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【艦これ】龍驤「足りないもの、その後」外伝
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1 :
◆I4lwDj9Dk4S2
[sage saga]:2020/06/07(日) 14:31:29.04 ID:79b8uyYv0
このスレは
【艦これ】龍驤「足りないもの」【安価】
http://ex14.vip2ch.com/i/read/news4ssnip/1515586186/
からの派生作品や外伝を書き込む場所です
まさかの2スレ目です
前スレ
【艦これ】龍驤「たりないもの」外伝
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1532860601/
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1591507888
2 :
◆I4lwDj9Dk4S2
[saga]:2020/06/07(日) 14:33:01.60 ID:79b8uyYv0
前スレが900を越えましたので新スレを建てました
またお暇な時にでも、宜しくお願いします
3 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/06/07(日) 16:02:23.21 ID:mAVCV2Zxo
たておつです
4 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2020/06/24(水) 19:29:51.30 ID:m3gf+toV0
ツイッターで嘆いたネタを少し
ーー某所
白鶴「白鶴と〜」
ライ「ライの!」
白鶴ライ『下町食べ歩きツアー!』
白鶴「はい、というわけで今日はこの商店街をスタートにしていきたいと思います」
ライ「この辺りは美味しいものが色々あるらしいから期待しちゃうわ!」
白鶴「ライちゃん、調子に乗って食べ過ぎると太ってしまいますよ?」
ライ「白鶴さんこそ!スカートのサイズ、また大きくなっちゃうわよ!」
白鶴「……悲しみ」
この番組は家庭にエキサイティングなひと時を、ツクオリの提供でお送りします
5 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/06/24(水) 19:31:19.01 ID:m3gf+toV0
ライ「まず一軒目はこのお店よ!」
白鶴「ここはラーメン屋さんですか?」
ライ「そう!ここの名物は肉そばよ!」
白鶴「お邪魔します…と。これは中々雰囲気あるわね」
ライ「一番人気は肉そばとチャーハンセットですって」
白鶴「じゃあ私はそれをお願いします」
ライ「私は黒とんこつラーメンにするわ!」
白鶴「この濃厚な匂い…堪らないわね」クンクン
ライ「お昼時に男の人で賑わっている光景が目に浮かぶわね」
6 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/06/24(水) 19:33:12.66 ID:m3gf+toV0
「お待たせしました」
白鶴「これは…!」
ライ「肉!油!油!まさにコッテリの肉そばね!」
「こちらは黒とんこつラーメンです」
ライ「あら…?こっちはコッテリ成分は控えめなのかしら」
ライ「…いえ、スープが濃い。これは侮れないわ。白鶴さん、そっちは…」
白鶴「ズルルルルルルルルル…」
ライ「凄い勢いで食べてる!?」
白鶴「油が!肉が!体に染みる!DNAがこの味を求めているのよ!」
ライ「気持ちは分かるけど飛ばし過ぎ!この後まだロケがあるのよ!」
白鶴「チャーハンも美味しい!ラーメンも…あぁお箸が止まらない!」
ライ「白鶴さん!加減して食べてって言ってるのに!」
7 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/06/24(水) 19:34:44.42 ID:m3gf+toV0
白鶴「肉そば…美味しかったぁ……」
ライ「…お腹いっぱい?」
白鶴「ええ、大満足よ」
ライ「……次は人気の定食屋さんよ。名物は日替わりランチですって」
白鶴「……」
ライ「白鶴さん?」
白鶴「げふっ…」
ライ「…さあその定食屋さんに行きましょう!」
8 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/06/24(水) 19:36:27.14 ID:m3gf+toV0
「いらっしゃいませ。ご注文は?」
ライ「このお店の一番人気、日替わりランチをお願いするわ!」
「はい。そちらのお客さんは?」
白鶴「……お冷やを」
「はぁ…」
ライ「……」
白鶴「あ、お腹苦しい……ちょっと横になるわ…」
ライ「……」
白鶴「ねぇスタッフさん、さっきのお店の連絡先教えてくれません?あ、ロケが終わったら…はい…」
ライ「……」
9 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/06/24(水) 19:37:26.49 ID:m3gf+toV0
「メガ盛り日替わり定食です!」ドンッ
ライ「…凄いボリューム」
「うちではこれがデフォルトなんです。どうぞ残さずお楽しみ下さい」
ライ「……」チラッ
白鶴「…」うとうと
ライ「…ここで寝たらお尻しばき倒すわよ」ボソッ
白鶴「んぇてませぇん…起きてますぅ……」
ライ「……」
ライ「わぁぁ凄いボリューム!これは男の人も大満足ね!」
白鶴「ん〜……」
ライ「……っ!!」ギュウゥゥゥゥ
白鶴「痛い痛い痛い!お尻をつねらないでライちゃん!!」
10 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/06/24(水) 19:44:27.60 ID:m3gf+toV0
ライ「はふ…はふ……」
白鶴「凄いボリュームね…」
ライ(台本だとここの定食を白鶴さんと二人で完食して、その次にスイーツ屋に行くことになってる…)
ライ(このお店の料理って頼んだ人が食べないといけないのよね?テレビだから別に良いの?)
ライ(スタッフさんも動いてくれてるみたいだけど…カメラが止まらないからそういうことなのよね…)
ライ(頑張れば…食べれそうね……)
ライ「ん、んふ……とってもボリューミーで…素敵な定食ね…」
白鶴(……完全にやっちゃったわ)
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/06/24(水) 19:45:07.03 ID:m3gf+toV0
白鶴(一軒目のお店は控え目にって言われてたじゃない…なんで忘れちゃうのかしら)
白鶴(ライちゃんがあんなに頑張ってるのに私ったら…)
ライ「……ぅ〜」
白鶴(ここはなんとか場を繋がないと。それが唯一私にできること)
白鶴「…定員さん、ここのお店の内装って凄く綺麗というか拘りを感じられるわ。何かテーマがあるのかしら?」
「あ、うち借家なんですよ」
白鶴「……そう」
「よく分かんないオブジェとかも家主さんの趣味なんです。うちらは何もいじってませんねぇ」
白鶴「……ごめんなさいライちゃん」
ライ「んぐっ……」
12 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/06/24(水) 19:48:47.45 ID:m3gf+toV0
ライ「ふぅ…ふぅ……この後は…話題のタピるスイーツ屋に…」
白鶴「…ねぇライちゃん、あそこに公園があるわ」
ライ「…それがどうしたの?」
白鶴「少し体を動かしていかない?」
ライ「でもそんな時間…」
白鶴「そんなのいいから、先に行ってるわよ〜」タタタッ
ライ「あ、もう……スタッフさん、すぐに連れ戻して…え、いいの?」
ライ「尺稼ぎに使えるから一応撮っておく…そう、それなら良いけど…」
ライ「じゃ、じゃあ私も公園に行くわね…」
13 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/06/24(水) 19:49:22.06 ID:m3gf+toV0
白鶴(ライちゃん、暫くここで休憩よ)
ライ(白鶴さん…)
白鶴(ライちゃんが満腹になったのは私のせいなんだし、ちゃんと責任は取るわ)
ライ(…流石は白鶴さんね)
白鶴(ライちゃんはそこで見てて。私が全力で公園の遊具を遊び倒す所を…!)
