マリー「ここではあなたの学校より、人生がもうちょっと複雑なの」

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71 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/07/23(木) 10:34:43.02 ID:/xkiWyYx0
 マリーのおなか<グウゥ〜

マリー「――おなかすいちゃった。帰りましょっか」

安藤「そうだな」

押田「安藤くん」スッ

安藤「?」

押田「歩くの怖いからまた手を握ってくれ」

安藤「・・・仕方ないな」

マリー「じゃあ私も〜♪」

安藤「おい、なんで私と押田の間にマリーが入るんだ。捕らえられた宇宙人みたいだぞ」

マリー「わーい」ブランブラン

押田「ま、マリー様!揺らさないで!こっ、怖いっ!」

安藤「やはりこんなのが隊長じゃ頼りないかもしれない・・・」
72 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/07/23(木) 10:35:39.84 ID:/xkiWyYx0




 ――・・・

安藤「――だから言ってるじゃないか。フランス映画の最高傑作は『最強のふたり』だって」

押田「一般認知度を加味してもジャン・レノの『レオン』が至高ということは目に見えているだろう。これだから一般ピーポーは」ヤレヤレ

安藤「なんだと〜!隊長、アンタはどっちがいいと思う?」

押田「そんなこと訊くまでもないだろう。ね、マリー様」

マリー「どっちが上かなんて決められないわ。どちらも素晴らしい、それでいいじゃないの」

安藤「か〜っ!これだからお嬢様は!」

押田「さすがマリー様!寛大です!」


 <ザワザワ・・・ドヤドヤ・・・

マリー「あら、噴水の前が騒々しいわね」

 <コノヤロー! ナニヲー!

安藤「・・・なんだか穏やかじゃないな。行ってみよう」
73 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/07/23(木) 10:36:05.32 ID:/xkiWyYx0
内部生A「やはり貴様達の仕業だったんだな!この盗人どもめ!」

外部生A「違うって言ってるだろ!決めつけるんじゃない!」

 内部生B「我々の敷地に無断で入っておいてその言い草はなんだ!」

 外部生B「お前達だって寮に押し入ってきただろう!」

  内部生C「なにをー!」

  外部生C「なんだとー!」

 \ワーワー!/ \ナメンジャネエゾー!/ \フザケンジャアリマセンワー!/


押田「きみたち、まちたまいー!」ザッ

安藤「何を言い争っているんだ」ザッ

内部生A「押田様!マリー様!お帰りなさいませ」

外部生A「安藤!聞いてくれ、こいつらが――」

内部生A「押田様、ごらんください!外部生の連中がこれを隠し持っていたのですよ!」

押田「!・・・これは・・・」

安藤「青と金のリボンで包まれた・・・包み・・・これって」
74 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/07/23(木) 10:37:20.70 ID:/xkiWyYx0
内部生B「これは押田様がマリー様への誕生日プレゼントとして用意なさっていたものですよね」

内部生C「外部生の奴らがこの包みを持って、寮に入ってゆくのを目撃したんです!」

押田「なっ・・・やっぱり外部生が持っていたのか!」

 安藤「――・・・やっぱり?」

外部生A「違うと言ってるだろう!私達は安藤に頼まれてこの包みを探していたんだ!」

外部生B「戦車倉庫の奥で見つけたから、安藤さんが帰ってきたら報告しようと持ち帰ったんだ」

外部生C「そしたら内部生の連中が我々の寮に押し入って奪っていったんだ!盗人はお前達の方だ!」

内部生A「嘘を言うな!最初からお前達が隠していたんだろう!」

安藤「・・・」

マリー「あなた達、少し落ち着きなさい」

内部生A「!・・・マリー様」

マリー「押田、この包みは戦車倉庫の奥にあったそうだけど、心当たりはあるのかしら?」

押田「そ、そういえば・・・誕生日当日の朝連までは確かに持っていましたが、そこで置き忘れていたのかも・・・」タラ〜

マリー「それから?」

押田「・・・安藤に探してほしいと頼みました・・・外部生の者達が言っていることは本当です・・・」

外部生A「ほれみろ!」

内部生A「なっ・・・そ、それは本当ですか押田様」

押田「・・・」コクリ

内部生A「っ・・・我々の勘違いだったとは・・・」

外部生A「盗人呼ばわりされたんだ!謝ってもらいたいね!」

安藤「押田」


安藤「『やっぱり』・・・あんたそう言ったよな?」

押田「!」
75 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/07/23(木) 10:38:05.33 ID:/xkiWyYx0
安藤「外部生が包みを持っていたと聞いて、第一声が『やっぱり』・・・我々が盗んだと、そう思っていたのか」

