貴方「僕がヒロインを攻略するまどか☆マギカ…オカルト?」マミ「それは終わったわ」

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772 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/06/20(日) 19:54:49.09 ID:hY/gRfvi0
遅くなりましたが『続々』終了おつかれさまです。

あすみとなぎさの関係やっぱり強い感じですね。
さぎさは神様がいなくても頑張ってますし、あすみもマミも事も一応認めたとかあすみ編のときよりも若干まるくなってうかな?


自分も続きを希望しますが、次は原作時間軸かな?
773 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/20(日) 20:31:46.06 ID:e1CGrOq+o
おつ
実はそろそろ安価に戻りたい
774 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/21(月) 08:39:24.53 ID:h0QDMqAQO
あすみVSなぎさってマミを助ける前の模擬戦のことか
続きの前にそのカットされた模擬戦を見たいね
775 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/22(火) 00:27:04.96 ID:FZ0SctsH0
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日付変わってた。今日はもう寝よう…
次回は22日(火)夜の予定ですー、おまけからで。
776 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2021/06/22(火) 02:54:16.91 ID:BgKaeewY0
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777 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/22(火) 23:09:59.90 ID:FZ0SctsH0
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おまけ * あすみとなぎさの模擬戦のようす
>>755 あたりの二人のほうの視点
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 人目につかない訓練場所。

 いつもなら私の代わりにこの場にいたマミがまだ来てないから、この場所はいつになく静かだった。


 両者ともにまだ動きはない。


あすみ「で、合図は? こっちはいつでもいーよ」


 余裕を醸し出して笑む。

 私もなぎさも素早さに自信のあるタイプではないが、わずかでも先行して動けたほうが有利なのは変わらない。

 ただ、余裕がないと思われるのは癪だった。……いまさら、こいつ相手にそんなこと気にする意味もないかもしんないけど。


なぎさ「なんだか余裕そうなのです! これは今のところ模擬戦不敗のなぎさも負けてはいられませんね」


 それに対するなぎさの調子はいつも通り。


 ――これまで一緒に魔女や不届き者と戦ったことならあったが、武器を構えて向かい合うのは初めてだった。

 特訓と言うが、マミが来るまでの暇つぶしの一つだ。マミの面倒を見るのは興味がないが、なぎさとだったらやってみてもいい。

 戦いは好きだし得意なほうだと思ってる。私のほうは、もちろん“模擬戦”なんて初めてなんだけど。


なぎさ「それならふかーく息を吸い込んで……1,2の3ではじめるのです!」


 カウントがはじまる。

 きっかり三秒―――ののち、虹色をした小さな球体が視界を飛び回って吹き出してきた。


あすみ(へえ、こんなに出せるようになってたんだ……ちょっと驚き)


 数は多いがシャボンの一つ一つは小さめで、魔力に任せた物量作戦というわけでもないのだろう。

 そのシャボンができるだけこちらに届かないうちに、踏み出した勢いを止めることなくなぎさとの間合いを詰める。

778 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/06/22(火) 23:28:26.86 ID:6DKrrd4Y0
なぎさは遠距離、あすみは近距離型。
互いにシャボンと鎖で牽制が可能だしこの2人が組むと普通に強いよね
779 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/23(水) 21:57:37.45 ID:+atVmq5q0


 虹色に包まれた幻想的な景色を突き進む。


あすみ(勝負を仕掛けるなら――このタイミング!)


 途中で足を止めて鉄球を振りかぶると、破裂音とともに虹色は破れ、空気を裂くように鋭く正面へと鎖が伸びていく。

 小さく密度の高いシャボンは相手に届かせることを重視した牽制だろう。攻撃の勢いまで防げるものじゃない。

 一度勢いをつければ私が足を止めても鉄球は加速したまま前へ進む。うまくいけば一発で拘束を決めることもできるかもしれない。


 どうせシャボンはこれから増える一方。鉄球が当たれば簡単に破れるとしても、妨害にはうってつけの武器だ。囲まれるのは厄介。


あすみ(……なら、速いうちに)

なぎさ「あわわっ、思ったよりも強引に突破してこれるんですね〜……!?」


 なぎさは飛び退いて避けると、こちらに向けていたシャボンをその場に留めて守りを固め、さらにシャボンを追加してくる。

 さっきと同じ小さいシャボン。これならまだ次を打てる。


 そう思った瞬間、周りのシャボンが次々と弾けていく。小さいけれど、鎖を巻き込んで爆発されると狙い通りの軌道にならない。

 ……正直ちょっと、油断してた。鎖の軌道を曲げるほど的確に位置やら弾けるタイミングやら調整できると思ってなかったから。


あすみ「ま、こんなに早くは決まらないか」


 武器を引いて鉄球を戻す。その過程でもできるだけシャボンは破って“道”を作る。ますます囲まれたら厄介ってわかったし、それだけでも収穫としておこう。

 そして、鎖を巻取り――――鉄球が柄の先にカチリとはまる音がした。

 離れた位置から狙うには繊細なコントロールが必要だ。だったら、さらに自ら距離を詰めればいい。フレイルは最後の一手のためにとっておく。


あすみ「インファイトのがやっぱ燃えるでしょ?」


 さらに踏み込む。勝つのに必要なのは、自分のペースを作ること。

 それはなぎさにとっては相手をできるだけ多くのシャボンで囲って安全な位置まで遠ざかること――私は逆だ。

 中距離くらいまでなら戦えるが、なぎさの得意としてない接近戦に持ち込んだほうが隙は突ける。


 もちろんシャボンにも囲まれやすくはなる。でも、こんなのちまちまと破ってたらいつまでたっても勝てない。

 この戦い、長引かせたほうが不利になるのは最初に思った通りみたいだから。


あすみ(――それにしても)


 ――戦術を考えながらふと思った。いつもなら『聞こえてくるもの』が今はない。

 いくら遊びったって、『ミスしろ!』くらい思ってもいいもんなのに。


あすみ(久しぶりに静かな戦いだな)


――――――
780 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/06/23(水) 22:02:53.10 ID:QOhlLJQL0
なぎさにはあすみへの悪意がないわけだから、あすみの固有魔法は発動しないのは当然か。
781 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/23(水) 22:11:33.35 ID:VF64MWBbO
ここでなぎさがトランペット超音波出したら意表をつけそうだな
あすみが超音波知らなければだけど
782 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/23(水) 23:05:58.21 ID:+atVmq5q0
――――――



 シャボンを敷き詰めて遠ざけるつもりが予想に反して、あすみはこちらへ急接近してきました。

 鎖のないモーニングスターを携えて。


あすみ「インファイトのがやっぱ燃えるでしょ?」


 ……いや、やっぱりこういう大胆な戦い方があすみらしいのかもしれません。

 とはいえ、接近戦の間合いに入られるといくらか焦ります。新しくシャボンを出して位置を調整するのにも時間はかかるわけですし、戦いづらいのです。

 あすみとの間にあったシャボンはいつのまにかキレイに消されています。


 あすみはダイナミックにバトンでも扱うかのごとく鉄球を振り回します。

 攻撃に巻き込まれたシャボンはあっけなく破られ、避け続けるのは長くは持たないでしょう。さっきみたいに鎖を狙って軌道を曲げることもできません。


 どうやらなぎさは、このままではちょっとまずい状況のようです。ですが、このままでいる気もありません。


なぎさ「いーえっ――悪いですが、それはおことわりなのですっ!」


 重い武器を振りかぶるタイミングを見計らって、脇をすり抜けます。

 懐に潜り込むというのは一番に接近する瞬間でもあります。あすみもむしろ、このタイミングは狙ってくるでしょう。

 同時になぎさはいっぱいに息を吹き込み、いつもの笛の音とともにシャボンの嵐を吹かせます。……これを至近距離で聞かせるのも、もしかしたら集中妨害になるでしょうか。


 重い武器を振るうのはただでさえ体制を崩しやすい瞬間。なぎさの狙い通り、足元で起こった『小さな衝撃』にあすみはバランスを崩します。


あすみ「なっ……!」


 最初のよりもさらに小さいシャボンを混ぜたのです。威力はありませんが作るのも狙った位置にすぐに届かせられますし、注意をそらして忍ばせやすいのです。


 それに……怪我をさせるほどの威力がないからこそ、安心してぶつけられます。

 さすがのあすみもこんな小さなシャボンにやられるとは思っていなかったでしょう。

 今まで手早さ重視の小さいシャボンしか作っていませんでしたが、やっと人一人覆えるくらいの大きなシャボンを作る暇ができました。


なぎさ「これでかくほ! なのです!」

あすみ「…………あーあ、参りました」



 あすみは負けても余裕そうでした。そこになんだか安心します。

 ――――こうしてあすみとの初めての勝負は決着がついたのでした。

783 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/06/23(水) 23:18:27.44 ID:QOhlLJQL0
なぎさ、こうやって勝ったのか。
あすみはちょっと油断してたのと悪意が聞こえないので少し調子が狂ったかな?
784 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/23(水) 23:48:43.59 ID:+atVmq5q0


あすみ「接近戦に持ち込めれば勝てると思ったのになぁー」

なぎさ「そういえば、あすみはさっきの戦いでも心を読んでたのですか?」

あすみ「……いや。そんな手もあったね。でもそんなヒマなかったよ」

なぎさ「意外と集中力が必要だったりするのです? 最後のは割と思いつきでしたが、それでもあすみなら途中で読めてれば対応できた気もするのです」

あすみ「買いかぶり過ぎじゃない?」

なぎさ「そうでしょうか?」

あすみ「まあ、読むのはやろうと思えばできたかもね。……勝手に読めるのは悪意だけ。いつもはそれで十分だから」


 あすみもさすがにあの棘鉄球で殴ろうとしてたわけじゃありませんし、余計に大ぶりに動く必要があったのも見て取れました。

 きっと、本当はあすみにとっては殴り倒す戦いのほうが早いのでしょう。


 ……でも、これは特訓なのです。お互いに。


あすみ「ていうかまだあいつ来ないじゃん。また暇になっちゃったね」

なぎさ「そうですね……ちょっと遅すぎるのです。家に行ってみませんか?」

あすみ「えー、私は別に」

なぎさ「そんなこと言わずに! なぎさのほうが勝ったんですし、ちょっとくらいわがまま聞いてくださいなのですよ!」

あすみ「そんな約束してないし。……はあ、しょうがないな。確かにこれはなんかあったかもね?」

なぎさ「な、何かあったら困るのです! マミ、今迎えに行くのですよ!」


―END―

>>761に続く…
785 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/23(水) 23:52:05.98 ID:+atVmq5q0
---------------------
ここまで
次回は26日(土)夜からの予定です。
786 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/06/23(水) 23:58:23.23 ID:QOhlLJQL0
乙です。

次はあすみ・なぎさコンビの続きですかね?
またあすみにキリカが傷物にされて織莉子はしばかれるのか・・・w
契約しなかった杏子が再登場してくれたらうれしいかも。
787 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/26(土) 21:02:45.04 ID:YdAb+cdf0
――――――――――――――――――
――――――――