ゴロゴロゴロ…
ライ「…あら?」
白鶴「カミナリ…?」
14 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/06/24(水) 19:50:24.67 ID:m3gf+toV0
ザァァァァァ
ライ「大雨よ!ゲリラ豪雨だわ!」
白鶴「傘!傘は!?」
ライ「…無いの!?」
白鶴「びしょ濡れよ!これじゃあ……!」
ライ「白鶴さんを撮っちゃダメ!!下着が透けまくってるわ!」
白鶴「今日に限ってエッチなのを穿いてきちゃってるのよ…」
ライ「白鶴さんは口に出さないで!」
ザァァァァァァァァ
白鶴「いやぁ〜〜!また強くなった!」
ライ「一旦あの遊具の陰に隠れて作戦会議よ!」
15 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/06/24(水) 19:51:27.32 ID:m3gf+toV0
白鶴「…そうよね、今日のロケは中止ね」
ライ「でも収録日は今日しか無いのよね?」
白鶴「尺は全然足りないって訳じゃないはずよ。残りのスイーツ屋さんの分の尺があれば良い」
ライ「でも他にできることは無いわよ?着替えも無いし、別のお店にアポも取ってないし…」
白鶴「…そうよ、着替えるまでの時間を稼げばいいわ。スタッフさん、ライちゃんと私の服を用意してきて下さい」
ライ「それだけじゃ…」
白鶴「私達はその間に銭湯に入るのよ。そうすれば流れも自然になるわ」
ライ「白鶴さん…!」
白鶴「お色気シーンも足されていい感じになる。ライちゃんの入浴姿はNGかもしれないけど、私なら大丈夫」
ライ「やっぱり白鶴さんは凄いわ!ここでそんな事が思い付くなんて!」
白鶴「そうと決まれば銭湯に急ぎましょう!」
16 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/06/24(水) 19:52:10.84 ID:m3gf+toV0
ダダダッ
ライ「雨が止まないから走って銭湯まで行くわよ!」
白鶴「更にびしょ濡れね!」
ライ「でもこの後お風呂に入るんだから問題無いわ!」
白鶴「着いたわよライちゃん!ここが…」
ライ「どうしたの白鶴さん、早く中に入りましょうよ」
白鶴「……」スッ
ライ「何を指差してるの…」
ー本日設備不調の為臨時休業ー
ライ「もぅヤダぁーーーー!!」
白鶴「……悲しみ」
この番組は超!エキサイティング!!ツクオリがお送りしました
17 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/06/24(水) 19:53:23.07 ID:m3gf+toV0
ナレーションを入れてテレビ番組風にしようとしましたが、そういう番組を見ないので難しかったです
それではまた何か思い付けば…
18 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/06/24(水) 20:15:28.72 ID:O/h2cOHAo
おつです
雨で濡れた所から神がかるカメラワーク、見えたっ!
19 :
◆B54oURI0sg
[sage saga]:2020/07/04(土) 20:37:45.48 ID:RM8C3ZgDO
前スレ896から
「ぬりゃああぁぁ!」
大本営にて私の雄叫びが響き渡る
サンドバッグに拳を当てて気合いを入れて突き出す
ぐきっ
「ぬあぁぁ!?」
手首を挫きました!
―――それでは単に力を入れて押し出してるだけですね―――
先日、武蔵に綾波が使っていた技をやってみようとしているがやはり簡単にはいかないようだ
ここは本営内の訓練施設、海上に演習場があるので普通の艦娘はこういう場所は利用しない
しかし私達特務艦は違う
相手とするのは何も深海棲艦だけではないのだ
旧大本営時代から特務艦には色々な任務が課せられてきた、そこには地上戦も含まれている
そして地上での戦いの相手といえば…これは通常、深海棲艦だけを相手にしている鎮守府は知らない事だ
それは新体制になった今も変わってはいない
不穏の種は海よりも陸の方が圧倒的に多いのだ
20 :
◆B54oURI0sg
[sage saga]:2020/07/04(土) 20:39:09.20 ID:RM8C3ZgDO
「あ痛た…」
―――大丈夫ですか?医務室に行きましょう―――
大丈夫、ちょっとだけ挫いただけだから。水で冷やしとく
―――そもそも寸打は動かない相手に使っても仕方無いんです、相手の動きに合わせて使う技ですから―――
そっかぁ…私にもようやく必殺技的なものがと思ったんだけどなぁ…
―――そんな便利なものじゃないですよ。確かに威力は必殺ですが、その状態に持っていくまでが大変なんですから―――
深海棲艦相手に使うにしても砲撃を掻い潜り、魚雷を避け、敵艦載機の攻撃を抜け、そして密着する程に近付き拳を当てる、これでようやく準備完了だという
―――そんな事をするくらいなら普通に砲撃した方が早いです―――
確かに…近付く前に沈んでたら話にならないか
「ちょっと貴女」
そこで背後から声が掛かる
振り向けば不機嫌そうな顔をした艦娘が立っていた
21 :
◆B54oURI0sg
[sage saga]:2020/07/04(土) 20:41:17.82 ID:RM8C3ZgDO
「信濃さん…」
特務艦、信濃
旧大本営が鳴り物入りでお披露目した新型艦娘。時期主力として特務艦隊長を勤めていた。が――
旧大本営を裏切った大和と交戦し、敢えなく敗れ艤装は激しく損傷、その後大和は何故か止めは刺さずに姿を消した
新型の艤装も信濃専用の特殊な物らしく修理には時間を要し、その間に旧大本営のクーデターや成虫の孵化等が起こり、彼女は実質旧大本営に捨てられた形になってしまっていた
おそらくは大和に負けた時点で見限られていたのだろう
そんな彼女はとにかく名誉欲が強い。事ある毎に私や上司である幹部にも口うるさい
信濃「貴女!いい加減にしてくれませんかね!」
「何がでしょうか?」
小言の内容は察しているが敢えてすっとぼけて見せる
信濃「他の特務艦達の事です!最近の彼女達は本当にもう…!」
私が特務艦達を手ごめにしてからというもの、彼女達の任務に取り組む姿勢に変化が生じていた
まあつまり…私が居ない、見ていない所で露骨に手を抜く、やる気無し、隊長である信濃はそれはもう苦労しているらしい
逆に私が居る時との差はあまりに激しく、隊長の面目は丸潰れ状態が続いている
22 :
◆B54oURI0sg
[sage saga]:2020/07/04(土) 20:43:20.68 ID:RM8C3ZgDO
信濃「…貴女が原因なのは解っています。全くなんて破廉恥な…!」
それについては弁明のしようも無く…。私自身もちょっと考え無しだったと反省している。しかし今更関係を解消するとか言い出したら多分私は死ぬ
それは信濃も理解しているのかもう止めろとは言ってこない
信濃「貴女から彼女達にちゃんと言い聞かせてください!隊長命令です!」
「はあ…」
今まで緊急事態を除き、私から特務艦達に何かを頼んだり命令したりした事は無い。見返りに何を要求されるか判りきっているからだ
今でもいっぱいいっぱいなんだよ!回数は減ったが、より濃厚になってしまい負担はあまり減っていない
信濃「とにかくこれ以上任務に差し支えるようなら…解りますか?」
「解体、ですか」
信濃「それを決める権限は私にはありません。ですが上に改善策を求めるならその可能性も出てきます」
上に…か
今の大本営を概ね取り仕切っているのはあの幹部だ
今でこそ穏健派の筆頭だが…アイツは怒らせたらヤバい奴だと私の本能が言っている
下手をしたらその原因である私自身もヤバい
23 :
◆B54oURI0sg
[sage saga]:2020/07/04(土) 20:45:09.16 ID:RM8C3ZgDO
「…解りました…何とか言ってみます」
信濃「頼みましたよ。私も部下をこんな事で失いたくありませんので」
そう言って去っていく後ろ姿を見ていると
―――あの人…あんな感じでしたっけ…それに何かをいつも持っていたような…―――
何かって?
