アイマス×プラネテス

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27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/11(土) 17:06:31.98 ID:MbHh/3qi0
志保「夜空の星って、近いように見えても、実際はものすごく離れてるんですよね。」

あの宇宙で、ただ一人ひたすらに上を目指して進み続けた先の暗闇の中で、

孤独に耐えて輝き続けられる人だけがトップアイドルになれるんだろうか。

固い絆で結ばれているように見える765ASの皆もそうなのかもしれない。

地上にいる私たちからは隣り合って、星座を形作って夜空を彩っているように見えるけれど、本当は遠く離れていて、

一人一人がひとりぼっちでただ全力で輝いているだけなのかもしれない。そんなことを考えた。

春香「・・・どうかしたの?」

志保「実は、最近色々考えてたんです。」

仲良しこよしでなにができるのか。

その一瞬一瞬の自分の全力を出さずに回りと足並みを揃えて、一体どこにいけるというのか。

常に全力で進み続けて、古い自分を越えていく。そうでなくては上になんていけはしない。

余分なものを切り捨てて、ただ1つの目的のために作られたロケットのように進み続ける。

そうでなくては、第二宇宙速度を越えるエネルギーなんて出やしない。重力を振りきることなんてできないんだ。

でも、全てを捨てて辿りついた真っ暗な宇宙の中で、一体どうやって輝けばいいのか、分からなくなってしまったんだ。

千早さんのようになりたいと思っていた。なれる、とも思っていた。けれど自分は千早さんのことなんて何も分かっていなかったんだ。

目指していた姿を急に見失って、今まで自分がしてきたことが正しいのか、分からなくなってしまった。
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/11(土) 17:10:17.11 ID:MbHh/3qi0
>>26 ありがとう!
漫画のプラネテスも、レストPのアイドル・プラネテスも両方面白いのでお勧めです。

春香「志保ちゃん、志保ちゃんは今私たちがいるここは、どこだ思う?」

志保「ここ、ですか?駐車場ですよね?」

春香「ブッブー!不正解!」

志保「じゃあ・・・プロデューサーの車の前?」

春香「そうじゃなくて、もっと大きく考えて!」

志保「港区、ですか?」

春香「もっと!」

志保「東京都?」

春香「まだまだ!」

志保「日本?」

春香「いいね!その調子!」

志保「じゃあ・・・地球?」

春香「残念でしたー!正解は、宇宙です!」

志保「・・・はい?」

春香「志保ちゃんは、私たちが星みたいに遥か遠くの、宇宙にいると思ってる?

志保「・・・はい。」

春香「じゃあ、宇宙と地球の境目ってどこにあると思う?」

志保「それは・・・よくわかりませんけど。」

春香「私はね、境目なんてないと思ってるんだ。」

志保「え・・・?」
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/11(土) 17:11:39.38 ID:MbHh/3qi0
春香「無いんだよ、境目なんて。私も、志保ちゃんも、みんな宇宙の一部で、みんな繋がっているんだよ。

   私はそう思ってる。

   だからさ、志保ちゃんも勝手に壁なんて作らないで、ただ自分らしく頑張ればいいと思うよ。

   千早ちゃんみたいにはできなくても、きっと志保ちゃんらしさだって、他の人から見たら一番星みたいに輝いて見えるはずだから!」

どうかな?と照れ臭そうに笑いながら春香さんが言った。

志保「わ、分かりません。その、そんな風に考えたこと、今までありませんでしたから・・・」


春香「そっかぁ。まあまずは、もう一度よく千早ちゃんと向きあってみたらいいと思うよ。
   きっと今まで気づかなかった魅力を見つけられるよ!」

春香さんは嬉しそうにそう言った。
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/11(土) 17:14:12.70 ID:MbHh/3qi0
P「おう、お待たせ、二人とも。」