 そういえば、いつ何をきっかけで知ったのかすらもう覚えていないものが多いのですが……。

 長いこと魔法少女をやっているなら知っていて当然の知識というものがいくつかあります。

 最初の頃は魔法少女はなぎさ一人だったのでそういうのに疎く、あすみに世間知らずだってばかにされることも多かったのですが。



なぎさ「あすみは『ワルプルギスの夜』って知ってますか?」

あすみ「……何、どうしたのさ急に?」


 これもいつかの会話。

 みんなが揃ういつもの訓練場所で、ふと口にしたことでした。


なぎさ「あ! あすみもこれは知らないのです?」

あすみ「知ってるよ。結界を持つ必要がないくらい強い超弩級の魔女――とかいうやつのことでしょ」

なぎさ「なーんだ、やっぱり知ってたのですね」

マミ「私は聞いたことないんだけど、そんな魔女がいるの?」

なぎさ「噂ですけどね。過去に世界で起きた大災害がホントはこれの仕業だって……ホントなんですかね」

あすみ「さあね。私はキュゥべえから聞いたし存在自体は疑ってないけど、どれがそうだってのは眉唾だよ」

なぎさ「じゃあワルプルギスの夜の弱点って知ってます?」

あすみ「それは知らないけど」

なぎさ「実は…… 」


 そう言って溜めると、二人は食いついてきました。


なぎさ「なぎさも知らないのです!」

あすみ「はぁ〜、呆れた。昼寝するから起こさないでくれる?」

マミ「……訓練、再開しましょうか」

なぎさ「いや、そんなにがっかりさせる気はなかったのですよ!? みんなで考えてみたら面白いかなって!」



 ……これが『こわいはなし』なら怪物の弱点までセットになっていることは珍しくはありません。

 今まで戦ってきた魔女も、どれだけ強い敵だと思えても探ってみれば弱点があったりしたのです。




――――――――――――――――――


 最終・なぎさとあすみの見滝原


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788 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/06/26(土) 21:59:21.24 ID:sKOM2Egb0
ワウプルギスの名前が出たと言うことは原作時間軸に突入ですね。
あすみはまだ野宿してるのかな?
789 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/26(土) 22:51:36.23 ID:YdAb+cdf0


*「なぎさちゃん、これからわたしの家で遊ばない? **ちゃんと***ちゃんも来るって」

なぎさ「ごめんなさい、今日も予定があるので」


 ――――今日も学校での一日が終わりました。

 せっかくのお誘いですが、今日もお断りの返事をかえします。


*「ああ、それならいいの。なぎさちゃん忙しそうだもんね」

なぎさ「また休みの日にでも!」


 予定とはもちろん訓練のことです。マミと出会ってからずっと続けてきたそれは、今でももちろん続いています。

 それに今はあすみもよく訓練場所に来てくれるのです。

 学校のお友達と遊ぶことは少なくなったものの、みんなで一緒にいる時間はなにより安心する時間になっていました。


 この見滝原の街にあすみがやってきて、マミと仲良くなって――――あれからなぎさたちはほとんど変わらない毎日を過ごせています。

 しかし、今までであった魔法少女はそれだけではありませんでした。


 縄張りを奪おうとする魔法少女。ちょっとだけ話すことのあった他の町の魔法少女。それに、守れなかった新しい魔法少女。

 訓練にさそったりしてみても、考え方の違いでそれを拒まれたり、最初のうちは来てくれてもいつのまにか来なくなることもありました。

 その結果が、今の『変わらない毎日』になっているのです。


なぎさ(あれ? マミからメッセージが……)



 そして今日、久しぶりにその日々が少し変わりそうな予感がしました。


790 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/06/26(土) 23:32:32.72 ID:sKOM2Egb0
いきなりまどかとさやかを助けてほむほむと遭遇した知らせかな?
もしくはあすみが危険な存在(キリカ)を連れてきたとか?
791 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/26(土) 23:40:09.89 ID:Fxizy5N8O
あすみ・なぎさ・マミと戦力的にはそうそう引けを取らない面子だよな
なぎさとマミが魔女化の事とか知らないのは不安要素だけど
あとそろそろ安価欲しいね
792 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/27(日) 00:20:31.88 ID:y9P6nhPt0
――――
訓練場所



 訓練場所にやってくると、マミの隣に見知らぬ人がいることに気づきます。

 マミと同じ制服。きっと見滝原中学校の生徒なのです。


なぎさ「マミ! メッセージに書いてあった子って……!」

マミ「ええ、この子よ。今朝契約したんだって。学校で会ったの」

まどか「はじめまして。わたし、鹿目まどかっていうの」

なぎさ「よろしくなのです! マミ、後輩ができましたね!」

マミ「え、ええ。そうね」


 まだ挨拶だけですが人当たりの良さそうな人です。これからも一人で危ないことをせず、訓練に来てくれるといいのですが……。

 すぐに来てくれなくなったりした人のことを思うと不安もあるのです。

 その人たちが全員どうなったかは知りません。会っていませんから。でも、表向きに『行方不明』となってしまった人もいました。


なぎさ「まどか、魔法少女のことはキュゥべえやマミからどのくらい聞いていますか?」

まどか「魔女と戦わなくちゃいけないってことくらいかな。まだ魔法も使っていからワクワクしてるの!」

マミ「自分の衣装が気になるって言ってたわ。まずは変身してみましょうか。私も初めてのときはいきなりで戸惑ったから」

なぎさ「そうですね! なぎさもまどかの変身した姿気になりますし!」


 まどかはマミと違って怖がったりするよりも、希望でいっぱいみたいです。なぎさも最初の変身のときはワクワクしたことを思い出します。

 まず変身してもらったり、魔法の力でできそうなことを一通り披露してもらっていると、奥の木陰のほうからあすみがこちらを覗いていたことに気づきます。

 多分訓練がはじまるより前に来ていたのでしょう。そういうことも多いみたいですから。

793 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/27(日) 00:26:01.79 ID:oZjs2SHsO
いきなりまどか契約してて草w
このまどかが最初のまどかならまだ大丈夫なんだが
794 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/06/27(日) 00:30:47.61 ID:Ot4TgdU50
>>793
ほむらがメガほむならまだ手遅れじゃないんですけどね・・・
あすみが木陰からジッと見てるのが不安感バリバリで怖い・・・

>>まだ魔法も使っていからワクワクしてるの!

まだ魔法も使っていないからワクワクしてるの!、かな?
795 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/27(日) 01:03:18.40 ID:y9P6nhPt0


なぎさ「あっ……、あすみもいたのですね。居るならこっちに来てくださいよ! 新しい仲間なのですよ!」

あすみ「新しいやつね。……あー、うん。よろしく」

まどか「うん。よ、よろしく」


 あすみは見定めるような目で見ています。

 あすみが新人を見て快い反応をすることって、前からあんまりありません。


あすみ「またずいぶん浮かれてるのが来たけど、『大丈夫そう』なの?」

なぎさ「……さっそくなのですが、まどかにお願いがあるのです。出来るだけでいいので訓練は来てほしいのです」

なぎさ「それと……一人では戦わないでほしいのです。危ないですから」


 多分マミと出会う前に会った魔法少女も含めて、マミと他の魔法少女との違い……――――。

 それは、戦いへの考え方だと思うのです。


 魔法の力って、ワクワクするほどすごいです。特に慣れかけの頃ほど、魔女なんて軽く倒せるのが当たり前なんじゃないかって気がします。

 でもマミは最初から『魔法少女』も『魔女』も怖がっていました。戦いも力も、軽く考えたことはなかったのです。


まどか「うん、わかった。約束するね。訓練にもたくさん出るようにするから!」

なぎさ「はい! 約束ですよ!」



 あすみはきっと忠告をしようとしていたのです。思っているより危険だぞって。

 ――――それから今日は基礎的な戦いの訓練だけをして解散としました。


796 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/27(日) 01:05:49.44 ID:y9P6nhPt0
-------------------------------
ここまで
次回は27日(日)夜からの予定です
797 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/27(日) 22:14:27.03 ID:y9P6nhPt0


あすみ「新人はまだ連れて行かないんだ」


 この場所を発とうとするなぎさたちを見てあすみが声をかけてきました。


なぎさ「まだやっと魔法の使い方がわかったくらいですから。急に戦えっていわれてもきっとなにをしていいかわからないと思うのです!」


 これからなぎさたちは魔女退治に出かけます。

 まどかも……次くらいには一緒につれていってみましょうか。頭の中で計画を立てます。


あすみ「そういうもんかね…… いや、あいつも戦いとか得意そうには見えなかったな。今まで見た中でも大分どんくさそうな部類じゃない?」

なぎさ「はじめてならしょうがないのですよ。きっと、要領を掴んだら立派に戦えます」

あすみ「また甘いんだから。でも後輩増えたらさすがに一人で全員の面倒見なくてもいいんじゃない? 魔女退治行くにもそろそろ多いでしょ」

なぎさ「! ……じゃあ、あすみが見てくれるのですか?」

あすみ「え、やだよ。そんなことは言ってないって。じゃなくて、後輩の世話は後輩に任せてみたらってこと」

マミ「……私が?」

あすみ「新人ももっと慣れてからのほうがいいだろうけど、二人もいれば前みたいなことになっても安全に逃げられるくらいの余裕はあるでしょ」

あすみ「てか、あれからだってもう……――たしか一年くらい? その時よりは強くなってんでしょ」

なぎさ「訓練ではそれもいいですけど、実戦のほうはまだ無理にしなくても……」

マミ「いえ、私もちょっと頑張ってみたいわ。後輩ってはじめてですもの」

あすみ「なぎさにばっかり先輩としてイイとことられたくないよね?」


 ……またあすみは焚きつけるようなことを言います。

 それに今回はマミも乗り気みたいです……これは困りました。大丈夫でしょうか?


なぎさ「で、でも。それはもうちょっと、まどかが戦えるようになってからなのですよ」

あすみ「まあそうね。それよりまずはバックレないで来てくれることが条件だよね。今度のこそ」


 たしかにそれはずっと気にしていたことでした。一緒に戦う仲間になるという以前のことです。

 あすみは軽く言いましたが……。


なぎさ「とりあえず、まどかとは約束ができましたから! この前の子とは出来なかったですけど……」

なぎさ「まどかは素直そうな子ですし、きっと大丈夫ですよ。なぎさが守ってあげられます」

あすみ「…………」


 そう言うと、あすみは少しだけ何か考えるようにしましたが、こう言いました。


あすみ「まあ、そうかもね」

なぎさ「はい!」



 それから、今日の魔女退治に出発しました。


798 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/27(日) 23:13:11.59 ID:y9P6nhPt0
――――
――――


 まどかと出会った次の日も――そのまた次の日も。

 同じように訓練は続き、まどかは来てくれました。……心配事は杞憂に終わりました。最初に信じた通りだったのです。


 そして、まどかもなぎさたちと一緒に戦いに参加できるようになった頃でした。

 あすみが提案したように、マミとまどかが二人で魔女を倒してきたというのです。

 しかしそれは偶然のことでした。通学路で襲われてた人がいたから。なんでもそれはまどかのクラスメイトだそうで。


なぎさ「それで、二人が無事なのは本当によかったと思うのですが…… ほむらも魔法少女になりたいのです?」

ほむら「いっ、いえ、まだそこまでは……!」


 ……ほむらには素質があるのだそうです。

 魔法少女と会ったことはありましたが、その『候補』と顔を合わせるのははじめてです。

 どう話せばいいのでしょう?


