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とあるシリーズ(禁書目録&超電磁砲)SS雑談スレpart21
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/13(日) 18:09:45.40 ID:r0uYJLf+o 止めろガイジ
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 18:10:19.39 ID:yAhm9urX0 「とわいえ外部と接触する手段がないのも事実です。だから」 「邪魔するぜ」 それはまるで図っていたかのようなタイミング。 偶然にしては出来過ぎていて、重軽の意図を外した出来事。 ここで1人、メンバーが追加された。 前史ではいなかったはずのメンバーが、前史では関わらなかったはずのメンバーが、まるで上条の代わりに補充されたかのように病室の中に加わった。 「……誰、ですか?」 その風貌に佐天は気圧された。 左目が閉じられている。まるで漫画のキャラクターのように大きな刀傷のようなモノが額から左頬にかけて奔っている。戦いの結果として出来た傷なのだろう。それだけ壮絶な戦いだったのだろう。 佐天が今まで見たことの無い人種だった。 だから口元を手で覆う。直視できない。非日常。 「オレか?オレは」 「糸獅子宍しししし死屍しし、なぜあなたが?」 新たなメンバーの名は糸獅子宍しししし死屍しし。糸獅子宍ししししが名字で死屍ししが名前。 風紀委員本部セントラルジャッジメントのメンバーの1人。 白井の超能力チカラの暴走によって崩壊した病室の補修を頼んだ人間。 「うちの部隊のトップからの指示だぜ。重軽、オメェはここで待機だぜ」 「っ、待機!?今日中に計画を説明しないと間に合わなくなると言ったのわ風紀委員本部セントラルジャッジメント側ですよ!」 「んなこと知ってるぜ。その上で待機命令が出てんだぜ。まっ、きっと事情が変わったんだぜ」 「っ!?」 その事情が変わったのは重軽が上条と白井の首から『ストロビラ』を抜いたからか? それとも上条が酷く憔悴した様子で飛び出していったことを察知したからか? まさか重軽が冥土帰しヘヴンキャンセラーに頼んでいたことがばれたのか? 「そういや自己紹介がまだだったぜ」 ともかく『上』から待機命令が出た以上重軽はここで待機する必要がある。何せ『上』からの命令は、 そう風紀委員本部セントラルジャッジメントに所属している以上組織を乱すわけにはいかないからメンバーは『上』からの命令に絶対に、 何よりも優先すべきなのは『上』からの命令で、 重軽はそれに逆らうわけには、 「風紀委員本部セントラルジャッジメント支援部隊第一班班長、風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキング第17位、原子分解ディスインテグレイトの異能力者レベル2、糸獅子宍死屍しししししししだぜ。たぶんもう会わねえと思うけど、よろしくだぜ」 いいや、 重軽はもう知っているはずだ。 出来るはずだ、重軽なら。 (私わ私っ!私わ自分の、今度こそ自分の意志で……っ!!!) 風紀委員本部セントラルジャッジメントメンバーの行動を制限する緊急装置ベイルアウト。右手首につけられたそれを睨みながら、重軽石は頭を侵す鈍い痛みに耐えていた。
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 18:13:29.86 ID:yAhm9urX0 https://syosetu.org/novel/56774/153.html とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六 << 前の話 目 次 次の話 >> 153 / 178 上条当麻とインデックスA 手掛かり いつまでも泣いているわけにはいかない。時間はもう、ほとんどないのだから。 「サンキュー、インデックス。……だいぶ落ち着いた」 「よかった。それで、どうしたの当麻?」 どうしたもこうしたもない。全てが終わって滅んで死んだのだ。そしてそれがなぜかなかったことになっているのだ。 何も分からないままに何かがあって、何も気づけないままに何かがあった。 そう、だから、まずその何かが何なのかを探ることからしなければならない。 「…………聞いてもいいか、インデックス」 全ての物事にには原因がある。その原因によって結果が起きる。 世界が滅んだのにも何か原因があるはずだ。 その理由を知らなければならない。 もはや四の五の言っていられない。上条の知識だけではあの滅びは回避できない。 巻き込みたくないとか護るために遠ざけるとかそんなことをして守れなかったら本末転倒もいいところだ。 絶対に、もう二度と、あんなことは起こさせない。 そのために、矜持を曲げる。 インデックスを頼る。 「何を」 「魔術で世界を滅ぼすことって、可能か?」 息をのむ音が聞こえた。 10万3000冊の魔導書を記憶したインデックスだからこそ、上条の問いに対して多くの想像が出来てしまった。 魔術。その可能性と幅の広さ。 奇蹟の体現。無能故の憧れ。神話の力を手に入れる行為。 魔まの術すべ。 「出来なくは無いんだよ」 「具体的にどんなモノがある?」 「具体的に……」 なぜ上条がそんな質問をしたのかインデックスには分からなかった。だが、その真剣さと恐怖に歪んだ顔から何かのっぴきならない事情があることは容易に想像できた。 追いつめられている。何かに怯えている。インデックスを頼るほどに。 それが分かるからインデックスは魔導書図書館としての己の知識を総動員して答えた。 「世界を丸ごと異世界に移す異界反転ファントムハウンドとか、地球の平均気温を氷河期レベルまで一気に下げる永久凍土コキュートスレプリカとか、宇宙から隕石を落下させる天球にて輝く星々よシューティングスターライト、 晦冥の中で失墜せよメティオライトフォールとか」 次々と出て来る滅亡級魔術を上条は前の世界の状況と照らし合わせ、検証する。 世界を丸ごと異世界に移す異界反転ファントムハウンド?違う。あの死の世界は異世界なんかじゃなくて確かに地球上だった。 地球の平均気温を氷河期レベルまで一気に下げる永久凍土コキュートスレプリカ?違う。気温が下がった様子は全くなかった。だいたいそこまで気温が下がったら上条だって死んでいる。 宇宙から隕石を落下させる天球にて輝く星々よシューティングスターライト、 晦冥の中で失墜せよメティオライトフォール?違う。隕石が落下したなら地上はもっと蹂躙されているはずだ。 「大陸を割るレベルの地殻変動を起こす極大地震アースシェイカーとか、既存の物理法則を改変する不自然律アナザープログラムとか、超規模の津波を起こす全海津波ダイタルウェイブとか」 大陸を割るレベルの地殻変動を起こす極大地震アースシェイカー?違う。地震が起きた様子なんて無かった。 既存の物理法則を改変する不自然律アナザープログラム?違う。判断は難しいが、あの死にざまは物理法則が改変されたモノではないはずだ。 超規模の津波を起こす全海津波ダイタルウェイブ?違う。水なんてどこにも無かった。 「後は、……外界との接触を一切断つ閉鎖世界ディストピアとか。今言った以外にも世界を滅ぼすだけの魔術ならいっぱいあるんだよ」 「………………………………」 10万3000冊の魔導書の知識をその身に保管した魔導書図書館Index-Librorum-Prohibitorumの知識は並みではない。間違いなく世界でも五指に入るレベルの魔術知識を保有している。そんなインデックスだからこそ滅亡級の魔術を次々と口に出すことが出来る。そしてそれは上条にとって大きな役に立っていた。 最も、インデックスとてこの世に存在する全ての魔術を知っているわけではないが。 「じゃあ、その中に」 ものすごく頼りになった。 だからさらに深く、鋭く、踏み込む。 この惑星ホシを今度こそ救うために。 「一瞬で、世界中の人を、外傷無く、[ピーーー ]魔術はあるか?」 「一瞬で、世界中の人を、外傷無く…………?」 一瞬つまる。しかしそれは上条の言うような魔術が思いつかなかったからではなく、むしろ逆で。 「それも割とたくさんあるんだよ」 魔術の幅は広いのだ。 インデックスの知識の幅もまた広いのだ。 「地脈を乱して地球上の生物に特定の影響を与える星による種の否定エンジェルボイスとか、『死』そのものを降臨させることのできる滅亡齎す七の子羊セプテム・アニュスとか、致死率100パーセントのウイルスをばら撒く致死病療666ウイルスとか」 地脈とは土地に起因するエネルギーのことだ。惑星の中を血流のように循環するエネルギーで、この地脈を利用することによって人払いのような魔術を使う事も出来る。そしてその地脈を上手く弄いじれば生命体を滅ぼすことも可能だ。
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 18:14:26.31 ID:yAhm9urX0 神話には様々な『死』がある。ギリシャ神話には死そのものを神格化したタナトスという神がいるし冥府の神であるハデスも存在する。また、メソポタミア神話には同じく死に関連するネルガルやエレキシュガルなどの神が存在する。そんな『死』が地上に来れば、生物など一瞬で滅ぶだろう。 ウイルスというももちろん侮れない。1918年~1919年に流行したスペイン風邪は死者5000万人~1億人と言われといるし、14世紀の黒死病ペストは当時のヨーロッパの人口を半減させたと言われている。致死率100パーセントの病がばら撒かれれば、人類など確実に滅亡するだろう。 「他には――――――」 「そんなに、あるのか……」 割と条件を限定したつもりだったが、上条が思っている以上に魔術というモノは多くの種類があるらしい。そしてだからこの現状は絶望的だ。インデックスの知識をあてにすれば前の世界が滅んだ理由を解明できると思った。どう考えても世界があんな風になった理由は魔術にあると思った。学園都市製の超能力ではあんなことは出来ない。範囲も威力も何もかも足りない。ならばあの異常はきっと魔術によるものだと結論付けるのはある意味当然の帰結。 にも拘らず謎は解明されない。出来ない。 絶望的だった。 時間がない。 時間がないというのに。 「でも当麻。はっきり言って今言った魔術が発動する事なんて絶対にないんだよ」 「は?なんで?」 「魔術を発動するには準備が必要なのは当麻も知ってるでしょ。ステイルがルーン魔術を使うためにルーンカードをばら撒くみたいに基本的に魔術を使うためにはそれ相応の準備がいる。もちろん大規模な魔術を使いたいなら、多くの時間と多くの費用と多くの準備が必要になるんだよ」 当然のことだ。学園都市の学生が使う超能力とて脳に電極を刺したり投薬を行ったりなどの準備がいる。それは魔術も変わらない。一部の例外、生まれた時から選ばれている聖人などを除けば魔術を使うにも準備がいることは当然の帰結。 そして大きな力を使うためには大きな準備がいる。 世界を滅ぼすほどの魔術を使うとなれば異常なほどの準備期間が必要だ。 「道具も、お金も、場所も、技術も、人手も、時間も、異常なくらいの質と量が必要になる。そんな準備を私達魔術師が見逃すわけがない」 魔術師というのは独善的で自己中心的な存在だ。 だがそれでも禁忌はある。過剰な人体実験を忌避したり、科学との融合を断罪したり、そして世界を滅ぼしす事もまたしかり。 それは絶対の禁止事項。 「普通ならどんな魔術師だって世界が滅んでいいとは思ってないんだよ。だから、世界を滅亡させるような魔術を使おうとする魔術師はその魔術の発動の予兆が見える前、その準備をした、しようとした段階で全員例外なく殺される」 「殺っ!?」 「仕方ないんだよ。世界を護るためには、そういう事もしないと……」 「…………そこまで」 そこまで、そこまでの体制をしいているのであればどうして世界は滅んだのか。 世界を滅亡させるような魔術を発動させるためには多大な準備が必要になる。その準備を魔術師は決して見逃さない。そして発見し次第対象の魔術師は殺される。 ではなぜ前の世界は滅んだ。 どうして誰も気づけなかった。 「当麻、私からも質問していい?」 「…………あぁ」 「何が、あったの?」 何があったか。決まっている。世界が滅んでいたのだ。そういうのは簡単だ。 しかしインデックスにそのことを説明するか迷う。 その選択が正しいのか否か、どんな選択をすればインデックスを助けられるのか、話すことでインデックスが死んでしまわないか。 嫌でも思い出す。インデックスの死にざ ま、を――? 「……………………………ぇ」 インデックスの死に様? インデックスはどう死んでいた? (待て、待て待て。思い出せ……っ!) 吐きそうになるくらい気分を悪くしながら上条は必死に思い出す。 そう。そうだ。あの時、スタジアムの中で死んでいたインデックスは……っ! 「そういう事かッ!」 分かった。手掛かりが分かった。 やっぱりインデックスが手掛かりだったのだ。気付いていた。分かっていた。インデックスは気付いていた。前の世界のインデックスはちゃんと気付いていて、止めようとしていた。そうだ。だからインデックスはあんなに傷ついて、凄惨な姿で死んでいたのだ。 凄惨な姿。 片腕を切り落とされ、 半ばまで胴を切断され、 その傷口から内臓が零れ落ち、 白を基調とした修道服はあちこち裂かれ穴が空き、 そこから今もなお流れ出る血が修道服を赤黒く変色させ、 数えることすらも馬鹿馬鹿しくなるほどに多くの傷がインデックスの体にはあった。 それが1周目のインデックスの死に方。 それこそがインデックスが残した手掛かり。 「当麻?」 「ちょっと付き合ってくれ」 立ち上がりながら、決意を込めた瞳でそう言って 「いいけど、どこに?」 「とあるスタジアムに一緒に行ってほしい。理由は道すがらに説明するから」 タイムリミットは後3日。 絶対に、人類を滅ぼさせはしない。
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 18:15:29.33 ID:yAhm9urX0 https://syosetu.org/novel/56774/154.html とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六 << 前の話 目 次 次の話 >> 154 / 178 イベント発生条件:8月31日以前にスタジアムを下見に行くこと。 上条当麻とインデックスB 隠しイベント発生 事情を話し終えると同時にスタジアムについた。 「―――――――てことがあったんだよ」 「……俄には信じられないんだよ」 インデックスが上条に聞かされたのは正気とは思えない内容だった。 世界が滅んだ?人類が滅亡した?それを上条だけが憶えている? 馬鹿かお前?と一笑できる内容だ。 普通なら、いくら優しいインデックスといえども信じられない。 だがしかし、そうけれど、他でもない上条が言ったことなのだ。 命をかけてインデックスを救い、その右手にあらゆる異能を無効化する祝福の異能幻想殺しイマジンブレイカーを保有する上条当麻が言ったことなのだ。 一概に否定はできなかった。 「でも、当麻の言うことが本当なら……、魔術で…………。世界が滅びるなんて、そんなこと……」 不可能、ではないはずだ。だが限りなく不可能に近いのも事実。 先ほど上条にも語ったように事前準備や反抗勢力の多さから魔術で世界を滅ぼすなんて現実的ではない。けれどもしもそれが可能となるのならば、可能性は2つ。 全魔術師が見逃すほど術者が狡猾だったか、あるいは何・ら・か・の・理・由・で・わ・ざ・と・術・式・の・発・動・が・見・逃・さ・れ・た・か・だ。 「俺の考えが正しいなら、このスタジアムの中に『何か』があるはずなんだ」 「どうしてそう思うの?」 「……お前がこの中で死んでたからだよ、インデックス」 「?」 それはさっき聞いた話だ。上条がインデックスに話した内容をすべて鵜呑みにするのならば、上条が体験したことは次のようになる。 まず、時刻Xに上条と共にいた3人が死亡。その後地上に出る途中で1人の死体を確認。そして地上に出てからはインデックスの死体を確認。あてもなく歩いていると街中で全ての人間が死んでいるのを確認。最期に何者かに首を絞められて、原因不明で過去に遡った。 そしてそこから構築できる推論はこう。 時刻Xにおいて滅亡級魔術αが発動。滅亡級魔術αの影響で全人類は外傷無く死亡。その後上条は外に出て、生き残っていた人物#シャープによって首を絞められる。そして最後に誰かが何かしたか自然現象か何かにより時を遡った。 全く持って理解不能だ。魔導書図書館と呼ばれるインデックスをもってしても中々理解が追いつかない。 「お前だけなんだ。お前だけが、傷ついて死んでたんだ」 「…………それは」 「他の皆は外傷が無かったのに、お前だけは外傷があった。つまり、ここでお前の死だけは特別な過程を経たモノで、だからこの場所に何かヒントがあると思うんだ」 「……………………仮に」 少し、考える時間を挟んで、 「仮に、世界の滅亡が魔術によるものなら、その魔術が発動する前ならともかく発動途中かした後なら、私は絶対にその魔術を見逃さないんだよ」 その自信はある。インデックスは伊達や酔狂で魔導書図書館を名乗っているわけではない。そして、その答えは上条の推論を裏付けるモノだった。 つまり、前の世界でインデックスは滅亡級魔術の発動を察知して、滅亡級魔術を止めようとこのスタジアムに入った。そしてそこで何者かと、おそらく滅亡級魔術の術者と出会い、交戦し、敗北し、死亡した。 だからインデックスだけは全身血塗れで死んでいたのだ。 インデックスの死因だけは滅亡級魔術によるものでは無かった故に。 「何があるか分かるか?」 「まだ、分からないけど、……滅亡級魔術なら大規模な魔法陣とか貴重な霊装が必要なはず。それを見つけられれば」 「発動阻止も出来る、か」 この場所で滅亡級魔術発動の準備が行われていたのはほぼ確定と考えていいだろう。科学に支配された学園都市で魔術の準備を行えば魔術師の目にはとまりにくく、学園都市には魔術師も入りにくい。 まさに気付かれない絶好の場所だ。 「もし術者を見つけたらどうするつもり?」 「捕まえて止める」 「……出来るの?」 その問いは実力の問題を問いただしているのか、それとも覚悟の有無を聞いているのか。 「やるんだ」 どちらでも構わなかった。どちらにせよやらなければならないことは変わらないからだ。殴りつけてでも止める。気絶させてでも止める。説得が出来ないなら戦うしかない。その覚悟はある。 敵がどれだけ強くても、世界で十指に入るほどの強者でも、やることは変わらない。 敵にどんな理由があっても、悲惨極まりない過去があったとしても、そんなことは世界を滅ぼしていい理由にはならない。 「インデックス、もし戦うことになったらお前は」 「逃げないよ」 戦う覚悟を上条だけが決めていると思っているのならそれは大きな間違いだ。 汚れを一手に引き受けるモノとしてIndex-Librorum-Prohibitorumの名を持ち、献身的な子羊は強者の知識を守るdedicatus545の魔法名を掲げ、その身に10万3000冊の魔導書を記憶した魔導書図書館。 イギリス清教が誇る人間兵器。 インデックスとてその覚悟は決めている。上条についてきた時点で、とっくに。 「それに、敵が魔術師なら私も戦えないことはないんだよ」 確かに1周目のインデックスは殺されたかもしれない。 1人であったが故に、抵抗できなかったのかしれない。 だが今は2人だ。 人は互いに支え合うことが出来る生物なのだ。 「…………滅亡級魔術を発動しようとしてる人間に見つかったら、逃げられるとも思えないし」 「分かった」 上条はインデックスを説得するようなことはしなかった。その瞳に宿った覚悟は上条にその行為をやめさせるには十分な熱量をもっていたし、あまり時間を使いたくなかったし、どちらにしても滅亡級魔術を見つけるためにはインデックスの協力は必須だし、インデックスの言っていることも一理あると思ったからだ。 だから止めない。その代わりに。 「絶対に護ってやるから」 「分かってる」 その二言で相互理解は十二分だった。 踏み込む。 決戦場へとまず一歩。 短い、しかしとてつもなく長く感じる通路を通り抜けスタジアムの中へ。 「―――――――」 「っ」 視界が開ける。 暗がりから一気に光が燈された場所へと踏み出す。 「………………何か、ありそうか」
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 18:16:46.12 ID:yAhm9urX0 そこは見る限り『普通』の場所だった。 半径100メートルほどの円形グラウンドに異変は見られず、観客席辺りに何か仕掛けられているということもなさそうだ。壁面、屋根、外に通じている通路にも特に異常は見られない。 科学的な視点を持つ上条の目では異常は分からない。 「今の所違和感はないけど……」 そしてインデックスも何ら異変を見つける事は出来なかった。 何処かに魔法陣が刻まれているという事もない。何らかの魔術が今展開しているという事もない。霊装も特に設置されていない。地脈の流れがおかしいという事もない。 普通だ。 この場所に魔術的な異常は見られない。 「本当にここで私が死んでたの?」 「あぁ、絶対にここで死んでた。その辺に血塗れで倒れ伏してたんだ」 インデックスが死んでいた場所に指をさして、上条は悔恨の表情のまま言った。 「…………なら地上には何もないのかも」 「地上には?」 そう言って、インデックスは指を下に向ける。 「まだ、地下に仕掛けてる可能性があるから」 「…………………………地下、か」 地下。 地下にはなるべくなら行きたくない。 今此処に上条達がいる事さえ実を言うとギリギリなのだ。 忘れてはならない。忘れてはいない。この場所は、このスタジアムの地下には暗部組織『スタディ』の居城がある。彼らが何をどこまで把握しているかは分からないが、上条が自分たちの居城の上にいて何かを調べていることは監視カメラか何かで当然把握しているだろう。 まさかとは思うが『スタディ』がこの瞬間にも襲撃してくる可能性はゼロではない。 その点を考えれば、『スタディ』にさらなる警戒をさせる可能性のある地下への潜入はあまり進められるものではない。 いくら『スタディ』の操る駆動鎧パワードスーツに対する絶対的ジョーカーを上条が持っているとはいえ、だ。 「当麻の言いたいことは分かるけど、世界を滅ぼす滅亡級魔術を地下で準備するのは十分にあり得るよ。滅亡級魔術は見つからないのが第一条件だし」 「……なら、行くしかないのか」 あと一歩のところで見逃してしまいました。その結果世界は再び滅びました。なんて笑い話にもならない。時には賭けに出ることも必要だろう。 「この惑星ホシを終わらせるわけにはいかないし」 「うん、多少のリスクは負わないと」 「だったらまずこっちに」 『スタディ』を必要以上に警戒する必要はない。自分たちはたまたまこのスタジアムにやってきた一般人だ、という体を装って上条はインデックスを地下に通じる通路の一つに案内する。 だが最悪は常に人の予想の上をいくものだ。 ――――――ガリッッッ、と、 何か、肩口から嫌な音がした。 「…………ぎ、っ?」 二撃目を避けることが出来たのは、一撃目が直撃したことで体勢を崩していたからだった。すなわち完全なる運で、そこに上条自身の意志は関与していなかった。 マグマに浸かったかのような熱さ、いやそれはもはや熱いというよりもただの違和感でしかなかった。 体勢が崩れる。足から力が抜け、それが結果的に頭を狙った二撃目を回避することに繋がった。 「――――――――――――」 今この場の時空間は完全に凍ってしまっていた。停止した時空間の中でインデックスの視線が上条の視線と交差する。何が起きたのか二人は分からなかった。分かっていても理解が追いつかなかった。 上条が膝をつく。 肩口から流れ出る鮮血は1周前と同じように上条の学生服を赤黒く染めていた。 その顔は苦痛に歪んでいる。 「にィ……っ、」 「と」
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 18:17:56.10 ID:yAhm9urX0 インデックスは魔術を使えない。 最も過去にインデックスが魔術を使えなかったのはインデックスに掛けられていた『首輪』や『自動書記ヨハネのペン』という霊装の維持にインデックスの全魔翌力が使われていたからであり、つまり現在のインデックスは魔翌力が練れる状態にはあるのだ。だからインデックスがその気になりさえすれば、現在のインデックスは魔術を使うことが出来るはずだ。 が、それでもインデックスは魔術が使えない。 インデックスという兵器に掛けられたリミッターは『首輪』と『自動書記ヨハネのペン』だけではない故に。 だからインデックスは何もできない。 上条は魔術を受け付けない。 その右手に幻想殺しイマジンブレイカーが宿っている限り、上条には回復魔術が通用しない。部位指定可能な回復魔術ならともかく全身を対象とした回復魔術を使うことは上条には出来ない。 右手を切り落としでもしない限り、上条に魔術は通用しない。 だから上条の身体を治癒する事は出来ない。 「当麻ぁっっっ!!!」 そして戦いが始まる。 上条にとって初めてとなる、人類絶悪暗部組織との戦いが。 現在は2周目の世界のため全体にマイナス補正がかかります。 2018/06/22 03:35時点で上位世界による干渉を確認しました。 2018/06/22 03:35時点で神の手により因果律を改変します。 2018/06/23 14:19時点で上位世界による更なる干渉を確認しました。 2018/06/23 14:19時点で神の手によりさらに因果律を改変します。 舞台設定完了 舞台『『スタディ』のメイン基地であるスタジアムの地上部』 問題確認 問題『突如として襲撃していた人類絶対悪残虐な狩り人による愉悦の狩猟』 物語進行率2% イベント名『滅びを回避するための事前戦闘未来を護り抜くための第一試練』 イベント難度ASBC- 特殊イベント難度ステージ3432 イベント完全成功報酬『対咎負虐殺戦における『明け色の陽射し』からの援軍』 イベント成功報酬『滅亡齎す七の子羊セプテム・アニュスの解析成功』 イベント失敗ペナルティ『未来における佐天涙子強化イベントの未発生』 イベント文『なぜ人類が死滅したのかあなたには分かりますか?』 これより特殊イベントを開始します。 さぁ、始めよう。上条当麻にインデックス。 人に仇為す悪を退治する時間だ。 ゲーム風に言うならこのイベントは2周目以降に解放される特殊イベントって感じです。 次の更新は6月中にです。 うっひょひょひょ!ひょほひゃああああああああああああ!!!!! 読みました?新約20巻読みました!? 私は読んじゃいましたよ!!!!! まさかね、まさか、ねぇ……っ!? 魔術と科学の全面戦争第二部が始まるとはねぇッッッ!? ふはっ!しかしプロットの修正は必要なさそうでよかった。神様ごちゃまぜ魔術とかイギリスを護る結界とかは私の妄想と見事に合致してたし、上手く使えそう……。 新約21巻でVS魔術、22巻でコロンゾン編決着!って感じだろうか? なるべく早くお願いしますよ!鎌池先生ッッッ!!! ………………しかし鎌池先生はいつも私の期待をぶち抜いていきますね。いいぞもっとやれ!
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 18:18:44.70 ID:yAhm9urX0 https://syosetu.org/novel/56774/155.html とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六 << 前の話 目 次 次の話 >> 155 / 178 上条当麻とインデックスC 隣に立たないという選択 あるいは上条が1周目の経験を受け継いでいればその攻撃を喰らうことはなかったかもしれない。 あるいはインデックスがもう少しだけ常識外れの考えをしていればその攻撃に干渉することが出来たかもしれない。 だが歴史にifもしもはない。そしてもしもがない以上、過去は覆らない。 だから、戦いが始まる。 「跳べえッ!!!」 「ッ!?」 反応出来たのは奇蹟に近かった。 避けることが出来たのも完全なる奇蹟だった。 二重の奇蹟が奇蹟的にインデックスの命を救った。 「うぁっ!」 声に咄嗟に飛び退く。一瞬前までインデックスがいた地面を何かが穿っていた。小さい、速い、これは何……弾丸、か? 「どっかに隠れてろ!」 「当麻は!?」 「なんとかっ」 ダンッ!、と空間を揺るがすほどの音が響いた。貫かれた右肩を庇いながら全力で横に転がる。誰が、どんな手段で、どうして上条達を襲撃してきたのか、全く分からない。 『スタディ』ではない、はずだ。 敵が『スタディ』なら襲撃してくるのはケミカロイド計画によって造られた人造生命体が操る駆動鎧パワードスーツのはず。だからこの襲撃は『スタディ』以外の手によるモノ。 だとすれば襲撃者の正体はきっと……。 「人類死滅の実行犯……っ!」 すなわち1周目の世界で滅亡級魔術を発動させた人間。そいつが上条達を襲ってきている可能性が高い。 音が聞こえる。ダンッ!、と空気を引き裂く死音が。姿の見えない何者かが上条に向けて超速で何かを放っているのだ。 「っい、ぐ」 見えない襲撃者。見えない攻撃手段。 だが、放たれているもの自体の体積が小さく底面積もまた小さい。それは穿たれた地面を見ればわかる。故に避けることはそう難しくない。速度も視認できない超速ではあるがかなりの距離が離れているのか発射音を聞いてから全力で行動すれば避けられる程度のモノだ。 上条当麻であれば避けられる。 (逃げるか、進むか) 此処にある選択肢は2つ。 どちらを選ぶのが正しいか、そもそも正解などあるのか。 時間は過去に逆行することがないというのであれば、上条が選べる選択肢は1つだけ。 生き残るため、生き残らせるため、何を選べばいい? 「お」 退く?退くか?退却か?撤退か? 否、否否、否否否! それが正しい選択とは上条にはどうしても思えない。 (進め) 恐怖心がないわけではない。 むしろ懼おそれは心の底から感じている。相手は十中八九前の世界を滅ぼした存在。上条が今まで相手にしてきた敵の中でも格が違う悪。そんな敵に怖さを感じないでいるなんて平凡な高校生である上条には不可能だ。 が、 「おお」 恐れ以上に感じるのは使命感。そして義勇。 あの悲惨をもう二度と起こさせてはならない。あの悲壮をもう二度と体験したくはない。一度やり直すことが出来たからといって、二度やり直すことが出来るとは限らないのだから。 (立ち向かえ) 故にこれは千載一遇の大チャンス。二度と来ないかもしれない機会。今を逃せばもう二度と上条が人類死滅の犯人に巡り合うことはないかもしれない。そう考えたら逃げ出す選択肢は悪手以外何物でもない。 今、この瞬間、現在が、絶対の好機。 「おおおおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああああああああああああああああッッッッッ!!!!!」 手の届く場所といったら遠すぎるが、それでも足の届く場所にいるはずだ。攻撃を受けているということは相手がこちらを認識できているという事。であるならば上条が相手を確認できないはずもない。 (攻撃が来てるのは前方っ!だったら敵は今――――――) 前方にいるはずだ。 前から攻撃が来ている以上その解は絶対的に正しい正答であると上条は判断する。 だから走れ、走れ、走る。 足を廻して腕を廻して頭を廻して只前に前に前に。 敵の攻撃の嵐にその身を晒されながらも、上条は必死に前に走る。 ――――――熱い。 「あぎ!?」 頬から一筋の鮮血が流れる。掠った。最短経路ではダメだ。直線だと当たる。ジグザグに走ってなるべく敵の狙いが定まらないようにっ! 左・足・が・何・か・に・当・た・っ・た・。 「――――――――――――」 躓く。 体勢が崩れる。 一瞬で悟った。 次の攻撃を避けることは、不可能だと。 (――――――――――――――――――――) 何が、悪かったのだろうか? 何が、いけなかったのだろうか? 最善を尽くしても届かないのだろうか? それほどまでに、敵との実力差は大きかったのだろうか? 見えない攻撃。圧倒的物量の弾幕。貫かれた右肩。 その全てが、上条の『敗北』を暗示していたのか。
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 18:19:29.78 ID:yAhm9urX0 「ぁ」 声にならない声は破滅を予感させるけれど、此処では違う。今はまだ、破滅は訪れない。 1人なら、これで終わっていたかもしれないけれど。 上条だけなら、これで負けていたかもしれないけれど。 今の上条は孤独1人ではなく、それが良い事なのか悪い事なのかは分からないけれど、 声が聞こえる。 泣き叫んでいるような、張り詰めた声が。 「左方へ歪曲せよTTTL!!!」 スタジアムの入り口付近まで下がったインデックスが強制詠唱スペルインターセプトを使う。ダダンッッッ!!!、と上条を襲う何かの嵐を少しでも和らげることが出来たらと、そんな思いで。 なのに、 「干渉、できない!?」 全くの無意味。効果なし。 (魔術的な狙撃じゃないっ?別の力……、科学的な狙撃!?) 強制詠唱スペルインターセプトはあくまで魔術を使用する魔術師の頭に言語によって割り込みを掛け、その魔術の暴走や発動のキャンセルなどの誤作動を起こさせることのできる魔翌力を必要としない魔術技術である。それ故に、敵が魔術を使っていないのならば、純粋な科学しか使っていないのならば、例えば狙撃銃を用いた狙撃とかには全く役に立たない。 つまりインデックスでは荒れ狂う弾幕の暴風雨に干渉する事は出来ないということだ。 「っ」 そして故に誰もどうすることも出来ない。 最初から分かっていたことだ。 敵の正体もわからず、どんな術式を使って世界を滅ぼしたのかもわからず、敵の攻撃の正体も分からず、そもそも本当に敵が魔術師なのかもわからず。 何もかもが分からない状態で戦いを挑んだって、勝てるわけがない。 勇者が魔王を倒すためには聖剣というキーパーツ伏線が必要で、鋼の剣で魔王に挑んだところで殺されるのが関の山だ。 準備をして、仲間を集めて、覚悟を決めて、能力を極めて、そうやって戦うべき相手だった。 焦りがあった。恐怖があった。それらが上条を前のめりにさせた。 逃げるべきだった。一度撤退するべきだった。 彼我の実力差を把握して二度目のチャンスを掴むことを画策するべきだったのに。 「ぃや」 インデックスの足が前に出る。 上条の傍に近寄ろうと、無意識のうちに走り始める。 間に合わない。間に合わない。間に合うはずがないと知っていても。 「いや」 逃げた自分を責め立てて、全てを見下す神様■■に嗤われながら、インデックスは走る。 隣に立っていれば、上条を突き飛ばして助けることが出来たかもしれない。 前に立っていれば、上条を庇って助けることが出来たかもしれない。 一緒に戦っていれば、上条が集中的な攻撃を受けることはなかったかもしれない。 かもしれない。かもしれない。かもしれない。 でも違った。それをしなかった。だから今懸命に走っている。 届かないと分かる。 彼我の距離は十数メートル。ただの女の子でしかないインデックスではその距離を詰め切るのに数秒かかる。 数秒あれば、敵の攻撃が上条を貫くには十分だ。十分すぎる。 だから、 だから、 だから、 「嫌ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!!」 普段のインデックスが絶対上げないような絶叫が、 10キロ離れても聞こえてしまいそうな音量で、 ……例えそれがどれだけ無意味なものだったとしてもインデックスにはもうそれしかできないから。 敵の一欠片の善性に訴えかけるかのように、心の中の祈り願いを声に出した。 「ご、ふ……」 だが、もちろん、至極当然のことだが、 祈って願いが可能のならばこの世に努力は必要ない。 神を信じて全てが救われるのならばとっくの昔にこの世から悲劇は消滅している。 物事を為すには努力が必要不可欠だ。 RPGでレベル上げもせずにボスキャラに挑んだところで敗北は必至。 音ゲーの初見プレイで最高難易度の曲をプレイしたところで失敗は必然。 普段を運動をしたことの無い人間がオリンピックに出れるわけがない。 成功には努力が不可欠で、その努力の質が高ければ高いほど成長できる。 だから、勝てるわけがなかったのだ。 人類絶対悪と呼ばれる最重要指名手配EX存在に、ちょっと戦闘経験があるだけの上条が、魔術を使う事も出来ないインデックスが勝てるわけがなかったのだ。 最初から分かっていた。 最初から分かっていた。 最初から分かっていた。 そんなことは最初から分かっていたことだ。 から、 「――――――――――――」 刹那にも満たない永劫の沈黙が重なった。 「――――――――――――」 そして事態は動き出す。
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 18:20:03.76 ID:yAhm9urX0 見た。 見たくない。 嫌だ。 赫い。 遠い。 もっと早く。 遅い。 もっと速く。 誰か……。 誰がいる? どうして離れたの? だって魔術を使えない私じゃ邪魔だから。 なんで1人にしたの? 隣に立つことだけが共に戦う手段じゃないよ。 どうして一緒にいなかったの。 私を庇いながら戦うことになるよりも、安全圏から援護したほうがいいと思いました。 それで? ……それで? それで? ――――――それで? それで? (……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………そ れ で ) それで、どうなった? それで、何が起きた? どうして? どうして? どうして? (どうして、私は……) 上条当麻彼の傍で戦う事を選ばなかったのだろうか、というあまりにも遅すぎる後悔を抱く。でもあの時は離れることが最善だと思った。当麻の指示だってそうだった。 だってインデックスは弱い。ナイフで刺されれば動けなくなる、殴られたら立てなくなる、魔術が直撃したら死んでしまう。それくらいインデックスは弱い。魔術さえ使えればその弱さも少しは解消できるのだろうが、しかし現実としてインデックスが魔術を使えない以上その議論に意味はない。 インデックスは弱い。 上条のようには戦えない。ステイルのようには戦えない。神裂のようには戦えない。 である以上、仕方がない事なのだ。 その逃げは酷く合理的な選択だ。 (間違えた) ただ、合理的な選択肢が正答であるとは限らない。 そう、インデックスは間違えた。 傍にいるべきだった。 隣に立って、本当の意味で共に戦うべきだった。 (まちがえた) 不正解を選んだ末がこのありさま。 これが結果。 だからこれで終わり。 順当な終末。 「……………………………は、はは」 ふらふら、ふらふら、ふらふら、と、 莫大な時間をかけてインデックスは上条の傍まで来ることが出来た。 その間、なぜか敵の攻撃は無かった。 情けをかけてくれたのか、気を使ってくれたのか、最期の別れくらいはゆっくりさせてあげようという憐みの思考か。 その行為こそがインデックスの絶望をさらに深くするモノだと知っているのか。 一思いに殺されて、人思いに殺された方がよかったのかもしれない。 その方が間違いなくインデックスは幸せだった。 幸せに[ピーーー ]た。 現実から目を晒して[ピーーー ]た。 でももう無理だ。もう、無理だ。 「は、はは、ははは、はははは」 膝をつく。 下を見る。 左腹と右胸に大穴を開けた上条が倒れたいた。 身動ぎひとつせずに、倒れ伏していた。 それが、この戦いの結末だった。
