熊野「裏世界ハンティング」

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1 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/11/25(月) 20:38:36.43 ID:NBL3UyTw0
提督「触ってねえよテキサスクローバーホールド極めるぞ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1425908876/

【艦これ】武蔵がチャリで来た
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1428585375/

加賀「乳首相撲です」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1429706128/

【艦これ】ウンコマン あるいは(提督がもたらす予期せぬ奇跡)
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1431856590/

時雨「流れ星に願い事」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1464825792/

【艦これ】居酒屋たくちゃん〜提督のクソ長い夜〜
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1468896662/

磯風「蒸発した……?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1477871266/

【艦これ】加古ちゃん空を飛ぶ、めっちゃ長く飛ぶ、すごい
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1479816994/

鈴谷「うわ不思議の国こわい、キモい」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1484788439/

【艦これ】ヒトミとイヨの恰好がスケベなので
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1493211800/

【艦これ】ウキウキ!!首相の鎮守府訪問!!のようです
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1511697940/

時雨「静岡グレーゾーン連盟」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1518501606/

【艦これ】鎮守府微震!!五歳児と化した提督!!パワフル全開ですよみさえさーん!!
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1546267221/

夕立「ボ、ボコフェス連れてってっぽい!!!!!!!」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1566821566/


エンド・オブ・オオアライのようです ※連載中のコラボ作品(◆vVnRDWXUNzh3作)
https://engawa.open2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1536501657/


艦これ×天華百剣 編

川д川 ウホウホ!!鎮守府に颯爽と登場した貞子ゴリラ、トランスフォームウホ!!
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1494169295/

【艦これ】艦天って略すとカロリー低い食材みたい 第一章【天華百剣】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1520554882/

【艦これ】艦天って略すとカロリー低い食材みたい 第二章【天華百剣】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1528764244/

『艦天って略すとカロリー低い食材みたい』 幕間
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1531108177/

【艦これ】艦天って略すとカロリー低い食材みたい 第三章【天華百剣】
https://engawa.open2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1537917602/

【艦これ】艦天って略すとカロリー低い食材みたい 第四章【天華百剣】
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1552399367/

【艦これ】『Last one week & Epilogue』【天華百剣】
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1554717008/

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1574681916
2 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/11/25(月) 20:47:43.30 ID:NBL3UyTw0
ア ナ 雪 2 を 観 ろ
十一月は怒涛の映画ラッシュで嬉しい悲鳴が上がり放題ですね。スティーブン・キング原作を一月で二本上映するとか正気かお前??????


・提督の表記は『( T)』になっています。マスク超人です
・提督はドウェイン・ジョンソン並みのマッスルです
・IT、ターミネーター、エンド・オブ・ステイツ、アナ雪2、ゾンビランド ダブルタップ大ヒット上映中(ノルマ)
・シャイニングから四十年後、呪われたホテルが帰ってくる。『ドクター・スリープ』十一月二十九日公開(ノルマ)
・ウェルカム・トゥ・ジュマンジ!!!!!!!!!!!!!!!!!劇場でドウェイン・ジョンソン分を摂取だ!!!!!!!!!!!!『ジュマンジ ネクスト・レベル』十二月十三日公開(ノルマ)
・エンドクレジットの後に次回予告がございます。最後までお楽しみください
3 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/11/25(月) 20:48:25.56 ID:NBL3UyTw0
( T)「……」


熊野「……」


( T)「お前さぁ……何やってんの……?」


熊野「シッ!!獲物が掛かりませんわ!!」


( T)「……」


熊野が廊下で、紐結び付けた棒をザルに引っ掛けて餌に食い付いた小鳥を捕まえる罠を仕掛けてた
4 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/11/25(月) 20:49:41.00 ID:NBL3UyTw0




熊野「裏世界ハンティング」




.
5 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/11/25(月) 20:51:48.18 ID:NBL3UyTw0
( T)「……」

( T)「グスッ」

熊野「提督、風邪でもお召しになられて?」

( T)「泣いてんだよ……」

熊野「気味が悪いので自室で泣いてくださらないかしら?」

( T)「原因はお前だけどな……」


こんなアホがウチの五本指に入る武勲艦だと考えだけで男泣き不可避ですよ
男の子でも涙が出ちゃう。だって人間だもの


( T)「お前……時雨よりアホだぞ……」

熊野「殺しますわよ?」

( T)「俺はまっっっっっったく間違ったこと言ってねえけどな……」

熊野「このスマートかつ機能美に溢れた罠の何処に文句の付けどころがあって?」

( T)「本気で言ってんなら正気を疑う。先ずお前何を捕まえようとしてんだよこんな室内で」


曲がり角に身を潜ませながら、熊野はアホな罠を真剣に見つめている
因みに餌は大阪土産でお馴染みのミルク饅頭『月化粧』だった。そこはお前神戸のお菓子にしろよ


熊野「これをお読みになりまして?」

( T)「あん?漫画か?」


熊野が差し出したのは『美味しい妖』というタイトルの漫画本 ※全二巻
パラパラと流し読みしてみると、妖怪を捕まえて美味しく調理して食べる異色のグルメ漫画だった
発想は面白いが、生憎俺の三大グルメ漫画はクッキングパパ、紺田照の合法レシピ、そしてマッチョグルメと決まっている
6 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/11/25(月) 20:55:14.79 ID:NBL3UyTw0
熊野「私、思いましたの。鹿や猪などのジビエも、神戸牛に勝るとも劣らない美味。それを狩る醍醐味や、解体することによって尊べる命。そう、狩猟こそ至高の娯楽」

