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面接官「得意武器は斧……ですか」斧戦士「はい」
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1 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/22(月) 15:54:50.91 ID:/ouu/qF80
以前投下したssを修正したものとなります
よろしくお願いします
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1592808890
2 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/22(月) 15:55:20.17 ID:/ouu/qF80
面接官「得意武器は斧……ですか」
斧戦士「はい」
斧戦士「これまで傭兵や用心棒などの業務で、数々の戦果を上げて参りました」
面接官「うーん……斧ねえ……」
斧戦士「え、なにか問題でも?」
3 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/22(月) 15:55:50.23 ID:/ouu/qF80
面接官「今回募集してる仕事の内容を、アナタちゃんと分かってます?」
斧戦士「もちろんです。明日、大商人さんの邸宅で行われる新製品発表会の警備ですよね」
面接官「その通り。一応分かってはいるんですね」
斧戦士(なにが言いたいんだ? この面接官……)
面接官「ようするに、そういう華やかな場に“斧”のような無骨な武器は相応しくないんですよ」
斧戦士「な……!」
4 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/22(月) 15:56:45.96 ID:/ouu/qF80
面接官「剣や槍といった今主流の武器に比べると、スタイリッシュさにも欠けるしねえ」
斧戦士「そんなことないですよ! 斧だって十分スタイリッシュです!」
面接官「ふぅーん……じゃ、今やってみせて?」
斧戦士「は、はいっ!」ガタッ
斧戦士「どりゃ!」ブンッ
斧戦士「うりゃ!」ブオンッ
斧戦士「どおりゃあっ!」ブオオンッ
斧戦士「……いかがです?」ニコッ
面接官「…………」
5 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/22(月) 15:57:34.17 ID:/ouu/qF80
面接官「なんとも荒々しい……やはり斧は文明人というより、蛮族の武器だ」
斧戦士「ば、蛮族だとォ!?」
顔を真っ赤にして、面接官に詰め寄ろうとする。
面接官「おっと」サッ
斧戦士「うぎゃっ!」バチバチッ
斧戦士(いででで……っ! この面接官、魔法が使えるのか!)
面接官「ほら、そうやってすぐ場をわきまえず熱くなる。斧の使い手などそんなものだ」
面接官「ま、今回はご縁がなかったということで、とっととお引き取り下さい」
斧戦士「ううう……!」
6 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/22(月) 15:58:00.53 ID:/ouu/qF80
面接会場を出た斧戦士。
斧戦士「くそっ! なんで斧ってだけで――」
剣士「やぁ、斧戦士」ニコニコ
斧戦士「剣士……!」
剣士「キミもさっきの面接受けてたんだろ? もちろんボクは受かったけど、キミはどうだった?」
斧戦士「…………」
剣士「いやぁー、ごめんごめん! 聞くまでもなかったかな? アッハッハッハッハ!」
剣士「なにしろ今の世の中、斧の使い手なんてどこにも需要ないもんねえ」
斧戦士「なんだと……!?」
7 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/22(月) 15:58:33.01 ID:/ouu/qF80
剣士「あ、怒った? 怒っちゃった?」
斧戦士「怒るに決まってんだろうが!」
剣士「だけど飛びかかってこないなんて、ずいぶん冷静じゃないか」
剣士「あ、もしかして心の中じゃ認めてるのかな? 斧じゃ剣に勝てないって」
斧戦士「このヤロウ!」バッ
剣士「ふん」シュバッ
――ピタァッ!
