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タイトルを書くと誰かがストーリーを書いてくれるスレ part7
- 59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/06(月) 13:13:37.15 ID:ew9Bz2r20
- タイトル「 うんぬんむ あるかんむばは めんぐるぷ 」
- 60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/07(火) 07:52:25.22 ID:pytjIyOdO
- タイトル「この文は俳句であると言っている」
- 61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/07(火) 20:09:14.73 ID:90xG3FaO0
- タイトル「死神なのに、死にそうです。」
- 62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/09(木) 12:28:01.11 ID:ohfgkh7f0
- タイトル「人を襲わないゾンビの作り方」
- 63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/10(金) 20:31:11.03 ID:5RhE3u5aO
- タイトル「1・いち・ichi」
- 64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/11(土) 14:06:06.30 ID:WmXFEr8OO
- タイトル「>>>>>>>>>>1」
- 65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/13(月) 16:53:04.18 ID:5FgsTilZ0
- タイトル「フォーアウト」
- 66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/14(火) 07:55:05.95 ID:N5NE2kmBO
- タイトル「わっしょい山田とえいさー鈴木」
- 67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/14(火) 17:54:24.75 ID:+7XZJkltO
- タイトル「トウナンですか?」
- 68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/15(水) 17:47:09.35 ID:fcNT76aS0
- タイトル「忘れ去られた村」
- 69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/15(水) 21:21:55.97 ID:6T2uHLbgO
- タイトル「愛の薔薇」
- 70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/15(水) 21:22:57.99 ID:6T2uHLbgO
- タイトル「どす恋」
- 71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/15(水) 21:26:47.97 ID:6T2uHLbgO
- タイトル「校長先生絶好調」
- 72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/15(水) 22:53:07.22 ID:6T2uHLbgO
- タイトル「アメリカン昔話」
- 73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/15(水) 22:53:57.06 ID:6T2uHLbgO
- タイトル「ホモ太郎」
- 74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/15(水) 22:55:23.79 ID:6T2uHLbgO
- タイトル「海底の花火」
- 75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/16(木) 21:58:26.13 ID:pNyng6Zs0
- タイトル「戦争狂詩曲」
- 76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/16(木) 22:51:51.63 ID:P3xZicSiO
- タイトル「大人の対応」
- 77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/16(木) 22:52:34.94 ID:P3xZicSiO
- タイトル「停止した惑星」
- 78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/16(木) 22:55:37.08 ID:P3xZicSiO
- タイトル「モノ太郎」
- 79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/16(木) 22:56:10.94 ID:P3xZicSiO
- タイトル「聖剣と巫女」
- 80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/16(木) 23:02:15.77 ID:P3xZicSiO
- タイトル「寂れた街」
- 81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/16(木) 23:02:58.11 ID:P3xZicSiO
- タイトル「死を待つ天使」
- 82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/16(木) 23:04:19.15 ID:P3xZicSiO
- タイトル「血塗られた手紙」
- 83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/16(木) 23:05:12.95 ID:P3xZicSiO
- タイトル「監獄に咲く花」
- 84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/17(金) 16:41:54.05 ID:HgydFPa30
- タイトル「妖狐と賢者と魔術師と」
- 85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/17(金) 16:49:40.30 ID:tSi/0lXVO
- タイトル「浦宮さんちは怨み屋さん」
- 86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/17(金) 20:20:06.76 ID:2YVpZNJvO
- タイトル「矛盾解決します」
- 87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/17(金) 20:21:44.56 ID:2YVpZNJvO
- タイトル「孫虚空」
