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【艦これ】提督「墓場島鎮守府?」不知火「その3です」
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23 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/03/12(木) 01:15:07.16 ID:Wdzf2wR1o
というわけで今回はここまで。
このスレも、よろしくお願い致します。
24 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/03/12(木) 12:52:28.97 ID:cN2mMjBWo
おつおつ。新スレだあああああああ!!!やったあああああああああ!!!!!
25 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/03/12(木) 18:20:08.30 ID:4jTLGWs5O
よろしく乙
>>24
姉さん新スレでは静かにしましょう
26 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/13(金) 02:09:11.19 ID:rzzCKG520
楽しみにしてますね
27 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/03/14(土) 13:26:48.74 ID:ZTMvM0mF0
新スレ乙です
28 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/17(火) 00:02:00.77 ID:w80ribEb0
新スレ乙です!
29 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/04/02(木) 23:35:18.74 ID:Nt9MjZvIo
久々の日常編。続きです。
30 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/04/02(木) 23:36:01.10 ID:Nt9MjZvIo
* 執務室 *
(初雪を膝枕して耳かきしている提督)
提督「……」クリクリ
初雪「……はふぅ」ウットリ
提督「なあ初雪?」
初雪「……はい」
提督「さすがに2週間おきに耳かきしてると、全然たまってなくて綺麗なまんまなんだが」
初雪「……」
提督「……んな顔されても困る。綺麗ならそれでいいじゃねーか」
提督「短くても月一くらいにしとけ。あんまり耳かきしまくっても耳に良くないってはっちゃんも言ってたからな」
初雪(……余計なこと言わなくていいのに)ザワッ
提督「つうか、俺じゃなくて古鷹に頼んでも……」
初雪「提督がいいんです」ボソ
提督「……」
31 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/04/02(木) 23:36:46.62 ID:Nt9MjZvIo
初雪「楽しみにしてたのに……」ドヨーン
提督「……んじゃあどうすりゃいいんだよ」
初雪「……」
提督「……」
初雪「気分だけでも」
提督「ん?」
初雪「膝枕して、お昼寝。週一回、10分間」
提督「……」
初雪「……駄目?」チラッ
提督「……まあ、いいか」
初雪「!」グッ!
初雪「そうと決まれば」モゾモゾ(←位置調整)
初雪「それと、手はここ」ソッ(←提督の手を初雪の頭の上に)
提督「……」
初雪「完璧……!」ムフー
提督「……」
初雪「おやすみなさい……」スヤァ…
提督(……猫かこいつは)
32 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/04/02(木) 23:37:31.37 ID:Nt9MjZvIo
* 翌日 *
伊8「ってことを聞いたんですけど」
提督「まー、そうなったな」
伊8「はっちゃんも提督と一緒にお昼寝を要求します」キョシュ
提督「……お前はしょっちゅう俺のベッドにもぐりこんできてるよな?」
伊8「それとこれとは話が別です」
伊8「せっかく作ったお風呂も入りに来てくれないし」ムスー
提督「……入るなら一人でゆっくり入りたいんだよ」
伊8「はっちゃん、お風呂の管理者です」
提督「だからってなんでお前も一緒に入りたがるんだよ」
伊8「人肌が恋しいんだから、いいじゃないですか」プク
提督「だから膝枕しろってか」ハァ
伊8「膝枕じゃなくてもいいですよ?」ズイ
伊8「とにかくソファに座ってください」グイ
提督「……」ボス
33 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/04/02(木) 23:38:16.25 ID:Nt9MjZvIo
伊8「10分間でしたよね?」
提督「……ああ」
伊8「それじゃ、失礼して」ノソッ
(座った提督の正面から抱き着く伊8)
提督「!?」
伊8「それじゃ、おやすみなさ」
提督「ちょっと待て。これは膝枕って言わねえぞ、抱き枕だ」
伊8「そうですけど?」
提督「……」アタマカカエ
伊8「反論もないようですので、おやすみなさ」
扉<ガチャ
三隈「提督! 三隈、新型にな……」
伊8「あ」ダキツキ
提督「……」ダキツカレ
三隈「」
34 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/04/02(木) 23:39:01.20 ID:Nt9MjZvIo
最上「三隈、どうしたの?」ヒョコ
三隈「くまりんこーーーーーーーー!」イヤーーーー!
伊8「!?」
提督「!?」
最上「み、三隈!? お、落ち着いて!」
三隈「くまっ、くまあああ!」
伊8「うるさくてお昼寝できないんですけど」ギロリ
提督「そうじゃねえだろ」
*
三隈「お見苦しいところをお見せしてしまいましたわ……申し訳ありません」
提督「いや、いいけどよ。見苦しいのは俺も似たようなもんだしな」
三隈「え、ええ……その、提督はどうして伊8さんと抱き合ってらしたんですか?」
提督「はっちゃんが俺に抱き枕になれとよ」
三隈「あんな対面座位みたいな恰好……知らない人が見たら悲鳴を上げてしまいますわ」ポ
提督(悲鳴で済めばいいがな……)
35 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/04/02(木) 23:39:46.12 ID:Nt9MjZvIo
最上「はっちゃんは抱っこしてもらうのが好きなの?」
伊8「はい」
最上「それじゃあ、僕が代わりに抱っ」
三隈「くまりんこーーーーーー!!!」
最上「……」ビックリ
伊8「……」ドンビキ
三隈「最上さんは! どうして! そんなに無防備なんですか!!」
最上「み、三隈こそ神経質になりすぎだよ。抱っこって言っても、同じ艦娘だよ?」
三隈「で、でも……」
提督「……ここまで言い淀んでる、ってことは、三隈が神経質にならざるを得なかったんだな? お前らのいた部提督の鎮守府ってのは」
三隈「え、ええ……私がみんなを見張ってないと気軽にぺたぺた触ってしまう、しょうがない人たちだったんです」
三隈「あまりに風紀が乱れていましたので、私が口うるさく注意していましたから、私の前では皆さん大人しくなったんです」
三隈「でも、私のいないところでは相変わらずで……」
最上「それで、三隈が普段からくまりんこーって言うのが日常になっちゃったんだよね」
伊8「? どうしてそうなるの?」
36 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/04/02(木) 23:40:31.82 ID:Nt9MjZvIo
最上「三隈の声が聞こえるとみんな警戒するんだ。部提督も三隈の声が聞こえたら、僕から離れるようになったし」
提督「サイレンみたいなもんか」
三隈「ええ、効果はあったんです。でも、そのせいで、いかがわしい場面に遭遇した時もその口癖が出てしまうようになりまして……」
最上「それだけじゃないよ。出撃中に被弾したときも言うようになっちゃったんだ」
伊8「意識しなくても言っちゃうようになったんですね」
提督「ところで、そのくまりんこ、ってなんだ?」
三隈「そ、それは……」カァ
最上「うーん、決め台詞みたいなものかな?」
提督「……?」クビカシゲ
伊8「女の子にはいろいろ秘密があるんですから、言及しちゃだめですよ」
提督「まあいいけどよ。三隈が言いたくねえならそれでいい」
三隈「お、お気遣い感謝します」モジモジ
伊8「ところで……」
バタバタバタ
提督「!」
37 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/04/02(木) 23:41:17.82 ID:Nt9MjZvIo
扉<ガチャバーン!
金剛「Heeey, テイトクゥーーー!!」
三隈「!?」
最上「!」
伊8「……」
提督「ん、金剛か」
金剛「Yes ! 今回の海域、私が活躍しまシタ! MVPデース!!」
金剛「なので、ご褒美を貰いに来まシターー!」ダキツキー!
提督「ぬお!?」ダキツカレー
三隈「くまりんこーーーー!」キャーーー!
大和「金剛さん、何を抜け駆けしてるんですか!」バッ
比叡「司令ってばずるい!!」バッ
榛名「榛名もMVPを取ったら抱き着かせていただきたいです!」ポッ
摩耶「おい待てよ! 霧島さんの指揮があったからあんなにすんなり海域抜けられたんだぞ!?」
霧島(戦艦5重巡1なら、すんなり抜けられて当然の海域だったんだけど……)タラリ
38 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/04/02(木) 23:42:06.43 ID:Nt9MjZvIo
三隈「は、破廉恥ですわ!?」
金剛「No ! 私とテートクは、ハレンチな関係じゃありまセーン!」
大和「その通りです! 提督はそのようなお方ではありません!」
金剛「Heeey, 大和ォ? その言い方はまるで私がハレンチな艦娘であるように聞こえマスヨー?」
大和「すぐに提督に抱き着いて離れないあなたが仰っても、説得力がありませんよ?」
比叡「金剛お姉様! 司令に抱き着くのなんて、慌てなくったって、いつだってできるじゃないですか!」
金剛「えっ」
大和「えっ」
榛名「えっ」
比叡「えっ」
伊8「……」
金剛「比叡? 何を言ってるデース?」プルプル
比叡「だって司令、好きにしろって仰ってましたよ?」
金剛「!?」グリッ
大和「!?」グリッ
榛名「!?」パァッ
39 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/04/02(木) 23:42:46.45 ID:Nt9MjZvIo
伊8「それ、本当ですか?」
提督「どうせ大和たちには言っても聞かねーだろうしな。逆に比叡だけ駄目だって言う理由もねえ」
伊8「比叡さんはどうして提督に抱き着こうと思ったの?」
比叡「え? 金剛お姉様が頻りに司令に抱き着きたがるから、どういう感じなのかな? と思って……」
最上「ふーん。どんな感じだったの?」
比叡「ええっとねー、金剛お姉様はこう、ふわーっと包み込んでくれる感じなんだけど」
比叡「司令はがっちりしてて! そんなに筋肉質ってわけでもないのに、安心して寄りかかっていられる感がすごかったって言うか!」パァッ
大和(わかります……)
榛名(とってもよくわかります……!)
