【艦これ】金剛「ブレンダム基地分遣隊?」【トーマス】

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 19:43:49.88 ID:wZT8Xz8wO
・時代は現代。
・艦娘は昔の艦の魂が人の姿になったものという設定。
・深海棲艦は出ません。
・戦闘はしませんが事故はするかも。

「ソドー島派遣任務」という、お話。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1593859429
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 19:55:39.09 ID:wZT8Xz8wO
金剛「ブレンダムっていうと、確かイギリスのソドー島にある港町ですヨネ?なんで突然イギリスに?」

提督「イギリスの艦娘たちが大規模作戦だとかなんだとかで、艦娘の数が足りないんだと。そこで我々のほうから何隻か派遣することになった」

金剛「なるほど、私のほかには誰が派遣されるんデス?」

提督「龍驤、青葉、阿武隈、若葉、初霜だ。君を含めて六隻になる。まぁ、ソドー島の近辺は深海棲艦が殆ど居ないらしいからあまり心配しなくて良さそうだが」
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 20:07:50.11 ID:wZT8Xz8wO
イギリス本土のマンチェスター空港に、一機の旅客機が降り立った。金剛たち六隻と日本の鎮守府の作業員複数人を乗せてきたチャーター便だ。

阿武隈「イギリスに来るのは2018年の欧州遠征以来ですねぇ」

青葉「ここからバロー・イン・ファーネスまで向かうんでしたよね。確かバロー・イン・ファーネスって……」

金剛「えぇ、私の生まれ故郷デース。今日はバロー・イン・ファーネスの宿に泊まって、明日ソドー島行きの特急列車に乗りマース」

若葉「どこか楽しそうだな」

初霜「日本から遠い故郷に帰るんだから、嬉しいんでしょう」

そうして彼らはバスや列車を乗り継ぎ、バロー・イン・ファーネスに到着した。
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 20:19:41.22 ID:wZT8Xz8wO
その日の夜、金剛はホテルの外に出て夜空を眺めていると、初霜がやってきた。

初霜「金剛さんどうしたんですか?なんだか考え事をしてるみたいですけど」

金剛「昔のことを思い出してたんデス。私がまだこの街で建造されてた時のことを」

初霜「もしよろしければ、その頃の話を聞きたいです」

そうして金剛は昔話を始めた。作業員が忙しく働いている様子を眺めた毎日の話、日本に行くのを楽しみに待った日々の話、進水式の話。沢山の話をした。

金剛「あっ、そういえばあの機関車は今どうしてるでしょうネ」

初霜「機関車?」

金剛「この街には昔ファーネス鉄道という鉄道があったネ。造船所のすぐ近くまで線路が来てて、建造中で外の世界を知らない私に色んな話をしてくれた機関車が居たデス。確か名前は……」
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 20:32:21.90 ID:wZT8Xz8wO
一方そのころ、夜のナップフォード駅では一日の仕事を終えたエドワードとバーティーが話をしていた。

バーティー「昔、ブラスバンドを乗せた僕がぬかるみにはまって動けなくなったとき、楽器の音を聞いて助けにきてくれたよね」

エドワード「うん。楽器の音が『SOS』のモールス信号の音だったからね。助けを求めてるって解ったのさ」

バーティー「なんでそんなことを知ってたんだい?モールス信号って言ったら、昔の船が使うものじゃないか」

エドワード「ファーネス鉄道に居た頃に、建造中だった軍艦が教えてくれたんだよ。明るい女の子だったけど、確か名前は……」

エドワードがその軍艦との思い出を語り始め、バーティーは興味深く聞いた。その思い出の話は、また今度にしよう。
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 21:06:04.73 ID:wZT8Xz8wO
「金剛と昔馴染み」という、お話。

バロー・イン・ファーネスに朝日が昇り、新しい一日が始まった。派遣部隊の一行はホテルで朝食を取り終えると、駅に向かった。
ところが、駅には列車が見当たらない。一行が戸惑っていると駅員が駆け寄ってきた。