- 88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/17(金) 20:22:32.99 ID:2YVpZNJvO
- タイトル「天才たちの野望」
- 89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/18(土) 16:06:46.61 ID:Y/MdGQSh0
- タイトル「ワンウィークラプソディー」
- 90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/01/19(日) 19:37:04.25 ID:xHGYNUFH0
- >>40「私の中の悪魔」
息子が積み木をうず高く重ねて、褒めて欲しそうな目で私を見た。くろぐろとした丸い瞳がガラスのように光っている。
「あら、こんなに高くできるなんて、すごいね」
息子は小さな歯を見せて笑った。目の下に小さな皺ができ、床に散らばった積み木で新しい建造物を組み立てようと背を向けた。四つん這いになった背中にシャツがずり上がり、パンツがチラとのぞいている。カラフルな縞模様。その上には、まだ瑞々しい肌が露出している。私はそれに羨望の眼差しを向けずにはいられなかった。私も昔はあんな肌をしていたのに……。息子はそうとも知らず、土台になる大き目な直方体の積み木を探している。
六年前に結婚してから、平穏の中に私はいた。三年前に生まれた息子は丸っこく、撫でまわしたくなるくらい可愛かった。激務に追われていた夫も長めに育休を取って精力的に手伝ってくれたし、今も土日には家事を手伝ってくれる。金を稼いできているのをいいことに、偉そうな評論家気取りで文句をつける腑抜けた男どもに比べたら、倍数で表すのもバカらしいくらいいい夫だ。家事が下手でないのもいい。三年たっても相変わらず仕事は忙しくて目も回りそうだったから、体をどうにかしてしまわないか、ちょっと心配だったりする。
うず高く積まれた積み木の塔は、よく見るとかなり安定したつくりだ。一番下の土台が一番大きくなっていて、弱い衝撃では崩れない。それをうっかり蹴飛ばさないような場所で、息子は新しく家を作っている。積み木は二階建てで、屋根は赤い三角だった。居住スペースの、四個の直方体の各辺は几帳面にそろえられている。三歳児が積み木をそろえられる器用さを持っているとは思っていなかったから、これにはちょっと驚かされた。
ふと、あれが我が家か、と思った。きれいにそろった、安定した空間。絵本に出てくるような赤い屋根。確かに読み聞かせている絵本に出てくる家の屋根はどれも赤かった。塔の屋根も赤い。きっと息子の頭には屋根=赤というイメージが作られているのだろう。それにしても、自由に組み立てられるのにもかかわらず赤い積み木を使ってくれたのは、母親ながら嬉しかった。きっとあの中では私と夫、そして息子自身が睦まじく過ごしているに違いない。夫は働きに出ているが、息子の積み木遊びを見守っているこの瞬間が、私の描く息子との時間の理想に相違なかった。
積み木を集めるたびに息子の小さな尻が揺れる。可愛らしい桃尻である。つねって、叩いてやりたい気持ちがうずうずと沸き立つ。
ダメ、そんなこと……バレたらこの理想の時間が壊れてしまう……息子は泣くか、あるいは信じられないといった目で私を見上げるはず……。
それは私には耐えられない。ならあの人に対してならどうだろう。誘えば同じ布団で抱き合ってくれる。が、きっとはたかせてはくれない。むしろ私は責められる方なのだ。数度叩いて私が嬌声を立てると、そのまま手を滑らせて下腹の方へ……そして彼のなすがままだ。受けるのは私、責めるのは彼。私が責めて、彼が受けるのではない。
箪笥の上を見ると、スーパーボールがたくさん入ったプラスチックの瓶がある。独身の頃、私はそれでひとり壁当てをして遊んでいた。仕事の愚痴を言ったり、夫(当時はまだ彼氏だった)について惚気たり、推しの尊さを語ったり。学生の頃は息抜きによく泳ぎにっていたものだが、社会人になると時間と体力の関係でめっきり行く機会が減っていたから、それが水泳の代わりになった。
そして私は一人で酒を飲むと、いつも棚の上の写真立てに向かってしゃべっていた。机の上の写真立てではない、壁を背にした写真立てに向かってだ。写真は黙って私の話を聞いてくれる。頷きもしない代わりに否定もしない。それは実に貞淑に、私を受け止めていた。うっかり熱が入るといつの間にか潰れて、朝になっていたりする。そういう時は頭痛がつきもので、シャワーを浴びると布団に横になって昼過ぎまで眠った。
それに比べると、息子が言葉を話すようになってからはずいぶん大人しくて暖かい日々だ。イヤイヤ期で骨は折れるけれど、だいぶ物分かりがよくなってきた。保育園にも行かせてみたが、息子は楽しそうにゴムボールを追いかけたり、絵本を先生のところに持って行って差し出したりしていた。
プールに行こうかしら。息子が本格的に保育園に行き出したら、日中に暇な時間もできるだろう。おしゃれなカフェに行くことだってできるかもしれない。誰かと会うこともできる気がする。そうしよう。
息子が保育園に、平日毎日行くようになったら、おめかしをして、プールに行こう。それでお迎えの時間まで、思う存分沈むのだ。
どうでもいいですが『プールサイド小景』なかなかいいですよね。『静物』もしかり。
- 91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/19(日) 21:51:22.32 ID:Drmlam5e0
- タイトル「のび太。をプロデュース」
- 92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/19(日) 22:00:19.39 ID:Drmlam5e0
- タイトル「鈴ヶ谷ハルカの憂鬱」
- 93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/01/19(日) 22:48:18.79 ID:xHGYNUFH0
- >>47「代理屋」
「はい、承りました」
今日十一件目の依頼を受け取って、Fは自分の机に戻った。そして、机に貼った予定のメモを確認する。それはディスプレイにまで進出し、一部を隠していた。
大した盛況ぶりだな、と彼はほくそ笑んだ。初めは退職代行サービス業として始め、今ではあらゆる依頼に対してそれを代わりに遂行する、いわゆる何でも屋のようになった。今では業界でも指折りである。かつては代理人の代理人を務めたこともあるし、草野球の大会に出られなくなった選手の代理としてサードを守ったことだってある。
その他依頼の中にはかなりの難易度のものもあったが、それらもほぼやり遂げた。成功率が彼の会社の最大の売りである。
「Dさん、来てないですね」
若手のMが言った。確かに、Dの席には誰も座っておらず、せわしなく駆け回るオフィスにあって一つだけぽっかりと空いてそこだけ時間が停滞しているようだった。
このところ、失踪する社員が多い。AにG、先々週に至っては直属の上司のJが消えた。もともと社員の入れ替わりが激しいから、さほど気にすることではないと思っていたものの、指摘されるとさすがに怖くなってくる。
「またバックレだろう、よくあることだ」
Mは首を傾げて不服そうな顔をしたが、予定されていた電話がかかってきた、と呼び出されて行ってしまった。
次の日Mは来なかった。その時は依頼を実行しに行ったのだろうと思った。
