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麻子「……華、さん」 華「はい?
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1 :
書き溜め投下します
:2020/01/12(日) 19:13:40.65 ID:zPoxPRfb0
ー大洗女子学園演習場ー
ドォォォン… ヒュパッ!
『――アンツィオ高校CV33、全車走行不能! 大洗女子の勝利!』
ペパロニ「んあー負けちったかぁ! すいませんドゥーチェ〜」
アンチョビ「も〜、ちゃんと色鉛筆作戦の説明しただろ〜?」
ペパロニ「や〜作戦は聞いてたんすけど戦車乗ったら内容忘れちゃって!」
アンチョビ「ぐぬぅ……お前いつもそう言ってないかぁ?」
カルパッチョ「まぁまぁ、今日は親善試合ですから」
みほ「お疲れ様でした、アンツィオ高校の皆さん」
優花里「相変わらず勢いのある素晴らしい戦いでしたね!」
麻子「まぁいつものアンツィオだったな」
ペパロニ「そうっすか? いやーそこまで褒められると嬉しいっすね!」
アンチョビ「負けたのに喜ぶなーっ!」
沙織「まーまー楽しい試合ができたのは事実だし!」
アンチョビ「そ、そうか? なははは! では負け試合……じゃなかった、良い試合のあとは宴だー!」
華「やりましたぁ♪」
沙織「華、試合の時より楽しそうだね」
華「アンツィオの方々が作るお料理はどれも美味しいですから。わたくしもう試合の前からお腹が鳴ってて……」グギュルルルル
ペパロニ「いいっすねぇ〜姐さん! 窯一杯にパスタ作るから遠慮しないでくださいっすね!」
華「はい、全部いただきます♪」
ペパロニ「……やっぱりちょっとだけ遠慮してほしいかもっす」
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1578824020
2 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/01/12(日) 19:15:55.04 ID:zPoxPRfb0
‐アンツィオ の屋台、物陰‐
ワイワイ ガヤガヤ
カルパッチョ「……」コソコソ
カルパッチョ「(ふふふ……いよいよこの時が来たわ!)」スッ
カルパッチョ「(スペインっぽい階段の横の路地裏で売っていた……このソースを使うときが!)」
カルパッチョ「(聞けばこのソースを口にした直後に見た相手を、誰であろうと好きで好きでたまらなくなってしまうといういわゆる『惚れ薬』……宴会の最中にこれをたかちゃんの料理に入れれば……)」
カルパッチョ「(『ひなちゃん、キミがそんなに素敵な女性だと気づかなかった。結婚しよう!』……なんてことに!)」ムフフフ
カルパッチョ「……あんまりこういうことしちゃいけないのはわかってるけど……こうでもしないとたかちゃん、私の気持ちに気付いてくれないし……」
アンツィオ生徒「――パッチョ姐さーん、何やってんすかそんなとこで?」
カルパッチョ「わひぃ!? な、なんでもないのよなんでも!」ササッ
アンツィオ生徒「あ、もしかしてつまみ食いっすか!? 宴前なのに姐さんも食い意地張ってんなぁ〜!」
カルパッチョ「あはは、そ、そうなのお腹すいちゃってつい〜。さ、私たちも宴の準備しに行きましょう!(ひとまずここに隠しておきましょう)」コトッ
アンツィオ生徒「えっ、でも私ペパロニ姐さんに……あれ、何言われたんだっけ? んーまぁいいや!」
スタスタ…
…
…スタスタ
ペパロニ「――おーい、トマトソースまだ見つかんないのか〜? ……って誰もいねーじゃん。ったくもー、さてはつまみ食いしに行きやがったなぁ?」
ペパロニ「えーとソースソース……ん? 何だこのタバスコみてーなの?」ヒョイ
ペパロニ「真っ赤なソースみたいだな……クンクン。なんかいい匂いっすねぇ。もしかして新しく仕入れた調味料かな? ちょうどいいや使ってみっか!」
3 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/01/12(日) 19:18:54.78 ID:zPoxPRfb0
アンチョビ「さー諸君! 存分にアンツィオの料理を楽しんでくれたまえ!」
イッタダキマース!
左衛門佐「この美味さ……さながら四条畷の戦いか」
おりょう「シャクシャイン並みの食べごたえぜよ」
エルヴィン「プルホロフカ級の物量だな」
カエサル「第二次ポエニ戦争だ」
「「「それだ!!!」」」
ワハハハハ…
カルパッチョ「た〜かちゃん♪」ポン
カエサル「あっ、ひなちゃん!」
おりょう「おっと、我々はお邪魔ぜよ?」
左衛門佐「席外そうかたかちゃん?」
カエサル「カ エ サ ルっ!!」///
カルパッチョ「今日はたくさん食べて行ってね。たかちゃんに食べてほしくて私が作ったラザニアもあるの!」
カエサル「そ、そうなの? じゃあ、せっかくだし頂こうかな」
カルパッチョ「今持ってくるからね♪」
エルヴィン「羨ましいぞたかちゃん」
左衛門佐「憎いぞたかちゃん」
カエサル「うるさい!」///
カルパッチョ「(ふふふ……あとはあのソースを上から振りかければ……)」コソコソ
カルパッチョ「…………」
カルパッチョ「あ、あれ?」
4 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/01/12(日) 19:22:00.47 ID:zPoxPRfb0
‐あんこうチームの宴会席‐
みほ「ふわ〜、美味しい〜」モグモグ
優花里「いつもながら量も味も申し分ないですねぇ」
沙織「ペパロニさんがどんどん作って持ってきてくれるからついつい食べちゃうよね〜」
麻子「ほとんど五十鈴さんが食べているがな……ケーキとティラミスおかわり」
華「本当に、アンツィオの料理はいくらでも食べられます」モグモグ
ペパロニ「相変わらず五十鈴の姐さんは食べっぷりがパネェっす! そうだ、よかったら新作のパスタ食べてみます?」
華「まぁ、よろしいんですか?」
ペパロニ「新しく仕入れたソースで作ってみたんすよ! さ、味見してみてくださいっす!」コトン
麻子「む……なんだかやたらに赤いな。トマトソースなのか?」
ペパロニ「はい! 多分! さっき初めて作ってまだ食べてないんでわかんないっす!」
みほ「そ、それ変なもの入ったりしてないよね……?」
ペパロニ「大丈夫っすよ〜。ちゃんと食糧庫に置いてあった奴っすから! ほらコレ」ヒョイ
沙織「……何にも書いてない普通の瓶だね」
華「大丈夫ですよ。なんだか刺激的な良い匂いがしますし……いただきます」モグ
カルパッチョ「おかしいわ、どこかに落としちゃったのかしら――あっ!!」
チャント ショクリョウコニ オイテアッタヤツッスカラ
カルパッチョ「あああああなんでペパロニさんがアレを!?」ダッ
5 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/01/12(日) 19:26:29.22 ID:zPoxPRfb0
華「――うん、美味しいです♪ なんというか、独特の甘みがあるというか……」
麻子「甘いのか? 私にも一口くれ」
華「ええ、どう……ぞ……」ジッ…
麻子「? どうした五十鈴さ」
カルパッチョ「そそそそれ返してくださーい!!」ダダダダ
ペパロニ「んお? なんだカルpうおおおおおおお!?」ドゴッ
華「きゃっ!?」
麻子「わぁっ!?」
ドンガラガシャーン!
