【はめふら】カタリナ「マリアがみてる」【たまに安価】

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63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/01(月) 01:53:33.90 ID:5KA3X7qLO
乙を差し上げますわ

>>62
はてどなたかしら?ジオルド様はたまに難しい謎掛けをなさりますわね
それより花を愛でる淑女の出番はまだでしょうか
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/01(月) 03:24:26.37 ID:VByXp4Jo0
乙ですわ。良いお話でした。まるでロマンス小説の様でしたわ!
あ、あの…カタリナ様とおにい…魔性の伯爵が出てくる話はいかがですか?
もしくはカタリナ様とわた…絹のような髪とルビーの様な目を持った女の子のお話とかも良いと思いますの!
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/02(火) 00:23:52.40 ID:cU1vDpkj0
こんばん……ごきげんよう。
本日は0:30から投稿していきますわ。

>>62,>>63,>>64
幼馴染の方々、出番はまだですのでもう少々お待ち下しまし
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/06/02(火) 00:28:47.27 ID:d+3MRMg10
まあ、よきタイミングでスレをひらくことができましたわね
期待させていただきますわ
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/02(火) 00:32:20.33 ID:cU1vDpkj0

【マリアの家】

カタリナ「小さな家ね、小屋かと思ったわ」

マリア「あはは……でも私とお母さんしか住んでないからちょうどいいかなって」

カタリナ「そんなものかしらね(ん? 「しか」?)」

マリア「お母さん、ただいま」

あれから勢いでカタリナを家の前まで連れてきてしまったけれど、良かったのかな。
今さらになって、町のどこかで迷子を保護してくれる場所に行った方がよかったのでは
と冷静に考えるようになった。もっとも私にはその場所に心当たりがなかったけれど……

一方カタリナは私の家を珍しいものを見るように観察し、遠慮ない感想を言ってくる。
まぁ、何となく予想はしていたけれどやはりお嬢様のカタリナには色々と物足りなかったみたい。
そんなことを考えながら私は中にいるはずのお母さんに向かって声をかける。
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/02(火) 00:48:26.67 ID:cU1vDpkj0

マリア母「…………おかえりなさい」

そして私の声に気づいたお母さんが、いつもみたいにどこかよそよそしさを感じる返事をする。
実の家族なのに……ただ、今日だけはそんなことは気にしている場合じゃない。だって

カタリナ「まぁ、すごい綺麗なお母様だわ! お部屋は……やっぱり狭いけれど 」

カタリナがいるんだもの。私の後ろからついてきたカタリナはお母さんを見るや、
綺麗と言ってくれた。カタリナの性格上、本心から言ってくれてることが分かるので
私は思わず笑みを浮かべてしまう。今でこそギクシャクしてしまっているけど
それでもお母さんを褒められるのは嬉しい。お部屋はお気に召さなかったみたいだけれど……

69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/02(火) 00:59:43.59 ID:cU1vDpkj0

マリア母「え? マ、マリア。この子はどちら様なの? 」

マリア「ええと……町で迷子に」

カタリナ「ちょっと、迷子じゃないわよ!!ていうか、あなた私を迷子だと思ってたのね。失礼しちゃうわ!!」プリプリ

カタリナ「マリアのお母様、初めまして。カタリナ・クラエスよ!!」

カタリナ「マリアとは町で知り合って、いなくなったお父様を一緒に探していたの」

マリア母「は、はぁ……マリアの母です。こちらこそよろしくお願いします……」

カタリナ「ふふーん」ニコニコ

マリア母「(それって迷子なのでは……いえ、それよりもマリアが同じくらいの子を連れてきた!?)」

マリア母「(雰囲気からして、良いところのお嬢様なのかしら)」

マリア母「(それに、クラエスってどこかで聞いたことがあるような……)」

マリア「お母さん?」

マリア母「え、ええと……お腹すいたでしょ。ご飯作ってあるから食べちゃいましょうか」

70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/02(火) 01:09:26.59 ID:cU1vDpkj0

マリア母「……どうでしょうか。お口に合いますか?」

カタリナ「んー、食べたことない味だけど悪くないわ!!」

マリア母「それは……良かったです」

マリア「(……ほっ)」
本当に良かった。カタリナのお家では想像できないけれど、き
っと普通の家では出てこないようなものを食べているはずだから。
幸いにも家の味はまだ大丈夫みたい。

