輿水幸子「ボクの両親は、ボクのアイドル活動に無関心なんですよ(自称)」

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1 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 14:19:45.23 ID:gz7AxpqS0
幸子「最近はボ……わたくしもファンが増えて、仕事も増えたんてすよ」

幸子父「……そうか」

幸子「この間なんかですね」

幸子母「幸子さん」

幸子「な、なんでしょう。お母様」

母「お食事中は、静かに」

幸子「で、ですが……」

父「輿水の人間たるもの、常にエレガントたれ。違うかな?」

幸子「……はい。わかりました」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1594531184
2 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 14:21:32.09 ID:gz7AxpqS0
https://i.imgur.com/VfZcpFg.jpg
輿水幸子(14)
3 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 14:22:27.73 ID:gz7AxpqS0
母「芸能活動も結構ですが、学業の方も疎かにしてはいませんよね。幸子さん」

幸子「もちろんです」

母「エスカレーター式とはいえ、気の緩みを出さぬようにしなさいませね」

幸子「……はい。ごちそうさまでした、失礼いたします」

父「うむ」
4 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 14:23:05.48 ID:gz7AxpqS0
バタン


幸子「あーあ。そういう家柄がどうとか、輿水の人間だからとか、そういうのから離れて実力を試したいからアイドルになったのになあ」

幸子「仕事も増えて、テレビとかにも出るようになったから、少しは認めてもらえるかと思ったのに」

幸子「……トップアイドルになったら、お父様もお母様も認めてくれるのかな」

幸子「誉めて……くれる、のかな……ん?」

幸子「お父様とお母様の寝室が騒がしいな……なにかあったのかな?」
5 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 14:23:58.54 ID:gz7AxpqS0
〜翌日〜


若林智香「ひゃっほーぅ☆ 幸子ちゃん、おはようっ!」

幸子「ああ、智香さん。おはようございます」

智香「今日はダンスレッスンだねっ☆」

幸子「ええ。カワイイボクは、ダンスも完璧だからレッスンなんて必要ありませんけどね」

智香「えへへっ☆」

幸子「な、なんですか智香さん。その笑いは」

智香「アタシ、知ってるよっ。幸子ちゃんがすごい努力してがんばってるの」

幸子「……なんのことか、ボクにはわかりませんね」

智香「レッスンが終わった後でも、残って反復練習したり」

幸子「ひ、人違いじゃないですか?」
6 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 14:24:57.96 ID:gz7AxpqS0
智香「誰もいないときに、腹筋とかしてたりっ☆」

幸子「ど、どのくらいできるか試しただけですよ」

智香「しかもそういうの、絶対に人に言わないしねっ!」

幸子「努力なんて……カワイイボクに、似合わないですから」

智香「……そうだね。アタシ、誰にも言わないからっ」

幸子「……ありがとうございます」

智香(言わなくてもみんな見てたから、知ってるんだけどねっ☆)
7 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 14:26:21.83 ID:gz7AxpqS0
〜レッスン後〜


P「すごいな、幸子。前回の振り付け、もう完璧じゃないか!」

幸子「なにを驚いているんですか、プロデューサー。こんなの当然ですよ」

智香「……ふふっ☆」

P「? なにがおかしいんだ、智香」

智香「なんでもないですっ! えへへっ☆」

P「なんなんだ?」

幸子「と、ともかくプロデューサー、ボクはもうレッスンだけなんてうんざりですよ。早くこのボクにふさわしい仕事、もってきてくださいね」

P「ああ、そうだった」

幸子「?」
8 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 14:27:04.68 ID:gz7AxpqS0
P「ライブに出演るぞ! 単独ではないが、けっこう大きなハコだからな。人も集まるぞ」

幸子「……へえ。まあ単独じゃないのは不満ですけど、プロデューサーがせっかくとってきた仕事なら、出てあげてもいいですよ。ボクは優しいですからね」

P「よし。じゃあこの曲、完璧に仕上げてくれよ」

幸子「まったく、何を見ていたんですか。既に完璧じゃないですか」

P「確かにそうだがな。じゃあ俺は打ち合わせをしてくる」

智香「行ってらっしゃいっ☆」

幸子「……行きましたね、プロデューサー。智香さん、もう一回ステップみて欲しいんですけど」

智香「? 完璧だったよ。さっきも」

幸子「それはもちろんですけど、まあボクのステップを見ておくことは智香さんにもプラスになるんじゃないかと思いますよ」

智香「えへへっ。うん、そうだよねっ☆」
9 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 14:27:48.56 ID:gz7AxpqS0
〜その夜 輿水家〜


幸子「ライブかー……生でちゃんとした場所でのステージは初めてだなあ。お客さんもいっぱいだっていうし……楽しみだ」

幸子「……お父様とお母様。自慢したいけど、また窘められちゃうんだろうな。きっと」

幸子「いつかは、ボクのステージとか見てくれるのかな……」

幸子「……」

幸子「ハア」

幸子「想像つかないや。そんなの」

幸子母「幸子さん、夕餉の時間ですよ」

幸子「あ、はい。わかりました、お母様」
10 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 14:29:54.68 ID:gz7AxpqS0
幸子父「……」