( T)「他所の熊野が聞いたら発狂しそうなほどワイルドなセリフだな。いつのまにかタイプ:ワイルド」

熊野「ですが、この漫画は新たな可能性を提示してくれましたの。それが『妖』!!」

( T)「ちょっと待てお前まさか……」

熊野「魑魅魍魎が頻繁に出没するこの鎮守府は、正に未知の美食の狩場……狩人の血が沸き立ちますわ……!!」

( T)「沸き立ってんのはテメーの頭だ」


確かに、確かに過去には巨大オマール海老やら巨大タコやらに襲われたりしたし美味しく食べたが
アレは生物の範囲内のバケモンであって、妖怪やら何やらとはカテゴリーが違う気がする
つーか室内で出てきた妖系のバケモンってクソ提督の幽霊とか妖怪乳首相撲とかなんだが……うーん、食えたもんじゃねえわ


( T)「……首尾は?」

熊野「二時間張ってもウンともスンとも言いませんわね。時間が悪いのかしら?」

( T)「悪いのはテメーの頭d 熊野「掛かりましたわ!!」 ウッソだろ」


<きゃあ!?


熊野「さぁ、手早くシメて!!」ジャキッ!!

( T)「ベアークロー仕舞え」

熊野「から揚げにしますわよォォォ!!」ダッ!!


熊野専属装備、明石特製の手甲『完全再現ベアークロー』の爪を剥き出し、目を爛々と輝かせ引っかかった獲物へと飛び掛かろうとする


( T)「待てって」ガッシ!!

熊野「ぐえっ、何をなさるんですの!!」

( T)「アホか。よく見ろ」


それを襟首を掴んで引き留めた。聞き覚えのある悲鳴だったからだ
7 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/11/25(月) 20:56:41.43 ID:NBL3UyTw0
熊野「あ、あら……?」


熊野も、罠に引っかかった獲物を見て冷静さを取り戻す


「たっ、たた……」



_人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人_
> 秋月「食べないでくださーーーーい!!!!」 <  アキヅキィ!!!!
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄



久々の登場、ぶっ壊れた防空火力を誇る秋月だ。かばんちゃんじゃないぞ


熊野「し、失礼……二時間も待ち続けていたものですから、冷静さを欠いていましたわ……」ジャコッ


明石特製のベアークローのギミックはいつ見ても惚れ惚れするな


秋月「あのっ、これ……食べちゃダメな物でしたか?」モグモグ

( T)「落ちてるモンを、それもあからさまに罠張ってあるモノを……」

( T)「拾って食うなよ……グスッ」

秋月「し、司令?どうかしたのですか?お腹が痛いのですか?」モグモグ

( T)「強いて言うなら頭……」
8 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/11/25(月) 20:59:16.25 ID:NBL3UyTw0
熊野「実は、かくかくしかじかでして」

秋月「……?」

熊野「……?」

( T)「いや、『どうして伝わらないのかしら?』みてーな顔でこっち見んな。そういう人も居るから」

ポーラ(完璧・無量大数軍)「日本のアウトゥンノは寒いですねぇ〜……」ウロウロ

( T)「鷹さーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!!まーーーーーーたポーラが全裸で歩き回ってっぞーーーーーーーーー!!!!!」


<すぐ向かいますゥ!!


ポーラ「ヒッ!?やだやだやだ!!」ダッ!!

( T)「で、この漫画に影響されたんだとよ」

秋月「あっ、はい……『美味しい妖』、ですか……」

熊野「慣れたとは言え、提督の女性に対する謎の耐性はやはり不気味ですわ」

( T)「あえて深く触れなかった俺の心情を察して」


怒涛のアホラッシュに心が挫けそうだ


秋月「……熊野さん」ペラ

熊野「はい?」

秋月「まさか、これを?」

熊野「ええ、狩人の新境地ですわ!!」

( T)「これで素面なんだぜ?笑うよな」
9 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/11/25(月) 21:00:10.49 ID:NBL3UyTw0
秋月「……す……」


熊野「巣……?」

( T)「酢……?」


_人人人人人人人人人人人人人人人人人人_
> 秋月「素晴らしいです!!!!!」 < アキヅキィ!!!!!
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄


熊野「!!」

熊野「!!」バッ!!

( T)「『そーら見たか』みてーな顔やめろ腹立つ」

秋月「未知の食材への探求心!!新しい味覚の開花!!それに……」

( T)「それに?」

秋月「狩れば、無料!!」ヒョイモグモグ

( T)「二個目〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜????」

熊野「貴女なら理解ってくれると信じていましたわ……!!」ガッシ

秋月「モグモグくまほsンッグゴッホ!!」

( T)「俺はどこから突っ込めばいいの〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜?????」

秋月「ングッ……お、お騒がせしました……」

熊野「さぁ、参りましょう!!美味しい妖狩りへ!!」

秋月「はい!!それで、何をすれば?」

熊野「えっ……と……そのぉ……」チラッ

( T)「……」

熊野「……」ジィッ

( T)「いや俺に答えを求めんなよ……」
10 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/11/25(月) 21:02:16.25 ID:NBL3UyTw0
熊野「提督ほどの殿方なら妖の一つや二つ召し上がったことがあるでしょう?」

( T)「めっちゃ真剣な顔で聞いてくるけど完ッ全に頭可笑しい奴の発言だからな?」

秋月「あるんですか?」

( T)「……」


( T)「あるよ……」


熊野「やっぱり。人が悪いですわね」

秋月「ど、どうでした!?量は、味は!?」

(;T)「待て待て、あんなもん危険犯してまで獲りにいくような……」


熊野「……」ジィッ……

秋月「……」アキヅキィ……


(;T)「……」


ああ、こりゃダメだ。何言っても諦めねえ奴だわ


(;T)「ハァ〜〜〜〜〜……オーケー、俺の負けだ。次の非番に食えそうなバケモンがいる場所に連れてってやる」

熊野「やりましたわ!!」パァン!!

