未来「翼と百合営業する話」【ミリマス 】

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

57 : ◆z80pHM8khRJd [saga]:2020/06/26(金) 04:50:47.41 ID:9rrQTzr/0
「じゃあ私、行ってきます」

「ああ、そう言ってくれるのはありがたいんだが翼の居場所って分かるのか?」

「あっ考えてませんでした!」

ガクッとプロデューサーが崩れ落ちる。

「連絡連絡っと……って翼電源が入ってない!? どうしよう」

「さっき律子がレッスンに出るよう催促しまくってたから、ひょっとしてうざくて切ったんじゃないか」

ぐへえ、会いに行こうって思ってるのに翼の居場所が分からないなんて。

「プロデューサーさん! 翼の居場所を教えてください」

「そんなの分からないだろ。おーい百合子! 翼の居場所を推理してくれ。なんか最近推理小説にハマってただろう」 

プロデューサーの声かけに百合子が反応する。

「やっと登場できたのに、これはちょっと無茶ぶりってことになりませんかね!? まあいいでしょう。いでよ風の精霊たちよ。翼の居場所を教えてたまえ……やっぱり杏奈ちゃん、なんとかして!」

「んと、直近のsnsで、スクショ……あげて、ます。wifiがある…ところ」

「さすが杏奈ちゃん!」

「だったら少し場所を絞れるか? どうだ、未来」

昨日は、デートしててファンの人たちに捕まっちゃってゴタゴタした。(もちろんありがたいことだけどね!)翼も暗くなってたし、カラオケとかの気分じゃないんじゃないかな?

「やっぱりお家だと思います! 行ってきます!」

私は駆け出すのだった。
58 : ◆z80pHM8khRJd [saga]:2020/06/26(金) 04:52:10.55 ID:9rrQTzr/0
心の中で何度も翼の名前を呼びながら、走る。

私が会いに行ったら翼はどんな顔をするだろう。

やっぱり気まずそうな顔をするのかな。

でも恋愛は楽しいだけじゃない、苦しいこともあるって分かったんだ。

そもそも翼が言い出したんならどんなに気まずくても苦しくても最後まで付き合ってもらう。

例えどんな結末が待っていたって。

翼の家の前に着く。走ってきたせいで汗もかいたので汗臭くないかなと自分の服のにおいをかぐ。……たぶん大丈夫かな。
59 : ◆z80pHM8khRJd [saga]:2020/06/26(金) 04:52:57.95 ID:9rrQTzr/0
さていざ翼の家まで来ると緊張してくる。こういうときって普通にピンポン押したらいいのかな?

でもロマンチックさに欠ける気がするし、おとぎ話みたいに窓に石ころでも投げようかな。

石ころを拾ってみたけど、割りそうだしやっぱりこの案はなし。素直にピンポン押そう。

そう思った矢先、不意に翼の家のドアが開いた。

出てきたのはまさかの翼。翼の目に映るのは家にめがけて投石しようとしている私。

気まずい間のあと、翼が口を開く。

「み、未来。フラれたからって、腹いせにお家に石を投げようだなんて……」

「ちがう!」

誤解を解くのに5分くらい掛かった。
60 : ◆z80pHM8khRJd [saga]:2020/06/26(金) 04:54:26.32 ID:9rrQTzr/0
せっかくここまで来たし、ということでお部屋にあげてもらう。翼はさっきなんとなくコンビニに行こうと思ったらしい。入れ違いにならなくてよかった。

部屋に入るのはこの前、翼が熱を出して看病しにきたとき以来だ。この前指摘されたので、キョロキョロ眺めるのは控えた。

「未来が今日来てくれたのはやっぱり昨日のことだよね?」

「うん」

翼はやっぱりバツが悪そうに言った。

「ごめんね……」

「謝らないで!」

私の大声に翼は言葉が出ないって感じだった。
61 : ◆z80pHM8khRJd [saga]:2020/06/26(金) 04:56:28.23 ID:9rrQTzr/0
私は胸にあふれる気持ちを精いっぱい言葉にする。

