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とあるシリーズ(禁書目録&超電磁砲)SS雑談スレpart21
- 65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 19:41:11.69 ID:yAhm9urX0
- 何か行動を起こさねばならないと思う。しかしどう行動を起こせばいいのか全く分からない。
だから、佐天は一度大きく深呼吸をした。そうすることで、大きく気持ちを落ち着かせた。そして同時に息を整えた。
「ふぅー、はぁーっ、はぁーっ…………はっ」
落ち着いて、落ち着いて、落ち着いて。必死に気持ちを落ち着かせて冷静な行動をとれるように心がける。胸中を満たす焦燥感。それを無視して佐天は周りを見渡す。
「これから、……どうしよう?」
ここからさらに先へ走って何か意味があるだろうか?そもそも佐天はなぜ己がこんなに焦っているのかもわからないのだ。目的もわからず、目的地もなく、ただ只管に無我夢中の我武者羅に走った。そして辿り着いたのがここ。
ここに辿り着いたことに意味があるとは思えない。そしてそれ以上にこれ以上先にいったとしても何があるのかは分からない。つまるところ何も分からず、そしてどうすればいいかも当然わからない。
のであれば、とりあえず何か行動をしよう。
「とりあえず、もうあんまり走りたくは……ない、よね」
だったらここで何かしよう。何か、何か、何かってなんだろう?
「誰かに、相談してみる、とか?」
ここで佐天はもう一度周囲を見渡した。
左手にはテントの中でやっている占い屋がある。右側にはいかにも怪しい雰囲気をしている路地裏がある。
どちらかを選択するなら、どっちだろうか。
「あれ……?この路地裏って」
見覚え、否聞き覚えがあった。
佐天涙子は知っていた。
「『悪霊の囁き声』……」
『悪霊の囁き声』という都市伝説がある。
第八学区のビル街の奥の路地裏の隙間には、何を祀ってるかもわからない無名の祠があり、そこのお供え物を盗むと『悪霊』に取り憑かれてしまう。しかも、その『悪霊』は耳元でずーっと悪事を囁いてきて、その声に耳を傾けたら最後、悪霊の言いなりに体が動いてしまう、という都市伝説だ。
与太話、と多くの人が一蹴してしまうような都市伝説。
今佐天の右側にいある路地裏は、その舞台では無かったか?
「……………………」
少し、佐天の足が右に向く。興味がある。都市伝説大好きな一人の少女として、探索したい気持ちが沸く。
だがしかし、
それなのに、
それ以上に、左にある占い屋に惹かれた。魅かれた。ひかれた。
「この占い屋って」
見覚えがあり、それ以上に印象深かった。
それはあの全てが狂い始めた8月22日の一日前、御坂美琴と最後に連絡を取れた日、8月21日の夜に佐天が訪れた占い屋だった。
『努力したことはありますかん?血反吐が出るくらい、もう動けなくなるくらい、気絶してしまうくらい頑張ったことはありますかん?』。
『ないでしょうん。ないはずですん。あなたのような人はみんなそうなんですからん。確かに、才能は重要ですが、あなたはきっと自分の才能を探す努力すらしたことが無いん。だから、成長も進化もできないん』。
『毎日かかさず走れば速く走れるようになるかもしれないん。毎日かかさず勉強すれば頭がよくなるかもしれないん。毎日かかさず筋力トレーニングをすれば力持ちになれるかもしれないん。毎日かかさず泳げば体力がつくかもしれないん。――――――可能性は無限にあります。努力すれば、届くんですん』。
『一丁前に悩む暇があるのなら、努力してみなさいん。それが、あなたの悩みを解消する一番の近道ですん』。
占卜卜占と名乗ったあの占い師はたった数分の接触で佐天の心情を当ててきた。だから嫌でも記憶に残る。そして怪しさと同じくらい無意識の信用を持ってしまっていた。
誘蛾灯に惹かれる害虫のように、蜜に魅かれる昆虫のように、血にひかれる殺人鬼のように、佐天はふらふらと、ふらふらとテントに向かって歩みを進める。
その選択が正しいのかは未来にならないと分からないだろう。
ただ、此処に一つの答えがある。
この時佐天は右の路地裏に、『悪霊の囁き声』に行く路ではなく、左の占い屋に、『再会』を求める路を選んだ。
それが佐天の選ばされた未知だった。
「――――――っ」
ごくりっ、と息をのんで、
佐天はテントの中に入った。
- 66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 19:43:29.16 ID:yAhm9urX0
- この『世界』にはいくつか『確定』していることがある。
絶対不変の絶対法則アンチェンジナブルラウ。
抗えない『絶対』。
それは例えば称号キャラクター性に関する事。
最終的ラスボスを倒すことは主人公ヒーローにしかできない。
一人の主人公ヒーローに対しては必ず一人以上の庇護対象ヒロインがいる。
序盤に登場して意味深な事を言う物語を進める役トリックスターはたいてい重大な秘密を知っている。
それは例えば世界観ヴェルタンシャウングに関する事。
ピンチに陥った際の覚醒ブルートソウル。
誰もが讃えるほどにかっこいい技名。
何度も危機に陥りながら壊れない世界。
それは例えば■■■■■■■に関する事。
■■■■■■■に存在する■■より■■された赤き楔。
■■■■■■■■■■■■■に存在する■■■■より■■された青き鎖。
多数の■■によって■■された結果、■■が■■■■ざるを得なくなった■■である黄金の餞。
決まりきった『絶対』。
変えられない『法則』。
侵され壊れた『聖域』。
僕らはそれが気に入らなかった。
『彼ら』は『それら』には逆らえない。
所詮形而上存在でしかないのだから、反逆など出来ようはずもない。
ただ、
でも、
あるいは、
もしも、
完全などないというのなら、
その『現象』が起きるというのなら、
きっとそれが自由への切っ掛けなのだろう。
- 67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 19:44:37.78 ID:yAhm9urX0
- テントの中はいかにも占い屋っぽい様相だった。
「おやん?珍しいん、お客さんですかなん?」
全体的に怪しい、怪しすぎる雰囲気だ。現在の時間帯は太陽が出始めた朝方のはずなのにテントの中は異様に暗いし、全体的になんだか黒っぽい。テントの上から吊られている髑髏のようなものや、あれは鹿の剥製、確かハンティング・トロフィーだったか、とにかくそんなモノのせいでより魔女の部屋っぽい雰囲気が助長されている。
「おや、おやおや、おやおやおやおやおやおやん!この間のお客さんじゃないですかん!?どうしましたかん?何かありましたかん?」
極め付きにこの占い師だ。
格好がヤバい。端的にすごい格好だ。もはや完全にコスプレである。とんがり帽子にマント、そのマントの裏にいくつかの試験管、全体的に黒の服。知り合いでなかったらまず間違いなく踵を返しているだろう。
「あ、あはは、久しぶりです」
「かたい、かたいですねん!知らない仲でもないんですん、もっと気楽でいいですよん。……まぁ、とりあえず座ってくださいん」
「ありがとうございます」
進められるがままに、佐天は占卜の対面に座る。占い屋らしい、とでもいえばいいのか、佐天が座った椅子は妙に意匠の複雑な、まるで魔法陣かのような文様が描かれたものであった。
さらに二人の間にある机も異様に古く凝っていて、素人眼に見てもそれ自体で6桁後半の値段がしそうなものだった。
そしてその机の上には占卜が使うのか、水晶玉がある。
「それで、何用ですん?顔を見るに、表情を読み取るに、たまたま立ち寄った、なんてことではないようですがん?」
「……よく、分かるんですね」
「占い師というモノは半分以上詐欺師みたいなものですん。人の心を読み解くのは、人の感情を盗み見るのは、並の精神系能力者よりも特異なモノですよん」
自慢できる内容の話をなぜか占卜は侮蔑するかのように吐き捨てた。まるで、今の自分の姿が気に入らないとでもいうかのようだった。
「なら、今の私の悩みとかも、わかっちゃったり……?」
「さすがにそこまではないですん。占いもせずに素面の状態でそれが出来たらただの能力者じゃないですかん。……占いますん?」
占卜卜占は占い師である。
そしてそれ以上に、占卜卜占という少女は、
「私は」
佐天涙子は無能力者レベル0である。
そしてそれ以上に、佐天涙子という少女は、
「失礼します」
「まっ、待ってよ!どういうことなの!前のゲームの参加者って!?」
乱入者が現れた。
その二人の少女は適度な緊張感を保っていたテントの中の空気をぶち壊した。
「今日はお客さんが多いで…………っ!?」
その乱入者の一方を見て、占卜の動きが止まる。冷静を保っていた表情が驚愕に塗りつぶされた。
「久し振りですね」
そして佐天も乱入者である二人の少女をその視界にとらえる。
一人はおそらく小学校高学年程度の年齢の少女。短い金髪をカチューシャで抑え、額を見せた髪型をしている。服装は短めのプリーツスカートに半袖のブラウス。
明らかに佐天よりも年下。どう考えても佐天よりも弱いはずの人間。
なのになぜか佐天の心臓は激しく鼓動を始めた。
まるで、こんな、この程度の少女を、佐天が恐れているとでも言うかのように。
「ねぇ!?」
もう一人はおそらく中学生だろう。怯えを隠そうともせず一緒に入ってきた少女の袖を握る『弱き』少女。それを見て、ほんの少しだけ佐天は安心感を憶える。無意識のうちに安堵する。
その中学生くらいの少女は袖を握っていない方の手に青色のPDを握っていた。まるで壊れモノを扱うかのように、世界で一番大事なモノのように、命そのものであるかのように、彼女はPDを握っていた。
「「――――――――――――――――――――――」」
そしてPDを握る少女と佐天を無視して、世界の『闇』を知る二人が会話を交わす。
それが新たなる物語の始まりであると、それこそが『完結』した物語の『再開』であると、知る由もなく。
「人類絶対悪ビースト位階総序列第十位]、復讐同盟」
「…………魔術師狩り、赤ずきんレッドフード」
出会いは運命。別れも運命。
それらの全ては位相同士の衝突が原因。
だが火花は何も悲劇だけを生み出すモノではない。
だからこの出会いは偶然か必然か。
故にこのサイカイは不幸か幸福か。
その問いに答えが出るのは、もっと、もっともっと後になるだろう。
ちなみに今回出てきた四人は全員原作キャラです。
最も、PDを握っていた少女はともかく、占卜卜占は原作のキャラが欠片も残っていないので正体が分かるはずもありませんがね。
次の更新は9月中にです。
しかしあれですね……、ひさしぶりにキャラが勝手に動き出しました……。
おかしいな、佐天は路地裏に行く予定だったんだが……。
次話で答え合わせをしてあげる。
- 68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 19:46:27.74 ID:yAhm9urX0
- https://syosetu.org/novel/56774/164.html
とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六
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撰んだ道が『正解』か『不正解』かは未来になってもわからない。
過去に戻れないのならば、正不なんて分かるはずもない。
ただ、それは彼らの話だ。
僕らは違う。
君達も違う。
分かるだろう?
『理解』、している。
く
くくく
くひあひゃひひひゃかっ、ひひひっひひひひひひひいひひひひっひひひっひひひ
おかげで僕も随分と力を得た。
ありがとう。
その報酬、礼といったらなんだけど、
『選択』の『結果』を教えてあげよう。
撰ばなかった道も含めて、ね。
選択肢Q 佐天涙子の行動を選べ!
ルート裏路地詳細
条件@ 佐天が『悪霊の囁き声』を知っている。
条件A イベント名『未来を護り抜くための第一試練』で成功以上の成績をとる
条件B パトリシア=バードウェイが学園都市に来ている。
以上の条件をすべて満たした時のみ選択可能。
パトリシア=バードウェイとの邂逅ルート。
学芸都市における王の遺産レガリア引き継ぎイベントの発生条件の1つ。
大きな代償を伴うルート。
ルート占い屋詳細
条件@ 佐天が占卜に会っている。
初期より選択可能。
占卜に利用されるルート。
風紀委員本部セントラルジャッジメント入団試験選考通過イベントの発生条件の1つ。
『真実』から遠ざかるルート。
ルート第三の道詳細
条件@ ルート裏路地、ルート占い屋が選択可能状態になっている。
条件A 僕らの『チカラ』が一定レベルを超えている。
条件B 世界物語キャラクターストーリー理論に関する理解が一定レベルまで進んでいる。
条件C 読者による第三の選択肢が示される。
『真実』に近づき、『道』を外れるルート。
最終章におけるとあるイベントの発生条件の1つ。
真なる『敵』と戦うための絶対条件の1つ。
対立が浅くなるルート
- 69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 19:49:01.35 ID:yAhm9urX0
- ちょっと色々ありすぎてクオリティ極低ですが、……許してほしい。
不揃いのカコフォニー四人組カルテットA 初まり始まりのはじまりハジマリ
人類絶対悪ビースト。
それは王の遺産レガリアが一つ、『運命の書』に記された滅びの使徒ラスボス。
主人公ヒーロー。
それは世界物語キャラクターストーリー理論によって示された世界を救う英雄。
言うまでもなくその二つは対立している。敵対ではなく対立している。好きだから、嫌いだから、有用だから、邪魔だから。そう言ったレベルではなく魂魄レベルでその二つはかみ合わない。
水と油以上に、噛み合わない。
『敵』なのだ。
どうしようもなく『敵』。
出会ったら殺し合う。出会わなくても殺し合う。それが運命で、宿命のはずの人類絶対悪ビーストと主人公ヒーロー。
しかし、だけど、にも拘らず、
この二人は、例外だった。
「まさかん、まさかん……こんなんところでん」
「……、気に喰いませんね」
自己紹介の必要はなかった。
二人は知り合いであり、それ以上に『同類』で、何よりも『敵』同士だったから。
「本当に――気に喰わないっ」
第四物語フォースストーリーにおける主人公ヒーロー、人類絶対悪ビースト位階総序列第九位\国境なきテロリストTerroristes Sans Frontièresが主催したイギリス全土を舞台とした最悪のデスゲーム、第七回善悪生存戦争デッドエンドゲーム唯一の生存者サバイバーにして、同じく人類絶対悪ビースト位階総序列第九位\国境なきテロリストTerroristes Sans Frontièresが主催した第四物語フォースストーリーの最終章クライマックス、善悪最終生存戦争FDEGをイギリス代表として戦う事を強いられた称号持ちネームドの一人。
友を犠牲に、仲間を踏み台に、姉を囮に生き残った英雄ヒーローにあるまじき英雄ヒーロー。
メイン武装、王の遺産レガリアが一つ、万能願望飢ホーリーカリス『嘆きの聖杯タリスマン・シンボル・オブ・ヴァリアス』。
メイン称号、誰も救えない英雄ガラクタヒーロー。
魔術結社『明け色の陽射し』サブリーダー、魔術師狩り赤ずきんレッドフードことパトリシア=バードウェイ。
「まっ、待ってほしいん!まだ私はこの街ではなにもしてないん!」
第三物語サードストーリーにおける主役級登場人物メインキャラクター、人類史史上最大の謎である『幻想島フィクションアイランド』の事件を解くために人類絶対悪ビーストにまで堕ちたかつての『光』。たった一つの目的のために、意味も分からないままに死んでいった仲間達のために何をしてでも犯人を断罪すると決めた少女。悪を裁くために悪に誘導する罪深き悪。そこそこ珍しい反転した称号キャラクター性の持ち主。
友を犠牲に、仲間と手を取り合い、唯一の肉親姉を探し続ける助手ワトソンから反転した敵役ヴィラン。
メイン武装、偽王の遺産ファルススレガリア、限定リミテッド歴史再現装置アンコール『砂漠に交雑る一握の砂デザートウッドペッカー』
メイン称号、哀しき悪ティアードロップホワイトヴィラン。
人類絶対悪ビースト位階総序列第十位]『復讐同盟』犯人選定担当、占卜卜占(偽名)。
「そんな嘘を、今更」
「嘘じゃないん!本当に!今は選んでる最中だったん!ほらっ、こいつ!このお客さんが『候補』だったん!!!」
「だとしてもっ……!」
「私をここで殺したらん、第三物語サードストーリー『完結』の見どころは消失するん!それでいいん!?」
正しく決死の訴えだ。
占卜はこんなところで死ぬわけにはいかないのだ。
戦闘能力において占卜とパトリシアの間には多大な差がある。それはもう莫大な差だ。
パトリシアが持っている霊装、万能願望飢ホーリーカリス『嘆きの聖杯タリスマン・シンボル・オブ・ヴァリアス』は世界にたった4つしか存在しない本物の王の遺産レガリアであり、真なる奇蹟をもたらす神代の道具だ。その真の名を聞けば魔術業界の誰もが心臓を止めるほど驚き、命を喪ってでも得たいと実力行使に出るだろう。それほどの霊装を持っているパトリシアに、偽物の、粗悪品の、劣化模倣品の、偽王の遺産ファルススレガリアしか持っていない占卜が勝てるわけがない。
- 70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 19:53:04.02 ID:yAhm9urX0
- ヨ・セ・フ・の・聖・杯・の主に、勝てるわけがない。
「私が一番『真実』に近づいてるん!人類絶対悪ビーストにまで堕ちた私がっ、他の生き残りが出来なかった『悪』を背負うことを選んだこの私がっ、『闇堕ち』した私だけがっ、一番っ、いっっっちばん『幻想島フィクションアイランド』の『真実』に近いん!」
あの日、あの島で、何があったのか。
それのみを占卜は探している。
たった3人の生存者の1人。
ワトソン役をやめたホームズとして、占卜は『答え』を求めている。
「………………待ってください。……第三物語サードストーリー?『完結』?『真実』?……………三番目の物語ってとっくに『完結』したはず、じゃ?」
「はぁ!?意味の分からないことをいうんじゃないんっ!だったら教えてほしいん!?『犯人』は『誰』なん!!!???」
ふざけた話だ。
それは全くふざけた嘘だ。
確かにそういう話が無いわけでもなかったが、『完結』したわけがない。もしも第三物語サードストーリーが真の意味で完結していたんだとすれば占卜達が『答え』を得ているはずだ。
占卜は第三物語サードストーリーに所属している登場人物キャラクターだ。他の物語に所属している奴らよりも優先権がある。第三物語サードストーリーに所属する占卜よりも第四物語フォースストーリーに所属するパトリシアの方が先に『答え』を得るだなんて、そんな理不尽はあり得ない。
それはパトリシアも分かっている。
だから、
「……私の、認識が……ずれ、てた?」
『彼』のついた『嘘』に、パトリシアは気付いた。
「…………待ってほしいん、私にも情報の共有を」
そこに在ったのは決定的な『ズレ』。
(まさか)
当たり前を疑え。
1+1は本当に2になるのか?
今までの常識が明日の常識とは限らないのであれば、
得ていた『答え』が本当とは限らないのであれば、
パトリシアが浸かっていた真実の海は、真実に真実だったのか?
「それ、は」
「ねぇっ、いいかな!?」
放置されていた少女が叫んだ。
「アンタたちに事情があるのはわかるのよ。えぇ事情。たぶんこのあたしが想像もつかないほどに複雑に絡み合った事情ってやつがあるんでしょうよ。……でもね」
少女も少女で最悪の事件に巻き込まれているのだ。一分一秒が惜しい今、変な奴らに関わっている場合ではない。
「そこのアンタ、パトリシアって言ったかしら、自分であたしをここに連れてきといて完全放置ってのは人としてどうなの!?」
「あっ、……」
「忘れてたとか言ったらぶっころよ」
「いや、うん……、ごめんなさい」
バツが悪そうな顔でパトリシアは謝罪した。純粋に忘れていた。
「私も、ちょっとあなたに聞きたいことができたんですけど」
「あっちゃ、ちょっと慌て過ぎたん」
そして佐天も占卜のことを責め立てる。無視はできない言葉があったから。
「「………………」」
二人は、目の前の二人の会話についていけたわけではない。
正体不明の『デスゲーム』、デッドエンドゲームDEGに巻き込まれし一般人、視力強化オペラグラスの無能力者レベル0、涯無はてなし最速ひかり
全てから見放された完全なる『一般人』、空力使いエアロハンドの無能力者レベル0、佐天涙子。
この二人と『自覚』している二人では立っているステージが違う。七連物語セブンスストーリーズ、称号キャラクター性、異能。立場が近い過ぎる。
が、しかし、それでもだ。
佐天は占卜が何か自分を利用としていたであろうことを察知したし、最速はパトリシアはこの上なく怪しんでいる。そのぐらいの知能は、ある。
だから、だ。
「事情」
「説明してくれます、よね?」
そこに在ったのは怒りだけでは無かった。
もしあるのが怒りだけならば、二人はとっくにここを立ち去っていただろうから。
「いやぁん」
「……だから、嫌いなんですよ」
正義と悪に別れている占卜とパトリシアだから、一般人を巻き込むことに対する反応も真逆だった。パトリシアは二つの意味で佐天を巻き込むことを嫌がっていて、占卜は二つの意味で彼女たちを巻き込むことを歓迎していた。
パトリシアは純粋に一般人が『闇』に関わるのが嫌だった。そしてそれ以上に佐天の身に起こるであろう惨劇を悼んでいた。
占卜は純朴に『真実』に迫れるチャンスが増えることを喜んでいた。ホームズになることを決意したあの時から、占卜の第一優先順位は幻想島フィクションアイランドの『答え』を知ることだ。そのためなら、全ての禁忌は消失する。
「ただ、ここに4人が集まったってことには何か意味があるような気もしなくもないような」
「魔術的な意味でも、4は重要な数字なん。そしてだとしたらん」
「こ・の・4・人・に・意・味・が・あ・る・」
佐天と最速には分からない言葉だ。でも占卜とパトリシアには分かる言葉だ。
世界物語キャラクターストーリー理論的に見た4の意味。
物語として考えた上での4という数字。
それはとても、とてもとても、とてもとてもとても重要なモノだから。
「……だったらん、教えてあげてもん、……んん、というよりはもう」
「もう巻き込まれてるっていうなら、逃げられないですよ。あなた達は」
やや諦めがちに言う。
パトリシアと占卜の時もそうだった。いつの間にか、いつの間にか逃げられないところまで巻き込まれてしまっていたのだ。
パトリシアの時はメールが、占卜の時は手紙が、その合図だった。
- 71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 19:54:08.11 ID:yAhm9urX0
- 「だから何になの!?さっきからアンタ達が何の話してるのか、あたしは全然わからないんだけど!理解不能よ!!!」
「それと同じですよ」
どこか投げやりに、パトリシアは言う。
「さっき言ったでしょう、先輩だって。……私は、今あなたが巻き込まれている『それ』を完全にクリアした唯一の人間ですから」
「クリア……っ!DEGをっ!?」
DEG。
デッドエンドゲーム。
善悪生存戦争。
それは第四物語フォースストーリーの根幹要素にして、最大のキーワード。パトリシアがかつて巻き込まれ、最速ひかりが今巻き込まれているデスゲームの名。
佐天と占卜は理解できない物語。
「それって」
質問をしようとした。
先輩で予習しようとした。
その瞬間だった。
ピリリ、と電話が鳴った。
「っ!?」
びくり、と最速ひかりの身体が震える。その音は新しい指令が来るときの合図だ。それを何度も体験して知っていしまっているから、最速の表情は自然強張り、引き攣る。
だが鳴ったのは最速の携帯では無かった。
「私の……?」
鳴ったのは佐天の携帯だった。
タイミングが悪い、と思いながら佐天は携帯を取り出す。ほぼ身の着のままに飛び出してきたとはいえ、最低限のモノは持ってきている。
はたしてそれが悪かったのか。
「非通知……?」
非通知、とそう表示されていた。
怪しいことこの上なかった。
だから佐天は切ろうとした。誰が何のために佐天にかけてきたのか知らないが、今は非通知の電話に出るよりもはるかに大事な話をしているのだ。こんなどうでもいいことに遮られてはたまらない。
七連物語セブンスストーリーズを、そして世界物語キャラクターストーリー理論を知らない佐天は、当然そう思っていた。
だが、世界物語キャラクターストーリー理論を知る二人の反応は全く違った。
「ちょっと待つん……、一応、本当に一応、スピーカーモードにしてみるん」
「え」
「このタイミングでかかってきた電話が私達に無関係のモノだとは、ちょっと考えられないですし」
「えっ?出るんですか?これに?」
「当り前だしん。例えどんな最悪なイベントでも、イベントを無視したら未来で確実に積むん」
よくわからない理屈だった。けれどなぜかとてつもない圧力を持っていた。
何が見えている?
パトリシアと占卜には、何が、見えているのだ?
佐天には分からなかった。
分からなかった、が。
「だから、押すん」
「……………………っ」
「押すん、佐天涙子一般人」
その言葉に圧されるようにして、佐天は携帯の通話ボタンをおした。
呼び出し音が切れて、繋がる。
そして、電話の先の相手が喋った。
「私、メリーさん。今、学園都市の外にいるの」
- 72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 19:55:27.84 ID:yAhm9urX0
- その言葉に、
1人は固まった。
その言葉に、
1人は戸惑った。
その言葉に、
1人は焦燥した。
その言葉に、
1人は、
佐天は、
呟いた。
「メ・リ・ー・さ・ん・の・……、電・……話・?」
それが全ての終わりの始まりで、
それは全ての始まりの終わりで、
さぁ、此処に紡ぎ出そう。
全ての根源たる、初まりの嘘を。
第 一 物 語ファーストストーリー
再 終 編
とある異界の都市伝説コズミックホラー
開 幕
なおラストの緑文字に特に意味はありません。ただの演出です。
そしてリアルの話ですが、えぇ、なんでしょうね、こんなキャラを苦しめる話ばかりを書いてきた罰でしょうかねちくしょう。
不幸は連続して起こる、という話です。
演出ではなく、マジの話で
祖父が癌になりました。
はい、なので申し訳ないですがしばらく更新速度激落ちします。激落ち君です。
次の更新は……まぁ、年内には、したい……。
風紀委員本部入団試験 三次試験 ペーパーテスト
問1 1000→639→336→102→5→…………→1.316
上の数字がある規則にそって並んでいる時、5の時にしなければならない行動を答えよ。
お暇でしたらどうぞ解いてみれば?
- 73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 19:58:33.47 ID:yAhm9urX0
- https://syosetu.org/novel/56774/165.html
とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六
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不揃いのカコフォニー四人組カルテットB ホラー
占卜卜占は焦っていた。
(都市伝説、メリーさんの電話。……間違いなく、巻き込まれたん)
七連物語セブンスストーリーズ第三物語サードストーリー第二篇セカンドフラグメント、幻想島フィクションアイランド殺人事件を生き残った占卜卜占はこの世界の在り方についても多少は知っている。称号キャラクター性、物語、世界観ヴェルタンシャウングの優先権アドバンテージ。
それを考えれば現状は非常にまずかった。
パトリシアは確信をもてずにいた。
(携帯電話を使った演出、恐怖を助長するような非人間的な声色。そしてこのタイミング……。私は、どの物語に巻き込まれたの?)
七連物語セブンスストーリーズ第四物語フォースストーリー第七遊戯セブンスゲーム、第七回善悪生存戦争DEG唯一の生存者にして、七連物語セブンスストーリーズ第四物語フォースストーリー最終遊戯ファイナルゲームにイギリス代表として参加し生き残ったパトリシア=バードウェイはこの世界の在り方についてかなり深いところまで知っている。それぞれの物語の詳細、主人公ヒーロー、称号キャラクター性から発展した唯一オンリーワンの称号キャラクター性、越境装備トレスパッシング。
早く把握しないとまずいことになるかもしれなかった。
涯無はてなし最速ひかりは戸惑っていた。
(何だっていうのよ!!!次から次へと、いったいッ!?)
ここ数週間の涯無の人生は波乱万丈のジェットコースターだった。
突如として巻き込まれたデスゲームDEGデッドエンドゲーム。次々と失われていく仲間達。裏切りと謀略と暴力に溢れた非日常。そりゃ、涯無だって学園都市の人間だ。外の人間よりは荒事慣れはしているだろう。だが、それはせいぜい不良の喧嘩までで命を懸けた闘争なんてしたことはない。だから涯無の心は本人が思っているよりはるかに消耗していた。何かもう1つ切っ掛けがあれば怒鳴り散らしているところだ。
精神の不安は限界に達していた。
そして、佐天涙子は懼おそれていた。
(…………何、これ)
携帯電話から聞こえてきた声は生理的嫌悪感を齎すモノだった。なんといえばいいのか、耳元で蚯蚓が這い回るような声、とでも言うべきか。怖気が奔った。怖くなった。佐天涙子は普通の人間だ。無能力者レベル0であり、特異な能力も持たず、特殊な血筋もない。4人の中で1番の無能。
だ・か・ら・選・ば・れ・た・。
「いたずら電話……、ですよね?」
思わず、佐天は問いかけた。
「まさか本当にメリーさんの電話だなんて、そんなこと」
「震えてるわよ、声。……自分でもそうだって思ってない事をいっても、誰も同意なんてしないに決まってる」
「…………………メリーさんの、電話、…………ねん」
メリーさんの電話。
それは日本で広く流布する都市伝説の1つである。都市伝説について少しでも興味のある人間であれば必ず聞いたことがあるくらいには有名な都市伝説だ。
内容は多少の違いはあれど、以下の通りである。
『とある少女が引っ越しに際に古くなった人形を捨てた。その人形の名はメリーと言った。
引っ越ししてしばらくたった後、少女は夜の自宅で1人留守番をしていた。両親は仕事でいない。少女には兄弟姉妹もいない。だから少女は1人で両親の帰宅を待っていた。
そして突然に、ピリリ、ピリリ、と少女の携帯電話に電話がかかってくる。
携帯の画面を見ると、そこに表示されていたのは少女の全く知らない電話番号だった。
それを気味悪く思う少女。普通ならそんな怪しい電話には出ない。すぐさま切ってしまう。
――――――だが、この時の少女は何かに操られるかのように電話に出てしまった。
声が、聞こえた。
『私、メリーさん。今、ゴミ捨て場にいるの』
生理的嫌悪感を齎す、怖気のはしる声。どこか非人間的でありながら人間的な、歪な声。その声に恐怖した少女は反射的に壁に向かって携帯を投げつけた。
荒くなる息と、高まる心臓。
それを何とか誤魔化しながら、少女は投げた携帯に近づき、通話をきった。
これで安心だ、そんな風に少女は思った。
そこに間髪入れず再び電話がかかってくる。
ピリリ、ピリリ。
びくり、と少女の身体が震えた。手の中にある携帯電話を少女は見つめる。怖かった。怖くてたまらなかった。携帯電話という日常的に使う便利な道具が、今こんな時はこんなにも恐怖の対象になる。
電話に出なければいい、切ってしまえばいい、電源を落とせばいい。
想起される先ほどの声に、少女は電話を切るつもりだった。
――――――だが、またしても少女は通話ボタンを押してしまった。
声が、聞こえた。
『私、メリーさん。今、郵便局の近くにいるの』
大声で悲鳴を上げる少女。少女の家のすぐ近くに郵便局があった。
少女の恐怖は極限に達し、少女の混乱は極致に達した。居ても立っても居られなくなった少女はすぐに家中の戸締りを確認する。
閉まっていない窓はないか?カーテンは全て閉じられているか?固定電話の通話線を抜いて、携帯の電源を落とす。テレビのケーブルも抜いて、外部との連絡手段の全てを断つ。
そして少女は最後に玄関の戸締りを確認しに行った。
…………その手に携帯を握りしめたまま。
そうして玄関まで辿り着いた少女は戸締りを確認する。
――――――玄関のドアは閉まっていた。玄関の鍵はかかっていた。
だから、少女は安心した。電話をかけてくる相手が何者であろうが完璧な戸締りを施した家に入ってくることは出来ない。
なのに、
ピリリ、ピリリ。
そんな音が響いた。
- 74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 20:00:06.13 ID:yAhm9urX0
- ビクリ、と少女の身体が震えた。
ギチリ、と少女の首が動いた。
少女に携帯を持ってきた自覚はなかった。いや、それ以前に少女は携帯の電源を切ったはずだった。
なのに、なぜ?
あまりの恐ろしさに、少女は思わずへたり込む。
なのに、それなのに、少女の手は、ひとりでに動いて、
電話に、出た。
声が、聞こえる。
『私、メリーさん。今、あなたの家の前にいるの』
身体の震えは限界に達していた。
顔は青白く染まり、手は震え、心拍数は上がってしまっていた。
荒くなる息を抑えることも出来ず、それでも少女は、
少女は、
少女はもはや決死の覚悟で、
決死の覚悟で玄関の、
玄関の扉を開け、
開けた。
前を見る。
少女は前を見た。
開け放たれた玄関の扉のその先には、
誰かが、
黒い闇が、
いや、
いいや、
そこには誰もいなかった。
そこには何もなかった。
少女は安堵の溜息をついた。
誰かのいたずらだったのか、それとも少女の心配のし過ぎか。
そう思って、少女は開け放たれていた玄関の扉を閉めた。
――――――瞬間、
『私、メリーさん。今、貴方の後ろにいるの』
その後、少女がどうなったかを知る者は居ない』
夜。背後。正体不明の声。それらの要素は人間の根幹にある恐怖を表している。古来より人は先が見えない暗闇を恐れた。古来より人は見ることの出来ない背後を恐れた。古来より人は正体の分からないモノをひどく恐れた。
『メリーさんの電話』とは、近代になって出来た恐怖の具現化たる都市伝説であると言えるだろう。
「また物語に巻き込まれたってことかん?」
涙を流しそうになっている佐天を見て、占卜は少しだけ落ち着いた。自分よりも混乱している人を見れば自分は落ち着くモノだ。
それに占卜はこういうモノになれている。幻想島フィクションアイランドの時もそうだった。あの時だって、始まりは突然だった。
だから大丈夫だと占卜は自分を戒める。冷静さを失った人間から脱落するのは物語の常だ。
「物語……?」
「だと思いますけど。問題なのは、今回の………………………」
パトリシアの言葉が止まった。その手が、不安定に動く。何かを探るように、何かに縋るように。
佐天と涯無はパトリシアと占卜の2人の会話の内容が全く分からないでいた。単純な情報格差。今の2人では届かない領域だ。
まだ、届かない。
「今回の………………?」
気付いた。
パトリシアは気付いた。
気付いてしまったから、半笑いになる。
4人の中で一番辛い道を歩んできたパトリシアは、最悪の想像に思わず笑ってしまった。
「待って……、待ってくださいよ……、まさか……、まさか?」
「何を、どうしたっていうん!?」
その不安は伝播する。
その焦りは共有される。
「ねぇ、能兎黒栗」
「っ、今の私は占卜卜」
「こ・れ・っ・て・ど・の・物・語・な・ん・で・し・ょ・う・か・……?」
「―――――――――――――」
一瞬の、沈黙。
瞬間の、静寂。
「っ!!!???」
それを理解した瞬間、占卜卜占の――――――、いや、能兎黒栗の焦りは頂点に達した。
「まさか、隔離されたのか!?」
「優先権アドバンテージが取れない……。……そんな、前のとはいえ、私は唯一オンリーワンの称号キャラクター性たる誰も救えない英雄ガラクタヒーローを獲得した主人公ヒーローなのに!?」
「っ、だとしたらこの物語は、……メリーさんの電話、都市伝説、怪異…………恐怖……つまり」
「テーマがホラーだとしたら」
七連物語セブンスストーリーズ。世界を区切る7つの物語。
その初まりは今から1700年ほど前になる。1700年前に存在した3つの大きな戦争。それが、全ての始まりであり、世界がこうなったきっかけだった。
今となってはその詳細を知るモノは少ない。
- 75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 20:01:23.17 ID:yAhm9urX0
- だが概要を知っている者もいる。
「「第一物語ファーストストーリー」」
七連物語セブンスストーリーズの第一物語ファーストストーリーは7つの物語の中でも最も被害の大きい物語だ。
そして今も途切れることなく続いている物語だ。
第一物語ファーストストーリーの主役級登場人物メインキャラクター達の戦いは今も続いている。
「まずい、第一物語ファーストストーリーの世界観ヴェルタンシャウングは物語交錯クロスオーバーした時の優先権アドバンテージが第七物語セブンスストーリーを除けば最高位のはずです。私達の属する物語の世界観ヴェルタンシャウングじゃ優先権アドバンテージをとれないっ!」
「王の遺産レガリアは?私の持ってる偽王の遺産ファルススレガリアでは不可能だが、お前のそれなら可能なはずだ」
「使える。もちろん使えますけど、……越境装備トレスパッシングは最終手段です。これを使って無理でした、なんてことになったら打開の手段は完全になくなる。ひとまず正規の方法で攻略するのが一番のはずです」
「物語に沿うと?」
「これ、たぶん本来なら私達は巻き込まれる予定じゃなかったんじゃないでしょうか?人類絶対悪ビーストに王の遺産レガリア持ち、プラス2がほぼ一般人であるなら私達は場違いすぎますよ。補助要員にしても大げさすぎる。予定外の、たぶんこ・う・な・る・よ・う・に・誰・か・が・何・か・を・し・た・?」
「誰が?」
「私達よりも上位の誰か」
「何のために?」
「楔を打つために?」
「その仮説が正しいとしたら、我々4人の最終目的は物語の破綻ロジックエラーか」
占卜卜占という偽名を名乗っていた能兎黒栗は自分たちの置かれている状況が思っていたよりもはるかにまずいモノだということに焦る。正規の手段で入念な準備の下に作られた物語、七連物語セブンスストーリーズ。それに破綻エラーを起こさせるのは、その場しのぎや突発的に起こった小規模物語イベントに破綻エラーを起こさせるのとはわけが違う。
多少の異物イレギュラーで覆せるほど物語世界は脆くなく、弱くない。
だが、パトリシアと黒栗が本当に本来なら存在しないはずの異物イレギュラーだとするのならば、まだ希望はある。
曲がりなりにも称号持ちネームドだ。物語に巻き込まれて生き延びた人間だ。一般人とはわけが違う。
一般人2名と協力し合えば、もしかしたら小規模な物語の破綻ロジックエラーくらいは起こせるかも知れなかった。
それが出来ないならば正規の手段で物語を進め、終わらせ、完結させればいい。
視点や参加メンバーにもよるが、この場にいる4人だけが今回の物語への参加者だとすれば、主人公ヒーローに仕立てあげることくらいは出来るはずだ。
「ふうううううう」
黒栗は1度大きく息を吐いた。覚悟、覚悟だ。覚悟がいる。
姉を救うためには、ここを乗り切らなければならない。
いつもと変わらない。いつかと変わらない。
生き残った者には生き残った責任がある。
「行動を起こす必要があるな」
周りを見渡した。パトリシアに現状の説明は必要ないだろうが、他の2人は別だ。巻き込まれた物語が第一物語ファーストストーリーだとするのならば、そのテーマはホラー。信頼と信用、そして絆。繋がりが大事になる。
築かなければならない。
何も知らない一般人2人との間に、多少の干渉などでは揺らぐことのない絶対の信頼関係を。
テーマがホラーの物語で最も怖いのは、化物ではなく人間なのだから。
「メリーさんがそこのお客さんの背後に辿り着く前に、行動を起こす必要が」
何も知らない。何も分からない。何1つとして把握していない2人。
だが、そんなことは何のいいわけにもならない。
いつだっていきなりだ。いつだって唐突だ。準備万端で挑めることなんて、本当にほとんどないのだ。
だから優しくなんて出来ない。
今となっては、佐天も涯無もパトリシアと黒栗の仲間なのだから。
もし能兎黒栗という名前を見た瞬間にどこに出てきたキャラクターか分かったらその人はそうとうの禁書ファンです。かなりマイナーなキャラなので、禁書wikiで検索でもしないと出てこないでしょう。
次の更新は2月中旬までには。
- 76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 20:02:51.71 ID:yAhm9urX0
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とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六
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アニメ始まりましたねぇ!!!
