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真・恋姫無双【凡将伝Re】4
- 632 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/02/09(火) 22:06:39.78 ID:zVfFJUPn0
- もともと、でっちあげたもんだからな。
そう笑う彼の笑みはどこか透きとおっていて。郭嘉は胸が締め付けられるのを自覚する。
でも。だって、それでは。魔王なんて言われては貴方は。
「いいのさ。俺のことは、ね。いいんだよ。何と言われても、さ。所詮風評なんてそんなもんだしな。知らん奴らに何を言われても構わんさ。
俺というものを知ってくれている人がいるから、さ」
その笑みは傍目にも痛々しくて、見ていられない。
そして、思う。
立場があるからだろう。そう、一度も彼は董卓や賈駆の処遇――死刑――に言及していない。
きっと。
悼(いた)んで、いるのだろう。彼女らを。そして。
傷(いた)んで、いるのだろう。彼の、心は。
なんとなれば、身内には甘い彼だ。彼女らを逆賊として処罰することに対してどれだけ慙愧(ざんき)の念があることか。
「だから、俺のことはどうでもいんだよ、ほんと。
風評なんて、もっとどうでもいいさ」
その言葉と表情に郭嘉は、激昂する。そして溢れる言の葉。
「どうして、ですか」
「え?」
「そんなに、そんな貴方がどうしてそこまで傷つかなければならないのですか」
貴方は、こんなにも頑張っていて、そんなにも傷ついて。そんなのはあんまりだと郭嘉は理不尽に憤る。
「二郎殿はもっと、もっと……」
お気楽に笑っているべきなのだ。適当な戯言を口にして窘(なだ)められていればいいのだ。
そう、だから、こんなのはおかしい。こんなのは認めない。
欠けたものは、補えばいい。
「私では、不足ですか?」
いや、不足だろう。愛想なんぞないこの身だ。でも、それでも。見ていられない。こんな彼は見ていられないのだ。だから。
「え?」
口付けした。
戸惑う彼の表情が、何故だか嬉しい。
「貴方の空隙を、埋めたい。そう、思いました」
きっと、これは恋なんてものではない。
きっと、それは愛なんてものでもない。
同情とか、打算とか。きっとそんなありふれたものだ。
「私では、不足ですか?」
上手く、笑えているであろうか。郭嘉はそんなことを思う。
でも、だからこそ、精一杯にほほ笑む。
だから、怒号とも、嗚咽とも言い難い音響と共に押し倒された時には、安堵を覚えたのだ。
とうに諦めていた、女としての悦(よろこ)び。
――郭嘉という人物が史書に記述が増えるのは、反董卓連合以後である。
「進むも郭嘉、退くも郭嘉」
変幻自在の用兵。
戦争芸術を仕立て上げる彼女は、後世において戦争の天才として語られることになる。
そのことを知る者は、未だいない。
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