ほむら「でも、鹿目さんと巴さんに話は聞いて。……力になれたらとは、思います」

なぎさ「そう言ってくれるのはうれしいですけど……」


 正直、そう言われてもしてもらいたいことが何も思い浮かばないのです。

 なぎさは魔法少女の新人のことを守らねばならぬ立場です。魔法少女ですらない人を危険に巻き込むのは言語道断。



1力になれることはありません
2だったら契約してください
3あすみに助けを求める
4自由安価

 下2レス
799 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/28(月) 00:41:57.05 ID:e3WHPiY1O
確固たる願いがないなら契約をさせる訳にはいかない、と諭す+3
800 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/28(月) 01:30:33.91 ID:GM47767zo
魔法少女になりたいわけじゃないなら引き返すべきだ
1
801 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/28(月) 02:17:54.34 ID:L5dej0rZ0

なぎさ「無理なのです。力になれることはありません」

ほむら「え……っ」


 ハッキリ告げるとほむらは表情を引きつらせました。


ほむら「も、もちろん鹿目さんや巴さんのように戦うことはできないとは思いますけど……こう、武器とか持ってきたりしたら、少しくらいは……」

なぎさ「武器って、そのへんで調達してきたものが魔女に効くわけないじゃないですか!」

ほむら「そ、そうなんですか……」

なぎさ「いいですか? まどかとマミだってまだ二人だけで戦わせるのは不安だったのです! これ以上不安を増やさないでください! 引き返して!」

あすみ「あははははは! なぎさ、よく言ってやったじゃん! ていうかアンタ面白いこと言うね〜、そんなこと言い出すやついると思わなかった」

まどか「ほむらちゃんって意外とアグレッシブだったんだね!」

マミ「心意気はいいけれど……ちょっと無謀だと思うわよ。身体強くないんでしょう?」

ほむら「うう……」

なぎさ「強かったとしてもダメですよ」

ほむら「…………はい」


 シュンとしてしまいましたが、仕方ないです。曖昧に言ってついてこられても困りますから。きっと強く言うことも必要だったのです。

 あすみは他人事みたいに面白そうに笑っています。


ほむら「そうですよね。今日少し動いただけでめまいがしたのに、私なんかじゃ、契約したってきっと……鹿目さんたちみたいには」


 ……しかし、ちょっと落ち込みすぎてしまったでしょうか?

 契約したときのことならさっきのこととはまた関係のない話になるのですが。


 そんなときキュゥべえがなぎさの肩の上に飛び乗って、存在をアピールするようにひょこりと顔を出します。そういえばついてきていたんでした。


QB「まあまあ、そんなに邪険にすることないじゃないか。このまま戦うのは無謀だけど、ほむらだって契約すれば戦えるようになるよ」

QB「魔法少女になれば契約前より強くなれるし、身体を強くすることを祈ったっていいんだからね。なんなら、今ここで叶えることだってできるよ?」

ほむら「……いえ、やめておきます。今はまだ……。変なこと言ってすみませんでした」


 ほむらは縮こまるように頭をさげると、卑屈そうにトボトボと去っていきます。

 その後ろ姿にまどかが声をかけました。


まどか「ほむらちゃん! 契約のことは関係ないとして、これからも仲良くしようね! 戦いについてこなくてもここには来ていいから!」

まどか「今は考えてなくても魔法少女のことだって無関係じゃないでしょ? 訓練の風景とか見てたってきっと損はないよ!」


 まどかの言葉に、ほむらは足を止めます。

802 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/28(月) 02:21:03.23 ID:L5dej0rZ0
-------------------------
ここまで
次回は30日(水)夜の予定
803 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/30(水) 21:20:45.62 ID:SMw/4MZs0


あすみ「おい、バカ!」

まどか「え……?」


 あすみが嗜めるように口を挟むと、まどかは困惑したような声を上げました。

 ダメなこと言っちゃったかなって感じの顔です。

 ……まあ、あすみの考え方からして、新人が増えてほしくないんだろうなってことはわかります。繋がりを持たせるようなこともしたくないのでしょう。


ほむら「…………」


 ほむらは背を向けて立ち止まったままです。


あすみ「勝手に余計なこと言わないでくれない? ココ以外でどれだけ仲良くしてたって構わないけど、ここはそういう場所じゃないから」

まどか「えっと、じゃあどういう……?」


 しかしまどかが困惑するのも無理はありません。

 ここは『訓練場所』ですが、こう言ったあすみ本人が訓練せず専らぼーっとしてたり、読書をしてたりするのですから。


あすみ「なぁに? 新入りがいっちょ前に口答えしないの」

まどか「ご、ごめんなさい。でもさっきも言ったとおり、いつか契約するかもしれないんだし見てる分にはいいんじゃないかなって」


 まどかも負けていません。

 物腰は柔らかいですが、威圧だけで適当に丸め込めるタイプじゃないみたいです。


マミ「確かにそれもそうよね。ここは秘密の場所だし一般人に見られたら困るけど、暁美さんはもうこの場所のことも魔法少女のことも知っちゃったんだもの」

なぎさ「うーん、なぎさもここは同感ですかね。戦いは危険ですが、見る分には安全なのです。訓練中はなぎさが見てますし、危険なことはさせませんから」


 ……そう言うとあすみの鋭い視線が突き刺さりましたが、見なかったことにします。


ほむら「……は、はい。ありがとうございます」


 ほむらはこちらを振り返ると、消え入りそうな声で言いました。

804 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/30(水) 22:18:22.50 ID:SMw/4MZs0


あすみ「――そもそもなんでもここに連れてくればいいと思ってんのが悪い」


 ほむらの姿が見えなくなってからあすみが言いました。

 あすみはまだ不機嫌なようすです。


あすみ「候補者なんてただの一般人でしょ?」

なぎさ「でも……『ただの』では、ないのでは?」

あすみ「同じだよ。というか、どうせただの一般人でいたほうがいいんだよ。せっかく願いもないってのに、下手にこっちの世界に引き込んだせいで契約する可能性が出てくる」

まどか「それって悪いことなのかな?」

あすみ「悪いよー。まどかが増えてうちの縄張りももう4人。今までみたいに余裕はないよ?」

マミ「グリーフシード……ね」

あすみ「それにさ、この場合、単純に興味持ってとかよりそういう状況に追い込まれてする可能性のほうが大きいしヤバいと思うけど」

あすみ「たとえばこの中の誰かがちょっとでもピンチになったりしたらそれが契約理由になるかもしれないんだから。アンタら人の命運背負えんの?」


 あすみは損得だけでなく、もっと重いことを考えていたんだとわかります。

 でも、そういうことなら。


なぎさ「それなら大丈夫なのですよ! みんなのことはなぎさが守りますから!」

なぎさ「だから…… やっぱりまだマミもまどかも別行動で魔女とは戦わないでください。信じてないとは言いませんが、心配なのです」

マミ「ええ……そうね。今回みたいに上手くいくとも限らないものね」

まどか「で、でも、今回のこともわたしたちが駆けつけるのが少しでも遅かったら……」

マミ「それは……緊急のときには仕方ないわね」

なぎさ「じゃ、じゃあそういうときはマミと一緒なら。でもやっぱり一人はダメです!」


 もちろん街の人を守ることは大事な役目です。

 ……だけど、マミもまどかも、なぎさにとってはどちらも大事な弟子ですから。



――――――
――――――
805 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/06/30(水) 23:49:30.80 ID:SMw/4MZs0



 その翌日、マミとまどかの二人の後ろにくっついてくるようにほむらはやってきた。


 マミとまどかは同じ学校だ。これまでも一緒に来ることが多かった。

 さらにまどかとほむらは同じクラスだと言う。まどかは関わらせる気みたいだし、三人一緒にくるようになるのは必然というべきか。


ほむら「…………」


 同じく訓練を傍観してる位置にいるが、私とはまた離れたとこにいる。

 ちょっとだけつつきにいってみる。せっかくだからいびってやる。


あすみ「ねえ、なんでついてきたの?」

ほむら「つ……ついてきていいと言われたから」

あすみ「いつか契約するかもしれないからってやつ? ……でもアンタってハナから契約する気なんてないでしょ?」

あすみ「コンプレックスがあってもその解消のために契約はしないし、よほどのことがなきゃ契約なんて選択肢にもないくせに」

あすみ「アンタはここに居ても自分が契約することなんて考えてない。考えたとしても子供じみた妄想程度。ただ漠然と『すごいなあ』って思って憧れてるだけ」

ほむら「…………」

あすみ「そうじゃない? 昨日なぎさも言ってたとおり、アンタに出来ることなんてないんだよ。だからついてくる意味なんてないの」

ほむら「……お見通し……なんですか」

あすみ「そう。アンタのチープな野次馬根性なんてお見通し」


 多少のぞかせてもらったが、ほとんど予想通りだった。

 それもそのはず。契約したって自分が戦えると思ってないんだから。『すごい人』にくっついて回りたいだけだ。

 『すごい人』に守られながら横で地味な応援だけして、その一員として役立ってるつもりになりたかったんだろう。


ほむら「……どうしてみんな、あんな怪物を目の前にして戦えるんですか? いくら魔法があったって、私には無理な気がして」

ほむら「契約する前から勇敢だったの? 私なら絶対に足がすくんでしまう。どうせみんなの足を引っ張ることになる……」

あすみ「そんなの人によるんじゃない。そう思うんなら帰れよ」


 とはいえ、どんなに臆病でもいつかは慣れるし、何かがきっかけで思い切ることもある。

 最初はビビってたマミだって今は戦えてる。……それに、私だって。

 だから万が一よほどのことが起きて思い切ってしまう前に離れさせる必要があるのだ。


なぎさ「あれ? あすみ、ほむらと仲直りしたのですか?」

あすみ「するわけないでしょ」


 訓練に区切りをつけたらしいなぎさがこっちに来る。

 ……いびるだけのつもりがこれ以上親近感を抱かれても困る。読書に専念することにした。

806 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/01(木) 00:11:47.03 ID:6/xnKkRA0


あすみ(さて、どこまで読んだっけな…………)


 暇で暇で堪らない日々の中で、読書は新しく身に着けた趣味といえるものだった。

 時間はつぶせる。金もほぼかからない。場所も取らない。


 そういえば学校に通っていた頃は、よく図書室に通っていたと思い出す。

 お母さんは遅くまで仕事してて暇だった。その時も暇つぶしに本を読んでいたんだ。


 ぼんやりと訓練の風景を遠目に捉えつつ、本の世界に入り込もうとする。その時、隣から声がした。


ほむら「その本……」

あすみ「……何? 本?」


 まさか今度は向こうから、またこいつに話しかけられるとは。


ほむら「いえ、読んでたなって……」

あすみ「そう。ネタバレしないでね」

ほむら「あ、もちろんです! ネタバレは一番つまらないので!」

ほむら「でも、下巻のほう読んでないんですよね……。休憩室にシリーズがあったけど、読まないうちに退院しちゃったから……」


 ……そういや身体弱いとか言ってたっけ。

 入院中か。それはまた暇そうだな。口には出さず、心の中でだけ思う。



 ほむらはそれ以上話してくることはなかった。でもたまにこっちを見ている視線を感じた。



 まさか、そんなことで話しかけてくるとは思わなかった。

 そんなことを話す相手がいるとも思ってなかった。でも、こっちが親近感を抱くわけにもいかない。……目を合わせず、冷たく対応することにした。



――――
――――
807 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/01(木) 00:15:44.64 ID:6/xnKkRA0
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ここまで
次回は3日(土)夜からの予定です
808 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/07/01(木) 03:44:44.99 ID:8vTVAGRUO

あすみとメガほむの絡みは新鮮だな
まさかのあすほむ来るのか?
809 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/03(土) 23:55:53.51 ID:JTXJbJf+0