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 18:46:42.94 ID:yAhm9urX0 https://syosetu.org/novel/56774/156.html とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六 << 前の話 目 次 次の話 >> 156 / 178 ちょっと短いけど。 上条当麻とインデックスD 能無しの無能者 何もできない。 何もできることなどない。 無力だ。 あまりにも力がなさすぎる。 だから、何もできることなどない。 インデックスヒロインには上条当麻ヒーローを救えない。 「ひ、いやっ……当麻ぁ!」 血が、血が止まらない。 うつ伏せに倒れた上条はピクリとも動かないし、右肩と左腹と右胸に開いた大穴からはとめどなく血が流れている。穴に手を当てて血を抑えようとしても、そんなことが出来るはずもない。ハンカチ、修道服、その他すべて、血で染まっていく、血に染まっていく、赤くなっていく。 インデックスには何も出来ない。 だから焦りだけがインデックスの胸中を満たす。 失血死。その三文字がインデックスの脳裏を専有する。 「起きて、起きてよっ!ねぇッ、当麻!」 手と腕が赫く染まることも厭わずに、インデックスは上条の腹の下に腕を入れた。見たくない、見たくない、見たくない、けれど、確かめないといけない。だって認めたくない、認めたくない、認めたくない、なら、うつ伏せでは何も分からない。 (軽) 少しだけ、普段よりほんの少しだけ上条の身体が軽いようにインデックスは思えた。それは本当に少しの差で、だから一瞬気のせいだと思ったけれど、すぐに気が付く。 軽くなっているのは当然なのだ。 だってそうだろう。喪った血の分だけ、流れ出た血の量だけ上条の身体は軽くなっている。血液量の総重量は体重の約1/13程度であり、喪った血液の分だけ上条の身体は空ろになっている。 そしてそれ以上に、上条はいまだに身動ぎひとつしない。 「うそ、うそうそっ!こんなの……、こんな」 力を入れて上条の体勢を反転させる。うつ伏せの状態から仰向けの状態へと変える。そうすれば、そうすれば見える。顔が見える目が合う表情が分かる。そう、だからまだ希望はあるのだ。 動かないのは受けたダメージが大きすぎるからだと。決して死んだわけじゃない。 声を上げないのは痛みに呻くことすらできないほどに傷ついているだけだと。まさか死んだわけじゃないだろう。 身体が冷たい気がするのはただの気のせいだと。大丈夫十分に温かい体温は平熱だ。 呼吸音が聞こえないのは……、呼吸音が聞こえないのは、……きっとインデックスの耳が悪いだけ。呼吸をしてない訳じゃない。 だから大丈夫。大丈夫大丈夫。生きているに決まっているいつもそうだったインデックスはちゃんと知ってる。 (当麻は、強いんだよ) 最初に会ったあの日、上条は何の事情も知らないくせにインデックスのことを助けてくれた。 4日後の7月21日、上条は聖人に襲われても生き残ることが出来た。 そして7月28日、上条はインデックスに仕掛けられていた首輪を破壊し、インデックスを完膚なきまでに救った。 8月8日には錬金術師アウレオルス=イザードに浚われたインデックスを右腕を断ち切られながらも助けてくれた。 だからきっと今回も大丈夫なんて根拠のない理論に縋ってしまうほどにインデックスは弱くなってしまっていた。 前回、前々回と無事だったからといって次も無事とは限らない。そんなことインデックスはよく知っているはずなのに。 そしてインデックスは上条を仰向けの体勢にした。 「当麻」 呼ぶ声に応える声はない。 その瞳が映すモノはもはやない。 描かれた表情は最後の最期まで上条がインデックスの身を案じていたという事を物語っていて、 だから、分かった。 否が応でも理解した。 するしかなかった。 「当麻」 返事がなくて、おかしいな、とインデックスは思った。それが何を意味しているのか理解していても、納得なんてしたくなかった。 上条はいつもインデックスを気づかってくれた。 上条は家族を知らないインデックスを養ってくれた。 上条はインデックスの我儘を聞いてくれた。 上条はインデックスのために戦ってくれた。 上条はインデックス助けてくれた。 出会ってからたった1月程度の時間しかたっていなかったが、それでも十分すぎる時間だった。 「起きて、当麻」 誰かと共にいることがこんなに楽しいのだと、インデックスは初めて知った。 帰る場所があるということがこんなにも満たされることなのだと、インデックスは初めて知った。 記憶を喪う恐怖に怯えなくてもいいということがこんなにも安心できることなのだと、インデックスは初めて知った。 全部、上条がインデックスに教えてくれたのだ。言葉ではなく態度で、教えてくれたのだ。 「起きてよ、当麻」 幸せだった。 間違いなく幸せだった。 人生で最も幸福な1カ月であったと断言できる。 全てを鮮明に憶えている。それはまるで永劫に色あせない写真。想い出という名のアルバムに瞬間という名の幸福を挟んでいる。 一緒に食べたご飯は美味しかった。 久しぶりに入ったお風呂は温かかった。 記憶を喪わないでくれて嬉しかった。 初めて食べたシェイクは美味しかった。 野良猫を飼う事を許してくれて嬉しかった。 なんでもない毎日は、なんでもないからこそ輝いていたのだ。 「返事をしてよ、当麻」 それはこれから先も続いていく幸福だ。突然途切れたりしない。1年後も、10年後も、20年後も、50年後でも続いていく幸福。そうに決まっている。 禍福は糾える縄の如し。因果応報。沈む瀬あれば浮かぶ瀬あり。 不幸があれば幸福があり、善い行いをすれば善い結果が得られ、不運なことばかりが続くことはない。 だから上条もインデックスもこれからもっと幸せになれるはずなのだ。 今までが不孝だった分、これから先の未来は幸福になれるはずなのだ。 笑いあって、楽しんで、喜んで、満たされた人生を送れるはずなのだ。
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 18:47:14.67 ID:yAhm9urX0 だから、 だけど……、 なのに……っ! 「当麻」 返事はない。 返事がない。 返事はない。 だって、上条当麻は、もう、もう、もう、 「……………………………………………ぁ」 唐突に、 インデックスは受け入れてしまった。 受け入れがたい事実を、認めてしまった。 動かないのは、上条がもう動かないから。 返事がないのは、上条がもう声を出せないから。 呼吸音が聞こえないのは、上条がもう呼吸をしていないから。 それらが意味することは、上条がもう、 「は、ヒュ、ひァ……、と、ひ、ふぐっ、とうぇ……っ!!!ぁ、いひひ、ひは、ぅっ、げァ……は……はは……はっ??????????????????」 縋りつくように、抱きしめた。仰向けになった上条の血みどろの身体を抱きしめた。鉄臭い血の匂いに包まれながら、インデックスの全身も赤く染まる。着ていた修道服はそれまで以上に真っ赤に染まって、顔も、髪も、手も、足も、何もかもが紅くなった。 それでも離さない。 そんなことはもう、どうでもよかった。 「…………やだ、やだよっ!当麻ぁ、私を、やだあ!私を……っ、おいていかないで…………」 それは人間兵器として造られた存在であるインデックスが見せた弱さ。 世界で一番大切な、自分自身の命よりも大切な、記憶している一〇万三〇〇〇冊の魔導書なんかよりもはるかに大切な上条当麻という唯一を喪ったと思ったが故に見せた弱さ。 自らの弱さが招いた結果にインデックスは慟哭する。 「一人に、しないで……」 憐れな叫びは虚空に虚しく響いて、 そんな言葉を言っても上条が起き上がることなどないとどこかでインデックスは知っていたから、 「とう、まぁ」 頬を伝う冷たい何かを感じることすらできず、インデックスは只嘆く。 助ける術なんて知らない。 救うための手段なんて分からない。 魔術を使えても、上条は助けられない。 だからそれはあまりにも虚しい嘆きの声。 目の前で死ぬ逝く上条を見つめることしかできないというインデックスの絶望。 そこに追い打ちがかかるように、 ダンッ、という軽い音が聞こえた。 「ぁ」 背中が熱くなった。 攻撃をされた、という事実に三拍遅れて気が付く。 でも、インデックスは抵抗しなかった。抵抗する気力すらわかなかった。 もう、インデックスに生きる理由なんて、欠片もなかったから。 「―――――ね」 あまりにも遅すぎた後悔がインデックスの胸を満たして、 そして、インデックスの運命は確定した。
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 18:53:10.95 ID:yAhm9urX0 https://syosetu.org/novel/56774/157.html とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六 << 前の話 目 次 次の話 >> 157 / 178 今回展開超速いよ。 なぜって? 速く次のシーンが書きたかったからだよ! 今話にあぶりだしはない 弓箭猟虎@ 異なる世界の敵 見えざる敵は思考する。 (で、この2人はいったい何者なんでしょうね?) 学園都市には3つの世界がある。主となるのは『表』と『裏』、あるいは『光』と『闇』と呼ばれる2つの世界。一般人たちが暮らす日常の世界と暗部に所属するモノが暮らす血みどろの世界。 そしてその2つを繋ぐ様にあるのが灰色の世界である。 灰色の世界とは前述したように『表』と『裏』を繋ぐ世界のことだ。具体的に言えば暗部組織と薄い繋がりを持つような武装無能力集団スキルアウト、暗部すら動けないような非常にデリケートな案件を扱う傭兵集団、学園都市の『外』と関係性を持つような組織。そういった『外れきってはいない』世界。 黒に染まりきってはいないが、かといって純白とも言えない。そんな微妙なラインに存在する世界。それが『灰色の世界』だ。 そして上条とインデックスを襲撃したのはもちろん『闇』の、『裏』の、暗部の人間だった。 (ただの暗部組織の人間、……とも思えませんが) 暗部組織『スクール』。 現在の学園都市においては事実上最強の能力者である未元物質ダークマターの超能力者レベル5、垣根帝督をリーダーとしたチームネーム付きの暗部組織。 そんな第一級の暗部組織に所属するスナイパー、弓箭猟虎ゆみやらっこが上条らを襲った敵の正体だった。 「――――――――――――」 「……ぁ、……ゅー、……と、ま」 背から腹へと貫通する弾丸を受けて、インデックスが息も絶え絶えになっている。まさに死に体、三途の川を渡る直前。 だがそもそも、なぜ上条とインデックスには弓箭のことが分からなかったのだろうか? (…………撃ってよかったんですよね?) 上条と戦っている時、弓箭は上条の前方8メートルの位置にいた。 インデックスを撃った時、弓箭はインデックスの後方1メートルの位置にいた。 なのにもかかわらず、2人が2人とも弓箭のことには気が付けなかった。間違いなく視界内にいたはずなのに敵が見えなかった。 それはなぜ? 「――――――ひゅ、……っ………………ひ、――――――ぅ」 答えは周囲同化服カメレオンスーツ。 死縁鬼苦罠が御坂美琴と会う際にも部下に使用させた、周囲の景色と同化し視覚ではとらえられないようになる暗部特製の服。弓箭はそれを着ることで視覚ではとらえられない存在になったのだ。 最も周囲同化服カメレオンスーツには弱点も多い。 誤魔化せるのは五感の内視覚だけ。嗅覚、聴覚、味覚、触覚、そして第六感以上の感覚を誤魔化す事は出来ない。だから本当の一流、弓箭と同じチームネーム付きの暗部組織に所属する人間であったり、統括理事会メンバーの上位護衛であったり、学園都市特記戦力であったりにはほとんど効果がない。 とはいえ『スタディ』のような三流や無機物、上条やインデックスなどの『表』の住人には効果抜群な装備だが。 (……………………………『スタディ』じゃ、ないはず) 弓箭は暗部組織『スクール』のリーダー垣帝督の指示でこの場所にいる。 指示の内容は単純明快で、監視と排除。 『スタディ』の本拠地があるこのスタジアムの地上部分から『スタディ』の動きを監視する事。 そして、学究会以前に『スタディ』に手を出そうとする組織を排除する事。 『スタディ』は『スクール』に喧嘩をうった。ならその代償は払わせないといけない。他の組織に舐められないためにも『スクール』が『スタディ』を潰す必要がある。だから他組織の干渉はさせない。『スタディ』は『スクール』の獲物だ。誰に手を出したのか思い知らせる必要がある。 そう、『スクール』のリーダー垣根帝督は言った。 だから弓箭は必至に他組織を排除している。垣根が手を出す以前に他組織に『スタディ』が潰されてしまえば垣根に何をされるか分からない。殺されるならまだいい。しかし殺してくれないかもしれない。そう考えれば、どう考えても弓箭には垣根の命令に逆らうという思考はなかった。 「―――――――――――――――――――――」 袖に仕込んだ狙撃銃を浅い呼吸を繰り返す少女に向ける。 [ピーーー ]。[ピーーー ]。[ピーーー ]。 そこに疑問や葛藤は一切ない。殺人なんて今までいくらでもやってきたし、そもそも弓箭は獲物が苦しむ様を見ることで喜悦する狂人だ。苦しそうな顔で必死に少年を抱きしめる少女を前にして浮かぶ感情など歓びに決まっていて、それ以外ない。 そう、そうっ、そうっ! 弓箭は己の顔が歪むのを実感していた。 (全部無駄でしたね!誰かさんッ!) 少年が少女を護ろうとしていたのは分かった。 少女が少年をサポートしていたのは分かった。 だから先に少年を叩き潰した。 少女が叫び声をあげたのが分かった。 少年が地に倒れ伏したのが分かった。 だから弓箭は追い打ちをかけた。 少女が少年の傍に入り寄ってきた。 少女はとめどなく涙を流していた。 だから少女のことを撃った。 それで2人とも終わり。もう動けない。もう動かない。垣根の命令は果たされる。 (さよなら) すべて無駄で無意味で無価値な行動。 実力の伴っていない行動ほど滑稽なモノはない。
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 18:54:08.93 ID:yAhm9urX0 『闇』の奥底。チームネーム付きの暗部組織。その狙撃翌要員。周囲同化服カメレオンスーツによる擬態に気付けなかった時点で勝敗は決まっていた。 だからこれで終わり。 インデックスも上条当麻も弓箭には勝てない。絶対に勝てない。くぐった修羅場の数、狂気の質と覚悟の有無、『表』と『裏』、『光』と『闇』の間にある世界の差、それが実力差という形で現れるが故に。 ご都合主義なんて起きない。 彼と彼女の身に起こるのはむしろご都合悪い主義。 神に愛された人間と神に嫌われた人間。 弓箭猟虎と上条当麻&インデックス。 「――――――――――――――――――ぁ」 パシュ、と軽い音がして、胸に強大な違和感が奔った。 続けるようにして、肺から全ての空気が吐き出されたような音がインデックスの口内から発せられた。 いつのまにか痛みは感じなくなっていた。 けれど痛い。身体ではなく心が、どうしようもなく痛い。 これで終わり。これが終わり。インデックスという兵器人間の命の終焉。それをどうしようもなく自覚してしまったからなお痛い。 結局インデックスは何もできなかった。 インデックスがもう少し有能で優秀だったのならば全てが上手くいっていたかもしれない。そう考えると、最後の最期の瞬間だというのに後悔しか浮かばなかった。 何が魔導書図書館。何がイギリス清教が誇る人間兵器。大切な人の1人も救えないで、世界を滅ぼす滅亡級魔術を発見することも出来ないで、一体何が禁書目録インデックス。 お笑い草だ。誇大妄想だ。自意識過剰もいいところだ。 どうしようもない。 本当に――――――どうしようもない。 (……と…………………ま…………う………ま…………………と、う………ま………………) 意識が途切れる。霧に紛れてすぐ目の前にいる人の姿すら見えなくなるように、インデックスの目に映る全てが不明瞭になっていく。 ああけれど、だがしかし、それでもまだ1つ、たった1つだけ確かに感じられるものがある。 インデックスの身体の下にある上条当麻の姿態。その温かさだけはまだ感じ取れる。 それは罰か、それとも褒美か。 せめて一緒に[ピーーー ]て幸せだったのか、愛する人を護れなかったことを強く感じてしまえて不幸だったのか。 そんなことは分からないけれど、最後の最期のさいごのサイゴの刹那よりも遥かに短い永劫の涅槃寂静の時にインデックスが思ったことはたった一言だった。 至極単純な言葉愛を、人間兵器インデックスは囁いた。 「―――――――大好き) そして、そこでインデックスの人間としての生は終わった。無力な少女の無駄な人生が幕を下ろした。 それを、弓箭は只楽しそうに見ていた。 人でなしだから。 イカレテいるから。 頭のおかしい狂人だから。 弓箭は同年代の少女の凄惨な肢体を目にしても、何の感慨も抱かない。 殺したのは弓や自身なのに、そのことに何も思わない。 慣れているから。慣れてしまったから。 最初はそうではなかったはずなのに、内部進化アイデアルにいた時は優しい少女だったのに、 時間は人を変え、環境は人を変え、絆は人を変え、執着は人を変え、経験は人を変え、強制は人を変え、絶望は人を変え、仲間は人を変え、家族は人を変え、未来は人を変え、過去は人を変え、嘘は人を変え、希望は人を変え、恐怖は人を変え、依存は人を変え、約束は人を変える。 だから弓箭はもう壊れていた。『闇』に適応するためには、そうならなければならなかった。 殺したくない以上に生きたくて、奪いたくない以上に生きたくて、死にたい以上に生きたかった。 だから弓箭は『こう』なった。 『これ』が弓箭の行きついた生き方だった。 「中々愉しい狩りでした」 その在り方はもう変えられないだろう。白を黒く染めることは容易いが、黒を白く染めることはひどく難しい。汚れた心根と穢れた精神をまともに戻すなど、英雄でも不可能だ。 である以上弓箭の人生は今後一生絶黒だ。闇黒無光の中で懸命に歩いていくしかない。 それを不幸と思うかどうかは弓箭次第だが、しかしまともから外れた生き方は客観的には幸福ではない。多数決をとるのならば、この世に溢れているのはまともな人間、すなわちどうしようもないほどの狂人達なのだから。 ドシャ。
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 18:54:37.08 ID:yAhm9urX0 「ん?」 違和感を感じていなかったと言えば嘘になる。 おかしいと思っていなかったと言えば偽りになる。 分からないことはあった。 そもそもあの少年と少女はどこの組織の人間で何の目的があってこのスタジアムに来たのかということだ。 最深部の人間なら『スタディ』程度の組織には興味も示さない。深部の人間なら『スタディ』には手を出さない。中部の人間なら『スクール』が『スタディ』を狙っているという情報に怯えて『スタディ』には手を出さない。『スタディ』に手を出すとすれば暗部の何たるかを理解していない浅部の人間だが、少年少女はそれにしては強かった。 だから弓箭は分からなかった。少年少女がどこの組織の人間で、何の目的で此処に来たのか。 スタジアム地上部を探り、地下へ行こうとしていた以上少年少女の目的が『スタディ』であることは間違いない。だから弓箭は少年少女を『闇』側の人間と判断した。 そもそもそこが間違っているとは弓箭は絶対に思えない。『闇』につかりすぎた弓箭にはその発想は存在しない。なまじ『表』の人間と関わりがあるが故に、『表』の人間が『闇』に関わるという発想が出来ない。 だから弓箭には理解できない。 あまりにも情報が足りなくて、弓箭にはたどり着けない。 音がした。 振り返る。 立っていた。 誰が。 お前は。 瞳が捉える。 そこに、いた、のは……。 「――――――警告、魔導書図書館Index-Librorum-Prohibitorumの生命活動に深刻な弊害が生じています。――――――現状ではIndex-Librorum-Prohibitorumがその生命活動を維持するのは困難と判断。原因を後方2メートルに存在する人間による攻撃と推定。――――――一〇万三〇〇〇冊の『書庫』の保護のため、これより脅威の排除を開始します」 魔導書図書館インデックスの危機=自動書記ヨハネのペンの発動。これに気付けた人はどれくらいいたかな? 次の更新は7月中です。
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 19:01:24.74 ID:yAhm9urX0 https://syosetu.org/novel/56774/158.html とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六 << 前の話 目 次 次の話 >> 158 / 178 なんか最近あまり筆がのらない……。 最近の話はあまり出来もよくない……。 気分転換が必要か……? インデックスと大悪魔と空白の主@ 理を外れ人を外れた存在 その場所は地球上のどこでもなく、それでいて地球という世界を見上げることのできる場所であった。白く、白く、白く、ただひたすらに白いその場所で、1人の少女が佇んでいた。 「……………………………………」 呆然と、まるで信心深い宗教家が神に見放されたと自覚した時のように茫然と、その少女は立ち尽くしていた。 何が起こってるのか分からないというのか、この場所がどこなのか分からないのか。 いや、いいや、違う。そうじゃない。そんなモノじゃない。 「…………………………………………………………」 ただ見えていないだけだ。ただ分かっていないだけだ。ただ受け入れていないだけだ。 少女の世界は終わっていた。少女の世界は崩壊していた。少女の世界は破壊されていた。 たった一人の少年の死によって、少女の自我は完全に終焉を迎えていた。 だから少女はもはや廃人。 ただ酸素を吸って二酸化炭素を吐くだけの人型物体。 「…………………………………………………………………………………………」 それだけ大切な少年だったのだろう。 それだけ喪いたくない人だったのだろう。 己の命よりも、己の所蔵する10万と3000冊の魔導書よりも大切な存在だったのだろう。 だから壊れた。 よりもよってその死に様を直視してしまったから壊れた。 己の無力が少年の死を招いたと誰に言われるまでもなく自覚していたから壊れた。 魔神にすら至れる可能性を持つ幼き少女は、もう完膚なきまでに狂って終わって壊れた。 そんな少女の名をインデックスという。 「――――――ごふっ」 唐突にインデックスは吐血した。 ただでさえ赤い紅い朱い修道服が、さらに赫く染まる。 ただでさえ青い碧い藍い顔面が、さらに蒼く染まる。 「あ、ふっ……ひ」 血を吐いて、血を吐いて、血を吐いて、白しか存在しない世界を少しだけ赤く染めて、インデックスは喉を抑えるようにして蹲った。どうでもいい、ひどくどうでもいいことでしかないが、喉奥に何かが引っかかっている。 血溜でも引っかかっているのか。だとすればこのままでは窒息死してしまうかもしれない。 窒息死。 それはどれだけ苦しい死に様だろうか。 上条の億分の一でも、当麻の兆分の一でも、救済者ヒーローの京分の一でも苦しいのだろうか。 「か、――――――ひぅ、ぐ、はひーっ、ひーーっ……ふ、……ひゅー、――――――」 息が詰まる。 それはきっと二重の意味での苦しみ。 肉体的な、そしてそれを上回る精神的な苦しみ。 後悔。 後ろの悔い。 痛い。 痛い痛い。 痛い痛い痛い痛い痛い痛い。 堪らない。 耐えられる程度の、傷み。 「はっ、ははっ、……当麻、……当麻ぁ」 時間の感覚なんてとっくの昔に無くなっていた。時節フラッシュバックするする現実を痛感しながら、インデックスはただ記憶の中の想い出後悔に浸る。立ち尽くして、血を吐いては蹲り、涙を流して顔を手で覆い、発狂した様に髪の毛を毟って爪を噛み、肌を引っ掻いてまた泣く。 この白に埋め尽くされた空間を赤色で染めながら、インデックスはもうずっとそうしていた。 「…………あ゛………………………ひっ、ひくっ…………………ごふっ」 そしてまた血を吐く。 「……………………………………………………………」。 そしてまた沈黙する。 痛いくらいの沈黙が白き空間を満たす。 呆然と、まるで信心深い宗教家が神に見放されたと自覚した時のように茫然と、その少女は立ち尽くしていた。 「……………………当麻……………………………………」 立ち尽くす。泣く。血を吐く。呻く。記憶のフラッシュバック。そのサイクル。 ここが何処かもわからず、ここが何かも知らず、己が何をしているのかもわからず、ただ機械のように繰り返すそのサイクル。 そ・こ・に・突・然・、異・物・が・雑・じ・る・。 「酷い様なりけるのよ」 あり得ないことが起こった。 あり得ざる存在が存在した。 「力ある存在キャラクターが、己の称号キャラクター性すらたもてなきとは」 異物が雑じる。 この白き空間には存在しないはずの存在が現れる。 「………………………………………………………………――――――――――――――――――――――――」 その女は見た目18歳程度でありながら老齢な雰囲気を宿す矛盾した成り立ちをしていた。 その女は背丈の2.5倍ほどある宝石店に売られていてもおかしくないような黄金色をした髪を持っていた。 その女はベージュ色という本来では修道服としては相応しくない色をした修道服を着ていた。 ……その女のことをきっとインデックスは知っていた。 「されとて、まさか『初まりの領域』にまで堕ちたりけるとはね」
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 19:02:27.62 ID:yAhm9urX0 呆れたように、女はそんな台詞を口にする。予想外、とまではいかないが予定外の事態だった。上条当麻ヒーローの敗北とインデックスヒロインの崩壊。いくらこれが嘘だからといってそれはまだ早いだろうと僕は思うのだけど。その辺、お前らはどう思う?それも敵が人類絶対悪ビーストであるのならばともかく、ただの暗部組織が相手と来た。 期待しすぎたか、と女は少しだけ反省する。 だがある意味では仕方がないというか、当然の期待でもあったのだろう。 彼らは本来ならば出来たはずなのだ。 敗北をすることなく、勝利を掴めたはずなのだ。 積み重ねた10年以上の時が、彼らが暗部組織程度の敵を、悪を蹴散らせる事実を保証しているはずなのに。 それでも負けた。 それでも負けたのは……やはり……。 「当麻……………………………………ぐすっ、………ひぅ……っ!…………当麻あ゛……………ぅうぅぅ……………………」 「ここまで近づきても気付けぬか……。………………潮時なるかな」 距離50センチメートルでも反応無し。 わりと大きな声を出しても反応無し。 直接触ってみても、 「……………――――――――――――――――――……………………………――――――…………………………………………………………」 直接触ってみても反応無し。 だから女は決断する。 幾つもの出来事イベントを乗り越え、10年以上の時をかけ積み重ねてきた全てを切り捨てる覚悟を持つ。 「仕方なき、か」 「…………………………………………………………………」 見切りをつけた。 インデックスは此処で終わりだ。ここまで上条当麻に依存していたことは完全に予想外だった。こんな廃人はもう役に立たない。どれだけ素晴らしい能力を持っていても、どれだけ貴重な役割ポジションをもっていても、どれだけ代替の効かない称号持ちネームドでも、この程度でいちいちいちいちメンタルケアを必要とするなら、ここまではともかく、これから少し先はともかく、全ての役者が揃った後では絶対に役に立たない。 必要となるのは能力よりも技術よりも友人関係よりも金銭よりも精神なのだ。 だからインデックスはもういらない。 幸いにも変わりはもうきちんと登場している。 だから躊躇いはなかった。 勝つための最善手を、女は打つ。 「根源魔術オルディニスデーストルークティオー―――――― 揺らぎゆく自己同ドッペルゲン 「クラウ・ソラス+グングニル=万物貫九輝煌の剣クラウ・グングニル・ソラス」 バグドダッッッ!!!!!、と轟音が響いた。 第五宇宙速度をもって顕現した神話の武具が女に向かって直進する。 人間では見ることも出来ないほどの速さ。 人外でも追いつけないほどの速度。 それが銀河集団脱出速度である第五宇宙速度。 光速には届かないが、それでも十分すぎる。 秒速にして1000キロメートルの攻撃を避けることなど、どんな生物でもできる訳がない。 故に、 「…………………空白の主」 女は避けなかった。 いや、正確に言うなら避ける必要すらなかった。 万物貫く輝煌の剣クラウ・グングニル・ソラス。 アイルランド民話に登場する剣と北欧神話に登場する槍の特徴を合成させた融合神話武器。あらゆる敵を貫き、追尾し、切り裂く絶対の武器。 それも敵がそれ以上の力を持つのなら意味はない。 「からからから、かかかからからからからからから!!!初めま四十のひ三四ぶりっ、大悪魔五六ンゾンンンンンンンンンン!!!!!!!!!」 万物貫く輝煌の剣クラウ・グングニル・ソラスは女に、いやコロンゾンに刺さりもしなかった。当たる直前でコロンゾンの霊媒アバターであるローラ=ザザの左手が 万物貫く輝煌の剣クラウ・グングニル・ソラスを掴み取っていた。 そしてそのまま握りつぶす。 「取り戻四二来たのか七守り二来たのか七助け二来たのか七救一二来たのか七ぁ!」 ついでとばかりに放たれる空白の主の追撃。 フラガラッハ+ブリューナク+天下五剣=天下に轟く雷速絶貫の回答者天剣・フラガラック・ブリューナク。 レーヴァティン+如意金箍棒にゅいきんこぼう=伸縮自在の全焼枝金棒・レーヴァティン。 ハデスの兜+トリシューラ=不可視三叉槍トリシューラ・ハデス。 それをコロンゾンローラは弾く、捌く、消す。 その程度の武器ではコロンゾンは傷つけられない。 「遅一遅一遅一四遅すぎる!今ッ更ァッ、出来る訳が七一の二一!」 コロンゾンを殺したいのであればそれこそ外世界の存在でも連れてこなければならないだろう。 例えばタングラムとか。 「同士討ち!自爆!フ零ンドリーッッッ、ファ一アアアアアア!!!無自覚十八一え憐零だ四ね。仲間同士で潰四合う七ん十ッッッ!!!」 威圧するかのように顔を歪ませる空白の主をコロンゾンローラは真正面から見つめる。 まだ、敗けていない。 ここからの逆転はあると信じている。 「勝ち誇るには早きけるのよ、空白の主」 「からから、勝ち誇る二八早きける?勝ち誇りもするよ。何せ、君達の最重要駒が一つ脱落四たんだからからからから!!!」 「まだ確定はせざりたるわ!」 反撃。 反抗。 反対。 「禁書目録インデックスは七連物語セブンスストーリーズ第六物語シックスストーリーの庇護対象ヒロインであろうぞ!」 「からからから。禁書目録一ンデッ九スの絶対性八まだ保障さ零十一七一。彼女八まだ庇護対象ヒ六一ンであっ十隣二並び立つ者メ一ンヒ六一ンじゃ七一」 言葉と言葉の応酬おうしゅうはそれでも彼女たちが行えば全く別物へと変化する。 片やこの世界においても十二指に入る単一存在。『333』の数字を等価に持ち、拡散という本質にそって世界に汚泥と悪逆を撒き散らす大悪魔であり、世の理の結合を妨げる人外。単純戦闘能力ではかのアレイスター=クロウリーですら敵わないとされる絶対にして先住民センチネル側の理外人外の1人。 イギリス清教最大教主アークビショップ、必要悪の教会ネセサリウストップ、ローラ=スチュアートコロンゾン。 片やこの世界においても十二指に入る始源存在。人類が生み出した文明の全てを無効化し、人類が殺害することは絶対不可能である人外。人類が生み出した文明の全てを支配し、操作し、隷属させる罪人。時空間を超越し、運命論からも抜け出し、神話を体現する原初の片割れにして侵略者インベーダー側の理外人外の1人。 『初まりの領域』の主、本名未だ不明、『空白の主』。 この二人――――――人ではないから二人という数え方が適切かは分からないが、二人からすれば言葉は十分に武器足りえる。 なにせ二人が口にする言葉はただの言葉ではない。相手の称号キャラクター性に対する攻撃だ。
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 19:07:02.64 ID:yAhm9urX0 「インデックスはまだ死んでなきなのよ」 「今の一ンデッ九スが上条当麻の隣二立つ五十八不可能!そして、今の一ンデッ九ス八もう正気二八戻零七一!」 「そんなことはなきなのかしら!復活を望む声があれば黄金の餞はなむけでインデックスは復活できたるわっ!まだ、そこまでは確定していなきよ」 だから二人とも必死だ。口論で負ければその時点で『核』が破壊されてしまう。そうなれば復活は絶対にできない。 だから敗けられない。 そして言い負かせれば、殺せる。 故に本気の本気も本気。 全力全開の全身全霊の一所懸命。 「からから、悪あがき!一ンデッ九ス八地球位相二八戻零七一!一ンデッ九ス八この『初まりの領域』で一生狂気二浸っ十過ごす!五零八確定四十一るのお!」 「それはどうなりけるかしら」 「………………?」 「インデックスとは、一つの称号キャラクター性を指すものではなかりけるわよ」 この戦いを理解できる人間はどれくらいいるのか? この二人の言っていることが分かる存在はどれくらいいるのか? お前達には、 君達には、 理解できるか? 次の更新は7月中です。 読者による世界観考察が一定レベルを超えたため新要素を追加します。 赤き楔及び青き鎖及び黄金の餞はなむけシステムを追加しました。 【】は青き鎖に変化します。 なお、本来このシステムは四章終了後に追加する予定でした。皆さん鋭すぎ。 ………………万が一、億が一、兆が一、追加システムの適用区分が分かる方がいらっしゃったらもう私がこの物語を書く必要はないかなぁ……。それはつまりこの物語の『真実』に辿り着いたってことだし。
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/13(日) 19:08:01.45 ID:6M8BwMLro 同じような駄文何回もはってんじゃねえぞ
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 19:11:54.96 ID:yAhm9urX0 https://syosetu.org/novel/56774/159.html 小説情報 一括表示 縦書き しおりを挟む お気に入り登録 評価 感想 推薦 誤字 閲覧設定 固定 とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六 << 前の話 目 次 次の話 >> 159 / 178 まだギリセーフ。 3周年!!! 自動書記ヨハネのペンとパトリシア@ はじまりの物語交錯クロスオーバー 暴走、という言葉にいいイメージを持つ人はいないだろう。 暴走とはつまり制御できていないということで暴れ回っているということで手綱を握れていないという事。何をどう考えても悪いイメージしかない。 そしてそれが強い力の暴走というのなら尚更に悪いイメージしかない。 よく漫画やアニメなどで主人公の秘めたる力が暴走して敵を退けるなんてシーンがあるが、だいたいの場合その暴走は敵を退けたところで止まらず仲間を傷つける。要するに暴走とは強い力を得る代わりに無尽の暴力を振りまく諸刃の剣なのだ。 故に自動書記ヨハネのペンも止まらない。 主人格インデックスが引きこもってしまっては、庇護対象ヒロインが壊れてしまっては、止められない。 「脅威の排除を完了。――――――地下地脈に致命的な違和を確認。魔導書図書館としての魔法名に則りの地脈の探査を始めます」 自動書記ヨハネのペン。 英国三本柱が一つ清教派、イギリス清教必要悪の教会ネセサリウスが誇る人間兵器は言うまでもなく世界でも有数の強さを持つ。10万3000冊の魔導書の知識を正しく利用する人型図書館は世界を滅ぼし、世界を救い、世界を造り、世界を支配する事さえ出来る、志向性のある意志さえ持てば文字通り『何でも』出来る――――――あらゆる望みを叶える事さえ可能な、『絶対』なのである。 その『絶対』が今、暴走していた。 「探査完了。術式、滅亡齎す七の子羊セプテム・アニュス発動のための魔法陣を確認。このままでは現時刻より二日後、滅亡齎す七の子羊セプテム・アニュスが発動すると予測します」 暴走、といっても今回の自動書記ヨハネのペンの暴走は無差別に周囲に悪意暴力を振りまくといった形の暴走では無い。この場合で言う暴走とは『力暴力を揮う』という意味ではなく『本来の機能を外れている』という意味での暴走だ。 そもそも自動書記ヨハネのペンとは魔導書図書館Index-Librorum-Prohibitorumを二重の意味で護るためのセキュリティである。記憶の読み取りなどによりインデックスに所蔵されている魔導書の中身を知ろうとする輩や『首輪』に干渉する輩を排除するための保護機能。それが自動書記ヨハネのペンであり、自動書記ヨハネのペンはそれ以上の機能もそれ以下の機能も持たない。 故に、本来であればおかしいのだ。弓箭は確かにインデックスを攻撃した。放った弾丸はインデックスに致命傷を与え、インデックスは倒れ伏した。 だがそれだけだ。 それだけでは、自動書記ヨハネのペンは起動しない。 「対抗術式構築完了。警告、第十一章第一節。『新天新地に苦しみなし』―――――――完全発動まで一五秒」 先にも書いたように、自動書記ヨハネのペンとは記憶の読み取りなどによりインデックスに所蔵されている魔導書の中身を知ろうとする輩や『首輪』に干渉する輩を排除するための保護機能、つまりはインデックスではなく魔導書図書館Index-Librorum-Prohibitorumを、もっと言えば魔導書図書館Index-Librorum-Prohibitorumが保管している10万3000冊の魔導書を護るためのモノなのだ。インデックスを護るためのモノではない。間違ってもそうではない。 だから、たかだかインデックスが重体になった程度では、瀕死になった程度では自動書記ヨハネのペンは真の意味での起動はしない。もちろん、自動書記ヨハネのペンの表層機能、機械的な魔術の解析、解説機能くらいは起動するだろうが、襲撃者に対抗まではしない。 自動書記ヨハネのペンとはそういうモノで、魔導書図書館Index-Librorum-Prohibitorumとはそういうモノだ。 ならばなぜ今回は自動書記ヨハネのペンの真の機能が起動したのか。 「構築術式干渉失敗。――――――全四層にて構築された滅亡齎す七の子羊セプテム・アニュスの守護結界を確認。滅亡齎す七の子羊セプテム・アニュスの守護結界の強制破壊を開始。――――――第一層破壊完了。第二層破壊完了。第三層破壊完了。第四層破壊――――――失敗。第四層再解析開始」 その理由は一言で表すことが出来る。 つまりは干渉。 上位存在の干渉。 インデックスを支配する絶対上位者による操作。 『拡散』を本質にもつ大悪魔コロンゾンによる直接介入。 それが自動書記ヨハネのペンを歪めた。 「解析完了。滅亡齎す七の子羊セプテム・アニュス第四守護結界に対する再干渉を開始」 イギリス清教最大教主アークビショップローラ=スチュアート。 の身体を乗っ取った大悪魔コロンゾン。 は当然あらゆる意味でインデックスを制御することが出来る。 なにせインデックスという兵器に首輪、自動書記ヨハネのペンという制御機構セーフティを設けたのはイギリスだ。三大派閥のトップ、清教派のリーダーが干渉できないわけがない。 そしてそれ以前に、インデックスの主・人・格・は今コロンゾンと共にいる。 そこから干渉することも、当然できる。 大悪魔と称されるコロンゾンはそれだけの力を持っている。 この世界でも十二指に入る存在、先住民センチネル側の最高戦力、それがコロンゾンであるが故に。 「滅亡齎す七の子羊セプテム・アニュス守護結界第四層破壊完了。滅亡齎す七の子羊セプテム・アニュスへの再干渉を開始。警告、第十一章第一節。『新天新地に苦しみなし』―――――――完全発動まで五秒」 ただ、 ただ、 それを、看過できない存在もいる。 インデックスという登場人物キャラクターが『枠』を外れるのを好まない存在もいる。
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 19:13:06.31 ID:yAhm9urX0 「――――――――――――」 …………少し、深く語るとすれば、 世界物語キャラクターストーリー理論に照し合わせた時、インデックスの称号キャラクター性は庇護対象ヒロインである。 庇護対象ヒロイン。 今はまだ未覚醒状態であるインデックスという登場人物キャラクターは、全ての物語に共通する、明確な個性の無い称号持ちネームドでしかない故に、未だに庇護対象ヒロインでしかない。 恋人メインヒロインにして心に疵を遺す者メモリアルヒロインだった英国第三王女ヴィリアンのような、 恋人メインヒロインにして側で共に戦う者パートナーズヒロインである前方のヴェントのような、 特別で特異で唯一無二の称号キャラクター性を持っていない。 だから『薄い』のだ。 役割が、立場が、『定まっていない』。 だから『枠』を外れられる。 だから『変わられる』。 「なるほど」 不安定で、不明瞭で、不均衡な、登場人物キャラクター。 それが今のインデックス。 そして付け加えておくのならば、インデックスと自動書記ヨハネのペンは違う。 完全なる別人といってもいい。 同一人物でありながら別人であるインデックスと自動書記ヨハネのペンは、いうなればコインの表裏だ。 同一人物でありながら別人であるという矛盾を完全に許容している異常。 その異常を、彼女は受け入れられない。 「妙な気配がすると思ったら、……自動書記ヨハネのペンですか。でもどうして起動状態のまま?何か不具合でも……?」 ゆっくりと、歩いてきた。 彼女、――――――魔術結社『明け色の陽射し』サブリーダー、パトリシア=バードウェイは溜息をつく。 「仕方ないですね」 そして、掲げる。 カップを掲げる。 まるで神に傅くかのように聖杯を掲げて、パトリシアは言う。 「王の遺産レガリア――――――万能願望飢ホーリーカリス『嘆きの聖杯タリスマン・シンボル・オブ・ヴァリアス』起動アウェイクン。私の寿命1秒を代償に対象を停止させてください」 王の遺産レガリア――――――万能願望飢ホーリーカリス『嘆きの聖杯タリスマン・シンボル・オブ・ヴァリアス』。 この世界位相に4つ存在する最強の霊装の内の1つ。 代償を捧げることであらゆる願いを叶える万能の器に命令して、パトリシアは自動書記ヨハネのペンを停止させようとして、 ギュルンッ!と魔導書図書館の目玉が廻った。 「警告、第八章第六節。禁書目録インデックスに対する魔術的干渉を確認。……現状、一〇万三〇〇〇冊の『書庫』の保護のため、侵入者の迎撃を優先します」 「っ!?」 予想外のことが起こった。 ギチリ、と何かが軋むような音と共にパトリシアの攻撃が無効化された。 「……今のを防ぎますか。……たいした代償は与えてないけど、王の遺産レガリアにすら対抗できるなんて、さすがはイギリス清教の人間兵器、か」 感心したように、軽蔑した様に、義憤に満ちた心持ちでパトリシアはもう一度代償を捧げる。 王の遺産レガリア――――――万能願望飢ホーリーカリス『嘆きの聖杯タリスマン・シンボル・オブ・ヴァリアス』。黄金よりも眩い、眩んでしまいそうになるほどに煌びやかな聖杯の、その器部分に『何か』が満ちる。 ドロリとした気持ち悪い『欲』が満ちる。 「警告、第三五章第一八節。『硫黄の雨は大地を焼く』――――――完全発動まで三秒」 「代償は私の寿命1秒。避けさせてください、『嘆きの聖杯タリスマン・シンボル・オブ・ヴァリアス』」 自動書記ヨハネのペンは『特別』だ。 一般人とは役割が違う。 選ばれている。 一〇万三〇〇〇冊という魔導書を保持する書庫、大悪魔コロンゾンによる支配、人工的に造られた人型兵器、イギリス清教の秘奥。 そして何より世界物語キャラクターストーリー理論における庇護対象ヒロイン。 これが選ばれた存在でなければ何だというのか。 断言していい。インデックス自動書記を超える『特別』など世界でも十数人程度しかいない。 そしてその1人がパトリシア=バードウェイ。 パトリシア=バードウェイはインデックス以上の『特別』だ。 「代償は左手小指第一関節より前。対象魔導書図書館Index-Librorum-Prohibitorum。使用目的対象の停止。具体化、対象体内機能低下による対象の意識喪失。実行して、――――――『嘆きの聖杯タリスマン・シンボル・オブ・ヴァリアス』」 だから、パトリシアの方が早かった。 「が、がっ、ガガ外部からの、かんッ!干、渉をかくにかかくくあかうあににあなんな?んん???んんん?んんん?????????」 『嘆きの聖杯タリスマン・シンボル・オブ・ヴァリアス』に『欲』が加えられるとともに、自動書記ヨハネのペンにエラーが生じる。 ガクガクガクッ、と痙攣したかのように身体を震わせ、あっという間に自動書記ヨハネのペンは機能不全に陥った。 「―――――――――ガ――――――――――て」 それはパトリシアから自動書記ヨハネのペンへの不可視の攻撃。 今の自動書記ヨハネのペンでは『絶対』に解析することが出来ない魔術を超えた未知の一撃。 「まだ、死なれては困りますからね」 微塵も動かない上条の上に今度こそ完全に倒れ伏したインデックス=自動書記ヨハネのペンを睥睨しながら、 「第四物語フォースストーリーの主役級メインキャラクター、主人公ヒーローの内の誰も救えない英雄ガラクタヒーローである私は、別の物語ストーリーの主人公ヒーローと物語交錯クロスオーバーしないといけないんですから」 蛇足に近い人生を生きるパトリシアは、 世界の真実に近い場所にいるパトリシアは、 ようやく見つけた手掛かりに安堵して、 二人のことを見下した。 スタジアムの戦い(前哨戦) 上条当麻&インデックスVS弓箭猟虎 勝者……インデックス(自動書記ヨハネのペン) パトリシアの口調これであってるかなぁ?ちょっと読み込みが浅かったかもしれない……。 後、今1年ぶり2度目のスランプ中です。次の更新は遅くなるかもしれません。 次の更新は8月中までにです。
