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アイマス×プラネテス
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1 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/07/11(土) 16:30:46.22 ID:MbHh/3qi0
ミリマス×プラネテスのssです。
ニコニコ動画のアイドル・プラネテスにインスピレーションを受けて書いてみました。
初ssです。生暖かい目で見守ってくれると嬉しいです。
千早や志保の性格にかなり解釈違いがあるかもしれません。
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1594452646
2 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/07/11(土) 16:32:38.82 ID:MbHh/3qi0
千早「ええ、すごくよくなってきたと思うわ。」
志保・可奈「ありがとうございます!」
最近私たちはよく千早さんにレッスンを見てもらっている。
志保は事務所に入ってきたばかりの千早に似ている。何かあったら千早に相談するといい。
多分学べることは多いと思うぞ。
そうプロデューサーから言われ、千早さんにお願いしたらレッスンを見てもらえることになったのだ。志保ちゃんだけずるい!と言って可奈も一緒に見てもらうことになったのは予想外だったけど。
3 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/07/11(土) 16:33:19.56 ID:MbHh/3qi0
千早「それじゃ、私は次の仕事があるから、そろそろ行くわ。じゃあ二人とも、頑張ってね。」
可奈「えっ、あ、はい!ありがとうございました!」
志保「お忙しいのにありがとうございました。お仕事頑張ってください。」
千早「ええ、それじゃ。」
志保「やっぱり千早さんにレッスンつけてもらうのはためになるわね。」
可奈「そうだねー。でもやっぱり厳しいねえ。私もうへとへとだよ。
ねえ、志保ちゃん!帰りに新しくできた駅前のカフェに寄って行こうよ!」
志保「何言ってるのよ。ちょっと休んだらまた練習するわよ。教えてもらったことを忘れない内に復習しないと。」
可奈「ええー!?明日もレッスンあるんだよ?今日はもう十分やったよ、明日にしようよー」
4 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/07/11(土) 16:34:16.53 ID:MbHh/3qi0
正直、私ももう帰りたかった。今日は既に普段の倍は練習している。しかし・・・
『じゃあ二人とも、頑張ってね』
千早さんはそう言っていた。
『お疲れ様』でも『無理しないでね』でもなく、『頑張ってね』と。
きっと千早さんならまだ練習していくんだろう。
千早さんの普段の練習量はこんなものではないんだろう。
そう思うと、おちおち休んではいられない。
志保「そう、なら可奈一人で帰ればいいわ。私はまだ練習していくから。」
思わずきつい言い方になってしまった。
可奈「そ、そんな言い方ないじゃない。だって、今日は・・・」
志保「千早さんだって忙しいのに無理言って私たちのレッスンを見てもらってるのよ?
ちゃんとしないと、千早さんに失礼だわ。」
5 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/07/11(土) 16:34:59.80 ID:MbHh/3qi0
可奈「っ!もういい!志保ちゃんのバカ!」
志保「ちょっと、可奈!」
そう言って可奈は飛び出していった。
私は間違ったことは言っていないと思う。
でも、『だって、今日は・・・』の後、なんて言おうとしていたんだろう。
なんで可奈はあんなに怒っていたんだろう。
志保「・・・あっ!」
そうだ、今日は私の新曲の決定のお祝いで、新しくできたカフェでケーキを食べる予定だったんだ。すっかり忘れてしまっていた。
明日可奈に謝らなくては、と思うと同時に、それにしても自分の言い分は間違っていないのではないか、と思ってもいた。
6 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/07/11(土) 16:36:32.64 ID:MbHh/3qi0
―次の日―
志保「・・・可奈」
可奈「志保ちゃん」
志保「あの、昨日は」
可奈「昨日はごめんなさい!」
志保「え・・・?」
可奈「その、志保ちゃんの邪魔しちゃったから。
新曲の発表も決まってレッスン頑張ろうとしてたのに、あんなこと言っちゃって・・・」
志保「いえ、そんな私の方こそごめんなさい。昨日、本当は私のお祝いをしてくれるはずだったんでしょう?私すっかり忘れてしまってて・・・」
可奈「そんな、仕方ないよ志保ちゃん最近ずっと忙しかったし、頑張ってたもん!