しかし次の日もMはやって来なかった。二日、三日、一週間たっても、Mは帰ってこなかったのである。
ある日、Fは残業をして、日付の変わった人通り寂しい路地を歩いていた。乾いた空気が骨身に染み、小さく縮こまって躓きだけはしないように用心していた。左右のフェンスや壁の足元には煙草の吸い殻や雨ざらしの漫画雑誌が落ちている。
正面から襟を立てたコートに中折れ帽を深くかぶった男が歩いてきた。顔が見えず、明らかに怪しい風体であったが、足元を見ていたFは気づかない。
二人の距離は一メートル、また一メートルと近づき、すれ違うと、襟を立てたコートの男は踵を返してFにぶつかっていった。
Fは背中に熱いものを感じた。それと同時に足の力が抜け、アスファルトの路面に倒れ伏した。Fははじめ何が起こったがわからなかったが、男が誰かと話している声を聴いて合点がいった。
「はい、現在代行中です。まだたぶん死んでないので、ちゃんととどめを刺しておきます……えっ、死体処理も僕らの代行なんですか……はい……それは別の担当者が代理でやる、と……了解です……」
- 94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/20(月) 09:32:47.60 ID:umc6EMyA0
- >>90
読んだのだが、タイトルとの関連性がわからん…
解説を頼む
- 95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/20(月) 21:28:07.71 ID:d2AIYlTh0
- タイトル「Another Book」
タイトル「Last Message」
- 96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/21(火) 18:00:03.20 ID:e+fEgvRGO
- タイトル「囲中に止まろう!」
- 97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/22(水) 18:30:11.56 ID:9ymznbZAO
- タイトル「かみながや」
- 98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/23(木) 16:39:20.77 ID:3oW8s0BFO
- タイトル「音尾算数一致」
- 99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/23(木) 16:47:24.64 ID:3oW8s0BFO
- タイトル「ATARIMAE Exercise」
- 100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/25(土) 23:31:54.85 ID:kMfuE8xN0
- タイトル「俺の家にサキュバスがいる件」
- 101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/01/26(日) 02:23:00.98 ID:EQtcKe8l0
- >>68
タイトル「忘れ去られた村」
父「今回の葉物野菜は王都では間違いなく高く売れるぞぉ」
父「この前の瓜は海辺の街では全く相手にもしてもらえなかったけどな」
父「……あの街の商人は物を見る目がない」
父「人が丹精込めて育てたかわいい野菜だというのに、所詮、あの街は場末の掃き溜めよ」
子「…………」
父「でも、王都は違う」
子「…………」
父「何だ、さっきから黙っているけど、言いたいことがあるなら言ったらどうだ?」
子「…………」
父「王都での売れ行きが心配か? それなら他所の村の出荷状況もしっかりリサーチ……」
子「うるせえよ!」
父「えっ……!?」
子「どうしてもと言うから仕方なく付いてきたのに、野菜の売れ行きとかグダグダと……」
子「知らねえよそんなこと!」
父「いや、王都の商人と取り引きが決まったら、青果店への出荷とか色々と作業がだな」
子「そんなくだらねえことに子供を使うんじゃねーよ!」
父「くだらないって……うちの家計を支える誇らしい作物だぞ」
子「泥だらけになって商人に頭下げる奴のどこが誇らしいんだよ!」
子「周囲を見てみろよ! 荒廃した街道、廃墟と化した集落、労働に追われる人々……」
子「そんな状況を見て見ぬふりをして、『すいません商人様、野菜買って下せえ』って、小せえんだよ」
父「……っと、ここはあの村のあった所か」
子「俺はなあ、この世界を変えるための仕事に就きてえんだよ! 野菜なんて……」
父「すまん、ちょっとあの村に寄ってくる。お前は馬車の中で待っててくれ」
子「おい! 俺の話はまだ終わってねえだろ」
子「……って、おーい、どこに行っちゃったんだ?」
子「村? あれのことか? えらく高い城壁のような壁が一部に残るだけの不気味な廃墟だけど……?」
- 102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/01/26(日) 02:26:48.08 ID:EQtcKe8l0
- 子「こんなところで頭を下げて何してんだよ」
父「ああ、お前か。馬車の中で待っていろと言っただろ」
子「いきなり馬車から飛び出していったら気になるだろうが。一体何なんだよ、この墓標は。いや、それよりこの廃墟は何なんだよ」
父「ここはな、勇者の村だ」
子「勇者……?」
子「勇者って、俺が産まれる前にこの王国が魔物に襲われたとき、魔界に乗り込んで魔王を封印したと言われているあれのことか?」
父「ああ」
子「でも確か、その後闇に落ちたか何かで王様に刃を向け、処刑されたとかいう残念なやつだろ」
父「……ここに来てしまったんだ。お前も真実を知るべきなのかもな」
父「かつて、勇者たちが魔物を追って魔界に乗り込んだ頃、魔物たちによる王国への攻撃は最も激しくてな」
父「王都のすぐそばにあるこの村にも魔物が大挙して押し寄せたらしい」
父「勇者出身の村とはいえ、勇者が不在だったため村人は逃げ惑うしかなかった」
父「この遺跡には高い壁があるだろ?」
子「ああ、確かに」
父「かつてこの王国では、村から王都まですべての集落はああいう壁で覆われていたんだ」
父「さて、この村から逃げ出した村人たちは、隣の王都に助けを求めて駆け込もうとした」
子「そりゃ、王都だから護りの兵士も多いだろうしな」
父「ところが、王宮は魔物の襲来を目の前にして、王都の市門を固く閉ざした」
子「は? じゃあ逃げてきた村人たちは?」
父「王都の門の外側で、魔物にされるがままの状態だった」
父「王都は、門の外に兵士一人たりとも出さなかったらしい」
子「いやいや、魔界に乗り込んでいる最中の勇者が産まれた村だろ? 全力で守るってのが筋ってもんだろ?」
父「当時の王宮としては王族たちを全力で守るのが筋ってもんだろ?」
子「いやいや……、で、その結果この村はこんな廃墟になったと?」
- 103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/01/26(日) 02:29:43.91 ID:EQtcKe8l0
- 父「いや、話にはまだ続きがあってな。ごく少数の村人はまだ遺っていたんだ」
父「魔王の封印を済ませて帰ってきた勇者隊は、変わり果てた故郷の惨状を見て愕然とした」