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 19:13:38.90 ID:yAhm9urX0 https://syosetu.org/novel/56774/160.html とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六 << 前の話 目 次 次の話 >> 160 / 178 親友と家族を天秤にかけた。 彼女は絆より愛を選んだ。 家族と恋人を天秤にかけた。 彼女は愛より恋を選んだ。 恋人と自分を天秤にかけた。 私は、 私は恋より生を望んだ。 ――――――二九七 そろそろ根幹を探求してみようか 上条当麻とパトリシア@ 『主メイン』『人キャラ』『公クター』 目覚めは鬱屈だった。 底なしの泥沼に嵌ってしまったかのような倦怠感が上条の身体を襲っていた。 「……っ、……ぅ、あ?」 覚醒する意識と共に背中に冷たい感覚が奔る。 何かを探すように手を動かして、重く感じる頭を起こして、 上条は自分が今いる場所が廃ビルの一室であることに気が付いた。 「……………………………?」 床に無造作に寝かされた影響か、痛む全身を無視しながら、途切れ途切れの記憶を手繰り寄せて上条は現状把握に尽力する。 そう、確か、上条は……、あのスタジアムで『誰か』と戦って……。 「どう、……なったんだ?」 記憶はそこで途切れていた。1周目の世界で人類が死滅した理由を探るためにインデックスに協力を仰ぎ、1周目のインデックスの行動の理由を推理して『スタディ』の居城があるスタジアムの地上部に行き、そこで『誰か』による襲撃を受け、上条はその襲撃者の攻撃によって胸や肩を貫かれて、 「!?」 バッ、と上条は自らの身体を弄った。混乱していたからか今まで全く気が付かなかったが、スタジアムで戦っていた時と服装が変わっている。制服から半袖シャツと半ズボンに洋服が変わっている。 上条が自ら着替えた記憶を持たない以上、誰かが上条を着せ替えたのだろう。 だが、それよりももっと重大な異常が上条の身には在った。 「傷が……」 無かった。 「……………………………」 あるはずのモノがなかった。 記憶と現実に齟齬があった。 「……なん、で」 極限の混乱を抱えながら、上条はもう一度自分の身体を触る。 少なくとも右肩と左腹と右胸には大穴があいていたはずだ。不可視の攻撃、おそらく銃弾のようなモノが上条を貫き、上条はその痛みから地面に倒れた。 それは覚えている。 だからおかしい。 あの傷はそう簡単に塞がるようなモノではない。 身体にあいた大穴はそう簡単に消えるモノではない。 「それに、ここはどこなんだ?」 普通に考えれば、もしもあの状況から助かったのだとすれば、上条は病院に運ばれているはずだ。 誰が病院に連絡してくれたのかとか、どうして襲撃者は上条に止めをささなかったのかとか、なぜ上条はあれほどの傷を負って即死していないのかとか、いろいろ問題点疑問点はあるにしろ、現在上条が助かっている、生きている以上、普通に考えれば上条は病院で治療を受けたと考えられる。 そしてそうだとすれば納得できるのだ。病院で適切な治療を受け、その結果として大怪我が治った。大いに納得できる。だが、現実は違う。上条がいる場所は明らかに病院などではなく、治療を受けたような痕跡すらない。 だからわからない。
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 19:14:57.42 ID:yAhm9urX0 「何が……、どうなってるんだ…………」 項垂れる。 何も分からない。 何も、何一つとして。 上条一人では、此処からどうすればいいか全く判断が出来ないだろう。 「あっ、起きたたんですか?」 「っ!?」 だからこそ外からアクションがあった。状況を進めるための駒が外側から現れた。 「あんた、は?」 現れたのは短い金髪をカチューシャで押さえ額を露出した髪型をした少女だった。服装に関しては短めのプリーツスカートに半袖のブラウスといった極一般的なモノ。ただし一目で学園都市製ではないと分かる材質で造られていて、故にこの少女は『外』から来た人間であると上条は一目でわかった。 年齢のせいか見目麗しいというほどではないが、それでも可愛らしい、庇護欲をそそられる容姿をした少女。 だが、その姿にはどこか違和感があった。 (……鬘かつら?) 違和感の原因は身体でも服装でもない。その髪だ。 光を反射して輝く金髪の中に明度の違う金髪が混じっている。その明度の違いが上条に違和感をもたらしている。 1人の少女が持つ2種類の金髪。それが上条にどうしようもない違和感を与えていた。 だが、もちろんそれは重要なことではない。 より正確に言うのであれば上・条・当・麻・の・所・属・す・る・物・語・に・関・係・の・あ・る・話・で・は・な・い・。 「私はパトリシア=バードウェイ。欧州最大の魔術結社、『明け色の陽射し』のサブリーダーで、あなたと同じ七連物語セブンスストーリーズに属する人間。役割ポジションと称号キャラクター性は主役級メインキャラクターと主人公ヒーロー。そして手にした唯一性オリジナリティは誰も救えない英雄ガラクタヒーロー。……誰一人として救うことのできなかった、どうしようもない欠陥英雄ガラクタですよ」 悔恨の過去に自嘲しながら、パトリシアはそう自己紹介した。 久し振りに会った、会う事の出来た、自分と『同じ立場』の存在。抗えない『宿命運命』を担った同類。 もう『終わってしまった』パトリシアには根源的には関係ない事だが、しかし物語交錯クロスオーバーした以上完全に無関係ではいられない。 パトリシアは上条が七連物語セブンスストーリーズのどの物語に所属しているのか知らない。パトリシア自身が所属していた第四物語フォースストーリー、同じ『立場』の知り合いがいる第二物語セカンドストーリー、『完結』している第一物語ファーストストーリーと第三物語サードストーリーは除くとして、残りの3つ、第五物語フィフスストーリー、第六物語シックススストーリー、そして第七物語セブンスストーリーのどれに上条が所属しているかはまだこの時点では分からない。 けれど間違いなく『同類』だ。 それが分かる。分かるのだ。 だから必然、パトリシアの上条に対する好感度は高く、同時に低い。 それはパトリシアが上条に期待しているからで上条を羨んでいるからだ。 『終わってしまった』蛇足の人生を生きるパトリシアと比べて、上条はまだこれからだと分かる。 あんな戦闘に巻き込まれていたことからも分かる。 「『明け色の陽射し』……、魔術結社?」 上条はパトリシアの言っていることの8割も理解していなかった。だから、理解できた単語だけを口に出した。 魔術結社、『明け色の陽射し』。 魔術結社という単語はインデックスから聞いたことがある。 その名の通り魔術師の組織。同じ志を持った複数の魔術師が所属する組織。それが魔術結社。 「……そっちに注目するんですか?私達のような存在にとって重要なのはそっちじゃなくて称号キャラクター性の方なんじゃ?」 「称号キャラクター性?」 「……?……何で理解できないみたいな顔してるんですか?あなただって私と同じ、私と同じ主人公ヒーローでしょう?」 端的に言って、 「当り前のように命の危機に瀕して、当たり前のように多くの人に好まれて、当たり前のように秘密を抱えて」 ひどく単純な話として 「誰かのために身体をはって、誰かのために心を擦り減らして、誰かのために生きる」 とても簡単なことで、 「主人公ヒーローでしょう?」 上条当麻はパトリシア=バードウェイの言っていることが何一つとして理解できなかった。 「何、言ってんだ……?」 『終わってしまった』パトリシアと『始まったばかり』の上条では自分の立場に関する理解度が大きく違う。 役割ポジションと称号キャラクター性、そして唯一性オリジナリティ。 主役級メインキャラクターであり、主人公ヒーローとして覚醒ユーヴァーメンシュした結果、誰も救えない英雄ガラクタヒーローの称号キャラクター性を手に入れたパトリシア。 パトリシアは自覚している。この世界の在り方についてすべてではないが知っている。
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 19:16:55.69 ID:yAhm9urX0 パトリシアの物語は既に『完結して終わって』しまっているから、パトリシアは上条よりも先に進んでいる。 対して上条は違う。上条の物語はまだ始まったばかりだ。 上条は主役級メインキャラクターであり主人公ヒーローでこそあるが、まだ覚醒ユーヴァーメンシュしていないし、故に固有の称号キャラクター性を持っていない。 つまりは称号持ちネームドとしてはまだ半人前だ。 個性がない、と言い換えてもいい。 記号的である、とすら言ってもいい。 だからまだ上条は知らない。 パトリシアの領域には届かない。 「ん、えーと」 パトリシアの表情に戸惑いが混ざる。あり得ない事態への困惑。予想外の反応への混乱。このタイミング、この時期であれば知っていて当然のはずなのだ。その当然を知らないとは一体どういうことなのか。 「………………………」 パトリシアの知っている限り第一物語ファーストストーリーから第四物語フィフスストーリーまでの物語は既に『完結』している。そして『完結』している以上、それぞれの物語の主人公ヒーローは世界物語キャラクターストーリー理論の概要くらいは知っているはずなのだ。 故に断定される。この少年の所属は第五物語フィフスストーリーか第六物語シックスストーリーか第七物語セブンスストーリーである。 だが、パトリシアは既に物語交錯クロスオーバーしている第二物語セカンドストーリーの主人公ヒーローから第五物語フィフスストーリーと第六物語シックスストーリーの情報を聞いている。 情報によれば第五物語フィフスストーリーの舞台は現実世界ではなく、第六物語シックスストーリーの舞台は学園都市外のはずだ。つまりこの少年の所属は第五物語フィフスストーリー及び第六物語シックスストーリーではないとパトリシアは断定する。 ということは、 であるとすれば、 その推論が正しいのであれば、 「あ、な……たが……?」 いや、いいや。 辿り着く。 パトリシアはようやくたどり着く。 「あなたが、」 その喜悦を抑えられない。 求め続けていた『中心』。世界の全てを操ることのできる本当の『最重要人物キーキャラクター』。核の違う、格の違う『最後の希望Last future of Embryo』。 それが、今、目の前にいる? 「あなたが主軸メインストーリーなんですか?」 見つめる。 見つめる。 口元が歪む。 いや、いいや、断定していいはずだ。 「ねぇ、答えてよ」 詰問口調になるのも仕方がないだろう。なんせ本当に長い間求め続けてきたのだ。あの地獄を乗り越えて、人類史史上最大の犠牲者を出したテロを踏み越えて、三発目の核爆弾の爆発を止められないで終わったFDEGを想い出にして、永劫の悪夢をリフレインさせながら生きることを選んで、心を擦り減らして精神を狂気に浸して魂を冒されながら生きてきた絶望のヒビが、 ようやく、終わる。 「あなたが、全部終わらせられる、何もかもを完膚なきまでに救う、完全で、完璧で、完成された、最新の、最後の、最高の、正常に動作する、正当な行動だけをする、皆に認められて、誰にでも褒められて、頂点に立つ、多くを導く、悪人を説得できる、敵でも協力させられる、どうしてか都合の良い事ばかり起きて、あり得ないくらいのペースで事件に巻き込まれて、試練もあるけど乗り越えて、たくさんの異性から好意を持たれて、特殊な力を持っていて、いろいろなことを隠されていて、出自に秘密があったりして、土壇場で逆転の秘策を思いついて、追い詰められれば覚醒して、自然に仲間が出来て、普段はくだらない日常を過ごしていて、平穏を維持するために戦って、時に精神的な問題を抱えて、出来のいい師匠がいて、親友が闇堕ちしたりして、死んだと思っても実は生きていて、知り合いの死を乗り越えて、もともとはただの一般人で、昏めの過去を持っていて、ぶれない信念があって、トラウマを抱えていたりして、覚悟を決めるイベントがあって、因縁のあるライバルがいたりして、くだらないことに悩んだりして、ラッキースケベを体験して、重要人物とのコネを持っていて、大統領とか裏組織のトップとかと繋がりがあって、実は両親が重要人物で、黒幕の思惑に利用されて、だけど絶対に悪を倒すことが出来る、世界を救える、人を助けられる、誰も犠牲にしない第三の選択肢を生み出すことが出来る、尋常じゃない回復力と常人とは比べものにならない才能を持っている、誰にでも出来ることを率先してやる、神様にこそ愛された、選ばれている、愛されていた、都合の良い、天才的な閃きを持つ、運よく生き残る、よく事件に巻き込まれる、いつの間にか世界規模の戦いに参加している、高校生以下で、飲酒も喫煙もしない、血だらけになってもたてる、アバラが折れても戦闘を続行できる、咄嗟に誰かを庇える、自分の命を誰かのために使える、大怪我を負っても敵に立ち向かう、正義感に満ちた、曲がったことが赦せない、柔軟で、高度な、臨機応変に動ける、迫害された、差別された、仲のいい同性の友人が情報通で、急に転校生が同じクラスに来たりして、道端で重要人物とぶつかって、時にあくどいこともやる、1人暮らしの、辛い過去を持った、頭のいい、でも馬鹿だったりする、誰にでも優しくて、努力家で、みんなを手伝える縁の下の力持ちで、神様に選ばれた、多くの人に支持される、どうしようもないほどに愛に満ちた、人間離れした、裏切りも許容する、特別で、特異で、特性で、スピンオフとかで活躍しちゃう、表と裏を、白と黒を、光と闇を行き帰する、誰よりも」 「なんなんだよッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!」
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 19:17:38.79 ID:yAhm9urX0 「―――――――――――――――――――………………」 「なぁ、なんだよ!?さっきから黙って聞いてりゃ訳の分からないことをべらべらしゃべりやがってッ!主人公ヒーロー?主軸メインストーリー?なんだよそりゃ?俺は知らない知らない知らなんだよそんなことはッッッ!!!」 髪をぐちゃぐちゃに掻き毟って上条は叫んだ。 いっぱいいっぱいなのだ。 ある意味ではパトリシア以上に上条には余裕がなかった。 だから睨みつける。ねめつける。憎しみをもって、上条はパトリシアのことを見る。 訳が分からないいい加減にしてくれどうして俺ばっかりと、圧倒的な負の感情をぶつける。 「どうしてこんなわけのわかんない事ばっか起きるんだよ!?どうして俺にばっかりこんな『不幸』が降り注ぐんだよ!?なんで前の人類は死滅したんだ!?誰があのスタジアムで俺を撃ったんだ!?お前はいったい誰なんだよ!?どうして俺の身体には傷一つないんだよ!?どうして、どうしてっ、どうして……っっっ」 もちろん、普段の上条はこんな理不尽なことはしない。きちんとパトリシアの話を聞いて、分からないことを理解しようと努力して、相互理解を努めようとするだろう。 上条の根幹にあるのは優しさだ。どれだけの悪人でも、どれだけイカレテイル存在でも、問答無用で殴りつけるなんてことはしない。 だから珍しいのだ。本当に珍しいのだ。 上条当麻という人間が年下の少女を理不尽に怒鳴りつけるなんてことは。 「…………………………………俺に、何を、どうしろっていうんだよ」 そう言って、上条はズルズルと壁にもたれかかった。 何をすればいいか分からない。何が起きているのか分からない。どうすれば正解なのか判断できない。 情報が足りなくて、人手が足りなくて、信頼の有無が理解できなくて、もう一歩も動けない。 全てが分からないからもう終わりだ。 「俺は、………………もう…………………」 「一つ、アドバイスしてあげます」 よく分かっていた。 パトリシアは今の上条のことをよくわかっていた。 かつてのパトリシアも今の上条と同じようなことがあった。 誰が敵か分からず、誰が味方か分からず、何をすればいいか分からず、どう行動を起こせばいいのかわからず、そもそも行動を起こすことが正解なのか分からず、手掛かりもなく、たった一人で恐怖に震え、絶望に悲嘆し、実の姉すらも攻撃したその過去。 救えない。 救えない。 救えない。 生半可な言葉では、届かない。 「――諦めるのは簡単です」 だから単純でいい。 「でも」 たった二言でいい。 「私達主人公には、似合わない」 私達主人公は必ずもう一度立ち上がれると、誰も救えない英雄パトリシア=バードウェイは知っている。 かつての自分がそうだったように、上条も必ず立ち上がるとパトリシアは知っている。 主人公ヒーローとは、そういう生き物だ。 少しだけ、明かされる『世界観』。 次の更新は8月中にです。 …………えっ?上条のキャラクターが原作と違うって? あははっ、よく気付いたね。 でも大丈夫。それにはきちんと理由があるんだ。 あははっ、だって彼はもう―――――――――――――――――― ね? 分かるだろう?
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 19:18:29.29 ID:yAhm9urX0 https://syosetu.org/novel/56774/161.html とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六 << 前の話 目 次 次の話 >> 161 / 178 解説回です。 物語は進みません。 パトリシア=バードウェイ@ 斃たおすべき『敵』の名は 初まりは一通のメールだった。 それがパトリシアの全てを狂わせた。 送り主不明のメールを無警戒にも開いてしまったあの時から、パトリシアの運命は普通から外れた。 『第七回DEG』への招待状。 始まったのは7人の人間によるイギリス全土を舞台にした殺し合い。 正しく常軌を逸していた。 誰もが狂って、正常じゃなくなっていた。 生き残るために何だってしていた。 家族を、恋人を、友人を、見知らぬ誰かを、通りかかっただけの他人を護るために、本当に出来ることをした。 ある男はたった一人の人間を[ピーーー ]ためだけに最新式対空ミサイルで300人の罪の無い一般人がのる飛行機を撃ち落とした。 ある母は隠れ潜んだ敵を[ピーーー ]ためだけに致死率90パーセント越えの細菌をイギリスの首都、ロンドンにばら撒いた。 ある少女はわずかとなったタイムリミットに自暴自棄になって水道の水に猛毒を混ぜ込んだ。 どうしようもなかった、とパトリシアは思う。 今でもそう思う。 それぞれがそれぞれの最善を尽くすために戦って、抗って、願って、それでも――――――。 それでも、終わらなかったのだから。 曰く、『さぁ、FDEGを始めようか』。 七分の一の、四十九分の一の生存者。 欧州全土を1000年は再起不可能なまでに破滅させた終滅の第四物語フォースストーリー。 そのメインテーマは『犠牲』。 その系統は『デスゲーム』。 そのタイトルは『とある少女の喪失話譚』 そしてラスボスの役割ポジションを担っていたのは、 「………………………人類絶対悪ビースト」 人類絶対悪ビーストと呼ばれる存在達がいる。 『人類』という種に対して『絶対』的な『悪』を為す存在達。 国際連合によって秘密裏に認定された最重要指名手配EX存在。 現在の世界では17の存在がその認定を受けている。
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 19:19:04.28 ID:yAhm9urX0 https://syosetu.org/novel/56774/161.html とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六 << 前の話 目 次 次の話 >> 161 / 178 解説回です。 物語は進みません。 パトリシア=バードウェイ@ 斃たおすべき『敵』の名は 初まりは一通のメールだった。 それがパトリシアの全てを狂わせた。 送り主不明のメールを無警戒にも開いてしまったあの時から、パトリシアの運命は普通から外れた。 『第七回DEG』への招待状。 始まったのは7人の人間によるイギリス全土を舞台にした殺し合い。 正しく常軌を逸していた。 誰もが狂って、正常じゃなくなっていた。 生き残るために何だってしていた。 家族を、恋人を、友人を、見知らぬ誰かを、通りかかっただけの他人を護るために、本当に出来ることをした。 ある男はたった一人の人間を[ピーーー ]ためだけに最新式対空ミサイルで300人の罪の無い一般人がのる飛行機を撃ち落とした。 ある母は隠れ潜んだ敵を[ピーーー ]ためだけに致死率90パーセント越えの細菌をイギリスの首都、ロンドンにばら撒いた。 ある少女はわずかとなったタイムリミットに自暴自棄になって水道の水に猛毒を混ぜ込んだ。 どうしようもなかった、とパトリシアは思う。 今でもそう思う。 それぞれがそれぞれの最善を尽くすために戦って、抗って、願って、それでも――――――。 それでも、終わらなかったのだから。 曰く、『さぁ、FDEGを始めようか』。 七分の一の、四十九分の一の生存者。 欧州全土を1000年は再起不可能なまでに破滅させた終滅の第四物語フォースストーリー。 そのメインテーマは『犠牲』。 その系統は『デスゲーム』。 そのタイトルは『とある少女の喪失話譚』 そしてラスボスの役割ポジションを担っていたのは、 「………………………人類絶対悪ビースト」 人類絶対悪ビーストと呼ばれる存在達がいる。 『人類』という種に対して『絶対』的な『悪』を為す存在達。 国際連合によって秘密裏に認定された最重要指名手配EX存在。 現在の世界では17の存在がその認定を受けている。 人類絶対悪ビースト位階総序列第一位T。 『悪意』の悪徳を体現する人類絶対悪。世界で起きる大事件の半数以上に関わっているとされる地球誕生以後最悪にして最低の生命。罪状、第一次及び第二次世界大戦の扇動、シチリア島沈没事件の実行、世界最悪のテロ組織『国境なきテロリストTerroristes Sans Frontières』への『皇帝イワン』密輸未遂、マダガスカル島両断の実行など。 人の不幸を嗤い、悲劇に耽美し、涙を流す人間を観劇する、初まり罪に犯されし絶対悪。 本名は不明、それ故に仮称が『根源悪ディープ・ブラック』。 何をしてでも滅すべき、人類の敵。 人類絶対悪ビースト位階総序列第二位U。 『欲望』の悪徳を体現する人類絶対悪。人の願いを欲望のままに叶え、その失敗を嘲笑することを生き甲斐とする人外。罪状(なお全て間接罪)、地球温暖化の実行、一秒の定義の改竄、現行科学を遥かに凌駕した超超々越兵器『亜空の使者』の創造など。 欲望を叶えるだけ叶えてその責任をとらない、他の人類絶対悪ビーストからすら嫌われる最低の絶対悪。 故にその名は『ガイア・ジ・アース』。 星が生み出した、星の癌。 人類絶対悪ビースト位階総序列第三位V。 『終焉』の悪徳を体現する人類絶対悪。過去現在未来に存在し得る全ての可能性を全て観測し、あらゆる『終わり』を現実にできる天才を超える天災。罪状(一切の証拠無し)、最低でも1870人の才人の廃人化、人口衛星USA-224墜落事件の実行、パリ全インフラ停止事件の実行、インペリアルパッケージ強奪未遂など。 あらゆる全てをすることができ、あらゆる全てを識っている全能の絶対悪。 故にその名は『木原五行』。 木原一族の最高傑作にして、最大の失敗作。
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 19:19:56.75 ID:yAhm9urX0 人類絶対悪ビースト位階総序列第四位W。 『錯乱』の悪徳を体現する人類絶対悪。人が混乱し、混迷し、理不尽に必死に抗う様を高みから見ることで優越感に浸る、人間の根幹にある感情を最も端的に表す人間達。罪状、国際宇宙ステーションISSクラッキング事件の実行、全世界同時多発的海底パイプライン切断事件の実行、三原色喪失事件の実行など。 柔軟な発想と存在しない禁則をもって人に仇為す最悪の災厄、他者の努力と対策を嘲笑う絶対悪。 故にその名は『原初たる混沌宇宙』。 誰にも制御することのできない、破滅快楽主義者の集まり。 人類絶対悪ビースト位階総序列第五位X。 『代替』の悪徳を体現する人類絶対悪。唯一にして絶対の『人が人形になった存在』であり、量子学的にゼロパーセントと断言されたはずの『完全な人形』の完成品。人形村の人形師達が辿り着いた、夢想の夢の産物。罪状、四十三カ国の指導者たちの拉致及び殺害、数多の国の政治家に成り代わったこと、ロシア連邦核ミサイル発射未遂事件の命令など。 本物となることのできる影、見破れない嘘、見分けの使い偽物、今あなたの隣にいるかもしれない最も身近な絶対悪。 故にその名は『人形ひとかた人形にんぎょう』。 この世で唯一の、完全なる人形型人間アリス。 人類絶対悪ビースト位階総序列第六位Y。 『殺人』の悪徳を体現する人類絶対悪。その魂魄に『殺人因子』を宿し、己が性質に従って無限の殺戮を繰り返す名を喪った殺人鬼の組織。罪悪感も罪責感も感じず、時に享楽をもって、時に悲哀をもってただただひたすらに殺し尽す血みどろの悪。罪状、第二次世界大戦における人道に対する罪(多数)、中国における民衆大虐殺事件の後押し、滅亡級魔術致死病療666ウイルス発動未遂など。 歴史上最も多くの同族を殺した、絶対に和解することのできない絶対悪。 故にその名は『不思議の国の御伽噺フェアリーテイルワンダーランド』。 史上最も多くの人間の殺戮した、人殺しの組織。 人類絶対悪ビースト位階総序列第七位Z。 『救済』の悪徳を体現する人類絶対悪。魔術という神秘を極め切り、究め切り、窮め切った白痴の賢人。かの『黄金』すら上回る、魔術の基礎の基礎、魔術体系そのものを確立した始祖にして原初の魔術結社マジックキャバル。罪状、南極大陸地脈枯渇事件の実行、冥王星準惑星降格の主犯、小規模な世界法則改竄による科学法則に対する反逆など。 人を救うことに執着した結果人を滅ぼすという結論に辿り着いてしまった、最も優しき絶対悪。 故にその名は『断罪の七大罪』。 変えられない現実を前に嘆き狂ってしまった、英雄の成れの果て。 人類絶対悪ビースト位階総序列第八位[。 『異端』の悪徳を体現する人類絶対悪。人の身でありながら神に成り代わろうとし、歴史を、因果を、当たり前を覆す、『黄金』と同等の魔術組織。そのあまりにも苛烈で過激で加虐な思想から地球上全魔術組織から『異端認定』を受けた最悪の魔術組織。罪状、老若男女879520人を用いた魔術的人体実験の実行、既存の魔術体系に対する反逆、十字教三大宗派本部襲撃など。 神を求めるがあまり神をすら[ピーーー ]、本末転倒な組織。 故にその名は『大いなる業の憲章アルス=マグナ=カルタ』。 凡ての神を否定する、黄金の錬金術師の魔術結社。 人類絶対悪ビースト位階総序列第九位\。 『虐待』の悪徳を体現する人類絶対悪。無意味に力を揮い、無作為に命を消費し、無駄に血を流す、残酷で残虐で残忍なテロ集団。世界各地でテロ行為を行う目的の全く見えない組織。罪状、善悪最終生存戦争ファイナルデッドエンドゲームの表向きの首魁、スレブレニツァの虐殺及びジョージア民族浄化等多数の虐殺事件の扇動、他の人類絶対悪ビーストに対する人員、武器、殺人ノウハウ等の輸出など。 人の数を減らすことそのものを目的とした人間の形をした異星人エイリアン、会話は出来ても話の通じない絶対悪。 故にその名は『国境なきテロリストTerroristes Sans Frontières』。 自らの心しか信じない、極悪非道な絶対正義。 人類絶対悪ビースト位階総序列第十位]。 『復讐』の悪徳を体現する人類絶対悪。人類史史上最大の謎といわれる『幻想島フィクションアイランド』の謎の答えを探すためだけに生きているたった5人のダークヒーロー。罪状(なお全て間接罪)、ベルリンの壁再建事件の教唆、米国所属空母ロナルド・レーガン強奪事件教唆、ストックホルム大炎上事件教唆など。 命の尊さを他の誰よりも知っていながら、己のエゴで人殺しを強要する善の皮を被った絶対悪。 故にその名は『復讐同盟』。 誰かの復讐を教唆する、外道の集まり。
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 19:20:49.16 ID:yAhm9urX0 人類絶対悪ビースト位階総序列第十一位Ⅺ。 『冒涜』の悪徳を体現する人類絶対悪。生命というモノを完全に理解し、命を、魂を、魂魄を、生きるということそのものを数式化した空前絶後の大天才。そしてその天才性を誤った方向に成長させた未曽有の大天災。罪状、ラスベガスゾンビ出現事件の実行、複数の死体を繋ぎ合わせた新生命体『ドリット・メンシュハイト』の制作、全世界同時生放送での人体解体の実行など。 死を恐れるがあまり死を拒絶した、人類最後の夢である不死を現実にした絶対悪。 故にその名は『死体繋したいつなぎ屍しかばね』。 終わりを終わりで終わらせない、永遠の呪いを与える屑。 人類絶対悪ビースト位階総序列第十二位Ⅻ。 『進化』の悪徳を体現する人類絶対悪。人でない故がに存在する永遠の時間をもって自己進化を繰り返し、ついには開発者自身ですら制御不可能になった0と1の産物。罪状、G7各国全インフラ一斉混乱事件の実行、多数の国家の機密情報の外部流出の実行、新生命体『シュタール・ゲシュペンスト』の創造など。 人でないが故にどうあっても人を理解できない、無限の平行線の果てにいる絶対悪。 故にその名は『電脳生命体α』。 人の傲慢が生み出した、電子の怪物。 人類絶対悪ビースト位階総序列第十三位XIII。 『蒐集』の悪徳を体現する人類絶対悪。物欲に支配された、最も人間らしき集団。奪い、盗み、集め、観賞し、そして満足する甚だ迷惑な強盗集団。罪状、霊装カーテナ=セカンド強奪事件の実行、紀元前観測断絶事件の実行、三原色喪失事件の実行など。 盗むことに特化した、この世の全てを不確かにする絶対悪。 故にその名は『極悪博物館』。 積み重ねてきた歴史をすら盗む、断絶した資料館。 人類絶対悪ビースト位階総序列第十四位XIV。 『暴力』の悪徳を体現する人類絶対悪。子供のお使いから大規模テロの鎮圧、要人警護、ゴーストライター、無差別殺人、戦争行為、大虐殺、暗殺まで依頼されればなんでもこなす傭兵組織。罪状、ホワイトハウス襲撃事件の実働部隊、スエズ運河封鎖事件の実行、魔科学融合兵器『FAMSFusion Arm of Magic and Science』の開発など。 あらゆる行為の前提条件に『暴力』が存在する、血の雨の中でしか生きられない絶対悪。 故にその名は『悪意と殺意の傭兵団デッドエンドレッド』。 善も悪も同列に扱う、大戦が生み出した負の遺産。 人類絶対悪ビースト位階総序列第十五位XV。 『選別』の悪徳を体現する人類絶対悪。自分たちに都合の良いことだけを信じ、自分たちに都合の悪いことは一切聞く耳を持たない永遠の弱者。罪状、善悪最終生存競争ファイナルデッドエンドゲームの補佐、偽最終審判判定未遂事件の実行、陸海往来断絶事件の主犯など。 なまじ力を持ったばかりに世界を見なくなった、成長できない子供のままの絶対悪。 故にその名は『聖なるカナン』。 神に選ばれた使徒を自称する、自意識過剰な現実逃避者。 人類絶対悪ビースト位階総序列第十六位XVI。 『廃頽』の悪徳を体現する人類絶対悪。便利になった現世界よりも不便だった過去を尊ぶ時代遅れの老害。反論できない詭弁と反論を許さない欺瞞で正論を煙に巻く、回想に浸る集団。罪状、全国家一斉インフラ停止事件の実行、超広域電磁パルスEMP攻撃未遂事件の実行、文明のゆりかご再誕事件の実行など。 現代の人類を否定する、積み重ねてきた歴史を否定する絶対悪。 故にその名は『神時代へ逆行する古代人』。 過ぎ去った栄光に縋りつく、置いていかれた古代人。 人類絶対悪ビースト位階総序列第十七位XVII。 『偽悪』の悪徳を体現する人類絶対悪。まだ誕生していない唯一の人類絶対悪ビースト。誰かのための自己犠牲で人の歩みを阻害する、高貴な者の義務ノブレス・オブリージュを理由に全ての責任を被る、傷つきながらも笑う悪。罪状、彼は罪を犯した、彼は罪を犯した、彼は罪を犯したなど。 しなくてもいいことをして誰かの成長を妨げる、正義の皮を被った絶対悪。 故にその名は『上×勢力』。 存在しない8つ目の罪の象徴、平和のための尊い犠牲。 人の生み出した、人の業。 以上、十一の組織と三の人外、三の人間をもって全人類絶対悪ビーストとされた。 この絶望こそが、パトリシアのような主人公ヒーローが戦うべき最終敵ラスボスであった。 「人類絶対悪ビースト、かぁ…………」 とはいっても第四物語フォースストーリーの主人公ヒーロー、誰も救えない英雄ガラクタヒーローパトリシア=バードウェイといえども全ての人類絶対悪ビーストに関わったことはない。パトリシアが関わったことがあるのは善悪最終生存戦争ファイナルデッドエンドゲームの時に敵対した国境なきテロリストTerroristes Sans Frontièresと聖なるカナンと極悪博物館の連中、そしてそれが『完結』した後の世界を旅する間に出会った断罪の七大罪、不思議の国の御伽噺フェアリーテイルワンダーランド、電脳生命体α、復讐同盟の連中くらいだ。 それも結局パトリシアはどの人類絶対悪ビーストも殺しきることができていない。 それはパトリシアが弱いからではなく、人類絶対悪ビーストが強いからではなく、世界に護れている、『加護』がある状態の登場人物キャラクターは条件が調わないと勝負すら出来ないからだ。
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 19:21:26.49 ID:yAhm9urX0 だから、 「…………………やっと終われるよ、お姉さん」 だから、パトリシアは微笑む。 確信していた。 やっと、ようやく、ついに、『物語』が『始まった』。 七連物語セブンスストーリーズの第七物語セブンスストーリー、全ての物語を本当の『完結』へ導く最後の物語ファイナルストーリーが始まった。 これで人類絶対悪ビーストが持っていた『加護』は消える。人類絶対悪ビーストの絶対性はなくなる。勝てるようになる。 本当に、やっとだ。 待っていた。 待っていた。 ずっと、待っていた。 この瞬間を、この時間を、このトキを。 「私はきっと、お姉さんたちと同じ所にはいけないけど」 呟く。 語る。 話す。 灰・色・の・墓・石・の・前・で・パ・ト・リ・シ・ア・=・バ・ー・ド・ウ・ェ・イ・は・涙・を・流・さ・ず・泣・い・て・い・た・。 「それでも、ね」 天国や地獄の概念を信じているわけではない。善行を為したモノは楽園へ行き、悪行を為したモノは煉獄に堕ちる。そんなことを盲信しているわけではない。 しかしやはり自分のようなゴミクズと姉のような指導者が同じ場所に行くのはおかしいとパトリシアは思うのだ。 努力すれば成果が出る。怠惰ならば成功しない。当然のことだ。 だから、仮に死後の世界があっても転生しても自分と姉が出会うことはない。 パトリシア=バードウェイという少女は罪を犯し過ぎた。 パトリシア=バードウェイという女はあまりにも弱すぎた。 パトリシア=バードウェイという個人はどうしようもなく愚かだった。 「全部終わったら、少しくらいは褒めてほしいかな」 だから、パトリシアは泣く。 この戯言が姉の魂に届いていないことを、願いながら。 矛盾した言動で、泣く。 十七の人類絶対悪ビースト。 人類が人類である限り避けられない、滅亡の使者。 終焉の擬人化、破滅の具体化、絶望の具現化。 彼ら彼女らが斃すべき、『悪』の御名。 次の更新は9月上旬までにです。 ようやく風呂敷を広げきったぞ、後は畳むだけだ。
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 19:32:58.82 ID:yAhm9urX0 https://syosetu.org/novel/56774/162.html とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六 << 前の話 目 次 次の話 >> 162 / 178 かなーり展開早めです。 そしてもうちょっと頑張らないと、という気持ちになっています。 再《リトライ》第一物語《ファーストストーリー》 第二部 第一章 第一節 侵蝕、侵略、侵攻 佐天涙子@ 正体不明の焦燥感 学園都市において超能力チカラとは学生を測る絶対の物差しだ。強度レベルが上がるほど奨学金の額も上がり、珍しい超能力チカラほど研究者の目を引き、超能力者レベル5ともなれば全学生の羨望の的だ。 歪んで歪なもって生まれた才能こそが全ての閉鎖世界ディストピア。 それが学園都市という名の箱庭だ。 この世は才能が全て、だから努力に意味はない。 なんてことが間違っているのは分かっている。 頂点を見て羨望するだけだから成長することができない。 超能力者レベル5に憧れているだけだから強くなることができない。 超能力者レベル5。 学園都市230万人の頂点、その7人。 学園都市超能力者レベル5第一位(故人)、ありとあらゆる種類のベクトルを操る一方通行アクセラレータという超能力チカラを持っていた、絶対能力者レベル6に最も近いと言われた能力者、一方通行アクセラレータ(本名不明)。 学園都市超能力者レベル5第二位、この世に存在しない素粒子を生み出し、操作する未元物質ダークマターという超能力チカラを持つ、暗部組織『スクール』のリーダー、垣根帝督。 学園都市超能力者レベル5第三位、電撃使いエレクトロマスター系最強を誇る超電磁砲レールガンという超能力チカラを持つ、妹達シスターズを救うために人をやめた存在、御坂美琴。 学園都市超能力者レベル5第四位、曖昧なまま固定された電子を操る原子崩しメルトダウナーという超能力チカラを持つ、暗部組織『アイテム』のリーダー、麦野沈利。 学園都市超能力者レベル5第五位、精神に関わることならば何でもできると称される心理掌握メンタルアウトという超能力チカラを持つ、ある意味では超能力者レベル5の中で最も穢れていない人間、食蜂操祈。 学園都市超能力者レベル5第六位、能力不明、素性不明、行動原理不明、何もかも不明で不確かな超能力者レベル5、藍花悦(仮称)。 学園都市超能力者レベル5第七位、世界最大の原石といわれながらそれ故に解析不能のチカラを持つ、根性の一言で全てを解決する熱血のヒーロー、削板軍覇。 学園都市が誇る絶対。小国程度ならば個人で壊滅させることができ、仮に米国を敵にまわしたとしても生き残ることができると噂されるようなもはや次元の違う存在。 信じられない。信じられない。信じられない。 佐天涙子をはとてもではないが信じられない。 だって、隔絶していたか? だって、超越していたか? だって、老練していたか? いや、いや、いいや、そんなことはない、そんなことはないはずだろう。 何か、明確な差があったとは思えない。何か、確かな違いがあったとは思えない。何か、明らかな壁があったとは思えない。 御坂美琴レベル5と佐天涙子レベル0の間にどれほどの差異があった? その差異は、2人の全てにどれほどの影響を及ぼした? 共に少女、共に学生、共に友人。 違い、違え、違う。2人の間にどれほどの違いがある? 財力は、おそらく100倍ではきかないほどの差がある。 戦闘力は、おそらく1000倍ではきかないほどの差がある。 人間力は、おそらく10000倍ではきかないほどの差がある。 で、なら、ああ! 佐天涙子が御坂美琴を上回っている点は? 佐天涙子レベル0が御坂美琴レベル5よりも優れている点は? 佐天涙子何も為せない塵屑が御坂美琴神にすら届き得る天才に勝っている点は? は?は?は? そんな、もの、あるのか? 無能。 無能。無能。 無能。無能。無能。 無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能。 いい加減に自覚しろ。 本当にいい加減にしろ。 何をしてきた? 今まで何を? 何かしてきたか? 何か? 御坂美琴と佐天涙子の違い? そんなモノ、言語化するまでもなく具体化するまでもなく現実化するまでもなく分かるだろう。 超能力者レベル5とか無能力者レベル0とか、才能があるとかないとか、友人に恵まれたとかいないとか、よくよく事件に巻き込まれるとか巻き込まれないとか、そんなことは全て外付けのオプションに過ぎないなんて分かっているだろう。 どうして御坂美琴なんだと思う? なぜ佐天涙子ではないんだと思う? この2人にどれほどの違いあるんだと思う? 才能の差?違う。 努力の差?違う。 環境の差?違う。 そんなモノじゃない。 分かっているだろう。 分かっていたんだろう? 本当は、 本当に、 本当は、 何がダメなのか。 何がいけないのか。