幸子母「……」

幸子「……」

幸子父「あー……幸子?」

幸子「え? はい、なんでしょうか?」

幸子父「その……なんだ。なにか私に言いたいことがあるのではないか?」

幸子「は? いいえ、別に」

幸子母「……では報告しなくてはならないことですとか」

幸子「報告……ですか?」

幸子父「うむ。私も忙しい身だからな」

幸子「それは存じていますが……別に報告することはありません」

幸子(ライブのこととか話しても、また窘められちゃうよね)
11 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 14:31:22.36 ID:gz7AxpqS0
幸子母「……ほら。幸子さん、あれですよ」

幸子「はあ」

幸子母「ら……なんとか……ら……」

幸子「? ら?」

幸子「ほら、ら……らい……」

幸子「らい……? ああ!」

幸子父「うむ! なんだ!?」

幸子「ライスのおかわりをお願いします」

幸子母「……どうぞ、幸子さん」

幸子「ありがとうございます」
12 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 14:32:56.66 ID:gz7AxpqS0
〜その後 幸子父母の寝室〜


幸子父「なぜだ!? なぜ幸子は、私たちにライブのことを報告し、招待をせんのだ!!」

幸子母「落ち着いてくださいまし、あなた」

幸子父「これが落ち着いていられるか! 幸子のスケジュールはすべて把握してチケットもおさえているというのに!! 招待をされたらそのチケットを見せて幸子驚かせ、喜ばせる計画なのだぞ!!!」

幸子母「きっと幸子さんの目標は、もっと高い所にあるのですわ」

幸子父「! なるほど。このようなキャパシティでのホールなど、眼中にないわけか。今回は単独ではないとも、聞いておるし」

幸子母「私たちに報告するのはきっと、もっと大きな舞台でのお仕事に相違ありませんことよ。おそらくトップアイドルとなる、その時ですとか……」

幸子父「さもあろう! いや、そうあるべきだ!! 流石は幸子!!! 我々も幸子からの招待があるまでは、陰から密かに応援すると決めておるからな」
13 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 14:34:09.91 ID:gz7AxpqS0
幸子母「さあ、ではあなた。今夜も執事に隠し撮りさせた幸子さんのレッスン風景を見ながら、応援の練習をいたしましょう」

幸子父「よかろう。時におまえ、このような動作をどう思う?」ブンブンブン

幸子母「まあ! あなたその頭を激しく振る動作はいったい!?」

幸子父「ヘッドバンギング、と言うそうだ」

幸子母「それは以前、あなたの右腕がライバル企業に引き抜かれた?」

幸子父「ヘッドハンティングではない、ヘッドバンギングだ。アイドルが歌っている時は、このような動きで応じるのがファンの嗜みだと、部下から聞いた」

幸子母「あなたは、いつも良い部下の方に恵まれておいでですのね」

幸子父「L・O・V・E! LOVELY幸子!」ブンブンブンブン

幸子母「こう? こうですの?」ブンブン

幸子父「こう! こうだ!!」ブンブンブンブン
14 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 14:35:33.37 ID:gz7AxpqS0
〜翌朝〜


幸子「ど、どうなさったのですか!? お二人とも首にそんなものを巻かれて!」

幸子父「なんでもない。主治医からは、頚部捻挫だと言われている」

幸子「頚部捻挫って……大丈夫なんですか?」

幸子母「幸子さん」

幸子「え? あ、はい」

幸子母「狼狽(うろた)えてはなりません」

幸子父「うむ。輿水の人間は狼狽えてはならん。常に平静かつエレガントたれ」

幸子「はい……」
15 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 14:36:44.75 ID:gz7AxpqS0
幸子父「そうであってこそ! 輿水の……痛たたた」

幸子「大丈夫ですか……? 今日はゆっくりと静養してください」

幸子母「そうもいかないのです。本番が近づいていますから、お父様も当日の為に雑務を片づけておきませんと」

幸子「? 当日って、なんの当日なんですか?」

幸子母「……」

幸子父「……」

幸子「……あの」
16 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 14:38:21.01 ID:gz7AxpqS0
幸子母「あらいけませんわ。もうこんな時間ですわよ、あなた」

幸子父「う、うむ! では行ってくる。幸子、がんばるのだぞ」

幸子「え? あ、はい、お気をつけて……」

幸子(あれ? がんばれって、何をがんばれっていうんだろ?)

