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ハルヒ「異世界転生って知ってる?」キョン「知らん」
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1 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/06/11(木) 22:17:06.54 ID:gyrJ90gBO
「ねえ、キョン」
「なんだよ」
「異世界転生って知ってる?」
あっという間に春が過ぎ去り、憂鬱な梅雨入りが間近といった今日この頃。
湿度の増加に伴い、不快指数が加速度的に上昇中の現実世界から逃避したいと考えていたのはどうも俺だけではないらしく、後ろの席でパタパタと下敷きを扇いでいた涼宮ハルヒがそんな物騒なことを尋ねてきた。
「知らん」
「あんたってほんと無知よね」
「ほっとけ」
シラを切ると当然のように罵倒されたので、思わず前言を撤回して持ち得る限りの異世界転生知識を披露したくなる衝動に駆られたが、ぐっと堪えてこの危険人物に余計なことを言わぬよう口にチャックした。
「いい? 異世界転生ってのはね、あらゆるファンタジーの始まりにして頂点に君臨するそれはそれはありがたい設定なのよ」
それはいくらなんでも言い過ぎだろう。
指輪物語もハリーポッターも誰ひとりとして異世界なんぞに転生してはいないのだから。
とはいえ、たしかにファンタジーにはありがちな設定であり、特に昨今の流行ではある。
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1591881426
2 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/06/11(木) 22:19:37.88 ID:gyrJ90gBO
「それなのに、私たちにそんな機会が訪れないなんて不可思議を通り越して不幸よ!」
「俺たちは現実を生きているからな」
まるでファンタジーの登場人物であるかのように嘆いているが、この世は紛れもなく現実であり、そんな機会が訪れることはない。
「そんな現実なんて糞喰らえよ!」
「こら、汚いぞ」
やれやれ。こいつは本当に女子高生か。
潔癖として定評ある草食系男子高校生代表と名高いこの俺は、そうした汚い表現はお断りだ。
そんなつれない態度が不満だったようで。
「なによぉ! いつもみたいに悦びなさいよ! 糞好きはあんたの専売特許でしょうが!!」
「昔の話だ。若さゆえの過ちってやつさ」
はあ。まったく。誤解もいいところである。
人を専肛門家みたいに言わないで頂きたい。
そんな子供じみた遊びはもう卒業したのさ。
3 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/06/11(木) 22:22:27.98 ID:gyrJ90gBO
「とにかく! 私は異世界転生、もしくは異世界に転移したいのよ! 今すぐに!!」
「やめておいたほうがいいと思うぞ」
「なんでよ!?」
「きっとそんなに良いものじゃないからだ」
いよいよ駄々を捏ね始めたハルヒに俺は現実というものを諭してやる。嫌な役目だよな。
「まず、転生なんぞして赤ん坊からやり直すのはダルすぎる。お前だって今更甲斐甲斐しく下の世話をされたくはない筈だ」
「うっ……それは、たしかに一理あるわね」
「だから転移一択になるが、その場合には衣食住に困るだろ? 制服姿はさぞ目立つぞ」
「そんなの現地でお金を稼げばいいだけよ! ほら、住めば都ってよく言うじゃないの!」
「どうやって金を稼ぐつもりだ?」
「どうやってって、それは……」
いかにハルヒが運動神経抜群で明晰な頭脳を持ち合わせていたとしても、あくまで俺たちは就業経験のない一介の高校生に過ぎず、手に職をつけるには無理がある。となると。
「身体でも売るつもりか?」
もっとも手っ取り早い職業を斡旋すると、ハルヒは両手で身体を庇いながら睨んできた。
「そんなの死んでもお断りよ!」
「じゃあ、どうするんだ?」
「冒険者になればいいじゃない!」
出た。冒険者なる謎の職業。フリーターだ。