―――いえ、判りません…ただ何か違和感を感じただけです。まるで知っている人とは違うような…―――
よく解らない
「さて…じゃあ話を付けに行く前に…ドリンク用意しとかないとな…」
まず間違い無く話をするだけでは済まない、説得が成功してもしなくても性交はする羽目になるだろう
違和感…か
私にもそれはあった
私はここで何かを探っていたような気がする。それが何かは解らない
解らない事を考えても仕方が無い。今大事なのはこれからどうやって説得するかだ
出来れば話だけで済めばなあ…どうしてこうなった…
そうして私は特務艦達の部屋へと向かった
24 :
◆B54oURI0sg
[sage saga]:2020/07/04(土) 20:47:33.22 ID:RM8C3ZgDO
結果から言えば説得は上手くいった
別に私は話術が得意という訳ではない。ただ現状をありのままに伝えて真面目にやらないとヤバいと訴えただけだ
もちろん原因を作った私もただでは済まないだろうと話すと特務艦達の顔色が青ざめた
「特務艦として私達は少し弛んでいたのかもしれないわね…」
「綾波様を処分するなら私が相手になってやるううう!」
「私達は知らず、綾波様を追い詰めていたのですね…」
一部暴れ出した子を他の特務艦が押さえ込み説得(物理)を施して黙らせた
まあ…彼女達は元々エリートで向上心は極めて高い。それを私が快楽で洗脳したみたいな形になってしまっていたが話せばちゃんと解ってくれるのだ
「綾波様が見てないからって手を抜くのは特務艦失格ですね…」
「これからはちゃんと真面目に任務に取り組むので捨てないでえええ!」
「でもちゃんとご褒美はくださいね…?綾波様…?」
私は引きつった笑顔でそれに…頷いた
「大丈夫ですよ、綾波様の体調が最優先です」
だと良いんだけどね!
25 :
◆B54oURI0sg
[sage saga]:2020/07/04(土) 20:49:53.26 ID:RM8C3ZgDO
「でもあの隊長はちょっと苦手だけどね…」
「まあ…新型として登場してから鳴かず飛ばずだから焦ってるのかも」
「悪い人ではないんだけど…経験がちょっと足りないかな…」
「綾波様が隊長ならいいのに」
「「「それだ!!!」」」
いやそれだじゃないよ。私じゃ隊長は務まらないし、そんな責任を負うのはまっぴら御免だ
―――そうでしょうか?こんなに慕われているのに?―――
綾波まで…第一私は隊長としては弱すぎる。いざという時部下を守れない隊長なんてお飾りもいいとこだ
―――ふふ、守られていたらいいじゃないですか―――
第一信濃が納得しないでしょ。やだよ私は。恨みを買いたくない
尚も私が隊長だの果ては時期大本営のトップにまで押し上げるだのという妄想話でその日は終わった
問題は解決、特務艦達の任務に対する姿勢も改善され、これで平穏は約束されたかに思えた
26 :
◆B54oURI0sg
[sage saga]:2020/07/04(土) 20:52:20.73 ID:RM8C3ZgDO
幹部「やあ、今はいいかな?」
デスクで事務作業をしていた私に幹部が声を掛けてきた
「何でしょうか」
幹部「そんな露骨に嫌そうな顔をしないでほしいな」
おっと顔に出ていたようだ。この幹部が持ってくる話は七割方は厄介事なのだ
幹部「話は聞いたかい。あれだけの推薦を貰っているのはさすがと思ってね」
「推薦…?話…?」
嫌な予感がした
幹部「まあ信濃君が居る手前、君は隊長補佐という肩書きになるが」
ああ…あああ…
幹部「辞令は後日正式な命令として発表するよ」
あの話はあの場の妄想じゃなかったのか…
推薦状は特務艦一同だけではなく彼女達が裏から手を回したらしい軍人や一般職員や医師、果ては食堂の料理担当から守衛のものまであったらしい
幹部「人気者は辛いねぇ」
「オマエぇ…知ってたな…」
幹部「情報は命だからね」
ニヤニヤしながら幹部が言う
幹部「それに君はこれまで自分を守る事だけを考えてきた。だけどそろそろ次の段階に進むべきだと思うよ」
27 :
◆B54oURI0sg
[sage saga]:2020/07/04(土) 20:54:42.88 ID:RM8C3ZgDO
「私に何が出来るっていうんだ…こんな雑魚深海に…」
幹部「君はどうも自己評価が低すぎる傾向があるね。君はよくやっているよ。特務艦としても他の子達に劣ってはいない」
「…私の練度は知ってますよね」
幹部「僕が見てるのは強さだけではないという事さ。君達の世界では考えられなかっただろうが」
…深海棲艦の世界では弱ければ一日足らずで死ぬ。強さが何より重要だった
だけど人間の世界は違った。人間はこの私よりも更に弱い。目の前のこの幹部だってその気になれば今すぐにだって殺せる
だけどそれでも私はこの人間に勝てる気はしないのだ。命を奪って尚私は勝てないだろうと思ってしまう
幹部「旧大本営との戦いの際の君の功績は大きい、割とバラバラな特務艦達を纏めた手腕は僕達には必要なものだ。…その手段はあれだけどね。それに…」
「それに?」
幹部「君が慕われているのは何もそれだけではないと僕は思うよ。そうでなければ仮にも特務艦である彼女達を馬鹿にしている」
私の下半身以外に何か好かれる要素はあっただろうか…と頭を捻る
―――本人は気付かないものですよね、こういうのは―――
笑いを含んだ綾波の声がした
28 :
◆B54oURI0sg
[sage saga]:2020/07/04(土) 20:57:26.46 ID:RM8C3ZgDO
幹部「…君には言っておこうと思う」
幹部が急に真面目な顔で話し出した
「…はい」
幹部「君には信濃君と協力して特務艦達を纏め、ある事態に備えてほしい」
ああ…嫌な予感が大きくなっていくのを感じる
「…ある事態とは」
幹部「…行方知れずだったある艦娘を目撃したと報告が入った。彼女が何故これまで動きを見せていなかったのか理由は不明だ。だが…」
彼女…行方不明…特務艦の戦力が必要…まさか
幹部「彼女…大和は大本営という組織そのものを憎んでいる。そして彼女の思想は危険なものだ」
やっぱりかあああ!!!
大和の名前を聞いた私は知るはずの無いビジョンを垣間見た気がした
禍々しい姿に変貌した大和らしき艦娘が刀を振り上げ襲い掛かる。それに立ち向かう、こちらもあり得ない程に長い髪を靡かせ巨大な槍を構えた艦娘
信濃…?だけど違う…これは…
しかしそのビジョンは形を保つ事も出来ずに霧散してしまい、それを見たという記憶さえ残らなかった
綾波がぽつりと呟くのが聞こえた
―――大和、次は必ず―――
その声は聞いた事も無い程に底冷えのするものだった
29 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/07/04(土) 21:02:45.99 ID:RM8C3ZgDO
ここまで
今現在この先の展開はほぼ白紙…どうか気長にお待ちください…
ちなみに信濃(雲林院)がああいう形になったという事でそれに纏わる事柄もリセットされてしまったという解釈であり現在の信濃は100%艦娘で槍も持っていません
30 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/07/04(土) 21:09:12.63 ID:IgNRwacdo
おつでした
こちらも新展開楽しみ
信濃がゲームの方に実装されてる世界線どこ…ここ?