昨日はあれからレッスンしていったの?」
志保「ええ、そんなに遅くまでじゃなかったけど・・・」
可奈「そっかあ、やっぱりすごいなあ志保ちゃんは。」
可奈「・・・私ね、やっぱりこれからは千早さんとのレッスンに参加するのはやめておくよ。」
志保「え・・・?そんな、どうして?」
可奈「やっぱり、足手まといだなあって。私は志保ちゃんや千早さんみたいにストイックにはなれないし。」
志保「そう・・・強制はできないものね。ええ分かったわ。」
可奈「ごめんね?志保ちゃんのことは応援してるよ!頑張ってね!」
志保「ふふ、ええありがとう。」
7 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/07/11(土) 16:37:50.24 ID:MbHh/3qi0
千早「今日はこのくらいにしておきましょうか。お疲れ様。」
志保「・・・いえ、私はまだ大丈夫です。」
千早「そうかしら。私にはもうかなり疲労が溜まってるようにみえるわよ。集中力も切れてきてるし。さっきの通しで注意した所、今の通しで直せてなかったでしょう?」
志保「それは・・・」
千早「闇雲に練習したって上達はしないわ。休むことも大切よ。
志保「はい、すみませんでした・・・」
千早「じゃあ、また今度ね。」
志保「あの、どうやったら千早さんみたいに最後まで集中してレッスンできるんですか?」
千早「え・・・?そうね、やっぱり気力だけではどうにもならないし、質の高いレッスンを長時間するには基礎体力が必要だと思うわ。」
志保「基礎体力、ですか・・・」
千早「ええ、例えば私は腹筋とランニングは毎日するようにしてるわ。」
志保「え、毎日ですか!?お仕事と、自主錬をやった後で!?」
千早「ええ、もちろん。」
志保「雨の日も?」
千早「ええ、台風や大雨の日はやらないけれど。」
志保「どうしてそこまで頑張れるんですか?」
千早「・・・そこまで、ってどこまでのことか分からないけれど、歌はわたしにとっての全てだから、歌の上達のためなら、私はなんだってするわ。」
8 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/07/11(土) 16:39:14.12 ID:MbHh/3qi0
志保「はあっ、はあっ」
千早さんと別れて家に帰った後、私はランニングに出かけていた。
足が痛い、胸が苦しい。でも
『痛くても苦しくても、それは足を止める理由にはならないでしょう?』
きっと千早さんならそう言うだろう。
余計な事は考えるな。ただ片方の足で地面を蹴って、もう片方の足を前に出す。
目的のためにやるべきことをやるんだ。
9 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/07/11(土) 16:40:06.38 ID:MbHh/3qi0
可奈「志保ちゃん、最近無理しすぎじゃない?」
仕事の後、残ってレッスンをしていこうとしている私に、可奈がそう声をかけた。
志保「大丈夫よ。全く無理なんてしてないから。」
可奈「でも、顔色悪いよ?昨日も仕事の後残ってレッスンしてたし・・・今日はもう帰らない?帰りに何か甘いもの食べていこうよ!」
放っておいて
志保「心配しないで、わたしはこのぐらい、なんともないから。」
可奈「でも・・・」
志保「・・・」
可奈「そっか、分かった。でも何か辛いことがあるならなんでも相談してね!じゃあまた明日!」
志保「・・・ええ」
10 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/07/11(土) 16:41:35.87 ID:MbHh/3qi0
劇場に一人残り、レッスンをしていると、さっきの可奈の言葉を思い出した。
『無理しすぎじゃない?』
志保「無理、ですって?」ボソッ
無理なことなんて私には何一つないのよ。
トップアイドルになるためならなんだってするわ。他には何もいらない。
あなたたちみたいに遊んでる場合なんてないの。私はあなたたちとは違う。
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/07/11(土) 16:43:12.87 ID:MbHh/3qi0
志保「ふう、よしっ。」
レッスンを終え、少し休憩して帰り支度をしていると、プロギューサーがやってきた。
P「お疲れ、頑張ってるな。」
志保「プロデューサー。」
P「あまり根をつめすぎるなよ、って、言っても無駄か。」
志保「別に、このぐらい何ともないですから。」
P「ふーん?まあ、お前はそう言うだろうな。」
よっこらせ、と言いながらプロデューサーはレッスン場の床に腰を下ろした。
P「・・・初めて見たときから一生懸命で、まるで回り続けてないと倒れてしまう独楽みたいなやつだな、って思ってたよ。
でもな、一人で回り続けられる時間なんて、たかが知れてるんだ。本当に強いのは、歯車みたいなやつだよ。
他人からエネルギーをもらって、自分も他の誰かを回してやる。そんな風に周りと支えあったほうが効率的だろ?」
