北条加蓮「藍子と」高森藍子「冬の始まりのカフェテラスで」

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/11/10(日) 18:42:45.76 ID:2JbuYMCt0
>>!5 申し訳ありません。1行目の藍子のセリフを修正させてください。
誤:藍子「……落ち着きました。騒いじゃってごめんなさい、加蓮ちゃん」
正:藍子「……落ち着きました。騒いでしまってごめんなさい、加蓮ちゃん」


……。

…………。

加蓮「……店員さん持ってこないねー」

藍子「加蓮ちゃん。まだ、5分も経っていないと思いますよ?」

加蓮「え? そう?」

藍子「時間を正確に測った訳ではないので、絶対って言いきれはしません。でも、たぶん3分くらいしか経っていないんじゃないかな?」

加蓮「……」

藍子「もしかして……お腹が空いていたんですか? だから加蓮ちゃん、焦っちゃったんですね♪」

加蓮「……別に、っていうか藍子の体内時計なんてアテにならないわよ。ホントは30分経ったんじゃないの?」

藍子「30分も経っているのに、店員さんが持ってきてくれないなんてこと、ありえませんよ」

加蓮「いやいや。実はそれがありえる状態だったりして。今、店内では――」

藍子「店内では……?」

加蓮「店員さんが外に出れないほどの大事件が……!」

藍子「そんな! 様子を見に行った方が……? でも、もしとても危険なことが起きていたとしたら……!」
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/11/10(日) 18:43:46.41 ID:2JbuYMCt0
>>16 ……申し訳ありません。>>!5は>>15です。言うまでもないかもしれませんが……


加蓮「危険なこと。……例えば?」

藍子「例えば――他のお客さんのところに注文されたメニューを持っていったところ、お話がすごく盛り上がってしまい、時間を忘れてしまった……とかっ」

加蓮「……それ危険なこと?」

藍子「……あまり危険ではありませんでした」

加蓮「藍子。もっと真剣に考えなきゃ! 危険が迫ってるんだよ。その危険って何? 店員さんや店長さんは何をしちゃったの!?」

藍子「そ、そうですね。例えば……そう。ホットケーキを作るための材料が、すべてなくなってしまっていたんです」

加蓮「それは大事件だね……!」

藍子「その犯人は――」

加蓮「その犯人は?」

藍子「なんと……店長さんだったんです!」

加蓮「なっ……!」

藍子「店員さんの作るホットケーキがあまりにも美味しすぎたので、店長さんは、こっそり材料を食べてしまったんです。何を使えば、それほどまでに美味しいホットケーキを作れるのか、どうしても知りたくて……」

加蓮「ふんふん。……あっ」
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/11/10(日) 18:44:15.93 ID:2JbuYMCt0
藍子「でも、店員さんと店長さんはとても仲良しです。店員さんは、店長さんを疑うことができないんです……」

藍子「それに、今はホットケーキをどうやって作るかの方が大事です。このままだと、加蓮ちゃんがホットケーキを食べることができません」

藍子「考えた店員さんは……。……う〜ん。どうするんだろう……?」

藍子「そうだ。加蓮ちゃんを呼ぶことにしました。一緒に作れば解決――」

加蓮「あー、藍子。藍子ちゃん?」

藍子「あ、はい。何ですか? ……あっ、確かに、材料もないのに一緒に作れば解決というのはおかしいですよね」

加蓮「うん。それもおかしいんだけどさ。後ろ。後ろ」チョイチョイ

藍子「へ?」クルッ

藍子「…………」

加蓮「店員さん、すっっっっごく困った顔してる」

藍子「……あ、あは、あははははは……」
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/11/10(日) 18:44:45.77 ID:2JbuYMCt0
加蓮「ホットケーキありがとー。今の話? さあ、なんの話だったんだろーね」

