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渋谷凛「愛は夢の中に」
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1 :
◆SHIBURINzgLf
[saga]:2020/07/18(土) 21:05:53.85 ID:qJtv+QXjo
――王子様はお姫様と幸せに暮らしましたとさ。
多くの童話はこのように締め括られる。
例えば、シンデレラ。最底辺から頂点へと至った奇跡の物語。
ただの灰かぶりが、母や姉のいじめに耐え、魔法使いの手を借り、最後には王子様と結ばれる。
シンデレラは思う。
私は幸せですと、魔法使いさんに伝えられたら。
魔法使いさんも、幸せでいてくれたら。
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1595073953
2 :
◆SHIBURINzgLf
[sage !蒼_res]:2020/07/18(土) 21:25:25.13 ID:qJtv+QXjo
・シンデレラガールズSSです
・いろいろ越境
・346? なにそれおいしいの?
・地の文
・たぶん長いよ
まったりお付き合いください
3 :
◆SHIBURINzgLf
[saga]:2020/07/18(土) 21:28:08.29 ID:qJtv+QXjo
序
・・・・・・・・・・・・
その年の冬は寒かった。
ヒートアイランドだの温暖化だのと騒ぎ立てた夏場が幻かと思えるほど、例年になく凍える年の暮れ。
街頭ビジョンひしめくスクランブル交差点の人いきれは、冷たい風に耐えるよう身体を丸めながら、みな、手許の携帯端末で配信を見ていた。
今日は大晦日、あと1時間もしないうちに年が変わる。
交差点を行き交う数千人の手許では、日本放送機構―NHK―の紅白歌合戦が映し出され、紅組が歌声を届けている。
4 :
◆SHIBURINzgLf
[saga]:2020/07/18(土) 21:29:19.23 ID:qJtv+QXjo
いま舞台に立っているのは、すらりとしたやや長身の女性だ。
婉美な群青のドレスと、黒く美しい長髪をまとい、ステージの眩いライトを、艶かしく反射させている。
緩急鋭いダンスと、その激しい動きをものともしないほど芯が強くはっきりと耳に届いてくる歌唱。
楽曲の盛り上がりとシンクロしてカメラが顔をズームアップすると、瑞々しく光る碧い瞳が、燃えるような視線を寄越す。
その眼差しは、レンズの存在など微塵も感じさせることなく、視聴者の網膜を直接射抜いた。
この年最も好調なレコードセールスを記録したオーラが、そこに漂っている。
5 :
◆SHIBURINzgLf
[saga]:2020/07/18(土) 21:30:10.40 ID:qJtv+QXjo
渋谷凛。
芸能事務所、CGプロダクションに所属する歌姫――正確に表わすなら、アイドル。
時には歌で。時には踊りで。時には話術で。時には容姿で。時には身体の造形で。
全身で、生まれ持った肉体そのもので、エンターテインメントを表現する存在。
紅白にはここ3年間連続で出場し、今年はついにトリひとつ前を任された、22歳の花盛り。
現在の日本の芸能シーンでその名を知らない国民はいない、まごうことなき“トップアイドル”である。
6 :
◆SHIBURINzgLf
[saga]:2020/07/18(土) 21:31:02.49 ID:qJtv+QXjo
その彼女のステージは、曲がフィナーレを迎え、ライトが光量を落としたところ。
カメラが切り替わり、NHKホール客席の熱狂振りを全国へと届けている。
無数の青いサイリウムが、凛の出番の終わりを名残惜しむように激しく揺れる。
このあと大トリが始まれば、じきに除夜の鐘中継へと移り、そして年明けだ。
打ち上げ会場で挨拶をこなして、少しだけ眠ったら、すぐに正月の特番行脚が始まることだろう。
トップアイドルは、息つく暇もない。
7 :
◆SHIBURINzgLf
[saga]:2020/07/18(土) 21:32:12.00 ID:qJtv+QXjo
・・・・・・
凛が両腕を拡げて客席の歓声に応えるさまを、ホールの舞台袖から見守る姿があった。
CGプロで彼女を担当するプロデューサー、P。
その者は、暗がりの中で目頭を押さえていた。
紅白のトリはいわば『名誉職』に近い。つまり最後から2番目に位置するのが、実質的な主役と云える。
ようやく、担当アイドルが、その地位を獲得するまでに至った。その感慨によって、不意にもこれまでの軌跡が走馬灯のように脳裏を掠めたのだ。
8 :
◆SHIBURINzgLf
[saga]:2020/07/18(土) 21:32:51.49 ID:qJtv+QXjo
彼女のデビューは、およそ6年前。
下積みまで含めれば、アイドルへの一歩を踏み出して7年弱になる。
最初は碌な営業すらままならなかったところから、2年目で芽が出て、3年目には頭角を現し、以後CGプロの屋台骨を支え続けている彼女。
事務所の設立と共に活動を開始した古株・渋谷凛は、CDリリースを足掛かりとして徐々に徐々に人気を獲得していった。
しかし当時を知る者は意外にも少数に留まる。
それも仕方のないことなのかも知れない。
CGプロ設立当初は、彼女の同期である十時愛梨や神崎蘭子といった面々の方が、その特色ある武器から、知名度を獲得するのが圧倒的に早かったからだ。
凛は、スタートダッシュの神様には選ばれなかった。
9 :
◆SHIBURINzgLf
[saga]:2020/07/18(土) 21:33:30.61 ID:qJtv+QXjo
「……どうしたの?」
Pの懐古は、ステージから引き揚げてきたその担当アイドル自身の声によって終了を告げた。彼女は怪訝な表情で覗き込んでいる。
「あー、この日のために連日書類と格闘してたからな。目がとても疲れたんだよ。視力が一気に落ちたかもしれん」
Pの弁解に凛は少しだけ心配そうな顔をしたが、そこは長年連れ添った間柄である、すぐに強がりを見破った。
それでも口に出さないのは彼女なりの思いやり。
「そっか。蒸しタオルでも用意しないとね」と相好を崩して踵を返す。
汗に湿り気を帯びた髪と、刺繍のあしらわれた妖艶な裾が、ふわりと舞った。
10 :
◆SHIBURINzgLf
[saga]:2020/07/18(土) 21:34:18.69 ID:qJtv+QXjo
・・・・・・
地下1階の大部屋へと入ると、むせ返るような濃密な女の匂いが充満していた。
歌合戦の出場者は総計すればかなりの数になる。
楽屋の少ないNHKホールでは、紅白のときは大部屋に間仕切りをして、大御所以外の楽屋としている。
演歌歌手からポップス、ダンサー、アイドルまで幅広い女性芸能人のそろい踏みはとても印象的な光景だ。
個室の楽屋を使えるアイドルは過去殆ど存在しない。
別格たる松田聖子や日高舞くらいなもので、如何にトップアイドルと云えど、凛には女性用の大部屋が割り当てられるのだ。
その大部屋の自らのブースへと歩み、タオルを取ろうとすると、凛に声を掛ける姿があった。
「闇に飲まれよ!(おつかれさまです!)」
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