秋月「粘り勝ちですね!!」パァン!!


ハイタッチを決めてキャッキャと喜ぶ未来のゲテモノ食いガチ勢候補共。どこで育て方を間違えたんだ俺は
だが……まぁ、考えようによってはちょうど良かったか……済まさなきゃならない依頼もあったしな


( T)「……」


熊野 キャッキャ!!

秋月 ウフフ!!


( T)「……」


死なねえよな……大丈夫だよな……?
11 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/11/25(月) 21:09:35.45 ID:NBL3UyTw0
【次の非番】 ベルモンドヒバンデラス!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


早朝五時


( T)「ちゃんと寝たか?」

熊野「ええ、しっかりと」

秋月「はい……いただきますぅ……」

( T)「半分寝てる奴〜〜〜〜〜〜〜〜……」


軍属とは思えないこのグダグダ感。出だしから不安になりますよ


熊野「秋月さん、しっかり」

秋月「へっ、ま、朝ごはん?」

( T)「食っただろ……」

秋月「そ、そうでした。えへへ、楽しみで中々寝付けなくって」

熊野「それで、本当に罠は必要無いのですの?」

( T)「罠張ったら回収しなきゃならねえだろうが。あんなとこ年に二回も三回も立ち入る場所じゃねえぞ」


熊野は艦娘の中では珍しく(というか他に見たことが無い)狩猟免許と猟銃免許を取得している
毎年シーズンになるとオフの日には上下二連式散弾銃を引っ提げて罠を仕掛けたり確認しに行ったり
時にはテントを張り泊りがけで狩りをするほどのめり込んでいる。どの口が神戸生まれのお洒落な重巡を名乗ってんだろうな
今回も肩掛けのガンケースに入った愛銃を引っ提げている。服装はオレンジを基調とした迷彩服とキャップ。スパイクブーツ
そして弾薬やナイフが差し込まれている弾帯と、重要かつ最低限のアイテムが入ったリュックサック
どこからどう見ても狩猟ガチ勢の恰好であった。これで中身がオッサンだったら完璧だった

対して秋月は山入りも初めての艦娘。とりあえず動きやすく、汚れてもいい服装ということでジャージとウィンドブレーカーを着用している
ただし、靴だけは熊野の私物である底貫き防止用の鉄板入りの長靴を履かせている。スニーカーで山に入ると死ぬってお婆ちゃん言ってた
12 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/11/25(月) 21:10:26.06 ID:NBL3UyTw0
( T)「よっしゃ、車乗れ。出発するぞ」


この鎮守府に元々置いてあった中古のハイエースに乗り、エンジンを掛ける
何故か全面スモークガラスなのは気にするな。天井やシーツに引っかき傷みたいなモノがあるのも気にするな。少なくとも俺は心当たりがない


熊野「遠いんですの?」

( T)「車だと二十分もありゃ着くかな。そこからちょい歩くが」

秋月「司令、後部座席にあるバッグから柄……みたいな物がはみ出しているのですが……?」

( T)「触んなよ怪我するぞ」

秋月「は、はい……」

( T)「ぶっちゃけ銃効くかどうかわからんからなぁ」ブロロン

熊野「へっ?」

( T)「しゅっぱーつ」ブロロロロ

熊野「ちょっとぉ!?」



【狩猟豆知識】


複数で行う巻き狩りの際は、他の猟師からの誤射を避けるため視認性の高いオレンジ等の狩猟服の着用が義務付けられる
猪や鹿等の狩猟鳥獣は青色以外識別できない色盲なので狩りには影響がない
逆に、カモフラージュ率の高い服装を選ぶと他の漁師に誤射される危険性があるので避けるべきだとネットに書いてた


【狩猟豆知識】
13 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/11/25(月) 21:15:45.95 ID:NBL3UyTw0
―――――
―――



( T)「よし、ここからは歩くぞ」キキッ ギィッ

秋月「ふぁっ、も、ご馳走?」

( T)「食い気が先行しすぎてんぞ」


道路脇、ガードレールが派手に損壊してる場所に車を止める
正直二車線分の広さも無いクソッタレな道路だが、こんな場所通る車なんかほぼいないので問題は無い
いるとすれば自殺志願者か業者の不法投棄か、それか死体を処理しにきた連中くらいだろう。いい迷惑だ全く


( T)「熊野、ライト」

熊野「はいはい」


東の空からはうっすらと太陽の気配があるものの、空を覆い隠す木々によって恩恵はほとんど感じられない


秋月「ふ、雰囲気が……ありますね……」


流石に秋月もこの不気味さに多少怖気づいたようだ


( T)「ワクワクするだろ?ほれ、これお前の荷物」ポィッ

秋月「っとと、中身は?」

( T)「昼飯。あとロープとかなんかグロい色の煙出す発煙筒」スチャッ

秋月「へぇ、それはたのしm……司令!?」

( T)「何?」

秋月「何ですかその……装備!?」

( T)「装備も何も……マチェット、手斧、ナイフ三本に……あと聖水とか塩とか?」

秋月「重装備過ぎませんか!?」

熊野「控えめなダニー・トレホの様ですわよ?」

( T)「スパイ・キッズで良い役貰ってたよな」


バッグも担いで、俺の装備はこれで揃った。まぁ殴れば殺せるけど、備えあればと言うしな
14 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/11/25(月) 21:17:15.94 ID:NBL3UyTw0
( T)「よーし、そんじゃ、作戦概要を説明するぞ」

