四季の八神マキノ

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/05/04(月) 23:54:25.20 ID:kXDv78Av0
モバマスSSです。

八神マキノとPが淡々と会話するだけの作品です。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1588604064
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/05/04(月) 23:55:43.88 ID:kXDv78Av0

Season.1 夏の八神マキノ


モバP(以下P)「マキノってさ」

八神マキノ「何かしら?」

P「頑なに水着の仕事しないよな」

マキノ「唐突ね。単に貴方が取ってこないからやる機会がないだけよ」

P「いやまあそうなんだが。そういえば水着に剥いてないなぁとふと思って」

マキノ「言い方がいやらしいな。別に仕事として取ってくるだけで、貴方が直接私を脱がせるわけではないじゃない」

P「……」

マキノ「? だんまりしてどうしたの?」

P「いや、マキノを脱がせるのを想像してしまってちょっと照れてしまった」

マキノ「思春期なの?」

3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/05/04(月) 23:57:01.14 ID:kXDv78Av0

マキノ「というか、散々際どい格好させておいて今更水着云々という話でもないでしょうに。私の衣装、基本的に胸元開いてるし脚も出てるわよ?」

P「それはまあ、やっぱりマキノの武器はそのプロポーションだと思うし。わざわざ際立った才能があるのに、それを使わないのはもったいないだろ?」

マキノ「だったら尚更水着の仕事ぐらい持ってきたらいいじゃない。私がアイドルとして求められているものは自分でも理解してるつもりだし、特にNGは出さないわ」

P「いや…………その、な」

マキノ「やけに言い淀むわね」

P「なんというか……マキノの水着姿を他の男に見せたくないというか」

マキノ「プロデューサーとしてどうなのそれ」

P「いやほら、アイドルの衣装っていうのは所謂『非日常』なんだよ。そこら辺にラバースーツ着てスパイごっこしてる女なんてそうそう歩いてないだろ?」

マキノ「私のこと小馬鹿にしてないか?」

P「ちなみにあの衣装、キャットスーツとも呼ぶんだが、キャットはナマズを意味するキャットフィッシュから来てるらしいぞ。どこぞの誰かさんは明らかに猫を意識したポーズしてたけどな」

マキノ「私のこと小馬鹿にしてるわね?」


※参考
https://imgur.com/a/uJdWamN
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/05/04(月) 23:57:39.08 ID:kXDv78Av0

P「とにかく、基本的に衣装ってのは日常で見るものではなくって、だからこそ自分の生活と切り離して眺めることができるんだよ」

マキノ「やや気に食わないが、言いたいことはわからなくもないわ」

P「だろ? でも水着ってのはそうじゃない。人生において普通に目にすることもある衣服である以上、そこにリアルさが生まれるんだよ」

マキノ「生々しさ、と言い換えてもいいかもしれないわね」

P「そうそう。だからそういう意味で、マキノに向けられる目が変わるんだ、どうしてもな。それが少し気になってしまって」

マキノ「……ふむ」

マキノ「そこまで私のことを案じてくれるのなら、特別に貴方だけに水着姿見せてあげましょうか? 憎からず思っている貴方に見られるのなら、それも吝かではないわよ、ふふっ」

P「えっ」

P「……い、いや、全然興味ないし? そんなマキノのビキニとか別にそんな全然気にならないし? というかそもそも水着なんて別に見たくないし?」

マキノ「思春期なの?」
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/05/04(月) 23:58:17.72 ID:kXDv78Av0

Season.2 秋の八神マキノ


P「マキノは温泉好きだよな」

マキノ「アイドルになる前はそこまで意識はしてなかったけど、以前温泉関係のお仕事させてもらって以来好きになったわね。秋風と紅葉の下の露天風呂……あれは本当にいい仕事だったと今でも思ってるわ」

P「そりゃプロデューサー冥利に尽きる。それ以降温泉には?」

マキノ「幸か不幸か、暇がないわね。仕事も増えてきたし、ルーティンの諜報もあるし、学業も疎かにはできないし。弾丸旅行にでもすれば行けるのかもしれないけど、じっくりと身体を休めて思考を巡らせるための場所へ向かうために疲弊する、というのは論理的とは言えないでしょう」

P「ごもっともで。相変わらず真面目というかなんというか」

マキノ「手を抜く理由がないだけよ。融通が利かない女だとでも思った?」

P「いいや、むしろそこがマキノの魅力だと思ってるよ」

マキノ「だいたい予想通りの返答とはいえ、正面切って言われると少し照れるわね」
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/05/04(月) 23:59:36.57 ID:kXDv78Av0

P「確かに少しずつ売れてきて仕事が増えているのは嬉しい悲鳴だ。ガラ空きの予定表を眺めて事務所で茶を啜っているよりは断然いいだろう。しかし休む暇がないというのもそれは不健全だ。福利厚生という点においても、俺個人の思いとしても、マキノには休暇を与えたいと思ってる。そこで、だ」

マキノ「?」

P「件の温泉の担当者さんから久々に連絡が来てな。マキノに仕事を依頼して以降、おかげさまで運営が好調らしく、お礼にということで旅館の宿泊チケットをいただいた。もちろん入浴と食事付きだ」