父「そして、遺った村人から事情を訊き、王宮に対して立ち上がることにした」
子「ま、当然だろうな」
父「ところが、王宮は『用済みの勇者を討ち取る絶好の機会』とばかりに勇者たちに総攻撃を仕掛けた」
子「いやいやさっきから色々おかしいんだけどさ、そんな話王都の民が納得するわけないだろ?」
父「じゃあ訊くが、お前の知ってる勇者の物語はどうなってるんだ?」
子「そりゃ、勇者は悪の手先となって王様に刃を……・って、あれ?」
父「そういうことだ。魔王戦線を経て絶対的な権力を手にした王宮は、情報をすべて自分たちに都合の良いように発信した」
父「で、勇者隊プラス遺された村人数十人 対 王国の精鋭部隊プラス王国の民約百万の戦いが始まった」
子「おっ、異世界転生勇者チート無双の展開だな」
父「何の話だ?勇者はこの村の出身だと言ったろ」
父「勇者隊は圧倒的少数をカバーするため、対象を当時の国王一人に絞った作戦を立てた結果、当時の国王を討ち取ることに成功した」
子「はい出たチート無双」
父「ところが敵将を討てばいいなんて作戦は誰でも考えつくことだ」
父「勇者と当時の国王は相討ち死した」
父「そして、王国の精鋭部隊はこの村を村人もろとも徹底的に破壊した」
子「…………」
子「いやいやいや、おかしいだろ! 狂ってるだろこの王国は!」
父「でもな、最後に遺った勇者隊の仲間は、王宮と交渉を続けて王国の改革を約束させた」
父「勇者の命と引き換えに約束させた改革はいくつもあるが、その一つが城壁の撤廃だ」
父「これでようやく、もう誰も、王宮の保身の犠牲にはならなくて済む世の中になったんだ」
子「それは確かに大きい一歩なのかも知れないけどさ……」
子「あんたもそこまで知ってるなら、なんで真実をもっと発信しないんだよ!」
子「勇者に着せられた汚名をそそいでやれよ!」
父「勇者隊は、結果的にこの村を殲滅させたんだぞ」
子「じゃあ何で、こんな廃墟に立ち寄って、こんな墓標に頭を下げてんだよ!」
父「真実を知っている人間が勇者の功績に思いを巡らせるくらい許してくれ」
子「だから、真実を真実として……」
子「そういえばあんた、何でそんなに詳しいんだよ」
父「そりゃあな……」
父「俺は3人いる勇者隊の生き遺りの一人だからな」
父「この村を忘れ去られた村にした俺たちには、そそぐべき汚名も回復すべき名誉もありはしない」
父「でもな、誰も王宮の都合に振り回されることなく、のんびり農業ができるような世の中を作ることが、俺たち勇者隊に遺された使命なんだ」
【完】
- 104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/27(月) 17:39:49.27 ID:y33+InJ2O
- タイトル「We are aliens」
- 105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/27(月) 18:13:57.21 ID:zTn9PPdu0
- タイトル「それが大切 大切Wowanシスターズバンド」
- 106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/29(水) 20:44:06.93 ID:nurf2izN0
- タイトル「黒猫狂詩曲」
- 107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/30(木) 17:39:06.71 ID:sz2Q6FcaO
- タイトル「原小学校、略してハラショー」
- 108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/31(金) 18:48:27.68 ID:C8izCabdO
- タイトル「原小学校の原翔くんはハラショー」
- 109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/31(金) 19:39:20.15 ID:C8izCabdO
- タイトル「HANEDA EXPRESS FOR HANEDA AIRPORT」
- 110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/01/31(金) 20:40:59.42 ID:bLnjM0Fp0
- >>「自殺保険」
叔父が死んだ翌日、真っ黒な男が来た。スーツ、ネクタイ、革靴はおろか、靴下、髪、果てはワイシャツ、肌まで黒かった。それは人種的な黒い肌ではなく、人工的な黒い肌である。日焼けサロンに足繁く通ったかのようだ。
「田川寿彦さんのことで参りました」と男は言った。田川寿彦というのが叔父の名前である。
「あなたは誰ですか。初めて見ますが」
「こういうものでございます」遅くなりましたともいわずに一枚の名刺が二人の間に置かれた。明海保険自殺保険部・藤村操二。
自殺保険?
「田川さんが自殺なされましたので、受取人のあなたをお伺いした次第です。保険金の受取については後程お話いたします」
「受取人にされていること自体、初耳なのですが」
「もちろんです。自殺保険ではご本人からの自発的な申し込みがない限り、契約を売り込むなどいたしませんからね」
「その自殺保険というのはいったい何なんですか?」
「自殺にかかる保険です。自殺のみにしかかからないのですが、手厚いですよ」
ぼんやりと頷いた。独り身だった叔父が私を受取人にするほど信用していた、そのことは私をわずかに上気させた。
「しかしあなた、自殺保険についてわかっているはずではないでしょうか。……」
「そうですね。しかし叔父が入っていたことにやや動転してしまって……」
垂れてきた鼻をすする。花粉のせいか、このところ調子が悪い。
「叔父の最後はどうだったのですか」
「詰めが甘かったんですかね、彼は首吊りの縄を締めたはいいものの、いざぶら下がるとそれが抜けてしまったんですね。可哀そうに、痛みでのたうち回っていました。だからね、僕ではないんですが担当者がきっちりと絞めてあげましたよ。僕が彼の体を支えてね」
>>94 それは僕のミスです。あんまりにも隠しすぎました。
- 111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/01(土) 02:26:42.69 ID:SEDaqwc+0
- タイトル「さっきの地震、ビビったな……」
- 112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 18:06:35.66 ID:3y7CSrQ50
- タイトル「震度1の大地震」
- 113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/01(土) 23:15:29.20 ID:WLGh21j40
- タイトル「カミサマパラダイス」
- 114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/02(日) 13:42:59.05 ID:ImZHvvTxO
- タイトル「欲深な盗賊と無欲な少女〜徒然二人旅〜」
- 115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/02(日) 22:04:41.13 ID:4B6Twt6R0
- タイトル「嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼」