金剛(比叡……Tension が上がってマスヨー……)
最上「こっちのみんなは、どうして固まってるんだい?」
摩耶「い、いや、あたしに言われてもなあ……」チラッ
霧島「え、ええ……私たちも新参者ですし、困りますね」
三隈「最上さんもそうですけど、比叡さんも相当鈍感というか……」
伊8「全然邪念がないみたいですね」
40 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/04/02(木) 23:43:31.57 ID:Nt9MjZvIo
比叡「それで、また抱き着いてもいいですか、って聞いたら、好きにしろ、って流れに」
金剛「テートクゥゥ!?」グリッ!
大和「どういうことですか!?」グリッ!
提督「いや、お前らが言うなよ」
伊8「ですよね」
三隈「どういうことですの?」
伊8「金剛さんも大和さんも、週一でハグタイム設けてもらってるんだって」
三隈「……くまりんこ……」ガックリ
榛名「つまりそういうことですね! 榛名も大丈夫なんですね!」キラキラッ!
摩耶「ハグタイムって、何かのテーマパークじゃねえんだぞ……」
霧島「ね、ねえ、摩耶……はぐたいむ、って何なの……?」
摩耶「え? あー、なんつうか、人形に抱き着ける時間っつうか……」
伊8「遊園地とかのイベントで、マスコットの着ぐるみとかにハグしてもらえる時間、と言うとわかります?」
摩耶「そ、そうそう! そういうイベント時間!」
41 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/04/02(木) 23:44:18.32 ID:Nt9MjZvIo
伊8「Hug time 、和製英語ですね」
最上「へー、そういうのがあるんだ」
霧島「ふぅん……?」
三隈「霧島さん、いまひとつ理解できていませんわね」
霧島「え、ええ。ちょっと想像できなくて」
提督「……俺はマスコットか」
比叡「マスコット……ではないですよね。司令は成人男性ですし……」
三隈「男性でも、アイドルなら……それでも握手するくらいで、抱き着いたら一大事ですわね」
扉<ガチャバーン!
那珂「那珂ちゃんのこと、呼んでくれた!?」シャラーン!
提督「呼んでねえし話がややこしくなるから出てくんな」
那珂「ちょっ!? それ、ひどくないですか!? 折角図面を持ってきたのに!」ガーン!
提督「図面? できたのか?」
那珂「はいっ! 明石ちゃんと妖精さんたちが、こんな感じでどうかって!」
提督「そういうことなら、とっとと現場に行くか。おい、お前らちょっと顔貸せ」
全員「「??」」
42 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/04/02(木) 23:45:01.70 ID:Nt9MjZvIo
* 食堂 *
提督「食堂に入ってこっちが厨房、反対側がただの壁だ」
提督「で、その壁の向こう側は使っていない会議室。つうか、半端にでかいせいで物置になってたわけだが」
提督「この壁をぶち抜いて、ぶち抜いた先のスペースにステージを作ろうって考えたんだ」
大和「なるほど、それで戦艦の力が必要と言うわけですね」
提督「ちょっと段差付けて、舞台の裾に更衣室と音響や照明の設備も置けば、まあそれっぽくはなるだろ」
提督「あまりでかいスペースはとれねえが、今の建物で一番でかい部屋はここしかねえからな」
那珂「でもでも、まさか屋内にステージを作ってもらえるなんて思わなかったなあ……ありがとう、提督さん!!」ナゲキッス
霧島「あ、あの、いいんですか? 勝手に設備を作り変えて……」
提督「俺の鎮守府だからな。いいんだよ」ニタリ
霧島「……」
島妖精E「どうせ本営の人たちは、この島の鎮守府の内装なんか興味ないよ」
島妖精F「安心していいからね!」
摩耶「……そ、そういうもんか?」
43 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/04/02(木) 23:46:00.21 ID:Nt9MjZvIo
提督「ところで妖精、明石はどこ行った?」
島妖精F「工廠に工具を取りに行ったよー」
提督「ああ……もしかして、アレ取りに行ったのか」
島妖精E「うん、明石の出番ですね! って言ってスキップしてたよ」
提督「今回はちょっとしたDIYどころじゃねーんだがな……うん? 工具取りに行ったってことは、すぐにおっ始める気か?」
島妖精F「……かもしれない」
提督「壁ぶち抜くにしても、その前に埃が厨房に行かねえようにシートで覆ったりしねえとまずいだろ」
島妖精E「そうだね、その話は明石とはしてないや」
提督「建物自体ぶっ壊れねえかも心配だ、柱の補強とかも大丈夫なんだろうな?」
島妖精E「そっちは大丈夫。それより、いつやるかちゃんと決めないと駄目だね」
提督「力仕事だからな。戦艦が工事の手伝いできるよう手配しとくから、日程は教えてくれ」
島妖精E「あ、それからこの辺の電飾用のライトとかも準備したいな」
提督「なら、あのカタログ持ってきて、適当なやつ買うか?」
島妖精F「それじゃあ、通販の設備が届く日程も考慮しないといけないね」
最上「……あれ?」
三隈「……」
摩耶「……」
霧島「司令、もしかして……妖精さんと話ができるんですか?」
提督「……今頃かよ」
44 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/04/02(木) 23:46:47.16 ID:Nt9MjZvIo
* 休憩室 *
龍驤「ほーん。こんなんもあるんやな……」ペラリ
雲龍「……これが、テレビ?」
龍驤「これはDVDプレーヤーやね。こういう円盤の中にデータが入ってるんよ」
雲龍「データ……」
龍驤「あー、テープ言うたらわかる?」
雲龍「……穿孔テープのこと?」
龍驤「えらい前時代的なもんが出てきたったなあ……せめてカセットテープくらい出てこん?」
雲龍「! ……龍驤」ユビサシ
龍驤「うん?」チラッ
島妖精D「通販のカタログは龍驤が持ってたのか」
島妖精C「私たちも見せてもらっていいかな?」
龍驤「おお、ええよ? 何のページを見るん?」
島妖精C「隣の部屋を改造して、那珂ちゃんのステージを作るんだ」
島妖精D「電飾や音響設備のページを見たいんだけど」
45 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/04/02(木) 23:47:31.17 ID:Nt9MjZvIo
龍驤「あ、丁度このページや。ほら、カラオケの設備とかあるで!」
島妖精C「んー……あ、この辺がちょうどいいかも」
島妖精D「うん。これなら機能も十分ぽいね」
龍驤「……これ? なあ、ちょっち高こないか?」
島妖精C「大丈夫だよ、多分」
龍驤「多分て……」
島妖精D「龍驤も、何か好きなの頼んでいいよ?」
龍驤「えっ、ほんま?」
島妖精C「うん、提督はその辺緩くしてるから。ポケットマネーで出してくれるって」
龍驤「……せやったら遠慮するわ。あの提督、お金持ってへんやろ」
龍驤「この音響設備もえらい値段やし、頼んでも無理なんちゃう?」
島妖精C「ううん、むしろ使えって言ってるみたいだよ?」
島妖精D「提督はこの島に着任してから全然帰国してなくてお金も使ってないし、離島勤務で特別手当も出てるらしいね」
龍驤「ちゅうことは、多少のおねだりはアリ、ちゅうことかな……?」
島妖精D「多分ね」
島妖精C「それより、この設備を買ってもらえないか、提督に相談しに行きたいんだけど。カタログ、借りてってもいい?」
雲龍「ねえ、カタログ、私たちが持っていきましょ」スクッ
龍驤「せやね。一緒にいこか」
46 :
◆EyREdFoqVQ
[saga]:2020/04/02(木) 23:48:16.89 ID:Nt9MjZvIo
以上、今回はここまで。
47 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/04/03(金) 00:54:41.48 ID:jC7aWbhb0
初見です。
とても面白いので最初から読まさしてもらいました。
これからも応援します。
48 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/04/06(月) 00:50:34.80 ID:y+Q2rNGVO
(続きを)待ってました!
(続きを)待ってます!
49 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/05/05(火) 21:48:00.79 ID:e/wUUiNP0
そろそろかな?
楽しみに待ってます!無理をなさらずに。
50 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/05/17(日) 05:42:02.28 ID:S8UToAtp0
ほしゅ
51 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/17(日) 23:20:12.71 ID:RP3H2uY3o
少しだけ続きです。
52 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/17(日) 23:21:01.44 ID:RP3H2uY3o
* 食堂 *
龍驤「提督! カタログ持ってきたで!」
提督「ん? 気が利くな、持って来てくれたのか」
島妖精C「丁度二人がカタログを見てたからね」
提督「なるほどな、お前らが声をかけたのか」
龍驤「音響設備が欲しいんやって?」
提督「ああ。ついでにライトや暗幕もねえとな、って話をしてたんだ」
龍驤「本格的やなあ。お金は大丈夫なん?」
提督「まあ、謙虚な奴が多くてな。お前も何か欲しいもんがあるなら、遠慮なく言えよ?」
龍驤「ほんま? せやったら……」
提督「口頭で言われても覚えてられねえからな。紙に書いて出してくれ、できる限り要望には応えるからよ」
龍驤「ほーん。じゃあ、あとでまたカタログ借りるで!」
提督「おう、悪いな。さて、手頃なのがありゃあいいんだが……」
53 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/17(日) 23:21:45.92 ID:RP3H2uY3o
金剛「私も一緒に探しマース!」ズイッ
大和「私も拝見しますね!」ズイッ
提督「……お前らもうちょっと離れろよ……まあいい、マイクから探すか」
霧島「マイクでしたら私にお任せください!!」グワッ!