マキノ「あら、それは嬉しい想定外ね」

P「だろ? これはマキノの仕事が実を結んだものだから、マキノのものだ。好きに使ってくれ。希望する日を言ってくれれば可能な限りそれに合わせてスケジュール調節して休みを作るよ」

マキノ「だったらこの日からこの日にかけて行くしか選択肢はないわね」

P「ん、えらく即決だな。何かあるのか?」

マキノ「何って、貴方のオフだけど」

P「えっ」
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/05/05(火) 00:04:15.10 ID:AJ0BR/Ih0

マキノ「何を呆けた顔を? 私が忙しいのは貴方が仕事を取ってくるからで、すなわち私の多忙さと貴方の多忙さは相関する。人を気遣っておいて自分は休まないのは筋が通らないわ。どうせオフでも仕事するんでしょう?」

P「でも、その」

マキノ「論理の通らない言い訳はただの駄々よ。これは私が一人で得たものではないわ。貴方が取ってきた案件を私がこなして、それが結果として今ここにある。それなら二人で行くのが道理。ちょうどこの期間なら紅葉シーズンだし、秋色温泉を楽しめるわ」

P「いや、でもなぁ……」

マキノ「煮え切らないわね。それに貴方、さっき『好きに使え』と言ったはずよ。だから好きに使わせてもらうわ。温泉、一緒に行きましょ? さて、反論は?」

P「……うぐ」


マキノ「……ふふっ、融通が利かない女だとでも思った?」
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/05/05(火) 00:04:53.77 ID:AJ0BR/Ih0

Season.3 冬の八神マキノ


P「……寒いな」

マキノ「寒いわね」

P「事務所までこう寒いと本当に動く気がしないな……仕事も捗らないし、どんどん鬱屈としてくる……」

マキノ「日照量と抑うつ状態の関連性は明確に示されてるわよ。外に出るのが億劫でも、たまには日光浴ぐらいしたらどうかしら?」

P「面倒……もう無理だ、誰か俺を暖かい窓際に連れていってそのまま天日干しにしてくれ……」

マキノ「依頼に用いるワードチョイスではないわね」

P「いやもう……この時期は手がかじかんでタイピングもままならないし、スーツだと防寒にも限界があるし、というかなんで室内なのにこんなに寒いんだ」

マキノ「冬の暖房とバックアップを取っていないデータは壊れるものだと相場が決まっているものよ」

P「こんなところでマーフィーの法則発動しなくていいんだよ……」

マキノ「ごねていても仕方ないわ。私も少し見てみたけど、簡単に直せるような故障じゃなさそう。大人しくプロに任せるしかないわね」

P「もうダメだ……頼むマキノ暖めてくれ……」

マキノ「うちの早苗さんかお向かいの握野さんか選ばせてあげるわ」

P「肝が冷える」
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/05/05(火) 00:05:31.59 ID:AJ0BR/Ih0

マキノ「冗談よ。これをあげる」

P「うぉ……缶コーヒー……ぬくい……」

マキノ「ブラックコーヒーがお好みかと思ったけど、売り切れてたから独断で私のお気に入りにしたわ」

P「貰う身分で文句は言わないよ、遠慮なくいただくぞ。……甘っ」

マキノ「颯爽と文句言ってるじゃない」

P「思ったより二段階ぐらい甘くてびっくりしたんだよ。これ常飲してるのか」

マキノ「脳は贅沢なのよ? ブドウ糖しかエネルギー源にできないの。深い思考活動に甘いものが必要不可欠であることは、生理学的にも証明されているわ。理にかなっているでしょう。それに……」

P「それに?」

マキノ「甘い方が美味しいじゃない」

P「一部界隈に怒られるぞ」

マキノ「別にブラックコーヒーを否定してるわけではないわ。私の嗜好の問題よ」

P「ならいいんだが」
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/05/05(火) 00:06:09.79 ID:AJ0BR/Ih0

 ◇


マキノ「さて、私はそろそろお暇させていただこうかしら」

P「ん、お疲れさん」

マキノ「そちらこそ。ほどほどにして帰るのよ?」

P「へいへい」

マキノ「……とは言っても、どうせまた遅くまで残るんでしょう?」

P「終わりの目処がつくところまでやったら帰るよ。ま、今のところその目処は立っていないけどな」

マキノ「まったく……相変わらずだな」

P「マキノのためだからな」

マキノ「……っ、き、急にそういうことを臆面もなく……っ」

P「お、どうした照れてるのか? ははっ」

マキノ「……もういい。帰るわね」

P「あいよ。気をつけてな」

マキノ「──それと」

マキノ「コーヒー、ちょっと貰うわね」

P「え、それもう俺が口つけたやつ……」

マキノ「……んっ、ごちそうさま」

マキノ「それじゃあね、また明日」


P「…………」

P「……甘いなぁ」
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/05/05(火) 00:06:39.83 ID:AJ0BR/Ih0