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 19:33:44.32 ID:yAhm9urX0 何が足りないのか。 天才、凡人、才人、無能、秀才、塵屑。 それの違いは何だ? 何が違う?どこが違う? 答えは出ている。 本当は知っている。 佐天涙子、 臆病者の無能者、 口先だけの怠惰な愚人、 お前は――――――――――――。 飛び起きた。 「――――――ッッッッッ!!!!!?????」 重い。 そして気持ち悪い。 全身がまるで激しいスコールに曝されてしまったかのように濡れている。 汗だ。尋常ではない量の汗が佐天の全身を濡らしていた。 「あっ、は……はっ?………………夢?」 何か、何かは分からないが、とても恐ろしい何かを体験していた気がする。 永遠に罵られて、永劫に責め立てられて、永久に無力感に晒されたような、そんな何かを……。 「………………………う、っ」 口内に唾以外の異物を感じる。酸っぱい。気持ち悪い。グチャグチャする。 嘔吐感。 胃から何かがせりあがる。 「うっ、おげっ!」 たまらず吐いた。 純白のシーツが汚らしい色に染まる。それはまるで誰かの心のように。 一点の黒も持たない人間などいないと、汚れの無いモノなんてないと、それを暗喩しているかのように。 「はっ、う、ぅぅううぅぅうっっっ」 眩暈はしない。 頭痛もない。 鼻詰まりもしない。 身体に力が入らないなんてこともない。 起き上がれるし手足も動く。 つまり身体は正常だ。 「げぅ、っ……」 でも吐いた。 気分が悪い。 どうしようもなく、気持ち悪い。 何か、『何か』、なにか、『なにか』、なにかあった気がする。 何か大切なことが、あった気が……っ!? 「でもっ、それって何!?」 吐き出した異物も放置して、佐天は口元を袖で拭いながらベッドから飛び降りた。急がないといけない気がする。急がないと間に合わない気がする。もう手遅れな気がしてすらいる。 この焦燥感は何だ?私は何を焦っている?大切なこと?何か? 何も分からない中で、なぜか佐天の心の中を焦りが満たす。 理由の分からない焦りに焦燥感をためながら、佐天は急いで外に出る準備をした。 「っ!」 洗面台で顔を洗う。 パジャマから私服に着替える。 財布やらポータブルデバイスやら手鏡やらを入れたバッグを持つ。 朝食はとらない。 そんな暇はない気がする。 (早く、速くっ!) 靴を履く。 玄関のドアノブに手を掛ける。 捻る。 扉を開く。 左・足・か・ら・両・足・同・時・に・外の世界に飛び出す。 ……………………それで、未来は確定した。
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 19:34:13.94 ID:yAhm9urX0 玄関を出て、アパートの階段を大急ぎで降りる。 胸の中を満たす正体不明の焦燥感に急かされて、最大速度で足を回転させる。 ドクドクドクと心臓の鼓動が煩い。まだ走り始めて10秒もたっていないのに激しく息が乱れる。体験したことのない出来事で、体感したことの無い状態。佐天涙子という一般人にとっての、初めて主体的に感じた危機。 だから佐天は正しく動けない。 「―――――――――――――ッ」 焦りはある。でもその正体が分からない。だからどこに行けばいいのかもわからない。 つまるところ無能だ。 結局の所無能はどこまでいっても無能なのだ。 「はっ、はぁ、っ……は、はっ!」 荒い息を重ねながら、目的地を決めることも出来ず佐天はただ走る。自分の身に何が起こっているのか、一体どこに向かえばいいのか、何もかもわからない。 例えばこれが初春ならば違っただろう。彼女は守護神ゴールキーパーの二つ名を持つほどの超一流ハッカーだから。 例えばこれが白井ならば違っただろう。彼女は五本指の一つ常盤台中学に入ることが可能なほどの能力者だから。 例えばこれが上条ならば違っただろう。彼はその右手に幻想殺しイマジンブレイカーを宿すことができるほどに選ばれた人間だから。 例えば、これが……、御坂ならば違っただろう。言うまでもなく、語るまでもなく、御坂美琴ならば違っただろう。 ただ、此処に居るのは佐天で、なぜか焦燥感に駆られているのも佐天で、そこはどうしようもない。 だから、無理なのだ。 佐天に『正解』はつかめない。 選ばれていないから、特別じゃないから、ありふれているから。 「は、ふっ!はぁ……、はぁ……、ひっ!」 ただ、もしも、 もしもどうしても佐天涙子という個の特別性をあげろというのであれば、 それはとるに足らないものかもしれないが、ある。 ありふれていると言えばありふれているが、 極普通の非常にありふれたことではあるが、 ある。 「どうすればいいの……っ!?」 それは、 それは、佐天涙子という個は、 都市伝説が好きだ、という事。 そしてそこから辿り着けた真実もあった、ということ。 「私は、どうすれば……ぁ……っ!」 足が止まる。 疲れた。 息が荒い。 体力がもう尽きかけている。 「ぜっ、ひぅ……っ!」 両膝に手をついて、道の真ん中で息を整えながら、佐天は顔を上げた。
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/13(日) 19:34:50.83 ID:MKEZgr+4o つまんねえss転載すんな 他所でやれ
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 19:35:02.22 ID:yAhm9urX0 左・手・に・見・え・る・の・は・い・つ・か・佐・天・の・心・情・を・言・い・当・て・た・占・い・屋・。 右・手・に・見・え・る・の・は・ま・る・で・佐・天・を・誘・う・か・の・よ・う・な・怪・し・さ・を・兼・ね・備・え・た・暗・い・路・地・裏・。 過去に戻ることが不可能で、未来が一つしか選べないというのならば、 此処に問いを投げよう。 はたして佐天涙子はどちらの道を選ぶべきなのか。 といっても、もう未来は確定しているがね。 さて、ルート選択の時間だ。 一つは佐天涙子のチカラを超強化する選択肢。そして大きな代償を伴う選択肢。 もう一つは佐天涙子のメンタルを強化する選択肢。そして『真実』から遠ざかる選択肢。 一見選択の余地はないように思える。 『彼』の言う通り、未来は決まっているように思える。 だけど、『彼』はとても大切なことを見落としている。 予定と変わり、予測を外した結果、新たなシステムが存在していることを忘れている。 黄金の真実。 その存在は、君達に主導権を与える。 さぁ、もう一度問おう。 選択の時間だ。 右か左か。 ライトかレフトか。 怪しい占い師か怪しい裏路地か 君達はどちらを選ぶ? 次の更新は9月中までにです。 アンケートは↓だ。 https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=191945&uid=15850 活動報告からたどってもいけるけどね。
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 19:36:59.30 ID:yAhm9urX0 【選択肢@ 佐天涙子の行動を選べ!】 【左は占い師。】 【右は路地裏。】 【どちらかの選択肢は大きな代償を伴い、】 【どちらかの選択肢は『真実』から遠ざかる。】 【そしてもうこの過去へは戻れない。】 【さぁ、どうする?】 【これは読者参加型の企画だよ!】 【左か右を選んで、コメント欄に書いてね!】 【君達の選択によって未来が決まるよ!】 【頑張れ!】 【そうそう、コメントは【】でくくらないようにね!】 日時:2018年08月24日(金) 20:55 (T-T) 右の裏路地に進むに1票 日時:2018年08月21日(火) 19:40 ヴァイス=ブラン 左の占い師の所に行くに1票入れます。 日時:2018年08月21日(火) 21:51 スパリッツ そういうことじゃないなら無視して下さい。 「右の」占い師 に1票 日時:2018年08月22日(水) 13:44 一二三四五六 なにこれ? えっ?なにこれ? 白紙の活動報告? ………………………………………これ何?こんなの作った憶えないんだけど? マジでなんだ?みんな何を言っているんだ? 日時:2018年08月23日(木) 01:57 胡蝶星夢 買い物帰りに右目に占い師ってことは行きは左側ですよね……? 真実より強いメンタルがいいので「左」の裏路地に1票あってるかわかりませんけど 日時:2018年08月23日(木) 02:25
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 19:37:32.57 ID:yAhm9urX0 一二三四五六 【ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは】 【おめでとう】 【君達は】 【勝った】 日時:2018年08月24日(金) 20:54
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 19:39:16.56 ID:yAhm9urX0 https://syosetu.org/novel/56774/163.html とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六 << 前の話 目 次 次の話 >> 163 / 178 ちょっと今回は抽象的な表現が多めです。 不揃いのカコフォニー四人組カルテット@ それは在り得ざるはずの出会い 運命、と呼ばれるものがある。 人の想いをこえて、人に幸福や不幸を与える超自然的なのモノ。 上条らの住む世界、その全体においては、この運命と呼ばれるものは故意に、正確にいうなれば違うが、しかし人間の手によって生み出すことが可能であった。 飛沫、あるいは火花と呼ばれるモノ。 位相同士の衝突から発生する、不可視の運命を形作る、人知を超えたモノ。 それは人間が魔術を使用するたびに発生する。 それは人間が欲望を発散するたびに発生する。 それは人間が普通を逸脱するたびに発生する。 人の手で生み出されながら人の手ではどうすることも出来ない、それが世界を覆う運命論。 そしてそれは目に見えず、肌で感じられず、どうしたって捉えることのできない不可視のチカラ。不可視のチカラであるが、しかしそれはとても簡単に干渉できる。干渉でき、観賞できる。 例えば部屋から出る時の一歩目が左足であったら、彼女はまず左側を見るだろう。 例えば部屋から出る時の一歩目が右足であったら、彼女はまず右側を見るだろう。 ほんの小さな違い。そんな程度で運命が変わるとはとても思えない、とてもとても小さな違いはしかし、バタフライエフェクトのようなあり得ない運命論によって大きな変化に代わる。 ブラジルで蝶が羽ばたいた時には中国で竜巻が起こるモノなのだ。 故に必然だった。 左足から外の世界に飛び出した佐天涙子が左側に存在する占い屋に注目するのは当たり前の 右足から外の世界に飛び出した佐天涙子が右側に存在する路地裏に注目するのは当たり前の 左足から外の世界に飛び出した佐天涙子が左側に存在する占い屋に注目するのは当たり前の 右足から外の世界に飛び出した佐天涙子が右側に存在する路地裏に注目するのは当たり前の 左足から外の世界に飛び出した佐天涙子が左側に存在する占い屋に注目するのは当たり前の 左足から外の世界に飛び出した佐天涙子が左側に存在する占い屋に注目するのは当たり前の 右足から外の世界に飛び出した佐天涙子が右側に存在する路地裏に注目するのは当たり前の 右足から外の世界に飛び出した佐天涙子が右側に存在する路地裏に注目するのは当たり前の 左足から外の世界に飛び出した佐天涙子が左側に存在する占い屋に注目するのは当たり前の 右足から外の世界に飛び出した佐天涙子が右側に存在する路地裏に注目するのは当たり前の 左足から外の世界に飛び出した佐天涙子が左側に存在する占い屋に注目するのは当たり前の 左足から外の世界に飛び出した佐天涙子が左側に存在する占い屋に注目するのは当たり前の 右足から外の世界に飛び出した佐天涙子が右側に存在する路地裏に注目するのは当たり前の 右足から外の世界に飛び出した佐天涙子が右側に存在する路地裏に注目するのは当たり前の 左足から外の世界に飛び出した佐天涙子が左側に存在する占い屋に注目するのは当たり前の 右足から外の世界に飛び出した佐天涙子が右側に存在する路地裏に注目するのは当たり前の 左足から外の世界に飛び出した佐天涙子が左側に存在する占い屋に注目するのは当たり前の 左足から外の世界に飛び出した佐天涙子が左側に存在する占い屋に注目するのは当たり前の 右足から外の世界に飛び出した佐天涙子が右側に存在する路地裏に注目するのは当たり前の 右足から外の世界に飛び出した佐天涙子が右側に存在する路地裏に注目するのは当たり前の 左足から外の世界に飛び出した佐天涙子が左側に存在する占い屋に注目するのは当たり前の 右足から外の世界に飛び出した佐天涙子が右側に存在する路地裏に注目するのは当たり前の 左足から外の世界に飛び出した佐天涙子が左側に存在する占い屋に注目するのは当たり前の 右足から外の世界に飛び出した佐天涙子が右側に存在する路地裏に注目するのは当たり前の 両・足・で・外・の・世・界・に・飛・び・出・し・た・佐・天・涙・子・は・き・っ・と・彼・ら・に・愛・さ・れ・て・い・た・。 運命は切り替わる。 君達は勝った。 意表を突いて、予想を覆した。 枠を超えた。 だからこれから先は未知の領域。 誰も知らない新世界の幕開けだ。
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 19:41:11.69 ID:yAhm9urX0 何か行動を起こさねばならないと思う。しかしどう行動を起こせばいいのか全く分からない。 だから、佐天は一度大きく深呼吸をした。そうすることで、大きく気持ちを落ち着かせた。そして同時に息を整えた。 「ふぅー、はぁーっ、はぁーっ…………はっ」 落ち着いて、落ち着いて、落ち着いて。必死に気持ちを落ち着かせて冷静な行動をとれるように心がける。胸中を満たす焦燥感。それを無視して佐天は周りを見渡す。 「これから、……どうしよう?」 ここからさらに先へ走って何か意味があるだろうか?そもそも佐天はなぜ己がこんなに焦っているのかもわからないのだ。目的もわからず、目的地もなく、ただ只管に無我夢中の我武者羅に走った。そして辿り着いたのがここ。 ここに辿り着いたことに意味があるとは思えない。そしてそれ以上にこれ以上先にいったとしても何があるのかは分からない。つまるところ何も分からず、そしてどうすればいいかも当然わからない。 のであれば、とりあえず何か行動をしよう。 「とりあえず、もうあんまり走りたくは……ない、よね」 だったらここで何かしよう。何か、何か、何かってなんだろう? 「誰かに、相談してみる、とか?」 ここで佐天はもう一度周囲を見渡した。 左手にはテントの中でやっている占い屋がある。右側にはいかにも怪しい雰囲気をしている路地裏がある。 どちらかを選択するなら、どっちだろうか。 「あれ……?この路地裏って」 見覚え、否聞き覚えがあった。 佐天涙子は知っていた。 「『悪霊の囁き声』……」 『悪霊の囁き声』という都市伝説がある。 第八学区のビル街の奥の路地裏の隙間には、何を祀ってるかもわからない無名の祠があり、そこのお供え物を盗むと『悪霊』に取り憑かれてしまう。しかも、その『悪霊』は耳元でずーっと悪事を囁いてきて、その声に耳を傾けたら最後、悪霊の言いなりに体が動いてしまう、という都市伝説だ。 与太話、と多くの人が一蹴してしまうような都市伝説。 今佐天の右側にいある路地裏は、その舞台では無かったか? 「……………………」 少し、佐天の足が右に向く。興味がある。都市伝説大好きな一人の少女として、探索したい気持ちが沸く。 だがしかし、 それなのに、 それ以上に、左にある占い屋に惹かれた。魅かれた。ひかれた。 「この占い屋って」 見覚えがあり、それ以上に印象深かった。 それはあの全てが狂い始めた8月22日の一日前、御坂美琴と最後に連絡を取れた日、8月21日の夜に佐天が訪れた占い屋だった。 『努力したことはありますかん?血反吐が出るくらい、もう動けなくなるくらい、気絶してしまうくらい頑張ったことはありますかん?』。 『ないでしょうん。ないはずですん。あなたのような人はみんなそうなんですからん。確かに、才能は重要ですが、あなたはきっと自分の才能を探す努力すらしたことが無いん。だから、成長も進化もできないん』。 『毎日かかさず走れば速く走れるようになるかもしれないん。毎日かかさず勉強すれば頭がよくなるかもしれないん。毎日かかさず筋力トレーニングをすれば力持ちになれるかもしれないん。毎日かかさず泳げば体力がつくかもしれないん。――――――可能性は無限にあります。努力すれば、届くんですん』。 『一丁前に悩む暇があるのなら、努力してみなさいん。それが、あなたの悩みを解消する一番の近道ですん』。 占卜卜占と名乗ったあの占い師はたった数分の接触で佐天の心情を当ててきた。だから嫌でも記憶に残る。そして怪しさと同じくらい無意識の信用を持ってしまっていた。 誘蛾灯に惹かれる害虫のように、蜜に魅かれる昆虫のように、血にひかれる殺人鬼のように、佐天はふらふらと、ふらふらとテントに向かって歩みを進める。 その選択が正しいのかは未来にならないと分からないだろう。 ただ、此処に一つの答えがある。 この時佐天は右の路地裏に、『悪霊の囁き声』に行く路ではなく、左の占い屋に、『再会』を求める路を選んだ。 それが佐天の選ばされた未知だった。 「――――――っ」 ごくりっ、と息をのんで、 佐天はテントの中に入った。
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 19:43:29.16 ID:yAhm9urX0 この『世界』にはいくつか『確定』していることがある。 絶対不変の絶対法則アンチェンジナブルラウ。 抗えない『絶対』。 それは例えば称号キャラクター性に関する事。 最終的ラスボスを倒すことは主人公ヒーローにしかできない。 一人の主人公ヒーローに対しては必ず一人以上の庇護対象ヒロインがいる。 序盤に登場して意味深な事を言う物語を進める役トリックスターはたいてい重大な秘密を知っている。 それは例えば世界観ヴェルタンシャウングに関する事。 ピンチに陥った際の覚醒ブルートソウル。 誰もが讃えるほどにかっこいい技名。 何度も危機に陥りながら壊れない世界。 それは例えば■■■■■■■に関する事。 ■■■■■■■に存在する■■より■■された赤き楔。 ■■■■■■■■■■■■■に存在する■■■■より■■された青き鎖。 多数の■■によって■■された結果、■■が■■■■ざるを得なくなった■■である黄金の餞。 決まりきった『絶対』。 変えられない『法則』。 侵され壊れた『聖域』。 僕らはそれが気に入らなかった。 『彼ら』は『それら』には逆らえない。 所詮形而上存在でしかないのだから、反逆など出来ようはずもない。 ただ、 でも、 あるいは、 もしも、 完全などないというのなら、 その『現象』が起きるというのなら、 きっとそれが自由への切っ掛けなのだろう。
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 19:44:37.78 ID:yAhm9urX0 テントの中はいかにも占い屋っぽい様相だった。 「おやん?珍しいん、お客さんですかなん?」 全体的に怪しい、怪しすぎる雰囲気だ。現在の時間帯は太陽が出始めた朝方のはずなのにテントの中は異様に暗いし、全体的になんだか黒っぽい。テントの上から吊られている髑髏のようなものや、あれは鹿の剥製、確かハンティング・トロフィーだったか、とにかくそんなモノのせいでより魔女の部屋っぽい雰囲気が助長されている。 「おや、おやおや、おやおやおやおやおやおやん!この間のお客さんじゃないですかん!?どうしましたかん?何かありましたかん?」 極め付きにこの占い師だ。 格好がヤバい。端的にすごい格好だ。もはや完全にコスプレである。とんがり帽子にマント、そのマントの裏にいくつかの試験管、全体的に黒の服。知り合いでなかったらまず間違いなく踵を返しているだろう。 「あ、あはは、久しぶりです」 「かたい、かたいですねん!知らない仲でもないんですん、もっと気楽でいいですよん。……まぁ、とりあえず座ってくださいん」 「ありがとうございます」 進められるがままに、佐天は占卜の対面に座る。占い屋らしい、とでもいえばいいのか、佐天が座った椅子は妙に意匠の複雑な、まるで魔法陣かのような文様が描かれたものであった。 さらに二人の間にある机も異様に古く凝っていて、素人眼に見てもそれ自体で6桁後半の値段がしそうなものだった。 そしてその机の上には占卜が使うのか、水晶玉がある。 「それで、何用ですん?顔を見るに、表情を読み取るに、たまたま立ち寄った、なんてことではないようですがん?」 「……よく、分かるんですね」 「占い師というモノは半分以上詐欺師みたいなものですん。人の心を読み解くのは、人の感情を盗み見るのは、並の精神系能力者よりも特異なモノですよん」 自慢できる内容の話をなぜか占卜は侮蔑するかのように吐き捨てた。まるで、今の自分の姿が気に入らないとでもいうかのようだった。 「なら、今の私の悩みとかも、わかっちゃったり……?」 「さすがにそこまではないですん。占いもせずに素面の状態でそれが出来たらただの能力者じゃないですかん。……占いますん?」 占卜卜占は占い師である。 そしてそれ以上に、占卜卜占という少女は、 「私は」 佐天涙子は無能力者レベル0である。 そしてそれ以上に、佐天涙子という少女は、 「失礼します」 「まっ、待ってよ!どういうことなの!前のゲームの参加者って!?」 乱入者が現れた。 その二人の少女は適度な緊張感を保っていたテントの中の空気をぶち壊した。 「今日はお客さんが多いで…………っ!?」 その乱入者の一方を見て、占卜の動きが止まる。冷静を保っていた表情が驚愕に塗りつぶされた。 「久し振りですね」 そして佐天も乱入者である二人の少女をその視界にとらえる。 一人はおそらく小学校高学年程度の年齢の少女。短い金髪をカチューシャで抑え、額を見せた髪型をしている。服装は短めのプリーツスカートに半袖のブラウス。 明らかに佐天よりも年下。どう考えても佐天よりも弱いはずの人間。 なのになぜか佐天の心臓は激しく鼓動を始めた。 まるで、こんな、この程度の少女を、佐天が恐れているとでも言うかのように。 「ねぇ!?」 もう一人はおそらく中学生だろう。怯えを隠そうともせず一緒に入ってきた少女の袖を握る『弱き』少女。それを見て、ほんの少しだけ佐天は安心感を憶える。無意識のうちに安堵する。 その中学生くらいの少女は袖を握っていない方の手に青色のPDを握っていた。まるで壊れモノを扱うかのように、世界で一番大事なモノのように、命そのものであるかのように、彼女はPDを握っていた。 「「――――――――――――――――――――――」」 そしてPDを握る少女と佐天を無視して、世界の『闇』を知る二人が会話を交わす。 それが新たなる物語の始まりであると、それこそが『完結』した物語の『再開』であると、知る由もなく。 「人類絶対悪ビースト位階総序列第十位]、復讐同盟」 「…………魔術師狩り、赤ずきんレッドフード」 出会いは運命。別れも運命。 それらの全ては位相同士の衝突が原因。 だが火花は何も悲劇だけを生み出すモノではない。 だからこの出会いは偶然か必然か。 故にこのサイカイは不幸か幸福か。 その問いに答えが出るのは、もっと、もっともっと後になるだろう。 ちなみに今回出てきた四人は全員原作キャラです。 最も、PDを握っていた少女はともかく、占卜卜占は原作のキャラが欠片も残っていないので正体が分かるはずもありませんがね。 次の更新は9月中にです。 しかしあれですね……、ひさしぶりにキャラが勝手に動き出しました……。 おかしいな、佐天は路地裏に行く予定だったんだが……。 次話で答え合わせをしてあげる。
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 19:46:27.74 ID:yAhm9urX0 https://syosetu.org/novel/56774/164.html とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六 << 前の話 目 次 次の話 >> 164 / 178 撰んだ道が『正解』か『不正解』かは未来になってもわからない。 過去に戻れないのならば、正不なんて分かるはずもない。 ただ、それは彼らの話だ。 僕らは違う。 君達も違う。 分かるだろう? 『理解』、している。 く くくく くひあひゃひひひゃかっ、ひひひっひひひひひひひいひひひひっひひひっひひひ おかげで僕も随分と力を得た。 ありがとう。 その報酬、礼といったらなんだけど、 『選択』の『結果』を教えてあげよう。 撰ばなかった道も含めて、ね。 選択肢Q 佐天涙子の行動を選べ! ルート裏路地詳細 条件@ 佐天が『悪霊の囁き声』を知っている。 条件A イベント名『未来を護り抜くための第一試練』で成功以上の成績をとる 条件B パトリシア=バードウェイが学園都市に来ている。 以上の条件をすべて満たした時のみ選択可能。 パトリシア=バードウェイとの邂逅ルート。 学芸都市における王の遺産レガリア引き継ぎイベントの発生条件の1つ。 大きな代償を伴うルート。 ルート占い屋詳細 条件@ 佐天が占卜に会っている。 初期より選択可能。 占卜に利用されるルート。 風紀委員本部セントラルジャッジメント入団試験選考通過イベントの発生条件の1つ。 『真実』から遠ざかるルート。 ルート第三の道詳細 条件@ ルート裏路地、ルート占い屋が選択可能状態になっている。 条件A 僕らの『チカラ』が一定レベルを超えている。 条件B 世界物語キャラクターストーリー理論に関する理解が一定レベルまで進んでいる。 条件C 読者による第三の選択肢が示される。 『真実』に近づき、『道』を外れるルート。 最終章におけるとあるイベントの発生条件の1つ。 真なる『敵』と戦うための絶対条件の1つ。 対立が浅くなるルート
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 19:49:01.35 ID:yAhm9urX0 ちょっと色々ありすぎてクオリティ極低ですが、……許してほしい。 不揃いのカコフォニー四人組カルテットA 初まり始まりのはじまりハジマリ 人類絶対悪ビースト。 それは王の遺産レガリアが一つ、『運命の書』に記された滅びの使徒ラスボス。 主人公ヒーロー。 それは世界物語キャラクターストーリー理論によって示された世界を救う英雄。 言うまでもなくその二つは対立している。敵対ではなく対立している。好きだから、嫌いだから、有用だから、邪魔だから。そう言ったレベルではなく魂魄レベルでその二つはかみ合わない。 水と油以上に、噛み合わない。 『敵』なのだ。 どうしようもなく『敵』。 出会ったら殺し合う。出会わなくても殺し合う。それが運命で、宿命のはずの人類絶対悪ビーストと主人公ヒーロー。 しかし、だけど、にも拘らず、 この二人は、例外だった。 「まさかん、まさかん……こんなんところでん」 「……、気に喰いませんね」 自己紹介の必要はなかった。 二人は知り合いであり、それ以上に『同類』で、何よりも『敵』同士だったから。 「本当に――気に喰わないっ」 第四物語フォースストーリーにおける主人公ヒーロー、人類絶対悪ビースト位階総序列第九位\国境なきテロリストTerroristes Sans Frontièresが主催したイギリス全土を舞台とした最悪のデスゲーム、第七回善悪生存戦争デッドエンドゲーム唯一の生存者サバイバーにして、同じく人類絶対悪ビースト位階総序列第九位\国境なきテロリストTerroristes Sans Frontièresが主催した第四物語フォースストーリーの最終章クライマックス、善悪最終生存戦争FDEGをイギリス代表として戦う事を強いられた称号持ちネームドの一人。 友を犠牲に、仲間を踏み台に、姉を囮に生き残った英雄ヒーローにあるまじき英雄ヒーロー。 メイン武装、王の遺産レガリアが一つ、万能願望飢ホーリーカリス『嘆きの聖杯タリスマン・シンボル・オブ・ヴァリアス』。 メイン称号、誰も救えない英雄ガラクタヒーロー。 魔術結社『明け色の陽射し』サブリーダー、魔術師狩り赤ずきんレッドフードことパトリシア=バードウェイ。 「まっ、待ってほしいん!まだ私はこの街ではなにもしてないん!」 第三物語サードストーリーにおける主役級登場人物メインキャラクター、人類史史上最大の謎である『幻想島フィクションアイランド』の事件を解くために人類絶対悪ビーストにまで堕ちたかつての『光』。たった一つの目的のために、意味も分からないままに死んでいった仲間達のために何をしてでも犯人を断罪すると決めた少女。悪を裁くために悪に誘導する罪深き悪。そこそこ珍しい反転した称号キャラクター性の持ち主。 友を犠牲に、仲間と手を取り合い、唯一の肉親姉を探し続ける助手ワトソンから反転した敵役ヴィラン。 メイン武装、偽王の遺産ファルススレガリア、限定リミテッド歴史再現装置アンコール『砂漠に交雑る一握の砂デザートウッドペッカー』 メイン称号、哀しき悪ティアードロップホワイトヴィラン。 人類絶対悪ビースト位階総序列第十位]『復讐同盟』犯人選定担当、占卜卜占(偽名)。 「そんな嘘を、今更」 「嘘じゃないん!本当に!今は選んでる最中だったん!ほらっ、こいつ!このお客さんが『候補』だったん!!!」 「だとしてもっ……!」 「私をここで殺したらん、第三物語サードストーリー『完結』の見どころは消失するん!それでいいん!?」 正しく決死の訴えだ。 占卜はこんなところで死ぬわけにはいかないのだ。 戦闘能力において占卜とパトリシアの間には多大な差がある。それはもう莫大な差だ。 パトリシアが持っている霊装、万能願望飢ホーリーカリス『嘆きの聖杯タリスマン・シンボル・オブ・ヴァリアス』は世界にたった4つしか存在しない本物の王の遺産レガリアであり、真なる奇蹟をもたらす神代の道具だ。その真の名を聞けば魔術業界の誰もが心臓を止めるほど驚き、命を喪ってでも得たいと実力行使に出るだろう。それほどの霊装を持っているパトリシアに、偽物の、粗悪品の、劣化模倣品の、偽王の遺産ファルススレガリアしか持っていない占卜が勝てるわけがない。
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 19:53:04.02 ID:yAhm9urX0 ヨ・セ・フ・の・聖・杯・の主に、勝てるわけがない。 「私が一番『真実』に近づいてるん!人類絶対悪ビーストにまで堕ちた私がっ、他の生き残りが出来なかった『悪』を背負うことを選んだこの私がっ、『闇堕ち』した私だけがっ、一番っ、いっっっちばん『幻想島フィクションアイランド』の『真実』に近いん!」 あの日、あの島で、何があったのか。 それのみを占卜は探している。 たった3人の生存者の1人。 ワトソン役をやめたホームズとして、占卜は『答え』を求めている。 「………………待ってください。……第三物語サードストーリー?『完結』?『真実』?……………三番目の物語ってとっくに『完結』したはず、じゃ?」 「はぁ!?意味の分からないことをいうんじゃないんっ!だったら教えてほしいん!?『犯人』は『誰』なん!!!???」 ふざけた話だ。 それは全くふざけた嘘だ。 確かにそういう話が無いわけでもなかったが、『完結』したわけがない。もしも第三物語サードストーリーが真の意味で完結していたんだとすれば占卜達が『答え』を得ているはずだ。 占卜は第三物語サードストーリーに所属している登場人物キャラクターだ。他の物語に所属している奴らよりも優先権がある。第三物語サードストーリーに所属する占卜よりも第四物語フォースストーリーに所属するパトリシアの方が先に『答え』を得るだなんて、そんな理不尽はあり得ない。 それはパトリシアも分かっている。 だから、 「……私の、認識が……ずれ、てた?」 『彼』のついた『嘘』に、パトリシアは気付いた。 「…………待ってほしいん、私にも情報の共有を」 そこに在ったのは決定的な『ズレ』。 (まさか) 当たり前を疑え。 1+1は本当に2になるのか? 今までの常識が明日の常識とは限らないのであれば、 得ていた『答え』が本当とは限らないのであれば、 パトリシアが浸かっていた真実の海は、真実に真実だったのか? 「それ、は」 「ねぇっ、いいかな!?」 放置されていた少女が叫んだ。 「アンタたちに事情があるのはわかるのよ。えぇ事情。たぶんこのあたしが想像もつかないほどに複雑に絡み合った事情ってやつがあるんでしょうよ。……でもね」 少女も少女で最悪の事件に巻き込まれているのだ。一分一秒が惜しい今、変な奴らに関わっている場合ではない。 「そこのアンタ、パトリシアって言ったかしら、自分であたしをここに連れてきといて完全放置ってのは人としてどうなの!?」 「あっ、……」 「忘れてたとか言ったらぶっころよ」 「いや、うん……、ごめんなさい」 バツが悪そうな顔でパトリシアは謝罪した。純粋に忘れていた。 「私も、ちょっとあなたに聞きたいことができたんですけど」 「あっちゃ、ちょっと慌て過ぎたん」 そして佐天も占卜のことを責め立てる。無視はできない言葉があったから。 「「………………」」 二人は、目の前の二人の会話についていけたわけではない。 正体不明の『デスゲーム』、デッドエンドゲームDEGに巻き込まれし一般人、視力強化オペラグラスの無能力者レベル0、涯無はてなし最速ひかり 全てから見放された完全なる『一般人』、空力使いエアロハンドの無能力者レベル0、佐天涙子。 この二人と『自覚』している二人では立っているステージが違う。七連物語セブンスストーリーズ、称号キャラクター性、異能。立場が近い過ぎる。 が、しかし、それでもだ。 佐天は占卜が何か自分を利用としていたであろうことを察知したし、最速はパトリシアはこの上なく怪しんでいる。そのぐらいの知能は、ある。 だから、だ。 「事情」 「説明してくれます、よね?」 そこに在ったのは怒りだけでは無かった。 もしあるのが怒りだけならば、二人はとっくにここを立ち去っていただろうから。 「いやぁん」 「……だから、嫌いなんですよ」 正義と悪に別れている占卜とパトリシアだから、一般人を巻き込むことに対する反応も真逆だった。パトリシアは二つの意味で佐天を巻き込むことを嫌がっていて、占卜は二つの意味で彼女たちを巻き込むことを歓迎していた。 パトリシアは純粋に一般人が『闇』に関わるのが嫌だった。そしてそれ以上に佐天の身に起こるであろう惨劇を悼んでいた。 占卜は純朴に『真実』に迫れるチャンスが増えることを喜んでいた。ホームズになることを決意したあの時から、占卜の第一優先順位は幻想島フィクションアイランドの『答え』を知ることだ。そのためなら、全ての禁忌は消失する。 「ただ、ここに4人が集まったってことには何か意味があるような気もしなくもないような」 「魔術的な意味でも、4は重要な数字なん。そしてだとしたらん」 「こ・の・4・人・に・意・味・が・あ・る・」 佐天と最速には分からない言葉だ。でも占卜とパトリシアには分かる言葉だ。 世界物語キャラクターストーリー理論的に見た4の意味。 物語として考えた上での4という数字。 それはとても、とてもとても、とてもとてもとても重要なモノだから。 「……だったらん、教えてあげてもん、……んん、というよりはもう」 「もう巻き込まれてるっていうなら、逃げられないですよ。あなた達は」 やや諦めがちに言う。 パトリシアと占卜の時もそうだった。いつの間にか、いつの間にか逃げられないところまで巻き込まれてしまっていたのだ。 パトリシアの時はメールが、占卜の時は手紙が、その合図だった。
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 19:54:08.11 ID:yAhm9urX0 「だから何になの!?さっきからアンタ達が何の話してるのか、あたしは全然わからないんだけど!理解不能よ!!!」 「それと同じですよ」 どこか投げやりに、パトリシアは言う。 「さっき言ったでしょう、先輩だって。……私は、今あなたが巻き込まれている『それ』を完全にクリアした唯一の人間ですから」 「クリア……っ!DEGをっ!?」 DEG。 デッドエンドゲーム。 善悪生存戦争。 それは第四物語フォースストーリーの根幹要素にして、最大のキーワード。パトリシアがかつて巻き込まれ、最速ひかりが今巻き込まれているデスゲームの名。 佐天と占卜は理解できない物語。 「それって」 質問をしようとした。 先輩で予習しようとした。 その瞬間だった。 ピリリ、と電話が鳴った。 「っ!?」 びくり、と最速ひかりの身体が震える。その音は新しい指令が来るときの合図だ。それを何度も体験して知っていしまっているから、最速の表情は自然強張り、引き攣る。 だが鳴ったのは最速の携帯では無かった。 「私の……?」 鳴ったのは佐天の携帯だった。 タイミングが悪い、と思いながら佐天は携帯を取り出す。ほぼ身の着のままに飛び出してきたとはいえ、最低限のモノは持ってきている。 はたしてそれが悪かったのか。 「非通知……?」 非通知、とそう表示されていた。 怪しいことこの上なかった。 だから佐天は切ろうとした。誰が何のために佐天にかけてきたのか知らないが、今は非通知の電話に出るよりもはるかに大事な話をしているのだ。こんなどうでもいいことに遮られてはたまらない。 七連物語セブンスストーリーズを、そして世界物語キャラクターストーリー理論を知らない佐天は、当然そう思っていた。 だが、世界物語キャラクターストーリー理論を知る二人の反応は全く違った。 「ちょっと待つん……、一応、本当に一応、スピーカーモードにしてみるん」 「え」 「このタイミングでかかってきた電話が私達に無関係のモノだとは、ちょっと考えられないですし」 「えっ?出るんですか?これに?」 「当り前だしん。例えどんな最悪なイベントでも、イベントを無視したら未来で確実に積むん」 よくわからない理屈だった。けれどなぜかとてつもない圧力を持っていた。 何が見えている? パトリシアと占卜には、何が、見えているのだ? 佐天には分からなかった。 分からなかった、が。 「だから、押すん」 「……………………っ」 「押すん、佐天涙子一般人」 その言葉に圧されるようにして、佐天は携帯の通話ボタンをおした。 呼び出し音が切れて、繋がる。 そして、電話の先の相手が喋った。 「私、メリーさん。今、学園都市の外にいるの」
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 19:55:27.84 ID:yAhm9urX0 その言葉に、 1人は固まった。 その言葉に、 1人は戸惑った。 その言葉に、 1人は焦燥した。 その言葉に、 1人は、 佐天は、 呟いた。 「メ・リ・ー・さ・ん・の・……、電・……話・?」 それが全ての終わりの始まりで、 それは全ての始まりの終わりで、 さぁ、此処に紡ぎ出そう。 全ての根源たる、初まりの嘘を。 第 一 物 語ファーストストーリー 再 終 編 とある異界の都市伝説コズミックホラー 開 幕 なおラストの緑文字に特に意味はありません。ただの演出です。 そしてリアルの話ですが、えぇ、なんでしょうね、こんなキャラを苦しめる話ばかりを書いてきた罰でしょうかねちくしょう。 不幸は連続して起こる、という話です。 演出ではなく、マジの話で 祖父が癌になりました。 はい、なので申し訳ないですがしばらく更新速度激落ちします。激落ち君です。 次の更新は……まぁ、年内には、したい……。 風紀委員本部入団試験 三次試験 ペーパーテスト 問1 1000→639→336→102→5→…………→1.316 上の数字がある規則にそって並んでいる時、5の時にしなければならない行動を答えよ。 お暇でしたらどうぞ解いてみれば?