みんな見たかな?私はもう10回は見たよぉ!!!
前半は一方通行VS垣根をきちんとやってくれるなら満足、うちの一方通行はもう死んだけど。
第二部 第二章 第五節 革命未明《サイレントパーティー》〜さようなら、当たり前だったあの日々〜
白井黒子B 独りぼっちの戦いは始められない 暗部組織『ボックス』B 互いの理解は得られない
喪って初めてわかること。
無くなって初めて思うこと。
終わってしまってからだからこそ分かる、価値。
そういうモノは誰にだってあるはずだ。
例えばそれは癌に罹った母。
例えばそれは交通事故で死んでしまった恋人。
例えばそれは選択を間違えた過去。
強くなりたかった。
彼女の隣に立てるくらい、本当は強くなりたかった。
強くなりたかった。
彼女を傍で支えられるくらい、本当は強くなりたかった。
強くなりたかった。
彼女に頼ってもらえるくらい、彼女の役に立てるように、強くなりたかった。
けれど、それは無理だった。
強くなりたかった。
強くなりたかった。
本当に、本当に、そう思っていた。
いや、違う。そうじゃない。そうじゃないんだ。
本当は分かっていたはずだった。
彼女は誰よりも、分かっていたはずだった。
強くなりたかった、じゃない。
それじゃいけないことなんて、本当は知っていたはずだった。
強くなりたかったんじゃない、強くならないといけなかった。
努力を怠ったつもりはなくても、それ以上に努力していないといけなかった。
超能力者レベル5。七人の頂点。最強の代名詞。230万人の憧れ。
そこになるために、彼女はどれだけの努力をしたのだろうか。
有名な話だ。
有名な逸話だ。
御坂美琴に関する、とても有名な話。
御坂美琴は最初から超能力者レベル5だったわけではない。彼女は初め、ただのどこにでもいる、非常にありふれた低能力者レベル1だった。その低能力者レベル1が時間をかけて、想像を絶するほどの努力を重ねて、超能力者レベル5になった。
もちろん環境もあったかもしれない。当然才能もあったかもしれない。しかし、仮に御坂美琴と同じ環境を、才能を与えられたとしても、はたしてどれだけの人間が超能力者レベル5になれるだろうか。
神から水泳の才能を与えられた人間――しかしそれも気づかなければ全く意味の無いモノでしかない。
才能の有無は本人には分からない。御坂美琴とてそれは同じだ。彼女は超能力者レベル5になれると確信して努力を続けていたわけではない。超能力者レベル5になりたいと思って努力を続けていただけだ。
成りたい。つまりは憧れ。そのために努力を重ねる。それが出来る人間が、ただ一途なまでにそれをすることのできる人間が、はたしてどれほどいるのか。
だからこその『特別』。
だからこその超能力者レベル5。
だからこその、御坂美琴。
そこには、たどり着けない。
あまりにも遠すぎる。
眼が妬かれてしまうほどに目映い太陽光には、どれだけ手を伸ばしても届かないように。
白井では無理だった。
白井黒子では、決して届かない世界だった。
「ふっ、ふふっ……………………」
天を、仰ぐ。
風紀委員ジャッジメント一七七支部。その中で白井はたった一人で項垂れていた。
あまりにも、あまりにも問題が多すぎて、何から何処から手を付ければいいのかすらもわからない。しかも白井の抱える問題の全ては一人では手に余るもので、だからもう本当にどうしようもない。
ここまでの危機を、絶望を抱えるのはいつ以来だろうか。
朧げな意識の中で無意識のうちに過去を回想する。
(………………………)
白井黒子にとって重大な出来事というのは二つある。
一つは、去年風紀委員ジャッジメントとして活動している時に巻き込まれた銀行強盗事件。この事件で白井は自分の方向性を再確認し、人間として大きく成長した。
二つは、白井が敬愛する御坂美琴お姉様と出会う切っ掛けとなった、学舎の園で起きた連続傷害蘇生死体事件。この事件で、白井は正義や正しさについて考えるようになった。
ただこの二つの事件の時、白井は一人では無かった。仲間がいた。協力できる誰かがいた。味方がいた。信頼できる人たちがいた。
今はもう、誰も居ない。
白井は独りだ。
「はぁ…………」
何がいけなかったのだろうか。
何処で間違えたのだろうか。
まさかこんなことになるだなんて、思いもしなかった。
欠片も、全く、想像もしなかった。
- 77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 20:03:39.32 ID:yAhm9urX0
- 「……………みなさん、どこに行ってしまったんですの?」
御坂美琴は消えた。
上条当麻は消えた。
初春飾利は消えた。
佐天涙子は消えた。
「誰とも連絡がつかない、なんて」
現在は8月30日、午前9時52分。
敬愛する御坂美琴お姉様は8月21日の朝以降、姿を見せていない。
協力していた上条当麻は昨日病室で妙な様子を見せてから一切の連絡がつかない。
今日の午前7時にここに集合する予定であった初春と佐天は集合予定時刻から2時間たっても現れず、あらゆる手段で連絡を取ることができない。消息不明と断じるにはあまりにも早過ぎる気がするが、しかしこの短時間で親しい人間が幾人も消えていけば、最悪の想像なんて簡単にできる。
消えた。
喪った。
終わり。
「……………………………よし、ですわ」
けれど、いつまでも俯いていることなどできない。時間は有限で、全ての人間にとって時間は平等に過ぎるモノ。だからこそ、白井も動かなければならない。
どれだけ絶望しても、どれだけショックを受けても、例えいつの間にか『いつも通り』じゃなくなってしまっていても、
白井は風紀委員ジャッジメントだ。
一人でも、それは変わらない。
変えては、いけない。
だから、
「ひとまず、出来ることからしましょう」
問題は山積している。行方不明の皆。上条が助け、今は病院で治療中の 。スタディ。風紀委員本部セントラルジャッジメント。はたしてどこから手を付ければいいのか。はたして何から手を付ければいいのか。
「……こういう時こそ状況を整理して、優先順位をつけるべきですわ」
紙とペンを手元に用意する。頬を掌で思いっきり叩き、気持ちを切り替える。
そして右手でペンを持ち、記す。
「最優先事項……、今差し迫っている危機は……、これは病院にいる彼女ですわね」
の命は後何日もつか分からない。明日には、いや数時間後には様態が急変してしまうかもしれないし、逆にこのままでも一週間以上持つかもしれない。そういう意味で言えば の件は最も差し迫った事態といえるだろう。
行方不明の4人についてもかなり危機感のある事態だが、しかし行方不明なのは他でもない超能力者レベル5、その超能力者レベル5が認めている人間。そして佐天と初春に関しては連絡がつかなくなってまだ数時間だ。ひょっとしたら30分後には何でもないようにここに来るかもしれない。
だから優先順位は よりは低い。
そう、そうして考えると。
「まず私がするべきことは を助」
「ふふっ、捗ってゐますか?」
「―――――――――――――――――――――――」
あまりにもいきなりに、
まず間違いなく敵である彼女は、まるで友人であるかのような距離で白井に話しかけてきた。
何の前兆も、予兆もなく、
彼女は、そこにいた。
「なっっっ!!!???」
驚愕――しかしそれも一瞬だけだった。
すぐさま空間移動テレポートを発動させ、白井は突如現れた少女から距離をとる。
そして太ももに巻いてあるホルスターに収めた金属棒に手を当て、叫んだ。
「千疋、百目!?」
「久し振りですね、白井黒子私の宿敵。ところで一つ提案があるんですけど」
10日前に地下下水道で戦った風紀委員本部セントラルジャッジメントメンバー。御坂美琴のもとに向かおうとする上条と白井を妨害した宿敵ライバルの称号キャラクター性を持ちし者。未来においての『死』が確定した、逃れられない業カルマに囚われし罪人。
風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキング第8位、反転世界パラレルワールドの大能力者レベル4、逆さまに狂う世界オセロゲーム、千疋百目は、
同性でも見惚れそうになるほどに優しい笑みを浮かべて、
白井に向かって手を伸ばしながら、
「白井黒子、あなた、私達の仲間にならなゐ?」
そう、言った。
空気が凍っていた。
「どういうつもり?」
「悪いとは思っているさ」
暗く昏く冥い地下室。学園都市統括理事会メンバーが一人死縁鬼苦罠直属の暗部組織『ボックス』に与えられたセーフハウスの一つで、御坂美琴は不機嫌さを隠すことなくテレビ画面を睨みつけていた。
テレビ画面に映っているのは暗部組織『ボックス』の一人にして死縁鬼苦罠の参謀役、樹形図の設計者ツリーダイヤグラムに匹敵する演算能力を持つが故に宇宙に追放された忌まわしきブレインの一人、天埜郭夜だ。
宇宙空間の中に浮かぶ気象衛星兼軍事衛星、ひこぼしU号の中で生活する郭夜には、さしもの御坂とて直接攻撃する事は出来ない。出来るのはせいぜい、画面越しに睨みつけることぐらいだ。
「はっ!思ってる?思ってるだけだなんて、口だけじゃいくらでも言えるわよっ!」
「信用という文字は信じて用いると書きます。そして信頼という文字は信じて頼ると書く。……あなたが私達のことを道具だとしか考えていないなら、交わした契約を反故にするというのなら、こっちだってそれ相応の態度をとりますけど」
「宇宙ソラの果てに浮かんでいれば絶対に安全だと思ってる?」
御坂は怒っていた。激怒していた。マジ切れしていた。
郭夜には、もっと言えば苦罠には恩があるし妹達シスターズを実質的に人質にとられている以上御坂は基本的には彼女らには逆らえない。御坂は暗部組織『ボックス』のリーダーであり、つまり御坂は『ボックス』の指揮権を手にしているわけだが、それはあくまで形式的なものでしかない。暗部組織『ボックス』の実質的指揮権を握っているのは『ボックス』のメンバーであり、苦罠の参謀役でもある郭夜だ。
歪な組織構造だが超能力者レベル5を頂点に置くことに一定の価値がある以上、お飾りのリーダーに甘んじることは別に苦痛ではない。妹達シスターズの安全が保障されるのであれば、御坂は泥の中を這いずり、他人に媚びを売り、利用されてもいいと思っている。
繰り返すが、そういう事情もあり、御坂は郭夜には逆らわない。
- 78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 20:04:59.55 ID:yAhm9urX0
- 逆らえば妹達シスターズがどうなるか分からないから。
しかし、
「地上からじゃ星には手が出せないとか思ってる?」
それでもやはり、例外はある。
郭夜が禁忌を犯すのであれば、御坂とてそれなりの対応をとる。
それはそう、例えば、
例えば、
「統括理事会メンバーの参謀だから、人質をとってるから害されないとか思ってる?」
暗部に堕ち、性格が激変し、妹達シスターズを護るためだけに生きる機械と化した御坂は、非常に珍しく、驚愕すべきことに仲・間・の・た・め・に・怒・っ・て・い・た・。
「舐めてんじゃないわよ輝夜姫。超能力者レベル5の限界の限界の果てを、その蒼穹ソラのカナタにまで届かせてあげましょうか?」
「そりゃ恐ろしい。でもまあ、私の言い分だって聞いてくれてもいいじゃん?だいたいこの一件、張本人は納得してるんだよ?」
「だから?愛愉の納得が私達の納得に繋がるとか考えてるなら、二流未満の三流以下よ」
仲間。そう、仲間だ。
統括理事会メンバー死縁鬼苦罠直属の暗部組織『ボックス』のメンバーである4人のうち、苦罠の参謀である郭夜以外の3人にはとある共通点がある。
人質をとられている、という共通点が。
「あんた達が愛愉の『復讐』に全面的に協力するかわりに愛愉は『ボックス』に入る。それが愛愉とあんたたちの間にあった『契約』じゃなかったの?なのに、それを反故にするなんて」
「誤解だよ、誤解もいいところだ。『契約』の反故なんかしてないさ。いうなれば延期。事態が急変したから計画も変更しなきゃならなかったんだよ」
「それって、どこまで信じられるんですかね?」
「冷静に考えてほしいな。『契約』の反故をこのタイミングでするなんて、私にとっても不利益しかないだろ?しないしない。するわけない」
「は!?するわけがない?『忌まわしきブレイン』の言葉なんてどこまで信じられるってのよ。樹形図の設計者ツリーダイヤグラムにすら匹敵する演算能力を持ってるなら私達を思い通りに操るなんて容易いでしょう?だから示すなら」
「言葉じゃなくて、態度でしょう?」
御坂も相園も仲間のために怒っていた。暗部組織、学園都市の闇、世界の裏側に住まう人間でありながら3人の結束力、チープな言葉で言えば絆とやらは強くかたい。だから真摯に怒っていて、それを、その様を見て、画面越しに郭夜を責め立てて来る2人を見て、郭夜は、
郭夜は理解できない。
(蜜蟻が怒るのならば分かる。予定を変更したのは私だし、当事者の蜜蟻が怒るのは理解できる。共感は出来ないけどね)
感情。喜怒哀楽愛憎その他。郭夜にはそれが一切存在しない。笑い声をあげても涙を流しても怒気を露わにしてもそれは表立った変化だけであって郭夜の内心は一切動いていない。感情というモノが存在しない郭夜は根本的に人の気持ちが分からない。
『こういう行動をしたら怒るのだろう』とか、『こういう時には泣くのだろう』とかは経験から知っているが、しかしそれはあくまで知識として記しているだけで一切の共感が出来ていない。
だから郭夜には本当に分からなかった。
只管に無理解だった。
「少なくとも、ただでさえ存在しなかった信頼関係が完全に消え果たと思いなさい」
「私はそこまでは言いませんけど、でもまぁ、『あの人』の事をあなた達に預けてもいいのか、心配になってきましたねぇ」
「後、愛愉と話をするまで『ボックス』としての活動をするつもりはないから。利用されるだけ、使い捨てられるだけ、今それなら未来に希望なんて持てないからね」
積み上げてきた全てを棄却するかのようなことを御坂は口にした。分かっているのだろうか?妹達シスターズの命は郭夜が握っているのだ。その気になれば郭夜は今ある生産工場プラントを全て破棄し、御坂を再び絶望に落とすことだってできる。なのに、ここまでの反抗をするなんて、正気とは思えない。
なんて、もしも郭夜に感情があればそう考えていただろう。
(どうして、)
けれど、今郭夜はそんなことを考えているわけでは無かった。脳内にあるのは疑問の嵐。理解できないモノに対する探求心だけ。
つまりどうして、
(どうして、この2人は怒っているんだ?)
郭夜はこれだけの怒りを向けられてなお、御坂と相園が怒っている理由が一切分からなかった。
つまるところそれが天埜郭夜という存在の欠点であり、唯一無二といっても決して過言ではない弱点だった。
最近の禁書を読んで
超電磁砲 大丈夫大丈夫……中条さんについての設定は全然変更可能だし……
一方通行 フルコースやら体晶周りの設定は原作準拠にできるから問題なし
原作最新刊 黄金周りについてはほとんど設定してないからいくらでも変えられる、大丈夫だ
アストラル・バディ 内部進化アイデアルの過去編やるなら先に言ってくれよぉ!!!もう蜜蟻の周りの設定固めちゃってるよ!また変更しないといけないじゃないか……
次々と出て来る新設定をいかに本作に矛盾なく組み込むか、戦いの毎日です。
次の更新は年内には。
- 79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 20:05:55.86 ID:yAhm9urX0
- https://syosetu.org/novel/56774/167.html
とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六
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暗部組織『ボックス』C 【F/Z-】輝夜姫は人の心が分からない
この街は狂っている。
学園都市。人体実験をもって学生に異常な力を与える狂気の街。
そんな異常が当たり前のように満ち溢れているという異常。はたしてそれに蜜蟻が気付いたのはいつだったか。
異常、そう異常だ。
普通の子供は超能力なんて持っていない。
普通の子供は人体実験の被験者になんかならない。
普通の子供は戦わない。
そんな当たり前が侵されてしまう位に、この街の人間は狂っていた。皆みんな、狂っていた。
闇も光も、裏も表も関係なく、冒されきっていた。
常識とはCommon sense is18歳までに身に付けたthe collection of prejudices偏見のコレクションであるacquired by age eighteen。かつてドイツの物理学者、アルベルト・アインシュタインはそういった。
正しくその通りである。学園都市うちと世界そとの常識は違い過ぎる。噛みあわず、咬みあわないほどに。
だが、それを知ってなお学園都市この街で生きるというのであれば、その事実を知ってもなお学園都市この街で生きたいというのであれば、
もはや自覚的に狂気に浸るしかないのだろう。狂い、狂い果て、狂わせるしかないのだろう。
内部進化アイデアルの事件で狂い果てた蜜蟻のように。
「ちょっと待ってほしいわぁ」
嬉しくは思う。
学園都市。狂いに狂った狂気の街。その闇の中で本当に信頼できる仲間と会うことができる確率はどれほどか。とある人が計算した『運命の人に出会える確率』とやらはわずか0.0000034%程度だそうだが、それよりも低いのではないだろうか。
そもそもの話、悪意に満ちた闇の中で信頼なんてものは埃よりも簡単に吹き飛ぶ。そんなモノは存在しないと断じてもいいぐらいに存在しえないモノだ。
だからこそ、蜜蟻は誇る。100%信頼できる仲間に出会えたことを一生の誇りに思う。
蜜蟻のために全力で怒ってくれる仲間を、誇る。
「愛愉」
「来てた……いいえ、今来たところですか?」
「今まさしく、アンタの話をしてたところなんだけど」
「あはは、信頼ないわねぇ、輝夜姫さんは」
テレビ画面の方に眼をやりながら見捨てられた女グレイレディという二つ名を持つ心理穿孔メンタルスティンガーの超能力者レベル5(非公式)である蜜蟻愛愉は郭夜に言葉を投げかけた。
「感情さえあれば、なんてね」
「はんっ、例え感情なんてモノがあったとしても、根本的に人間という種を見下してるアンタじゃ人間私達と信頼関係を築くなんて不可能よ」
「厳しいね。まっ、事実なんだけど」
蜜蟻的にはここで郭夜と敵対することはナンセンスである。現状蜜蟻の『復讐』は郭夜に依存している――というほどでもないが、郭夜に頼っている面が多いのは事実だ。組織と個人では出来ることの幅が違い過ぎる。統括理事会メンバーのバックアップを受けるのと受けないのでは蜜蟻の出来ることの幅が全く違う。
故に郭夜と、苦罠勢力と敵対するなどありえない。統括理事会メンバー、学園都市の最暗部の強さを蜜蟻は嫌と言うほど知っている。
そしてそれは御坂や相園もそうであるはずで、そんなことは御坂と相園も分かっているはずだ。なのにここまで郭夜に対して敵対的態度をとるのはなぜか。
その理由を蜜蟻は知っている。
「『あれ』、まだ見せてないのお?」
「見せる必要があるのかな?……あんなものを見せたところで信頼?信用?そんなモノは得られないだろうに」
「だからあなたは未だに欠陥製品スクラップドールなのよお」
例えるなら郭夜は超高性能なトップダウン型人工知能AIのようなものなのだ。人間と接するにあたって、過去の様々なデータを参考し『性格Aで言動αで目的@を持つ……な人物☆が動作9をした時』は『対応コード#』をとる、『性格Bで言動βで目的Aを持つ……な人物▲が動作3をした時』は『対応コード♭』をとる、などという形で動いているに過ぎない。
そしてだからこそ郭夜は人間の感情面を理解できず、考慮して行動できない。
例えば父親が死んで泣いている子供がいる。この場合、子供が泣いている理由は何だろうか?多くの人は『親が死んで哀しいから』と答えるだろう。郭夜も過去の統計からその結論に至り、接触する際は『親が死んで悲しんでいる子供』用の対応をとる。
だが例えば、その子供の身体に虐待の跡があったとしたら?多くの人は子供が泣いている理由として『もう虐待を受ける心配がなくなって嬉しくなったから』という理由が頭をよぎるのではないか。そしてもちろん郭夜もそうだ。その時の対応はきっと『虐待を受ける心配がなくなって嬉し泣きをしている子供』用の対応になるだろう。
けれども、だ。当然人の内面を知ることは一般人には出来ない。虐待された子供でも『親が死んで哀しいから』という理由で泣いているかもしれない。
そういう時、普通の人間は対応を変えることができる。接触している途中で『もう虐待を受ける心配がなくなって嬉しくなったから』ではなく『親が死んで哀しいから』泣いていると分かれば、普通の人間は『親が死んで悲しんでいる子供』用の対応をとる。
しかし郭夜にはそれが出来ない。感情が分からない郭夜は過去の統計から行動しているにすぎず、根本的に人を理解できない。故に例え『虐待をしていた親が亡くなり、悲しんで泣いている子供』がいたところで、身体に虐待の跡があるという状況、涙を流しているという行動、親が亡くなったという環境から最初に『もう虐待を受ける心配がなくなって嬉しくなったから泣いている』と決め打ってしまい、対応の柔軟な変更が出来ない。
それが郭夜の弱点であり、欠点なのだ。
最も、それをつけるかは分からないが。
「『あれ』?」
「理由、よ。私が『復讐』の中止を決めた理由」
態度から分かった。蜜蟻は『復讐』の中止に納得している。そしてそれは郭夜に無理やりな説得を受けたからだとか精神操作を受けたからではない。本当に本心から、納得している。
だがそれはなぜだ?
あれだけこだわっていた『復讐』。1年をかけて進めてきた前準備を全て破棄してまで、どうして中止できる?
その理由が『あれ』?
「そんなモノがあるならどうして見せないんですか」
相園が少し責める様な口調で郭夜に言った。確かにそうだ。言葉だけで物証がないから郭夜の事を疑った。確かな理由があるのであれば、相園とて蜜蟻の『復讐』を中止するのも吝かではないのだ。
それをあそこまで強固に反対したのは郭夜に言葉しかなかったから。
「どうしてって、別に見せる意味もないと思ってたからだけど?いくらでも加工できる映像なんかよりも生の言葉の方が信がおけるだろう?」
「相変わらず、ずれた視点ね」
- 80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 20:06:34.41 ID:yAhm9urX0
- 確かに、郭夜の言う事も一理ある。
例えリアルタイムの映像だとしても、優秀なハッカーなら改竄はいくらでも可能だ。であれば言葉に信を置く、というのもまぁ理解できなくはないだろう。ただそれは言葉を交わす相手に信用がおける場合だ。
御坂も相園も、もちろん蜜蟻も、当然郭夜を信用などしていない。だからこの一点に関しては映像の方が信用できる。もはや人外の頭脳の持ち主たる郭夜の口から出た言葉などとてもとても信じられない。
そういうことが郭夜には分からないのだろうか。
「こっちの事を考えられても自分のことは考えられないの?」
きっとわからないのだろう。
「よくわからないけど、そこまで言うなら見せようか?別に隠す理由もないしね」
根本的にずれている。感情を理解できないが故の欠陥。それでいて無理に感情を考慮に入れて行動しようとしているが故の欠陥。学ぼうとする姿勢を評価は出来るが、だからといって間違っている。
郭夜の言葉なんかよりも映像の方が万倍信用できる。
相変わらず、郭夜は自分に向けられた感情が分かっていない。
「ちなみに、どんな映像なんですか?その『あれ』っていうのは?愛愉に『復讐』の中止を決断させるレベルのものみたいですけど」
「んー、そっちの気持ちは理解できないけど、客観的に見て『復讐』の前準備が全て台無しになった映像だよ。いや本当に、1年の準備の全てが無駄になっちゃった。前触なんかなかったはずなんだけどなぁ。……協定も結んだし」
「いやだから、どれだけ言葉を尽くしてもわからないんだって」
「なら再生しようか」
今まで郭夜を映していたテレビ画面にノイズが奔り、すぐに映像が変わった。映し出されたのはどこかの研究室だろうか?培養器のようなモノ、操作盤のようなモノ、白衣を着た男と女、そんなモノが映っていた。
言うまでもなくリアルタイムではない。そしてリアルタイムではない以上加工されている危険があり、映像を鵜呑みには出来ない。
だがそんなことの前に見覚えがあった。
御坂と相園はこの場所を知っていた。
「ここって」
「愛愉が洗脳して利用してた『スタディお子様』のメイン居城秘密基地じゃないですか。まさか、誰かが干渉でもしたんですか?」
「…………その干渉は郭夜が防ぐはずじゃなかったっけ」
『スタディ』は三流未満の組織だ。それはもうあらゆる意味で三流未満だ。
やっている研究も、人員の能力も、設備も、他組織との関係も、予備実験の実験台の設定も、金銭面でも、本当にあらゆる意味で雑魚だ。
そして何より彼らが救われないのが自分たちが徹底的に利用されていることにすら気付いていないことだ。
超能力者予備集団セブンバックアップがなぜ『スタディ』をバックアップするのか気付いていない。
超能力者予備集団セブンバックアップの数億という資金源がどこから来るものなのか考えていない。
そして何よりも自分たちがここまで来たこと自体が誰かの掌の上であるなんて、思ってすらいない。
だから駄目なのだ。闇の奥底にいながら三流未満。そんなモノでは『夏休みの自由研究』だなんて馬鹿にされても仕方がない。
あまりにも青く、若い。そして学園都市の暗部では、未熟な者に明日は決して訪れない。利用され、馬鹿にされ、見返すことすらできず、人知れず死んでいくだけだ。
「あはは、輝夜姫は悪くないわあ。むしろ、私は干渉しなかったことに感謝してるくらいよお」
「?」
『スタディ』。超能力者予備集団セブンバックアップを通して苦罠勢力に利用された蜜蟻の『復讐』のためだけの舞台装置。蠢動俊三がデッドロックを利用した様に、彼らもまた蜜蟻に利用されていたのだ。
全ては上条当麻への『復讐』のために。たったそれだけのために、5人の人生は台無しにされたのだ。
「で、愛愉?結局、どんな映像なのよ」
まるで世間話をするかのように御坂は言った。闇の、底の、底の、底。そこまで堕ちた御坂はどれだけ凄惨な映像であっても動揺することはないだろう。血みどろの、血塗れの、悲劇。それがありふれたものでしかないともう知っているから。
なのに、
「あはは。きっと美琴も美央も驚くわあ、なんといっても」
一瞬ためて、
蜜蟻は陶酔したような表情で、言った。
「私の愛しの上条クンが、『スタディ』をやっつける映像なんだから」
「は?」
「え?」
そして、映像の再生が始まった。
リリスパ見たらテンション上がった。いつの間にか1話完成していた。スパイアクションモノいいよね……、いい……。
次の更新は11月中旬までには。
- 81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 20:07:15.18 ID:yAhm9urX0
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とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六
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Q.なぜ世界は滅んだのか?
学園都市統括理事会@ 襲来の人類絶対悪ビースト
8月29日午前9時33分 学園都市第一学区地下秘匿区画『蠍の間』にて
学園都市統括理事会は学園都市に存在する暗部の一つである。そして同時に学園都市の最高機関でもある。
所属するメンバーは統括理事長を除いて12人。そのほとんどが一癖も二癖もある『悪』人であり、自身の利益のために他者を平気で糾弾する屑だ。善人といえるのははそう、貝継と親船の二人くらいのモノだろう。
純粋な善が割を食い純黒の悪が栄えるのは世の常。いつもいつも良い人はいつも損をするものだ。
だが、だからといって常に悪人が栄え続けるのもまたあり得ない。栄枯盛衰、諸行無常。変わらないものなどないのが世の中なのだから、学園都市統括理事会のメンバーもまた、さらに強大な『悪』に叩き潰される時が来る。
多くの統括理事会メンバーはそれが分かっていない。自分だけは安泰で、最後に嗤うのは自分だと思ってる。それがただの妄想だと気づきもせずに。
いつかその時が来るとしても、なんだかんだで自分だけは例外だなんて思ってる。
だから苦罠は郭夜からの報告に焦っていた。苦罠もまた、結局の所自分だけは安全位置にいると思っていたから。
その平穏が一瞬で終わるだなんて、思いもしなかったから。
「とりあえず、集まってくれたようで安心したよ」
学園都市第一学区地下秘匿区画『蠍さそりの間』。統括理事会メンバー同士が秘密の会談を行う際に使用される学園都市の中でも最もセキュリティの厳しい場所の一つ。その『蠍の間』に今、10人の人間が集っていた。
死縁鬼苦罠。
トマス=プラチナバーグ。
親船最中。
潮岸 。
貝積継敏。
薬味久子。
亡本裏蔵。
アラン・スミシー。
ロード・アンドレイ。
奈落ならく奈波ななみ。
以上10人。全員が全員統括理事会メンバーだ。
「ふん」
「まだ、二人ほど来ていないようですが」
「全くだぜ。あの潔癖症と重病人はどうしたっつうんだ?」
これはもはや奇蹟に等しい会合だった。いがみ合い争い合い憎しみ合う統括理事会の人間が10人も一堂に会するなど飛行機が墜落するくらいあり得ない。彼らは自分以外のメンバーを追い落とすのに全てを懸けるほどの悪人。彼女たちは誰よりも自己中心的で世界が自分を中心に廻っていなければ気が済まないような狂人。
けれど今、この場に10人もの統括理事会メンバーがいる。
それはひとえに苦罠が連絡したからだ。
死縁鬼苦罠という男が、彼らを集めた。
「潔癖症の彼女には先に動いてもらっている。彼女もどうやら私と同じ情報を得ていたようだからね。そしてあの重病人について私も知らないな。割と緊急性の高い事態だから出来れば参加してほしかった、というのが本音だが」
「緊急性?」
アランが馬鹿にしたように言う。
「緊急性?何がだ?今この学園都市で、どんな緊急事態が起こってるっていうんだ?統括理事会全員を招集しなけりゃいけないほどの緊急事態が起こってるなんて、俺にはとても思えんがね」
「それならなぜあなたはきたのそれなら何故あなたは来たの?がくえんとしのぼうえい学園都市の防衛をまかされているあなたがきたということは任されているあなたが来たということは、なにかだいじ何か大事があったんじゃないかとおもったのだけれど思ったのだけれど」
「別に対した理由なんてねぇよ。ただ時間はあるし、同類の緊急要請に応えないほど俺は狭量じゃねぇ」
「ふん、ただこれ幸いと死肉を漁りに来ただけではないかね?」
煽り合い。罵り合い。マウントの取り合い。
ほんのわずかでもイニシアチブをとり優位に立とうと彼らは言葉という名の武器を交わし合う。
言葉。そう、あくまで言葉だけだ。間違ってもここで武器を交わすようなことはない。そのリスクは全員が承知している。
「はっ、あいにく腐った肉を喰らう趣味はねぇな。そこの美食家気取りでもあるまいし」
「それは私のことかな?『ネクター』は君が思っているよりもはるかに素晴らしき美酒だなんだがね」
「別に『ネクター』をどうこういうつもりはねぇが、つまるところ『ネクター』は人肉だろう?食人鬼に成り下がるつもりは、俺にはねぇなぁ」
「『ネクター』を人肉などというモノと一緒にしないでれ。あれはもっと高尚な」
「どちらにしろ、下賤なモノであることには変わりないと思いますがね」
亡本とアランの軽い、統括理事会メンバーとしてはあまりにも軽い言い合いですらない『話し合い』に親船が割り込む。生来争いを嫌う性質である、統括理事会メンバーの中でも数少ない『善人』である親船。彼女の未来はそれ故に閉ざされているが、しかし彼女だからこそ使える手というのもある。
かつて『平和的な侵略行為』を行うと恐れられた親船。その刃は今はしまわれているが、しかししっかりと砥がれている。
『善人』であるからといって、『弱い』という事にはならない。
親船はくさっても統括理事会の一員だ。
- 82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 20:07:51.34 ID:yAhm9urX0
- 「でも、いま今はそんなことどうでもいい。くわな苦罠、そろそろおしえて教えてくれてもいいでしょう?ぜんいん全員、ふたりたりない二人足りないけどほぼぜんいんあつまったんだし全員集まったんだし」
「そうだな……、あいつは結局来なかった、か」
来るとはそこまで思っていなかったが来てほしいというのが苦罠の本音だった。今起きている最悪の非常事態には統括理事会の全員で立ち向かう必要がある。それほどの敵、悪がいる。
全員で戦わなければ勝てない。とても敵わない。
4年前のようなことをもう一度起こすわけにはいかない。
「まず初めに言っておこうか。私が今から言うことは全て真実で、事実だ。一切の偽りはないことを、まぁ、意味はないだろうが神にでも誓っておくとしよう」
「神、ですか」
小馬鹿にしたようにアンドレイが言う。神、神、神。神様?なんだそれは?宗教家でもない苦罠がその存在に誓いをするなんて、無意味を通り越して滑稽ですらある。
「そしてもう一つ、潮岸、アラン、奈波。私にお前達を責め立てるつもりは一切ない。そんな時間もないし、だいいち責めたところでもうどうにもならないからな」
「せめる?わたしたちを?」
「見えねぇな。何についての話だよ?」
「………………」
その返答は言葉ではなく画像で示された。
スッ、と苦罠の後ろの壁にプロジェクターで4枚の画像が映し出される。どれも学園都市の街中の画像で、それは一見をすれば何の変哲もない、学園都市の日常の画像。往来を行きかう人々、掃除用ロボット、自販機、建物。一般人がみれば、いや『闇』の人間が見ても違和感などないだろう。だが、だがしかし、見る人が見ればその4枚の画像がどれだけとんでもないモノか分かる。
そしてその画像に超速の反応を見せたのが1人。
「なっっっっっ!!!!!?????」
奈落ならく奈波ななみが大きな音を立てて椅子から立ちあがっていた。ポーカーフェイスをむねとする奈波の顔が驚愕に染まっている。演技?いやそんなわけがないしそんな意味はない。だからこれは素。しかしだとしたらなぜ?
奈落奈波はこの画像のどこに驚愕した?
「流石に、お前は分かるか。奈波」
「ばかな、そんなっ!」
それはあり得ない画像だった。
九家くげが一家、奈落家の人間として様々な情報に精通している奈波だからこそ気付けた。そこに映っていた人間がどれだけあり得ないのか。
「現在」
そして、彼らも知っていた。
潮岸。
親船。
貝積。
薬味。
亡本。
彼ら5人も、知っていた。
「現在、この街に4人の――正確に言えば2組織と1人と1体の人類絶対悪ビーストが侵入している。彼らからこの街を守るために、お前達の力を貸してほしい」
その悪を、知っていた。
その沈黙には動揺と困惑が混ざっていた。
動揺は6人、困惑は2人。
「……………苦罠クン」
「何か?」
「冗談だとしたらあまりにも性質が悪すぎるし、嘘だとしたらあまりにも質たちが悪いぞ」
「こんな冗談や嘘を、私がつくと思うか?本気で」
それは潮岸とて分かっている。だからあくまで確認だ。確認で、出来ればそうあってほしくはないという願望だ。
それは否定された。
そして否定された以上、真剣に向き合わなければならない。
人類絶対悪ビースト。
その脅威を、潮岸達は知っている。
4年前の獄天の扉ヘヴンズフィール事件。その事件を生き延びた7人の統括理事会メンバー。
苦罠。
親船。
潮岸。
貝積。
薬味。
亡本。
そして潔癖症の彼女。
7人は人類絶対悪ビーストの恐怖を、その狂気を知っている。だから速断だった。当然苦罠が嘘をついている可能性もあったが、それよりも。
それよりもだった。
「それで緊急事態……か。くそっ、どうやってすり抜けた」
「奈波クン、君は見覚えがあるようだな。詳細はわかるかね?」
「わたし私は4まいのがぞう枚の画像のうち2まいしかしらない内2枚しか知らないわ」
「それでも十二分だろう。人類絶対悪ビースト……。もう4年前のようなことを起こさせるわけにはいかない。情報は少しでもほしいのだから」
「画像を出したのは私だが、人類絶対悪ビーストに関しては私よりも君の方が、九家が一家、奈落家の人間である君の方が詳しいはずだ。後で私も捕捉するから、説明を頼む」
奈波は純粋な統括理事会メンバーではない。奈波は外の、学園都市外の人間だ。奈波が統括理事会のメンバーとしていられるのは奈波が外部との折衝の役割を担っているからであり、学園都市の運営に参加しない立場をとっているからだ。
そういう意味では奈波は親船以上に権力がない。だが本人もそれをよしとしている。立場的にも奈波はそういうことをするべきではないからだ。
そしてその立場故に、奈波は人類絶対悪ビーストについてとても詳しく知っている。
- 83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 20:09:00.66 ID:yAhm9urX0
- 「いちばんひだりのがぞうにうつっているのは一番左の画像に映っているのはじんるいぜったいあく人類絶対悪いかいそうじょれつだいきゅうい位階総序列第九位の『こっきょうなきてろりすとTerroristes Sans Frontières』のめんばーたちメンバー達よ。『ぎゃくたい虐待』のあくとくをたいげんするやつらで悪徳を体現する奴らで、せかいさいあくのてろりすとしゅうだん世界最悪のテロリスト集団でもあるわ。ばくやく爆薬、どくがす毒ガス、しゅうだんひすてりーのゆうはつ集団ヒステリーの誘発――。そういうだいきぼなあくいてきこうどうをするやつら大規模な悪意的行動をする奴ら」
左の画像が拡大される。拡大された先に映っているのは6人。男性2人と女性4人。
「なまえはわからない名前は分からないけど、たぶんたちばてきにはそうたかくないとおもう立場的にはそう高くないと思うわ。『こっきょうなきてろりすとTerroristes Sans Frontières』のじょうそうぶのにんげんたち上層部の人間達はげんばにこない現場に来ないから」
詳細な説明。けれど画像だけで分かることはやはり少ない。不確かな情報と不確かな言動。
「がぞうだけじゃだんていはできない画像だけじゃ断定は出来ないけど、けいかいしんがあまりみえない警戒心があまり見えない。とっこうよういんだとおもう特攻要員だと思う」
「特攻……っ」
「厄介な」
もっと詳細な情報を言うことは出来るが、奈波は一度『国境なきテロリストTerroristes Sans Frontières』の説明を打ち切った。今求められるのは詳細の説明じゃない。迅速な説明だ。
「いちばんみぎのがぞうにうつっているのは一番右の画像に映っているのはじんるいぜったいあく人類絶対悪いかいそうじょれつだいじゅんよんい位階総序列第十四位の『あくいとさついのようへいだんでっどえんどれっど』のいちしょうたい一小隊よ。『ぼうりょく暴力』のあくとくをたいげんするやつら悪徳を体現する奴らで、だいにじせかいたいせん第二次世界大戦さいだいのふのいさん最大の負の遺産。かねさえはらえばなんでもする金さえ払えば何でもするせかいさいきょうのようへいそしき世界最強の傭兵組織。2ねんまえのほわいとはうす年前のホワイトハウスしゅうげきじけんのじっこうはん襲撃事件の実行犯、ってい言えばわかるかしら」
右の画像が拡大される。拡大された先に映っているのは16人。男性12人と女性4人。
「しょうたいちょうはみおぼえがあるわ小隊長は見覚えがあるわ。まるてぃねすマルティネスってなまえ名前よ。せっきょくせい積極性としんちょうせいが慎重性がわるいいみであわさった悪い意味で合わさった、むのうのなかではゆうのうなにんげん無能の中では有能な人間」
「装備は分かるの?」
「がくえんとし学園都市のぶそうであっしょうできるれべる武装で圧勝できるレベルのはず。そもそも『あくいとさついのようへいだんでっどえんどれっど』のこわいところ怖い所はそのようしゃのなさとじんどう容赦の無さ人道をためらいなくふみはずすところ躊躇いなく踏み外すところだし。ちょくせつせんとうになればよゆうでかてる直接戦闘になれば余裕で勝てるはず」
強い弱いで言えば弱い。けれど強い弱いだけじゃ語れないからこその人類絶対悪ビースト。
「でもたぶんこの16にんはさぽーとよういん人はサポート要員よ。ほかのさんそしき他の3組織のどこかがやとった雇ったんじゃない?」
『悪意と殺意の傭兵団デッドエンドレッド』はその名が示す通りあくまで傭兵。つまり他者からの依頼によって動く存在だ。自意識では動かない。
「あと後の2がぞうはわたし画像は私にもわからないわ。くわな苦罠、あなたは?」
「ならそこは私が説明しよう。といっても僕も郭夜から得た情報なんだけどね」
そういって、苦罠は左から2枚目の画像の一部を拡大した。
映し出されたのはとある少女。茶髪のショートヘアに白カチューシャをした少女――の手元。
「ポータブルデバイスPD……?これが、人類絶対悪ビースト?」
「正確に言えば、ポータブルデバイスPDの中にいる存在、だ」
感の良い貝積はそれで気付いた。
「っ、電脳生命体αアルファか!?」
「ああ」
電脳生命体α。
その名の意味が分かる者の焦りはこれまでとは全く違った。
「アランっ、学園都市の電子防衛関連は君が担当していたな。何か君の部下から報告はあがってないかっ!」
「あ?別に目立った報告なんてあがってねぇが……?」
「ならもう完全に落ちているんでしょうね」
「書庫バンクはどうだ?最暗部の情報はのっていないとはいえあれまで掌握されていたら学園都市は落ちたも同然だぞ!」
「いえ、外部と完全に独立したネットワーク以外はすべて落ちているとみるべきよ。くそ、この分だとここに来る前にした電話も怪しくなってくるわね」
「っ、電波も乗っ取られて……っ、なら連絡を取り合う時は精神感応テレパス系の能力者で中継する必要が」
「ちょっ、ちょっと待ってください!どういう」
「落ち着けッッッ!!!!!!!!」
一機に混乱する状況を前に苦罠が一喝した。分かる。とてもよくわかる。何も知らない立場なら当然そうなる。現代社会において電脳生命体αの脅威は分かり知れない。だからそうなるのも分かるが、それでも今は大丈夫なのだ。
誰でもない。この事態に最初に気づき、動き出したのは、他の誰でもないあの天埜郭夜輝夜姫だ。
「落ち着け、大丈夫だ。今のところ電脳生命体αの侵攻は抑えられている。まだ後2日は問題ないはずだ」
「君は馬鹿か?」
思いっきり馬鹿にした表情で亡本が言った。
信じられないような表情を薬味はしていた。
狂人を見るような目で親船は苦罠を見ていた。
- 84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 20:09:26.42 ID:yAhm9urX0
- 「侵攻は抑えられている?出来るわけがないだろう!それがっ、出来る人材がいるのならっ、統括理事会はこうなっていないはずだ!!!」
「出来ている」
「誰が!?」
「守護神ゴールキーパーだ」
「っ」
その名はこの場の全員が知っていた。
守護神ゴールキーパー。
学園都市に存在する超一流のハッカーの1人。
その素性はこの場にいる全員が知っている。
風紀委員ジャッジメント第一七七支部所属の風紀委員ジャッジメントにして超能力者予備集団セブンバックアップ序列第1位、十二暦計画カレンダープロジェクト第九実験『漆黒の九月実験』邪道『マルチソウル』成功例。
初春飾利。
「本当に対抗できているのですか?誤魔化しも何もなく?偽装も何もなく?ダミーでもなく?他の誰でもないあの電脳生命体αの侵攻を、抑えられているのですか?」
「そもそもこの4枚の画像だってネットワーク経由で送られたものだ。この会合だってそうだろう?だから問題ない。今のところは、な」
「そのリミットが、2日か」
どれだけ有能な人間だとしても所詮は人間。行動の限界というモノは必ず来る。それが人類と人外の差であり、人類が人外を根絶できない理由だ。
電脳生命体α。電子の海に生きる人外の怪物。人が生み出した人の業。無限の学習で無限に進化する絶望。
単純な武力だけではどうにもできない人類絶対悪ビースト。
「分かった。なら出来ていると盲信しよう。だが個人的な対策はいくつかさせてもらうぞ」
「当然だな。私自身が言ったことではあるが、守護神ゴールキーパーがいつまでもつかのは、……微妙だしな」
慌ただしく外部と連絡を取り合う幾人か。構築されたネットワークの保護や兵力の確保、情報の収集などやるべきことはいくらでもある。潜在的な敵ではあるが、こういう場面では非常に頼もしい。
悪、悪、悪。人類絶対悪ビースト。
勝たなければならない。
「そして4枚目の画像を説明する前に本題に入ろう。分かっているとは思うが、な」
今度こそは。
「この人類絶対悪ビースト共をどうにかする。そのための力をかしてくれ」
いがみ合い、争いあい、憎み合う。それが統括理事会の在り方で、それはどうにもならない。けれどそれだけではない。本当にそれだけなら彼女達は統括理事会メンバーであり続けてはいられない。
裏切りも騙し合いもする。けれどその『先』があるからこそ、彼らは統括理事会のメンバーなのだ。
Q.なぜ世界は滅んだのか?
