渋谷凛「高峯のあの事件簿・星とアネモネ」

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1 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2020/04/29(水) 19:08:36.73 ID:+FOtccNe0

あらすじ

少女は星と出会う。そして、夜が明ける。

前話
井村雪菜「高峯のあの事件簿・高峯のあの失踪」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1570101339


あくまでサスペンスドラマです。
設定はドラマ内のものです。
グロ注意。

それでは、投下していきます。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1588154916
2 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2020/04/29(水) 19:09:57.58 ID:+FOtccNe0
メインキャスト

渋谷凛

島村卯月

高峯探偵事務所
探偵・高峯のあ
助手1・木場真奈美
助手2・佐久間まゆ

刑事一課和久井班
警部補・和久井留美
巡査部長・大和亜季
巡査・新田美波

科捜研
松山久美子
梅木音葉
一ノ瀬志希

少年課
巡査部長・相馬夏美
巡査・仙崎恵磨

交通安全課
巡査部長・片桐早苗
巡査・原田美世
3 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2020/04/29(水) 19:10:25.65 ID:+FOtccNe0


All I met you has changed

If I don’t understanding

But you call me,

I trust you

I want to go to find with you.

序 了
4 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2020/04/29(水) 19:11:20.65 ID:+FOtccNe0


12月18日(金)



高峯探偵事務所
高峯のあが営む探偵事務所。高峯ビル3階。数年前の大晦日は依頼で大忙しだったとか。

ピンポーン……

高峯のあ「来客……誰かしら」

高峯のあ
探偵。ここ最近は依頼がないので、探偵は事実的に休業中とのこと。

木場真奈美「そのようだ。久々に、依頼主かな」

木場真奈美
のあの助手。ここ最近は助手としての仕事よりも、ボイストレーナーの仕事が忙しいらしい。

佐久間まゆ「はーい、私が出ますよぉ」

佐久間まゆ
のあの助手。期末テストも終わったので、忙しい真奈美の代わりにほとんどの家事をしている。

のあ「まゆ、誰かしら?」

まゆ「あら、雪乃さんですよぉ」

のあ「雪乃?あがってもらって」

まゆ「はぁい。雪乃さん、あがってください」

相原雪乃「こんばんは。ご団欒のところ、お邪魔して申し訳ありませんわ」

相原雪乃
高峯ビル2階にある喫茶店St.Vのマスター。既に厚いコートを着込んでいる。

のあ「構わないわ。座ってちょうだい」

雪乃「ご遠慮しますわ。そろそろ出ますので」
5 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2020/04/29(水) 19:12:00.31 ID:+FOtccNe0
真奈美「珍しく厚いコートを着ているな」

まゆ「お出かけですかぁ?」

雪乃「これから秋田の実家に帰省しますの。今年はゆっくりとクリスマスとお正月を過ごしますわ」

まゆ「まぁ、素敵ですねぇ」

真奈美「いいじゃないか。喫茶店も長期休みかい?」

雪乃「いいえ。臨時のアルバイトさんが見つかりましたので、菜々さんと志保さんにお任せしますわ」

まゆ「お2人なら問題ないと思いますよぉ」

雪乃「ええ。菜帆さんも冬休みは多めに出てくださるそうですし、クリスマスイベントもお任せしてしまいました」

真奈美「任せるのはいいことだ」

のあ「そうね、上に立つ者には必要なことよ」

雪乃「明日から新しいアルバイトさんも来ますわ。よろしければ様子を見に行ってくださいな」

のあ「そうさせてもらうわ」

雪乃「ありがとうございます。不在の間、よろしくお願いしますわ」

のあ「ええ、何も心配せずにいってらっしゃい」

真奈美「今から出るなら、送って行こうか?新幹線だろう?」

雪乃「心配には及びませんわ。迎えの車が来ていますの。皆さま、よいお年をお迎えくださいな」

まゆ「はぁい、良いお年を」

のあ「雪乃、また来年」

まゆ「雪乃さんのご実家はどちらでしたか?」

のあ「秋田よ。まゆの実家からは近いかしら」

まゆ「近くもないですよぉ、仙台は東北では南の方ですから」

のあ「そうなのね」

真奈美「……迎えの車?秋田から?」
6 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2020/04/29(水) 19:12:52.67 ID:+FOtccNe0
のあ「帰省の時は、車の迎えが来てるわ」