- 116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/03(月) 16:25:17.88 ID:IoJx17Ij0
- タイトル「呪われた家族」
- 117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/02/04(火) 00:02:47.31 ID:QlF1YNCV0
- タイトル「銀河に願いを」
- 118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/05(水) 09:02:29.10 ID:fsltPqug0
- タイトル「シューティングスター」
- 119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/05(水) 16:58:27.42 ID:pKzSlIfVO
- タイトル「たそがれ、さみだれ、きみだれ」
- 120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/05(水) 19:50:52.92 ID:pKzSlIfVO
- タイトル「黄昏時に君は誰」
- 121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/06(木) 17:40:55.72 ID:RbNfRLrpO
- タイトル「BIG TSUNAMI ALERT」
- 122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/06(木) 18:58:19.51 ID:7YxXmOIX0
- タイトル「Last Japanese Human」
- 123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/08(土) 12:30:16.88 ID:OlDpP5dZ0
- タイトル「拳銃と少女」
- 124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/08(土) 18:31:50.26 ID:xQiuWquH0
- 上方から街灯の光がわずかに射し込んでいるのみで、辺りはほぼ真っ暗だ。
俺は独りでここにいる。体は、動かない。
しかし、俺にはエモノがいる。諦めるわけにはいかない。
「誰でもいい!誰か!俺を見つけてくれ!俺はここにいる!」
精一杯呼びかけてみるが、いつも通り誰も応えない。
俺が完全に朽ちる前に、なんとしてもエモノを見つけなければならないのに。
日々、俺の体は……実にゆっくりと……朽ちていき、それを実感する度に焦る気持ちが募っていく。
「誰かいないのか。誰か、俺の声を聴いてくれるやつは……」と。
昼も夜も、俺はただ見上げながら助けを呼び続けることしかできない。
……
ここに来てから……たぶん……数年経ったある日の夜。
ギリギリの体で、いつものように呼びかけていた。
「助けてくれ!ここにいるんだ!ここから出してくれ!」
そうしていると突然、辺りが真っ暗になった。
いや違う。誰かがこちらを覗き込んでいる。あれは女……か?暗くてよくわからん。
「聞こえたのか!?」
女は俺の声を聞いて目と動かし、疑問の表情を浮かべた。
「ここにいる!俺をここから出してくれ!お前なら簡単だろう!」
そいつは頷くと、何も言わずにたやすく天井をどけてみせた。
腕を伸ばし、俺の身の丈よりも大きい手で俺を持ち上げる。
明るくなってわかったが、どうもまだ子供のようだ。十五、六ってところか?なるほど、学校の制服を着てるな。
ようやく得物が手に入ったが、子供か。まあ贅沢は言ってられんな……
……
「俺の声が聞こえたってことは、お前には才能があるってことだ。きっとヒーローになれる!」
「それに、お前のような才能を持ったやつは遅かれ早かれこの戦いに巻き込まれんだ。そら、後ろを見てみな」
手の中から聞こえてくる声に従って振り向くと、スーツを着た男が立って、私の手元を見ている。
血のついたナイフを持っているのはまだしも、翼まで生えている。
しかしそんな中で一番不思議なのは、声の主やナイフの男に対する恐怖が湧き上がってこないことだ。
「俺を構えろ!」
声が聞こえると、私の体が動く。知らない金属の塊を、箸やペンを持つように自然に構えた。
視界の中ですぐに、金属の突起と男の頭が重なった。その突起は走り出した男の頭にくっついて離れない。
「撃て!」
声が導くまま、驚くほどあっさりと、私は引き金を引いた。
>>123のタイトル「拳銃と少女」
このタイトルだと拳銃が主体なんじゃ?と思ったので……
- 125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/09(日) 17:46:42.47 ID:k8vb/slw0
- タイトル「ハジメシャチョウ」
- 126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/10(月) 12:47:06.00 ID:XhlY3PGh0
- タイトル「苦情ネギ」
- 127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/10(月) 20:12:04.72 ID:tsfKTfpqO
- タイトル「おまえらは勉強ができない」
- 128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/11(火) 14:59:50.39 ID:ZYOxeX9V0
- タイトル「パラドックスボックス」
- 129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/11(火) 17:20:24.18 ID:P1xQ1Sx10
- タイトル「5京年ボタン」
- 130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/12(水) 12:25:30.05 ID:gSfHDqMS0
- タイトル「後悔と懺悔」
- 131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/02/13(木) 01:11:03.04 ID:LYiFRwOS0
- >>51「線引き家族」
居間につながる襖を引くと、何者かがキッチンに引っ込む気配がした。
炬燵机の上には、ミカンの皮が数枚、筋が置かれたティッシュペーパー。居間から抜け出したのは母らしい。
「ただいま」
キッチンからおかえり、と声がした。遅れて二回からも同じ言葉。弟だ。バックグラウンド再生みたいに気のない声である。
ミカンを一つ手に持って僕は自室へと上がっていった。家はひっそりと静まっている。階段を踏みしめるぎい、ぎいという音が嫌に大きく響いた。
母はキッチンに潜んだままで物音を立てなかった。微かな息遣いの雰囲気が、沈滞する家の空気に伝播して感じられるような気がする。
掌中のミカンはひんやりと冷めていて心地よかった。幾度か手で冷たさを楽しんだ後、徐に頬につけてみる。快い感触であった。
部屋に入ると、西側にある弟のベッドが慌ただしく暴れ、布団が立ち上がって冷徹な紅葉柄の壁を作った。