熊野「あら、任務ですの?」

( T)「そうだよ、地元の猟友会からの依頼でな。お前らも知っての通りウチの鎮守府はバケモノの宝庫だ」

熊野「遺憾な事にね」

秋月「オマール海老やタコみたいに美味しいハプニングもありました!!」

( T)「ああ……うん、美味しかったね……」


もう巨大生物シリーズは無いと思いたい。流石にゴジラまで登場されたら打つ手がない


( T)「まぁウチの鎮守府は、バケモノ出現エリアのほんの一部なんだがな」

( T)「で、今から向かう先が、その中心地だ。はっきり言うが鎮守府なんて比較にならないレベルでバケモンが出現する」

( T)「例えるなら、ウチの鎮守府でパズドラレーダーを起動したら一回につき10ドロップ手に入るが」

( T)「この先で起動させたら一回につき30ドロップ+虹ドロップが三割占めている感じだ」

熊野「微妙にわかり辛い例えやめて下さらない?」

秋月「つまり、鎮守府の三倍のオバケが現れて、その内三割が極上のご馳走だってことですね!!」

( T)「前向き」

熊野「説明が悪いですわ」

( T)「はい」
15 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/11/25(月) 21:20:26.16 ID:NBL3UyTw0
( T)「そんで、ウチに限らず他所様の村町でも悪さする奴がいてな。悪戯で済めば良いんだが、稀に洒落怖レベルの被害に遭う場合もある」

( T)「そこで年に一度、こうして『怪異より人間の方が恐ろしい』と奴らに知らしめて、人里に降りてこさせないようにするのさ」

熊野「それって提督以外のお方に成し遂げられますの?」

( T)「俺が着任するまで寺生まれのGさんが何とかしてたらしいんだが、歳でな……」

熊野「ああ、あの和尚さん……人外って意外と多かったんですのね」

秋月「でも司令、今までそんな話……それこそ、あきつ丸さんや雲龍さんからも聞いたことが無かったのですが……?」

( T)「ああ、それな。あきつは一度連れてきたんだが、入り口付近でいきなり白目剥いて吐いちまってな」

秋月「えっ?」

( T)「いやあの時めっちゃビビったよ。痙攣は止まらないし泡吹くし失k」

熊野「これ以上は彼女の尊厳に関わるのでやめましょうね提督?」

( T)「はい。それ以来、毎年俺一人で何とかしてんだよ」

秋月「あ、あの、憑りつかれたり……するのですか……?」

( T)「さ!!この先に鳥居がある!!そこを通り抜けたら今日の狩場だ!!気合い入れてイクゾォ!!!」デッデッデデデデッ カーンッ

秋月「司令!?しれーい!?」

熊野「秋月さん」ポン

秋月「く、熊野さん……」

熊野「美味しいご飯の前に、困難は付き物……乗り越えたからこそ、食はもっと輝くんですのよ!!」

( T)「気概が凄い」

秋月「うう……遺書を書いてくるべきでした……」
16 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/11/25(月) 21:21:07.67 ID:NBL3UyTw0
獣道を歩きぬけ、蔦やら枝やらをマチェットで切り払いながら凡そ三十分の道のり
普段鍛えてるだけあって、二人は軽く息切れする程度で遅れず着いてきている


( T)「ご到着っと」


腐食が進んだ木の鳥居と、苔に覆われた頭の無い地蔵がお出迎えだ


秋月「こ……怖いです!!」

( T)「正直」

熊野「ふぅん、如何にもって感じですわね」

( T)「秋月見ろ。心臓に毛が生えてるってのはこういう奴の事を言うんだ」

熊野「貴方に言われたくはありませんわね。そもそも、鎮守府が既にお化け屋敷ですわ」スッ

( T)「おーっと待て待て、まだ入るな」

熊野「まだ何か諸注意が?そういうのはまとめて言ってくださらない?」

( T)「えっ、ごめ……いや言ってねえ諸注意言ってねえ。流れで謝りそうになったじゃねーか」

熊野「情けの無い殿方ですわ……」

( T)「やめろ心に刺さる。いいか、ここから先は携帯は勿論、無線やGPSも機能しない。万が一逸れた時はむやみやたらと動かずその場で発煙筒を炊け」

( T)「それと、この先で出会う全ての動物は、例え小動物であろうと何かしらの怪異を抱えてる可能性がある。見つけても絶対に構うな」

熊野「熊などの猛獣に出会った場合は?抵抗しても宜しいのでしょう?」

( T)「……熊ならまだマシな部類だな……よし、許可する」

秋月「熊がマシな部類……?」
17 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/11/25(月) 21:22:42.69 ID:NBL3UyTw0
( T)「あ、あと秋月これ」

秋月「はい?これは……」

熊野「スリングショットですわね」


『スリングショット』。解りやすい呼び方をすれば『パチンコ』だ。パチンコによる猟は法廷猟法(罠、猟銃など)に該当しない為、狩猟免許を必要としない(自由狩猟)
当然、秋月は今回が初めての狩りだ。免許など持っていない。しかし丸腰も心もとないので、こいつを用意したってワケだ


秋月「上手く扱えるでしょうか……?」

( T)「銃弾と違って山なりに飛ぶからな。お前なら数発撃てばコツ掴むだろうよ」

熊野「猟銃が効くかどうかもわからない相手に有効かどうかはさて置いて」

秋月「う……」

( T)「なんでそんな意地悪言うの?」

熊野「あら、先ほど貴方も似たような事を仰ったのでは無くて?」

( T)「まぁ……俺から離れなきゃ使う機会もねえだろ……」

秋月「知ってます……それ、フラグって言うんですよね……」

( T)「……」

秋月「……」

熊野「さ、幸先が不安ですわ……せめて明るく努めて頂けません?」

( T)「頑張るぞ……おー……」

秋月「おー……」

熊野「もう何かの呪いが掛けられていらっしゃるのかしら……?」


冗談はここまでにして、いよいよ呪われた樹海に足を踏み入れる


( T)「おじゃましマッスル」ザンッ!!

