……」

響「あ……」

空母棲姫「──聴こえているわよ?」ニコ

響「……イズヴィニーチェ。失礼な事を言ってしまった」

空母棲姫「今回は大目に見るわ。伊勢うどんが美味しくなくなるもの」スッ

瑞鶴(あ、このうどん気に入ったんだ)

空母棲姫「──あら、七味を掛けるとピリッとしたアクセントが付いてとても美味しいわ」

金剛「リアリー? では私も……──!! ワォ! 普通のうどんとは別格の味の変わり方デス!」

瑞鶴「──あ、ホントだ。食感はアレだけど、鋭さが出てちょっと食べやすくなった」

響「……ちょっと辛いかもしれない」

提督「……やはり味は良いんだがな」

金剛「テートクは苦手意識が拭えないようデスね」

提督「小さい頃に苦手だった食べ物は大人になっても変わらんようだ……」

空母棲姫「こんなにも美味しいのに」

金剛「ええ、こんなにもベリィグッドですのに」

提督(ふぅむ……。これが食の好みの差か……)

…………………………………………
109 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2020/09/11(金) 02:54:48.19 ID:XckqZ6hX0
今回はここまでです。また近い内に現れます。

こんな風にまったりとした空気で進行していきます。今回は伊勢うどんで、次は何になるかな。
ちなみに近い内に完結する予定ですので、何かあったらポンポン書き込むと良いかもしれません。
本当にショートストーリー。
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/11(金) 08:08:19.37 ID:V+OxsWTFO
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/11(金) 12:03:22.27 ID:ugKikuAz0
乙です。
伊勢うどんは、参拝客からの注文が途切れないので、その都度茹でるよりも
常に大鍋に茹で続けていたからあそこまで柔らかくなったとの説が。
つゆじゃなくタレにしたのも、つゆ作りが間に合わなかったからだとか。
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/01(木) 20:32:34.87 ID:voEVV4gMo
永遠に待ってる
クロスレール読んでくるわ
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/10/24(日) 04:50:04.08 ID:wVf3M3Kvo
久々に艦これやって相変わらずのクソUIに笑顔になりつつ開発や秋月掘りをして、手持ち艦の秋グラとボイスを鑑賞してたけどやっぱ瑞鶴めちゃくちゃ可愛いな
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/10/24(日) 04:53:18.78 ID:wVf3M3Kvo
ということで私も待ってます
115 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2023/02/28(火) 16:07:20.58 ID:wmOrESA70
提督「──さて、食事も終わり、服も着替えて貰ったが……私のセンスだから心配で仕方がない」

金剛「これって、私が空母棲姫に貸した服と似ているデスね?」

提督「ロングスカートにはなっているが、確かに色合いは似ている。なんというか……お前はこの色が合っていて、どの服を想像してもこれに行き着いてしまった」

金剛「どの服を想像しても……えへへ♪ ありがとうございます……」

空母棲姫(……幸せそうな顔。……羨ましいわ)