Season.4 春の八神マキノ


P「桜の季節です」

マキノ「そうね」

P「しかし俺は何も変わらず仕事です」

マキノ「奇遇ね、私もよ」

P「そりゃマキノの出演するテレビの収録と雑誌のインタビューだからな」

マキノ「仕事に恵まれてありがたい話ではあるわね」

P「二件まとめて済ませることができたら現地で流れ解散のつもりだったんだが……うまく調節できず申し訳ない」

マキノ「貴方が謝ることじゃないでしょう? 仕方ないわ。先方にもスケジュールというものがあるもの」

P「まあそうだが……その場で待機するには持て余し、しかし事務所に帰るほどでもないというこの絶妙な時間がな」

P「というわけで、弁当を作ってきました」

マキノ「接続する文章間違ってないかしら?」
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/05/05(火) 00:07:09.66 ID:AJ0BR/Ih0

P「なんだよ、せっかく人が気を回して準備したのに。この辺ロクに飯食うとこもないし、春の陽気に合わせるのが栄養偏ったコンビニ弁当ってのも味気ないだろ?」

マキノ「虚を衝かれたのよ。まさか貴方の口からお弁当作ったなんて聞くと思わなかったもの」

P「失敬な。俺はやればできる男なんだ、やらないだけでな」

マキノ「そんなしたり顔でいうことでもないだろう……まあ、せっかく用意してくれたのだから無碍にはしないけれど。いただこうかしら」

P「おう。時間が微妙だから、悪いが移動しながら助手席で食ってくれ。俺は後でいい」

マキノ「かたじけないわね。いただきます……あら、春巻き」

P「ちゃんと皮から作った自信作だ」

マキノ「……ん、美味しい。家庭的だけど、下手に強い調味料でごまかしたりせず、素材の味とそれを引き立てる味付けがいい塩梅。香味野菜と豚肉の旨味、微かに香る紹興酒の風味が春雨の中に染み込んで……揚げ加減も出ずいらず、一つ一つの工程がとても丁寧にこなされているのが伝わるわ」

P「流石に慣れてるな」

マキノ「なぜかそういう仕事が多いのよね、誰のせいかは知らないけれど」

P「評判がいいんだよ、人口に膾炙してるってことさ」

マキノ「……まあいいわ。ところで、なんで春巻なの?」

P「そりゃあれだよ」

マキノ「?」

P「春のマキノで、春マキノ」

マキノ「…………」

P「陽気にそぐわぬ冷たい視線」
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/05/05(火) 00:07:49.57 ID:AJ0BR/Ih0

マキノ「はぁ……本当に度し難いな……」

P「冗談だって。食べたくなったから作っただけだよ。ま、洒落っ気も大切ってことで」

マキノ「くだらない言葉遊びのことを古来より駄洒落と呼ぶのよ?」

P「手厳しいなぁ」

マキノ「……まあでも、確かに美味しかったわ。ごちそうさまでした」

P「お粗末様。……お、桜だ」

マキノ「──あら、本当」

P「なかなか壮観だな……満開の桜並木の下ってのは。この時期にしか見られない、いい光景だよ」

マキノ「…………」

P「マキノ?」

マキノ「……ふふ、そうね。とってもいい光景。お花見する時間も取れないぐらい、慌ただしい仕事の合間の時間だけど、そうじゃないと今のこの感情には結びついていないかもしれないわ。車窓の外を流れていく桜並木も、儚さが内包された美を感じられて、なかなか思うところがあるわね」

P「……なんか意外だな。マキノがそういうこと言うなんて」

マキノ「私だって粋というものがわからないわけではないわ。──アイドルという世界に当てられたのかもしれないけれど、ね」

P「……そうか」
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/05/05(火) 00:08:16.33 ID:AJ0BR/Ih0

P「でもなぁ。せっかくだし運転するついでに流し見するんじゃなくって、本腰入れて花見したいな」

マキノ「時間ができたら、ね」

マキノ「──それに」

P「?」

マキノ「もっといい景色を、見せてくれるのでしょう?」

P「…………ああ、もちろん」

P「アイドル八神マキノの名を轟かせて」

P「どんな満開の桜でも叶わないぐらい、最高の世界を見せてやるよ」

P「暇なんて、まだまだ作らせないさ」



マキノ「──ふふっ、そうこなくっちゃね」
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/05/05(火) 00:09:12.67 ID:AJ0BR/Ih0

P「でもなぁ。せっかくだし運転するついでに流し見するんじゃなくって、本腰入れて花見したいな」

マキノ「時間ができたら、ね」

マキノ「──それに」

P「?」

マキノ「もっといい景色を、見せてくれるのでしょう?」

P「…………ああ、もちろん」

P「アイドル八神マキノの名を轟かせて」

P「どんな満開の桜でも叶わないぐらい、最高の世界を見せてやるよ」

P「暇なんて、まだまだ作らせないさ」



マキノ「──ふふっ、そうこなくっちゃね」
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/05/05(火) 00:11:38.28 ID:AJ0BR/Ih0
以上になります。読んでくださいましてありがとうございました。

八神マキノはいいぞ。第9回シンデレラガール総選挙、ボイスアイドルオーディションは八神マキノを何卒よろしくお願いいたします。
それでは。
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