押田「・・・い、いや・・・」

安藤「私に探してくれと頼んだのは、外部生の誰かが盗んだと思っていたからだったのか」

押田「・・・そういうことでは――」

安藤「見下げ果てられたものだな・・・こんなことじゃ一緒に戦うなんて無理な話だ」

押田「・・・!」

安藤「・・・試合はあんた達だけでやるんだな。行こうみんな」

押田「!?・・・な・・・待て!どういうことだ!?」

安藤「あんた達とはやっていけない・・・私達はチームを抜ける」

押田「っ!・・・安藤待て。待ってくれ・・・安藤・・・・・・安藤!」


マリー「・・・」
76 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/07/23(木) 10:39:05.57 ID:/xkiWyYx0




 ――・・・

押田「本日の戦車道訓練を開始する」

内部生A「押田様・・・外部生の者達が見当たりませんが・・・」

内部生B「一回戦まで日が無いのに合同練習が全然できていません。このままでは・・・」

押田「・・・」

内部生C「あの一件以来、外部生とのコンタクトは一切無いままです。大丈夫なのでしょうか」

押田「試合には来てくれるはずだ。多分・・・」

内部生A「・・・」


砂部「統一どころか決定的に分裂してしまうとは・・・」

祖父江「マリー様、このままでは試合などできません。どうするおつもりですか?」

マリー「ん〜、今日のティラミスは絶品ね〜♪」

祖父江「ま、マリー様!ケーキを食べている場合では・・・」

マリー「ガトーショコラも食べよ〜っと」ルンルン

祖父江「・・・ダメだこりゃ」

砂部「このチーム、どうなっちゃうんでしょう・・・」
77 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/07/23(木) 10:40:05.28 ID:/xkiWyYx0
 ――・・・

安藤「よーし、トレーニングはここまで。食事にしよう」

外部生A「あー疲れた!戦車無しの基礎練習でも疲れるな」

外部生B「しっかしエスカレーター組のお嬢様どもめ、謝罪に来る気配がない」

外部生C「箱入り娘は頭の下げ方もわからないらしい」

外部生D「私達が試合に参加したくて譲歩すると思っているんだな」

外部生E「舐められているんだ。頭にくるな・・・」

安藤「・・・向こうが土下座でもしない限り、私達は試合に参加しない」

外部生A「わかっているよ安藤。全員でそう決めたんだ。ここで引き下がるわけにはいかない」

外部生B「これは私達の誇りをかけた問題です。妥協する必要はありませんよ」

安藤「・・・」


 ――・・・

安藤「――そこでアタシは言ってやったのさ。『私はやらない。そんなフリフリな服着るもんか』ってな」

外部生A「ははは、やるじゃないか。さすがだ安藤」ハッハッハ

 押田「あ、安藤くん・・・!」

安藤「!」

押田「あの・・・・・・少し話したいんだが・・・」

安藤「購買に行こう。なんか飲みたい気分だ」ザッ

外部生A「・・・あ、ああ」

押田「お、おい安藤くん・・・!」


外部生A「・・・いいのか?彼女、謝ろうとしたんじゃないのか?」

安藤「・・・」


マリー「・・・」
78 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/07/23(木) 10:41:11.29 ID:/xkiWyYx0