瑞鶴「ねーねー。このふわっとしたブラウスは気に入ったんだけど、私はどうしてホットパンツなの?」

提督「どうしても瑞鶴は活発なイメージがある。艦載機を操るからか、自由に動きやすい服装を考えた」

瑞鶴「なるほどねぇ。ま、確かに動きやすいと思うわ。……脚が露出し過ぎてる気がしないでもないけど」

提督「気になるか」

瑞鶴「んー、ちょっとだけ? なんていうか、見た事はあるけど私には合わないかなーって思ってたから」

空母棲姫「安心なさい。その姿で走っているととても様になっているわよ」

瑞鶴「ん、そう? そう言われたら良い感じに思えるかも。ありがとね、提督さん!」

響「そして私のだが……これはセーラー服? なのかな?」

提督「店の人が言うにはセーラーブラウスという物らしい。セーラー服に似せて作られた服らしいが、私も詳しくは分からん」

響「……私だけいつもと少し違うだけのような気がする」

提督「実を言うと……響の服は一番悩んだ。冬服であればすぐに思い付けるんだが、夏服となると……な」

響「それで苦肉の策?」

提督「……そういう事だ。響はセーラー服が似合い過ぎる。せめてものの大きな違いとして前リボンのコルセットスカートを選んでみたが……」

響「ふーん?」クルクル

空母棲姫「……回ってどうしたの?」
116 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2023/02/28(火) 16:07:50.04 ID:wmOrESA70
響「似合い過ぎるって言われたら悪い気が起きなくてね。そこの姿見で自分の後ろ姿とかも見てみてるんだ」クルクル

提督「……………………」

響「……なるほど。よく見れば確かに違う。軍服の感じがしなくて、軽い動きをしてくれる。こんな服もあるんだね」クルクル

響「ふむ。これは良い……。いつもの感覚で居られるのに違う自分なのは新鮮だ。司令官、スパシーバ」

提督「……一番不安だったから助かる。気を遣わせてしまったな。すまない」

響「本心だよ。いつもの私なのに違う私だなんてなかなか体験できない。司令官は良い選択をしたと思うよ」ニコ

空母棲姫(……本当、どの子も良い子ね。こんないい子達だからこの人も優しいのか、それともその逆か。いずれにしても、温かい話だわ)

空母棲姫(そして……少し羨ましいって思ってしまったわ)

提督「さて、後はお前だけだな」

空母棲姫「え?」

提督「ほら、これだ」スッ

空母棲姫「え、あの……え?」

提督「お前だけ金剛のお下がりというのも寂しいものがあるだろう?」

空母棲姫「……用意、してくれていたの?」

提督「まあ……自信が無くて今まで出せなかった。お前の事は一番分かっていないからな……。三人が気に入ってくれたからこそ出せたんだ」

金剛(相変わらず変な所で臆病です)クス

空母棲姫「私の……」

提督「……嫌だったか?」

空母棲姫「……あの」

提督「うん?」

空母棲姫「き、着替えてみても……良いかしら……?」

提督「ああ、是非とも着替えてみてくれ。私は別の部屋で待っておこう」スッ

…………………………………………
117 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2023/02/28(火) 16:08:30.02 ID:wmOrESA70
金剛「テートクー。着替えが終わったデース」

提督「ふむ。では行こうか」スッ

金剛「……ちょっと嫉妬してしまったデスよ?」トコトコ

提督「む? 何がだ?」スタスタ

金剛「先に言っておきますね。私、目いっぱい甘えますので、後で可愛がって下さい」ヂー

提督「ふむ?」

ガラッ

瑞鶴「あ、おかえりー」

空母棲姫「!!」サッ

響「あ、姿見に隠れちゃった」

提督「……そんなに恥ずかしがるような服ではなかったと思うのだが」

空母棲姫「その……なんというか……三人からあんな目で見られたら……」モジ

提督「一体どんな目だ……」

金剛「むー」トコトコ

空母棲姫「な、なにかし──らっ!?」パッ

提督「……おぉ」

金剛「それだけ似合っているのですから、さっさと姿を見せるです」ヂー

響(あ、これ絶対に嫉妬してる)

提督「……これは驚いた。まさかここまで黒のワンピースが似合うとは」

空母棲姫「あ、あんまり見ないでちょうだい……!」

金剛「おまけにレース入りです。名前の通り、どこかのお姫様みたいです。……テートクのセンスは抜群デスねー?」ヂー

提督(ああ……だから金剛は嫉妬したと言ったのか)
118 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2023/02/28(火) 16:09:08.86 ID:wmOrESA70
空母棲姫「っ!」サッ

瑞鶴「あ、麦わら帽子」

響「被って顔を隠したね」

瑞鶴「……でも、顔が赤くなってるのは分かるし、余計に似合ってるって思うだけよねぇ」

空母棲姫「!?」

響「そうだね。白い髪と肌。高い身長と出る所が出ているスタイル。そして洋風の黒いレースのワンピースと本来合わない和風の麦わら帽子。正に異国のお姫様が来日してきたって感じだね」ヂー