青葉「どうしたんですか?」

駅員「それが派遣部隊の皆さんには臨時の特急列車に乗ってもらう予定だったんですが、特急列車用の機関車は2両とも整備に時間がかかっているらしくて来れないと」

龍驤「んじゃどうやってブレンダムまで行けばええんや?」

駅員「急遽、ここからブレンダムまで行く臨時の特別列車を編成したと連絡が来ました。あと3分ほどで到着するはずです」

しばらく経って、青いテンダー機関車が客車を引いて到着した。

エドワード「お待たせいたしました。さぁ皆さん乗ってくだ……!?」

エドワードは金剛の姿を見て驚き、言葉を失った。同時に金剛もエドワードと見つめあったまま固まっていた。

阿武隈「金剛さんどうしたんですか?いきなり固まって」
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 21:12:34.93 ID:wZT8Xz8wO
金剛「エドワード!」

エドワード「金剛!」

金剛はエドワードに駆け寄った。

龍驤「なんやあんたら、知り合いなんか!?」

金剛「知ってるも何も、昔馴染みネ!」

エドワード「驚いたなぁ!まさか金剛にまた会えるなんて!」

駅員「あぁ、いいところを邪魔して悪いんですけどそろそろ出発の時間ですよ」

一行が客車に乗り込むと、金剛は昨夜初霜に話した昔話を再び皆に語った。
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 21:20:02.36 ID:wZT8Xz8wO
金剛「外の世界を知らない私はドックの近くまで資材を運んできたエドワードに興味を持って、女の子の姿をとって近づいたネ」

初霜「それって船幽霊みたいな感じですよね」

金剛「まぁ建造中だったから小さい女の子の姿になっちゃって、作業員さんに見つかったらマズいからひそひそと近づいたヨ」

エドワード「あの時はどうしてこんなところに女の子が?って思ったよ。そしたら自分がこの建造中のこの艦だって。最初は信じられなかったけど」
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 21:25:56.73 ID:wZT8Xz8wO
金剛「エドワードは外の話を沢山してくれて、毎日が楽しくなったヨ」

エドワード「日本に旅立っていった時は寂しかったけど、その後すぐにファーネス鉄道からソドー鉄道に転属になったからあんまり誰にも話したことはなかったんだ」

思い出話が終わると、途中のウェルスワース駅でエドワードは停車する。他の列車の通過待ちだ。
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 21:39:23.68 ID:wZT8Xz8wO
ゴードン「どうしたエドワード、何をそんなに嬉しそうな顔をしてるんだ」

ゴードンの急行列車がウェルスワース駅に停車した。

エドワード「ファーネス鉄道に居た頃の昔馴染みに会ってね。これからブレンダムまで彼らを乗せていくんだ」

ゴードン「なっ!?ファーネス鉄道っていうとそりゃ百年以上も前の話じゃないか!」

金剛が客車の窓を開けて身を乗り出す。

金剛「Hi!エドワードの昔馴染みデスヨ!しばらくブレンダム港に居るからよろしくネ!」

笛の音が鳴り、エドワードが出発する。ウェルスワース駅には気の抜けた顔をしたゴードンが残された。

ゴードン「ありゃどうなってるんだ?どう見ても百歳以上には見えなかったぞ?」
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 21:58:06.35 ID:wZT8Xz8wO
ブレンダムの港にエドワードが到着すると、ビルとベンがクレイピッツから陶土を載せた貨車を牽いてきていた。

