【アズールレーン】 黒青の空

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1 : ◆rDMPFYnrzE [saga]:2019/12/03(火) 22:52:30.19 ID:xb2lkOTBo
※オリジナル設定多数

  ご了承下さい

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1575381149
2 : ◆rDMPFYnrzE [saga]:2019/12/03(火) 22:55:10.04 ID:xb2lkOTBo

始まりはただのお役目であったように思う。それがいつしか敬意に変わり、やがて慕情へと変質するのに幾らも時間は掛からなかった。

切掛けは思い出せない。何故これ程までに想い焦がれるのかさえ分からない。元より理由などないのかも知れない。

ただひとつだけ確かなのは、あの日生まれた感情は今尚粘ついた炎のように胸の奥で燻り続け、

終生消えることは無いだろうという予感だけ。


3 : ◆rDMPFYnrzE [saga]:2019/12/03(火) 22:55:50.31 ID:xb2lkOTBo

―― 大講堂 ――

指揮官「赤城―。赤城、居ないのかー?」ガチャ

時雨「あら指揮官。こんな時間に講堂なんかでどうかしたの?」

夕立「めしか!?」

時雨「数分前にお昼済ませたばかりじゃないのよ」

指揮官「おぉ、時雨に夕立か。赤城を知らないか?」

時雨「うーん、今日はまだ見てないわね。でももしかしたらユニオンの宿舎にいるかも」

指揮官「ユニオンの? なんでまた」

時雨「昨日誰かに盆栽について何か質問されてたみたいだけど、よかったら直接教えてあげるみたいな話になってた気がするのよ」

4 : ◆rDMPFYnrzE [saga]:2019/12/03(火) 22:56:17.51 ID:xb2lkOTBo

時雨「まぁ言ってみればそれだけなんだけど、指揮官が赤城を探していた所に時雨様が居合わせて、たまたま前日の話を覚えていた……」

時雨「これはもう幸運の女神たる時雨様縁の巡り合わせに違いないと思ってね!」

指揮官「なるほど、妙に説得力があるな。ありがとう、行ってみるよ」

夕立「めし……」

時雨「もう、いい加減にしなさいな。別にお昼が少なかった訳じゃないでしょ」

夕立「別腹が寂しいの!」

指揮官「……そうだ二人共、この後用事が無いのなら少しここで待っててくれないか?」

時雨「? 別にいいけれど……どうかしたの?」

指揮官「すまないな。すぐ戻るから」ガチャ バタン

夕立「?」

5 : ◆rDMPFYnrzE [saga]:2019/12/03(火) 22:56:44.94 ID:xb2lkOTBo

―― 購買部 ――

不知火「毎度、有難うございます……」チャリーン

指揮官「よし。それじゃ宿舎に行く前にっと……」

???「指揮官様ぁ〜」

指揮官「おぉ!? ……あぁ、赤城か」

赤城「はい、指揮官様。アナタの赤城で御座います」スッ

指揮官「音もなく忍び寄って背中ピッタリの距離から急に声を掛けないでくれ、怖いから」

赤城「うふふ、ごめんなさい。驚く指揮官様が愛らしくてつい」クスクス

指揮官(愛宕みたいだな……)

6 : ◆rDMPFYnrzE [saga]:2019/12/03(火) 22:57:12.42 ID:xb2lkOTBo

指揮官「赤城も購買に用事があるのか?」

赤城「いいえ。近くを通りかかっただけなのですけど、指揮官様の匂いがしたのでふらりと立ち寄った次第ですわ」

指揮官「なんだ、そうだったのか。てっきりユニオンの宿舎にいるものだとばかり」

赤城「あら? 確かに先程までクリーブランドと盆栽についてお話するためにユニオン宿舎に赴いておりましたが……何故指揮官様がそれを?」

指揮官「なるほど、大した巡り合わせだ……ちょっとお前に用があってな。探しているときに人からそう聞いたんだ」

赤城「まぁ! 指揮官様が私を探して下さっていたのですね! とっても嬉しいですわ!」

指揮官「はは、そんなに大事な話でもないんだけどな」

赤城「いいえ! 指揮官様とのお話というだけで赤城にとってはソニック実写化の報よりも重大なお話ですわ!」

指揮官「だいぶ偏ってるな」

7 : ◆rDMPFYnrzE [saga]:2019/12/03(火) 22:57:39.18 ID:xb2lkOTBo

指揮官「ほら、科学研究の資材なんだが。艤装解析に回してもいい汎用素材の数を把握しておきたくてな」

赤城「あら。確かに強化予定の装備の事を考えると、残しておいて欲しい数があるのは否定しませんけど」
赤城「それくらいなら指揮官様の裁量で幾らでも自由にしていい領分ではなくて?」