 それからというもの、まどかに加えて一般人のほむらまで常連になった。

 ……なってしまった。私としては不本意なんだけど。


 しかし、この日は何か揉めてるらしかった。


なぎさ「――――じゃ、じゃあ、今はもう治ったんですね?」

まどか「うん。終わったあと、魔法で治せるってキュゥべえに教えてもらったから」

なぎさ「で、でも、怪我したのですよね!?」

まどか「でも本当にそんなに大したものじゃないの。怪我はちょっとつまづいて転んじゃったってだけだから!」


 まどかが怪我したとかなんとか。でも問題の中心はそこじゃなく。


なぎさ「結界の中で危険なのは使い魔や魔女だけじゃないのです! 足場が悪かったり罠があることだってあります!」

なぎさ「ただ転んだのとはわけが違うのですよ。戦うなら絶対にいっしょにって約束したのに……」

まどか「そ……そう思ってたんだけど、でも……」


 この前改めて言いつけられてからほんの数日だというのに、まどかがソッコーで約束を破ったってのが問題ってとこだろうか。

810 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/07/04(日) 00:05:57.13 ID:XselvCV60
ベテランの忠告を聞かないとかこのまどか、舞い上がっちゃってますね。
811 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/04(日) 01:03:57.06 ID:V77CPZQ70


マミ「どうして一人で魔女と戦ったの?」

まどか「友達が操られてたんです。それに、他の人も……いっぱいいて、集団自殺しようとしてました。わたしが戦わないと間に合わないんじゃないかって」

マミ「なるほどね……」

なぎさ「……だ、だからって…………」


 なぎさが第一印象で素直そうと評してた通り、私もまさかこいつがこんなに早く――とは思ったけど。

 一応納得できるほどの理由はあったらしい。なぎさは口ごもった。


まどか「や、やっぱり、わたしが戦うのをためらったせいで誰か傷つくと思ったら見逃せないよ……せっかく魔法少女になったんだから」

なぎさ「!」


 なぎさに反発して仲間になることを拒否した魔法少女たちとはまどかは考え方が違った。

 その考えは、むしろ人を助けるのが魔法少女だと正しさを謳ってたなぎさたちに近いはずだった。



あすみ(なんか面倒そうなことになってるな)


 私はその修羅場じみた光景をまだ遠巻きのまま見ていた。私は人助けのためなんて考えたことないし。同じ立場では話せない。



ほむら「やっぱり……、魔女と戦うのって危険がつきものなんですね……」

あすみ「……まあ、そりゃね。怪我くらいすることはあるよ」


 こいつも傍観しかできない立場だ。だからって、話に入れないからって私に話しかけないでくれないか。


ほむら「どうしたらいいんでしょうか……?」

あすみ「さあね。私に聞かないでくれる?」


 しょぼんとした、陰気臭い空気を横から感じる。……傍観者だからって『同じ』じゃない。

812 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/04(日) 01:08:57.18 ID:V77CPZQ70
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ここまで
次回は4日(日)夜からの予定
813 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/04(日) 23:40:57.90 ID:V77CPZQ70
――――――
――――――


 まどかから言われたことにハッとしてしまい、なぎさは言葉を返せませんでした。

 街を守るのが魔法少女の役目。なぎさはずっとそう思ってたつもりでした。――しかし、本当にそうだったのでしょうか。


 もうひとつ、なぎさには大きな役目があります。

 確かに魔女を倒すまでの時間が早いほど誰かが操られたり取り込まれたりする危険はなくなりますし、なぎさもいつでもすぐに駆けつけられるわけではありません。

 それでも弟子たちには一人で戦わせたくないと思うのです。危ない目に遭ったときになぎさが守ってあげられないから。


 知らず知らずのうちに、マミやまどかの安全と街の人の安全を天秤にかけていたのでしょう。


なぎさ「……それなら、友達を連れて逃げたっていいのです」

まどか「でも、それじゃ他の人は」

なぎさ「一筋縄で倒せない魔女だっているのです! 魔法少女であるまどかが死んでしまったら終わりなのですよ!」

なぎさ「それでも一人で戦うのなら……戦う前に連絡してください。そしたらなぎさも助けることができるかもしれません……もし、まどかに『何か』があったとしても」

なぎさ「約束を守ってくれれば、なぎさはまどかのことを絶対に守ってみせます。……でも、破るのなら守れないかもしれません。それも一つの考え方ですから、仕方ないです」

まどか「……あ……えぇと…………うん、ごめんね」


 まどかははっきりと何かを言い返すようなことはしませんでした。まだ色んなことを考えているのかもしれません。

 けど、どうして謝ったのでしょうか。

 再び同じ状況に立った時、なぎさにはまたまどかは同じ行動を取るのではないかと思えてしまいました。


なぎさ「……じゃあ、今日も訓練しましょう!」


 なぎさの合図で今日も訓練をはじめます。

 訓練中はいつもと変わりませんでした。まどかが来てから久しぶりに新人に教えるのは新鮮です。

 まだまだ教えなきゃいけないことはたくさんあります。



 ……ちゃんと、教えたいことを全部教えられるでしょうか。


814 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/11(日) 22:22:30.37 ID:oDu01kcW0


マミ「鹿目さんの弓って不思議ね」

まどか「そうですか?」

マミ「ええ。弓って扱いが難しそうだけど、思ったとおりの場所に飛んでいくんでしょう? 軌道が読みづらいのよね」

マミ「鍛えればいい武器になると思うわ」

まどか「はい。がんばります。マミさんのもすごいですよね」

マミ「少し狙い方は似ているのかしら? このリボンも狙う先を意識すると上手くいくの」

マミ「最初は私も上手く行かなくて苦労したのよ。たとえばさっきの一撃は――――」


 訓練ではマミとまどかが手合わせすることもあります。その延長で直接指導することも増えました。

 普段から同じ学校の先輩として接しているのでしょう。

 こういう時のマミを見ていると、なぎさに勉強やお料理を教えている時のような、頼もしくて優しいお姉さんの顔です。


 もちろんなぎさも見ています。もっとこうしたらいいんじゃないかって口を挟むことだってあります。

 でも、段々とそんな機会も少なくなってきている気がするのです。


あすみ「マミが巣立ってくみたいで寂しい?」


 ……気づいたらあすみが横に居ました。


なぎさ「は、はい。まあ少し……」

あすみ「私もあいつは一生コバンザメのようになぎさについてくのかなって思ってたけど、弟子ができたら意識も変わるよね。しかも同じ学校の後輩でもあるんでしょ?」

あすみ「……まあでも、本当の意味で離れてっちゃうようなことは多分ないよ」


 いつになくあすみが優しいです。いえ、出会ったときからしたらすでに大分トゲトゲは減っているのですが。

 直球で優しいをかけることは今でもあまりないのです。あれ、これってもしかして。


なぎさ「もしかして、なぎさを慰めようとしてくれてるのです?」

あすみ「……だって、ハブられたみたいな顔してたから」

なぎさ「そ、そんな風に見えてたのですか?」


 あすみは魔法がなくても心を読むのは上手です。間違いでもないのかもしれません。


あすみ「でもさ、こう思うようになってきてない? 自分の言うことを聞く人は守るけど、聞かない人はどうなっても仕方ない……って」

なぎさ「だ、だって……なぎさがどんなに守ろうとしたって限界はあるのです。まどかみたいな理由ははじめてだったけど……」

あすみ「現実的だとは思うよ。なんかちょっとらしくないなって思ってたけど……まあ、それも成長したってことなんでしょ」

なぎさ「…………」


 ……だって。どうしたらいいのでしょうか。

 みんなを死なせないためには、なぎさの手が届く範囲に居てもらうのが一番なのです。


――――
――――
815 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/07/11(日) 23:22:33.75 ID:8TcoY0VC0
お、続き来た!
816 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/12(月) 00:12:45.60 ID:iCqshFtl0


 ――――まどかとほむらが訓練の場に加わりましたが、それだけではありません。

 ついでにその後のお料理のトックンにも二人が加わりました。


マミ「――――湯煎してたチョコレートはもう溶けた?」

まどか「はい! こんな感じで大丈夫ですか?」

マミ「ええ。バッチリよ」

なぎさ「こっちも生地の準備出来てますー」

まどか「みんなでお菓子作りするのって楽しいですね」

ほむら「はい。自分たちでこんなにお菓子や料理を作れるなんて、魔法みたいですね」


 訓練後は魔女退治に向かうことも多いのでたまにですが、魔法少女の関係ないことにはほむらも参加してます。

 その代わり、相変わらずあすみはこういうのには来ないです。


 まどかはあまり遅くまでいられないので、一緒に過ごすのはティータイムだけです。

 それもあって、最近ではお菓子を作ることが増えました。

 今ではなぎさがおうちでも家事を任せられるくらいには上達したから――というのもあるのですが。


マミ「そういえば、鹿目さんと暁美さんにはまだ言ってなかったかしら。なぎさちゃんは魔法でお菓子も出せるのよ」

ほむら「戦うだけじゃなくて、そんな魔法もあるんですね……」



 マミは自分のことのように誇らしげに言いました。



 今のところはみんな無事で、問題は起きていないです。――だからって、安心していいわけじゃありません。



 まどかに対する、また約束を破るんじゃないかという不安。

 『破るのなら守れなくても仕方ない』――あすみの指摘どおりあの時まどかに言い放ったのはそういう真意があって、なぎさは心の底でその覚悟をしてたはずでした。

 でも、まどかはいい人です。これ以上仲良くなったら、そんなに簡単に切り捨てることなんてできなくなってしまいそうなのです。

817 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/12(月) 00:50:07.44 ID:iCqshFtl0


なぎさ「あの……ほむらはまだ契約って考えてないんですよね?」

ほむら「……。はい。まだ今は…………」


 オーブンをセットしてケーキを焼く間、ほむらにも聞いてみました。

 ほむらはずっと訓練についてきてはいますが、こうして話すのは今までほとんどありませんでした。


なぎさ「もし魔法少女になったら、ほむらはなぎさとの約束を守ってくれますか?」

ほむら「一人で戦わないこと……ですよね。守ると思います。私は一人で戦えるほど勇敢じゃないから」

なぎさ「そうですか……」


 ほむらはそう言いましたが、ちょっと疑問を抱いたのが出会って初日のあの発言があるから。

 ……契約しないまま武器持って魔女退治についてこようとした人の言葉とは思えません。

 それを指摘してやると、ほむらは慌てたようにして答えました。


ほむら「あっ、あれは勇敢なんかじゃなくって……むしろ逆です。みんなについていくだけだから。守ってもらえるから平気だと思ってたんです」

ほむら「本当は戦う覚悟なんてなかったくせに……それがどれだけ危険なことか、みんなに迷惑をかけるか考えてなかっただけなんです」

なぎさ「契約についてはゆっくり考えてくれればいいです。危ないことはしなくていいですからね」

まどか「うん。応援してくれる気持ちだけで十分助かってるよ」

ほむら「ちが……――、違うんです。私はそんなに立派な気持ちでここにいるわけじゃ……」

まどか「――?」


 話しているうちに、オーブンの電子音が聞こえます。

 ケーキが焼き上がりました。

818 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/12(月) 00:53:58.77 ID:iCqshFtl0
------------------------------
ここまで
次回は16日(金)夜から
819 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/16(金) 23:32:12.37 ID:frUFj8kf0