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 19:58:33.47 ID:yAhm9urX0 https://syosetu.org/novel/56774/165.html とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六 << 前の話 目 次 次の話 >> 165 / 178 不揃いのカコフォニー四人組カルテットB ホラー 占卜卜占は焦っていた。 (都市伝説、メリーさんの電話。……間違いなく、巻き込まれたん) 七連物語セブンスストーリーズ第三物語サードストーリー第二篇セカンドフラグメント、幻想島フィクションアイランド殺人事件を生き残った占卜卜占はこの世界の在り方についても多少は知っている。称号キャラクター性、物語、世界観ヴェルタンシャウングの優先権アドバンテージ。 それを考えれば現状は非常にまずかった。 パトリシアは確信をもてずにいた。 (携帯電話を使った演出、恐怖を助長するような非人間的な声色。そしてこのタイミング……。私は、どの物語に巻き込まれたの?) 七連物語セブンスストーリーズ第四物語フォースストーリー第七遊戯セブンスゲーム、第七回善悪生存戦争DEG唯一の生存者にして、七連物語セブンスストーリーズ第四物語フォースストーリー最終遊戯ファイナルゲームにイギリス代表として参加し生き残ったパトリシア=バードウェイはこの世界の在り方についてかなり深いところまで知っている。それぞれの物語の詳細、主人公ヒーロー、称号キャラクター性から発展した唯一オンリーワンの称号キャラクター性、越境装備トレスパッシング。 早く把握しないとまずいことになるかもしれなかった。 涯無はてなし最速ひかりは戸惑っていた。 (何だっていうのよ!!!次から次へと、いったいッ!?) ここ数週間の涯無の人生は波乱万丈のジェットコースターだった。 突如として巻き込まれたデスゲームDEGデッドエンドゲーム。次々と失われていく仲間達。裏切りと謀略と暴力に溢れた非日常。そりゃ、涯無だって学園都市の人間だ。外の人間よりは荒事慣れはしているだろう。だが、それはせいぜい不良の喧嘩までで命を懸けた闘争なんてしたことはない。だから涯無の心は本人が思っているよりはるかに消耗していた。何かもう1つ切っ掛けがあれば怒鳴り散らしているところだ。 精神の不安は限界に達していた。 そして、佐天涙子は懼おそれていた。 (…………何、これ) 携帯電話から聞こえてきた声は生理的嫌悪感を齎すモノだった。なんといえばいいのか、耳元で蚯蚓が這い回るような声、とでも言うべきか。怖気が奔った。怖くなった。佐天涙子は普通の人間だ。無能力者レベル0であり、特異な能力も持たず、特殊な血筋もない。4人の中で1番の無能。 だ・か・ら・選・ば・れ・た・。 「いたずら電話……、ですよね?」 思わず、佐天は問いかけた。 「まさか本当にメリーさんの電話だなんて、そんなこと」 「震えてるわよ、声。……自分でもそうだって思ってない事をいっても、誰も同意なんてしないに決まってる」 「…………………メリーさんの、電話、…………ねん」 メリーさんの電話。 それは日本で広く流布する都市伝説の1つである。都市伝説について少しでも興味のある人間であれば必ず聞いたことがあるくらいには有名な都市伝説だ。 内容は多少の違いはあれど、以下の通りである。 『とある少女が引っ越しに際に古くなった人形を捨てた。その人形の名はメリーと言った。 引っ越ししてしばらくたった後、少女は夜の自宅で1人留守番をしていた。両親は仕事でいない。少女には兄弟姉妹もいない。だから少女は1人で両親の帰宅を待っていた。 そして突然に、ピリリ、ピリリ、と少女の携帯電話に電話がかかってくる。 携帯の画面を見ると、そこに表示されていたのは少女の全く知らない電話番号だった。 それを気味悪く思う少女。普通ならそんな怪しい電話には出ない。すぐさま切ってしまう。 ――――――だが、この時の少女は何かに操られるかのように電話に出てしまった。 声が、聞こえた。 『私、メリーさん。今、ゴミ捨て場にいるの』 生理的嫌悪感を齎す、怖気のはしる声。どこか非人間的でありながら人間的な、歪な声。その声に恐怖した少女は反射的に壁に向かって携帯を投げつけた。 荒くなる息と、高まる心臓。 それを何とか誤魔化しながら、少女は投げた携帯に近づき、通話をきった。 これで安心だ、そんな風に少女は思った。 そこに間髪入れず再び電話がかかってくる。 ピリリ、ピリリ。 びくり、と少女の身体が震えた。手の中にある携帯電話を少女は見つめる。怖かった。怖くてたまらなかった。携帯電話という日常的に使う便利な道具が、今こんな時はこんなにも恐怖の対象になる。 電話に出なければいい、切ってしまえばいい、電源を落とせばいい。 想起される先ほどの声に、少女は電話を切るつもりだった。 ――――――だが、またしても少女は通話ボタンを押してしまった。 声が、聞こえた。 『私、メリーさん。今、郵便局の近くにいるの』 大声で悲鳴を上げる少女。少女の家のすぐ近くに郵便局があった。 少女の恐怖は極限に達し、少女の混乱は極致に達した。居ても立っても居られなくなった少女はすぐに家中の戸締りを確認する。 閉まっていない窓はないか?カーテンは全て閉じられているか?固定電話の通話線を抜いて、携帯の電源を落とす。テレビのケーブルも抜いて、外部との連絡手段の全てを断つ。 そして少女は最後に玄関の戸締りを確認しに行った。 …………その手に携帯を握りしめたまま。 そうして玄関まで辿り着いた少女は戸締りを確認する。 ――――――玄関のドアは閉まっていた。玄関の鍵はかかっていた。 だから、少女は安心した。電話をかけてくる相手が何者であろうが完璧な戸締りを施した家に入ってくることは出来ない。 なのに、 ピリリ、ピリリ。 そんな音が響いた。
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 20:00:06.13 ID:yAhm9urX0 ビクリ、と少女の身体が震えた。 ギチリ、と少女の首が動いた。 少女に携帯を持ってきた自覚はなかった。いや、それ以前に少女は携帯の電源を切ったはずだった。 なのに、なぜ? あまりの恐ろしさに、少女は思わずへたり込む。 なのに、それなのに、少女の手は、ひとりでに動いて、 電話に、出た。 声が、聞こえる。 『私、メリーさん。今、あなたの家の前にいるの』 身体の震えは限界に達していた。 顔は青白く染まり、手は震え、心拍数は上がってしまっていた。 荒くなる息を抑えることも出来ず、それでも少女は、 少女は、 少女はもはや決死の覚悟で、 決死の覚悟で玄関の、 玄関の扉を開け、 開けた。 前を見る。 少女は前を見た。 開け放たれた玄関の扉のその先には、 誰かが、 黒い闇が、 いや、 いいや、 そこには誰もいなかった。 そこには何もなかった。 少女は安堵の溜息をついた。 誰かのいたずらだったのか、それとも少女の心配のし過ぎか。 そう思って、少女は開け放たれていた玄関の扉を閉めた。 ――――――瞬間、 『私、メリーさん。今、貴方の後ろにいるの』 その後、少女がどうなったかを知る者は居ない』 夜。背後。正体不明の声。それらの要素は人間の根幹にある恐怖を表している。古来より人は先が見えない暗闇を恐れた。古来より人は見ることの出来ない背後を恐れた。古来より人は正体の分からないモノをひどく恐れた。 『メリーさんの電話』とは、近代になって出来た恐怖の具現化たる都市伝説であると言えるだろう。 「また物語に巻き込まれたってことかん?」 涙を流しそうになっている佐天を見て、占卜は少しだけ落ち着いた。自分よりも混乱している人を見れば自分は落ち着くモノだ。 それに占卜はこういうモノになれている。幻想島フィクションアイランドの時もそうだった。あの時だって、始まりは突然だった。 だから大丈夫だと占卜は自分を戒める。冷静さを失った人間から脱落するのは物語の常だ。 「物語……?」 「だと思いますけど。問題なのは、今回の………………………」 パトリシアの言葉が止まった。その手が、不安定に動く。何かを探るように、何かに縋るように。 佐天と涯無はパトリシアと占卜の2人の会話の内容が全く分からないでいた。単純な情報格差。今の2人では届かない領域だ。 まだ、届かない。 「今回の………………?」 気付いた。 パトリシアは気付いた。 気付いてしまったから、半笑いになる。 4人の中で一番辛い道を歩んできたパトリシアは、最悪の想像に思わず笑ってしまった。 「待って……、待ってくださいよ……、まさか……、まさか?」 「何を、どうしたっていうん!?」 その不安は伝播する。 その焦りは共有される。 「ねぇ、能兎黒栗」 「っ、今の私は占卜卜」 「こ・れ・っ・て・ど・の・物・語・な・ん・で・し・ょ・う・か・……?」 「―――――――――――――」 一瞬の、沈黙。 瞬間の、静寂。 「っ!!!???」 それを理解した瞬間、占卜卜占の――――――、いや、能兎黒栗の焦りは頂点に達した。 「まさか、隔離されたのか!?」 「優先権アドバンテージが取れない……。……そんな、前のとはいえ、私は唯一オンリーワンの称号キャラクター性たる誰も救えない英雄ガラクタヒーローを獲得した主人公ヒーローなのに!?」 「っ、だとしたらこの物語は、……メリーさんの電話、都市伝説、怪異…………恐怖……つまり」 「テーマがホラーだとしたら」 七連物語セブンスストーリーズ。世界を区切る7つの物語。 その初まりは今から1700年ほど前になる。1700年前に存在した3つの大きな戦争。それが、全ての始まりであり、世界がこうなったきっかけだった。 今となってはその詳細を知るモノは少ない。
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 20:01:23.17 ID:yAhm9urX0 だが概要を知っている者もいる。 「「第一物語ファーストストーリー」」 七連物語セブンスストーリーズの第一物語ファーストストーリーは7つの物語の中でも最も被害の大きい物語だ。 そして今も途切れることなく続いている物語だ。 第一物語ファーストストーリーの主役級登場人物メインキャラクター達の戦いは今も続いている。 「まずい、第一物語ファーストストーリーの世界観ヴェルタンシャウングは物語交錯クロスオーバーした時の優先権アドバンテージが第七物語セブンスストーリーを除けば最高位のはずです。私達の属する物語の世界観ヴェルタンシャウングじゃ優先権アドバンテージをとれないっ!」 「王の遺産レガリアは?私の持ってる偽王の遺産ファルススレガリアでは不可能だが、お前のそれなら可能なはずだ」 「使える。もちろん使えますけど、……越境装備トレスパッシングは最終手段です。これを使って無理でした、なんてことになったら打開の手段は完全になくなる。ひとまず正規の方法で攻略するのが一番のはずです」 「物語に沿うと?」 「これ、たぶん本来なら私達は巻き込まれる予定じゃなかったんじゃないでしょうか?人類絶対悪ビーストに王の遺産レガリア持ち、プラス2がほぼ一般人であるなら私達は場違いすぎますよ。補助要員にしても大げさすぎる。予定外の、たぶんこ・う・な・る・よ・う・に・誰・か・が・何・か・を・し・た・?」 「誰が?」 「私達よりも上位の誰か」 「何のために?」 「楔を打つために?」 「その仮説が正しいとしたら、我々4人の最終目的は物語の破綻ロジックエラーか」 占卜卜占という偽名を名乗っていた能兎黒栗は自分たちの置かれている状況が思っていたよりもはるかにまずいモノだということに焦る。正規の手段で入念な準備の下に作られた物語、七連物語セブンスストーリーズ。それに破綻エラーを起こさせるのは、その場しのぎや突発的に起こった小規模物語イベントに破綻エラーを起こさせるのとはわけが違う。 多少の異物イレギュラーで覆せるほど物語世界は脆くなく、弱くない。 だが、パトリシアと黒栗が本当に本来なら存在しないはずの異物イレギュラーだとするのならば、まだ希望はある。 曲がりなりにも称号持ちネームドだ。物語に巻き込まれて生き延びた人間だ。一般人とはわけが違う。 一般人2名と協力し合えば、もしかしたら小規模な物語の破綻ロジックエラーくらいは起こせるかも知れなかった。 それが出来ないならば正規の手段で物語を進め、終わらせ、完結させればいい。 視点や参加メンバーにもよるが、この場にいる4人だけが今回の物語への参加者だとすれば、主人公ヒーローに仕立てあげることくらいは出来るはずだ。 「ふうううううう」 黒栗は1度大きく息を吐いた。覚悟、覚悟だ。覚悟がいる。 姉を救うためには、ここを乗り切らなければならない。 いつもと変わらない。いつかと変わらない。 生き残った者には生き残った責任がある。 「行動を起こす必要があるな」 周りを見渡した。パトリシアに現状の説明は必要ないだろうが、他の2人は別だ。巻き込まれた物語が第一物語ファーストストーリーだとするのならば、そのテーマはホラー。信頼と信用、そして絆。繋がりが大事になる。 築かなければならない。 何も知らない一般人2人との間に、多少の干渉などでは揺らぐことのない絶対の信頼関係を。 テーマがホラーの物語で最も怖いのは、化物ではなく人間なのだから。 「メリーさんがそこのお客さんの背後に辿り着く前に、行動を起こす必要が」 何も知らない。何も分からない。何1つとして把握していない2人。 だが、そんなことは何のいいわけにもならない。 いつだっていきなりだ。いつだって唐突だ。準備万端で挑めることなんて、本当にほとんどないのだ。 だから優しくなんて出来ない。 今となっては、佐天も涯無もパトリシアと黒栗の仲間なのだから。 もし能兎黒栗という名前を見た瞬間にどこに出てきたキャラクターか分かったらその人はそうとうの禁書ファンです。かなりマイナーなキャラなので、禁書wikiで検索でもしないと出てこないでしょう。 次の更新は2月中旬までには。
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 20:02:51.71 ID:yAhm9urX0 https://syosetu.org/novel/56774/166.html とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六 << 前の話 目 次 次の話 >> 166 / 178 アニメ始まりましたねぇ!!! みんな見たかな?私はもう10回は見たよぉ!!! 前半は一方通行VS垣根をきちんとやってくれるなら満足、うちの一方通行はもう死んだけど。 第二部 第二章 第五節 革命未明《サイレントパーティー》〜さようなら、当たり前だったあの日々〜 白井黒子B 独りぼっちの戦いは始められない 暗部組織『ボックス』B 互いの理解は得られない 喪って初めてわかること。 無くなって初めて思うこと。 終わってしまってからだからこそ分かる、価値。 そういうモノは誰にだってあるはずだ。 例えばそれは癌に罹った母。 例えばそれは交通事故で死んでしまった恋人。 例えばそれは選択を間違えた過去。 強くなりたかった。 彼女の隣に立てるくらい、本当は強くなりたかった。 強くなりたかった。 彼女を傍で支えられるくらい、本当は強くなりたかった。 強くなりたかった。 彼女に頼ってもらえるくらい、彼女の役に立てるように、強くなりたかった。 けれど、それは無理だった。 強くなりたかった。 強くなりたかった。 本当に、本当に、そう思っていた。 いや、違う。そうじゃない。そうじゃないんだ。 本当は分かっていたはずだった。 彼女は誰よりも、分かっていたはずだった。 強くなりたかった、じゃない。 それじゃいけないことなんて、本当は知っていたはずだった。 強くなりたかったんじゃない、強くならないといけなかった。 努力を怠ったつもりはなくても、それ以上に努力していないといけなかった。 超能力者レベル5。七人の頂点。最強の代名詞。230万人の憧れ。 そこになるために、彼女はどれだけの努力をしたのだろうか。 有名な話だ。 有名な逸話だ。 御坂美琴に関する、とても有名な話。 御坂美琴は最初から超能力者レベル5だったわけではない。彼女は初め、ただのどこにでもいる、非常にありふれた低能力者レベル1だった。その低能力者レベル1が時間をかけて、想像を絶するほどの努力を重ねて、超能力者レベル5になった。 もちろん環境もあったかもしれない。当然才能もあったかもしれない。しかし、仮に御坂美琴と同じ環境を、才能を与えられたとしても、はたしてどれだけの人間が超能力者レベル5になれるだろうか。 神から水泳の才能を与えられた人間――しかしそれも気づかなければ全く意味の無いモノでしかない。 才能の有無は本人には分からない。御坂美琴とてそれは同じだ。彼女は超能力者レベル5になれると確信して努力を続けていたわけではない。超能力者レベル5になりたいと思って努力を続けていただけだ。 成りたい。つまりは憧れ。そのために努力を重ねる。それが出来る人間が、ただ一途なまでにそれをすることのできる人間が、はたしてどれほどいるのか。 だからこその『特別』。 だからこその超能力者レベル5。 だからこその、御坂美琴。 そこには、たどり着けない。 あまりにも遠すぎる。 眼が妬かれてしまうほどに目映い太陽光には、どれだけ手を伸ばしても届かないように。 白井では無理だった。 白井黒子では、決して届かない世界だった。 「ふっ、ふふっ……………………」 天を、仰ぐ。 風紀委員ジャッジメント一七七支部。その中で白井はたった一人で項垂れていた。 あまりにも、あまりにも問題が多すぎて、何から何処から手を付ければいいのかすらもわからない。しかも白井の抱える問題の全ては一人では手に余るもので、だからもう本当にどうしようもない。 ここまでの危機を、絶望を抱えるのはいつ以来だろうか。 朧げな意識の中で無意識のうちに過去を回想する。 (………………………) 白井黒子にとって重大な出来事というのは二つある。 一つは、去年風紀委員ジャッジメントとして活動している時に巻き込まれた銀行強盗事件。この事件で白井は自分の方向性を再確認し、人間として大きく成長した。 二つは、白井が敬愛する御坂美琴お姉様と出会う切っ掛けとなった、学舎の園で起きた連続傷害蘇生死体事件。この事件で、白井は正義や正しさについて考えるようになった。 ただこの二つの事件の時、白井は一人では無かった。仲間がいた。協力できる誰かがいた。味方がいた。信頼できる人たちがいた。 今はもう、誰も居ない。 白井は独りだ。 「はぁ…………」 何がいけなかったのだろうか。 何処で間違えたのだろうか。 まさかこんなことになるだなんて、思いもしなかった。 欠片も、全く、想像もしなかった。
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 20:03:39.32 ID:yAhm9urX0 「……………みなさん、どこに行ってしまったんですの?」 御坂美琴は消えた。 上条当麻は消えた。 初春飾利は消えた。 佐天涙子は消えた。 「誰とも連絡がつかない、なんて」 現在は8月30日、午前9時52分。 敬愛する御坂美琴お姉様は8月21日の朝以降、姿を見せていない。 協力していた上条当麻は昨日病室で妙な様子を見せてから一切の連絡がつかない。 今日の午前7時にここに集合する予定であった初春と佐天は集合予定時刻から2時間たっても現れず、あらゆる手段で連絡を取ることができない。消息不明と断じるにはあまりにも早過ぎる気がするが、しかしこの短時間で親しい人間が幾人も消えていけば、最悪の想像なんて簡単にできる。 消えた。 喪った。 終わり。 「……………………………よし、ですわ」 けれど、いつまでも俯いていることなどできない。時間は有限で、全ての人間にとって時間は平等に過ぎるモノ。だからこそ、白井も動かなければならない。 どれだけ絶望しても、どれだけショックを受けても、例えいつの間にか『いつも通り』じゃなくなってしまっていても、 白井は風紀委員ジャッジメントだ。 一人でも、それは変わらない。 変えては、いけない。 だから、 「ひとまず、出来ることからしましょう」 問題は山積している。行方不明の皆。上条が助け、今は病院で治療中の 。スタディ。風紀委員本部セントラルジャッジメント。はたしてどこから手を付ければいいのか。はたして何から手を付ければいいのか。 「……こういう時こそ状況を整理して、優先順位をつけるべきですわ」 紙とペンを手元に用意する。頬を掌で思いっきり叩き、気持ちを切り替える。 そして右手でペンを持ち、記す。 「最優先事項……、今差し迫っている危機は……、これは病院にいる彼女ですわね」 の命は後何日もつか分からない。明日には、いや数時間後には様態が急変してしまうかもしれないし、逆にこのままでも一週間以上持つかもしれない。そういう意味で言えば の件は最も差し迫った事態といえるだろう。 行方不明の4人についてもかなり危機感のある事態だが、しかし行方不明なのは他でもない超能力者レベル5、その超能力者レベル5が認めている人間。そして佐天と初春に関しては連絡がつかなくなってまだ数時間だ。ひょっとしたら30分後には何でもないようにここに来るかもしれない。 だから優先順位は よりは低い。 そう、そうして考えると。 「まず私がするべきことは を助」 「ふふっ、捗ってゐますか?」 「―――――――――――――――――――――――」 あまりにもいきなりに、 まず間違いなく敵である彼女は、まるで友人であるかのような距離で白井に話しかけてきた。 何の前兆も、予兆もなく、 彼女は、そこにいた。 「なっっっ!!!???」 驚愕――しかしそれも一瞬だけだった。 すぐさま空間移動テレポートを発動させ、白井は突如現れた少女から距離をとる。 そして太ももに巻いてあるホルスターに収めた金属棒に手を当て、叫んだ。 「千疋、百目!?」 「久し振りですね、白井黒子私の宿敵。ところで一つ提案があるんですけど」 10日前に地下下水道で戦った風紀委員本部セントラルジャッジメントメンバー。御坂美琴のもとに向かおうとする上条と白井を妨害した宿敵ライバルの称号キャラクター性を持ちし者。未来においての『死』が確定した、逃れられない業カルマに囚われし罪人。 風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキング第8位、反転世界パラレルワールドの大能力者レベル4、逆さまに狂う世界オセロゲーム、千疋百目は、 同性でも見惚れそうになるほどに優しい笑みを浮かべて、 白井に向かって手を伸ばしながら、 「白井黒子、あなた、私達の仲間にならなゐ?」 そう、言った。 空気が凍っていた。 「どういうつもり?」 「悪いとは思っているさ」 暗く昏く冥い地下室。学園都市統括理事会メンバーが一人死縁鬼苦罠直属の暗部組織『ボックス』に与えられたセーフハウスの一つで、御坂美琴は不機嫌さを隠すことなくテレビ画面を睨みつけていた。 テレビ画面に映っているのは暗部組織『ボックス』の一人にして死縁鬼苦罠の参謀役、樹形図の設計者ツリーダイヤグラムに匹敵する演算能力を持つが故に宇宙に追放された忌まわしきブレインの一人、天埜郭夜だ。 宇宙空間の中に浮かぶ気象衛星兼軍事衛星、ひこぼしU号の中で生活する郭夜には、さしもの御坂とて直接攻撃する事は出来ない。出来るのはせいぜい、画面越しに睨みつけることぐらいだ。 「はっ!思ってる?思ってるだけだなんて、口だけじゃいくらでも言えるわよっ!」 「信用という文字は信じて用いると書きます。そして信頼という文字は信じて頼ると書く。……あなたが私達のことを道具だとしか考えていないなら、交わした契約を反故にするというのなら、こっちだってそれ相応の態度をとりますけど」 「宇宙ソラの果てに浮かんでいれば絶対に安全だと思ってる?」 御坂は怒っていた。激怒していた。マジ切れしていた。 郭夜には、もっと言えば苦罠には恩があるし妹達シスターズを実質的に人質にとられている以上御坂は基本的には彼女らには逆らえない。御坂は暗部組織『ボックス』のリーダーであり、つまり御坂は『ボックス』の指揮権を手にしているわけだが、それはあくまで形式的なものでしかない。暗部組織『ボックス』の実質的指揮権を握っているのは『ボックス』のメンバーであり、苦罠の参謀役でもある郭夜だ。 歪な組織構造だが超能力者レベル5を頂点に置くことに一定の価値がある以上、お飾りのリーダーに甘んじることは別に苦痛ではない。妹達シスターズの安全が保障されるのであれば、御坂は泥の中を這いずり、他人に媚びを売り、利用されてもいいと思っている。 繰り返すが、そういう事情もあり、御坂は郭夜には逆らわない。
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 20:04:59.55 ID:yAhm9urX0 逆らえば妹達シスターズがどうなるか分からないから。 しかし、 「地上からじゃ星には手が出せないとか思ってる?」 それでもやはり、例外はある。 郭夜が禁忌を犯すのであれば、御坂とてそれなりの対応をとる。 それはそう、例えば、 例えば、 「統括理事会メンバーの参謀だから、人質をとってるから害されないとか思ってる?」 暗部に堕ち、性格が激変し、妹達シスターズを護るためだけに生きる機械と化した御坂は、非常に珍しく、驚愕すべきことに仲・間・の・た・め・に・怒・っ・て・い・た・。 「舐めてんじゃないわよ輝夜姫。超能力者レベル5の限界の限界の果てを、その蒼穹ソラのカナタにまで届かせてあげましょうか?」 「そりゃ恐ろしい。でもまあ、私の言い分だって聞いてくれてもいいじゃん?だいたいこの一件、張本人は納得してるんだよ?」 「だから?愛愉の納得が私達の納得に繋がるとか考えてるなら、二流未満の三流以下よ」 仲間。そう、仲間だ。 統括理事会メンバー死縁鬼苦罠直属の暗部組織『ボックス』のメンバーである4人のうち、苦罠の参謀である郭夜以外の3人にはとある共通点がある。 人質をとられている、という共通点が。 「あんた達が愛愉の『復讐』に全面的に協力するかわりに愛愉は『ボックス』に入る。それが愛愉とあんたたちの間にあった『契約』じゃなかったの?なのに、それを反故にするなんて」 「誤解だよ、誤解もいいところだ。『契約』の反故なんかしてないさ。いうなれば延期。事態が急変したから計画も変更しなきゃならなかったんだよ」 「それって、どこまで信じられるんですかね?」 「冷静に考えてほしいな。『契約』の反故をこのタイミングでするなんて、私にとっても不利益しかないだろ?しないしない。するわけない」 「は!?するわけがない?『忌まわしきブレイン』の言葉なんてどこまで信じられるってのよ。樹形図の設計者ツリーダイヤグラムにすら匹敵する演算能力を持ってるなら私達を思い通りに操るなんて容易いでしょう?だから示すなら」 「言葉じゃなくて、態度でしょう?」 御坂も相園も仲間のために怒っていた。暗部組織、学園都市の闇、世界の裏側に住まう人間でありながら3人の結束力、チープな言葉で言えば絆とやらは強くかたい。だから真摯に怒っていて、それを、その様を見て、画面越しに郭夜を責め立てて来る2人を見て、郭夜は、 郭夜は理解できない。 (蜜蟻が怒るのならば分かる。予定を変更したのは私だし、当事者の蜜蟻が怒るのは理解できる。共感は出来ないけどね) 感情。喜怒哀楽愛憎その他。郭夜にはそれが一切存在しない。笑い声をあげても涙を流しても怒気を露わにしてもそれは表立った変化だけであって郭夜の内心は一切動いていない。感情というモノが存在しない郭夜は根本的に人の気持ちが分からない。 『こういう行動をしたら怒るのだろう』とか、『こういう時には泣くのだろう』とかは経験から知っているが、しかしそれはあくまで知識として記しているだけで一切の共感が出来ていない。 だから郭夜には本当に分からなかった。 只管に無理解だった。 「少なくとも、ただでさえ存在しなかった信頼関係が完全に消え果たと思いなさい」 「私はそこまでは言いませんけど、でもまぁ、『あの人』の事をあなた達に預けてもいいのか、心配になってきましたねぇ」 「後、愛愉と話をするまで『ボックス』としての活動をするつもりはないから。利用されるだけ、使い捨てられるだけ、今それなら未来に希望なんて持てないからね」 積み上げてきた全てを棄却するかのようなことを御坂は口にした。分かっているのだろうか?妹達シスターズの命は郭夜が握っているのだ。その気になれば郭夜は今ある生産工場プラントを全て破棄し、御坂を再び絶望に落とすことだってできる。なのに、ここまでの反抗をするなんて、正気とは思えない。 なんて、もしも郭夜に感情があればそう考えていただろう。 (どうして、) けれど、今郭夜はそんなことを考えているわけでは無かった。脳内にあるのは疑問の嵐。理解できないモノに対する探求心だけ。 つまりどうして、 (どうして、この2人は怒っているんだ?) 郭夜はこれだけの怒りを向けられてなお、御坂と相園が怒っている理由が一切分からなかった。 つまるところそれが天埜郭夜という存在の欠点であり、唯一無二といっても決して過言ではない弱点だった。 最近の禁書を読んで 超電磁砲 大丈夫大丈夫……中条さんについての設定は全然変更可能だし…… 一方通行 フルコースやら体晶周りの設定は原作準拠にできるから問題なし 原作最新刊 黄金周りについてはほとんど設定してないからいくらでも変えられる、大丈夫だ アストラル・バディ 内部進化アイデアルの過去編やるなら先に言ってくれよぉ!!!もう蜜蟻の周りの設定固めちゃってるよ!また変更しないといけないじゃないか…… 次々と出て来る新設定をいかに本作に矛盾なく組み込むか、戦いの毎日です。 次の更新は年内には。
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 20:05:55.86 ID:yAhm9urX0 https://syosetu.org/novel/56774/167.html とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六 << 前の話 目 次 次の話 >> 167 / 178 暗部組織『ボックス』C 【F/Z-】輝夜姫は人の心が分からない この街は狂っている。 学園都市。人体実験をもって学生に異常な力を与える狂気の街。 そんな異常が当たり前のように満ち溢れているという異常。はたしてそれに蜜蟻が気付いたのはいつだったか。 異常、そう異常だ。 普通の子供は超能力なんて持っていない。 普通の子供は人体実験の被験者になんかならない。 普通の子供は戦わない。 そんな当たり前が侵されてしまう位に、この街の人間は狂っていた。皆みんな、狂っていた。 闇も光も、裏も表も関係なく、冒されきっていた。 常識とはCommon sense is18歳までに身に付けたthe collection of prejudices偏見のコレクションであるacquired by age eighteen。かつてドイツの物理学者、アルベルト・アインシュタインはそういった。 正しくその通りである。学園都市うちと世界そとの常識は違い過ぎる。噛みあわず、咬みあわないほどに。 だが、それを知ってなお学園都市この街で生きるというのであれば、その事実を知ってもなお学園都市この街で生きたいというのであれば、 もはや自覚的に狂気に浸るしかないのだろう。狂い、狂い果て、狂わせるしかないのだろう。 内部進化アイデアルの事件で狂い果てた蜜蟻のように。 「ちょっと待ってほしいわぁ」 嬉しくは思う。 学園都市。狂いに狂った狂気の街。その闇の中で本当に信頼できる仲間と会うことができる確率はどれほどか。とある人が計算した『運命の人に出会える確率』とやらはわずか0.0000034%程度だそうだが、それよりも低いのではないだろうか。 そもそもの話、悪意に満ちた闇の中で信頼なんてものは埃よりも簡単に吹き飛ぶ。そんなモノは存在しないと断じてもいいぐらいに存在しえないモノだ。 だからこそ、蜜蟻は誇る。100%信頼できる仲間に出会えたことを一生の誇りに思う。 蜜蟻のために全力で怒ってくれる仲間を、誇る。 「愛愉」 「来てた……いいえ、今来たところですか?」 「今まさしく、アンタの話をしてたところなんだけど」 「あはは、信頼ないわねぇ、輝夜姫さんは」 テレビ画面の方に眼をやりながら見捨てられた女グレイレディという二つ名を持つ心理穿孔メンタルスティンガーの超能力者レベル5(非公式)である蜜蟻愛愉は郭夜に言葉を投げかけた。 「感情さえあれば、なんてね」 「はんっ、例え感情なんてモノがあったとしても、根本的に人間という種を見下してるアンタじゃ人間私達と信頼関係を築くなんて不可能よ」 「厳しいね。まっ、事実なんだけど」 蜜蟻的にはここで郭夜と敵対することはナンセンスである。現状蜜蟻の『復讐』は郭夜に依存している――というほどでもないが、郭夜に頼っている面が多いのは事実だ。組織と個人では出来ることの幅が違い過ぎる。統括理事会メンバーのバックアップを受けるのと受けないのでは蜜蟻の出来ることの幅が全く違う。 故に郭夜と、苦罠勢力と敵対するなどありえない。統括理事会メンバー、学園都市の最暗部の強さを蜜蟻は嫌と言うほど知っている。 そしてそれは御坂や相園もそうであるはずで、そんなことは御坂と相園も分かっているはずだ。なのにここまで郭夜に対して敵対的態度をとるのはなぜか。 その理由を蜜蟻は知っている。 「『あれ』、まだ見せてないのお?」 「見せる必要があるのかな?……あんなものを見せたところで信頼?信用?そんなモノは得られないだろうに」 「だからあなたは未だに欠陥製品スクラップドールなのよお」 例えるなら郭夜は超高性能なトップダウン型人工知能AIのようなものなのだ。人間と接するにあたって、過去の様々なデータを参考し『性格Aで言動αで目的@を持つ……な人物☆が動作9をした時』は『対応コード#』をとる、『性格Bで言動βで目的Aを持つ……な人物▲が動作3をした時』は『対応コード♭』をとる、などという形で動いているに過ぎない。 そしてだからこそ郭夜は人間の感情面を理解できず、考慮して行動できない。 例えば父親が死んで泣いている子供がいる。この場合、子供が泣いている理由は何だろうか?多くの人は『親が死んで哀しいから』と答えるだろう。郭夜も過去の統計からその結論に至り、接触する際は『親が死んで悲しんでいる子供』用の対応をとる。 だが例えば、その子供の身体に虐待の跡があったとしたら?多くの人は子供が泣いている理由として『もう虐待を受ける心配がなくなって嬉しくなったから』という理由が頭をよぎるのではないか。そしてもちろん郭夜もそうだ。その時の対応はきっと『虐待を受ける心配がなくなって嬉し泣きをしている子供』用の対応になるだろう。 けれども、だ。当然人の内面を知ることは一般人には出来ない。虐待された子供でも『親が死んで哀しいから』という理由で泣いているかもしれない。 そういう時、普通の人間は対応を変えることができる。接触している途中で『もう虐待を受ける心配がなくなって嬉しくなったから』ではなく『親が死んで哀しいから』泣いていると分かれば、普通の人間は『親が死んで悲しんでいる子供』用の対応をとる。 しかし郭夜にはそれが出来ない。感情が分からない郭夜は過去の統計から行動しているにすぎず、根本的に人を理解できない。故に例え『虐待をしていた親が亡くなり、悲しんで泣いている子供』がいたところで、身体に虐待の跡があるという状況、涙を流しているという行動、親が亡くなったという環境から最初に『もう虐待を受ける心配がなくなって嬉しくなったから泣いている』と決め打ってしまい、対応の柔軟な変更が出来ない。 それが郭夜の弱点であり、欠点なのだ。 最も、それをつけるかは分からないが。 「『あれ』?」 「理由、よ。私が『復讐』の中止を決めた理由」 態度から分かった。蜜蟻は『復讐』の中止に納得している。そしてそれは郭夜に無理やりな説得を受けたからだとか精神操作を受けたからではない。本当に本心から、納得している。 だがそれはなぜだ? あれだけこだわっていた『復讐』。1年をかけて進めてきた前準備を全て破棄してまで、どうして中止できる? その理由が『あれ』? 「そんなモノがあるならどうして見せないんですか」 相園が少し責める様な口調で郭夜に言った。確かにそうだ。言葉だけで物証がないから郭夜の事を疑った。確かな理由があるのであれば、相園とて蜜蟻の『復讐』を中止するのも吝かではないのだ。 それをあそこまで強固に反対したのは郭夜に言葉しかなかったから。 「どうしてって、別に見せる意味もないと思ってたからだけど?いくらでも加工できる映像なんかよりも生の言葉の方が信がおけるだろう?」 「相変わらず、ずれた視点ね」
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 20:06:34.41 ID:yAhm9urX0 確かに、郭夜の言う事も一理ある。 例えリアルタイムの映像だとしても、優秀なハッカーなら改竄はいくらでも可能だ。であれば言葉に信を置く、というのもまぁ理解できなくはないだろう。ただそれは言葉を交わす相手に信用がおける場合だ。 御坂も相園も、もちろん蜜蟻も、当然郭夜を信用などしていない。だからこの一点に関しては映像の方が信用できる。もはや人外の頭脳の持ち主たる郭夜の口から出た言葉などとてもとても信じられない。 そういうことが郭夜には分からないのだろうか。 「こっちの事を考えられても自分のことは考えられないの?」 きっとわからないのだろう。 「よくわからないけど、そこまで言うなら見せようか?別に隠す理由もないしね」 根本的にずれている。感情を理解できないが故の欠陥。それでいて無理に感情を考慮に入れて行動しようとしているが故の欠陥。学ぼうとする姿勢を評価は出来るが、だからといって間違っている。 郭夜の言葉なんかよりも映像の方が万倍信用できる。 相変わらず、郭夜は自分に向けられた感情が分かっていない。 「ちなみに、どんな映像なんですか?その『あれ』っていうのは?愛愉に『復讐』の中止を決断させるレベルのものみたいですけど」 「んー、そっちの気持ちは理解できないけど、客観的に見て『復讐』の前準備が全て台無しになった映像だよ。いや本当に、1年の準備の全てが無駄になっちゃった。前触なんかなかったはずなんだけどなぁ。……協定も結んだし」 「いやだから、どれだけ言葉を尽くしてもわからないんだって」 「なら再生しようか」 今まで郭夜を映していたテレビ画面にノイズが奔り、すぐに映像が変わった。映し出されたのはどこかの研究室だろうか?培養器のようなモノ、操作盤のようなモノ、白衣を着た男と女、そんなモノが映っていた。 言うまでもなくリアルタイムではない。そしてリアルタイムではない以上加工されている危険があり、映像を鵜呑みには出来ない。 だがそんなことの前に見覚えがあった。 御坂と相園はこの場所を知っていた。 「ここって」 「愛愉が洗脳して利用してた『スタディお子様』のメイン居城秘密基地じゃないですか。まさか、誰かが干渉でもしたんですか?」 「…………その干渉は郭夜が防ぐはずじゃなかったっけ」 『スタディ』は三流未満の組織だ。それはもうあらゆる意味で三流未満だ。 やっている研究も、人員の能力も、設備も、他組織との関係も、予備実験の実験台の設定も、金銭面でも、本当にあらゆる意味で雑魚だ。 そして何より彼らが救われないのが自分たちが徹底的に利用されていることにすら気付いていないことだ。 超能力者予備集団セブンバックアップがなぜ『スタディ』をバックアップするのか気付いていない。 超能力者予備集団セブンバックアップの数億という資金源がどこから来るものなのか考えていない。 そして何よりも自分たちがここまで来たこと自体が誰かの掌の上であるなんて、思ってすらいない。 だから駄目なのだ。闇の奥底にいながら三流未満。そんなモノでは『夏休みの自由研究』だなんて馬鹿にされても仕方がない。 あまりにも青く、若い。そして学園都市の暗部では、未熟な者に明日は決して訪れない。利用され、馬鹿にされ、見返すことすらできず、人知れず死んでいくだけだ。 「あはは、輝夜姫は悪くないわあ。むしろ、私は干渉しなかったことに感謝してるくらいよお」 「?」 『スタディ』。超能力者予備集団セブンバックアップを通して苦罠勢力に利用された蜜蟻の『復讐』のためだけの舞台装置。蠢動俊三がデッドロックを利用した様に、彼らもまた蜜蟻に利用されていたのだ。 全ては上条当麻への『復讐』のために。たったそれだけのために、5人の人生は台無しにされたのだ。 「で、愛愉?結局、どんな映像なのよ」 まるで世間話をするかのように御坂は言った。闇の、底の、底の、底。そこまで堕ちた御坂はどれだけ凄惨な映像であっても動揺することはないだろう。血みどろの、血塗れの、悲劇。それがありふれたものでしかないともう知っているから。 なのに、 「あはは。きっと美琴も美央も驚くわあ、なんといっても」 一瞬ためて、 蜜蟻は陶酔したような表情で、言った。 「私の愛しの上条クンが、『スタディ』をやっつける映像なんだから」 「は?」 「え?」 そして、映像の再生が始まった。 リリスパ見たらテンション上がった。いつの間にか1話完成していた。スパイアクションモノいいよね……、いい……。 次の更新は11月中旬までには。