 ――戦車道全国大会一回戦当日――

蝶野「BC自由学園の選手の方、試合開始まで10分ですが準備はよろしいですか?」

押田「も、もう少しで整うのでご心配なく」

蝶野「10分後に待機できていなかったら試合放棄と見なしますよ」

 内部生A「ど、どうしましょう押田様・・・外部生の連中会場に来てませんよ」

 内部生B「まさか本番もボイコットするなんて・・・」

 押田「やむを得ない・・・我々だけでやるしかない。なんとか乗り切ろう。BCの・・・マリー様のために!」

  内部生達『マリー様のために!』

内部生C「ところで押田様、マリー様はどこにおられるのですか?」

押田「え・・・?」

内部生C「今朝から一度もお見かけしておりませんが、誰かご存じなのでしょうか」

押田「・・・」

内部生A「・・・そういえば私も見かけていませんわ」

内部生B「朝、学園艦を出発した時も見かけませんでしたね・・・」

内部生C「・・・これはもしや・・・行方不明ということでは・・・」

 内部生A「なっ!?」

  内部生B「なッ・・・!」


押田「ぬゎんだってえぇーーー!?」
79 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/07/23(木) 10:58:20.69 ID:/xkiWyYx0
 ――・・・

安藤「ほい、Aのスリーカード」パサッ

外部生A「ゲッ・・・また安藤の勝ちか」

安藤「はっははは、すまんなキミ達。今日は私の日らしい」ハッハッハ

外部生B「ちぇーっ、安藤さんには勝てないや」

外部生C「でもいいんですか?今日は大会本番なのに戦車倉庫でダラダラしてて・・・」

安藤「・・・」

外部生D「奴らだけで一回戦を突破できるかどうか・・・」


 電話<Prrr・・・

外部生A「あ、電話」

安藤「私が出る」ガチャ

 安藤「もしもし?」

押田【安藤!大変だ!すぐにみんなを集めてくれ!】

安藤「電話口で謝るつもりか?」

押田【それどころじゃないんだ!マリー様が・・・マリー様が行方不明なんだ!】

安藤「・・・なんだって?」

押田【朝から誰も見てないんだ!学園艦を探さなければ!君達も手を探してくれ!】

安藤「落ち着け。そんなに慌てて――」

押田【キミもマリー様のお世話をしていたなら知っているだろう!あの方が一人でいなくなるなど・・・どんなことになるかしれない!】

安藤「・・・たしかに。わかった。後で合流しよう」ガチャ

外部生A「どした?」

安藤「隊長が消えた。皆、探しに行くぞ」
80 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/07/23(木) 10:59:20.71 ID:/xkiWyYx0
 ――・・・

外部生A「隊長ぉー!どこにいるんだー!」オーイ

外部生B「東側にはいませんでした」

外部生C「こっちもダメ!」

外部生D「どこにもいない・・・あのオトボケ隊長のことだから誘拐されてても不思議じゃない」

外部生E「も、もしかしてヤバいんじゃ・・・」ゴクリ

安藤「くそっ・・・どこに行ったんだ」


押田「安藤!」タタタ

安藤「!・・・見つかったか?」

押田「いや・・・手がかりもなにもない・・・」

 内部生A「キミたち!なにか心当たりは!?マリー様の居そうな場所!」

  外部生A「そう言われても・・・朝に点呼してないのか?」

 内部生B「どうだろう・・・みんな緊張してて覚えてなくて・・・」

  外部生B「誰か最後に隊長を見かけた者は?」

 内部生C「昨夜はモンブランを食べてらしたのに・・・」

  外部生C「とにかく手分けして探そう。それしかない!」

押田「安藤・・・もしマリー様が攫われでもしていたら・・・私・・・私・・・」

安藤「落ち着け。滅多なことは考えるな。ほら、探しに行こう」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
・・
81 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/07/23(木) 11:00:11.09 ID:/xkiWyYx0

・・
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・・
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安藤「クソッ・・・もうすっかり日が暮れてしまった」

押田「・・・これだけ探しても見つからないなんて・・・」

安藤「学園艦の外となったら探しようがないぞ・・・」

押田「しかしマリー様が行きそうな場所はあらかた探した・・・もう我々の目の届かない所へと行ってしまわれたのか・・・」

安藤「私達の目の届かない場所・・・」


安藤「 あ 」


押田「?・・・どうした安藤」

安藤「あ〜・・・・・・そうか・・・そういうことか」ポリポリ

押田「!?・・・な、何だ?なにかわかったのか?」

安藤「おーい皆、もう大丈夫だ。捜索は中止してくれ」

 外部生A「なんだ安藤、見つかったのか!?」

 内部生A「ほ、本当ですか!?ま、マリー様はどこに!?」

安藤「安心してくれ。無事に隊長を連れて帰ってくると約束するよ。君達は休んでくれていいよ」

内部生A「!?・・・ど、どういうことなんですか!?」

安藤「戦車を一輌借りていく。押田、行くぞ」

押田「?・・・どこへ・・・?」

安藤「決まってる。あの場所だ」
82 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/07/23(木) 11:00:45.23 ID:/xkiWyYx0




