もしもし、そこの加蓮さん。

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/25(土) 19:12:24.24 ID:63FTC/uF0


むかし、むかし。
ある病室に、一人の女の子が寝込んでいました。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1587809543
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/04/25(土) 19:14:22.50 ID:63FTC/uF0

御伽噺の主人公こと北条加蓮ちゃんのSSです


http://i.imgur.com/BN4lYgx.jpg
http://i.imgur.com/Red2Prh.jpg

過去作とか
神崎蘭子「大好きっ!!」 ( http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1472300122/ )
北条加蓮「正座」 ( http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1409924975 )
モバP「加蓮、ちょっと今いいか?」 ( http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1557581366 )


以前頒布した本の内容へ加筆修正を施したものです
若干の宗教的な要素を含みます
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/25(土) 19:22:28.26 ID:63FTC/uF0


 【T】パステルクリーム


クリーム色の中を行き交う、薄いブルーとピンク。
それが彼女――北条加蓮の世界でした。


少し前までは入院する度に眉をひそめていた、
つんと鼻を突くような薬品の混じり合った匂いも、
いつからかすっかりと慣れてしまいました。

同室の患者達の家族がお見舞いに来たり、看護師の巡回だったりを除けば、
病室というのはなかなか静かなもので。
加蓮はこの居場所を、彼女の家族が慮る程には嫌っていません。

いえ。むしろ、小学校の同級生の中には、
悪戯ばかり繰り返す男子や、口さが無く噂を騙り続ける女子も混じっていましたから、
気分によっては病室の方が落ち着ける日まであったくらいです。
ベッドの上でいいこにしている限りは、同室の患者達も、看護師さんも、
もちろん家族も優しくしてくれます。
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/25(土) 19:30:18.30 ID:63FTC/uF0

第一、加蓮はひとり遊びの奥深さをよく心得ていたのです。

入院の度にカードを買い直すのも大変だからと、
サイドテーブルには持ち込みを認めてもらった携帯型テレビがイヤホン付きで置いてあります。
作り付けのキャビネットの中には、ローティーン向けのファッション雑誌に、
母から譲ってもらったヘアブラシ。
お小遣いを貯めてようやく買えた、小学生が使うにしては驚くほど上等なネイル用品一式。

それから――大量の本。


今日の加蓮は爪をお手入れしたい気分のようでした。
エタノールを吸わせたガーゼでささくれや甘皮を取り除いた後、
一本ずつ丁寧にヤスリで爪を整えていきます。

何せ時間ならたっぷりと有りますから、それはもう丁寧な仕事そのものです。
再び爪を綺麗に拭き上げ、ベースコートをぺたり、ぺたり。


さて、ここからが本番です。
一つ深呼吸をして、縁取りを意識しながらカラーを。
しっかりと、しかし素早く真っ直ぐに。

右手の親指まで全て塗り終えたら、最後の仕上げのトップコート。
ちょっときらきらし過ぎかな、と加蓮自身思ったりしないでもない、薄いラメ入りのものです。

再び丁寧な仕事を繰り返して、小さなネイリストは鼻を鳴らします。
まだしばらく乾燥させなければいけませんが、ひとまずの完成を誇るように、
彼女は両手をまっすぐ前へ伸ばしました。
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/25(土) 19:40:24.85 ID:63FTC/uF0

白く小さな両手を彩る、ミントグリーンの指先。
病室を包むパステルクリームの壁紙に、十本の宝物はとても映えていて。


 「うん。よくできた」


彼女の満足気な呟きに、相槌を打つ人は居ませんでした。
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/25(土) 19:47:14.12 ID:63FTC/uF0

 ◇ ◇ ◆


 『じゃあ、自己紹介から』

 『ひゃいっ』

 『うーん緊張の塊だねぇ』


日高舞が表舞台から姿を消して、五年と少し。

いっときは冷凍庫の隅っこみたいに冷え切っていたアイドル業界も、
ようやく春の兆しが見え始めた頃でした。
長い長い冬の時代を経て、丹念な手入れを怠らなかった土から、
幾つもの輝きが芽吹こうとしていた、新緑の季節。

小さな画面の中でマイクを手に並び立つ三人の少女達は、
たぶん実際の背丈以上に小さく見えてしまいます。
繋いだイヤホンの具合を確かめ直し、加蓮は携帯テレビのボリュームをほんの少し上げました。
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