全員「「!?」」
雲龍「……」
龍驤「? 雲龍? どないしたん?」
雲龍「……なんでもないわ。ぼーっとしてた」
龍驤「大丈夫なんか?」
雲龍「ええ」コク
雲龍「……」
54 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/17(日) 23:22:32.20 ID:RP3H2uY3o
* 夕刻 執務室 *
提督「まあ、ステージ用の設備はこんなもんか……」
コンコン
提督「うん?」
雲龍「提督。ちょっといいかしら」
提督「ああ、入れ」
雲龍「失礼します」チャッ
提督「……珍しいな。お前、この時間はいつも食堂にいたろ?」
雲龍「気になることがあるんです。川内って子のことなんだけど」
提督「なに?」
55 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/17(日) 23:23:15.90 ID:RP3H2uY3o
* 翌朝 食堂 *
神通「実は、川内姉さんに気をつけろと言われたのは、利根さんからなんです」
提督「利根から?」
神通「はい。川内姉さんはいつも明け方に戻ってきているので、迎えに行ったことがあるんです」
神通「そのときに、丁度利根さんが埠頭にいて……そのときにそう言われまして」
神通「それがどういう意味かと尋ねたところ、雲龍さんに相談しろと……」
提督「……そうか。にしても、なんで利根が明け方に埠頭なんかにいたんだ?」
神通「それは答えてもらえませんでした……」
提督「……何を考えてんのか、よくわかんねえな。おい、雲龍」クルッ
雲龍「……」モギュモギュ
龍驤「あー、あかんよ、食事中の雲龍は食事に集中したいから、話し掛けてもそうそう答えへんで」
提督「」
神通「」
56 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/17(日) 23:24:01.35 ID:RP3H2uY3o
提督「……とにかくだ。神通、川内は相変わらず夜中に出撃してるんだよな?」
神通「はい。今朝も夜明け前に帰ってきて、お風呂に入ってからそのまま布団に倒れ込んで眠ってしまいました」
提督「ここんとこはずっとそんな調子か」
神通「毎日ハードワークしているようで、日に日に眠っている時間が長くなってはいますね」
神通「でも、起きたら起きたで楽しそうに夜戦の話をするので、ストレスがあるわけではないみたいで……」
提督「楽しそうに、ねえ。無理してる感じはねえのか」
神通「肉体的には疲れてはいると思います。それでも、今まで夜戦できなかった反動ではないかと」
提督「気になる点はいくつかあるが……のんびり構えてはいられねえんだよ」
神通「?」
57 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/17(日) 23:24:47.43 ID:RP3H2uY3o
* 夕方 鎮守府埠頭 *
川内「うーん……!」ノビーッ
川内「いい夕焼け! さあ、早く夜戦しに行かないと!!」
提督「またこんな時間に単艦で出撃か」
川内「あっ、提督! ごめんね、どうしても夜戦がしたくって!」
提督「お前の生活のリズムが俺たちと逆転してるからな。誰かしら随伴できりゃあいいんだが」
川内「あはは、大丈夫だよ、寂しくないから!」
提督「なんだそりゃ。連れでもいるのか?」
川内「んー、まあ、そんなとこかな?」ニカッ
提督「それから、これ持ってけ。握り飯だ」
川内「!」
提督「休みなく戦う訓練もいいが、飲まず食わずじゃ体がもたねえ。戦い続けたいなら腹に何か入れろ」
川内「……えへへ、そうだね。ありがと!」
提督「……」
58 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/17(日) 23:25:31.22 ID:RP3H2uY3o
川内「じゃ、行ってきます!」
ザァッ
提督「……」
神通「……姉さん、大丈夫なんでしょうか」スッ
雲龍「どうでした?」スッ
提督「飯を素直に受け取ったあたり、川内自身はまともなんだろうけどな」
龍驤「なんやなんや、また面倒事かいな」
提督「そういうこった。さて、俺は寝る」
龍驤「は? まだヒトハチヨンヨンやろ?」
提督「3時くらいに起きて見張りをしなきゃなんねえんでな」
雲龍「私もよ」
龍驤「な、なんなん? いつの間にそんな話になっとん!?」
提督「やんなきゃいけねえことがあるんだよ。なんならお前も一緒に起きるか?」
龍驤「うぐぅ……な、なんで雲龍がそんな時間に起きなあかんねん」
雲龍「彼女が起きている間に対応しないといけないの」
龍驤「???」
59 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/17(日) 23:26:16.28 ID:RP3H2uY3o
* 深夜 某海域 *
ドーン…
川内「ふう、ふう……今の相手、なかなか手強かったなあ」
川内「……さすがに、ちょっと、疲れちゃった……」
川内「そうだ、提督からおにぎり貰ったんだっけ」ゴソゴソ
川内「えへへ、いただきまー……」
川内「……」
川内「……え?」
川内「……」
川内「……でも、食べないと……」
川内「……」
川内「……」
川内「……」
ポロッ
川内「あっ!」
60 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/17(日) 23:27:01.39 ID:RP3H2uY3o
チャポン…
川内「おにぎりが……!」
――そんなことより、夜戦しようよ
川内「……」
――食べてる時間だって、もったいないよ
川内「……」
――今まで、ずっと時間を無駄にしてきたんだよ
川内「……」
――さあ、早く、夜戦しよう!
川内「……そう……」
川内「そうだね……」
川内「……夜戦、しないとね……!」
――そうだよ、もっと、もっと夜戦しようよ……!
川内「……うん!」
――ふふっ、ふふふふ……!
61 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/17(日) 23:27:46.54 ID:RP3H2uY3o
* 翌日未明 入渠ドックそばの大浴場 *
シャワーーーー…
川内「……今日も疲れたぁ……へとへとだあ」フラフラ
川内「こんなに夜戦できて、幸せぇ……」ウツラウツラ
ワシャワシャ…
川内「……! 背中、流してくれるの……?」
川内「あはは、ありがとう……気持ちよくて、このまま寝ちゃいそう……」フラッ…
パタッ…
川内「……」
――いいよ。ゆっくり、休んでて
――あとは、私に任せて、ずーっと休んでて
―― い い か ら ね
.
62 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/17(日) 23:28:31.33 ID:RP3H2uY3o
「急急如律令」
ゴォォッ!!
――!?
衝撃波<ガォォォンッ!!
――ぐううっ!?
雲龍「……そこまでよ」
――どうして……どうして!?
ジワッ
幽霊『どうして邪魔するの……!?』
雲龍「邪魔をしない訳にはいかないわ。その子を衰弱死させるつもり?」
幽霊『ちょっと体を借りるだけだよ! 私だって同じ川内なんだから!』
雲龍「同じ……?」
川内の幽霊『そうだよ! ちょっと体を借りようとしただけだよ!』
川内の幽霊『私だって夜戦したい! でも、体はボロボロで、この島に流れ着いたときは、そんなことできなかったんだもの!』
川内の幽霊『だから、こっちの川内に眠ってもらって、私が代わりに夜戦しようとしてたんじゃない!』
63 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/17(日) 23:29:16.17 ID:RP3H2uY3o
提督「朧の時みたいに体を乗っ取って、か?」スッ…
川内の幽霊『!』
提督「川内の装備の妖精から話を聞いたが、お前、川内に預けた握り飯を捨てさせたらしいな?」
川内の幽霊『そうだよ……疲れてなきゃ駄目なんだ。彼女が起きてたら、私が体を操れないじゃないか……!』
提督「そのためには、そこにいる川内の命はどうなってもいい、ってか」
川内の幽霊『彼女は夜戦したがってた! だから私が誘って思いっきり夜戦させてあげたんだ!』
川内の幽霊『こんどは私の番! 私が夜戦する番だよ!!』
提督「……」
雲龍「提督。長くこの世に留まった幽霊は、人に害をなすと言うわ」
提督「ああ。聞く耳持たねえんじゃ、相手するだけ無駄なようだな」
川内の幽霊『……なによ! 結局、私に夜戦させてくれないんじゃない!』ザワッ
川内の幽霊『この子ばっカりずるい! ずるいずるイ!!』
64 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/17(日) 23:30:00.90 ID:RP3H2uY3o
川内の幽霊『私だっテ夜戦しタいノ! 夜戦! 夜戦!! ヤセンンン!!』
グォォォッ…
提督「……なんだ!? でかくなりやがった……!」
川内の幽霊『ヤァァセェェェンンン!!』グワッ
雲龍「大丈夫よ」
シャラン
雲龍「自此莫過、祓給清給。願主雲龍、道切修奉」
ゴゴゴゴ…
川内の幽霊『……!?』
雲龍「あなたの居場所はここではないわ。天か、海か、好きな方へ向かいなさい」シャラン
ゴォォッ!!
川内の幽霊『イ、イヤッ……イヤダァアアア!』
バシュン!!
