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真・恋姫無双【凡将伝Re】4
- 229 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/04/06(月) 21:36:43.59 ID:TCMDsT8z0
- ◆◆◆
反董卓連合。この集まった大軍の総大将が誰かという議題。
曹操は苦笑する。そしてなるほどと納得もする。あくまで袁家は諸侯の合意のもとに洛陽に寄せるのかと。
それならば今上帝に叛するも、袁紹を推したという一事で諸侯は袁紹を認めざるを得ない。
なかなかに考えているではないか。
だが、袁家の独走を望む者なぞいないのだ。それを分かっていながらどうするつもりやら。
内心冷笑すらしながら曹操は傍観を決め込む。この状況で自ら総大将を名乗るか?そんな無様を晒すなら興醒めである。
お手並み拝見とばかりににんまりと笑い、深く座する。
そんな曹操の思惑を破ったのはしっとりとした、それでいて活力に満ちた声だ。
「いいかしら?」
目を向けると、褐色の肌の少女が艶然と微笑む。南国の太陽の輝きを宿したその熱量に流石の曹操が目を奪われる。
紀霊が発言を促すとその笑みを深く、輝かせて高らかに謳う。その言は場に響き渡る。
「我らは袁紹殿の檄文によって馳せ参じた。なれば袁紹殿が盟主となるのが必定と思う。
家格としてもそれが妥当。格と言えば馬家を差し置いての発言、ご寛恕願いたい。
馬超殿、如何(いかが)?」
やられた、と曹操は内心歯噛みする。いや。ぎり、という音が自らの内部から発せられたことに気づく。
出遅れた!
曹操はその内心が劫火に侵されるのを自覚する。
「馬家に異存はない。一切を袁家に任せるに異存はないとも」
うっそりと馬超は応える。黒い炎が立ち上るのを常の曹操ならば感じ取ったであろうが、今はそれどころではない。
とんだ道化になってしまう。腹心と打ち合わせる暇すらなく状況は動いていく。
「公孫も異存はないぞ。これまで私心なく袁家が北方の護り手としていたのは周知のことだろう。
その一翼を私も担ってきた。袁家の差配ならば安心して全力を尽くせるというもの、さ」
いっそ穏やかな口調の公孫賛の言葉が決定的に、流れは袁家のものとなる。
そしてこの場での動きこそが肝要であると知っていたのに、と曹操は自身のうかつさを悔やむ。
既に勝ったも同然のこの戦。
なれば論功行賞は戦働きのみで決まりはしない。むしろこういう戦略的見地での働きこそ貴重と思うはずなのだ。
孫権の言は計算づく。そして馬超と公孫賛の言は何も考えていない本音。実力者であるからこその重みを弁えているものといないもの。
それらが絡み合って袁家を押し上げる。
ならば、と曹操は腹を括る。
「そうね、麗羽が総大将で問題はないでしょうとも。
だって麗羽は太尉の地位にあるものね。漢朝の軍権を司るのだから、麗羽の号令で我ら諸侯は動く。何もおかしくはないわ」
ざわり、と無言のままに場の空気がどよめく。
それは単なる袁家への追従ではない。
元来、諸侯が蓄える武力、兵力に関しては認められていなかった。それが黄巾の乱が起こり、領内安堵の為に黙認されていたのである。
それは灰色の利権構造(グレーゾーン)から諸侯の既得権益となりつつあったのだ。
曹操の言はその、手にした武力の指揮権を返上したに等しい。
更には軍閥として兵を蓄える諸侯に対する掣肘ともなる。きっとこの場にその既得権益の代表たる厳顔がいれば大いに異を唱えたであろう。
だが、実際には異論は表立っては出ず。
袁紹の、反董卓連合の総大将たること。更にはその指揮権についてが認証されたのである。
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