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【艦これ】提督「墓場島鎮守府?」不知火「その3です」
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2 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/03/12(木) 00:54:14.03 ID:Wdzf2wR1o
舞台の「墓場島」について
作中の表記は「××国××島」、通称「墓場島」。太平洋上にあるとある無人島、パラオ泊地が一番近いと思われる。
島の北側には海底火山があり、潮流が強く流れが特殊なため、普通の船舶は近寄れない。
そのためか深海棲艦も寄り付かず、轟沈した艦娘の亡骸がよく島の北東に流れ着いている。
島の北部は火山活動によってできた岩場。西側は手つかずの林に包まれ、小さいながら切り立った崖がある。
島の南から北東にかけては、なだらかな丘陵と砂浜が続いており、島の東側に鎮守府が建てられている。
墓場島と呼ばれるようになった所以は、提督が流れ着いた艦娘を埋葬し、墓標代わりに艤装を並べたことから。
最近では、問題を起こした艦娘を送り込む墓場、という意味に勘違いした海軍から、艦娘を送り付けられている。
艦娘以外の主要な登場人物
・提督
階級は准尉。一般人には見ることすら出来ない妖精と話が出来たせいで
親からも変人扱いされたため、人間嫌いをこじらせる。結構な不幸体質持ち。
中佐の補佐官として海軍に入ったが、無人島の鎮守府に幽閉同然の扱いで着任した。
・中佐(前スレ初登場時は少佐)
戦争は金儲けの道具と考え、中将の威光を傘に暗躍。後に大佐にまで昇進する。
妖精と会話できる提督の存在に危機感を覚え、離島の鎮守府に封じ込めた。
・中将
中佐の父親。有能だったらしいが息子が絡むと駄目になるらしい。
足を悪くしており、本営の自室でデスクワークが日常。
・そのほか、たくさんの『提督』
3 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/03/12(木) 00:56:06.77 ID:Wdzf2wR1o
登場艦娘一覧
如月:試作の新兵器の実験台にされていたところを脱走し大破、島に漂着
不知火:もと少佐の部下。解体前提で如月捜索に駆り出されるが、提督の計らいで中将麾下に
朧、吹雪:捨て艦で轟沈後、島に流れ着く(二人とも別の鎮守府出身)
由良、電:大破進軍で轟沈し、島に流れ着く(同じ鎮守府出身)
神通:慕っていた司令官を謀殺され、その復讐の途中で左遷させられる
大淀:日々の解体任務に疑問を覚えて仕事が手につかなくなり異動してきた
敷波:由良と電の捜索を命じられそのままMIA
明石:提督に帳簿の不正を強いられ、そのまま首犯扱いで雷撃処分
朝潮、霞:提督の不正の内部告発を計画するも逆に犯人扱いされ雷撃処分
暁:信頼していた提督の変貌に錯乱して敵陣特攻し記憶喪失に
初春:捨て艦で轟沈後、暁に助けられ島に漂着
潮、長門:変態の上官に迫られ耐え切れなくなり家出、長門はその護衛
比叡:料理上手なのに認めてもらえずご飯を投げ捨てられて鬱に
古鷹:お人よし過ぎて自分の練度が上がらず観艦式において行かれる
朝雲:観艦式に向かう途中で艦隊を離脱して古鷹を追いかけてきた
利根:司令官の猟奇趣味に巻き込まれ死にかける
ル級:オリョールで毎日毎日潜水艦に小突かれる日々に嫌気がさし脱走
伊8:オリョールに行ったら逃げたル級の代わりの軽巡に轟沈させられる
大和:妖精が提督に内緒で大張り切りで大型建造したら作られた
初雪:艦娘管理ツール使いの提督に昼夜問わずこき使われ失神後漂着
金剛:愛情から目を背ける提督を説得し続け、煙たがられて左遷
五月雨:玉砕覚悟の敵討ちを望むも、仲間を沈めた濡れ衣を着せられて追い出される
榛名、那珂:養成所の訓練と称して轟沈するまで戦わされ島に流れ着く
扶桑、山城:理由もなく疫病神扱いされ、戦況不利な海域に誘導され轟沈する
龍驤:暴食を強要され体形を馬鹿にされ、ブチ切れて鎮守府を火の海に
陸奥:龍驤と同じく暴食を強要され、かつ度重なるセクハラで男性不信に
雲龍:特別海域で艦隊に邂逅できず、餓死寸前だったところを龍驤に保護される
島風:スピードを追い求める姿勢を疎まれて、訓練中に除名される
白露:島風と一緒に特訓するため艤装を改造、同じく訓練中に除名される
黒潮:姉妹艦を人身御供にした司令官にぶち切れて、犯人もろとも海に投げ捨て離反
山雲:ドロップ直後に、黒潮を探す雪風が起こした深海勢に激突される
最上、三隈:最上にベタベタし続けたことに三隈が切れて提督の股間を破壊
摩耶、霧島:理不尽な防戦指示を無視して戦況を好転させたため、提督に激怒される
川内、若葉:夜戦禁止の腰抜け提督の下で輸送部隊の撃破のため夜戦したら馘になった
注:ル級は島の北の離れ小島近辺に住んでいます。この鎮守府所属ではありません。
4 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/03/12(木) 00:56:51.53 ID:Wdzf2wR1o
以上テンプレ。
では本編の続きです。
5 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/03/12(木) 00:57:36.88 ID:Wdzf2wR1o
* その日の夜 *
川内「夜戦だああああああああああ!!」
* 提督の部屋 *
提督「……うるせえ……」ムクッ
提督「ありゃあ川内か? くっそうるせえな……」
提督「……あーくそ、起きて説教しなきゃなんねーか……面倒臭え」
コンコン
提督「!」
チャッ
如月「司令官……?」コソッ
提督「なんだ、お前も川内のアレで目を覚ましたのか?」
如月「え、ええ……司令官も?」
提督「ああ。寝付く前にあんだけ大声上げられちゃあな」ノビーッ
如月(……せっかく私が司令官のベッドに入る日だったのに)ムー
6 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/03/12(木) 00:58:25.57 ID:Wdzf2wR1o
* *
川内「夜だよ、夜! みんな起きてーーー!!」
*
山城「……なんなのよ……」ムクリ
扶桑「うう……ん」フトンカブリ
山城「あの夜戦馬鹿……」ブツクサ
*
長門「なんだ、敵襲か……?」
潮「ん、ふえぇ……?」
陸奥「もう……なんなの……」
*
最上「……うう、なに? なに?」
三隈「もがみん……」ギュー
最上「三隈、寝惚けてないで……なんで抱き着いて離れないのさ」
*
7 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/03/12(木) 00:59:21.88 ID:Wdzf2wR1o
川内「みんなああ! 夜戦の時間だよーーー!!」
*
初雪「すぴー……」
吹雪「初雪ちゃん、よく寝てるなあ……あ、耳栓してる」
*
古鷹「むにゃ……?」
電「……な、なんなのですか?」
暁「うにゅぅ……まだ夜じゃない……」
*
敷波「もー……なんでこーなるかなー」フトンカブリ
朧「ほんとに……」ネガエリ
*
龍驤「ほんっまやかましいやっちゃなあ……!」
雲龍「……」スヤスヤ
龍驤「雲龍はこんなんでも寝てられるんか……」
龍驤「ま、ええわ……二度寝しよ」ポユン
*
8 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/03/12(木) 01:00:06.36 ID:Wdzf2wR1o
川内「夜戦! 夜戦! 待ちに待った夜戦の時間だよーー!!」
*
金剛「Wooo... いい夢を見ていたのに、邪魔されたデース」
榛名「……」スヤァ
霧島「榛名お姉様は意外と眠りが深いんですね……」
比叡「明日の朝ごはんの仕込みがあるんだけどなあ……」ウーン
*
大和「……精神集中、精神集中……心頭滅却すれば……」ブツブツ
*
由良「……ああ、もう……」ゴロゴロ
大淀「……眠れないですね……」ウーン
*
9 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/03/12(木) 01:02:06.48 ID:Wdzf2wR1o
川内「や・せ・ん! 夜戦夜戦! 夜戦だよーーー!!」
*
霞「……予想はできてたけど、予想以上だわ」
朝雲「う〜、うるさいよぉ……」
山雲「ん〜……」ゴロン
朝潮「……」ウツラウツラ ヌギヌギ
霞「朝潮姉!?」
山雲「寝ながら着替えてるわ〜……」
朝雲「だ、大丈夫なの……?」
*
明石「も〜、なんなんですかいったい……」
伊8「……」ムクリ
明石(……目が据わってる……!)ビクッ
10 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/03/12(木) 01:02:51.62 ID:Wdzf2wR1o
* 通用口 *
神通「案の定ですね……」ハァ
初春「まあ、こんなことじゃろうと思っておったがのう……」
若葉「無理もないな」
那珂「夜更かしはお肌に良くないんだけどなあ……」メヲコスリ
利根「なんじゃ、おぬしら起きてきおったか」
神通「利根さんは見回りでしたか」
利根「うむ。摩耶も一緒じゃ」
摩耶「まあ、あたしは来たばっかりだし。こうやって少しでも慣れていかねーとな」
若葉「その手の仕事なら、若葉に任せてくれればいいんだが」
神通「若葉さんには明日から遠征のお仕事がありますよ」
若葉「そうか!」キュピーン
初春「おぬしはわーかーほりっくか……」
11 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/03/12(木) 01:03:36.35 ID:Wdzf2wR1o
提督「……」スタスタスタ
利根「む?」
神通「提督……?」
那珂「えっ、提督さん来てるの!? 那珂ちゃんすっぴんなんだけど!?」ワタワタ
初春「あの男はそんなことをまったく気に留めないだろうがのう……」ポツリ
若葉「それよりもだ、あの男、明らかに怒っているよな?」
摩耶「あん? いっつもあんな顔してなかったか?」
初春「普段からあの仏頂面じゃ、いまいちわかりにくかろうが、安眠妨害されれば当然じゃろうな」
摩耶「止めないのか?」
神通「一度痛い目を見てもいいと思います」
若葉「サラッと言うところが容赦ないな」
提督「……おい、神通、那珂」
神通「はい」
那珂「!? は、はいっ!」
12 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/03/12(木) 01:04:37.22 ID:Wdzf2wR1o
提督「ちょっと川内を黙らせてくる。いいな?」
神通「はい。不肖の姉が申し訳ありません」ペコリ
提督「神通が謝るは必要ねえよ。ちょっと行ってくる」スッ
神通「はい」コク
那珂「あ、あんまりひどいことしないでね?」アセアセ
提督「……川内次第だな」