65 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/17(日) 23:30:45.92 ID:RP3H2uY3o
雲龍「……」
提督「……」
雲龍「ふぅ。終わったわ」
提督「そうか。ありがとな」
雲龍「一応言っておくけど、退治した訳ではありません。ここから追い返しただけ」
提督「……道切(みちきり)修し奉る、とか言ってやがったな。悪い者が入ってこないようにするためのまじないか」
雲龍「はい。あとで略式でもいいからお祓いをした方がいいと思います」
提督「まったく、手間ァかけさせやがって……やっぱり水葬してやった方がこいつらのためだったのかね」ハァ
雲龍「それは少し違うと思います。彼女は……もっと艦娘として戦いたかっただけなんだと……」
提督「……んじゃあ、未練、ってやつか」
雲龍「私も、艦娘として誰の役にも立たないまま死にかけた身です」
雲龍「理由はどうあれ、艦娘の役目を背負って戦えることが、きっと、羨ましかったんだと……」
提督「やれやれ……それじゃあ、どうしたもんかね」
雲龍「……ごめんなさい」
提督「謝んなよ、独り言だ。誰も知らねえんなら調べるしかねえ」
提督「とにかく、お前のおかげで川内も助かったんだ。改めて礼を言わせて貰うぜ」
雲龍「……はい」ニコ
提督「よし、俺は退散だ。神通を呼んで川内を診て貰わねーとな」
66 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/17(日) 23:31:35.12 ID:RP3H2uY3o
* 埠頭 *
提督「……利根は、いねえな」キョロキョロ
雲龍「提督」スッ
提督「うん? なんだ?」
雲龍「利根に、直接話をするのは、やめた方がいいわ」
提督「どういう意味だ」
雲龍「川内は、悪い霊に取り憑かれていたのだけれど、利根は、そうではないんです。共存できているようなんです」
提督「共存? ……取り憑かれ、て……利根にもか!?」
雲龍「はい。それも、何体か」
提督「!?」
雲龍「提督は、心当たりはありますか。利根に、複数の霊が取り憑いていることについて」
提督「……利根に、霊が、取り憑いてる……?」
提督「まさか……前に利根がいた鎮守府で、殺された利根たちの霊が取り憑いてるってのは、関係あんのか!?」
雲龍「……なるほど。そういうことですか」ウーン
提督「おいおいおい……大丈夫なのかよ利根は」
67 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/17(日) 23:32:16.22 ID:RP3H2uY3o
雲龍「少なくとも、私が話した利根の幽霊の一人は、今の利根に害を与えるつもりはないみたいです」
雲龍「ただ、主人格の利根が眠っているときに、目覚めて体を借りていると」
雲龍「あまり動きすぎると体の疲れが取れないから、短時間かつ交代で体を借りているらしいです」
提督「……肉体のルームシェアかよ。本当に大丈夫なんだろうな、利根は……」
提督「まあいい、ともかくこの件もあまり他言しねえ方が良さそうだ。こんなオカルト話、下手に流して利根が避けられても困る」
雲龍「……」ニコ
提督「……なんだその笑顔」
雲龍「いえ。優しいんですね」
提督「やめてくれ、くすぐってえ。それより悪かったな、こんな早くに大事な仕事させちまって」
雲龍「あ……提督」
提督「今度はなんだ?」
雲龍「お腹がすきました」
提督「……」
68 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/17(日) 23:33:01.16 ID:RP3H2uY3o
* 食堂 *
雲龍「……」モグモグ…
川内「がつがつがつがつ!」
雲龍「……」モグ…
川内「ばくばくばくばく!」
雲龍「……もう少し、落ち着いて味わって食べたらいいと思う。もったいない」
川内「へっ? あー、ごめんごめん。おいしくて箸が進んじゃってさあ」エヘヘー
提督「つうか川内お前、しばらくまともに食ってなかったろ」
川内「うーん、そうだっけ? 確かにお腹ペコペコだし、食べてなかったかも」
提督「覚えてねえのかよ」
川内「うん。……ここ最近の記憶、ちょっと曖昧、かなあ」
提督「……」
神通「姉さん、まさかお風呂もまともに入れてないんじゃ……」
川内「あー、それは大丈夫だって。まあ、幽霊に背中流して貰ってたりしてた気がしたけどさあ」
神通「!?」
69 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/17(日) 23:33:46.12 ID:RP3H2uY3o
提督「あぁ!? 自覚あったのかよ!!」
川内「この島に来て最初の夜だったかな。うるさくすると提督に怒られるよ、って幽霊に言われたんだ」
川内「それから一緒に夜戦して、夜通し付き合って貰ってさ!」ニコニコ
川内「二人で戦ってるみたいで楽しかったなあ」フフッ
提督「……」アタマカカエ
神通「姉さん……少しは危機感というものがないんですか」
川内「でもさあ、夜戦できないまま沈んだっていうし。可哀想じゃない」
川内「だったらせめて、私に同行させて一緒に夜戦すれば、気が晴れてくれるかなって」
川内「私もさ、夜戦できない苦しさはわかってるつもりだからね……」
神通「一歩間違えたら死んでいたかもしれないんですよ!?」
神通「気絶していたのがお風呂の湯船の中だったらどうする気だったんですか!」
川内「えへへ……ごめんごめん。気をつけるからさ?」
提督「やれやれ……雲龍もなんか言ってやれよ」
雲龍「……提督」マジッ
70 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/17(日) 23:34:30.35 ID:RP3H2uY3o
雲龍「あなたの作った朝餉、とってもおいしいわ」
神通「!?」
川内「あ、私もそう思う!」
提督「いや、そういう話じゃなくてな」
雲龍「私にはこの朝餉のほうが大事。提督、どうしてあなたが料理を作らないの?」
提督「いや俺は他人に料理作るような奴じゃねーし」
提督「そもそも比叡たちが毎日作ってる量より全然少ねえから、味付けもしやすいってだけだろ」
雲龍「私は提督に毎日御飯を作って欲しい」キラキラキラッ
提督「」
川内「えっ!? なにそれ、プロポーズ!?」
神通「姉さん!? 雲龍さんも変なこと言わないでください!」
雲龍「変じゃないわ。本気よ」
71 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/17(日) 23:35:16.53 ID:RP3H2uY3o
龍驤「ふわぁ……結局起きれへんかったわ。雲龍ー、大丈夫やったん?」スタスタ
雲龍「龍驤。提督に、私たちに毎日朝餉を作ってくれるよう、お願いして」
龍驤「」
龍驤「」
龍驤「雲龍、キミ何言っとるん!?」
雲龍「私は本気よ」
龍驤「提督キミィ、うちの雲龍なに誑かしとんねん!」ギロリ
提督「……」
神通「提督、面倒臭がってないで、説明してください」
提督(もう喋んのも面倒くせえ)
川内「本っ当、面白い鎮守府だねー」アハハ
神通「川内姉さんが言わないでください!」プンスカ!
72 :
◆EyREdFoqVQ
[saga]:2020/05/17(日) 23:36:48.05 ID:RP3H2uY3o
というわけで今回はここまで。
73 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/05/18(月) 02:32:05.97 ID:sVHgIRB80
今回もとても面白かったです!
お体に気を付けてお過ごしください。
陰ながら応援させていただきます。
74 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/05/18(月) 16:44:30.02 ID:1j/SMV5sO
待ってました!!
続きお待ちしてまっす!
75 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/05/21(木) 03:46:03.76 ID:vsNu6OLy0
最近読み始めてやっとここまで来ました!
楽しみにしています!
76 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/24(日) 22:58:35.77 ID:1m+de9zfo
更新スピードにムラがあるのはご容赦願いたく。
続きです。
77 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/24(日) 22:59:16.20 ID:1m+de9zfo
* その日の夜 鎮守府内、廊下 *
川内「んーっ、よく寝たぁ……!」ノビーッ
川内「よーっし、今日も頑張って夜戦しよっと!」
川内「……あれ? 今日は声が聞こえないな」
川内「昨日無理しすぎてたからなあ……向こうも遠慮してるのかな。それともみんなにばれちゃったからかなあ」
暁「あ、川内さん! またこれから出かけるの?」
川内「! あ、あぁ、暁……か」
暁「? どうしたの?」
川内「え? な、なんでもないよ。またこれから夜戦の練習にね」
暁「暁も自主的に練習したほうがいいかしら」ウーン
川内「あ、うん……そう、かもね」
暁「でも、明日の朝は朝ごはんの準備があるから駄目ね。明日、長門さんと相談して暁も一緒に練習できる日を作ってもらうわ!」
78 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/24(日) 23:00:02.29 ID:1m+de9zfo
川内「……」
暁「川内さん? どうしたの?」
川内「あのさ、暁……I提督、って、知ってる?」
暁「I提督……?」
川内「……」
暁「うーん……」クビカシゲ
川内「……」
暁「ごめんなさい、I提督って人のこと、暁は知らないわ」
川内「知らない……?」
暁「うん、初めて聞いた名前だから……川内さんの知ってる人?」
川内「……いや、いいよ、忘れて。変なこと言ってごめんね」
暁「?」
川内(そうだよね、知ってるわけないか……ここへ来たときに暁から『初めまして』って言われたときにわかってたはずなのに)
川内(でも、暁を見ていると、どうしてもあの暁を思い出すのはなんでなんだろう……)
川内「とにかく、私はそろそろ行ってくるね。暁は明日の朝早いんでしょ? 早く寝なよ?」
79 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/24(日) 23:00:46.17 ID:1m+de9zfo
暁「わかったわ! 川内さんも気を付けて、いってらっしゃい!」
川内「……っ! う、うん、行ってくるよ!」タッ
川内(……あの『いってらっしゃい』の言い方、I提督に似すぎてるよ……)
川内(でも、あの暁は……別人、なんだよね)
暁「? あんなに慌てて、何かあったのかしら」
暁「それにしても……I提督って誰なんだろう」
暁「I……提督……」
ズキッ
暁「ぐっ……!?」ヨロッ
暁「な、なに……!? あ、頭がぁ……!」ズキズキズキ
暁「く……う……っ!!」ズキーッ
暁「……っは、はぁ、はぁ……!」ガクッ
暁「な、なんだったの、今の……」フラフラ
暁「あれ? 私、何の話をしてたんだっけ……さっき川内さんと……うーん?」
暁「いけない! 明日早起きしないといけないんだったわ!」タッ
80 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/24(日) 23:01:31.14 ID:1m+de9zfo
* X提督鎮守府 執務室 *
X提督「I提督鎮守府の近海から、暁の艤装の一部が見つかったんだ」
ヴェールヌイ「そ、それは確実なのか……!?」
X提督「その艤装から装備妖精たちを救助できた。その妖精たちが、かつてI提督の元で働いていたと、話しているそうだよ」
ヴェールヌイ「……!」
X提督「……妖精の話によると、暁はI提督の尋常ならざる姿を見て狂乱し、そのまま鎮守府を飛び出して戦闘に突入したらしい」
X提督「暁の取り乱しようは尋常じゃなく、妖精さんが声を張り上げても、とても聞き入れられる状態でもなく……」
X提督「パニックに陥ったまま、暁は敵陣を突っ切っていったそうだ」
X提督「響が言っていた当時の状況と合致してるね」
ヴェールヌイ「……」コク
X提督「その後、衰弱した暁が波にのまれ、装備妖精たちは破損した艤装と一緒に海に放り出され……」
X提督「そのまま暁とはぐれて海を彷徨うことになってしまったそうだ」
ヴェールヌイ「……」ウツムキ
X提督「……響」
ヴェールヌイ「司令官……大丈夫」
X提督「……」
81 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/24(日) 23:02:15.93 ID:1m+de9zfo
ヴェールヌイ「暁が……深海棲艦に殺されていないことがわかっただけでも……」ボウシオサエ
X提督「……僕たちのもとへ届いた情報は以上だ」
X提督「暁が沈んだと思われる場所の捜索を、かつてI提督のもとにいた艦娘たちが行っているそうだけど、その捜索もじきに打ち切られるだろう」
ヴェールヌイ「……」グッ
X提督「……」
ヴェールヌイ「……I提督が」ボソッ
X提督「……」
ヴェールヌイ「I提督が、連れて行ったのかな……翔鶴さんと、一緒に」
ヴェールヌイ「あの人、意外と……寂しがりやだったから、ね」