熊野「よっと」ザッ

秋月「おじゃましまーす……」ソッ……
18 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/11/25(月) 21:23:35.15 ID:NBL3UyTw0
熊野「ひぃ!!」

秋月「いやっ!!」


一歩踏み入れると同時に、背筋を濡らした刷毛でなぞられたかのような得体のしれない気持ち悪さに襲われる
俺はもう慣れたが、初めての二人は情けない悲鳴を上げた。いやごめん無理もないわ俺も最初はチビるかと


熊野「な、なななな……」

( T)「落ち着け。洗礼だ」

熊野「お……驚かせやがって、ですわ……」

( T)「言葉遣いガタガタだぞお前。秋月、お前は……」


秋月「」


あっやっべ


秋月「ハ……」


秋月「はいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれた」


早速憑りつかれたわ。入って三十秒も経ってねえぞ暫く顔出さねえ内に調子乗りやがって殺す


(#T)「マッスル指パッチン!!!!!」バチコォン!!!!!!!!

秋月「ピッ!?」フワァ


燃える闘魂も腰を抜かす音量の指パッチンで秋月に憑りついたクソ霊を追い出し


(#T)「はい捕まえてぇ!!!!!握殺ッ!!!!!!!!」グワッシャア!!!!!!

<ンアアアアアアアアアアアア……


いつも通り握り潰す。散々言うが概念を掴む感覚に慣れたら誰でも(ry
19 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/11/25(月) 21:25:22.49 ID:NBL3UyTw0
秋月「ん……はっ、し、司令?秋月、一体……?」

( T)「ヤマノケに憑りつかれただけだ。もうぶっ殺したから大丈夫だ」

熊野「……それって洒落怖の怪談かしら?」

( T)「良く知ってるな」

熊野「鈴谷が好きですのよ。自分が怪異みたいな物だって自覚は無いのかしらね?」

( T)「大丈夫、お前も突然変異種だ」

熊野「失礼では無くって!?」

( T)「妖怪食いたいとかほざく奴がまともなワケねえだろ。秋月、歩けるか?」

秋月「も、問題ありません……ヤマノケとは?」

( T)「簡単に言えば女にとり憑く悪霊だな。四十九日間憑かれたままだと一生正気に戻らねえ」

秋月「ヒッ……」

熊野「味は?」

( T)「えっ?今握りつぶしたの見たよね?食えると思った?」

熊野「ゲテモノ好きの貴方の事ですから、味見くらいしたのかと」

( T)「俺一度でもゲテモノ好きって言った?」

秋月「し、しれ……気分が……うっ」


取り憑かれた時のおぞましさがフラッシュバックしたのだろう。秋月は俯いて嘔吐く
クソ、俺の落ち度だ。まさか初っ端からブチかましてくるとはな


( T)「相当キツかっただろ。我慢せず吐け」

秋月「い、いえ……大丈夫です……すみません……」

( T)「にゃんちゅうの物まねして気分を和やかにしてやろうか?」

秋月「お、お気遣いなく……」

( T)「お゙お゙ん゙!!!!!!!!!!!!」

秋月「大丈夫ですってば!!」


よし、気は紛れたようだな
20 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/11/25(月) 21:27:19.87 ID:NBL3UyTw0
熊野「あら……提督、鳥居が」

( T)「ああ」


振り返ると、『入口』である鳥居はなく、ただ鬱蒼とした森が広がるばかり
踏み入れたが最後、後戻りは出来ないという『奴ら』の歓迎方法だ


( T)「この場所……俺らは『裏世界』と呼んでいるが、基本的に一方通行だ。退けば最後、二度と戻れない」

秋月「で、出口は……?」

( T)「勿論あるさ。決められたルートを通りつつ、各ポイントで怪異をボコボコのグッチャグチャにすれば自ずと向こうから出口を開く」

熊野「まるでホラーゲームですわね」

( T)「馬鹿野郎ヌル過ぎてゲームにもならねえよ」

秋月「今ほど司令がいて本当に良かったと心から安心できた瞬間はありません……」


〖 ぽ 〗


秋月「っ……!!」

( T)「シィッ」


背後からいきなり耳元で囁かれたように聞こえた低い女の声の半濁音
悲鳴を上げようとした秋月の口を抑え、茂みに身を隠す。熊野は愛用の二連式散弾銃にスラッグ弾を込めた


熊野「これも……有名な怪異ですわね」

秋月「ど、ど、どこから……?」

( T)「クソみてえなASMR聞かせやがって……いたぞ、あそこだ」


白いワンピースは、並び立つ木々と比べると不自然なまでに映えている
ぬめりとした長い黒髪とつば広帽子が表情を隠しているが、隙間からは『ぽ、ぽ、ぽ』と鳴き声が漏れていた
二メートルを超える身長から、その化け物女はこう呼ばれている


( T)「尺八様。成人前の男を狙って取り殺すクソビッチだ」
21 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/11/25(月) 21:28:15.14 ID:NBL3UyTw0
秋月「え……エッチな広告でよく見る妖怪ですか……?」

( T)「そう……え?いや、広k……え?」

熊野「殿方ってのは節操がありませんわね……」

( T)「え?」


そんなんあるんだ……いや、いくら溜まっててもあんなの相手にするのなんて絶対に御免だが
そして何故熊野は俺を蔑んだ目で見るのだろうか。男=性犯罪者の方程式を絶対にしてるフェミ女かよ