志保「・・・ご心配なく、私は止まったりなんかしませんから。」
P「でもなあ・・・」
志保「アイドルになれただけで満足しているような人達と足並みを揃えて、一体どこに行けるっていうんですか?」
そうだ、私はトップアイドルになりたいんだ。千早さんや、他の765ASのみんなみたいに。今の私にとっては、それこそ星のように遠い存在だ。そんな人達に追いつくには、生半可な覚悟ではいけない。本気で努力しなくちゃ。余分なものは切り捨てて、ただ一つの目的のために進んでいく。そう、ただただ上を目指して、宇宙に向かって飛んでいくロケットみたいに。そうしないと、星々の高みになんて手は届かない。
P「・・・志保、やっぱりお前無理してるだろ。千早と一緒にレッスンするようになってからか?お前、普段千早とどんな話をしてるんだ?」
志保「別に、プロデューサーには関係ないでしょう。それに私は無理なんてしてません。」
P「関係なくなんてない。千早にレッスンを見てもらった方がいいと言ったのは俺だからな。」
志保「そういえばそうでしたね。プロデューサーの判断は間違ってないと思いますよ。それじゃあ、私はもう帰ります。お疲れさまでした。」
P「あ、おい志保!」
12 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/07/11(土) 16:44:43.83 ID:MbHh/3qi0
バタン
P「ったく・・・」
志保は入ってきたばかりの千早と、向上心が強いところはよく似ている。
しかし、千早は自分がやりたいことに貪欲だったのに対して、志保は仕事なのだからこうあるべき、
というプロ意識が高すぎるように感じた。
それは決して悪いことではないが、周りと打ち解ける妨げになるかもしれないし、
常にあの調子では本人だって疲れてしまうだろう。
そう思って俺は千早とレッスンすることを進めたのだ。
千早が765プロに入ってきたばかりの頃のことを思い出す。
13 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/07/11(土) 16:46:37.22 ID:MbHh/3qi0
P「あのさ、千早は歌が好きなだけでアイドル活動にはそんなに興味がないことは分かってるよ。
でも、うちはアイドル事務所だからさ、千早がどれだけ歌で勝負していきたいって言ったって、
あくまでアイドルとして売り出していくしかないんだって。それは千早だって了承してくれてただろ?」
千早「もちろん、アイドルとして活動していくことは承知しています。でも、私は別にトップアイドルを目指すつもりはありませんから。」
千早が、何か文句でもあるんですか、とでも言いたげにぶっきらぼうに言い放つ。
P「別にアイドルとして頂点を目指せ、と言ってるわけじゃないよ。
でも、なら、歌以外の能力を伸ばさずに、アイドルとして成功できると証明できるか?
できないよな?それができるなら他の芸能事務所で歌手としてデビューしてる、そうだろ?」
千早が不快感をあらわにしてこちらを睨んでいる。
けど、千早のためにもこれははっきりさせておかなければならないだろう。
P「アイドル活動には興味がないが、アイドルとして活動する中で歌の技術を磨き、歌の仕事をしていきたい、という千早のスタンスも分かってるよ。
でもこっちだって慈善事業じゃないんだ。アイドルとして仕事ができる見込みのないやつを養成することはできない。
まずはアイドルとして一人前になってくれよ。そうすれば、そっちの要求も呑んでやれる。」
歌のレッスンを人質に取られているようなものだ。不服でも従う他ないということは理解しているのだろう。
千早「・・・はい。」
そういって千早は渋々ながらも頷いていた。
14 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/07/11(土) 16:48:20.27 ID:MbHh/3qi0
こういうところは志保とは正反対だ。
今でこそ千早は、ある程度のことを高いレベルでこなせて頼りになるしっかりした先輩、
という風に見えているかもしれないが、その根底にあるのは今でも変わらず、『歌のためならなんでもする』というスタンスだと、俺は思っている。
志保にも『仕事だから』『プロとして』ではなく、そういう自分のわがままのために頑張るという姿勢も身に着けて欲しいと思っていた。
なのに・・・
P「思った通りにはいかないもんだな・・・」
15 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/07/11(土) 16:50:55.62 ID:MbHh/3qi0
家に帰ってから、いつものようにランニングにでかける。
志保「はあっ、はあっ」
暗い夜道で、自分の荒い息遣いだけが聞こえる。
景色は見ない、足を止めたくなるから。
余計なことは考えない、前に進めなくなるから。
必要なのは、目的に向かって突き進む覚悟と、
その障害になるものは全て乗り越える、という燃えるような闘志だけだ。
プロデューサーが言っていたことを思い出す。
みんなと支えあう?