那珂「だ、大丈夫かなあ……」ハラハラ
ゾロゾロ
霞「なに? あいつ、川内さんのところに行ったの?」
如月「司令官、大丈夫かしら」
由良「素直に静かになってくれるといいんだけど……」
伊8「……」ムスー
利根「なんじゃ、おぬしたちも起きてきたのか」
由良「さすがにあれだけ騒がれれば、みんな目を覚ましちゃいますよ」
13 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/03/12(木) 01:05:47.03 ID:Wdzf2wR1o
霞「朝潮姉なんか、半分寝たまま着替えちゃってるんだもの。ただの夜戦演習だからって眠らせてきたわ」
若葉「それより、異常に殺気立ってる潜水艦がいるんだが」
伊8「……はっちゃん、ちょっとあの軽巡、沈めてきますね?」
初春「ま、待たんか! 夜の潜水艦が本気を出したら、水上艦はひとたまりもないぞ!?」
伊8「はっちゃんの健やかな睡眠のためです」ドロリ
初春(うっ……なんと濁った眼をしておるんじゃ)
明石「まあ、三大欲求の一つですし? 安眠妨害されたら恨みを買うのも仕方ないでしょ〜……ふわあ」
初春「明石……こうなる前になんとかならんかったのか?」
明石「それができたらここには来てないってば。でもまあ、提督が来てるんだし、なんとかなるでしょー」
摩耶「なんだ、随分信頼されてやがんな」
由良「……信頼、って言うのかな?」クビカシゲ
摩耶「なんだそりゃ」
霞「とりあえずなんとかしてくれそう、ってのはあるわね……」
初春「有無を言わさず、という感じも多分にあるがの」
明石「っていうか、いつも力押しって感じもするけど?」
14 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/03/12(木) 01:06:36.94 ID:Wdzf2wR1o
由良「いつも思うけど、もう少し手段を選んで欲しいわ。ハチちゃんなんか殺されかけたんだし」
利根「う、うむ……そうじゃったな」
摩耶「何やってんだよ……」
伊8「あのときは、はっちゃん、おかしくなってましたから。自分で死にたがってたんです」
明石「私はあのときのこと、未だに納得してないけど。艦娘を深海棲艦に撃たせる人間なんて……」
霞「……北上さん、今頃なにをしてるのかしら」
明石「……そう、よね。元気……だと、いいんだけど」ウツムキ
摩耶「この鎮守府に北上がいたのか?」
霞「そうじゃないわ。私と朝潮姉、明石さんは、以前A提督鎮守府に所属していたの」
霞「明石さんは、そこでA提督の横領を手伝わされていたのよ。手伝わなければ、みんなの艤装に細工をして怪我をさせるぞ、って脅されて」
霞「私と朝潮姉は、そのA提督の不正の証拠を掴んだところを捕まえられて……3人揃って雷撃処分されたのよ」
若葉「口封じか……」
15 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/03/12(木) 01:07:36.47 ID:Wdzf2wR1o
明石「そのとき、私たちを雷撃したのが北上さんです。北上さんは、私と一緒に開発した新型魚雷の失敗作を使ってくれました」
明石「だから私たちは、致命的な損傷を受けずに、生き延びられたんです。でも……北上さんとはそれっきりで」
利根「北上に、明石たちが生きていることを伝えられていないわけじゃな」
如月「……黒潮ちゃんも、同じよね。ずっと雪風ちゃんのことを心配してるし」
那珂「そっか……そうだよね。心配、だよね……」
< ヤセンダアアアアア!!
神通「……」
那珂「……」
初春「神妙な雰囲気が台無しじゃな……」
若葉「その……すまない」
那珂「わ、若葉ちゃんが謝ることじゃないよー」
伊8「やっぱり、一発ぶちかましてきますね」
霞「お、落ち着きなさいよ!」
如月「し、司令官に任せましょ?」
伊8「……任せるのはいいけど、提督に危険が及んだりしない?」
如月「……私も行くわ」
霞「ちょっ!?」
16 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/03/12(木) 01:08:23.65 ID:Wdzf2wR1o
* 丘の上 *
川内「夜戦だ夜戦だああ!」ピョンピョン
川内「やっぱり夜はいいよねーー!!」
川内「夜は……」ピク
川内「……」
キョロキョロ
川内「……ここは……」
川内「……」ミミヲスマシ
川内「あまり、騒ぐな、ってこと?」
川内「ふぅん……そっか」
川内「……」
川内「なるほどね」
川内「……」
提督「何を独りでぶつぶつ言ってやがる」
川内「あ、提督! ごめんね、夜戦できるのが嬉しくてうるさくしちゃったよ」ニカッ
提督「……ああ?」
17 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/03/12(木) 01:09:22.67 ID:Wdzf2wR1o
川内「静かにするからさ。夜戦、させてくれるでしょ?」
提督「そりゃあそうだが……うるさくしなきゃ文句はねえよ」
川内「ほんと!? ふふっ、ありがと!」ニコ
提督「……どういうこった。お前、俺の頭の中でも見えたのか」クビカシゲ
川内「ん? 何が?」
提督「俺は、お前が夜中にやかましいから文句を言いに来たんだがな」
川内「ああ、やっぱり?」
提督「自覚あったのかよ」
川内「ううん? そういうの、全然気にしてなかったんだけど」
川内「でも、ついさっきね、うるさくしないほうがいいよ、って声が聞こえてきてさ」
提督「声?」
川内「まあ、考えてみればそうだよね。うるさくしてたら音で探られて狙われちゃうし!」
18 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/03/12(木) 01:10:07.54 ID:Wdzf2wR1o
提督「いや、普通に夜は静かにしろよ。鎮守府を深海の連中に攻め込まれたらどうすんだ」
川内「ああ……そうだね。そんなのは二度と御免だね」
提督「……二度と?」
川内「あたしさ。以前、鎮守府を深海棲艦に襲撃されたんだ」
提督「!」
川内「長期戦に持ち込まれて、あたしたちの提督もおかしくなっちゃって。最後は見捨てるしかなかったし……仲間も、守れなかった」ウツムキ
川内「しかも、そのときは夜戦だったんだよ。あたしの大好きな、夜の戦い! なのに、あたしは全然……戦闘の途中で大破して、気を失って」
提督「……」
川内「若葉もそうだけど、あたしも強くなりたかったんだ。もう二度と、夜で……夜戦で負けない、って。もう、あんなみじめな思いをするのは嫌!」
川内「……でも、止提督のところじゃあ、夜戦させてもらえなくってさ」
川内「勿論、昼は昼で強くなったよ! っていうか、昼間しか戦わせてもらえなかったんだけどね」
川内「夜戦に持ち込むな、昼間の間に全滅させろ。夜は嫌だ、夜は嫌だ、って……止提督はそればっかり」
川内「あたしは、その嫌な夜を……あの夜を、克服したいんだって何度もお願いしてたのに……」
19 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/03/12(木) 01:10:54.69 ID:Wdzf2wR1o
提督「……お前も若葉と同じで、復讐みたいなもんか」
川内「それに近いかもね。でも、あたしの場合は、特定の相手じゃなくて、夜戦。夜は、絶対に負けたくない。夜に、打ち克ちたいんだ」
提督「……夜戦がしたいなら好きにしな。うるさくしなきゃ、文句はねえ」
川内「ふふっ、それ、さっきも聞いたよ? でも、ありがと! あたしの話を聞いてくれて!」
提督「……ああ」
川内「それじゃ、さっそくだけど今夜はずっと個人演習させてね! 夜明けには戻るから!」
提督「わかったわかった。無理すんなよ」
川内「うん!」ニコッ
(歩き去る提督を見送った川内が空を見上げる)
川内「……もう、あたしは負けないよ」
川内「I提督……響……暁……!!」キッ
20 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/03/12(木) 01:11:51.07 ID:Wdzf2wR1o
* X提督鎮守府 埠頭 *
(夜空を見上げているヴェールヌイ)
ビスマルク「こんなところにいたのね」
ヴェールヌイ「……ちょっと、昔のことを考えていてね」
ビスマルク「……」
ヴェールヌイ「改装を受けて暫く経つけど……かつての仲間が私に気付いてくれるか、やっぱり不安なんだ」
ビスマルク「行方不明になった、姉妹艦のこと?」
ヴェールヌイ「それもあるけど……川内さんも、かな」
ビスマルク「センダイ?」
ヴェールヌイ「うん。あの夜、暁が敵陣に突っ込んだって聞いて、私も暁を追いかけたんだ」
ヴェールヌイ「けど、前後不覚になっていた私を庇って、川内さんが大破して。私も被弾して、結局、暁は探せず仕舞い……」
ヴェールヌイ「入渠した川内さんが目を覚ます前に異動が決まって……お礼を言うこともできずに、私はこの鎮守府に来てしまったんだ」
21 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/03/12(木) 01:12:38.40 ID:Wdzf2wR1o
ビスマルク「今、川内がどこにいるかはわからないの?」
ヴェールヌイ「止提督鎮守府にいたらしいんだ。でも、命令違反で飛ばされたって。異動先は、記されてなかった」
ヴェールヌイ「いくら強くなっても、改装を受けても、お世話になった人たちに報いることができないんじゃあね……」ウツムキ
ビスマルク「……響、大丈夫よ。そういう話、大将に訊けばあっと言う間じゃない!」
ヴェールヌイ「……」
ビスマルク「私的な詮索は咎められるかもしれないけれど、私たちのアドミラルの叔父さんなんでしょう? 難しい話じゃないわ!」
ビスマルク「不安げな顔をしないで。このビスマルクに任せておきなさい!」
ヴェールヌイ「……スパスィーバ」
ビスマルク「そうね……あなた、以前言ってたわよね、私があなたのお姉さんに似てるって。お姉さんだと思って頼っていいのよ?」
ヴェールヌイ「スパスィーバ……本当に嬉しいよ」ニコ
ヴェールヌイ「でも……『頼っていいのよ』って台詞をよく言うのは、姉ではなくて妹のほう、かな」クスッ
ビスマルク「そ、そうなの!?」
22 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/03/12(木) 01:13:47.03 ID:Wdzf2wR1o
* 提督の寝室 *
提督「……」
如月「ねえ、なんでみんないるわけ?」ムスー
伊8「川内さんのせいで寝付けないから、今夜のはっちゃんは予定を変更して提督と寝ます」ギュウ
霞「わ、私はいかがわしいことをしないか見張りに来たのよ!」
如月「一緒のベッドに入って見張るの?」
霞「そ、そうよ!」カオマッカ
伊8「なんでもいいから静かにして」
提督「……いやまあいいけどよ」ハァ…
提督(……それにしても。川内が言う、声が聞こえた、ってどういうことだ……?)