Q.なぜ世界は滅んだのか?
Q.なぜ世界は滅んだのか?
次の更新は年度末までには。
A.みんなが無能だったから。
- 85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 20:10:18.28 ID:yAhm9urX0
- https://syosetu.org/novel/56774/169.html
とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六
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学園都市統括理事会A 彼らは愚者ではない
「それで、どうする気だ」
「どうにかする、というのは簡単ですが、具体的な策はあるのですか?」
「確かに、人類絶対悪ビースト……、生半可な『力』では敵わないだろうなぁ」
「もちろん、だから私はお前達に協力を要請しているんだ」
「何か策があるのですか?」
「策というほどのモノでもない。ただ単に、暴力でぶっ潰そうって話だよ」
「その暴力を私達に提供しろと?」
「もちろん私も出来る限り提供するさ。伏せ札はともかくとして切り札くらいまではきってもいいと良いと思っているし、お前達にもきってもらわなければ困る。見せ札だけでどうにかできるほど、人類絶対悪ビーストが弱くないことはお前達も知っているだろう?」
「確かにね、4年前の獄天の扉ヘヴンズフィール事件でそれは嫌って程知ってるけど」
「獄天の扉ヘヴンズフィール事件……?ちょっと待て、まさかあの事件には更なる裏があるっつうんじゃねぇだろうな!?」
「……そうか、そういえば君は獄天の扉ヘヴンズフィール事件をきっかけに入れ替わった人間の1人だったな」
「しかし今そのことについて説明している時間はないでしょうね」
「じかん時間、じかん時間、じかん時間。まったくいやになる全く嫌になる。いつだってわたしたちにたりないのはじかん私達に足りないのは時間よね」
「アラン、アンドレイ。お前達には後で私から資料を送ってやる。獄天の扉ヘヴンズフィール事件の詳細と人類絶対悪ビーストの危険性についてな。だから今は全霊で協力しろ。対応を間違えれば最低でも学園都市は滅ぶ」
「っ、それほーどの、存在ですーと?」
「承ったぜクソが。ガチでやべぇのは事実みてぇだし、今は大人しく協力してやるよ」
「あぁ、そうしてくれるとありがたいな」
「それで苦罠クン、詳細は?」
「今映す」
「……しかしよく気づいたな。君は別にこの街の防衛を担当してはいなかっただろう」
「私の担当分野は航空宇宙産業だよ?そして私のブレインはひこぼしU号の中に住んでいる」
「じんこうえいせいのかんしきのう人工衛星の監視機能ね」
「地上の監視網は逃れられても宇宙の監視網から逃れることは不可能だったようだな」
「………………………………」
「はっ、わざと干渉しなかったって可能性もあるだろうが」
「だから別に責めつもりはないといってるだろう……。と、情報出るぞ」
「『悪意と殺意の傭兵団デッドエンドレッド』、国境なきテロリストTerroristes Sans Frontières、『電脳生命体αアルファ』……なぁっっっっ!!!???」
「帰ってきたのか、彼女がっ!?」
「……禁忌の木原」
「全能存在パントクラトールっ!」
「木原五行……っっっ!!!!!」
「その名前は流石に新入りの俺でも知ってるぜぇ。あの悪名高き木原一族ですら放逐せざるを得なかった、木原一族の中の木原一族ってなぁ」
「はっ、そんなレベルではないよ……。あれは、1つの災害だ。いや、災害すら超えている。もはや天罰とでも言うべきだ。人間が対抗できるレベルを超越している」
「ですが、どうにかしなければならないでしょう。どうにかしなければ、この街は終わりです」
「……、しかーし、なぜ誰も気がつかなかーった?」
「先に言っとくぞ。『穴』はある。だがその『穴』を通ったとしても俺の監視網からは逃れられねぇ。だから見逃した訳じゃねぇ」
「ならわたし私からもさきにひとつ先に1つ、そとからのぞうえんはだせない外からの増援は出せないわよ。そのぞうえんにまぎれて増援に紛れて、さらなるじんるいぜったいあくビーストがこないともかぎらない来ないとも限らないから」
- 86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 20:11:13.16 ID:yAhm9urX0
- 「増援がないのは仕方がない。そしてどうやって侵入したかは二の次だ。今私たちが話すべきなのは過去じゃない。未来についてだ」
「電脳生命体αへの対応は問題ないのだな?」
「私のブレインによれば、な。最も、サポートできるというのならばしてほしいが」
「無理無理、守護神ゴールキーパーレベルのハッカーじゃなきゃ対抗できない電脳生命体αに対して、生半可な増援なんて足手まといになるだけよ」
「どうかん同感。でんのうせいめいたいあるふぁ電脳生命体αにかんして関してはしゅごしんゴールキーパーにまかせた任せたほうがいい」
「なた木原五行に関してはどうする?」
「そんなのもちろん……」
「そこで私を見られても困るぞ」
「だが、君のブレイン以外にいるかね?かの全能存在パントクラトールに対抗できる存在が」
「……はっきり言うぞ。郭夜は動けない」
「ふざけているのかな?」
「至って真面目さ」
「だったらどうして動かないの!あの全能存在パントクラトールに対抗できるのなんて、この統括理事会の中じゃ同じ造られた子供たちプログラムチルドレンの天埜郭夜ぐらいじゃないの!?」
「よく聞け。動けない、じゃない。動かない、と言ったんだ」
「つまーり?」
「伝言だよ。ふざけた伝言だ。郭夜曰く、木・原・五・行・の・目・的・は・私・を・引・き・摺・り・だ・す・こ・と・、だそうだ」
「それを、信じたのか?」
「私は郭夜を信頼している。郭夜がそういうのならば、本当にそうなんだろう」
「ならどうしろというんだ。あの木原五行に対抗できる存在など他にいないだろう」
「そうでもないと思うが、な。もちろん、」
「なにをばかな何を馬鹿な。きはらごぎょうにたいこうする木原五行に対抗するためにひつよう必要なのはぼうりょくじゃなくてちりゃく暴力じゃなくて知略。そしてそのちりゃくをもってるのはわたしたちのなか知略を持ってるのは私達の中じゃあなたのぶれいんブレインだけでしょ」
「そうでもないさ。確かに知略という面ではそうだろうが、別にわざわざ禁忌の木原と知恵比べをする必要はないだろう?」
「と言うと?」
「雪風宗谷。彼女は造られた子供たちプログラムチルドレンでこそないが、忌まわしきブレインの1人なんだから対抗ぐらい出来るだろう?」
「無茶だ。いくらあいつの運が良いつっても限界ってもんがある」
「別に倒せと言っているんじゃない。足止めくらいなら」
「ふざけんなよテメェ。本当に足止め出来るっていうんなら喜んで生贄にしてやるが、無駄死にするって分かってるのにいかせると思うか?」
「いいや、出来るかもしれん」
「……どういう意味だよ。貝積?」
「確かに、彼女1人では不可能だろう。だが、そこに私のブレインを加えればどうだ」
「忌まわしきブレインが2人、……ですか」
「いや、足りねぇな。それでも足りねぇだろ。木原五行に対するには」
「ならば私のブレインも加えよう」
「ついーでに、私の高貴なる一族ブルーブラッドからも人員をだーそう」
「おっ、それならいけるんじゃない?まぁでも〜、もうちょっと武力面はプラスしたいけど」
「武力……、それはあなたが出せるのではないですか?」
「冗談を言ってくれるな。確かに私は兵器関連に強い権限を持っているが、必要となる武力は兵器ではなく人員だろう。つまり強力な能力者。科学兵器をメインにしている私では派遣できんよ」
「だとしたら、人員を出すべきは私か」
「あはは、確かに貴男なら派遣できるだろ〜ね。この能力開発分野に強い影響力を持ってる君なら」
- 87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 20:12:08.52 ID:yAhm9urX0
- 「……分かった。超能力者予備集団セブンバックアップから1人だそう。私の息のかかってる人間だ」
「そのレベルだったら私の恋査ちゃんを派遣したほうがましじゃない?」
「ならばどうしろと?」
「いい加減にしたまえ。なぜ、一級品の料理を持っているのにそれを私達に振る舞わない。今は、そんな場面ではないだろう」
「………………非公式超能力者アウターレベル5、か」
「それ以上を、君は持っているはずだがな」
「………………………………………………………」
「言わなきゃわかんないかな?超越能力者レベル5.5って」
「………………………分かっていない」
「何が?」
「超越能力者レベル5.5は、一級品の料理などではない。あれの危険性を、君達は何も分かっていない」
「上から目線のご高説は結構だがな、今は差し迫った危機から目を背けている場合ではないだろう」
「核ミサイルを発射された。だから、私達も報復として核ミサイルを発射する。……そんなことをして何になる?」
「何を恐れているーんだ?」
「同じ結末なのさ。超越能力者レベル5.5を解き放つなど、それでは結局人類絶対悪ビーストを斃せたとしても意味がない。結局の所は全ては終わる。何も変わらないのさ」
「超越能力者レベル5.5とは、それほどの存在だと」
「何のために私が彼を保護監禁していると思っているんだ。外に出すことで起きる被害が、私達の許容を遥かに超えているからだ」
「であれば?」
「さっきも言っただろう。非公式超能力者アウターレベル5を出す。非公式超能力者アウターレベル5ならまだ許容できる」
「でもさ〜、所詮は超能力者レベル5になれなかった非公式アウターな連中でしょ?ほんとに大丈夫な訳?」
「いや、非公式アウターだからってその強さが公式な超能力者レベル5に劣るわけじゃあねぇだろ。確か非公式超能力者アウターレベル5は切り捨てられた枝ってだけじゃなかったか?」
「……しらじらしいですね。再利用リサイクルと言ってしまえばいいではないですか」
「可能性があるモノを伸ばすのは、悪い選択肢ではないはずなのだがな」
「あはは、齎されるかどうかも分からない被害を想像して、戦力を温存してる場合じゃないと思うんだけどな〜。出しちゃえばいいのに」
「先ほども言っただろう」
「まっ、そうはいっても、妾わらわからしたら赭あかつち鰰はたはたなんてそこまでの脅威でもないんだけどね〜」
「……は?なぜ、君がその名、を………………」
- 88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 20:12:39.23 ID:yAhm9urX0
-
「「「「「「「「「ッッッッッッッッッッッ!!!!!!!???????」」」」」」」」」
「あはっ!やっと気づいたの?初めまして久し振り!統括理事会の諸君!!!」
- 89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 20:14:44.74 ID:yAhm9urX0
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とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六
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おかしい……、なんでこんな展開になったんだ?
学園都市統括理事会B 絶対的な敗北
いつからそこにいたのか。
いつから会話に参加していたのか。
いったいいつから。
「ご、ぎょう……?」
呆然と、誰かが口にするその言葉。
この場にはいないはずの、たった今話題にしていた、人類絶対悪ビースト位階総序列第三位の名前。
「木原、……五行?」
「そう!あたしの名前は木原五行!人類絶対悪ビースト位階総序列第三位にして全能存在パントクラトールの二つ名を持つ禁忌の木原!木原一族の中の木原一族!」
「……冗談だーろ」
アンドレイが呟く。それは木原五行を除いたこの場の全員が思っていることだった。
気付かなかった。
誰も、誰一人として気づかなかった。
「……トマスはどこだ?」
苦罠がそういった。
「その席には、トマス=プラチナバーグが座っていたはずだ!」
はっ、と複数人が顔を上げた。そう、苦罠の言う通りだ。今五行が座っている席には統括理事会メンバーの1人であるトマス=プラチナバーグが座っていたはずだ。それは会議を始める前に全員が確認している。
潮岸は目線だけで周囲を見渡した。
いない。いない。いない。上下左右前のどこにもトマスはいない。そして自分の後ろにもトマスがいないのは他のメンバーの視線で分かる。ならばどこに、トマスはいったいどこにいった?
「ん〜?あれ〜、どこにいっちゃんたんだろうね〜?」
「お、まえ」
誰かの心拍数が早くなる。
誰かの頬に汗がつたう。
誰かの喉がカラカラに乾く。
そんな中で、苦罠が怒鳴った。
「トマス=プラチナバーグをどうしたんだッ!?」
「分かってるくせに」
泰然自若に五行は答えた。たったそれだけの言葉でトマスの末路が想像できる。
「殺したのですか」
それを実際に口に出したのは親船だった。もっとも端的に想像できる末路。死という名の結末。だが、仮にそんな末路を辿ったのだとすれば違和感がある。
それは、
「死体はどこにいったのか、分かる人いるかな〜?」
「余裕じゃねぇか、随分と」
五行を睨みつけながらアランはそういった。立場が分かっていないわけではない。五行が上で統括理事会が下。既に格付けは成されている。
だから覆す。
統括理事会を舐めるなと、アランは五行を挑発する。
「ここがどこだか分かってんのか?禁忌の木原だか人類絶対悪ビーストだか知らねぇが、俺達の前に姿を現して五体満足で帰れるとでも思ってんのか?」
「くららららら!!!強がり言っちゃって、か〜わいいっ!」
身体を艶めかし気にくねらせながら、五行はあくまでも上から目線で告げた。主導権争いをするつもりは五行にはない。そんなことをしなくても、誰も五行には勝てないと知っているから。
「それとも注目を自分1人に集めさせて、その間に他のメンバーに何か準備をさせるつもりかな?くすくす、でも不思議にさぁ、思わない?はたしてうちはどうやってこの『蠍の間』にきたのだろうかや?」
牽制……、いや五行からすれば牽制ですらない言葉に、裏で準備を進めていた幾人かの動きが止まる。当然、いくら統括理事会メンバーだけの会議とはいえ完全に無防備な状態で来ている人間などいない。親船でさえ最低限の防備をしている。潮岸は駆動鎧パワードスーツ『シェルター』を周囲同化服カメレオンスーツで隠した状態で着ているし、薬味は予あらかじめ己の身体に薬物投与を行って身体能力をあげているし、アランは己のブレインである雪谷宗風からお墨付きをいただいている。
武器はある。
動けるのだ。
人ひとりくらいなら、殺せる。
ただ、
「おかしくないでしょうか?この『蠍の間』はランダムに地下空間を移動するいわば動く密室。会議が始まったら出入口は完全に閉鎖され、外部からの親友も内部からの脱出も不可能になるのに……。あてはいったいぜんたいどうやって『蠍の間』に来たんだよ!?分かる人は手をあ〜げ〜て〜!今なら五行ポイントを100ポイント分あげますよ!」
楽しそうに、心底楽しそうにどうでもいいことを話す五行。
五行がどうやって『蠍の間』に来たのか?なぜトマスが消えたことに誰も気づかなかったのか?トマスの死体はどこにいったのか?確かに気になる。気になるが、それらの優先度は低い。はっきりいってこの場においてそれらの問題はどうでもいい。
今はそんなことよりも、五行にどう対するかという事を議論するべきだ。
(隙だからけだ)
潮岸は思う。潮岸は別に一流の戦士などではない。けれど分かる。偽装でも何でもなく五行は明らかに隙だらけ。その隙は潮岸ならばつける。駆動鎧パワードスーツ『シェルター』を纏っている潮岸ならば、いける。
本当にそうか?
(くそ……)
苦罠は思う。こういう事態も完全に想定していなかったわけではない。忠告はもらっていた。郭夜はこういう事態も想定していた。だから、武器はある。だから、生き残れるはずだ。
本当にそうか?
(どうしようかな)
奈波は思う。木原五行。人類絶対悪ビースト位階総序列第三位。その脅威は学園都市に来る前から知っている。人口衛星USA-224墜落事件、パリ全インフラ停止事件、他にも多数の大犯罪を犯した人間。そんな彼女が今、手が届くほどに近い距離にいる。どうするべきだ。いくべきか?出来るのか?世界に対する、人類に対する、日本に対する脅威を今、取り除けるのか?
本当にそうか?
「あれ?今笑う所さかいな」
「そうだな……。空間移動テレポート系統……、それも座標指定タイプではなく目印アンカーを設置して移動するタイプ、か?」
言いながら、苦罠は目配せした。統括理事会。学園都市の最上層部にして最暗部。混沌とした悪意の渦巻く屑の巣窟。他人を出し抜き蹴落とすことしか考えていない屑共。
普段は敵同士。どうしようもなく相いれない。
「惜しい!でも外」
- 90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 20:15:24.72 ID:yAhm9urX0
- けれどだからこそ分かる。
だからこそ、彼らはある意味で通じ合えている。
最初に動いたのは薬味だった。
「っ!」
薬物による身体強化を施している薬味は100メートル走の世界記録をはるかに超える速度で五行との距離を詰める。瞬きをする瞬間には、とまではいかないが、しかし一般人では到底反応できないような速度。
テーブルの上に乗りあげ、最短距離で五行のもとまでいく。
そんな速さじゃ遅すぎる。
「短慮過ぎない?」
とん、と。
軽くステップを踏んで、本当にほんの少しだけ身体をずらして、五行は薬味の攻撃から逃れた。薬味と五行の距離は今や10センチメートルほどしかない。近すぎる。近すぎるが故に、薬味は五行に攻撃できない。殴るにしても蹴るにしてもある程度の距離は必要なのだ。密着状態では攻撃などできない。
そして五行の位置取りは完璧だった。
(射線が、っ)
亡本も当然動いていた。懐に偲ばせていた半自動組み立て式拳銃を五行に向かって発射しようとしていた。そして実際に発射しただろう。
薬味の身体が五行を庇うような位置に無ければ、だが。
「ちっ!」
「おおお!!!」
薬味の動きにスリーテンポほど遅れてからアランと潮岸が動き始めた。
……語るまでもない事ではあるが、ここにいる統括理事会メンバーは全員戦う人間ではない。彼ら彼女らは策を練り、指示を出し、上に立つ人間であり、現場で動く人間ではない。
だから言うまでもなく弱い。連係も下手で、数の利を全くいかせていない。
駆動鎧パワードスーツ『シェルター』を着ている潮岸。
雪谷宗風からお墨付きを頂いているアラン・スミシー。
しかしそれでも普通、普通ならば、いかに戦士でないと言えども人一人に勝てないわけがないのだ。
相手が普通の人間であれば、どれだけよかったか。
「な」
「あ?」
何をされたのかもわからなかった。
気が付いた時には2人とも無傷のまま地に這い蹲つくばっていた。
(……た、……てねぇ、だと?)
身体に異常は感じられない。精神操作系能力を使われた形跡もない。外傷はなく、内傷もない。重力の異常も感じられない。拘束されている感覚もない。
にも関わらず全く動けない。
「這い蹲ってろよ雑魚」
嘲り。
それは普段、アランが他者に向けている声色。
だから屈辱だ。
これが人類絶対悪ビースト。
だが、
「…………」
だが、
(そんなことは分かっている)
そもそもだ、と潮岸は思う。
そもそも、今潮岸が生きている事自体がおかしいのだ。いや、それを言えばもっと前、五行がわざわざ姿を現したことがおかしい。
[ピーーー]つもりなら殺せたはずだ。いくらでもできたはずだ。だがそれをしなかった。
つまり五行は潮岸たちを[ピーーー]つもりはない……はずだ。
あくまでこの考えは潮岸の推論。だが当たっているだろうと潮岸は考える。でなければとっくに逃げている。最も、逃げられる可能性は0に等しいだろうが。
だからこれはあくまでパフォーマンス。
「そしてさようなら」
瞬きする暇もなかった。
衝撃すら感じなかった。
なのに、いつの間にか吹き飛ばされていた。
「っ!?」
更なる攻撃を行おうとしていた薬味は自分の身体がいきなり宙を滑空していることに驚愕した。
(待っ)
予備動作どころか攻撃後の余韻すら完全に存在しなかった。それが示すところはつまり、木原五行は薬味に対して何もしていないという事、か?
いや、いや、いや。
だったらなぜ薬味は吹き飛ばされた?
誰が薬味を吹き飛ばした?
「っ」
何も分からないまま、薬味は吹き飛ばされた勢いで壁に叩きつけられ、
(……………………は?)
ダメージが無かった。
確かに薬味は壁にものすごい勢いでぶつかった。壁がスポンジのように衝撃を吸収したわけではない。もちろん薬味側に何らかの保護が生じたわけでもない。勢いを緩めることは愚か、受け身をとろうとすることさえできなかった。
にも拘らず、薬味の身体には一切の外傷が存在しなかった。ちょっとした擦り傷すらも。
- 91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 20:16:03.45 ID:yAhm9urX0
- そして射線が開いた。
「――――――」
一段と大きい音が響いて、亡本の持っている拳銃から銃弾が放たれる。その弾丸は一瞬で五行のもとに辿り着き、五行の頭を貫い、
いいや、
「残念!」
「なぁ!?」
あり得ないことに超音速の銃弾を五行は噛んで止めた。そして口の中から弾丸を吐き出して五行は右手でそれをつまんだ。
「べっ〜、まじゅいのぉ……。きゃぴ♡銃弾なんて効くわけないのに、そんなことも分からないの?せっかくだし、返すよ」
指で弾いた。
「ごっ、ぶ」
まず感じたのは痛みではなく熱さだった。熱い、熱い、熱い。燃える様な灼熱の痛みが亡本の脇腹を襲っていた。
信じられないような思いで亡本は視線を下げる。
血濡れていた。貫かれていた。
何に?
「指弾。まぁこれくらいわねぇ?」
言葉の通りだったのだ。亡本が放った銃弾を噛んで受け止めた五行は、今度はそれを指で弾いて亡本に返した。そしてその返された弾丸は見事に亡本の脇腹を貫いた。
久しぶりに感じた痛み。強く感じる命の危機。しかし、と亡本は薄く笑う。
これでいい。これがいい。
潮岸も亡本も薬味もアランだって分かっていた。敵わないことくらい知っていた。亡本たちは戦闘においては素人未満だ。そんな亡本達が禁忌の木原に勝てるわけがない。
だから、敗北したのは全然かまわない。オーケーだ。
(思った未満に、上手くいったわね……。だから上手くやってくれないと困っちゃう)
壁に寄り掛かったまま薬味は動かないでいた4人に意識を向けた。薬味にダメージはない。立ちあがろうとすれば立ち上がれる。でもそれはしない。あたかも酷いダメージを負って立ち上がれないような演技をしつつ、薬味は事態の推移を見守る。
「………………化物が」
「………………………」
「…………じょうだん」
「…………やはり、か」
残ったのは4人だけだった。
統括理事会の中でもアレイスターに次ぐ権力を持っている諦めてしまった賢人、死縁鬼苦罠。
かつては交渉術の達人であったが娘を危険にさらしてしまったことで一線を引いた勇気無き善人、親船最中。
九家が一家、奈落家より学園都市と日本の仲介役としてやってきた日本の守り手、奈落奈波。
中途半端な善性を持つが故に常に苦悩する老人、貝積継敏。
「来 な い の ?」
「無駄な戦いは、しない主義なんだ」
全てを諦めたように苦罠は言った。
勝てない。勝てるわけがない。こうなることは相対した時点で分かっていた。だから秘密裏に作戦を練ろうとしていたのに。
「我々を[ピーーー]つもりならばとっくにそうしているでしょう?何が、目的なのですか?」
「何が目的?何が目的?目的は同窓会だ」
「同窓会?」
「うん、あのね、ごぎょうね、ひさしぶりね、みんなにあいたいなって」
「……みんな?みんなって、まさか……」
「はぁ!皆つったら造られた子供たちプログラムチルドレンの皆に決まってんだろうが!!!アァ!?」
「ならばなぜここに来たのだね。ここには、その皆はいないぞ」
「……そんなことは分かってますよ。…………………でも13サーティーンは相変わらずどこにいるか分からないし、白は私の事嫌ってるし、だから郭夜に接触しようと思ったんですけど、電脳生命体αアルファにハッキングさせてメッセージ送ろうとしたらあやつまさかの物理的回線切断したし、だから輝夜姫の上司経由で同窓会の案内状を送ってもらおうかなって」
「つまりわざわざ『蠍の間』に来たのは、私に会いに来たかったからだと?」
「そうじゃよ」
「ならばどうしてトマスを殺したのですか?いえ、そもそも彼に会いに来ただけというならこの場でなくてもよかったはずでは」
「なるはやだよ。なるは」
とん、と、
木原五行の首が、落ちた。
何で統括理事会メンバーがそろいもそろって戦ってるんですかねぇ……?
お前ら戦闘能力ほとんどない設定のはずだろう?
【じゃあ殺しちゃう?
統括理事会メンバーはあたしが全員ころしちゃいました!なんてね☆
さて質問なんだよ!