くだらない。私だって、一人になりたいわけじゃない。でも、それじゃ届かないんだ。
重力を振り切って上へ上へ進んでいくには、余分なものは切り捨てないと。
私は一人でだってこの暗い道を進んでみせる。仲良しこよしは自分の人生を生きる度胸のない人の言い訳だ。
いつだって最前線を生きている人が、車を作り、ロケットを作り、そして未来を作ってきたんだ。
16 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/07/11(土) 16:52:05.79 ID:MbHh/3qi0
志保「ケホッ、ゴホゲホッ」
考えながら走っていたら、いつもより走りすぎてしまった。息が苦しい。
志保(今日はもう寝ましょう。明日は休日だし、起きたらシャワーを浴びればいいわ。)
気付けば真っ暗な闇の中に私は立っていた。
志保「ここは…?皆はどこ?」
?「ここには誰もいないわよ。」
聞き覚えのある声が聞こえて、後ろを振り返った。
志保「私…?」
志保?「そうよ、当たり前じゃない。ここには私しかいない。
あなたが望んだんでしょう?
友達も仲間もいらない。余分なものを切り捨てて、たった一人で誰よりも、どこまでも高みに昇っていくって。」
目の前に立つ自分自身の問いかけに、私は応えた。
17 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/07/11(土) 16:53:45.59 ID:MbHh/3qi0
志保「・・・そうよ、私は望んだ。楽しいだけの仲間なんていらない。心地いいだけのぬるま湯なんていらない。
暗く冷たい宇宙を突き進んでいくロケットのように、私は一人でだろうとただひたすらに上を目指すって決めたから。
だって、そうじゃないと星の高みになんて手は届かないから。
だって、そうでもしないとあの人みたいになんて 、なれないと思ったから。」
でも、こんなところで私は輝けるの?
こんなところで、一人きりで・・・
気が付くともう一人の私は消えていて、無性に心細さを感じて辺りを見渡すと遠くに千早さんの背中が見えた。
志保(良かった、まだ千早さんは私の前にいるんだ)
遠くを走る千早さんに必死に追いつき、声をかけた。
志保「千早さんっ・・・ッ」
でも振り返った千早さんの顔を見て、私はぎょっとした。
そこには見馴れたいつもの千早さんの笑顔はなく、真っ暗な空洞があるだけだった。
18 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/07/11(土) 16:55:05.82 ID:MbHh/3qi0
志保「ハッ」
気付けば見慣れた自分の部屋の、昨晩ランニングから帰ってきて倒れこむように眠ったベッドの上だった。
目が覚めても、心臓の鼓動が収まらなくて、息が苦しい。
昨日の夜ランニングウェアから着替えたのに、また汗がベッショリして気持ちが悪い。
ふと携帯電話に目をやると、着信が入っていた。春香さんからだ。
着信時刻は朝の8時で、今はなんと昼の12時を回っている。
Prrr
春香『はい!春香です!』
志保「あ、春香さん、おはようございます、北沢です。すみません、朝は電話でれなくて。」
春香『あ、志保ちゃん?ううん、こっちこそ朝からごめんね。今は電話大丈夫?』
志保「はい大丈夫です。何かご用でしたか?」
春香『ううん、用ってほどのことじゃないんだけど、ちょっと話したいことがあって。
志保ちゃん、今日空いてる?』
19 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/07/11(土) 16:57:07.93 ID:MbHh/3qi0
春香さんに誘われて行ったのは、千早さんが出演する音楽イベントだった。
春香「あ!ほらもうすぐだよ、千早ちゃんの番!」
志保「そうですね・・・」
春香「どうしたの?なんだか元気ないみたいだけど・・・」
志保「いえ、そんなことは・・・」
正直、あまり気は進まなかった。
今朝の夢のせいだろう。今までよく知っていると思っていた千早さんのことがよくわからなくなってしまった。
今千早さんのステージを見ても、私は今までのように感動することができるのだろうか。
志保「あの、今日はどうして私をここに誘ってくれたんですか?」
春香「実はプロデューサーから、志保ちゃんが何だか悩んでるみたいだって聞いてね。
千早ちゃんのライブみたら元気になるかなって。」
志保「・・・ありがとうございます。でも。私は・・・」
でも私はもう、自信がないんだ。私はあの人みたいにはできる気がしない。
私にはもう、あの人についていくことは、あの人の背中を追いかけることは、多分できない。
そう言おうとした私の言葉は歓声によってかき消されてしまった。
千早さんがステージに登場したのだ。
春香「あ!始まるよ!」