ナンダナンダ?
ペパロニ「あったたた……もーいきなりなんだよカルパッチョー!」
カルパッチョ「あ、あの瓶は……ああぁっ! 割れちゃったぁ!」ビチャア…
沙織「きゃああああ血ィ! 血ィ〜!!」
優花里「衛生兵! 衛生兵〜!!」
みほ「落ち着いて! 赤いのはただのソースだから! みなさん大丈夫ですか?」
華「は、はい……」
麻子「なんなんだ突然……あぁすまない五十鈴さん、覆いかぶさってしまって」
6 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/01/12(日) 19:29:12.00 ID:zPoxPRfb0
華「……」
麻子「? 五十鈴さん? 大丈夫か?」
華「へ? あ、は、はい……」メソラシ
麻子「?」
アンチョビ「おいおい何の騒ぎだ? ってなんだカルパッチョ血まみれじゃないか!?」
ペパロニ「違うっすよ姐さん! これは新しいソースで――」
カルパッチョ「違うんですぅ! これは、これは〜……!」
アンチョビ「?? な、なんでもいいが怪我はしてないんだな? なら早く着替えてこい! シミになっちゃうぞ!」
カルパッチョ「あぁドゥーチェ違うんです! これはたかちゃんに〜!」
ペパロニ「いいから早くジャケット脱ぎなって!」
カルパッチョ「ちょ、こんなところで脱がさないで! たかちゃんが見てる!」///
アンチョビ「だったら向こうに行くぞ! いやすまないな諸君、こっちは面倒を見ておくから引き続き宴会を楽しんでくれ!」
カルパッチョ「あぁたかちゃん、たかちゃんのぉぉ……」ズルズル
みほ「……な、なんだったんだろうね」
沙織「さ、さぁ……あーもう、パスタも落ちちゃったよ」
優花里「仕方ありませんよ。お二人も大丈夫ですか?」
麻子「あぁ。しかし五十鈴さんが……」
華「だ、だいじょうぶです。わたくしはなんともありませんので……」チラ
麻子「?」
〜〜〜〜〜〜
カエサル「…………」
おりょう「ひなちゃん、料理持ってこないぜよ」
左衛門佐「明智光秀並みの短い天下だったな」
エルヴィン「元気出せたかちゃん」
カエサル「うるさぁ〜い!!!」
7 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/01/12(日) 19:32:38.33 ID:zPoxPRfb0
ー放課後 帰路ー
みほ「今日もにぎやかだったね、アンツィオの人たち」
優花里「とても楽しかったです!」
沙織「流石に食べすぎちゃったかも……明日からまたダイエットしなきゃなぁ」
麻子「それを言うのは何回目だ?」
沙織「女の子はいつでもダイエットしてるの! そもそも華みたいに食べても太らないのが異常なんだよ!」
華「……」
みほ「華さん? どうかしたの?」
華「え? あ、いえ。わたくしも少々、食べ過ぎてしまったのかもしれませんね」
麻子「結局あの後も無心に食べ続けていたしな」
華「す、すみません……はしたないところを」
優花里「いやぁ、五十鈴殿の食べっぷりは見ていて気持ちのいいものですから」
沙織「麻子ももうちょっと華を見習いなよ。小食なくせにケーキとお菓子ばっかり食べてたら栄養偏るよ」
麻子「私は別に太らんからいい」
みほ「そういう問題じゃない気が……あ、私はこっちだから。みんなまた明日ね」
優花里「私もこれにて失礼します!」
沙織「バイバ〜イ」
麻子「ん」フリフリ
華「……」
8 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/01/12(日) 19:35:56.26 ID:zPoxPRfb0
沙織「あれ? 華の家って反対側じゃなかった?」
華「え、ええその……少し夜風に当たってお腹を熟そうと思いまして」
麻子「まだ食べる気か?」
華「ち、違います!」
沙織「冗談に聞こえないのが怖い……んじゃ私も行くね。麻子も早めに寝なよ」
麻子「はいはい」
華「おやすみなさい」
麻子「……」スタスタ
華「……」スタスタ
麻子「……」スタスタ
華「……」スタスタ
麻子「……五十鈴さん」
華「は、はい?」
麻子「もうこっちは私の家の方向だぞ。帰らなくていいのか」
華「あ――そ、そうですね。帰らないといけませんね……」
麻子「……やっぱりあの料理を食べてから何か変だぞ。具合でも悪いのか?」
華「そういうわけでは……ないんですけど」
麻子「顔がずっと赤い気がするのは私だけか? 熱でもあるんじゃないか」
華「そ、そう見えますか……」
麻子「見える。いつもの五十鈴さんより……なんとなく弱々しいというか」
華「……すみません。なんだか自分でもよくわからなくて……」
麻子「もし具合が悪いのなら、ちゃんと言ってほしい。なんならこのまま家で休んでいくか?」
華「わ、わたくしが麻子さんの家に……ですか?」
麻子「嫌なら構わないが」
華「嫌なわけないです!!!」
麻子「わぁ! び、びっくりした。いきなり大声出さないでくれ」
華「す、すみません……」
9 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/01/12(日) 19:38:30.54 ID:zPoxPRfb0
ー麻子の部屋ー
ピピピピ…ピピピピ…
麻子「熱はどうだ?」
華「大丈夫です……少しいつもより高めでしたけれど」
麻子「そうか。明日も治らないようなら病院に行くんだぞ」
華「はい……すみません、妙なご心配をおかけしてしまって」
麻子「気にするな。仲間だからな」
華「……麻子さんってとても優しいですよね。一見すごく冷めてらっしゃるように見られがちですけど」
麻子「買い被りだ。私はただ……」
華「?」
麻子「……いや。まぁ、調子が戻るまで少し休んでいくといい。今お茶を出す」
華「あ、そんなお構いなく」
麻子「ほい、どうぞ」ドン
華「(『へ〜いお茶』のペットボトル……)」
麻子「湯呑に入れた方がいいか?」
華「いえ……大丈夫です」コクコク
麻子「そうか」ングング
10 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/01/12(日) 19:41:24.25 ID:zPoxPRfb0