空母棲姫「!!?」

提督「ふむ」

空母棲姫「ど、どう……なの……?」

提督「さっき言ったように似合っている。とてもお前らしい姿だ」

空母棲姫「〜〜〜〜〜〜!!」サッ

瑞鶴「あ、また姿見に」

金剛「……………………」ツイッ

空母棲姫「!!」

響「……部屋の隅に追いやられて隠れられなくなったね」

提督「金剛、あまりイヂメてやるな」

金剛「イヂメている訳ではありまセン。もっと堂々としていれば良いという意味でやっているデス」

提督「金剛」

金剛「ぅー……」

提督(……今日はやけに聞き分けが悪いな)

提督「ほどほどにしておきなさい」

金剛「……ソーリィ」
119 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2023/02/28(火) 16:09:47.53 ID:wmOrESA70
空母棲姫「……………………ど、堂々と、というのは……」モジ

響(おや?)

空母棲姫「こうすれば良い、のでしょうか?」スッ

瑞鶴「あー……もうちょっと足を開いたらどうかしら?」

響「胸の前に手を添えるよりも、肘から先を少し『ハの字』に下ろした方が様になると思う」

瑞鶴「良いわねそれ。だったら足は逆に閉じ気味にした方が良さそうね。──そうそう。それそれ」

金剛「恥ずかしいのだと思いマスが顎を引き過ぎているデス」

響「背筋もピンと真っ直ぐにね」

空母棲姫「…………っ!」プルプル

提督「表情以外は満点だな」

金剛・瑞鶴・響「!!」

空母棲姫「悪かったなッ……!! 表情が落第で……!」ピキピキ

提督「うむ。良い表情になった」

空母棲姫「くっ……!」フイッ

響(ほう)

金剛・瑞鶴(……もしかして?)

提督「さて……着替えも終わった事だ。外に出る準備は出来ているな?」スッ

瑞鶴「……ん? 何かするの?」

提督「なに。お前達が伊勢に来たんだ。あちこち回って案内をしようと、な」

…………………………………………
120 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2023/02/28(火) 16:10:16.36 ID:wmOrESA70
瑞鶴「……で、なんだけど」

提督「どうした?」

瑞鶴「いや……なんでまず真っ先に病院なの?」

響「まさか観光地になっている、とか?」

空母棲姫「そんな訳ないだろう……。…………ありませんよね?」チラ

金剛「……………………」チラ

提督「ある意味で観光地になっているのかもしれないな。何せ、ここは小説の舞台となっている」

響「小説?」

提督「ああ。私がまだ子供の頃、書店で目を引かれた小説があってな。それに登場する病院がここなんだ」

瑞鶴「入ったら何かあるの?」

提督「普通の病院だ。迷惑になるから入るべきではない。ただ眺めるだけだ。……とは言っても、正面ではなく裏の方が本命らしい」スタスタ

金剛「裏? なぜデスか?」

提督「詳しくは知らないが、何かしらの映像作品にもなったらしい。その時は正面ではなく、裏の方がモデルとなったそうだ」

空母棲姫「──あら。こっちの方が病院ぽさが出ているわね」

瑞鶴「あー、うん。確かに凄い見栄えしているわね。張り巡らされた配管とか」

響「ちなみに、その小説ってどんなお話なの?」

提督「生まれつき心臓病を抱えた少女と、その少女に生きる勇気を与えた少年の話だな」

瑞鶴「へぇ。王道なのね?」

金剛「なんだか私達みたいデース」

空母棲姫「どこが……。貴方達は病気と無縁でしょう?」

金剛「──生まれつき戦って死ぬ使命を科せられた私達と、生き続ける為の勇気を与えて下さったテートクみたいです」

提督「────────」

提督(……戦う使命、か)
121 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2023/02/28(火) 16:10:54.81 ID:wmOrESA70
金剛「────!」ハッ