表情はなく、頑として受け入れないといったような格好である。
僕は荷物を自分の机の足元に置くと、部屋の中央のカーテンを引いた。
兄弟共用の部屋が、これで二つに分けられたことになる。
弟のベッドに直立した布団の壁が崩壊する音がして、小麦粉が満載された袋が爆ぜるような衝撃がカーテン越しに届いた。
鬼滅の16巻ある、と弟が僕に呼び掛けた。
ある、と返事をすると
「じゃあ読ませて」
そう言って布団の中で背を向けたようだ。
本棚から16,17,18巻を抜き出してカーテンの隙間から差し入れてやった。机に向かって座りなおしたころに、慎重な足取りで『鬼滅の刃』は回収された。
夕飯に呼ばれて弟がベッドから立つ気配がしたので、階段のきしむ音がしなくなるのを待ってからカーテンをくぐって一階に降りた。
居間の炬燵の上には八宝菜とサラダ、ご飯がお盆に乗って置いてあった。八宝菜に手をかざすと、温いものが感じられる。
階段がぎち、ぎちとなった。弟が上がっているらしい。
少し待って、弟と同じ道をたどって僕も部屋に戻った。部屋に入るとき、弟が再び布団の壁を作ったことは言うまでもない。
翌朝も同じようにまず弟がとって、入れ替わりで僕が居間にある自分の分を持って部屋に戻る。母親はそのあとで最後に残ったのを食べる。父親は弟よりもさらに早く食べ、まだ兄弟が目を覚まさないうちに出て行ってしまう。帰宅するのも遅いから、あまり僕たちは気にかけていない。
その日に帰ると、弟は部屋に彼女を連れ込んでいるようだった。ドアノブに手をかけてひねって中に入り、僕は宿題をしようと思った。
朝って提出の数学の宿題で、量が多いうえにまだ手を付けていなかった。
弟は僕の雰囲気が侵入してくるのを感じるや否や布団にくるまって彼女を抱いた。
きっと後押しが足りなかったのだろう、二人は脱いではいなかった。ただ微妙に視線を合わせたり外したりし、恥ずかしそうにうつむいた雰囲気だった。
机に座って問題集を開いたちょうどその時に、くぐもったような押し込めたような、短い上気した高い声が聞こえた。僕は音をたてないようにカーテンのほうを見た。
弟と彼の彼女のシルエットが映っている。二人の顔は接近し、くっついているようだった。弟の手は彼女の胸のあたりにある。
彼女が両腕を背中側で引き合わせるように上半身をよじると肩から大き目の何かが滑り落ちた。弟はそれを確認するとさっきまで落ちた何かがあったところに顔を近づけ、シルエットの中に融合されていった。おそらく体の前面だろう。彼女は天を仰いでのけぞった。血が集中し始めていた。
肉がぶつかる音がする。我慢するような声が漏れてくる。彼女の豊満なものが揺れる。直接は見えないが顔は赤くなっていそうだ。弟よ、それでいいのだ。
僕たちは君らになんだって言いやしないからな! ただ、影と空気を見るだけだ。そこから十分な情報を目に引き受けて融合させてやる。
それがどうなっているのか君はたぶん知らないだろうが、心配することはない、このことは僕たち家族の心裡にだけ保存されて、不外出の一次資料だ。
いかなる令状によっても出されないのだ。僕たちは僕たちの秘密を共有する代わりに、その秘密を秘匿する義務を相互に課している。
そうしないとたちまち我が家の在り方は瓦解してしまう。こうするしかないのだ。
だから。
彼女はまたがって体を上下に振る。
君はこのように間接的に。
唇は半開きになっているだろうか?
そのプライベートを身内に。
表情はきっとだいぶとけてきているはずだ……。
晒す代わりにうちに閉じ。
彼女の裸体が痙攣した。鼠径部あたりに手を持ってきて抑えている。
こめて外界からそのプライバシーを完全に保護しているのだ。わかっているね?
息切れしたようで、肩で息をしている。カーテン越しの背筋が気になった。
弟よ、我が家のルールをきちんと把握しているか?
扉の向こうに神社の境内の隅に居ついた狐のような雰囲気があった。
君は絶対的な澱ものに覆われているんだ。
母もまた弟の性交を感じに来たようだ。淡い雰囲気を発して扉の向こうに潜んでいる。
だから不満を抱いて改革を訴えてはならないのである。
母もまた、どこか上気しているようでもあった。
- 132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/13(木) 01:49:39.63 ID:TCPxq+YN0
- >ただし、板のローカルルールに則って、R-18内容を含むものを書くことはタイトル・SS共にご遠慮ください。
- 133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/13(木) 17:03:29.66 ID:5APzoLhL0
- タイトル「強肉弱食」
- 134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/02/13(木) 22:59:17.38 ID:LYiFRwOS0
- >>69「愛の薔薇」
詰襟の二人の少年が、橙色の差す坂道を下っている。西の空に一羽のカラスが飛び、夕陽をわずかに陰らせた。
背の低い方の少年が空を見上げて、
「あーあ、大学どうすっかなー。全然わかんねえや」
「まだ決めてなかったのか? センターの出願来週だろ」
「そうなんだよ、そうなんだけどさー……」
口をとがらせて大きな目をくりくりさせて歩いた。僕はその顔が好きだった。髪は柔らかくて滑らかだ。風が吹くたびに一本一本がさらさらとなびく。
瞳は色が薄く、夏になると彼はよく目の上に手を当てて影を作り、その上目を細め、
「ずいぶん眩しいね。目を開けてるのがつらいや」
とはにかみながら言うのだ。普段白い首が強い日差しに晒されて赤くなっている。そこからあふれてくるのは彼の活きて熱く滾る血潮……。
休み時間になると彼はよく僕の元にやってくる。小学生のころからそうだった。いつもいつも、休み時間になると僕の席にやってきて他愛もないことを話すのだ。
流行りのアイドルのこと。
昨日のバラエティのこと。
勉強のこと。
行事のこと。
部活のこと。
そして学校の女の子のこと。
女の子の話をされると胸が締めつけられるように感じ始めたのは中学に上がった頃だろうか?
僕はその正体を量りかねた。と同時に、可愛いと思う女の子、交わりたい子はいるのに恋愛感情が彼女らに対して湧かないのも不思議だったのだが……。
しかし彼が楽しそうに話をしているので、僕はそのことを告白することができずにいた。今でもできていない。きっとこれからも心のうちに秘め続けるだろう。どんな顔を彼がするのか本当に知ってしまうのが怖いからだ……。
「お」
と彼は足を止めて店頭を見た。そこにあったのは花屋で、軒先に可憐な薔薇が立ててあった。いったい何輪あるだろう。百は下らないかもしれない。
「薔薇、あげてみたいよな。一生を誓った運命の人に。そのときどんな顔をしてくれるんだろう、俺のフィアンセは……どんな人なのかな」
さあな、と僕は哀愁を心の底に沈めてから言った。膝に手をついて薔薇に見入る彼の顔は溌溂としていた。まるで将来の希望が既定の事柄であるとでも言いたげな表情だ。同意を求めるように笑いかけてきたので適切な相槌を打つ。
「出会えるといいな、そんな素敵な人に」
無邪気な顔をして彼はまた笑った。しかし立派な薔薇だなー、ずっと見ていたいや。
僕もそうだ、と声に出さずに言った。しかし薔薇は二の次である。薔薇に喜ぶ彼がなによりも喜ばしかった。素晴らしかった。愛らしかった!
