提督「観光するか」 金剛・瑞鶴・響「はいっ!」 空母棲姫「…………」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/08/20(木) 00:16:12.71 ID:0vpAmYGA0
提督「では、やってくれ」

建造妖精「はいよー」


 ──水底へ沈む時、夢を見た。


金剛「ん? ワーオ! テートクが建造しているデース!」

瑞鶴「あら、珍しい事もあるのね」

響「何かあったの?」


 ──艦娘に沈められた深海棲艦は、時として艦娘として復活するという夢。


提督「なに。この鎮守府に流れ着いた資材を使って暇潰しに建造しているだけだ」

瑞鶴「……鎮守府?」

響「この掘っ建て小屋が鎮守府だなんて初めて知ったよ」

金剛「い、一応は名目上だと鎮守府デス!」


 ──遠ざかる水面に映る、火器と探照灯、そして月。


提督「……左遷させられていなければ、お前達にももっと寝心地の良いベッドが与えられたのだろうがな」

響「私は司令官のベッドと一緒ならどこだって最高級だよ」

瑞鶴「ちょっと響ちゃん? それ聞き捨てならないんだけど?」

金剛「テートクぅ……?」


 ──暗く冷たくなっていく世界に、私はその夢が儚いものだったのだと知った。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1597850172
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/08/20(木) 00:26:45.22 ID:0vpAmYGA0
提督「テキトーな事を言うな響。吊るすぞ?」

響「ご、ごめんなさい……」ビクビク

金剛「ほっ……」

瑞鶴「抜け駆けされたのかと思ったわ……」


 ──そんな事がある訳なく、私を抱くのは冷たい死。


金剛「ところで、資材はいくらインヴェストしたデスか?」


 ──だから私は


提督「オールナイン」

瑞鶴「え?」

提督「上限いっぱいとも言う」

響「……ハラショー」


 この現実に驚いた──


建造妖精「よーし! 出来、た、……ぃょょょぃぃいいいッッ!!?」

提督「これは……」

金剛「ホワッツ……?」

瑞鶴「…………え、ええぇ……?」

響「……………………」




空母棲姫「ここ……は……?」


 ──きっとこれは、神のイタズラなのだろう。
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/08/20(木) 00:36:41.43 ID:0vpAmYGA0
空母棲姫「…………?」チラ

提督「……………………」

空母棲姫「っ……?」チラ

金剛・瑞鶴・響「…………っ!!」

空母棲姫「軍人と……艦娘……?」

建造妖精「ぇー……。えぇぇー……?」

コツッ──

建造妖精「ひぃっ!!」ビクゥ

提督「さて、建造妖精?」

建造妖精「はっはいいいい!!!!」ピシッ

提督「説明をして貰おうか」

建造妖精「いっいやっいやややや!? あたしは普通に建造しただけでしてね!? そしたらなんか途中から上手くいかなくてね!!? それで思うがままに建造したらこうなってね!?!?」

空母棲姫「建造……?」

提督「まあ、本人にも聞いてみるか」

金剛「提督!? 危険です!!」

提督「敵意は感じられない。恐らくは大丈夫だろう。手は出すな」

建造妖精「…………っ」ビクビク

空母棲姫「…………? 貴方が、提督なの……?」

提督「そうだ。……これは混乱しているだけか?」

空母棲姫「頭がふらふらするわ……」

提督「そうか。──瑞鶴、水を持ってきてくれるか?」

瑞鶴「う、うん……」タタッ
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/08/20(木) 00:47:38.44 ID:0vpAmYGA0
提督「……さて、現状は理解できているか?」