ビル「やぁエドワード。嬉しそうにしてるね」

ベン「解った!特別なお客さんを乗せる仕事を任されたんだ!」

エドワード「あはは、そうだよ。昔馴染みをここに連れてきたんだ」

ビル「昔馴染みって、まさか君がメインランドで働いてたころの?」

ベン「百年以上前じゃないか、じゃあそのお客さんって」

ビル&ベン「「すっごいお婆ちゃんだ!」」

金剛「失礼だヨ!仮にお婆ちゃんだとしても年長者は敬うものデース!」

怒った金剛がドアを開けて飛び出してきた。ビルとベンは若そうな彼女の姿を見て驚く。

エドワード「ビルとベン、彼女たちはブレンダムの港を護るために日本からやって来たんだよ。失礼じゃないか」

ビル「えっ、じゃあ彼女たちが日本から来た艦娘さんたちなんだ」

ベン「ケイトリンかコナーの特急列車で来るって聞いてたから、エドワードの列車に乗ってるなんて思わなかったんだよ」

ビル&ベン「「ごめんなさい」」

金剛「解ればいいんデス」
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:04:34.51 ID:wZT8Xz8wO
一連の光景を見ていた龍驤が客車から降り、呆れながら言う。

龍驤「金剛、うちら艦娘は大体70歳以上なんやからいちいち怒ってたら埒が明かんで。ちびっ子相手に大人げない」

ビル「ちびっ子っていうけどさ、見た目じゃ何もわかんないっていうじゃないか」

ベン「貴方だって70歳以上みたいだけど、体は小さいじゃないか」

それを聞いた龍驤は頭に来た。

龍驤「なんや君ら!じゃあ君らは何歳なんや言ってみぃ!」

ビル&ベン「やだよーだ!」

ビルとベンは空の貨車を牽いて去って行ってしまった。

エドワード「ごめんね、彼らはいつもああなんだ」

龍驤「しゃあないちびっ子やな。ところで、ほんとは何歳なんや?」

エドワード「あぁ、ビルとベンは確か……1966年にはブレンダムで働いてるのを見たから、もう50歳は超えてるね」

龍驤はずっこけた。
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/04(土) 22:08:39.54 ID:wZT8Xz8wO
このお話の出演は、ゴードン、エドワード、ビルとベン、金剛、そして龍驤でした。(今日はおしまい)
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/05(日) 18:13:40.08 ID:uBuoyiPlO
「大砲でびっくり」という、お話。


ブレンダム港の端にある建物がブレンダム基地で、一行はここでしばらくの間寝泊まりすることになった。
建物の窓から外を見ると、沢山の機関車たちが忙しく働いている様子が見える。

ある日の昼、阿武隈が港を歩いていた。


阿武隈「皆さーん、こんにちはー」

カーリー「こんにちは阿武隈、ブレンダム港にはもう慣れた?」

阿武隈「うーん、ちょっと騒がしいけどいいところですよね」

ソルティー「ははは、ここは夜も騒がしくなる時があるくらい忙しい所だからな。活気があるのさ」

クランキー「昔話ばっかりして余計騒がしくしてるくせによく言うぜ」
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/05(日) 18:16:05.91 ID:uBuoyiPlO
彼らは楽しそうに話していたが、ビッグ・ミッキーは何だか不安そうな顔をしていた。近くにいたポーターが聞く。


ポーター「殆ど表情が変わらない君がそんなに不安そうにしてるのは珍しいね」

ビッグ・ミッキー「うーん、海軍には苦い思い出があってね」

ポーター「思い出?ブレンダムに基地が置かれたのは7年程前だけど、何かあったっけ?」

ビッグ・ミッキー「いいやもっと昔、俺がブレンダム港に設置される前の話だよ」

ポーター「君はブレンダム港ができた時に設置されたんだったよね、前はどこに居たの?」

ビッグ・ミッキーが口を開こうとしたとき、阿武隈が挨拶をしようと近寄ってきた。

ビッグ・ミッキー「その話はまた今度な」
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/05(日) 18:27:46.47 ID:uBuoyiPlO
その日の夕方、ブレンダム港にある一隻の船がやってきた。