華「ま、麻子さん?」
麻子「なんだ」
華「……あ、あの。今宵は良い天気だと思いませんか?」
麻子「まぁそうだな。雲一つない試合日和だった」
華「本当に。特に夜になって……月が綺麗ですね」
麻子「確かに。満月が見えている」
華「……」
麻子「(……ん? 月が……?)」
華「……」ジッ…
麻子「……今のは何かの冗談だったのか?」
華「いえ……すみません、お忘れください。わたくしったら何をいきなり……」
麻子「いや、別に謝らなくていいが」
華「……本当に、すみません」スッ
麻子「お、おい……五十鈴さん?」
華「麻子さんのおっしゃる通り、なんだかわたくし、変なんです。先程から麻子さんを見ていると、体が熱を帯びてくるような感じがして……」
麻子「ちょっと待て。女同士で妙なことを―ー」
華「麻子さんはわたくしのこと、お嫌いですか?」
麻子「き、嫌いじゃないけど。どうしたんだ、やっぱりおかしいぞ五十鈴さん」
華「……」
麻子「……今日食べた料理……そうだ、あのパスタに何か変なものが入ってたんじゃないか。きっとそのせいでおかしくなってるんだ」
華「……そうかもしれないし、そうじゃないのかもしれません」
麻子「え?」
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/01/12(日) 19:44:05.50 ID:zPoxPRfb0
華「すみません、女性の友人相手に、自分でもおかしいことだと思うのですけれど。こんなに……こんなに熱い気持ちになったのは本当に生まれて初めてで」
麻子「……おい、五十鈴さん」
華「昨日までなんともなかったのに、さきほど麻子さんの顔を間近で見てから、急に麻子さんのことしか考えられなくなってしまって――」
麻子「五十鈴さん!!」
華「あっ……」
麻子「今の五十鈴さんは明らかにおかしい。あまりにもその……なんだ。そういうことを言うにしても、急すぎるぞ」
華「……ごめんなさい」
麻子「普段の五十鈴さんはもっと思慮深く行動するだろう。大体、今まで何とも思わなかった同性の知り合いに突然そんな感情を抱くなんて、異常だ」
華「……異常……ですか」
麻子「あ……いやつまり、唐突すぎるんだ。今日の試合までは何事もなかったのに、そんないきなり。自分でも少し変だと思わないか?」
華「……そうですね。その通りです。申し訳ありません麻子さん」
麻子「……今日はゆっくり休むんだ。件の料理については後で何を使ったのか聞き出そう」
華「はい……」
麻子「……一人で帰れそうか?」
華「大丈夫です。このままだと、麻子さんにご迷惑をおかけしてしまうので」
麻子「いやそれは……と、とにかく気を付けて帰るんだぞ。事故に遭わないように」
華「はい。気を付けます」
12 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/01/12(日) 19:47:11.11 ID:zPoxPRfb0
――翌日
ー大洗女子学園格納庫ー
桃「それでは本日の練習を始めるぞ! 各員戦車に搭乗!」
オォーッ ドタドタ
優花里「さぁ今日も張り切ってまいりましょう〜!」
麻子「……」
沙織「麻子、眠いの?」
麻子「い、いや……目は覚めてる」
華「……」チラ
みほ「華さんもなんだか調子悪そうだけど……大丈夫?」
華「は、はい……」チラ
麻子「(……なんだかやりづらいな)」ハァ…
沙織「もしかしてアレ来てるの?」
華「そうではなく……その……」モジモジ
優花里「なんとなく調子が悪い日もありますよ。お休みされた方がよいのでは?」
華「いえ、わたくしは大丈夫です」チラ
みほ「……?(華さん、さっきから麻子さんのこと見てる?)」
杏「おーいあんこうチームどした〜? 早く戦車乗っちゃいなよ」
みほ「あ、はい! とりあえず、始めるよみんな?」
麻子「……あぁ」
13 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/01/12(日) 19:50:24.36 ID:zPoxPRfb0
オツカレサマデシター
杏「西住ちゃ〜ん」
みほ「!」
杏「なんか今日のW号いつもよりのんびりだったね〜。もしかして誰かお月様だった?」
みほ「いえ、そういうわけじゃないんですけど……」チラ
華「ふぅ……」
優花里「五十鈴殿ぉ、やっぱりどこか具合が悪いのでは? 三発連続で的を外すなんて……」
華「すみません、ご迷惑をおかけして……」シュン
沙織「まぁたまにはそういう時もあるよ。私たち複雑なお年頃の乙女だし」
麻子「……沙織」
沙織「ん、何?」
麻子「お前、アンツィオの人の連絡先知ってるだろう」
沙織「あぁうん。前に遊びに行った時に番号交換したけど」
麻子「あの料理が得意な人の番号を教えてくれ」
沙織「ペパロニさん? どうして?」
麻子「五十鈴さんが昨日から体調を崩した原因を調べるためだ」
沙織「原因……ってちょっと、まさか食中毒とか疑ってるの!? あの日私ら全員同じ物食べたんだよ!?」
優花里「あっ……違います! 確か五十鈴殿だけが食べた料理があります! 途中でごたごたになってしまいましたけど」
沙織「あ!」
麻子「別に向こうの責任を追及しようとしてるわけじゃない。あれが何の料理だったのか、どんな成分の材料を使っていたのか聞くだけだ。もしかしたら五十鈴さんの体質に合わないものがあったのかもしれない」
沙織「で、でも華ってアレルギーとかなかったはずじゃ」
麻子「成熟してから特定の食べ物に反応するようになる例もある。細かく聞きたいから直接連絡する」
沙織「そ、それじゃ私が聞いとくよ」
麻子「…………いや、私が直接聞く」
華「!」
沙織「でも私の方が向こうと面識あるし……」
麻子「いいから。私が原因を調べたいんだ」
沙織「ぅ、わ、わかったよ。でも一応、私の番号から連絡するよ?」ピッ
みほ「何のお話?」
優花里「冷泉殿が今からすこし……」
14 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/01/12(日) 19:53:18.47 ID:zPoxPRfb0