 出来上がったチョコレートケーキはなめらかで、今日も見事な出来でした。

 マミの淹れてくれた紅茶をお供にティータイムははじまります。紅茶の淹れ方もみんなで見させてもらっていました。

 今ではなぎさもマミと同じくらい上手に紅茶を淹れることができます。でも、二人のときは大体マミに任せています。

 紅茶でも料理でも……なぎさが完璧に覚えたと思っても、マミはよく今まで知らなかったようなことを見つけてくるので、マミにはずっと敵わない気がします。

 飽くなき探究心を感じるのです。


まどか「見た目も綺麗だし、ちょうどいい甘さで美味しいです! 今度家でも作ってみます!」

マミ「ええ。ご家族に作ってあげたらきっと喜ぶわよ」


 まどかは教わったレシピをノートにまとめていて、それを見たマミがメモを書き加えたりもしています。

 その光景にマミと訓練をはじめたての頃を思い出します。

 マミの訓練ノートはさすがに今は書き込む頻度は少なくなりましたがまだ続いています。そういえばまどかにも見せていました。


ほむら「私も練習したら作れるようになるのかな……」

マミ「こういうのって、やってみたらできるものよ。料理って出来るようになったら楽しいんだから」

まどか「ほむらちゃんも一人暮らしなんだよね」

ほむら「で、でも、全然こんな…… 巴さんみたいに立派じゃないです」

マミ「暁美さんもそうだったのね。それならこのあとお夕飯も一緒にどうかしら? 教えるわよ?」



 ……ふと、思いました。あすみは訓練や魔女退治のこと以外でも、こうして魔法少女と必要以上に関わるのにはまだ反対してるんだって。


 あのときなぎさはこう言いました。

 『大丈夫なのですよ! みんなのことはなぎさが守りますから!』 ――――でも。

 『破るのなら守れないかもしれません。それも一つの考え方ですから、仕方ないです』


 これじゃ大丈夫って、言えませんよね。

820 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/07/16(金) 23:58:25.39 ID:p3cTHUAB0
なぎさはなぎさ編と違って芯が定まってない感じですね
821 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/17(土) 00:37:43.72 ID:i3/HN3aL0


まどか「――――今日はありがとうございました。あの……っ 訓練、なぎさちゃんにも認めてもらえるようにもっとがんばるから!」

なぎさ「なぎさに……?」


 ティータイムが終わって、まどかが帰る時間になります。

 すると、帰り際にまどかが言いました。


まどか「うん。なぎさちゃんがわたしたちに一人で戦ってほしくないのって、安心して任せられないって思ってるからなんだよね?」

まどか「わたしは新人だしまだまだみんなより弱いけど、いつかはちゃんと肩を並べられるようになりたいの」

まどか「……なぎさちゃんとあすみちゃんみたいに」


 なんでここであすみの名前が? ――そう思いましたが、すぐに納得しました。

 一応魔法少女としてはなぎさのほうが少し長いとはいえ、出会ったときからあすみはなぎさの弟子だったことはありません。

 大切な『友達』ですが、『守らなければならない存在』と考えたことはありませんでした。


 マミとまどかは弟子で、守らなければならない存在です。

 でもそれって、二人のことを対等に見ていない、認めていないってことでもあるんじゃないか――そう、思わされてしまいました。


 ……なんだか、まどかの言葉にはハッとさせられることが多いです。


マミ「そうね。いつかはそうならなくちゃね」


 もちろんまどかは契約したてですし、今すぐに認めるわけにはいきません。

 でも、いつかは一人前に。信じて任せられるようにするのは師匠のつとめでもあるのです。


822 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/17(土) 01:56:58.57 ID:i3/HN3aL0



 まどかも帰ると、今日は三人になります。

 さっき話してた通りほむらもまだ残っていました。


ほむら「さっきのこと……なんですけど」

なぎさ「さっきのこと?」

ほむら「はい、ケーキ作りの時に話してたこと……みなさんは私に契約について考えるためについてきていいって言ってくれるけど、本当は全然そういうの考えてないんです」

ほむら「誰かと一緒に過ごしたり、おうちに招いてもらったり、そういうのって初めてで……それが嬉しくて」

ほむら「私はただ……ついてきてるだけ…… 本当はよくないですよね」


 ほむらはいつもよりさらに自信なさげに話します。

 契約する気がまったくないのなら遊び半分で覗かれるのはたしかにあまりよくありません。

 それに、遊び半分にしても訓練中はあまり構ってあげられるわけではありませんし、少し寂しそうにしてたのは見えていました。

 かえって疎外感やプレッシャーを与えてしまっていたかもしれません。


マミ「……そうだったの。それじゃ、私達の訓練についてくる必要はないわね。今後は暁美さんに合った特訓をするようにしましょう」

なぎさ「えっ? どういうことなのですか?」

マミ「暁美さんには、今日から私が先輩として料理を教えてあげるわ! どう? 私の弟子になってみない?」

マミ「なぎさちゃんも私の弟子なの。暁美さんは二番弟子ね」

なぎさ「!」


 マミは悪戯っぽく笑って言います。……料理の方でも、なぎさについに弟子ができるのでしょうか。


ほむら「……は、はいっ。よろしくおねがいします!」



 とりあえず、早くも『免許皆伝』を望んでいるまどかにはとくに厳しく鍛えるしかないのです。

 まどかのことを信じられるように。……『大丈夫』っていえるように。



 魔女には新人が一人で倒せるものから、ベテランでも危険な相手までいっぱいいます。相性にもよります。

 ――――でも、ベテランも相性の良し悪しも関係なくすべてを覆す最悪の『敵わない相手』は、それからほどなくしてやってきてしまうのでした。


823 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/17(土) 02:11:04.75 ID:i3/HN3aL0
-------------------
次回は17日(土)夜からの予定
>>820 なぎさ編は色々と端折ってきてるので葛藤とかはあまりないですね
824 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2021/07/17(土) 03:07:35.15 ID:3Kx4qjCo0
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825 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/18(日) 20:56:15.46 ID:nTZUtAnh0



 その前触れは本当に唐突で。



――――
――――



なぎさ(せっかくの休みの日なのに朝からお空がご機嫌ななめです…… 風、止むどころか強くなってるみたいですし)


 朝ご飯を準備していたところに外から放送が聞こえてきて、お父さんにつれられて一緒にここまで避難してきました。

 天気も悪そうなので、せっかく今日は訓練もなしにしてゆっくりとご飯を食べてお家で過ごそうと思っていたところだったのですが。

 予想していたよりもさらに天気が悪かったようです。


 ……いえ、本当はその前にやろうと思っていたことがありました。


なぎさ(家にいたときから感じていた魔力、ここまで来ても変わりませんね)

なぎさ(結界が近くにあったからというより、ここ一帯が包まれているような……それも段々と濃くなっているような気さえします)


 一帯を包み込むような魔力。それに併せたような災害。

 そんな魔女のことをなぎさは知っています。キュゥべえから聞いただけではありますが。


なぎさ「お父さん、ちょっと離れていい? お友達もここに来てるみたいだから!」

「あぁ、ずっとじっとしてるのもヒマだよね。でも絶対外には出ちゃダメだよ」


 おそらくあすみもマミもまどかも気づいてるはず。……そういえば、みんなもここに来てるのでしょうか?

 ただの台風じゃないのだから、元凶を退治しなければおさまりません。

 もしかしたら、もうそっちに行ってる可能性もあります。


なぎさ(お父さんにはダメと言われたけど……)


 なぎさは魔法少女だから。みんなを守るためです。

 覚悟を決めて外に出ようとすると、携帯から音が鳴りました。



――――――
826 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/07/18(日) 22:16:31.46 ID:3S/bqI7C0
いきなりワルプル戦ですか!?
827 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/18(日) 23:05:08.66 ID:nTZUtAnh0
――――――


 たぶん、朝?

 外が騒がしくて目を覚ました。スタッフが宿泊者全員に避難を呼びかけてるとか。


あすみ(ワルプルギスの夜……か)


 巻き込まれないうちにと早々に外に出てきて、私は宛もなく歩き始める。

 魔力の気配には起きてすぐ気づいてた。風は強さを増している。



*私は……
1魔力が強くなる方を目指して歩き始めた
2みんなが向かう方に歩き始めた
3魔力が弱くなる方に歩き始めた

 下2レス
828 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/07/18(日) 23:17:36.45 ID:3S/bqI7C0
2のみんなとは宿泊客のことで行き先は避難所かな?
避難所にはなぎさが居るみたいだけど、どうせ外に出てると思うので1。
829 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/07/18(日) 23:23:57.69 ID:O8G4lmM+O

ていうかまたホテルに潜り込んでたのかよ
830 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/18(日) 23:53:39.26 ID:nTZUtAnh0


 道行く人はみんな一つの方向を目指してる。多分避難所の方向なんだろう。

 でもそんなの意味がない。本当に避難したいなら今からでも街から遠ざかるべきだ。


あすみ「まあ、でも。そんな伝説級の存在、姿も見ないうちにビビって逃げちゃうのももったいないよねー」


 なにより無様だ。

 相変わらずどこへ向かうのかはわからないものの魔力が強くなる方向を目指して歩くと、街を使い魔が闊歩してた。

 簡単に倒せたし反撃すらしてこなかったけど、こんな動物が普通にいるはずもないし使い魔なんだろう。

 こいつら見るようになってからは風の勢いも更に荒れている。このあたりになると、人の姿もめっきりなくなった。


 すでにかなり中心部に来たはずだが、大ボスらしき姿が見当たらない。


 一旦足を止めて建物の上から見渡していると、空に強い力を持つ魔法陣が描かれ、人影――といっていいのかわからない巨大な影が現れた。

 一見ヒトのような顔、手足、胴があるが、大きなスカートの中からは歯車が覗いている。しかも、なぜか上下逆さに浮かんでいた。


あすみ「……そういうわけね」


 あの使い魔はショーの前座のようなもの。

 いつのまにか使い魔の姿も消えていた。



 ――――腕試しといこうか。



――――――
831 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/18(日) 23:57:41.84 ID:nTZUtAnh0
---------------------------
【訂正】>>830 「手足」はなかったわ
腕、くらいに脳内変換しといてください
832 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/07/19(月) 00:04:08.93 ID:Yvx1ZKeP0
>>831
足なんて飾りです!偉い人にはそれがわからんのですよ!
833 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/19(月) 00:33:32.63 ID:ytMEaxz10
――――――



 着信の相手はマミでした。マミも同じように魔力を感じ取っていて、避難所に行こうか迷っていたということでした。

 マミにはまだ近づかないように言いつけつつ、まどかとも話しておかなければなりません。


なぎさ(まどか、先走って向かってたりしなければいいのですが……)


 そんな心配をしましたが、その直後にまどかからも連絡がきました。

 まどかも家族と一緒に避難所に来ていたそうでした。まずは避難所の中で二人で合流しました。


なぎさ「まどか! ご無事でなによりなのです」

まどか「うん、なぎさちゃんも……! ところで、この魔力ってなんなのかな? 外に魔女がいるなら倒しにいかないと」

なぎさ「そのことについて話そうと思ってたのです。なぎさも実際に見たことはないのですが……――――」


 結界を持たない魔女、『ワルプルギスの夜』のことをまどかに話しました。


まどか「た、大変! そんなのが現れたなんて……! そうだ、マミさんとあすみちゃんは!?」

なぎさ「マミは外にいます。でもまだ暴風の中心部には近づかないように言っています。あすみのことは……わかりませんが」

まどか「倒しにいかないとだよね」

なぎさ「……」


 相手は伝説の魔女です。普通の魔女ならなぎさと一緒に戦う分には問題ありませんが、新人のまどかをできるだけ危険には晒したくありません。

 しかし、どのくらいの強さかもわからないとなると戦力が多いほうが助かるのも事実……。


1倒しに行きましょう
2待っててほしい

 下2レス
834 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/07/19(月) 00:39:27.68 ID:Y1GKM08LO
1
まどかは待てと言われても勝手に動きそうだからなぁ
835 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/07/19(月) 00:47:01.49 ID:Yvx1ZKeP0
ここは1かな?