自然と幸福そうな笑顔に変わっているのが自分でもわかった。薔薇に目を移す。
深紅の花弁が盛大に咲き誇り、火炎のように心の中をかき乱していた。熱く、火をつけようとしているようでもある。
でも――そうするわけにはいかないんだ、わかってほしい。応援してくれるのはうれしいけどさ、それはなされてはならないんだ。僕が彼のすぐ近くに居続けるためにも。
薔薇の花は立派で、深紅色、他のどんなものにも勝る純粋な深紅色であった。
- 135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/14(金) 00:24:26.86 ID:dvW6l1140
- タイトル「花一問目」
- 136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/14(金) 07:35:24.04 ID:fQV3XqoJ0
- タイトル「ボルボットボボックス」
- 137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/15(土) 18:16:45.76 ID:dBfwLC+PO
- タイトル「廃人の街」
- 138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/16(日) 09:25:20.28 ID:GEgX33O/O
-
五月雨さんは僕のクラスの学級委員長である。
容姿端麗、文武両道、清廉潔白、純粋無垢と彼女を言葉で現すとこれでもかと彼女を褒め称える言葉しか出てこない。
実際五月雨さんはクラス中でも人気者で先生たちとの信頼も厚く、何だったら彼女のファンクラブなるものが存在するほどの有名人だ。
同姓のクラスメイトでも彼女を嫌う人は少ない。それは彼女が自分を嫌う者であっても分け隔てなく接しようとする慈愛と献身からもたらす人徳のお陰なのかもしれない。
「…◯◯くん? ホームルーム終わってだいぶ経つだけど帰らないの?」
そう、クラスの中でも地味で目立たず友達も少ない僕に対してもそれは変わらずで、僕にはそんな彼女に眩しさを覚え気後れすらしてしまう程に。
「あっ…ごめん、花瓶の水だけ取り替えたら帰ります…」
「ふふ、同じクラスなのになんで敬語?」
小さくはにかむ彼女に心臓がキュっと締め付けられるような気持ちになる。彼女は誰に対してもこうだ。
だから変に勘違いなどしてはいけない。
「私ももう少しで帰るけど……もうすぐ夕方だし暗くなると通り魔とか出て危ないから早くに帰った方がいいよ?」
「うん、ありがとう五月雨さん」
「どういたしまして」
そう言い残して五月雨さんはニコリと笑いながら教室から去っていく、純白のセーラー服と腰まで伸びた黒髪をなびかせながら。
- 139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/16(日) 09:28:09.40 ID:GEgX33O/O
-
どうやらこれが走馬灯というものらしいが、こんな直近の思い出しか出てこない限り、なんて僕の人生は薄っぺらいものだったのだろうか。
最近この辺りで通り魔による猟奇殺人事件が多発しているのは分かっていた、だけど自分が襲われるとはつゆにも思っていなかったが。
それよりも何も、僕が恐れ戦いてるのは眼前にいる通り魔と呼ばれるものがもはや人間のカタチを成していない化け物であるということだ。
その身からは肩や背中からは棘が生えており、肌は青白く血のように染まっている眼からは理性というものを感じられない。
僕は死ぬんだろうか?
死体ははらわたがぐちゃぐちゃの状態で発見されているらしい。きっと僕も腹を裂かれ、内蔵を貪るように喰われるのだろう。
そんなのは嫌だ、死にたくない。
駄目でも無茶でも好きな娘に告白の一つもできないまま終わりたくない。
そんな僕の意思を無視するかのように目の前の化け物は鋭く血に汚れた爪を僕に振り下ろした。
「見ぃ〜つけた♡」
爪は僕に届かなかった。
僕を引き裂こうとした瞬間、何かに腕を切り落とされ明後日の方向へと飛んでいった。
痛みに悶える化け物の視線を追うと一人の女の子が立っていた、手には刀を持っていてきっとあれで化け物を斬ったのだろう。
化け物が怒り狂うように女の子へと飛びかかる、女の子は軽くいなすように避け再び化け物を斬りつける。化け物が必死に女の子を捕らえようとするも地を、宙を舞うように動き回る彼女には当たらない。
彼女は化け物を斬り裂いていく、しかし致命傷を与えるような攻撃ではなく少しずつ身体を削いでいくような、じわじわといたぶるように追い詰め、純白の制服を紅く染め上げ、背中まで伸びた黒髪をたなびかせながら………そんな、嘘だ、ありえない。
だって彼女は
「あれ…? あはっ♡もうおしまいかぁ……もう少し遊びたかったんだけどしょうがないか、それよりも…」
彼女の笑顔は清楚で、眩しく太陽のようだった。
しかし今の彼女は…妖艶で、どこか恐ろしく。
「暗くなると危ないよって……わたし、言ったんだけどなぁ……◯◯くん?」
「…さ…さみだれ、さん…?」
黄昏に染まる景色の中、恍惚とした妖しい笑顔を携えたきみは……だれなんだ?