20 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/07/11(土) 16:59:04.81 ID:MbHh/3qi0
千早さんがマイクの前に立ち、音楽が流れ始める。曲は「蒼い鳥」だった。
今更観客として千早さんのステージを見ても・・・
そう思っていたが、彼女が歌い始めると、私はステージから目を離せなくなっていた。
志保「・・・すごい。」
それしか言葉が出てこなかった。歌がうまいことはわかっていたけれど、歌っている千早さんはこんなに綺麗だったのか。
群れを離れた鳥のように
明日の行き先など知らない
だけど傷ついて血を流したって
いつも心のまま ただ羽ばたくよ
光り輝くステージに立っているのにまるで一人暗闇に取り残されているような悲しさと、その中で毅然と立っている力強さが対照的だった。
何より千早さんの歌い方が・・・
「まるで歌うことでどうにか呼吸を続けてるみたいだろ?」
気付くと、隣にプロデューサーが来ていた。
P「劇場で歌ってるようなポップな曲も歌えないことはないけどな、こういう曲を歌ってる千早は、結構すごいぞ。」
プロデューサーの言葉通り、私はもうステージの千早さんから目が離せなくなっていた。
21 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/07/11(土) 16:59:54.54 ID:MbHh/3qi0
最初の曲が終わり、次の曲が始まる。「arcadia」だ。
一転して激しい曲調の音楽が流れ始める。
翔べ
海よりも激しく
山よりも高々く
今
私は風になる
夢の果てまで
まるで命を削って歌っているみたいだと思った。
どこまでも進んでいけるような力強さの中の、どこまで行っても振り払えないような寂しさ。
でも、それでもきっと千早さんは進んでいくんだろう。そう思った。
22 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/07/11(土) 17:01:14.56 ID:MbHh/3qi0
誰も見てくれてる人いないのか・・・
書き溜めてあるのでこのまま投下していきます。
23 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/07/11(土) 17:02:11.54 ID:MbHh/3qi0
春香「どうだった?」
千早さんのステージが終わって、春香さんがそう尋ねる。
プロデューサーはいつの間にかいなくなっていた。
きっと千早さんを労いに行ったのだろう。
歌によって生かされているような儚さも、命を燃やして歌っているような苛烈さも、どちらもとても千早さんらしくて、とても美しい歌声だった。
志保「・・・凄かったです。まるで、歌うことで自分の在り方を魅せているみたいで・・・」
そうか、だから千早さんの歌はこんなにも聞く人を揺さぶるのかもしれない。
志保「何というか、そのロケットみたいだなって。」
春香「ロケット?」
志保「その、暗闇をたった一人で突き進んでいく感じというか。余分なものが一切なくて、たった一つの目的のために洗練されている感じというか。」
そして自分はそれを地上で見ていることしかできない所も、とは口には出さなかった。
24 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/07/11(土) 17:03:20.54 ID:MbHh/3qi0
春香「ああ。そうだね確かに。」
春香さんが、うんうん、と頷く。
春香「千早ちゃんにとって、きっと歌うことと生きることは同じなんだよ。だから千早ちゃんの歌はあんなに純粋で、あんなに綺麗なんじゃないかな。」
そうか、そうかもしれない。
でも、やっぱりそれなら自分には無理だ。私にはそんな生き方はできなかったんだから。
Prrr
春香「あれ?メール、千早ちゃんからだ。」
春香「アンコール無しでもう終わりだって。混まないうちに外、出よっか。」
25 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/07/11(土) 17:04:17.88 ID:MbHh/3qi0
春香「ふー、外涼しいね。」
志保「・・・そうですね。」
もう少し待っていればプロデューサーが千早さんを事務所に送るついでに私たちも乗せていってくれるらしく、
私たちは今関係者用の駐車場で二人を待っている。
春香「あ!志保ちゃん見て!星、すっごくキレイだよ!」
春香さんが夜空を見上げて指を指した。
私もつられて上を見上げる。薄暗い駐車場だからだろうか。
都会だというのに、空には多くの星が輝いていた。
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