【シャニマスSS】あさひ「遥かなる世界へ」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/08(日) 15:40:54.49 ID:GrR+/HIp0

【オーディション前・控え室】

「ふざけんじゃないわよ!」

 オーディション前、気分転換のためにそこら辺をブラブラしていたわたしと愛依ちゃんは、控え室に戻った途端冬優子ちゃんのカミナリのような怒声に身体を貫かれた。



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2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/08(日) 15:43:03.98 ID:GrR+/HIp0

 冬優子ちゃんと今まで話をしていたらしいプロデューサーさんがなんとか宥めようと声を掛けている。

「落ち着け、冬優子」

「これが落ち着いてられるかっての!」

 冬優子ちゃんは怒りが収まらない様子で体をワナワナと震わせている。

3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/08(日) 15:44:48.63 ID:GrR+/HIp0

「ビックリしたー……。ちょ、冬優子ちゃんヤバいくらい怒ってるけどどしたん?なんかトラブル的な?」

「どーしたもこーしたも……あぁもう!2回も話してらんないからあとはコイツに聞いて」と、顎でプロデューサーを指す冬優子ちゃん。

「何があったんすか?」

4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/08(日) 15:45:58.58 ID:GrR+/HIp0

「俺もついさっき話を聞いたばかりなんだが……どうやら冬優子はこのオーディション番組が出来レースだって噂を聞きつけたらしい」

「噂じゃなくてジ・ジ・ツよ!関係者が話してるのをこの耳で聞いたんだから!」

「どんな話してたんすか?」

5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/08(日) 15:47:57.69 ID:GrR+/HIp0

「『今回のオーディション、やる気出ないねー』
『……なんで?』
『またまたぁ、分かってるくせに』
『まぁ、私もそうだけどさ』
『私達が優勝するって決まってるんなら最初からバーンと売り出してくれればいいのにね』
『何事にも手順ってやつがあるのよ。このゴールデンのオーディション番組で優勝すれば箔が付くでしょ』……」
と、冬優子ちゃんは声色を変えながら誰かの会話を真似した。
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/08(日) 15:50:08.46 ID:GrR+/HIp0

「うっわー……、なんかマジっぽい話。てかそれ言ってたの誰なん?」

 冬優子ちゃんは急に寂しそうな表情をする。

「……【XX(ダブルイクス)】の2人よ」

「XX!? ってあの、ザ・芸能人みたいな美人の2人組っしょ? えー……うちなんかショックなんだけど……」

7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/08(日) 15:52:26.58 ID:GrR+/HIp0

【注】

XX(ダブルイクス)は原作には存在しないユニットです。話の都合上必要なので適当に名前を付けました。(ヒール役なんだな)くらいの認識で流して下さい。

8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/08(日) 15:55:15.24 ID:GrR+/HIp0

「あの2人はたしかに大手プロダクションの所属だが……疑問が残るな。XXは実力派のクール系アイドルデュオだ。搦め手から攻めるような真似をする必要がどこにある?」

「そんなの知らないわよ!だけど……だから、ふゆはこんなにムカついてんの。
 今夜の決勝戦に残ったたった6組のアイドルユニットの中でも優勝候補の一角なのに……正々堂々と戦っても勝てる可能性があるのにこんなマネをするなんて許せない。
 アイドルをバカにしてるわ」

 冬優子ちゃんはアイドルが好きで、いつだって真剣だ。

9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/08(日) 16:00:17.78 ID:GrR+/HIp0

「アイツらが優勝したら『わー、私達も頑張ったんですけど負けちゃいましたぁ。優勝おめでとうございまーす?』とでも言えばいいってわけ?そんな茶番、ふゆは絶対イヤ」

「ん〜……ウチも冬優子ちゃんの気持ちはちょーわかるけど……決勝戦に出ないのもそれはそれでマズくない?」

「あぁ、今夜のオーディションは生放送だ。しかも、決勝戦の審査方式は10,000人の観客による投票制。大規模なライブと同様のステージセットも組まれている。もし突然ステージを放棄したとなればイメージダウンは避けられないぞ」