千早「見に来てくれてたのね。ありがとう、春香、北沢さん。」

春香「千早ちゃん!お疲れ様!ステージすごく良かったよ!」

志保「お、お疲れ様です、千早さん。」

P「よし、帰るか。みんな車に乗ってくれ。」


P「そういえば志保、少し、表情が柔らかくなったんじゃないか?何か心境の変化でもあったのか?」

運転席からプロデューサーが話しかけてくる。

志保「別に、心境の変化なんて言うほどのことじゃありませんけど・・・

   でも、そうですね、ちょっと今までの考え方を見直してみようかな、とは思えました。」

千早「そう、良かった。北沢さん、最近無理してるみたいだったから、心配してたのよ。」

助手席に座る千早さんがこっちを振り向きながら言った。

春香「ええー、千早ちゃんがそれ言う?」

私の隣に座る春香さんが、からかうように言った。

千早「何よ、それ、どういう意味?」

千早さんがむっとして聞き返す。

春香「だって千早ちゃんの方こそ、いつも無理ばっかりしてるじゃない。」

千早「そんなことないわよ。」

春香「新曲が出るたびに譜面を読み込むのに夢中で寝不足になったりしてるのに?」

千早「それは、だって仕方ないじゃない。練習しなくてもどうせ、気になってよく眠れないんだから。」

P「ハハハ。まあ、千早の場合は無茶してるように見えてもそんなに仕事に影響しないし、好きにやってくれればいいよ。

 最近は誰にも言わずに我慢したり、ため込んだりすることもないしな。」
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/11(土) 17:15:35.85 ID:MbHh/3qi0
志保「・・・あの、千早さんはどうしてそんなに歌のために頑張れるんですか?」

千早「そうね・・・昔の私なら、『私には歌しかありませんから』って答えてたでしょうけど、今は少し違うわ。」

千早「765プロのみんなも、39プロジェクトのみんなも大切な仲間だけれど、それとは全く別の所で、私は歌から離れられないのよ。」

千早「私ね、人にはそれぞれ、そこから逃れられない生き方、というものがあると思うの。」

千早「もちろん、そうとしか生きられない、という人もいれば、その方が自分らしくいられる、という人もいると思うけれど。」

千早「自分が正しいと思うことを主張せずにはいられない、沢山の人に自分を認めさせずにはいられない、周りを、みんなを愛さずにはいられない。」

千早「それは人によって色々だと思うけれど、きっと私は、自分の歌を磨き、高めていく以外の生き方はできないんだと思う。」
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/11(土) 17:16:31.96 ID:MbHh/3qi0
千早「だから、私はそのための努力を辛いと思ったことはないわ。自分がいるべき場所に行くためだもの。

   あなたも、自分の家へ帰るのに苦労したとしても、それを辛いとは思わないでしょう?」

志保「そうですね。千早さんにとって、歌はそのくらい大事なものだったんですね。」

P「まあ、でも、千早に歌の他にも大切なものができて、本当に良かったよ。事務所に入ってきたばかりの頃はどうなるかと思ったけどな。」

千早「そんなにひどかったですか?私。」

P「酷いというか、不安になったな。ああ、ほら、春香と二人で営業に行った日のことだよ。」
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/11(土) 17:17:53.42 ID:MbHh/3qi0
まだまだ二人とも駆け出しの頃の話だ。

確かその日は春香と千早とプロデューサーの俺で、朝から営業と挨拶回りに出ていた。

元々明るく人と話すことも苦手ではない春香はともかく、

千早はまだまだぎこちない営業スマイルを浮かべて愛想良く振る舞うことの連続でかなり疲れた様子だった。

P「二人ともお疲れさま。もうすぐ事務所だから、着いたら解散にしようか。」

本当なら事務所に帰った後にレッスンの予定が入っていたが、渋滞に巻き込まれ予定よりすっかり遅くなってしまったからだ。

千早「あの、少し練習していってもいいですか?」

帰りの車内でも疲れて口数が少なくなっていた千早がそう聞いてきて、正直驚いた。

すぐにでも家に帰って休みたいだろうと思ったのだ。

春香「え、千早ちゃん今からまだレッスンするの?」

と春香も驚いたように声をあげた。

出来れば一緒に練習していきたいけど、と残念そうに言っている。

P「ああ、別に構わないよ。でも春香はもう帰らないと、終電がなくなるだろ?」

春香「そうなんですよね・・・ごめん千早ちゃん、私はもう帰らなきゃ。」

千早「気にしないで。私がしたくてするだけだから。」

春香「そっかあ、でも無理しないでね?」

千早「・・・ええ、ありがとう、春香。」

そうこうしている間に事務所に到着した。

P「よし、二人とも着いたぞ。春香、お疲れさま。千早、俺はまだ事務所でしばらく仕事してるから、

 レッスン場は自由に使ってくれ。戸締まりは俺がしておくから終わったら勝手に帰っていいぞ。」

千早「ありがとうございます。」

春香「お疲れさまでした!お先に失礼します!」
春香「じゃあね千早ちゃん、また明日ー!」

千早「ええ、また明日。」
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/11(土) 17:18:51.32 ID:MbHh/3qi0
P「ふう・・・もうこんな時間か。」