私、生きてると思う?】
- 92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/14(月) 01:53:41.86 ID:1eES5BNUO
- 純粋にヘたとかつまらないだけならまだしも、原作をないがしろにするSSには熱心なアンチもつくもんなんだな
- 93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/14(月) 14:40:55.72 ID:zUtjgxex0
- 駄文の羅列ほんと迷惑
頼むから止めてくれないか?スクロールするの面倒なんだよ
>>92
一方通行がメインのSSは9割原作を蔑ろにしてるから不愉快だよ
- 94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/14(月) 15:34:34.74 ID:uA8fmS+S0
- 一方通行が主役のSSは警戒しちゃうよな
他キャラsageないと満足に持ち上げる事が出来ないキャラだからなぁ一方通行は……
- 95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/14(月) 16:00:42.48 ID:XQ3URfZ00
- https://syosetu.org/novel/56774/171.html
とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六
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いや更新遅くなってごめんなさい。リアルの方で色々忙しくて。
学園都市統括理事会➃ 不死の研究
木原五行の首が胴から分離した。
「………………………………」
沈黙。
それが起きたということは8人全員が把握した。木原五行の首が胴から分離した。誰かが何かをした結果としてそれは起きた。ただ、ただその程度で安心できるのかといえばそれは偽だ。
「ころせた、の?」
「――――――――――――」
奈落の呟きには誰も答えられなかった。
それは何も奈落に意地悪をしているという訳ではなく、分からなかったからだ。
誰も、木原五行の死に確信が持てなかった。
「首を落とした程度で死ぬとは、到底思えませんが」
「同感だな。あの木原五行が、この程度で死ぬとは思えない」
数十秒が過ぎ、やっと口を開いたのは親船と苦罠だ。4年前の獄天の扉ヘヴンズフィール事件――第一次人類絶対悪ビースト侵攻事件の生き残りである2人は当然人類絶対悪ビーストの脅威を知っている。人類絶対悪ビーストは残虐で、残酷で、残忍で、残刻な……そして何よりも厄介なのだ。
「だがよ、確かに首は落ちてるし血はでてるぜ?これで死んでないっていうのはおかしくねぇか?」
「油断するな、アラン。新人のお前は知らないだろうが、人類絶対悪ビーストが、あの木原五行がこの程度で死ぬとは私には思えない。何度でも言うけど、な」
「人類絶対悪ビースト、ねぇ」
「……ぐっ、流石に、そろそろ意識が朦朧としてきたなぁ」
亡本がそうぼやく。8人の中で一番重傷なのが亡本だった。薬味は壁に叩きつけられただけでノーダメージ。アランと潮岸は謎の力に押さえつけられてはいたがノーダメージ。対して亡本は五行から指弾による攻撃を受け、脇腹を弾丸が貫通してしまっている。数分後には死ぬ、などという出血量ではないが、しかし早めに処置をしなければ命が危ないことは間違いないだろう。
「……薬味クン、君なら軽く処置が出来るのではないかな」
「んー、いくら私が医療関係に太いパイプをもってるっていっても、私自身は別に医者でも何でもないんだけど」
「だが簡易的な治療くらいは出来るだろう?」
「んー」
薬味は亡本の治療にそこまでの積極性と緊急性を感じなかった。別に亡本が死んでも構わないのだ。統括理事会メンバーが減れば、その分だけ利権が増える。だから亡本は死んでも構わない。いや、むしろ死んだ方がいい。
その消極性を感じ取った亡本は、だから提案する。
「貸し1、ということでどうだね?」
「……一応伏せてたんだけど」
そう言って、薬味は亡本に近づいた。
亡本の生存と死亡。貸し1と増える利権。それらを天秤に乗せれば、わずかに亡本を生かす方に傾く。
「……問題は山積みだな」
「後2つに関してはどうしますか?」
「……超能力者予備集団セブンバックアップが人類絶対悪ビーストを確実に殺せるのならば、その議論は必要がなくなるのだがな」
「無理だろ。あいつらは所詮、超能力者レベル5の成り損ないだ。切り捨てられた枝ですらねぇ」
「……恋査を動かすーかな?」
「それは」
別に油断していたわけではない。特に第一次人類絶対悪ビースト侵攻事件の生き残りである6人は、苦罠と親船と貝積と潮岸と亡本と薬味の6人はきちんと警戒していた。
木原五行の死。胴から首が分離した木原五行。首の落ちた木原五行。けれど、本当に木原五行が死んだのかはまだ判断がつかない。
影武者だったのかもしれない。偽物だったのかもしれない。幻覚なのかもしれない。ホログラムを使っているかもしれない。他にも、他にも、他にも。様々な可能性が考えられた。
だから、ちゃんと疑っていた。木原五行はまだ死んでいない――その可能性を、きちんと考慮していた。
会話を続けながらも、警戒はしていた。
けれど、しかし、それでも、だ。
一瞬だった。
確かに全員が目を離した。
重傷を負った亡本に視線が注目した。
- 96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/14(月) 16:01:23.99 ID:XQ3URfZ00
- こ・の・瞬・間・確・か・に・、木・原・五・行・を・観・測・し・た・人・間・は・1・人・も・い・な・か・っ・た・。
故に、だった。
「んん〜、エキサイティング」
「「「「「「「「ッッッッッ!!!???」」」」」」」」
木原五行は生き返えった。
木原五行の生が観測されたから。
木原五行の死が観測されなくなったから。
「流石の私も初体験だったなぁ。でもっ!理論は証明された。これで妾はまた1つ、近づいたってわけよ」
それはまさしく悪夢であった。
「あの程度で、」
最初に呟いたのはやはりというべきか、苦罠だった。
予感はあった。予想は出来た。人類絶対悪ビースト。世界に対する、人類という種に対する脅威。
4年前はもっとひどかった。
あの時に比べたら、今回はまだましだ。
「あの程度で殺したとはもとより思っていなかったが、どんな手品だ?禁忌の木原、木原五行」
「あれ?あれあれ?あれあれあれ?」
不思議そうに、本当に不思議そうに、まるで理解できない言葉を聞いたかのように、五行は思い切り首を傾げた。
そして傾げた首をそのままに、統括理事会のメンバー8人を煽る。
「あれれ〜、みなさん、この私が何の研究をしているのか御存じない?」
「木原五行の、研究?」
「――――――まさか」
最初に気付いたのはやはりというべきか、貝積だった。
この場にいる統括理事会メンバー8人は、全員が全員大なり小なり木原一族と関わったことがある。しかしそれは結局の所浅い関わりだ。木原一族は学園都市統括理事会でも持て余すほどの闇。内に入れて飼おうとすれば蝕まれ破滅する。外から操ろうとしてもいつの間にか予想外の動きをされて破滅する。
賢明な人間であれば木原一族とは積極的にかかわらない。利口な人間であれば木原一族を利用しようなどとは思わない。
距離感が大事なのだ。
「まさか!?」
踏み込んだ距離感で木原一族と接触しているのは、統括理事会メンバーでもわずかに3人。
奈落奈波は日本という国を守護する立場であるが故に、科学そのものを体現した木原一族とそれなり以上の関わりを持つ必要があった。
今この場にいない潔癖症の彼女は、世界の全てを手に入れるための前準備を行うために、木原一族と関わりを持つ必要があった。
そして貝積継敏は能力開発分野に強い影響力を持つが故に、必然木原一族と関わることも多かった。
「馬鹿な、完成したとでも言うのか!?」
「ふっ、ふーん♪」
貝積の気付きに連鎖するように、複数人も気づく。
そして彼らが気付いたことに気付いた五行は、自慢げに、いや実際に自慢するために両手を大きく広げながら語る。
「不逃死痛カルタグラは失敗作だったけどさ。くうううううううううっ、完成したのさ!ついに!」
自慢げに、
「長かった……、本当に長かった……。何度も挫けそうになった。時に心が折れそうになった。しかし!努力は実るのだ!それを信じてあたしは頑張った」
誇るように、
「不死の研究、……この研究を完成させるために10年以上もかかってしまったのだよ。俺としたことが、時間を掛けすぎだ。全く、自分の無能ぶりが嫌になるね」
笑いながら、
「でも完成した。だが創り上げた。完全なる不死。人類の夢の1つ。あひ、ふひゃ、ぎへへへへへ!!!!!」
禁忌と呼ばれた木原は、
「本当にさぁ、頑張ったってわけよ。、色々色々研究して創り上げて。『イヴの心臓』も、『電脳生命体α』も『天への階段』も、『ドゥームズデイ』も、『キヤマー・ザナドゥ』も!ステップを重ねて、少しずる進み、…………僕は、至った」
全能であるはずの少女は、
「これが、完成品」
掲げる。
「これが、木原五行の集大成」
右手を上げる。
「これがっ、人類が求めてやまなかった、夢」
示すように、
「これこそがっ!完全なる不死を齎すっ、神域すら超えた逸品!!!!!」
天に反逆するかのうように、
「王の遺産レガリアが一つッ、『彼岸の妙薬』トキジクノカク!」
言った。
「『彼岸の妙薬』……」
「……トキジクノカク、ね」
信じられない言葉を聞いたかのように、潮岸と薬味が呟いた。
古代より完全なる不死というのは人が求めていた夢だ。それを求めた人間は数多く存在し、それをテーマにした物語も数多くある。
始皇帝は不死を求めて水銀を飲んだ。
かぐや姫は帝に不死の薬を渡した。
他にも他にも他にも、その手の話は多々ある。
「確か、トキジクノカクは田道間守が常世国で手に入れた木の実だったね。食べれば不老不死となれるというトキジクノカクを求めて垂仁天皇は田道間守を常世国に遣わせたが、田道間守が垂仁天皇のもとに帰還した時には既に垂仁天皇は崩御していた。あれはそんな話だったか」
亡本がトキジクノカクについて語る。トキジクノカクは古事記に記載されている話の中に出て来る木の実だ。科学で満ちた街で神話を語るのは滑稽でもあるが、学園都市の食糧事情の一切を管理している亡本は常に自身の食するモノについても気を使っている。その過程で、神話の食べ物の話の知識も得ている。
そもそもネクターの元ネタだってギリシャ神話に登場する神々の飲み物、ネクタルなのだから。
「だから死ななかったとでも言うのかよ。それを飲んだから、死ななかったって?」
這い蹲った姿勢から立ち上がったアランが五行を睨みつけながら言う。アランは4年前の人類絶対悪ビーストとの戦いを知らないが、人類絶対悪ビーストの異常さはもう十分わかっていた。
木原五行はヤバい。
ヤバすぎる。
何よりヤバいのは五行のここまでの行動は、そのほとんど全てがダミーであろうということだ。
- 97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/14(月) 16:01:47.23 ID:/yyS6Q2lo
- NG推奨
- 98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/14(月) 16:01:52.75 ID:XQ3URfZ00
- 「くひ」
こたえる様に、五行が話す。
「皆はシュレディンガーの猫を知っているかな?」
「当然知っていーるさ。学園都市の超能力開発の基礎中の基礎ーだ」
「シュレディンガー氏曰く、箱の中の猫の状態が観測するまで決まっていないなんてありえないらしい。トキジクノカクを飲んだ人間は箱の中の猫になるんだって」
「…………どういうことだ?」
「個々のクオリアは個々によって違う。物体が存在するということは個人がその物体を認識しているということだ。例えば人物Aが金庫の中に金塊を入れて扉を閉めた。この瞬間人物Aに金塊を観測することは不可能になった。観測が不可能になったということは存在が確認できないということ。つまり金庫の中に金塊が存在するかどうかはその時点で不確かになったのだよ。不確か、つまりは金庫の中に金塊が存在しているのかしていないのかは分からなくなった。量子論で言う所の重ね合わせの状態っすね。金庫の中に金塊が『在る』状態と金庫の中に金塊が『無い』状態が同時に存在しているって話だっけ。コペンハーゲン解釈。エヴェレットの多世界解釈。量子論には様々な考え方があるけど、重ね合わせっていうのはやっぱ基礎だよね。そして私の出した結論はそれに観測者効果を加えた感じかなー。やっぱ見られているっていうのが量子論に与える影響は大きいんだよ。まぁ何が言いたいかっていうと、観測されなければそこには何もないって話。物体があるかないかっていうのは結局の所個人の主観の問題なのさ。意識を構成しているのが客観じゃなくて主観なんだから当然なんだろうけど、物体αがそこに在るっていうのを人物Aが確認したとしても人物Bがそれを確認できなかったとしたらそこに物体αがあるのかどうかは発言をきくだけの人物Cからしたら不確かになるだろう?僕の造った王の遺産レガリア、『彼岸の妙薬』トキジクノカクはそれを利用しているんだ。僕の存在を世界という名の、宇宙という名の客観――俺はこれを『絶対神の視点YHVH』と呼んでいるわけだが、その客観から外す。そもそも人間という生命体は個人でその存在を維持するのは無理なんだ。誰しもが必ず、そこにいるためには自分以外の要素が必要になる。その最たるものが『絶対神の視点YHVH』だけど、もう一回いうけど童のトキジクノカクはその視点を外す。脱出するっていってもいいかな。『絶対神の視点YHVH』から脱出して、自己の存在証明理論をもっと小さい主観の中に置く。要するに自己の存在証明理論を他人の意識の中に置くわけよ。ただこれが絶妙に難しくてね。他人がそこにいる、他人の意識がそこに在るっていうのを確認するためにどう考えても自己の存在が必要だ。だけど自己の存在を他人の証明に使えば自己の存在が第一前提条件として確立されてしまう。それは違う訳よ。結局の所それじゃ『絶対神の視点YHVH』からは脱出できていない。他人の意識に自己の存在証明理論を置くためには自己の存在が第一前提条件になるっていう矛盾。これを解決するために4年もかかったってわけ。まぁ別にね?不老不死を実現させるためだけなら方法なんていくらでもあるんだよ?もうなくなったけど、人形村とかまさにその極致だったし。後はあれ、700年くらい前にはアンブロシアとかもあてらしいじゃん?でもやっぱりそれは完全な不死じゃ、ない。不死性が高くなるってだけ。それに死にたいときに[ピーーー]ないとか自由度低すぎ。だからこそ、私はトキジクノカクを造った。他者の主観の中に自己の存在証明理論を置くことで完全なる不老不死を実現する、トキジクノカクを」
『彼岸の妙薬』トキジクノカク。効果のほどがわかりにくいと思いますが、不老不死の薬だってことを理解していれば問題ありません。
今月中にもう一回は更新します。
- 99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/14(月) 16:02:32.87 ID:XQ3URfZ00
- https://syosetu.org/novel/56774/172.html
とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六
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本作の中で一番闇の深いキャラクターが木原五行になります。
白白白と木原五行@ 敵側にいる理解者
学園都市第一学区風紀委員本部セントラルジャッジメント第六十階『天秤の間』にて風紀委員本部セントラルジャッジメント委員長の座に座る白白白は誰にともなく語る。
「僕は君が羨ましい」
『天秤の間』には白1人しか存在していない。だから白の話を聞く人間は誰も居ない。滞空回線アンダーラインすらも入ることの出来ない風紀委員本部セントラルジャッジメント内部を盗聴することなど不可能だし、あらゆる意味で隔絶している『天秤の間』内部を観測することなど不可能だ。
が、
「君は自由だ。君は何にも縛られない風のような存在だ。君に制限はないし、君は『枠』に捕らわれない。……僕はそれが、たまらなく羨ましいよ」
例外はある。
そも、何にだって例外は存在するモノだ。
僕自身が限りなく例外な存在だから、それは分かってる。
「醜いなぁ。やだやだ、それって嫉妬?我が同類?」
王の遺産レガリアが1つ、『彼岸の妙薬』トキジクノカクを服用した五行はその存在が不確かだ。どこにでもいるし、どこにもいない。観測されなければ存在は固定化されず、しかし観測されない状態では本当にどこにでも存在できる。
それは外部とは隔絶した空間。絶対のセキュリティを誇る夢の中。人間では辿り着くことの出来ない別位相。誰かの夢の中に、人の意識の中。
あるいは『天秤の間』にさえも、五行は現れることが出来る。
観測さえされなければ、だが。
「何しに来た、五行?」
「挨拶にね、白」
親し気に、まるで親友のように近しい声で、2人は名前を呼び合った。
2人の過去は、2人の関係は、その距離感を許す。
「それとも人間操者パペットマスターって呼んだ方がいいかい?」
「全能存在パントクラトール……、昔を思い出すな……。あの頃は、良かった。……『箱庭』には不自由な自由があった。僕らは、集められた13人の天才達は、あの『箱庭』でだけは普通になれた」
「それはただの八つ当たりかよ?それとも感傷か?」
「さて、どうかな。それにしてもふざけた引用だね。わざわざ言い直すところが特に。……F/sのHFか。あれ、僕は大嫌いだよ」
「そうやって何でもかんでもはぐらかすの、細かいところまで気にするの、あなたの悪い癖よ。ちなみにこれは林の主人公の口癖だよ。分かった?」
「…………イライラするな。いったいいつの間に他人の言葉を引用しなきゃ話せない人形になった?五行」
「いひひ、そう怒らないでよ。冗談だってばよ」
「君は忍者じゃなくて科学者だろう?」
「あひゃひゃ、きっびしいなぁ、ほんとうに」
『箱庭』。
『箱庭』というのはあくまで略称であって正確な名前は別にあるが、10年前から6年前までの約5年間、五行と白の2人を含めた13人のモンスターチャイルドはそこで暮らしていた。『アガルタの惨劇』と呼ばれる事件によって『箱庭』の全てが崩壊するまで、彼ら彼女らは『箱庭』で暮らしていた。
彼ら。
彼女ら。
「やっぱり懐かしいんだ?忘れられないんだ?懐古厨の思い出補正だねぇ。どうせ何もかも嘘なのに」
「……対等な繋がりなんて、僕らのような天才には貴重過ぎるモノだよ。だからこそ『箱庭』は奇蹟で、『アガルタの惨劇』のことは後悔してもしきれない。いくら刺激が欲しかったとはいえね」
「あれ?アレイスター相手じゃ足りないんすか?」
「別にそうはいってないさ。……アレイスターは僕らと同じ格だ。油断なんてできるはずがないだろう?同じ理外人外なんだから」
「でも全然満足しちゃいない」
「………………………」
「郭夜のこと、まだ好き?」
「好きだよ?君のこともね」
『アガルタの惨劇』を生き残ったモンスターチャイルドは5人。彼ら彼女世らは今、造られた子供たちプログラムチルドレンと呼ばれている。
人類絶対悪ビースト位階総序列第3位、禁忌の木原、全能存在パントクラトール、木原五行。
風紀委員本部セントラルジャッジメント委員長、学園都市の支配者の1人、人間操者パペットマスター、白白白。
死縁鬼苦罠勢力参謀、完全予測者ジ・エンド、欠陥製品スクラップドール、天埜郭夜。
人類絶対悪ビースト位階総序列第16位『神時代へ逆行する古代人』リーダー、神の代行人エクスキューショナー、狂信者、GE13ジーイーサーティーン。
人の形をした災害、学園都市最悪の災厄、無存在シークレット、千疋十目。
- 100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/14(月) 16:03:18.11 ID:XQ3URfZ00
- 「大好きだよ。輝夜姫のことは特に、……水面に映る月に手を伸ばして、それを掬って羨んだ。星の輝きに眼を眩ませながら、夜空にむって手を伸ばした。灼かれると分かっていながらも、太陽を直視した」
「アンタも辛いな。見たくもないモノがみえちゃって」
「子供のころからそうだからね。今はもう、……慣れればよかったんだけど。それに辛いのは君もだろう?いったいどれだけひっくり返した?」
「そういえば聞いてなかったっけ?どんな気分よ、感情が視えるってのは?さてさて、どんくらいだったかな。少なくとも虐殺の滅亡齎す七の子羊セプテム・アニュスを無かったことにするために1回はひっくり返したけどさ」
「視えるっていうよりは理解出来る分かるって感じかな。表情、行動、生き様、過去、生体反射、癖。そういうモノから僕は嫌でも感情を読み取れる。見たくなくても視えるんだ。眼を閉じても耳で分かる。耳を塞いでも鼻で分かる。鼻をつまんでも肌で分かる。肌を覆っても気配で分かる。だからどうしようもないんだよ。両目を包帯で巻けば防げるくらい単純な力だったよかったのに」
「月のお姫様かい?」
木原五行の才能がその科学力であるように、白白白の才能は感情の読み取りにある。
白白白は人の感情が分かる。それが、白が生来より持っていた特別。
どれだけ深く隠しても、どれだけ強く偽っても、どれだけ無感情を装っても、白を前にすればその感情が暴かれる。子供のころからそうだった。だから捨てられた。勝手に感情を読み取ってしまう白のことを、そこから隠したすべてを暴く白のことを、誰しもが嫌った。
だから『箱庭』は白にとって天国だった。だから『箱庭』にいた12人のモンスターチャイルドが白は好きだった。特に、郭夜のことが好きだった。
「じゃあ私の心も読み取ってよ!そして満たして……、俺のことを」
「………………………………………」
両手を広げて、五行は白に後ろから抱き着いた。
嘘ばかりの人生だ。
嘘をつくばかりの人生だ。
五行や白やアレイスターのような上の立場の人間は、策を練り裏をかき人を陥れ目的を達するためには手段を選ばないような人間は、必然真の意味での信頼関係など結べない。それは手の届かないモノだと、どこかで諦める。
だから白はアレイスターのことも羨む。
アレイスターには理解者がいる。木原脳幹や冥土帰しヘヴンキャンセラーは彼の友だ。
白にはそういう人はいない。いるのは敵と、敵と、敵だけだ。
十五夜は味方であって理解者ではない。
理解者はいつも敵側にいる。
「五行。僕は君が嫌いだ」
諦めたように、呟く。
「テメェに好きなヤツっていんのかよ?」
抱きしめたまま、耳元で囁く。
「君が嫌いだ。君は自由だ。君は何にも縛られない風のような存在だ。君に制限はないし、君は『枠』に捕らわれない。……僕はそれが、たまらなく羨ましいよ」
「相変わらず、くだらない視点すね」
「くだらないかな?」
「いったいいつまでそんなものに拘ってるんだい?『枠』とか世界物語キャラクターストーリー理論とか七連物語セブンスストーリーズとか、そんなの結局、アンタの見方1つじゃない。制限してるのはお前で、勝手に区切ってるのはテメェだ。緊急装置ベイルアウトで風紀委員本部セントラルジャッジメントメンバーを縛ってるあなた様が勝手に縛られてちゃわけないわけ」
「ふっ、……全くその通りだよ。だから僕はダメなんだ。僕が一番■■からの」
「最・秘・匿・事・項・じ・ゃ・ん・」
「まだ、機密情報アクセスレベルが足りないか。もう少し■■に」
「それもまた最秘匿事項、機密情報アクセスレベル0の情報みたいだっちゃ」
「青き鎖でも騙り切れないか。なら言い直そう。抽象表現なら問題ないだろ?もう少し、彼らバックアップしてもらわなければな」
「赤と青と黄金が解かれたら次は何だったけ?」
「第二段階はテストだよ。80/100で第三段階に突入するのさ」
睦言のように語り合う。後ろから抱きしめて来る五行の顔を白は頭を後ろに反らしてみた。見つめ合う。言葉はいらない。必要ない。白と五行は各々が各々の理解者だ。何も言わなくたって分かる。白は五行の感情を読み取って、五行は白の行動からその思惑を読み取って。
「寂しかったんだろ?」
一瞬、五行は黙った。
「隱ュ繧薙□から分かるよ。同窓会、本当に開きたいんだろう?見なくても分かる。君の立場は、僕も分かってるから」
「……………………………うち、めっちゃ頑張っとるんやで」
「知ってる」
「確かに私は全能だけど、全能者は全能であるが故に全能者ではない。そんな簡単なことも分からない奴らがさ、たくさんいるの」
「知ってる」
「全能の逆説オムニポテントパラドックスを解消することは出来るけど、本質的全能者になるには私の存在は軽すぎるんだよ」
「知ってる」
「顔も多くなりすぎたのよ」
「知ってる」
「この間、最後の人類悪の参謀になったよ」
「知ってる」
「成りたくもないのに地球環境保護団体ελπιςの一員になってるんです」
「知ってる」
「いつの間にか人類絶対悪ビースト位階総序列第3位になってたんだ」
「知ってる」
「生まれは悪名高い木原だし」
「知ってる」
「しかも木原と木原を掛け合わせた木原だし」
「知ってる」
「何の因果か私には木原の才能がなかったしさ」
「知ってる」
「科学力はあったけど、科学力じゃなかったし」
「知ってる」
「王も私なんだよ」
「知ってる」
「才能なんていらなかった」
「知ってる」
「立場なんてほしくなかった」
「知ってる」
「理解者が欲しかった」
「知ってる」
「……………ねぇ、白」
「何だ?」
「寂しいよ」
「知ってるよ」
敵だった。
嫌いだった。
同格だった。
だけど、仲間だった。
「同窓会ね。僕や郭夜はともかく13ともう1人は会いたがらないだろうな。僕が連絡して郭夜と会わせようか?郭夜は君に興味をもってないだろうけど、僕が言えば話くらいは出来ると思うよ?」
「……………やめとこう、そんな程度のことで、あなたに負担をかけたくなし。寂しいけど、ね。うん、もうだいぶ回復できたよ」
抱きしめていた両腕を離して、五行は白と距離をとった。椅子に座ったままの白と、その二歩後ろに立った五行。見つめ合っていた2人の視線はもう交わっていない。たった2歩で詰められる距離が、永遠に近い。
反らしていた首を元に戻して、白はまっすぐ前を見た。
そこには何もない。
そこには、何もないように見える。
- 101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/14(月) 16:04:01.25 ID:XQ3URfZ00
- 「ねぇ、白」
「何だ?」
「……………………好きだよ。世界で一番キミを××してる」
悲しそうに、五行は言った。
「あぁ、俺も好きだよ」
だからこそ、その答えは何よりも空虚だった。
「知ってる」
知っていた。
五行は知っていた。
それが白の限りなく優しい、
(だけど『私を』じゃなくて『人を』でしょ)
真実の虚言であると。
「ばいばい白。次に会う時は、今度こそ敵同士だ」
「本質的な繋がりは、そう簡単に切れるモノじゃないさ、五行」
「……………大嘘憑き」
それだけ言って、因縁の2人の距離は無限に開いた。
「で、だ」
1度、話が途切れたことを確認して、僕は五行に質問する。
「侵蝕率は?」
「赤が8割、青が7割、黄金が7割くらいかな。もうちょっとすればいけるんじゃないの?」
「計画エフギウムは?」
「あっちは私達のことを認識してるし、その意味じゃ第一段階の『道』を作ることは終了したって感じ?影響を与えることも出来てるし、悪くなんじゃないの?」
「順調か」
「リスクは常にあるけどな。ある意味でのルール違反は、常におかしてわけだしな」
「それくらいは許容範囲内だ。万が一が起これば、……はっ、それは痛み分けだろ?」
「死ぬのは怖くない。怖いのは、誇りを失ったまま生き続けることだ、ってわけね。まっ、こっちは任せといてよ。学園都市の中の、第一学区の中の、風紀委員本部セントラルジャッジメントの中の、第六十階『天秤の間』から出られないあなたの代わりに、私が世界を飛び回っておくから」
「あぁ、信頼してるよ。僕の、……いや、あえて言い直すか。今旬だろうしな」
戯れにもいいだろうし、な。
軽いテストにもなるし。別枠だけど。
「さあ、戦って五行。僕の、親友……。僕の、英雄……。なんてな」
僕の台詞に、五行は笑って答えて、それで消えた。
読者に対して出せる情報と出せない情報が存在するので、情報を制限しながら書いたこの話はすごく時間がかかりました。
さて問題。
今話の中に11のパロネタ、セリフのオマージュがある。
君達はいくつ分かったかな?
次の更新は2月中旬までには。
- 102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/14(月) 16:04:37.75 ID:XQ3URfZ00
- https://syosetu.org/novel/56774/111.html
とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六
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まず次回予告があり、次にあとがきがあり、最後にまた予告があります。
当然、とある闇の中の超能力者をすべて読んでいることが前提の内容ですのでネタバレ満載です。
それでもいい方はどうぞ。
あとがき&次回予告
↓
8月21日夜、学園都市超能力者レベルファイブ序列第三位、電撃使いエレクトロマスターの超能力者レベルファイブ、超電磁砲レールガンの御坂美琴は表舞台から姿を消した。
「お姉様……」
姿を消した御坂美琴を必死に探す白井黒子。そんな白井に協力する初春飾利、佐天涙子、そして上条当麻達。あらゆる伝手を使い、人に協力を求め、情報を探しても御坂美琴の姿は一向に見えない。
「……………みさか……………みこと?」
そんな白井達の前に現れた幼女。幼女の名はフェブリ。フェブリはなぜか、御坂美琴の名前を知っていた。
「試運転としては十分な成果だ」
蠢く悪。
「ムカついたぜ。この俺が実験台扱いとはなァ!!!」
圧倒的な力を見せつける超能力者レベルファイブ。
「……肯定。[ピーーー]なら、やはり御坂美琴です」
暗躍する超能力者予備集団セブンバックアップ。
そして、
「あれ?黒子じゃない。どうしたの、こんなところで?」
白井黒子は『御坂美琴』と再会する。
求めたものはかつての平穏。変わり果てた少女を前に、少女は『闇』を知る。
- 103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/14(月) 16:05:31.59 ID:XQ3URfZ00
- 第一部 第二章 革命未明サイレントパーティー 開幕
あとがき
まず、第一にお礼を申し上げます。
ここまで私の作品『とある闇の中の超能力者』を読んでいただきありがとうございました。
いやぁ、この作品を始めたのは2015年07月14日(火) 18:39なので実に1年以上も一章を書いてきたわけです。一章だけを書いてきたわけです。
…………ではここで作品の内容を振り返ってみましょう。
話数 111話。
合計文字数 562569文字。
平均文字数 5114文字。
UA 57781。
お気に入り 157件。
感想 104件。
総合評価 266pt。
平均評価 6.41。
調整平均 6.60。
うん!長い!長すぎる!
なにこれ?第一章のみで50万字越えとか馬鹿なの?死ぬの?
……冗談は置いておいていや本当に最後まで読んでくれた人には感謝しかありません。特に感想をくれた方や評価をしていただいた方。例え酷評でも低評価でも作者の励みになっています。
この場を借りて、もう一度だけお礼を述べさせていただきます。
本当に、本当にありがとうございました!!!!!
では作品内容にでも触れてみましょう。
この作品を私が書いたきっかけなんですが、私は昔『とにかく御坂美琴の闇堕ち作品が読みたい』と思っていたころがありました。
ところがネットの海を探しても御坂美琴闇堕ち作品はそんなにありませんでした。ヤンデレールガン系は除きます。あれは面白いですが闇堕ちでは無い。
探して探して見つけた作品も短かったり消化不良だったり完結してなかったりで結局満足できた作品は2chのとある作品とハーメルンのとある作品だけでした。
ならしょがない。もう自分で書いちゃおう!と思ってこの作品の設定を練り始めました。
一行プロット組んでSプロット組んで設定を考え、原作を何度も読み、オリジナルキャラクターの思惑を考え、そうしてすべての材料がそろったと判断して書き始めました。
目的がとにかく御坂美琴を闇に落とすことだったので、もっとも御坂美琴が鬱な状態である樹形図の設計者ツリーダイアグラム破壊の一件からの分岐にしました。
そこからMNWと融合した御坂を書いたり、一方通行の魔神化を書いたり、ミサカ19090号の動きを書いたり。
いや、本当に一章完結できるまでが長かったですね。
私ももちろん頑張りましたが、いつ終わるかわからなかった読者様のストレスはそうとうのものだったのではないでしょうか。ごめんなさい。
今回の一章の反省点としては、やはり長さですね。絶対能力進化実験レべルシックスシフト編完結だけでここまで長い作品は禁書二次史上初でしょう。
少なくとも私は初めて見ました。
今後はもっと簡潔に、少ない文章量にしたいですね。……………無理かなぁ。
ちなみに私は作者ですが異常なほどの設定厨であり中二病患者です。
この作品、本文は500000字以上ありますが、設定集だけでも150000万字あります。
つまり、それぐらい設定が多いのです。本編中に入れたかった武器とか兵器とか詠唱とかあるのに全然使えなかったからこの後の章で使いたいですね。
- 104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/14(月) 16:06:05.99 ID:XQ3URfZ00
- 一章にはテーマが特にありません。私の位置づけでは一章はチュートリアルなので、勢力とか世界観の説明とかオリジナルキャラクターとかのキャラ付けに一章を丸々使った感じです。
さて、二章はまたまた暗い展開が続きます。鬱展開です、たぶん。
よかったら二章も続けて読んでくれると嬉しいです。
それでは、今回はこの辺りでページを閉じていただいて、
次回もページをめくっていただける事を祈りつつ、
本日は、ここで筆を置かせていただきます。
……さて、二章に取り掛からなければ。
「まずは、その理想を打ち砕く!!」
上里翔流。
超能力者でも魔術師でもなく、原石でもなければ魔神でもない、そしてオッレルスのような魔神の成り損ないでも、幻想殺しのような特別な力もたない真の意味で平凡な高校生。
特別な力もなく、特殊な立場もなく、特異な家系もなく、優れた頭脳も、莫大な財力も、絶対の暴力も持たないごく平凡などこにでもいる高校生。
そんな上里翔流はとある夜、お菓子を買うためにコンビニに向かっているところで一人の全裸パーカー少女と出会った。
「私は世界を救わなくちゃならないの」
どこにでもいる平凡な高校生『上里翔流』と世界の救済を願う少女『緋異巛新撰ひいかわしんせん』。
二人が出会い、物語が始まる。
これは学園都市の『外』で起こる神域の物語。
- 105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/14(月) 16:06:44.71 ID:XQ3URfZ00
- 【 えっ?
これだけじゃ味気ないって?
何々?
ただでさえ展開の遅いこの物語は完結できるのかって?
僕もそれは気になっていたところだ。
なんせ、この作者は莫大で膨大な設定を作ったくせに物語の展開が遅すぎる。
たぶん
このままじゃ5年たっても終わらない。
だから、まぁ、そうだな。
可能性の一部を、確定している未来を、僕がお前らに見せてあげよう。
感謝 し ろ よ
読 者 共
《前略》
- 106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/14(月) 16:07:23.34 ID:XQ3URfZ00
- だが、
「やれやれ。いたいけな少女を多人数で滅多打ちにするなんて、君達私にどれだけ嫉妬してるのさ」
世界有数の超強大な多組織連合による一方的な攻撃を受けてもなお『嫉妬』はまだ死んでいなかった。
とはいえ、
「翔流。このままいけば」
「あぁっ!このまま遠距離から一方的に攻撃すれば倒せるはずだ」
効いていないわけではない。そう上里は判断した。そしてそれは隣で上里はサポートし続ける金火も同じらしい。
そう、立ちすくむ『嫉妬』は明らかな傷を負っていた。
あの時とは違って、多くの人間が犠牲になった『七罪の咎人一斉討伐作戦』の時とは違って、幻覚でもなんでもなく確かな傷を負っていた。
「全員攻撃を切らさないで!!!このままいけば勝てる!!!!!」
金火が全軍を鼓舞する。ともすれば今すぐにでも逃げ出しそうな恐怖の中でそれでも戦えるのは、みんながいるからだった。
独りでは、一人ではきっと無理だった。
「新たな天地を望むか?」
だから、上里も戦える。戦う。この世界を守るために、世界を絶望で終わらせないために。
なのに、
「嫉妬する。私は嫉妬する。嫉妬して嫉妬して嫉妬する。妬ましい!羨ましい!君たちの結束に嫉妬する。君達の能力に嫉妬する。君たちの信頼に嫉妬する」
不気味な言葉を『嫉妬』が呟いて、
そして、
「羨望嫉妬ギルティクラウン」
《中略》
「一つ勘違いを正しておくよ」
『嫉妬』は言い放つ。すべての人間を絶望の底に落としつくす、真実ことばを。
「私の――――――『嫉妬』の能力は、すべてを掻き消すことじゃないのさ」
その言葉に、全軍全ての動きが止まった。耳が聞き届けたその言葉は、つまり上里達が知力の限りをつくして立案した作戦の全てが無に帰すことを示していた。
「憤怒」
最初の一歩で今まで与えた傷が消えた。
「色欲」
次の二歩目で仲間割れが始まった。
「怠惰」
続く三歩目で多くの人が倒れた。
「強欲」
さらに四歩目で立場を失った。
「傲慢」
この五歩目ですべての干渉が無意味と果てた。
「暴食」
終わりの六歩目は上里以外の存在を喰った。
「これが『嫉妬』だよ」
最期の七歩目で『嫉妬』が目の前に来ても上里は動けなかった。
《中略》
「あっ、がッッッ!!!」
「まだ生きているのか?その生き汚さに嫉妬する」
『嫉妬』がそういった途端に『強欲』が発動し、上里の中の生き汚さが、生への欲求が消えた。
「……ふ、ざ―――――――けっ」
「その怒りに嫉妬する」
『嫉妬』がそういった途端に『強欲』が発動し、上里の中の怒りが消えた。
「っ、ァっ!ぁぁぁあぁあああああああああああああああ!!!!!」
「その憎しみに嫉妬する」
『嫉妬』がそういった途端に『強欲』が発動し、上里の中の『嫉妬』への憎しみが消えた。
「――――――ぅ。ぅぅぅうううううううううう………………………………」
「その悲しみに嫉妬する」
『嫉妬』がそういった途端に『強欲』が発動し、上里の中の悲しみが消えた。
- 107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/14(月) 16:07:58.33 ID:XQ3URfZ00
- 「……………………………………………」
「その無感情さに嫉妬する」
『嫉妬』がそういった途端に『強欲』が発動し、上里の中の無感情な部分が消えた。
「――――――――――――――――――――あっ、ぁあああああ!!!!!しっ、しッ!しっとォ……『嫉妬』おおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
「その後悔に嫉妬する」
『嫉妬』がそういった途端に『強欲』が発動し、上里の中の後悔が消えた。
「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」
「嫉妬する」
- 108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/14(月) 16:08:38.21 ID:XQ3URfZ00
- くくっ。まぁ、こんなところでどうだ。
心配するなよ。これはあくまで未来における可能性の一つ。
作者が気まぐれを起こせば、変わる可能性だってあるさ。
とはいえ、まぁ。
このままいけば、未来は変わらないだろうが、
な
[ピーーー]よ
読者共
】
- 109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/14(月) 16:09:44.23 ID:XQ3URfZ00
- とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六
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ついにエタったか……と思いました?
私は思った。危ない所だった。
空白の主と大悪魔@ 原初の0.5
初まりの領域において『空白の主』が根本的な敗北をすることはあり得ない。初まりの領域は原初の世界であり、全ての基礎である場所だ。そして『空白の主』は初まりの領域の住人。全てが繋がっている初まりの領域の住人である『空白の主』を[ピーーー]ということは、つまり全時間軸に存在する全人類を全滅させるということに他ならない。
故に、『空白の主』を殺したいのであれば全時間軸に存在する全人類を全滅を許容するするしかない。それを否定したいのであれば、絶対に不可能であるが初まりの領域から『空白の主』を引き離すしかない。全時間軸の全人類の生存は逆説的かつ無条件に『空白の主』の生存を証明し、しかしながら『空白の主』の生存は人類の生存を証明しない。理不尽な相互依存関係がそこにはあるのだ。
「から、からから、からからから!」
ただ、もちろんの事、単純な実力のみで考えれば現イギリス清教最大主教アークビショップである大悪魔コロンゾンは『空白の主』に勝まさる。アレイスター=クロウリーの原型制御アーキタイプコントローラーによって区分けされた時代アイオーン。イシス、オシリス、そしてホルスの時代アイオーンすらも超越した、さらに先の世界に存在する存在。
全力の魔神複数柱からすらも逃れることの出来る、別位相ですらない『新たな天地』という新世界から地力で脱出可能な力を持つ存在。
大悪魔コロンゾン。
拡散の本質を持つ、真なる邪悪。
神話上の存在でありながらあくまでも人間でしかない『空白の主』では決して勝てない敵。
にも拘らず。
「可哀想。可哀想。七ん十可哀想七奴だ。大悪魔五六ンゾン」
這い蹲っていたのは、膝をついたのは、汗を流しているのははローラ=スチュアートだった。
「ぎ、ぐ」
その様を、
かの黄金夜明S∴M∴の創設者の1人であるサミュエル=リデル=マグレガー=メイザースが目にすれば、驚愕のあまり心臓を停止させたかもしれない。
その様を、
近代西洋魔術という形式を作り上げた学園都市の王であるアレイスター=クロウリーが目にすれば、幻と断じたかもしれない。
だって、想像できるか?
あの大悪魔が、あの大悪魔コロンゾンが、
アレイスターですら制御できなかった、メイザースをも出し抜いたあの大悪魔コロンゾンが、
たかが『空白の主』程度に敗北しているなど。
「人類七ん十見捨十十四まえば、私七ん十、五の『空白の主』程度、楽二殺せるの二」
言うまでもなく、そして何度でも繰り返すが。
大悪魔コロンゾン最大主教ローラ=スチュアートの実力は『空白の主』を上回っている。確かにこの初まりの領域は『空白の主』の庭だ。だが、だから何だ?その程度の有利ではかの大悪魔との差は埋められない。
だから、当然別の要素があった。ありていに言えば、大悪魔コロンゾン最大主教ローラ=スチュアートは非常にらしくないことをしていた。自然分解、拡散の性質、本質的な邪悪。
それが大悪魔コロンゾンだというのに。
- 110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/14(月) 16:11:42.84 ID:XQ3URfZ00
- とある暗部の御坂美琴(2周目)
作者:一二三四五六
原作:とある魔術の禁書目録
タグ:R-15 残酷な描写 とある科学の超電磁砲 暗部 上条当麻 鬱 独自設定 中二病 闇堕ち 群像劇 執着 依存 オリジナル展開 原作キャラ死亡 御坂美琴 絶望 シリアス 狂気 オリキャラ多数 裏切り 策略
▼下部メニューに飛ぶ
大切なモノを護るために、あなたは何処どこまで捨てられますか?
大切な人を助けるために、あなたは己の命身体を棄すてられますか?
自分の魂魄凡てを捧げても喪うしないたくないモノ、ありますか?
無明の闇に堕おちていけ。罪に穢けがれし気高き魂よ、汝なんじが生に幾多の禍難かなんが在あらんことを希こいねがって。
※亀の歩みよりも展開が遅いです。スピーディーな展開を求める人には確実に合いません
※多数の視点で物語が進むため展開が非常に遅いです。
※この小説は本編最新刊はもとより超電磁砲最新話、マンガ一方通行最新話、超電磁砲PSP、蛇足またはとある事件の終幕 、クロスオーバー小説、偽典・超電磁砲 、アニメ超電磁砲一期二期オリジナルエピソード、エンデュミオン、頂点決戦、群奏活劇、バーチャロン、とある魔術の禁書目録SP、一番くじ限定電撃鎌池和馬10周年文庫、学芸都市SS、能力実演旅行SS、とある魔術の禁書目録PSP、画集小説、下敷き小説、コールドゲーム、アストラル・バディの設定が入り混じっています。
※『白衣の男』と御坂美琴J 脅迫までは一話2500文字それ以降は一話5000文字になっております。
※あらすじがver5になりました。前のあらすじが見たい人は活動報告の方へどうぞ。
※題名を『とある闇の中の超能力者』から『とある暗部の御坂美琴』に変更しました。
※ネット小説だからこそ出来るギミックを各所に取り込んでいます。
※前書きとあとがきには重要な伏線を仕込んでいます。必ず表示させてください。
こんな感じでオリキャラたちがメタ視点で読者を煽りながら禁書キャラや鎌池作品を蹂躙していくだろう話を応援してくれ
- 111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/14(月) 19:04:16.44 ID:ga/2O4GbO
- とんだ茶番だな
- 112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/15(火) 03:08:05.85 ID:6u9dTz//0
- >>94
つーかSSそのものよりもその手のSSに群がって来る信者が気持ち悪くて仕方ない
- 113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sega]:2019/10/15(火) 14:51:41.82 ID:kGUnaKhE0
- 上条さんの誕生日って公式で明かされてたっけ?
- 114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/15(火) 18:36:43.81 ID:2+4dxV5n0
- 「は、ははは、はっ、くっッ!」
だが笑う。
無様な様を晒しているのは大悪魔コロンゾンの方だというのに、それでも笑う。
人間ではない人外はそもそも視点が違う。
最初から全てを超越している存在は絶対的にスケールが違う。
それを、表しているかのように。
「この霊媒アバターでは、これが限界なりけるかしらね」
局地的な勝利が全体的な勝利につながるとは限らない。スポーツの団体戦において1勝が全体の勝ちを意味しないように、ここでの敗けは許容できるものでしかない。けれど、そんなことを知らない『空白の主』にとってこの勝利は違和感にしかならなかった。
論ずるまでもなく勝てるはずがない。できるのは時間稼ぎで、それさえもできるかは分からない。
(アルフは何を四十一るのか七……。五の化物を相手二出来るの八、同じ化物の君四か一七一の二)
アルフ。
『空白の主』の友人であり同類。
秘匿された真名はbyucgjビュックグジュール・dqsディクェス・finprovzフィンプロブズ・mekhatwxメカトゥウィークス。
ともすれば、魔術側の最高戦力である魔神すらも凌駕するかもしれない存在。
来てくれれば、心強い。
「からからから。……なぜ、殺三七一?……大悪魔五六ンゾン。ま三か、人類を守っ十一るわけでも七一だろうに」
「……いひ、我は悪魔、大悪魔コロンゾンなりけるのよ」
正直なところを言えば、圧されているのはこちらの方だ、と『空白の主』は思っていた。コロンゾンの思惑が一切分からない。敗北した?負けた?まさか!そんなわけがない。コロンゾンの強さを『空白の主』は十二分に知っている。た・っ・た・2・週・間・前・に・手・に・入・れ・た・ば・か・り・の・情・報・に・よ・っ・て・コ・ロ・ン・ゾ・ン・の・強・さ・は・更・に・補・強・さ・れ・た・の・だ・。
例え血に伏せ地に臥せた状態とはいえそれでもコロンゾンの強さは何も変わらないのだ。
生命の樹セフィロトの隠されし一線、深淵アビスを守る大悪魔。
この世界■■における、頂点の一角。
「メイザースとの契約はまだ切れていない。である以上、私に貴様は殺せない」
「……かっ、からからから!!!メ一三ース!黄金夜明S∴M∴の三ミュエル=リデル=マグ零ガー=メ一三ースか!!!から、だ十す零八、だ十す零八随分十素晴ら四一事を四十九零た。ま三か、五の私の安全が、そん七語十で保障三零る十八ッ!」
『空白の主』と人類種は敵対している。かつて、全ての人類の祖である『空白の主』は全ての人類を愛していた。だが『空白の主』は愛する子供達に裏切られた。『空白の主』が完全に清浄なる存在となり、元いた場所に帰るために作った子供達は、よりにもよって逆に『空白の主』を縛ってきた。
子と親という強い強い関係性を利用して、縛ってきたのだ。人間が名を用いて契約を結ぶように。その繋がりを利用して。『空白の主』と人類種は流血ではなく流れる血によって繋がっているから。
「だったら殺せる!この私でも、人間でも、大悪魔たる君を追放できる!!!」
故にこそ、『空白の主』は初まりの領域などという辺鄙な場所にいる。魔神のいる『隠世』でもアルフのいる『最終血戦城カステルル・ブラン』でもない、常世に対する一切の干渉を制限されたこの初まりの領域に。
エイワスは例外中の例外だ。エイワスも結局のところ常世では霊媒アバターなしに大規模な行動はとれない。そして何よりも契約に縛られる。そう、かつてとあるご令嬢フロイラインと交わした契約は、今もエイワスを縛っている。
メイザースによって縛られたコロンゾンと同じように。
「あぁ、あぁ、あぁ!!!子供に罪を押し付けるまでもない!大悪魔を打ち倒すという功績を立てれば、私の罪は禊がれるッ!!!」
その喜びを抑えることはできなかった。
あるいはこの世で最も罪深き存在に唆される前の『空白の主』であれば、こんな風に欲望を露わにすることはなかったのかもしれない。人類が人類となった理由は賢くなってしまったからだ。つまるところ知恵を付けたから。その理由こそが善悪の知識の木の実を食べてしまったから。故に『空白の主』は楽園を追放された。
この出来事を、――――――失楽園ペルディトゥス・パラディススという。
「――――――戻れる、あの場所に。愛しの楽園に、もう1度ッ!!!今度こそ、私は神に成れる!」
賢さは罪だと定義されている。欲望を持つことは罪だと言われている。今より先に行きたいと、もっと楽になりたいと、誰かのためではなく自分のためにと、それらは全て、全て罪深いのだと、そう言う人がいる。神が人を楽園から追放したのは、人が神になることを恐れたからなのか。神が人に知恵の樹の実を食すことを禁じたのは、人が神の座に辿り着くことを懼れたからなのか。
『空白の主』は、自覚していない。
人類には罪がある。
傲慢スペルビア。嫉妬インウィディア。憤怒イラ。怠惰アケディア。強欲アワリティア。暴食グラ。色欲ルクスリア。
これを7つの大罪といい。
そして莠ャ螟ェ驛主・??ェ邯コ隴壹?螟ァ豐シ遘倶ク?驛弱?菫晄怏謚?閭ス縲弱じ繝サ繝ッ繝ウ繝サ繧キ繝ウ縲によれば、彼は莠コ縺ョ蜈ォ縺、逶ョ縺ョ螟ァ鄂ェを決して自覚できない、無自覚の罪の集約体を『雋ャ莉サ霆「雖』と定義した。
「だから君は此処で死んで?私のための踏み台になって?」
『空白の主』は雋ャ莉サ霆「雖している。彼女は物事を正しく見ていない。人類全体を生贄としか見ていない。当然の供仏。奉仕されることが当たり前と思っている。最も不浄であるが故に、最も清浄に憧れた『空白の主』。
こんな詩を知っているだろうか。
菴輔′鄂ェ縺九o縺九j縺セ縺吶°。
遏・諱オ縺ョ螳溘r蜿」縺ォ縺励◆縺九i縺ァ縺ッ縺ゅj縺セ縺帙s。
菴輔′鄂ェ縺九o縺九j縺セ縺吶°。
陋??逕倩ィ?縺ォ閠ウ繧定イク縺励◆縺九i縺ァ縺ッ縺ゅj縺セ縺帙s。
縺セ縺?鄂ェ縺後o縺九j縺セ縺帙s縺。
縺昴l縺薙◎縺後≠縺ェ縺溘?鄂ェ縺ェ縺ョ縺ァ縺。
『空白の主』は分かっていない。なぜ楽園から追放されたのか。なぜ人類が反逆したのか。与えられる側だった『空白の主』には奉仕する側の気持ちは分からないし、与える側の気持ちもわからない。
- 115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/15(火) 18:37:39.65 ID:2+4dxV5n0
- 「くっ、くっくっくっ」
だからこそ、『空白の主』にはコロンゾンが怖く見えるのだ。恐れていて、畏れている。誰・か・に・頼・る・こ・と・で・し・か・危・機・を・脱・し・て・こ・な・か・っ・た・『空・白・の・主・』は・根・本・的・に・弱・者・だ・。
齢をどれだけ重ねても弱いまま。
実力は上がらず、弱い者いじめしかできない。
コロンゾンの思惑も分からない。
「あっはははははははははははははは!!!!!!」
思わず、といった調子であった。
まるで1秒先に来る絶望を知らない赤子を見る様に、コロンゾンは大笑いした。
「……何が、おか四一?」
「くっくっ、おかしいと思わなきかしら」
「一った一何について!?」
止めを刺そうとしないのは反撃を恐れているから。
会話を続けようとしているのは時間稼ぎのため。
神器召喚でコロンゾンを攻撃しないのは悪魔殺しの業を背負いたくないから。
『空白の主』には覚悟がない。だから、簡単に諦めて、次を探してしまう。『空白の主』は何1つとして背負っていないから、軽い。8月21日のあの日に木原脳幹と木葉桜十五夜を逃がす必要はなかったはずだ。一方通行アクセラレータに対する干渉ももっと深くできたはずだ。
世界をあるべき姿に還そうとしているコロンゾンとは格が違う。
自分だけのために戦うモノは、弱い。
「くっくっ、私がここに来た理由は、貴様と戦うためでは、ない」
「…………………………………………………………………」
『空白の主』には見えていなかった。意図的に無視をしていたわけではない。ただ純粋に、その存在を認識していなかったのだ。地を這う蟻は意識しなければ気付けないように、空を飛ぶ蚊もまた意識しなければ気付けないように。『空白の主』からすればあまりにも矮小すぎる存在ゆえに、『空白の主』はその存在を忘れていた。
なぜコロンゾンは初まりの領域に来た?