>>119「たそがれ、さみだれ、きみだれ」
>>120「黄昏時に君は誰」
----------
お目汚し失礼、拙い文章でごめんよ
- 140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/02/16(日) 10:45:14.07 ID:FETyfwn30
- >>「どす恋」
「そうは言いましてもな、わたくしは食わねばならんのであります、大きくあらねばならないのであります」
甚兵衛の巨漢は米をひたすら口に押し込んで噛みながら、不乱に口説く努力をしていた。
目の前の女もまた巨体であり、男とは異なり飲み込むまで口を開かない。
「浅香さん、箸が止まっていらしてますな。どうなさったのか? どんどん、お食べになってください。同業ですから、遠慮する必要などないのでありますよ」
「別に」浅香と呼ばれた女は噛んでいたものを嚥下して言った。
「何も遠慮しちゃあいないよ。噛んでる間に新しいものを一気呵成に詰め込むことができんだけですわ」
「そうですか」
二人は力士であった。男は前頭で、女は女性力士として活躍していた。
男は斯波山と言い、幕下転落の危機に瀕している。斯波山がそれを自覚しているのかいないのか、それは態度からうかがうことはできない。
何しろ彼は軟派な質で、遠征する毎に女を誘い買いなどしていたので、相撲協会の人間からよくは思われていなかったのだ。
そんな彼も三十を目前にし、身を固めたいと思うようになったのだ。
しかし彼の性質を知る女は皆敬遠して逃げていくし、せっかく新たにまぐわえそうな女をひっかけても、彼の性的な無節操が顔を出してこれまた逃げられてしまうのだった。
そういうわけだから、浅香に狙いを絞って食事に来ているのである。
浅香はかつて女力士として名を馳せていたが、長い伝統とはいえ土俵に上がることができないのに我慢がいかず電撃引退し、今は斯波山の所属する部屋で働いている。
知人は、痩せれば美人に違いないと皆言う。そしてそれは浅香自身もそうだろうと思っている。相撲なんかやっていなければ、男などいくらでもとっかえひっかえできるだろう。うぶな童貞を食い荒らして彼らが泣く姿を想像すると、彼女はエクスタシーのような勝利感を味わうのだった。
しかし女力士になってしまったのだから仕方がない、言い寄る男は少なかった。だから浅香は斯波山の誘いを受けたのだ。
彼女とて斯波山のことは嫌いではない。嫌いだったら誘いを受けていないはずだ。それに斯波山に対しては、自分と似た雰囲気を感じ取っていた。
同じ異性を誑かす人間として、同族的な連帯感を感じていたのだ。おそらく自分が結ばれるならもうこういった男しか残ってこないだろう、ともどこか確信めいた考えも心中にあった。
それは斯波山とて同じであった。軟派物の俺が捕まえられるのはこんなの程度だろう。痩せれば美人だしな。
相互の同情も重なって、彼らの間には冷めきった恋愛の感情が横たわっていた。それは燃えない。燃えないが、一通の太い運河のようなもので、その間を確かな交流は二人に強いつながりを抱かせた。
もう一押しだ、と浅香は思う。つながろう、とかそれに類することを言ってくれれば、私もすぐに手をつないでいこうと言い出せるのに。
斯波山は言った。
「浅香さん、あなたいつになったら身を固めてやるおつもりですか」
「いつでも構わんですよ、私は。今固めてやってもいいくらいです。来年でも、再来年でも。しかし早い方がありがたい。斯波山さん、あんたの方は」
「わたくしですか、早くしないと生涯独り身ですからね、早急にお願いしたいですね」
「では私はどうですか」
「良いですね、では浅香さんわたくしは」
「ええ、いいと思いますよ」
「そうですか、ではお願いしたいですね」
「はい、そうしましょう」
「それではこの後、仲を深めるためにちょっくらホテルに参りませんか」
「大丈夫でしょう。親方が何というか心配ですが」
「そのあたりは平気です。以前にわたくしはそういった話を親方としたことがあります。自由恋愛で婚姻を進めるのはいかが思うか、と。親方は言いました。現代は見合い結婚よりも恋愛結婚が主流だ。部屋の顔とか大企業、名家の跡継ぎならともかくお前は部屋に所属する単なる一力士だから、気にする必要はない」
「それはあなた期待されてないんじゃ?」
笑いながら朝香は言った。
「そうでしょうな。でもそれがどうしたというのでしょう。気楽に相撲を取ることができますし、好きな女を食って捨てるも自由にできるのであります。本命を捕まえるまでの間の性欲を吐き出す相手を好きにできるのもいいもんですぞ」
「それを交際を申し込んだ人の前で言いますか。私も似たような考えを持っているので、あまり強いことは言えませんが」
「そうでしょうとも! 我々は似た人間なのではないでしょうか。だからこそともにいようというのです。同じ所帯で、浮気のような恋愛を続けるのです」
「面白いですね」
二人は静かに食事を終え、勘定を済ませた。外に出ると温い風が足許に吹きつけ、互いの首筋のにおいをかいだ。
安心した表情で見つめあった。その脚で二人は夜を過ごすホテルへと向かった。
感想求ム
- 141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/02/16(日) 10:45:50.40 ID:FETyfwn30
- >>70
- 142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/17(月) 09:17:18.71 ID:0vVDSc8x0
- タイトル「平行世界ツアー」
- 143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/17(月) 17:56:23.10 ID:pDzRV5FZO
- タイトル「さいたまーず」
- 144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/18(火) 17:45:25.28 ID:W/yKhBi4O
- タイトル「さいたまーずvsちばーず」
- 145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/18(火) 22:13:12.33 ID:AqahJRTk0
- タイトル「オッドアイの猫」
- 146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/19(水) 16:38:18.49 ID:8fjNKSxm0
- タイトル「瞳の中の私」
- 147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/19(水) 19:37:57.51 ID:yHszG1C+O
- タイトル「浮上戦隊アゲルマン」
- 148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/19(水) 20:47:48.43 ID:37XcMRc7O
- タイトル「はじめての世界」
- 149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/20(木) 00:19:39.57 ID:X60C8czQ0
- タイトル「隅付き括弧(鍵括弧)<丸括弧>」
- 150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/20(木) 02:10:10.13 ID:4eljQqP40
- タイトル「月刊''アナタの秘密’’」
- 151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/20(木) 13:57:50.01 ID:GjcoaCgqO
- タイトル「とある魔術の教書抜粋」
- 152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/20(木) 14:19:11.54 ID:GjcoaCgqO
- タイトル「Maleman vs Femalewoman」
- 153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/21(金) 07:17:51.29 ID:OmPE0e520
- タイトル「ローソンどきどき四丁目店」
- 154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/21(金) 23:34:56.76 ID:OtUQF87N0
- タイトル「こちら葛飾区亀有公園前セブンイレブン」
- 155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/22(土) 19:35:53.00 ID:6fJuAN6qO
- タイトル「スタンド能力関連犯罪対策捜査部」
- 156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/23(日) 20:03:25.67 ID:+xaTAyFMO
- タイトル「最果ての村」
- 157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/23(日) 21:26:13.38 ID:H3jULl5R0
- タイトル「こちら横浜港ダイヤモンドプリンセス号派出所」
- 158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/24(月) 10:01:36.26 ID:y6LTa1CE0
- タイトル「愛され系飼い猫になりたいだけの人間だった」
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