クランキー「こりゃ珍しい。海軍の輸送船だな」

ビッグ・ミッキー「海軍の輸送船!?」


ビッグ・ミッキーは珍しく大きな声を上げた。


カーリー「どうしたのよ。艦娘の皆さん向けの物資を積んだ輸送船が来るって聞かなかった?」

ビッグ・ミッキー「そ、それは聞いてたよ。カーリー、アームの動かし方に気を付けるんだぞ。絶対に事故を起こさないようにな」

クランキー「なんだよいつもは無口なくせに」
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/05(日) 18:40:53.46 ID:uBuoyiPlO
夜になると、サムソンがブルーマウンテンの採石場から石材を運んできた。


ポーター「今日はブラッドフォードと一緒じゃないんだね」

サムソン「ああ、彼はブレーキの修理中だから一緒に手伝いにこれなかったんだ。ところで、クランキーは随分と慎重に仕事してるじゃないか」


クランキーは仕事に遅れが出ない程度に、ゆっくりとフックを上げたり下げたりしている。


クランキー「ビッグ・ミッキーのやつが慎重にやれって言うんだ。何考えてるんだか」

ソルティー「そういえば昔の話を思い出したぞ、アメリカの海軍基地が大火事になっ」


その時、海のほうから何かが爆発したような大きな音が聞こえた。


サムソン「ひっ何だ!?花火か!?でも今日は花火の予定があるなんて聞いてないぞ!」

ビッグ・ミッキー「爆発の音だ!輸送船の弾薬に引火したんだ!みんな逃げろ!大火事になるぞ!」

サムソン「爆発だって!?」


二台は大慌てだ。
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/05(日) 18:48:19.99 ID:uBuoyiPlO
クランキー「おいビッグ・ミッキー……」

ビッグ・ミッキー「みんな逃げろ!爆発事故が起き」

クランキー「おいビッグ・ミッキー!何を騒いでるんだ。この輸送船の積荷に弾薬なんて無いぞ」

ビッグ・ミッキー「な?なんだそうなのか?」

サムソン「じゃぁこの音はいったいどこから?」

カーリー「どうやら、彼女たちみたいね」

海のほうを見ると、艦娘たちが空砲を撃っているところだった。艤装の動作確認を行っていたのだ。

ビッグ・ミッキー「なんだ……」

サムソン「君が爆発だって言うから驚いたじゃないか、勘違いだったなんて」
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/05(日) 18:55:45.73 ID:uBuoyiPlO
ソルティー「そうか、ビッグ・ミッキー。お前さんがアメリカの海軍基地のクレーンだったんだな」

カーリー「どういうこと?」


ソルティーが昔話を始めた。


ソルティー「その海軍基地は弾薬の集積場があって、ある日の夜大型クレーンが輸送船に積込作業をしていた。そこへ不注意な海軍のタグボートがやってきて
      艀にぶつかった。倒れたドラム缶から火が上がって基地は大火事に。爆発も沢山起きて、輸送船と大型クレーンは海に沈んだんだ」


ビッグ・ミッキーが渋い顔をした。


ビッグ・ミッキー「そうだよ。その大型クレーンってのは俺のことさ。あの時は本当に酷かったよ」

ポーター「海軍には苦い思い出があるって、そういうことだったんだね」

クランキー「どうりでこの輸送船におびえるわけだ」
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/05(日) 19:14:06.29 ID:uBuoyiPlO
次の日の朝、ブレンダム港はいつもよりも忙しかったので、手伝いとしてクレイピッツからティモシーが来ていた。


ティモシー「へぇ、僕もアメリカ生まれだけどビッグ・ミッキーもアメリカ出身だったんだね」

ビッグ・ミッキー「アメリカの港も毎日忙しかったぞ。沢山のタグボートたちも働いてたが、あいつら元気かな」

ティモシー「そういえばアメリカの港で船に積まれた時、近くお喋りなクレーン船が居たなぁ。ちょうどソルティーみたいに」

ソルティー「うん?」


するとビッグ・ミッキーは何やら不思議そうな顔をした。


ビッグ・ミッキー「そのクレーン船、確か浚渫作業……ドブ浚いをしてなかったか?」

ティモシー「あぁ……確かそうだったような」

ビッグ・ミッキー「ならそいつはきっとスカトルバット・ピートだな。あいつは噂話ばっかりして、デマを広げては港が大騒ぎになったもんだ」
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/05(日) 19:24:06.71 ID:uBuoyiPlO
カーリー「ビッグ・ミッキー、楽しそうね。今までになく喋ってる」