1週目のまどかはアニメ本編でも魔法少女になったのが誇り云々言ってたし、ぜったい付いてきそうなんだよなぁ・・・
どうせ一緒に戦うことになるなら最初から身近に居てくれた方がいいよね、多分
836 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/19(月) 00:59:55.29 ID:ytMEaxz10
-------------------------
ここまで
次回は21日(水)夜からの予定
837 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/07/19(月) 01:10:41.85 ID:Yvx1ZKeP0
乙です。

>>828は2の方が良かったかな?
なんかあすみだけ先走っちゃった結果に・・・
838 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/21(水) 23:55:22.35 ID:FmB5ZX2f0


なぎさ「はい、行きましょう! では今からマミに連絡するのです!」


 ……まだまどかは未熟です。

 ですが、戦う意欲だけは人一倍あるのです。力にならないことはありません。

 でも。


なぎさ「……でも、とても危険な相手です。危ないと思ったときには逃げるのですよ」

まどか「……うん。頑張るから、みんなで倒そうね」


 ……そう言っても、少し不安の残るところはあります。

 するとその時、こちらに一人近づいてきました。

 覚悟を決めて外に出ようとしていたところを呼び止められます。


ほむら「鹿目さんに、なぎさちゃん……二人も来てたんですね」

ほむら「なんとか一人で避難してきたんですけど、心細くて」


 ほむらは一人暮らしですから、一人でここまで来て、それからもずっと一人でいたのでしょう。

 外は暴風、そんな中なぎさたちを見つけて安心しているのがわかります。

 でも、ついていてあげたい気持ちはやまやまですが、今に限ってはそれはできないのです。


まどか「ほむらちゃん、これからわたしたちがこの風を止めて来るから」

ほむら「え……? そんなことが……?」

まどか「これは、ワルプルギスっていう悪い魔女が起こしてる災害なの。だから倒さなきゃいけないの」

まどか「ほむらちゃんはここで待ってて」


 また不安そうな表情に戻ってしまったほむら。


なぎさ「……大丈夫です。ちゃんと帰ってきますよ」


 なぎさたちはそう告げて、避難所の出入り口のほうへと歩いて行くのでした。

839 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/22(木) 00:27:29.61 ID:ffQxHaM70


 外に出た時、わたしたちは驚きました。避難してきた時にはなかったはずの、魔女の姿があるのです。

 まだ遠くて、小さくしか見えないのですが……その魔力の強大さ、禍々しさたるやこれまでの魔女とは比べ物になりませんでした。


 それからマミと合流し、三人で目標へと目指していきます。

 魔力だけを頼りに近づくよりは姿が出ているほうがわかりやすいのですが、

 既に魔女が動き回るたびに被害が出ているようなので、急がなくてはなりません。


マミ「私も驚いたわ……。いきなり空に魔女が現れて、そこから明らかに魔力も風も強くなるのを感じたの」

マミ「それに、遠目に見ていたけれど、ビルくらいなら軽々となぎ倒しているみたいよ……恐ろしい相手だわ」

まどか「あすみちゃんは大丈夫なのかな……?」

なぎさ「! 誰か、もう戦ってる……!?」


 魔女に近づくにつれて、その周りを飛び回っている人の姿や、

 その攻撃によって、宙を舞うワルプルギスの夜の動きに不自然な動きが加わっていることも目に入りました。

 おそらくは、あれが……。


なぎさ「あすみならそう簡単にやられたりしないのです……! ですが、こっちも急ぎましょう! これ以上被害を出さないために!」



――――――
840 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/07/22(木) 00:43:52.90 ID:HNammaBE0
あすみは反転したワルプルギスをも倒す呪いカウンターがあるけど、ゆまちゃんとは会ってないみたいだから使えないよねぇ・・・
841 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/22(木) 01:09:52.13 ID:ffQxHaM70
――――――



 走る。


 ちょっと油断してると魔女との距離は開く一方だし、遠くから鉄球をぶつけるにも距離が開けば開くほど威力は弱まる。

 もっとも、全力でぶん殴ってやった時にも大したダメージを与えた手応えは得られなかった。


あすみ「あぁ……ッ、クソ……!!」


 元々私は足が速くない。

 普段から身軽さよりも武器の威力を重視するスタイルだし、物理的にも発育不良気味の短い子供の手足じゃ速度が出るはずもなかった。

 それでも普段の戦闘では戦い方でカバーするから気にならなかった。今になってコンプレックスを刺激されて腹が立つ。


 こんなに苦戦する魔女なんてはじめてじゃないだろうか。久しぶりにイライラが湧き出てきた。


 ただ走るだけでは宙を飛ぶ魔女には追いつけない。

 街の脇に立つ電柱に鎖を伸ばして巻き付け、巻き取りながら一気に飛び上がる。

 平面で追いつけないなら立体的な動きを交えるしかなかった。


あすみ「うらッ!」


 距離を詰めたところでワルプルギスの夜に向けて鉄球を振りかぶり、叩き落としたところで、

 更に長く鎖を張って地面に縛り付けては魔女の歯車部分に乗ってガンガンと殴り続ける。


あすみ「壊れちゃえ! 壊れちゃえ! このガラクタッ!」


 これまでに何本のフレイルを無駄にしたんだろう。ストックには余裕があるものの消費も馬鹿になってない。


 ――下からこちらを覗いてくる魔女と目が合った。いや、正確には目はないが、見据えられたのがわかった。

 直後にほとばしる熱気。


あすみ「バカかったくね……なんなのこいつ。さすが伝説の魔女っていうだけあるか」


 退避には成功したものの結局はまた振り出し。

 追いかけて殴って、どれだけ効いてるのかもわからない。飽きかけてきたな、なんて思った時、向こうから声がした。


なぎさ「あすみ! やっぱりもう戦ってたのですね!」

まどか「わたしたちも一緒に戦うから!」

マミ「それにしても、こうして見るとすごい状況ね……」


 知ってる声の勢揃い。どうやらまだ抜けるわけにもいかなさそうだった。

842 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/22(木) 22:47:09.58 ID:ffQxHaM70


 さっきと同じことの繰り返しに、三人の力が加わる。


 マミがリボンで足場を作り、まどかが離れたところから矢を打ち込み、

 できるだけ近づいたところでさっきみたいに強力な一撃で動きを止める。


 なぎさも範囲攻撃ではあるがシャボンじゃ着弾までに時間がかかりすぎるから、結局至近距離まで行くか、動きをとめないと当たらない。

 あれほどの巨体を包み込むのは難しいんだろう。炎を吹き出す頭だけでもシャボンで閉じ込めようとしてたが、一発分しか持たなかった。



 こちらの攻撃の手は増えた。しかし、まだ魔女の様子に変化は見られなかった。



なぎさ「あすみ……そういえば、ワルプルギスの夜の心も読めてたりするのですか?」


 戦いの途中、なぎさが聞いてきた。

 たしかに魔女は悪意の塊だし、超弩級のこいつの悪意はそれ以上だ。


あすみ「心っつーのかな……そう言えるほど単純じゃないよ。表現するなら、こいつ自身があらゆる悪意が絡み合った呪いの塊って感じかな」

なぎさ「な、なんと禍々しいのでしょう……!」


 いつもなら呪いに反応する私の『呪い』も、こいつには効いてるのかもわからない。意識しすぎれば気分が悪くなりそうだ。

 本気でやろうとすればやれるだろうか? しかし、上手くできる自信もなかった。

843 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/22(木) 22:53:58.82 ID:ffQxHaM70


 ――魔女の様子にまだ変化は見られない。それに引き換え、こちらはどうだ。



 見渡してみても、傷ついてない人はいなかった。

 風に乗って、細かい石や建築物の破片、車なんかがぶつかってくる。

 私は元々細かい攻撃は避けずに攻撃を優先したほうがいいと思っている。しかし、今の状況じゃ避けようと思っても避けきれないくらいだ。

 気にしてたら動けなくなる。みんなもその傷や疲労は蓄積していってる。


あすみ「……ねぇ、もう撤退しない?」

なぎさ「な、何を言うのですか!?」

あすみ「これ以上やると、私たち無事じゃなくなるかもよ」

なぎさ「……!」


 なぎさだって気づきつつあっただろうに。


マミ「でもそれじゃ、街が……!」

まどか「そ、そうです! 魔法少女のわたしたちが逃げたりしたら!」

なぎさ「いえ、でも、そうです…… だって、なぎさはここに来る前」


 なぎさが何かを言いかける。しかし、強い風が吹き抜けたと同時に異変に気づいた。


あすみ「! それより上……!」


 頭上から影が落ちてくる。魔女の攻撃によって破壊されたビルだ。

 私の合図と同時になぎさがシャボンを膨らませてガードを張る。

 それでも重みに耐えきれず、足元から崩落していくのがわかった。多分、ガードもこれ以上持たない。


なぎさ「みんな逃げてください!!」


 戦ってる最中に、飛んできた細かい石や建築物の破片、車なんかがぶつかることはよくあった。

 もはや気にしていられないくらいに。しかし、みんなその傷や疲労は蓄積していたのだろう。


 退避する準備ができていたのは私となぎさくらいで、元々攻撃の範囲にいなかったマミを除けば……、

 まどかがまだ対応しきれずにいた。


 それに気づいたなぎさは。


なぎさ「マミ、まどかの足場を!」

マミ「!」


 まどかを力強く突き落とし、身代わりとなっていた。

844 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/07/22(木) 23:07:54.08 ID:HNammaBE0
うーん、神様もいないしあすみもゆまと会ってなさそうだから劣勢だなぁ・・・
845 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/22(木) 23:18:38.23 ID:ffQxHaM70


まどか「うっ…… な、なぎさちゃんは!?」

なぎさ「なぎさなら大丈夫ですよ。やっぱりまどかは逃げてください」


 まどかはマミのリボンによって受け止められていた。

 けど、なぎさは……瓦礫と瓦礫の間に挟まれ足を潰されていた。


まどか「で、でも……!」

なぎさ「いいから! あすみの言うとおりこれ以上は危険です! 言いましたよね、危険だと思ったら逃げてって……!」

なぎさ「マミもです……! 今、まどかを守れてよかった。でももうきっと次は守りきれないから」

まどか「ま、待って。見捨てられないよ……」

なぎさ「まどかが死んだら、ほむらは契約しますよ。まどかのために。まどかはほむらの命運を背負えますか」

まどか「……!」

なぎさ「なぎさは怪我はしましたが、足を治せば戦えますよ。こんな時くらい先輩に任せるのです……!」

マミ「…………行きましょう、鹿目さん。私達じゃ足手まといよ」


 後ろ髪をひかれるような表情を浮かべながらも、まどかはマミに連れられて遠ざかっていく。

 マミまで返しちゃってよかったのだろうか。しかし、万が一にも弟子を失うことを恐れるなぎさからしたら当然の判断か。


あすみ「わかってるの? 私はともかく、なぎさだってほむらと仲良くしてたくせに」

あすみ「私達だけでも勝てると思う?」


 なぎさを瓦礫から引っ張り出す。治癒は得意じゃないから、あとのことはなぎさ任せだ。


なぎさ「……わかりません。でも、なぎさはやるしかないですよ」

なぎさ「まどかとマミは任せてくれたのです。負けちゃったらきっと、二人は戻ってくると思うのです。だから」


 広範囲に潰された足を治すにはそれなりに時間がかかるらしい。

 魔女はまだ気まぐれに街を破壊してる。

846 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/07/22(木) 23:33:16.43 ID:452182+oO
なぎさとあすみの2人だけになったか
847 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/23(金) 00:03:04.57 ID:e+k4D98V0


 私は魔法少女だから魔女を倒さなくちゃ――とか、街や人々を守らなくちゃ――なんて思ってるわけじゃない。

 もともとコイツに挑んだのも腕試しのようなもので、生きるか死ぬかの命がけで戦うつもりもない。


 正直に言えば、なぎさと出会ってからはちょっとくらい感化されてたところはある。

 ずっとわかった気で達観してたけど、私が思ってたのは全てじゃなくて、世界は、人間は思ってたほど汚いものばかりじゃないって気づいたから。

 あの男や私を虐めたクラスメイトは、きっと人間未満のナニカだったのだろう。

 私だって“いい人”になりたい。……でもみんなとは優先順位が違った。だって、私なんかが今更どうやったって偽善者にしかなれないじゃん?