まゆ「雪乃さんはお嬢様なんですかぁ……いいえ、どう見ても身も心もお嬢様ですねぇ」

のあ「私の家とは比べ物にならないくらいのね。ばあやがいるらしいわ、世話役の」

真奈美「私にはわからない世界だな……」

のあ「昔は随分と世間知らずだったそうだけれど、今は自立してるわ。喫茶店も黒字みたいだし経営者としても立派よ」

まゆ「そうなんですねぇ」

のあ「学ぶことは大切よ。いつでも」

真奈美「そうだな」

のあ「そういえば、真奈美?」

真奈美「どうした?」

のあ「今年の正月は実家に帰るのかしら」

真奈美「仕事の関係もある、長崎には帰らないよ」

のあ「そう。まゆは予定があるかしら」

まゆ「まゆは……特にありませんよぉ。ここでテレビでも見てようかなぁ」

真奈美「のあは予定があるのか?」

のあ「年明けに奈良に行こうと考えてるわ」

まゆ「奈良?」

のあ「叔母に招待されているの。先生にも挨拶に行きたいわ、今年は世話になったから」

真奈美「そうか。しばらく行ってないんだろう、いいじゃないか」

のあ「ええ。それで、提案なのだけれど」

真奈美「提案?」
7 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2020/04/29(水) 19:14:02.78 ID:+FOtccNe0
のあ「一緒に帰りましょう、どうかしら」

真奈美「なんだ、そういうことか。仕事でない電話をするのが多いと思ったら」

まゆ「のあさん、いいんですかぁ……?」

のあ「なぜ、そんなことを聞くのかしら?」

まゆ「ううん、何でもないですよぉ。一緒に行きますっ」

真奈美「私も行くよ。スケジュールは調整する」

のあ「叔母に伝えておくわ。歓迎してくれるはずよ」

まゆ「楽しみです、のあさんにそっくりなんですよねぇ」

真奈美「この世の中にのあに似てる人物がいるとは思ってもみなかった」

のあ「そんなに気になるかしら……叔母が居たから、自分が特別な美人であることの理解が遅れたのは認めるわ」

まゆ「性格も似てるのでしょうか……?」

真奈美「似てない、はずだ。のあが2人は私でも面倒が見切れない」

のあ「酷い言われようね……性格は似ていないから、そこは心配しなくていいわ」
8 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2020/04/29(水) 19:17:34.14 ID:+FOtccNe0


22時前

良楠公園
らなんこうえん。風花というお花屋さんが北口の前にある。シンボルの大きな桜が花開く時期では、今はない。

渋谷凛「……そろそろ時間かな」

渋谷凛
最近は良楠公園近くの寝床を利用している。かつては駅近くの花屋の一人娘だった。

島村卯月「あ、あの!」

島村卯月
CGプロダクション所属のアイドル。満開の笑顔で人気を集めている、CGプロダクション期待の星。

凛「……この前の」

卯月「やっと会えましたっ、この前のお礼をしたくて」

凛「別に……お礼なんて」

卯月「ありがとうございましたっ。私、島村卯月です」

凛「……」

卯月「あの!お名前、聞いてもいいですか?」

凛「名前なんて……」

卯月「ダメ、ですか」

凛「別にそういうわけじゃ……凛。し……」

卯月「し?」

凛「凛でいいよ」

卯月「凛ちゃん」

凛「……」

卯月「ちょっとお話しませんか」

凛「え……まぁ、いいけど」

卯月「隣、座っていいですか?」

凛「そろそろ夜の10時だけど。危ないから帰れば?」

卯月「10時……わぁ、本当ですね!」

凛「私も帰るから」

卯月「そうですね。あの……」

凛「前も夜に会ったけど、何してるの?部活?」

卯月「えーっと……聞いていいですか?」

凛「聞いていい?何を?」

卯月「私のこと、知りませんか?どこかで見たこととかありませんか?」

凛「うーん……知らない」

卯月「うぅ、そうですか……もっとがんばらないとっ」

凛「変なの。それじゃ」

卯月「また来ますね。今度はもう少し早い時間に」

凛「……また来る気なの?」

卯月「帰り道ですから、レッスンの後なら何時でも」

凛「……」

卯月「凛ちゃん?」

凛「会えたらね。ばいばい」
9 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2020/04/29(水) 19:19:33.05 ID:+FOtccNe0


12月19日(土)