藍子「あううぅ……」

加蓮「店長さんはそんなことをする人じゃないって? うん、そうだね。知らないけど知ってる……。うんそうだよね、レシピくらい普通共有してるよね」

藍子「ち、違うんです!」

加蓮「お、何か思いついた」

藍子「今のは、ええと……ち、違うカフェのお話なんです!」

加蓮「あっ」

藍子「ここのみなさんとは関係のないお話です――へ? そのカフェはどこなのか、って……。あの、店員さん? どうして、顔が少しひきつっているんですか? ……ずるい? なにが……?」

加蓮「……藍子。ホットケーキ、食べよ?」

藍子「?????」
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/11/10(日) 18:45:15.93 ID:2JbuYMCt0

□ ■ □ ■ □


加蓮「もぐもぐ……」

藍子「もぐ、もぐ……♪」

加蓮「うん、やっぱり美味しいっ。ふっくらしてて、いい感じに甘くて……甘いだけじゃなくて、これお茶系の何かかな? の味もする。凝ってるよねー」

藍子「ごくんっ……。美味しいですよね。牛乳がなくても、どんどん食べられちゃいそう♪ それに、お茶の風味で、大人っぽさを感じちゃいます」

加蓮「メニューにも、大人な気分の――とか書いてあったもんね」

藍子「ですね♪」

加蓮「これなら材料を食べちゃうのも納得ー」

藍子「……加蓮ちゃん。改めて考えてみると、いくらホットケーキが美味しくても、材料を食べたりはしないと思います」

加蓮「いやそれ藍子が言ったことだからね?」

藍子「あっ。そうでした……」
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/11/10(日) 18:45:46.03 ID:2JbuYMCt0
加蓮「もぐもぐ……。そう。さっきの話なんだけどさ」

藍子「もぐ、もぐ……?」

加蓮「危険が迫ってるー、みたいなネタから、店員さんは何をやらかしたのか、ってネタにすり替えたじゃん。私」

加蓮「まぁそれはいいんだけど……誰々が何をやらかしたのか、っていう質問。心理テストっぽく考えるなら、それってその人、藍子が思いつく悪事なんだってさ」

藍子「ええと……?」

加蓮「こういう時に思いつくのって自分がやりそうなこととか、もしくは自分が昔やらかしたことだって」

加蓮「つまり藍子は、こっそりホットケーキの材料を食べちゃう卑しい子ってことだねー」

藍子「……!? わ、私そんなことしてませんっ」

加蓮「本当に?」

藍子「本当ですっ」

加蓮「愛梨やかな子と一緒にお菓子を作った時につまみ食いをしたことないの? 本当に? 1回も?」

藍子「うっ……。あ、あれは、一緒に味見しようってなったお話で……」
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/11/10(日) 18:46:15.68 ID:2JbuYMCt0
加蓮「それにさ。よく考えてみてよ、藍子」

加蓮「店長さん……のことは、確かに私たちあまりよく知らないけど、ホントにホットケーキの材料をこっそり食べるような人だと思う?」

藍子「……しないと思います」

加蓮「でしょー? 藍子だってそれは分かってるの。無意識的に」

加蓮「ってことは、やっぱり藍子が想像していたのは店長さんじゃなくて、自分の姿」

加蓮「自分なら何をやらかしてたかな? って思って、藍子はそれを口にしたの」

加蓮「それが、"ホットケーキの材料を食べる"っていうことだった」

藍子「そんな……!」

加蓮「くすっ。いやしんぼー」

藍子「そんなつもりはない……ハズなのに、でも、加蓮ちゃんの言う通りに考えたら、私、ホットケーキの材料を食べてしまう人ってことになってしまいますね……!」

加蓮「あははっ。……まぁこれもちょっと誘導かけさせてもらったけど」

藍子「ふぇ?」
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/11/10(日) 18:46:45.91 ID:2JbuYMCt0
加蓮「材料を食べるのと、お菓子作りの途中でできた試作品をつまみ食いするのってまた別の話だし? それにお菓子を作ってる時につまみ食いをしたことない人なんてこの世にいないでしょ」