クランキー「あいつまで昔話ばっかりするようになったらどうすりゃいいんだ。ソルティーだけでも面倒臭いのに……ソルティー?」


クランキーが線路に目を向けたが、ソルティーが居ない。


カーリー「ソルティーなら今整備中よ。ほら、あっちで艦娘のみんなと楽しくお喋りしてる」


ソルティーと艦娘たちは、どうやらお互いに知っている海の伝説などを話し合っていた。


ポーター「これでソルティーの話のレパートリーが増えて、僕らも退屈しなくなるんじゃないかな」

クランキー「そういう問題じゃないんだよな……」



クランキーは大きなため息をつくのだった。
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/05(日) 19:25:12.22 ID:uBuoyiPlO
このお話の出演は、阿武隈、サムソン、ポーター、ソルティー、ティモシー、クランキー、カーリー、そしてビッグ・ミッキーでした
(今日はおしまい)
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/06(月) 17:00:19.97 ID:5VxoEwZ2O
「パーシーと航空母艦」という、お話。


ある日の朝、龍驤がブレンダム港の岸壁で腕を抱えて悩んでいるようだった。


ソルティー「おはよう!一体どうしたんだ?」

龍驤「それがな、航空隊の腕が鈍らんように飛行訓練を行いたいんやけど、発着に使えるような広い場所がないんや」

ソルティー「確かにブレンダム港には建物や線路も沢山あるからな。でもお前さんが沖に出れば済むことじゃないのか?」

龍驤「そうしたいところやけど基地の燃料タンクの重油が切れかけで、飛行機は飛ばせてもうちが沖に出れへん」

ソルティー「そうか、重油を積んだ列車は今日の午後ブレンダムに到着する予定だったな」
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/06(月) 17:24:44.69 ID:5VxoEwZ2O
 そこへ、パーシーが小麦粉を積んだ貨車を牽いてきた。


パーシー「おはようソルティー。そこの女の人は?」

ソルティー「彼女は龍驤だ。例の日本から派遣されてきた艦娘さ」

龍驤「ん?あぁよろしゅうな」


 パーシーはソルティーから事情を聞いた。話を聞いたパーシーは龍驤の助けになりたかったし、艦娘という特別なお客さんを乗せて走りたくなった。
 ちょうど彼は、昨日沢山仕事をした代わりに今日は一日休暇を貰っていたので、龍驤を乗せていく暇はある。
 機関士がハット卿に確認を取って許可を得るとパーシーは空いている客車を探しに行った。
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/06(月) 17:37:30.78 ID:5VxoEwZ2O
パーシー「といっても、どの客車も忙しそうだなぁ」


 ナップフォードの操車場に着くと、ちょうど二両の客車が暇そうにしていた。


オールド・スローコーチ「あらパーシーお久しぶり。元気にしてた?」

ハンナ「パーシーも暇そうね!私を引いていってくれないかしら?」


 パーシーは二両を見比べた。ハンナを連れて行けばスピードを出せとうるさくすることはわかりきっている。
 その点、オールド・スローコーチもハンナと同じ古い客車だが性格は穏やかだし、何よりもとは豪華客車だったので日本からの来客にも失礼にならない。
 どう考えてもオールド・スローコーチのほうが適切だと思った。パーシーが彼女を連結しようとすると、その時。


フィリップ「待ってパーシー!オールド・スローコーチは臨時列車に必要なんだ!」


 フィリップが割り込んできてオールド・スローコーチを連結し、連れて行ってしまった。
 ハンナが笑顔でパーシーを見つめている。パーシーは苦笑いするしかなかった。
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/06(月) 17:45:09.37 ID:5VxoEwZ2O
 ハンナに押されてスピードを出した状態で、ブレンダム港にパーシーが滑り込んできた。