由良(……なんで由良も一緒に寝てるのかな……)カオマッカ
23 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/03/12(木) 01:15:07.16 ID:Wdzf2wR1o
というわけで今回はここまで。
このスレも、よろしくお願い致します。
24 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/03/12(木) 12:52:28.97 ID:cN2mMjBWo
おつおつ。新スレだあああああああ!!!やったあああああああああ!!!!!
25 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/03/12(木) 18:20:08.30 ID:4jTLGWs5O
よろしく乙
>>24
姉さん新スレでは静かにしましょう
26 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/13(金) 02:09:11.19 ID:rzzCKG520
楽しみにしてますね
27 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/03/14(土) 13:26:48.74 ID:ZTMvM0mF0
新スレ乙です
28 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/17(火) 00:02:00.77 ID:w80ribEb0
新スレ乙です!
29 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/04/02(木) 23:35:18.74 ID:Nt9MjZvIo
久々の日常編。続きです。
30 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/04/02(木) 23:36:01.10 ID:Nt9MjZvIo
* 執務室 *
(初雪を膝枕して耳かきしている提督)
提督「……」クリクリ
初雪「……はふぅ」ウットリ
提督「なあ初雪?」
初雪「……はい」
提督「さすがに2週間おきに耳かきしてると、全然たまってなくて綺麗なまんまなんだが」
初雪「……」
提督「……んな顔されても困る。綺麗ならそれでいいじゃねーか」
提督「短くても月一くらいにしとけ。あんまり耳かきしまくっても耳に良くないってはっちゃんも言ってたからな」
初雪(……余計なこと言わなくていいのに)ザワッ
提督「つうか、俺じゃなくて古鷹に頼んでも……」
初雪「提督がいいんです」ボソ
提督「……」
31 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/04/02(木) 23:36:46.62 ID:Nt9MjZvIo
初雪「楽しみにしてたのに……」ドヨーン
提督「……んじゃあどうすりゃいいんだよ」
初雪「……」
提督「……」
初雪「気分だけでも」
提督「ん?」
初雪「膝枕して、お昼寝。週一回、10分間」
提督「……」
初雪「……駄目?」チラッ
提督「……まあ、いいか」
初雪「!」グッ!
初雪「そうと決まれば」モゾモゾ(←位置調整)
初雪「それと、手はここ」ソッ(←提督の手を初雪の頭の上に)
提督「……」
初雪「完璧……!」ムフー
提督「……」
初雪「おやすみなさい……」スヤァ…
提督(……猫かこいつは)
32 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/04/02(木) 23:37:31.37 ID:Nt9MjZvIo
* 翌日 *
伊8「ってことを聞いたんですけど」
提督「まー、そうなったな」
伊8「はっちゃんも提督と一緒にお昼寝を要求します」キョシュ
提督「……お前はしょっちゅう俺のベッドにもぐりこんできてるよな?」
伊8「それとこれとは話が別です」
伊8「せっかく作ったお風呂も入りに来てくれないし」ムスー
提督「……入るなら一人でゆっくり入りたいんだよ」
伊8「はっちゃん、お風呂の管理者です」
提督「だからってなんでお前も一緒に入りたがるんだよ」
伊8「人肌が恋しいんだから、いいじゃないですか」プク
提督「だから膝枕しろってか」ハァ
伊8「膝枕じゃなくてもいいですよ?」ズイ
伊8「とにかくソファに座ってください」グイ
提督「……」ボス
33 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/04/02(木) 23:38:16.25 ID:Nt9MjZvIo
伊8「10分間でしたよね?」
提督「……ああ」
伊8「それじゃ、失礼して」ノソッ
(座った提督の正面から抱き着く伊8)
提督「!?」
伊8「それじゃ、おやすみなさ」
提督「ちょっと待て。これは膝枕って言わねえぞ、抱き枕だ」
伊8「そうですけど?」
提督「……」アタマカカエ
伊8「反論もないようですので、おやすみなさ」
扉<ガチャ
三隈「提督! 三隈、新型にな……」
伊8「あ」ダキツキ
提督「……」ダキツカレ
三隈「」
34 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/04/02(木) 23:39:01.20 ID:Nt9MjZvIo
最上「三隈、どうしたの?」ヒョコ
三隈「くまりんこーーーーーーーー!」イヤーーーー!
伊8「!?」
提督「!?」
最上「み、三隈!? お、落ち着いて!」
三隈「くまっ、くまあああ!」
伊8「うるさくてお昼寝できないんですけど」ギロリ
提督「そうじゃねえだろ」
*
三隈「お見苦しいところをお見せしてしまいましたわ……申し訳ありません」
提督「いや、いいけどよ。見苦しいのは俺も似たようなもんだしな」
三隈「え、ええ……その、提督はどうして伊8さんと抱き合ってらしたんですか?」
提督「はっちゃんが俺に抱き枕になれとよ」
三隈「あんな対面座位みたいな恰好……知らない人が見たら悲鳴を上げてしまいますわ」ポ
提督(悲鳴で済めばいいがな……)
35 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/04/02(木) 23:39:46.12 ID:Nt9MjZvIo
最上「はっちゃんは抱っこしてもらうのが好きなの?」
伊8「はい」
最上「それじゃあ、僕が代わりに抱っ」
三隈「くまりんこーーーーーー!!!」
最上「……」ビックリ
伊8「……」ドンビキ
三隈「最上さんは! どうして! そんなに無防備なんですか!!」
最上「み、三隈こそ神経質になりすぎだよ。抱っこって言っても、同じ艦娘だよ?」
三隈「で、でも……」
提督「……ここまで言い淀んでる、ってことは、三隈が神経質にならざるを得なかったんだな? お前らのいた部提督の鎮守府ってのは」
三隈「え、ええ……私がみんなを見張ってないと気軽にぺたぺた触ってしまう、しょうがない人たちだったんです」
三隈「あまりに風紀が乱れていましたので、私が口うるさく注意していましたから、私の前では皆さん大人しくなったんです」
三隈「でも、私のいないところでは相変わらずで……」
最上「それで、三隈が普段からくまりんこーって言うのが日常になっちゃったんだよね」
伊8「? どうしてそうなるの?」
36 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/04/02(木) 23:40:31.82 ID:Nt9MjZvIo
最上「三隈の声が聞こえるとみんな警戒するんだ。部提督も三隈の声が聞こえたら、僕から離れるようになったし」
提督「サイレンみたいなもんか」
三隈「ええ、効果はあったんです。でも、そのせいで、いかがわしい場面に遭遇した時もその口癖が出てしまうようになりまして……」
最上「それだけじゃないよ。出撃中に被弾したときも言うようになっちゃったんだ」
伊8「意識しなくても言っちゃうようになったんですね」
提督「ところで、そのくまりんこ、ってなんだ?」
三隈「そ、それは……」カァ
最上「うーん、決め台詞みたいなものかな?」
提督「……?」クビカシゲ
伊8「女の子にはいろいろ秘密があるんですから、言及しちゃだめですよ」
提督「まあいいけどよ。三隈が言いたくねえならそれでいい」
三隈「お、お気遣い感謝します」モジモジ
伊8「ところで……」
バタバタバタ
提督「!」
37 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/04/02(木) 23:41:17.82 ID:Nt9MjZvIo
扉<ガチャバーン!
金剛「Heeey, テイトクゥーーー!!」
三隈「!?」
最上「!」
伊8「……」
提督「ん、金剛か」
金剛「Yes ! 今回の海域、私が活躍しまシタ! MVPデース!!」
金剛「なので、ご褒美を貰いに来まシターー!」ダキツキー!
提督「ぬお!?」ダキツカレー
三隈「くまりんこーーーー!」キャーーー!