藍子「…………」

加蓮「ひひひひっ」

藍子「…………」プクー

加蓮「ほらほら。藍子? 膨れてたらホットケーキが美味しくなくなるよ?」

藍子「……ホットケーキ、おいしいですもん」

加蓮「うん。美味しいよね。ホットケーキ」

藍子「おいしいですもんっ」

加蓮「分かった分かった。ごめんね? ちょっと意地悪したくなっちゃった」
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/11/10(日) 18:47:15.90 ID:2JbuYMCt0
藍子「…………」プクー

加蓮「ふふっ。……じゃあ藍子が機嫌を治すまで私も藍子のこと見つめてよっと」

加蓮「じー」

藍子「……」プクー

加蓮「じー」

藍子「……」

加蓮「あ。ほっぺた元に戻った」

藍子「……!」プクー

加蓮「ふふ。無理しちゃってるー」
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/11/10(日) 18:47:46.41 ID:2JbuYMCt0
藍子「……」プクー

加蓮「藍子」

藍子「……なにですか」

加蓮「ごめんね。意地悪しちゃって」

藍子「……」

加蓮「一緒にホットケーキ食べよ?」

藍子「……加蓮ちゃん」

加蓮「うん」

藍子「はい」ズイ

加蓮「?」

藍子「あ〜ん」

加蓮「……こういうのって普通、お詫びに食べさせろーとかなるものじゃない?」
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/11/10(日) 18:48:16.30 ID:2JbuYMCt0
藍子「あ〜ん」ズイ

加蓮「もう。わかったから。あーん」モグ

藍子「……」アーン

加蓮「美味しー♪ ……あ、やっぱり食べさせろーとはなるんだ。はい」ズイ

藍子「あむっ……。……うん、美味しいですっ」

加蓮「よかった」
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/11/10(日) 18:48:46.77 ID:2JbuYMCt0
……。

…………。

「「ごちそうさまでした。」」

加蓮「そしてすぐにやってくる店員さんでした」

藍子「いつもありがとうございますっ」

加蓮「今日はホントにすぐ来るね。お客さん、あんまりいないの?」

藍子「……加蓮ちゃん。だから、店員さんを困らせるようなことを言っちゃ駄目ですよ?」

加蓮「あ。……ごめん。さっきまで藍子への意地悪モードになってたから――どうしよう藍子。店員さんがすっごいジト目でこっち見る」

藍子「あはは……。そのことは、加蓮ちゃんにもう謝ってもらいましたから。大丈夫ですっ」

加蓮「……ふう」

藍子「お疲れさま、加蓮ちゃん」

加蓮「別に疲れた訳じゃないんだけどねー……」ジー

藍子「?」
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/11/10(日) 18:49:17.06 ID:2JbuYMCt0
加蓮「ううん。さっき藍子とちょっとだけにらめっこしたでしょ? もうちょっと藍子のこと見ていたいなーって」

藍子「はあ。いいですよ。でも、その代わりに、私は加蓮ちゃんを見ることにしますね」

加蓮「もう1回にらめっこやっちゃう?」

藍子「久しぶりに、やってみましょうか。負けませんよ〜っ」

加蓮「へー。やる気だね? 言っとくけどね、藍子。演技力が上がったのは藍子だけじゃない。私だってレッスンやお仕事をやりまくったんだからね!」


――3分後――

加蓮「〜〜〜〜っ!」フイッ

藍子「あ、加蓮ちゃん、目をそらした! だから、私の勝ちっ♪」
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/11/10(日) 18:49:46.41 ID:2JbuYMCt0
加蓮「だってさぁ……」

藍子「だって?」

加蓮「……。なんかほしいものある?」

藍子「じゃあ、今の"だって"の先を教えてくださいっ」

加蓮「……」

藍子「♪」

加蓮「……変顔とかしてくるならまだ勝ち目あるのにさぁ。藍子、ずーっと微笑んだまま私を見続けるもん。無理だって……」

藍子「……むぅ」

加蓮「何」

藍子「加蓮ちゃん。そんなこと言われたら、傷ついちゃいます……」

加蓮「……あぁごめん。そういう訳じゃなくてね?」
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/11/10(日) 18:50:17.36 ID:2JbuYMCt0
藍子「くすっ。知ってます♪」