龍驤「なんや騒がしいな。ってもしかしてどっか連れて行ってくれるんか?」

パーシー「ソドー島のどこへでもお連れしますよ!どこがいいですか?」

龍驤「そうやね、飛行場みたいなところはこの島にはあるん?」

パーシー「ありますよ!」


 パーシーが到着したのはソドー空港だった。
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/06(月) 17:49:28.82 ID:5VxoEwZ2O
龍驤「あかんて!旅客機が発着してる空港を間借りなんてできるわけないやん!他にはないん!?」

パーシー「ドライオー駅の横にプロペラ機とか、ヘリコプターが飛べる飛行場がありましたけど」

龍驤「おぉ、そこならええんとちゃう?」

パーシー「大分前にフットボール場になっちゃいました」

龍驤「あらら……なら広くて平らな場所に連れてってくれへん?」

パーシー「それなら!」


 今度はマッコールさんの農場に到着した。
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/06(月) 17:56:10.43 ID:5VxoEwZ2O
龍驤「農場!?しかもこんな動物たちが沢山いるところで飛行機飛ばせるわけないやん!」


 次にパーシーはナップフォードの操車場へ到着した。


龍驤「確かに動物はおらへんけど!客車に貨車だらけやし線路もある中で飛行機飛べへんやろ!」


 今度はブルーマウンテンの採石場。


龍驤「広い場所もあるけどな!この現場で労災起こす気か!?」


パーシーは空母、ましてや艦娘ともなると殆ど知識を持ち合わせていなかったので、どこに行っても待っているのは龍驤のツッコミだけだった。
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/06(月) 18:04:57.26 ID:5VxoEwZ2O
 そして午後になると、パーシーはハーウィックに到着した。ここは併用軌道が多く開けた場所も少しある。


龍驤「うーん、ここならまぁ発着できるかもしれんなぁ。一応やってみるか」


 龍驤がハンナから降りようとすると、かなり強い風が吹いた。ハンナの車体がガタガタと揺れる。
 すると、線路の上をレールボートのスキフがゆっくりと走ってきた。


スキフ「今日ハーウィックでは一日中強い風が吹くから、みんな飛ばされないように注意、ちゅ、注意してぇぇぇぇぇ」


 また強い風が吹き、それを帆に受けたスキフはどこかへ行ってしまった。


龍驤「うーん、強風ならやめとくわ。そろそろブレンダムにも重油が届いとるやろうし、帰ろパーシー」
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/06(月) 18:13:35.84 ID:5VxoEwZ2O
 パーシーは悲しかった。飛行機を飛ばせる場所がないのでどうしようもないはわかっていたが、自分が役に立てていないように思えた。
 本線を走っていると、ゴードンの丘に差し掛かった。ハンナが興奮している。


ハンナ「ねぇ空母さん、スピードを出すことについてどう思う?」

龍驤「んあ?まぁ飛行機の発艦には自分の速度が出てることも大事やし、まぁ必要なんとちゃう?」


 ハンナはそれを聞いて、龍驤もスピードを出すのが好きだと勘違いしてしまった。更にちょうどパーシーが丘の頂上に到達している。


ハンナ「パーシー!一気に駆け降りるのよ!」

パーシー「何言ってるの!危ないから駄目だよ!」

ハンナ「空母さんもスピードを出すのが好きなんだって!」


 ハンナが揺れる。当然パーシーはブレーキをかけていたが、そこで問題が発生した。


機関士「大変だ!ブレーキが上手くかからない!」
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/06(月) 18:26:20.52 ID:5VxoEwZ2O
 パーシーは昨日沢山働いた上に、機関庫に戻って整備を受けることもなく、今日も一日中龍驤を乗せて島中を走り回っていたのでブレーキが故障したのだ。