マリア「(それにしても……)」
こうやってお母さんと顔を合わせてご飯を食べるのはいつ以来だろう。
いつもならお互い避けるように別々に食べるのに、今日はカタリナがいるからか
お母さんも一緒だし、一緒の席でもそこまで気まずくもない。
相変わらず会話はないけれど少しだけ昔に戻った気がして嬉しくなった。

71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/02(火) 01:26:59.90 ID:cU1vDpkj0

カタリナ「……」ジィー

マリア「な、なに?」

カタリナ「マリアとマリアのお母様って本当にそっくりね」

カタリナ「マリアも大人になったらこんな感じになるのかしら」

マリア「そ、そうかな?」チラッ

マリア母「!!」

そんなことをカタリナが急に言うものだから返事に困り、何となく
お母さんの顔を伺うとお母さんは一瞬ハッとした顔になり、
またいつものもの悲しげな表情に戻った。
何を考えていたのかは……わからない。

カタリナ「まぁ、私もお母様似なんだけどね。そのせいでお父様はこれでもかってくらい私を可愛がってね〜」

マリア母「……」
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/02(火) 01:38:26.14 ID:cU1vDpkj0

それからご飯を食べながら、お母さんとぎこちないながらも話をした。

カタリナがお父様のお仕事についてきたこと、
街中でカタリナにあったこと、
お家の人とはぐれてしまったこと、
一緒にお家の人たちを探したこと、
そして一緒に公園で遊んだこと……

今日の出来事を、私にとって大切な思い出を振り返るように
私からの一方通行の会話だったけどお母さんは黙って聞いてくれていた。

そんな二人の微妙な空気に気づかないカタリナもところどころ会話に加わり
カタリナ自身のことを身振り手振りで伝えてくる。
不恰好ではあるけれど、友達を家に連れてきた家庭のように思えた。

マリア「(カタリナも同じ気持ちだと良いな)」

そう思ったその時、外からノックをする音と、「ごめんください」
という若い女の人の声が聞こえた。その声にお母さんが対応する。
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/02(火) 01:43:39.99 ID:cU1vDpkj0

マリア母「はい、どちら様でしょうか」

アン「遅くに失礼致します。私、クラエス公爵の家政婦、アン・シェリーと申します」

アン「少々お聞きしたいことがあるのですが……」

カタリナ「アン!!遅かったわね!!」ダキシメ

アン「お、お嬢様!!ご無事でしたか……本当に心配しました」

カタリナ「アンもお父様もいなくなってしまうんですもの、人騒がせよね!!」

アン「も、申し訳ありません」
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/02(火) 01:54:43.64 ID:cU1vDpkj0

外の声の主に気づいたカタリナがその人物めがけて飛び込む。
そんな、久しぶりに再会した二人のやり取りを眺めながらこの人がメイドのアンさんなのね、
とそんな感想がぼんやりと湧く一方で、楽しい時間が終わってしまうんだと分かってしまい
気持ちが沈んでしまう。カタリナがお家の人と会えたのだから喜ばないといけないのに。

75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/02(火) 02:08:02.00 ID:cU1vDpkj0

その後、お母さんからアンさんにこちらの事情を説明してもらった。
それに対してアンさんいわく、やっぱりというか発端はカタリナだった。
お父様のお仕事中、飽きてしまったカタリナがお父様とメイドさんたちの
隙を見て逃げ出したらしい。

愛娘がいなくなったお父様は真っ青になり、予定していたお仕事をやめて
使用人総出で町中の建物や家を一軒一軒しらみつぶしに探していたそうだ。

そんなやり取りをよそにカタリナはマイペースにも食後の紅茶を飲んでいる。
飲みながら「だから迷子じゃないわよ!!」と文句を言っているけど。

76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/02(火) 02:19:55.98 ID:cU1vDpkj0

アン「とりあえず、まずは旦那様の元へ参りましょう。とても心配されております」

カタリナ「そうね、私も早くお父様に会いたいわ。これ飲み終わったら帰りましょうか」ズズッ

アン「はぁ……かしこまりました。キャンベル様、この御礼は後日必ず」

マリア母「え、えぇ、そんな……お気になさらず」

アン「マリア様も、見ず知らずの……他人でいらっしゃるお嬢様の側にいて頂き
   本当にありがとうございました。なんてお礼を申し上げてよいか」

マリア「いえ……(……他人、そうよね)」

もちろんアンさんに悪気がないのは分かっているし、
本当に感謝してくれているのだろうというのが伝わってくる。

それでも今日少しの時間だけど一緒に過ごした分、カタリナのことを知ることができて
それが嬉しくて、それなのに他人と言われてしまって切なくなって。
そんな気持ちが沸きながらなんて答えれば良いのかわからなくなったとき
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/02(火) 02:26:26.18 ID:cU1vDpkj0