金剛「と、ところでテートク!!」

提督「どうした?」

金剛「病院の正面から見えたのですが、ショッピングストリートがありマスね!?」

提督「なるほど。早速向かうとしよう」スッ

瑞鶴「え? あ、待ってよ提督さん!」タタッ

金剛「ゴーゴー!」タタッ

空母棲姫「……逃げたな」

響「そうだね。私達は逃げてきた」

空母棲姫「い、いや……! そう言ったのではない……!」

響「なに。分かっているよ。その使命があった事も、そんな使命よりも解体が優先されそうになり、提督と一緒に居る方が良いって思って行動した事も」

空母棲姫「……………………」

響「まあ、全部もう気にしないけどね」ニヤ

空母棲姫「……強かね」

響「後ろ向きになるよりも楽しむ方がずっと良い。そうだろう?」

空母棲姫「ふふ……。ええ、私もそう思います」

瑞鶴「二人ともー! 置いてっちゃうわよー!」

響「おっと。それは困るから行こうか」スッ

空母棲姫「そうしましょう」スッ

空母棲姫(……正しく死ぬ未来と間違って生きる未来。一体、どっちが本当に正しいのでしょうかね──)

……………………
…………
……
122 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [sage saga]:2023/02/28(火) 16:21:51.39 ID:wmOrESA70
約二年半ぶりです。更新できなくてごめんなさい。お茶の間のアイドルことコロナウィルスが大暴れしてくれやがったおかげで生活が激変してました。
それこそ故郷である伊勢から離れる事になったりとかのレベルで。

こんな感じで伊勢を巡りながら艦娘や深海棲艦としての生き様とかを悩んだりして生活する予定でした。ちょっと書けるか怪しいです。コロナ滅べ。
物語のラストだけは意地でも書きに来ると思いますが、どうなることやら。
申し訳ない。
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/03/01(水) 11:05:43.52 ID:alVV4NUl0
更新乙です。待ってましたよ
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/05/08(月) 07:00:15.86 ID:3+RgPugTo
更新来てる〜お久しぶりです
125 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [sage saga]:2024/01/15(月) 11:29:34.66 ID:20NhiBzr0
〜伊勢のB級グルメ〜

提督「──とまあ、個人的にだが、この三つの店が私にとっての地元の味だ」

金剛「まんぷく食堂、キッチンクック、喫茶モリ……」

金剛「………………………………ウォリィ!! 悩みマース!!」

提督「どうした急に……?」

瑞鶴「からあげ丼の甘辛くてスパイシーな感じがやっぱり……いやでもあのドライカレーにルゥの発想は他に無いし……そもそもスパゲッティなのに仄かなハッシュドビーフのようなあの味わい深さも……」ブツブツ

提督「ああ……どれが一番美味しかったか悩んでいるのか」

響「どれも美味しかったね」

空母棲姫「ええ。とても満足しました」ホッコリ

提督「私もそれくらいで良いと思うのだがな」

提督(しかし、ウスターソースのたこ焼きはそんなに珍しいのだろうか……? 小さい時からこれが普通だったから分からん)モグ



〜伊勢のお菓子〜


瑞鶴「これは一日で食べきれる数じゃないわね……」

響「赤福、二軒茶屋餅、へんば餅、神代餅、御福餅……うん、まだまだあるね」

空母棲姫「他で見ないような物だとシェルレーヌ、七越ぱんじゅう辺りでしょうか?」

金剛「テートク。洋菓子もあるのデスか?」

提督「皮がカリッとしている、おとべのバウムクーヘンや完成度が高過ぎて半日しか保たないカンパーニュのシュークリーム、他にも隠れた名店であるサザンボンのモンブランに──」