 ソミュア<ギャラギャラギャラ

安藤「もう夜になっちゃったな」

押田「・・・そろそろどこに向かっているか教えてくれてもいいじゃないか。本当にマリー様の居場所がわかったのか?」

安藤「私を信じろって」

押田「無茶を言うな」

 ソミュア<ギャラギャラギャラ・・・

安藤「ゲッ・・・渋滞だ。公道はこれだからヤなんだよな」

押田「歩道が空いているではないか。行け」

安藤「アホなこと言うな」

押田「なにをゆうちょうな。早くマリー様のところへ行かねばならないのに混雑する道を通るヤツがあるか!」

安藤「うるへー!私が操縦してんだ!黙ってろ!」

押田「なにをー!」

安藤「なんだー!」

 ソミュア<・・・・・・
83 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/07/23(木) 11:01:29.33 ID:/xkiWyYx0
安藤「・・・」

押田「・・・」


押田「・・・・・・」

安藤「・・・っ」

 ガコンッ

 ソミュア<ガロロロォン・・・!


 ソミュア<ギャラギャラギャラ!

押田「・・・公道はずいぶん混んでるな」

安藤「どけってんだ。ソミュアのお通りだぞ」ガコッ

 ソミュア<ギャラギャラギャラ!


 公用車<プップー! ププーッ!

安藤「お出ましだな。逃げ切れるかどうか100ユーロ賭けよう」

押田「・・・」

安藤「どうする?」

押田「乗った」

 ソミュア<ブオォン!ギャラララララ!
84 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/07/23(木) 11:02:07.69 ID:/xkiWyYx0
押田「絶好調だな」

安藤「ああ」

 ソミュア<ギャラララララ!

 公用車<ブオオォ――・・・


安藤「ハッハッハ!どうだ撒いてやったぞ!」

 公用車B<ブオン!

安藤「!?」

 ソミュア<キキィーッ! ギギギ・・・!


安藤「っ・・・くそっ」

押田「言うこと無しだな」


 公用車B<ガチャ

文科省役人「戦車から降りたまえ!キーを手に持って降りるんだ!」


安藤「・・・うまく切り抜けたら100ユーロ」

押田「キミが負けるよ」

安藤「じゃあ200だ」

押田「乗った」
85 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/07/23(木) 11:03:00.30 ID:/xkiWyYx0
 ソミュア<ガパッ

安藤「話を聞いてください」

役人「言い訳をするんじゃない。両手を頭の上に置きたまえ」

 公用車A<ブロロロ・・・ ガチャ

戦車道連盟会長「やれやれ・・・会合の帰りに面倒な現場に出くわしたもんじゃな」ドッコイセ

安藤「待ってください。これにはワケが――」

役人「口を閉じるんだ。もう一人車内にいるだろう。早く出てきなさい。このメガネには熱探知機能もあるんだ」

連盟会長「公道であんなスピードを出してはいかんだろう」

安藤「だから話を――」

役人「ソミュアの中のもう一人!いい加減にしないと廃校にするぞ!早く降りてくるんだ!」

安藤「降りられないんだよ!彼女は重体なんだ!」

役人「!?・・・何を言っている」

安藤「妊娠してるんだよ!8ヶ月目なんだ!見てみろ!」

連盟会長「なっ・・・まさか」バッ

 ソミュア<ノゾキコミッ

 押田「――うう・・・ハァ、ハァ・・・ううぅ・・・」

連盟会長「こりゃ大変だ!お腹が膨らんだ生徒がおるぞ!」

安藤「ホラみろ!」

役人「!・・・な・・・そんな」
86 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/07/23(木) 11:03:44.79 ID:/xkiWyYx0
安藤「なんだってんだ!遊びで戦車走らせてたと思ったのか!?病院に連れてくとこだったんだよ!破水してるんだ!こんなトコでグズグズしてたらどんどん危なくなる!」

 押田「うぅ・・・お腹痛い・・・!」

連盟会長「こりゃまずそうだ。辻くん、君もその目で確かめたまえ」

 ソミュア<ノゾキコミッ

役人「・・・ほ、本当だ。どうしましょう・・・?」

安藤「よーしいいだろう、考えてくれ。ゆっくりな。ただしダンナにはアンタから説明してくれよ。もし母子に何かあったらアンタのせいだ。ホラ考えろ!」

役人「・・・!」

 押田「ううう!痛いイタタタタタタ!アタタタタタ!」グウゥ〜!