( T)「じゃあちょっとぶっ殺して来るから待ってろ。絶対に動くなよ」

秋月「スナック感覚で倒せるものなんですか!?」


〖 ぽ 〗


秋月「しまっ……」


秋月のツッコミに反応し、どす黒い瞳が俺たちを捉える。そして―――


〖 やっべ 〗


その青白い顔を更に青ざめさせ、背中を向けた


熊野「やっべ?」

( T)「覚えてやがったか。あれだけ痛い目に遭えばそりゃあ……」


尺八クソビッチの脅威は『スピード』にある。自動車と並走できる脚力を持っているのだ
だがそれは遮蔽物のない『道路』に限る。森などの直線で走ることの出来ない場所ではご自慢の俊足も半減だ
隠れた理由がお分かりいただけただろうか?『餌』の音につられてノコノコやってきたクソビッチを


(#T)「逃がすかァッ!!!!!!!」


確実にぶち殺すためだ
22 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/11/25(月) 21:29:50.27 ID:NBL3UyTw0
一歩、二歩、三歩目で跳躍


〖 ひぃぃ!!! 〗


三角飛びの要領で木の幹を蹴り、奴の頭を両手でしっかりと掴む
そのまま慣性と重力と筋力を使い降り下ろし――――


(#T)「完武・兜砕き!!!!!!!!!!」ドゴッシャア!!!!!!!!


着地と同時に俺の右大腿部に叩きつけ、ココナッツの如くぶち割った


〖 ポプラッ!!!!!!!!! 〗


(#T)「そのタッパで種島ぽぷらちゃん自称する気かてめぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!お望み通り低身長にしたらぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!」ガッガッガッ!!!!!!!

秋月「も、もう勝負は着きましたから!!」

熊野「これじゃどちらが怪異かわかりませんわね……」


スゴイシツレイである。とにかく、これで二つ目の怪異は撃破した
しかしぶっ殺しても来年になったらまた出てくるのだ。相変わらず羽虫みたいに鬱陶しい連中であった


秋月「司令の顔を見た途端、一目散に逃げましたね……」

( T)「まぁ、こいつは年一で確実にぶっ殺す対象だからな」

秋月「恐怖の対象が恐怖する司令って一体……?」

熊野「これは食べr ( T)「食えるわけねーだろせめて人型は避けろよ」ですわよね」


亡骸は黒い瘴気になって徐々に溶けていく。寺生まれのGさん曰く、この状態は『原子の結びつきを解いた』ようなものらしい
傍目には消滅したように見えるが、恐怖を集めることでまた結びつき、『存在』として顕現する
記憶に新しいものだと、一騒動起こした貞子(川д川←こいつ)などいい例だ。いや、悪い例だ


熊野「ちゃんと形として残るものはありますわよね?」

( T)「無かったら連れてこねーよ。長い一日になる、根気よく行こうぜ」

熊野「楽しみにしてますわよ?」

秋月「強いですね……秋月は既に挫けそうです……」

熊野「猟は根気と忍耐ですのよ?この程度でへこたれてはいられませんわ!!」


頭おかしい奴はすぐに適応してくれるから助かる
23 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/11/25(月) 21:30:49.56 ID:NBL3UyTw0
―――――
―――



熊野「これからどちらへ?」

( T)「駅を目指す」

秋月「こんな森の中で駅ですか?」


第一チェックポイントのキーワードに、秋月は首を傾げた
当然だろう。鎮守府周辺どころか一番近い村でさえ鉄道は通っていない
せいぜい、一日二本のワンマンバス程度だ。田舎のアクセスの悪さを考えれば、どの家庭でも車は所持して当然だが
村民の高齢化によって利用者は一定数いる為、廃線になることは無いらしい


( T)「聞いたことねえか?『きさらぎ駅』」

熊野「ああー……確か、これもネット発の怪談ですわね」

秋月「ど、どのようなお話で……?」

熊野「簡単に言えば、電車で寝過ごして終点に到着した先が、見覚えのない無人駅だった……という、体験談ですわ」

( T)「まぁその無人駅がこの先にあるんだよ」

秋月「えと……この辺りに駅が建っていたという過去は……?」

( T)「こんな木と山と海しかない限界集落に鉄道引く物好きがいたなんて話は今んとこ聞いたことねえな」

熊野「高速道路建設は予定されていたのでは無くて?」

( T)「うんまぁそれも事故と不審死続出でオジャンになったんだけど」

秋月「鎮守府に『地獄』だなんて物騒な名前が付けられている理由がわかった気がします……」
24 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/11/25(月) 21:31:36.84 ID:NBL3UyTw0
熊野「大よその察しはつきますが、あの鳥居以外でもこの場所へ迷い込む方法がありまして?」

( T)「うん。今のとこ確実に入れるのがあの鳥居で、それ以外は天文学レベルの確率で乗り物や扉……後は夢の中とかかな」

秋月「今夜は安心して眠れなくなりました……」

( T)「それを防ぐ為にこうしてグチャグチャにしに行くんだからダイジョブダッテ!!」


秋月のテンションが低い。歌でも歌った方が良いのかもしれない
ロッキー4の挿入歌『ハーツ・オン・ファイアー』でも歌おうか


( T)「秋月、ロッキー4の挿入歌……」

秋月「司令!!」

( T)そ「えっ、嫌だった?やっぱり『アイ・オブ・ザ・タイガー』の方が好み?」

秋月「熊野さんが立ち止まりました!!」


振り返ると、最後尾を歩いていた熊野が右を向きながらぼんやりと立ち尽くしている
瞬き一つせず、ブツブツと何かを呟きながら


( T)「あー、アレだな。幸先が良い」

秋月「幸先?ま、またヤマノケに取り憑かれたのでは……?」

( T)「違う違う。アレ見……いや、見んな」


熊野が見る先を向こうとした秋月の顔を掴んで止める
正確には『見てはいけない』のではなく『理解してはいけない』怪異だ


秋月「ふぐぐ……ひれい?」

( T)「『くねくね』だ」
25 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/11/25(月) 21:33:21.36 ID:NBL3UyTw0
熊野の見る先には、白く細長い物体が奇怪な踊りを披露している
視神経を通って脳に直接触手をぶち込まれたかのような不快感と浮遊感が襲ってきた