幸子「……」

幸子「学業、かな?」
17 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 14:39:15.89 ID:gz7AxpqS0
〜輿水幸子出演合同ライブ当日〜


幸子父「おお、まだ時間前というのに大盛況ではないか」

幸子母「これもすべて、幸子さんのファンの方々に相違ありませんことよ」

幸子父「そうであろう。いや、そうに違いない」

幸子母「あら、あそこに幸子さんのウチワを持った方が」

幸子父「おお! そこの貴方、輿水幸子のファンですかな?」

ファン1「あ? 俺?」

幸子父「うむ。うちの幸子が、いつもお世話になっております」
18 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 14:41:20.66 ID:gz7AxpqS0
ファン1「え? ああ、おたくも幸子Pなわけね?」

幸子母「幸子P?」

幸子父「失礼だが、幸子Pというのは如何なる意味ですかな?」

ファン1「シンデレラガールズのファンは、それぞれの推しドルの担当P……つまりプロデューサーっつー位置づけなんだけど……知らないの?」

幸子父「恥ずかしながら」

ファン1「マジかー。おたく、ライブ初めて?」

幸子父「これまでこういった催しとは、無縁だったもので」

幸子母「よろしければわたくし達に、教えていただけませんこと?」

ファン1「いっすよ。同じ幸子Pなわけだし」

幸子父「よろしくお願いいたします」
19 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 14:42:40.23 ID:gz7AxpqS0
ファン1「じゃあ当然、名刺も持ってきてないっすよね?」

幸子父「名刺ならここに……」

ファン1「輿水コンツェルン代表取締役……うわ、カタいなー。カタい」

幸子父「カタい?」

ファン1「これ、俺の名刺」

幸子母「まあ、綺麗な色合い。それに幸子さんの顔写真が」

幸子父「これは素晴らしい」

ファン1「ま、こういうのはセンスだけど、ライブ前後には名刺交換して交流するのがプロデューサーとしての楽しみのひとつだから」

幸子父「これは、大いに参考にさせてもらわなければ!」
20 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 14:43:55.48 ID:gz7AxpqS0
幸子母「これはどちらの業者に作らせたものですの?」

ファン1「え? いや、これは俺が作ったんすよ」

幸子母「ご自分で? まあ!」

ファン1「なんか心配になってきたな。ペンラ用意してきてる? あとUOとか」

幸子父「ペンラ、とは?」

ファン1「ペンライト」

幸子母「ペンライト、とは?」

ファン1「……わーった。こうなったら、1から教えてやるよ。そんで、幸子ちゃんを盛り上げてこーぜ」

幸子父「ありがたい」

幸子母「よろしくご指南、お願いいたしますことね」
21 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 14:45:19.09 ID:gz7AxpqS0
幸子父「色々と参考になる話ばかりだったな」

幸子母「本当に。あの方に出会わなければ、私たち大変な恥をかいてしまう所でしたわね」

幸子父「ヘッドバンギングがマナー違反とは知らなかったな」

幸子母「毎晩、ヘッドバンドに左右1sの重りを下げて鍛えて参りましたのにね」

幸子父「それにしても、まだ時間前なのにグッズの物販に間に合わぬとはな」

幸子母「残念ですわね」

幸子父「執事に連絡して、ペンライトも入手した」

幸子母「間に合って良かったですわね」

幸子父「では、入場しよう」

幸子母「その前にあなた、これを」

幸子父「そうだったな」
22 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 14:46:59.69 ID:gz7AxpqS0
ファン2「幸子ちゃーん!」

ファン3「カワイイー!」

ファン4「ん? オジサンも幸子ちゃんのファン?」

幸子父「うむ」

ファン3「いいけど、その仮面は? Pヘッド?」

幸子母「幸子さんに、知られるわけにはまいりませんので」

幸子「みなさん、ボクのために今日はご苦労様ですね」

客1「誰だ?あれ」

客2「輿水幸子だってよ。知ってるか?」

客3「いーや」

幸子父「ぐぬぬ……」

幸子母「幸子さん、ここは試練の時ですよ」
23 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 14:48:35.73 ID:gz7AxpqS0
幸子「では聞いてみてください。ボクの歌」

幸子「〜♪」

客1「……へえ」

客2「悪くねぇじゃん」

客3「可愛いよな」

幸子父「幸子……幸子」ボロボロ

幸子母「立派ですよ、幸子さん」ハラハラ

幸子「〜〜〜♪♪♪」

客1「いいな、ノッてきたぜ」

客2「UO折っゃうぜ!」

客3「コールも入れてこうぜ」

幸子父「そ、そうだペンライト」

幸子母「振るのでしたよね」
24 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 14:49:32.55 ID:gz7AxpqS0
幸子「まだまだカワイイボクの歌を聴きたいでしょうけど、後の人たちもいるのでこれで失礼しますよ」フフーン

客1「いいな、輿水幸子か」

客2「俺ファンになるわ」

客3「次が楽しみだな」

幸子母「さすがですわ、幸子さん」

幸子父「素晴らしいステージだった。ワシも鼻が高い」

幸子母「ですがサイリウムが途中で光らなくなりましたわね」

幸子父「1本では少なかったやも知れぬな」

幸子母「今後はもっとたくさん用意しないと」
25 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 14:50:56.20 ID:gz7AxpqS0
P「幸子! ライブは成功したし、評判もいいぞ」