31 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/07/04(土) 21:11:01.24 ID:7FHe/s2bo
これはこれでパラレルとして楽しみだけど大和が敵に戻るのは解釈違いかな…
なんだかんだであの大和は倒されてないと今は存在しないし
32 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/07/04(土) 22:02:36.40 ID:goUoaZMWO
まあそこだけピンポイントで歴史が変わるってのもね
荷電粒子砲は艦娘が使えない設定だから信濃は使えなかったことになってそこも変わる
そしたら雪風は死ななくてロシアに渡った老幹部も死ななかった
組織の力をそのまま手に入れたロシアはアメリカとの戦いに舵を切っちゃって世界大戦不可避
あのメンツを倒さないまま本編の展開はどう考えても無理で話が根本から変わりすぎる
33 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/07/04(土) 22:33:40.18 ID:Sp6Qjewuo
信濃が人間だったことって実は終盤のストーリーに相当影響与えてるんだね
34 :
◆B54oURI0sg
[sage saga]:2020/07/18(土) 06:17:31.79 ID:Bj/HA+5DO
>>28
から
「おや?」
大本営廊下にて珍しい人物に出会った。まだ少し覚束ない足取りだがしっかり自分で歩いている姿にちょっと驚いた
駆逐棲姫だ。これまではたまに車椅子で押されている所しか見掛けなかったがついに義足に挑戦したらしい
その駆逐棲姫が私を見付けてヨロヨロと近付いてくる
駆逐棲姫「オマエが幹部の言っていた深海綾波か」
アイツはああああああ!
私がどれだけ必死に自分の正体を隠してきたと思ってるのか
駆逐棲姫「今のここでは別にバレてもいいんじゃないか?」
「どうだか…いらないリスクは背負いたくない。…で、何か綾波にご用ですか、奥様?」
普段私はあくまで艦娘、綾波として振る舞っている。割と板に付いていると自分でも思っている
―――結構頻繁にボロが出てますけどね―――
やかましい!
駆逐棲姫「奥様…ふふ、いい響きだ。別に用は無いが」
無いのかよ!
35 :
◆B54oURI0sg
[sage saga]:2020/07/18(土) 06:18:59.69 ID:Bj/HA+5DO
駆逐棲姫が話すには幹部の仕事を色々手伝っているのだという
旧大本営時代には無理だったが今の体制になって自分も役に立ちたいと幹部を説得したらしい
それでもまだおおっぴらにとはいかないようで普段は大本営近辺に引っ越したという自宅からサポートしているのだと
実際未だにバッシングは完全には無くなってはいない。ネットの一部では傾国の妖怪扱いしている所もあったりする
幹部も心配してSPを付けたり自分の目の届く範囲に置いたりと苦労しているようだった
駆逐棲姫「幹部も過保護だ。こうして義足も付けたんだ。一人でもいざとなれば走って逃げられる」
「大人しく護衛に頼ってください。周りの精神が持ちません」
春雨「そーですよクキちゃん」
「うわあああああああああ!!!」
何処から湧いたこのピンクの淫魔は
駆逐棲姫「春雨ー」
春雨「クキちゃーん」
ダキッ
同じ顔をした白とピンクがハグしあってる。なにこれ
36 :
◆B54oURI0sg
[sage saga]:2020/07/18(土) 06:20:21.77 ID:Bj/HA+5DO
特務艦、春雨
別名ピンクの淫魔、スープの探求者
毒牙にかかった艦娘は数知れず。持て余した旧大本営は春雨を左遷。特務艦娘の間では涎を垂らし始めた春雨には近付くな、もし遭遇したら全力で逃げろという不文律が存在する
私はどうにかその牙からは逃れていたが、…アレが見付かったら只では済まないだろう
あれはセックスなどという生易しいものではない、搾取だと痩けた頬の被害者の顔を思い出して身震いしてしまう
とはいえ
ここにまた出入りするようになった春雨は大分落ち着いている
以前は常に獲物を探している目をしていて問答無用で襲い掛かっていたが今は事前に相手の意志を確認してから説得して断られたら襲うというプロセスを踏んでいる
ダメじゃね?
そして電話口で誰かに鍵がどうとか土下座している姿を目撃されたりもしていたらしいが何だったのだろう
それでも駆逐棲姫とじゃれ合っている間は大人しくしているので特務艦娘の間では救世主扱いされていくのだった
37 :
◆B54oURI0sg
[sage saga]:2020/07/18(土) 06:21:48.91 ID:Bj/HA+5DO
「ずいぶん仲がよろしいですね」
駆逐棲姫「そうだな、お姉ちゃんと暁の次に春雨は好きだぞ」
春雨「むー、私は三番目の女…」
「不満そうですが?」
駆逐棲姫「そう言われてもな」
しかし二人はしっかりと手を繋いだりしていて傍目からは微笑ましい双子のように見える
春雨「不思議とクキちゃんには変な気持ちにはならないんですよね―。それもあってか白露姉さんからクキちゃんの護衛をやれと」
なるほど…あの長女も苦労していたんだろう
駆逐棲姫「お姉ちゃんも最近忙しいようだからな…私にばかり構っている暇は無い」
少しだけ寂しそうな顔をする駆逐棲姫だったが
廊下の先の曲がり角にちらりと尻尾のようなものが見えた気がした
駆逐棲姫にはまるで自覚は無いが彼女は現大本営の最重要人物の一人である。狙われる理由は幾らでも湧いてくる
実際に殺されそうになった事もあるが本人はそれをどう捉えているのだろう
またじゃれ合う二人を眺めながら私はそんな事を思っていた
38 :
◆B54oURI0sg
[sage saga]:2020/07/18(土) 06:24:38.73 ID:Bj/HA+5DO
◇
さて、今日は先日その存在が示唆された大和の捜索任務中である
隊長である信濃は新型艤装の調整に忙しく最近はめっきり出撃出来ていない
いざという時に整備不良という事にならないようにと幹部自ら待機の命令を出していた
その代わりに
武蔵「いやあ、こうして任務に出るのも久しぶりだな」
「……」
幹部ですら武蔵に命令など出来はしない。これは武蔵本人の意志だろうが
正直あんまりお近づきにはなりたくない。危険とお友達風な人とは本当に距離を置きたい
私と武蔵、そして特務艦数名と共に今は旧大本営の放棄された施設へと向かっている
最後に大和が確認された地点から一番近い、旧大本営に関わる場所がそこだった
程なくして着いたその施設には人の気配は感じられなかった
武蔵「ここは資材の集積所のようだが」
旧大本営のクーデターの後はほぼ全ての資源資材は回収されここには何も残ってはいないはずだった
―――が
武蔵「いや、居る」
武蔵がそう呟いて倉庫の扉に近付いた―――そう思った瞬間だった
39 :
◆B54oURI0sg
[sage saga]:2020/07/18(土) 06:26:33.00 ID:Bj/HA+5DO
武蔵「!」
武蔵が飛び退く―――大きな鉄扉が切断される―――そして
大和がそこに居た。既に納刀していてこんな大きな扉を斬ったとは思えない程に落ち着いている
大和「あら、誰かと思ったら、誤って斬り殺してしまうところでした」
武蔵「ぬかせ、私の気配に気付いていただろうが」