空母棲姫「現状……。そう、ね……。私は建造されたのかしら……?」

提督「それは間違いないな。ならば、自分の事が分かるか?」

空母棲姫「自分の、事──」ハッ

空母棲姫「建造……? 私が……?」

空母棲姫「そんな……そんな、バカな……!」ワナワナ

瑞鶴「提督さん。お水、持ってきたわよ」

提督「ご苦労、瑞鶴。──ほら水だ。少し飲んで落ち着け」スッ

空母棲姫「……そうしましょうかね」スッ

空母棲姫「んっ……」コクリ

響「……………………」ジー

空母棲姫「……はぁ」

提督「気分はどうだ?」

空母棲姫「……少しはマシになったわ。けれど、まだ思考が混乱しているみたいね……。なんだか、夢から覚めていないかのような……」

提督「そうか。ならば少し眠ってしまうが良い。そこに仮眠用のベッドがある」

空母棲姫「ありが──っ!?」フラッ

提督「おっと」ソッ

金剛・瑞鶴「!!」

響「……………………」ヂー

提督「危なっかしいな」スタスタ

空母棲姫「あ、れ……。私、抱きかかえられて……?」ボー

提督「ほら、ベッドだ」スッ

空母棲姫「ん……」ギシッ
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/08/20(木) 00:57:38.28 ID:0vpAmYGA0
提督「一先ず寝てしまえ。起きたら私の部屋へ来るように。プレートに提督室と書かれてあるからすぐに分かるだろう」

空母棲姫「そうさせて、貰うわ……。何が何だか、わからなく、て……」

空母棲姫「……………………」スゥ

建造妖精「ね、寝ちゃった……?」ビクビク

提督「そのようだ」

瑞鶴「て、提督さん。大丈夫なの……?」

提督「この様子ならば大丈夫だろう。私達や自分の事を認識しても襲ってくるような気配も無かった」

金剛「……建造されたから、でショウかね?」

提督「そうかもしれんな。ただ、今は分からん事が多過ぎる。頼りない資料室から本を根こそぎ調べてみるか」

響「司令官。私も手伝う」

提督「そうして貰おうか」ナデナデ

響「ん……」

瑞鶴「わ、私も手伝うわ!」

提督「頼む」ナデナデ

瑞鶴「……えへ」

金剛「……私はここで見張っておくデス」

提督「あまり刺激してやるなよ?」

金剛「イエス。何が起きるか分からないデスから。──っと、その前に艤装を取ってきマスね」スッ

提督「皆の事を考えてくれて助かる、金剛」

金剛「もう少しテートクも危機感を覚えて欲しいデース……」

提督「まあ、こんな掘っ建て小屋に左遷されてしまってはな」

提督「──さて、各自行動に移るぞ。こんな事は初めてだ。気は抜いても手は抜かないように」

金剛・瑞鶴・響「はいっ」

空母棲姫「……………………」スゥ

……………………
…………
……
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/20(木) 00:57:58.95 ID:V/F3K4Oqo
妖怪艦娘吊るしさん?
久しぶり!
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/08/20(木) 01:06:40.25 ID:0vpAmYGA0
空母棲姫「ん……」パチ

空母棲姫(ここは、さっきの……。やっぱり夢じゃなかったようね)

金剛「目が覚めたようデスね」

空母棲姫「! 貴女はさっきの艦娘。金剛……だったかしら」

金剛「ええ、そうデス。状況は理解していマスか?」スッ

空母棲姫「艤装……いつでも戦闘態勢に入れるように……。──なるほど。まだ私は頭が呆けていたようだ。貴様が監視役という訳か」

金剛「半分だけ当たっていると言っておきまショウ」

空母棲姫「半分だと?」

金剛「イエス。まだ貴女がエネミーと決まった訳ではありまセン」

空母棲姫「ふん。完全武装をしておいて何を言っているのか」

金剛「これはインシュアランスです。貴女が暴れた時に使うつもりでシタ」

空母棲姫「……………………」

金剛「少なくとも今の貴女はそうしないように見えマス。だから手を出しまセン」

空母棲姫「やけに艦娘らしくないな。艦娘と深海棲艦は見敵必殺の関係だ」

金剛「……そうデスね。普通ならばそうだと思うデス」

空母棲姫(……どうやら訳ありのようね)