−アンツィオ高校−
ペパロニ「――昨日試作した料理っすか?」
麻子『疑うような真似をしてすまない。私たちは何ともないから、単なる可能性の調査だと思って教えてほしい』
ペパロニ「なんだかよくわかんないっすけど、材料を教えればいいんすよね?」
麻子『ああ、できれば同じ鍋で使った食品も全部教えてほしい』
・・・ペパロニ説明中・・・
ペパロニ「……ってとこっすね」
麻子『……あの時、何か新しいソースを使ったとか言ってなかったか?』
ペパロニ「あっ、そういえば! あれカルパッチョが仕入れてきたヤツらしかったんすよ」
麻子『何のソースだったんだ?』
ペパロニ「カルパッチョが言うには露店で売ってた特別なソースだったとか……瓶が割れちゃったんでもう残ってないっすねぇ。なんだったんだろアレ」
麻子『……それ、ちゃんと安全に食べられるものだって確認したのか?』
ペパロニ「いや、匂いが良かったんで、そのまま使ったんすけど」
麻子『……』
ペパロニ「? もしもし?」
麻子『……ペパロニさん、だったな。一つ言わせてくれ』
ペパロニ「?」
麻子『成分もわからない、得体のしれないモノを料理に使うな。ましてや、それを他人に、私の仲間に毒見させるな』
ペパロニ「っ…………」
麻子『料理人なら「食べさせる」ということがどれほど慎重さを必要とするかよくわかってるはずだ。二度とそんなわけのわからないものを料理に使おうとしないでくれ』
ペパロニ「…………はい。本当に申し訳ないっす。安全なものって確認ができるまで、絶対料理には入れないっす」
麻子『頼むぞ……そのカルパッチョさんと話はできるか?』
ペパロニ「それがさっき先に帰ったばっかで……うし、ちょっと追いかけてくるっす! すぐに連絡させますから待っててくださいっす!」プツッ
15 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/01/12(日) 19:56:44.93 ID:zPoxPRfb0
麻子「……切れた」ツーツー
優花里「な、なんか途中で冷泉殿が怖い顔になりましたけど……何かあったんですか?」
麻子「いや……後でカルパッチョさんから連絡させるそうだ」
沙織「一応あの人の番号も知ってるけど……」
麻子「向こうで事情が伝わってからの方が話が早い。少し待つ」
みほ「華さん、いま麻子さんが聞いた食べ物の中に思い当たるものとかあった?」
華「いえ……特には」
沙織「なんか話が大きくなってる気がするんだけど……華、いきなり倒れたりしないでよ?」
華「沙織さんにそんなことを言われるとなんだか不安になってきますね……」
沙織「ああごめんそんなつもりじゃ!」
麻子「大丈夫だ」
華「!」
麻子「今のところ五十鈴さんの体に大きな異変があるわけじゃない。万が一よほど毒性のあるものを食べていたなら……とっくに病院送りになってるだろうしな」
優花里「怖いこと言わないでくださいよぉ」
麻子「もしかしたら単に風邪をひいただけかもしれない……から。何にしても私が原因をはっきりさせてやる。心配するな」
華「……は、はい」ドキドキ
みほ「…………華さん、麻子さんと何かあったの?」ヒソ…
華「へ? い、いぇ、何もございません!」
みほ「そ、そう?」
桃「こらあんこうチーム! いつまでも駄弁ってないでさっさと下校しろ!」
優花里「はぁーい」
16 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/01/12(日) 20:00:17.58 ID:zPoxPRfb0
-帰路-
♪〜♪〜
沙織「あ――カルパッチョさんからだ!」
麻子「貸せ」パシッ ピッ
沙織「あっちょっ」
麻子「もしもし。そうだ、沙織の友人の冷泉だ。そうだ。…………は?」
『―――! ――!?』
みほ「?」
麻子「いや……体調には問題ないが……うん。しかし……いや、その、正直わけがわからんが……安全なのは安全なんだな? わかった」
優花里「今度はえらく狼狽えてますね」
麻子「……別にあなた達を責めてるわけじゃない。ただこっちは事故に遭ったようなものなんだ。謝罪はいいから、詳しい情報をきちんと調べてほしい……あぁ、私の連絡先も沙織から聞いてくれ。じゃあよろしく」ピッ
沙織「ど、どうだった?」
麻子「ん……とりあえず五十鈴さんが死ぬようなことはない。ただその……あー……」チラ
華「……?」
麻子「……試作に使ったソースが賞味期限切れだったかもしれないらしい。で、詳しく調べたらまた連絡をくれるそうだ」
優花里「やっぱり食当たりだったってことですか?」
麻子「まぁ……多分そんな感じだ。何にせよ深く心配する必要はないだろう」
沙織「そっか。よかった〜」ホッ
みほ「でも、具合がよくないのは事実だし……華さん無理しないでね?」
華「は、はい」
麻子「……じゃ、私は帰る」クルッ
沙織「ん、じゃね〜」
華「あっ……」
みほ「……?」
華「……わ、わたくしも今日はこれで」
優花里「お体気を付けて下さいね、五十鈴殿!」
17 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/01/12(日) 20:02:19.17 ID:zPoxPRfb0
−麻子の部屋−
麻子「…………」
ピンポーン ガチャ
華「……えっと……」メソラシ
麻子「……今から電話しようと思ってたんだが。まさかわざわざ来てくれるとはな」
華「……ダメ、でしたか?」チラ
麻子「い、いやダメとは……まぁ、上がってくれ」
華「失礼致します……」
麻子「今お茶を」
華「麻子さん」ギュッ
麻子「……なんだ」
華「アンツィオの方から何をお聞きしたんですか? 食当たりなんかじゃないのは自分で分かってます」
麻子「…………くだらん話だ」
華「え?」
麻子「ペパロニさんが出してくれたあの試作品のパスタ……新しいソースを使ったと言っていただろう」
華「そういえば……そんなことを仰っていたような」
麻子「詳細は省くが……そのソースというのがだな」
華「はい」ギュウ