 とはいえ。


あすみ「あんたがそう言うなら、私ももう少し付き合ってやるしかないかな」


 なぎさを見捨ててここを去ることは、どうしてもできなかった。


なぎさ「治療、終わりましたよ! またずいぶん離されちゃいましたけど……いきましょう!」

あすみ「うん、行くか」


 私達は再び走り出す。武器を携えて。


 暴風が起こされれば吹き飛ばされてしまうから過信はできないものの、短い距離であればシャボンを足場にも出来る。

 駆け上がり、距離をつめてなぎさがシャボンを吹き出す。更に私が勢いをつけた一撃をお見舞いする。

 次の瞬間には再び裂けた笑みを浮かべた顔がこちらを見た。


あすみ「鬱陶しいな」

なぎさ「大丈夫、閉じ込めてやるのですよ!」


 顔を包むシャボンはやはりすぐに破られたが、一発でも耐えられるなら上出来だ。

 その間にもう一発入れてやることが出来るんだから。


なぎさ「そろそろ引き時ですかね」

あすみ「ああ、また回り込むよ」



 ここまできたら、やれる限りはやってやる。人数は減ったがさっきみたいに未熟な仲間を庇う心配もなくなった分戦いやすくもなった。

 どうせこれ以上に強い魔女になんて会うことはないんだろうから。



あすみ「…………まったく、この風も鬱陶しいね。防ぐ手段でもありゃいいんだけど」

あすみ「どっから来るのか予測もつかないし、砂利と瓦礫のオマケまでついてくる。ま、ある程度気にしてらんないけど、さ――――」


 振り返る。


あすみ「――――」




――――
――――
848 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/07/23(金) 00:10:03.32 ID:rHeU85zy0
うわっ、なんか嫌な引きだけどどうなった!?
849 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/23(金) 00:30:34.95 ID:e+k4D98V0
---------------------------
ここまで
続きは23日(金)夜に。
850 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/07/23(金) 00:40:02.76 ID:rHeU85zy0
乙です。

うーん、流石にワルプルギスが相手となるとなぎさとあすみの2人でもキツイですよね。
ていうか、価値筋が全く見当たらないしほむらにとって1番最初の時間軸だと当然神様もいないからなぁ・・・
851 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/07/23(金) 00:49:04.65 ID:A90Fc1dXO

ここからどんでん返しが来るか?
852 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/23(金) 22:52:34.12 ID:e+k4D98V0


まどか「……ごめんね、ほむらちゃん」

ほむら「ううん、二人に何もなくてよかった。無事に帰ってきてくれただけでも嬉しいんです……!」

マミ「なぎさちゃんたちがきっと倒してくれるから。私達はここで祈りながら待っていましょう」

まどか「……そうですね。わたしたちが出来ることといったら、応援……くらいですよね」


 避難所の中はさらにざわついていた。

 暴風は強さを増し、施設や建造物が破壊され、人々の生活の中にも影響を及ぼしていた。


マミ(それにしても…… 風、まだ強まるのかしら)

マミ(屋内に居るのにわかる風の音……。それに、魔力も――)


 ――その時、天井から砕けるような嫌な音がした。


ほむら「ひっ……――――!?」


 破壊されるような音は続けざまに響き、ついに突き刺さった何かが顔を出す。

 人々のざわめきは悲鳴にも変わっていた。


マミ「近くで戦ってるの……?」

ほむら「こ、ここは本当に大丈夫なんですか……!?」

853 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/23(金) 23:32:19.48 ID:e+k4D98V0


 ほむらが抱いた疑問は避難所にいる全員が持ちはじめていた。

 ひとたび空いた穴をはじめにいずれは全て崩れ去ってしまいそうだ。

 民衆に混乱と絶望が渦巻くのを感じ取り、まどかは声を上げた。


まどか「あ、あの! 今ので怪我人はいませんか!?」


 こんな小さな女の子に話してどうなるといのか。まだ頼ろうとする人はいない。


まどか「ここにいたら危険です……! 隣町のほうまで逃げてください! わたしがみんなのことを守るから!」

マミ「……鹿目さん!」


 まどかはみんなの前で衣装を纏い、その力を、意思をアピールする。

 そして、はじめはあっけに取られていたマミもその意思を理解した。


マミ「……ええ、そうね。こんな時まで隠していたって仕方がないわ」

マミ「私達が守らなきゃ! 怪我人は私達が治します!」


*「お前たちは誰なんだ!」


 民衆の誰かが言う。


マミ「私達は――――魔法少女よ!」


 その時、二人の元にある親子がやってくる。そのうちの子供のほうが叫んだ。


*「あっちに落ちてきた瓦礫で怪我した人がいるの……! 治してあげて……!」

まどか「うん! 任せて!」

マミ「鹿目さん、お願い! 私は外を警戒しているわ!」


 二人の言葉が本当だとわかると民衆はついに動き出した。


*「……やっぱり、嘘なんかじゃなかったんだ」


 ……二人のもとに最初にやってきた子供がつぶやく。

 それは、なぎさが前に教会で指を治した少女だった。

854 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/07/23(金) 23:53:14.15 ID:rHeU85zy0
杏子の実家での話が伏線ときましたか。
855 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/24(土) 00:06:17.10 ID:yfDpyaAx0



 宙に浮かぶ魔女の姿は、かつて避難所があった場所の真上にあった。



 マミとまどかが防衛戦をはじめてから間もなく避難所は半壊し、大きな瓦礫と化した。

 暴風が吹くたびにそれは巻き上げられて小さく砕け、削り取られていく。


 幸い、逃げていく民衆を狙い撃ちにするほどの小賢しさは魔女にはない。

 しかし、この戦いには違和感があった。


マミ「おかしいわ…………」

マミ「……どうしてワルプルギスの夜がここにいて、なぎさちゃんと神名さんがどこにもいないの」


 ワルプルギスの夜を食い止め、その被害から守ることに必死になっていた時には考えないようにしていたことだった。


まどか「そんな……まさか……」


 まどかも同じことはずっと感じていた。

 その答え合わせとばかりに、無機質な声は告げる。



QB「死んでしまったよ。戦えるのは君たちだけだ」



 到底受け入れられない答え。

 しかし、ずっと薄々感じていたこと。


マミ「え…………」

856 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/07/24(土) 00:25:38.10 ID:NjvX638m0
えええええ・・・
キュウベェは嘘はつかないんだよなぁ・・・
857 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/24(土) 00:35:40.22 ID:yfDpyaAx0


まどか「マ、マミさん! 今は戦いに集中しましょう……!」

マミ「で、でも、なぎさちゃんと神名さんがやられちゃったのよ。私達だけじゃ、きっと……」

まどか「それでも…………わたしは戦います。わたしたちしかいないなら……」


 後輩の強い思いに、マミも頷いた。


マミ「ええ………… そうね」

マミ「私はなぎさちゃんに守ってきてもらってたけど、こんな時くらいは……なぎさちゃんのためにも」



 ――――二人が決意を固めかけた瞬間、鋭い罵声が割り込む。



「おい!! 適当なことばっか言いやがって! 死んでねぇよ!!」


 しかし、二人は息を呑んだ。


QB「…………」

まどか「あすみちゃん、それ……」

あすみ「生きてるだろ! ……私もなぎさも」



 二人の知ってる、いや、『知っていた人』は、血の気が失せたなぎさをそっと地面に下ろした。



――――――
――――――
858 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/24(土) 00:38:27.56 ID:yfDpyaAx0
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ここまで
次回は24日(土)夜からの予定
859 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/07/24(土) 01:18:33.83 ID:NjvX638m0
乙です。

なぎさはほぼ死人同然の傷をおったからかな?
確かにキュウベェは嘘は言ってないよね。
『2人共』死んだとは言ってないね、安定のミスリードだけど。
860 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/24(土) 23:49:48.33 ID:yfDpyaAx0
少し前




 瓦礫の山で目を覚ます。



あすみ「――……うー」


 長く寝過ぎてしまった朝のような感覚だった。

 爽快な目覚めには程遠い。私は痛みをなくした身体で久々の倦怠感を覚えていた。


 僅かな間、寝ぼけたように意識が遠くにあった。意識が落ちる直前の記憶に思考を巡らせる。



あすみ『――――』


 何気なく振り返り、言葉を失った。

 なぎさは私なんかよりも身を守る術にも長けているし、勘も鋭い。

 まだまだ負ける気なんてなかったのだ。私は。


 人は脆い。少し当たりどころが悪かっただけであっけなく死んでしまう。

 どこから何が来るかなんかわかりようのない状況。勘だけじゃ防ぎきれない攻撃。

 運が悪かったって一言だけで片付けられる。


 私は違う。でもなぎさは――。


あすみ「……そうか」


 私はたぶん、動揺していたんだ。負ける気はなかったが、一人で戦う気もなかった。

 今までのような戦意はもう保てなくなっていた。



 ――――そこからは覚えていない。一人で戦って、いつのまにか瓦礫に埋もれてこのざまだ。



 意識のないなぎさの身体を抱きかかえて歩き始める。

 ワルプルギスの夜は随分と遠くの景色になっていた。


861 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/24(土) 23:55:06.31 ID:yfDpyaAx0
――――
――――



 ……やっと仲間を見つけたと思ったら、何という目で見られなきゃいけないんだ。



マミ「い、息をしていないわ。それに、もうかなり時間が経っていると思う。言いにくいのだけど……」

あすみ「生きてるよ」

マミ「あ、あのね……」


 頭のイカれた奴を宥めるみたいな。死んだことに気づいてない死者を宥めるみたいな。

 現実から目を背けるのは私が嫌いなことのひとつだ。


あすみ「私だって生きてるんだから、今更じゃない?」


 右の頭に手をやる。丸い形を描くはずの感触がなくなり、歪な線をなぞる。


あすみ「なんか、右の目が見えてないんだよね。ていうか触った感じ半分くらい頭が潰れてるんじゃないかと思うんだけど」

あすみ「息もうまく吸えない。鼻に血かなんかが詰まってるみたいで変な音がする」

まどか「あ……あすみちゃんは生きてるの……?」

あすみ「幽霊なんか私は信じないよ。目の前で喋ってる相手が生きてなかったらなんだっていうのさ」

マミ「生きてるにしても……。そんな状態で平気そうに喋ってられるなんて」

あすみ「私は痛みも切り離してるから。そのまま眠りこけちゃったのは、単純に欠損が大きいのとちょっと気が滅入ってたからかな」

あすみ「どんな攻撃食らったかわかんないけどさ、私に比べたらなぎさはまだ綺麗なもんでしょ」

あすみ「そもそもソウルジェムが無事なんだから死んでない。……そろそろなんとか言えよ、インキュベーター」


 黙りこくって様子を眺めてたキュゥべえに話を振る。

 すると、やはり悪びれた様子もなく言った。


QB「べつに嘘をつく気はなかったんだけどな。僕が確認した時点では二人共死んでたし、戦えるのはマミとまどかだけだった」

あすみ「魂のこと知ってる私がそのまま死んでやるわけないじゃん! ふざけるのもいい加減にしてくれる?」

QB「……なぎさは死んだと思い込んでいる状態だね。直接刺激を与えてみればじきに起きるだろう。本人の生きる意思にもよるけどね」

あすみ「生きる意思? 簡単な問題で良かった。それをアイツがあっけなく手放すわけがない」


 こいつは言い訳をするが、どう見ても確信犯だ。

 しかしさすがに観念したらしく、問い詰めればあっさりと態度を変えた。

 ……こうなるなら、半端な思いやりなんて持たずにちゃんと話しておくべきだった。いつから私はこんなに甘くなったのだろうか。

862 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/25(日) 00:50:45.90 ID:P910e1XH0