4 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/06/11(木) 22:24:15.88 ID:gyrJ90gBO
「冒険者、ねえ」
「それなら文句ないでしょ?」
「別に文句なんざないが、果たしてそれで飯を食っていけるのか、甚だ疑問だな」
冒険者とは呼んで字の如く、冒険する者だ。
冒険をしているならば誰でも冒険者である。
しかしながら到底安定した職業とは言えず、高額な報酬を求めればそれ相応の危険が伴い、あっけなく命を落とすこともある。
「大丈夫よ! パーティーにヒーラーを入れておけば危険は格段に減るわ! みくるちゃんが適任ね! 我ながら完っ璧な采配だわ!!」
「となると古泉が賢者で、長門が魔法使い、お前が勇者になるわけか。そうすると俺は」
「あんたは村人Aに決まってるじゃない!」
なんと、俺は名前すら貰えないらしい。
まあ、現実世界でも本名で呼ばれることはないので村人Aでもキョンよりはマシかもな。
「だがな、勇者ハルヒ」
「なによ、村人キョン」
「そもそも装備はどうやって買うつもりだ」
現実とは残酷で、冒険者になるのも金次第。
5 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/06/11(木) 22:26:02.70 ID:gyrJ90gBO
「そんなのそこらの冒険者から古くなった装備を譲って貰えばいいじゃない!」
「お前は冒険者の装備を軽視し過ぎだ」
使い慣れた装備の重要性をわかっていない。
多少古くとも信頼性が何より価値を持つ。
なにせ自分と仲間の命を預けるのだから。
故に、おいそれと装備を譲ったりはしない。
「じゃあどうすんのよ!?」
「地道に金を貯めるしかないな」
「そんなのつまんない!」
ここでつまらないと口走る奴は向いてない。
結局コツコツやれる奴が大成するのである。
たとえば俺みたいな村人のような地味なキャラクターならば、将来村を飛び出して大冒険に出かける権利を勝ち取ることが可能だ。
「あんたはそこらの野犬に食われるのがオチよ! そんで颯爽と私が駆けつけるわけ」
「手ぶらでか? 随分頼りになる勇者様だな」
「そこであんたの錆びた剣を貸すのよ!」
すると秘められた力が解き放たれて、錆びた剣が聖剣となるわけか。いい買い物したぜ。
6 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/06/11(木) 22:28:27.33 ID:gyrJ90gBO
「そして命を救われたあんたは感激に咽び泣いてパーティーに加えてくださいと懇願するのよ。もちろん雑用兼、荷物持ちだけど!」
「サポーターみたいなもんか」
「そう、それ! 精進しなさい」
やれやれ。村人Aからサポーターとは。
しかもなけなしの金で買った剣を勇者様に奪われてまで、俺はハルヒのパーティーに奉仕しなければならないらしい。現実的過ぎる。
「それで、行き先は?」
「もちろん魔王城よ!」
いきなりだな。ラスボスへまっしぐら。
まあ、ハルヒらしいと言えばらしいが。
所謂、負けイベントだな。確定である。
「ちなみにどんな魔王を想定してるんだ?」
「聞いて驚きなさい! なんと、これまでパーティーの中で魔法使いとして活躍していた有希が実は太古の昔に外宇宙から襲来して住み着いた魔王だったのよ! 灯台下暗し的な!」
いやはや、それはなんとも急展開だな。
長門ならさもあらんという感じで全く驚きはないが、あいつが裏切るとは思えないな。
7 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/06/11(木) 22:30:07.58 ID:gyrJ90gBO
「有希にも事情があって、人間と友好的な父親を大魔王に人質に取られて仕方なく命令に従っているのよ。どう? 泣ける話でしょ?」
たまにこいつは天才だから困る。脱帽だ。
ただの思いつきにしてはよく出来た話だ。
そういうことなら、俄然やる気が漲るぜ。
「なら、早く自由にしてやらないとな」
「そこで狭間の世界の大魔王を倒すべく、私たちは世界中を旅して鍵を探しに行くの!」