幸子「……」

P「幸子?」

幸子「え? え、ええ。お客さんも、ボクのカワイさに驚いてましたよね」

智香「とっても良かったよっ☆」

幸子「ええ……」

P「どうかしたのか?」

幸子「いえ。別に……」

智香「あ、プロデューサーさん。幸子ちゃんは、喉が乾いてるんですよ」

P「おお、待ってろ」

幸子「……お客さん、すごくもりあがってましたね」
26 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 14:52:36.11 ID:gz7AxpqS0
智香「そうだね」

幸子「みんな、応援してくれてました」

智香「うん」

幸子「会場のサイリウムって、本当に光る海みたいなんですね」

智香「すごかったね」

幸子「……」

智香「おめでとう」

幸子「次も……が、がんばりますから……」

智香「うんうん」

幸子「また……ダンスをみてください……」

智香「……うんっ☆」
27 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 14:53:26.81 ID:gz7AxpqS0
〜1ヶ月後〜


P「決まったぞ幸子!」

幸子「え?」

P「CDデビューだ!」

幸子「へ、へええ……よ、よう、ようやくですか。へえー……」

P「ああ。俺の力が足りないばかりに、待たせたな! だが、これで持ち歌でどこへでも出られるぞ!!」

幸子「か、カワイイ曲にしてくださいよ。ぼ、ボクにふさわしい曲に」

P「任せろ!!!」

幸子「ではボクは、ちょっと失礼しますよ」
28 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 14:54:50.31 ID:gz7AxpqS0
バタン

幸子「し、CDデビュー! そうかー! ついにボクも……ボクも」

幸子「これはお父様やお母様にも、ご報告を……」

ピッ

幸子「……」

幸子「いえ、デビューとはつまり、これから世に出るというだけのこと。この程度で浮かれていては、また窘められるに違いないですよね」

幸子「……智香さんにはメールしとこう」
29 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 14:55:55.30 ID:gz7AxpqS0
幸子「ただいま戻りました……あれ? 敷地内に重機が?」

幸子母「急ですが当面の間、屋敷の工事がありますのよ」

幸子「工事……どこか修理でもするんですか?」

幸子母「いえ、建て増しです」

幸子「建て増し……何が建つんですか?」

幸子母「オーディオルームと、とりあえずはグッズ等の倉庫ですが、ゆくゆくは記念館にする予定です」

幸子「? はあ」

幸子母「あ! な、なんでもありませんのよ」

幸子「あ、お母様……行っちゃった。グッズってなんのグッズだろう……」
30 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 14:59:10.57 ID:gz7AxpqS0
幸子父「素晴らしいジャケットではないか!」

幸子母「本当ですわね」

幸子父「まだグッズ倉庫だが、記念館となった暁にはこのCDが記念すべき第1号展示品として飾られることになるな」

幸子母「その日が待ち遠しいですわね。そして曲も最高でしてよ」

幸子父「幸子の歌を聞く為に、防音シアターを邸内に新設し、ハイレゾオーディオであるMark LevinsonのNo519にプリアンプを2台JBLのProject EVEREST DD67000スピーカーを2台購入したかいがあったな」

幸子母「1500万ほどかかりましたが、買って良かったですわね」

幸子父「安い買い物だったな」
31 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 15:00:14.41 ID:gz7AxpqS0
〜夕食時〜


幸子「先日の定期テスト、数学は満点でしたよ」

幸子父「うむ。流石は幸子」

幸子母「普段の実力を、発揮いたしましたね」

幸子「ええ。ボ……わたくしは、きちんと学業にも力を入れていますから当然です」

幸子父「なるほど、芸能活動にうつつを抜かず授業中も真面目にやっておるのだな」

幸子母「そうなんですね授業中も……授業中手紙を書いてる午後1時〜♪」

幸子父「少しだけ〜隣のあなたが気になるの〜♪」

幸子「……え?」
32 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 15:01:38.65 ID:gz7AxpqS0
幸子父「横目で見て……はっ!? い、いや、なんでもない。なんでもないぞ!!」

幸子母「あなたの顔は〜……さ、さささ、幸子さん、お、おおお、お顔が汚れていましてよ」

幸子「え? そうですか? ソースがはねたかな?」

幸子父「ふう……危ないとこだったな」ヒソヒソ

幸子母「まだまだ幸子さんには、私たちが密かに応援していることは明かすわけにはまいりませんものね」ヒソヒソ

幸子父「うむ。幸子がトップアイドルとなるまでは……」ヒソヒソ

幸子母「幸子さんが満足してしまっては、いけませんものね」ヒソヒソ

幸子「?」
33 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 15:03:03.12 ID:gz7AxpqS0
智香「幸子ちゃん、絶好調だねっ☆」