のあ「まゆ」

まゆ「まゆはここですよぉ。おはようございますぅ」

のあ「おはようには遅いわね」

まゆ「そうですねぇ、12時も過ぎてますし」

のあ「真奈美は?」

まゆ「朝早くからお仕事に行きましたよぉ」

のあ「そう、最近多いわね」

まゆ「熱心にレッスンをしてるアイドルさんがいるそうですよぉ」

のあ「へぇ……」

まゆ「あらぁ……?興味、ありませんかぁ?」

のあ「聞き過ぎるとファンの領域を逸脱するもの」

まゆ「みくちゃんと同じ事務所ですものねぇ」

のあ「ええ。赤西瑛梨華もでしょう?」

まゆ「はい。瑛梨華ちゃんから聞いた話は、のあさんには秘密です」

のあ「そうしてちょうだい」

まゆ「でも……あまり聞いてないです」

のあ「あなた達の仲なのだから聞けばいいのよ、気軽に。お腹が空いたわ。まゆ、何か準備してるかしら」

まゆ「いいえ。のあさんが中途半端な時間に起きてきそうなので、St.Vに行こうかと」

のあ「ご明察。行きましょう」
10 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2020/04/29(水) 19:22:16.07 ID:+FOtccNe0


喫茶St.V

喫茶St.V
高峯ビル2階。相原雪乃が営む落ち着いた雰囲気の喫茶店。定期的に新メニューが追加されることも評価が高い理由。

安部菜々「いらっしゃいませっ!」

安部菜々
喫茶St.Vの店員。優秀なウサミンメイド。槙原志保も安部菜々も、この程度のフロア面積なら1人でまわすことは可能とのこと。

のあ「お邪魔するわ」

菜々「のあさんにまゆちゃん、お好きな席へどうぞっ」

まゆ「ありがとうございます」

のあ「ここにしましょうか」

まゆ「はぁい」

のあ「菜々、ランチのメニューをちょうだい」

菜々「かしこまりました〜」

まゆ「今日のランチはなんでしょうか……楽しみです」

のあ「ええ。雪乃が言っていた新しいアルバイトは……いたわ。可愛らしい衣装なのね、菜々のお手製かしら」

水嶋咲「お待たせしましたっ、ランチのメニューをどうぞ♪」

水嶋咲
喫茶St.Vの臨時アルバイト。制服はリクエストに応えたウサミンメイドが製作。
11 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2020/04/29(水) 19:23:09.99 ID:+FOtccNe0
のあ「え……」

まゆ「ありがとうございますぅ。のあさん、どうしましたかぁ?」

のあ「あなたが臨時のアルバイト?」

咲「あたし、水嶋咲!年明けまでアルバイトに入ってるから、よろしくね♪」

まゆ「よろしくお願いします……佐久間まゆです、上の階の」

咲「聞いてるよ。だから、ちょっとサービス☆」

まゆ「サービス?この紙は……?」

咲「シホナホが和パフェ特訓中なんだ☆良かったら頼んでね♪」

まゆ「そうなんですかぁ。考えてみますねぇ」

のあ「……聞いていいかしら」

咲「あたしに?」

のあ「雪乃、知ってるのよね?」

まゆ「何をですかぁ?」

咲「……」

のあ「……」

咲「うん。知ってるよ。逆にね、声をかけてくれたんだ。ここにお客さんとして来た時に」

のあ「……雪乃が許したのなら私は反対しないわ。雪乃が不在の間、よろしく頼むわ」

咲「パピッとお任せ!決まったら呼んでね♪」

のあ「ええ。さて、何にしようかしら」

まゆ「あの……お知り合い、ですか?」
12 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2020/04/29(水) 19:23:40.86 ID:+FOtccNe0
のあ「会ったのは初めて。声を知ってるわ」

まゆ「声?」

のあ「聞きたいのなら、戻った後に言ってちょうだい」

まゆ「わかりましたぁ。まゆは決めましたよぉ、クロワッサンサンドにします」

のあ「私はカレーにするわ」

まゆ「パフェは……」

のあ「志保に聞いてからにしましょう」

まゆ「凄い量が出てきそうですよねぇ……一番下のとか」

のあ「同感よ。注文いいかしら?」

咲「はーい、ただいまっ!」
13 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2020/04/29(水) 19:24:32.72 ID:+FOtccNe0