( T)「……」


そのまま突っ込んでぶち殺すのは容易だが、問題は魅せられている熊野だ
あいつの手には猟銃が握られている。トチ狂った彼女が俺の背中をズドン、なんてこともあり得る


( T)「いいか、絶対に向こうを見るな。その上で頼みがある」

秋月「ふぇ……はずは、ふぇを放ひふぇくだふぁい……」

( T)「あ、ごめ。目ぇ瞑っといて?」


瞼を閉じた秋月の顔から手を放し、代わりに腕を取る
視線はくねくねから離せないが、躓かないように慎重に熊野へと近づき、背後へ回る


( T)「ちょいとごめん……よっと!!」


猟銃を叩き落とし、熊野の腕を背中へ回して地面へと押し倒す。事案とか言うな


熊野「ひぁあっ!?」

( T)「よし秋月!!抑えてろ!!」

秋月「はっ、はい!!こうですか!?」

( T)そ「ふぐぅそれ俺の顔!!こっち!!」

秋月「し、失礼しました!!」


暴れ出さないように秋月に熊野を任せ、俺はくねくねへと近づく
距離が縮まるごとに踊りは激しさを増し、不快感は痛みへと変わるが


(#T)「キモいもん見せてんじゃねえラバーメン(ゴム人間)!!!!!」


お陰様で怪異耐性EXまで昇華した俺にはそれ以上の効力はなく


(#T)「死ねオラァ!!!!!!」


脚に当たる部分を掴み、その辺の木に叩きつけて手早く『〆た』
26 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/11/25(月) 21:34:11.44 ID:NBL3UyTw0
( T)「やれやれ……」


<しれー!!ご無事ですかー!!

<あ、秋月さん!?極まっ、極まってますわーーーーーー!!!!!


熊野も無事、元通りになったらしい。俺が直々に指導した関節技は暴れた所で外せはしない


( T)「ちょっと待ってろー!!収穫するからー!!」

<収k……何ですって!?


さて、どの辺りが良いだろうか。まぁどうせどの部位でも味は一緒だから、腹回りでいいか
ナイフを引き抜き、三十センチ大の肉を切り取る。内臓は存在せず、豆腐のように白く味気のない断面図が御目見だ


( T)「今度は調理方法を変えるか……」


後処理に聖水を適当にぶち撒けて処置は完了だ。これで暫くは復活できまい
別の怪異に食わしちまう手もあるが、何らかの強化でもされたら堪らん。めんどくせえ


( T)「おつかれ。もう目を開けていいぞ」

秋月「はい……えっ、それは?」

( T)「くねくね」

秋月「えっ?」

( T)「えっ?」

熊野「いたたたたた痛い痛い痛いですわ!!先にどいて下さらない!?」
27 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/11/25(月) 21:35:49.43 ID:NBL3UyTw0
熊野「ワケもわからぬまま酷い目に遭いましたわ……」

( T)「いやお前あのままだったら廃人化してたぞ」

秋月「どうなったか覚えていらっしゃいますか?」

熊野「いえ……ただ、とてつもなく気持ちの悪い物を目にした実感だけはありますわ……」

( T)「まぁこれがその正体なんだけどな」

熊野「くねくね……と、仰ったかしら?」

秋月「この白いのが……?」

( T)「食えるぞ」

熊野「はぁ!?」

( T)「なんだお前お目当ての食材だぞ」

熊野「く、くねくねって食べられるんですの!?」

( T)「尺八様食おうとした奴が今更何言ってんだ」

秋月「な、名前は可愛らしいですが……どういった怪異なのですか?」

( T)「田んぼとかに出没するキモい生き物だ。踊りと共に念を飛ばして気を狂わせ、廃人にする」

秋月「さっきの尺八様と違って、消えないんですね……」

( T)「まぁ、こういう実体があるタイプもいるって事だよ。まぁ、無くても殺せるが」
28 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/11/25(月) 21:36:44.08 ID:NBL3UyTw0
熊野「不覚ですわ……よもや、狩猟対象に脅かされるとは……」

( T)「猟犬の役割は果たしてたから結果オーライってことで」

熊野「あんなスポット勘弁願いたいですわよ!!」 ※猟犬が獲物を見つけて待ち構える仕草

秋月「た……食べても、大丈夫なんですか?」

( T)「俺と叢雲は問題なかった」

秋月「叢雲さんも口にしたんですか!!!????」

( T)「いや、大本営からの嫌がらせで補給届かない時があってさぁ。そん時こうして狩りで食いつないでいた時あったから」

秋月「た、タフなワケですね……」

熊野「肝心なのは味ですわよ。で、どうですの?」

( T)「調理次第、かなぁ……食感は味のないはんぺんみたいな感じ」

熊野「はんぺん……当時はどうやって食しましたの?」

( T)「塩振って焼いた」

熊野「でしたら、今度はおでんの具などにしては如何かしら?」

( T)「いや揚げる。イカフライみたいになるかもしれん」

秋月「秋月、とんでもない行為に足を突っ込んでしまった気しかしません……」


ようやく気がついたようで何よりだ。秋月は頭が賢い
目的と収穫がいっぺんに片付いたところで先を急ぐとするか
29 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/11/25(月) 21:47:37.87 ID:NBL3UyTw0
―――――
―――