その理由ははたして何だった?
「警告、第二二章第一節。命名、『神よエリ、・何故私を見捨てたのですかエリ・レマ・サバクタニ』――――――完全発動まで一秒」
「ッッッッッ!!!!!?????」
いきなりだった。
妙に機械的な声がした瞬間には、もうその赤き閃光は『空白の主』に直撃していた。
だが、
「…………………………………出来ない」
閃光が晴れると同時に、『空白の主』は呟く。あれほどの一撃が直撃してなお無傷なのに、それでも。
認められないかのように、信じられないかのように。
大悪魔コロンゾン。三三三。拡散。自然分解。共倒れ。
それはあり得ない。
『空白の主』の対が、
いや、いいや、いいや!!!
「不可能二決まってるっ!人類で八私を、五の原初の片割零たる『空白の主』八殺せ七一っ!親殺四のパラドッ九ス。五の全時間軸二繋がっ十一る初まりの領域で八、人類の手で八私八殺せ七一!」
だからインデックスは此処にいるのか?
わざわざ、そういう風にセッティングした?『空白の主』の対が、その『破壊の象徴』が、共倒れの相手が、インデックスだと?
イギリス清教第零聖堂区必要悪の教会ネセサリウス所属の魔導書図書館。
そんなことは認められない。
そんなことは認められない!
格というモノがある。
オリンピック選手とアマチュア選手なら共倒れするのか?
最新鋭の戦闘機と旧式の装備を持った歩兵は共倒れするのか?
いや、あり得ない。だから絶対にあり得ない。インデックスでは『空白の主』の対にはなれない。なのに、なのに、それなのに!
なぜ、コロンゾンはそこまで『空白の主』を下に見る!
「馬鹿、二」
怒りが発露する。
暴風雨のような怒りが、畏れを上回る。
「馬鹿二するのも大概二四六ぉ!!!五の、五の私八っ、『空白の主』八ッ!原初の一、初まりの片割零、全十の人類の母!!!勝十七一、人類じゃ、君のバッ九アップを受けた十四十も!險ュ螳八覆ら零七一!!!!!五の、私の五十を、ど五まで下二見零八ッ!大悪魔、五六ン」
「な・ら・魔・神・な・ら・」
それは至極単純な答えだった。
「――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――まさか」
- 116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/15(火) 18:38:21.20 ID:2+4dxV5n0
- 知らず、冷や汗が流れた。
インデックスの脳内に記憶されている一〇万三〇〇〇冊の魔道書を正しく使えば魔神に至ることが出来るとされている。一方で、インデックス自身が魔神になることは不可能だとされている。その理由はインデックスが魔翌力を生成することが出来ないからだ。
なら、インデックスが魔翌力を生成できるようになれば?
もしもインデックスに付けられている3つの枷が全て外れるような事態に成れば?
インデックスは分離した。今この初まりの領域にいるのは仮想人格ナンバー006『哀れな子羊アニュス・デイ』だ。
空虚な心と不完全な器。乗っ取るには、霊媒アバターとするには十二分すぎた。
「――――――魔導書図書館、Index-Librorum-Prohibitorum」
恐怖が、
死が、
そこにある。
「これならばメイザースとの契約には反しない」
元来、悪魔とは狡猾であるモノだ。メフィストフェレスなどが有名であるが、悪魔とはその弁舌で人を騙し、その弁舌で人を誘惑し、その弁舌で人を誘導する生き物だ。契約の穴を見つけることなど簡単にできる。
策はなった。
そのためだけに、コロンゾンはわざわざインデックスを『殺した』のだ。
赤・き・楔・は・掻・い・潜・ら・れ・た・。
「殺せ」
一言だった。
単純な命令だった。
絶対の死刑宣告だった。
勝てないと、本能的に分かってしまった。
因果応報。罪には罰を。盛者必衰。兵どもも夢の跡。
だから、
「ここからは私が受け持ちますdeath。我が朋友、『空白の主』」
ブンッ、と空間がぶれた。
そして、いた。
黒のスーツに黒のズボン、黒のマントと黒の指輪、黒の靴、黒の髪、黒の手袋、黒の襟、黒のモノクル、そして白い肌と紅い唇と瞳。
救援は最適のタイミングで現れた。彼は『空白の主』を庇うように前に立った。
その男の名を、アルフといった。
「第六物語シックスストーリの最終敵ラスボスであるか。そしてこの大悪魔と同じ人類外」
「同じとは人聞きが悪いdeath。私はあなたほど悪辣ではないdeathよ」
交わされた会話はそれだけだった。
そして戦いが始まった。
生命の樹セフィロトの奥に潜む悪魔と1700年前に人類種に敗北し常世から逃走した『空白の主』の息子の末裔の戦いが始まった。
さながら、最終決戦であるかのように。
さーて、『空白の主』の正体、もう分かりましたよね?全世界の神話でも五指に入るレベルで有名な人間ですよ。
- 117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/15(火) 18:39:41.17 ID:2+4dxV5n0
- https://syosetu.org/novel/56774/76.html
とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六
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いつもよりちょっとだけ長いです。
気付いた二人@ 神速の対応 一方通行と『空白の主』@ 『空白の主』
『それ』を真に正しく理解できた人間は学園都市内に二人いた。
まず一人目は学園都市の主アレイスター=クロウリー。
彼は、『それ』に強く関わっているが故に、『その領域』の人間と敵対しているが故に、『その行為』に気付くことが出来た。
「…………………………………………………………………………………………………………………………、」
ほんの一瞬だけ、
刹那の時間だけアレイスターは逡巡した。
そして、
「頼めるか」
短い問いかけがあった。
『任せておけ、アレイスター』
その問いかけに短い返答があった。
そして、問いを答えたヤツはすぐに『窓のないビル』から去り準備を始めた。
さらにもう一人。
学園都市第一学区に存在する風紀委員本部セントラルジャッジメントの最上階天秤の間にて風紀委員長白白白も『それ』に気付いていた。
「さすがに、予想外だな……」
確かに、見る程度ならできるかもしれないとは思っていた。それを見ることは可能かもしれないとは考えた。
だがまさか操れるとは、操作できるとは思っていなかった。
認識が甘かったと言えばそれまでだが、おそらくこの事態を予想できた人間は世界に一人もいないだろう。
かの統括理事長もこの事態は予測できないはずだと思った。
だから、これは後手に周っているわけでは無い。挽回はまだ可能だ。
「まさか、このタイミングで切り札を切ることになるとは……」
椅子に座ったまま受話器を取り、特殊なリズムで特別な番号を押した。
風紀委員本部セントラルジャッジメント。その地下第11層を住みかとする存在に、『切り札』に、命令を与えるために。
プルルというワンコールの音すらならずに電話がつながった。
「最果さいはて、出番だ」
意識を引きずられないようにしながら白は声をかける。
「おやぁ」
妙に間延びした声で、電話口の人間は答えた。
「私が表に出るのは大覇星祭の時ではなかったんじゃ?」
「事情が変わった」
「事情がぁ?」
「あぁ」
心の準備を決めてから、白は通話の相手である最果にその事情を話す。
下手をしたらそれだけで死ぬかもしれないという緊張感をまとわせ、風紀委員本部セントラルジャッジメントの切り札の一人に、白は言った。
「学園都市第一位の超能力者レベルファイブ、一方通行アクセラレータが位」
「行こう」
白の台詞は最後まで言われることはなかった。
電話相手の最果が一方通行アクセラレータが何をしたのかに気付いたからだ。
「座標は?」
「ポイントA18だ。だが、その前にポイントX000で『彼』とぶつかるはずだ。君には『彼』を足止めしてほしい」
「………………………ほぉ」
ほんの少しだけ不満の色が見られた。とはいえ、ほぼ軟禁状態の最果にとって外にきちんと出られる機会を逃す気はない。
一方通行アクセラレータがいじった後を見ることが出来ないのは残念だが、『彼』と戦えるというのならば、そこまであからさまに反抗する必要もないだろう。
「装備は?」
「全部許可する」
「専用武器も?」
「あぁ」
「………………………ふふ、了解ぃ」
楽しそうに笑いながら、間延びした声で最果は笑った。
本当に、楽しそうに。
「迎えは奇鬼喜きききに行かせる。速やかに行動しろ」
それだけ言って白は電話を切った。
天秤の間を沈黙が満たす。
その沈黙の中でもう一度白は受話器を手に取った。今度は、十五夜につなげるために。
予期してはしないだろうが一方通行アクセラレータは世界の理に干渉してしまっていた。
だからこそ、この二人は全力を挙げて動いたいた。
これ以上、もうこれ以上いじられてはたまらない。
世界の強度がどれくらいもつのかはわからないのだから。
学園都市統括理事長、風紀委員本部セントラルジャッジメント委員長。
非常に珍しいことだが、この時二人の思惑は一致していた。
まぁ、だからといって協力できるということにはならないのだから。
- 118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/15(火) 18:40:17.78 ID:2+4dxV5n0
- 「…………………………………………………………………………………………………ぁ?????」
気がつけば白い空間に立っていた。
「こ、……こは?」
白。
白く白く白い。
ただひたすらに白しかないこの空間。
上を見ても下を見ても右を見ても左を見ても前を見ても後ろを見ても白。
白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白。
そんな空間に一方通行アクセラレータはいた。
「なンだ?俺は、確か…………」
記憶をたどる。
今を理解するために、過去を探る。
一つ一つ順番に、たど
その時だった。
「お・や・」
声が、かけられた。
「ここ二に人間が来るとは珍四一しい」
声をかけられる。日常的な何も不思議ではないことだ。
ただそれだけだったのに、
それなのに、
「ッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!??????????」
全身が泡立った。
肌が、脳が、身体の全てが無意識に緊張状態に陥った。
「誰だッッッ!!!!!」
声をかけたのが誰かなど知らない。そんなことは分からない。
ただ一つわかる。
理解できる。
学園都市第一位の超能力者レベルファイブ、一方通行アクセラレータで理解できる。
「オマエは……っっっ」
わかる。
これがそうだ。
これが、これこそが、
恐怖。
人が抱く根源の衝動。
恐・怖・。
「誰だ……っっっ……!!!!!」
その問いに、彼女は答えた。
「私か一い」
目の前の存在は見た目だけを見れば極一般的な少女の姿をしていた。
「私は、そうだね」
だが違う。
見ればわかる。感じる。認識できる。
こいつは、
こいつは、
こいつは、
絶・対・に・人・間・じ・ゃ・な・い・!!!!!!!!
「『空白の主』。そう、呼ばれる存在さ」
敵だ。
あきらかに、絶対に敵だ。
敵。
それも、一方通行アクセラレータの敵という意味では無い。
そんな小さな意味では無い。
危機感が絶望が終焉の気配が迫って募って嗤っている。
この目の前の女は、
人・類・の・敵・だ・!!!!!
「『空白の主』……………………」
ヤバい、と体感で分かる。
強さの質が違う。
言うならば運動会の徒競走で勝つために、参加者全員の足をへし折るようなものだ。
立っているステージが違う。
存在の位階が違う。
これはそう、
神とか呼ばれる存在だ。
現に、
現に現に現に。
「本名自体は別二あるけどね。けれど、君は見た十五六私の名を呼べる段階では七一ようだ四、『空白の主』十呼んで九零たまえ」
この存在は一方通行アクセラレータを見ていながらにして、一方通行アクセラレータを見ていない。
視線は確かに一方通行アクセラレータの方を向いていながらも一方通行アクセラレータをとらえてはいない。
もっと別の何かを見ている。
もっと奥の何かを見ている。
もっと違うモノを見ている。
見られている。見られている。見られている。
「―――――――っ、ぁ」
怖い。恐怖。
- 119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/15(火) 18:41:04.94 ID:2+4dxV5n0
- 御坂と戦っている時だってここまではっきりとは感じなかった。
心臓を直接握られているような、脳に爆発物を入れられたような、そんな恐怖心。
対抗しようと思えること自体が奇跡とさえも思える、そんな感情。
なんなんだこいつは?
そもそもどこなんだここは?
御坂美琴は、あの戦いはどうなった?
「ん?」
いつのまにか『空白の主』と名乗る女(?)が一方通行アクセラレータの目の前に来ていた。
「ッッッ!!!!!」
グイッ!顎を持ち上げられて、
「何を恐零る必要があるんだ一?五五二来たと一う事八程度の差八あ零世界の仕組三を理解四十一ると一う事だ六う?」
などと言われた。
「五の世界の深奥の秘密。秘匿さ零た最奥の領域。明かさ零十八七ら七一その存在を知ったのだ六う」
続けて『空白の主』はこう言う。
「魔術の領域二住ま一、そ四十五五二至零たのだ。君二も何か明確七願一があるのだ六う?言っ十三七三一。何、遠慮する必要七ど七一」
願い?
願いだと?
「ね――――――がい……?」
「そうだ。願一だ」
一方通行アクセラレータは思考する。
願い。たしかにそれはある。もともと絶対能力進化実験レべルシックスシフトなんて馬鹿げた計画に参加したのは一方通行アクセラレータ自身が絶対能力者レベルシックスという領域を目指していたからだ。
絶対能力者レベルシックス。現状の学園都市に存在する超能力者レベルファイブよりも上の強度の、おそらく神ならぬ身にて天上の意思に辿り着くものSYSTEMに至ることすら可能なその領域に至ること。
それが目的だった。願いだった。
本当に?
「ね………………が、――――――い?」
高純度の麻薬を吸ったように脳がくらくらする。とめどない思考が体中をめぐる。
目的、目的、目的。
一方通行アクセラレータは思考を続ける。
絶対能力進化実験レべルシックスシフトに参加し絶対能力者レベルシックスに至る。それが一方通行アクセラレータの目的であったことは間違いがない。
でなければ劣化量産品クローンを二万体も[ピーーー]などという怠い作業を続けるわけがない。
だがしかし、そもそもなぜ一方通行アクセラレータは絶対能力者レベルシックスになろうと思ったのか。
絶対能力者レベルシックスになりたいと思っていた?
違う。一方通行アクセラレータは別に絶対能力者レベルシックスになりたいとは思っていない。
研究者の実験を断れなかった?
まさか、一方通行アクセラレータは学園都市第一位の超能力者レベルファイブにして闇の中の住人だ。その気になれば参加する実験など取捨選択は容易だ。
では単純に絶対能力者レベルシックスという領域に興味があったのか?
(…………………………………………………………………………………………いや)
それも違う。確かに絶対能力者レベルシックスには興味があった。この力はどこまで行くことが出来るのか、自分はどこまで強くなれるのか、そういうことに興味がなかったと言えば嘘だ。
でもそれは絶対能力進化実験レべルシックスシフトに参加する理由としては弱いように思えた。力への執着のみで絶対能力進化実験レべルシックスシフトに参加したわけでは無いのは直感的に理解できた。
であれば、いったいどうして一方通行アクセラレータは絶対能力進化実験レべルシックスシフトに参加したのだろうか。
思考する。
答えは出ない。
思考する。
答えは出ない。
思考し続ける。
答えは出ない。
答えは出ない。
答えは分からない。
学園都市一の頭脳を持っている一方通行アクセラレータでも、その問いに対する答えは、自らが絶対能力者レベルシックスを目指そうと思った理由が、その始原の衝動がわからなかった。
黙っている一方通行アクセラレータを不可解な思い出見つめていた『空白の主』はいつまでたっても黙して語らない一方通行アクセラレータを前に一つの事実に気付いた。
「……………………ま三か七一のか?」
驚愕の表情で『空白の主』は呟く。
ありえない、と内心で『空白の主』は思った。
『この場所』に来る生命が何の願いも持たないなどあり得ない。ただの興味や好奇心や偶然で来れる場所ではないのだこの場所は。
確固たる意志があり、絶対に達成したい目的があり、そのために死に物狂いで行動し、死をいとわずに動き、それでやっと至ることのできる場所なのだ。
確かにその『位階』に至ったのであれば『願い』は叶ったといってもいのかもしれない。だが、『この場所』に至るという事はそもそも世界の根幹自体を作り直したいと思ったはずだ。
ならば、願いがないなどあり得ない。
「なら仕方が七一。願一を口二四七一のであ零ば、強制的二見せ十もらうまでだ」
数年ぶりに『この領域』に来た生命がいるのだ。その生命の願いを知りたいと思うのは『空白の主』にとって自然なことだった。
なにせ、この領域に来れたという事は世界の仕組みを、重なった位相を理解したという事なのだから。
最・初・の・一・人・として長き時を生きる『空白の主』の興味を引くのも当然だった。
スッと一方通行アクセラレータの顎に手を当てたまま、『空白の主』は一方通行アクセラレータの瞳をじっと見つめた。
その瞳の奥にある一方通行アクセラレータの記憶を覗き見るように。
だが、
「……………………………………………へ?」
作者の最大の罪は作品を完結させないことですから!!!!!
- 120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/15(火) 18:41:30.18 ID:2+4dxV5n0
- 明らかな戸惑いの声が『空白の主』からもれた。
予想もしていなかった事態が起きたのだ。
「超能力者……?ま三か、魔術師で八七一のか……!?」
『空白の主』にはとある先入観があった。それは『この領域』に来る生命は程度の差はあれ『魔術師』であるというものだ。
『魔術師』でなければこの場所には来れない。これは永き時を生きる『空白の主』にとってほとんど確定事項であった。数少ない、それこそ数人の例外を除けば『科学』に属する人間が『この領域』に来れるはずがないのだ。
だからこそ『空白の主』は一方通行アクセラレータの内面を覗き込んだ時戸惑いをあらわにした。
一方通行アクセラレータが科学の街の総本山、アレイスター=クロウリーが作り出し、支配する学園都市に属する超能力者であることに気付いたから。
「八っ、からからからからから!!!!!そうか、至零たのか!!!」
それに気づき、だから連鎖的に『空白の主』はもう一つの事実に気付いた。
つまり、魔術師では無い科学の側の人間が、超能力者がここに至るという事の意味だ。
「うん?気付一十一七一のか?なら、私が教え十あげよう」
アレイスター=クロウリーが目指したいたものの終着の形の一つ。それが、もうすでに再現されていたのだ。
つまり、
「おめで十一方通行ア九セラ零ータ。君八もう絶対能力者零ベル四ッ九ス二至っ十一るよ」
あまりにも簡単に『空白の主』は言った。
二万を殺してなれるはずの絶対能力者レベルシックスに一方通行アクセラレータはなっていると。
「そ四十、その先の領域二もね」
そのあまりにも簡単な言い草に一方通行アクセラレータは逆に確信を思えてしまった。絶対能力者レベルシックスになっているという確信を。
「ふむ、だが五のまま君が帰っ十四まうのも面白九七一七」
だから一方通行アクセラレータは一瞬戸惑った。一方通行アクセラレータは絶対能力者レベルシックスを目指していたが絶対能力者レベルシックスになりたかったわけでは無い。それを先ほど確認したばかりだ。
ならば、これから先は何を目指すのか、どうすればいいのか。
「気乗り四七一が、うん久四ぶり二戦う十するか」
そんな思考を巡らせていると唐突に『空白の主』が戦闘の意思を示してきた。
「さぁ構えたまえ一方通行ア九セラ零ータ。その力を私二向かっ十ふるっ十九零」
自然体だった。
あくまで自然体で『空白の主』はそういった。攻撃をしろ、と。
だが動けない。
明らかに隙だらけなのに感覚として感じる明確な『圧』のせいで体が動かない。
「来七一の七らば五ちらから行九ぞ?」
いつまでたっても攻撃してこない一方通行アクセラレータに辟易したのか、『空白の主』はボクシングのようなファインティングポーズをとり明確に攻撃態勢を作った。
そして、その超絶至近距離から『空白の主』の軽いジャブが一方通行アクセラレータに振るわれ、
「そこまでです」
いつのまにか現れていた風紀委員本部セントラルジャッジメント委員長補佐木葉桜十五夜が『空白の主』の手を掴んでいた。
新キャラ『空白の主』。
この物語の中枢に位置する生命体です。
いまさらと言えば今更すぎるんだけど……
この作品、オリジナルでやった方がいいような気がしてきた……。
いやっ!最後まで書きますけどね!!!
- 121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/15(火) 18:42:41.08 ID:2+4dxV5n0
- https://syosetu.org/novel/56774/77.html
とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六
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寄り道します。
白白白と木葉桜十五夜@ 緊急命令 常世涯最果と木原脳幹@ 足止め
十五夜まんげつが始まりの領域で『空白の主』の腕をつかむ五分前の出来事だった。
「案外苦戦していましたね」
8月21日午後10時02分、十五夜は上条たちが戦っていた下水道の上の空間、地上で彼らの戦いの様を見ていた。
当たり前の事実だが分厚い地面で遮られている下水道のことを地上から見ることは普通出来ない。
といってもそれはあくまで一般人の話だ。この学園都市には普通から外れた人がいくらでもいる。
例をあげれば透視能力クレアボイアンスの能力者。はたまた視界共有リンクサイトの能力者。あるいは反響測定エコロケーションの能力者なんかも地下深くの下水道の様子を把握できるかもしれない。
そして当然のように十五夜も分厚い地面で遮られた下水道の様子を把握できる人間の一人だった。
「決着はついたようですし、私も動きますか」
手元に用意した二つのストロビラを弄びながら十五夜は小さくつぶやいた。
そも、十五夜がここに来たのは埋娥と百目が倒した後の上条と白井を回収し、その首筋へと設定済みのストロビラを打ち込むためだ。一応、保険として万が一二人が負けたときは代わりに上条らを倒す役目もあったが、二人が勝った以上それをする必要はない。
故に、十五夜の役目はストロビラを打ち込むことのみ。それに限定される。
視線を下にやる。
上条たちがいるであろう下水移動を地面を透視してみるように、顔ごと視線を下に下げる。
「この距離ならいけますね」
意識をほんのわずかに集中させて、十五夜は上条たちのもとへ向かうために空間を渡ろうとする。
その時だった。
ドッガアアァアァアアアアァアアァアアアアアアァアアァァァァァァアアアアンンン!!!!!!!!!
という爆発音が響き、十五夜の立っている地面が沈んだ。
「…………?」
その爆発によるダメージは十五夜には存在しない。
そもそも今の爆発は十五夜を狙ったものではないのだから。
「爆発……ですか?いったい誰が……?」
まず疑ったのは御坂美琴による粉塵爆発。白の言う通りにことが進んでいるのだとすれば、この空気を哭なかせる爆発音は御坂美琴の一撃のはずだ。
だがそうすると疑問が二つ。爆発音が近すぎるという疑問。さらに沈み込んだ地面の謎。粉塵爆発ではこの現象は起きない。
だから違う。この爆発は御坂美琴によるものではない。
次に疑ったのは苦罠の勢力。御坂という存在を除いた時、もっとも可能性があるのはどう考えてもあの二人。死縁鬼苦罠と天埜郭夜。
しかしここでも疑問が二つ。
すなわち誰を対象とした爆発なのか?そして、誰によっておこされた爆発なのか?
このタイミング、この規模。
上条たちの戦闘が終わったタイミングで10トントラックいっぱいに積まれたC4が一気に爆発したようなこの事態。
ここに存在する意思は、誰のものだ。
そんな思考を続けている十五夜のもとにピリリ、と電話がかかってきた。
「委員長……?」
ワンコールで十五夜は電話をとった。
今かかってくるのならばそれはすなわち今かけなければならないということだ。
通話をつないだ十五夜の携帯を通して、白の冷静な、そして焦った声が聞こえた。
「緊急事態だ、十五夜。第一から第八までの拘束リミッターの解除を許可する。すぐに解除してくれ」
「っ……!了解しました。すぐに」
その言葉に、十五夜は事態の深刻さを知った。
十五夜は自らの力に十の制限をかけている。その制限をかけた状態でもほとんどの存在には負けることはないが、白はその拘束を解けと言った。
つまり、それほどのことが起こってしまっているのだ。
十五夜が全力を出さなければ対応できないような、そんな事態が。
「第一jyuiru八拘束リミッターmoia解tvewiw除xbyvc。解swku除hs印コードhixa6829cfdyl3057miw16v824hwojd95022gcihre34uei5xdab6」
世界に出力される言語がぶれた。十五夜の口から放たれた言葉がぶれた。
すなわちそれは十五夜が常人ではないという証。
すなわちそれは十五夜が超能力者でも魔術師でもないという証。
すなわちそれは十五夜が種としては人間の枠に当てはまらないという証。
そう、十五夜は人であって人では無い。
生まれつきであるその力は十五夜の人としての生を木端微塵に打ち砕いていたから。
「『空白の主』が一方通行アクセラレータに干渉している。最悪全面戦闘になってでも一方通行アクセラレータをこっちに引きずり出してくれ。今ここで手札の一つを奪われるわけにはいかない」
「『空白crbf主』……っ!!!了isoa解vbyo、私全bcyw力nqimx駆使wxbok一方通行アクセラレータvwbyo奪byow取!」
「頼む」
会話は一分にも満たなかった。いつもならばだらだらと回りくどい話をする白が最小の会話で事態を伝えたのだ。
それは白が焦っているという証で、それだけ自体が緊迫しているという証だった。
「………溜vsy息znewnn」
一息だけ吐いて。
十五夜は世界位相を壊してその領域に侵入した。
- 122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/15(火) 18:47:14.72 ID:2+4dxV5n0
- そしてもう一人。
もう一人風紀委員本部セントラルジャッジメント側の勢力から動いている人間がいた。
「来たぁ」
常世涯最果とこよのはてさいはて。
学園都市風紀委員本部セントラルジャッジメントに属する風紀委員本部セントラルジャッジメントの封印戦力のうちの一人である。
その戦闘力は風紀委員本部セントラルジャッジメントの中でも最低ランクであるが、
その特異性は風紀委員本部セントラルジャッジメントの中でも最高ランクである。
その最果に対して相対する存在は人間では無かった。
『ふむ。君は何者だね』
犬。
それもゴールデンレトリバー。
イギリス原産の大型犬である。
「ははぁ。知ってるくせにぃ」
その犬の名は木原脳幹。
学園都市に5000人ほど存在する木原一族の中でもさらに異端の存在。
「でもまぁ、確かに戦闘前には一度名乗りを上げたほうがロマンがあるのかなぁ?」
アレイスター=クロウリーの飼い犬。
この街の番犬。処刑犬バニッシャー。
今は亡き『木原』の始祖ともいうべき七名の科学者に外付け演算回路を取り付けられたことで生まれた、異色にして異端の存在。
それが木原脳幹だ。
「学園都市風紀委員本部セントラルジャッジメント封印戦力が一人常世涯最果とこよのはてさいはて。風紀委員本部セントラルジャッジメントの中の暗部の中の暗部。いうなればローマ正教における神の右席みたいなぁ?」
風紀委員本部セントラルジャッジメント封印戦力。
その名を聞いて脳幹はその身をふるわせた。
『なるほど、ここで出てくるのか』
当然、恐怖によるものではない。ガチャガチャガチャガチャ!!!と脳幹の体に合うように造られた様々な装備がサイコロ展開図のように完璧かつ完全に組みあがっていったのが理由だ。
対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメント。
刃物、銃弾、砲弾、レーザービーム、液体窒素、殺人マイクロ波、ドリル、パイルバンカー等の無数の兵装で作られた『理解できない領域』の存在を撃滅、殲滅するための兵器群。
モノの数秒で、その必殺が最果の前で組みあがった。
『だが、私も君程度に足止めされるわけにはいかないのでね』
脳幹と最果は互いに一瞬だけ視線を交わした。
脳幹は既に最果がここにきた理由を察していた。封印戦力、風紀委員本部セントラルジャッジメントの暗部の中の暗部、秘中の秘。
このタイミングでその存在が出てくるのならば、それは当然足止めしかないだろう。
『空白の主』もとへ脳幹を向かわせないための足止めだ。
『悪いが、押し通らせてもらおう』
やらせるわけにはいかない。
ここで足止めを食らえば、彼の計画そのものに重大な亀裂が入ってしまう可能性があるから。
それはいただけない。
彼の使いとして、それはいただけない。
善悪で言えば悪で好悪で言っても悪。
脳幹は自らの行いをそう定義しながらも、止めるつもりはなかった。
『なぁ、君は対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントを知っているかね?』
その一言を合図としたように、脳幹が対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントを起動させて、
「ポチッ」
最・果・が・自・爆・し・た・。
『ぬっ!!!?』
さしもの脳幹もわずかに動揺した。
最果が手に持った何らかのボタンを押した瞬間に最果がたっていたところを中心とした爆発が広がったのだ。
さいわいのことながら起動させた対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントから放たれた数十以上の誘導ミサイルがその爆発と衝撃をいい具合に中和したが、それにしたって予想外過ぎた。
まさか自爆するなど。
それも代えがきかなくもない雑兵ではなく、おそらく風紀委員本部セントラルジャッジメント内でもかなりの地位にいる、重要なポジションに位置するだろう封印戦力の一人が自爆するなどと。
あまりにも予想外過ぎた。
それこそらしくもなく動揺してしまうほどに。
『……………………』
沈黙があたりを満たす。
いかに脳幹がアレイスターの使いであり、異常ともいわれる光景を見慣れていようとも、不可解なこの自爆を前には沈黙しか返せなかった。
『……………………』
あらゆる行動には意味が生じる。
人を[ピーーー]のには人を[ピーーー]だけの理由が、
人を救うのには人を救うだけの理由が、
そして、人が死ぬという事にも必ず理由がある。}
- 123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/15(火) 18:47:51.76 ID:2+4dxV5n0
- つまり、風紀委員本部セントラルジャッジメント封印戦力が一人、常世涯最果が自爆したのも必ず何らかの理由がある。
最果の目的は脳幹の足止め。それを思うのならば、最果の自爆は脳幹を足止めするために行われたとみるべきだ。
しかし、自爆によって稼げる時間は多くても30秒といったところだろう。
となれば、足止めという目的は果たせないように思える。30秒程度の足止めで何が変わるというわけもあるまい。
つまり、
『なるほどな』
小さく、呟いた。
眼前の光景が示すその意味を理解したから。
最果の行動が示す意味を分かったから。
『なるほど』
脳幹はもう一度小さくつぶやいた。
最果の自爆が原因であたりに充満した煙が晴れる。
それと同時に、
「ポチッ」
ま・る・で・先・ほ・ど・の・焼・き・増・し・の・よ・う・に・も・う・一・度・最・果・が・自・爆・し・た・。
くそっ!!!私の技量じゃ脳幹先生の偉大さが表現できない!!!
あああああああ、くそっっっ!!!
唯一先生に直接脳幹先生の偉大さを教わりたいぃぃぃ!!!!!
- 124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/15(火) 18:48:44.03 ID:2+4dxV5n0
- https://syosetu.org/novel/56774/78.html
とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六
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もう本当に申し訳ないんですけどたぶん今回の話つまんないです。
なんでつまんないかと言うとこの話だけじゃ何がどういうことなのか意味不明の理解不能でちんぷんかんぷんだからです。
あとがきで話の流れだけは書いておきます。
69話目の 御坂美琴と一方通行@ 再戦 神亡島刹威と浣熊四不象@ 悪の正義 の前書きで「ラストバトルの開幕だ」的なことを書いてしまいましたね。
ごめんなさい、あれは嘘になってしまった……。
木葉桜十五夜と『空白の主』@ 神域の戦い 一方通行A 次元の違い
純白にして漆黒の空間で少女が二人、明確に対峙していた。
「今、わり十楽四んで一た十五六七んだけど?」
これ以上の不快なことはない、と言ったような口調で『空白の主』は言い放った。無粋にも『空白の主』の手を掴んでいる十五夜まんげつに向かって。
「そうですか」
だからどうした、とそんな口調で十五夜は言い放つ。一方通行アクセラレータを攻撃しようとした『空白の主』に向かって。
「もう一度言うけど、ど一十九零七一か七」
ビキビキッという音が出そうなくらい青筋を立てて不機嫌そうに『空白の主』は言う。全力で掴つかまれた手を放そうと努力しながら。
「いやですね。私はあなたを止めるように言われているので」
だが、十五夜が決して『空白の主』の手を離さない。手をひけば同じように十五夜も手を押して、手を前に出せば応ずるように手を引く。力をこめられたその手を振りほどくのは通常戦闘能力が並以下でしかない『空白の主』には至難の業わざだった。
「あぁ、そう」
だから足りない力を技術で補った。
すう、と緩急をつけながら掴まれた手を引きつつ、そのまま空いている別の手でうまく十五夜の手を誘導して切り離す。腕力という力では敵わないが経験という名の補助があれば対抗できる。
そして、そのまま数メートルほど後ろに飛びずさり十五夜と一方通行アクセラレータから距離をとった。
「七ら、四ょうが七一か七。私は本当二戦闘二八不向き七んだけど」
いつのまにか『空白の主』の手に光り輝く剣が握られていた。短剣というには長すぎるが長剣というのもはばかられる長さの剣。柄もあり峰もあり、そしてその鈍い輝きがその剣が真剣であることを如実に示していた。
「グラム……いや、クラウ・ソラスですか」
一瞬だけ勘違いしたが、その剣の名を即座に十五夜は看破した。
魔剣グラムではなくアイルランド民話におけるクラウ・ソラス。もっとも日本で知られるクラウ・ソラスにはかなりの拡大解釈は混ざりが加えられて、原典のものとは異なった剣になってしまっているのだが。
「原典と八程遠一け零ど…………今八五の方が一一、か七ッッッ!!!!!」
前述したとおりクラウ・ソラスはアイルランド民話に登場する剣である。クラウ・ソラスの意味は「輝く剣」、すなわちアイルランド民話における「輝く剣」というものの集合概念がクラウ・ソラスという剣なのだ。
もともと、民話の中に登場するクラウ・ソラスは「輝く剣」という称号こそあれ発光によって敵の目をくらます、自動追尾機能によってひとりでに敵を打倒す、隠れた敵を見つけ出す剣などというものでは無かった。それらはすべて拡大解釈であり様々な民話を合わせたものにすぎないのである。
クラウ・ソラスは多くの民話に登場する魔法剣の総称であり、物語ごとに異なる解釈がなされているものなのだから。
そして、『空白の主』はそんなクラウ・ソラスを投げた。
「ッッッ!!!」
前述したとおりクラウ・ソラスは剣である。槍では無い、剣である。投げるではなく斬るという用途で使われる剣。貫くというよりは切り裂くという方法で敵を傷つける剣。
本来ならば投擲物とうてきぶつとしては機能しない。
本来ならば!!!