喫茶St.V

槙原志保「お待たせしました!カレーとクロワッサンサンドのランチですっ」

槙原志保
喫茶St.Vの店員。学生時代からウェイトレスのバイトをしていたとのこと。

のあ「カレーは私。クロワッサンサンドはまゆよ」

志保「はーい」

まゆ「ありがとうございますぅ」

のあ「見慣れないサラダとスープね。何かしら?」

志保「菜々さんの気まぐれです、食べてのお楽しみ。それと、のあさんはこれ使ってくださいね」

まゆ「瓶に入った……」

のあ「スパイスね」

志保「水嶋さんから頂きました、カレーに拘りのある友人がいらっしゃるそうですよ」

のあ「そう。ありがたく使わせてもらうわ」

志保「辛いので少しずつ使ってくださいね」

のあ「志保、ちょっといいかしら?」

志保「追加オーダーですか?」

のあ「志保も菜々もわかってるのかしら?」

志保「はい、マスターからお話いただいてますから」

のあ「もう一つ、聞いていいかしら。この和パフェなんだけれど」

志保「特訓中なのでお試し価格なんです」

まゆ「2人で食べるなら、オススメはどれですかぁ?」

志保「そうですねぇ、これとこれは2人でシェアするのがいいと思います」

のあ「1人用は」

志保「さっきのは、私と菜帆ちゃんなら1人分です。オヤツの時に」

のあ「ありがとう。よくわかったわ」

まゆ「じゃあ、これにします」

志保「オーダーありがとうございます。食後にお飲み物と一緒にお持ちしますね」

のあ「ちなみにだけれど、一番高いこれは?」

まゆ「限定1食って……書いてありますね」

志保「それは……こうで、こうで、これくらいです!」

まゆ「志保さんが両腕で抱えるくらい?」

のあ「何人用よ……そんな器があるのかしら」

志保「マスターにクリスマスプレゼントでいただきました!すっごく素敵なんですよ!」

のあ「クリスマスプレゼントのチョイスを間違ってるわ、雪乃……」
14 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2020/04/29(水) 19:25:48.76 ID:+FOtccNe0


高峯探偵事務所

のあ「……」

まゆ「のあさん、休憩しませんか?」

のあ「そうね。パフェの糖分を使い切るわ、このままだと」

まゆ「美味しかったですねぇ。菜帆ちゃんはもっと良くなると言ってましたけれど」

のあ「私には分からない領域ね」

まゆ「今は何を考えているんですか?」

のあ「次について」

まゆ「次……ですか」

のあ「古澤頼子が行う、次のこと」

まゆ「のあさんが誘拐されてからは何もしてませんけれど……」

のあ「次がないと思うかしら」

まゆ「……思いません」

のあ「このまま消えるのなら、井村雪菜を殺したりしないでしょう」

まゆ「それも……命令ですかぁ」

のあ「古澤頼子の命令だと考えているわ」

まゆ「……」

のあ「古澤頼子の目的は何かしら?」

まゆ「わかりません……」

のあ「そう、わからない。怨恨、金銭、あるいは政治的な主張」

まゆ「そういうのじゃありません」

のあ「ええ。それでも、わかっていることは?」

まゆ「誰かを標的にしている?」

のあ「正解。私の誘拐は、私でも真奈美でもなく」

まゆ「誘拐犯だった……人」

のあ「罪を犯す、あるいは犯している人物。つまり……」

まゆ「つまり?」

のあ「古澤頼子の協力者」

まゆ「仲間を……標的にするんですか」

のあ「ええ。松永涼だって、そうだったでしょう」

まゆ「はい……心当たりはありますか?」

のあ「人物の特定はできていないけれど、協力者はまだいるわ。例えば、殺し屋」

まゆ「殺し屋……」

のあ「大石泉が見ているわ。私を誘拐したのも単独犯ではないでしょう」

まゆ「のあさんが悩んでいるのは……誰かわからないからですか」
15 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2020/04/29(水) 19:26:49.85 ID:+FOtccNe0
のあ「誰も、何を、どこも、いつもわからない」

まゆ「……」

のあ「起きてから追いかけるのでは遅いわ。止めるわ」

まゆ「でも……難しいんですよね。のあさんが、ずっと悩んでるのに」

のあ「手掛かりは少ない。でも、やるしかないわ」

まゆ「わかってます、のあさん」

のあ「休憩すると言ったのに、ダメね。休みましょう」

まゆ「はい、コーヒーを淹れますねぇ」

のあ「ありがとう、まゆ」
16 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2020/04/29(水) 19:29:07.48 ID:+FOtccNe0