大和「金剛さん、何を抜け駆けしてるんですか!」バッ
比叡「司令ってばずるい!!」バッ
榛名「榛名もMVPを取ったら抱き着かせていただきたいです!」ポッ
摩耶「おい待てよ! 霧島さんの指揮があったからあんなにすんなり海域抜けられたんだぞ!?」
霧島(戦艦5重巡1なら、すんなり抜けられて当然の海域だったんだけど……)タラリ
38 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/04/02(木) 23:42:06.43 ID:Nt9MjZvIo
三隈「は、破廉恥ですわ!?」
金剛「No ! 私とテートクは、ハレンチな関係じゃありまセーン!」
大和「その通りです! 提督はそのようなお方ではありません!」
金剛「Heeey, 大和ォ? その言い方はまるで私がハレンチな艦娘であるように聞こえマスヨー?」
大和「すぐに提督に抱き着いて離れないあなたが仰っても、説得力がありませんよ?」
比叡「金剛お姉様! 司令に抱き着くのなんて、慌てなくったって、いつだってできるじゃないですか!」
金剛「えっ」
大和「えっ」
榛名「えっ」
比叡「えっ」
伊8「……」
金剛「比叡? 何を言ってるデース?」プルプル
比叡「だって司令、好きにしろって仰ってましたよ?」
金剛「!?」グリッ
大和「!?」グリッ
榛名「!?」パァッ
39 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/04/02(木) 23:42:46.45 ID:Nt9MjZvIo
伊8「それ、本当ですか?」
提督「どうせ大和たちには言っても聞かねーだろうしな。逆に比叡だけ駄目だって言う理由もねえ」
伊8「比叡さんはどうして提督に抱き着こうと思ったの?」
比叡「え? 金剛お姉様が頻りに司令に抱き着きたがるから、どういう感じなのかな? と思って……」
最上「ふーん。どんな感じだったの?」
比叡「ええっとねー、金剛お姉様はこう、ふわーっと包み込んでくれる感じなんだけど」
比叡「司令はがっちりしてて! そんなに筋肉質ってわけでもないのに、安心して寄りかかっていられる感がすごかったって言うか!」パァッ
大和(わかります……)
榛名(とってもよくわかります……!)
金剛(比叡……Tension が上がってマスヨー……)
最上「こっちのみんなは、どうして固まってるんだい?」
摩耶「い、いや、あたしに言われてもなあ……」チラッ
霧島「え、ええ……私たちも新参者ですし、困りますね」
三隈「最上さんもそうですけど、比叡さんも相当鈍感というか……」
伊8「全然邪念がないみたいですね」
40 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/04/02(木) 23:43:31.57 ID:Nt9MjZvIo
比叡「それで、また抱き着いてもいいですか、って聞いたら、好きにしろ、って流れに」
金剛「テートクゥゥ!?」グリッ!
大和「どういうことですか!?」グリッ!
提督「いや、お前らが言うなよ」
伊8「ですよね」
三隈「どういうことですの?」
伊8「金剛さんも大和さんも、週一でハグタイム設けてもらってるんだって」
三隈「……くまりんこ……」ガックリ
榛名「つまりそういうことですね! 榛名も大丈夫なんですね!」キラキラッ!
摩耶「ハグタイムって、何かのテーマパークじゃねえんだぞ……」
霧島「ね、ねえ、摩耶……はぐたいむ、って何なの……?」
摩耶「え? あー、なんつうか、人形に抱き着ける時間っつうか……」
伊8「遊園地とかのイベントで、マスコットの着ぐるみとかにハグしてもらえる時間、と言うとわかります?」
摩耶「そ、そうそう! そういうイベント時間!」
41 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/04/02(木) 23:44:18.32 ID:Nt9MjZvIo
伊8「Hug time 、和製英語ですね」
最上「へー、そういうのがあるんだ」
霧島「ふぅん……?」
三隈「霧島さん、いまひとつ理解できていませんわね」
霧島「え、ええ。ちょっと想像できなくて」
提督「……俺はマスコットか」
比叡「マスコット……ではないですよね。司令は成人男性ですし……」
三隈「男性でも、アイドルなら……それでも握手するくらいで、抱き着いたら一大事ですわね」
扉<ガチャバーン!
那珂「那珂ちゃんのこと、呼んでくれた!?」シャラーン!
提督「呼んでねえし話がややこしくなるから出てくんな」
那珂「ちょっ!? それ、ひどくないですか!? 折角図面を持ってきたのに!」ガーン!
提督「図面? できたのか?」
那珂「はいっ! 明石ちゃんと妖精さんたちが、こんな感じでどうかって!」
提督「そういうことなら、とっとと現場に行くか。おい、お前らちょっと顔貸せ」
全員「「??」」
42 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/04/02(木) 23:45:01.70 ID:Nt9MjZvIo
* 食堂 *
提督「食堂に入ってこっちが厨房、反対側がただの壁だ」
提督「で、その壁の向こう側は使っていない会議室。つうか、半端にでかいせいで物置になってたわけだが」
提督「この壁をぶち抜いて、ぶち抜いた先のスペースにステージを作ろうって考えたんだ」
大和「なるほど、それで戦艦の力が必要と言うわけですね」
提督「ちょっと段差付けて、舞台の裾に更衣室と音響や照明の設備も置けば、まあそれっぽくはなるだろ」
提督「あまりでかいスペースはとれねえが、今の建物で一番でかい部屋はここしかねえからな」
那珂「でもでも、まさか屋内にステージを作ってもらえるなんて思わなかったなあ……ありがとう、提督さん!!」ナゲキッス
霧島「あ、あの、いいんですか? 勝手に設備を作り変えて……」
提督「俺の鎮守府だからな。いいんだよ」ニタリ
霧島「……」
島妖精E「どうせ本営の人たちは、この島の鎮守府の内装なんか興味ないよ」
島妖精F「安心していいからね!」
摩耶「……そ、そういうもんか?」
43 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/04/02(木) 23:46:00.21 ID:Nt9MjZvIo
提督「ところで妖精、明石はどこ行った?」
島妖精F「工廠に工具を取りに行ったよー」
提督「ああ……もしかして、アレ取りに行ったのか」
島妖精E「うん、明石の出番ですね! って言ってスキップしてたよ」
提督「今回はちょっとしたDIYどころじゃねーんだがな……うん? 工具取りに行ったってことは、すぐにおっ始める気か?」
島妖精F「……かもしれない」
提督「壁ぶち抜くにしても、その前に埃が厨房に行かねえようにシートで覆ったりしねえとまずいだろ」
島妖精E「そうだね、その話は明石とはしてないや」
提督「建物自体ぶっ壊れねえかも心配だ、柱の補強とかも大丈夫なんだろうな?」
島妖精E「そっちは大丈夫。それより、いつやるかちゃんと決めないと駄目だね」
提督「力仕事だからな。戦艦が工事の手伝いできるよう手配しとくから、日程は教えてくれ」
島妖精E「あ、それからこの辺の電飾用のライトとかも準備したいな」
提督「なら、あのカタログ持ってきて、適当なやつ買うか?」
島妖精F「それじゃあ、通販の設備が届く日程も考慮しないといけないね」
最上「……あれ?」
三隈「……」
摩耶「……」
霧島「司令、もしかして……妖精さんと話ができるんですか?」
提督「……今頃かよ」
44 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/04/02(木) 23:46:47.16 ID:Nt9MjZvIo
* 休憩室 *
龍驤「ほーん。こんなんもあるんやな……」ペラリ
雲龍「……これが、テレビ?」
龍驤「これはDVDプレーヤーやね。こういう円盤の中にデータが入ってるんよ」
雲龍「データ……」
龍驤「あー、テープ言うたらわかる?」
雲龍「……穿孔テープのこと?」
龍驤「えらい前時代的なもんが出てきたったなあ……せめてカセットテープくらい出てこん?」
雲龍「! ……龍驤」ユビサシ
龍驤「うん?」チラッ
島妖精D「通販のカタログは龍驤が持ってたのか」
島妖精C「私たちも見せてもらっていいかな?」
龍驤「おお、ええよ? 何のページを見るん?」
島妖精C「隣の部屋を改造して、那珂ちゃんのステージを作るんだ」
島妖精D「電飾や音響設備のページを見たいんだけど」
45 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/04/02(木) 23:47:31.17 ID:Nt9MjZvIo
龍驤「あ、丁度このページや。ほら、カラオケの設備とかあるで!」
島妖精C「んー……あ、この辺がちょうどいいかも」
島妖精D「うん。これなら機能も十分ぽいね」
龍驤「……これ? なあ、ちょっち高こないか?」
島妖精C「大丈夫だよ、多分」
龍驤「多分て……」
島妖精D「龍驤も、何か好きなの頼んでいいよ?」
龍驤「えっ、ほんま?」
島妖精C「うん、提督はその辺緩くしてるから。ポケットマネーで出してくれるって」
龍驤「……せやったら遠慮するわ。あの提督、お金持ってへんやろ」
龍驤「この音響設備もえらい値段やし、頼んでも無理なんちゃう?」
島妖精C「ううん、むしろ使えって言ってるみたいだよ?」
島妖精D「提督はこの島に着任してから全然帰国してなくてお金も使ってないし、離島勤務で特別手当も出てるらしいね」
龍驤「ちゅうことは、多少のおねだりはアリ、ちゅうことかな……?」
島妖精D「多分ね」
島妖精C「それより、この設備を買ってもらえないか、提督に相談しに行きたいんだけど。カタログ、借りてってもいい?」
雲龍「ねえ、カタログ、私たちが持っていきましょ」スクッ
龍驤「せやね。一緒にいこか」
46 :
◆EyREdFoqVQ
[saga]:2020/04/02(木) 23:48:16.89 ID:Nt9MjZvIo
以上、今回はここまで。
47 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/04/03(金) 00:54:41.48 ID:jC7aWbhb0
初見です。
とても面白いので最初から読まさしてもらいました。
これからも応援します。
48 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/04/06(月) 00:50:34.80 ID:y+Q2rNGVO
(続きを)待ってました!
(続きを)待ってます!
49 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/05/05(火) 21:48:00.79 ID:e/wUUiNP0
そろそろかな?