「鍵ってのは、狭間の世界とやらの扉を開く為の道具かなんかか? どこにあるんだ?」
「大魔王の配下の4人の魔王がそれぞれ持っているって設定よ。もちろん、有希もね」
つまり、大魔王が居るという狭間の世界へ行くには配下の魔王4人を倒す必要があるらしく、いよいよもってそれらしくなってきた。
「じゃあ、ひとまず長門から鍵を預かるか」
「ちっち。甘いわね、キョン。そんなことをしたら他の魔王を倒す前に有希の謀反が大魔王にバレちゃうでしょ? だから有希は最後にして、まずは他の3人の魔王を倒すわよ」
なるほどな。しかし、それには問題がある。
8 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/06/11(木) 22:32:40.96 ID:gyrJ90gBO
「長門を解放するまでパーティーに魔法使いが不在ってのは攻略的に厳しくないか?」
この手の物語に魔法使いは必要不可欠だ。
恐らく、敵の中には物理攻撃無効がいる。
そんな相手と遭遇したら、詰んでしまう。
「そこであんたの出番よ!」
「俺の?」
「有希がパーティーを抜けた丁度そのタイミングで30歳の誕生日を迎えたあんたは晴れて魔法使いになれたの! どう? 嬉しいでしょ」
こいつの知識はどこから湧いてくるんだ。
たしかに30歳で魔法使いになれるという世迷言に聞き覚えはあるが、俺の記憶が正しければそれはその歳まで貞操を守り抜くことが前提だった筈だが。
「なによ。文句あるわけ?」
「あるね。いろいろ言いたいことは山ほどあるが、他ならぬ長門のためだ。しょうがないから魔法使いになってやるよ」
「素直じゃないわね。嬉しいくせに」
断じて嬉しくなどない。むしろ、不名誉だ。
9 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/06/11(木) 22:34:40.79 ID:gyrJ90gBO
「で、最初の魔王はどんな奴だ?」
「コンピ研の部長」
なるほどな。難易度的にも適任だろう。
何気にゲームバランスを考えてやがる。
部長氏には悪いがサクッと倒させて貰おう。
「次は?」
「そうねぇ……谷口あたりかしら」
あいつが魔王なんざおこがましいぜ。
ゴキブリホイホイで簡単に退治可能だ。
まあ、楽なことに越したことはないが。
「よし、これで3人目だな」
「今度は強敵よ。生徒会長を倒すわ」
「それは難易度が高いな」
ファンタジー設定的にはギルド長辺りか。
古泉辺りと通じて世界を裏から操作しているのだろう。あの二面性ならばやりかねない。
「流石のSOS団も生徒会長には苦戦を強いられるけど、そこで強力な助っ人が登場よ!」
「聞かなくてもわかりそうな助っ人の名前よりもパーティー名のほうが気になるんだが」
「意外や意外! なんと、ギルドの美人受付嬢の鶴屋さんが実は凄腕の冒険者で、ギルド長である生徒会長を正体を怪しんで密かに動向を監視してたのよ! そしてついにその尻尾を掴んで私たちに加勢してくれるわけ!」
まあ、そんなところだろうと思ったさ。
異世界でもやはり鶴屋さんは頼りになる。
もうパーティーのリーダーは彼女でいい。
10 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/06/11(木) 22:37:31.43 ID:gyrJ90gBO
「残念でした! 凄腕冒険者の鶴屋さんは多忙なので助っ人は今回だけ! 次はいよいよ、お父さんを人質に取られた有希との決戦よ!」
「別に戦う必要はないんじゃないか?」
「そうはいかないわ! 少なくとも大魔王に不審がられないように立ち回る必要があるわ。下手に手加減すると大魔王に気づかれるから、本気の有希を私たちは打ち破る必要があるの! そこで、キョン。あんたの出番よ」
「俺にどうしろと?」
「有希の最上級魔法とあんたのしょぼい初級魔法が火花を散らして均衡を保っている間に、私が聖剣で有希を倒すのよ!」
長門の最上級魔法と俺のしょぼい初級魔法が均衡を保てるのはせいぜいコンマ数秒であり、ハルヒが奇襲を仕掛ける時には既に俺は消し炭となっている可能性が高い。
もしもそうなった際にはヒーラーである朝比奈さんにたっぷり癒して貰おう。楽しみだ。