加蓮「む」

藍子「加蓮ちゃん、そんな人を傷つけることを言う子じゃありませんもんね。加蓮ちゃんの言いたいことって、真顔で見られ続けると恥ずかしい、ってことなんですよね?」

加蓮「恥ずかしいとは言ってないでしょ! ムズムズするってだけ! ……しかもこう、なんかしたくなっちゃうしさー……」

藍子「なにかって?」

加蓮「……別に」

藍子「加蓮ちゃん」ズイ

加蓮「何……って、急に近づいてくるなっ」

藍子「にらめっこに勝ったのは、私ですっ」

加蓮「景品なら今あげたでしょ。"だって"の先、言ったでしょ!」

藍子「加蓮ちゃんのしたくなってしまうことのお話だって、"だって"の先に含まれてますっ」

加蓮「含まれてないよ。別の話!」

藍子「同じお話です」

加蓮「別!」

藍子「おなじ!」

加蓮「っていうか今日の藍子はなんなの。いつもみたいにほけっとして私に騙されてなさいよ!」

藍子「加蓮ちゃんには、さっき誘導されてダマされました。だから今度は、私の番です!」

加蓮「ぐぬ……!」
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/11/10(日) 18:50:46.11 ID:2JbuYMCt0
藍子「ほらほら、加蓮ちゃん。私の顔を見てやりたくなってしまうことって、何ですか?」

加蓮「……。アンタ、なんか分かって言ってたりする?」

藍子「?」

加蓮「あぁマジでわからない奴ね。そうだよね……。って言っても、私もよく分かってないから答えようがないの。何かしたいなーって思うだけ。ホントだからね?」

藍子「……」ジー

加蓮「……今見つめてくるのはやめてよ」

藍子「あっ、ごめんなさい。でも、本当のことみたいですね」

加蓮「前から嘘はつかないようにしてるでしょ……」

藍子「そうでした。でも、加蓮ちゃん、たまに気持ちや本音を隠してしまうから」

藍子「ううん、たまに、ではありません。何回も、ですっ」

加蓮「そこで怒られても困るよ。もともとそういう人間なんだしさ……」

藍子「……」
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/11/10(日) 18:51:17.26 ID:2JbuYMCt0
加蓮「……はぁー。私、いつになったら藍子ににらめっこで勝てるんだろ」

藍子「練習してみますか?」

加蓮「にらめっこの?」

藍子「にらめっこの」

加蓮「それどうやって練習するの。誰かと見つめ合えばいいの? 藍子は勝負相手だから、他の誰か――」

藍子「それか恥ずかしくならない練習にしてもいいかもしれませんねっ」

加蓮「? なんか急に早口……」

加蓮「恥ずかしくならない練習かー。普段恥ずかしいことに挑戦してみて、それに慣れるみたいな?」

藍子「それなら……。普段は恥ずかしくて言えないことを言ってみる、というのはどうでしょうか」

加蓮「お、いいねそれ! って、やるの私じゃん……」

藍子「はい。加蓮ちゃんがやるんですよ?」

加蓮「ハードル高いんだけど?」

藍子「普段できないことに挑戦しないと、練習の意味がありませんっ」

加蓮「スパルター。私そういうキャラじゃないもーん。藍子、代わりにやってよ」

藍子「え〜っ」
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/11/10(日) 18:51:46.49 ID:2JbuYMCt0
加蓮「藍子が恥ずかしいって思うことに挑戦すれば、練習になるよね。例えばどんなのがいいかな?」