麻子「……五十鈴さん、腕を離してくれないか」
華「あっ……す、すみません」パッ
麻子「ん……まぁ胡散臭いし本物かどうか知らんが。惚れ薬だったらしい」
華「……はい?」
麻子「どこかの露店で買ったものを食材と勘違いして使ってしまったそうだ。それが運悪く五十鈴さんの口に入った」
華「……えっと、その、惚れ薬? の効果というのは?」
麻子「単純なものだ。口にして、最初に目に入った人に夢中になってしまう。それも性別も関係なく……と、銘打っていたらしい」
華「それで、わたくしは……」
麻子「食べた直後に見たのがたまたま私だった。で、そのあと五十鈴さんは……ああなった。信じがたいが、事実そういう効果があったわけだな」
華「……そう、だったのですか……」
18 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/01/12(日) 20:06:54.88 ID:zPoxPRfb0
麻子「つまり、五十鈴さんは今おかしな薬のせいでおかしくなっているだけだ。昨日みたいな……体に熱がこもってしまうのも、薬の作用による錯覚だったんだ」
華「……それは、どれくらい効果が続くものなのですか?」
麻子「そこまでは知らないらしい。だがきちんと調べて報告するように頼んでおいてから安心してくれ」
華「……」
麻子「さっき電話でそれを伝えるつもりだった。その……問題の質が質だからな。みんなの前で言うと変な誤解を招きかねない」
華「誤解、とは?」
麻子「だから……同性の私をそういう目で見ている、とか。五十鈴さんも困るだろう、そんな風に思われるのは」
華「……麻子さんは」
麻子「え?」
華「麻子さんは……困りますよね。私がそういう風に見ていたら」
麻子「えっ……」
華「……」ジッ…
麻子「……いや、それは……困るというか……困惑するというか……」
華「……そうですね。きっとわたくしが逆の立場でもそう思いますから」
麻子「そ、そうか」
華「……。少し、お手洗いをお借りしてよろしいですか?」
麻子「あぁ」
パタン…
麻子「(……わからん。五十鈴さんは何を考えているんだ? まだ薬の効果は残っている……ということだろうが)」
麻子「(私はどうすればいいんだ。沙織にそれとなく聞くか? いや、あいつは男専門だし……いやそもそも時間が経てばもとに戻る……はずなんだから、どうもしなくていいのか)」
19 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/01/12(日) 20:09:46.88 ID:zPoxPRfb0
ジャゴォ〜 パタン
華「申し訳ありません、わたくしの……こんな事故に巻き込んでしまって」
麻子「あ、いや。気にするな。事故って言っても、命にかかわることじゃないんだから……」
華「……」
麻子「……」
麻子「(……き、気まずい。なんだこのかつて体験したことのない妙な空気は)」
華「……あの」
麻子「ん?」
華「麻子さん、わたくしが変になってしまった原因を自分が調べる、って言ってくださいましたよね。何故ですか?」
麻子「何故って……仲間だからな」
華「沙織さんが電話してくれてもよかったのに?」
麻子「それは……何が聞きたいんだ?」
華「…………わかりません」
麻子「五十鈴さんは今、言ってみれば毒に侵されてるんだ。変なことを考えてしまうだろうし、おそらく感情と思考が一致しない状態なんだと思う。無理に何かしようとしなくていい」ポン
華「あっ……!」ビクン
麻子「あ……す、すまん。今は触れない方がいいか」
華「は、はい。その……ドキッとしました」
麻子「え……」
華「……すみません」
麻子「い、いや謝らないでいいから」
華「……」メソラシ
麻子「(くそ、誰でもいいからこの空気をどうにかしてくれ……)」
20 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/01/12(日) 20:18:37.47 ID:zPoxPRfb0
華「……そろそろ、お暇致しますね」
麻子「あ……気を付けてな。一人で帰れるか?」
華「ふふ、麻子さん昨日も同じこと言ってましたよ?」
麻子「……車に気を付けるんだぞ。信号よく見て、ボーっとしないように」
華「分かってます。では……」ペコ
麻子「ん」
ガチャ…
麻子「ふぅ……」ドキドキ
麻子「(いやなんで私が緊張してるんだ。……まぁ仕方ないか。こんなことで五十鈴さんに変に思われても嫌だし……)」
麻子「(……なんで? 西住さんや秋山さんと違って一応中学から面識はあるし、何をいまさら……)」
麻子「(……あぁそうか。怖いんだな。こういうデリケートな問題は苦手だから、それで友達を失うのが)」
麻子「(五十鈴さんも……きっと不安なんだろう。なら私はいつも一緒にいるように、普段通りしているべきだ)」
――二日後
−大洗女子学園格納庫−
沙織「おっつかれ〜! ねー今日ちょっと寄り道してかない? 新しいデートスポット見つけちゃってさ〜」
華「デートスポットに友達と行くんですか……?」
沙織「リサーチよリサーチ! 近くにおしゃれなブティックもあるらしいからそこでさらに女子力磨けるかも〜♪」
優花里「女子力って女子校でもそんなに大事なんですかねぇ?」
みほ「さぁ……?」
華「……まぁ、たまにはそういうのもいいかもしれませんけれど」
沙織「あれ、華もやっとそういうの意識するようになってきた〜?」
麻子「私はパス。今日はちょっと読みたい本がある」
華「ぇ……」
みほ「!」
沙織「も〜たまには麻子も来ればいいのに! 付き合い悪いとモテないよ?」
麻子「モテなくていい。またな」スタスタ
優花里「ブレませんねぇ冷泉殿」
沙織「ホント、少しは恋愛に興味もてばいいのに」
華「……」
みほ「華さん? どうかしたの?」
華「いえ。ちょっとお腹が空いてしまって」
優花里「私もお腹すきましたぁ。先に軽く何か食べていきませんか?」
華「そうしましょう!」
みほ「(……う〜ん)」
21 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/01/12(日) 20:21:43.66 ID:zPoxPRfb0