10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/08(日) 16:02:22.24 ID:GrR+/HIp0

「ん?そういえばお客さんがウチらを審査するんだよね。やらせとか関係無くない?」

「そんなのどうとでもなるわよ。お客さんの投票結果とは無関係に最初から用意されてた結果を発表をするつもりなんでしょ」

「あっちゃ〜……出ても負け、出なくても負けかぁ……」

11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/08(日) 16:03:44.50 ID:GrR+/HIp0

 全員がしばらくの間押し黙った。
 納得がいかないけれどどうすればいいのか分からない、そんな重苦しい雰囲気が漂っている。

 わたしはその時、サンサンと光り輝く太陽と、どこまでも広がる青い海を思い出していた。

12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/08(日) 16:05:34.86 ID:GrR+/HIp0

「勝つ気がないなら最初からやらない方がマシっすよ」

「あさひちゃん……
 でも、決勝戦に出ないのもマズいし……」

「誰も決勝戦に出ないなんて言ってないっす。
 決勝戦に出て、勝つんすよ」

「はぁ?あんた今までの話聞いてなかったの?それが出来るなら誰もこんなに悩んでなんて……」

「冬優子ちゃん、この状況って何かに似てないっすか?ほら、海でやったあの……」

13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/08(日) 16:07:49.13 ID:GrR+/HIp0

「……!
『海辺のアイドルバトル』……忘れるわけないじゃない」

「あー!言われてみればそーかも。あの時はうちが、票が操作されてるっぽいみたいなキナくさい話を聞いてー……そんで勝負して」

「私たちは負けた。一矢報いる事さえできずにね」

 冬優子ちゃんは苦虫を噛み潰したような表情をする。

14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/08(日) 16:10:28.22 ID:GrR+/HIp0

「そうっす。だから、今日はチャンスなんすよ」

「チャンス?」

「リベンジのチャンスっす。
 わたしはあの日負けた悔しさを忘れてない。同じ状況で勝てれば、あの日の負けを塗り潰せる気がするんすよ」

「……どうやって勝つつもりなのよ」

「すごいパフォーマンスをすればいいんすよ」

「あんた……それじゃ前と一緒じゃない!」

「違うっす!……うまく言えないんすけど、あの時勝てなかったのはやっぱりわたしが下手だったからじゃないかって思うんすよ……」

15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/08(日) 16:13:18.65 ID:GrR+/HIp0

「そんな事なくない?あさひちゃんのダンスちょー上手かったし!
 まぁ、相手と同じダンスしちゃったから点数は低くされちゃったけど……」

「それなんすよ。
 わたしは相手の子より上手く踊れたけど、ただそれだけだった。不利な状況でも勝てるくらいには上手くなかった……だから負けた」

「つまりこう言いたいのか、あさひ?
 今日のオーディションで他のアイドルより“圧倒的に”すごいパフォーマンスをすれば出来レースなんて関係無く勝てる、と」

 コクリ、と頷く。

16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/08(日) 16:15:39.84 ID:GrR+/HIp0

「そうか……だが、口で言うほど簡単じゃないぞ。決勝戦の相手は『海辺のアイドルバトル』の時のような新人じゃない、同ランクのアイドルと競い合うんだ」

「わかってるっすよ、プロデューサーさん。今までに出来た最高のパフォーマンスでもまだ足りないって。
 でも、ファン感謝祭の後からわたしの中の何かが言ってるんすよ。
『もっと良くできる もっと上手くやれる』って……」

「……」

「わたしだけじゃ足りない。でも、冬優子ちゃんと愛依ちゃんがいればストレイライトはもっともっとすごいパフォーマンスが出来るはずなんすよ!
 ……試したいんす。わたしたちがあの夏からどれだけ成長できたのかを」

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