くねくね遭遇から歩く事十五分。第一チェックポイントである『きらさぎ駅』に到着した


秋月「本当に、駅が……」

熊野「ご丁寧に鉄道まで敷いていますわね。この先は何処へ通じていますの?」

( T)「進んでも戻っても同じく駅にたどり着く。無限ループだ」

秋月「踏み入れて大丈夫なのですか?」

( T)「燃やす分には問題ない」

秋月「発言が既に問題しかないですが……」

( T)「ふむ……七時前か。ちょっと休憩しよう。ベンチもあるし」

秋月「正気ですか!!!???」

熊野「秋月さん、提督が正気だった時など一度もありませんわよ?」

秋月「だとしても限度があるでしょう!?」

( T)「いや、どっちにしろ電車待たないといけないし……」

秋月「来るワケ……来るんですか?」

( T)「え?うん」


秋月は白目剥きそうな顔をした。面白いのでやめてほしいと思った


熊野「まぁまぁ、お茶でも致しましょう。狩りの最中に飲むコーヒーは格別でしてよ」

( T)「紅茶じゃないんだ……」
30 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/11/25(月) 21:48:23.55 ID:NBL3UyTw0
渋る秋月を宥めながら、苔むした階段を昇ってホームへと踏み入る
錆びついた看板には旧書体で『きさらぎ駅』の文字。隣接駅に『かたす』と『やみ』が並ぶ。かたすってなんだよクリニックか
古び、何らかの染みで汚れているベンチにアナ雪のピクニックシートを敷き、束の間のティータイムが始まった


( T)「ジャイロの淹れるイタリアン・コーヒーはこんな旅において格別の楽しみだ」

( T)「コールタールみたいにまっ黒でドロドロで同じ量の砂糖を入れて飲む」

熊野「お望みなら手持ちのお砂糖全部入れて差し上げましょうか?」

( T)「やめて」


いつか飲んでみたいものだが、今は熊野が淹れたスティックタイプのインスタントコーヒーで良しとしよう
って、おいおいこんな所にコトリバコ落ちてんじゃねえこっそり潰しとこ


( T)「オサラバシイナ!!」クシャッ

<アアアアアアアアアアアアアアアアス!!!!!!!!!


ハッカイか。呪いのキックバックも大したことねえな


熊野「何か仰りましてー?」

( T)「目覚めた心が走り出した音」※未来を描くため

熊野「相変わらずワケのわからぬ事を……コーヒー、出来上がりましたわよ」


あまりヘタな事を言えばタダでさえ消耗している秋月が滅入ってしまう
細々したものなら秘密裏に処理してしまおう


秋月「ふぅ、美味しい……落ち着きます……」

( T)「この一杯と一服の為に生きているよなぁ」シュボッ

熊野「それは何より。提督、この後の行程は?」
31 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/11/25(月) 21:49:46.11 ID:NBL3UyTw0
( T)「27年間隔でピエロの幻覚見せてくるデカい蜘蛛を駆除したり人妻と子供の悪霊がいる家焼き払ったり早歩きくらいの速度で追っかけてくるブラクラ素材みたいな白塗りのデカい顔面でスイカ割りしたりとかかな……」

秋月「全部聞き覚えがあるんですが!?」

熊野「食べられる物があるとは思えませんわね……」

( T)「結構ガチなやつは大体食えねえな……比較的マシなレベルなら調理次第で……どうにか……無理か……感染症が……」

熊野「肩透かしだけはご勘弁願いたいものですわね」

秋月「食べても病気や呪いに掛からない物に限定してください……お願い……お願いです……」

( T)「ハハ、悪い悪い。ちょいと脅しが過ぎたな。ちゃんと美味いもんにはありつけるから心配っ……!!」


カンカンと踏切が鳴る音で秋月が耳を塞いで短い悲鳴を上げる。熊野は瞬時に猟銃を手に取った
線路の向こうからは元気のない前照灯の明かりと警笛の音が、『ガタンゴトン』のリズムに乗って近づいていた


『まもなく、電車が来ます。その電車に乗るとあなたは恐い目に遇いますよ〜』


覇気のないアナウンスが流れる。叢雲より恐い存在なんていない


( T)「来た来た。さーて、皆殺しにするか」

秋月「な、何が乗ってるんですか……?」

( T)「夢の中でグロい殺し方してくるちっさいオッサンが大量に」

熊野「猿夢?」

( T)「正解。まぁお前らはゆっくりしとけよ。俺一人で楽し……楽しんでくるから」

秋月「アトラクション感覚!?」


マチェットを鞘から抜き、白線の内側で電車が止まるのを待つ
遊園地なんかでよく見るような、猿のラッピング電車だ。イラストの目の下が錆び、血涙のような柄が出来ている。キモい
扉が大きく息を吐いて開くと、車内アナウンスが流れた。そして


『次は〜挽肉〜挽肉〜』


中で待ち構えていたボロ衣を纏ったちっさいオッサン達の血走った目が、一斉に此方を向いた


(#T)「挽肉になるのはお前らの方だァ!!!!!!!!!!!!!!」


そして、蜘蛛の子を散らすかのように、逃げ場のない車内の奥へとダッシュで逃げ込んだ


(#T)「逃げんじゃねえ!!!!!!殺すぞ!!!!!!!!逃げなくても殺す!!!!!!!!」


散々人様に迷惑かけといていざテメーらの番になったらこれだ。クズ極まりない連中だな全く
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