仕事を一段落して、そろそろ帰ろうと思い、レッスン場の鍵を閉めに来たときだった。

P(ん?千早、まだ練習してたのか)

そろそろ帰るぞ、と声をかけようと中を覗いたが、そこで歌ってる千早の姿を見て、俺はそこから動けなくなった。

―なんて儚く、美しいんだろう。

自分が声をかけて、歌うのをやめてしまったらそのまま命の灯が消えてしまうのではないかと怖くなるほどだった。

まるで歌を歌うことでどうにか呼吸を続けているようだった。

千早「プロデューサー?」

こちらに気づいた千早に声をかけられて、我に返った。

千早「すみません、もう閉めますか?」

P「あ、ああ、いや、歌いたかったらもうちょっと使っててもいいぞ。」

千早「? 戸締まりをしに来たんじゃないんですか?」

P「ああ、いやまあ、そうなんだけど。」

千早「フフッ、なんですかそれ。珍しく歯切れが悪いですね。」

P「・・・満足できたか。」

千早「はい、ちょうどそろそろ帰ろうと思ってたんです。

   分からないところもでてきましたし、続きは明日、トレーナーさんと相談しながらにしようかと。」

P「・・・そうか、それなら良かった。」

千早「ありがとうございます。それでは、お先に失礼します。」

P「ああ、お疲れ。・・・気を付けてな。」

千早「?はい、プロデューサーもお疲れさまです。」
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/11(土) 17:19:53.69 ID:MbHh/3qi0
大好きな歌の練習を好きなだけやれたからだろう。

事務所に戻ってきたときよりむしろ元気になったように見えた。

前から千早の高い歌唱力を武器に売り出していこうとはおもっていたが、さっきの姿を見て、

絶対に千早を歌で食っていけるようにしてやらなければならない、と感じた。

彼女から歌を奪ってしまったら、一体どうなるんだろう。想像もしたくない。

そして同時に千早が765プロに入ってきてくれて本当に良かったとも思った。

彼女はアイドルとして売り出していくべきだ。

ただ歌を届けるだけではなく、さっきのような姿をもっと多くの人に見てもらい、もっと多くの人に愛されるべきだ。

『私には歌しかありませんから』

千早の言葉が思い返される。

最初この言葉を聞いたときは、自分には歌しか武器がない、という意味だと思った。

でもおそらく、本人も自覚していないかもしれないが、歌以外に一切興味がないことからでた言葉なのではないだろうか。

おそらく、歌が彼女にとってもっとも大切なものであるということは、これからも変わらないだろう。

それはそれで仕方ないし、いいことだと思う。

歌がもっとうまくなりたい、もっと自由に歌いたい、という望みにどこまでも懸命で貪欲で、ストイックなところに彼女の魅力があるのだろう。

しかしそれでも、アイドル活動を通して歌以外にも大切なものが増えていって欲しい、とそのとき俺は思ったんだ。
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/11(土) 17:21:09.32 ID:MbHh/3qi0
P「だからさ、最近千早が劇場で後輩たちと楽しそうにしてるのをみて、本当安心してるんだよ。」