指揮官「そうなんだけどな。後になってアレがないコレが無いと慌てるのは恥ずかしいし……」

赤城「うふふ、着任したての頃はいつも後になって大童でしたね」

指揮官「やめてくれって。それでいつも秘書をやってくれてるお前かベルファストなら把握してた筈だと思い至って、探してたんだよ」

8 : ◆rDMPFYnrzE [saga]:2019/12/03(火) 22:58:06.55 ID:xb2lkOTBo

赤城「つまり指揮官様はあのメイドよりも赤城を頼って下さったのですね!? 光栄の至りですわ!」

指揮官「まぁベルは買い出しで今母港に居ないしな」

赤城「…………」

指揮官「取り敢えず一旦執務室に向かうか」スタスタ

赤城「あ、お待ちを指揮官様ぁ!」タッタッタ


―― 大講堂 ――

赤城「指揮官様? ここは執務室ではありませんけど」

指揮官「あぁ、ちょっとここに寄ってから行こうかとな」

赤城「も、もしや指揮官様はこのように普段人が集まる場所で致す事で興奮する性なのかしら!? 心配いりませんわ指揮官様、赤城はこういう事もあろうかと普段からあらゆる事態・場所・時間を想定した仮想訓練に余念がなく――」

指揮官「おーい、時雨、夕立、いるかー?」ガチャ

赤城「…………」

9 : ◆rDMPFYnrzE [saga]:2019/12/03(火) 22:58:33.51 ID:xb2lkOTBo

夕立「なに!? 良いの指揮官!?」

時雨「なになに、どうしたの? 気前がいいじゃない」

赤城「……指揮官様、もしや先程申していた私の居場所を教えた者とは……」

指揮官「そうそう、この二人だ。お陰で赤城と会えた訳だから、これはお礼だ」

夕立「お礼か! そういう事なら有り難く貰ってあげるぞ!」

時雨「夕立は何も言ってないでしょ。でも有難う指揮官! やっぱり時雨様の日頃の行いのお陰よね〜」

赤城「良かったわね、二人共。でももうすぐお勉強の時間だから、早めに食べるか仕舞うかするのよ」

時雨「はーい!」

10 : ◆rDMPFYnrzE [saga]:2019/12/03(火) 22:59:00.52 ID:xb2lkOTBo

夕立「おいしい!」ムシャムシャ

時雨「あ、もう! ちゃんとお返事しないとダメよ!」

指揮官「ははは、気にするな。それじゃ、勉強頑張ってな」ガチャ バタン

…………

赤城「指揮官様が先程購買部にいらっしゃったのはその為でしたのね」

指揮官「ああ。赤城に会えたのは偶然だけど、協力してもらったのは確かだしな」

赤城「そんな事を言って……本当は夕立辺りがお腹を空かせているのを見てつい甘やかしただけじゃないんですか?」

指揮官「黙秘する…………ん?」

パタパタパタ

ル・マラン「あ! し、指揮官に赤城さん。御機嫌よう!」

指揮官「おぉ、お疲れル・マラン。お前も今から講堂か?」

ル・マラン「は、はい! 休憩時間にお昼寝してたらギリギリになっちゃって……急がなきゃー!」

赤城「廊下はあんまり走らないようにねー」

ル・マラン「ご、ごめんなさ〜い!」パタパタ

11 : ◆rDMPFYnrzE [saga]:2019/12/03(火) 22:59:40.02 ID:xb2lkOTBo

指揮官「ふっ、慌ただしいな全く」

フラ……フラ……

ラフィー「あ、指揮官……赤城……おはよう……」

赤城「もうお昼よ」

指揮官「ラフィーも講堂か? そろそろ始まるからシャンとした方がいいぞ」

ラフィー「大丈夫……ラフィーは眠たいと思ってない……思ってない」フラフラ……

指揮官「……あれは居眠りするだろうな」

赤城「あの子、以前もあんな風にふらふらしてたのよね……あの時はポートランドが手を引いてたけど……一人で良いのかしら……」ソワソワ

指揮官「心配か。赤城は面倒見がいいからな。ま、あれで毎回授業には顔を出せているんだ、問題ないだろう」

赤城「んもう、面倒見が良いのは指揮官様だってそうでしょう」

12 : ◆rDMPFYnrzE [saga]:2019/12/03(火) 23:00:08.63 ID:xb2lkOTBo

赤城「……そう、本当に指揮官様は面倒見が良い方ですわ」

指揮官「どうした急に」

赤城「この艦隊も、随分と大所帯になりましたわ。新しい子がどんどん着任し、私などはまだ顔も合わせた事のない子だっています」