斧戦士「ぐ……!」
斧戦士が斧を振りかぶろうとした瞬間、剣先が首に突きつけられていた。
剣士「ね? スピードが違うよ」
8 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/22(月) 15:59:24.64 ID:/ouu/qF80
斧戦士「だけど、斧の方が重くて威力あるし……!」
剣士「威力ゥ? ハッ、そんなもん当たらなきゃなんの意味もない!」
剣士「これからの時代、戦いに求められるのはパワーよりもスピードさ」
剣士「斧使いの居場所なんかどこにもありゃしない」
剣士「ま、場末の酒場の用心棒ぐらいなら、雇ってもらえるんじゃない?」
剣士「酔っ払いやチンピラ相手にせいぜい自慢の斧を振るってくれよ!」
剣士「アッハッハッハッハ……!」スタスタ…
斧戦士「く、くそう……!」
9 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/22(月) 16:00:01.63 ID:/ouu/qF80
傷心で町をあてもなくさまよう斧戦士。
斧戦士「面接は落ちるわ、剣士にはしてやられるわ……ろくなことがねえ!」
斧戦士「もうこんな斧捨てて、剣や槍に乗り換えてやろうか!」グッ…
斧戦士「……できるわけねえよな、そんなこと」
斧戦士「ちくしょう……!」
「ちくしょーっ!」
斧戦士「!?」ビクッ
10 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/22(月) 16:00:30.04 ID:/ouu/qF80
土魔女「ったくなんなのさ! どいつもこいつも、あたしを必要としてないってどういうこと!?」
斧戦士「……どうした? 小娘」
土魔女「なに、おっさん、話し相手になってくれるの? だったら聞いてよ!」
斧戦士「おっさんって、俺はまだ――」
土魔女「あたし、土の魔女! 魔女の村の出身なんだけどさ」
斧戦士「魔女……!」
斧戦士(この世のどこかに魔女が暮らす村があって……)
斧戦士(ある程度の年齢になると村の外に出るって聞いたことあるが、初めて見た)
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/22(月) 16:01:15.86 ID:/ouu/qF80
土魔女「仕事は自分で探さなきゃいけないから、まず魔法の学び舎に行ったのよ」
土魔女「でさ、『あたし土魔法なら教えられますよ』って自己紹介したら」
土魔女「『土魔法なんて地味だから今時習いたい子はいない』って断られちゃって……」
斧戦士「なんだそりゃ、ひでえ話だな」
土魔女「で、この町で土魔法でできる商売探してたけど、なあんにもなし」
土魔女「炎魔法が得意な友達はパン屋に雇われたり、水魔法が得意な子はクリーニング屋に雇われたりしたのに」
土魔女「あたしだけあぶれちゃって……」
土魔女「土魔法だって立派な魔法なのにさ……」
斧戦士「…………」
12 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/22(月) 16:02:00.38 ID:/ouu/qF80
土魔女「おっさんこそ、どうしてベンチで一人寂しそうにしてたの?」
斧戦士「俺もお前と同じような境遇だよ」
斧戦士「今時、斧の使い手を雇ってくれる職場なんてそうそうねえ」
斧戦士「さっきも面接でボロクソ言われた挙げ句、落とされたところさ」
土魔女「なんで斧だとダメなの?」
斧戦士「今の戦士はみんな剣や槍ばかり使って、斧なんかちっとも人気ねえんだ」
斧戦士「しかも最近じゃ、魔法の力が宿った武器や魔力で動く兵器、なんてのも登場してきてるしな」
斧戦士「斧を使ってるってだけで“脳筋”だの“時代遅れ”だのとレッテルを貼られる」
斧戦士「斧だって立派な武器なのによ……」
土魔女「おっさんも大変だったんだね……」
斧戦士「おお、分かってくれるか、俺の気持ちが!」
土魔女「分かる、分かるよ、おっさぁん!」
13 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/22(月) 16:02:39.19 ID:/ouu/qF80
斧戦士「よっしゃ! ここはひとつ、不人気同士、手を組まねえか!?」
斧戦士「俺たち二人で、世の中をあっといわせることをやろうぜ!」
土魔女「いいねいいね! やろうやろう!」
斧戦士「決まり! んじゃあ、あっちにある酒場でさっそく同盟を深めようぜ!」
土魔女「おっさん、いっとくけど、あたしお酒飲めないよ」
斧戦士「分かってるよ。おめーはジュースでも飲んでやがれ」
斧戦士「あとおっさんってのやめろ。俺はまだ20をちょいと過ぎたぐらいの若造だ」
土魔女「え〜、全然見えない! 40ぐらいだと思ってた! ゴツイし、貫禄あるし!」
斧戦士「40……!?」
土魔女「ん〜、じゃあおっさんはやめて、“斧っさん”って呼んであげる!」
斧戦士「……もう好きに呼んでくれ」
14 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/22(月) 16:03:34.46 ID:/ouu/qF80
酒場にて――
土魔女「オレンジジュースおいしーい! やっぱり土魔法って最高!」プハッ
斧戦士「ハァ? オレンジジュースと土魔法ってなんの関係もないだろ?」
土魔女「だって果物は土で育つでしょ? だからこのジュースがあるのは土のおかげ!」
土魔女「で、土魔法は土を操る魔法だから、土魔法最高!」
斧戦士「ガッハッハ、なるほどな!」
土魔女「それで斧っさん! あたしらが手を組んでどんなことすんの!?」
斧戦士「一つ考えてることがある」
土魔女「え、なになに?」
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