千早「そうだったんですね。なんだかご心配をおかけしてたみたいで、すみません。」

P「そんな他人事みたいに・・・まあいいけど。」

春香「そうそう、千早ちゃんだってプロデューサーさんにいっぱい心配かけてるんだから、

   志保ちゃんも気にせず頼っちゃっていいんだよ。プロデューサーさんにも、私たちにも!」

千早「一番プロデューサーに迷惑かけてるのは春香じゃないかしら?」

春香「えー?何のことかなー?」のワの

志保「春香さんも昔何かあったんですか?」

P「まあまあ、それはまたいつか機会があれば話すよ。ほら、駅に着いたぞ。」

春香「あ!プロデューサーさん、ありがとうございます!」
春香「千早ちゃんお疲れ様!またね!」

志保「ありがとうございました。千早さんお疲れ様です。」

千早「ええ、二人とも、今日はステージを見に来てくれてありがとう。また明日。」
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/11(土) 17:22:10.54 ID:MbHh/3qi0
春香「今日は急に付き合ってもらっちゃってごめんね?どうだった?」

志保「いえ、そんな、すごく勉強になりました。誘っていただいてありがとうございます。」

春香さんが何かを待つようにこちらを見ている。

志保「明日からまた、頑張っていきます。自分らしく、無理せずに。」

春香「そっか、良かった!じゃあまたね、志保ちゃん!」

志保「お疲れ様です。ありがとうございました。」


目標のために、自分が大切だと思ってるものを切り捨てるのは、もうやめよう。

次に可奈に会ったら、お茶でもしながら今日見てきた千早さんのステージや、プロデューサーから聞いた昔の千早さんの話をしてあげよう。

きっと羨ましがるだろうな。

それから一緒にレッスンをしよう。そう、みんな一緒に。
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/11(土) 17:26:40.54 ID:MbHh/3qi0
苦悩や葛藤に比べて、それから解放される所って書くの難しいな。

志保が主人公なのか千早が主人公なのか分からなくなってきたけど、とりあえずこれで終わりです。

良かったら感想お願いします。。

「ちなみに歌うことでどうにか呼吸を続けているような」
っていうのは本多孝好の「dele2」の表現を使わせてもらいました。

千早に合いそうだなって。
そうでもないかな?
39 : ◆NdBxVzEDf6 [sage]:2020/07/11(土) 17:33:31.37 ID:eUcmsE3t0
一応調べたけど、プラネテスの知識なくても読める感じか
http://www.planet-es.net/
春香さんのアドバイス面白いね。乙です

>>2
如月千早(16) Vo/Fa
http://i.imgur.com/pKTzdjr.png
http://i.imgur.com/RFRxkra.jpg
http://i.imgur.com/NuWmxBo.png
http://i.imgur.com/cE68np1.jpg

北沢志保(14) Vi/Fa
http://i.imgur.com/gVLQiiV.png
http://i.imgur.com/ZNFva6G.jpg

矢吹可奈(14) Vo/Pr
http://i.imgur.com/x1Dioqg.png
http://i.imgur.com/kQHQF7j.jpg

>>18
天海春香(17) Vo/Pr
http://i.imgur.com/XT5uMBF.jpg
http://i.imgur.com/2cfYBmz.jpg
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/11(土) 17:37:47.79 ID:MbHh/3qi0
ああ、ごめん、クロスオーバーではないんだ。
紛らわしかったですね、ごめんなさい。

読んでくれてありがとう!
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/11(土) 17:44:15.16 ID:ZjsL4AKYO
ちはしほ良い
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/11(土) 17:47:15.78 ID:MbHh/3qi0
>>41

千早への憧れは静香の方が強いだろうけど、静香はこういう闇落ち(?)はしなさそうなんだよなぁ
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/12(日) 08:21:47.35 ID:B/7+OHFN0
人に読んでもらうのって難しいんだな

>>39
春香さんのアドバイスはプラネテスに出てくるユーリとネイティブアメリカンの問答と
ハチマキの「そうか、この世界に宇宙の一部じゃないものなんてないのか、
俺ですらも繋がっていて、それで初めて宇宙なのか」
っていう悟りから引用(?)してます。
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/12(日) 14:41:30.91 ID:PGYsOw7cO
初期沢かと思ったらすでに可奈呼びか
一匹狼部分が抜けきれなかったのかねぇ
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/12(日) 19:10:33.63 ID:B/7+OHFN0
>>44

可奈呼びになるのって結構精神的に成長してからなの?

劇場版とミリシタのイベントコミュとSSくらいでしかシアター組のことは知らないんだよなぁ
申し訳ない

できれば次ははるちはで書いてみたいと思ってる
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