「他人じゃないわ。友達よ」


78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/02(火) 02:27:50.66 ID:cU1vDpkj0

凛とした声が聞こえた。


その場にいた全員が声の方を向くと、カタリナが静かにお茶を飲んでいる。
そして、飲み終えたカップをわずかにカチャリと音を立ててソーサーの上に置く。
その所作の一つ一つが今まで見てきたカタリナとあまりにも結びつかない。
同い年なはずなのにどこか大人びて見えるカタリナはやがて口を開く。

79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/02(火) 02:35:48.30 ID:cU1vDpkj0

カタリナ「アン、知っていて? 平民の子たちはお友達どうしで
     おしゃべりをしてお外で遊んで、ごはんを食べるのよ」

アン「は、はぁ……」

マリア「(あ……)」

カタリナ「私は今日、それをマリアと全部やったのよ。お父様を探しながらね」

カタリナ「平民の子ができるのだから、私にもできて当然よね」

カタリナ「はじめはマリアが私を騙してるんじゃないかと思ったのだけれどね。
     やってみたら楽しかったわ」
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/02(火) 02:37:17.22 ID:cU1vDpkj0

マリア「(覚えていてくれたんだ……)」ポロポロ

涙が止まらなかった。カタリナが私に友達と何をするのかと聞かれたとき、
苦しまぎれに言ったこと、本当な私がやりたかったこと。
それを覚えていてくれてなおかつ私を友達と言ってくれた。

きっとカタリナは深くは考えてないのだろうけど欲しかった
言葉をくれてもう胸がいっぱいいっぱいだった。


カタリナ「え、ちょっとなんでそこで泣くのよ!!普通は喜ぶところでしょ!?」

マリア「え、えへへ(いやだ。顔がぐちゃぐちゃで恥ずかしいわ。ちゃんと笑えているかしら)」

81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/02(火) 02:44:05.83 ID:cU1vDpkj0

マリア母「…………」

アン「…………」

アン「失礼致しました。それでは改めて、『ご友人』のマリア様。
   お嬢様の側にいて下さってありがとうございました。私個人としてもお礼を言わせてください」

マリア「は、はい。こちらこそありがとうございました。あの、カタリナ……様」

カタリナ「なによ、そんな泣き顔で失礼しちゃうわ。あと言ったでしょ。様いらないって」ムスッ

マリア「ふふっ」

どうやらカタリナは、私が泣いているのは「自分が私のことを友達と言ったから」と
勘違いしているようで明らかに機嫌の悪い顔をしている。

あと、メイドのアンさんの前でカタリナを呼び捨てにするのはどうなのかなと思い様を
つけたけどこれもお気に召さなかったみたい。
鋭いのか鈍いのかわからないお嬢様に思わず笑ってしまう。

82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/02(火) 02:56:05.74 ID:cU1vDpkj0

カタリナ「なにがおかしいのよ」ムスッ

マリア「ううん、何でもないの。カタリナ、また遊びに来てくれる?」

カタリナ「お断りよ!!何でわざわざこんな田舎に来なくちゃいけないのよ?」

マリア「え……」

カタリナ「その代わりマリア、あなたがうちに来なさい。
     私自らもてなしてあげるわ。感謝なさい」

マリア「!!……うん!!必ず行くね」

カタリナ「ふん。アン、帰るわよ!!」

アン「はい、お嬢様」

83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/02(火) 03:10:06.83 ID:cU1vDpkj0

こうして、カタリナ・クラエスはアンさんと一緒にお父様が
いらっしゃるところへと帰っていった。


いつもの苦痛な日常から一転、カタリナと出会い長いようで
短かった1日が終わり、私は自分の部屋のベッドへと倒れ込む。
思っていた以上に疲れていたみたいで体が重いのを感じる。