−夜 沙織の部屋−
沙織「――麻子と華?」
みほ『うん。なにかこう……ちょっといつもと違う気がするっていうか……』
沙織「うーん。麻子はいつもあんなんだし、華はこの前調子悪かっただけだし。私には変に見えないけどなぁ」
みほ『なんていうのかな……どうにもできない確執……みたいなのが、麻子さんを見てる華さんから感じられて……ホントになんとなくなんだけど』
沙織「……みほって結構観察力あるよね。流石は西住流」
みほ『それ関係ある?』
沙織「でも確かに、言われてみればこの前はやけに麻子が華のために頑張ってたような感じあったね。その恩返しがしたいとか? 華ってそういうとこ義理堅いじゃん」
みほ『うーんそうなのかなぁ……』
沙織「そもそも麻子があんな積極的に人のために動くのって珍しいけど……何かあったのかな?」
みほ『ケンカしてるとかじゃなさそうだし、わざわざ聞くことじゃないのかもしれないけど。ちょっと華さんの様子が気になって』
沙織「まぁ私も気がつくことあったら聞いてみるよ。意外と恋の悩みだったりするかもよ〜?」
みほ『あはは。女の子同士なんだからそれはない……んじゃない?』
〜〜〜〜〜〜
−同時刻 麻子の部屋−
麻子「……」ペラ
麻子「……」ペラ
麻子「……」ペラ
ニャー ニャー ニャー
麻子「(誰だ……今いいとこなのに)」
着信
〔五十鈴 華〕
麻子「!」ピッ
22 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/01/12(日) 20:25:21.48 ID:zPoxPRfb0
麻子「……もしもし」
華『あ……こんばんわ麻子さん』
麻子「どうしたこんな時間に」
華『すみません、もうお休みでしたか?』
麻子「むしろ今が私のピークタイムだ」
華『ふふ、そうでしたね』
麻子「で、何か用か?」
華『あ、いえ……特に御用があったわけではないのですけれど……』
麻子「……暇だったのか?」
華『いえ……その……お花を活けようとしていたんです』
麻子「? うん」
華『でも……いつものように集中できなくて』
麻子「華道のアドバイスはできんぞ」
華『それはよく存じております』
麻子「…………まだ薬の作用が残ってるのか」
華『……………』
麻子「あー……」パタン
麻子「私は何をすればいい?」
華『え?』
麻子「私も一応、五十鈴さんがそうなっている要因の一つだからな。協力はする。何をすればいい? 生憎と私は沙織ほど察しがいい人間じゃないから、教えてくれると助かる」
華『……麻子さん、責任を感じてらっしゃるんですか?』
麻子「責任というほど重いものじゃないが……仲間が大変な目に遭ってるんだ。助けはする」
華『わたくしが……そんなに大変な、苦しい状況に置かれているとお思いで?』
麻子「違うのか。自分の意志とは関係なく同性に……惚れてしまっているというのは」
華『……麻子さんは、意志とは関係ないとしても、同性に見初められるのは……気持ちが悪いと思われますか?』
麻子「……。……ん……人による、んじゃないか。経験がないからはっきりわからない」
23 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/01/12(日) 20:29:50.92 ID:zPoxPRfb0
華『そう、ですか……』
麻子「……さっきから私が質問されてばかりだ。私の質問にも答えてくれ。何かできることはあるか?」
華『……わたくしは』
麻子「うん」
華『………………………麻子さん』
麻子「うん?」
華『…………』
麻子「どうした?」
華『…………わたくし、自分がこんなに臆病になれるとは思いませんでした』
麻子「……?」
華『これがすべてお薬のせいなのだとしたら、すごい効き目ですよね』
麻子「そう……なのか?」
華『はい。申し訳ありません、よくわからないことばかり言ってしまって……』
麻子「……よくわからない状況なんだから、仕方ない」
華『お優しいですね』
麻子「五十鈴さんほどじゃない」
華『わたくし、そんなに優しいですか?』
麻子「私はそう思うが。……優しくて、力強くて、頼りになる。沙織たちとはまた違う意味でな」
華『そうですか……ふふっ。嬉しいです』
麻子「少しは気が晴れてきたか?」
華『はい、ありがとうございます。……なんだか、こんな風に麻子さんとお話しすることってあんまりなかった気がします』
麻子「まぁ、そうだな。五十鈴さんは話したかったのか」
華『……そうですね。以前はここまで強い気持ちではありませんでしたけど』
麻子「……そうか」
華『はい。……あの』
麻子「なんだ」
華『もし、差し支えなければでよろしいのですけど……わたくしのことも、名前で呼んでみてくださいませんか?』
麻子「え」
華『いつも沙織さんばっかりお名前で呼ばれて……ずるいです』
麻子「いや、ずるいとかいう問題じゃないだろ……」
華『無理にとは申しません。こうしてお話して下さる時に、ちょっとだけでもいいので……』
麻子「……ん、まぁ、考えてみる」
華『……なんだか面倒な女になってますわね、わたくし』
麻子「沙織よりマシだ」
華『まぁ。結構わたくしを良く思ってくださっているんですね』
麻子「……さぁな」
華『……夜更けにお付き合いくださってありがとうございました。では、また明日』
麻子「あ……あの」
華『はい?』
24 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/01/12(日) 20:31:56.54 ID:zPoxPRfb0
麻子「私はい…………は、なさんのことを気持ち悪いとか、思わないから」
華『…………ありがとうございます』
麻子「ん……それじゃ」ピッ
麻子「……」
麻子「(……つ、疲れた……)」ベタ…
麻子「(でも……なんだろうな。嫌な疲れじゃないな。達成感のような……)」ドキドキ
麻子「(……何を達成したんだ。アホか……寝よ)」
〜〜〜〜〜〜
――翌日
−大洗女子学園演習場−
ガィィン―― ヒュポ!