X提督「……」
ヴェールヌイ「……」 クル スタスタ…
ヴェールヌイ「……仕方ない人だなあ……」
チャッ パタン(執務室を出ていくヴェールヌイ)
X提督「……響……」
82 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/24(日) 23:03:03.87 ID:1m+de9zfo
* それからしばらく後のある日 墓場島鎮守府 廊下 *
朧「あ、提督。少しいいですか?」
提督「ん? なんだ?」
朧「提督は、この島に来た艦娘に、生きるか死ぬかを聞いてますよね」
提督「ああ」
朧「あれって、何かの本の影響ですか?」
提督「本?」
朧「お腹の胎児に、生まれてきたいかそうじゃないかを聞く下りがあって……」
提督「……ああ、もしかしてあれか。まあ、影響受けてなくもねえけど、きっかけはそれじゃねえな、それを読むより前の話だ」
朧「違うんですか……」ウーン
提督「どっから話しゃあいいかな……学生の頃、いじめられてたやつを助けたことがあったんだよ」
朧「え? 提督が、ですか……?」
提督「結果的に、だがな。そもそも助けようと思って助けたわけじゃねえ」
朧「? ……よくわからないです」
83 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/24(日) 23:03:45.24 ID:1m+de9zfo
提督「あの時俺は、いかにもないじめられっ子が、5対1で囲まれてたのを、ただ見てただけなんだ」
提督「そしたら、5人組が俺に何見てんだよ、って突っかかってきて……」
提督「ただ、俺も悪い意味で有名人だったんで、そいつらは結局、俺の悪口言うだけ言って逃げてったんだ」
朧「逃げた? 提督、やっぱり喧嘩が強かったんですか?」
提督「それなりにな」
朧「5対1で逃げられるなんて、それなりってレベルじゃないと思うんですけど……」
提督「5人組もそこまで強そうじゃなかったからな。ちょっとイキってただけの連中だ、腕っぷしで負ける要素はなかったな」
提督「まあとにかくだ、結果的にはそれでいじめっ子を追い払ったんだが、それがまずかったんだろうな……そいつ、結局自殺したんだよ」
朧「ええっ!? どうしてですか!?」
提督「俺と仲が良いなんて噂が立って、そいつが孤立しちまったんだ。そのくらい嫌われてたんだよ、俺は」
提督「正直、俺としてもその噂は面白くねえ。そういう噂が流れて暫くしてから、そいつに言われたんだ」
提督「なんであの時、俺を助けた。俺は助けてなんて言ってない、ってな」
朧「!!」
84 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/24(日) 23:04:31.29 ID:1m+de9zfo
提督「俺だって最初から助けるつもりであの場所にいたわけでもねえし、助けたつもりもねえ。そいつのことは、本当にどうでも良かった」
提督「だから俺も、助けたつもりはない、あいつらが勝手に怯えて逃げてっただけだ、ってそいつに言って、それで終わりにしたんだ」
提督「それで、そいつと俺に繋がりがないってことが知れ渡って、結局またいじめられて。それでそいつはビルの上からサヨウナラ、と」
朧「……」
提督「教師どもはその責を俺に押し付けようとしたんだが、この時ばかりは親が出てきて弁護士呼んじまった。だから俺は全然喋ってねえ」
朧「……いじめてた人たちはどうなったんですか」
提督「知らねえな。興味もねえ」
朧「朧は、そういう人たち、許せないです……! 提督、どうにかできなかったんですか?」
提督「そういうふうに義憤にかられることも昔はあったけどな。もう諦めちまった」
朧「諦めた、って!?」
提督「だってなあ、いじめられるよりも、妖精とお話しできちゃう気狂いの仲間に見られる方が嫌だ、って言われてるんだぜ」
朧「……っ!」
提督「俺が誰かの味方になること自体、望まれても許されてもねえんだ。俺が善意で動いても拒絶されて終わりさ」
提督「だから諦めた。本当に俺に向かって、助けて欲しいと言われない限り、手も口も出すのを諦めた。それだけの話だ」
朧「提督……」
85 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/24(日) 23:05:15.89 ID:1m+de9zfo
提督「……如月のときも、体中傷だらけでひどい有様だった。いっそ死んでしまったほうが楽なんじゃねえか、って思いもしたんだ」
提督「助けてやろうと俺から言わなかったのも、助けを望んでないならただのお節介、有難迷惑にしかならねえからだ」
提督「あいつみたいに、助けて欲しいなんて言ってない、なんて言われたくなかったからな……いっそ介錯してやろうかとも考えたくらいだ」
朧「……」
提督「だが、如月は、助けて欲しいと言った」
提督「どうせ死ぬなら、この世界の嫌なものを一つでも消して、少しでも自己満足を満たしてから死にたかったからな。刺し違えるのも悪くねえ」
提督「……でも、よく考えたら、俺もとんでもねえ卑怯者だな」
朧「ど、どうしてですか!?」
提督「だってなあ、生きたいか死にたいか聞いて、わざわざ言質取ってんだぞ? 自分が責任を取りたくねえ教師どもと同じじゃねえか」
朧「っ……そんなことないです! 朧は、いつもそうやって、自分のことを悪く言う提督はキライです!」ガシッ
提督「!」
朧「提督は、いつも朧たちの味方になってくれるじゃないですか! それこそ提督が悪者になることもいとわずに!」
朧「提督は、何も悪いことをしていないのに、そこにいるだけで悪者にされてきただけです!」
朧「提督は、悪い人なんかじゃありません!」
86 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/24(日) 23:06:01.18 ID:1m+de9zfo
提督「……」
朧「……」
提督「そういうことにしとくか……また頭突き貰いたくねえしな」
朧「もう……! 提督はどうしてそう一言多いんですか!」
提督「しょうがねえだろ、俺が生きてていいのか、未だに疑ってるくらいだからな」
提督「でもまあ、朧にそこまで言ってもらえるんなら、悪くはねえか」ナデ
朧「提督……」
提督「! 朧、この本……」
朧「あ……」
提督「ああ、こいつか。これ書いたの、芥川龍之介だったか」ペラペラ
朧「読んだことあるんですか!?」
提督「だいぶうろ覚えだけどな」
朧「そうですか……!」パァ
提督「?」
朧「あの、提督は、ほかにどんな本を読んでたんですか?」
提督「いや、もうタイトルとか作者とか、殆ど覚えてねえんだけどなあ……」
朧「どんな話でした? 教えてください!」
提督「んーとな……」
87 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/24(日) 23:06:45.95 ID:1m+de9zfo
* その日のお八つ時 食堂 *
霞「って言う話を立ち聞きしたんだけど」
摩耶「あいつ、尋常じゃねえ嫌われ方してたんだな」
霧島「……司令も、肯定してもらえない苦しみを理解しておいでだったんですね」
陸奥「っていうか、よくそれで生活できていたわよね……」
利根「それは妖精さんたちのおかげであろうな」
潮「……」
潮(朧ちゃん、提督のこと好きだよね……?)
潮(それに加えて、その提督が読書仲間で嬉しいんだろうなあ……)
潮「うふふふ……」ニコニコー
摩耶「お、おい、潮?」
霞「あんた、なににやにやしてんの?」
潮「ふえっ!? あ、いえ、提督も、穏やかになったんですね、って! 思っただけです!」アセアセ
霞「穏やか……まあ、そうね。一昔前なら朧も追い払われてたんじゃない? 素直になったと思うわよ」
88 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/24(日) 23:07:46.11 ID:1m+de9zfo
摩耶「アタシは霞の素直っぷりにも驚いてんだけどなあ……」
霞「私も諦めてるだけよ。あいつに何を言ったって、どうせ蛙の面に水なんだもの」
利根「面倒臭いと常々言っておきながら、やるべき仕事はきっちりやっておるからの。叱責するにも責がないのではな」
摩耶「それで大和さんにもモテて、ってか。けっ、完璧すぎて面白くねーな」
利根「いやいや、あの性格だぞ? 自力で立ち上がれない者にすら容赦ない物言いじゃ、周囲の顰蹙を買うこともままある」
陸奥「それに、提督は結婚願望ないわよ? それこそ大和みたいに提督が好きな艦娘たちにとっては、報われようがなくて不憫なんだけど」
霧島「……金剛お姉様も厄介な人に目を付けたんですね……」
陸奥「そうね……懲りないながら楽しそうだけど」
潮「……あ、それから、提督は泳げないですよね」
摩耶「ぶっ! マジかよ、だっせえな」
霞「あまりそういうこと言わないでくれる」ギロリ
摩耶「!?」ビクッ
潮「あ、あはは……えっと、あと、絵をかくのも苦手みたいです」
摩耶「ふーん。なーんか、つついてもしょうがねえ欠点だなあ……」
89 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/24(日) 23:08:32.64 ID:1m+de9zfo
霧島「摩耶。あなた、司令のことを調べてどうする気なの?」
摩耶「だってあいつ、生意気じゃないっすか。ああいう天狗になってる奴は、一回何かで勝負して、鼻をへし折ってやんねーと!」
潮「天狗……?」
陸奥「天狗になってるところ、あったかしら」
利根「むしろ自分を卑下してばかりじゃろう……?」
潮「態度は悪いですけど、自分は間違ってない、って自負してるから、あんな感じなんですよね」
摩耶「それこそ自惚れじゃねーか?」」
霞「っていうか、多分勝負とか挑んでも意味ないわよ。あいつ、絶対『面倒臭いから全部負けでいい』って言うから」
利根「あり得るな」
陸奥「間違いなく言いそうね」
潮「か、簡単に想像できちゃいますね……」
摩耶「はぁ!? 腰抜けかよ!」
霞「あいつに何を言ってもいいけど、やる気にさせる言葉なんてないわよ。できてたら私が言ってるわ」
陸奥「なんていうか、霞が言うと説得力があるわね」
90 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/24(日) 23:09:31.09 ID:1m+de9zfo
摩耶「……くそっ、なんとかあいつをぎゃふんと言わせる方法はねえのかよ!」
霞「案外、言うんじゃない?」
陸奥「頼めば言ってくれそうよね、ぎゃふんの一言くらいは」
摩耶「意味ねえええ!」
霧島「摩耶、どうしてあなたはそこまで司令に突っかかるの?」
摩耶「あいつの態度が気に入らねーんすよ!」
潮「そ、それは、多分、直らないと思います……」
霞「そうね、私もそれは諦めたほうがいいと思うわ」
利根「むしろ、これまで鎮守府で起こったトラブルを収めてきたのは、あの性格あってのことではないか?」
陸奥「だとしたら直しようがないわね……」
摩耶「……」
霧島「摩耶、やめておきましょう?」
摩耶「納得いかねえっすよ……」ガックリ
91 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/24(日) 23:10:16.09 ID:1m+de9zfo
* 数日後 食堂 *
霧島「あー、あー、ワン、ツー。テス、テス」
提督「ん、マイクのテストか」
霧島「はい! 司令もお使いになるでしょうから、テストにお付き合いください。マイクに向かって一言どうぞ」
提督「そうだな……なんて言えばいい?」
霧島「……!」ピーン
霧島「ぎゃふん、でお願いします」
提督「ぎゃふん」
霧島「……」
提督「これでいいのか?」
霧島「ほ、本当に言うんですね……」
提督「お前がお願いしますって言ったんじゃねーか」
金剛「テートクゥゥ! 次は『金剛愛してる』って shout してくだサーイ!」
提督「面倒臭え」
金剛「Whaaaaaaaaaaaat's !?」
92 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/24(日) 23:14:42.05 ID:1m+de9zfo
今回はここまで。
動画サイトから来た人が多くてびっくりです。影響力でかいのですね……。
ただ、あちらは続きが投下されてないせいで、
検索履歴に「墓場島鎮守府5」が出てきてるのが、なんと言いましょうか。
日常編はもう少し続きます。
93 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/05/25(月) 18:35:11.34 ID:Yw732zD90
芥川龍之介の河童かなと思ってたら
芥川って名前が出てきて確信、作者さんは本好きね
あれ、語り手が最後精神病院に押し込められているっていうオチも
なんというか色々考えさせられる話なんよね
いつも楽しみによんでおります、次回更新もお待ちしております
94 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/05/26(火) 03:23:06.50 ID:1TRHKKLb0
楽しみにしてます。体には気を付けて
95 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/05/27(水) 22:22:46.31 ID:dhzCxVljO
お疲れ様です。
続き待ってます!