「でも、この疲れは心地いいかも……」

いつもみたいに他人の、周りに対して気がはってしまったときの疲れ
ではなく、遊び疲れたときの、懐かしさを感じる疲れだった。

「この出会いが夢じゃありませんように……」

ここが夢の中で、寝てしまうと現実に戻ってしまうのではと
錯覚してしまうほど素敵な1日だった。
だから私は寝てしまう前に祈るようにつぶやく。

「また会えますように」
そう願いつつあの水色の瞳のお嬢様を思い浮かべながら私はやがて眠りについた。




【悪役令嬢と主人公出会い編 完】
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/02(火) 03:12:35.53 ID:cU1vDpkj0
ここまでです。
これにてまずは出会い編が終了ですわ。
次回投稿までに少しお時間をいただきますわ。
それではごきげんよう
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/03(水) 07:32:33.10 ID:SZUs//fLo
乙ですわ
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/03(水) 20:45:05.11 ID:8UiumhZY0
乙ですわよ。続き楽しみにしていますわね。
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/06/04(木) 03:11:03.43 ID:peQeaiZ20
カタリナお嬢様、ご立派になられて…
マリア様のお心を照らすそのお姿、お言葉、爺はうれしゅうございますぞ
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/04(木) 10:39:01.29 ID:0ffOpE5Z0
乙ですわ
頭ゴーンからの差異をマリアさんがどう感じるのか気になりますわ
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/07(日) 20:22:35.86 ID:wGVga5Rb0
こんばん……ごきげんよう。
これから投下していきますわ。

>>88 もう大体察していらっしゃるかと思うので先に言っておきますわ。
   『あの時』にインストールをするか、しないかを(多数決?)安価
   で決めようと思いますの……人がいらっしゃれば。

   した場合→原作通りのカタリナ。言葉は不要ですわね。玄人の皆さまには
        焼き直し感が否めませんがマリアがいる分少し展開が異なる
        かもしれませんわね。
        『相も変わらずに東奔西走、好感度を上げて』コース

   しなかった場合→原作カタリナに時折ビターなテイスティングですわ。
           原作以上にわがままだけど、それでもマリアを始め
           周りの影響を受け不器用ながらも成長していく。
           そんな彼女に周りもまた救われていく。いかがかしら。
           『悪役聖女育成』コース

   どちらになっても構いませんが、どちらのカタリナも「単純」、「脳筋」、「おバカ」
   であることをお忘れなく......

   それでは皆様のご意見お聞かせくださいな。
           
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/07(日) 20:29:28.58 ID:DHbtr9C1O
なんということですの、どちらも捨てがたいですがここはお脳に影響がない方を選ばせていただきますわ
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/07(日) 20:35:39.56 ID:kyrk8x6r0
ifが見たいので「しなかった」パターンが良いですわ
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/07(日) 20:56:03.49 ID:wGVga5Rb0
【クラエス邸】

アン「以上が報告内容となります」

ルイジ「うん分かった。報告ありがとう。今日はもう休みなさい」

アン「はい……」

夜は9時をまわろうかという頃、私____ルイジ・クラエスは愛娘である
カタリナの『冒険』について詳細をメイドであるアンから聞いていた。
そして概ねを把握したので彼女に休むよう伝えたのだが様子がおかしい。


93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/07(日) 20:57:36.07 ID:wGVga5Rb0
ルイジ「? どうしたんだい」

アン「旦那様、率直にお聞きいたします。今回の件、
   私はどのような罰を受ければよろしいのでしょうか」

ルイジ「いきなり何を言い出すんだい。私は別に……」
なるほど、どうやらアンは今回の件で責任を感じているようだ。
そうと分かり私は口を開くが彼女が続ける。

アン「旦那様のお仕事の間、大事なカタリナお嬢様を
   お任せ頂いたにも関わらず、私は目を離してしまいました」

アン「今回は幸運にも無事見つけ出すことができましたが、
   もしも大事になっていたかと思うと……」

彼女____アン・シェリーはシェリー男爵家からうちへ行儀見習いとしてやってきた。
表情は乏しいが、15歳にして仕事に真面目に取り組んでくれているので私も助かっている。
今日だって、カタリナを見つけ出すまでは屋敷も戻らないという気迫すら感じた。
もちろんそんな彼女を咎めるという気はおきない。



94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/07(日) 20:59:49.79 ID:wGVga5Rb0

ルイジ「確かに、アンの言う通りだね。でもそれでも君を咎めるつもりはないよ」

ルイジ「アンもうちへ来てカタリナ付として半年ほどに
    なるとはいえ、まだまだ不慣れなこともあるだろうしね」

ルイジ「それに目を離したと言うのならば、我が娘の行動力を読めず
    君一人に任せてしまった私にも少なからず責任がある」

これは本当のことだ。普段は私の側を離れないカタリナがまさか自分から
いなくなってしまうなんて予想ができなかった。
父親である私がそうなのだからアンはなおさらのことだろう。

