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とあるシリーズ(禁書目録&超電磁砲)SS雑談スレpart21
1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/11(金) 14:28:45.61 ID:FIPdzGG+O とあるシリーズのSSについて語り合うスレです! SSについての雑談、愚痴などご自由に! ただし、過度のキャラ論争やカプ論争は他の人の迷惑になる為、始まってもスルー推奨でお願いします! また、自スレ批評を依頼するSS作者は酉などを用い自分が作者だと分かるようにしましょう! 批評してもらった場合は必ずお礼を申し奉りましょう! 次スレは>>990 を踏んだ人が立てましょう! 難しい場合は再安価、またはボランティアでお願いします! ・関連スレ とあるシリーズ(禁書目録&超電磁砲)SS雑談スレpart20 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1531406668/999 お勧めの禁書・超電磁砲ss教えろください25 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1443075924/ エロパロ http://mercury.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1389942201/ SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1512607505 SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1570771725
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/12(土) 06:12:36.75 ID:Zy9ifaBV0 >>1 ありがとう 乙でした
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/12(土) 13:04:01.00 ID:LWtzbtr60 https://syosetu.org/novel/56774/161.html 解説回です。 物語は進みません。 パトリシア=バードウェイ@ 斃たおすべき『敵』の名は 初まりは一通のメールだった。 それがパトリシアの全てを狂わせた。 送り主不明のメールを無警戒にも開いてしまったあの時から、パトリシアの運命は普通から外れた。 『第七回DEG』への招待状。 始まったのは7人の人間によるイギリス全土を舞台にした殺し合い。 正しく常軌を逸していた。 誰もが狂って、正常じゃなくなっていた。 生き残るために何だってしていた。 家族を、恋人を、友人を、見知らぬ誰かを、通りかかっただけの他人を護るために、本当に出来ることをした。 ある男はたった一人の人間を[ピーーー ]ためだけに最新式対空ミサイルで300人の罪の無い一般人がのる飛行機を撃ち落とした。 ある母は隠れ潜んだ敵を[ピーーー ]ためだけに致死率90パーセント越えの細菌をイギリスの首都、ロンドンにばら撒いた。 ある少女はわずかとなったタイムリミットに自暴自棄になって水道の水に猛毒を混ぜ込んだ。 どうしようもなかった、とパトリシアは思う。 今でもそう思う。 それぞれがそれぞれの最善を尽くすために戦って、抗って、願って、それでも――――――。 それでも、終わらなかったのだから。 曰く、『さぁ、FDEGを始めようか』。 七分の一の、四十九分の一の生存者。 欧州全土を1000年は再起不可能なまでに破滅させた終滅の第四物語フォースストーリー。 そのメインテーマは『犠牲』。 その系統は『デスゲーム』。 そのタイトルは『とある少女の喪失話譚』 そしてラスボスの役割ポジションを担っていたのは、 「………………………人類絶対悪ビースト」 人類絶対悪ビーストと呼ばれる存在達がいる。 『人類』という種に対して『絶対』的な『悪』を為す存在達。 国際連合によって秘密裏に認定された最重要指名手配EX存在。 現在の世界では17の存在がその認定を受けている。 人類絶対悪ビースト位階総序列第一位T。 