空母棲姫「それで、私はどうすれば良い。まさかこのまま寝ておけば良いとは言わないだろう」

金剛「提督室へ向かって貰いマス。憶えているかは分かりませんが、テートクは貴女がスリープする前にそう仰っていまシタ」

空母棲姫「ならばそうしよう」スッ

空母棲姫(敵を本丸に招くだなんて、なんて愚かな……。あまり優秀な指揮官ではなさそうね)スタスタ

金剛「ここを出てすぐ左が提督室デス」スタスタ

空母棲姫(……やけに近いわね。いや、むしろなんだか違和感が……? 何かしら、この変な感覚……)
8 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [sage saga]:2020/08/20(木) 01:08:20.40 ID:0vpAmYGA0
>>6
なぜ分かったし。よもや超能力者?
9 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [sage saga]:2020/08/20(木) 01:16:53.96 ID:0vpAmYGA0
金剛「テートク」コンコンコン

提督「──どうした金剛」

金剛「例の深海棲艦が目を覚ましまシタ」

提督「そうか。入れ」

ガチャ──パタン

空母棲姫(? ここが提督室……? やけに狭いわね。さっきの倉庫よりも一回り小さく感じるわ)

空母棲姫(おまけに備品も随分とお粗末。そこいらの廃材置き場から見繕ってきたかのよう。……無能な指揮官に対する扱い、かしら?)

空母棲姫(それにしても、やたらと本が置かれているわね……)

空母棲姫「お前が提督か?」

提督「ん? ──ああ、そうだ。お前は自分をどのように認識している」

空母棲姫「随分と妙な聞き方をする。──深海棲艦だ。それ以外の何者でもない」

提督「こちらではお前の事を『空母棲姫』と呼称をしている。そう呼ぶが構わんか?」

空母棲姫「好きにしろ」

提督「そうか。ならば空母棲姫。お前はどうやってこの鎮守府に来たか分かるか?」

空母棲姫「……憶えていない」

提督「ならば言おう。お前はさっきの工廠で建造された」

空母棲姫「……………………」

提督「ふむ。どうやら憶えてはいたが信じていなかったようだな」

空母棲姫「……あんな不出来な夢物語、信じる方がおかしいだろう」

提督「だが事実だ。私は目の前でお前が建造される瞬間を見ている。お前の後ろに居る金剛もそうだ」

空母棲姫「……………………」チラ

金剛「ハッキリと見まシタよ。私だって自分の目を疑ったデス」
10 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2020/08/20(木) 01:26:54.52 ID:0vpAmYGA0
提督「それだけでも大ごとではあるが、問題はそこじゃない。問題点はなぜお前が建造されたか、だ」

空母棲姫「なんだ? その口振りでは計画外だったようだな」

提督「計画外であり予想外の事態だ。今こうして書庫をひっくり返して調べていたが、今までこんな事例は確認すらされていない。妖精のする建造とは艦娘の建造。それがなぜ深海棲艦を建造する事になったのか全く分かっていない」

空母棲姫「……それで、何が言いたい?」

提督「お前は何か身に覚えはないか? なんでも良い」

空母棲姫「なぜ私がそれを言う必要がある?」

提督「お前だって気になっているんじゃないか?」

空母棲姫「……気になっていないと言えば嘘になる」

提督「そうか。ならば何か引っかかる点はあるか?」

空母棲姫「……………………」

提督「……………………」

金剛「……………………」

空母棲姫「……夢を見た」

提督「夢?」

空母棲姫「艦娘に沈められた深海棲艦は、艦娘として復活する夢だ」

提督「……ふむ。続けてくれ」

空母棲姫「沈んでいく私は意識が薄れていき、砲火や探照灯、月の光が見えていた」

空母棲姫「そうして目覚めたらここだ。気になる記憶と言ってもそれくらいしか憶えておらん」

提督「……金剛。近場の海域での戦闘記録はあるか?」

金剛「一週間以上前のでしたらあるデス」

提督「瑞鶴、響と一緒に過去三ヶ月分の資料を探して見付けてきてくれ」
11 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2020/08/20(木) 01:36:50.20 ID:0vpAmYGA0
金剛「それは……」チラ