指揮官「以前のように毎回皆を集めて紹介するのもちょっと難しいからな、すまない」

赤城「でも指揮官様は、しっかりと全員を覚えて気にかけてくれています。別け隔てなく接して、人となりも把握して……本当に誇らしいばかりですわ」

指揮官「それしか出来ない人間だからな」

赤城「だからこそ、と……仕方ないことだとは分かっているのですが。長い事勤めている私のような者は、以前ほど一緒の時間が取れないことが、少し……寂しくもあります」

指揮官「…………」

赤城「ごめんなさい。ただの我儘だとは重々承知しているのですが」クスッ

指揮官「いや……」

13 : ◆rDMPFYnrzE [saga]:2019/12/03(火) 23:00:35.56 ID:xb2lkOTBo

―― 執務室 ――

赤城「えーっと、確か資材の在庫数を書き留めた資料と運用中の設備をまとめた資料がこの辺りに……」ゴソゴソ

指揮官「あぁ、その前に赤城、これを」スッ

赤城「如何しました、指揮官様?」
赤城「…………これは、お団子?」

指揮官「購買で天ぷらと一緒に買ったんだ。その……時雨たちへのお礼とは別に」

赤城「……わざわざ、私のために?」

指揮官「実は俺も少し気にしていたんだ。練度が高いお前に出撃も頼んだ方が安心だからと、つい任せきりにしていた事を」

指揮官「雑務も卒なくこなせるベルに秘書艦をお願いして効率的に仕事が出来るようになったのは良い事なんだが、そのせいで今まで兼任でやっていた赤城とは話す機会も減ってしまったものだからな」

指揮官「ご機嫌取りと言えなくもないが……久々に話す切掛けも出来たことだし、何でもいいから労いたかったんだ」

14 : ◆rDMPFYnrzE [saga]:2019/12/03(火) 23:01:02.76 ID:xb2lkOTBo

赤城「……指揮官様……」

指揮官「赤城も同じことを考えていたくらいだ。他の古参の艦たちも随分不安にさせてしまっているんだろう」

指揮官「すまなかった。今でも変わらずにずっとお前たちを頼りにしている。もっと行動で示せるように心がけるよ」

指揮官「……団子は今でも後でも遠慮せず食べてくれ。加賀が作った和菓子には敵わないかも知れないが」

赤城「指揮官様……! そのように言ってくださるなんて……」
赤城「赤城は、赤城はもう……!」

ガチャリ

ベルファスト「御主人様、ベルファストただいま帰還致しました」

15 : ◆rDMPFYnrzE [saga]:2019/12/03(火) 23:01:29.54 ID:xb2lkOTBo

赤城「…………」

指揮官「あぁ、お帰りベルファスト。早かったな」

ベル「はい。運良く帰りは道が空いておりましたので、予定より早く戻ることが出来ました」
ベル「赤城様もお疲れ様で御座います。執務室でお会いするのは久々ですね」

赤城「……えぇ、そうね……お疲れ様……」ガクッ

ベル「顔色が優れないようですが……大丈夫でしょうか?」

赤城「大丈夫よ、これは別に何でも無いから……」

指揮官「ベルファストも来たなら丁度いい。二人一緒に聞いてくれれば早々に片付きそうだ」

ベル「申し付けがあるのであれば、喜んでお受けしましょう」

赤城「…………んー! もう!」

16 : ◆rDMPFYnrzE [saga]:2019/12/03(火) 23:01:56.30 ID:xb2lkOTBo

―― 重桜寮 ――

赤城「……うふふ……」

ガチャリ

加賀「姉様、今戻ったぞ……どうした? その容器は」

赤城「あら加賀、お帰りなさい。これは指揮官様が赤城に下さったのよ」

加賀「容器を……? 贈り物にしては、その……随分、簡素というか」

赤城「これ自体が贈り物という訳じゃないわ。お団子を頂いたの。これはそれを入れていた箱」

加賀「……中身は食べてしまったのだろう? ではそれは捨てていい物では」

赤城「だめよ。せっかく指揮官様がくれたものだもの。勿体ないじゃない」

赤城「本当はお団子も大事にとっておきたかったのだけど……流石に食べ物は傷んじゃうものね。ならせめて、その証だけでも残しておきたいじゃない」

加賀「……まぁ、異臭がしない程度なら私は気にしない」

赤城「うふふ。指揮官様が赤城を想って下さったお団子……うふふ」

加賀「程々にな、姉様」

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