 キュウべえがソウルジェムに触れて何かの処置を施す。

 すると、なぎさは目を覚ました。


なぎさ「……ここは? あれ!? どうしてみんな!」


 しかし、その一部始終を見ていた二人の反応は、やはり死者を見るような目だった。


あすみ「おはよう。ちょっとの間死んでたんだ。仮死状態ってやつ」

なぎさ「菓子状態……ですか。おいしそうですね」

あすみ「……まだ寝ぼけてるんじゃない? それか死んでる間に脳みそ腐ったか」


 出会った頃からいくつか学年も上がって、年上とばかり接することの多かったなぎさは最近になって特にマセてきていた。

 ちょっと小難しいこと言うようになったというか。

 だから、これは久しぶりに気の抜けたやりとりだった。


 やっと目が覚めたらしいなぎさは、お前に言われたくないよって感じの険しい顔で私を見る。……アンタもか。

 もっとも、別に脳みそが腐ったって私達には何も問題はない。


あすみ「詳しいことは後。それより、そっちはどうなったの?」

マミ「見ての通り、ここは避難所があった場所よ。危なくなったから街の人は逃したの」

なぎさ「そうですか……街の人はみんな守れたわけですね! よくやりましたよ!」

まどか「でもまだワルプルギスの夜が……」

なぎさ「人々を守れたのなら、もう無理して戦わなくていいです。なぎさとあすみで勝てなかった魔女です。これ以上は……きっと勝ち目はありません」

なぎさ「街が壊されるのは悲しいですが、命を守ることが最優先ですよ」

マミ「でも放っておいたら、また街を襲いに行くんじゃないの?」

なぎさ「キュゥべえ。今までに現れた『ワルプルギスの夜』の伝承、最後にはどうなりましたか?」

なぎさ「きっと、物語のように誰かが倒して綺麗に終わりを迎えるだけではなかったのですよね?」

QB「……そうだね。今まで大勢の魔法少女が挑んだけど、勝てたケースが多いとはいえないね」


 思わぬところで話を振られたキュゥべえは渋々答える。


なぎさ「それでもワルプルギスの夜は、世界に破壊の限りを尽くす『魔王』ではなく『災害』……災害はいつか通り過ぎるのです」

なぎさ「今考えつきましたよ。『ワルプルギスの夜』の弱点。それはきっと、飽きっぽいところです!」

なぎさ「なぎさたちが戦うとすれば、再び人が危険に晒された時です。その時は再び人々を逃がすために戦いましょう!」

863 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/25(日) 22:16:46.44 ID:P910e1XH0


あすみ「その弱点いいじゃん。実を言うと、こっちも飽きてきてたとこだったしねえ」

なぎさ「もう一度言うけど、街の人を逃してくれたのは本当によくやりましたよ! 誇りを持ってください!」

あすみ「私達も逃げるよ」


 戦うにもすでに万全じゃない。魔力に余裕があるわけでもない。

 前までと違って縄張りに人が増えたことも多少響いてた。今後もあるし、余りは怪我の回復に当ててほしいところだ。


まどか「……うん!」

マミ「ええ、そうね」


 破壊された街の残骸を振り返る。これからどこへ向かおうか。

 私はこのまま人前には出られないが、敵地でゆっくりともしてられない。



 空高くに浮かぶワルプルギスの夜を眺めて、この場所に別れを告げた。


864 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/07/25(日) 22:54:54.74 ID:orEn5TOe0
確かにワルプルギルを天災だと思えばやり過ごすのもあいですよね。
一般人を逃がすことが出来れば無理にたたかう必要も倒す必要もないわけですから。
あすみはこのままおさらばしちゃうのかな?それはそれで寂しい・・・
865 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/25(日) 23:16:36.10 ID:P910e1XH0

――――
――――



 嵐が去った場所で、私達は再びバラバラになった。

 まどかとマミは、離れた避難所に行った家族や一人で待ってるほむらに会いに行ったらしい。

 家族や学校のみんなにもバラしちゃったんだから何と言われるか気にならないことはないが、それは私の問題じゃない。


あすみ「……で、アンタはなんでこっちにいるの? さっさと家族んとこ行きなよ」

なぎさ「そうなのですけど……少しは治してからにしないと、その姿をうっかり見られでもしたら」


 なぎさは顔色が戻って生者らしい姿になっているものの、今の私の姿じゃ言われたとおりゾンビにしか思われない。

 なぎさだって治療が得意な方ではあるものの、それに特化してるわけじゃない。

 完全に回復するにはそれなりに消費も時間も必要だろう。


なぎさ「結局なぎさたちの身に何があったのです? あとで話してくれるって言ってたのです」

あすみ「こうなったカラクリは簡単だよ。魔法少女の本体はソウルジェムで、これが無事なら本来死ぬことはないってだけ」

あすみ「身体が死んで、心まで死んだ気になってたから一時的に死んだようになってたけど、ようは気の持ちようってこと」

なぎさ「……前から知ってたのですか?」

あすみ「うん。魔法少女になったばっかりの時に知ってたけど?」


 けろっと言ってみせる。

 その真実は、本当に私にとってなんでもなかったから。


あすみ「そのおかげで嫌な感覚を切り離せるんだって。だから私にはちょうどよかった」


 他の少女は絶望することもあるって、そんな気持ち私にはわからない。

 こんな身体なんかどうでもいいし、死ぬことなく安全に戦えるほうがいいに決まってる。

 けど、言ったらどうなるかってことは考えないわけじゃなかった。それに私が騙されたと思ったのは『もう一つ』だ。


あすみ「本来って言ったのは、死ぬ条件はもう一つあるんだ。心が死んだら私達は死ぬから」

あすみ「それが私達が狩ってる、『魔女』ってやつ」
866 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/07/25(日) 23:24:23.73 ID:KfppxChBO
ここで魔女化バラして大丈夫か?
867 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/25(日) 23:54:14.37 ID:P910e1XH0


 それでも、それを知った時の私の心に大して響くことはなかったけど。


なぎさ「……!?」

あすみ「『心が死ぬ』ってのは、絶望するってことらしい」

あすみ「死は大抵の人にとって絶望だから。死ぬことが唯一の救い、ってレベルまで来ちゃってもそれはそれで絶望的だしねえ」

あすみ「でも、絶望したから契約したはずなのにおかしい話だと思った」


 契約したばかりの頃に思ったことをぽつりぽつりと話していくと、なぎさは納得したようにこれだけ言った。


なぎさ「なぎさは絶望してなかったから助かったんですね!」

あすみ「……まあ、そうなるね」


 きっと、響いていないなんてことはない。どうでもいいと思ってる私とは違う。

 でもなぎさはそれ以上に、そんなことじゃ揺るがないような『何か』を持ってるんだろう。

 それは私が出会った頃のなぎさは持っていなかったもので、そして――



 その『何か』は、私にも今ならわかる気がした。



なぎさ「……あすみはいつも無頓着なのです」

あすみ「別にいいじゃん。片目見えないのはちょっと不便だけど他に困ることもないよ。見た目もどう見ても死んでるってとこから脱せられればいい」

なぎさ「色んなことが終わって余裕が出来たら、いつかちゃんと治します」

あすみ「『ちゃんと』は治んないよ」

なぎさ「それも……いつか」

あすみ「………」

なぎさ「あすみのとこにもまた戻ってきます。だから、いつまでもこんなところでひとり寂しく隠れていないでください」

868 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/26(月) 00:18:51.51 ID:CUOtmzlr0


 ……どういう意味で言ったんだろうか。

 契約する前から元々ある傷はずっと癒えない。たとえ魔法で消せても本当の意味で消したと言えるだろうか。


 傷があるから恨みは消えない。恨みを忘れないから『呪い』は続く。


あすみ「――さて、と」


 なぎさの姿を見送って、ポケットに手を突っ込んだ。


あすみ「本の続きでも読むかな……」


 何年も住んでやっと落ち着けたと思った街は、伝説の魔女なんてものによってたった数時間で壊された。

 いつも本を読んでた訓練場所にももう当分は戻れないだろう。


 それでも私はずっと前から、同じように暇つぶしをしてる。

 全てを解決するような素敵な打開策なんてなくて、なるようにしかならないし、失ったものは戻らないし。

 でも。



あすみ(――……この日常まで失わなくてよかったかな)




―『最終・なぎさとあすみの見滝原』END―
869 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/26(月) 00:22:26.62 ID:CUOtmzlr0
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ここまで
次回は30日(金)夜からの予定
870 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/07/26(月) 19:14:45.14 ID:BeQRVJm8O

倒す方法ないから仕方ないけどなんかあっけない幕切れだな
871 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/07/31(土) 00:14:44.11 ID:wY+7NR7m0

いつかのはなし
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――――


 …………ワルプルギスの夜の襲撃以降、自分たちの街――見滝原は大きく変わってしまった。

 以前の訓練場所も使えなくなったから、適当な空き地を使うようになった。

 見滝原には人の居ない荒れ地がたくさんできたし、逃げた先の風見野は自然の多い町だ。使える場所はいくらでもあった。


 もちろん、本当は早く元の見滝原に戻るのがいい。それでもいつもの仲間と共に過ごす、変わらぬ日常はあった。

 魔力の余裕はなかなかできなかった。

 余裕が出来たなら、優先すべきは魔力の回復と負傷の回復へ――折角逃げきれたのに魔女になっては元も子もない。伝説の魔女との戦いで負傷したのは全員だった。

 『脳みそ半分なくなっても人は生きてられるんだって』と、多分本から得た雑学をあすみは披露した。

 『でもそもそも人じゃないし、痛くないしどうでもいいから』と、あの日あすみと約束したことは本人の言葉によって先延ばしに先延ばしになっていた。



 それからついに人々の生活も落ち着いて余裕を取り戻してきたある日、あすみはいつしか姿を見せなくなった。

 影のようにひっそりふわふわと街の中を生きてきた彼女は、元からいなかったかのように消えてしまった。



 ……でもまさか、あすみが簡単に消えることも、見捨てて去ることもないって。なぎさにはそれも、お見通しだったのですからね?

 あすみは結局他の人とは距離を取って深く関わることはしなかったけれど、なぎさにとっては一番付き合いの長い『戦友』ですから。



なぎさ「……これで約束は果たせましたよね? あすみ」

あすみ「まぁ、そう思っていいかもね。私はもう、人でも魔法少女でもないけれど――」

なぎさ「そんなことはどうでもいいのですよ! あすみの心は死んでないし、絶望もしてない。それが重要なのです!」

あすみ「そうだね。じゃあ、見えてないとこも確かめてみる?」



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