幸子「ええ……CDのセールスも順調なようですし、ライブでの空気というか、手応えも確実に感じています……」

智香「? どうしたのっ?」

幸子「い、いえ、嬉しいですよ? 思い描いていた通りに人気も出てますし。ただ、なんとく……」

智香「なに?」

幸子「もっとなんというか……ボクはできそうな気がするんですよね」

智香「うーん、そういうものなのかなっ? 成功しても満足ってできないもの……なのかな」

幸子「……どうなんでしょうね?」


P「……」
34 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 15:04:25.39 ID:gz7AxpqS0
〜数日後〜


P「幸子、ちょっといいか?」

幸子「なんですか? また新しい仕事ですか?」

P「まあ、そうとも言えるかもな。紹介しよう、白坂小梅と星輝子だ」

小梅「……どうも」

輝子「……フヒッ」

幸子「あ、はい。初めまして……確か、同じ事務所のアイドルの娘ですよね?」

P「ああ、それでな、3人にはユニットを組んでもらおうと思っている」

幸子「……え?」

P「3人にはユニットを組んでもらおうと思っている」

幸子「ええーっ!? ユニット? ボクがですか?」
35 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 15:05:28.97 ID:gz7AxpqS0
P「既に曲もできている。ユニット名は、そうだな……3人で、考えてもらおうかな」

幸子「ちょ、ちょっと待ってください。ボクはソロデビューもしていて」

P「幸子」

幸子「え?」

P「やってみてくれ」

幸子「……はあ」

P「きっといいユニットになる」

幸子「……わかりました」

P「よし。じゃあ、3人でミーティングしてくれ」
36 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 15:08:06.29 ID:gz7AxpqS0
幸子「それでですね」

小梅「……」

輝子「……」

幸子「あの……2人とも?」

小梅「……」

輝子「……」

幸子「あの……」

小梅「……」

輝子「……」

幸子「……」

小梅「……」

輝子「……」

幸子「ちょっと2人とも、黙ってないで喋りましょう……」

小梅「!」

輝子「!」
37 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 15:09:54.73 ID:gz7AxpqS0
幸子「色々と思うところがあるかも知れません。事情だってあるでしょう。ですけど、今は目の前を見ましょうよ」

小梅「!!」

輝子「!!」

幸子「ボクにも夢はあります。当然、トップアイドルにはなりますが……いえ、カワイイボクならなれて当たり前ですが、それを見せてあげたい……人たちがいます。ファンのみなさんや、プロデューサー、一緒にレッスンした仲間、それに……」

幸子(お父様や、お母様も……)

幸子「と、ともかく、ユニットを組むことは決まったんです。前向きに、これからのことを考えてみましょうよ!」

小梅「!!! う、うん……」

輝子「!!! か、カッコイイ……」

幸子「! やってくれる……んですか?」
38 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 15:11:07.61 ID:gz7AxpqS0
小梅「う、うん……お母さんが勝手に申し込んでたアイドル……だけど、ちょっとやってみたくなった……かも」

輝子「フ、フヒッ。い、今の言葉……魂に……響いた……ナイスシャウト。ナイスカワイイ。ナイス……リーダー!」

幸子「え? り、リーダー!?」

小梅「う、うん……リーダー……幸子ちゃんがいいと思う……」

輝子「リーダーとはつまり、すべてのメンバーに対する模範的なあり方のこと……」

幸子「よくわかりませんが、わかりました! ぼ、ボクで良ければリーダーとしてがんばりますから、いっしょにお願いしますね」

小梅「うん……そ、そうだ。ここにいる3人みんな、身長が同じ……」

輝子「そ、そうだな。全員同じ身長の142pだから……」

幸子「ユニット名は『カワイイボクと142's』(かわいいぼくといっしょに)です!」
39 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 15:12:53.98 ID:gz7AxpqS0
輿水父「ユニット活動とはどういうことだ! 幸子は既にソロデビューをしておるのだぞ!!」

幸子母「ユニット活動から人気の出た娘がソロデビュー……というのが、スタンダードなアイドルの登り方、ですものね。しかしあなた、既にデビューしたアイドル達によるユニットもございましてよ……」

幸子父「それは全員がある程度以上の人気ありきの、夢の組み合わせの具現化。今回の場合、幸子以外はまだほとんど活動をしていない娘だというではないか」

幸子母「それは確かに……これはこの目で確かめる他ありませんのでは?」

幸子父「うむ。行くほかあるまい、カワイイボクと142's結成ライブに!!!」
40 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 15:14:03.10 ID:gz7AxpqS0
〜カワイイボクと142's結成ライブ会場〜