楽しみに待ってます!無理をなさらずに。
50 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/05/17(日) 05:42:02.28 ID:S8UToAtp0
ほしゅ
51 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/17(日) 23:20:12.71 ID:RP3H2uY3o
少しだけ続きです。
52 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/17(日) 23:21:01.44 ID:RP3H2uY3o
* 食堂 *
龍驤「提督! カタログ持ってきたで!」
提督「ん? 気が利くな、持って来てくれたのか」
島妖精C「丁度二人がカタログを見てたからね」
提督「なるほどな、お前らが声をかけたのか」
龍驤「音響設備が欲しいんやって?」
提督「ああ。ついでにライトや暗幕もねえとな、って話をしてたんだ」
龍驤「本格的やなあ。お金は大丈夫なん?」
提督「まあ、謙虚な奴が多くてな。お前も何か欲しいもんがあるなら、遠慮なく言えよ?」
龍驤「ほんま? せやったら……」
提督「口頭で言われても覚えてられねえからな。紙に書いて出してくれ、できる限り要望には応えるからよ」
龍驤「ほーん。じゃあ、あとでまたカタログ借りるで!」
提督「おう、悪いな。さて、手頃なのがありゃあいいんだが……」
53 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/17(日) 23:21:45.92 ID:RP3H2uY3o
金剛「私も一緒に探しマース!」ズイッ
大和「私も拝見しますね!」ズイッ
提督「……お前らもうちょっと離れろよ……まあいい、マイクから探すか」
霧島「マイクでしたら私にお任せください!!」グワッ!
全員「「!?」」
雲龍「……」
龍驤「? 雲龍? どないしたん?」
雲龍「……なんでもないわ。ぼーっとしてた」
龍驤「大丈夫なんか?」
雲龍「ええ」コク
雲龍「……」
54 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/17(日) 23:22:32.20 ID:RP3H2uY3o
* 夕刻 執務室 *
提督「まあ、ステージ用の設備はこんなもんか……」
コンコン
提督「うん?」
雲龍「提督。ちょっといいかしら」
提督「ああ、入れ」
雲龍「失礼します」チャッ
提督「……珍しいな。お前、この時間はいつも食堂にいたろ?」
雲龍「気になることがあるんです。川内って子のことなんだけど」
提督「なに?」
55 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/17(日) 23:23:15.90 ID:RP3H2uY3o
* 翌朝 食堂 *
神通「実は、川内姉さんに気をつけろと言われたのは、利根さんからなんです」
提督「利根から?」
神通「はい。川内姉さんはいつも明け方に戻ってきているので、迎えに行ったことがあるんです」
神通「そのときに、丁度利根さんが埠頭にいて……そのときにそう言われまして」
神通「それがどういう意味かと尋ねたところ、雲龍さんに相談しろと……」
提督「……そうか。にしても、なんで利根が明け方に埠頭なんかにいたんだ?」
神通「それは答えてもらえませんでした……」
提督「……何を考えてんのか、よくわかんねえな。おい、雲龍」クルッ
雲龍「……」モギュモギュ
龍驤「あー、あかんよ、食事中の雲龍は食事に集中したいから、話し掛けてもそうそう答えへんで」
提督「」
神通「」
56 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/17(日) 23:24:01.35 ID:RP3H2uY3o
提督「……とにかくだ。神通、川内は相変わらず夜中に出撃してるんだよな?」
神通「はい。今朝も夜明け前に帰ってきて、お風呂に入ってからそのまま布団に倒れ込んで眠ってしまいました」
提督「ここんとこはずっとそんな調子か」
神通「毎日ハードワークしているようで、日に日に眠っている時間が長くなってはいますね」
神通「でも、起きたら起きたで楽しそうに夜戦の話をするので、ストレスがあるわけではないみたいで……」
提督「楽しそうに、ねえ。無理してる感じはねえのか」
神通「肉体的には疲れてはいると思います。それでも、今まで夜戦できなかった反動ではないかと」
提督「気になる点はいくつかあるが……のんびり構えてはいられねえんだよ」
神通「?」
57 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/17(日) 23:24:47.43 ID:RP3H2uY3o
* 夕方 鎮守府埠頭 *
川内「うーん……!」ノビーッ
川内「いい夕焼け! さあ、早く夜戦しに行かないと!!」
提督「またこんな時間に単艦で出撃か」
川内「あっ、提督! ごめんね、どうしても夜戦がしたくって!」
提督「お前の生活のリズムが俺たちと逆転してるからな。誰かしら随伴できりゃあいいんだが」
川内「あはは、大丈夫だよ、寂しくないから!」
提督「なんだそりゃ。連れでもいるのか?」
川内「んー、まあ、そんなとこかな?」ニカッ
提督「それから、これ持ってけ。握り飯だ」
川内「!」
提督「休みなく戦う訓練もいいが、飲まず食わずじゃ体がもたねえ。戦い続けたいなら腹に何か入れろ」
川内「……えへへ、そうだね。ありがと!」
提督「……」
58 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/17(日) 23:25:31.22 ID:RP3H2uY3o
川内「じゃ、行ってきます!」
ザァッ
提督「……」
神通「……姉さん、大丈夫なんでしょうか」スッ
雲龍「どうでした?」スッ
提督「飯を素直に受け取ったあたり、川内自身はまともなんだろうけどな」
龍驤「なんやなんや、また面倒事かいな」
提督「そういうこった。さて、俺は寝る」
龍驤「は? まだヒトハチヨンヨンやろ?」
提督「3時くらいに起きて見張りをしなきゃなんねえんでな」
雲龍「私もよ」
龍驤「な、なんなん? いつの間にそんな話になっとん!?」
提督「やんなきゃいけねえことがあるんだよ。なんならお前も一緒に起きるか?」
龍驤「うぐぅ……な、なんで雲龍がそんな時間に起きなあかんねん」
雲龍「彼女が起きている間に対応しないといけないの」
龍驤「???」
59 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/17(日) 23:26:16.28 ID:RP3H2uY3o
* 深夜 某海域 *
ドーン…
川内「ふう、ふう……今の相手、なかなか手強かったなあ」
川内「……さすがに、ちょっと、疲れちゃった……」
川内「そうだ、提督からおにぎり貰ったんだっけ」ゴソゴソ
川内「えへへ、いただきまー……」
川内「……」
川内「……え?」
川内「……」
川内「……でも、食べないと……」
川内「……」
川内「……」
川内「……」
ポロッ
川内「あっ!」
60 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/17(日) 23:27:01.39 ID:RP3H2uY3o
チャポン…
川内「おにぎりが……!」
――そんなことより、夜戦しようよ
川内「……」
――食べてる時間だって、もったいないよ
川内「……」
――今まで、ずっと時間を無駄にしてきたんだよ
川内「……」
――さあ、早く、夜戦しよう!
川内「……そう……」
川内「そうだね……」
川内「……夜戦、しないとね……!」
――そうだよ、もっと、もっと夜戦しようよ……!
川内「……うん!」
――ふふっ、ふふふふ……!
61 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/17(日) 23:27:46.54 ID:RP3H2uY3o
* 翌日未明 入渠ドックそばの大浴場 *
シャワーーーー…
川内「……今日も疲れたぁ……へとへとだあ」フラフラ
川内「こんなに夜戦できて、幸せぇ……」ウツラウツラ
ワシャワシャ…
川内「……! 背中、流してくれるの……?」
川内「あはは、ありがとう……気持ちよくて、このまま寝ちゃいそう……」フラッ…
パタッ…
川内「……」
――いいよ。ゆっくり、休んでて
――あとは、私に任せて、ずーっと休んでて
―― い い か ら ね
.
62 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/17(日) 23:28:31.33 ID:RP3H2uY3o
「急急如律令」
ゴォォッ!!
――!?
衝撃波<ガォォォンッ!!
――ぐううっ!?
雲龍「……そこまでよ」
――どうして……どうして!?
ジワッ
幽霊『どうして邪魔するの……!?』
雲龍「邪魔をしない訳にはいかないわ。その子を衰弱死させるつもり?」
幽霊『ちょっと体を借りるだけだよ! 私だって同じ川内なんだから!』
雲龍「同じ……?」
川内の幽霊『そうだよ! ちょっと体を借りようとしただけだよ!』
川内の幽霊『私だって夜戦したい! でも、体はボロボロで、この島に流れ着いたときは、そんなことできなかったんだもの!』
川内の幽霊『だから、こっちの川内に眠ってもらって、私が代わりに夜戦しようとしてたんじゃない!』
63 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/17(日) 23:29:16.17 ID:RP3H2uY3o
提督「朧の時みたいに体を乗っ取って、か?」スッ…
川内の幽霊『!』
提督「川内の装備の妖精から話を聞いたが、お前、川内に預けた握り飯を捨てさせたらしいな?」
川内の幽霊『そうだよ……疲れてなきゃ駄目なんだ。彼女が起きてたら、私が体を操れないじゃないか……!』
提督「そのためには、そこにいる川内の命はどうなってもいい、ってか」
川内の幽霊『彼女は夜戦したがってた! だから私が誘って思いっきり夜戦させてあげたんだ!』
川内の幽霊『こんどは私の番! 私が夜戦する番だよ!!』
提督「……」
雲龍「提督。長くこの世に留まった幽霊は、人に害をなすと言うわ」
提督「ああ。聞く耳持たねえんじゃ、相手するだけ無駄なようだな」
川内の幽霊『……なによ! 結局、私に夜戦させてくれないんじゃない!』ザワッ
川内の幽霊『この子ばっカりずるい! ずるいずるイ!!』
64 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/17(日) 23:30:00.90 ID:RP3H2uY3o
川内の幽霊『私だっテ夜戦しタいノ! 夜戦! 夜戦!! ヤセンンン!!』
グォォォッ…
提督「……なんだ!? でかくなりやがった……!」
川内の幽霊『ヤァァセェェェンンン!!』グワッ
雲龍「大丈夫よ」
シャラン
雲龍「自此莫過、祓給清給。願主雲龍、道切修奉」
ゴゴゴゴ…
川内の幽霊『……!?』
雲龍「あなたの居場所はここではないわ。天か、海か、好きな方へ向かいなさい」シャラン
ゴォォッ!!
川内の幽霊『イ、イヤッ……イヤダァアアア!』
バシュン!!
