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渋谷凛「ゴースト レイト」
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1 :
◆TOYOUsnVr.
[saga]:2020/07/04(土) 22:33:03.95 ID:4if+2Hlr0
嫌な空気の夜だった。真綿で首を絞められているかのように呼吸がしにくかった。
空にはどんよりと重たい雲が浮かび、月も星も見えない。
現在私がいる場所が神社というのもあって、言いようのない気味の悪さが漂っていた。
唯一の光と言えば本殿の賽銭箱の上で、ちかちかと明滅している頼りない電灯のみで、それがいっそう私の気分を落ち込ませる。
胸の内に滞留しているもやもやとした不快な何かを乗せるように、はぁ、と息を吐いた。
「こういう日も、あるよ」
背後から、優しく温かい声が届く。「うん」と力なく返事をして見やれば、そこには柔らかな笑みを浮かべたスーツ姿の男、アイドルである私のプロデュースを担当してくれている彼、プロデューサーがいる。
「失敗は誰にでもあるし、普段は簡単にできることがどうしてか上手くいかない、なんて日もある」
「うん」
「だから気にするな、とは言わないけど」
彼は一歩を踏み出して、私の隣に並ぶ。
そうして「凛」と短く私の名前を口にして「ちょっと話そうか」と続けた。
私が肯定も否定も返さずにいると、彼はそれを肯定と受け取ったのか本殿の方へと歩き出して、石の階段に腰かける。
自身の隣の空間をぽんぽんとしているのを見るに、こっちにきて座れ、ということらしい。
素直に私はそれに従って、彼の隣に腰かける。
ややあって、彼が口を開いた。
「凛はさ、こういうこと考えたことある?」
「……?」
「もし、自分をプロデュースしているのが俺じゃなかったら……違う人だったら、って」
「ない、けど」
けど、プロデューサーが担当しているのが私じゃなかったら、ということなら、ある。
喉元まで出てきた言葉をぐっと飲みこんで、再び私は「ない」と繰り返した。
「俺はね、あるんだ。凛がもっと、才能も実力もコネクションもある人に担当されていたら、って」
「……」
「そうしたら、きっと凛はもっともっと早くに曲をもらっていただろうし、大きなライブも俺と一緒に活動するより一年は早くできたんじゃないか、とか。……そういうこと、何年か経った今でも未だに思う」
「…………そっか」
私が思っていたこととほぼ同じこと彼が言うものだから、びっくりしてしまう。が、同時に温かい気持ちにもなる。
なんだ、似た者同士だ。
「でも、こうも思うんだ」
「ん?」
「やっぱり凛をプロデュースするのは俺がいいな、って」
「……生放送で、失敗しちゃうアイドルでも?」
「もちろん」
少し照れくさそうに彼は口角を上げて「凛じゃなきゃ嫌だぜ」と平常とは異なる口調で、私の肩を小突いてくる。
それだけの単純なことなのに、気付けば私の気分は随分と軽くなっていて、魔法みたいだ、と思う。
すっかり晴れやかな気分になった私は、軽い冗談のつもりで「私は別に、プロデューサーじゃなくてもいいかな」とおどけて彼を小突き返した。
「えー」
わざとらしく悲しそうな顔を作って、プロデューサーは立ち上がり「さて、そろそろ宿に戻ろうか」と歩いて行く。
その後ろ姿を最後に、プロデューサーは、消息を絶った。
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1593869583
2 :
◆TOYOUsnVr.
[saga]:2020/07/04(土) 22:33:43.91 ID:4if+2Hlr0
〇
翌朝、宿泊しているホテルのベッドで目を覚ました私がプロデューサーに電話をかけると、該当する番号は使われていない旨を示す電子的な声が返ってきた。
そんなはずはない。
昨日まで確かに繋がっていたのだから。
何か、通信障害でも起きているのだろう。
そう思って、私は手早く支度を済ませ、部屋を出る。
プロデューサーが宿泊している部屋のドアをノックすること、数回。
ようやく室内から物音が返って来て、がちゃりと鍵が開いた。
ほっと胸を撫でおろすのも束の間、期待に反して部屋から出てきたのは金色の髪をした、肌の白い小さな男の子だった。
「どうしたの?」
「…………」
何が何だかわからず、思考がフリーズしてしまう。
しばらくしたのちに現実を理解した私は、男の子に部屋を間違えてしまったと詫びて、その場を離れた。
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