小梅「お、お客さんいっぱい……」

輝子「で、デリック・ウィブリーかシド・ビシャスになったみたい……だぞ」

幸子「2人とも……今日は、がんばりましょう」

小梅「うん……そうだね。そのためにがんばった……から」

輝子「フヒッ。リーダーの特訓……最高にヘルだったからな……」

幸子「ですが自信を持ってください。ボクたちはその地獄をやり遂げたんです。今日は……3人で……」

小梅「うん……」

輝子「オーバー・ザ・ヘルだーーー!!! ヒャッハーーーッッッ!!!」
41 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 15:15:55.18 ID:gz7AxpqS0
ファン1「お、いつぞやのオジサンとオバサンじゃん」

幸子父「おお、ご無沙汰しております。先だっては色々とお教えいただき、本当にありがとうございました」

ファン1「いって。しかしまあ、ユニット結成して再デビューとは意表を突かれたよな」

幸子母「ええ。私どもも戸惑っておりまして……ここへきてユニット活動をすることになるとは……」

ファン1「ま、それもおもしろいんじゃね?」

幸子父「なんですと?」

ファン1「カワイイだけが、輿水幸子じゃない……ってとこかな?」

幸子母「カワイイだけではない……」

ファン1「普通にしてりゃカワイイのに、普通だけじゃないのが面白いんじゃねーのかなってさ。面白いのも輿水幸子っすよ。次は何してくんのか、どんなこと見せてくれんのか、このわくわく感すね」」

幸子父「……あなたには、また教えられましたな」

幸子母「今日のユニットライブ、わたくしもわくわくしてまいりましたわ」

ファン1「へ? まあそりゃ良かった」
42 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 15:17:10.56 ID:gz7AxpqS0
幸子「今日はみなさん、カワイイボクと142'sの結成ライブへようこそ」

小梅「カワイくて、ホラーで、パンクな私たちのライブ……」

輝子「ヒヤッハーだぜえええ!!!」

客「「え? ……お、オオオーーーォォォッッッ!!!」」

幸子父「どういったコンセプトなのかは、今ひとつわからぬが……」

幸子母「3人がひとつになっているのは、わかりますわね」

幸子父「うむ。よくぞまとめあげたな、幸子……ん?」

小梅「カワイイ幸子ちゃんと〜ホラーの私〜♪」

幸子父「あ、あの……娘、確か白坂小梅という名だったな……なかなか……」
43 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 15:17:46.42 ID:gz7AxpqS0
小梅「地獄……魅せてあげる……〜♪」

幸子父「!!!」ズキュウウウゥゥゥンンン

幸子母「あなた、どうなさったの?」

幸子父「なんという……可憐な……」

幸子母「は?」

輝子「ロックのビートは心音に一番近いんダゼエエエ♪」

幸子母「!!!」ズキュウウウゥゥゥンンン

輝子「6×9=53+1♪ ロックはゴミのひとつ上〜ヒャッハー♪」

幸子母「なんて心揺さぶられる……」
44 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 15:19:08.94 ID:gz7AxpqS0
幸子父「……リウムを」

幸子母「……は?」

幸子父「サイリウムを!」

幸子母「そうですわね!」

小梅「クロールスペース〜♪ カラカラ回る〜♪ クリクリ回る〜♪」

輝子「恐怖の館の口が開くゼエエエ〜〜〜♪」

幸子父「こ、小梅ちゃあああーーーんんん!!!」

幸子母「輝子ーーーおおお!!!」
45 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 15:19:51.51 ID:gz7AxpqS0
幸子「お客さん、盛り上がってましたね! まあ僕のカワイさからすれば当然かも知れませんが、小梅ちゃんも輝子ちゃんも……まあ、すごかったですよ、ええ」

小梅「……」

輝子「……」

幸子「? どうしたんですか? また、だんまりですか? せっかくライブも成功し……」

小梅「うう……」グスッ

輝子「うう……」グスッ

幸子「なんですか!? どうしたんですか、2人とも」

小梅「アイドル……なって良かった……」

輝子「はじめて……誰かに認められた……気がする」

幸子「……まだまだ、これからですよ」

小梅「……うん」

幸子「……これからも、3人で」

幸子「ええ! カワイイとホラーとヒャッハーでトップアイドルを目指しますよ!!」

小梅・輝子「おー!!!」
46 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 15:21:01.54 ID:gz7AxpqS0
P「いいユニットになったな。そして、いいアイドルになったな幸子」

智香「だからユニットを組んだんですねっ☆」

P「1人でも登れたかも知れないが、3人でも登れるだろうと思ってな。1人で登るより大変かも知れないし遠回りになるかも知れないが……登りがいがあるだろう?」

智香「えへへへっ☆」
47 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 15:21:39.31 ID:gz7AxpqS0
幸子父「水色の公式ペンラを8本購入した」