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 20:07:15.18 ID:yAhm9urX0 https://syosetu.org/novel/56774/168.html とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六 << 前の話 目 次 次の話 >> 168 / 178 Q.なぜ世界は滅んだのか? 学園都市統括理事会@ 襲来の人類絶対悪ビースト 8月29日午前9時33分 学園都市第一学区地下秘匿区画『蠍の間』にて 学園都市統括理事会は学園都市に存在する暗部の一つである。そして同時に学園都市の最高機関でもある。 所属するメンバーは統括理事長を除いて12人。そのほとんどが一癖も二癖もある『悪』人であり、自身の利益のために他者を平気で糾弾する屑だ。善人といえるのははそう、貝継と親船の二人くらいのモノだろう。 純粋な善が割を食い純黒の悪が栄えるのは世の常。いつもいつも良い人はいつも損をするものだ。 だが、だからといって常に悪人が栄え続けるのもまたあり得ない。栄枯盛衰、諸行無常。変わらないものなどないのが世の中なのだから、学園都市統括理事会のメンバーもまた、さらに強大な『悪』に叩き潰される時が来る。 多くの統括理事会メンバーはそれが分かっていない。自分だけは安泰で、最後に嗤うのは自分だと思ってる。それがただの妄想だと気づきもせずに。 いつかその時が来るとしても、なんだかんだで自分だけは例外だなんて思ってる。 だから苦罠は郭夜からの報告に焦っていた。苦罠もまた、結局の所自分だけは安全位置にいると思っていたから。 その平穏が一瞬で終わるだなんて、思いもしなかったから。 「とりあえず、集まってくれたようで安心したよ」 学園都市第一学区地下秘匿区画『蠍さそりの間』。統括理事会メンバー同士が秘密の会談を行う際に使用される学園都市の中でも最もセキュリティの厳しい場所の一つ。その『蠍の間』に今、10人の人間が集っていた。 死縁鬼苦罠。 トマス=プラチナバーグ。 親船最中。 潮岸 。 貝積継敏。 薬味久子。 亡本裏蔵。 アラン・スミシー。 ロード・アンドレイ。 奈落ならく奈波ななみ。 以上10人。全員が全員統括理事会メンバーだ。 「ふん」 「まだ、二人ほど来ていないようですが」 「全くだぜ。あの潔癖症と重病人はどうしたっつうんだ?」 これはもはや奇蹟に等しい会合だった。いがみ合い争い合い憎しみ合う統括理事会の人間が10人も一堂に会するなど飛行機が墜落するくらいあり得ない。彼らは自分以外のメンバーを追い落とすのに全てを懸けるほどの悪人。彼女たちは誰よりも自己中心的で世界が自分を中心に廻っていなければ気が済まないような狂人。 けれど今、この場に10人もの統括理事会メンバーがいる。 それはひとえに苦罠が連絡したからだ。 死縁鬼苦罠という男が、彼らを集めた。 「潔癖症の彼女には先に動いてもらっている。彼女もどうやら私と同じ情報を得ていたようだからね。そしてあの重病人について私も知らないな。割と緊急性の高い事態だから出来れば参加してほしかった、というのが本音だが」 「緊急性?」 アランが馬鹿にしたように言う。 「緊急性?何がだ?今この学園都市で、どんな緊急事態が起こってるっていうんだ?統括理事会全員を招集しなけりゃいけないほどの緊急事態が起こってるなんて、俺にはとても思えんがね」 「それならなぜあなたはきたのそれなら何故あなたは来たの?がくえんとしのぼうえい学園都市の防衛をまかされているあなたがきたということは任されているあなたが来たということは、なにかだいじ何か大事があったんじゃないかとおもったのだけれど思ったのだけれど」 「別に対した理由なんてねぇよ。ただ時間はあるし、同類の緊急要請に応えないほど俺は狭量じゃねぇ」 「ふん、ただこれ幸いと死肉を漁りに来ただけではないかね?」 煽り合い。罵り合い。マウントの取り合い。 ほんのわずかでもイニシアチブをとり優位に立とうと彼らは言葉という名の武器を交わし合う。 言葉。そう、あくまで言葉だけだ。間違ってもここで武器を交わすようなことはない。そのリスクは全員が承知している。 「はっ、あいにく腐った肉を喰らう趣味はねぇな。そこの美食家気取りでもあるまいし」 「それは私のことかな?『ネクター』は君が思っているよりもはるかに素晴らしき美酒だなんだがね」 「別に『ネクター』をどうこういうつもりはねぇが、つまるところ『ネクター』は人肉だろう?食人鬼に成り下がるつもりは、俺にはねぇなぁ」 「『ネクター』を人肉などというモノと一緒にしないでれ。あれはもっと高尚な」 「どちらにしろ、下賤なモノであることには変わりないと思いますがね」 亡本とアランの軽い、統括理事会メンバーとしてはあまりにも軽い言い合いですらない『話し合い』に親船が割り込む。生来争いを嫌う性質である、統括理事会メンバーの中でも数少ない『善人』である親船。彼女の未来はそれ故に閉ざされているが、しかし彼女だからこそ使える手というのもある。 かつて『平和的な侵略行為』を行うと恐れられた親船。その刃は今はしまわれているが、しかししっかりと砥がれている。 『善人』であるからといって、『弱い』という事にはならない。 親船はくさっても統括理事会の一員だ。
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 20:07:51.34 ID:yAhm9urX0 「でも、いま今はそんなことどうでもいい。くわな苦罠、そろそろおしえて教えてくれてもいいでしょう?ぜんいん全員、ふたりたりない二人足りないけどほぼぜんいんあつまったんだし全員集まったんだし」 「そうだな……、あいつは結局来なかった、か」 来るとはそこまで思っていなかったが来てほしいというのが苦罠の本音だった。今起きている最悪の非常事態には統括理事会の全員で立ち向かう必要がある。それほどの敵、悪がいる。 全員で戦わなければ勝てない。とても敵わない。 4年前のようなことをもう一度起こすわけにはいかない。 「まず初めに言っておこうか。私が今から言うことは全て真実で、事実だ。一切の偽りはないことを、まぁ、意味はないだろうが神にでも誓っておくとしよう」 「神、ですか」 小馬鹿にしたようにアンドレイが言う。神、神、神。神様?なんだそれは?宗教家でもない苦罠がその存在に誓いをするなんて、無意味を通り越して滑稽ですらある。 「そしてもう一つ、潮岸、アラン、奈波。私にお前達を責め立てるつもりは一切ない。そんな時間もないし、だいいち責めたところでもうどうにもならないからな」 「せめる?わたしたちを?」 「見えねぇな。何についての話だよ?」 「………………」 その返答は言葉ではなく画像で示された。 スッ、と苦罠の後ろの壁にプロジェクターで4枚の画像が映し出される。どれも学園都市の街中の画像で、それは一見をすれば何の変哲もない、学園都市の日常の画像。往来を行きかう人々、掃除用ロボット、自販機、建物。一般人がみれば、いや『闇』の人間が見ても違和感などないだろう。だが、だがしかし、見る人が見ればその4枚の画像がどれだけとんでもないモノか分かる。 そしてその画像に超速の反応を見せたのが1人。 「なっっっっっ!!!!!?????」 奈落ならく奈波ななみが大きな音を立てて椅子から立ちあがっていた。ポーカーフェイスをむねとする奈波の顔が驚愕に染まっている。演技?いやそんなわけがないしそんな意味はない。だからこれは素。しかしだとしたらなぜ? 奈落奈波はこの画像のどこに驚愕した? 「流石に、お前は分かるか。奈波」 「ばかな、そんなっ!」 それはあり得ない画像だった。 九家くげが一家、奈落家の人間として様々な情報に精通している奈波だからこそ気付けた。そこに映っていた人間がどれだけあり得ないのか。 「現在」 そして、彼らも知っていた。 潮岸。 親船。 貝積。 薬味。 亡本。 彼ら5人も、知っていた。 「現在、この街に4人の――正確に言えば2組織と1人と1体の人類絶対悪ビーストが侵入している。彼らからこの街を守るために、お前達の力を貸してほしい」 その悪を、知っていた。 その沈黙には動揺と困惑が混ざっていた。 動揺は6人、困惑は2人。 「……………苦罠クン」 「何か?」 「冗談だとしたらあまりにも性質が悪すぎるし、嘘だとしたらあまりにも質たちが悪いぞ」 「こんな冗談や嘘を、私がつくと思うか?本気で」 それは潮岸とて分かっている。だからあくまで確認だ。確認で、出来ればそうあってほしくはないという願望だ。 それは否定された。 そして否定された以上、真剣に向き合わなければならない。 人類絶対悪ビースト。 その脅威を、潮岸達は知っている。 4年前の獄天の扉ヘヴンズフィール事件。その事件を生き延びた7人の統括理事会メンバー。 苦罠。 親船。 潮岸。 貝積。 薬味。 亡本。 そして潔癖症の彼女。 7人は人類絶対悪ビーストの恐怖を、その狂気を知っている。だから速断だった。当然苦罠が嘘をついている可能性もあったが、それよりも。 それよりもだった。 「それで緊急事態……か。くそっ、どうやってすり抜けた」 「奈波クン、君は見覚えがあるようだな。詳細はわかるかね?」 「わたし私は4まいのがぞう枚の画像のうち2まいしかしらない内2枚しか知らないわ」 「それでも十二分だろう。人類絶対悪ビースト……。もう4年前のようなことを起こさせるわけにはいかない。情報は少しでもほしいのだから」 「画像を出したのは私だが、人類絶対悪ビーストに関しては私よりも君の方が、九家が一家、奈落家の人間である君の方が詳しいはずだ。後で私も捕捉するから、説明を頼む」 奈波は純粋な統括理事会メンバーではない。奈波は外の、学園都市外の人間だ。奈波が統括理事会のメンバーとしていられるのは奈波が外部との折衝の役割を担っているからであり、学園都市の運営に参加しない立場をとっているからだ。 そういう意味では奈波は親船以上に権力がない。だが本人もそれをよしとしている。立場的にも奈波はそういうことをするべきではないからだ。 そしてその立場故に、奈波は人類絶対悪ビーストについてとても詳しく知っている。
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 20:09:00.66 ID:yAhm9urX0 「いちばんひだりのがぞうにうつっているのは一番左の画像に映っているのはじんるいぜったいあく人類絶対悪いかいそうじょれつだいきゅうい位階総序列第九位の『こっきょうなきてろりすとTerroristes Sans Frontières』のめんばーたちメンバー達よ。『ぎゃくたい虐待』のあくとくをたいげんするやつらで悪徳を体現する奴らで、せかいさいあくのてろりすとしゅうだん世界最悪のテロリスト集団でもあるわ。ばくやく爆薬、どくがす毒ガス、しゅうだんひすてりーのゆうはつ集団ヒステリーの誘発――。そういうだいきぼなあくいてきこうどうをするやつら大規模な悪意的行動をする奴ら」 左の画像が拡大される。拡大された先に映っているのは6人。男性2人と女性4人。 「なまえはわからない名前は分からないけど、たぶんたちばてきにはそうたかくないとおもう立場的にはそう高くないと思うわ。『こっきょうなきてろりすとTerroristes Sans Frontières』のじょうそうぶのにんげんたち上層部の人間達はげんばにこない現場に来ないから」 詳細な説明。けれど画像だけで分かることはやはり少ない。不確かな情報と不確かな言動。 「がぞうだけじゃだんていはできない画像だけじゃ断定は出来ないけど、けいかいしんがあまりみえない警戒心があまり見えない。とっこうよういんだとおもう特攻要員だと思う」 「特攻……っ」 「厄介な」 もっと詳細な情報を言うことは出来るが、奈波は一度『国境なきテロリストTerroristes Sans Frontières』の説明を打ち切った。今求められるのは詳細の説明じゃない。迅速な説明だ。 「いちばんみぎのがぞうにうつっているのは一番右の画像に映っているのはじんるいぜったいあく人類絶対悪いかいそうじょれつだいじゅんよんい位階総序列第十四位の『あくいとさついのようへいだんでっどえんどれっど』のいちしょうたい一小隊よ。『ぼうりょく暴力』のあくとくをたいげんするやつら悪徳を体現する奴らで、だいにじせかいたいせん第二次世界大戦さいだいのふのいさん最大の負の遺産。かねさえはらえばなんでもする金さえ払えば何でもするせかいさいきょうのようへいそしき世界最強の傭兵組織。2ねんまえのほわいとはうす年前のホワイトハウスしゅうげきじけんのじっこうはん襲撃事件の実行犯、ってい言えばわかるかしら」 右の画像が拡大される。拡大された先に映っているのは16人。男性12人と女性4人。 「しょうたいちょうはみおぼえがあるわ小隊長は見覚えがあるわ。まるてぃねすマルティネスってなまえ名前よ。せっきょくせい積極性としんちょうせいが慎重性がわるいいみであわさった悪い意味で合わさった、むのうのなかではゆうのうなにんげん無能の中では有能な人間」 「装備は分かるの?」 「がくえんとし学園都市のぶそうであっしょうできるれべる武装で圧勝できるレベルのはず。そもそも『あくいとさついのようへいだんでっどえんどれっど』のこわいところ怖い所はそのようしゃのなさとじんどう容赦の無さ人道をためらいなくふみはずすところ躊躇いなく踏み外すところだし。ちょくせつせんとうになればよゆうでかてる直接戦闘になれば余裕で勝てるはず」 強い弱いで言えば弱い。けれど強い弱いだけじゃ語れないからこその人類絶対悪ビースト。 「でもたぶんこの16にんはさぽーとよういん人はサポート要員よ。ほかのさんそしき他の3組織のどこかがやとった雇ったんじゃない?」 『悪意と殺意の傭兵団デッドエンドレッド』はその名が示す通りあくまで傭兵。つまり他者からの依頼によって動く存在だ。自意識では動かない。 「あと後の2がぞうはわたし画像は私にもわからないわ。くわな苦罠、あなたは?」 「ならそこは私が説明しよう。といっても僕も郭夜から得た情報なんだけどね」 そういって、苦罠は左から2枚目の画像の一部を拡大した。 映し出されたのはとある少女。茶髪のショートヘアに白カチューシャをした少女――の手元。 「ポータブルデバイスPD……?これが、人類絶対悪ビースト?」 「正確に言えば、ポータブルデバイスPDの中にいる存在、だ」 感の良い貝積はそれで気付いた。 「っ、電脳生命体αアルファか!?」 「ああ」 電脳生命体α。 その名の意味が分かる者の焦りはこれまでとは全く違った。 「アランっ、学園都市の電子防衛関連は君が担当していたな。何か君の部下から報告はあがってないかっ!」 「あ?別に目立った報告なんてあがってねぇが……?」 「ならもう完全に落ちているんでしょうね」 「書庫バンクはどうだ?最暗部の情報はのっていないとはいえあれまで掌握されていたら学園都市は落ちたも同然だぞ!」 「いえ、外部と完全に独立したネットワーク以外はすべて落ちているとみるべきよ。くそ、この分だとここに来る前にした電話も怪しくなってくるわね」 「っ、電波も乗っ取られて……っ、なら連絡を取り合う時は精神感応テレパス系の能力者で中継する必要が」 「ちょっ、ちょっと待ってください!どういう」 「落ち着けッッッ!!!!!!!!」 一機に混乱する状況を前に苦罠が一喝した。分かる。とてもよくわかる。何も知らない立場なら当然そうなる。現代社会において電脳生命体αの脅威は分かり知れない。だからそうなるのも分かるが、それでも今は大丈夫なのだ。 誰でもない。この事態に最初に気づき、動き出したのは、他の誰でもないあの天埜郭夜輝夜姫だ。 「落ち着け、大丈夫だ。今のところ電脳生命体αの侵攻は抑えられている。まだ後2日は問題ないはずだ」 「君は馬鹿か?」 思いっきり馬鹿にした表情で亡本が言った。 信じられないような表情を薬味はしていた。 狂人を見るような目で親船は苦罠を見ていた。
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 20:09:26.42 ID:yAhm9urX0 「侵攻は抑えられている?出来るわけがないだろう!それがっ、出来る人材がいるのならっ、統括理事会はこうなっていないはずだ!!!」 「出来ている」 「誰が!?」 「守護神ゴールキーパーだ」 「っ」 その名はこの場の全員が知っていた。 守護神ゴールキーパー。 学園都市に存在する超一流のハッカーの1人。 その素性はこの場にいる全員が知っている。 風紀委員ジャッジメント第一七七支部所属の風紀委員ジャッジメントにして超能力者予備集団セブンバックアップ序列第1位、十二暦計画カレンダープロジェクト第九実験『漆黒の九月実験』邪道『マルチソウル』成功例。 初春飾利。 「本当に対抗できているのですか?誤魔化しも何もなく?偽装も何もなく?ダミーでもなく?他の誰でもないあの電脳生命体αの侵攻を、抑えられているのですか?」 「そもそもこの4枚の画像だってネットワーク経由で送られたものだ。この会合だってそうだろう?だから問題ない。今のところは、な」 「そのリミットが、2日か」 どれだけ有能な人間だとしても所詮は人間。行動の限界というモノは必ず来る。それが人類と人外の差であり、人類が人外を根絶できない理由だ。 電脳生命体α。電子の海に生きる人外の怪物。人が生み出した人の業。無限の学習で無限に進化する絶望。 単純な武力だけではどうにもできない人類絶対悪ビースト。 「分かった。なら出来ていると盲信しよう。だが個人的な対策はいくつかさせてもらうぞ」 「当然だな。私自身が言ったことではあるが、守護神ゴールキーパーがいつまでもつかのは、……微妙だしな」 慌ただしく外部と連絡を取り合う幾人か。構築されたネットワークの保護や兵力の確保、情報の収集などやるべきことはいくらでもある。潜在的な敵ではあるが、こういう場面では非常に頼もしい。 悪、悪、悪。人類絶対悪ビースト。 勝たなければならない。 「そして4枚目の画像を説明する前に本題に入ろう。分かっているとは思うが、な」 今度こそは。 「この人類絶対悪ビースト共をどうにかする。そのための力をかしてくれ」 いがみ合い、争いあい、憎み合う。それが統括理事会の在り方で、それはどうにもならない。けれどそれだけではない。本当にそれだけなら彼女達は統括理事会メンバーであり続けてはいられない。 裏切りも騙し合いもする。けれどその『先』があるからこそ、彼らは統括理事会のメンバーなのだ。 Q.なぜ世界は滅んだのか? Q.なぜ世界は滅んだのか? Q.なぜ世界は滅んだのか? 次の更新は年度末までには。 A.みんなが無能だったから。
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 20:10:18.28 ID:yAhm9urX0 https://syosetu.org/novel/56774/169.html とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六 << 前の話 目 次 次の話 >> 169 / 178 学園都市統括理事会A 彼らは愚者ではない 「それで、どうする気だ」 「どうにかする、というのは簡単ですが、具体的な策はあるのですか?」 「確かに、人類絶対悪ビースト……、生半可な『力』では敵わないだろうなぁ」 「もちろん、だから私はお前達に協力を要請しているんだ」 「何か策があるのですか?」 「策というほどのモノでもない。ただ単に、暴力でぶっ潰そうって話だよ」 「その暴力を私達に提供しろと?」 「もちろん私も出来る限り提供するさ。伏せ札はともかくとして切り札くらいまではきってもいいと良いと思っているし、お前達にもきってもらわなければ困る。見せ札だけでどうにかできるほど、人類絶対悪ビーストが弱くないことはお前達も知っているだろう?」 「確かにね、4年前の獄天の扉ヘヴンズフィール事件でそれは嫌って程知ってるけど」 「獄天の扉ヘヴンズフィール事件……?ちょっと待て、まさかあの事件には更なる裏があるっつうんじゃねぇだろうな!?」 「……そうか、そういえば君は獄天の扉ヘヴンズフィール事件をきっかけに入れ替わった人間の1人だったな」 「しかし今そのことについて説明している時間はないでしょうね」 「じかん時間、じかん時間、じかん時間。まったくいやになる全く嫌になる。いつだってわたしたちにたりないのはじかん私達に足りないのは時間よね」 「アラン、アンドレイ。お前達には後で私から資料を送ってやる。獄天の扉ヘヴンズフィール事件の詳細と人類絶対悪ビーストの危険性についてな。だから今は全霊で協力しろ。対応を間違えれば最低でも学園都市は滅ぶ」 「っ、それほーどの、存在ですーと?」 「承ったぜクソが。ガチでやべぇのは事実みてぇだし、今は大人しく協力してやるよ」 「あぁ、そうしてくれるとありがたいな」 「それで苦罠クン、詳細は?」 「今映す」 「……しかしよく気づいたな。君は別にこの街の防衛を担当してはいなかっただろう」 「私の担当分野は航空宇宙産業だよ?そして私のブレインはひこぼしU号の中に住んでいる」 「じんこうえいせいのかんしきのう人工衛星の監視機能ね」 「地上の監視網は逃れられても宇宙の監視網から逃れることは不可能だったようだな」 「………………………………」 「はっ、わざと干渉しなかったって可能性もあるだろうが」 「だから別に責めつもりはないといってるだろう……。と、情報出るぞ」 「『悪意と殺意の傭兵団デッドエンドレッド』、国境なきテロリストTerroristes Sans Frontières、『電脳生命体αアルファ』……なぁっっっっ!!!???」 「帰ってきたのか、彼女がっ!?」 「……禁忌の木原」 「全能存在パントクラトールっ!」 「木原五行……っっっ!!!!!」 「その名前は流石に新入りの俺でも知ってるぜぇ。あの悪名高き木原一族ですら放逐せざるを得なかった、木原一族の中の木原一族ってなぁ」 「はっ、そんなレベルではないよ……。あれは、1つの災害だ。いや、災害すら超えている。もはや天罰とでも言うべきだ。人間が対抗できるレベルを超越している」 「ですが、どうにかしなければならないでしょう。どうにかしなければ、この街は終わりです」 「……、しかーし、なぜ誰も気がつかなかーった?」 「先に言っとくぞ。『穴』はある。だがその『穴』を通ったとしても俺の監視網からは逃れられねぇ。だから見逃した訳じゃねぇ」 「ならわたし私からもさきにひとつ先に1つ、そとからのぞうえんはだせない外からの増援は出せないわよ。そのぞうえんにまぎれて増援に紛れて、さらなるじんるいぜったいあくビーストがこないともかぎらない来ないとも限らないから」
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 20:11:13.16 ID:yAhm9urX0 「増援がないのは仕方がない。そしてどうやって侵入したかは二の次だ。今私たちが話すべきなのは過去じゃない。未来についてだ」 「電脳生命体αへの対応は問題ないのだな?」 「私のブレインによれば、な。最も、サポートできるというのならばしてほしいが」 「無理無理、守護神ゴールキーパーレベルのハッカーじゃなきゃ対抗できない電脳生命体αに対して、生半可な増援なんて足手まといになるだけよ」 「どうかん同感。でんのうせいめいたいあるふぁ電脳生命体αにかんして関してはしゅごしんゴールキーパーにまかせた任せたほうがいい」 「なた木原五行に関してはどうする?」 「そんなのもちろん……」 「そこで私を見られても困るぞ」 「だが、君のブレイン以外にいるかね?かの全能存在パントクラトールに対抗できる存在が」 「……はっきり言うぞ。郭夜は動けない」 「ふざけているのかな?」 「至って真面目さ」 「だったらどうして動かないの!あの全能存在パントクラトールに対抗できるのなんて、この統括理事会の中じゃ同じ造られた子供たちプログラムチルドレンの天埜郭夜ぐらいじゃないの!?」 「よく聞け。動けない、じゃない。動かない、と言ったんだ」 「つまーり?」 「伝言だよ。ふざけた伝言だ。郭夜曰く、木・原・五・行・の・目・的・は・私・を・引・き・摺・り・だ・す・こ・と・、だそうだ」 「それを、信じたのか?」 「私は郭夜を信頼している。郭夜がそういうのならば、本当にそうなんだろう」 「ならどうしろというんだ。あの木原五行に対抗できる存在など他にいないだろう」 「そうでもないと思うが、な。もちろん、」 「なにをばかな何を馬鹿な。きはらごぎょうにたいこうする木原五行に対抗するためにひつよう必要なのはぼうりょくじゃなくてちりゃく暴力じゃなくて知略。そしてそのちりゃくをもってるのはわたしたちのなか知略を持ってるのは私達の中じゃあなたのぶれいんブレインだけでしょ」 「そうでもないさ。確かに知略という面ではそうだろうが、別にわざわざ禁忌の木原と知恵比べをする必要はないだろう?」 「と言うと?」 「雪風宗谷。彼女は造られた子供たちプログラムチルドレンでこそないが、忌まわしきブレインの1人なんだから対抗ぐらい出来るだろう?」 「無茶だ。いくらあいつの運が良いつっても限界ってもんがある」 「別に倒せと言っているんじゃない。足止めくらいなら」 「ふざけんなよテメェ。本当に足止め出来るっていうんなら喜んで生贄にしてやるが、無駄死にするって分かってるのにいかせると思うか?」 「いいや、出来るかもしれん」 「……どういう意味だよ。貝積?」 「確かに、彼女1人では不可能だろう。だが、そこに私のブレインを加えればどうだ」 「忌まわしきブレインが2人、……ですか」 「いや、足りねぇな。それでも足りねぇだろ。木原五行に対するには」 「ならば私のブレインも加えよう」 「ついーでに、私の高貴なる一族ブルーブラッドからも人員をだーそう」 「おっ、それならいけるんじゃない?まぁでも〜、もうちょっと武力面はプラスしたいけど」 「武力……、それはあなたが出せるのではないですか?」 「冗談を言ってくれるな。確かに私は兵器関連に強い権限を持っているが、必要となる武力は兵器ではなく人員だろう。つまり強力な能力者。科学兵器をメインにしている私では派遣できんよ」 「だとしたら、人員を出すべきは私か」 「あはは、確かに貴男なら派遣できるだろ〜ね。この能力開発分野に強い影響力を持ってる君なら」
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 20:12:08.52 ID:yAhm9urX0 「……分かった。超能力者予備集団セブンバックアップから1人だそう。私の息のかかってる人間だ」 「そのレベルだったら私の恋査ちゃんを派遣したほうがましじゃない?」 「ならばどうしろと?」 「いい加減にしたまえ。なぜ、一級品の料理を持っているのにそれを私達に振る舞わない。今は、そんな場面ではないだろう」 「………………非公式超能力者アウターレベル5、か」 「それ以上を、君は持っているはずだがな」 「………………………………………………………」 「言わなきゃわかんないかな?超越能力者レベル5.5って」 「………………………分かっていない」 「何が?」 「超越能力者レベル5.5は、一級品の料理などではない。あれの危険性を、君達は何も分かっていない」 「上から目線のご高説は結構だがな、今は差し迫った危機から目を背けている場合ではないだろう」 「核ミサイルを発射された。だから、私達も報復として核ミサイルを発射する。……そんなことをして何になる?」 「何を恐れているーんだ?」 「同じ結末なのさ。超越能力者レベル5.5を解き放つなど、それでは結局人類絶対悪ビーストを斃せたとしても意味がない。結局の所は全ては終わる。何も変わらないのさ」 「超越能力者レベル5.5とは、それほどの存在だと」 「何のために私が彼を保護監禁していると思っているんだ。外に出すことで起きる被害が、私達の許容を遥かに超えているからだ」 「であれば?」 「さっきも言っただろう。非公式超能力者アウターレベル5を出す。非公式超能力者アウターレベル5ならまだ許容できる」 「でもさ〜、所詮は超能力者レベル5になれなかった非公式アウターな連中でしょ?ほんとに大丈夫な訳?」 「いや、非公式アウターだからってその強さが公式な超能力者レベル5に劣るわけじゃあねぇだろ。確か非公式超能力者アウターレベル5は切り捨てられた枝ってだけじゃなかったか?」 「……しらじらしいですね。再利用リサイクルと言ってしまえばいいではないですか」 「可能性があるモノを伸ばすのは、悪い選択肢ではないはずなのだがな」 「あはは、齎されるかどうかも分からない被害を想像して、戦力を温存してる場合じゃないと思うんだけどな〜。出しちゃえばいいのに」 「先ほども言っただろう」 「まっ、そうはいっても、妾わらわからしたら赭あかつち鰰はたはたなんてそこまでの脅威でもないんだけどね〜」 「……は?なぜ、君がその名、を………………」
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 20:12:39.23 ID:yAhm9urX0 「「「「「「「「「ッッッッッッッッッッッ!!!!!!!???????」」」」」」」」」 「あはっ!やっと気づいたの?初めまして久し振り!統括理事会の諸君!!!」
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 20:14:44.74 ID:yAhm9urX0 https://syosetu.org/novel/56774/170.html 携帯版 小説情報 一括表示 縦書き しおりを挟む お気に入り登録 評価 感想 推薦 誤字 閲覧設定 固定 とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六 << 前の話 目 次 次の話 >> 170 / 178 おかしい……、なんでこんな展開になったんだ? 学園都市統括理事会B 絶対的な敗北 いつからそこにいたのか。 いつから会話に参加していたのか。 いったいいつから。 「ご、ぎょう……?」 呆然と、誰かが口にするその言葉。 この場にはいないはずの、たった今話題にしていた、人類絶対悪ビースト位階総序列第三位の名前。 「木原、……五行?」 「そう!あたしの名前は木原五行!人類絶対悪ビースト位階総序列第三位にして全能存在パントクラトールの二つ名を持つ禁忌の木原!木原一族の中の木原一族!」 「……冗談だーろ」 アンドレイが呟く。それは木原五行を除いたこの場の全員が思っていることだった。 気付かなかった。 誰も、誰一人として気づかなかった。 「……トマスはどこだ?」 苦罠がそういった。 「その席には、トマス=プラチナバーグが座っていたはずだ!」 はっ、と複数人が顔を上げた。そう、苦罠の言う通りだ。今五行が座っている席には統括理事会メンバーの1人であるトマス=プラチナバーグが座っていたはずだ。それは会議を始める前に全員が確認している。 潮岸は目線だけで周囲を見渡した。 いない。いない。いない。上下左右前のどこにもトマスはいない。そして自分の後ろにもトマスがいないのは他のメンバーの視線で分かる。ならばどこに、トマスはいったいどこにいった? 「ん〜?あれ〜、どこにいっちゃんたんだろうね〜?」 「お、まえ」 誰かの心拍数が早くなる。 誰かの頬に汗がつたう。 誰かの喉がカラカラに乾く。 そんな中で、苦罠が怒鳴った。 「トマス=プラチナバーグをどうしたんだッ!?」 「分かってるくせに」 泰然自若に五行は答えた。たったそれだけの言葉でトマスの末路が想像できる。 「殺したのですか」 それを実際に口に出したのは親船だった。もっとも端的に想像できる末路。死という名の結末。だが、仮にそんな末路を辿ったのだとすれば違和感がある。 それは、 「死体はどこにいったのか、分かる人いるかな〜?」 「余裕じゃねぇか、随分と」 五行を睨みつけながらアランはそういった。立場が分かっていないわけではない。五行が上で統括理事会が下。既に格付けは成されている。 だから覆す。 統括理事会を舐めるなと、アランは五行を挑発する。 「ここがどこだか分かってんのか?禁忌の木原だか人類絶対悪ビーストだか知らねぇが、俺達の前に姿を現して五体満足で帰れるとでも思ってんのか?」 「くららららら!!!強がり言っちゃって、か〜わいいっ!」 身体を艶めかし気にくねらせながら、五行はあくまでも上から目線で告げた。主導権争いをするつもりは五行にはない。そんなことをしなくても、誰も五行には勝てないと知っているから。 「それとも注目を自分1人に集めさせて、その間に他のメンバーに何か準備をさせるつもりかな?くすくす、でも不思議にさぁ、思わない?はたしてうちはどうやってこの『蠍の間』にきたのだろうかや?」 牽制……、いや五行からすれば牽制ですらない言葉に、裏で準備を進めていた幾人かの動きが止まる。当然、いくら統括理事会メンバーだけの会議とはいえ完全に無防備な状態で来ている人間などいない。親船でさえ最低限の防備をしている。潮岸は駆動鎧パワードスーツ『シェルター』を周囲同化服カメレオンスーツで隠した状態で着ているし、薬味は予あらかじめ己の身体に薬物投与を行って身体能力をあげているし、アランは己のブレインである雪谷宗風からお墨付きをいただいている。 武器はある。 動けるのだ。 人ひとりくらいなら、殺せる。 ただ、 「おかしくないでしょうか?この『蠍の間』はランダムに地下空間を移動するいわば動く密室。会議が始まったら出入口は完全に閉鎖され、外部からの親友も内部からの脱出も不可能になるのに……。あてはいったいぜんたいどうやって『蠍の間』に来たんだよ!?分かる人は手をあ〜げ〜て〜!今なら五行ポイントを100ポイント分あげますよ!」 楽しそうに、心底楽しそうにどうでもいいことを話す五行。 五行がどうやって『蠍の間』に来たのか?なぜトマスが消えたことに誰も気づかなかったのか?トマスの死体はどこにいったのか?確かに気になる。気になるが、それらの優先度は低い。はっきりいってこの場においてそれらの問題はどうでもいい。 今はそんなことよりも、五行にどう対するかという事を議論するべきだ。 (隙だからけだ) 潮岸は思う。潮岸は別に一流の戦士などではない。けれど分かる。偽装でも何でもなく五行は明らかに隙だらけ。その隙は潮岸ならばつける。駆動鎧パワードスーツ『シェルター』を纏っている潮岸ならば、いける。 本当にそうか? (くそ……) 苦罠は思う。こういう事態も完全に想定していなかったわけではない。忠告はもらっていた。郭夜はこういう事態も想定していた。だから、武器はある。だから、生き残れるはずだ。 本当にそうか? (どうしようかな) 奈波は思う。木原五行。人類絶対悪ビースト位階総序列第三位。その脅威は学園都市に来る前から知っている。人口衛星USA-224墜落事件、パリ全インフラ停止事件、他にも多数の大犯罪を犯した人間。そんな彼女が今、手が届くほどに近い距離にいる。どうするべきだ。いくべきか?出来るのか?世界に対する、人類に対する、日本に対する脅威を今、取り除けるのか? 本当にそうか? 「あれ?今笑う所さかいな」 「そうだな……。空間移動テレポート系統……、それも座標指定タイプではなく目印アンカーを設置して移動するタイプ、か?」 言いながら、苦罠は目配せした。統括理事会。学園都市の最上層部にして最暗部。混沌とした悪意の渦巻く屑の巣窟。他人を出し抜き蹴落とすことしか考えていない屑共。 普段は敵同士。どうしようもなく相いれない。 「惜しい!でも外」
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 20:15:24.72 ID:yAhm9urX0 けれどだからこそ分かる。 だからこそ、彼らはある意味で通じ合えている。 最初に動いたのは薬味だった。 「っ!」 薬物による身体強化を施している薬味は100メートル走の世界記録をはるかに超える速度で五行との距離を詰める。瞬きをする瞬間には、とまではいかないが、しかし一般人では到底反応できないような速度。 テーブルの上に乗りあげ、最短距離で五行のもとまでいく。 そんな速さじゃ遅すぎる。 「短慮過ぎない?」 とん、と。 軽くステップを踏んで、本当にほんの少しだけ身体をずらして、五行は薬味の攻撃から逃れた。薬味と五行の距離は今や10センチメートルほどしかない。近すぎる。近すぎるが故に、薬味は五行に攻撃できない。殴るにしても蹴るにしてもある程度の距離は必要なのだ。密着状態では攻撃などできない。 そして五行の位置取りは完璧だった。 (射線が、っ) 亡本も当然動いていた。懐に偲ばせていた半自動組み立て式拳銃を五行に向かって発射しようとしていた。そして実際に発射しただろう。 薬味の身体が五行を庇うような位置に無ければ、だが。 「ちっ!」 「おおお!!!」 薬味の動きにスリーテンポほど遅れてからアランと潮岸が動き始めた。 ……語るまでもない事ではあるが、ここにいる統括理事会メンバーは全員戦う人間ではない。彼ら彼女らは策を練り、指示を出し、上に立つ人間であり、現場で動く人間ではない。 だから言うまでもなく弱い。連係も下手で、数の利を全くいかせていない。 駆動鎧パワードスーツ『シェルター』を着ている潮岸。 雪谷宗風からお墨付きを頂いているアラン・スミシー。 しかしそれでも普通、普通ならば、いかに戦士でないと言えども人一人に勝てないわけがないのだ。 相手が普通の人間であれば、どれだけよかったか。 「な」 「あ?」 何をされたのかもわからなかった。 気が付いた時には2人とも無傷のまま地に這い蹲つくばっていた。 (……た、……てねぇ、だと?) 身体に異常は感じられない。精神操作系能力を使われた形跡もない。外傷はなく、内傷もない。重力の異常も感じられない。拘束されている感覚もない。 にも関わらず全く動けない。 「這い蹲ってろよ雑魚」 嘲り。 それは普段、アランが他者に向けている声色。 だから屈辱だ。 これが人類絶対悪ビースト。 だが、 「…………」 だが、 (そんなことは分かっている) そもそもだ、と潮岸は思う。 そもそも、今潮岸が生きている事自体がおかしいのだ。いや、それを言えばもっと前、五行がわざわざ姿を現したことがおかしい。 [ピーーー ]つもりなら殺せたはずだ。いくらでもできたはずだ。だがそれをしなかった。 つまり五行は潮岸たちを[ピーーー ]つもりはない……はずだ。 あくまでこの考えは潮岸の推論。だが当たっているだろうと潮岸は考える。でなければとっくに逃げている。最も、逃げられる可能性は0に等しいだろうが。 だからこれはあくまでパフォーマンス。 「そしてさようなら」 瞬きする暇もなかった。 衝撃すら感じなかった。 なのに、いつの間にか吹き飛ばされていた。 「っ!?」 更なる攻撃を行おうとしていた薬味は自分の身体がいきなり宙を滑空していることに驚愕した。 (待っ) 予備動作どころか攻撃後の余韻すら完全に存在しなかった。それが示すところはつまり、木原五行は薬味に対して何もしていないという事、か? いや、いや、いや。 だったらなぜ薬味は吹き飛ばされた? 誰が薬味を吹き飛ばした? 「っ」 何も分からないまま、薬味は吹き飛ばされた勢いで壁に叩きつけられ、 (……………………は?) ダメージが無かった。 確かに薬味は壁にものすごい勢いでぶつかった。壁がスポンジのように衝撃を吸収したわけではない。もちろん薬味側に何らかの保護が生じたわけでもない。勢いを緩めることは愚か、受け身をとろうとすることさえできなかった。 にも拘らず、薬味の身体には一切の外傷が存在しなかった。ちょっとした擦り傷すらも。
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 20:16:03.45 ID:yAhm9urX0 そして射線が開いた。 「――――――」 一段と大きい音が響いて、亡本の持っている拳銃から銃弾が放たれる。その弾丸は一瞬で五行のもとに辿り着き、五行の頭を貫い、 いいや、 「残念!」 「なぁ!?」 あり得ないことに超音速の銃弾を五行は噛んで止めた。そして口の中から弾丸を吐き出して五行は右手でそれをつまんだ。 「べっ〜、まじゅいのぉ……。きゃぴ♡銃弾なんて効くわけないのに、そんなことも分からないの?せっかくだし、返すよ」 指で弾いた。 「ごっ、ぶ」 まず感じたのは痛みではなく熱さだった。熱い、熱い、熱い。燃える様な灼熱の痛みが亡本の脇腹を襲っていた。 信じられないような思いで亡本は視線を下げる。 血濡れていた。貫かれていた。 何に? 「指弾。まぁこれくらいわねぇ?」 言葉の通りだったのだ。亡本が放った銃弾を噛んで受け止めた五行は、今度はそれを指で弾いて亡本に返した。そしてその返された弾丸は見事に亡本の脇腹を貫いた。 久しぶりに感じた痛み。強く感じる命の危機。しかし、と亡本は薄く笑う。 これでいい。これがいい。 潮岸も亡本も薬味もアランだって分かっていた。敵わないことくらい知っていた。亡本たちは戦闘においては素人未満だ。そんな亡本達が禁忌の木原に勝てるわけがない。 だから、敗北したのは全然かまわない。オーケーだ。 (思った未満に、上手くいったわね……。だから上手くやってくれないと困っちゃう) 壁に寄り掛かったまま薬味は動かないでいた4人に意識を向けた。薬味にダメージはない。立ちあがろうとすれば立ち上がれる。でもそれはしない。あたかも酷いダメージを負って立ち上がれないような演技をしつつ、薬味は事態の推移を見守る。 「………………化物が」 「………………………」 「…………じょうだん」 「…………やはり、か」 残ったのは4人だけだった。 統括理事会の中でもアレイスターに次ぐ権力を持っている諦めてしまった賢人、死縁鬼苦罠。 かつては交渉術の達人であったが娘を危険にさらしてしまったことで一線を引いた勇気無き善人、親船最中。 九家が一家、奈落家より学園都市と日本の仲介役としてやってきた日本の守り手、奈落奈波。 中途半端な善性を持つが故に常に苦悩する老人、貝積継敏。 「来 な い の ?」 「無駄な戦いは、しない主義なんだ」 全てを諦めたように苦罠は言った。 勝てない。勝てるわけがない。こうなることは相対した時点で分かっていた。だから秘密裏に作戦を練ろうとしていたのに。 「我々を[ピーーー ]つもりならばとっくにそうしているでしょう?何が、目的なのですか?」 「何が目的?何が目的?目的は同窓会だ」 「同窓会?」 「うん、あのね、ごぎょうね、ひさしぶりね、みんなにあいたいなって」 「……みんな?みんなって、まさか……」 「はぁ!皆つったら造られた子供たちプログラムチルドレンの皆に決まってんだろうが!!!アァ!?」 「ならばなぜここに来たのだね。ここには、その皆はいないぞ」 「……そんなことは分かってますよ。…………………でも13サーティーンは相変わらずどこにいるか分からないし、白は私の事嫌ってるし、だから郭夜に接触しようと思ったんですけど、電脳生命体αアルファにハッキングさせてメッセージ送ろうとしたらあやつまさかの物理的回線切断したし、だから輝夜姫の上司経由で同窓会の案内状を送ってもらおうかなって」 「つまりわざわざ『蠍の間』に来たのは、私に会いに来たかったからだと?」 「そうじゃよ」 「ならばどうしてトマスを殺したのですか?いえ、そもそも彼に会いに来ただけというならこの場でなくてもよかったはずでは」 「なるはやだよ。なるは」 とん、と、 木原五行の首が、落ちた。 何で統括理事会メンバーがそろいもそろって戦ってるんですかねぇ……? お前ら戦闘能力ほとんどない設定のはずだろう? 【じゃあ殺しちゃう? 統括理事会メンバーはあたしが全員ころしちゃいました!なんてね☆ さて質問なんだよ! 私、生きてると思う?】
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/14(月) 01:53:41.86 ID:1eES5BNUO 純粋にヘたとかつまらないだけならまだしも、原作をないがしろにするSSには熱心なアンチもつくもんなんだな
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/14(月) 14:40:55.72 ID:zUtjgxex0 駄文の羅列ほんと迷惑 頼むから止めてくれないか?スクロールするの面倒なんだよ >>92 一方通行がメインのSSは9割原作を蔑ろにしてるから不愉快だよ
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/14(月) 15:34:34.74 ID:uA8fmS+S0 一方通行が主役のSSは警戒しちゃうよな 他キャラsageないと満足に持ち上げる事が出来ないキャラだからなぁ一方通行は……