安藤「あァ!?考えろ考えろ!」

 押田「ああ〜〜〜!おなかいたいよぉ〜〜〜!」ジタバタジタバタ

安藤「もう片足出てるかもしれないぞ!」


役人「〜〜〜っ!・・・行け!急いだ方がいい!」

 安藤「・・・ヘッ」

役人「君、どこに向かってたんだ?」

安藤「救急外来」

役人「では我々が先導しよう。未来ある子供達のためだ。会長の車は後方を」

連盟会長「う、うむ!がんばるんだぞ君達!」

 公用車A<バタム 公用車B<バタム
87 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/07/23(木) 11:04:10.94 ID:/xkiWyYx0
安藤「・・・・・・ふぅ、うまくいったな」

押田「にっ、にっ、妊娠だと!?誰が妊婦さんだ!」ポカポカ

安藤「ハッハハハ、そう膨れるな。名演だったぞ」ハハハ

押田「私が妊娠なんてっ!そもそも私は男性とふれあったことすら――」

安藤「わざわざクッションを服に入れて、オスカー女優も真っ青だな」ハハハ

押田「そ、それよりも!それよりもだっ!今は一刻も早くマリー様のもとへ行かねばならんのだ!早く出発しろ!」

安藤「いい大人が二人してダマされてたな。200ユーロ儲かった」フフ

押田「馬鹿言うな!賭け金が高すぎる!」

安藤「ムードを変えてお祝いだ。ソミュアにコンポを積んでて正解だったな」

 CDコンポ<ガチャッ ♪〜【EARTH WIND & FIRE:SEPTEMBER】

押田「いいか!私のおかげで助かったんだぞ!そこんとこ忘れるな!」

安藤「なあ押田クン、『先導しよう。未来ある子供達のためだ』だとさ。この先我々がどうなる見物だな」ハハハ

押田「まったく・・・野蛮人はこれだから」

安藤「待ってろよマリー、今迎えに行くからなー!」オーッ!
88 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/07/23(木) 11:12:28.15 ID:/xkiWyYx0





マリー「ずいぶん遅かったわね」


安藤「やっぱりここだったか」

押田「マリー様!こんなところに・・・!」


 ――・・・―― 《 凱旋門 》 ――・・・――


マリー「あんまりあなた達が来ないからここに家を建てちゃおうかと思ったわ」

安藤「まったく、振り回してくれるよな」

押田「遅くなり申し訳ありません」

マリー「ほんと、待ちくたびれちゃったわ」

押田「・・・面目次第もございません・・・マリー様・・・その・・・私達――」

安藤「わかってるよ隊長。あんたの言いたいことは・・・」

マリー「・・・」

押田「マリー様・・・」
89 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/07/23(木) 11:13:05.16 ID:/xkiWyYx0
マリー「今回の教訓は?」

押田「・・・・・・仲間を疑わない・・・でしょうか?」

マリー「ちがう」

押田「・・・ケンカしない?」

マリー「ちがう」

押田「で、では・・・」

マリー「きちんと謝ること」

押田「!」

マリー「間違いは誰にだってあるわ。人間だもの。肝心なのは自分の非を認めて、ちゃんと謝ること」

押田「・・・・・・はい」

安藤「まったくだ」

マリー「あなたもよ安藤」

安藤「え”っ」

マリー「合同練習サボったでしょ」

安藤「あれはこいつらが謝りにこないから・・・」

マリー「意地張って謝る機会を与えもしなかった。わざと無視したりイジワルして」

安藤「で、でも――」

マリー「間違いを許して受け止めてあげられるくらいの余裕をもちなさい。嫌がらせはダメ」

安藤「・・・・・・はい」

マリー「んっ」
90 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/07/23(木) 11:19:10.89 ID:/xkiWyYx0
押田「安藤・・・すまなかった」ザッ