幸子母「小梅ちゃんカラーですわね。でもどうして8本も?」

幸子父「これをこう……両手の各指に挟むことで」

幸子母「まあ! なんという光量でしょう!!」

幸子父「ウルヴァリン、もしくはバルログと言うそうだ。む? その大量の紅色のリウムはどうしたのだ?」

幸子母「これはですね、あなた。この弾丸ホルダーを腰と両肩と両手足に巻いてそこに差し込みますでしょう? これによって……」

幸子父「ぬおわっ! な、なんと、全身が輝子カラーで発色を!!」

幸子母「わたくし自身がリウムとなることですのよ」

※レギュレーション違反です
48 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 15:23:26.29 ID:gz7AxpqS0
幸子父「ぬうう、足りない光量は気合いのコールでカバーだ! L・O・V・E! LOVELY小梅!!!」

幸子母「オイ! オイ! オイ! 輝子ーーーヒ"ャ"ッ"ハ"ーーーッ"ッ"ッ"!!!」
49 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 15:24:29.75 ID:gz7AxpqS0
〜1ヶ月後〜

幸子「※カワイイボクと ファーストアルバム『カワイイとホラーとパンクで 』6月16日発売を記念と祈念して、カワイイボクがスカイダイビングしますよ」

小梅「が……がんばって! もしもの時は、骨は拾うから……ね」

幸子「やめてくださいよ! 縁起でもない!」

輝子「パンクスは逃げない……その姿勢、ロックだな。成功祈ってる。さあ……レッツ、ソライロタケ」

幸子「言葉の意味はわかりませんが、いきますよ……え、えいっ!」

https://i.imgur.com/l64gCJQ.jpg
50 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 15:25:52.21 ID:gz7AxpqS0
P「お疲れ、3人とも。幸子、なかなかいい演技だったぞ」

幸子「本物のスカイダイブ用飛行機に、本物のスカイダイブスーツを着て、もしかしたら本気でやらされるんじゃないかと思いましたよ。ま、まあ、その時はやるつもりでしたけどね」

P「いや、さすがにスカイダイブは18歳からだからな。後はCGを合成してCMを作る」

小梅「高いところ……すごくドドキしたね……」

輝子「ああ、完璧にソライロタケだったな」

幸子「高いところからの光景、確かにすごかったですね」

小梅「アイドルとしても、いける……よね?」

幸子「え?」
51 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 15:26:57.47 ID:gz7AxpqS0
輝子「もっと高いところに、の、登りたい……フヒッ」

幸子「……もちろんですよ! がんばりましょう」

P「そうか。3人がそのつもりなら、俺も次のステージを用意しないとな」

小梅「え?」

輝子「つ……次?」

P「アルバムを出したんだから、当然その次は……ツアーだ!」

小梅「ツアー? さ、3人で……ツアー?」

輝子「や、やった……」

幸子「が、がんばりましょう!!!」
52 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 15:27:29.27 ID:gz7AxpqS0
幸子「夏休みの1ヶ月をかけて、全国8公演かあ……これはさすがに、お父様とお母様に報告をしないといけないかな!」

幸子「でも、なんて言われるだろう……?」
53 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 15:29:31.97 ID:gz7AxpqS0

幸子父「夏休み1ヶ月で全国を回る? それで幸子、学業はどうなっておるのだ?」

幸子母「幸子さん。成績は落ちてはいないようですが、最近は出席日数がずいぶん減っているというお話も聞いていますよ?」

幸子父「ふむ……幸子。ここらでどうだ? そろそろアイドルも辞め……」

54 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 15:30:44.44 ID:gz7AxpqS0
幸子「だ、だめです! ボクだけが窘められるのはいいけれど、芸能活動禁止とか言われたら小梅ちゃんや輝子ちゃん、それにプロデューサーが……」

幸子「……」

幸子「でも、言わずに1ヶ月も家を空けるわけにもいきませんよね。どうしよう……」
55 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 15:32:42.61 ID:gz7AxpqS0
智香「1ヶ月ほど合宿の為に寮ですごす。……ってことにすればいいのっ? それはかまわないけど」

幸子「まあお父さ……父と母はボクの芸能活動に興味はありませんし、そういうことにしておけば大丈夫かな、と」

智香「でも、本当のこと言っておいた方がいいんじゃ……」

幸子「い、いえ! ここで何か反対されるよりは、そういうことにしておいた方がいいんです」

智香「そうかな……」

幸子「とりあえずそういうことで、よろしくお願いします」
56 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 15:34:38.47 ID:gz7AxpqS0
幸子「え? お父様もお母様も不在?」

執事「はい。なんでも事前に全国をまわっておく、と申されまして。現地の交通機関や所在他の確認、なにより空気を感じておくのだ……と」

幸子「? またなにか、輿水コンツェルンの大きなプロジェクトかな」

執事「わたくしめには、事業のことは……合宿の件は、定時連絡でお伝えしておきます」

幸子「ええ、よろしく頼みます」
57 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 15:35:56.20 ID:gz7AxpqS0
幸子「よくわからないけれど、直接お伝えしなくてすんだのはラッキーだったかも知れませんね。さあ、それじゃあレッスンです」