亜美「そこまで! 白チームM3中戦車リー、三式中戦車、ポルシェティーガー、V号突撃砲、全車走行不能! 紅白戦は紅チームの勝利ね!」
桃「わははは! これが我々の力だ!」
柚子「桃ちゃん一発も当ててないよね……」
梓「ていうか、今日撃破したのって全部W号なんじゃ……」
優季「五十鈴先輩すご〜い!」
杏「なはは。やるじゃん」
華「今日はなんだか外れる気がしませんでした♪」ピカーッ
沙織「……なんか今日の華、光ってない?」
優花里「ほんの数日前とは真逆の状態でありますね……」
亜美「ベリベリナイスショットよ五十鈴さん! 貴女の腕なら将来プロリーグだって狙えるわ!」
華「まぁ、どうしましょう〜♪」ピカーッ
ぴよたん「まぶしいぞな……」
ももがー「まぶしいナリ……」
ねこにゃー「あれがリア充のオーラですな……」
みほ「……華さん何かいいことあったのかな? 麻子さん知ってる?」
麻子「知らん。美味しいものでも食べたんじゃないか」
みほ「そ、そんなに単純なものかな。アンツィオじゃないんだから」
華「麻子さん!」ガバッ
麻子「みぎゃ!?」
優花里「オォ!?」
華「プロリーグですって! どうしましょう、わたくし家業も継がなくちゃいけませんのに〜!」ギュム
麻子「ぐ、ぐるじい……離してくれ五十鈴ざん……!」
沙織「こ、こんなに舞い上がってる華を久しぶりに見たよ」
みほ「ちなみに前に見たのは……?」
沙織「中学の時に柏餅の詰め放題行事があったときかな」
みほ「あぁ……」
優花里「五十鈴殿って意外と単純というか、純粋なところがあるというか」
沙織「や、でもいきなり人に抱き着いたりするのは初めてかも……」
優花里「なんか幸せそうですねぇ」ニコニコ
アハハウフフ ハナセエエエ
25 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/01/12(日) 20:35:09.31 ID:zPoxPRfb0
−ファミレス−
華「気分がいいといつもより食欲も増してしまいますねぇ♪」
みほ「お皿が山に……」
麻子「ちょっと食べすぎなんじゃないか」
華「麻子さんは食べなさすぎです! ほら、たくさん食べて大きくなってください!」グイグイ
麻子「や、やめろ! 見てるだけで腹が膨れる!」
沙織「は、華が麻子に餌付けしてる……!」
優花里「西住殿、私のも食べてみませんかぁ? あーんしてくださいっ」
みほ「へ? あ、あーん」
華「ほらほら麻子さんも♪」
優花里「えへへ、西住殿にあーんしちゃいましたぁ」
沙織「……なんかいつの間にか私だけ孤立してるし。なによもーこの状況!」
麻子「た、助けてくれ沙織」
沙織「しらないもん!」
−夜 麻子の部屋−
華『――それでその時、新三郎が喉を詰まらせてしまって』
麻子「んー……五十鈴さん、もう日付が変わるぞ。もう寝た方がいいんじゃないか」
華『あら……もうそんなに経ってたんですね。すみません長々と』
麻子「私は構わんが。五十鈴さんが遅刻したらダメだからな」
華『麻子さんだって早起きしなきゃダメですよ?』
麻子「早く寝てもどうせ起きられないから一緒だ。努力はしてるが」
華『もう、困った人ですねぇ』
麻子「……今日はずいぶんと元気だったな。何かいいことあったのか?」
華『……ええ、昨日の夜に。とっても良いことが』
麻子「夜?…………あー、私が関係してるのか?」
華『ええ、とっても』
麻子「……そんなに特別なことを言った覚えはないが」
華『わたくしにとっては特別な言葉をもらえましたから』
麻子「そうか」
華『はい♪』
麻子「……………………」
麻子「……あの、な。五十鈴さん」
華『はい?』
26 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/01/12(日) 20:38:47.96 ID:zPoxPRfb0
麻子「その……偉そうな言い方になって悪いんだが。五十鈴さんは多分、私に特別な感情を持ってしまっている。だから私が名前で呼んだりしただけでそんなに喜んでいる」
華『…………』
麻子「だが、忘れないでほしいんだが、それは薬のせいなんだ。効き目が切れたら、その感情もなくなる。前みたいな普通の友人関係に戻るんだ。わかってるな?」
華『……そうでしたね』
麻子「だから、こう……難しいのかもしれないが。あまり今の状態をありのままに受け止めない方がいいと思うんだ。後になって変なことをしたと後悔したくないだろう」
華『…………』
麻子「……すまん。五十鈴さんの好意自体を否定してるわけじゃないんだ。ただ、それは疑似的に作り出されてる感情だってことを――」
華『わかってます』
麻子「!」
華『わかってます……けど』
麻子「うん……」
華『今、この瞬間、わたくしがあなたを想っているこの気持ちは忘れたくないです』
麻子「そ……ぇ?」ドクン…
華『後になってこの感情が全部ニセモノだったと思い直しても、きっと後悔はしないと思います』
麻子「なぜ、そう思う」
華『だって、こんなことがなくても麻子さんはわたくしの大切な人ですから。そんな人を、たとえ一時でも心からお慕いしていた気持ちは決して恥じるものではないと思うんです』
麻子「……それ、は、だからっ……」
華『もちろん、麻子さんがその記憶を不快だとお思いになるのでしたら、わたくしも――』
麻子「そんなことないっ!」
華『…………』
麻子「昨日っ……言っただろ。気持ち悪いだとか不快だとか私は思わない」
華『………』
麻子「そりゃ、戸惑ってはいるけど……私だって五十鈴さんに、そんな風に思ってもらえたことは後悔しない」
華『……』
麻子「……い、五十鈴さん?」
華『ふふっ……やっぱり麻子さんは素敵な人です』
麻子「な、なんだ急に」
華『だって、こんなに重い言葉を伝えても……それも同性からですよ? それでもあなたは、わたくしを受け入れてくださるんですもの』