いやいや、そんなことよりも。
「ちょっと待て。長門を倒したら駄目だろ」
「その辺は大丈夫よ。大魔王の意識がない間を見計らってみくるちゃんのヒールビームで瀕死の有希を全回復するから」
「大魔王の意識がないって、そんな都合のいい状況がそうそうあるわけないと思うが?」
「だって、大魔王はキョン、あんただもん」
いくらなんでもネタバレが唐突すぎて困る。
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/06/11(木) 22:39:14.30 ID:gyrJ90gBO
「俺が大魔王って、それは無理があるだろ」
「だからこそ、意外性があるでしょ?」
「いや、そもそも大魔王にバレないように長門を救うのが目的なのに、俺が大魔王なら最初からバレバレじゃないか」
穴だらけ。バレバレ愉快のつもりだろうか。
「あくまで大魔王は狭間の世界のあんたで、普段のあんたとは視界のみを共有しているだけだから平気よ。この視界だけってのがミソで、聴覚を共有してないから会話でバレる心配はないから安心しなさい」
こらこら。ご都合主義にも程がある。
そうまでして俺を悪役にしたいのか。
したいんだろうなあ、こいつのことだから。
「あんたは村人Aとして世界を欺く大魔王の目だったのよ。それを証拠に聖剣をボロ剣に見せかけて勇者の手に渡らないように細工してたでしょ? ほんとつくづく狡猾な奴だわ」
いやいや、あのボロ剣はたまたま所持金で買える剣を選んだだけで、そんなつもりは毛頭なかったのだが、それも含めて大魔王の謀略だったのかも知れないとハルヒは考えているというか決めつけているらしい。やれやれ。
12 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/06/11(木) 22:41:58.65 ID:gyrJ90gBO
「それで晴れて有希を救った私たちはついに正体が判明した大魔王を倒すべく集めた鍵を使って狭間の世界の扉をこじ開けようとするんだけど、肝心の鍵穴が見つからないのよ」
「鍵穴がないなら鍵の意味がないな」
「ええ。だからとりあえず、あんたのお尻の穴に鍵を差し込んで回してみたってわけ」
「ちょっと待て」
今のはヤバかった。完全に不意打ちだ。
思わず愉悦が出ちまうところだったぜ。
ふー。落ち着け。クールにいこう。よし。
ここまで来たんだ。台無しにしたくない。
「穴ならなんでもいいわけじゃないだろ」
「ヒントなら冒頭からあったわ」
「なんだ、そのヒントってのは」
「狭間の世界。つまり、糞の狭間の世界よ」
「フハッ!」
ああ。ついに、出ちまったぜ。やれやれ。
糞の狭間の世界に封じられし俺の別人格が尻の鍵穴から顔を覗かせ、哄笑をぶち撒ける。
「フハハハハハハハハハハハハッ!!!!」
皆の衆、待たせたな。
いまこそ、真の姿を見せよう。
そうとも。この俺が大便魔王である。
「よくぞ見抜いたな勇者ハルヒ! 如何にも、この俺が大魔王だ! いざ尋常に勝負だ!!」
「やっぱり出たわね! 糞魔王! 有希のお父さんの仇を討たせて貰うわ! 覚悟しなさい!」
長門の親父さんは存命だが。まあ、いいか。
「ふん! 糞塗れの返り討ちにしてくれる!」
さあ、物語はクライマックス。ついてこい。
13 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/06/11(木) 22:44:08.45 ID:gyrJ90gBO
「たぁあああっ!!」
「フハッ! 余に斬撃など効かぬわ!」
ハルヒの剣を指先を真剣白刃取りしてやる。
「このっ! 糞魔王の癖に!!」
「フハハッ! 故に! 我は最強なのだ!!」
一人称が定まらないのはご愛嬌。いざ参る。
「さあ、貴様はどんな顔をして漏らす?」
「や、やめっ……!」
ぎゅるるるるるるるるるるるるるるぅ〜っ!
「ひぎっ!?」
「フハッ!!」
パチンッと指を鳴らすだけで地の底から響くような地鳴りがハルヒの腹から響き渡る。
「んん? どぉしたぁ?」
「くっ……!」
「顔色が悪いぞ、勇者ハルヒ!!」
「このぉおおおおおあおおおおおっ!!!」
キンキンキンキンキンッ!