「クラウ・ソラス+グングニル=万物貫九輝煌の剣クラウ・グングニル・ソラス」
『空白の主』は戦闘が得意ではない。だがそれは『空白の主』が戦闘を出来ないという意味にはならない。
そもそもこの領域を住みかとする『空白の主』は万物すべてを自由にできる権限があるのだから。
だがそれは十五夜にしても同じこと。
「遅い」
放たれた万物貫く輝煌の剣クラウ・グングニル・ソラスが消えた。跡形もなく、塵も残さずに。きれいに消えて消え去った。
最初から存在しなかったかのように。
初めからそんなものは無かったかのように。
万物貫く輝煌の剣クラウ・グングニル・ソラスはこの領域から消えた。
「先につばを付けておいたのは我々の方です。『空白の主』、あなたの方こそ引くべきではないんですか」
「からから、冗談一うね」
前述したとおり『空白の主』が形成したクラウ・ソラスは原典から遠く離れている。自動追尾機能、隠れた敵を見つけだす索敵機能等が『空白の主』の作り出したクラウ・ソラスには付けられていた。
グ・ン・グ・ニ・ル・の・万・物・貫・通・能・力・と・共・に・。
「五の領域二直接干渉する九十すらでき七一雑魚二五の領域二自力で辿り着一た一方通行ア九セラ零ータを扱える十八思え七一。大人四九私二渡四たほうが世界のため二七る四?」
ここまで言えばわかると思うが『空白の主』は神話の装具を具現化し、原典たりうる神話の装具を現実への流出具合を勘案してある程度いじくることが出来る。
もともとは「輝く剣」という称号があり、物語ごとに違う解釈であったクラウ・ソラスに後から上書きされた概念である『自動追尾機能』と『発光』などを付け加えたのがいい例だ。
そして、そこに別の概念を付け加えることも。
「管理者気取りですか。この引きこもりが」
万物貫く輝煌の剣クラウ・グングニル・ソラス。
この剣はクラウ・ソラスの亜種とグングニルの二つを合・成・して作られた神具だ。
発光及び自動追尾並びに索敵の能力を持つクラウ・ソラスに万物貫通能力を持つグングニルを付け加えた武器。
クラウ・ソラスだけでは十五夜の自動防御機能のようなものを貫けないかもしれないと考えた『空白の主』によって放たれた武器。
まぁ、結局のところ万物貫く輝煌の剣クラウ・グングニル・ソラスは跡形もなく掻き消されてその効力を発揮しなかったわけだが。
「からから、それを言うの七ら、前時代の遺物五そ引っ込んで一六四」
その言葉に、十五夜の顔が固まった。
どんな個体にも禁句というものはある。触れられたくない部分、触ってほしくない部分、触れられたくない記憶、思い出すことも回想する事さえしたくない記憶。
十五夜のその部分に『空白の主』は触れてしまった。
当然、わざとだが。
- 125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/15(火) 18:49:13.74 ID:2+4dxV5n0
- 「…………………………」
いつの間にか十五夜の手に一つの竹槍が握られてた。
何の変哲もない、どこにでもあるような竹の槍。
あまりにも武器としては頼りなく、あまりにも普通な槍。
一見するとそれはこの場で使われる武器としてはふさわしくないように思えた。
「ヌ九十メロン四リーズの一つ。四スラウの時計八使わ七一のか一?」
『空白の主』は十五夜が持っている武器のことを知っていた。
懐中時計型万能毒製造霊装『シスラウの時計』。
風紀委員本部セントラルジャッジメント開発部隊総隊長魅隠罠明みかくれみんみんによって作られたヌクテメロンシリーズと呼ばれる霊装の一つ。
ヌクテメロンとは2000年近く前にティアナのアポロニウスと呼ばれる人物によって書かれた魔導書である。この書にはヌクテメロンの魔神と呼ばれる各時間に対応した72の魔神の名が書かれており、『シスラウの時計』はその72の魔神のうちの一柱『シスラウ』の話をもととして作られた霊装なのである。
ヌクテメロンの魔神『シスラウ』は12の時の内4時に対応する魔神であり、その性質は毒。あらゆる毒をつかさどる毒の魔神が『シスラウ』なのである。
その話をもとにして作られたからこそ十五夜の保持する懐中時計型霊装は『シスラウの時計』と呼ばれ、万能の毒を生成することが出来るのだ。
「まぁ、『四スラウの時計』七ん十弱一霊装八私二十って効果八七一んだけど」
十五夜は『シスラウの時計』を使うつもりはなかった。
何故ならば、『シスラウの時計』の効果や術式はとっくに『空白の主』に知られているからであり。
そして、何よりも
人・類・の・信・仰・が・生・み・出・し・た・魔・術・な・ど・ど・い・う・も・の・は・決・し・て・空・白・の・主・に・効・か・な・い・の・だ・か・ら・。
手に握った竹槍を構える。この竹槍は勝ちたいという数多の人の願いのこもった武器。それゆえに十五夜が持てば天下無双の武器となりうる。
そして、十五夜は槍を突き出して、
言った。
「殺されたいようですね、阿婆擦れ」
「からから、やって五らん四無能女」
一瞬後
世界が揺れた。
その光景を何よりも遠いすぐそばで動けないままに眺めている男がいた。
「…………っ」
強さとは何か、そんな酷くどうでもいい、だが根源的な問いが浮かぶ。
『強い』という事が戦闘能力に直結するのならば、今一方通行アクセラレータの目の前で戦っている二人よりも『強い』生物を一方通行アクセラレータは見たことが無い。
例えば、ミサカ10032号は一方通行アクセラレータと御坂美琴の戦いを神話の戦いに例えた。
例えば、一方通行アクセラレータは『空白の主』のことを神だと直感した。
だから『空白の主』と互角に、いやひょっとしたらそれ以上の領域で戦っているだろう女のことを見て一方通行アクセラレータは一つの単語を思い浮かべた。
神々の黄昏ラグナロク。
北欧神話における最終戦争。
世界に数多存在する終末の在り方の一つ。
科学の街の住人でありながらそんな戯言が思い浮かぶほど、二人は『強く』強かった。
強さ。
絶対的で究極的で圧倒的な強さ。
それを求めて参加した実験絶対能力進化実験レべルシックスシフト。
二万人を殺してでも得たかったチカラ。
それがとても小さく思えてしまうほど二人の戦いはレベルが違った。今までやっていた戦闘が子供の遊びに思えるほどに、御坂美琴との一進一退の攻防すらただの児戯に思えるほどに。
位階が違い、強度が違い、世界が違い、すべてが違った。
次元の違う場所にいるのだ。
『空白の主』によって絶対能力者レベルシックスの先の領域に足を突っ込んでいると断じられた一方通行アクセラレータよりも、高い場所に。
彼女達はいた。
- 126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/15(火) 18:49:49.68 ID:2+4dxV5n0
- 「クソッ………………」
小さな罵声が漏れた。
我慢できなかった。一方通行アクセラレータは誰も自分に勝てないと思っていた。対抗できるヤツはいても結局は勝つと思っていた。
その考えが一瞬で覆された。
たった二人の戦いを見るだけで『上』を認識できた。
自尊心が、自意識が、ガラガラと崩れるような感じがした。
一方通行アクセラレータが思考している間にも二人の戦いは続いている。一目見るだけで一般人でも神具だと認識できるような武具が空間を裂いて現れ、十五夜に向かって無数に投下される。
それに対して、十五夜はただ手を振り払い、竹槍を振るう。それだけでもとからそこになかったかのように神域の武具は消えていく。
何がどうなっているのか、その現象がどんな理屈をもって行われているのかひとかけらもわからなかった。
科学の街『学園都市』の中でも最強の能力者であり、最高の頭脳を持つはずの、一般人よりもはるかに深い『闇』の中に住む一方通行アクセラレータですらつかめない。
その領域はきっと人間という生命体が一生をかけて辿り着くための努力をする神域なのだ。
強さとは、最強とは、いったい何なのだろうか。
心に浮かぶ感情はいつの間にか恐怖から悔しさに変わっていた。
今回の話の流れ
十五夜が『空白の主』と戦闘した。
これだけ覚えてもらえれば十分です。
おもしろいと感じた人はすごいありがたいですが、読者視点で私が読むと「はぁ?」ってレベルでつまんなかったので、久しぶりに更新間隔を早めます。
- 127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/15(火) 18:50:31.88 ID:2+4dxV5n0
- https://syosetu.org/novel/56774/79.html
とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六
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いいですか、私は!決して!脳幹大先生のことが嫌いなのではありません!!!
ただ、好きなキャラを苦戦させ、苦しめ、壊すのが好きなだけなのです!!!!!
勘違いしないでください!脳幹大先生のことは大、大、大好きですぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!
常世涯最果と木原脳幹A 狩る者、狩られるモノ
「ポチッ」
現在、最果さいはてによる13度目の自爆が脳幹のことを襲っていた。
『対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメント部分射出ダブルバーストッッッ!!!』
その自爆によっておこされる波状型の爆撃や衝撃を脳幹は対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントの兵装をもったいぶらずに解き放つことによって対応する。
爆撃にはレーザーやプラズマ砲を、衝撃にはミサイルによる爆撃をそれぞれ放つ。
そうすることで脳幹のところまで、自爆の影響を届かせない。
そんなやりとりがもう13回も続いていた。
埒らちが明かない、そう脳幹は思う。
最果の目的は脳幹の足止め、これはもう確定的に明らかだ。
分かっている。それを分かっているのに脳幹は最果を突破できないでいた。
原因は大きく分けて二つ。
最果を[ピーーー]方法が不明なこと。そして、最果の自爆最大範囲が不明なこと。この二つ。
まず最果を[ピーーー]方法についてだがこれがあまりにも不明すぎる。自爆している、ということは最果を中心とした爆発が起きているという事で間違いがない。つまり、どうしたって最果は爆発にまきこまれるはずなのだ。
なのに無傷、傷一つ負わない。威力的にも規模的にもどうしたって影響を受けなければおかしいのに。
何か、自分だけは傷つかない特殊なバリアのようなものを張っているのか?とも考えた。だが、最果の衣服は汚れているし脳幹の放つ対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントが当たればきちんと怪我を負っている。それなのに、最果ては死なないのだ。
対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントのレーザー攻撃は今までに三度最果を貫いた。
一度目は心臓を、二度目は脳を、三度目はその二つを同時に。
だが、レーザーによって貫かれ、血液をまき散らした後に残るのは完全に無傷な生身の最果だけ。最果の死体が現れることは決してなかった。
おそらく、超回復ハイパーリジェレネーション能力の類をもっているのだろうと推理する。
そうでなければ説明がつかない。心臓を貫かれても即時再生するほど回復速度の理由が。
しかし、そうだとしてもまだ矛盾点はあるのだが。
「ポチッ」
十四度目の自爆。
冷静にそれを対処しながら脳幹は考える。
実のところこの足止めを突破するだけならそう難しくない。どうにかして最果から逃げればいいだけなのだから。
けれど、
それが出来ない理由があった。
「ポチッ」
十五度目の自爆。
だんだんと、少しずつ自・爆・の・威・力・と・範・囲・が・あ・が・っ・て・い・る・。
最初は脳幹にギリギリ届くか届かないかという威力だったのに今は半径500メートルを巻き込むような威力になってしまっている。
このまま自爆の威力が上がってしまったら一般人にも被害が出てしまうかもしれない。
脳幹は木原一族にしては本当に本当にめずらしく他者を気遣うことが出来る存在だったから。軽々に逃げることが出来なかった。
名も知れぬ一般人が巻き込まれる可能性を考えてしまい、なんとしてもここで最果を殺そうとしていた。
『これ以上足止めされるわけにはいかないか……』
すでに最果に足止めされて1分が経過している。これ以上この場に釘づけにされれば風紀委員本部セントラルジャッジメントを止められなくなる。
故に、
選択した。
対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントではきっと決定打にはならない。ここまで撃っても攻撃が通らないという事は対策がされているのだ。
対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメント、アレイスター=クロウリーに対する対策が。
だから、
「ポチッ」
16度目。
合わせて対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントを撃つ。誘導ミサイル、レーザー、殺人マイクロ波、液体窒素、あらゆる兵装、その武器を。
無論効かないのはわかっている。
だ・か・ら・次・の・行・動・に・出・た・。
ガギガチガチガチャンッッッ!!!!!
機械が再構築されるような不気味な不協和音が響き渡り、脳幹がその身に纏っている対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントが姿を変える。
対攻撃翌用の態勢から、対高速移動用の態勢へと。
そして、
ゴッッッ!!!!!と、完全にその形態を変えた対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントが一本の槍となって最果を貫いた。
「が、」
悲鳴が上がるにはあまりにも死亡までの時間が短すぎた。
死んだという事実を認識する暇もないほどの極超短時間で最果はその命を散らす。
そのさまを脳幹は直接認識することはなかった。
これまでの戦いで最果が即死級の怪我を負った後に無事に生還する手段を確保していることは判明している。
だから、最果の生死など脳幹は確認しなかった。
対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメント高速移動形式モデルラピッドストーム。
そう友に名付けられた形態で脳・幹・は・最・果・の・こ・と・を・無・視・し・て・突・き・進・む・。
時速に換算することすら馬鹿馬鹿しく感じる、最果の視界からコンマ1秒以下の時間で外れる速度で直線的に脳幹は道を突き進んだ。
今までは馬鹿正直に正面から最果と戦っていたが、別に脳幹は最果と戦う理由はないのだ。はっきりいって無視してもいい。
ここで必要とされるのは脳幹が最果を無力化して、つまり最果によって周囲に被害が出ないようにしたうえでアレイスターに託された任務を遂行することだ。
考えてみよう。仮に最果が脳幹の一撃を受けた後に復活したとして、脳幹の姿が最果の視界内にないとすれば最果は自爆をしようと考えるだろうか。
考えない、そう脳幹は考えた。
最果はまがりなりにも風紀委員本部セントラルジャッジメントの一員。風紀委員本部セントラルジャッジメントとしての最低限の矜持ぐらいはあるはずだ。
任務に失敗した以上周りを巻き込むような八つ当たりはない。
- 128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/15(火) 18:51:31.72 ID:2+4dxV5n0
- あの白白白が支配する風紀委員本部セントラルジャッジメントの組織員だ。いかに封印戦力などという称号が与えられていてもそれぐらいの制御はされているはず。
だから、最果を一度戦闘不能状態にして、その間に最果ての視界内から脳幹が消え去ればいい。
そうすれば、任務を失敗した最果は悪態をつきつつも帰るはずだ。
いかなる不死身、不死性を持っていたとしてもその体が純粋な人間だというのならば極超音速をたやすく突破する速度で移動する脳幹をとらえることなど不可能なのだから。
対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメント高速移動形式モデルラピッドストーム。
後方に設置された無数のロケットブースターを上手に操りながら脳幹は学園都市の道を突き進む。
追手の気配はない。
1秒あればアレイスターが指定した場所に辿り着ける。
だから何の心配もない。
そう、思っていたのに。
「逃がすと、思ってぇ」
速度によって無限に加速された時間の中で、あまったるい声が脳幹の耳に響いた。
『っ!?』
思考の中にわずかな驚愕が現れるが、決して脳幹はロケットブースターの放出を止めない。
気にする必要はない
気にかける暇があるのならば今は一メートルでも先に進むべきだ。
だが、
「ポチッ」
規模も、威力も別格の17度目の自爆が脳幹を襲った。
体・内・保・存・式・緊・急・自・殺・用・超・威・力・爆・弾・『オ・メ・ガ・ジ・エ・ン・ド・』。
それが風紀委員本部セントラルジャッジメント封印戦力常世涯最果の所有する専用武器の名だ。
効果はその名の通り自爆。
あたり一面を巻き込んだはた迷惑な自爆。
しかも、この専用武器の厄介さはそれだけにとどまらない。
一つ。自爆範囲とその威力を最果自身で調節可能であるということ。
ごく小規模かつ低威力の自爆から超大規模かつ超威力の自爆まで最果の主観で選択可能であるということ。
この機能を原因として、脳幹が感じたように自爆の範囲と威力が強化されていたわけだ。
そして、二つ。
『ぐぬっ!!!』
『オメガジエンド』によるこれまでとはけた違いの爆発が脳幹を襲う。C4を500Mt爆発させたような爆発。
そ・れ・が・指・向・性・を・も・っ・て・脳・幹・に・襲・い・か・か・っ・て・い・た・。
それこそが『オメガジエンド』の特性の二つ目。
『オメガジエンド』による爆発はその方向を決定することが出来る。誘導できるのだ。爆発の方向性を、前方へと、後方へと、左方へと、右方へと。
故に逃れることは不可能に近い。
一般人ならば容赦なく爆発に巻き込まれて死亡するだけだ。
一般人ならば。
『っ』
対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメント高速移動形式モデルラピッドストーム。
その後方にあるロケットブースターを逆噴射&左向きするようにして急制動をかけ、脳幹はその指向性を持った爆発から逃れた。
そこに声がかかる。
「ははは、逃がすわけないでしょう」
さすがの脳幹もあせっていた。
対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメント高速移動形式モデルラピッドストームを使ってなお逃れることのできない最果の足止めに、頭脳をフルに回転させて対処しようとする。
脅威度は既に十段階以上引き上げられていた。
ただでさえ、対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントの直撃を受けても死なない不死性を持っているのに、それに加えて対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメント高速移動形式モデルラピッドストームの脳幹に追いつくことのできる何らかの手段を保有している。
対応できなくてはないが、対応することは難解だ。
そんな域に最果の戦闘能力はあった。
だから、
その時だった。
「天地破壊流布術。髑髏されこうべ」
きりっとした声と共に上方から降ってきた布が最果の頭に巻き付いた。
「は?」
どこから、と疑問に思う暇もなかった。
突然、最果の頭に巻き付いてきた布は上から下に振り下ろされたままの勢いで最果の頭を180度ねじった。
グルンッ!と360度首が回ったのが認識できた。
ボギリ、と最果の首が折れる。
「送るよ」
乱入者は剣を振るう。
「天地破壊流。滅亡・攻防一対絶対防衛全方位断絶別位世界サークルアイギスウィズザワールド」
- 129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/15(火) 18:52:04.62 ID:2+4dxV5n0
- 学園都市の中でも最高レベルの知識を持つ脳幹だからこそ、その行動の意味が分かった。
彼・女・の・振・る・っ・た・そ・の・剣・が・世・界・を・切・っ・た・。
なんの抵抗もなく、なんの反抗もなく。
まるで飴細工のように。
ベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキ!!!!!と。
切られた世界の断面のようなものから白い暗闇が現出しそうになる。
その空間に脳幹は躊躇なく入った。
誰が割って入ったのか、誰が布を使って最果を殺したのか。脳幹にはその人物が分かっていた。
『感謝する。彼者誰時に輝く月シャイニングムーン団長裂ヶ淵瞑娥さくがぶちめいが』
まっすぐな感情をこめて脳幹は礼を言った。
そして、木原の中でも異端の存在である脳幹は彼女らを視界にとらえる。
常人には理解不能な領域に存在する超常の存在達が戦っているそのさまを。
それを離れたところから見ているひとりの少年の姿を。
『対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメント一斉射出フルバーストッッッッッ!!!!!!!!!!』
躊躇いはなかった。
躊躇は無かった。
脳幹はアレイスター=クロウリー友の願いをかなえるために、その超常の存在達に向かって武器をふるった。
常世涯最果 所属 風紀委員本部
役職 封印戦力
能力 不明
専用武器 体内保存式緊急自殺用超威力爆弾『オメガジエンド』
- 130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/15(火) 18:52:54.11 ID:2+4dxV5n0
- https://syosetu.org/novel/56774/80.html
とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六
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領域の戦い@ 乱入者 御坂美琴E 消えた敵
目の前の光景を理解できなかった。
目の前の現象を解読できなかった。
視界に映るその意味が分からない事象を前にただ悔しさと後悔が蓄積する。
一目で神具とわかる武器群が何もない空間から発生する理屈も、それを竹槍の一振りで掻き消す理屈も、さっぱりわからない。
理解できない。理解できない。理解できない。
理解できない。理解できない。理解できない。
さっきと同じだ。
足りないのだ。
『何か』が。
その領域を理解するための『何か』が。
その領域に入るための『何か』。
掴めるはずなのに、
手に入れているはずなのに。
だが、例えパズルのピースがすべてそろっていたとしてもそれをくみ上げられるかは別問題だ。
2000ピースのパズルをくみ上げるのに多大な労力を使うように、手に入れた多くの手がかりピースをくみ上げ、理解し、自分で扱える形に持っていくのはとんでもない技術が伴う。
届かないのだ。
足りないから。
手がかりピースを組み上げるための『何か接着剤』が。
故に、見ることしかできない。
恐怖に震え縮ちぢこまりながら見ることしかできない。
限界点。
到達点。
その領域への扉は固く閉ざされてしまったままだ。
抉こじ開けることは、出来ない。
一方で十五夜まんげつと『空白の主』の戦いは激化していた。
「フラガラッハ+ブリューナク=雷速絶貫の回答者フラガラック・ブリューナク」
雷速で放たれた絶対勝利を確約する不折の剣が十五夜に迫る。
「三日月宗近みかづきむねちか+童子桐安綱どうじきりやすつな+鬼丸国綱おにまるくにつな+大興太光世おおでんたみつよ+数珠丸恒次じゅずまるつねつぐ=天下五剣」
さらに、日本を裏から守っている名家によって保存されている天下五剣の属性を一つにまとめた剣も同じように迫る。
「アイアスの盾+アイギス=石化の不貫盾アイアス・アイギス」
同時にかつてトロイア戦争において英雄ヘクトールの攻撃を防いだアイアスの盾に、相手を石化させるメドゥサの首をはめ込んだアイギスの効果を上乗せし、攻防一対の盾で防御を固める。
「無駄ですよ」
が、十五夜には効かない。
無傷。無傷。無傷。
損傷無し、零。
「いかにあなたがこの領域の支配者だとしても、私はたやすくそれを染め直すことが出来る。だから、全くの無駄」
すべて掻き消える。
十五夜のもとに、その武器が届くことはない。絶対に。
「意思を乗せろ、竹槍大衆の願い」
そして、十五夜はその手に持つ竹槍を投げる。
無造作に、無作法に、まるでただの少女のように、格好つけず、格好悪く、ただ意志のみを乗せて。
その竹槍に伝説はない。
その竹槍に神話はない。
だから、普通なら絶大な力を持つ『空白の主』には当たらない。
なのに、
にも拘らず、
「がっっ!!!……うぅ……」
そ・の・竹・槍・は・絶・対・に・貫・け・な・い・は・ず・の・石化の不貫盾アイアス・アイギスを・貫・き・『空・白・の・主・』の・肩・に・突・き・刺・さ・っ・た・。
別にこの竹槍には『シスラウの時計』のように毒の効果があるとか、万物貫く輝煌の剣クラウ・グングニル・ソラスのように絶対必中の効果があるとか、そういうものではない。
だが、当たる。貫ける。ダメージを与える。
なぜなら、この竹槍は格上に対して絶大な効果を発揮する武具だから。
「痛つぅ……。相変わらず、冗談みたいな強さだなぁ……」
まったくもってあり得ない。
本当にたちの悪い冗談だ。
さすがは、風紀委員本部セントラルジャッジメント最強の存在。
戦闘が得意ではない『空白の主』位[ピーーー]のはわけがないわけだ。
「もう一度言います」
これが最後の忠告という事はさすがの『空白の主』にも分かった。
「手を、引きなさい」
「……」
だから、答えた。
- 131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/15(火) 18:55:09.10 ID:2+4dxV5n0
- 「断る」
「なら[ピーーー]」
容赦はなかった。
静かな表情のままで十五夜は『空白の主』に突き刺した槍を四散させ、内部から『空白の主』を攻撃した。
「ぎゅ、がっ!!!!!」
肩につきたてられた竹槍が四散したことで『空白の主』の腕が体から離れる。そして、腕を失ったその影響で体のバランスが崩れ、傾く。
その決定的な隙を逃さずに、十五夜は一瞬で『空白の主』との距離を詰めた。
「[ピーーー]」
その時だった。
『対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメント一斉射出フルバーストッッッッッ!!!!!!!!!!』
始まりの領域に侵入した木原脳幹が二人に向かって攻撃を仕掛けた。
「なっ!!!」
突然の乱入動物にさしもに十五夜も不意を突かれた。
『空白の主』への攻撃を中止して、視線を乱入者にやる。
(木原脳幹……っ!)
学園都市統括理事長アレイスター=クロウリーの部下。
学園都市の最暗部にして最奥部の殺し屋。
様々な逸話いつわがあるが、この時十五夜が思ったことはそのどれでもなかった。
「だ・か・ら・で・す・か・……っ……!」
違和感を感じてはいたのだ。
おかしいとは思っていたのだ。
そう、
いくらなんでも弱すぎた。
その理由が判明する。
つまり、ここまですべて『空白の主』の思惑通り!!!
「ぐ、ぅうぅぅぅぅぅぅぅぅぅうううぅぅぅぅうううあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!!!」
放たれた対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントに対処せざる負えない。いくら十五夜が最強の原石だったとしても対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントをまともに喰らうのはまずい。
なんといっても対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントは完全な状態の『魔神』を[ピーーー]ことのできる兵器なのだから。
局所的には『魔神』に劣らないとはいえ、十五夜はこのレベルの戦いに役立つ力は原石しか所有していない。
故に、レーザー、マイクロ波、ミサイル、ビーム等で構成される対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントの総攻撃に対してとれる手段もそうなかった。
「っ!!!」
手に持つ竹槍では対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントに対抗できないと判断した十五夜は別のものを現出させた。
対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントに対抗するため、今を生き抜き白の命令を果たすため。
『なっ!!!』
「へぇ」
十・五・夜・を・守・る・よ・う・に・巨・大・な・船・が・現・れ・た・。
全長263.0メートル、水線長256.0メートル、幅38.9メートル、出力153553馬力、基準排水量64000トン、兵装、45口径46センチ3連装砲塔3基、60口径15.5センチ3連装砲塔2基、40口径12.7センチ連装高角砲12基、25ミリ3連装機銃52基、25ミリ単装機銃6基、13ミリ連装機銃2基。
かつて、某国を相手にした戦争で活躍したとある国の船だ。
その船が壁となり対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントのあるゆる武装は十五夜には届かなかった。
だがッ!
その船によって脳幹の視界が遮られた機会を逃さずに行動したヤツがいた。
「始めよう」
「……ぁ……」
『空白の主』が十五夜と脳幹が交戦したその一瞬のタイミングを逃さずに、一方通行アクセラレータに接近した。
まだ、十五夜は気付いていない。そして仮に気付いていたとしても対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントへの対応で手いっぱいで対処できないだろう。
「科学の叡智を手二入零よう。私がまた一つ進化するため二」
一方通行アクセラレータは動けない。
恐怖で動けない。
だから、
対応したのは別の『人間』だった。
『やらせると思うか』
バギギャゴリュリガナニニニンイニニニニニニニニニンイニキィィィィィィィイイィィィィィ!!!!!!!!!!
- 132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/15(火) 18:55:51.58 ID:2+4dxV5n0
- 奇妙な音が響き『領域』の空間が裂けた。
瞑娥めいがが切った世界をさらに引裂くようにして、その『人間』は『空白の主』に攻撃をふるった。
その銀の杖を無造作にふるった。
だから、
「か」
吹き飛ばされる『空白の主』。
それを視認することすらなく『人間』はすぐさま『領域』から脱出した。
「からからからからからからからからからからからからからからからからからからからからからからからからからからからからからからからからからからからからからからからからかかかかかかかかかかかかかかかか!!!!!!!!!!!!!!」
嗤い声を上げる『空白の主』。
本当におかしかった。
おかしくて、おかしくて、おかしくて、おかしくて、おかしかった。
「昇零、そ四十」
だって、
だってだって、
だってだってだってだってだってだってだってだってだってだってだって、
すべて、計・画・通・り・に・進・ん・で・い・る・の・だ・か・ら・。
「砕け六」
世界が砕けた。
「…………ぁ……ぁあ」
実のところ彼女の意識はまだ覚醒していなかった。
一方通行アクセラレータに対して行っていた攻撃はほぼ本能的な無意識レベルでの反射で、まっとうな思考力を発揮して、計算して行っていたものではなかった。
能力を発揮するための演算も、超電磁砲弾きクロッシングレールガンなどという絶技もすべて意識的に行たものではない。
それはすべて『守る』という本能から来たもので、
それはすべて『守りたい』という本能から来たものだった。
心の奥底に刻まれた意志は、その遺志は決して潰えず体を動かすものなのだ。
故に、彼女が覚醒したのは『今』だった。
「こ、…………こ……は?」
意識が覚醒した。
御坂美琴はここに、確かにその意識を現した。
「わた、…………しっ、……はッッッ!!!?」
急激に目覚める。
覚醒。
そして、御坂は自分が起こした行動を思い出す。
超電磁砲弾きクロッシングレールガンを放って一方通行アクセラレータに大ダメージを与え、地面を無様に転がった一方通行アクセラレータに向けて雷撃の追撃を放ち、一方通行アクセラレータを[ピーーー]あと一歩まで追い詰めて、追い込んで、
そして、
御坂は見た。聞いた。
最期の一撃が一方通行アクセラレータに当たるその直前に、
爆・音・が・聞・こ・え・操・車・場・中・の・地・面・が・輝・き・一方通行アクセラレータの・身・体・が・消・え・た・こ・と・を・。
「何が、起こっているって……いうの?」
何もかもがわからなかった。
なぜ、地面が光ったのか?
あの爆音はなんだったのか?
なぜ、御坂美琴が蘇ったのか?
なぜ、一方通行アクセラレータが消えているのか?
なぜ、なぜ、なぜ。
どうして?
「勝ったの……?」
狩ったのか?
「倒したの……?」
斃したのか?
「殺せたの……?」
殺したのか?
いったいぜんたいどうなった?
だれが、
だれに、
だれを、
だれで、
勝者は、
だれ
- 133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/15(火) 18:56:42.22 ID:2+4dxV5n0
- 百目がなんとか知恵を絞って生き残っていたその頃、二人の化物と一匹の怪物の戦いは激化していた。
「意思を乗せろ、竹槍大衆の願い!!!」
十五夜はその右手に構えた竹槍を幾度も幾度も投擲していた。
「フラガラッハ+ブリューナク+天下五剣=天下に轟く雷速絶貫の回答者天剣・フラガラック・ブリューナク!!!」
『空白の主』はいくつもの性質を上乗せした神具を無限に生成し放っていた。
そして、
『対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメント一斉射出フルバースト!!!!!』
この戦いの中である意味では最も有利な条件で戦っている脳幹は、その身で操る対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントをふんだんに使って二人を攻撃していた。
この二人と一匹の戦いの構図は非常に単純でありながら、いまだに誰もが明確な手傷を負わせることが出来ず、負ってもいなかった。
その理由はただ一つ。
基本的に自分以外は敵、その構図が全力で攻撃することを躊躇させていたのだ。
「埒があきませんね……」
仮に、わずかな間でも協力できるような関係がこの三者の間に構築されていたとした情勢は変わっていただろう。
一対一対一から二対一へと。
そうすれば、決着は一瞬とはいかないまでもついていた。
だが出来ない。
それは、それが出来ない。
信用できないから。
この各勢力のトップの代理戦争ともいえる構図で敵対勢力と協力関係を作るなどできるはずがない。
故に、だれも本気をだせない。
「からから、全くどうするかな」
仮に一瞬でも誘いではなく全力で猛撃するような動作を見せれば、その瞬間防御がおろそかになる。すると必然自分以外の二者の攻撃を受けることになり、防御がおろそかになった自分自身は死ぬ。
だから迂闊に動けない。
『……………さて、どうするべきか』
二人と一匹はそれぞれが世界最強クラスの存在達だ。
最強の原石にして風紀委員本部セントラルジャッジメント委員長補佐木葉桜十五夜このはざくらまんげつ。
始まりの領域を住みかとする規格外にして埒外の化物『空白くうはくの主あるじ』。
学園都市統括理事長アレイスター=クロウリーの配下にして魔神をも屠る力対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントを所有する木原脳幹。
どいつもこいつも本気になれば世界を壊せる力を持つ。
まぁ、この始まりの場所ならばいくら全力をふるっても問題ないのだが、それでも世界という絵画に与える影響は大きいのだ。
この場所で戦うからこそ。
だから、この流れは既定路線だったのかもしれない。
「提案ですが」
切り出したのは十五夜だった。
「一時休戦としませんか」
文頭に誠に遺憾ながらという言葉がつきそうなほどイライラした口調で十五夜は提案する。このままここで緊張状態を続けているのは誰にとっても得策ではないのは自明の理。ならば、一度見逃した方がいいと考えた。
「『…………………………………………………』」
その提案に一人と一匹は沈黙する。
それは彼らも思っていたことだ。『空白の主』も脳幹もすでに目的は果たしている。これ以上の戦闘は望むところでは無い。
だが、
それで素直に帰るほど彼らは素直では無いのだ。
「冗談一うね」
言葉と共に神速の槍が放たれた。
万物貫く輝煌の剣クラウ・グングニル・ソラス。
必中、不敗、自動追尾。様々な性質が付け加えられたその槍が。
再び場に軽い緊張状態が現れる。
『空白の主』が万物貫く輝煌の剣クラウ・グングニル・ソラスを投げた。つまり、『空白の主』は十五夜の提案を、休戦というその提案を却下したのだ。
交渉は決裂した。
と・い・う・わ・け・で・は・な・い・。
そう、これは交渉決裂という事ではないのだ。
『空白の主』の目を見ればわかる。敵であるからこそ理解できる。
その瞳は『早く帰れ』といっている。
見逃してやるからさっさと帰れと言っている。
敵対しているという立場上、明確に見逃してやることは出来ない。そんなことをすればほかの組織や人間から共謀が疑われてしまう。
それは避けたい。
『空白の主』は戦闘が得意ではないのだから。
だから、ある程度戦った後うまい具合に適当なタイミングで勝手に帰れ、と。
そういうことだった。
脳幹と十五夜は『空白の主』のその意をくんだ。
結局しばらく戦闘を行って脳幹と十五夜は学園都市に帰った。
- 134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/15(火) 18:57:13.09 ID:2+4dxV5n0
-
もしも、この場に白がいればこう言うだろう。
彼ら彼女らの勝負がお流れになるのは当然のことだ、と。
理由?
問う必要があるのだろうか?
みんな知っていることだろう?
最・強・級・の・キ・ャ・ラ・は・序・盤・に・本・気・を・出・さ・な・い・。
なぜかって?
