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真・恋姫無双【凡将伝Re】4

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631 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/02/09(火) 22:06:13.19 ID:zVfFJUPn0
郭嘉はその報告を目にして僅かに顔を顰(しか)める。定期的に集める市中の噂、をだ。

「魔王、ですか」

禁裏を血に染め、政敵の悉くを葬り去ったが故にそう呼称されているとのことだ。あくまで一部ではあるようだが。

郭嘉はため息を漏らす。そんなものかと。
そしてどうしたものかと頭を巡らす。けして好ましい風評ではないのは確かなのだが。
そう思いながらその風評の対象である青年にちらりと視線を。

「――困ったものですね」

その呟きは果たして彼の耳に入ったであろうか。
常ならばお気楽な表情である彼は、いつになく憔悴しているように見える。これは好ましいことではない。
執務室には彼と彼女のみ。これが彼女の親友たちならば軽口をたたくなり、すっとぼけた発言で場を潤すのだろう。だが、生憎郭嘉にそのような話術はない。センスもない。
それは彼女が一番自覚していることである。つまり。

――人としての魅力に乏しい。

これに尽きるであろう。口を開けば仕事のこと、或いは小言。分かっている、分かってはいるのだ。
あれこれと話題だって準備はしている。話題の飯屋だったり、流行りの服だったり。
まあ、その大半は阿蘇阿蘇から得た知識ではあるのだが。それでも彼が責任編集しているそれは格好の話題となるはずである。
それでも、彼を前にするとそんな事前準備は全て吹き飛んでしまうのだ。
だから、今も気の利いたこと一つ言えない。彼の親友――言わずと知れた張紘――からあれこれと助言すら貰っているというのに。
結局、こうなる。

「如何(いか)に未明に髑髏の兵を率いて洛陽を駆けて禁裏を血に染めたとはいえ、好ましくはない噂です。
ええ、実際もって好ましくはない」

分かっている。分かってはいるのだ。他に遣り様はなかったと。だが、それでも、他に遣り用はなかったのかと郭嘉は思うのだ。
だって貴方はこんなにも憔悴しているではないか。
だから、言い募る。

「二郎殿、もとよりです。貴方はその虚名を活かすためにあれやこれやされていたのでしょう。
それを、一夜にして台無しにするとはいかがなものでしょうか」

違う、そうじゃない。そういうことを言いたいのではないのだ。
そんな、そんな風に彼を糾弾したいのじゃない。そうじゃないのだ。

「大丈夫だ、問題ない。英雄たる怨将軍の役割たる英雄の座。
それは既に星が引き継いでいる。引き継いでくれる。
あの恋と伍したんだ。
だから、さ。怨将軍は廃業ってことさ」

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