瑞鶴「待って!? この町どんだけお菓子に情熱注いでんの!!? ていうかバウムクーヘンの皮って何!?」
126 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [sage saga]:2024/01/15(月) 11:30:03.28 ID:20NhiBzr0
〜砲台山頂上〜


金剛「Oh……」

響「ここは?」

瑞鶴「え、お墓……?」

提督「そう見えるかもしれんが、明治聖代戦役記念碑だ。簡単に言うと、明治天皇の偉業と東郷平八郎を含む従軍の方々を顕彰していたんだ」

空母棲姫「過去形という事は、何かあったのかしら?」

提督「私も詳しくは知らんが、本来ならば表面に記念碑と文字が打ち付けられていたし、上には金色の鳶が据えられていたそうだぞ」

金剛「今は……何も無いデスね。砲台も片づけられたのデスか?」

提督「いや、ここに砲台が置かれた事なんてない」

響「ん? じゃあ、なぜ砲台山って呼ばれているんだい?」

提督「これも色々あってな。いつぞやにニャロメのラクガキがされた事で地元の人にとってはニャロメの塔と呼ばれていたり、前に行った病院で話した小説に重要な場所として出てきてから砲台山と呼ばれている」

金剛「そのノベルは戦争のお話だったデスか?」

提督「それも違うな。その小説の中では過去に砲台があったとされている山だったからそうなっただけだ。この山の正式な名前は虎尾山だが、小説の中では龍頭山なんて名前にもなっていた」

瑞鶴「へぇ。虎の尾から龍の頭にしたのね」

空母棲姫「ところで、ここに何か? 見たところ草木が生い茂っているだけなのだけれど」

提督「実を言うと何も無い。強いて言うならば……私が鎮守府を任される前はよくここへ来ていたというだけの話だ」

提督「なぜだろうな。その小説が原因かもしれんが、ここは特別な場所だと思える。……町の喧騒も遠くなって落ち着くのもあるのだろう」

???「また、ここで小説を書きたいなぁ」

瑞鶴「へぇ……………………って、今の誰!?」バッ

響「? どうかしたのかい瑞鶴さん?」

瑞鶴「え、今の聞こえなかった!? ゆ、幽霊!?」ビクビク

提督「まあ、色々な想いが置かれていっている場所だ。何かしら聴こえる事もあるだろう」

……………………
…………
……
127 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [sage saga]:2024/01/15(月) 11:30:37.16 ID:20NhiBzr0
その後、提督の家に鎮守府でもないのに妖精たちが現れたり──
妖精たちが金剛たちに最後のお仕事をすると言って何かをして消え──
艦娘に似ているという噂が広がり海軍の人が調べに来たり──
金剛たちは一般人だと他の艦娘たちから認識されたり──
まんぷく食堂に提督たち五人が働くようになったり──






彼らは、伊勢でこれからの人生を過ごす事を決めた──






128 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [sage saga]:2024/01/15(月) 11:31:05.26 ID:20NhiBzr0
???「仕事で日本の彼方此方へ赴いた人生の中、やっぱり一番落ち着いた故郷の伊勢。そこから離れざるを得なくなったのは寂しい」

???「ただ、それでも私は今が幸せ。生涯支えると決めた大事な人と出会えたから。だからここで改めて言った方が良いと思う」

???「ありがとう──」
129 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [sage saga]:2024/01/15(月) 11:31:46.02 ID:20NhiBzr0
また随分と間を空けてごめんなさい。そして、最後がポエムになってごめんよ。
本当なら箇条書きみたいなコレじゃなく、ちゃんとしたSS形式で伊勢の魅力を書くべきだったと思うけれど出来なかった。申し訳ない。
2013年から長く追ってくれている方も居ると思うけれど、これにて私のSSは終わりです。今まで読んでくれてありがとうございます。
やっと生活も(大変だけど)安定してきたので、クロスレールの方もまたゆっくりと更新をしていきますね。

改めて、今までありがとうございました。
またいつかどこかで──
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