96 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/06/02(火) 00:26:27.52 ID:XpGC+EfY0
最高っす
97 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/06/04(木) 22:29:44.42 ID:kqphyG/co
最後の書き込みのときだけ上げるので
普段はできるだけsage進行でお願いしますね。
続きです。
98 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/06/04(木) 22:30:34.44 ID:kqphyG/co
* 二週間後 執務室 *
(廊下からかけてくる足音)
タタタタ…
タンッ!
クルクルクル…
那珂「提督さぁぁぁん!」スターン!
那珂「素敵なステージをありがとーーー!」シャラーーン!
提督「……あぁ?」ギロリ
那珂「ヒィィ!?」ビクッ
不知火「申し訳ありません、丁度望ましくないニュースを司令にお伝えしたばかりだったので」
那珂「そ、そうなんだ……そういうことならしょうがないけど……」
提督「そういや今日がお披露目だったな。まあ、普通なら盛大に祝ってやるところなんだろうが……!」
提督「ったくよぉ……本っ当に、人間ってやつは訳がわかんねえ!!」
那珂「……な、何があったの?」
不知火「黒潮がいた鎮守府の保提督が、自首したんです。よりによって、警察に」
那珂「え?」
99 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/06/04(木) 22:31:17.71 ID:kqphyG/co
不知火「当然、鎮守府にも関係者にも警察の捜査の手が回ります。保提督は、そうなるようにこっそりと警察に連絡を入れたそうです」
不知火「海軍も突然のスキャンダルの火消しに躍起になっていますが、一番ダメージが大きいのは現政権でしょう」
那珂「な、なんで?」
提督「保提督は部下の艦娘に売春させようとしたんだよ」
那珂「んいっ!?」
提督「その売った相手が与党議員の息子だって話だ。そいつらから艦娘を助けたのが保提督の部下だった黒潮だ」
提督「先月の黒い雲の話も知ってるな? あれを引き起こしたのが、その売られかけた艦娘の一人、雪風だ」
提督「羅針盤を無視して黒潮を探し回ってる間に、空母棲姫に因縁付けられてああなった」
提督「黒潮は、保提督鎮守府の陽炎型の一番上、まとめ役だったからな。妹が心配なのはどの艦娘も一緒だろう」
那珂「……う、うん、それはそうだよね。那珂ちゃんも、神通ちゃんにいっぱい心配してもらったし……」
提督「不知火も中将んとことの行き来がある。寂しい思いはさせたかねえんだが、こればっかりはな」
提督「ともかくだ、保提督が自首したっつうのも突然の話でなあ……残った連中のことは考えてねえのかよ」
不知火「いえ、保提督は既に余所の鎮守府へ、艦娘の異動を打診していたそうです」
不知火「この鎮守府への異動は認められませんでしたが」
提督「……問題起こすか、轟沈するか。素行か縁起の悪い艦娘以外、こっちには着任させたくねえってか」ケッ
100 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/06/04(木) 22:32:03.33 ID:kqphyG/co
提督「くだんの雪風ならと思ったが、そっちも異動済みだって話だしな。まったくもってままならねえぜ、くそっ」
提督「黒潮も最近は飲まず食わずでやつれてきてるしな。我慢を強いるのも限界だって時に、事態が悪化したんじゃどうなるかわかんねーぞ」
不知火「……」
那珂「……保提督はどうするつもりなのかな」
不知火「可能な限り重い罪状で、刑に服すことを望んでいるようです」
那珂「反省してる、ってこと……?」
不知火「それもありますが、共犯だった相手……自分を脅し続けた三人に重い罰を与えるのも狙いのようです」
提督「いじめられっ子の最後の抵抗、ってとこか? 遅きに失した感はあるがな……今更なんで考えが変わったのか、さっぱりだぜ」
那珂「……」
提督「だがまあ悪い話ばかりじゃねえな。艦娘に手を出して重い罪が課せられるようになるなら、以後に対する多少の抑止力にはなってくれるか」
那珂「……そんなの、悲しすぎるよ。私たちは、人を信じて戦ってるのに……!」
提督「人間なんてそんなもんだ。自分の立場が悪くなりゃあ、ころっと手のひら返して裏切るなんてよくある話だろ」
那珂「で、でも! そんなこと言ったら……提督さんも、なの……?」
提督「当然、俺も含めてだ。むしろ俺みたいなやつが一番信用できねえだろ」
不知火「……」ジロリ
那珂(不知火ちゃんの提督さんを見る目つきが怖い!)ビクッ
101 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/06/04(木) 22:32:47.85 ID:kqphyG/co
如月「ふぅ〜ん……?」
那珂「!?」フリムキ
如月「司令官ったら……懲りずにまだそんなことを言うの?」ユラァ
那珂「!?」ビクビクッ
妖精「提督は、ちょっと目を離すとすぐにこうだもんね」ヒョコッ
提督「妖精……お前、如月に知らせたのかよ」
如月「あら、そこで妖精さんを咎めるのは違うんじゃないかしら?」ツカツカ
ガシッ (提督の顔を両手で挟むように掴む如月)
如月「司令官? あなたこそ、できもしないことを嘯くの、やめてくださいます?」
提督「むぐ……」
如月「嫌われたほうが、いなくなった時に誰も悲しませずに済む、とか、考えてるんでしょう?」
提督「……」
如月「そういうの、如月は許さないんだから」ズイ
如月「たとえあなたが地獄に逃げても、如月はどこまでもお傍にいますから……ね?」ニコォ
提督「……」タラリ
那珂(如月ちゃん、提督さんに鼻がくっつくくらい顔を近づけてる……)ドキドキ
102 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/06/04(木) 22:33:35.05 ID:kqphyG/co
如月「そういうわけだから」パッ
(如月が人差し指を立てて提督の口に押し当てる)
如月「あまり死ぬ死ぬ詐欺みたいなこと、言わないでくださいね?」
提督「……」
不知火「不知火も同意見です、司令。ご自身の命を軽視する発言は控えるべきかと」
提督「……仕方ねえな……くそ」アタマガリガリ
那珂(提督さんから深海棲艦みたいな雰囲気を感じたのは、こういう破滅的な性格のせいなのかなあ)ウーン
コンコン
山城「ドアも開けっ放しで何してるのよ」
那珂「あっ、山城ちゃん!」
提督「いろいろ報告受けてただけだよ」
山城「ふーん。駆逐艦に迫られるのが報告なの?」
提督「別に迫られてもいねえよ」
山城「ああ、そう。とにかく、報告中ってことなら、私も便乗させてもらうわ」ショルイサシダシ
提督「? こいつは……」
不知火「演習の申込書、ですか」
103 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/06/04(木) 22:34:17.36 ID:kqphyG/co
山城「補給物資の荷物の中に入ってたわ。それじゃ、私は荷下ろしに戻るから」
提督「……おい」
山城「なによ」
提督「食堂のステージが完成したぞ」
山城「……本当!?」パァァ
提督「良かったな那珂。めちゃくちゃ喜んでる奴がいるぞ」ニヤリ
那珂「……はいっ!!」
山城「っ……!! と、とにかく、私は戻りますから!」イソイソ
不知火「山城さん、満面の笑みでしたね」
如月「那珂ちゃんが発声練習してると、聞きに行きたくてそわそわしてたものね」
那珂「そっか……じゃあ、頑張ってみんなを元気にしてあげないとねっ!」
如月「うふふ、楽しみにしてますね」
不知火「さすがに気分が高揚します」
那珂「なんで加賀さん!?」
104 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/06/04(木) 22:35:02.20 ID:kqphyG/co
提督「まあいいや、はしゃぎすぎて怪我だけすんなよ」
那珂「はいっ! 気を付けまーす!」
提督「で、3日後の13時半からだっけか?」ガサガサ ペラリ
那珂「はいっ! 明後日はリハーサルでーす!」
提督「……」マユヒソメ
如月「えっ、その顔……どうしたの!?」
提督「タイミング悪いな……どうしてそうくるかね」ハァ
提督「那珂。悪いがお前の初ライブ、一日見合わせろ」
那珂「ええええええええええええええ!?」
提督「どうしてライブ予定の日に演習なんかぶっ込んでくんだよ、くそが……」
不知火「……」アタマオサエ
如月(山城さんが持ってきたから、っていうのは山城さんが可哀想よね……)
* 埠頭 *
山城「へっっぢん!」
ガッ
山城「……っっ!!」プルプル
電「山城さん!? どうしたのです!?」
神通「くしゃみした反動で脛を箱に打ち付けたみたいです……」
電「弁慶の泣き所ですか……」
105 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/06/04(木) 22:35:47.33 ID:kqphyG/co
* 3日後 墓場島鎮守府 埠頭 *
電「し、司令官さん? この人たちが演習の相手なのですか?」
提督「だとよ……」ピキピキ
仁提督「よぉ、久しいな准尉! あの日のリベンジをさせてもらうぜ!」ガハハハ
提督「帰れ」
電「!?」
仁提督「おい!?」