良楠公園

卯月「いち、に、さん……」

凛「……今日は先にいるんだ」

卯月「あっ、凛ちゃん!こんばんは!」

凛「……もしかして、待ってたの?」

卯月「はいっ、半分はそうです」

凛「半分……残り半分は何かの練習?」

卯月「ステップの確認をしてるんです、よくここで練習してて」

凛「ダンス?」

卯月「はいっ。来月大切なステージなんです」

凛「ふぅん……ダンス部なんて意外」

卯月「部活じゃないですよ。私、実は」

凛「実は……?」

卯月「アイドルなんですっ」

凛「……」

卯月「あ、あれ?本当ですよ?信じてませんか?」

凛「嘘をつくタイプには見えない。本当なんでしょ」

卯月「驚かないんですね」

凛「別に、興味ないから」

卯月「凛ちゃんはクールですねっ」

凛「続けてていいよ……邪魔しないように帰るから」

卯月「待ってください、凛ちゃんとお話に来たんです。今日は、時間ありますよね?」

凛「時間はあるけど……私が話すことなんてない」

卯月「お花の話を、聞きたくて」

凛「花の話……なんで?」

卯月「お花の話をするときの凛ちゃん、素敵でした」

凛「はぁ?」

卯月「今日はいいですよね、ね?」

凛「いいけど……」

卯月「それじゃあ、ベンチに行きましょう!こっちです、凛ちゃん!」

凛「結構強引だよね……アンタ」
17 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2020/04/29(水) 19:29:36.37 ID:+FOtccNe0


良楠公園

凛「高校は行ってない。今は仕事をしてる」

卯月「どんなお仕事なんですか?」

凛「……便利屋みたいなこと」

卯月「わぁ、カッコイイです!」

凛「そうかな……」

卯月「あれ、もうこんな時間!帰らないと、明日もレッスンなんですっ」

凛「朝から?」

卯月「はいっ」

凛「今日もレッスンなのに自主トレもして……元気だね」

卯月「好きだから、がんばれますっ」

凛「……そうなんだ」

卯月「今日はありがとうございました!もっと色々なこと聞かせてくださいねっ」

凛「会えたらね、島村……さん?」

卯月「卯月でいいですよ、凛ちゃん!」

凛「じゃあね……卯月」

卯月「はいっ、またここで」

凛「……わかった」

卯月「ばいばーい」

凛「……ばいばい」
18 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2020/04/29(水) 19:31:25.25 ID:+FOtccNe0


深夜

高峯探偵事務所

のあ「島村卯月?」

真奈美「ああ。知ってるよな?」

のあ「知ってるわ」

真奈美「CGプロの合同ライブの映像も、そこでよく見ているものな」

のあ「前回のライブも買ったわ。みくにゃんのファンクラブ向け特典のインタビューが最高だったわ」

真奈美「お買い上げありがとう」

のあ「次の合同ライブは行けないけれど。映像が出るのを待つわ」

真奈美「おや、そうなのか?」

のあ「冬の広い屋外ステージでセンター不在となれば余裕だと思ったのだけれどね……みくにゃんファンクラブ内にも嵐が吹き荒れてるわ」

真奈美「適切な会場が抑えられなかった、とか言っていたな」

のあ「活動が長ければ、そういうこともあるわ。次の機会を楽しみに待っていましょう」

真奈美「珍しく冷静だな」

のあ「私はいつも冷静だけれど」

真奈美「我を無くして、金の力で潜り込む算段をするか、悲嘆にくれるものだと」

のあ「そんなことしないわ。私は品行方正なみくにゃんファンよ」

真奈美「わかってるよ」

のあ「……確かに手段は色々あるわね」

真奈美「そこまで言っておいて、悩まないでくれ」

のあ「私の話はいいわ。それで、島村卯月のレッスンをしてるのね」

真奈美「島村君だけじゃないが、彼女が多めに入ってるな」

のあ「真奈美にとっては臨時収入かしら」

真奈美「どういうわけか依頼が集中していてな。偶には、のあにご馳走しようか?」

のあ「結構。真奈美が欲しい物でも買いなさい」

真奈美「欲しい物か……」
19 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2020/04/29(水) 19:32:30.63 ID:+FOtccNe0
のあ「保管場所はあるから好きな物を買えばいいわ。物が少ないわよね、真奈美は」