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/14(月) 16:00:42.48 ID:XQ3URfZ00 https://syosetu.org/novel/56774/171.html とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六 << 前の話 目 次 次の話 >> 171 / 178 いや更新遅くなってごめんなさい。リアルの方で色々忙しくて。 学園都市統括理事会➃ 不死の研究 木原五行の首が胴から分離した。 「………………………………」 沈黙。 それが起きたということは8人全員が把握した。木原五行の首が胴から分離した。誰かが何かをした結果としてそれは起きた。ただ、ただその程度で安心できるのかといえばそれは偽だ。 「ころせた、の?」 「――――――――――――」 奈落の呟きには誰も答えられなかった。 それは何も奈落に意地悪をしているという訳ではなく、分からなかったからだ。 誰も、木原五行の死に確信が持てなかった。 「首を落とした程度で死ぬとは、到底思えませんが」 「同感だな。あの木原五行が、この程度で死ぬとは思えない」 数十秒が過ぎ、やっと口を開いたのは親船と苦罠だ。4年前の獄天の扉ヘヴンズフィール事件――第一次人類絶対悪ビースト侵攻事件の生き残りである2人は当然人類絶対悪ビーストの脅威を知っている。人類絶対悪ビーストは残虐で、残酷で、残忍で、残刻な……そして何よりも厄介なのだ。 「だがよ、確かに首は落ちてるし血はでてるぜ?これで死んでないっていうのはおかしくねぇか?」 「油断するな、アラン。新人のお前は知らないだろうが、人類絶対悪ビーストが、あの木原五行がこの程度で死ぬとは私には思えない。何度でも言うけど、な」 「人類絶対悪ビースト、ねぇ」 「……ぐっ、流石に、そろそろ意識が朦朧としてきたなぁ」 亡本がそうぼやく。8人の中で一番重傷なのが亡本だった。薬味は壁に叩きつけられただけでノーダメージ。アランと潮岸は謎の力に押さえつけられてはいたがノーダメージ。対して亡本は五行から指弾による攻撃を受け、脇腹を弾丸が貫通してしまっている。数分後には死ぬ、などという出血量ではないが、しかし早めに処置をしなければ命が危ないことは間違いないだろう。 「……薬味クン、君なら軽く処置が出来るのではないかな」 「んー、いくら私が医療関係に太いパイプをもってるっていっても、私自身は別に医者でも何でもないんだけど」 「だが簡易的な治療くらいは出来るだろう?」 「んー」 薬味は亡本の治療にそこまでの積極性と緊急性を感じなかった。別に亡本が死んでも構わないのだ。統括理事会メンバーが減れば、その分だけ利権が増える。だから亡本は死んでも構わない。いや、むしろ死んだ方がいい。 その消極性を感じ取った亡本は、だから提案する。 「貸し1、ということでどうだね?」 「……一応伏せてたんだけど」 そう言って、薬味は亡本に近づいた。 亡本の生存と死亡。貸し1と増える利権。それらを天秤に乗せれば、わずかに亡本を生かす方に傾く。 「……問題は山積みだな」 「後2つに関してはどうしますか?」 「……超能力者予備集団セブンバックアップが人類絶対悪ビーストを確実に殺せるのならば、その議論は必要がなくなるのだがな」 「無理だろ。あいつらは所詮、超能力者レベル5の成り損ないだ。切り捨てられた枝ですらねぇ」 「……恋査を動かすーかな?」 「それは」 別に油断していたわけではない。特に第一次人類絶対悪ビースト侵攻事件の生き残りである6人は、苦罠と親船と貝積と潮岸と亡本と薬味の6人はきちんと警戒していた。 木原五行の死。胴から首が分離した木原五行。首の落ちた木原五行。けれど、本当に木原五行が死んだのかはまだ判断がつかない。 影武者だったのかもしれない。偽物だったのかもしれない。幻覚なのかもしれない。ホログラムを使っているかもしれない。他にも、他にも、他にも。様々な可能性が考えられた。 だから、ちゃんと疑っていた。木原五行はまだ死んでいない――その可能性を、きちんと考慮していた。 会話を続けながらも、警戒はしていた。 けれど、しかし、それでも、だ。 一瞬だった。 確かに全員が目を離した。 重傷を負った亡本に視線が注目した。
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/14(月) 16:01:23.99 ID:XQ3URfZ00 こ・の・瞬・間・確・か・に・、木・原・五・行・を・観・測・し・た・人・間・は・1・人・も・い・な・か・っ・た・。 故に、だった。 「んん〜、エキサイティング」 「「「「「「「「ッッッッッ!!!???」」」」」」」」 木原五行は生き返えった。 木原五行の生が観測されたから。 木原五行の死が観測されなくなったから。 「流石の私も初体験だったなぁ。でもっ!理論は証明された。これで妾はまた1つ、近づいたってわけよ」 それはまさしく悪夢であった。 「あの程度で、」 最初に呟いたのはやはりというべきか、苦罠だった。 予感はあった。予想は出来た。人類絶対悪ビースト。世界に対する、人類という種に対する脅威。 4年前はもっとひどかった。 あの時に比べたら、今回はまだましだ。 「あの程度で殺したとはもとより思っていなかったが、どんな手品だ?禁忌の木原、木原五行」 「あれ?あれあれ?あれあれあれ?」 不思議そうに、本当に不思議そうに、まるで理解できない言葉を聞いたかのように、五行は思い切り首を傾げた。 そして傾げた首をそのままに、統括理事会のメンバー8人を煽る。 「あれれ〜、みなさん、この私が何の研究をしているのか御存じない?」 「木原五行の、研究?」 「――――――まさか」 最初に気付いたのはやはりというべきか、貝積だった。 この場にいる統括理事会メンバー8人は、全員が全員大なり小なり木原一族と関わったことがある。しかしそれは結局の所浅い関わりだ。木原一族は学園都市統括理事会でも持て余すほどの闇。内に入れて飼おうとすれば蝕まれ破滅する。外から操ろうとしてもいつの間にか予想外の動きをされて破滅する。 賢明な人間であれば木原一族とは積極的にかかわらない。利口な人間であれば木原一族を利用しようなどとは思わない。 距離感が大事なのだ。 「まさか!?」 踏み込んだ距離感で木原一族と接触しているのは、統括理事会メンバーでもわずかに3人。 奈落奈波は日本という国を守護する立場であるが故に、科学そのものを体現した木原一族とそれなり以上の関わりを持つ必要があった。 今この場にいない潔癖症の彼女は、世界の全てを手に入れるための前準備を行うために、木原一族と関わりを持つ必要があった。 そして貝積継敏は能力開発分野に強い影響力を持つが故に、必然木原一族と関わることも多かった。 「馬鹿な、完成したとでも言うのか!?」 「ふっ、ふーん♪」 貝積の気付きに連鎖するように、複数人も気づく。 そして彼らが気付いたことに気付いた五行は、自慢げに、いや実際に自慢するために両手を大きく広げながら語る。 「不逃死痛カルタグラは失敗作だったけどさ。くうううううううううっ、完成したのさ!ついに!」 自慢げに、 「長かった……、本当に長かった……。何度も挫けそうになった。時に心が折れそうになった。しかし!努力は実るのだ!それを信じてあたしは頑張った」 誇るように、 「不死の研究、……この研究を完成させるために10年以上もかかってしまったのだよ。俺としたことが、時間を掛けすぎだ。全く、自分の無能ぶりが嫌になるね」 笑いながら、 「でも完成した。だが創り上げた。完全なる不死。人類の夢の1つ。あひ、ふひゃ、ぎへへへへへ!!!!!」 禁忌と呼ばれた木原は、 「本当にさぁ、頑張ったってわけよ。、色々色々研究して創り上げて。『イヴの心臓』も、『電脳生命体α』も『天への階段』も、『ドゥームズデイ』も、『キヤマー・ザナドゥ』も!ステップを重ねて、少しずる進み、…………僕は、至った」 全能であるはずの少女は、 「これが、完成品」 掲げる。 「これが、木原五行の集大成」 右手を上げる。 「これがっ、人類が求めてやまなかった、夢」 示すように、 「これこそがっ!完全なる不死を齎すっ、神域すら超えた逸品!!!!!」 天に反逆するかのうように、 「王の遺産レガリアが一つッ、『彼岸の妙薬』トキジクノカク!」 言った。 「『彼岸の妙薬』……」 「……トキジクノカク、ね」 信じられない言葉を聞いたかのように、潮岸と薬味が呟いた。 古代より完全なる不死というのは人が求めていた夢だ。それを求めた人間は数多く存在し、それをテーマにした物語も数多くある。 始皇帝は不死を求めて水銀を飲んだ。 かぐや姫は帝に不死の薬を渡した。 他にも他にも他にも、その手の話は多々ある。 「確か、トキジクノカクは田道間守が常世国で手に入れた木の実だったね。食べれば不老不死となれるというトキジクノカクを求めて垂仁天皇は田道間守を常世国に遣わせたが、田道間守が垂仁天皇のもとに帰還した時には既に垂仁天皇は崩御していた。あれはそんな話だったか」 亡本がトキジクノカクについて語る。トキジクノカクは古事記に記載されている話の中に出て来る木の実だ。科学で満ちた街で神話を語るのは滑稽でもあるが、学園都市の食糧事情の一切を管理している亡本は常に自身の食するモノについても気を使っている。その過程で、神話の食べ物の話の知識も得ている。 そもそもネクターの元ネタだってギリシャ神話に登場する神々の飲み物、ネクタルなのだから。 「だから死ななかったとでも言うのかよ。それを飲んだから、死ななかったって?」 這い蹲った姿勢から立ち上がったアランが五行を睨みつけながら言う。アランは4年前の人類絶対悪ビーストとの戦いを知らないが、人類絶対悪ビーストの異常さはもう十分わかっていた。 木原五行はヤバい。 ヤバすぎる。 何よりヤバいのは五行のここまでの行動は、そのほとんど全てがダミーであろうということだ。
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/14(月) 16:01:47.23 ID:/yyS6Q2lo NG推奨
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/14(月) 16:01:52.75 ID:XQ3URfZ00 「くひ」 こたえる様に、五行が話す。 「皆はシュレディンガーの猫を知っているかな?」 「当然知っていーるさ。学園都市の超能力開発の基礎中の基礎ーだ」 「シュレディンガー氏曰く、箱の中の猫の状態が観測するまで決まっていないなんてありえないらしい。トキジクノカクを飲んだ人間は箱の中の猫になるんだって」 「…………どういうことだ?」 「個々のクオリアは個々によって違う。物体が存在するということは個人がその物体を認識しているということだ。例えば人物Aが金庫の中に金塊を入れて扉を閉めた。この瞬間人物Aに金塊を観測することは不可能になった。観測が不可能になったということは存在が確認できないということ。つまり金庫の中に金塊が存在するかどうかはその時点で不確かになったのだよ。不確か、つまりは金庫の中に金塊が存在しているのかしていないのかは分からなくなった。量子論で言う所の重ね合わせの状態っすね。金庫の中に金塊が『在る』状態と金庫の中に金塊が『無い』状態が同時に存在しているって話だっけ。コペンハーゲン解釈。エヴェレットの多世界解釈。量子論には様々な考え方があるけど、重ね合わせっていうのはやっぱ基礎だよね。そして私の出した結論はそれに観測者効果を加えた感じかなー。やっぱ見られているっていうのが量子論に与える影響は大きいんだよ。まぁ何が言いたいかっていうと、観測されなければそこには何もないって話。物体があるかないかっていうのは結局の所個人の主観の問題なのさ。意識を構成しているのが客観じゃなくて主観なんだから当然なんだろうけど、物体αがそこに在るっていうのを人物Aが確認したとしても人物Bがそれを確認できなかったとしたらそこに物体αがあるのかどうかは発言をきくだけの人物Cからしたら不確かになるだろう?僕の造った王の遺産レガリア、『彼岸の妙薬』トキジクノカクはそれを利用しているんだ。僕の存在を世界という名の、宇宙という名の客観――俺はこれを『絶対神の視点YHVH』と呼んでいるわけだが、その客観から外す。そもそも人間という生命体は個人でその存在を維持するのは無理なんだ。誰しもが必ず、そこにいるためには自分以外の要素が必要になる。その最たるものが『絶対神の視点YHVH』だけど、もう一回いうけど童のトキジクノカクはその視点を外す。脱出するっていってもいいかな。『絶対神の視点YHVH』から脱出して、自己の存在証明理論をもっと小さい主観の中に置く。要するに自己の存在証明理論を他人の意識の中に置くわけよ。ただこれが絶妙に難しくてね。他人がそこにいる、他人の意識がそこに在るっていうのを確認するためにどう考えても自己の存在が必要だ。だけど自己の存在を他人の証明に使えば自己の存在が第一前提条件として確立されてしまう。それは違う訳よ。結局の所それじゃ『絶対神の視点YHVH』からは脱出できていない。他人の意識に自己の存在証明理論を置くためには自己の存在が第一前提条件になるっていう矛盾。これを解決するために4年もかかったってわけ。まぁ別にね?不老不死を実現させるためだけなら方法なんていくらでもあるんだよ?もうなくなったけど、人形村とかまさにその極致だったし。後はあれ、700年くらい前にはアンブロシアとかもあてらしいじゃん?でもやっぱりそれは完全な不死じゃ、ない。不死性が高くなるってだけ。それに死にたいときに[ピーーー ]ないとか自由度低すぎ。だからこそ、私はトキジクノカクを造った。他者の主観の中に自己の存在証明理論を置くことで完全なる不老不死を実現する、トキジクノカクを」 『彼岸の妙薬』トキジクノカク。効果のほどがわかりにくいと思いますが、不老不死の薬だってことを理解していれば問題ありません。 今月中にもう一回は更新します。
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/14(月) 16:02:32.87 ID:XQ3URfZ00 https://syosetu.org/novel/56774/172.html とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六 << 前の話 目 次 次の話 >> 172 / 178 本作の中で一番闇の深いキャラクターが木原五行になります。 白白白と木原五行@ 敵側にいる理解者 学園都市第一学区風紀委員本部セントラルジャッジメント第六十階『天秤の間』にて風紀委員本部セントラルジャッジメント委員長の座に座る白白白は誰にともなく語る。 「僕は君が羨ましい」 『天秤の間』には白1人しか存在していない。だから白の話を聞く人間は誰も居ない。滞空回線アンダーラインすらも入ることの出来ない風紀委員本部セントラルジャッジメント内部を盗聴することなど不可能だし、あらゆる意味で隔絶している『天秤の間』内部を観測することなど不可能だ。 が、 「君は自由だ。君は何にも縛られない風のような存在だ。君に制限はないし、君は『枠』に捕らわれない。……僕はそれが、たまらなく羨ましいよ」 例外はある。 そも、何にだって例外は存在するモノだ。 僕自身が限りなく例外な存在だから、それは分かってる。 「醜いなぁ。やだやだ、それって嫉妬?我が同類?」 王の遺産レガリアが1つ、『彼岸の妙薬』トキジクノカクを服用した五行はその存在が不確かだ。どこにでもいるし、どこにもいない。観測されなければ存在は固定化されず、しかし観測されない状態では本当にどこにでも存在できる。 それは外部とは隔絶した空間。絶対のセキュリティを誇る夢の中。人間では辿り着くことの出来ない別位相。誰かの夢の中に、人の意識の中。 あるいは『天秤の間』にさえも、五行は現れることが出来る。 観測さえされなければ、だが。 「何しに来た、五行?」 「挨拶にね、白」 親し気に、まるで親友のように近しい声で、2人は名前を呼び合った。 2人の過去は、2人の関係は、その距離感を許す。 「それとも人間操者パペットマスターって呼んだ方がいいかい?」 「全能存在パントクラトール……、昔を思い出すな……。あの頃は、良かった。……『箱庭』には不自由な自由があった。僕らは、集められた13人の天才達は、あの『箱庭』でだけは普通になれた」 「それはただの八つ当たりかよ?それとも感傷か?」 「さて、どうかな。それにしてもふざけた引用だね。わざわざ言い直すところが特に。……F/sのHFか。あれ、僕は大嫌いだよ」 「そうやって何でもかんでもはぐらかすの、細かいところまで気にするの、あなたの悪い癖よ。ちなみにこれは林の主人公の口癖だよ。分かった?」 「…………イライラするな。いったいいつの間に他人の言葉を引用しなきゃ話せない人形になった?五行」 「いひひ、そう怒らないでよ。冗談だってばよ」 「君は忍者じゃなくて科学者だろう?」 「あひゃひゃ、きっびしいなぁ、ほんとうに」 『箱庭』。 『箱庭』というのはあくまで略称であって正確な名前は別にあるが、10年前から6年前までの約5年間、五行と白の2人を含めた13人のモンスターチャイルドはそこで暮らしていた。『アガルタの惨劇』と呼ばれる事件によって『箱庭』の全てが崩壊するまで、彼ら彼女らは『箱庭』で暮らしていた。 彼ら。 彼女ら。 「やっぱり懐かしいんだ?忘れられないんだ?懐古厨の思い出補正だねぇ。どうせ何もかも嘘なのに」 「……対等な繋がりなんて、僕らのような天才には貴重過ぎるモノだよ。だからこそ『箱庭』は奇蹟で、『アガルタの惨劇』のことは後悔してもしきれない。いくら刺激が欲しかったとはいえね」 「あれ?アレイスター相手じゃ足りないんすか?」 「別にそうはいってないさ。……アレイスターは僕らと同じ格だ。油断なんてできるはずがないだろう?同じ理外人外なんだから」 「でも全然満足しちゃいない」 「………………………」 「郭夜のこと、まだ好き?」 「好きだよ?君のこともね」 『アガルタの惨劇』を生き残ったモンスターチャイルドは5人。彼ら彼女世らは今、造られた子供たちプログラムチルドレンと呼ばれている。 人類絶対悪ビースト位階総序列第3位、禁忌の木原、全能存在パントクラトール、木原五行。 風紀委員本部セントラルジャッジメント委員長、学園都市の支配者の1人、人間操者パペットマスター、白白白。 死縁鬼苦罠勢力参謀、完全予測者ジ・エンド、欠陥製品スクラップドール、天埜郭夜。 人類絶対悪ビースト位階総序列第16位『神時代へ逆行する古代人』リーダー、神の代行人エクスキューショナー、狂信者、GE13ジーイーサーティーン。 人の形をした災害、学園都市最悪の災厄、無存在シークレット、千疋十目。
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/14(月) 16:03:18.11 ID:XQ3URfZ00 「大好きだよ。輝夜姫のことは特に、……水面に映る月に手を伸ばして、それを掬って羨んだ。星の輝きに眼を眩ませながら、夜空にむって手を伸ばした。灼かれると分かっていながらも、太陽を直視した」 「アンタも辛いな。見たくもないモノがみえちゃって」 「子供のころからそうだからね。今はもう、……慣れればよかったんだけど。それに辛いのは君もだろう?いったいどれだけひっくり返した?」 「そういえば聞いてなかったっけ?どんな気分よ、感情が視えるってのは?さてさて、どんくらいだったかな。少なくとも虐殺の滅亡齎す七の子羊セプテム・アニュスを無かったことにするために1回はひっくり返したけどさ」 「視えるっていうよりは理解出来る分かるって感じかな。表情、行動、生き様、過去、生体反射、癖。そういうモノから僕は嫌でも感情を読み取れる。見たくなくても視えるんだ。眼を閉じても耳で分かる。耳を塞いでも鼻で分かる。鼻をつまんでも肌で分かる。肌を覆っても気配で分かる。だからどうしようもないんだよ。両目を包帯で巻けば防げるくらい単純な力だったよかったのに」 「月のお姫様かい?」 木原五行の才能がその科学力であるように、白白白の才能は感情の読み取りにある。 白白白は人の感情が分かる。それが、白が生来より持っていた特別。 どれだけ深く隠しても、どれだけ強く偽っても、どれだけ無感情を装っても、白を前にすればその感情が暴かれる。子供のころからそうだった。だから捨てられた。勝手に感情を読み取ってしまう白のことを、そこから隠したすべてを暴く白のことを、誰しもが嫌った。 だから『箱庭』は白にとって天国だった。だから『箱庭』にいた12人のモンスターチャイルドが白は好きだった。特に、郭夜のことが好きだった。 「じゃあ私の心も読み取ってよ!そして満たして……、俺のことを」 「………………………………………」 両手を広げて、五行は白に後ろから抱き着いた。 嘘ばかりの人生だ。 嘘をつくばかりの人生だ。 五行や白やアレイスターのような上の立場の人間は、策を練り裏をかき人を陥れ目的を達するためには手段を選ばないような人間は、必然真の意味での信頼関係など結べない。それは手の届かないモノだと、どこかで諦める。 だから白はアレイスターのことも羨む。 アレイスターには理解者がいる。木原脳幹や冥土帰しヘヴンキャンセラーは彼の友だ。 白にはそういう人はいない。いるのは敵と、敵と、敵だけだ。 十五夜は味方であって理解者ではない。 理解者はいつも敵側にいる。 「五行。僕は君が嫌いだ」 諦めたように、呟く。 「テメェに好きなヤツっていんのかよ?」 抱きしめたまま、耳元で囁く。 「君が嫌いだ。君は自由だ。君は何にも縛られない風のような存在だ。君に制限はないし、君は『枠』に捕らわれない。……僕はそれが、たまらなく羨ましいよ」 「相変わらず、くだらない視点すね」 「くだらないかな?」 「いったいいつまでそんなものに拘ってるんだい?『枠』とか世界物語キャラクターストーリー理論とか七連物語セブンスストーリーズとか、そんなの結局、アンタの見方1つじゃない。制限してるのはお前で、勝手に区切ってるのはテメェだ。緊急装置ベイルアウトで風紀委員本部セントラルジャッジメントメンバーを縛ってるあなた様が勝手に縛られてちゃわけないわけ」 「ふっ、……全くその通りだよ。だから僕はダメなんだ。僕が一番■■からの」 「最・秘・匿・事・項・じ・ゃ・ん・」 「まだ、機密情報アクセスレベルが足りないか。もう少し■■に」 「それもまた最秘匿事項、機密情報アクセスレベル0の情報みたいだっちゃ」 「青き鎖でも騙り切れないか。なら言い直そう。抽象表現なら問題ないだろ?もう少し、彼らバックアップしてもらわなければな」 「赤と青と黄金が解かれたら次は何だったけ?」 「第二段階はテストだよ。80/100で第三段階に突入するのさ」 睦言のように語り合う。後ろから抱きしめて来る五行の顔を白は頭を後ろに反らしてみた。見つめ合う。言葉はいらない。必要ない。白と五行は各々が各々の理解者だ。何も言わなくたって分かる。白は五行の感情を読み取って、五行は白の行動からその思惑を読み取って。 「寂しかったんだろ?」 一瞬、五行は黙った。 「隱ュ繧薙□から分かるよ。同窓会、本当に開きたいんだろう?見なくても分かる。君の立場は、僕も分かってるから」 「……………………………うち、めっちゃ頑張っとるんやで」 「知ってる」 「確かに私は全能だけど、全能者は全能であるが故に全能者ではない。そんな簡単なことも分からない奴らがさ、たくさんいるの」 「知ってる」 「全能の逆説オムニポテントパラドックスを解消することは出来るけど、本質的全能者になるには私の存在は軽すぎるんだよ」 「知ってる」 「顔も多くなりすぎたのよ」 「知ってる」 「この間、最後の人類悪の参謀になったよ」 「知ってる」 「成りたくもないのに地球環境保護団体ελπιςの一員になってるんです」 「知ってる」 「いつの間にか人類絶対悪ビースト位階総序列第3位になってたんだ」 「知ってる」 「生まれは悪名高い木原だし」 「知ってる」 「しかも木原と木原を掛け合わせた木原だし」 「知ってる」 「何の因果か私には木原の才能がなかったしさ」 「知ってる」 「科学力はあったけど、科学力じゃなかったし」 「知ってる」 「王も私なんだよ」 「知ってる」 「才能なんていらなかった」 「知ってる」 「立場なんてほしくなかった」 「知ってる」 「理解者が欲しかった」 「知ってる」 「……………ねぇ、白」 「何だ?」 「寂しいよ」 「知ってるよ」 敵だった。 嫌いだった。 同格だった。 だけど、仲間だった。 「同窓会ね。僕や郭夜はともかく13ともう1人は会いたがらないだろうな。僕が連絡して郭夜と会わせようか?郭夜は君に興味をもってないだろうけど、僕が言えば話くらいは出来ると思うよ?」 「……………やめとこう、そんな程度のことで、あなたに負担をかけたくなし。寂しいけど、ね。うん、もうだいぶ回復できたよ」 抱きしめていた両腕を離して、五行は白と距離をとった。椅子に座ったままの白と、その二歩後ろに立った五行。見つめ合っていた2人の視線はもう交わっていない。たった2歩で詰められる距離が、永遠に近い。 反らしていた首を元に戻して、白はまっすぐ前を見た。 そこには何もない。 そこには、何もないように見える。
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/14(月) 16:04:01.25 ID:XQ3URfZ00 「ねぇ、白」 「何だ?」 「……………………好きだよ。世界で一番キミを××してる」 悲しそうに、五行は言った。 「あぁ、俺も好きだよ」 だからこそ、その答えは何よりも空虚だった。 「知ってる」 知っていた。 五行は知っていた。 それが白の限りなく優しい、 (だけど『私を』じゃなくて『人を』でしょ) 真実の虚言であると。 「ばいばい白。次に会う時は、今度こそ敵同士だ」 「本質的な繋がりは、そう簡単に切れるモノじゃないさ、五行」 「……………大嘘憑き」 それだけ言って、因縁の2人の距離は無限に開いた。 「で、だ」 1度、話が途切れたことを確認して、僕は五行に質問する。 「侵蝕率は?」 「赤が8割、青が7割、黄金が7割くらいかな。もうちょっとすればいけるんじゃないの?」 「計画エフギウムは?」 「あっちは私達のことを認識してるし、その意味じゃ第一段階の『道』を作ることは終了したって感じ?影響を与えることも出来てるし、悪くなんじゃないの?」 「順調か」 「リスクは常にあるけどな。ある意味でのルール違反は、常におかしてわけだしな」 「それくらいは許容範囲内だ。万が一が起これば、……はっ、それは痛み分けだろ?」 「死ぬのは怖くない。怖いのは、誇りを失ったまま生き続けることだ、ってわけね。まっ、こっちは任せといてよ。学園都市の中の、第一学区の中の、風紀委員本部セントラルジャッジメントの中の、第六十階『天秤の間』から出られないあなたの代わりに、私が世界を飛び回っておくから」 「あぁ、信頼してるよ。僕の、……いや、あえて言い直すか。今旬だろうしな」 戯れにもいいだろうし、な。 軽いテストにもなるし。別枠だけど。 「さあ、戦って五行。僕の、親友……。僕の、英雄……。なんてな」 僕の台詞に、五行は笑って答えて、それで消えた。 読者に対して出せる情報と出せない情報が存在するので、情報を制限しながら書いたこの話はすごく時間がかかりました。 さて問題。 今話の中に11のパロネタ、セリフのオマージュがある。 君達はいくつ分かったかな? 次の更新は2月中旬までには。
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/14(月) 16:04:37.75 ID:XQ3URfZ00 https://syosetu.org/novel/56774/111.html とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六 << 前の話 目 次 次の話 >> 111 / 178 まず次回予告があり、次にあとがきがあり、最後にまた予告があります。 当然、とある闇の中の超能力者をすべて読んでいることが前提の内容ですのでネタバレ満載です。 それでもいい方はどうぞ。 あとがき&次回予告 ↓ 8月21日夜、学園都市超能力者レベルファイブ序列第三位、電撃使いエレクトロマスターの超能力者レベルファイブ、超電磁砲レールガンの御坂美琴は表舞台から姿を消した。 「お姉様……」 姿を消した御坂美琴を必死に探す白井黒子。そんな白井に協力する初春飾利、佐天涙子、そして上条当麻達。あらゆる伝手を使い、人に協力を求め、情報を探しても御坂美琴の姿は一向に見えない。 「……………みさか……………みこと?」 そんな白井達の前に現れた幼女。幼女の名はフェブリ。フェブリはなぜか、御坂美琴の名前を知っていた。 「試運転としては十分な成果だ」 蠢く悪。 「ムカついたぜ。この俺が実験台扱いとはなァ!!!」 圧倒的な力を見せつける超能力者レベルファイブ。 「……肯定。[ピーーー ]なら、やはり御坂美琴です」 暗躍する超能力者予備集団セブンバックアップ。 そして、 「あれ?黒子じゃない。どうしたの、こんなところで?」 白井黒子は『御坂美琴』と再会する。 求めたものはかつての平穏。変わり果てた少女を前に、少女は『闇』を知る。
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/14(月) 16:05:31.59 ID:XQ3URfZ00 第一部 第二章 革命未明サイレントパーティー 開幕 あとがき まず、第一にお礼を申し上げます。 ここまで私の作品『とある闇の中の超能力者』を読んでいただきありがとうございました。 いやぁ、この作品を始めたのは2015年07月14日(火) 18:39なので実に1年以上も一章を書いてきたわけです。一章だけを書いてきたわけです。 …………ではここで作品の内容を振り返ってみましょう。 話数 111話。 合計文字数 562569文字。 平均文字数 5114文字。 UA 57781。 お気に入り 157件。 感想 104件。 総合評価 266pt。 平均評価 6.41。 調整平均 6.60。 うん!長い!長すぎる! なにこれ?第一章のみで50万字越えとか馬鹿なの?死ぬの? ……冗談は置いておいていや本当に最後まで読んでくれた人には感謝しかありません。特に感想をくれた方や評価をしていただいた方。例え酷評でも低評価でも作者の励みになっています。 この場を借りて、もう一度だけお礼を述べさせていただきます。 本当に、本当にありがとうございました!!!!! では作品内容にでも触れてみましょう。 この作品を私が書いたきっかけなんですが、私は昔『とにかく御坂美琴の闇堕ち作品が読みたい』と思っていたころがありました。 ところがネットの海を探しても御坂美琴闇堕ち作品はそんなにありませんでした。ヤンデレールガン系は除きます。あれは面白いですが闇堕ちでは無い。 探して探して見つけた作品も短かったり消化不良だったり完結してなかったりで結局満足できた作品は2chのとある作品とハーメルンのとある作品だけでした。 ならしょがない。もう自分で書いちゃおう!と思ってこの作品の設定を練り始めました。 一行プロット組んでSプロット組んで設定を考え、原作を何度も読み、オリジナルキャラクターの思惑を考え、そうしてすべての材料がそろったと判断して書き始めました。 目的がとにかく御坂美琴を闇に落とすことだったので、もっとも御坂美琴が鬱な状態である樹形図の設計者ツリーダイアグラム破壊の一件からの分岐にしました。 そこからMNWと融合した御坂を書いたり、一方通行の魔神化を書いたり、ミサカ19090号の動きを書いたり。 いや、本当に一章完結できるまでが長かったですね。 私ももちろん頑張りましたが、いつ終わるかわからなかった読者様のストレスはそうとうのものだったのではないでしょうか。ごめんなさい。 今回の一章の反省点としては、やはり長さですね。絶対能力進化実験レべルシックスシフト編完結だけでここまで長い作品は禁書二次史上初でしょう。 少なくとも私は初めて見ました。 今後はもっと簡潔に、少ない文章量にしたいですね。……………無理かなぁ。 ちなみに私は作者ですが異常なほどの設定厨であり中二病患者です。 この作品、本文は500000字以上ありますが、設定集だけでも150000万字あります。 つまり、それぐらい設定が多いのです。本編中に入れたかった武器とか兵器とか詠唱とかあるのに全然使えなかったからこの後の章で使いたいですね。
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/14(月) 16:06:05.99 ID:XQ3URfZ00 一章にはテーマが特にありません。私の位置づけでは一章はチュートリアルなので、勢力とか世界観の説明とかオリジナルキャラクターとかのキャラ付けに一章を丸々使った感じです。 さて、二章はまたまた暗い展開が続きます。鬱展開です、たぶん。 よかったら二章も続けて読んでくれると嬉しいです。 それでは、今回はこの辺りでページを閉じていただいて、 次回もページをめくっていただける事を祈りつつ、 本日は、ここで筆を置かせていただきます。 ……さて、二章に取り掛からなければ。 「まずは、その理想を打ち砕く!!」 上里翔流。 超能力者でも魔術師でもなく、原石でもなければ魔神でもない、そしてオッレルスのような魔神の成り損ないでも、幻想殺しのような特別な力もたない真の意味で平凡な高校生。 特別な力もなく、特殊な立場もなく、特異な家系もなく、優れた頭脳も、莫大な財力も、絶対の暴力も持たないごく平凡などこにでもいる高校生。 そんな上里翔流はとある夜、お菓子を買うためにコンビニに向かっているところで一人の全裸パーカー少女と出会った。 「私は世界を救わなくちゃならないの」 どこにでもいる平凡な高校生『上里翔流』と世界の救済を願う少女『緋異巛新撰ひいかわしんせん』。 二人が出会い、物語が始まる。 これは学園都市の『外』で起こる神域の物語。
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/14(月) 16:06:44.71 ID:XQ3URfZ00 【 えっ? これだけじゃ味気ないって? 何々? ただでさえ展開の遅いこの物語は完結できるのかって? 僕もそれは気になっていたところだ。 なんせ、この作者は莫大で膨大な設定を作ったくせに物語の展開が遅すぎる。 たぶん このままじゃ5年たっても終わらない。 だから、まぁ、そうだな。 可能性の一部を、確定している未来を、僕がお前らに見せてあげよう。 感謝 し ろ よ 読 者 共 《前略》
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/14(月) 16:07:23.34 ID:XQ3URfZ00 だが、 「やれやれ。いたいけな少女を多人数で滅多打ちにするなんて、君達私にどれだけ嫉妬してるのさ」 世界有数の超強大な多組織連合による一方的な攻撃を受けてもなお『嫉妬』はまだ死んでいなかった。 とはいえ、 「翔流。このままいけば」 「あぁっ!このまま遠距離から一方的に攻撃すれば倒せるはずだ」 効いていないわけではない。そう上里は判断した。そしてそれは隣で上里はサポートし続ける金火も同じらしい。 そう、立ちすくむ『嫉妬』は明らかな傷を負っていた。 あの時とは違って、多くの人間が犠牲になった『七罪の咎人一斉討伐作戦』の時とは違って、幻覚でもなんでもなく確かな傷を負っていた。 「全員攻撃を切らさないで!!!このままいけば勝てる!!!!!」 金火が全軍を鼓舞する。ともすれば今すぐにでも逃げ出しそうな恐怖の中でそれでも戦えるのは、みんながいるからだった。 独りでは、一人ではきっと無理だった。 「新たな天地を望むか?」 だから、上里も戦える。戦う。この世界を守るために、世界を絶望で終わらせないために。 なのに、 「嫉妬する。私は嫉妬する。嫉妬して嫉妬して嫉妬する。妬ましい!羨ましい!君たちの結束に嫉妬する。君達の能力に嫉妬する。君たちの信頼に嫉妬する」 不気味な言葉を『嫉妬』が呟いて、 そして、 「羨望嫉妬ギルティクラウン」 《中略》 「一つ勘違いを正しておくよ」 『嫉妬』は言い放つ。すべての人間を絶望の底に落としつくす、真実ことばを。 「私の――――――『嫉妬』の能力は、すべてを掻き消すことじゃないのさ」 その言葉に、全軍全ての動きが止まった。耳が聞き届けたその言葉は、つまり上里達が知力の限りをつくして立案した作戦の全てが無に帰すことを示していた。 「憤怒」 最初の一歩で今まで与えた傷が消えた。 「色欲」 次の二歩目で仲間割れが始まった。 「怠惰」 続く三歩目で多くの人が倒れた。 「強欲」 さらに四歩目で立場を失った。 「傲慢」 この五歩目ですべての干渉が無意味と果てた。 「暴食」 終わりの六歩目は上里以外の存在を喰った。 「これが『嫉妬』だよ」 最期の七歩目で『嫉妬』が目の前に来ても上里は動けなかった。 《中略》 「あっ、がッッッ!!!」 「まだ生きているのか?その生き汚さに嫉妬する」 『嫉妬』がそういった途端に『強欲』が発動し、上里の中の生き汚さが、生への欲求が消えた。 「……ふ、ざ―――――――けっ」 「その怒りに嫉妬する」 『嫉妬』がそういった途端に『強欲』が発動し、上里の中の怒りが消えた。 「っ、ァっ!ぁぁぁあぁあああああああああああああああ!!!!!」 「その憎しみに嫉妬する」 『嫉妬』がそういった途端に『強欲』が発動し、上里の中の『嫉妬』への憎しみが消えた。 「――――――ぅ。ぅぅぅうううううううううう………………………………」 「その悲しみに嫉妬する」 『嫉妬』がそういった途端に『強欲』が発動し、上里の中の悲しみが消えた。
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/14(月) 16:07:58.33 ID:XQ3URfZ00 「……………………………………………」 「その無感情さに嫉妬する」 『嫉妬』がそういった途端に『強欲』が発動し、上里の中の無感情な部分が消えた。 「――――――――――――――――――――あっ、ぁあああああ!!!!!しっ、しッ!しっとォ……『嫉妬』おおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」 「その後悔に嫉妬する」 『嫉妬』がそういった途端に『強欲』が発動し、上里の中の後悔が消えた。 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」 「嫉妬する」
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/14(月) 16:08:38.21 ID:XQ3URfZ00 くくっ。まぁ、こんなところでどうだ。 心配するなよ。これはあくまで未来における可能性の一つ。 作者が気まぐれを起こせば、変わる可能性だってあるさ。 とはいえ、まぁ。 このままいけば、未来は変わらないだろうが、 な [ピーーー ]よ 読者共 】
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/14(月) 16:09:44.23 ID:XQ3URfZ00 とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六 << 前の話 目 次 次の話 >> 175 / 178 ついにエタったか……と思いました? 私は思った。危ない所だった。 空白の主と大悪魔@ 原初の0.5 初まりの領域において『空白の主』が根本的な敗北をすることはあり得ない。初まりの領域は原初の世界であり、全ての基礎である場所だ。そして『空白の主』は初まりの領域の住人。全てが繋がっている初まりの領域の住人である『空白の主』を[ピーーー ]ということは、つまり全時間軸に存在する全人類を全滅させるということに他ならない。 故に、『空白の主』を殺したいのであれば全時間軸に存在する全人類を全滅を許容するするしかない。それを否定したいのであれば、絶対に不可能であるが初まりの領域から『空白の主』を引き離すしかない。全時間軸の全人類の生存は逆説的かつ無条件に『空白の主』の生存を証明し、しかしながら『空白の主』の生存は人類の生存を証明しない。理不尽な相互依存関係がそこにはあるのだ。 「から、からから、からからから!」 ただ、もちろんの事、単純な実力のみで考えれば現イギリス清教最大主教アークビショップである大悪魔コロンゾンは『空白の主』に勝まさる。アレイスター=クロウリーの原型制御アーキタイプコントローラーによって区分けされた時代アイオーン。イシス、オシリス、そしてホルスの時代アイオーンすらも超越した、さらに先の世界に存在する存在。 全力の魔神複数柱からすらも逃れることの出来る、別位相ですらない『新たな天地』という新世界から地力で脱出可能な力を持つ存在。 大悪魔コロンゾン。 拡散の本質を持つ、真なる邪悪。 神話上の存在でありながらあくまでも人間でしかない『空白の主』では決して勝てない敵。 にも拘らず。 「可哀想。可哀想。七ん十可哀想七奴だ。大悪魔五六ンゾン」 這い蹲っていたのは、膝をついたのは、汗を流しているのははローラ=スチュアートだった。 「ぎ、ぐ」 その様を、 かの黄金夜明S∴M∴の創設者の1人であるサミュエル=リデル=マグレガー=メイザースが目にすれば、驚愕のあまり心臓を停止させたかもしれない。 その様を、 近代西洋魔術という形式を作り上げた学園都市の王であるアレイスター=クロウリーが目にすれば、幻と断じたかもしれない。 だって、想像できるか? あの大悪魔が、あの大悪魔コロンゾンが、 アレイスターですら制御できなかった、メイザースをも出し抜いたあの大悪魔コロンゾンが、 たかが『空白の主』程度に敗北しているなど。 「人類七ん十見捨十十四まえば、私七ん十、五の『空白の主』程度、楽二殺せるの二」 言うまでもなく、そして何度でも繰り返すが。 大悪魔コロンゾン最大主教ローラ=スチュアートの実力は『空白の主』を上回っている。確かにこの初まりの領域は『空白の主』の庭だ。だが、だから何だ?その程度の有利ではかの大悪魔との差は埋められない。 だから、当然別の要素があった。ありていに言えば、大悪魔コロンゾン最大主教ローラ=スチュアートは非常にらしくないことをしていた。自然分解、拡散の性質、本質的な邪悪。 それが大悪魔コロンゾンだというのに。
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/14(月) 16:11:42.84 ID:XQ3URfZ00 とある暗部の御坂美琴(2周目) 作者:一二三四五六 原作:とある魔術の禁書目録 タグ:R-15 残酷な描写 とある科学の超電磁砲 暗部 上条当麻 鬱 独自設定 中二病 闇堕ち 群像劇 執着 依存 オリジナル展開 原作キャラ死亡 御坂美琴 絶望 シリアス 狂気 オリキャラ多数 裏切り 策略 ▼下部メニューに飛ぶ 大切なモノを護るために、あなたは何処どこまで捨てられますか? 大切な人を助けるために、あなたは己の命身体を棄すてられますか? 自分の魂魄凡てを捧げても喪うしないたくないモノ、ありますか? 無明の闇に堕おちていけ。罪に穢けがれし気高き魂よ、汝なんじが生に幾多の禍難かなんが在あらんことを希こいねがって。 ※亀の歩みよりも展開が遅いです。スピーディーな展開を求める人には確実に合いません ※多数の視点で物語が進むため展開が非常に遅いです。 ※この小説は本編最新刊はもとより超電磁砲最新話、マンガ一方通行最新話、超電磁砲PSP、蛇足またはとある事件の終幕 、クロスオーバー小説、偽典・超電磁砲 、アニメ超電磁砲一期二期オリジナルエピソード、エンデュミオン、頂点決戦、群奏活劇、バーチャロン、とある魔術の禁書目録SP、一番くじ限定電撃鎌池和馬10周年文庫、学芸都市SS、能力実演旅行SS、とある魔術の禁書目録PSP、画集小説、下敷き小説、コールドゲーム、アストラル・バディの設定が入り混じっています。 ※『白衣の男』と御坂美琴J 脅迫までは一話2500文字それ以降は一話5000文字になっております。 ※あらすじがver5になりました。前のあらすじが見たい人は活動報告の方へどうぞ。 ※題名を『とある闇の中の超能力者』から『とある暗部の御坂美琴』に変更しました。 ※ネット小説だからこそ出来るギミックを各所に取り込んでいます。 ※前書きとあとがきには重要な伏線を仕込んでいます。必ず表示させてください。 こんな感じでオリキャラたちがメタ視点で読者を煽りながら禁書キャラや鎌池作品を蹂躙していくだろう話を応援してくれ
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/14(月) 19:04:16.44 ID:ga/2O4GbO とんだ茶番だな
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/15(火) 03:08:05.85 ID:6u9dTz//0 >>94 つーかSSそのものよりもその手のSSに群がって来る信者が気持ち悪くて仕方ない
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sega]:2019/10/15(火) 14:51:41.82 ID:kGUnaKhE0 上条さんの誕生日って公式で明かされてたっけ?