提督「ったくよぉ……仰々しい書類が来たから、ちったあ神妙に受けるかと思ったら、どこぞの戦艦馬鹿じゃねーか……」
仁提督「言うに事欠いて馬鹿とはなんだ貴様! 目上の相手に対する言葉か!」
提督「褒めてんだよ、一応」
仁提督「そんな褒め言葉があるか! とってつけたような言い訳をするな!」
提督「とりあえず適当に相手するから終わったらとっとと帰れ。あと大和はやんねーぞ」
仁提督「ふん、お前のところの大和なんぞこっちから願い下げだ」
仁提督「本営で噂になってたぞ、この島の大和はお前の狂信者だってな」
電「あー……」
提督「狂信者、ねえ……」
106 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/06/04(木) 22:36:32.08 ID:kqphyG/co
仁提督「世話になっている少将も身をもって経験済みだし、何よりあの中佐が大怪我をしたと聞いているからな。反論しようと思ってても無駄だぞ」
提督「いや、別に反論なんかねえよ」
仁提督「ないのかよ!?」
提督「よろしくねえ評判が立ったなら、この島に近づこうとするやつも減るだろうしな。願ってもねえ」
仁提督「どこまでも厭世的な奴だな……」
提督「とにかく、さっさと演習して……」
仁提督「まあ待て、慌てるな。その前にだ、あの丘の上の艤装がこの島に流れ着いた艦娘の墓標だな?」
提督「ん? あ、ああ」
仁提督「実をいうと演習はついででな。この島に連れてきたい奴らがいて、貴様に演習を申し込んだんだ」
提督「なんだそりゃ」
仁提督「金剛! 連れてこい!」
仁金剛「イエース!」
ゾロゾロ
電「!!」
107 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/06/04(木) 22:37:17.67 ID:kqphyG/co
仁提督「まあ、今回の演習にも参加してもらうんだが……」
提督「こいつら……駆逐艦か!?」
仁提督「ああ。陽炎型の萩風、嵐、それから雪風だ」
提督「ゆき……っ!?」
仁提督「あの日、貴様から話を聞いた後、本営に駆逐艦を寄越せと掛け合ってな。それなら、と言って連れてきたのがこの件の雪風だ」
雪風「……」ウツムキ
提督「あ、あの雪風か!? 空母棲姫に追われてた!」
仁提督「ああそうだ。腹の立つことに、その空母棲姫の邀撃が済んで、用がなくなったからと俺に引き合わせてきたんだよ」
仁提督「俺が必要にしていたからいいものの、あいつらは本当になんとも思ってなくて俺ですら絶句したほどだ」
提督「……」
仁提督「それから、保提督だったか? この雪風が元いた鎮守府の提督にも、挨拶と説教をしに行ってきた」
仁提督「そこで雪風を引き取ったことを伝えたら、この二人も引き取ってほしいと頼まれてな」
仁提督「何か思うことがあったのかと思ったら、あの自首騒ぎだ。もしかしたら、俺が雪風を引き取ったのが引き金だったのかもしれん」
提督「……」
108 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/06/04(木) 22:38:02.46 ID:kqphyG/co
仁提督「でだ、黒潮が流れ着いたというこの島に来ていたのも何かの縁だ、演習という形で連れて行けば文句もないだろうと思ってな!」
雪風「し、しれぇ……」
仁提督「なんだ?」
雪風「こ、この人が……黒潮お姉ちゃんを……」
仁提督「ああ、そうだ。この島に流れ着いた黒潮を埋葬したんだ」
仁提督「そういうわけで、この島に来たのは墓参りが目的だ。准尉! 案内しろ!」
提督「……」アッケ
電「し、司令官さん!」
提督「ん、おお……仁提督はちょっと待ってろ。電、ちょっと来い」
電「は、はい!」
提督「いいか? ごにょごにょ……」
電「! わ、わかったのです! 電、すぐに行ってくるのです!」タッ!
提督「頼んだぜ。……さて、待たせたな」
109 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/06/04(木) 22:38:50.29 ID:kqphyG/co
* 丘の上 *
萩風「轟沈した艦娘が、こんなにたくさん……」
仁提督「……改めて見ると、なんとも言えん光景だな」
嵐「こん中に、黒潮姉が……」
雪風「お姉ちゃん……!」グスッ
提督「……」
神通「提督……こちらの皆さんはどうなさったんですか?」
提督「仁提督が、保提督んとこの陽炎型を引き取ったんで、この島に連れてきたんだとよ」
神通「え? それでは、どうしてこちらに?」
提督「案内しろっつうから案内してやっただけだが?」ニヤリ
神通「……」アタマオサエ
提督「しょうがねえだろ、あんなツラしたまま引き会わせるわけにはいかねえ」
神通「提督、それだけじゃないでしょう?」
提督「まあな。百聞は一見にしかずってやつだ」
110 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/06/04(木) 22:39:34.82 ID:kqphyG/co
萩風「……あ、あのぉ、何の話なんでしょう?」
提督「ん? 気にすんな。それより、そろそろ来るかと思ってんだが」
ドドドドドド…
提督「うん?」
嵐「なんだこの音?」
仁提督「なんだあの土煙は……」
白露「いっちばーん!」ドドドドドド
島風「はっやーい!!」ドドドドドド
白露と島風に手を引っ張られる黒潮「ちょっ、待ちい!! 腕が抜ける! 腕がーー!」グリングリン
電「み、みんな待って欲しいのですーー!」
提督「なにやってんだ、あいつらは……」アタマオサエ
白露&島風「とうちゃーく!!」キキーーッ
黒潮「ぜぇ、ぜぇ……うぷっ、気持ち悪……」オメメグルグル
提督「お前らなあ……連れてくるにももう少し加減ってもんがあるだろうが」
島風「えー!? 黒潮が全速力で、って言ったんだよー?」
111 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/06/04(木) 22:40:32.34 ID:kqphyG/co
白露「いっちばん速く、って言われたんだもの、手を抜くわけにはいかないでしょ?」
提督「だからって黒潮がこれじゃ意味ねえだろが」
黒潮「ほげぇ……」グロッキー
萩風「あ、あの、提督准尉……?」
提督「おう、紹介が遅れたな。こいつらは島風と白露、もと仁提督鎮守府にいた駆逐艦だ」ニヤリ
仁提督「……っ!」
提督「で、知ってると思うがこいつが黒潮だ。もと、保提督鎮守府の、な」ニヤニヤ
仁提督「なにぃ!?」
萩風「……!」
嵐「ってことは……!」
仁提督「准尉! 貴様、言っていい冗談と悪い冗談があるぞ!!」
提督「冗談? 俺は黒潮が沈んだとも埋葬したとも、一言も言ってねえぞ?」
提督「あんたが勝手にそう思い込んで、勝手に勘違いしただけじゃねーか」ニヤリ
仁提督「貴様……どこまで俺たちをコケにすれば……!!」
提督「あん時ゃ俺はあんたを信用してなかったんだ。下手なこと言って黒潮連れ去られて解体になったら元も子もねえからな」
112 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/06/04(木) 22:41:17.55 ID:kqphyG/co
雪風「ほ、本当に……黒潮、お姉ちゃん、なんですか?」
黒潮「……お」
提督「お?」
黒潮「おえええええ……」
雪風「」
萩風「」
嵐「」
仁提督「」
神通「」アタマカカエ
電「」アタマカカエ
提督「おい……白露、島風……!」ユラリ
白露「ご、ごめんなさーい!」ダッ
島風「あっ、白露待って!」ダッ
提督「くそが……あいつら後でお仕置きだ」
113 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/06/04(木) 22:42:03.07 ID:kqphyG/co
電「黒潮ちゃん、しっかりするのです」セナカサスリ
神通「お水です。これで口を漱いでください」スイトウトリダシ
黒潮「お、おおきに……」
神通「まともに食事を摂っていなかったせいで、胃液も出なかったようですね」
電「弱ってるのに無理矢理引っ張られたら、こうなるのも無理はないのです……」
提督「まったく、顔だけでも洗ってこさせろって指示したのに、あいつらのせいで台無しじゃねーか」
嵐「つ、つうか准尉さんよぉ、わざわざ俺たちをここに連れて来なくても良かったんじゃ……!?」
提督「こういう場所だって言う説明を省くのと、まあ、時間潰しだな。女の身支度は時間がかかるだろ」
仁提督「回りくどい真似を……!」
雪風「……お姉、ちゃん、なんですよね……!?」
黒潮「!」
雪風「お姉ちゃああああん!!」ダッ
黒潮「雪風……!!」
萩風「姉さん!」ダッ
嵐「姉貴!」ダッ
黒潮「……ほんまに、来たんや……来てくれたんやな……!」ダキヨセ
114 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/06/04(木) 22:42:47.53 ID:kqphyG/co
仁提督「……」
電「良かったのです……!」ホロリ
神通「ええ……!」
提督「……やれやれ。おい、仁提督」
仁提督「なんだ」
スッ
提督「保提督鎮守府の艦娘と、我が艦隊の黒潮を引き合わせてくれたこと、感謝申し上げる」ケイレイ
仁提督「……ふん。貴様も、礼くらいは言えるんだな……!」ケイレイ
電「あ、あの! 電からも、お礼を言わせて欲しいのです!」ペコッ
神通「仁提督、ありがとうございました」フカブカ
仁提督「……まあ、いい。連れてきて間違いではなかったってことだな」
提督「神通、黒潮を入れて、今回の相手といい勝負できそうなメンバーを選出してくれ」