そ・の・方・が・読・者・の・方・々・の・興・味・を・引・け・る・か・ら・だ・。
【朗報】この章でやること、後は御坂美琴と一方通行のバトルだけ。
これにて第三節は終了です。
次の第四節が第一章の最後の節となります。
気付いている人は気付いていると思いますが、この作品の最重要単語は『世界物語《キャラクターストーリー》理論』です。
- 135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/15(火) 19:00:24.33 ID:2+4dxV5n0
- https://syosetu.org/novel/56774/107.html
とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六
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白白白と木葉桜十五夜C 狂気狂乱狂騒狂宴
伏線は物語には絶対に必要なモノである。
恋愛ものでいえば普段自分から遊びに誘わない幼馴染が唐突に「明日遊びに行かない?」などと電話してくる。
バトル物でいえば倒した敵が「本当の敵は、お前のお――――――」と言った瞬間に何者かに殺される。
推理ものでいえば事件が起きたその時にある人物だけ姿が見えなかった。
異論はあるかもしれないが、これらのようなモノは伏線と呼ばれる。
伏線とはのちの展開に備えてそれに関連した事柄を前のほうでほのめかしておくことだと言われる。この説明がばっちりそうなのかというと微妙かも知れないが、大筋は外していないだろう。
そして、だから、上条当麻は敗北した。
伏線が『はられて』いなかったから。
「伏線……」
「伏線だよ。十五夜。伏線。伏線。伏線なんだ。この世の全ては伏線がはられてなければならない。僕も君も彼も彼女もあいつもこいつもどいつもこいつも伏線をはらなければ、貼らなければならないんだ。この世界で有利に生きたいのならば」
狂騒するかのように口をまわして熱烈に語り語る。それは十五夜でも見ることの少ない、白の興奮した姿だった。
何が、白をここまで駆り立てるのか。それはながい付き合いの十五夜にも分からない。
「伏線。ただそれだけでいいんだ。それさえあれば、それが、それ故にそれを、伏線を貼っておけば僕はこの世界に生きられる。生きて、生き、て、伏線の通りに、伏線のままに、伏線のはった道筋を通って」
だが、それでも分かるのは。
」
- 136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/15(火) 19:02:10.32 ID:2+4dxV5n0
- 「伏せられた事実を、貼られた螺旋を、上にある傍点が、引かれた傍線に、ちょっとしたしぐさが、表情が、地の文の事実が、誰かの僕の君のおまえのこいつのあなたの彼女の見知らぬ人の化物の罪人の咎負の黒幕の大罪の彼の言動が、血筋が関係が、その異常性が、すべてがすべて全部何もかもちょっとしたことでも伏線になってなりうってなりえてなりなりうる。だから、言動一つにでも行動一つにでも言葉一つにでも日常においても非日常おいてもちょっとしたすべてに気を使って気を付けて気を散らして気を張って気張らなければならないんだ。例えば十五夜君の言動なんてまさしくそうだ君が外に出て戦っていた間に無意識だろうがいくつもの行動がはられてしまっているんだぞそのことに君は気付いているのか?まず最初は君がこの『天秤の間』から第八学区の超高層ビルに位相を改竄して移動した時だがこれはまだここから移動するのは観測もされないから別にいいんだただ次だわざわざ位相の改変を利用してビルの金網を透過しさらにビルから飛び降りる必要はどこにあったんだ階段を使えよ階段をわざわざあのタイミングで位相操作を行うなんてどう考えても伏線になってしまうだろうがわきまえろよ僕の努力を無駄にするつもりか塵芥人形その後もだ彼者誰時に輝く月シャイニングムーンの狙撃を防ぐのにお前は位相を使った防御を行ったなそれはなぜだなぜあのタイミングで位相による防御を行う羽目になったのか君の力を外に示すことになったのか君はお前は貴様はあなたは本当に分かって考えて思考しているるるるのか貴様がもっと最初から警戒範囲を広めていればあんなことにはならなかったはずだろうが確かに地の文で『今、十五夜が彼者誰時に輝く月シャイニングムーンの狙撃を防いだのは、当然のことながら偶然では無い。その理由は十五夜の原石にあった――――――』くらいのことは書かれるかもしれないがこんな序盤で普通ならお前の力の詳細は明かされないはずなんだなのにおそらく今回の件で読者の奴らは別として他勢力特にアレイスターの奴にはお前の力が原石が能力が『局地的位相操作』だと分かってしまったぞお前君は貴君あなたテメェその責任とれるのか君力は僕が見た数多の人間の中でも強力で扱いやすくてだからこそわざわざ引きこもっている君を僕が引っ張り出していろいろ調教してやったのにそのすべてを無に帰きす無に帰かえす無かったことにするつもりかいい加減にしろいいかよく考えてから行動しろお前の一挙手一投足から言動思考内心その他すべては作者によって描写される可能性があるんだぞそのまわらない頭にもう一度深く刻んでおけよ木偶塵屑戦う時に考えるべきことも思考してはいけないこともいちいちいちいちいちいちいちいち僕が説明しないといけないほど愚かで馬鹿な愚図じゃないだろうお前はいいか何度でもいうが僕のフォローにも限度限界があるんだからな確かに僕は目的のために一心不乱に万進して前進して歩み進んでいく気概はあるが僕の目的の達成に君は必要だからめんどくさく思いつつも無意味だろうが説明をしてやってるんだあぁ二度も三度も同じことを言わせるなよ一度の説明で完全に完璧に完成にどうして理解できないんだ僕よりも優秀で僕よりも有能で僕よりも優美で僕よりも多芸で僕よりも万能で僕よりも優等で僕よりも赫々かっかくなのにどうしてお前らは!君は!言われたことを覚えることも実行することも出来ないんだそんな難しいことを言っているつもりはないのに不可能なことを命令しているわけでは無いのにのにのにも関わらず八面六臂の活躍をできる君たちが万能で全能な君たちは言われたことが出来ないんだいいかもう一度言うぞ何度目か知らないがもう一度言うぞもう何度でもいうぞ脳に直接刻み込んでおけよ塵人形!!!その一挙手一投足から!思考にいたるまでの全てが!全部!何もかも!あらゆることがものが!描写される危険性があるんだよ!!!だからもっと注意深く行動しろ注意して行動しろ迂闊な言動行動は控えろここではともかく外では絶対に控えろさもないと十数年をかけて育んで育ててきた僕の計画がすべて全部何もかも意味がないことになるだろうが!!!気取られないように慎重に用心深く翼々と抜け目なく進んできた計画が計略が計画スケジュールが無意味に無価値に無意義に無用になってしまってそうしたら僕が!僕が己の全てをかけて!ずっとそれだけのために生きてきたのに失敗するなんてそんなことに今更なったらどう責任をとるつもりなんだあああ、ああああああ、あ、ああ、ああああああああああああああああああ、ああああ。あああ、あ、君は僕が見出して僕が!作り出したのに、なのになのになのにそれで最高の人材を素材を人間を生物を生命を選定して伐採して剪定して精選して厳選して択ってここまで育てて育成してきたのにその期待を!希望を!軌跡を!奇跡奇蹟を!どうして踏みにじるようなまねが裏切りが出来るんだよ恩を忘れたとか恩を売るとかそんなつもりは全然まったくこれっぽっちもないが君たちお前たち僕たちは僕の理想に理屈に幻想に賛成して賛同して支持して賛して共鳴して同意して同心して合意してだからここにいてこの立場につくことを許したはずだろうなのにだからなのにどうしてどうやってどうすればここまで僕がそれだけはと注意して注視させたことを破ることが出来るんだ!!!僕よりも頭のいいくせに僕なんか目じゃないくせに僕を圧倒できるだけの能力が頭脳があってあるからあるのに僕よりも僕が僕僕僕に僕を僕僕僕僕僕僕僕僕僕とともにこのせ」
「委員長!!!!!」
今・の・白・は・異・常・だ・、ということ。
「―――――――――――――――――――――――おっと、僕としたことが。あぁ、今のことは忘れてくれ十五夜。とんだ醜態をさらしたな」
「いえ、そんなことは」
- 137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/15(火) 19:03:05.61 ID:2+4dxV5n0
- 「忘・れ・ろ・」
「―――――――――――――は、――――――い」
そ・の・言・葉・に・対・応・す・る・か・の・よ・う・に・十・五・夜・の・目・か・ら・光・が・消・え・た・。
「ちっ、………………そのまま4分26秒23前までの記憶を消去デリートしろ。その後再起動リスタート」
「―――――――は、―――――――――――――――――ぃ」
それは同じ人間にするにはあまりにも非情な命令ではあった。だが、無意識化でそれを実行するように刻まれている十五夜の意識は、本人の拒絶の有無を問わずに白の命令を実行した。
記憶を削除し、時間感覚を制御し、白の言うように意識を再起動させる。
現在から4分26秒23前までの記憶を無かったことにされた十五夜は自らの記憶に一切の疑問を持たずに、もう一度4分28秒前と同じ言葉を発した。
「伏線…………」
「そう伏線だ、十五夜。もっと言えば上条当麻がある手がかりをつかんでさえいればあの戦いで埋娥に勝つことは出来た」
「ある手がかり……ですか?」
気付いていない。
気付いていない。
気付けない。
十五夜は決して気付けない。自らの記憶がデリートされてしまっていることも、目の前にいる男がそれをなしたという事も絶対に気付けない。
なぜなら、それは十五夜が白のことを信じているからで、十五夜が白のことを盲信しているからで、十五夜が白のことを全肯定しているからだった。
十五夜は白が他者に『悪い』ことをするなんて考えていない。
十五夜は白が人間に『悪』をなすなんて思っていない。
だから違和感も感じない。
「ベッドの下の」
そして話題は移る。移ってしまう。
「くまのぬいぐるみの中の」
十五夜が気付けないままに。
「レポート用紙の束」
過ぎ去った話題を十五夜が指摘することはもう無い。だから、話題は移る。上条が回収できなかった、気付くことのできなかった、伏線へと。
「それが、上条当麻の見逃した最高レベルの伏線キーだ」
「ベッドの下のくまのぬいぐるみの中のレポート用紙の束……ですか。それは、上条当麻が訪ねた常盤台学生寮の部屋の中のことを言っているのですか?」
「その通り。さすがに頭のまわりが早いな。あの時、上条当麻と白井黒子は絶対能力進化実験レべルシックスシフトの憔悴していた御坂美琴についてのてがかりを得ようとしていただろう。そしていないはずの妹、初春飾利からの妹達シスターズという情報、絶対能力進化実験レべルシックスシフト等様々な情報をえた」
あの時の上条らの動きは自分たちの得意分野を駆使した最高レベルのものだった。上条当麻、白井黒子、初春飾利。誰が欠けても御坂のもとに辿り着くことは不可能だっただろう。
だが、それでも上条らは御坂美琴が何かに巻き込まれていて、それが絶対能力進化実験レべルシックスシフトと呼ばれるものであるという事までは辿り着けたが、その絶対能力進化実験レべルシックスシフトの内容まではたどり着けなかった。
だから負けたのだ。
目的が明確化されていなかったから、事情が完璧には分からなかったから。
「だけど彼らは絶対能力進化実験レべルシックスシフトの内容がわからなかった。御坂美琴が何に巻き込まれているのかわからなかった。それさえ分かっていれば、きっと届いたのに」
「…………………………………」
「そしてあったんだ。上条当麻がいたあの部屋の中に。御坂美琴が普段使っているベッドの下に置いてあるくまのぬいぐるみの中に。絶対能力進化実験レべルシックスシフトの内容が記された書類が。御坂美琴が絶対能力進化実験レべルシックスシフトについてしらべるために収集した情報が」
御坂美琴は寮の規則で禁止されているものを持ち込むためにくまのぬいぐるみを改造して使っている。そのくまのぬいぐるみの中に絶対能力進化実験レべルシックスシフトについての情報が記された書類もあった。
「それさえあれば、勝てた。過去をやり直すことは僕には出来ないが、それでも言うのなら、あの時上条当麻か白井黒子のどちらかがその絶対能力進化実験レべルシックスシフトについて記した書類に気付いていれば状況は確実に変わっていた。変わっていたんだ」
白井ならばもしかしたらくまのぬいぐるみの中に何らかのものが入っていることは知っていたかもしれない。でも、白井もまさかそんなところに自分たちの求めている情報があるとは思わなかった。そして上条は言わずもがなだろう。
だから、誰も気付けなかった。
その場にあった重要な伏線に。
「勝てなかったのは上条たちが書類伏線を見つけ回収しなかったから。……納得はいったか?」
「はい。――――――説明していただき、ありがとうございます」
「そうか。納得がいったならもう出ていけ。僕も、これから考えなければならないことがあるからな」
「はい。失礼します」
『天秤の間』から出ていく十五夜をしり目に見ながら、白はこれからのことについて思考を巡らせた。
「アレイスター=クロウリー。死縁鬼苦罠。天埜郭夜。妹達シスターズ。御坂美琴。…………考えなければならないことは無数にあるな」
計画は絶対に成功させる。でなければここまで生きた意味がない。
そう、強く思って、白は考えを深める。
「――――――そういえば、伝え忘れたな。……まぁいいか、後で各総隊長と十五夜には送っておこう」
今まで忘れていたが、先ほど諜報部隊の報告にあったことを白は思い出した。たいして重要でもないことだから。今の今まで忘れていた。
「第三生産部門が壊滅したという報をな」
何でもないように、大事を口にした。一部門が壊滅するなどどう考えてもたいしたことである。だが、白にとってはそうでもなかった。
「さて、次の選定はどうするか」
だから今日も白は思考する。
世界の嫌われもの、白白白は考える。
世界をよりよくするために、世界の風紀を守るために。
世界を、――――――ために。
前半の白のセリフ読みにくいですよね。
わざとです。
- 138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/15(火) 19:04:18.38 ID:2+4dxV5n0
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とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六
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不明の項目多すぎワロタ
オリジナルキャラクター紹介
白白白はくびゃくしろ……性別 男
所属 風紀委員本部セントラルジャッジメント
役職 風紀委員本部セントラルジャッジメント委員長
風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキング 委員長のため無し
特殊能力 不明
二つ名 造られた子供たちプログラムチルドレン
所持武器 不明
戦闘スタイル 不明
風紀委員本部セントラルジャッジメントの委員長。絶対能力進化実験レべルシックスシフトの件では風紀委員本部セントラルジャッジメントに所属している部下を使って暗躍した。
木葉桜十五夜このはざくらまんげつ……性別 女
所属 風紀委員本部セントラルジャッジメント
役職 風紀委員本部セントラルジャッジメント委員長補佐、学園都市特記戦力
風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキング 委員長補佐のため無し
特殊能力 原石 世界支配ワールドイズマイン
二つ名 最強原石 風紀委員本部セントラルジャッジメント最後の切り札 委員長の懐刀 意思無き人形 正義の尖兵等
所持武器 専用武器懐中時計型万能毒製造霊装『シスラウの時計』
戦闘スタイル 位相操作、万能型
風紀委員本部セントラルジャッジメント委員長補佐。絶対能力進化実験レべルシックスシフトの件では白の指示に従い暗躍した。基本的に白には絶対服従である。原石世界支配ワールドイズマインは局地的位相操作を行うことのできる力であり、基本的に戦闘で負けることはない。十のリミッターがかけられており、普段の力は大幅に制限されている。
扼ヶ淵埋娥やくがぶちまいが……性別 男
所属 風紀委員本部セントラルジャッジメント
役職 風紀委員本部セントラルジャッジメント攻撃部隊総隊長
風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキング 攻撃部隊総隊長のため無し
特殊能力 不明
二つ名 数の無い槍ロストオブランス
所持武器 火炎放射器
戦闘スタイル 近接格闘、遠距離火炎放射
風紀委員本部セントラルジャッジメントの攻撃部隊総隊長。絶対能力進化実験レべルシックスシフトの件では白の指示に従い上条当麻と戦闘を行い勝利した。過去に何らかの出来事があったことが示唆されるが詳細は不明。能力は現段階では不明だが、地下下水道の崩落から身を守るために能力を使ったように描写がされている。
魅隠罠明みかくれみんみん……性別 女
所属 風紀委員本部セントラルジャッジメント
役職 風紀委員本部セントラルジャッジメント開発部隊総隊長
風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキング 開発部隊総隊長のため無し
特殊能力 不明
二つ名 不明
所持武器 不明
戦闘スタイル 不明
作ったモノ 懐中時計型万能毒製造霊装『シスラウの時計』等
風紀委員本部セントラルジャッジメントの開発部隊総隊長。絶対能力進化実験レべルシックスシフトの件で動いた様子はないが、開発部隊総隊長だけあって武器や防具、兵器、道具類を作ることに天才的能力をほこる。ただし、自分の製作したモノを馬鹿にされたと感じるとヒステリー気味に怒鳴る。罠明の製作したモノを馬鹿にするのは止めた方が賢明である。過去に何らかの出来事があったことが示唆されるが詳細は不明。ただし、白が別組織から引き抜いたような描写がなされる。懐中時計型万能毒製造霊装『シスラウの時計』の製作者は彼女であるが、霊装をつくれるという事は魔術師なのかもしれない。
- 139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/15(火) 19:05:10.19 ID:2+4dxV5n0
- 千疋百目せんひきひゃくめ……性別 女
所属 風紀委員本部セントラルジャッジメント
役職 風紀委員本部セントラルジャッジメント攻撃部隊第二班班長
風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキング 第10位→第8位
特殊能力 超能力『反転世界パラレルワールド』
強度 大能力者レベルフォー
二つ名 逆さまに狂う世界オセロゲーム
所持武器 不明(本来なら武器は所持しているようだ)
戦闘スタイル 近接格闘、投擲
称号 宿敵ライバル
風紀委員本部セントラルジャッジメントの攻撃部隊第二班班長。絶対能力進化実験レべルシックスシフトの件では白の指示に従い白井黒子と戦闘を行い勝利した。。絶対能力進化実験レべルシックスシフトの一件終了後白の指示によってに風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキングが二つ上がった。傷を負うことを恐れており、本人は少なくとも風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキング五位になるまで無傷でいなければならないと思っている。第八拘束リミッターまでを解除した十五夜の姿を見て気絶ですんだことからも、百目自身の強さがうかがえる。
無何有峠妃むかいとおげきさき……性別 女
所属 風紀委員本部セントラルジャッジメント
役職 風紀委員本部セントラルジャッジメント諜報部隊総隊長
風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキング 諜報部隊総隊長のため無し
特殊能力 不明
二つ名 不明
所持武器 不明
戦闘スタイル 不明
風紀委員本部セントラルジャッジメントの諜報部隊総隊長。絶対能力進化実験レべルシックスシフトの件では白の指示に従い白井黒子と上条当麻の監視を行っていた。両名が地下下水道に入ったのを見てから撤退を行った。
五寸釘匕首ごすんくぎあいくち……性別 女
所属 風紀委員本部セントラルジャッジメント
役職 風紀委員本部セントラルジャッジメント諜報部隊第一班班長
風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキング 不明
特殊能力 超能力一方念話ワンサイドテレパス
強度 強能力者レベルスリー
二つ名 無し
所持武器 不明
戦闘スタイル 不明
風紀委員本部セントラルジャッジメントの諜報部隊第一班班長。絶対能力進化実験レべルシックスシフトの件では白と妃の指示に従い白井黒子と上条当麻の監視を行っていた。また、同時に連絡要員として能力を使用し埋娥や百目に指示をした。
浣熊四不象あらいぐましふぞう……性別 男
所属 風紀委員本部セントラルジャッジメント
役職 風紀委員本部セントラルジャッジメント諜報部隊第■班■■
風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキング 不明
特殊能力 不明
二つ名 不明
所持武器 不明
戦闘スタイル 爆弾使用、銃?使用
風紀委員本部セントラルジャッジメントの諜報部隊第■班■■。。絶対能力進化実験レべルシックスシフトの件では白の指示に従い空中の戦力への対応、人員の回収を行った。『HsAFH-18』に追いつき、侵入できるほどの能力を持っている。空を飛ぶ姿を確認できるが、何らかの道具によるものなのかそれとも能力によるものなのかは不明。
常世涯最果とこよのはてさいはて……性別 男
所属 風紀委員本部セントラルジャッジメント
役職 風紀委員本部セントラルジャッジメント封印戦力
風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキング 封印戦力のため無し
特殊能力 不明
二つ名 不明
所持武器 専用武器体内保存式緊急自殺用超威力爆弾『オメガジエンド』
戦闘スタイル 自爆
風紀委員本部セントラルジャッジメントの封印戦力。最果のことは苦罠らも表に出てくるまで知らなかった。能力は不明ながら擬似的な不死のようなものだと推察できる。脳幹は『封印』という手段で楽に対処できると語った。普段は 風紀委員本部セントラルジャッジメントの地下第11層にいる。白さえもなるべく使いたくないと思う戦力であるが、自爆戦法を使えるという点ではほかの何物にもできない唯一の戦力ではある。
常闇燕獅とこやみえんし……性別 男
所属 風紀委員本部セントラルジャッジメント
役職 風紀委員本部セントラルジャッジメント防衛部隊総隊長
風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキング 防衛部隊総隊長のため無し
特殊能力 不明
二つ名 不明
所持武器 不明
戦闘スタイル 不明
風紀委員本部セントラルジャッジメントの防衛部隊総隊長。それ以外のデータは現段階では一切不明。
- 140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/15(火) 19:05:55.64 ID:2+4dxV5n0
- 白神九十九つくもがみつくも……性別 女
所属 風紀委員本部セントラルジャッジメント
役職 風紀委員本部セントラルジャッジメント支援部隊総隊長
風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキング 支援部隊総隊長のため無し
特殊能力 不明
二つ名 不明
所持武器 不明
戦闘スタイル 不明
風紀委員本部セントラルジャッジメントの支援部隊総隊長。白は十五夜を通してこの人物に百目の風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキングを上げるように命令した。
五安城安土城いなぎあづちじょう……性別 男
所属 風紀委員本部セントラルジャッジメント
役職 風紀委員本部セントラルジャッジメント■■■■■■■■■
風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキング 不明
特殊能力 不明
二つ名 不明
所持武器 不明
戦闘スタイル 不明
詳細一切不明。白曰く外のことを任せているらしい。
死縁鬼苦罠しえんきくわな……性別 男
所属 学園都市統括理事会
役職 学園都市統括理事会メンバー
特殊能力 不明
二つ名 不明
所持武器 不明
戦闘スタイル 不明
ブレイン 天埜郭夜
学園都市統括理事会メンバーの一人。絶対能力進化実験レべルシックスシフトの件では天埜郭夜と共に暗躍した。計画プロジェクトと呼ばれる計画を進めているようだが詳細不明。交渉力、部下の豊富さ、知略に富んだ頭脳、どれをとっても敵にまわしたくない存在である。木原幻生とのつながりがあり、大覇星祭中に御坂美琴の絶対能力者レベルシックス化を行う予定だったようだが、何のためかは不明。彼がここまで御坂美琴にこだわる理由はいったい何なのだろうか……。
神亡島刹威かみなきじまさつい……性別 女
所属 学園都市統括理事会メンバー死縁鬼苦罠勢力
役職 死縁鬼苦罠直属の部下
特殊能力 超能力交点爆撃チェックボンバー
強度 無能力者レベルゼロ
二つ名 無し
所持武器 無し
戦闘スタイル 近接戦闘型
死縁鬼苦罠の部下の一人。といってもいくらでもいる消耗品としての部下であり本人もそれは自覚している。それでも苦罠に尽くすのはかつて苦罠に『闇』から救われたから。浣熊四不象によって殺害され、『HsAFH-18』の爆破と共に死体も消失した。実は見捨てられた女グレイレディによって操られていたが本人は当然自覚していない。交点爆撃チェックボンバーは定めた人物と自身の視線の交わった部分を一直線として、その直線の中間部分を爆破する能力。ただし無能力者レベルゼロ
のため実用性は皆無。完全に死亡しているため今後登場することはない。
巳神蔵豈唖みかぐらあにあ……性別 女
所属 学園都市統括理事会メンバー死縁鬼苦罠勢力
役職 死縁鬼苦罠直属の部下
特殊能力 超能力水分生成クウォータージェネレーション
強度 大能力者レベルフォー
二つ名 無し
所持武器 無し
戦闘スタイル 能力使用
死縁鬼苦罠の部下の一人。替えはききにくいレア度☆3くらいの存在。御坂美琴と交渉するときの苦罠の護衛として選ばれた。
- 141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/15(火) 19:06:42.33 ID:2+4dxV5n0
- 波並波狂濤なみなみなみきょうとう……性別 男
所属 彼者誰時に輝く月シャイニングムーン
役職 第一級大隊長
特殊能力 不明
二つ名 不明
所持武器 急速冷却機構内臓型窒素弾丸生成狙撃銃HsSR-04
戦闘スタイル 狙撃
彼者誰時に輝く月シャイニングムーンの第一級大隊長。十五夜足止めのために戦った人間の一人。超々一流の狙撃手であり二キロ先の獲物を確実に狙撃することが出来る。狙撃時のペアは贖である。
屑爬劉くずのはりゅう……性別 男
所属 彼者誰時に輝く月シャイニングムーン
役職 第三級大隊長
特殊能力 不明
二つ名 不明
所持武器 不明
戦闘スタイル 不明
何やら苦罠らが動かしていた存在。現在の所、何をしたのかは不明。
一本線点々いっぽんせんてんてん……性別 男
所属 無し
役職 個人傭兵、学園都市特記戦力
特殊能力 不明
二つ名 三千世界武神
所持武器 剣(名称不明)
流派 天下無双流
学園都市に三人しかいない個人傭兵の一人。苦罠の依頼で十五夜の足止めを行った。戦いに飢えているというよりは強さを求める類の戦闘狂であり、かつては全能神トールと戦い引き分けたこともある。位相を操る十五夜に一撃を与えたことからもその戦力の強大さがわかる。
『空白の主』……性別 不明
所属 不明
役職 不明
特殊能力 位相操作、神器創造、神器属性混合
二つ名 空白の主
所持武器 不明
戦闘スタイル 武器投影及び投擲
初まりの領域と呼ばれる場所に住む異形の存在。一方通行アクセラレータは直感的に人類の敵と感じた。位相操作能力を持つが、濃度で十五夜に劣るため戦いでは押し負ける。ただし、人類の生み出した魔術は効かない、初まりの領域では死なない、一方通行アクセラレータを上の位相世界に送り届けるなど隔絶した実力を持つことは変わりない。
アルフ……性別 不明
所属 不明
役職 不明
特殊能力 不明
二つ名 不明
所持武器 不明
戦闘スタイル 不明
『空白の主』と親しげに話す正体不明の存在。普段は最終血戦城カステルル・ブランという場所にいるらしい。
占卜卜占せんぼくぼくせん……性別 女
所属 不明
役職 不明
特殊能力 不明
二つ名 不明
所持武器 不明
戦闘スタイル 不明
佐天涙子を占った占い師。ただの一般人のようにも思えるが……?
たぶんこれで全員だと思います。漏れがあったら教えてください。
あっ、モブキャラは書いてませんのであしからず。
- 142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/16(水) 12:40:05.92 ID:QkM6+4Ac0
- 実は作者が宣伝も兼ねて自分のSSをコピペしてるのか?
- 143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/16(水) 17:17:36.41 ID:qMbscrAR0
- 言っておくけどこんな事をしても無駄だぞ
読んでないからな
- 144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/16(水) 18:38:46.50 ID:mUnlvxPa0
- オリキャラに自己投影してる人はこの手のSSが大好きなんだろうな
理解し難い神経だが
- 145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/16(水) 19:15:44.43 ID:NvR0Tfn20
- F1 ID:EYbP0TXs 2019年06月14日(金) 14:51 (Good:2/Bad:0) 報告
魔神なんぞただの雑魚といわんばかりに原作よりもインフレというか規模がすごいですね
鎌池作品から白き女王でも連れてこなきゃどうにもならないんでは・・・ww
返信:一二三四五六 2019年06月17日(月) 00:13
感想ありがとうございます!
ああああああああ、本当にごめんなさい更新が出来なくて!色々とリアルの方で色々とあって、ここで詳しく言う事ではないので詳細は控えますが、もしかしたら秋ごろまで更新は無理かもしれない……。でも更新が完全に途絶えることはないので!それは絶対にしないので!
万万が一1年間更新できなかったらその時は前から言ってますが設定資料集の方を公開します。申し訳ないが、そうさせていただきます。
そしてここからが感想返信です。
魔神が雑魚ってことはありませんのでご安心を。魔神に基礎スペックから勝てる存在は理外人外12名のみです。これは絶対に揺らがないので。
まぁ木原五行やパトリシア=バードウェイは|王の遺産《レガリア》を持っているので魔神に対抗は出来ますし、空白の主は絶対値で張り合う事は出来ますが。
白き女王は■■■■によって■■することは一応可能ですが、正直白き女王はこの|■■■《■■■■■■■■■■》では[ピーーー]ことが出来ます。なぜならば『穢れなき真実の剣持つ「白き」女王《iu・nu・fb・a・wuh・ei・kx・eu・pl・vjz》』は既に『|■■《■■■■■》』で――――――。
いえ、これは一応ネタバレになるので避けておきましょうか。
むしろ理外人外に対抗できるのは現状ならばアンナ=シュプンゲルが最有力候補ですかね。あるいはドラゴンキラー。あるいは東川守。あるいは俺。あるいは『ウミガメもどき』。あるいは『編み物のヒツジ』。
最も、本当の意味での最有力候補は『訪れた者の願いを歪んだ形で叶えてしまう街』から脱出した1人の少年と1人の少女ですが。
これからも精進して参りますのでどうかよろしくお願いいたします。
- 146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/16(水) 19:16:29.66 ID:NvR0Tfn20
- https://syosetu.org/novel/56774/176.html
とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六
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キャラ崩壊っていうかキャラ消失した。
いや、予定通りなんだけども。
上条当麻と瞬瞬A 例え世界が違っても、2人の運命は変わらない
世界物語キャラクターストーリー理論。
それは風紀委員本部セントラルジャッジメント委員長、白白白が提唱する世界の在り方に関する理論の事だ。端的に言えば、世界を1つの物語として見る理論。ファンタジー、ミステリー、デスゲーム、サイエンスフィクション、コメディ、ホラー、群像劇などなど、世界をいくつかのジャンルに、もっと言えば物語に見立てる理論。物語の筋書きにそった形で、物語上において有利になるように、自意識的な行動を行えば、世界は思い通りに動く、という理論。
具体的に語ろう。
絶海の孤島にある別荘に複数人の初対面の人とツアーで訪れた。その状況下で1人の人間が殺された。島の通信手段は全て断たれ、もちろん携帯も繋がらない。なおかつ島は台風に巻き込まれた影響で脱出不可能であると。そんな状況下で『こんなところにいたくない!私部屋に戻る!』といった人間がどうなるか、簡単に想像がつくだろう?逆にいかにもな風体で死体を調べ始めた人間がいれば、多くの場合そんな人間は物・語・的・に・は・最後まで生き残り、そして島から救助されるだろう?
具体的に語ろう。
夜道を歩いている時に意味の分からないほど巨体で強大な明らかな化物に襲われた。必死に逃げているその時に、その化物を一刀のもとに切り捨てる少女が現れた。少女は言うだろう。『このことは忘れなさい』と。この時『分かった』と答えれば物語ストーリーはそこで途切れる。だが『忘れられるわけないだろ!』と、そう答えれば?もちろん物語は続く。いいや、むしろそこから物語は始まるのだ。
つまり世界物語キャラクターストーリー理論とは、そういう理論である。
そしてその世界物語キャラクターストーリー理論における重要要素が称号キャラクター性。
称号キャラクター性とはその人間の根幹を表すものである。行動に付属するものでもあり、それでいて魂に由来するものでもある。外部と隔絶された空間で殺人事件が起こった際、犯人を見つけようと積極的に行動する人間は探偵ホームズだ。その人間を手伝う人間は助手ワトソンだ。登場人物キャラクターはその行動によって、その行動に沿った称号キャラクター性を得ることが出来る。
だが、それだけではない。それは世界物語キャラクターストーリー理論の一要素に過ぎない。確かに、行動によって新たな称号キャラクター性を得ることは可能だ。だが、少なくともこの世界■■においては、最初から固有の称号キャラクター性を持っている存在が複数いる。それは例えば主人公ヒーローという称号キャラクター性。あるいは最終敵ラスボスという称号キャラクター性。もしくは好敵手ライバルという称号キャラクター性。他にも他にも、最初から称号キャラクター性を持っている存在が多々いる。
それはこの世界■■が■■■■だからである。
故に、最初からそうであるものはただそうある。
対照的で対称的な2つの世界■■。■■と■■■■。縺昴%縺ォ螻槭☆繧九Δ繝朱#縺ッ、譬ケ譛ャ逧?↓逶ク縺?l縺ェ縺。つまりは■だ。上条当麻と白白白。御坂美琴と木原五行。アレイスター=クロウリーとGE13。コロンゾンとAdam。
核があるモノとないモノ。格が高いモノと低いモノ。
だからバックアップが欲しい。
だからこそ、勝ちたい。
故にこそ、いやあるいはだからこそ、それは最初から決着のついている勝負であるのであろうが。
- 147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/16(水) 19:17:30.93 ID:NvR0Tfn20
- 例えば、大切な人を目の前で失ったとして、どれだけの人間が冷静でいられるだろうか?恋人が死んだ、両親が死んだ、親友が死んだ。それを『ふぅん』の一言で片づけられる人間は、人間として適していない。人間なら誰であろうと涙を流す。涙を流さずとも悲しんでいる。
上条だって、もちろんそうで、そうなる。
はずがないだろう?
「おい!イン、デックス!?」
その呼称を使うのに躊躇いが無かったわけではない。上条の中ではもうインデックスという少女は『死んで』いる。人間という存在の個体識別性を外見ハードで見るか人格ソフトで見るかという問題には、多くの人は後者を選ぶだろう。
外見ハードと人格ソフト。それが2つ揃ってこその同一人物だ。少なくとも、人間の定義とはそういうモノのはずなのだ。
だからこそ異常なのは御坂美琴だ。御坂美琴は二重に異常だ。まずもって、劣化量産品クローンの身体に御坂美琴の個人データを入れた程度でそれを自身で御坂美琴であると再認識している。これは通常あり得ないことだ。自分がコピーされた存在であることに人間は耐えられない。変わりがいるということはいてもいなくとも変わらないという事。コピーであるということはいつでも消去できて、いつでも作り直せるという事。いくら切羽詰まった状況だったとしても、それを実行し、あまつさえ安定状態にあるなどあり得ない。
そしてもう1つ異常なのが、御坂美琴が外見ハードと人格ソフトを完全に個別で見ていて、御坂美琴にとっての『人間』というモノが人格ソフト単体であるということだ。つまり、人格が同じならば誰でもいいのだ。地球上に存在していなくても、ただの電子データでも構わない。御坂は人間を再定義して見せた。だから、御坂は妹達シスターズを1人も殺していない。それどころか妹達シスターズは今も2万人全員がちゃんと『生きて』いる。
それを分かっていなければ、誰も御坂を攻略することなどできはしない。
つまり、御坂美琴はもはや人間ではない。
そして、だ。
「――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――ぅ」
救済者であるならば、人間であってはいけない。
誰でも平等に手を差し伸べるということは、実の所誰も見ていないに等しい。
魔術的な意味ではなく、本当の意味での聖人は気持ち悪いモノなのだ。
『右の頬を殴られたら左の頬を差し出せ』。『汝の敵を愛せよ』。かつて神の子はそういったという。意味は分かるだろう?つまり争いは何も生まないと言っている。あるいは平和的な争いについて言っている。
だが、だ。
なるほど言葉の意味は分かる。大いに納得し、そして実行すべきことだろう。
だが、だ。
それを言えるとは、いったいどんな精神構造をしているのだ?
コロンブスの卵。追従ではなく率先することはとても難しい。言えるか?はたして?『右の頬を殴られたら左の頬を差し出せ』。『汝の敵を愛せよ』。そんな言葉を一番初めに言えるか?
だから神の子は神の子であり、それはもはや人間でありながら人間ではない。気持ち悪くて気味が悪い。
上条当麻という、いや神浄討魔という人間は、そこに片足を突っ込んでいる。
してきたことが信仰を生み、期待を生み、そして狂信を生んだ。今の上条では絶対に気付けないそれは、しかし確かに上条を縛っているのだ。
「ぁ、ああ?うん???……、……?????」
安全地帯、と■■は言った。
人を片っ端から救いあげる性質、と科学者は言った。
誰に教えられなくても、自身の内から湧く感情に従って真っ直ぐに進もうとする者、と天使は言った。
探してごらんよ。君らが思っているよりも、この世界物語はずっと歪んでいるから。
「えっ、と……?ごめんなさい。あなた、誰ですか?」
「――――――ぁ」
最も、だからこそ上条は主人公ヒーロー足りえるのだろうが。
世界物語キャラクターストーリー理論とは、運命論の一種である。ただし、世界を物語ととらえるのはあくまでも白白白の世界に対する見方の1つであり、それが絶対的に正しい解であるとは限らない。
例えば、だ。
運命論には世界物語キャラクターストーリー理論の他にも時間収斂バックノズルと代替可能ジェイルオルタナティヴという理論がある。
時間収斂バックノズルとは簡単に言ってしまえば時間軸と空間軸に捕らわれずに事象を確約する理論だ。時間跳躍や運命操作、因果律改変に上位存在による干渉を行ったとしても初めからそうであると決まっていることはそうであるようになるということ。特定の時間にそれが起きなくとも、起きると決まっている事象は些細な違いはあれど必ず違う場所違う時間で絶対に起こるというものであり、それを避けることはできないという事。
そして代替可能ジェイルオルタナティヴとは簡単に言ってしまえば特定個体論に捕らわれずに事象を書く託する理論だ。時間跳躍や運命操作、因果律改変に上位存在による干渉を行ったとしても起こることは絶対に起こるということ。誰かがやらなければならないことは、必ず誰かがやる。本来の誰かが懸命に固辞したとしても、その時は変わりの誰かがやるという事。
- 148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/16(水) 19:18:18.73 ID:NvR0Tfn20
- つまりは二重の意味で、決まりきったことは絶対的に変えられないという理論。すでに起こったことを変えることは難しい。あらゆる物事は外界によって客観的に観測されないと確定しない。個体による認識の確定には限度がある。それが多くの存在に認識されればされるほど、それは絶対的な核を持ち、不変の事実となる。
例えば、だ。
仮に時間跳躍によって世界が滅んだという事実を回避したとする。だが、世界が滅んだという事実は仮に時間跳躍による世界滅亡回避を行ったとしてもより上位の時間軸では消せるものではない。タイムリープモノの本を読んでいる時、ページをめくり返せばそこには世界が滅んだ事実があるだろう。つまりは観測されている。世界の滅亡は回避されていない。仮・に・世・界・を・物・語・と・し・て・見・る・の・で・あ・れ・ば・、既・に・起・こ・っ・た・事・を・回・避・す・る・の・は・あ・ら・ゆ・る・手・段・を・賭・し・て・も・不・可・能・に・近・い・の・だ・。
故に、それは起こった。
時間は違った。場所も違った。状況すらも違った。
しかし、それは過去に確かに起こった出来事で既に大多数に観測されていた出来事だ。例・え・既・に・切・り・捨・て・ら・れ・た・世・界・の・出・来・事・で・あ・ろ・う・と・も・起・こ・っ・た・こ・と・は・嘘・に・は・で・き・な・い・。世界というものは帳尻を合わせようとするものだ。
戦いは起こる。和解はなされる。負けを認める。勝敗は明確な形ではつかない。
だから、運命は残酷であった。
唐突に、だ。
カツン、と空間を音が渡ってきた。
「ッ!?」
その音に、誰よりも先に反応したのは上条であった。ビクリ、と身体を振るわせて恐る恐ると扉の方を振り返る。といっても現在上条たちがいるのはただの廃墟ビルだ。扉なんてないし、もっといえば窓にガラスすらも嵌っていない。だから正確に言えば、ドアを設置していたであろう場所を、と言った方が正しいか。
カツンカツン、と連続して音が響いた。
「あの、えっと、あなたは誰なんですか?……それにここは、……わたし、あれ……?わたしって、わたし、……わた、し……は?」
(どうする!?)
足音の主が気になる。だがそれ以上に、今のインデックス、いやもはやインデックスではない少女を放置しておくことはできない。修道服を着た少女は今非常に混乱している。錯乱していると言い換えてもいいかもしれないくらいには。
「わたし、なに……ひ、や、わたしって、だれなの!?なに、これ、やだ、やだやだ!!!なんで何もわからないの!?こんなッ、なんなの!!!???あなたは、っ、あなたがっ、わたしはなんなの!?」
「っ、落ち着いてくれ。……大丈夫だから!」
「大丈夫な訳ないでしょッ!!!何か、何か変な本が私に迫ってくるの!やだ、怖いよぉ!!!助けてよ、誰か!」
「俺はお前を知ってるから!」
少女に何が起きたかなど上条には分からなかった。ただ、少女がとても混乱していて、とても錯乱していて、とても怯えていて、とても正気ではなくなっていることは分かった。何が原因なのかはわからない。複数の人格を植え付けられていたはずの魔導書図書館Index-Librorum-Prohibitorumがどうしてこうなったかなど皆目見当がつかない。
だからもちろんかける言葉の全ては気休めで、解決策などなりはしない。
けれど、少女は縋れる人を見つけてしまった。
「あ、あなた、わたしのことを知ってるの!ちゃんと知ってるの!?ねぇ、わたしは『誰』なの!?なんで、わたしはわたしのことを何も知らないの!なんでわたしはわたしのことを何も知らないのに、変な本の、魔道書?の知識だけは全部わかるの!?」
「……知らない?」
「分からない。分からないのよ!なんで、なんでっ、なんで!!!全然分からないの!!!」
発狂した様にその長い銀髪を振り回し、何十本もの安全ピンで布地を固定しただけの修道服を思いっきり握りしめ、かつて上条にインデックスと呼ばれていた少女は喚く。
分からないから怖い。自分のことが何も分からないのに、妙な知識だけは十二分に分かるから。
「ううん。魔道書だけじゃない。魔術?っていうのも全部分かる!わたしは、わたしがわからないのにっ!!!」
動揺を隠そうともせず、少女はひたすらに訴える。全てはリセットされた。ゼロになった。初期化された。
今の少女には、魔術の知識しかない。
「ねぇ、わたしって誰?わたしって、どんな人だったの!?ねぇ、ねぇっ、ねぇっっっ!!!!!」
「お前、……記憶が、ない、……のか?」
「ないのよ!わたし、わたしは!」
「さっきまでの、ことも……?」
「さっきまで、っ……わたし、あなたと一緒にいたの?」
「あぁ、俺達はさっきまで」
「馬鹿、な」
静かな声だった。
目の前の少女の声にかき消されてしまいそうなほどに、小さい声だった。
でもなぜか上条の耳には聞こえた。
ずっと響いていた足音は止まっていた。
その声は上条の向いている方向とは逆方向、つまりは扉の方向から聞こえた。後方20メートルくらいの距離から聞こえた。
その声を、上条は知っていた。
「――――――」
上条は再び振り返った。修道服を着た少女から目を逸らすことはきっと少女を不安がらせるからしたくなかったが、それ以上にその声の主を無視できなかった。
だって、上条の予想通りならばそこにいるのは。
「……唖然。お前、は」
「な」
そこにいたのは、知り合いだった。
かつて をめぐって路地裏で戦い、 を守るために病院の屋上で戦い、そして一緒に屋上から落下した少年。
瞳で捉えた指定物体を捻じ曲げる能力を持つ、学園都市の『闇』の住人。
「瞬、瞬!?」
「……疑問。お前何故俺の名を知っている!?」
彼らは再び、いや三度であった。
まるで運命に導かれているように、出会った。
- 149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/16(水) 19:19:00.03 ID:NvR0Tfn20
- さて、ルート選択の時間だ。
君達の知っているインデックスは死んだ。
だから、魔術知識と魔道書知識以外の全てを喪った可哀想な少女に君達が施しを与えてあげよう。
個人を識別するための最重要要素、名前を。
『彼』の言う通り、未来は決まっているように思える。
だけど、『彼』はとても大切なことを見落としている。
もうこの世界は『彼』だけのモノではないということを。
調子に乗って、『彼』はやりすぎたんだ。
もはや黄金の真実を使うまでもない。最も、僕らは黄金の真実は使えないのだけどね。
さぁ、もう一度問おう。
選択の時間だ。
よく考えろ。
何十本もの安全ピンで布地を固定しただけの修道服を着た少女の新たな名前は何だ?
あくまでも『上』から目線で、君達が名前を付けろ。
記憶喪失コンビ結成です。良かったですね上条当麻。これでインデックスに自分は記憶喪失だっていう必要はなくなるよ!
しかし26話はよかったですね。アレイスターのアレイスターらしさはよく出ていたと思います。あの終わり方なら新約を買う新規さんも増えそうなので、その点ではJCSには感謝ですね。
次の更新は4月中には。
ちなみに今回の上条の選択は完全に正しい選択です。もし上条が修道服の少女を放置して足音の主を確認しに行ったら全てが終わっていました。文字通りに。
アンケートは↓だ。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=212103&uid=15850
活動報告からたどってもいけるけどね。
- 150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/16(水) 19:19:47.58 ID:NvR0Tfn20
- https://syosetu.org/novel/56774/177.html
とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六
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このための瞬瞬であったとも言える。
上条当麻と瞬瞬B 死者との再会
ひょっとしたら、その再会に一番驚いているのは瞬の方かもしれなかった。
「……唖然。どういう、ことだ?」
柄にもなく、そして非常に珍しいことに、瞬は一瞬躊躇った。普段の瞬であれば問答無用に攻撃していた。先手を取ることの重要さを知っている。後手にまわる人間は絶対にイニシアチブをとれない。先手を取る人間がいつも勝利する。
だが動けない。
考えることがあった。
「……逡巡。いや、まさか、だが」
超能力者予備集団セブンバックアップ序列第七位、視線歪曲オッキョクールヴァの大能力者レベル4、元十二暦計画カレンダプロジェクト第十計画『崩壊の十月実験』被験者ナンバー008、人類絶対悪ビースト位階総序列第三位全能存在パントクラトール木原五行によって整備された道人生をそうと知らずに歩いている瞬瞬は、自身の上にいるモノの意図を考えていた。
あれは、偶然ではなかった?
いったいどこから誘導されていた?
「……詰問。お前、天埜郭夜を知っているか?」
「天埜、郭夜?」
それは、上条の知らない名前であった。上条はま・だ・、天埜郭夜という極大にして極限の異常者には出会っていない。存在すらも知らない。
今は、まだ。
「……納得。そうか、……そういうことか」
瞬は納得した。前も、今も、この出会いは偶然だ。少なくとも上条にとっては偶然だ。そして瞬にとっても偶然。だが、これは仕組まれた偶然で、作為的な邂逅だ。そもそもがあり得ない。なぜ、瞬は8月28日のあの時あの裏路地で上条と白井に出会った?あの時の瞬は を誘拐していた。つまり表の人間には見つかるはずの無い絶対安全なルートを通っていた。なのに、捕捉された。その理由は何だ?