ルイジ「何より、カタリナはアンがお気に入りみたいだからね。
    私が君に意地悪したと知られてはきっと嫌われてしまうだろう」

そしてこれも本当のことだ。カタリナは他のカタリナ付のメイド達よりも
どういうわけかアンを気に入っている。最近は何をするにもどこに行くにも
アンを側に連れていたのだ。だからこそ今回の脱走には驚かされるのだが。
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/07(日) 21:01:57.58 ID:wGVga5Rb0

アン「そんな……勿体無いお言葉でございます」
本当に勿体無い、というような態度でアンが返事をする。
そんなアンにはもう少し自分の気持ちを出していってほしい
とは思うのだがまだまだ時間がかかりそうかな。

ルイジ「それにカタリナにとっても今日のことは
    かけがえのないものになったと私自身は思っているよ」

アン「マリア・キャンベル様のことでしょうか」

ルイジ「その通り。彼女がいてくれたからカタリナが無事に見つかった
    ようなものだからね。後日こちらからお礼に出向かないとね」

ルイジ「何れにせよ、今回はカタリナが無事見つかった幸運に感謝して
    この件はお終いにしよう。アンにはまた明日からも頑張ってもらうよ」

アン「かしこまりました。それでは失礼致します。お休みなさいませ」



96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/07(日) 21:04:29.67 ID:wGVga5Rb0

ルイジ「(それにしてもカタリナ、我が娘ながらやってくれたものだ)」
一礼して扉の向こうへ消えていくアンを見送りながら私は今日の
カタリナ脱走劇を振り返る。考えてみれば朝の時点でおかしかった。

普段なら私の仕事に興味を持たないカタリナが今日に限ってついて行くと
言って聞かなかった。そして今日に限って私たちの側から離れて一人で
『冒険』にいってしまった。カタリナが居なくなったと聞いたときは
生きた心地がしなかった。

そしてやっと見つかったかと思えば




97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/07(日) 21:06:20.31 ID:wGVga5Rb0

ルイジ「マリア・キャンベル嬢……」
平民の子と一緒にいたというだけでも驚きなのに、その子がよりによって
『光の魔力』を持つマリア・キャンベルというのだから二重の驚きである。
噂には聞いていた。数年前にこのソルシエで10年ぶりに平民生まれにも
関わらず魔力を、それも光の魔力を発現させた子がいると。
そして、そのことは社交界でもちょっとした話題になっていた。けれど……

ルイジ「(平民で魔力持ちであれば何かと苦労するのではないだろうか……)」
魔力についてあまり理解がないであろう、普通の町で魔力持ちになってしまうと
どういう扱いを受けるのか、想像はつかない。

だけど実際、アンによればあの町でマリアは有名人だったようで、
カタリナの居場所を突き止めたのもマリアが一緒にいたことが
多くの人に目撃されていたことが決め手となっていた。
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/07(日) 21:12:19.91 ID:wGVga5Rb0
ルイジ「(だけど、何より驚いたのは……)」
そう思った時、外から扉をノックする音が聞こえる。おそらく妻のミリディアナだろう。
どうやらカタリナとのお話を終えたらしい。私は思考を中断して入室を促す。

疲れ切った顔をしているミリディアナを迎えながら私はふと、なんとなく考えた。
アンにはこの件はお終いと言ったが、本当は何かの始まりだったのではないか、
ということを。

ほぼ勘みたいなものだが、きっと間違ってはいない。なぜだかそう思える自信があった。
ただし、「その始まり」が良いことなのか、悪いことなのかまでは分からないのだけれども。











【悪役令嬢と第三王子 婚約編】

99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/07(日) 21:16:00.23 ID:wGVga5Rb0
ここまでですわ。
ということで、今回からはマリア、クラエス家接触編と第三王子婚約編ですわ。