「謝らないでよ。翼の彼女として過ごせた毎日はすっごく、すーっごく楽しかったよ。それなのに謝られるとその楽しかった毎日さえ否定されたみたいでイヤだ。ねえ翼! 翼はどうだったの? 私と居て」

「……わたしもすごく楽しかったよ」

思いつくままに喋る私と言葉を選ぶふうに喋る翼は対照的だった。

「じゃあ、私たち」

俯きながらも翼は言った。

「だからそれは言っちゃダメ」

「な、なんで!」

「余計に悲しくなっちゃうから」

「ううん、言う!」

昨日はその手に乗っちゃって気持ちを伝えられなかった。でも今日は違う。このまま関係が終わってしまうのはあまりにも悲しすぎる。
62 : ◆z80pHM8khRJd [saga]:2020/06/26(金) 04:57:27.00 ID:9rrQTzr/0
「私は翼が好き!」

翼は私の言葉に反応しなかった。押しちゃいけない、後戻りできないスイッチを押してしまった気がした。

それでも言葉がとめどなくあふれてくる。

「フリだったけど翼とこの関係になってからは毎日がドキドキしてキラキラして、それでワクワクもして、とにかくすっごく楽しかった! だって、翼と一緒なら何をしたって、どこに行ったって楽しいもん! だから、だから、もし翼が同じ気持ちになら本当に付き合おうよ!」

「……そっか」

「そっかだけじゃ分からないよ」

「だよね、ごめん。ねえ未来。自分が言ってること分かってる? それにわたし言ったよ。わたしたちは恋愛に浮かされて、それっぽい気持ちになってるだけだって。わたしは未来を騙してるの」

「昨日もそう言われたけど、今日はちゃんと言い返せるよ。だってこの気持ちは偽物でも、翼と過ごして楽しかった思い出はまぎれもなく本物だもん。だから……」
63 : ◆z80pHM8khRJd [saga]:2020/06/26(金) 04:58:29.08 ID:9rrQTzr/0
ひと息置いて翼を見据えて言う。

「私を騙して」

「え?」

「翼は小悪魔系アイドルなんでしょ? だったら小悪魔でも大悪魔にでもなって私を騙し続けてよ!」

私がそう言い切る。言い終わったあとで恥ずかしくなってきたけど、今回は目をそらさない。逃げたくない。だってそれが私の強みだから。

翼はぽかんとした顔をしてたけど、やがてぷぷっと吹き出した。


「もう未来。大悪魔ってなに? わたし、悪い人みたい」

ちょっとだけいじわるを言う。

「今気がついた?」

2人で笑い合う。

「なんか未来と話してたら悩んでたのがバカらしくなっちゃったかも」

「でへへ〜」

「褒めてないってば。まぁいいや。こうなったら未来の言う通り、騙してあげる」

「ということは?」

「うん、本当に付き合っちゃおうか」

「やったー!」

私は彼女にハグをする。

「未来ってばまた泣いてる」

もう、それがバレないように抱きついたのに。
64 : ◆z80pHM8khRJd [saga]:2020/06/26(金) 04:59:15.03 ID:9rrQTzr/0


さて、今回の話の……なんて言うっけ、こういうの。そうそう後日談だ後日談。

「みーらい!」

「わわっ横断歩道の前でくっつかれると危ないよ」

「だってくっつきたかったんだもーん」

「でへへ〜」

こんな感じで翼とはフリじゃなくて本当に付き合えることなったんだけど、なんというか……

「今までとあんまり変わらないね」

「そう? じゃあ新しいことでもしてみる?」

「新しいことって?」

「それはヒミツー」

ウインクしながら人差し指を口に当てるポーズをされる。翼と付き合っちゃうなんて、もしかしてとんでもないことじゃ? なんて少し後悔もしてきた気がする。
65 : ◆z80pHM8khRJd [saga]:2020/06/26(金) 05:00:15.45 ID:9rrQTzr/0
「せっかくだからヒミツじゃなくて教えてよ。やっと付き合えたんだから」

