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提督「観光するか」 金剛・瑞鶴・響「はいっ!」 空母棲姫「…………」
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116 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2023/02/28(火) 16:07:50.04 ID:wmOrESA70
響「似合い過ぎるって言われたら悪い気が起きなくてね。そこの姿見で自分の後ろ姿とかも見てみてるんだ」クルクル
提督「……………………」
響「……なるほど。よく見れば確かに違う。軍服の感じがしなくて、軽い動きをしてくれる。こんな服もあるんだね」クルクル
響「ふむ。これは良い……。いつもの感覚で居られるのに違う自分なのは新鮮だ。司令官、スパシーバ」
提督「……一番不安だったから助かる。気を遣わせてしまったな。すまない」
響「本心だよ。いつもの私なのに違う私だなんてなかなか体験できない。司令官は良い選択をしたと思うよ」ニコ
空母棲姫(……本当、どの子も良い子ね。こんないい子達だからこの人も優しいのか、それともその逆か。いずれにしても、温かい話だわ)
空母棲姫(そして……少し羨ましいって思ってしまったわ)
提督「さて、後はお前だけだな」
空母棲姫「え?」
提督「ほら、これだ」スッ
空母棲姫「え、あの……え?」
提督「お前だけ金剛のお下がりというのも寂しいものがあるだろう?」
空母棲姫「……用意、してくれていたの?」
提督「まあ……自信が無くて今まで出せなかった。お前の事は一番分かっていないからな……。三人が気に入ってくれたからこそ出せたんだ」
金剛(相変わらず変な所で臆病です)クス
空母棲姫「私の……」
提督「……嫌だったか?」
空母棲姫「……あの」
提督「うん?」
空母棲姫「き、着替えてみても……良いかしら……?」
提督「ああ、是非とも着替えてみてくれ。私は別の部屋で待っておこう」スッ
…………………………………………
117 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2023/02/28(火) 16:08:30.02 ID:wmOrESA70
金剛「テートクー。着替えが終わったデース」
提督「ふむ。では行こうか」スッ
金剛「……ちょっと嫉妬してしまったデスよ?」トコトコ
提督「む? 何がだ?」スタスタ
金剛「先に言っておきますね。私、目いっぱい甘えますので、後で可愛がって下さい」ヂー
提督「ふむ?」
ガラッ
瑞鶴「あ、おかえりー」
空母棲姫「!!」サッ
響「あ、姿見に隠れちゃった」
提督「……そんなに恥ずかしがるような服ではなかったと思うのだが」
空母棲姫「その……なんというか……三人からあんな目で見られたら……」モジ
提督「一体どんな目だ……」
金剛「むー」トコトコ
空母棲姫「な、なにかし──らっ!?」パッ
提督「……おぉ」
金剛「それだけ似合っているのですから、さっさと姿を見せるです」ヂー
響(あ、これ絶対に嫉妬してる)
提督「……これは驚いた。まさかここまで黒のワンピースが似合うとは」
空母棲姫「あ、あんまり見ないでちょうだい……!」
金剛「おまけにレース入りです。名前の通り、どこかのお姫様みたいです。……テートクのセンスは抜群デスねー?」ヂー
提督(ああ……だから金剛は嫉妬したと言ったのか)
118 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2023/02/28(火) 16:09:08.86 ID:wmOrESA70
空母棲姫「っ!」サッ
瑞鶴「あ、麦わら帽子」
響「被って顔を隠したね」
瑞鶴「……でも、顔が赤くなってるのは分かるし、余計に似合ってるって思うだけよねぇ」
空母棲姫「!?」
響「そうだね。白い髪と肌。高い身長と出る所が出ているスタイル。そして洋風の黒いレースのワンピースと本来合わない和風の麦わら帽子。正に異国のお姫様が来日してきたって感じだね」ヂー
空母棲姫「!!?」
提督「ふむ」
空母棲姫「ど、どう……なの……?」
提督「さっき言ったように似合っている。とてもお前らしい姿だ」
空母棲姫「〜〜〜〜〜〜!!」サッ
瑞鶴「あ、また姿見に」
金剛「……………………」ツイッ
空母棲姫「!!」
響「……部屋の隅に追いやられて隠れられなくなったね」
提督「金剛、あまりイヂメてやるな」
金剛「イヂメている訳ではありまセン。もっと堂々としていれば良いという意味でやっているデス」
提督「金剛」
金剛「ぅー……」
提督(……今日はやけに聞き分けが悪いな)
提督「ほどほどにしておきなさい」
金剛「……ソーリィ」
119 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2023/02/28(火) 16:09:47.53 ID:wmOrESA70
空母棲姫「……………………ど、堂々と、というのは……」モジ
響(おや?)