早速のご意見、ありがとうございます。なるほどですね……
>>87 ん?爺?どなただったかしら......
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/07(日) 21:19:31.61 ID:KZx3GenM0
爺さんといえば庭師のトムさんだが果たして‥
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/07(日) 21:21:26.18 ID:Cr60niA1O
もしかしたら道すがらのモブご老人かもしれませんなぁ
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/09(火) 22:56:36.74 ID:LrgXOUJf0
乙ですわ。続き、ワクワクしながらお待ちしておりますわね。
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/06/10(水) 01:38:23.29 ID:9T/ncerH0
なんとなく執事っぽいレスをしたら深読みされてしまった
次回も楽しみにしてます
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/13(土) 21:33:23.32 ID:EdaHKuuM0
こんばん……ごきげんよう。
本日はスローですが投下していきますわ。
本編の方も観ながら楽しんでくださいまし

>>103 おほほ、それは失礼いたしましたわ
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/13(土) 21:38:04.29 ID:EdaHKuuM0

【クラエス邸】

マリア「まぁ……すごい」
私の住む町からお迎えの馬車(人生の中で何回乗れるか分からないくらい立派な)
にゆられてしばらく経ったあと、私__マリア・キャンベルはカタリナのお家、
いいえ、お屋敷の前に立っていた。

うまく感想が出てこないけれど、こんな立派なお屋敷は絵本でしか見たことない。
まえに彼女が私の家を小さいと言ったことにも納得してしまう。
今更だけれど、私はこんなところに住んでいるカタリナを、
自分の家に招待してしまったことに恥ずかしくなってしまった。

106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/13(土) 21:40:39.37 ID:EdaHKuuM0

メイド「キャンベルさん、こちらへどうぞ」

カタリナのお屋敷に見とれていると、お迎えに
来てくださったメイドさんが私に声をかけてくる。
私は、はっとして急いで彼女の後についていく。
田舎者だと思われていないかちょっぴり不安になる。

メイド「そんなに緊張なさらないでください」

マリア「あ、ありがとうございます。あ、あの……」

メイド「ふふ、ところでいかがでしたか? 初めてお会いした時のカタリナお嬢様は」

マリア「カタリナ……様ですか? ええと、すごく元気で
    すごくハキハキしていて……あとすごく優しかったです!!」

メイド「そうですか……その、キャンベルさん」

マリア「はい、なんですか」

メイド「この度はありがとうございました。そして、今日から頑張りましょうね」

マリア「はい!!こちらこそよろしくお願いいたします」
そう言われた私は、これから先輩としてお世話になる
メイドさんに気合を込めて挨拶をする。

そう、本当に突然のことだけれど私__マリア・キャンベルは
今日からカタリナのお屋敷に仕えることになった。
それは数日前までさかのぼる。
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/13(土) 21:45:13.74 ID:EdaHKuuM0
ここで、試験的に安価をおひとつ。

マリアがクラエス邸で……

・住み込みで働く……@

・学校がお休みの時だけ働く……A

安価はそうですわね。
↓3票のうち多かった方を採用致します。

せっかくスレタイに入れましたものね。
それでは皆様お願い致しますわ。
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/13(土) 22:07:21.45 ID:px2FkINa0
1
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/13(土) 22:09:12.69 ID:DCeyiJinO
2
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/13(土) 22:17:19.87 ID:3Gykx+YDO
2
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/13(土) 22:35:13.90 ID:EdaHKuuM0
ご協力有り難うございます……なるほど、こうなりましたのね。
承りましたわ。お待ちくださいまし
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/13(土) 22:51:08.38 ID:EdaHKuuM0

【マリアの家】

ルイジ「初めまして、カタリナの父でルイジ・クラエスと申します」

カタリナと出会ってしばらく経ったある日、カタリナのお父様はやってきた。
それはとても美しい男の人で、別の世界の人かと思うくらいだ。
カタリナも可愛かったし、この方の娘というのもうなずける。

そして『突然の訪問で申し訳ない』と謝るお姿はこちらまで
申し訳なくなるくらい立派なたたずまいだった。
お母さんもいきなりの来訪で戸惑っているみたいだけど、
先日の件でわざわざお礼を言いにきてくださったようだと
分かるとおずおずと家の中へと案内する。

113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/13(土) 23:10:15.03 ID:EdaHKuuM0