真奈美「のあと比べれば誰でも少ないさ」

のあ「まゆと比べても少ないでしょうに。何かないの?高くて手の届かなかったもの、とか」

真奈美「思い浮かばないな。ま、無駄遣いせずに貯めておくよ」

のあ「真奈美は、貯めて何をするのかしら」

真奈美「のあのおかげで生活は困っていないな」

のあ「生活のためでないのなら、何?」

真奈美「スキルアップか、趣味かな」

のあ「趣味ねぇ」

真奈美「のあの探偵業と一緒だな」

のあ「そうかしら」

真奈美「そうだよ。理由はもう一つ」

のあ「もう一つ?」

真奈美「使命感だよ」

のあ「使命感……」

真奈美「のあと同じ。依頼人を放ってはおけないのさ」

のあ「……」

真奈美「心当たり、あるだろう?」

のあ「ええ。働きづめで、無理はしないでちょうだい」

真奈美「こっちのセリフだ。1人で動くなよ?」

のあ「わかってるわ」

真奈美「というわけで、島村君のレッスンをしている。なにせ、センターだからな」

のあ「待って。センターなの?」
20 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2020/04/29(水) 19:33:42.08 ID:+FOtccNe0
真奈美「そうだ。今日の昼に、対外向けにも発表されてる」

のあ「みくにゃんではないのね。CGプロのアイドル部門全員で構成されるシンデレラガールズのセンターでありAランクアイドルの諸星きらりが参加しない最初の合同ライブでシンデレラガールズのセンターを務めるのは、みくにゃんではないのね?」

真奈美「そうだが、よくそんなまどろっこしい言い方を一息で話せるな」

のあ「そうなのね……」

真奈美「前川君にセンターを務めて欲しかったのか?」

のあ「先に言っておくと、島村卯月を選んだことは素晴らしい選択よ。理由は私でもわかるほどに。真奈美、手伝ってあげなさい」

真奈美「私は歌のレッスンをすることしかできない。彼女は世間の人が知っているよりも立派だよ」

のあ「だけれど、みくにゃんがセンターを務めて欲しかったわ。それは仕方ないの、大好きだからしかたないの。だって、推しが一番だもの。推しがセンターに立ったら、人は泣くのよ。ソロとは違うの、素晴らしいことなの。みくにゃんがセンター……」

真奈美「まさか想像だけで泣けるのか?」

のあ「泣くのは叶ってからにするわ。みくにゃんなら叶えられるはず」

真奈美「そっちには同意する」

のあ「そろそろ休むわ」

真奈美「ああ。そういえば、言い忘れていた」

のあ「何か?」

真奈美「赤西瑛梨華がここに来たいと言っていた、連れて来ていいかい?」

のあ「もちろん、私は構わないわ。まゆは聞いてるの?」

真奈美「赤西君から連絡しているはずだ」

のあ「まゆが良いなら歓迎するわ。お休み、真奈美」

真奈美「本当に休めよ、のあ」

のあ「わかってるわ」

真奈美「……少し気晴らしが必要かな」
21 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2020/04/29(水) 19:34:38.56 ID:+FOtccNe0
10

12月20日(日)



某雑居ビル3階・空きテナント

凛「……」

古澤頼子「こんにちは、渋谷凛さん」

古澤頼子
静かにドアをあけて、彼女は現れた。意外にもピンクのセーターを着ている。

凛「来るなら言ってよ」

頼子「いいえ」

凛「いいえ?」

頼子「そのためにお願いしたのですから」

凛「意味がわからない」

頼子「いかがでしょうか」

凛「アパートはさっぱり。来客すらほとんどいない」

頼子「わかりません。ですが、来るとしたら」

凛「クリスマスか年末年始。去年は訪ねて来てる」

頼子「お願いします」

凛「ねぇ、頼子」

頼子「なんでしょう、渋谷凛さん?」

凛「名前、なんで呼ぶようになったの?」

頼子「いけませんか」

凛「前は死んだ人間として会話もしなかった。今はしてる。なんで?」

頼子「理由は深くありませんが強いて言うのなら、気が変わりました」

凛「気が変わった?」

頼子「面倒でしたから。私も人間ですから、気が変わるのです」

凛「……」

頼子「寝床はいかがでしょう」

凛「悪くないよ。人がいなくなるまで待たないといけない以外は」

頼子「そうですか」

凛「別にここで寝てもいいんだけど」

頼子「夜にいると怪しまれますよ」

凛「ふうん。そもそも、夜は見張ってなくて問題ないの?」

頼子「問題ありません」

凛「どうして」

頼子「彼が夜に訪れることはありません」

凛「なんで言い切れるの?」

頼子「絶対だからですよ。引き続きお願いしますね、渋谷凛さん」
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