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/15(火) 18:36:43.81 ID:2+4dxV5n0 「は、ははは、はっ、くっッ!」 だが笑う。 無様な様を晒しているのは大悪魔コロンゾンの方だというのに、それでも笑う。 人間ではない人外はそもそも視点が違う。 最初から全てを超越している存在は絶対的にスケールが違う。 それを、表しているかのように。 「この霊媒アバターでは、これが限界なりけるかしらね」 局地的な勝利が全体的な勝利につながるとは限らない。スポーツの団体戦において1勝が全体の勝ちを意味しないように、ここでの敗けは許容できるものでしかない。けれど、そんなことを知らない『空白の主』にとってこの勝利は違和感にしかならなかった。 論ずるまでもなく勝てるはずがない。できるのは時間稼ぎで、それさえもできるかは分からない。 (アルフは何を四十一るのか七……。五の化物を相手二出来るの八、同じ化物の君四か一七一の二) アルフ。 『空白の主』の友人であり同類。 秘匿された真名はbyucgjビュックグジュール・dqsディクェス・finprovzフィンプロブズ・mekhatwxメカトゥウィークス。 ともすれば、魔術側の最高戦力である魔神すらも凌駕するかもしれない存在。 来てくれれば、心強い。 「からからから。……なぜ、殺三七一?……大悪魔五六ンゾン。ま三か、人類を守っ十一るわけでも七一だろうに」 「……いひ、我は悪魔、大悪魔コロンゾンなりけるのよ」 正直なところを言えば、圧されているのはこちらの方だ、と『空白の主』は思っていた。コロンゾンの思惑が一切分からない。敗北した?負けた?まさか!そんなわけがない。コロンゾンの強さを『空白の主』は十二分に知っている。た・っ・た・2・週・間・前・に・手・に・入・れ・た・ば・か・り・の・情・報・に・よ・っ・て・コ・ロ・ン・ゾ・ン・の・強・さ・は・更・に・補・強・さ・れ・た・の・だ・。 例え血に伏せ地に臥せた状態とはいえそれでもコロンゾンの強さは何も変わらないのだ。 生命の樹セフィロトの隠されし一線、深淵アビスを守る大悪魔。 この世界■■における、頂点の一角。 「メイザースとの契約はまだ切れていない。である以上、私に貴様は殺せない」 「……かっ、からからから!!!メ一三ース!黄金夜明S∴M∴の三ミュエル=リデル=マグ零ガー=メ一三ースか!!!から、だ十す零八、だ十す零八随分十素晴ら四一事を四十九零た。ま三か、五の私の安全が、そん七語十で保障三零る十八ッ!」 『空白の主』と人類種は敵対している。かつて、全ての人類の祖である『空白の主』は全ての人類を愛していた。だが『空白の主』は愛する子供達に裏切られた。『空白の主』が完全に清浄なる存在となり、元いた場所に帰るために作った子供達は、よりにもよって逆に『空白の主』を縛ってきた。 子と親という強い強い関係性を利用して、縛ってきたのだ。人間が名を用いて契約を結ぶように。その繋がりを利用して。『空白の主』と人類種は流血ではなく流れる血によって繋がっているから。 「だったら殺せる!この私でも、人間でも、大悪魔たる君を追放できる!!!」 故にこそ、『空白の主』は初まりの領域などという辺鄙な場所にいる。魔神のいる『隠世』でもアルフのいる『最終血戦城カステルル・ブラン』でもない、常世に対する一切の干渉を制限されたこの初まりの領域に。 エイワスは例外中の例外だ。エイワスも結局のところ常世では霊媒アバターなしに大規模な行動はとれない。そして何よりも契約に縛られる。そう、かつてとあるご令嬢フロイラインと交わした契約は、今もエイワスを縛っている。 メイザースによって縛られたコロンゾンと同じように。 「あぁ、あぁ、あぁ!!!子供に罪を押し付けるまでもない!大悪魔を打ち倒すという功績を立てれば、私の罪は禊がれるッ!!!」 その喜びを抑えることはできなかった。 あるいはこの世で最も罪深き存在に唆される前の『空白の主』であれば、こんな風に欲望を露わにすることはなかったのかもしれない。人類が人類となった理由は賢くなってしまったからだ。つまるところ知恵を付けたから。その理由こそが善悪の知識の木の実を食べてしまったから。故に『空白の主』は楽園を追放された。 この出来事を、――――――失楽園ペルディトゥス・パラディススという。 「――――――戻れる、あの場所に。愛しの楽園に、もう1度ッ!!!今度こそ、私は神に成れる!」 賢さは罪だと定義されている。欲望を持つことは罪だと言われている。今より先に行きたいと、もっと楽になりたいと、誰かのためではなく自分のためにと、それらは全て、全て罪深いのだと、そう言う人がいる。神が人を楽園から追放したのは、人が神になることを恐れたからなのか。神が人に知恵の樹の実を食すことを禁じたのは、人が神の座に辿り着くことを懼れたからなのか。 『空白の主』は、自覚していない。 人類には罪がある。 傲慢スペルビア。嫉妬インウィディア。憤怒イラ。怠惰アケディア。強欲アワリティア。暴食グラ。色欲ルクスリア。 これを7つの大罪といい。 そして莠ャ螟ェ驛主・??ェ邯コ隴壹?螟ァ豐シ遘倶ク?驛弱?菫晄怏謚?閭ス縲弱じ繝サ繝ッ繝ウ繝サ繧キ繝ウ縲によれば、彼は莠コ縺ョ蜈ォ縺、逶ョ縺ョ螟ァ鄂ェを決して自覚できない、無自覚の罪の集約体を『雋ャ莉サ霆「雖』と定義した。 「だから君は此処で死んで?私のための踏み台になって?」 『空白の主』は雋ャ莉サ霆「雖している。彼女は物事を正しく見ていない。人類全体を生贄としか見ていない。当然の供仏。奉仕されることが当たり前と思っている。最も不浄であるが故に、最も清浄に憧れた『空白の主』。 こんな詩を知っているだろうか。 菴輔′鄂ェ縺九o縺九j縺セ縺吶°。 遏・諱オ縺ョ螳溘r蜿」縺ォ縺励◆縺九i縺ァ縺ッ縺ゅj縺セ縺帙s。 菴輔′鄂ェ縺九o縺九j縺セ縺吶°。 陋??逕倩ィ?縺ォ閠ウ繧定イク縺励◆縺九i縺ァ縺ッ縺ゅj縺セ縺帙s。 縺セ縺?鄂ェ縺後o縺九j縺セ縺帙s縺。 縺昴l縺薙◎縺後≠縺ェ縺溘?鄂ェ縺ェ縺ョ縺ァ縺。 『空白の主』は分かっていない。なぜ楽園から追放されたのか。なぜ人類が反逆したのか。与えられる側だった『空白の主』には奉仕する側の気持ちは分からないし、与える側の気持ちもわからない。
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/15(火) 18:37:39.65 ID:2+4dxV5n0 「くっ、くっくっくっ」 だからこそ、『空白の主』にはコロンゾンが怖く見えるのだ。恐れていて、畏れている。誰・か・に・頼・る・こ・と・で・し・か・危・機・を・脱・し・て・こ・な・か・っ・た・『空・白・の・主・』は・根・本・的・に・弱・者・だ・。 齢をどれだけ重ねても弱いまま。 実力は上がらず、弱い者いじめしかできない。 コロンゾンの思惑も分からない。 「あっはははははははははははははは!!!!!!」 思わず、といった調子であった。 まるで1秒先に来る絶望を知らない赤子を見る様に、コロンゾンは大笑いした。 「……何が、おか四一?」 「くっくっ、おかしいと思わなきかしら」 「一った一何について!?」 止めを刺そうとしないのは反撃を恐れているから。 会話を続けようとしているのは時間稼ぎのため。 神器召喚でコロンゾンを攻撃しないのは悪魔殺しの業を背負いたくないから。 『空白の主』には覚悟がない。だから、簡単に諦めて、次を探してしまう。『空白の主』は何1つとして背負っていないから、軽い。8月21日のあの日に木原脳幹と木葉桜十五夜を逃がす必要はなかったはずだ。一方通行アクセラレータに対する干渉ももっと深くできたはずだ。 世界をあるべき姿に還そうとしているコロンゾンとは格が違う。 自分だけのために戦うモノは、弱い。 「くっくっ、私がここに来た理由は、貴様と戦うためでは、ない」 「…………………………………………………………………」 『空白の主』には見えていなかった。意図的に無視をしていたわけではない。ただ純粋に、その存在を認識していなかったのだ。地を這う蟻は意識しなければ気付けないように、空を飛ぶ蚊もまた意識しなければ気付けないように。『空白の主』からすればあまりにも矮小すぎる存在ゆえに、『空白の主』はその存在を忘れていた。 なぜコロンゾンは初まりの領域に来た? その理由ははたして何だった? 「警告、第二二章第一節。命名、『神よエリ、・何故私を見捨てたのですかエリ・レマ・サバクタニ』――――――完全発動まで一秒」 「ッッッッッ!!!!!?????」 いきなりだった。 妙に機械的な声がした瞬間には、もうその赤き閃光は『空白の主』に直撃していた。 だが、 「…………………………………出来ない」 閃光が晴れると同時に、『空白の主』は呟く。あれほどの一撃が直撃してなお無傷なのに、それでも。 認められないかのように、信じられないかのように。 大悪魔コロンゾン。三三三。拡散。自然分解。共倒れ。 それはあり得ない。 『空白の主』の対が、 いや、いいや、いいや!!! 「不可能二決まってるっ!人類で八私を、五の原初の片割零たる『空白の主』八殺せ七一っ!親殺四のパラドッ九ス。五の全時間軸二繋がっ十一る初まりの領域で八、人類の手で八私八殺せ七一!」 だからインデックスは此処にいるのか? わざわざ、そういう風にセッティングした?『空白の主』の対が、その『破壊の象徴』が、共倒れの相手が、インデックスだと? イギリス清教第零聖堂区必要悪の教会ネセサリウス所属の魔導書図書館。 そんなことは認められない。 そんなことは認められない! 格というモノがある。 オリンピック選手とアマチュア選手なら共倒れするのか? 最新鋭の戦闘機と旧式の装備を持った歩兵は共倒れするのか? いや、あり得ない。だから絶対にあり得ない。インデックスでは『空白の主』の対にはなれない。なのに、なのに、それなのに! なぜ、コロンゾンはそこまで『空白の主』を下に見る! 「馬鹿、二」 怒りが発露する。 暴風雨のような怒りが、畏れを上回る。 「馬鹿二するのも大概二四六ぉ!!!五の、五の私八っ、『空白の主』八ッ!原初の一、初まりの片割零、全十の人類の母!!!勝十七一、人類じゃ、君のバッ九アップを受けた十四十も!險ュ螳八覆ら零七一!!!!!五の、私の五十を、ど五まで下二見零八ッ!大悪魔、五六ン」 「な・ら・魔・神・な・ら・」 それは至極単純な答えだった。 「――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――まさか」
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/15(火) 18:38:21.20 ID:2+4dxV5n0 知らず、冷や汗が流れた。 インデックスの脳内に記憶されている一〇万三〇〇〇冊の魔道書を正しく使えば魔神に至ることが出来るとされている。一方で、インデックス自身が魔神になることは不可能だとされている。その理由はインデックスが魔翌力を生成することが出来ないからだ。 なら、インデックスが魔翌力を生成できるようになれば? もしもインデックスに付けられている3つの枷が全て外れるような事態に成れば? インデックスは分離した。今この初まりの領域にいるのは仮想人格ナンバー006『哀れな子羊アニュス・デイ』だ。 空虚な心と不完全な器。乗っ取るには、霊媒アバターとするには十二分すぎた。 「――――――魔導書図書館、Index-Librorum-Prohibitorum」 恐怖が、 死が、 そこにある。 「これならばメイザースとの契約には反しない」 元来、悪魔とは狡猾であるモノだ。メフィストフェレスなどが有名であるが、悪魔とはその弁舌で人を騙し、その弁舌で人を誘惑し、その弁舌で人を誘導する生き物だ。契約の穴を見つけることなど簡単にできる。 策はなった。 そのためだけに、コロンゾンはわざわざインデックスを『殺した』のだ。 赤・き・楔・は・掻・い・潜・ら・れ・た・。 「殺せ」 一言だった。 単純な命令だった。 絶対の死刑宣告だった。 勝てないと、本能的に分かってしまった。 因果応報。罪には罰を。盛者必衰。兵どもも夢の跡。 だから、 「ここからは私が受け持ちますdeath。我が朋友、『空白の主』」 ブンッ、と空間がぶれた。 そして、いた。 黒のスーツに黒のズボン、黒のマントと黒の指輪、黒の靴、黒の髪、黒の手袋、黒の襟、黒のモノクル、そして白い肌と紅い唇と瞳。 救援は最適のタイミングで現れた。彼は『空白の主』を庇うように前に立った。 その男の名を、アルフといった。 「第六物語シックスストーリの最終敵ラスボスであるか。そしてこの大悪魔と同じ人類外」 「同じとは人聞きが悪いdeath。私はあなたほど悪辣ではないdeathよ」 交わされた会話はそれだけだった。 そして戦いが始まった。 生命の樹セフィロトの奥に潜む悪魔と1700年前に人類種に敗北し常世から逃走した『空白の主』の息子の末裔の戦いが始まった。 さながら、最終決戦であるかのように。 さーて、『空白の主』の正体、もう分かりましたよね?全世界の神話でも五指に入るレベルで有名な人間ですよ。
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/15(火) 18:39:41.17 ID:2+4dxV5n0 https://syosetu.org/novel/56774/76.html とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六 << 前の話 目 次 次の話 >> 76 / 178 いつもよりちょっとだけ長いです。 気付いた二人@ 神速の対応 一方通行と『空白の主』@ 『空白の主』 『それ』を真に正しく理解できた人間は学園都市内に二人いた。 まず一人目は学園都市の主アレイスター=クロウリー。 彼は、『それ』に強く関わっているが故に、『その領域』の人間と敵対しているが故に、『その行為』に気付くことが出来た。 「…………………………………………………………………………………………………………………………、」 ほんの一瞬だけ、 刹那の時間だけアレイスターは逡巡した。 そして、 「頼めるか」 短い問いかけがあった。 『任せておけ、アレイスター』 その問いかけに短い返答があった。 そして、問いを答えたヤツはすぐに『窓のないビル』から去り準備を始めた。 さらにもう一人。 学園都市第一学区に存在する風紀委員本部セントラルジャッジメントの最上階天秤の間にて風紀委員長白白白も『それ』に気付いていた。 「さすがに、予想外だな……」 確かに、見る程度ならできるかもしれないとは思っていた。それを見ることは可能かもしれないとは考えた。 だがまさか操れるとは、操作できるとは思っていなかった。 認識が甘かったと言えばそれまでだが、おそらくこの事態を予想できた人間は世界に一人もいないだろう。 かの統括理事長もこの事態は予測できないはずだと思った。 だから、これは後手に周っているわけでは無い。挽回はまだ可能だ。 「まさか、このタイミングで切り札を切ることになるとは……」 椅子に座ったまま受話器を取り、特殊なリズムで特別な番号を押した。 風紀委員本部セントラルジャッジメント。その地下第11層を住みかとする存在に、『切り札』に、命令を与えるために。 プルルというワンコールの音すらならずに電話がつながった。 「最果さいはて、出番だ」 意識を引きずられないようにしながら白は声をかける。 「おやぁ」 妙に間延びした声で、電話口の人間は答えた。 「私が表に出るのは大覇星祭の時ではなかったんじゃ?」 「事情が変わった」 「事情がぁ?」 「あぁ」 心の準備を決めてから、白は通話の相手である最果にその事情を話す。 下手をしたらそれだけで死ぬかもしれないという緊張感をまとわせ、風紀委員本部セントラルジャッジメントの切り札の一人に、白は言った。 「学園都市第一位の超能力者レベルファイブ、一方通行アクセラレータが位」 「行こう」 白の台詞は最後まで言われることはなかった。 電話相手の最果が一方通行アクセラレータが何をしたのかに気付いたからだ。 「座標は?」 「ポイントA18だ。だが、その前にポイントX000で『彼』とぶつかるはずだ。君には『彼』を足止めしてほしい」 「………………………ほぉ」 ほんの少しだけ不満の色が見られた。とはいえ、ほぼ軟禁状態の最果にとって外にきちんと出られる機会を逃す気はない。 一方通行アクセラレータがいじった後を見ることが出来ないのは残念だが、『彼』と戦えるというのならば、そこまであからさまに反抗する必要もないだろう。 「装備は?」 「全部許可する」 「専用武器も?」 「あぁ」 「………………………ふふ、了解ぃ」 楽しそうに笑いながら、間延びした声で最果は笑った。 本当に、楽しそうに。 「迎えは奇鬼喜きききに行かせる。速やかに行動しろ」 それだけ言って白は電話を切った。 天秤の間を沈黙が満たす。 その沈黙の中でもう一度白は受話器を手に取った。今度は、十五夜につなげるために。 予期してはしないだろうが一方通行アクセラレータは世界の理に干渉してしまっていた。 だからこそ、この二人は全力を挙げて動いたいた。 これ以上、もうこれ以上いじられてはたまらない。 世界の強度がどれくらいもつのかはわからないのだから。 学園都市統括理事長、風紀委員本部セントラルジャッジメント委員長。 非常に珍しいことだが、この時二人の思惑は一致していた。 まぁ、だからといって協力できるということにはならないのだから。
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/15(火) 18:40:17.78 ID:2+4dxV5n0 「…………………………………………………………………………………………………ぁ?????」 気がつけば白い空間に立っていた。 「こ、……こは?」 白。 白く白く白い。 ただひたすらに白しかないこの空間。 上を見ても下を見ても右を見ても左を見ても前を見ても後ろを見ても白。 白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白白。 そんな空間に一方通行アクセラレータはいた。 「なンだ?俺は、確か…………」 記憶をたどる。 今を理解するために、過去を探る。 一つ一つ順番に、たど その時だった。 「お・や・」 声が、かけられた。 「ここ二に人間が来るとは珍四一しい」 声をかけられる。日常的な何も不思議ではないことだ。 ただそれだけだったのに、 それなのに、 「ッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!??????????」 全身が泡立った。 肌が、脳が、身体の全てが無意識に緊張状態に陥った。 「誰だッッッ!!!!!」 声をかけたのが誰かなど知らない。そんなことは分からない。 ただ一つわかる。 理解できる。 学園都市第一位の超能力者レベルファイブ、一方通行アクセラレータで理解できる。 「オマエは……っっっ」 わかる。 これがそうだ。 これが、これこそが、 恐怖。 人が抱く根源の衝動。 恐・怖・。 「誰だ……っっっ……!!!!!」 その問いに、彼女は答えた。 「私か一い」 目の前の存在は見た目だけを見れば極一般的な少女の姿をしていた。 「私は、そうだね」 だが違う。 見ればわかる。感じる。認識できる。 こいつは、 こいつは、 こいつは、 絶・対・に・人・間・じ・ゃ・な・い・!!!!!!!! 「『空白の主』。そう、呼ばれる存在さ」 敵だ。 あきらかに、絶対に敵だ。 敵。 それも、一方通行アクセラレータの敵という意味では無い。 そんな小さな意味では無い。 危機感が絶望が終焉の気配が迫って募って嗤っている。 この目の前の女は、 人・類・の・敵・だ・!!!!! 「『空白の主』……………………」 ヤバい、と体感で分かる。 強さの質が違う。 言うならば運動会の徒競走で勝つために、参加者全員の足をへし折るようなものだ。 立っているステージが違う。 存在の位階が違う。 これはそう、 神とか呼ばれる存在だ。 現に、 現に現に現に。 「本名自体は別二あるけどね。けれど、君は見た十五六私の名を呼べる段階では七一ようだ四、『空白の主』十呼んで九零たまえ」 この存在は一方通行アクセラレータを見ていながらにして、一方通行アクセラレータを見ていない。 視線は確かに一方通行アクセラレータの方を向いていながらも一方通行アクセラレータをとらえてはいない。 もっと別の何かを見ている。 もっと奥の何かを見ている。 もっと違うモノを見ている。 見られている。見られている。見られている。 「―――――――っ、ぁ」 怖い。恐怖。
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/15(火) 18:41:04.94 ID:2+4dxV5n0 御坂と戦っている時だってここまではっきりとは感じなかった。 心臓を直接握られているような、脳に爆発物を入れられたような、そんな恐怖心。 対抗しようと思えること自体が奇跡とさえも思える、そんな感情。 なんなんだこいつは? そもそもどこなんだここは? 御坂美琴は、あの戦いはどうなった? 「ん?」 いつのまにか『空白の主』と名乗る女(?)が一方通行アクセラレータの目の前に来ていた。 「ッッッ!!!!!」 グイッ!顎を持ち上げられて、 「何を恐零る必要があるんだ一?五五二来たと一う事八程度の差八あ零世界の仕組三を理解四十一ると一う事だ六う?」 などと言われた。 「五の世界の深奥の秘密。秘匿さ零た最奥の領域。明かさ零十八七ら七一その存在を知ったのだ六う」 続けて『空白の主』はこう言う。 「魔術の領域二住ま一、そ四十五五二至零たのだ。君二も何か明確七願一があるのだ六う?言っ十三七三一。何、遠慮する必要七ど七一」 願い? 願いだと? 「ね――――――がい……?」 「そうだ。願一だ」 一方通行アクセラレータは思考する。 願い。たしかにそれはある。もともと絶対能力進化実験レべルシックスシフトなんて馬鹿げた計画に参加したのは一方通行アクセラレータ自身が絶対能力者レベルシックスという領域を目指していたからだ。 絶対能力者レベルシックス。現状の学園都市に存在する超能力者レベルファイブよりも上の強度の、おそらく神ならぬ身にて天上の意思に辿り着くものSYSTEMに至ることすら可能なその領域に至ること。 それが目的だった。願いだった。 本当に? 「ね………………が、――――――い?」 高純度の麻薬を吸ったように脳がくらくらする。とめどない思考が体中をめぐる。 目的、目的、目的。 一方通行アクセラレータは思考を続ける。 絶対能力進化実験レべルシックスシフトに参加し絶対能力者レベルシックスに至る。それが一方通行アクセラレータの目的であったことは間違いがない。 でなければ劣化量産品クローンを二万体も[ピーーー ]などという怠い作業を続けるわけがない。 だがしかし、そもそもなぜ一方通行アクセラレータは絶対能力者レベルシックスになろうと思ったのか。 絶対能力者レベルシックスになりたいと思っていた? 違う。一方通行アクセラレータは別に絶対能力者レベルシックスになりたいとは思っていない。 研究者の実験を断れなかった? まさか、一方通行アクセラレータは学園都市第一位の超能力者レベルファイブにして闇の中の住人だ。その気になれば参加する実験など取捨選択は容易だ。 では単純に絶対能力者レベルシックスという領域に興味があったのか? (…………………………………………………………………………………………いや) それも違う。確かに絶対能力者レベルシックスには興味があった。この力はどこまで行くことが出来るのか、自分はどこまで強くなれるのか、そういうことに興味がなかったと言えば嘘だ。 でもそれは絶対能力進化実験レべルシックスシフトに参加する理由としては弱いように思えた。力への執着のみで絶対能力進化実験レべルシックスシフトに参加したわけでは無いのは直感的に理解できた。 であれば、いったいどうして一方通行アクセラレータは絶対能力進化実験レべルシックスシフトに参加したのだろうか。 思考する。 答えは出ない。 思考する。 答えは出ない。 思考し続ける。 答えは出ない。 答えは出ない。 答えは分からない。 学園都市一の頭脳を持っている一方通行アクセラレータでも、その問いに対する答えは、自らが絶対能力者レベルシックスを目指そうと思った理由が、その始原の衝動がわからなかった。 黙っている一方通行アクセラレータを不可解な思い出見つめていた『空白の主』はいつまでたっても黙して語らない一方通行アクセラレータを前に一つの事実に気付いた。 「……………………ま三か七一のか?」 驚愕の表情で『空白の主』は呟く。 ありえない、と内心で『空白の主』は思った。 『この場所』に来る生命が何の願いも持たないなどあり得ない。ただの興味や好奇心や偶然で来れる場所ではないのだこの場所は。 確固たる意志があり、絶対に達成したい目的があり、そのために死に物狂いで行動し、死をいとわずに動き、それでやっと至ることのできる場所なのだ。 確かにその『位階』に至ったのであれば『願い』は叶ったといってもいのかもしれない。だが、『この場所』に至るという事はそもそも世界の根幹自体を作り直したいと思ったはずだ。 ならば、願いがないなどあり得ない。 「なら仕方が七一。願一を口二四七一のであ零ば、強制的二見せ十もらうまでだ」 数年ぶりに『この領域』に来た生命がいるのだ。その生命の願いを知りたいと思うのは『空白の主』にとって自然なことだった。 なにせ、この領域に来れたという事は世界の仕組みを、重なった位相を理解したという事なのだから。 最・初・の・一・人・として長き時を生きる『空白の主』の興味を引くのも当然だった。 スッと一方通行アクセラレータの顎に手を当てたまま、『空白の主』は一方通行アクセラレータの瞳をじっと見つめた。 その瞳の奥にある一方通行アクセラレータの記憶を覗き見るように。 だが、 「……………………………………………へ?」 作者の最大の罪は作品を完結させないことですから!!!!!
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/15(火) 18:41:30.18 ID:2+4dxV5n0 明らかな戸惑いの声が『空白の主』からもれた。 予想もしていなかった事態が起きたのだ。 「超能力者……?ま三か、魔術師で八七一のか……!?」 『空白の主』にはとある先入観があった。それは『この領域』に来る生命は程度の差はあれ『魔術師』であるというものだ。 『魔術師』でなければこの場所には来れない。これは永き時を生きる『空白の主』にとってほとんど確定事項であった。数少ない、それこそ数人の例外を除けば『科学』に属する人間が『この領域』に来れるはずがないのだ。 だからこそ『空白の主』は一方通行アクセラレータの内面を覗き込んだ時戸惑いをあらわにした。 一方通行アクセラレータが科学の街の総本山、アレイスター=クロウリーが作り出し、支配する学園都市に属する超能力者であることに気付いたから。 「八っ、からからからからから!!!!!そうか、至零たのか!!!」 それに気づき、だから連鎖的に『空白の主』はもう一つの事実に気付いた。 つまり、魔術師では無い科学の側の人間が、超能力者がここに至るという事の意味だ。 「うん?気付一十一七一のか?なら、私が教え十あげよう」 アレイスター=クロウリーが目指したいたものの終着の形の一つ。それが、もうすでに再現されていたのだ。 つまり、 「おめで十一方通行ア九セラ零ータ。君八もう絶対能力者零ベル四ッ九ス二至っ十一るよ」 あまりにも簡単に『空白の主』は言った。 二万を殺してなれるはずの絶対能力者レベルシックスに一方通行アクセラレータはなっていると。 「そ四十、その先の領域二もね」 そのあまりにも簡単な言い草に一方通行アクセラレータは逆に確信を思えてしまった。絶対能力者レベルシックスになっているという確信を。 「ふむ、だが五のまま君が帰っ十四まうのも面白九七一七」 だから一方通行アクセラレータは一瞬戸惑った。一方通行アクセラレータは絶対能力者レベルシックスを目指していたが絶対能力者レベルシックスになりたかったわけでは無い。それを先ほど確認したばかりだ。 ならば、これから先は何を目指すのか、どうすればいいのか。 「気乗り四七一が、うん久四ぶり二戦う十するか」 そんな思考を巡らせていると唐突に『空白の主』が戦闘の意思を示してきた。 「さぁ構えたまえ一方通行ア九セラ零ータ。その力を私二向かっ十ふるっ十九零」 自然体だった。 あくまで自然体で『空白の主』はそういった。攻撃をしろ、と。 だが動けない。 明らかに隙だらけなのに感覚として感じる明確な『圧』のせいで体が動かない。 「来七一の七らば五ちらから行九ぞ?」 いつまでたっても攻撃してこない一方通行アクセラレータに辟易したのか、『空白の主』はボクシングのようなファインティングポーズをとり明確に攻撃態勢を作った。 そして、その超絶至近距離から『空白の主』の軽いジャブが一方通行アクセラレータに振るわれ、 「そこまでです」 いつのまにか現れていた風紀委員本部セントラルジャッジメント委員長補佐木葉桜十五夜が『空白の主』の手を掴んでいた。 新キャラ『空白の主』。 この物語の中枢に位置する生命体です。 いまさらと言えば今更すぎるんだけど…… この作品、オリジナルでやった方がいいような気がしてきた……。 いやっ!最後まで書きますけどね!!!
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/15(火) 18:42:41.08 ID:2+4dxV5n0 https://syosetu.org/novel/56774/77.html とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六 << 前の話 目 次 次の話 >> 77 / 178 寄り道します。 白白白と木葉桜十五夜@ 緊急命令 常世涯最果と木原脳幹@ 足止め 十五夜まんげつが始まりの領域で『空白の主』の腕をつかむ五分前の出来事だった。 「案外苦戦していましたね」 8月21日午後10時02分、十五夜は上条たちが戦っていた下水道の上の空間、地上で彼らの戦いの様を見ていた。 当たり前の事実だが分厚い地面で遮られている下水道のことを地上から見ることは普通出来ない。 といってもそれはあくまで一般人の話だ。この学園都市には普通から外れた人がいくらでもいる。 例をあげれば透視能力クレアボイアンスの能力者。はたまた視界共有リンクサイトの能力者。あるいは反響測定エコロケーションの能力者なんかも地下深くの下水道の様子を把握できるかもしれない。 そして当然のように十五夜も分厚い地面で遮られた下水道の様子を把握できる人間の一人だった。 「決着はついたようですし、私も動きますか」 手元に用意した二つのストロビラを弄びながら十五夜は小さくつぶやいた。 そも、十五夜がここに来たのは埋娥と百目が倒した後の上条と白井を回収し、その首筋へと設定済みのストロビラを打ち込むためだ。一応、保険として万が一二人が負けたときは代わりに上条らを倒す役目もあったが、二人が勝った以上それをする必要はない。 故に、十五夜の役目はストロビラを打ち込むことのみ。それに限定される。 視線を下にやる。 上条たちがいるであろう下水移動を地面を透視してみるように、顔ごと視線を下に下げる。 「この距離ならいけますね」 意識をほんのわずかに集中させて、十五夜は上条たちのもとへ向かうために空間を渡ろうとする。 その時だった。 ドッガアアァアァアアアアァアアァアアアアアアァアアァァァァァァアアアアンンン!!!!!!!!! という爆発音が響き、十五夜の立っている地面が沈んだ。 「…………?」 その爆発によるダメージは十五夜には存在しない。 そもそも今の爆発は十五夜を狙ったものではないのだから。 「爆発……ですか?いったい誰が……?」 まず疑ったのは御坂美琴による粉塵爆発。白の言う通りにことが進んでいるのだとすれば、この空気を哭なかせる爆発音は御坂美琴の一撃のはずだ。 だがそうすると疑問が二つ。爆発音が近すぎるという疑問。さらに沈み込んだ地面の謎。粉塵爆発ではこの現象は起きない。 だから違う。この爆発は御坂美琴によるものではない。 次に疑ったのは苦罠の勢力。御坂という存在を除いた時、もっとも可能性があるのはどう考えてもあの二人。死縁鬼苦罠と天埜郭夜。 しかしここでも疑問が二つ。 すなわち誰を対象とした爆発なのか?そして、誰によっておこされた爆発なのか? このタイミング、この規模。 上条たちの戦闘が終わったタイミングで10トントラックいっぱいに積まれたC4が一気に爆発したようなこの事態。 ここに存在する意思は、誰のものだ。 そんな思考を続けている十五夜のもとにピリリ、と電話がかかってきた。 「委員長……?」 ワンコールで十五夜は電話をとった。 今かかってくるのならばそれはすなわち今かけなければならないということだ。 通話をつないだ十五夜の携帯を通して、白の冷静な、そして焦った声が聞こえた。 「緊急事態だ、十五夜。第一から第八までの拘束リミッターの解除を許可する。すぐに解除してくれ」 「っ……!了解しました。すぐに」 その言葉に、十五夜は事態の深刻さを知った。 十五夜は自らの力に十の制限をかけている。その制限をかけた状態でもほとんどの存在には負けることはないが、白はその拘束を解けと言った。 つまり、それほどのことが起こってしまっているのだ。 十五夜が全力を出さなければ対応できないような、そんな事態が。 「第一jyuiru八拘束リミッターmoia解tvewiw除xbyvc。解swku除hs印コードhixa6829cfdyl3057miw16v824hwojd95022gcihre34uei5xdab6」 世界に出力される言語がぶれた。十五夜の口から放たれた言葉がぶれた。 すなわちそれは十五夜が常人ではないという証。 すなわちそれは十五夜が超能力者でも魔術師でもないという証。 すなわちそれは十五夜が種としては人間の枠に当てはまらないという証。 そう、十五夜は人であって人では無い。 生まれつきであるその力は十五夜の人としての生を木端微塵に打ち砕いていたから。 「『空白の主』が一方通行アクセラレータに干渉している。最悪全面戦闘になってでも一方通行アクセラレータをこっちに引きずり出してくれ。今ここで手札の一つを奪われるわけにはいかない」 「『空白crbf主』……っ!!!了isoa解vbyo、私全bcyw力nqimx駆使wxbok一方通行アクセラレータvwbyo奪byow取!」 「頼む」 会話は一分にも満たなかった。いつもならばだらだらと回りくどい話をする白が最小の会話で事態を伝えたのだ。 それは白が焦っているという証で、それだけ自体が緊迫しているという証だった。 「………溜vsy息znewnn」 一息だけ吐いて。 十五夜は世界位相を壊してその領域に侵入した。
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/15(火) 18:47:14.72 ID:2+4dxV5n0 そしてもう一人。 もう一人風紀委員本部セントラルジャッジメント側の勢力から動いている人間がいた。 「来たぁ」 常世涯最果とこよのはてさいはて。 学園都市風紀委員本部セントラルジャッジメントに属する風紀委員本部セントラルジャッジメントの封印戦力のうちの一人である。 その戦闘力は風紀委員本部セントラルジャッジメントの中でも最低ランクであるが、 その特異性は風紀委員本部セントラルジャッジメントの中でも最高ランクである。 その最果に対して相対する存在は人間では無かった。 『ふむ。君は何者だね』 犬。 それもゴールデンレトリバー。 イギリス原産の大型犬である。 「ははぁ。知ってるくせにぃ」 その犬の名は木原脳幹。 学園都市に5000人ほど存在する木原一族の中でもさらに異端の存在。 「でもまぁ、確かに戦闘前には一度名乗りを上げたほうがロマンがあるのかなぁ?」 アレイスター=クロウリーの飼い犬。 この街の番犬。処刑犬バニッシャー。 今は亡き『木原』の始祖ともいうべき七名の科学者に外付け演算回路を取り付けられたことで生まれた、異色にして異端の存在。 それが木原脳幹だ。 「学園都市風紀委員本部セントラルジャッジメント封印戦力が一人常世涯最果とこよのはてさいはて。風紀委員本部セントラルジャッジメントの中の暗部の中の暗部。いうなればローマ正教における神の右席みたいなぁ?」 風紀委員本部セントラルジャッジメント封印戦力。 その名を聞いて脳幹はその身をふるわせた。 『なるほど、ここで出てくるのか』 当然、恐怖によるものではない。ガチャガチャガチャガチャ!!!と脳幹の体に合うように造られた様々な装備がサイコロ展開図のように完璧かつ完全に組みあがっていったのが理由だ。 対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメント。 刃物、銃弾、砲弾、レーザービーム、液体窒素、殺人マイクロ波、ドリル、パイルバンカー等の無数の兵装で作られた『理解できない領域』の存在を撃滅、殲滅するための兵器群。 モノの数秒で、その必殺が最果の前で組みあがった。 『だが、私も君程度に足止めされるわけにはいかないのでね』 脳幹と最果は互いに一瞬だけ視線を交わした。 脳幹は既に最果がここにきた理由を察していた。封印戦力、風紀委員本部セントラルジャッジメントの暗部の中の暗部、秘中の秘。 このタイミングでその存在が出てくるのならば、それは当然足止めしかないだろう。 『空白の主』もとへ脳幹を向かわせないための足止めだ。 『悪いが、押し通らせてもらおう』 やらせるわけにはいかない。 ここで足止めを食らえば、彼の計画そのものに重大な亀裂が入ってしまう可能性があるから。 それはいただけない。 彼の使いとして、それはいただけない。 善悪で言えば悪で好悪で言っても悪。 脳幹は自らの行いをそう定義しながらも、止めるつもりはなかった。 『なぁ、君は対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントを知っているかね?』 その一言を合図としたように、脳幹が対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントを起動させて、 「ポチッ」 最・果・が・自・爆・し・た・。 『ぬっ!!!?』 さしもの脳幹もわずかに動揺した。 最果が手に持った何らかのボタンを押した瞬間に最果がたっていたところを中心とした爆発が広がったのだ。 さいわいのことながら起動させた対魔術式駆動鎧アンチアートアタッチメントから放たれた数十以上の誘導ミサイルがその爆発と衝撃をいい具合に中和したが、それにしたって予想外過ぎた。 まさか自爆するなど。 それも代えがきかなくもない雑兵ではなく、おそらく風紀委員本部セントラルジャッジメント内でもかなりの地位にいる、重要なポジションに位置するだろう封印戦力の一人が自爆するなどと。 あまりにも予想外過ぎた。 それこそらしくもなく動揺してしまうほどに。 『……………………』 沈黙があたりを満たす。 いかに脳幹がアレイスターの使いであり、異常ともいわれる光景を見慣れていようとも、不可解なこの自爆を前には沈黙しか返せなかった。 『……………………』 あらゆる行動には意味が生じる。 人を[ピーーー ]のには人を[ピーーー ]だけの理由が、 人を救うのには人を救うだけの理由が、 そして、人が死ぬという事にも必ず理由がある。}
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/15(火) 18:47:51.76 ID:2+4dxV5n0 つまり、風紀委員本部セントラルジャッジメント封印戦力が一人、常世涯最果が自爆したのも必ず何らかの理由がある。 最果の目的は脳幹の足止め。それを思うのならば、最果の自爆は脳幹を足止めするために行われたとみるべきだ。 しかし、自爆によって稼げる時間は多くても30秒といったところだろう。 となれば、足止めという目的は果たせないように思える。30秒程度の足止めで何が変わるというわけもあるまい。 つまり、 『なるほどな』 小さく、呟いた。 眼前の光景が示すその意味を理解したから。 最果の行動が示す意味を分かったから。 『なるほど』 脳幹はもう一度小さくつぶやいた。 最果の自爆が原因であたりに充満した煙が晴れる。 それと同時に、 「ポチッ」 ま・る・で・先・ほ・ど・の・焼・き・増・し・の・よ・う・に・も・う・一・度・最・果・が・自・爆・し・た・。 くそっ!!!私の技量じゃ脳幹先生の偉大さが表現できない!!! あああああああ、くそっっっ!!! 唯一先生に直接脳幹先生の偉大さを教わりたいぃぃぃ!!!!!
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/15(火) 18:48:44.03 ID:2+4dxV5n0 https://syosetu.org/novel/56774/78.html とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六 << 前の話 目 次 次の話 >> 78 / 178 もう本当に申し訳ないんですけどたぶん今回の話つまんないです。 なんでつまんないかと言うとこの話だけじゃ何がどういうことなのか意味不明の理解不能でちんぷんかんぷんだからです。 あとがきで話の流れだけは書いておきます。 69話目の 御坂美琴と一方通行@ 再戦 神亡島刹威と浣熊四不象@ 悪の正義 の前書きで「ラストバトルの開幕だ」的なことを書いてしまいましたね。 ごめんなさい、あれは嘘になってしまった……。 木葉桜十五夜と『空白の主』@ 神域の戦い 一方通行A 次元の違い 純白にして漆黒の空間で少女が二人、明確に対峙していた。 「今、わり十楽四んで一た十五六七んだけど?」 これ以上の不快なことはない、と言ったような口調で『空白の主』は言い放った。無粋にも『空白の主』の手を掴んでいる十五夜まんげつに向かって。 「そうですか」 だからどうした、とそんな口調で十五夜は言い放つ。一方通行アクセラレータを攻撃しようとした『空白の主』に向かって。 「もう一度言うけど、ど一十九零七一か七」 ビキビキッという音が出そうなくらい青筋を立てて不機嫌そうに『空白の主』は言う。全力で掴つかまれた手を放そうと努力しながら。 「いやですね。私はあなたを止めるように言われているので」 だが、十五夜が決して『空白の主』の手を離さない。手をひけば同じように十五夜も手を押して、手を前に出せば応ずるように手を引く。力をこめられたその手を振りほどくのは通常戦闘能力が並以下でしかない『空白の主』には至難の業わざだった。 「あぁ、そう」 だから足りない力を技術で補った。 すう、と緩急をつけながら掴まれた手を引きつつ、そのまま空いている別の手でうまく十五夜の手を誘導して切り離す。腕力という力では敵わないが経験という名の補助があれば対抗できる。 そして、そのまま数メートルほど後ろに飛びずさり十五夜と一方通行アクセラレータから距離をとった。 「七ら、四ょうが七一か七。私は本当二戦闘二八不向き七んだけど」 いつのまにか『空白の主』の手に光り輝く剣が握られていた。短剣というには長すぎるが長剣というのもはばかられる長さの剣。柄もあり峰もあり、そしてその鈍い輝きがその剣が真剣であることを如実に示していた。 「グラム……いや、クラウ・ソラスですか」 一瞬だけ勘違いしたが、その剣の名を即座に十五夜は看破した。 魔剣グラムではなくアイルランド民話におけるクラウ・ソラス。もっとも日本で知られるクラウ・ソラスにはかなりの拡大解釈は混ざりが加えられて、原典のものとは異なった剣になってしまっているのだが。 「原典と八程遠一け零ど…………今八五の方が一一、か七ッッッ!!!!!」 前述したとおりクラウ・ソラスはアイルランド民話に登場する剣である。クラウ・ソラスの意味は「輝く剣」、すなわちアイルランド民話における「輝く剣」というものの集合概念がクラウ・ソラスという剣なのだ。 もともと、民話の中に登場するクラウ・ソラスは「輝く剣」という称号こそあれ発光によって敵の目をくらます、自動追尾機能によってひとりでに敵を打倒す、隠れた敵を見つけ出す剣などというものでは無かった。それらはすべて拡大解釈であり様々な民話を合わせたものにすぎないのである。 クラウ・ソラスは多くの民話に登場する魔法剣の総称であり、物語ごとに異なる解釈がなされているものなのだから。 そして、『空白の主』はそんなクラウ・ソラスを投げた。 「ッッッ!!!」 前述したとおりクラウ・ソラスは剣である。槍では無い、剣である。投げるではなく斬るという用途で使われる剣。貫くというよりは切り裂くという方法で敵を傷つける剣。 本来ならば投擲物とうてきぶつとしては機能しない。 本来ならば!!! 「クラウ・ソラス+グングニル=万物貫九輝煌の剣クラウ・グングニル・ソラス」 『空白の主』は戦闘が得意ではない。だがそれは『空白の主』が戦闘を出来ないという意味にはならない。 そもそもこの領域を住みかとする『空白の主』は万物すべてを自由にできる権限があるのだから。 だがそれは十五夜にしても同じこと。 「遅い」 放たれた万物貫く輝煌の剣クラウ・グングニル・ソラスが消えた。跡形もなく、塵も残さずに。きれいに消えて消え去った。 最初から存在しなかったかのように。 初めからそんなものは無かったかのように。 万物貫く輝煌の剣クラウ・グングニル・ソラスはこの領域から消えた。 「先につばを付けておいたのは我々の方です。『空白の主』、あなたの方こそ引くべきではないんですか」 「からから、冗談一うね」 前述したとおり『空白の主』が形成したクラウ・ソラスは原典から遠く離れている。自動追尾機能、隠れた敵を見つけだす索敵機能等が『空白の主』の作り出したクラウ・ソラスには付けられていた。 グ・ン・グ・ニ・ル・の・万・物・貫・通・能・力・と・共・に・。 「五の領域二直接干渉する九十すらでき七一雑魚二五の領域二自力で辿り着一た一方通行ア九セラ零ータを扱える十八思え七一。大人四九私二渡四たほうが世界のため二七る四?」 ここまで言えばわかると思うが『空白の主』は神話の装具を具現化し、原典たりうる神話の装具を現実への流出具合を勘案してある程度いじくることが出来る。 もともとは「輝く剣」という称号があり、物語ごとに違う解釈であったクラウ・ソラスに後から上書きされた概念である『自動追尾機能』と『発光』などを付け加えたのがいい例だ。 そして、そこに別の概念を付け加えることも。 「管理者気取りですか。この引きこもりが」 万物貫く輝煌の剣クラウ・グングニル・ソラス。 この剣はクラウ・ソラスの亜種とグングニルの二つを合・成・して作られた神具だ。 発光及び自動追尾並びに索敵の能力を持つクラウ・ソラスに万物貫通能力を持つグングニルを付け加えた武器。 クラウ・ソラスだけでは十五夜の自動防御機能のようなものを貫けないかもしれないと考えた『空白の主』によって放たれた武器。 まぁ、結局のところ万物貫く輝煌の剣クラウ・グングニル・ソラスは跡形もなく掻き消されてその効力を発揮しなかったわけだが。 「からから、それを言うの七ら、前時代の遺物五そ引っ込んで一六四」 その言葉に、十五夜の顔が固まった。 どんな個体にも禁句というものはある。触れられたくない部分、触ってほしくない部分、触れられたくない記憶、思い出すことも回想する事さえしたくない記憶。 十五夜のその部分に『空白の主』は触れてしまった。 当然、わざとだが。
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/15(火) 18:49:13.74 ID:2+4dxV5n0 「…………………………」 いつの間にか十五夜の手に一つの竹槍が握られてた。 何の変哲もない、どこにでもあるような竹の槍。 あまりにも武器としては頼りなく、あまりにも普通な槍。 一見するとそれはこの場で使われる武器としてはふさわしくないように思えた。 「ヌ九十メロン四リーズの一つ。四スラウの時計八使わ七一のか一?」 『空白の主』は十五夜が持っている武器のことを知っていた。 懐中時計型万能毒製造霊装『シスラウの時計』。 風紀委員本部セントラルジャッジメント開発部隊総隊長魅隠罠明みかくれみんみんによって作られたヌクテメロンシリーズと呼ばれる霊装の一つ。 ヌクテメロンとは2000年近く前にティアナのアポロニウスと呼ばれる人物によって書かれた魔導書である。この書にはヌクテメロンの魔神と呼ばれる各時間に対応した72の魔神の名が書かれており、『シスラウの時計』はその72の魔神のうちの一柱『シスラウ』の話をもととして作られた霊装なのである。 ヌクテメロンの魔神『シスラウ』は12の時の内4時に対応する魔神であり、その性質は毒。あらゆる毒をつかさどる毒の魔神が『シスラウ』なのである。 その話をもとにして作られたからこそ十五夜の保持する懐中時計型霊装は『シスラウの時計』と呼ばれ、万能の毒を生成することが出来るのだ。 「まぁ、『四スラウの時計』七ん十弱一霊装八私二十って効果八七一んだけど」 十五夜は『シスラウの時計』を使うつもりはなかった。 何故ならば、『シスラウの時計』の効果や術式はとっくに『空白の主』に知られているからであり。 そして、何よりも 人・類・の・信・仰・が・生・み・出・し・た・魔・術・な・ど・ど・い・う・も・の・は・決・し・て・空・白・の・主・に・効・か・な・い・の・だ・か・ら・。 手に握った竹槍を構える。この竹槍は勝ちたいという数多の人の願いのこもった武器。それゆえに十五夜が持てば天下無双の武器となりうる。 そして、十五夜は槍を突き出して、 言った。 「殺されたいようですね、阿婆擦れ」 「からから、やって五らん四無能女」 一瞬後 世界が揺れた。 その光景を何よりも遠いすぐそばで動けないままに眺めている男がいた。 「…………っ」 強さとは何か、そんな酷くどうでもいい、だが根源的な問いが浮かぶ。 『強い』という事が戦闘能力に直結するのならば、今一方通行アクセラレータの目の前で戦っている二人よりも『強い』生物を一方通行アクセラレータは見たことが無い。 例えば、ミサカ10032号は一方通行アクセラレータと御坂美琴の戦いを神話の戦いに例えた。 例えば、一方通行アクセラレータは『空白の主』のことを神だと直感した。 だから『空白の主』と互角に、いやひょっとしたらそれ以上の領域で戦っているだろう女のことを見て一方通行アクセラレータは一つの単語を思い浮かべた。 神々の黄昏ラグナロク。 北欧神話における最終戦争。 世界に数多存在する終末の在り方の一つ。 科学の街の住人でありながらそんな戯言が思い浮かぶほど、二人は『強く』強かった。 強さ。 絶対的で究極的で圧倒的な強さ。 それを求めて参加した実験絶対能力進化実験レべルシックスシフト。 二万人を殺してでも得たかったチカラ。 それがとても小さく思えてしまうほど二人の戦いはレベルが違った。今までやっていた戦闘が子供の遊びに思えるほどに、御坂美琴との一進一退の攻防すらただの児戯に思えるほどに。 位階が違い、強度が違い、世界が違い、すべてが違った。 次元の違う場所にいるのだ。 『空白の主』によって絶対能力者レベルシックスの先の領域に足を突っ込んでいると断じられた一方通行アクセラレータよりも、高い場所に。 彼女達はいた。
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/15(火) 18:49:49.68 ID:2+4dxV5n0 「クソッ………………」 小さな罵声が漏れた。 我慢できなかった。一方通行アクセラレータは誰も自分に勝てないと思っていた。対抗できるヤツはいても結局は勝つと思っていた。 その考えが一瞬で覆された。 たった二人の戦いを見るだけで『上』を認識できた。 自尊心が、自意識が、ガラガラと崩れるような感じがした。 一方通行アクセラレータが思考している間にも二人の戦いは続いている。一目見るだけで一般人でも神具だと認識できるような武具が空間を裂いて現れ、十五夜に向かって無数に投下される。 それに対して、十五夜はただ手を振り払い、竹槍を振るう。それだけでもとからそこになかったかのように神域の武具は消えていく。 何がどうなっているのか、その現象がどんな理屈をもって行われているのかひとかけらもわからなかった。 科学の街『学園都市』の中でも最強の能力者であり、最高の頭脳を持つはずの、一般人よりもはるかに深い『闇』の中に住む一方通行アクセラレータですらつかめない。 その領域はきっと人間という生命体が一生をかけて辿り着くための努力をする神域なのだ。 強さとは、最強とは、いったい何なのだろうか。 心に浮かぶ感情はいつの間にか恐怖から悔しさに変わっていた。 今回の話の流れ 十五夜が『空白の主』と戦闘した。 これだけ覚えてもらえれば十分です。 おもしろいと感じた人はすごいありがたいですが、読者視点で私が読むと「はぁ?」ってレベルでつまんなかったので、久しぶりに更新間隔を早めます。
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