安藤「!」

押田「・・・君や外部生の者達に対する大変失礼な言動の数々・・・お詫びさせてくれ。申し訳なかった。どうか許してほしい」

安藤「・・・」

押田「この通りだ」

安藤「・・・・・・はぁ・・・わかってるよ。君が我々にチームを抜けろだとか言っていたのも、全部マリーに勝利を捧げるためだ。わかってる」

押田「・・・」

安藤「だがあまりにヒドイ言動もあったぞ。そこは反省してくれ。いいな」

押田「・・・善処する」

安藤「それと・・・私もすまなかった。無視したりして・・・意地になってたんだ。ゆるしてくれるか?」

押田「ああ、いいとも」

安藤「・・・」

押田「・・・」

安藤「・・・〜〜っ!ああ〜っ、なんかムズガユイな!君に頭を下げられるとヘンな感じだ」カイカイ

押田「なっ・・・人が真剣に謝っているのに!君というヤツは!」

安藤「ははは、そうやって吠えている方が君らしいよ」

マリー「ふふふ、それは言えてるかもね」

押田「むう・・・」
91 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/07/23(木) 11:20:49.39 ID:/xkiWyYx0
マリー「じゃあ仲直りも済んだところで、コレ、開けてもいいかしら?」スッ

押田「あっ、金と青の包み・・・それは――」

安藤「押田からの誕生日プレゼント。まだ開けてなかったのか」

マリー「楽しみにとっておいたの♪押田、開けてもいいかしら?」

押田「は、はいっ。ど、どうぞ」

マリー「なにがでるかな♪なにがでるかな♪」ビリビリ

安藤「あーあー派手に破いちゃって・・・」

マリー「んマッ、これは――」


押田「“扇子”です。本場のフランスでは贈り物として扱われているそうで・・・」

安藤「ピンクのファーが付いた派手な扇子だな・・・成金趣味っぽい・・・」

マリー「いいわ〜!いいっ!気に入ったわ♪」

安藤「え”っ」

マリー「隊長らしいアイテムが欲しかったところなの。試合でも使うわね♪」

押田「よろこんでもらえて光栄です!」
92 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/07/23(木) 11:30:31.20 ID:/xkiWyYx0
安藤「試合と言えば・・・一回戦のことなんだが・・・」

押田「我々の試合放棄ということで不戦敗となってしまいました・・・」

マリー「いいわ。あんな状態で戦っても意味がないもの」

安藤「おっしゃるとおりで」

押田「戦わずして聖グロリアーナに勝利を譲ることになろうとは・・・」

マリー「悔しい気持ちはわかるわ。でもね、これを見て」ピラ

安藤「なんだこれ?お金?・・・それも大金じゃないか!」

マリー「安藤が描いた油絵、ダージリンに1万1000ユーロで買ってもらったの」

安藤「ほ、ホントに!?」

押田「あんなラクガキを・・・!?」

マリー「安藤が描いたと知らずにね。ちょっとスカっとしたでしょう?今頃、聖グロの玄関先に飾られてるかもしれないわ。フフフ」

安藤「・・・ふふ、確かに笑えるな。マリー様にゃ勝てないや」

押田「・・・私は罪悪感でいっぱいです」

マリー「試合では負けたけど勝負では勝ったというところかしら」フフフ

押田「しかし・・・全国の強豪に勝つというマリー様の夢が・・・」

マリー「まだ私達にはチャンスがあるわ。それも年内にね」

押田「・・・?」

安藤「無限軌道杯か」

マリー「そう。今度こそ私達、BC自由学園の凱旋よ。この門を笑顔でくぐりましょう」

安藤「頼りにしてるよ、隊長」ポン

押田「全力を尽くします、マリー様」

マリー「んっ」


マリー「それじゃあ、帰りましょっか♪」
93 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/07/23(木) 11:31:06.33 ID:/xkiWyYx0
http://uploader.sakura.ne.jp/src/up174257.jpg
94 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/07/23(木) 11:31:57.88 ID:/xkiWyYx0
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・