神通「はい」
提督「それから電、茶と茶菓子と……そうだな、那珂にも一曲披露してもらうか?」
電「はいなのです!」
115 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/06/04(木) 22:43:32.63 ID:kqphyG/co
* その後、演習中 埠頭 *
ドーン
仁提督「……はしゃぎすぎだ。演習とはいえニコニコしすぎだ」
提督「……で? これが終わったらあいつらは解体すんのか?」
仁提督「チッ……そんな気はない。陽炎型にはこれからもしっかり働いてもらう」
提督「どうだか」
仁提督「貴様もいちいち癇に障る男だな……」
提督「へっ、人間なんてそう簡単に根っこは変わらねえよ」
仁提督「それこそどうだかな。良くも悪くも変化のない人間なぞおらん。言うことがころころ変わる奴だって少なくなかろう」
提督「……」
仁提督「なんだその目は」
提督「その理屈だと、あんたも変わったってのか? 随分都合がいいもんだ」
仁提督「……ああ、都合よく思い出しちまったんだよ。初めて雪風に会ったときに、ユキマル……俺が飼ってた犬のことをな」
仁提督「もともと捨て犬だったんだ。人が怖くてしょうがないって目をしててなあ」
仁提督「雪風も同じ目をしてたもんで、不覚にも情がわいた……ってとこだ。会う前にここで話をしていたから猶更だ」
提督「……」
116 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/06/04(木) 22:44:32.18 ID:kqphyG/co
仁提督「だからといって、雪風たち陽炎型だけを贔屓するわけにもいかん。鎮守府に戻ったら、遠征専門だった睦月型も演習に出撃させる」
仁提督「足止めを食らっているのも駆逐艦でないと突破できない北方海域だからな。戦術の見直しに丁度いい」
仁提督「そういう評価を怠って駆逐艦の間で対立が起こっても面白くない。どうもあのくらいの年齢の女児の相手は、苦手だ」
提督「ああ……」
仁提督「それに……そもそも水雷戦隊なんて俺の柄じゃないんだが。あまり気乗りせん」
提督「ふん、駆逐艦舐めてると痛い目見るぞ」
仁提督「そうか?」
ドーン
仁提督「! あいつ……金剛の砲撃を避けたのか?」
提督「ああいう速さってのは、戦艦にはない駆逐艦の強みだよな。回避力ってのは馬鹿にできねえぞ」
提督「被弾が少なきゃ中破も減る、進軍もできるし修理にかかる素材も節約できる」
提督「戦艦並べて長距離高火力で相手に何もさせずに殲滅ってのは確かに安全だが、潤沢な資材が必須条件だ」
提督「懐事情の厳しい俺たちには、これも必要な戦法だと思うが?」
117 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/06/04(木) 22:45:17.07 ID:kqphyG/co
仁提督「……そうだな、考えてやってもいい。だが、俺が一番信頼しているのは戦艦たちだ」
仁提督「俺はあいつらを主力から外すつもりはないぞ」
提督「……ふん、そうかい。そう決めたんなら、それでいいんじゃねえの」
仁提督「ったく……貴様の大和がああでなければ、うちの主力として戦線を切り開いてもらいたかったんだがな」
提督「ま、運良く建造できても、今のあんたの立場じゃあ、活躍させる前にお上に寄越せって言われるかもな」
仁提督「……ぐぬ……」
提督「そろそろ決着がつきそうだな」
仁提督「……」
提督「……」
ドカーン
提督「あ」
仁提督「あ」
118 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/06/04(木) 22:46:02.36 ID:kqphyG/co
* 二時間後 食堂 *
山城「ちょっと提督!? どうして那珂ちゃんのステージが1曲だけなんですか!」
山城「最後に私が被弾して中破したからですか!? ペナルティですか!? ああ、不幸だわ……!!」
提督「あぁ? んなもん関係ねーよ、最初から1曲の予定だったろ。一日前倒しで哨戒任務に出張ってる連中のことを考えろ」
那珂「そーだよー、それに今日の主役は黒潮ちゃんでしょ? ね?」
山城「那珂ちゃん……あなた天使なの?」
那珂「もー、提督さんがそう言ってたでしょー!」
山城「私は聞いてないわ。そもそもこの男がそんなふうに他人を思い遣った台詞を吐くわけないじゃない」
扶桑「山城? 提督は最初から1曲だと仰っていましたよ?」
山城「扶桑お姉様……!」
119 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/06/04(木) 22:46:47.66 ID:kqphyG/co
扶桑「あまり提督を困らせてはいけませんよ。めっ!」
山城「」ズギューン
那珂「そうだよー! 山城ちゃん、めっ! だからね!」
山城「」ズギューン
山城「」
山城「」
山城「尊い……!」ドシャァ
扶桑「山城っ!? なんで倒れるの!?」
那珂「山城ちゃん!? 女の子がしちゃいけない顔してるよ!? 山城ちゃーん!!」
霧島「司令、なんで山城さんが倒れているんですか?」
提督「知らん。それよりどうだった、今回のステージは」
霧島「少人数でも観客がいる状態ですと、音の響き具合も違いますね。それから厨房にも結構響いてましたので、調理にも影響が出そうです」
霧島「厨房に音がいかないように、スピーカーの設置場所を調整したほうが良いかと。この食堂を囲むように設置しても良いかもしれません」
提督「スピーカーを分散させるのか」
霧島「はい。明日の朝に少し調整してみますね」
120 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/06/04(木) 22:47:35.26 ID:kqphyG/co
提督「おう、任せるぜ。それから……」チラッ
霧島「!」
黒潮「雪風、ほんま無事で良かったなあ」ニコニコ
雪風「で、でも……」
黒潮「雪風のせいやないて。なあ」
嵐「けど、姉貴にばっかりつらい思いさせちまって……」
黒潮「そうやって心配してくれてるやんか。みんな同じや」ニコー
萩風「黒潮姉さん……」ウルッ
提督「……まあ、あっちは心配なさそうだな」
霧島「姉妹水入らず、ですね」
提督「で、こっちは……」チラッ
仁提督「なぜだ……なぜお前らはそんなにまともなんだ!?」
長門「そう言われてもな……」
仁金剛「比叡の料理がこんなにおいしいなんて、夢みたいデス……」
121 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/06/04(木) 22:48:17.75 ID:kqphyG/co
比叡「あのう、そちらの私にはちゃんと味見させてますか?」
仁金剛「あ、味見……ッ!?」ズガーン
比叡「そんな衝撃を受けるほどのことなんですか!?」ガビーン
仁提督「比叡もそうだが長門だってそうだ。うちの長門は駆逐艦を見ればだらしない顔をして追いかけ回すし……なんとかならんか!?」
長門「そうだな……一度、駆逐艦を追いかけ回している姿を撮影して、本人に見せてやるのはどうだろうか」
仁提督「むう、それだけで大丈夫だろうか……駆逐艦欠乏症なんて訳の分からんことを言い出しているくらいなんだが」
長門「私個人の体験談だが、ここへ来る前の鎮守府で、強烈な反面教師を目にしているのでな。ビッグセブンとしての自覚を刺激するのも手だ」
長門「それから、欠乏症云々はそちらの長門の詭弁だろうが、それを言わせないためにも、駆逐艦も編成に入れた艦隊運営を考えたほうがいい」
長門「潜水艦がいる海域や、砲撃より雷撃が有効な相手もいる以上、駆逐艦や軽巡の育成をしないのはどうかと思う」
長門「仁提督も見ていただろう、演習の最後に、雪風の雷撃で山城が中破したのを」
仁提督「……あれは単なるラッキーヒットだろう?」
長門「その運を味方にできるのが雪風だ。空母棲姫の騒動は、羅針盤の指示を無視して進軍したイレギュラーな結果だと考えている」
長門「そちらの金剛の砲撃を回避した不知火も陽炎型の駆逐艦だ。金剛も、不知火を駆逐艦と侮ったわけではあるまい?」
仁金剛「イエス、やるからにはテートクに勝利をプレゼントするのが私たちの務めデース」
仁提督「むう……」
122 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/06/04(木) 22:49:02.28 ID:kqphyG/co
提督「……そういや、雪風から本当に羅針盤を無視した結果なのか、確かめてなかったな。きりのいいところで訊いてみるか」
霧島「? 何のお話ですか?」
提督「ああ、そりゃあな……」
タタタタッ
大和「提督! ただいま演習から帰還しました!」ガバーッ
提督「うおっ!?」ダキツカレ
大和「この大和がMVPです! それもこれも提督のおかげです!」ダキシメホオズリ
提督「だっ、だからっていきなり抱き着いてくる奴がいるか!」
金剛「大和ォォ!? 何してるデェェス!!」ウガーッ
如月「金剛さんが変な前例作ったからでしょ!?」
那珂「ちょっ、大和さん、こんなみんながいるところでそんなことまでしちゃダメだよぉぉ!?」
ギャーギャー
仁提督「なんというか……あんな大和は初めて見たぞ。准尉のあの性格でなぜあそこまで慕われてるのか、いまいち解せんが」
仁金剛「ノープロブレム! テートクには私がいマース!」
仁提督「そういう意味じゃなくてだな……」
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