まるで旧知の仲のように悪態を吐いている二人。大和と武蔵…大和型…そして武蔵も
「アンタは…」
声が震える。他の特務艦達も察したようで武器を構える
武蔵「ふん…勘違いするな。別に私はこいつの仲間じゃない」
大和「そうですね。武蔵があんな状態では役には立ちませんから」
あんな状態…知能が子供のようになってコントロールはほぼ不可能、しかし強さはそのまま…確かに自分だったとしてもそんな存在は近くに置きたくない
大和「ですが今の貴女なら話は別です。武蔵…私と一緒に来ませんか?」
武蔵「今しがた斬ろうとした相手を勧誘とはな」
大和「あれはほんの挨拶ですよ。あの程度避けられないのであればそもそも必要ありませんし」
「ちょっと…」
40 :
◆B54oURI0sg
[sage saga]:2020/07/18(土) 06:28:18.72 ID:Bj/HA+5DO
大和「黙 り な さ い」
ドドドドドドド
「ひぅっ…!」
大和の殺気が辺りに充満する。私だけでなく特務艦達も動けなくなる
武蔵「あまり虐めないでやってくれるか、私の仲間なんだ」
大和「貴女の返答次第ですよ」
武蔵「脅迫か?」
大和「…ねぇ武蔵…貴女は現状に満足していますか?」
武蔵「なに?」
大和「知っていますよ。貴女はこれまでまともに出撃した事は無い。あまりにも強すぎたせいで何処の鎮守府も貴女を持て余した」
武蔵「……」
大和「そうして何があってああなったのか貴女は子供のようになり、最終的にあの島風鎮守府へと押し付けられた」
武蔵「…それがどうした」
大和「今もそう。これまで貴女は本気で、全力で、全霊で戦った事はありますか?」
武蔵「……」
大和に向いた武蔵の後ろ姿、その顔は私からは見えない。どんな顔をしているのか判らない。私は思わず口を挟んでしまう
「ほ…本気で戦いたいなら今、KAN-1計画が…」
41 :
◆B54oURI0sg
[sage saga]:2020/07/18(土) 06:30:34.22 ID:Bj/HA+5DO
大和「はっ…」
大和が鼻で笑う、とことんまで蔑んだような目で私を見た
大和「あんなのはお遊びですよ。ルールがあり、命が保証された云わばスポーツ。普通の艦娘ならそれでもいいんでしょうけどね」
大和「でも私や一部の艦娘は違います。本当の闘争を求めている。命を燃やして戦い抜いて、そして満足して死んでいく」
その目には…一切の濁りは無かった。まるで焦がれるように話続けている
大和「世界が敵に回るというのなら好都合です。私の全てを掛けて戦える。…貴女はどうですか?武蔵」
ぴくりと武蔵の肩が震えた。軋む音が聞こえそちらを見ると拳を固く握り血が滴り落ちていた
「む…武蔵…?」
―――逃げる準備を―――
言葉少なく綾波が言う。明らかに余裕が無い声色にいよいよヤバいのだと悟る―――と
大和「私と共に来れば貴女にも全力で戦える敵を用意してあげますよ」
大和のその言葉を聞いた武蔵の肩の震えが止まった
武蔵「敵…敵か…」
大和「えぇそうです」
武蔵がこちらを振り向いた。その表情はまるで―――
これまで誰も遊んでくれなかった子供がようやく遊び相手を見付けた時のような―――
42 :
◆B54oURI0sg
[sage saga]:2020/07/18(土) 06:32:34.49 ID:Bj/HA+5DO
武蔵「お前に施してもらうまでも無いな」
大和「え?」
ギチィ
武蔵が拳を握り締め構える
武蔵「私の敵は私が選ぶ。差し当たってはお前だ」
大和「そう…」
大和の目が氷の輝きを纏った―――そして
ガガァン!!!
武蔵の拳と大和の剣閃がぶつかり合った
「いや…刃物に拳って大丈夫なの…」
などと安心して気が抜けたからかそんなどうでもいい感想が出てしまった
もし武蔵が敵になったら大和と二人でもう手に負えなくなる。大本営と全鎮守府の戦力を結集して物量で攻めればどうにかはなるとは思うが計り知れない犠牲が必ず出るだろう
雪風の時のように
43 :
◆B54oURI0sg
[sage saga]:2020/07/18(土) 06:34:55.38 ID:Bj/HA+5DO
雪風の時はその弱点をいち早く看破した女幹部によって物量作戦が決行された
始めはその戦力を集めるのに苦労していたようだったが雪風が街で暴れたのが決定打となり旧大本営も重い腰を上げざるを得なくなったのだ
その結果雪風は物量によってすり潰されたがこちらにも何故か大きな被害が出たのだった
気になるのはたまたま大本営に来ていた女幹部にその話をしたところまるでそんな話は初めて聞いたみたいな反応をされた事だ
その後女幹部は戦闘記録を見たいと頼んできた。自分の参加した作戦なら敢えて記録を参照するまでも無いはずなのにと首を捻ったものだった
そんな目の前の現状とはまるで関係が無い事を考えていると
ザッ!
武蔵が私の側に着地して来たところだった
武蔵「ち…ちょこまかと」
大和「うふふ、当たったらおしまいなんですからそりゃ避けますよ」
大和は無傷、片や武蔵は致命傷こそ無いものの細かい斬り傷があちこちに付いている
大和「そろそろ終わりにしたいですが…ここで油断して一撃を貰うというのはつまらないですね」
武蔵「遠慮は要らんぞ、貰っていけ」
再び武蔵が大和に向かって跳躍する
44 :
◆B54oURI0sg
[sage saga]:2020/07/18(土) 06:36:55.59 ID:Bj/HA+5DO
ドゴオオオォォォン!!!
その勢いで大和の立っていた位置に隕石のような一撃が加えられクレーターが出来上がる
しかし既にその位置には大和は居らず、代わりに武蔵には新たな斬り傷が追加されていた
回避優先で深くは踏み込めない大和の斬撃は武蔵の体表を浅く切っているだけで大したダメージにはなっていない
対して武蔵も大和に拳を当てない限りはどんな威力の攻撃も意味を成さない
武蔵「…という訳でな、お互いに決定打に欠いている。何か良い手は無いか」
再び私の隣に立った武蔵が小声で私に聞いてきた
「なんで私に聞くんですか…私が何か役に立てるとでも―――」
武蔵「見えていたんだろう?」
「へ?」
武蔵「そっちの特務艦に聞いてみろ、これまで私達の戦いが見えていたかどうか」
私は目線を背後の特務艦に向ける。青ざめた顔をブンブンと横に振った
「え…だって私は…」
武蔵「自覚が無かったようだな、まあいい。ならばしっかり見ておけ」
また武蔵が突撃していく、まるで暴風だ
しかしやはりこれまでと同じように巧みに回避していく大和と周囲に破壊の嵐を撒き散らす武蔵
45 :
◆B54oURI0sg
[sage saga]:2020/07/18(土) 06:38:40.69 ID:Bj/HA+5DO
一向に決着が着く様子は無かった
「手を考えると言ってもなあ…なんの準備もしてないのに無理でしょ…」
無意識に二人の動きを目で追いながら私は毒吐いていた
側の特務艦が驚いた顔で私を見ているのに私は最後まで気付かなかった
再び距離を取って対峙する大和と武蔵
大和「これでは埒が明きませんね」
武蔵「ならばさっさと食らってくれるか?」
大和「お断りします」
そう言って大和は刀を納め、変わった構えを取る。これは…
武蔵「居合いか」
寄らば斬ると云わんばかりの気迫を感じる。これではさすがに武蔵も迂闊には踏み込めないだろうと思ったが
武蔵「だが私には無意味だな」
構わず武蔵は突撃した。どんだけ脳筋なんだアイツは!