ハンナ「イエーイ!素晴らしいわぁ!」


 ハンナは大喜びだが、パーシーは叫びながら丘を下った先にあるカーブをなんとか曲がりきった。だが、ブレーキがかけられずスピードを落とせない。
 龍驤がハンナのデッキに出てきて、機関士たちに呼びかける。


龍驤「どうしたら助けを呼べるんや!?」

機関士「沿線の電話機はこれじゃ使えませんし、ヘリコプターのハロルドあたりが見つけてくれればあるいは!」

龍驤「ヘリコプター!?そいつはどういう用途のなんや!?」

機関助手「ソドーレスキューセンター所属のヘリコプターですよ!」

龍驤「レスキュー!?それならいけるで!」
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/06(月) 18:37:50.86 ID:5VxoEwZ2O
 龍驤は人の形をした紙を取り出し、デッキから外へ向けて投げた。すると紙は飛行機に変わり、飛び立っていった。


龍驤「頼んだで!」


 ハロルドがクロンク駅の周辺を飛行していると、緑の飛行機が凄いスピードで突っ込んできた。


ハロルド「何だあれは?あんな飛行機この辺じゃ見たことないぞ?」


 だが、ハロルドはその飛行機の塗装が旧日本軍のものだと気づいた。更に、翼を左右に振っている。


ハロルド「あれはロックウィングだ!きっと何かあったに違いない!」


 ハロルドは飛行機の飛び去った方角へ向かった。
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/06(月) 18:47:33.80 ID:5VxoEwZ2O
 ハロルドがマロン駅上空に着くと、パーシーとハンナが猛スピードで突っ込んでくる。幸いにもぶつかりそうな車両は居ない。
 龍驤の下へ飛行機が戻ってきた。


パーシー「ブレーキが壊れたんだ!止まれないんだよ!」

ハロルド「今ロープを降ろすから、どこかに繋いで!流されたトビーを助けた時のことを思い出すんだ!」


 ハロルドが降ろしたロープがパーシーの後ろのバッファーに繋がれる。ハロルドは列車の進行方向と逆に向けて飛び始めた。
 ゴードンの丘を過ぎて落ちてきていたスピードが、ますます落ちていく。ハロルドは力を振り絞った。
 そして、キルデインの分岐点でようやく列車は止まった。
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/06(月) 19:00:40.50 ID:5VxoEwZ2O
 トーマスに牽かれてパーシーとハンナがブレンダムに戻ってきた。


パーシー「あの飛行機はどうやって飛ばしたのかよく解らなかったけど、最初からそうやって飛ばせばよかったんじゃない?」

龍驤「あれはうちら艦娘の特殊能力ってやつでな。詳しいことは機密やから見せびらかすのは駄目なんや」


 龍驤がハンナから降りる。なんだか少々疲れているようだった。


パーシー「ごめんなさい。役に立てなくて」

龍驤「ええで。飛行機を飛ばせんでも、君が色んなところに連れてってくれて意外と楽しめたしな。ソドー島はいいところやね」

ハンナ「そうでしょう空母さん?」

龍驤「君のほうはもうちっとこうどうにかならんの?そもそもうちスピードが出てるほうが好きってわけじゃないんやけど」

ハンナ「あれ?」

パーシー「じゃあもう行くよ。僕は整備工場に行かなきゃいけないし、ハンナはハット卿からお叱りを受けるみたいだから」

龍驤「じゃあな。過労にも気を付けるんやで」
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/06(月) 19:05:05.58 ID:5VxoEwZ2O
 龍驤は基地に帰っていった。


パーシー「カロウって何?」

トーマス「確か日本語でオーバーワークの意味だったような。そんなことより行こう、君ずっと寝てないだろ?」

パーシー「うん、凄く眠い……」

 パーシーはうとうとしながら運ばれていった。
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/06(月) 19:06:58.19 ID:5VxoEwZ2O
このお話の出演は、トーマス、フィリップ、、ソルティー、パーシー、ハンナ、そして龍驤でした。
(今日はおしまい)
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