27 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/01/12(日) 20:41:30.45 ID:zPoxPRfb0
麻子「だ、だって……五十鈴さんは」
華『はな』
麻子「えっ」
華『はな、って呼んでくださいませ』
麻子「……華、さんは、私なんかには勿体ないくらいよくできた人だから」
華『まぁ。それこそ勿体ないお言葉です』
麻子「……。だからその、女性として受け入れられるかはともかく、私が華さんっていう人間を拒絶することは、有りえない」
華『…………………』グスッ
麻子「は、華さん? 泣いてるのか?」
華『ん、はい。嬉しくて泣いてます』
麻子「へ?」
華『情けない話ですけど。わたくしとても怖かったんです。麻子さんにこんなことを言ったら、もうお友達の関係にも戻れなくなるかもしれないって』
麻子「それはないっ」
華『はい、そう言ってくださると信じていました。信じていましたけど……やっぱり怖くて』
麻子「……そんなにか」
華『そんなにです。そんなに臆病になってしまうくらい……今のわたくしは麻子さんに惹かれているんです』
麻子「でも……それは」
華『きっとお薬のせいかもしれません。でもいいんです。先ほども申し上げましたけれど、別に後悔は致しませんから。むしろ言えてすっきりしました』
麻子「薬のせいじゃなかったら、私なんかに夢中になる理由がないからな」
華『そんなことはありません。麻子さんはとても素敵な方です。きっと他の皆さんもそう思っています』
麻子「今の華さんのそれとは違うだろ」
華『うふふ、そうかもしれませんわね』
麻子「…………なんだか変な感じだな」
華『……ですね』
麻子「……その…………ぁりがと」
華『麻子さんに感謝されてしまいました♪』
麻子「愛想良くできなくてすまん」
華『その方が麻子さんらしいです』
麻子「それは褒めてるのか?」
華『もちろん』
28 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/01/12(日) 20:47:05.09 ID:zPoxPRfb0
麻子「……そろそろ寝てくれ」
華『もう結構なお時間ですね』
麻子「目が覚めたら、全部元に戻ってるかもな。もう五日経つ」
華『その時は……その時です。ね?』
麻子「うん……」
華『おやすみなさい、麻子さん』
麻子「おやすみ……華さん」
ピッ
………
チュン… チュン…
麻子「ZZzz……」
チュン…
ニャー ニャー ニャー
麻子「ZZz……」
ニャー ニャー ニャー
麻子「ふゴ……んん〜……」
麻子「(……電話? ……無理……)」
ニャー ニャー ニャー
ニャー ニャー ニャー
ニャー ニャー ニャー
麻子「むぐ……んあ……」ゴソゴソ
ニャー ニャー ピッ
麻子「……モシモシ……」
『――あっ! もしもし、冷泉さんですか?』
麻子「ハイ……」
カルパッチョ『私です! アンツィオのカルパッチョです!』
麻子「…………誰?」
カルパッチョ『えっ? あの、以前お話していた惚れ薬の件で……』
麻子「……ぁー……んー……」
カルパッチョ『あ、あのぅもしもし? 冷泉さん?』
麻子「!? カルパッチョさん!?」ガバッ
カルパッチョ『わぁびっくりした!』
麻子「なんだ、あれから何かわかったのか?」
カルパッチョ『はい、アレを売っていた古物商さんを見つけて、とりあえず聞き出せたことなんですけど……』
麻子「うん……あぁ。おう……」
麻子「……………へっ?」
29 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/01/12(日) 20:50:58.25 ID:zPoxPRfb0
−昼休み W号の上−
沙織「そろそろ大洗に帰港だね。モールで冬物の新作探しにいきた〜い」
優花里「あんこう鍋も美味しい季節ですねぇ。お祭りが楽しみですぅ」
華「この時期は特に食べ物が美味しくなりますよね。実家に帰省したらついお腹いっぱいになるまで食べてしまいます」
みほ「あ、それわかる。実家ってたまに帰るとなぜかたくさん料理が出てくるよね」
優花里「きっとご家族も嬉しいんですよ」
沙織「麻子もおばあのとこ帰ったら、もっと食べろー!とか言われるんじゃない?」
麻子「……」
優花里「冷泉殿?」
麻子「ぇ……なんだ?」
沙織「まだ寝ぼけてんの〜? もう昼休みだよ?」
麻子「あぁ……」
みほ「麻子さん、具合悪いの? 眠そうっていうか、ぼんやりしてるけど」
麻子「いや、大丈夫だ」
華「寝不足とかではありませんか? もしかして昨日長電話してしまったから……」
沙織「麻子はいつも寝不足みたいなもんだし……っていうか華、麻子と電話してたの? 珍しいね」
華「え? あっ、えっと」
優花里「お二人とも確かに長電話するタイプじゃなさそうですよね。何をお話されてたんですか?」
麻子「……それは」
華「……」チラ
優花里「えっと……なんかまずいこと聞いちゃいましたか?」
みほ「何か言いにくいことだったら無理に言わなくていいよ?」
華「いえ……わたくしが麻子さんとお話したくて、お電話してたんです」
優花里「五十鈴殿が?」
麻子「おい五十鈴さん」
華「隠すようなことでもありませんわ。他愛もないお話をしてたら、いつの間にか夜中になってしまって」
沙織「それって麻子が中々寝なかったからじゃないの〜?」
華「いえ。わたくしが麻子さんを付き合わせてしまっただけです」
麻子「……別に嫌々付き合ってたわけじゃないぞ」
華「もちろん。とっても楽しかったですから」ニコ
麻子「ぐぬ……」メソラシ
みほ「へぇ〜。二人ってそんなに仲良かったんだ」
優花里「普段はお二人だけで話してるところあんまり見ないですもんね」
沙織「ふーん……」ジーッ…
華「……ちょっとお花を摘みに行ってまいりますね」スッ
麻子「わ、私も」
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