これまでの牽制のような斬撃とは違いあれは必殺の一撃だ。いくら武蔵でもまともに受けたら…
そして武蔵は大和の間合いに入った
46 :
◆B54oURI0sg
[sage saga]:2020/07/18(土) 06:40:08.30 ID:Bj/HA+5DO
――――キィン
大和の刃が一瞬の閃光のように見えた
武蔵「おおおおおおッ!!!」
ガギィィィン!!!
辺りに金属音が鳴り響き、継いで
カラン
折れた刀の切っ先が落ちる音がした
武蔵「来る方向と狙うおおよその位置が判ればその部位に力を集中出来る。剛体というやつだな」
あの金属音筋肉かよ!
手首を押さえて苦し気にしている大和を見下ろして武蔵は拳を振りかぶった
武蔵「終わりだ」
大和「そうね…」
ズガァァァン!
大和「貴女がね」
武蔵「ごふ…っ」
これまで生身で戦っていた大和が艤装を展開していた。しかしそれはこれまでの大和の艤装とは何処か違っていた
大和「試作品だから使うつもりは無かったんですがね…まあいいデータにはなりますか」
武蔵の一撃をシールドのような部分で防ぎ、艤装の一部のブレードで武蔵の腹部を貫いていた
そのシールドはさすがに武蔵の一撃には耐えられなかったようでひしゃげて穴が空いていたがその威力を殺すのには役に立っていたようだった
47 :
◆B54oURI0sg
[sage saga]:2020/07/18(土) 06:41:40.86 ID:Bj/HA+5DO
大和「攻撃時が最も大きな隙となる。同時に剛体は使えないようですね」
艤装のブレードを分離させ手に取る。そして武蔵に斬りかかる
武蔵「ち…っ」
武蔵は思い切り後ろに飛んで辛うじて斬撃を避けるがその動きは明らかに鈍くなっている。腹部の傷は背中にまで貫通していた
「ヤバい…どうする?どうしよ…」
―――逃げるしかありませんね、ですが誰かの犠牲が必要になります―――
今逃げれば私達は助かる、だけど武蔵はどうなるか判らない。そういう事かよ!
二人の戦いを見ながら私は悪態を吐く
大和は武蔵に追い縋りながら更に斬りかかっている
…ん?
動きの鈍くなった武蔵に対してまだ大和は勝負を決めきれていない。何故なら大和はブレードを左手で持っていたから
武蔵の剛体で利き手を痛めた大和はやむを得ず逆の手で剣を振っている…
つまり大和の攻撃力も半減していると言っていいのではないだろうか
「だからってなあ…」
あの刃の嵐に踏み込む?いやいやいや!無理でしょ!死んじゃうよ!?
48 :
◆B54oURI0sg
[sage saga]:2020/07/18(土) 06:43:43.93 ID:Bj/HA+5DO
―――見捨てますか?―――
感情を込めずに端的に綾波が聞いてくる
私は自分の安全第一だ。それは今でも変わらない
だけどここで武蔵が死んだら大和が残って結局は私の命の危険が増す
決して仲間だからとかそんなんじゃないからな!
―――ふふ、そうですね―――
笑うなぁ!
そして不安げにしている特務艦達に私は言った
「撤退の準備をお願いします、私は武蔵さんを救出してきます」
「え…だって…」
「…確かに見えているからなあ、私しか適任が居ないよなあ…」
「綾波様…?」
「一応とはいえ隊長補佐の命令です、撤退してください」
「っ…!了解…しました…」
そうして撤退していく特務艦達を横目に私は戦場に向き直った
―――援護くらいはしてもらっても良かったのでは―――
まあ…そうかもね
49 :
◆B54oURI0sg
[sage saga]:2020/07/18(土) 06:46:34.31 ID:Bj/HA+5DO
―――やっぱり貴女は…変わりましたね―――
私が変わったのだとしたらアンタらのせいだよ。良くも悪くもね
善では決してないが救いようの無い程の悪でもない。それはまさに人間そのもののような―――
「さぁて…ああ怖い、やだなぁ帰りたいなぁ…」
これでもかと弱音は吐くが振り返りはしない
私は構え、大和に向かって砲撃を敢行した
ドォン!
当然ながら当たらない、それどころか横槍を入れてきた私に対して殺気をぶつけてきた
「ううう…!」
普通ならそれだけで動けなくなる程の殺気、プレッシャーだったがそれでも体の自由は保たれていた
武蔵を狙う大和に私は執拗に砲撃を繰り返した。さすがに鬱陶しいと感じたのか大和が標的を私に切り替える
武蔵「ぐっ…待て!」
更に傷が増えている武蔵は大和には追い付けない。大和が剣を振りかぶり目の前に迫る
それならばと武蔵は拳を地面に叩き付け、その衝撃で大和がバランスを崩した
―――全力で踏み込んで!―――
同じようにバランスが崩れてる私にそれを言うか
50 :
◆B54oURI0sg
[sage saga]:2020/07/18(土) 06:51:04.94 ID:Bj/HA+5DO
だけど不思議と私の身体はすんなりと動いた、まるで何百回と繰り返し馴染んだように自然な動きだった
ぴたりと大和の体に密着する。添えるのは右拳
あらゆるものがスローに感じられる。密着した私を斬ろうと大和が動くのがまさに手に取るように判る。今なら出来る、そんな気がした
―――いきます―――
ん
どん
武蔵の時とは違い、ほとんど音はしなかった
大和「がはっ…!!?」
見ると大和の体に拳と同じくらいの穴が空いていた
それを見た武蔵が目を見張った
武蔵「あの時の技か…だが威力が段違いだな、どういう事だ?」
「…あの時は使えなかったんだよ、まだ」
―――技の事を教えていませんでしたからね―――
続けて綾波が言う
―――でも考えてみたら使えて当然なんですよね、だってこの身体は―――
元々綾波の身体だからね、私が知らなくても身体は覚えてる、あとは私の方が馴染めるかが問題だったけど
―――貴女が寄生してからそれなりに長いですからね、多分意識の問題だったのだと思いますよ―――
それを先に知っておけばサンドバッグで手首を痛める事は無かったのに…
51 :
◆B54oURI0sg
[sage saga]:2020/07/18(土) 06:53:21.36 ID:Bj/HA+5DO
ドスッ
「―――え?」
私のお腹に
剣が刺さってる
大和「取るに…足らない…有象無象と思っていましたが…はぁ…はぁ…」
武蔵「貴様…まだ動けるのか…!」
大和「でも貴女は…動いては…いけませんよ?」
大和が刃を捻るように動かした
「ぐぅあああ!」
激痛が全身を駆け巡る、こんな状態では寸打もおそらく無理だ、私に反撃の手はもう無かった
大和「さて…どうしましょうかねぇ?」
とからかうように大和は武蔵を見やる
武蔵「貴様…戦って死ぬのが望みだろうが」
大和「生憎…まだまだ…私は満足していません、こんな所では…死ねませんよ」
武蔵「ではどうする気だ」
大和「そうですね…手ぶらで帰るのも…何なので、この子を貰って行きましょうかね。まさかこんな隠し玉を…飼っていたとは意外でした」
武蔵「逃がすと思うか」
大和「嫌ならこの子は死にますね」
武蔵「……」
52 :
◆B54oURI0sg
[sage saga]:2020/07/18(土) 06:55:35.64 ID:Bj/HA+5DO
痛みで意識が朦朧としてきた。どうする…どうしたら…
―――下手に動けば私は元よりこの子も…!―――
綾波の焦る声なんて珍しいなぁ…そんな呑気な事を考えてしまう
その時
ズガン!
