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真・恋姫無双【凡将伝Re】4

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558 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/10/14(水) 22:42:34.52 ID:IfnGNAR60
◆◆◆

「お忙しいところ、お時間頂き感謝する」

いつもながらに淡々とした韓浩の口調に公孫賛は苦笑する。
いや、変わらないなあ、と。

「いや、他ならぬ韓浩なら、さ。いつだって時間くらい割く」

例えそれがどのような用件であっても、だ。
きっと袁家への帰参の件だろう。
はあ、と内心で公孫賛は人生最大級のため息を吐く。
いや、と思い直す。もともとキリのいいとこまでと言って貸し出されてきたのだ。いよいよ、これからこの世の春を謳歌(おうか)するであろう袁家に復帰するのはごく自然なことだ。
むしろ、韓浩のような人材が一軍閥の長であった自分に貸し出されていたのがおかしいのだ。

なんとなれば、韓浩は袁家における武家筆頭の紀家軍の幹部候補生……どころかれっきとした幹部である。それも上位の。
文武に秀でる彼女は紀家軍の、今となっては古参だ。
雷薄が横死した現在、客観的に見てその席次は非常に高い。具体的に言うとあの趙雲すら凌ぐ。
もっと具体的に言うと紀霊の横で補佐をするのが自然なのだ。ぶっちゃけ袁家の武家筆頭である紀家軍のbQが妥当な席次であるのだ。
実際、韓浩というのは破格の人材である。そう、公孫賛は思う。

平時、戦時共に痒いところに手が届く補佐ぶり。それにどれだけ助けられたか。
戦場で根拠地について憂いがないという状況。そして、戦場で副将と参謀を兼ねる彼女がいるという状況。
そのどちらも公孫賛は未知のものであった。韓浩がいたからこそ、だと公孫賛は思う。彼女がいたからこそ呂布の率いる軍にあのように一方的に押し込めたのであろうと。

そのような彼女を、だ。
ほいほいと貸し出すことのできる袁家という集団の奥深さに公孫賛は苦笑する。まあ、それはいい。

愛想がなくて、歯に衣着せない彼女。それはかけがえのない存在ではあったのだが。それも借り物。そして、きっと彼女は袁家にても栄達していくのであろう。それは最初から分かっていたことだ。分かっていたはずだ。
だから、気持ちよく送り出そうと決めていた。精一杯の感謝の念と共に。

◆◆◆

「ほんと、韓浩には世話になった。うん。本当に世話になった。州牧なんて地位に私が就くのも、だ。
割と全部が韓浩のおかげだと思ってる。ほんとに、感謝してる。
だから……」

言葉を続けようとする公孫賛に、韓浩は不思議そうに首を傾げる。
異議を投げかける。

「ちょっと待ってほしい。何か齟齬があるようだ」

言わせるなよ、とばかりに眉間に皺をよせる公孫賛の抗議なぞ、どこ吹く風とばかりに韓浩は応える。

「私が今日、お目通りを願ったのはそう。貴女にそのような表情をさせないためと言ってもいい。
 多分」

へ?と戸惑う公孫賛。
韓浩は優しく笑いかける。いや、それは錯覚であったのかもしれない。
だが、彼女の紡ぐ言葉は公孫賛の耳朶を打ち、心を震わせる。
それは誓いの言葉。覚悟の言葉。

「これよりわが身は、我が忠誠は御身のために。
そう。非力非才の身であるが、この忠誠を御身に尽くす。
この剣を受け取って欲しい。もしそれが御身の望まぬものならばこの胸を貫くべし」

片膝をついて韓浩は腰の剣の切っ先を自分の胸に突き付ける。
剣の誓い。
武人にとって神聖なそれであるということに気づいて公孫賛は震える。
何にであろうか。嬉しさ?戦慄?望外のこの状況に理解が追い付かない。
まさかに、夢ではなかろうなとばかりに軽く頬をつねる。痛い。痛い?痛いとも。

「わ、私なんかに、いいのか?」

お前はもっと、もっと大きく羽ばたけるだろう、と。

「繰り返す。我が忠誠は御身に。
もしそれが御身の望まぬものならば、この胸を貫くべし」

そ、それはまずくないか?
そう、口に出そうとする公孫賛の目の前の韓浩は、いつも通り静かに。

「既に袁家も了承済み」

最大にして唯一の懸念。それが消え、改めて韓浩を見据える。その眼差しはいつものごとく無表情。それが、何故だか嬉しかった。
そして韓浩の持つ剣を受け取る。

「州牧の地位よりも、韓浩を得たことの方が嬉しい」

後世に伝わる公孫賛の台詞である。
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