 ――無限軌道杯 一回戦――

蝶野【大洗女子学園の勝利!】


 ・ ・ ・

みほ「楽しい試合をありがとうございました!」

マリー「こちらこそ。まるで革命が起きたかのようなすごい試合だったわ。次は絶対革命鎮圧してあげるけどね」

麻子「マカロンもっと食べてもいいかな!」

マリー「もっちろん♪好きなだけお食べなさい」バサッ

 大洗一同『はぁ〜〜〜い!』


押田「戦った相手にも敬意を忘れない、さすがマリー様!」

安藤「はぁ・・・勝利の凱旋が出来るのはまだ先になりそうだ・・・」

押田「気負うな安藤くん。いいじゃないか、勝てなくたって」

安藤「あ?」

押田「見ろ、マリー様のあの幸せそうなお顔を」

 マリー「ふふふ♪」

安藤「・・・」

押田「マリー様が幸せなら、私は満足だ」

安藤「・・・はいはい。そうだな。アンタらにはかなわんよ」

 安藤(まあ・・・私もだがな)
95 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/07/23(木) 11:39:05.57 ID:/xkiWyYx0
マリー「安藤〜、押田〜、あなた達もいらっしゃ〜い。大洗の皆さんと交流を深めるのよ〜♪」

安藤「負けた相手にあんな笑顔で仲良くできるなんて、やっぱマリーって大物なのかバカなのか区別がつかんな」

押田「んなっ!?キサマ安藤ぉ!マリー様を愚弄するな!キサマはいつまでたっても無礼なヤツだな!」

安藤「なんだと!敵に騙されて身内を攻撃したお前には言われたくない!」

押田「そ、それはすまなかったって言ってるだろう!済んだことを掘り返すな!」

安藤「いいやこの件はいつまででも引き合いに出させてもらうぞ!謝罪も込めてランチでもおごってもらわにゃ割にあわんからな!」

押田「セコイことを言うな!いやしんぼっ!」

安藤「なんだとケチッ!」

 押田「やいの!」

 安藤「やいの!」

 \ヤイノヤイノヤイノヤイノヤイノヤイノ!/


みほ「あの〜・・・マリーさん、お二人がケンカしてるみたいですけど・・・」

マリー「いいのよ。いつものことだから」モグモグ

沙織「いつもなの!?」

優花里「なんだか面白い学校ですね、BC自由学園って」

華「ケンカするほど仲が良いということですね」

みほ「いいんですか?放っておいて・・・」


マリー「ここではあなたの学校より、人生がもうちょっと複雑なの。仲直りだったらいつでもできるけど♪」


 〜fin〜
96 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/07/23(木) 11:39:36.91 ID:/xkiWyYx0
 〜おまけ〜

 《☆安藤が描いたよくわかんない絵☆》

ダージリン「・・・」コウチャ スス・・・

オレンジペコ「あ、ダージリン様。新しい絵画を購入されたんですか?」

ダージリン「そうよ。ペコ、とても前衛的な油絵だと思わない?」

オレンジペコ「えぇっと・・・ちょっと私には難解ですね」

ダージリン「んっふ、そう。まあこの絵の味を読み取るには相応の芸術性が無いと難しいわね」

オレンジペコ「へえ」

ダージリン「1万1000ユーロで買ったの」

オレンジペコ「はあ」

ダージリン「きっとフランスの名のある画家が描いた名作よ。私くらいになればわかるの」

オレンジペコ「あっ、隅っこのほうに何か書いてますよ」

ダージリン「えっ」

オレンジペコ「【BC自由学園 安藤レナ作】・・・って・・・」

ダージリン「・・・」

オレンジペコ「・・・」


ダージリン「んっふ」

 〜おしまい〜
97 : ◆t8EBwAYVrY [saga]:2020/07/23(木) 11:56:16.69 ID:/xkiWyYx0
これにて完結です。ここまで読んでくれた方ありがとうございました
この作品はフランス映画『最強のふたり』を基に作られておりますので、映画を見てからだと飲み込みやすいと思います

>>70>>90に貼った画像はこちらの方( https://www.pixiv.net/users/12637631 )に描いていただきました

>>6に貼った画像はこちらの方( https://www.pixiv.net/users/2798146 )に描いていただきました
 また、>>6の画像が見れないとの報告をいただきましたので張り直します

http://uploader.sakura.ne.jp/src/up174258.jpg
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