マリア「マ、マリア・キャンベルです」
ぎこちない礼で挨拶を返す。緊張してしまって
うまく出来ているかなんてわかりっこない。

ルイジ「かしこまらないで、キャンベル嬢。君は私のカタリナの恩人なのだから」

ルイジ「カタリナからは色々と聞いているよ。
    たくさん面倒を見てもらったようだね。本当にありがとう」

マリア「いえ、私は何も……あの、カタリナ……様はお元気でしょうか」

ルイジ「おかげさまでね。元気すぎて手を焼いているくらいだよ
    …………なんだか令嬢らしからぬ遊びも始めたしね」

マリア「?(最後の言葉が聞き取れなかった……)」

ルイジ「そしてキャンベル夫人もカタリナを保護頂き本当にありがとうございました」

マリア母「いえ……お気になさらず」
お母さんも私と一緒でだいぶ緊張しているのかな。話し方がどこかぎこちない
そんなやり取りをした後、カタリナのお父様__ルイジ様はあらたまって話し始める。
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/13(土) 23:52:21.33 ID:EdaHKuuM0

ルイジ「今回の件では本当に感謝しています。もし、キャンベル嬢と
    一緒でなかったらカタリナが無事だったかどうか……」

ルイジ「だからせめて私にできることで何かお礼をさせて頂きたいのです。」

ルイジ「自分で言うのもおかしな話ですが、それなりのことはできると思うのです。
    何かお役に立てそうなことはないでしょうか」

マリア「……(それなりのこと)」
カタリナと過ごしてうすうす気づいていたけど、この人と会って確信した。
学校でクラスの子達が話していた貴族こそこの方なのだろうと。
そして、それなりのこととは言葉以上の、例えばお金とか私たちじゃ
到底届かない力のことなのだろう。

この人の言葉からは本当に感謝をしているという気持ちが伝わってきた。けれど……
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/14(日) 00:18:08.60 ID:P6FHCqhD0

マリア母「申し訳ございませんが、そのお申し出は受けられません」

マリア母「何も望みません。私たちは静かに暮らしたい、ただそれだけなんです」

マリア母「お嬢様が無事だった、そのお役に立てたこと、そして
     わざわざご足労いただきお礼を頂けた、これだけで満足でございます」

お母さんがこう言うのは分かっていた。町の人たちから私が貴族の子供と
言われたことで家族がバラバラになってしまったのだ。
カタリナのお父様のせいでなくても貴族に対してあまりよく思っていない
という気持ちはわかる。

何も望まないのは本当だろう。でもそれ以上に、関わらないで、そっとして
おいて欲しいといった気持ちをお母さんの言葉からは感じた。

そんなお母さんの言葉をカタリナのお父様は静かに聞いて頷いた後私に問いかける。

116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/14(日) 00:20:15.18 ID:P6FHCqhD0

ルイジ「キャンベル嬢はどうかな」

マリア「(私はどうなんだろう)」
正直、欲しいものなんてない。お母さんと同じで断ってしまってもいい。
けれど、私の勘のようなものが告げている。ここが運命の分かれ道だと。
ここで私が言ったことが後々私自身の人生を変えてしまうのだと。

もう一度私は考える。今こそ誰かの顔色を伺ってではなく、
他人がどう思っているかではなく、自分がどうしたいかを……



『もっと自分に自信を持ちなさいな。きっとうまくいくはずよ!!なんたってこのカタリナ様を治したんだから!』



その時、ふとあの人の笑顔とあの時の言葉が浮かんだ。

マリア「あ、あの!!」

ルイジ「なんだい?」

言ったらお母さんなんて言うかな。カタリナのお父様に身の程知らずと言われるのかな

マリア「私は、私は……」

でもなんでだろう。あなたがそう言ってくれたから、うまくいくと言ってくれたから
私は勇気を出して自分の望みを口にする。







マリア「カタリナ様のお側にお仕えしたいです」
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/14(日) 00:21:58.41 ID:P6FHCqhD0
ここまでです。
遅筆で申し訳ありませんわね...
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/15(月) 22:42:00.86 ID:1T6FD3L90
乙ですわ。これは次、野猿インストール後のカタリナ様が出てくるのかしら?楽しみですわ
それにしても11話、泣きましたわ…原作もコミックも読んでたけど、アニメになるとこうも破壊力が増されるのですわね
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/19(金) 21:34:20.17 ID:QbC7vVCTo
乙ですわ

運命の分岐点が徐々に近付いてますわね
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/24(水) 23:16:27.81 ID:TpXBAQvm0
まだですの?
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/25(木) 07:17:43.33 ID:6mxYan3GO
アニメも終わったしエタったんでしょうね
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/25(木) 19:52:14.59 ID:1kbDE87v0
まだ慌てるような時間じゃありませんわ
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/01(水) 21:41:12.44 ID:8yK7wHVL0
これはエタったな
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