空母棲姫「こうすれば良い、のでしょうか?」スッ
瑞鶴「あー……もうちょっと足を開いたらどうかしら?」
響「胸の前に手を添えるよりも、肘から先を少し『ハの字』に下ろした方が様になると思う」
瑞鶴「良いわねそれ。だったら足は逆に閉じ気味にした方が良さそうね。──そうそう。それそれ」
金剛「恥ずかしいのだと思いマスが顎を引き過ぎているデス」
響「背筋もピンと真っ直ぐにね」
空母棲姫「…………っ!」プルプル
提督「表情以外は満点だな」
金剛・瑞鶴・響「!!」
空母棲姫「悪かったなッ……!! 表情が落第で……!」ピキピキ
提督「うむ。良い表情になった」
空母棲姫「くっ……!」フイッ
響(ほう)
金剛・瑞鶴(……もしかして?)
提督「さて……着替えも終わった事だ。外に出る準備は出来ているな?」スッ
瑞鶴「……ん? 何かするの?」
提督「なに。お前達が伊勢に来たんだ。あちこち回って案内をしようと、な」
…………………………………………
120 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2023/02/28(火) 16:10:16.36 ID:wmOrESA70
瑞鶴「……で、なんだけど」
提督「どうした?」
瑞鶴「いや……なんでまず真っ先に病院なの?」
響「まさか観光地になっている、とか?」
空母棲姫「そんな訳ないだろう……。…………ありませんよね?」チラ
金剛「……………………」チラ
提督「ある意味で観光地になっているのかもしれないな。何せ、ここは小説の舞台となっている」
響「小説?」
提督「ああ。私がまだ子供の頃、書店で目を引かれた小説があってな。それに登場する病院がここなんだ」
瑞鶴「入ったら何かあるの?」
提督「普通の病院だ。迷惑になるから入るべきではない。ただ眺めるだけだ。……とは言っても、正面ではなく裏の方が本命らしい」スタスタ
金剛「裏? なぜデスか?」
提督「詳しくは知らないが、何かしらの映像作品にもなったらしい。その時は正面ではなく、裏の方がモデルとなったそうだ」
空母棲姫「──あら。こっちの方が病院ぽさが出ているわね」
瑞鶴「あー、うん。確かに凄い見栄えしているわね。張り巡らされた配管とか」
響「ちなみに、その小説ってどんなお話なの?」
提督「生まれつき心臓病を抱えた少女と、その少女に生きる勇気を与えた少年の話だな」
瑞鶴「へぇ。王道なのね?」
金剛「なんだか私達みたいデース」
空母棲姫「どこが……。貴方達は病気と無縁でしょう?」
金剛「──生まれつき戦って死ぬ使命を科せられた私達と、生き続ける為の勇気を与えて下さったテートクみたいです」
提督「────────」
提督(……戦う使命、か)
121 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2023/02/28(火) 16:10:54.81 ID:wmOrESA70
金剛「────!」ハッ
金剛「と、ところでテートク!!」
提督「どうした?」
金剛「病院の正面から見えたのですが、ショッピングストリートがありマスね!?」
提督「なるほど。早速向かうとしよう」スッ
瑞鶴「え? あ、待ってよ提督さん!」タタッ
金剛「ゴーゴー!」タタッ
空母棲姫「……逃げたな」
響「そうだね。私達は逃げてきた」
空母棲姫「い、いや……! そう言ったのではない……!」
響「なに。分かっているよ。その使命があった事も、そんな使命よりも解体が優先されそうになり、提督と一緒に居る方が良いって思って行動した事も」
空母棲姫「……………………」
響「まあ、全部もう気にしないけどね」ニヤ
空母棲姫「……強かね」
響「後ろ向きになるよりも楽しむ方がずっと良い。そうだろう?」
空母棲姫「ふふ……。ええ、私もそう思います」
瑞鶴「二人ともー! 置いてっちゃうわよー!」
響「おっと。それは困るから行こうか」スッ
空母棲姫「そうしましょう」スッ
空母棲姫(……正しく死ぬ未来と間違って生きる未来。一体、どっちが本当に正しいのでしょうかね──)
……………………
…………
……
122 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[sage saga]:2023/02/28(火) 16:21:51.39 ID:wmOrESA70
約二年半ぶりです。更新できなくてごめんなさい。お茶の間のアイドルことコロナウィルスが大暴れしてくれやがったおかげで生活が激変してました。
それこそ故郷である伊勢から離れる事になったりとかのレベルで。
こんな感じで伊勢を巡りながら艦娘や深海棲艦としての生き様とかを悩んだりして生活する予定でした。ちょっと書けるか怪しいです。コロナ滅べ。
物語のラストだけは意地でも書きに来ると思いますが、どうなることやら。
申し訳ない。
123 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2023/03/01(水) 11:05:43.52 ID:alVV4NUl0
更新乙です。待ってましたよ
124 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/05/08(月) 07:00:15.86 ID:3+RgPugTo
更新来てる〜お久しぶりです
125 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[sage saga]:2024/01/15(月) 11:29:34.66 ID:20NhiBzr0
〜伊勢のB級グルメ〜
提督「──とまあ、個人的にだが、この三つの店が私にとっての地元の味だ」