65 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/17(日) 23:30:45.92 ID:RP3H2uY3o
雲龍「……」
提督「……」
雲龍「ふぅ。終わったわ」
提督「そうか。ありがとな」
雲龍「一応言っておくけど、退治した訳ではありません。ここから追い返しただけ」
提督「……道切(みちきり)修し奉る、とか言ってやがったな。悪い者が入ってこないようにするためのまじないか」
雲龍「はい。あとで略式でもいいからお祓いをした方がいいと思います」
提督「まったく、手間ァかけさせやがって……やっぱり水葬してやった方がこいつらのためだったのかね」ハァ
雲龍「それは少し違うと思います。彼女は……もっと艦娘として戦いたかっただけなんだと……」
提督「……んじゃあ、未練、ってやつか」
雲龍「私も、艦娘として誰の役にも立たないまま死にかけた身です」
雲龍「理由はどうあれ、艦娘の役目を背負って戦えることが、きっと、羨ましかったんだと……」
提督「やれやれ……それじゃあ、どうしたもんかね」
雲龍「……ごめんなさい」
提督「謝んなよ、独り言だ。誰も知らねえんなら調べるしかねえ」
提督「とにかく、お前のおかげで川内も助かったんだ。改めて礼を言わせて貰うぜ」
雲龍「……はい」ニコ
提督「よし、俺は退散だ。神通を呼んで川内を診て貰わねーとな」
66 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/17(日) 23:31:35.12 ID:RP3H2uY3o
* 埠頭 *
提督「……利根は、いねえな」キョロキョロ
雲龍「提督」スッ
提督「うん? なんだ?」
雲龍「利根に、直接話をするのは、やめた方がいいわ」
提督「どういう意味だ」
雲龍「川内は、悪い霊に取り憑かれていたのだけれど、利根は、そうではないんです。共存できているようなんです」
提督「共存? ……取り憑かれ、て……利根にもか!?」
雲龍「はい。それも、何体か」
提督「!?」
雲龍「提督は、心当たりはありますか。利根に、複数の霊が取り憑いていることについて」
提督「……利根に、霊が、取り憑いてる……?」
提督「まさか……前に利根がいた鎮守府で、殺された利根たちの霊が取り憑いてるってのは、関係あんのか!?」
雲龍「……なるほど。そういうことですか」ウーン
提督「おいおいおい……大丈夫なのかよ利根は」
67 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/17(日) 23:32:16.22 ID:RP3H2uY3o
雲龍「少なくとも、私が話した利根の幽霊の一人は、今の利根に害を与えるつもりはないみたいです」
雲龍「ただ、主人格の利根が眠っているときに、目覚めて体を借りていると」
雲龍「あまり動きすぎると体の疲れが取れないから、短時間かつ交代で体を借りているらしいです」
提督「……肉体のルームシェアかよ。本当に大丈夫なんだろうな、利根は……」
提督「まあいい、ともかくこの件もあまり他言しねえ方が良さそうだ。こんなオカルト話、下手に流して利根が避けられても困る」
雲龍「……」ニコ
提督「……なんだその笑顔」
雲龍「いえ。優しいんですね」
提督「やめてくれ、くすぐってえ。それより悪かったな、こんな早くに大事な仕事させちまって」
雲龍「あ……提督」
提督「今度はなんだ?」
雲龍「お腹がすきました」
提督「……」
68 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/17(日) 23:33:01.16 ID:RP3H2uY3o
* 食堂 *
雲龍「……」モグモグ…
川内「がつがつがつがつ!」
雲龍「……」モグ…
川内「ばくばくばくばく!」
雲龍「……もう少し、落ち着いて味わって食べたらいいと思う。もったいない」
川内「へっ? あー、ごめんごめん。おいしくて箸が進んじゃってさあ」エヘヘー
提督「つうか川内お前、しばらくまともに食ってなかったろ」
川内「うーん、そうだっけ? 確かにお腹ペコペコだし、食べてなかったかも」
提督「覚えてねえのかよ」
川内「うん。……ここ最近の記憶、ちょっと曖昧、かなあ」
提督「……」
神通「姉さん、まさかお風呂もまともに入れてないんじゃ……」
川内「あー、それは大丈夫だって。まあ、幽霊に背中流して貰ってたりしてた気がしたけどさあ」
神通「!?」
69 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/17(日) 23:33:46.12 ID:RP3H2uY3o
提督「あぁ!? 自覚あったのかよ!!」
川内「この島に来て最初の夜だったかな。うるさくすると提督に怒られるよ、って幽霊に言われたんだ」
川内「それから一緒に夜戦して、夜通し付き合って貰ってさ!」ニコニコ
川内「二人で戦ってるみたいで楽しかったなあ」フフッ
提督「……」アタマカカエ
神通「姉さん……少しは危機感というものがないんですか」
川内「でもさあ、夜戦できないまま沈んだっていうし。可哀想じゃない」
川内「だったらせめて、私に同行させて一緒に夜戦すれば、気が晴れてくれるかなって」
川内「私もさ、夜戦できない苦しさはわかってるつもりだからね……」
神通「一歩間違えたら死んでいたかもしれないんですよ!?」
神通「気絶していたのがお風呂の湯船の中だったらどうする気だったんですか!」
川内「えへへ……ごめんごめん。気をつけるからさ?」
提督「やれやれ……雲龍もなんか言ってやれよ」
雲龍「……提督」マジッ
70 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/17(日) 23:34:30.35 ID:RP3H2uY3o
雲龍「あなたの作った朝餉、とってもおいしいわ」
神通「!?」
川内「あ、私もそう思う!」
提督「いや、そういう話じゃなくてな」
雲龍「私にはこの朝餉のほうが大事。提督、どうしてあなたが料理を作らないの?」
提督「いや俺は他人に料理作るような奴じゃねーし」
提督「そもそも比叡たちが毎日作ってる量より全然少ねえから、味付けもしやすいってだけだろ」
雲龍「私は提督に毎日御飯を作って欲しい」キラキラキラッ
提督「」
川内「えっ!? なにそれ、プロポーズ!?」
神通「姉さん!? 雲龍さんも変なこと言わないでください!」
雲龍「変じゃないわ。本気よ」
71 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/17(日) 23:35:16.53 ID:RP3H2uY3o
龍驤「ふわぁ……結局起きれへんかったわ。雲龍ー、大丈夫やったん?」スタスタ
雲龍「龍驤。提督に、私たちに毎日朝餉を作ってくれるよう、お願いして」
龍驤「」
龍驤「」
龍驤「雲龍、キミ何言っとるん!?」
雲龍「私は本気よ」
龍驤「提督キミィ、うちの雲龍なに誑かしとんねん!」ギロリ
提督「……」
神通「提督、面倒臭がってないで、説明してください」
提督(もう喋んのも面倒くせえ)
川内「本っ当、面白い鎮守府だねー」アハハ
神通「川内姉さんが言わないでください!」プンスカ!
72 :
◆EyREdFoqVQ
[saga]:2020/05/17(日) 23:36:48.05 ID:RP3H2uY3o
というわけで今回はここまで。
73 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/05/18(月) 02:32:05.97 ID:sVHgIRB80
今回もとても面白かったです!
お体に気を付けてお過ごしください。
陰ながら応援させていただきます。
74 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/05/18(月) 16:44:30.02 ID:1j/SMV5sO
待ってました!!
続きお待ちしてまっす!
75 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/05/21(木) 03:46:03.76 ID:vsNu6OLy0
最近読み始めてやっとここまで来ました!
楽しみにしています!