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!!」
この際だから定番演出は全部盛りでいこう。
14 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/06/11(木) 22:45:27.89 ID:gyrJ90gBO
「くっ……このままじゃ負ける!」
「さあ、どうする、勇者ハルヒ!」
状況は俺の絶対優勢。
腹痛に喘ぐハルヒは風前の灯だ。
もう一度指を弾くだけで糞を垂れ流す。
「勇者は糞なんかに負けない!」
「ほう? 捨て身か。その意気やよし!」
ハルヒは盾を捨てるらしい。
つまり、垂れ流しも辞さない覚悟。
ならば受けて立つべく構えたその瞬間。
「あっ」
「お?」
一瞬ハルヒが脱力したのを見て、力んだ拍子に出たのかと思い、俺の視線が下がる。
「ようやく隙を見せたわね」
「な、なんだと!?」
「唸れ聖剣! 貫きなさい!」
ズボッ! と、ハルヒの聖剣が尻穴に刺さる。
15 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/06/11(木) 22:47:01.50 ID:gyrJ90gBO
「んぎっ!?」
「これで終わりよ!」
「ま、待て、ハルヒ! 話し合おう! どうだ? もしよければ世界の半分をお前に……!」
「全部よこせぇえええええええっ!!!!」
お約束の台詞に勇者らしからぬ返答をしたハルヒが俺の尻から聖剣を引っこ抜く。
「んあっ!?」
ぶりゅっ!
「あ、ああっ!? あああ!? ああああ!!」
ぶりゅりゅりゅりゅりゅりゅりゅぅ〜っ!
「フハハハハハハハハハハハハッ!!!!」
聖剣と共に実まで出た。まあ、当然だな。
糞を垂れ流して絶叫する大魔王とそれを見て高らかに愉悦を響かせる勇者。壮観である。
やれやれ。これではどっちが魔王かわからなない。今ここに、新たな大魔王が誕生した。
「フハハハハハハハハハハハハッ!!!!」
新・大魔王ハルヒは嗤う。
その哄笑を聞きながら、俺は思う。
お前には勇者より、魔王がお似合いだと。
16 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/06/11(木) 22:49:16.09 ID:gyrJ90gBO
「ちょっと、キョン」
「はえ?」
気がつくと、そこは放課後の教室であった。
「なんか、すごい変な夢を見たんだけど」
「奇遇だな。俺も奇想天外な悪夢を見た」
特に最後がおかしかった。狂ってる。
ファンタジーとはいえ、やりすぎだ。
世界が終わっちまったかと思ったぜ。
「あんたも? もしかして、同じ夢を見てたのかしら……奇妙な偶然もあるものね」
偶然のひとことで片付けられたら堪ったものではないが今回は俺も少々悪ノリが過ぎた。
存外シナリオが良くて、興に乗っちまった。
「なあ、ハルヒ」
「なによ」
「やっぱり異世界転生なんてロクなもんじゃないって身に染みただろう?」
「たしかに良いことばかりじゃないわね」
でもねと、ハルヒはにっこり嗤ってこんなことを付け加えた。
「それなりに愉しかったのは間違いないわ」
そう断じるハルヒの笑顔は梅雨の陰鬱さを吹き飛ばす高気圧さを醸し出しており、あまり長く眺めていると陽気に当てられちまいそうだったので顔を背けながらシッシッと手を振る。
「わかったから、先に帰れ」
「なによ、一緒に帰らないわけ?」
「野暮用というか、後始末があってな」
「後始末って、さてはあんた……」
願わくば椅子と尻の狭間にサンドウィッチされているパティの存在に気づいて欲しくはなかったのだか、鼻をひくつかせたハルヒにはバレバレ愉快であったらしく、寝糞を漏らしてこの現実世界においても大便魔王と化した俺と勇者ハルヒとの第2ラウンドについてはご想像にお任せしておこう。
【勇者ハルヒの大便冒険】
FIN
17 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/06/12(金) 13:43:52.65 ID:e0bfpRVG0
自演賞賛コメはよ
18 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/06/13(土) 02:35:38.02 ID:gKIG2l/8o
また君か壊れるなあ
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