空母棲姫「……………………」

金剛「……危険デス。考えを改めて下サイ」

提督「なに。大丈夫だ。自分と私を信じろ」

金剛「…………分かりまシタ。何かあったらすぐに駆け付けるデス」

提督「うむ」

ガチャ──パタン

提督「……さて、少し暇になるな。お前も座ってしまえ」

空母棲姫「随分と呑気だな。私がお前を襲うという考えは無いのか?」

提督「そのつもりならば起きた時にそうしているだろう? それに、お前の目には葛藤が見える。まるで、自分の記憶を信じようとしているのか決めあぐねているかのようにな」

空母棲姫「……世迷い事を」

提督「実際にそうだろう? 事実、お前は自分が建造された事を憶えていながら信じられていなかった。そしてお前自身が憶えていないようだが、私はあの時のお前を憶えているぞ」

提督「私はあの時のお前が気になっている。それを知っているが故に、どうしても敵とは思えん」

空母棲姫「……………………」

提督「まあ、そんな事はどうでも良い。とりあえず座れ。さっきまでフラついていたんだ。倒れられては困る」

空母棲姫「……どこに座れと?」

提督「貧相だが来賓用の椅子が目の前にあるだろう。いつも私達が使っている椅子とテーブルだ。壊れる事はない」

空母棲姫「……分かった」ギシッ

提督「さてさて、また暇になるな。何か気になる事はあるか?」

空母棲姫「……ここはどこだ?」

提督「見ての通り掘っ建て小屋だ」

空母棲姫「お前は指揮官のように見えるが、違うのか?」

提督「一応、名目上は鎮守府であるここの提督をしている」

空母棲姫(なるほど掘っ建て小屋の鎮守府。だからさっきの場所は倉庫のように見える工廠で、提督室……いや、執務室か。この執務室もこんなに小さいのか)
12 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2020/08/20(木) 01:46:32.67 ID:0vpAmYGA0
空母棲姫「──って、いや待て。お前今ここを掘っ建て小屋と言ったか?」

提督「そうだが?」

空母棲姫「どう考えても掘っ建て小屋を鎮守府と結び付けられん。というよりも、なぜそんな事になっている。ここは離島の鎮守府なのか?」

提督「本土だ。私は左遷されてな。こんな意味の無い辺鄙な場所で堕落しているだけだ」

空母棲姫「……提督の地位に立っているのに左遷とは意味が分からんぞ」

提督「今は昔と違って提督に成れる存在は溢れている。私は仕事自体は出来ていたから扱いに困ってこうやって保留しているのだろうよ」

空母棲姫「どうして左遷されたんだ」

提督「総司令部の作戦本部長殿の杜撰な計画を指摘したらご覧の有様だ」

空母棲姫「馬鹿か何かか?」

提督「草案かメモでも紛れ込んだのかは知らんが、チグハグな内容に加えて『大和魂があるならば勝利できる』なんて一文を見付けてみろ。頭痛がするぞ」

空母棲姫「……………………」

提督「呆れるだろう?」

空母棲姫「……同情してしまいそうになった」

提督「そうもなるだろう。──まあ、それで頭がトサカになった作戦本部長殿の怒りの鉄槌で私は僻地送りだ。艦娘も三隻まで減らされてしまった」

提督「しかし、この生活もいつまで続くのやら。海を眺めて釣りをして、哨戒という名の資源の無駄遣いをするのにはそろそろ飽きてきたよ」

空母棲姫「……全くもって変な奴だ」

提督「よく言われる」
13 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2020/08/20(木) 01:49:06.67 ID:0vpAmYGA0
あ、ヤバイ。キリの良い所まで書いて今回の投下を終わらせようと思ったけど全然終わる気配が無い。
ごめんなさい、ちょっと中途半端ですがここで今回の投下は終了します。
出来るだけ毎日投下していくと思いますので、次の投下までお待ち下さいませ。
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/20(木) 20:25:36.95 ID:05R0+dH7o
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/20(木) 20:49:25.32 ID:QcCGyX/P0
懐かしい名前
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