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真・恋姫無双【凡将伝Re】4

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900 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/10/22(金) 22:14:38.88 ID:58OUfgWf0
 ここは夜の国。蜘蛛の巣の深奥にて秘奥。そこに踏み入れる人物の表情は眠たげではっきりと読めない。
 実際大したものだと張?は内心でその人物の評価を一段ほど上に改める。口だけでなく、度胸も大したものだ、と。
 そう、そこは張家の本拠地。絡新婦(じょろうぐも)の巣の最奥。そしてその支配者はにこり、といつもの貼り付いた笑みである。

「ようこそ、と言うのもおかしな話ですから、さっさとご用件をどうぞ」

 にこやかに、だがどことなく素っ気ない問いである。だが程立は揺るぎもしない。ただ、くふふと笑みを漏らすのみ。

「これはどうも〜。歓迎いただいているようで嬉しい限りです〜。
 まさかまさか、張家の本拠地にお招きいただけるとは思ってもいませんでしたし〜」

「いえいえ、仮にも二郎さんが最も信頼するらしい方ですし?
 何かの間違いがあってはいけませんからね。ええ、何かの間違いがあってはいけませんからね」

 ちらり、と張勲の視線が僅かに動く。その視線は虚空を貫くようであり、その実際は指示そのものであったろう。
 それが分からない程立ではない。が、そこは軽く受け流す。なに、前哨戦ですらない余技未満のやりとりである。
 張家の本拠地にての今は、ある意味まな板の上であるとも言える。それを自覚し、くふ、と漏れる笑みを自覚する。

「なるほど、流石に度胸は一流といったところですか。散々と注がれた毒が見事に散らされていますしね。
 しかして、その真意はどこにあるか伺っても?」

 その過程で張?に退出を指示する。彼の見せた刹那の逡巡こそが収穫。
なるほど、相当のやり手であるようだと気を引き締める。
 瞑目して不動。そのたたずまいに、手強いなと内心で警戒を更に一段階高める。

「改めて問いましょう。今回のご訪問はどういったご用向きで?」

 返答は沈黙。或いは呼吸。響く低音、すなわち寝息。むしろ鼾(いびき)。
 これには流石の張勲が戸惑う。

「ええ〜、これどうしたらいいんでしょうか」

 取り敢えず眠気に有効な茶葉は実装している。あってよかったと推薦してくれた人物に何か進物でもせねばならない。そんなことを思っていたのだが。
 これが紀霊であれば遠慮なく頬をつねるなり、声をかけるなりしたろう。だがしかし、張勲はそこまで踏み込むことはしない。むしろできない。これは彼女の、どちらかと言えば踏み込んできた相手に対応するという姿勢(スタンス)が基本であるのが大きいのであろう。
 つまり、相性というものである。
 そしてその沈黙は一方的に破られる。他ならぬ程立によって。

「おお、寝てました!」

いけしゃあしゃあとそんなことを言う。さしもの張勲が毒気を抜かれてしまうほどにある意味図々しい。

「いやほんとに何しに来たんですか?」
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