小梅「おおー……!」

輝子「オー……!」

トモカ「おーーーっ☆」
58 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 15:37:20.22 ID:gz7AxpqS0
〜夏休み 真駒内セキスイハイムアリーナ〜


幸子父「始発で来たが、もう随分と物販に並んでいるな」

幸子母「みなさんの熱気が伝わりますわね」

幸子父「うむ。それもあってか、北海道は涼しいかと思っていたが、暑いぐらいだ」

幸子母「あなた、その小梅ちゃん法被は脱いでおかれた方がよろしくはありませんこと? 熱中症にでもなったら」

幸子父「これは小梅Pとしての決意と心意気。脱ぐわけにはいかん! お前のその重ね着レザー輝子Tシャツと同じことよ」

店員「次のお客様、どれになさいますか〜?」

幸子父「あ、小梅セットと輝子セットを4セットずつ頼む」

店員「4セットですか〜?」

幸子父「自分用、保存用、布教用、記念館用だ」
59 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 15:43:34.57 ID:gz7AxpqS0
店員「申し訳ありませんが〜グッズはそれぞれ、お一人様3点までとさせていただいております〜」

幸子父「なんと!」

幸子母「では私も買いますので、合計で4セットでお願いできますかしら」

店員「あ、お2人で2セットずつですね〜?」

幸子母「そう。2セットと2セット、4セットだ」

幸子父「そう、2セットずつだ、買えるんだ!」

店員「かしこまりました〜。限定CDはどうなさいますすか〜?」

幸子母「それも4枚お願いできますこと? あ、それから……」
60 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 15:45:49.29 ID:gz7AxpqS0
〜真駒内セキスイハイムアリーナ楽屋〜


輝子「会場前……す、すごい人だったな……」

小梅「全席完売だ……って」

幸子「初北海道ですが、ボクたち歓迎されているんですね。まあ、当然といえば当然ですけどね」フフーン

P「……いや」

幸子「え?」

小梅「ど、どういう……こと?」

輝子「なにかあるのか? 親友」

P「ここ真駒内セキスイハイムアリーナのキャパは、約1万1千人。だが同じ札幌に、もっと大きなハコがある」

輝子「わ、わかったぞ……」

小梅「うん。北海道最大のハコ……」
61 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 15:46:49.16 ID:gz7AxpqS0
幸子「札幌ドームですね」

P「そうだ。札幌ドームのキャパは5万3千人。いつかまた、北海道でライブをやろう。その時は……」

幸子「ええ、札幌ドームで!」

P「よし、じゃあまずは今日のライブだ!」

小梅「う、うん……」

輝子「今日はマツタケでいくぞ」

幸子「言葉の意味はよくわかりませんが、やりましょう!」
62 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 15:47:31.65 ID:gz7AxpqS0
〜ライブ後 真駒内セキスイハイムアリーナ前〜


幸子父「……高まりすぎて、言葉が出ない……」

幸子母「……ほんそれ、ですわ……」

幸子父「気づいたか? 13曲目が小梅ちゃんの『Funny Fantasy Friday』だったのを……」

幸子母「13とフライデー……金曜日をかけていたんですのよね……」

幸子父「それだけではなく、間奏時にチェーンソーモチーフのギターを持った輝子ちゃんが乱入してきてギターソロを弾きだした時は、思わず『演出した奴、出てこーーーい!!!』と叫んでしまったわ」

幸子母「歌い終えた後に『ジェイソンはチェーンソー、使わないけどな……』って照れたように笑った輝子ちゃん、マジ天使……」
63 : ◆hhWakiPNok [saga]:2020/07/12(日) 15:48:18.92 ID:gz7AxpqS0
幸子父「『小さな恋の密室事件』の時の演出! あれな!! ホラー映画『悪魔の密室』とかけてあったぞ!!! 元は1983年のオランダ映画だがその出来の良さからアボリアッツ国際ファンタスティック映画祭、フランス語ではle Festival international du film fantastique d'Avoriazというファンタジー映画やSF映画、オカルト映画、サスペンス・ホラー映画に特化したフランスのスキーリゾート地アヴォリアッツで開催されていたその映画祭でグランプリを取った映画だったが、2001年にハリウッドで『ダウン』というタイトルでリメイクされたあの映画だ!!!!」

幸子母「気がついたに決まってますわ! 『悪魔の密室』も『ダウン』もエレベーターが人を襲うというホラー映画ですけれど、今回はゴンドラをエレベーター仕様に装飾して登ったり降りたりしてみせるという演出に鳥肌がたちましたわ!! 乗っているのが輝子ちゃんで、小梅ちゃんはその周囲で楽しそうに踊るのも両映画でもあったシーンのインスパイアで、マイナーながらいいホラー映画を巧みにビジュアライズして、密室というキーワードから歌とからめるその手法には脱帽しすぎてもう脱ぐ毛もありませんことよ!!!」

※2人とも超早口です
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