76 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/24(日) 22:58:35.77 ID:1m+de9zfo
更新スピードにムラがあるのはご容赦願いたく。
続きです。
77 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/24(日) 22:59:16.20 ID:1m+de9zfo
* その日の夜 鎮守府内、廊下 *
川内「んーっ、よく寝たぁ……!」ノビーッ
川内「よーっし、今日も頑張って夜戦しよっと!」
川内「……あれ? 今日は声が聞こえないな」
川内「昨日無理しすぎてたからなあ……向こうも遠慮してるのかな。それともみんなにばれちゃったからかなあ」
暁「あ、川内さん! またこれから出かけるの?」
川内「! あ、あぁ、暁……か」
暁「? どうしたの?」
川内「え? な、なんでもないよ。またこれから夜戦の練習にね」
暁「暁も自主的に練習したほうがいいかしら」ウーン
川内「あ、うん……そう、かもね」
暁「でも、明日の朝は朝ごはんの準備があるから駄目ね。明日、長門さんと相談して暁も一緒に練習できる日を作ってもらうわ!」
78 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/24(日) 23:00:02.29 ID:1m+de9zfo
川内「……」
暁「川内さん? どうしたの?」
川内「あのさ、暁……I提督、って、知ってる?」
暁「I提督……?」
川内「……」
暁「うーん……」クビカシゲ
川内「……」
暁「ごめんなさい、I提督って人のこと、暁は知らないわ」
川内「知らない……?」
暁「うん、初めて聞いた名前だから……川内さんの知ってる人?」
川内「……いや、いいよ、忘れて。変なこと言ってごめんね」
暁「?」
川内(そうだよね、知ってるわけないか……ここへ来たときに暁から『初めまして』って言われたときにわかってたはずなのに)
川内(でも、暁を見ていると、どうしてもあの暁を思い出すのはなんでなんだろう……)
川内「とにかく、私はそろそろ行ってくるね。暁は明日の朝早いんでしょ? 早く寝なよ?」
79 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/24(日) 23:00:46.17 ID:1m+de9zfo
暁「わかったわ! 川内さんも気を付けて、いってらっしゃい!」
川内「……っ! う、うん、行ってくるよ!」タッ
川内(……あの『いってらっしゃい』の言い方、I提督に似すぎてるよ……)
川内(でも、あの暁は……別人、なんだよね)
暁「? あんなに慌てて、何かあったのかしら」
暁「それにしても……I提督って誰なんだろう」
暁「I……提督……」
ズキッ
暁「ぐっ……!?」ヨロッ
暁「な、なに……!? あ、頭がぁ……!」ズキズキズキ
暁「く……う……っ!!」ズキーッ
暁「……っは、はぁ、はぁ……!」ガクッ
暁「な、なんだったの、今の……」フラフラ
暁「あれ? 私、何の話をしてたんだっけ……さっき川内さんと……うーん?」
暁「いけない! 明日早起きしないといけないんだったわ!」タッ
80 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/24(日) 23:01:31.14 ID:1m+de9zfo
* X提督鎮守府 執務室 *
X提督「I提督鎮守府の近海から、暁の艤装の一部が見つかったんだ」
ヴェールヌイ「そ、それは確実なのか……!?」
X提督「その艤装から装備妖精たちを救助できた。その妖精たちが、かつてI提督の元で働いていたと、話しているそうだよ」
ヴェールヌイ「……!」
X提督「……妖精の話によると、暁はI提督の尋常ならざる姿を見て狂乱し、そのまま鎮守府を飛び出して戦闘に突入したらしい」
X提督「暁の取り乱しようは尋常じゃなく、妖精さんが声を張り上げても、とても聞き入れられる状態でもなく……」
X提督「パニックに陥ったまま、暁は敵陣を突っ切っていったそうだ」
X提督「響が言っていた当時の状況と合致してるね」
ヴェールヌイ「……」コク
X提督「その後、衰弱した暁が波にのまれ、装備妖精たちは破損した艤装と一緒に海に放り出され……」
X提督「そのまま暁とはぐれて海を彷徨うことになってしまったそうだ」
ヴェールヌイ「……」ウツムキ
X提督「……響」
ヴェールヌイ「司令官……大丈夫」
X提督「……」
81 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/24(日) 23:02:15.93 ID:1m+de9zfo
ヴェールヌイ「暁が……深海棲艦に殺されていないことがわかっただけでも……」ボウシオサエ
X提督「……僕たちのもとへ届いた情報は以上だ」
X提督「暁が沈んだと思われる場所の捜索を、かつてI提督のもとにいた艦娘たちが行っているそうだけど、その捜索もじきに打ち切られるだろう」
ヴェールヌイ「……」グッ
X提督「……」
ヴェールヌイ「……I提督が」ボソッ
X提督「……」
ヴェールヌイ「I提督が、連れて行ったのかな……翔鶴さんと、一緒に」
ヴェールヌイ「あの人、意外と……寂しがりやだったから、ね」
X提督「……」
ヴェールヌイ「……」 クル スタスタ…
ヴェールヌイ「……仕方ない人だなあ……」
チャッ パタン(執務室を出ていくヴェールヌイ)
X提督「……響……」
82 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/24(日) 23:03:03.87 ID:1m+de9zfo
* それからしばらく後のある日 墓場島鎮守府 廊下 *
朧「あ、提督。少しいいですか?」
提督「ん? なんだ?」
朧「提督は、この島に来た艦娘に、生きるか死ぬかを聞いてますよね」
提督「ああ」
朧「あれって、何かの本の影響ですか?」
提督「本?」
朧「お腹の胎児に、生まれてきたいかそうじゃないかを聞く下りがあって……」
提督「……ああ、もしかしてあれか。まあ、影響受けてなくもねえけど、きっかけはそれじゃねえな、それを読むより前の話だ」
朧「違うんですか……」ウーン
提督「どっから話しゃあいいかな……学生の頃、いじめられてたやつを助けたことがあったんだよ」
朧「え? 提督が、ですか……?」
提督「結果的に、だがな。そもそも助けようと思って助けたわけじゃねえ」
朧「? ……よくわからないです」
83 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/24(日) 23:03:45.24 ID:1m+de9zfo
提督「あの時俺は、いかにもないじめられっ子が、5対1で囲まれてたのを、ただ見てただけなんだ」
提督「そしたら、5人組が俺に何見てんだよ、って突っかかってきて……」
提督「ただ、俺も悪い意味で有名人だったんで、そいつらは結局、俺の悪口言うだけ言って逃げてったんだ」
朧「逃げた? 提督、やっぱり喧嘩が強かったんですか?」
提督「それなりにな」
朧「5対1で逃げられるなんて、それなりってレベルじゃないと思うんですけど……」
提督「5人組もそこまで強そうじゃなかったからな。ちょっとイキってただけの連中だ、腕っぷしで負ける要素はなかったな」
提督「まあとにかくだ、結果的にはそれでいじめっ子を追い払ったんだが、それがまずかったんだろうな……そいつ、結局自殺したんだよ」
朧「ええっ!? どうしてですか!?」
提督「俺と仲が良いなんて噂が立って、そいつが孤立しちまったんだ。そのくらい嫌われてたんだよ、俺は」
提督「正直、俺としてもその噂は面白くねえ。そういう噂が流れて暫くしてから、そいつに言われたんだ」
提督「なんであの時、俺を助けた。俺は助けてなんて言ってない、ってな」
朧「!!」
84 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/24(日) 23:04:31.29 ID:1m+de9zfo
提督「俺だって最初から助けるつもりであの場所にいたわけでもねえし、助けたつもりもねえ。そいつのことは、本当にどうでも良かった」
提督「だから俺も、助けたつもりはない、あいつらが勝手に怯えて逃げてっただけだ、ってそいつに言って、それで終わりにしたんだ」
提督「それで、そいつと俺に繋がりがないってことが知れ渡って、結局またいじめられて。それでそいつはビルの上からサヨウナラ、と」
朧「……」
提督「教師どもはその責を俺に押し付けようとしたんだが、この時ばかりは親が出てきて弁護士呼んじまった。だから俺は全然喋ってねえ」
朧「……いじめてた人たちはどうなったんですか」
提督「知らねえな。興味もねえ」
朧「朧は、そういう人たち、許せないです……! 提督、どうにかできなかったんですか?」
提督「そういうふうに義憤にかられることも昔はあったけどな。もう諦めちまった」
朧「諦めた、って!?」
提督「だってなあ、いじめられるよりも、妖精とお話しできちゃう気狂いの仲間に見られる方が嫌だ、って言われてるんだぜ」
朧「……っ!」
提督「俺が誰かの味方になること自体、望まれても許されてもねえんだ。俺が善意で動いても拒絶されて終わりさ」
提督「だから諦めた。本当に俺に向かって、助けて欲しいと言われない限り、手も口も出すのを諦めた。それだけの話だ」
朧「提督……」
85 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/24(日) 23:05:15.89 ID:1m+de9zfo
提督「……如月のときも、体中傷だらけでひどい有様だった。いっそ死んでしまったほうが楽なんじゃねえか、って思いもしたんだ」
提督「助けてやろうと俺から言わなかったのも、助けを望んでないならただのお節介、有難迷惑にしかならねえからだ」
提督「あいつみたいに、助けて欲しいなんて言ってない、なんて言われたくなかったからな……いっそ介錯してやろうかとも考えたくらいだ」
朧「……」
提督「だが、如月は、助けて欲しいと言った」
提督「どうせ死ぬなら、この世界の嫌なものを一つでも消して、少しでも自己満足を満たしてから死にたかったからな。刺し違えるのも悪くねえ」
提督「……でも、よく考えたら、俺もとんでもねえ卑怯者だな」
朧「ど、どうしてですか!?」
提督「だってなあ、生きたいか死にたいか聞いて、わざわざ言質取ってんだぞ? 自分が責任を取りたくねえ教師どもと同じじゃねえか」
朧「っ……そんなことないです! 朧は、いつもそうやって、自分のことを悪く言う提督はキライです!」ガシッ
提督「!」
朧「提督は、いつも朧たちの味方になってくれるじゃないですか! それこそ提督が悪者になることもいとわずに!」
朧「提督は、何も悪いことをしていないのに、そこにいるだけで悪者にされてきただけです!」
朧「提督は、悪い人なんかじゃありません!」
86 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/24(日) 23:06:01.18 ID:1m+de9zfo
提督「……」
朧「……」
提督「そういうことにしとくか……また頭突き貰いたくねえしな」
朧「もう……! 提督はどうしてそう一言多いんですか!」
提督「しょうがねえだろ、俺が生きてていいのか、未だに疑ってるくらいだからな」
提督「でもまあ、朧にそこまで言ってもらえるんなら、悪くはねえか」ナデ
朧「提督……」
提督「! 朧、この本……」
朧「あ……」
提督「ああ、こいつか。これ書いたの、芥川龍之介だったか」ペラペラ
朧「読んだことあるんですか!?」
提督「だいぶうろ覚えだけどな」
朧「そうですか……!」パァ
提督「?」
朧「あの、提督は、ほかにどんな本を読んでたんですか?」
提督「いや、もうタイトルとか作者とか、殆ど覚えてねえんだけどなあ……」
朧「どんな話でした? 教えてください!」
提督「んーとな……」
87 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/24(日) 23:06:45.95 ID:1m+de9zfo
* その日のお八つ時 食堂 *
霞「って言う話を立ち聞きしたんだけど」
摩耶「あいつ、尋常じゃねえ嫌われ方してたんだな」
霧島「……司令も、肯定してもらえない苦しみを理解しておいでだったんですね」
陸奥「っていうか、よくそれで生活できていたわよね……」
利根「それは妖精さんたちのおかげであろうな」
潮「……」
潮(朧ちゃん、提督のこと好きだよね……?)