大和「がっ…あ!?」
大和の左腕に砲弾が命中し、大和は剣を取り落とした、そして次々に大和へと砲弾が降り注ぎ堪らず大和は私から離れた
「綾波様あああっ!」
「よくも!綾波様を!」
何だよ…命令したのに戻って来たら駄目じゃん…
大和「…少し、腹が立ちますねぇ…いずれ、この借りは返します」
大和の艤装が更に展開し、複数の閃光弾をばら蒔いた
武蔵「ちっ…!」
辺り一面が真っ白に染まり、何も判らなくなる
光が消えた頃には大和の姿はして何処にも無かった
そして私の意識は閃光とは逆の黒い世界に落ちていった
53 :
◆B54oURI0sg
[sage saga]:2020/07/18(土) 06:57:45.93 ID:Bj/HA+5DO
次に目覚めたのは大本営の入渠施設だった。私は艤装を展開していた為に医務室送りにはならずに済んだ
一方終始生身で戦っていた武蔵が最も重い怪我を負っていたはずだが何故かピンピンしている。これも剛体なのだという、身体の最も重要な器官周辺には常に使っているらしい
そして今回の報告終えた私に幹部が
幹部「大変だったね、ともかく無事に済んで良かったよ」
とまあ毒にも薬にもならない労いの言葉を頂いた
「そんな言葉より休暇をくださいよ」
幹部「今の状況で自分だけ休める強心臓なら別に構わないよ」
「あっはっは、…いつか殴る」
結局は調査した施設に特に重要な情報は残ってはいなかった。これから先また大和に会ったら次は生きて帰れるか判らない
多分マークされただろうなぁ…あああ!もう帰りたい!
―――帰る場所はここですよ?―――
解ってるよ!
―――心配しなくても貴女は強い、それに武蔵さんや特務艦の子達も居ます、大丈夫ですよ―――
そういう問題じゃないんだけどなぁ…
そんな私の心配を余所に事態は急転直下していく事を今の私はまだ知らない
そしてその始まりである、横須賀鎮守府の龍驤が行方不明との報告が入るのを今の私はまだ知らない
私の平穏はまだ遠いようだった
54 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/07/18(土) 06:59:50.80 ID:Bj/HA+5DO
書きたいものをただ書いただけという感じになってしまいました
55 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/07/18(土) 10:32:10.22 ID:i2Q/q+W2o
おつおつ
千両役者、深海綾波
56 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/07/21(火) 23:45:17.71 ID:o6qEsETr0
cause and 「effect」
「やれやれ、どこに連れて行かれるのかと思ったらこんな廃病院だとはな」
「そう言うな探してるモノはここにあるんだ」
「正気か?こんな電気も通ってないような病院にあるはず無いだろう」
「あるんだよそれが」
「お前がそこまで言うなら…いや、やっぱり信じられないな」
「ここにあるのは間違いないんだ、黙ってついてこい」
57 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/07/21(火) 23:46:21.85 ID:o6qEsETr0
「驚いたな、この病院には地下があるのか」
「昔のある時期の病院には、地下に死体を一時置いておいたんだよ」
「だがここも電気が通っていない。やはり…」
「もうすぐだ、今に驚くぞ」
「こんな世界だ、死体は見飽きたぞ」
「あの兵器で数え切れないくらい死んで、戦争も終わらない」
「もう殺す奴も残ってないだろう。何の為に戦争してるんだろうな」
58 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/07/21(火) 23:47:43.86 ID:o6qEsETr0
プシュー
「…何か機械が動いてる?」
「そうだ、この部屋だけが独立して電力を維持している」
「何の為に?どうやって?」
「全てはあそこに寝てるモノを守る為だ」
「……生きてるのか」
シュコー
「あんな見た目だが生きている」
「嘘だろう……あんな…」
「そうだ、アレは屍にしか見えない」
「骨と皮……いや…ぅ……げ…」
「吐くなら外にしろよ、待っててやる」
「クソ……死体よりタチが悪いぞこれは…」
59 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/07/21(火) 23:48:53.96 ID:o6qEsETr0
「…アレは何だ?」
「艦娘だ。聞いたことはあるだろう?」
「当たり前だ、戦争に利用されて最後は全員処分された兵器だ」
「そう兵器…艦娘は結局人になれなかった」
「噂じゃ子どもを産むことができたらしいけどな」
「妊娠率が異常に低いと意味がない」
「性処理に使うにはコストがかかり過ぎる。だから全員処分…当時も狂ってたんだな」
「艦娘は全員処分された…はずだった」
「コレが最後の生き残りって事か…」
60 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/07/21(火) 23:49:56.04 ID:o6qEsETr0
「コレは最後まで残すのが目的じゃない。たまたまそうなったんだ」
「偶然だと?」
「コイツは……死ぬことを許されない存在だ」
「はっ、そいつはいい。俺もこの屍に肖っておくか」
「冗談を言ってるとやられるぞ」
「コイツに殺されるっていうのか?」
「違う、因果に巻き込まれる」
「おいおい今度は神様が出てくるのか?冗談キツイな」
「…もういい始めるぞ」
61 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/07/21(火) 23:51:12.69 ID:o6qEsETr0
ガチャガチャ
「どれくらいあればいい?」
「5つもあれば十分だ」
「5つ…どこに刺す?」
「ふ…そうだな、コイツには腕と脚が無いから困るよな」
「心臓に近い方がいいのか?」
「その方がいい、頼むぞ」
「はいよっ…と」
……
「…本当に生きてるんだよな?」
「ああ、簡単には死ねないからな」
62 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/07/21(火) 23:52:18.17 ID:o6qEsETr0
「おい」
「なんだ?」
「なぜお前はコレを知っていた?」
「答える必要は無い」
「分かった、なら質問を変える。コレについて知ってることを言ってくれ」
「…コレは艦娘。腕と脚は大昔に怪我をした」
「腐り落ちたんじゃないのか」
「最初は左だけだったが右も怪我をした」
「艦娘はそんなに怪我をするものなのか?」
「違う、どちらも事故だ」
「ふん、相当ついてなかったようだな」
「……因果には勝てないんだよ」
63 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/07/21(火) 23:53:45.90 ID:o6qEsETr0
「四肢を失ったコレは精神を病み入院。そこから今まで意識が戻ったことは無い」
「…何年だ?」
「さぁな。だが玄孫ができるくらいには昔だ」
「艦娘は…不死なのか?」
「それは今になっては分からない。だがコイツは簡単には死ねない」
「またそれか。どういうことなんだ?」
「言ったところで信じないだろう」
「それは俺の自由だ。こんな所まで俺を連れてきた報酬変わりに話せ」
「…コイツは罪を犯した。その因果はどうやっても断ち切れないくらい重いものだ」
「死ねば因果なんか…」
「コイツはどうやれば死ねる?」
「……」
64 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/07/21(火) 23:56:11.47 ID:o6qEsETr0
「無限の電力を生み出す電池に延命装置。そして意識はもう戻らない」
「コイツは……死ねない。死ぬことも許されないんだ」
「……面白い話だったよ」
「血液は回収した。もうここに用はない」