「そうだねー。じゃあ未来がわたしの好きなところを10個言えたら教えてあげる」

「それは恋のlesson初級編の歌詞じゃ?」

「いいからいいから〜」

翼に促されて考えるはめになってしまった。

好きなところなんて考えるなんて難しいよ。

いっしょうけんめい考える。

かわいいところ、かっこいいところ、私を知らない所に連れて行ってくれるところ。

どれを当てはまるしどれも当てはまらないような気がしてきた。

「分かんないよ。全部だよ全部」

たぶん私、顔真っ赤だ。

「ふふ、じゃあしいて言うなら?」

「うーん」
66 : ◆z80pHM8khRJd [saga]:2020/06/26(金) 05:01:49.81 ID:9rrQTzr/0
そのとき何故かピンときてしまった。翼があのときファミレスでステーキを食べなかった理由。

「もしかして、あのとき翼がステーキを食べなかったのは、臭いが気になるから? ニンニク入りのソースらしいし……ということは、臭いが気になる場面があるかもって思ってた? 例えばもし、ちょっと押したらキスとかできたのかも。なーんて」

ありもしない妄想をつい口に出しちゃうと、翼は手を滑らせてスマホを落とした。

「翼?」

顔をみると、翼はびっくりするぐらい真っ赤な顔をしていた。

「み、未来のくせに何考えてるの? 未来のこの、す、すけべー!」

「すけべってなに? しかも未来のくせにって失礼だー!」

そう言い合ってやっぱりじゃれあう。ちょっと翼に勝てたので満足しつつ。

ぱっと見は変わらない関係だけど、ちょっとずつ私たちの関係は変わっていってる気がした。

おわり
67 : ◆NdBxVzEDf6 [sage]:2020/06/26(金) 05:07:45.69 ID:3/0d/lcH0
なるほど未来ちゃ鋭いなぁ
乙です

>>2
伊吹翼(14) Vi/An
http://i.imgur.com/Xy0LTkA.png
http://i.imgur.com/aRiLVyd.png
http://i.imgur.com/eQehEnI.png
http://i.imgur.com/2vKCrGB.jpg
http://i.imgur.com/P2etgTc.jpg

春日未来(14) Vo/Pr
http://i.imgur.com/duX1DGj.jpg
http://i.imgur.com/QRIWEXY.jpg

>>3
田中琴葉(18) Vo/Pr
http://i.imgur.com/1iUXPny.jpg
http://i.imgur.com/NGhomXO.jpg

>>7
秋月律子(19) Vi/Fa
http://i.imgur.com/anoP91T.png
http://i.imgur.com/u3Ul5fG.jpg

>>15
最上静香(14) Vo/Fa
http://i.imgur.com/VHDs2b4.png
http://i.imgur.com/CfNZjkM.jpg

>>52
横山奈緒(17) Da/Pr
http://i.imgur.com/43dnkaI.jpg
http://i.imgur.com/wTiCwW5.jpg

>>53
百瀬莉緒(23) Da/Fa
http://i.imgur.com/W6YU3KT.jpg
http://i.imgur.com/ZkGeGf7.png

馬場このみ(24) Da/An
http://i.imgur.com/vczu8xc.jpg
http://i.imgur.com/MYMlnKS.jpg

>>57
七尾百合子(15) Vi/Pr
http://i.imgur.com/TkYZQDm.png
http://i.imgur.com/PVhQj8C.jpg

望月杏奈(14) Vo/An
http://i.imgur.com/qpyaPQy.png
http://i.imgur.com/GlhT8RY.png

>>65
「恋のLesson初級編」
http://www.youtube.com/watch?v=GESt88EbOxc
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/26(金) 20:05:05.33 ID:jhpkp2IaO
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/27(土) 19:20:49.85 ID:g35SKwKEo
とても良いものを見た
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/06/28(日) 04:40:09.04 ID:WbIjWmtv0
乙ですー思わず夢中で読んでしまった…最高でした!
62.68 KB Speed:0   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 新着レスを表示
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)