潮(それに加えて、その提督が読書仲間で嬉しいんだろうなあ……)
潮「うふふふ……」ニコニコー
摩耶「お、おい、潮?」
霞「あんた、なににやにやしてんの?」
潮「ふえっ!? あ、いえ、提督も、穏やかになったんですね、って! 思っただけです!」アセアセ
霞「穏やか……まあ、そうね。一昔前なら朧も追い払われてたんじゃない? 素直になったと思うわよ」
88 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/24(日) 23:07:46.11 ID:1m+de9zfo
摩耶「アタシは霞の素直っぷりにも驚いてんだけどなあ……」
霞「私も諦めてるだけよ。あいつに何を言ったって、どうせ蛙の面に水なんだもの」
利根「面倒臭いと常々言っておきながら、やるべき仕事はきっちりやっておるからの。叱責するにも責がないのではな」
摩耶「それで大和さんにもモテて、ってか。けっ、完璧すぎて面白くねーな」
利根「いやいや、あの性格だぞ? 自力で立ち上がれない者にすら容赦ない物言いじゃ、周囲の顰蹙を買うこともままある」
陸奥「それに、提督は結婚願望ないわよ? それこそ大和みたいに提督が好きな艦娘たちにとっては、報われようがなくて不憫なんだけど」
霧島「……金剛お姉様も厄介な人に目を付けたんですね……」
陸奥「そうね……懲りないながら楽しそうだけど」
潮「……あ、それから、提督は泳げないですよね」
摩耶「ぶっ! マジかよ、だっせえな」
霞「あまりそういうこと言わないでくれる」ギロリ
摩耶「!?」ビクッ
潮「あ、あはは……えっと、あと、絵をかくのも苦手みたいです」
摩耶「ふーん。なーんか、つついてもしょうがねえ欠点だなあ……」
89 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/24(日) 23:08:32.64 ID:1m+de9zfo
霧島「摩耶。あなた、司令のことを調べてどうする気なの?」
摩耶「だってあいつ、生意気じゃないっすか。ああいう天狗になってる奴は、一回何かで勝負して、鼻をへし折ってやんねーと!」
潮「天狗……?」
陸奥「天狗になってるところ、あったかしら」
利根「むしろ自分を卑下してばかりじゃろう……?」
潮「態度は悪いですけど、自分は間違ってない、って自負してるから、あんな感じなんですよね」
摩耶「それこそ自惚れじゃねーか?」」
霞「っていうか、多分勝負とか挑んでも意味ないわよ。あいつ、絶対『面倒臭いから全部負けでいい』って言うから」
利根「あり得るな」
陸奥「間違いなく言いそうね」
潮「か、簡単に想像できちゃいますね……」
摩耶「はぁ!? 腰抜けかよ!」
霞「あいつに何を言ってもいいけど、やる気にさせる言葉なんてないわよ。できてたら私が言ってるわ」
陸奥「なんていうか、霞が言うと説得力があるわね」
90 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/24(日) 23:09:31.09 ID:1m+de9zfo
摩耶「……くそっ、なんとかあいつをぎゃふんと言わせる方法はねえのかよ!」
霞「案外、言うんじゃない?」
陸奥「頼めば言ってくれそうよね、ぎゃふんの一言くらいは」
摩耶「意味ねえええ!」
霧島「摩耶、どうしてあなたはそこまで司令に突っかかるの?」
摩耶「あいつの態度が気に入らねーんすよ!」
潮「そ、それは、多分、直らないと思います……」
霞「そうね、私もそれは諦めたほうがいいと思うわ」
利根「むしろ、これまで鎮守府で起こったトラブルを収めてきたのは、あの性格あってのことではないか?」
陸奥「だとしたら直しようがないわね……」
摩耶「……」
霧島「摩耶、やめておきましょう?」
摩耶「納得いかねえっすよ……」ガックリ
91 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/24(日) 23:10:16.09 ID:1m+de9zfo
* 数日後 食堂 *
霧島「あー、あー、ワン、ツー。テス、テス」
提督「ん、マイクのテストか」
霧島「はい! 司令もお使いになるでしょうから、テストにお付き合いください。マイクに向かって一言どうぞ」
提督「そうだな……なんて言えばいい?」
霧島「……!」ピーン
霧島「ぎゃふん、でお願いします」
提督「ぎゃふん」
霧島「……」
提督「これでいいのか?」
霧島「ほ、本当に言うんですね……」
提督「お前がお願いしますって言ったんじゃねーか」
金剛「テートクゥゥ! 次は『金剛愛してる』って shout してくだサーイ!」
提督「面倒臭え」
金剛「Whaaaaaaaaaaaat's !?」
92 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/05/24(日) 23:14:42.05 ID:1m+de9zfo
今回はここまで。
動画サイトから来た人が多くてびっくりです。影響力でかいのですね……。
ただ、あちらは続きが投下されてないせいで、
検索履歴に「墓場島鎮守府5」が出てきてるのが、なんと言いましょうか。
日常編はもう少し続きます。
93 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/05/25(月) 18:35:11.34 ID:Yw732zD90
芥川龍之介の河童かなと思ってたら
芥川って名前が出てきて確信、作者さんは本好きね
あれ、語り手が最後精神病院に押し込められているっていうオチも
なんというか色々考えさせられる話なんよね
いつも楽しみによんでおります、次回更新もお待ちしております
94 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/05/26(火) 03:23:06.50 ID:1TRHKKLb0
楽しみにしてます。体には気を付けて
95 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/05/27(水) 22:22:46.31 ID:dhzCxVljO
お疲れ様です。
続き待ってます!
96 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/06/02(火) 00:26:27.52 ID:XpGC+EfY0
最高っす
97 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/06/04(木) 22:29:44.42 ID:kqphyG/co
最後の書き込みのときだけ上げるので
普段はできるだけsage進行でお願いしますね。
続きです。
98 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/06/04(木) 22:30:34.44 ID:kqphyG/co
* 二週間後 執務室 *
(廊下からかけてくる足音)
タタタタ…
タンッ!
クルクルクル…
那珂「提督さぁぁぁん!」スターン!
那珂「素敵なステージをありがとーーー!」シャラーーン!
提督「……あぁ?」ギロリ
那珂「ヒィィ!?」ビクッ
不知火「申し訳ありません、丁度望ましくないニュースを司令にお伝えしたばかりだったので」
那珂「そ、そうなんだ……そういうことならしょうがないけど……」
提督「そういや今日がお披露目だったな。まあ、普通なら盛大に祝ってやるところなんだろうが……!」
提督「ったくよぉ……本っ当に、人間ってやつは訳がわかんねえ!!」
那珂「……な、何があったの?」
不知火「黒潮がいた鎮守府の保提督が、自首したんです。よりによって、警察に」
那珂「え?」
99 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/06/04(木) 22:31:17.71 ID:kqphyG/co
不知火「当然、鎮守府にも関係者にも警察の捜査の手が回ります。保提督は、そうなるようにこっそりと警察に連絡を入れたそうです」
不知火「海軍も突然のスキャンダルの火消しに躍起になっていますが、一番ダメージが大きいのは現政権でしょう」
那珂「な、なんで?」
提督「保提督は部下の艦娘に売春させようとしたんだよ」
那珂「んいっ!?」
提督「その売った相手が与党議員の息子だって話だ。そいつらから艦娘を助けたのが保提督の部下だった黒潮だ」
提督「先月の黒い雲の話も知ってるな? あれを引き起こしたのが、その売られかけた艦娘の一人、雪風だ」
提督「羅針盤を無視して黒潮を探し回ってる間に、空母棲姫に因縁付けられてああなった」
提督「黒潮は、保提督鎮守府の陽炎型の一番上、まとめ役だったからな。妹が心配なのはどの艦娘も一緒だろう」
那珂「……う、うん、それはそうだよね。那珂ちゃんも、神通ちゃんにいっぱい心配してもらったし……」
提督「不知火も中将んとことの行き来がある。寂しい思いはさせたかねえんだが、こればっかりはな」
提督「ともかくだ、保提督が自首したっつうのも突然の話でなあ……残った連中のことは考えてねえのかよ」
不知火「いえ、保提督は既に余所の鎮守府へ、艦娘の異動を打診していたそうです」
不知火「この鎮守府への異動は認められませんでしたが」
提督「……問題起こすか、轟沈するか。素行か縁起の悪い艦娘以外、こっちには着任させたくねえってか」ケッ
100 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/06/04(木) 22:32:03.33 ID:kqphyG/co
提督「くだんの雪風ならと思ったが、そっちも異動済みだって話だしな。まったくもってままならねえぜ、くそっ」
提督「黒潮も最近は飲まず食わずでやつれてきてるしな。我慢を強いるのも限界だって時に、事態が悪化したんじゃどうなるかわかんねーぞ」
不知火「……」
那珂「……保提督はどうするつもりなのかな」
不知火「可能な限り重い罪状で、刑に服すことを望んでいるようです」
那珂「反省してる、ってこと……?」
不知火「それもありますが、共犯だった相手……自分を脅し続けた三人に重い罰を与えるのも狙いのようです」
提督「いじめられっ子の最後の抵抗、ってとこか? 遅きに失した感はあるがな……今更なんで考えが変わったのか、さっぱりだぜ」
那珂「……」
提督「だがまあ悪い話ばかりじゃねえな。艦娘に手を出して重い罪が課せられるようになるなら、以後に対する多少の抑止力にはなってくれるか」
那珂「……そんなの、悲しすぎるよ。私たちは、人を信じて戦ってるのに……!」
提督「人間なんてそんなもんだ。自分の立場が悪くなりゃあ、ころっと手のひら返して裏切るなんてよくある話だろ」
那珂「で、でも! そんなこと言ったら……提督さんも、なの……?」
提督「当然、俺も含めてだ。むしろ俺みたいなやつが一番信用できねえだろ」
不知火「……」ジロリ
那珂(不知火ちゃんの提督さんを見る目つきが怖い!)ビクッ
101 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/06/04(木) 22:32:47.85 ID:kqphyG/co
如月「ふぅ〜ん……?」
那珂「!?」フリムキ
如月「司令官ったら……懲りずにまだそんなことを言うの?」ユラァ
那珂「!?」ビクビクッ
妖精「提督は、ちょっと目を離すとすぐにこうだもんね」ヒョコッ
提督「妖精……お前、如月に知らせたのかよ」
如月「あら、そこで妖精さんを咎めるのは違うんじゃないかしら?」ツカツカ
ガシッ (提督の顔を両手で挟むように掴む如月)
如月「司令官? あなたこそ、できもしないことを嘯くの、やめてくださいます?」
提督「むぐ……」
如月「嫌われたほうが、いなくなった時に誰も悲しませずに済む、とか、考えてるんでしょう?」
提督「……」
如月「そういうの、如月は許さないんだから」ズイ
如月「たとえあなたが地獄に逃げても、如月はどこまでもお傍にいますから……ね?」ニコォ
提督「……」タラリ
那珂(如月ちゃん、提督さんに鼻がくっつくくらい顔を近づけてる……)ドキドキ
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