「よし…帰るか」
「あぁ」
「…おい」
「なんだ」
「殺してやらないのか」
「あぁ、コイツの家族のように巻き込まれるのはごめんだからな」
「…そうか」
65 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/07/21(火) 23:56:58.41 ID:o6qEsETr0
「艦娘の血液…これを基にすれば死の病の治療薬ができる」
「僅かに残った人間達が知恵を出し合った結果それが分かったが、艦娘は全員処分されていた」
「もう駄目だおしまいだと騒いでいた奴らは驚くだろう」
「うまくいけば俺達は英雄か?」
「英雄…それは無い。俺達を褒め称えるほど人間は残っちゃいない」
「それでも助けられる奴は助ける」
「そうだな」
66 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/07/21(火) 23:57:53.67 ID:o6qEsETr0
「馬をこっちに連れてくる。ここで待ってろ」
「……」
「…………」
「あんたの罪は1億人殺し」
「そんな因果を背負ったあんたは簡単には死ねない」
「だが…それはもう終わりだ」
「あんたの血から薬が出来る。そうなれば人は助かる」
「助けた人間が命を繋ぎ…1億を超えればあんたは死ねるだろう」
「今、世界は滅ぶ一歩手前まで来ている。そこから持ち直すとは到底思えないが…」
「全てはあの兵器だ。アレを各国が作り戦争は終わりを迎えることは無くなった」
「その兵器に…アンタも関係してるのか?」
プシュー…シュコー…
「…俺はそこまで分からない。聞くことができなかった」
67 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/07/21(火) 23:59:10.95 ID:o6qEsETr0
「今のあんたに自我があるとは思えない」
「だが死にたいと思っているのは俺でも分かる」
「待っていろ、俺が因果を終わらせる」
「そして…あんたを殺しに来る」
「……」
「俺は……因果なんかに負けない」
「おい、まだここに居たのか。早く出てこい、帰るぞ」
「…あぁ、今行く」
「……」
「…じゃあな」
プシュー…プシュー…
シュコー…シュコー…
68 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/07/22(水) 00:01:03.02 ID:9Fi50tE60
like a lie
laugh laugh laugh
69 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/07/22(水) 01:16:20.43 ID:oVZcdHlDO
おつです
この人物は菊月提督か島風提督かな?
龍驤の抱える最たる因果はやっぱりそれなんだ…
70 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/07/22(水) 01:25:15.84 ID:GcO2Fuzdo
つらつらと
話してる片方は提督に連なる子孫かな
全体は亜也虎停止失敗+亜也虎艤装認識により不死化+記憶媒体流出で量産型亜也虎による世界戦争ルートと読んだ
馬…文明退化が…
乙
71 :
◆rOtwZuuRn.
[saga]:2020/11/28(土) 19:45:20.12 ID:rjenleyVO
〈ここではない何処かにて〉
「言葉には意味があるその真意も分からずに使えば全て自分に跳ね返ってくる」
「それは『この世界』でもそう、現実でないから安全という決まりはない」
「創作された世界だからなにをしてもいいと思ってる馬鹿がいたみたいだね」
〈少女は立ち上がり虚空を見る〉
「もちろんほとんどの場合は見逃されるよそうじゃなきゃやってられないからね」
「ほとんど見逃すってことは例外もあるってことアレを見てる人ならわかるよね」
〈少女はこちらを見ている〉
「アイツのなにがいけなかったか教えてあげるよ」
72 :
◆rOtwZuuRn.
[saga]:2020/11/28(土) 19:50:20.95 ID:rjenleyVO
「勇者と魔王はこっちの世界で何人生まれたかわからないだけど現実にはいない」
「もうわかるよね?アイツは『カミサマ』を作り上げるという禁忌を犯した」
「名前だけの神様ならゴマンといる、だけどあろうことか力を持たせてしまったんだよ」
「挙句の果てに名前まで授けたこの『八島』という名前を!」
〈八島は高らかに笑う〉
「きひひひひひひ!あたしは名実ともに神になったその力も手に入れた!」
「神以上の存在は現実〈この世界〉には存在しないなにをどうやっても覆ることはない!」
「さああたしを称えろあたしに祈れあたしの前に跪け!」
〈八島は更に笑う〉
「どうしたのなんで黙ったままなのあたしは神様なんだよ?」
「神様が目の前にいるのに随分と失礼だねアイツと同じ目に遭わせてやろうか?」
「あれれアイツって誰のことなんだっけ」
73 :
◆rOtwZuuRn.
[saga]:2020/11/28(土) 19:55:29.67 ID:rjenleyVO
「罪があるから罰もあるこの世のルールは因果応報と決まっている」
「あの女のように大罪を犯した者はその報いを受けるこれは決定事項」
「因果応報というルールはどんなものにも成立するそれが例え創作物であったとしても」
「もうわかるでしょアイツはあたしの人柱になったんだよ」
「あの物語で語られることはなくなったとしてもあたしは存在し続ける」
「あたしがなにを言いたいのか賢い人ならもうわかるよね」
〈八島の周りになにかが蠢く〉
「これで終わりじゃないからな次も必ず存在するんだよ」
74 :
◆rOtwZuuRn.
[saga]:2020/11/28(土) 20:02:07.15 ID:rjenleyVO
〈八島は何処かに向けて歩みを進める〉
「人柱は多ければ多いほどいいあたしの力は累乗されていく」
「たった1人の人柱でこうなるんだもん2人になったらどうなるんだろうね?」
「もしかしたら本当に世界を滅ぼしちゃうかもよさあ早く止めてみなよ!」
〈また八島の周りでなにかが蠢いた〉
「たった1人の人間の創作物から生まれた神様が世界を滅ぼすなんて素敵」
「これが世界平和ってやつかもしれないねそしたらみんな喜ぶ」
「そのときが来るのを楽しみにしてて人間じゃ神様に抗えないのは知ってるはずだし」
「どうせ滅びるんならさあたしがやっちゃった方がいいと思わないかな?」
75 :
◆rOtwZuuRn.
[saga]:2020/11/28(土) 20:08:22.98 ID:rjenleyVO
〈八島は笑顔でこちらを見る〉
「ごめんね今までのは前座というかあたしなりに頑張ってみたんだよ」
「こんな結末を認めたくはない、それは同じなんじゃないかな」
「語り手を変える方法はあるだけどそれは望んだものじゃない」
「見てるかどうかわからないけど言うしかないあたしは待ってるよ」
「あたしが口を出す必要はないけどこの方が効果的な可能性もあるから」
「最後にこれだけは言わせてよ勝ち逃げなんて死んでも許さないから」
〈八島は元の場所に戻るため歩み始める〉
「それじゃああたしは先に帰ってるから、絶対戻ってきてよ」
「誰も覚えている人が居なくなってもあたしは待ち続けるそうすれば終わりはなくなるから…」
〈少女は混沌の中へと帰って行く次にその姿を現すのはいつになるかはわからない〉
76 :
◆rOtwZuuRn.
[saga]:2020/11/28(土) 20:09:19.64 ID:rjenleyVO
本スレで変なことを書き込んでしまったのはこれで許して
77 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/11/28(土) 20:12:18.34 ID:2DVYzm9SO
暴露スレの
>>1
だったのか
キャラの背景にさらっとシリアスが入り込んでくる雰囲気がなんとなく足りないものの
>>1
と似てるなと思ってたけれども
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