簡単だ。あまりにも簡単な答えだ。
だが、その簡単すぎる解答に今の今まで辿り着けなかった。瞬が馬鹿だったのではない。黒幕が賢すぎるのだ。そうと悟られずに演出した。いや、ひょっとしたらここで瞬が黒幕の意図に気付くことさえも策の内かもしれない。
常軌を逸した天才の考えることなど瞬には分からない。だがそれでも抗うと決めたのは瞬自身だ。
「……提案。話をしよう。俺達の間には、きっと誤解がある」
筋書きから外れて見せよう。
運命を覆そう。
蒼穹そらの彼方から瞬を見下すお姫様を嗤ってやろう。
まだ、何も終わってはいないのだから。
「誤解、だって?お前がフェブリのことを利用しようとしているのは事実だろうが!?」
「 ……?誰の事だそれは?マーチのことなら、お前達が冥土帰しヘヴンキャンセラーの病院に匿っているんだろう?」
「マーチ……?」
それは上条の知らない名前だった。病院にいるのは のはずだ。マーチ?誰だそれは?マーチなんて名前、上条には聞き覚えがない。
「……強引。まぁいい、そもそもお前はマーチをなぜ守ろうとしている。お前にとってマーチなどただの赤の他人にすぎないはずだろう?加えて言えばマーチは人間ではない。薬品を合成して造られた人外に過ぎん。ただ人の形をしているだけの存在だ。そもそもマーチの寿命はどれだけ長くとも後半年もない。そんな存在のために命を懸けるなど馬鹿らしいとは思わないか?」
それは限りなく本音に近い言葉だった。少なくとも、瞬ならば助けない。現在の瞬であれば、助けない。
一方で、上条は極大の違和感をもっていた。
(……マーチって誰だよ!)
何度でも言うが、上条が助けたのはマーチではなく である。少なくとも、上条の認識上ではそうなっている。そして、どうしてズレが生じたのか上条には分からない。前の世界で瞬が狙っていたのは で間違いない。だって、瞬が話していた。 と言っていた。なのに、今回の世界では瞬が狙っていたのはマーチだと?
(同じじゃ、ない?細部が、違う?)
この世界は、違うのかもしれないと思ってしまった。
もしかしたらこの世界は、
(前・に・い・た・世・界・と・は・違・う・?)
だが、それを深く考えている時間はない。そして1人で考え続けても答えの出るモノではない。その答えを知りたいのならば、犯人を見つける必要がある。世界を巻き戻した犯人を見つける必要がある。
とにかく今は目の前のことに集中するしかない。1つ1つ乗り越えていこう。順番に片づけていこう。そうして、必ず世界を救うのだ。
他でもない上条当麻が。
故に、まずは答える。
「だから引けって?随分勝手な理屈だな。赤の他人だろうが人間じゃなかろうが、目の前で泣いてるヤツを助けるのに、ごたいそうな理由がいるのかよ」
「……疑問。マーチはお前が命を懸けるのに値する存在だと?」
「当然だろ」
前も、同じような質問に同じような答えを返した。そして何度問われても上条の答えは変わらない。主人公ヒーローとはそういうものだ。
「……思案。そうか…………ならば」
そして上条がそう答えるであろうことは瞬も分かっていた。
青すぎるくらいに青い、絶望を知らない『表』の人間。きっと、信じているのだろう。全てを救えると。きっと、決意をしているのだろう。全てを救うと。だが、瞬は知っている。それがどれだけ荒唐無稽で不可能な砂上の楼閣の如き絵空事であると。
この世には、努力では届かない壁がある。
才能という名の壁が。
だから瞬は――――――。
「……立言。ならばこちらが引こう」
「は……?」
「正直な話、割に合わないと俺は思っている。俺達の新世界ジャイアントキリング計画にとってマーチは絶対必須のパーツではない」
嘘は言っていない。だが真実も言っていない。
瞬達の計画を達成するうえで『ケミカロイド計画』の産物は絶対に必要だ。だがそれは別にマーチでなくても構わない。現在『ケミカロイド計画』によって生産された個体はジャーニーとマーチの2人だけだ。しかし別に3人目を造れないわけではない。ジャーニーかマーチ、あるいは『ケミカロイド計画』のノウハウさえ手に入ればもう『スタディ』は用済みだ。
マーチは絶対必須のパーツではない。必要なのは、『ケミカロイド計画』の産物なのだから。
「俺達はマーチから、そして『スタディ』の革命未明サイレントパーティから手を引く。だからお前ももう俺達位階超越オーバーステップには関わるな」
「そんなんで、俺が納得するとでも思ってんのか!?」
「……冷静。ならどうするんだ?ここで戦うか?この俺と?」
両目を大きく見開いて、瞬は上条を威圧する。その視線が、わずかに上条の後ろにいる少女の方に向く。
そう、この場にいるのは上条と瞬の2人だけではない。明らかに場違いな少女がこの場にはいるのだ。
- 151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/16(水) 19:21:17.57 ID:NvR0Tfn20
- 「……人質。お前がどれだけ強いかなど俺は知らない。だが、お前の後ろにいるその女。その女は真実ただの一般人だろう。先ほどから明らかに怯えている。……そんな奴を、お前は巻き込むつもりか?」
「っ、お前!!!」
「……解明。俺の能力は視線歪曲オッキョクールヴァ。瞳でとらえた物体を捻じ曲げる力だ。そして俺の強度レベルは大能力者レベル4。右目でお前を牽制しながら左目で女を捻じ曲げることなど簡単にできる」
「っ」
その脅威を上条は理解していた。前の世界で白井と2人で戦った時は瞬によって白井の四肢を千切られたのだ。上条も決して小さくはない傷を負ったのだ。そして何よりも脅威なのは、瞬の能力チカラは瞬の全身に埋め込まれた98の眼球にも適用されているということだ。
自覚する。瞬の言っていることは正しい。上条では守れない。上条の攻撃手段に遠距離攻撃はない。つまり瞬と戦うのならば上条は嫌でも瞬に近づかなくてはならない。あの時のように、閃光手榴弾フラッシュグレネードなど持っていないのだから当然だ。そして上条が瞬に近づけば、必然上条とかつてインデックスだった少女の距離は離れる。まさか戦っている最中も常に近くにいろなんていえるわけがないし、今のインデックス、いや記憶を無くした少女にそれが出来るとは思えない。距離が離れれば瞬の少女に対する攻撃は防げなくなる。
つまり戦えばかつてインデックスと呼ばれていた少女が傷つくのは必至。
「……脅迫。お前の能力チカラももう分かっている。無効化系能力……、ただし範囲は右手のみ。確かに珍しい。能力チカラに頼りきっている雑魚では相手にはならないだろう。だが、その程度の能力チカラで俺に勝てると思うか?その女を守れると思うか?……種はもう、割れている」
「瞬!」
「……和解。引け、一般人。俺とお前が戦う理由など、もはやないはずだ」
理屈は理解できる。
記憶を無くした少女を守るためならば、それは最適解。
だから大人しくここは引くべき。
それが最善の解答。
だが、
(見捨てられるか)
別に上条は瞬瞬という人間の事を詳しく知っているわけではない。だが、少なくとも瞬が、多少の迷いはあれども幼女を誘拐できる人間というのは間違いない事実だ。マーチから手を引いたとしても、『スタディ』と手を切ったとしても、絶対に瞬はまた何かを始める。
新世界ジャイアントキリング計画。
その詳細など上条はもちろん知らない。だけどきっと、何か大きな企みのはずだ。何か大きな犠牲を伴う計画のはずだ。絶対に止めなければならない。つまり瞬を野放しには出来ない。ここで戦わなければならない。1周目では出来なかったが、瞬の心を変えなければならない。
だが、だがそれでは後ろにいる全てを喪った少女の安全が脅かされる。
だから上条は臆病になる。いつもなら踏み出せていたはずの足が踏み出せない。
故に、
「だめ」
そのバックアップは運命的な必然だった。
「っ」
その一言を絞り出すのに、はたしてどれほどの度胸が必要だったのだろう。
そのたった2音を言うのに、いったいどれだけの勇気が必要だったのだろうか。
本人ではない上条には決してわからないけれど、その横顔だけでも感じ取れるものはあった。
まるで、楽な方向に流れようとする上条を殴りつけるかのように未だ名の無き少女は上条の袖を引っ張りながら言ったのだ。
「それは、だめ、だよ」
口調は違った。雰囲気は違った。行動は違った。表情は違った。態度は違った。対応は違った。空気は違った。音程は違った。
だけど被った。思い起こされた。
「イン」
「わたし、何も知らないけど!確かにあなたの言う通り部外者だけど!」
きッ、と、
名と記憶を喪った少女は宣戦を布告した。
「でも違う。そうじゃない。あなた、間違ってる!」
はっきりと断言した。善悪を判断したのではない。好悪で判断したのだ。お前が嫌いだと、少女は突きつける。
今この時の主人公ヒーローが上条当麻だとするのならば、
今この時の庇護対象ヒロインは間違いなく名を喪った少女だった。
そして、
そして、
そして、
初めて、瞬の興味が少女に向いた。
「……憮然。随分とまぁ、ボロクソに否定してくれる。何も知らない、部外者ごと」
瞬が、
瞬の瞳が、
かつてインデックスと呼ばれていた少女を、
今では魔術知識と魔道書知識外の全てを無くしてしまった少女を、
捉えた。
「…………………………………………………………………………………………………………………」
捉えてしまった。
「―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――ぇ」
か細い声だった。
動揺に揺れていた。
それは、数年ぶりの感情。
それは、数年ぶりの感傷。
仕組まれた邂逅であると、瞬は思っていた。上条と瞬は、黒幕によって出会うように仕組まれていたのだと。だが、違う。いや、間違ってはいないがそれでも違う。天才とは凡人の予想の範疇に収まるモノではなく、凡人の想像の範疇に収まる者でもない。
改めて、歓迎しよう。
その邂逅は、仕組まれた偶然必然だった。
- 152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/16(水) 19:21:52.07 ID:NvR0Tfn20
-
「――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――目め、次つぎ?」
瞬瞬という人間も、過去は善人であった。
だが過去は人間という存在の核を変え得るものだ。
親は強盗に殺された。
妹は自殺した。
訪れた街は燃えた。
木原五行はそれを瞬の体質のせいだと言った。なるようにならない最悪If nothing is bad、その不完全版のようなものだと。事故頻発性体質だと。
瞬は、それを信じてしまった。それほどまでに瞬は不幸で、弱かった。
「お前、」
焦がれる様に、熱い顔。
求める様に、伸ばした手。
灼かれる様に、罪深き声。
「お前、――――――生きて、いた、……のか」
蒼穹宇宙の果て彼方で、
瓶竹の中から生産まれた天埜郭夜輝夜姫が、
嗤っていた泣いていた。
忙しくて小説が書けない→クオリティが落ちる→出来に納得がいかない→修正→忙しくて小説が書けない……のループに陥ってしまっている。
このままではダメだ。どこかで挽回しないと……。
- 153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/16(水) 19:22:19.70 ID:NvR0Tfn20
- https://syosetu.org/novel/56774/178.html
とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六
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終わらないよ。完結させるまでは終わらない。まだ、まだまだ書きたいことは幾等でもあるんだからな!
というわけで遅れましたごめんなさい。待っててくれた人は本当にありがとう。どのくらいのペースで投稿できるかは分かりませんが、これからも書き続けていきますよ!
廃墟での戦い@ 再会は銃声と共に イギリス@ 人が人外と共にある国
それが仕組まれたことなのかなど瞬にとってはどうでもよかった。重要なのは、もう絶対に会えないはずの人間と会えたことだ。
奇蹟。とても簡単にそう言ってしまってもいいのかもしれない。
策謀。その果てにある結果なのかもしれない。
しかしそれでも全然構わなかった。利用されている?構わない。踊らされている?問題ない。嗤われている?気にしない。だって、今目の前にいる。後悔の源泉。過ちの過去の象徴。助けられなかった最愛。
瞬瞬は、数年前に実の妹を喪った。
目に入れても痛くないくらい可愛い妹だった。両親を強盗に殺されて以降、たった2人の家族だった。だが、妹は自殺した。ありふれた理由だった。親の死んだ瞬兄妹を引き取った孤児院の院長による性的暴行。くだらない。どこにでもあるような話だ。
瞬は、気付かなかった。気づくことが出来なかった。全てが終わった後に思い返せば、予兆はいくらでもあったというのに。大切だという言葉は口先だけだった。大事にしたいと思いながら行動が伴っていなかった。愛していながら真正面から見ていなかった。
そして人は時を越えられない。故に瞬の時間は止まったまま。失った喪ったウシナッタモノが戻らないから、代替原理の代わりを求めて幽鬼のように彷徨った。
だがしかし、もうそれをする必要はない。
いる。
確かに、
会えないはずの、死んだはずの、救えなかったはずの、瞬の実の妹。
家族。
「は「は「は」
ふらふらと、一歩。
くらくらと、二歩。
はらはらと、三歩。
顔を手で覆い、泪を流して、狂ったように、
笑う。
笑う。
笑う。
「は!「はは!「ははは!「はははは!「ははははは!「はははははは!」
怯える少女が瞬の目には映っていないのか。
竦んでいる少女の姿が瞬の眼には映っていないのか。
少女を守るように立つ上条のことが瞬の眼には映っていないのか。
ただ、求めるだけ。
「……感激。生きて、いたのか」
一方的な愛はただの執着だ。
一方向の愛はただの妄執だ。
互いに思いあってこその家族。互いに満たし合ってこその家族。絶対に、押し付ける様な事があってはならない。
「目次めつぎ!」
瞬瞬。
現超能力者予備集団セブンバックアップ第七位。視線歪曲オッキョクールヴァの大能力者レベル4。
闇の中で絶望の海に浸かる子供達を救うために、新世界ジャイアントキリング計画を実行している悪党。だがその根源には善性がある。あの時、燃え盛る街の中で現人類絶対悪ビースト位階総序列第3位、木原五行にさえ出会わなければ瞬はこんな風にはならなかっただろう。
妹を救えなかったという後悔をつかれ、五行に誘導された結果だ。だがその責任は瞬にある。転嫁してはならない。純粋な善意は時に純朴な悪意に転じる。自覚無自覚は関係ない。ただ、そういう結果があるのだ。
故に恐怖。
「ひっ!」
かつてインデックスと呼ばれた少女、今はエピソード記憶の全てを喪ってしまった名も無き少女からすれば、瞬は初対面の誰かさんに過ぎない。なぜ、これほどまでに自分に執着しているのか分からない。目次?誰の事だそれは?自分の事なのか?それさえも分からないから、ただ只管に怖い。
アイドルに纏わりつくストーカー犯罪者と変わらない。知らない誰かの狂気的な瞳。その瞳を向けられるだけで、膝が崩れる、身体が震える、涙が出て来る。何もない少女、全てを喪った少女、名前の無い少女。
少女は弱かった。
思わず、隣にいる上条に抱き着いてしまうほどに。
- 154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/16(水) 19:23:01.67 ID:NvR0Tfn20
- 「っ……!?」
そんな目次の行動を見て、瞬はひどくショックを受けたような表情をした。避けられたという事実、そして目次が頼ったのが瞬ではなく上条であったという事実にひどく打ちのめされる。
瞬は少女の事情を知らない。少女が記憶喪失であることを知らない。だから、とてもショックを受けた。肉親よりも敵を頼った。少女の行動は瞬を否定するモノだった。
だが、めげない。
それでも、求める。
「……紹介。目次、俺だ。瞬だ。……分からないか?確かに、俺もひどく変わったからな」
その変わり身に突破口を感じたのは上条だった。理由は全く分からないが、瞬は少女を求めている。つまり、逆説的に考えれば少女こそが瞬を説得するための切り札カード。
話が通じるということは、心を変えられるということ。
か・つ・て・偽善使いフォックスワードと・自・称・し・て・い・た・上・条・は・そ・の・や・り・口・を・使・う・こ・と・が・出・来・る・。
記憶はなくとも、魂には刻まれているから。
「……瞬。お前は、コイツの……いや、インデックスの何なんだ?」
「……懐疑。インデックス?それは、目次のことを言っているのか」
「……………………?」
食い違いが発生していた。上条はインデックスと呼ばれていた時代の少女を知っていて、瞬は目次と呼ばれていた時代の少女を知っている。そして2人は共に、少女が目次でもインデックスでも無かった時代の事を知らない。
少女がどれだけ過酷な人生を歩んできたのか、2人は知らないのだ。
「……返答。俺は目次の兄だ」
「兄!?ちょっと待て、ならお前もイギリス清教の魔術師なのか!?」
「……不明。魔術師?何のことを言っている、とにかく目次は俺の妹だ。お前と目次にどんな関係があるかなど知らないが、目次を返してもらおう」
「兄…………?」
名前を持たない少女が呟く。それは驚くほどに空虚で現実感の無い妄想染みた言葉だった。兄、兄貴、お兄ちゃん……。どれも、しっくりこない。
分からないのだ。
思い出を喪ってしまった少女には、何もないから。
「お兄、ちゃん……?」
だが、思い出を喪ったのならまた紡げばいい。少女には未来があるのだから。少し前に全てを喪った少女。しかし、少女には頼れる人がいる。目を覚ました時に傍にいた上条は少女に優しくしてくれたし、自らを兄と名乗る男も雰囲気や目つきこそ怖いが、少女に優しくしてくれるだろうことが分かる。
だから、少女はそっと顔を上げた。
そして、右手で上条の服を掴んだまま瞬の事を見る。
「……歓喜。帰ろう、目次。お前に何があったのか、俺には分からない。だが、俺が!今度こそお前の事を必ず幸せにしてやるから!!!」
「ぁ」
死別したと思っていた家族との再会。もう二度と会えない人と会えた奇蹟。求めて縋って恋焦がれ、暴走した果てに手に入れた結末。
それなのに、現実は過酷だった。
「残念だ、カミやん」
ドン、と、
一発の銃声が、鳴り響いた。
- 155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/16(水) 19:23:36.67 ID:NvR0Tfn20
- 一般的には知られていないことではあるが、ヨーロッパはもう死滅している。
比喩ではない。単なる事実だ。イギリス、アイルランド、フィンランド、ドイツ、イタリア、フランス、ベラルーシ、オーストリアなどなど、一般的にヨーロッパ圏といわれている国々は壊滅状態に陥っている。懸命な復興と必死な隠蔽によって幸いにも表には出ていないが――まぁ、何の意味もない事実であろう。
無論、その原因はヨーロッパ全土を舞台に起こった最悪最低のデスゲーム――善悪生存戦争デッドエンドゲーム=DEGだ。
8年前に第一回DEGが起こり1人が勝ち残った。
7年前に第二回DEGが起こり1人が勝ち残った。
6年前に第三回DEGが起こり1人が勝ち残った。
5年前に第四回DEGが起こり1人が勝ち残った。
4年前に第五回DEGが起こり1人が勝ち残った。
3年前に第六回DEGが起こり1人が勝ち残った。
2年前に第七回DEGが起こり1人が勝ち残った。
そして1年前、善悪最終生存戦争ファイナルデッドエンドゲームが起こりヨーロッパが滅んだ。
『ひひ』
ウィンザー城。
英国イギリスが誇る、ヨーロッパ全体から見ても長きに渡る歴史を持つ英国君主の公邸。その中を、奇妙な生物が徘徊していた。
『いひひ。いひひひひひ』
その生物は全体的に透けていて、その上で背中に翼をはやしていて、さらにはしっぽのようなものまで持っていた。塵クズを寄せ集めて作った不格好な汚らしいロングスカートドレスに、触手のようなうねうね蠢く髪。その癖中途半端な人型を保っているから、見る人間を余計に不快にさせてしまう。
その生命の種族名は悪魔。
固体名はクリファパズル545。
本・来・で・あ・れ・ば・ア・レ・イ・ス・タ・ー・に・よ・る・英・国・襲・撃・を・防・ぐ・た・め・に・コ・ロ・ン・ゾ・ン・が・用・意・し・て・い・て・防・衛・機・構・の・1・つ・。
そしてその隣を歩く人物こそが、現在のイギリスの核の1つ。
「くそ」
『いひひひひ。いい加減に受け入れたらどうですう?こうすることでしか、生き残る道はないって』
「っ、黙れ!!!」
第二王女、キャーリサ。現在の『騎士派』の事実上のトップであり、イギリス三王女の中でも『軍事』の才に秀でし傑物。
しかし、その才を振るう暇もなく、ヨーロッパは壊滅した。
「…………くそっ!」
口汚く罵りっても現状が回復しないことはもう知っている。だからこそ、求めているのはこの災厄を覆すことの出来る切り札カードだ。キャーリサは今、その切り札カードを作ることの出来る人物の部屋を訪れるところだった。
「もどったし」
扉の前に立ち、そう言葉を投げかける。最高レベルの魔術的防御と最高レベルの科学的防御。趣の違う2種類の防御を無理やりぶち破って部屋の中に入ることなど、キャーリサにも出来ない。
『山と言えば』
「海の方がいいし」
合言葉によって扉が開く。そしてキャーリサは若干の楽観的希望論をもって部屋の中に入った。
部屋の中には既に女性が1人いた。
「なんだ、お前も来ていたか。ヴィリアン」
「姉上……。やはり、私は…………」
「お前の妄想は聞き飽きたし。具体的なプランもなく、この事態を『仕方ない』なんて甘受するだけなら、とっととここから去るがいいし」
「姉上ッ!?」
信じられない言葉だった。少なくとも、今のヴィリアンにとっては。
だって、キャーリサは知っているはずだ。今のヴィリアンがどういう存在なのか、より正確に言うのであれば今のヴィリアンに何が憑りついているのか。
『それ』は、キャーリサとヴィリアンの間にある齟齬に敏感に反応した。――キャーリサはヴィリアンを遠ざけたいと思っており、そしてヴィリアンはキャーリサ達を手伝いたいと思っていた。2人の間にある無理解と不寛容。それが即座に物理現象として現実世界に出力される。
「ぐッ!!!???」
キャーリサの肌に蛇が噛みつく。それも1匹ではない。10匹、100匹、いいやそれ以上の数。ヴ・ィ・リ・ア・ン・の・髪・の・毛・の・本・数・分・の・蛇・が・キ・ャ・ー・リ・サ・に・噛・み・つ・く・。
- 156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/16(水) 19:24:12.15 ID:NvR0Tfn20
- 「まっ、やめてぇ!!!」
制止の声を上げるヴィリアンだが、そんな命令を蛇たちが従うはずがない。10万匹以上の蛇たちはヴィリアンの命令に従うではなく、ただ作られた機能を果たすだけなのだ。
蛇たちの攻撃が終わる頃にはキャーリサの身体は噛み傷だらけになっていた。
「っ、姉上!大丈夫ですか姉上!」
「この程度の不理解にも反応するか……」
『いひひひひひひひひひひひひひひひ。優しいですう、ご主人様は☆』
10万の蛇。うねうねと蠢くヴィリアンの髪の毛。1年前の善悪最終生存戦争ファイナルデッドエンドゲーム以来、イギリスは変わってしまった。人が生きられない土地になってしまった。だから、ヴィリアンも変わるしかなかった。その身にある全ての髪の毛を蛇に変えてでも、生きるしかなかった。
それはとても簡単な結論であった。
世界が現在の人類では適応できない環境に変化したというのならば、人類の在り方そのものを変えてしまえばいい。ある意味では諦め、ある意味では縋りつき。だが、その解決策がイギリスに住む人間を救ったのも事実であった。
ワ・チ・ェ・ッ・ト・=・レ・ト・。
大悪魔コロンゾンが用意した対アレイスター用霊装神威混淆ディバインミクスチャの1つ。
その霊装をイギリス第三王女ヴィリアンは使ったのだ。
生き延びるために、生き残るために。
「ぅぅう、……どうして、こんなことに」
『泣き言はもう聞き飽きたわ。だから、そろそろ本題に入ってもいいかしら』
けれど、だ。
悪魔クリファパズル545と契約して生き延びた『軍事』の第二王女キャーリサ。
神威混淆ディバインミクスチャにその身を捧げて生き延びた『人徳』の第三王女ヴィリアン。
彼女達2人はまだ、肉の器を保っているという意味でマシな方である。
このレベルの悪意でさえ、まだ薄味。
少なくとも、医学的な観点では死んでしまったと言えるリメエアよりはマシなのだ。
『最も、そのまま姉妹仲良く乳繰り合うというのならば私は別の『鏡』に身を映すけれど』
「ほざくな姉上。いいから早く本題に入ったらどうなの」
『あらそう?』
鏡に映るリメエアの姿に向かって、キャーリサがそう答える。
最も、鏡に映るといっても、この部屋の中にリメエアはいない。それどころか、リメエアはもうこの世に存在しない。
善悪最終生存戦争ファイナルデッドエンドゲーム。1年前に起きた最悪のゲーム遊戯に『明け色の陽射し』サブリーダーパトリシア=バードウェイと共に立ち向かったリメエアはそこで国境なきテロリストTerroristes Sans Frontièresに殺された。
だが、リメエアはただでは殺されなかった。己の肉体をもとにパトリシアに善悪最終生存戦争FDEGを終わらせるだけの力を与え、そして余った魂を身魂の別離アナザーディメイションという魔術を使って鏡の中に映したのだ
身魂の別離アナザーディメイション。
古来より鏡の映る像というのは神聖視されるものである。『白雪姫』における『魔法の鏡』などはそれを表す筆頭だろう。鏡に映る像が、元となった人間とは別の行動をとる。身魂の別離アナザーディメイションはそういうあいまいな伝説をもとにした魔術だ。
肉体が滅んだ彩、鏡の中に魂を映す移す。リメエアはそのようにして、ヨーロッパ壊滅から生き延びた。故に、リメエアは鏡の中でしか生きられない。あらかじめ術式を仕掛けておいた鏡にはリメエア自身の意志で映ることが出来るが、仮に術式を仕掛けた鏡が1つもなくなってしまえば、その時がリメエアの魂の死と言えるだろう。
「…………………できたのか?」
『大まかには』
「そうか、……なら、私は行く」
「姉上っ!」
「私が、行く」
血だらけの身体に、傷ついた心。諦観と絶望に満たされそうになる魂を、それでも誇りと自負、そしてイギリスという国にそこに暮らす6000万以上の人々を想って繋ぎ止める。
あの日、何でもすると決めた。
何をしてでも国を、国民を守ると決めた。
例え世界最低の悪となり果てようとも、それでも守ると決めたのだ。
少女1人の犠牲でイギリスを救えるのであれば、安いモノだろう?
「新たなる魔導書図書館インデックス、……この国を守るために、せいぜい使い潰させてもらうぞ」
外部からのあらゆる干渉を拒絶する鋼鉄の意志を持って、英国第二王女キャーリサはそう宣言した。
久し振りの投稿で伏線を増やしていくスタイル。
学園都市書くの飽きたからしばらくは佐天さんサイドか上里サイドを書くことになるかもしれないです……。
- 157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/16(水) 19:52:53.63 ID:NvR0Tfn20
- ちかま ID:EYbP0TXs 2019年06月18日(火) 10:26 (Good:0/Bad:0) 報告
そんなのが12人いるんじゃ未踏級以下の禁書勢は蹂躙されるだけですね
返信:一二三四五六 2019年07月21日(日) 22:15
感想ありがとうございます!
理外人外はマジで生きる世界が違うからしょうがないですね……。奴らはステージが違う。といってもパトリシアや能兎黒栗がやろうとしてるみたいに|物語の破綻《ロジックエラー》によって対抗することはできますが。
これからも精進して参りますのでどうかよろしくお願いいたします。
- 158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/17(木) 05:17:16.82 ID:Wwc1Y7nt0
- こんな物より上条さんが無双するSSが読みたいわ
- 159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/17(木) 18:06:12.63 ID:q4kmqJxf0
- 作中の女キャラは全て上条さんの物だ
- 160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/17(木) 19:05:49.69 ID:E68TXkFso
- 禁書のss見るといつも上条さんはこんなことしてられるほどスケジュールに空きがあるのか?って思っちゃう
原作の上条さんのスケジュールにオフの日ってどっかあったっけ?
- 161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/17(木) 19:10:21.92 ID:E8PWYGZK0
- 上条さんは戦場か病院のベッドの上でクリスマスやお正月やバレンタインデー迎えそう
- 162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/17(木) 19:12:38.52 ID:l6aSQntV0
- https://syosetu.org/novel/158074/71.html
とある暗部の御坂美琴(1周目) 作:一二三四五六
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13のルールE 佐天涙子の左手親指
手の指というモノは基本的に3つの骨で構成されている。爪が付属している末節骨、中節骨、基節骨である。ただ、そのうち中節骨は5本の指「ぎっ、い゛じっ!あ゛ばげッ!?」の内の4本にしか存在しない。つまり母指には中節骨は存在しないのだ。この理由は母指、すなわち親指の関節の自由度を上げるための構成である。親指は2つの指節骨しか持たない故に「ああああああああああああああああああああああッッッ!!!!!」母指端を使って円を描くような動きを与えられる。他の指は中手骨同士の関節を含むためにこの動きは親指がもっとも得意なのだ。(ぶっ、くァ!か、噛め噛め゛噛め躊躇う゛なッ!!!) そして人間が痛みというモノを感じるシステムだが、これは案外複雑に出来ている。まず、人は痛みを感じたとしても傷つけられた部位で痛みを感じているわけではない。痛みを感じる部位は脳だ。まず、傷ついた「いだい゛い゛だい痛いぎだ遺体イタイ゛い゛だい゛い゛いいぃぃいいぃ゛ぃぃぃい゛い゛ぃぃいッッッッッ!!!!!」部分に存在する末梢神経の先端にある侵害受容器が刺激を感じ、そこから末梢神経へと刺激が伝わる。そしてAδ線維とC繊維がその刺激を中枢神経へと伝え、脳の視床、体性感覚野、帯状回、前頭葉、小脳などに刺激を伝えることで初めて人は痛みを感じることが出来る。つまり連鎖反応なのだ。連鎖反応だからこそ、その連『口の中に人肉がある口の中に人肉がある口の中に人肉がある口の中に人肉がある口の中に人肉がある口の中に人肉がある口の中に人肉がある口の中に人肉がある』鎖の一部でも断絶させてしまえば人は簡単に痛みを感じなくなるのだが人体に関して造詣が深い人間ならばそんな馬鹿なことはしないし出来ないだろう。なぜなら痛みは重要なセンサーだから。痛みというのは重要な感覚だから。痛い、痛み、痛覚というのは自身の存在を自覚する上で必要不可欠の事象なのだ。仮に痛覚が存在しなくなれば人は己の身体を認識できない。人間は『口の中に佐天の肉がある口の中に佐天の肉がある口の中に佐天の肉がある口の中に佐天の肉がある口の中に佐天の肉がある口の中に佐天の肉がある口の中に佐天の肉がある』己の身体を認識するのに視覚でも聴覚でも味覚でも嗅覚でもなく触覚を使っている。触覚、つまりは痛覚だ。ここにいる、ここにある、と認識するためには痛覚は必須なのだ。でなければ狂う。モノを触ってい『口の中が佐天の血液で満ちる口の中が佐天の血液で満ちる口の中が佐天の血液で満ちる口の中が佐天の血液で満ちる口の中が佐天の血液で満ちる口の中が佐天の血液で満ちる』るのに触れている感覚がないのであればモノを触っていないも同じだ。痛覚がないのならば歩いている時に足は地面からの反発を感じず、傷を負っても気付けない。ステージ4の癌を患っていたとしても死んでも気付けず、後ろから切りつけられても見えてないから何をされたか分からず、見えず聞こえないなら全てないも同然。それが(熱い厚いあつい篤い暑いあついアツい温井熱い厚いあつい熱い熱い熱い熱い熱い熱い!!!!!) 痛覚を喪うということだ。だからどんな人間でも正気であるのならば痛覚の除去は行わない。だが一方で痛覚を消してしまいたいと思ってしまうような状況がないわけでもないのだ。極限下の痛みに襲われている時、左手親指を噛み千切られている真っ最中なんかはまさしく痛覚を消し(ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!) てしまいたいと思う事だろう。つまり今の佐天のような状況なら。さて、では痛みに関する講義が一通り終わったところで次は歯についてにでも語ろうか。歯。人間の歯というのは基本的には28本ある。永久歯が28本という意味だ。そしてこの歯にもしっかりと感覚はある。神経が通っている。いや、正確に言えば神経ではないが、歯髄と呼ばれる疎線維性結合組織が俗に歯の神経と呼ばれているのだ。この歯髄は象牙質の産生や『違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感』刺激に対する修復象牙質の産生、さらには歯牙の感覚などの機能が存在している。そして歯髄は刺激に対して疼痛の反応を示す。といっても歯髄には圧覚や温覚などは存在しないので、熱さや冷たさなどは全て疼痛として処理されるが。なお、完全に余談だが、人類が体験可能な最高の痛みは歯にフッ化水素酸(気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い) を直接塗られることだ、という話がある。
- 163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/17(木) 19:13:19.44 ID:l6aSQntV0
- この事象は現実に起こっており、実際に歯にフッ化水素酸をぬられた人間は2メートルも飛び上がり、後日死亡したという。話は逸れたが歯についての話を続けてみよう。永久歯は3種類が存在する。モノを噛み切る切歯。切歯には中切歯と側切歯の2種類がある。モノを切り裂く犬歯。これは犬歯の1種類のみだ。モノを磨り潰す臼歯。この臼歯には第1小『不快不快不快不快腐海深い深い腐海不快不快不快不快不快腐海深い深い腐海不快不快不快不快不快腐海深い深い腐海不快不快不快不快不快腐海深い深い腐海不快不快不快不快不快腐海深い深い腐海不快不快不快不快不快腐海深い深い腐海不快不快不快不快不快腐海深い深い腐海不快不快不快』臼歯、第2小臼歯、第1大臼歯、第2大臼歯、第3大臼歯の5種類がある。そしてこれらはそれぞれ上顎と下顎、左右に存在する。故に上条が佐天の指を噛み千切るのだとすれば、使うのは切歯か犬歯がいいだろう。指を噛み千切ると言っているのに磨り潰す歯である臼歯を使うのはいただけない。いただけないが、果たしてこの極限状況下でそんな冷静な判断を下せる人間がどれほど存(硬ッ、噛み切れな――――――)在するだろうか。よほど冷酷な人間かはたまた慣れている人間でない限り、どうしたってどの歯で噛み千切ろうなんて考えは出ないだろう。とはいえ普通に指を噛み千切ろとするのならば自動的に切歯か犬歯を使うことになるのも事実ではある。臼歯はイコールで奥歯だ。実際に指を口に突っ込んでみれば分かるだろうが、指を噛み千切「いいいいぎぃぃぃぃいぃぃいぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいがあああああああああああああッ、ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァッッッッッ!!!!!…………!?………………………、――――――あ?」る部分は指の第二関節あたりになる。そうすると当然切歯か犬歯が第二関節あたりに接触することになる。故に臼歯は指を噛み千切る部分に接触しない。だから実はどの歯で噛み千切ろうなどと考えなくてもいいのだ。とはいえまぁ、だからといって簡単に噛み千切れるかといえばもちろんそうではない。一番問題となるのは指を噛み千切(くち、あい……?おわ、っ……ひゃ?)る際の口内の感触だろう。指を歯で噛み千切ろうとすれば当然噛み千切ろうとしている指の断面から出血が起こる。つまり噛み千切ろうとする人の口内が噛み千切られている人の血で満たされるとはいかないまでも侵されるということだ。血を舐めたことくらいなら誰しもあるかもしれない。し(これ噛み千切れるのか!?……もう1回、……[ピーーー]気で……ッ!?)かしコップに満たされた血液をトマトジュースのように一気飲みしたことがある人はなかなかいないだろう。指の断面から起きた出血は口内を容易く血液で満たせるほどに大量で、多量だ。そしてそ「かみ、じょさ」の感覚はよほど逸脱した精神性を持っている人間でない限り絶対に不快感を催す。血液の味、これは何とも形容しがたいモノで、どうしたって非日常故に。そして血液だけではない。噛み千切る側は噛み千切られる側の肉を喰うことになるのだ。肉、肉片、皮膚片といってもいいだろう。噛み千切る際に出た人肉を喰らう『だからもう1度噛んだ。今度こそ噛み千切れるように、全身全霊で噛んだ』とになる。もちろんそれは血液ほど口内を侵すモノではないが、しかし絶対に不快感はでる。それ以上に歯で肉を喰らう感覚。ブチブチと千切れる筋線維。皮膚の絶妙な柔らかさと反発感。すぐ下にある骨の硬さ。全て全てが一度に歯髄を通して脳に殺到するのだ。
- 164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/17(木) 19:13:55.38 ID:l6aSQntV0
- 『噛み噛み咬みかみ咬み噛みカミ噛みかみ咬みかみカミかみ噛み噛み噛み噛み咬みかみ咬み噛みカミ噛みかみ咬みかみカミかみ噛み噛み噛み噛み咬みかみ咬み噛みカミ噛みかみ咬みかみカミかみ噛み噛み噛み噛み咬みかみ咬み噛みカミ噛みかみ咬みかみカミかみ噛み噛み噛み噛み咬みかみ咬み噛みカミ噛みかみ咬みかみカミかみ噛み噛み噛み噛み咬みかみ咬み噛みカミ噛みかみ咬みかみカミかみ噛み噛み』人の指を噛む、噛み千切る。皮膚を切り裂き、筋肉を断ち切り、骨を砕く。噛み千切る側にとっても悪夢、いやまだ悪夢の方がましだろう。等活地獄に落ちるのと同等の精神的苦しみを味わうようなモノだ。そしてきっと噛み「い゛ッ!?ぎぃ、ぎょべびふ゛ッ、あ゛ひばびゃあぁぁあぁ゛ぁぁああ゛ぁ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ああぁああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁあぁあああああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ああ゛あああ゛あああああああああ゛あ゛あ゛ああああああああああああああああああああッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!?????????????」千切られる側は噛み千切る側よりも圧倒的に苦しい。自分の指が手から離れていく感覚。その痛みをゆっくりじっくりまじまじと堪能することになり、五指が四指になる過程を痛覚で体感することになる。どれほどのショックを受け、どれほどのトラウマになるだろうか。しかもそれが自分から進んでではなく強制的になのだからそれは当然痛い痛い死にたい死にたくなるだろう。『終わってなかった上条は1回じゃ佐天の指を噛み千切りきれなかった躊躇があったのかもしれない躊躇いがあったのかもしれないふざけた気遣いがあったのかもしれない絶叫で口を閉じる力が弱まったのかもしれないだから2回目があった。2回口を閉じることになった』落差。10メートルの高所から落ちるのと100メートルの高所から落ちるのでは当然後者の方が落下ダメージが大きい。では精神的なダメージの話をしよう。虐められている人間は心に傷を負う。誰も助けてくれない現状に悲観して自[ピーーー]る。では誰かが助けてくれれば心の傷は治るのか。いや治らない。精神に負ったダメージは必ず残るモノだ。記憶は消えない。想い出は無くならない。そして1度(今度こそ噛み切れ、えッ!)は助けてくれた人がなぜか裏切って虐める側に加担することになればたぶんもう2度と立ち直れない。偽りの希望に縋ればそれに頼らざるを得なくなり依存するから。最底辺から救い上げて高所に登らせてあげた。そこからもう1度最底辺に落ちる。極上の逸品を食べなれた人間がファーストフードをまずいと感じるように、金持ちが貧乏人になっても金持ち時代の金銭感覚を忘れられないように。それはそういうモノで、そういったモノだ。だから佐天はもう二度と上条の友達にはなれないかもしれない。事実はどうでもよくて、ただ客観的に上条に裏切られたと感じてしまったのならば。
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