藍子「そうですね。例えば――」

藍子「って、加蓮ちゃん」

加蓮「……チッ」

藍子「舌打ち!?」

加蓮「いやいや舌打ちなんてしてないよー。なにかなー藍子ちゃんー」

藍子「加蓮ちゃん、また私のことを誘導しようとしていましたよね?」

加蓮「してないしてない」

藍子「……嘘はつかないようにしているんじゃなかったんですか」ジトー

加蓮「あー、そこ言われると弱いね。うん。嘘ついちゃったね。私。……ごめん」

藍子「ううん。加蓮ちゃんなりの冗談なのは分かったから、それは気にしなくていいですよ」

加蓮「あはは……。ほら、譲れないものがある的な?」

藍子「なるほどっ。それなら、次から嘘はつかないようにしましょ?」

加蓮「そうするね」
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/11/10(日) 18:52:16.50 ID:2JbuYMCt0
藍子「私も、冗談なのに本気っぽく言っちゃって、ごめんなさい」

加蓮「それこそマジになって謝らなくっていいってー」

藍子「そうですか?」

加蓮「うんうん。そうそう」

藍子「お話を元に戻しましょう。加蓮ちゃんにとって恥ずかしいことは――」

加蓮「待って。そもそもなんだけど、私別に恥ずかしいから目を逸らした訳じゃないよ?」

藍子「そうなんですか?」

加蓮「うん。そう。加蓮ちゃん、嘘つかない」

藍子「その言い方をする方って、だいたい何か隠し事をしていたり、嘘をついたりしていますよね……」アハハ

藍子「それなら、どうして加蓮ちゃんは顔を赤くして目を逸らしたんですか?」

加蓮「……いやアンタ、それはさすがに分かってて聞いてるでしょ」

藍子「……まあ、なんとなくは」
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/11/10(日) 18:52:46.62 ID:2JbuYMCt0
加蓮「藍子を見続けるのは何分でもできるんだけどね。見つめられるのは……なんだか、ずっと慣れないなぁ」

加蓮「相手が藍子だから、っていうのはもちろんあるよ」

加蓮「でも、それ以上に……昔、周りの人が誰も見てくれない場所にいたから。そういう女の子だったから、私」

藍子「…………」

加蓮「アイドルになって、見られることや撮ってもらうことには慣れたつもりだけど……。たった1人の女の子から見られ続けるのも慣れないなんて、変な話」

藍子「……加蓮ちゃん――」

加蓮「あはは……なんてっ。さっきの藍子の真似じゃないけどさ。ちょっとセンチメンタルになっちゃった」

加蓮「ほら、テラス席にいられるのもこれで最後なんだし? そういう気分も、ちょっとはさ?」

藍子「……もう。冬が終わって、春になったら、また来れるんじゃなかったんですか?」

加蓮「そうだけどそうじゃなーい。藍子、女心が分かってなーい」

藍子「むぅ……。加蓮ちゃんだって、ときどき分かってないですっ」
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/11/10(日) 18:53:16.66 ID:2JbuYMCt0
藍子「それよりも、加蓮ちゃん……」

加蓮「何?」

藍子「……、」

藍子「…………」

加蓮「……? いいよ? もうちょっとだけシリアスタイムを延長しても」

藍子「……」

加蓮「いいのー? 今を逃すともう言えなくなるかもしれないよ?」

藍子「それもテラス席と同じのハズです。今言えなかったことだって、きっといつか言える時が来ますから」

加蓮「どーだかね。テラス席だって、来年になったら加蓮ちゃんが自由に歩けなくなってもう来れなくなるかもしれな――」

加蓮「……ごめん。空気とかあっても言っちゃ駄目だよね、こういうの」

藍子「……。はい。言っちゃ駄目です、加蓮ちゃん」

加蓮「だよねー……。ごめんね。建前、作っちゃってた」
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/11/10(日) 18:53:46.75 ID:2JbuYMCt0
藍子「それなら……お詫びとして、さっきの"加蓮ちゃんが私にやりたかったこと"の続きを、」

加蓮「だからそれは言わないし、そもそも私にも分からないって言ったでしょっ」

藍子「本当ですか? 本当は、分かっているのに分かっていないふりをしているだけじゃないんですか〜?」

加蓮「ホントだから! ……今日の藍子はなんなの、ホントに!」

藍子「……。えへ♪」

加蓮「もうっ」


【おしまい】
29.87 KB Speed:0   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 新着レスを表示
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)