金剛「まんぷく食堂、キッチンクック、喫茶モリ……」
金剛「………………………………ウォリィ!! 悩みマース!!」
提督「どうした急に……?」
瑞鶴「からあげ丼の甘辛くてスパイシーな感じがやっぱり……いやでもあのドライカレーにルゥの発想は他に無いし……そもそもスパゲッティなのに仄かなハッシュドビーフのようなあの味わい深さも……」ブツブツ
提督「ああ……どれが一番美味しかったか悩んでいるのか」
響「どれも美味しかったね」
空母棲姫「ええ。とても満足しました」ホッコリ
提督「私もそれくらいで良いと思うのだがな」
提督(しかし、ウスターソースのたこ焼きはそんなに珍しいのだろうか……? 小さい時からこれが普通だったから分からん)モグ
〜伊勢のお菓子〜
瑞鶴「これは一日で食べきれる数じゃないわね……」
響「赤福、二軒茶屋餅、へんば餅、神代餅、御福餅……うん、まだまだあるね」
空母棲姫「他で見ないような物だとシェルレーヌ、七越ぱんじゅう辺りでしょうか?」
金剛「テートク。洋菓子もあるのデスか?」
提督「皮がカリッとしている、おとべのバウムクーヘンや完成度が高過ぎて半日しか保たないカンパーニュのシュークリーム、他にも隠れた名店であるサザンボンのモンブランに──」
瑞鶴「待って!? この町どんだけお菓子に情熱注いでんの!!? ていうかバウムクーヘンの皮って何!?」
126 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[sage saga]:2024/01/15(月) 11:30:03.28 ID:20NhiBzr0
〜砲台山頂上〜
金剛「Oh……」
響「ここは?」
瑞鶴「え、お墓……?」
提督「そう見えるかもしれんが、明治聖代戦役記念碑だ。簡単に言うと、明治天皇の偉業と東郷平八郎を含む従軍の方々を顕彰していたんだ」
空母棲姫「過去形という事は、何かあったのかしら?」
提督「私も詳しくは知らんが、本来ならば表面に記念碑と文字が打ち付けられていたし、上には金色の鳶が据えられていたそうだぞ」
金剛「今は……何も無いデスね。砲台も片づけられたのデスか?」
提督「いや、ここに砲台が置かれた事なんてない」
響「ん? じゃあ、なぜ砲台山って呼ばれているんだい?」
提督「これも色々あってな。いつぞやにニャロメのラクガキがされた事で地元の人にとってはニャロメの塔と呼ばれていたり、前に行った病院で話した小説に重要な場所として出てきてから砲台山と呼ばれている」
金剛「そのノベルは戦争のお話だったデスか?」
提督「それも違うな。その小説の中では過去に砲台があったとされている山だったからそうなっただけだ。この山の正式な名前は虎尾山だが、小説の中では龍頭山なんて名前にもなっていた」
瑞鶴「へぇ。虎の尾から龍の頭にしたのね」
空母棲姫「ところで、ここに何か? 見たところ草木が生い茂っているだけなのだけれど」
提督「実を言うと何も無い。強いて言うならば……私が鎮守府を任される前はよくここへ来ていたというだけの話だ」
提督「なぜだろうな。その小説が原因かもしれんが、ここは特別な場所だと思える。……町の喧騒も遠くなって落ち着くのもあるのだろう」
???「また、ここで小説を書きたいなぁ」
瑞鶴「へぇ……………………って、今の誰!?」バッ
響「? どうかしたのかい瑞鶴さん?」
瑞鶴「え、今の聞こえなかった!? ゆ、幽霊!?」ビクビク
提督「まあ、色々な想いが置かれていっている場所だ。何かしら聴こえる事もあるだろう」
……………………
…………
……
127 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[sage saga]:2024/01/15(月) 11:30:37.16 ID:20NhiBzr0
その後、提督の家に鎮守府でもないのに妖精たちが現れたり──
妖精たちが金剛たちに最後のお仕事をすると言って何かをして消え──
艦娘に似ているという噂が広がり海軍の人が調べに来たり──
金剛たちは一般人だと他の艦娘たちから認識されたり──
まんぷく食堂に提督たち五人が働くようになったり──
彼らは、伊勢でこれからの人生を過ごす事を決めた──
128 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[sage saga]:2024/01/15(月) 11:31:05.26 ID:20NhiBzr0
???「仕事で日本の彼方此方へ赴いた人生の中、やっぱり一番落ち着いた故郷の伊勢。そこから離れざるを得なくなったのは寂しい」
???「ただ、それでも私は今が幸せ。生涯支えると決めた大事な人と出会えたから。だからここで改めて言った方が良いと思う」
???「ありがとう──」
129 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[sage saga]:2024/01/15(月) 11:31:46.02 ID:20NhiBzr0
また随分と間を空けてごめんなさい。そして、最後がポエムになってごめんよ。
本当なら箇条書きみたいなコレじゃなく、ちゃんとしたSS形式で伊勢の魅力を書くべきだったと思うけれど出来なかった。申し訳ない。
2013年から長く追ってくれている方も居ると思うけれど、これにて私のSSは終わりです。今まで読んでくれてありがとうございます。
やっと生活も(大変だけど)安定してきたので、クロスレールの方もまたゆっくりと更新をしていきますね。
改めて、今までありがとうございました。
またいつかどこかで──
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