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真・恋姫無双【凡将伝Re】4
- 976 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2022/01/19(水) 20:29:03.55 ID:NjqS3nxp0
- 日輪がまだ地平線より上る前。払暁前。
いつもならば立ち上がり、立木打ちをするのだが中々そういう気にもならない。
なんとなれば、だ。
「気が進みませんか〜」
「起きてたのか、風」
すやすやと、先ほどまで寝息を立てていた風がそんなことを言う。
「そですね、起きていたとも言えるし、今でもぐっすりなのかもしれませんね。
ええ、夢心地ということです〜」
ふんわりと眠たげに笑い、俺の胸に飛び込んでくる。
「どうした急に」
すぐには応えず、ぐりぐりと頭を押しつけてくる。
こんなにひっついてくるのは珍しい。というか初めてじゃないかな?
思えば、風から部屋に来るのも珍しいことではあった。
「くふふ、たまにはいいじゃありませんか。
常には抑えていた慕情が溢れてしまったということで一つ」
「いやそんな慕情とかあったのなら嬉しいけどね?
というかそんなことを口にするのも初めてじゃね?」
「くふ、そうでしたっけ?
これはいけませんね。思いを口にしないと伝わらないものもありますからね〜。
ええ、そうですね。
そですね〜」
ふわり、と立ち上がる。
一糸まとわぬその姿はある種の神々しさすらあり、息を呑んでしまう。
「幾百、幾千、幾億の夜を重ねてなお、やはり二郎さんなのですよ。
ええ、そうです。そうなのですよ。二郎さんの横で見る月はとても輝いてます。
二郎さんとご一緒させていただくお酒はとっても美酒です。
だから、幾度でも選びます。それが二郎さんなのです」
いつもの、ある意味胡散臭さのある言葉ではなく、透き通った心を感じた。実際、いつもの風らしくない。
それでも、とても大切なものが含まれている。そしてそれはとても貴重なもの。ありえないもの。
何より、風が涙を。
抱き寄せ、その真珠に口づける。
「いつだって、俺のメイン軍師は風さ」
もっと気の利いたことを言えればよかったのかもしれない。でも、俺の肺腑から出たのはその言葉だった。
一瞬、きょとんとして。
「くふふ、ありがたき幸せ、というやつなのですよ〜」
「そうかい、だったら嬉しいね。これからもお見捨てなきように頼むわ」
くすり、と笑みは深まる。
「こちらの台詞です〜。
ええ、二郎さんのために頑張っていこうと決意を新たにしております〜」
常ならば胡散臭い、或いは真意が五里霧中な風の言葉だ。
だが今日のそれは、まごころ、のように感じた。
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