『悪意』の悪徳を体現する人類絶対悪。世界で起きる大事件の半数以上に関わっているとされる地球誕生以後最悪にして最低の生命。罪状、第一次及び第二次世界大戦の扇動、シチリア島沈没事件の実行、世界最悪のテロ組織『国境なきテロリストTerroristes Sans Frontières』への『皇帝イワン』密輸未遂、マダガスカル島両断の実行など。 人の不幸を嗤い、悲劇に耽美し、涙を流す人間を観劇する、初まり罪に犯されし絶対悪。 本名は不明、それ故に仮称が『根源悪ディープ・ブラック』。 何をしてでも滅すべき、人類の敵。 人類絶対悪ビースト位階総序列第二位U。 『欲望』の悪徳を体現する人類絶対悪。人の願いを欲望のままに叶え、その失敗を嘲笑することを生き甲斐とする人外。罪状(なお全て間接罪)、地球温暖化の実行、一秒の定義の改竄、現行科学を遥かに凌駕した超超々越兵器『亜空の使者』の創造など。 欲望を叶えるだけ叶えてその責任をとらない、他の人類絶対悪ビーストからすら嫌われる最低の絶対悪。 故にその名は『ガイア・ジ・アース』。 星が生み出した、星の癌。 人類絶対悪ビースト位階総序列第三位V。 『終焉』の悪徳を体現する人類絶対悪。過去現在未来に存在し得る全ての可能性を全て観測し、あらゆる『終わり』を現実にできる天才を超える天災。罪状(一切の証拠無し)、最低でも1870人の才人の廃人化、人口衛星USA-224墜落事件の実行、パリ全インフラ停止事件の実行、インペリアルパッケージ強奪未遂など。 あらゆる全てをすることができ、あらゆる全てを識っている全能の絶対悪。 故にその名は『木原五行』。 木原一族の最高傑作にして、最大の失敗作。 人類絶対悪ビースト位階総序列第四位W。 『錯乱』の悪徳を体現する人類絶対悪。人が混乱し、混迷し、理不尽に必死に抗う様を高みから見ることで優越感に浸る、人間の根幹にある感情を最も端的に表す人間達。罪状、国際宇宙ステーションISSクラッキング事件の実行、全世界同時多発的海底パイプライン切断事件の実行、三原色喪失事件の実行など。 柔軟な発想と存在しない禁則をもって人に仇為す最悪の災厄、他者の努力と対策を嘲笑う絶対悪。 故にその名は『原初たる混沌宇宙』。 誰にも制御することのできない、破滅快楽主義者の集まり。 人類絶対悪ビースト位階総序列第五位X。 『代替』の悪徳を体現する人類絶対悪。唯一にして絶対の『人が人形になった存在』であり、量子学的にゼロパーセントと断言されたはずの『完全な人形』の完成品。人形村の人形師達が辿り着いた、夢想の夢の産物。罪状、四十三カ国の指導者たちの拉致及び殺害、数多の国の政治家に成り代わったこと、ロシア連邦核ミサイル発射未遂事件の命令など。 本物となることのできる影、見破れない嘘、見分けの使い偽物、今あなたの隣にいるかもしれない最も身近な絶対悪。 故にその名は『人形ひとかた人形にんぎょう』。 この世で唯一の、完全なる人形型人間アリス。
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/12(土) 13:05:39.06 ID:LWtzbtr60 人類絶対悪ビースト位階総序列第六位Y。 『殺人』の悪徳を体現する人類絶対悪。その魂魄に『殺人因子』を宿し、己が性質に従って無限の殺戮を繰り返す名を喪った殺人鬼の組織。罪悪感も罪責感も感じず、時に享楽をもって、時に悲哀をもってただただひたすらに殺し尽す血みどろの悪。罪状、第二次世界大戦における人道に対する罪(多数)、中国における民衆大虐殺事件の後押し、滅亡級魔術致死病療666ウイルス発動未遂など。 歴史上最も多くの同族を殺した、絶対に和解することのできない絶対悪。 故にその名は『不思議の国の御伽噺フェアリーテイルワンダーランド』。 史上最も多くの人間の殺戮した、人殺しの組織。 人類絶対悪ビースト位階総序列第七位Z。 『救済』の悪徳を体現する人類絶対悪。魔術という神秘を極め切り、究め切り、窮め切った白痴の賢人。かの『黄金』すら上回る、魔術の基礎の基礎、魔術体系そのものを確立した始祖にして原初の魔術結社マジックキャバル。罪状、南極大陸地脈枯渇事件の実行、冥王星準惑星降格の主犯、小規模な世界法則改竄による科学法則に対する反逆など。 人を救うことに執着した結果人を滅ぼすという結論に辿り着いてしまった、最も優しき絶対悪。 故にその名は『断罪の七大罪』。 変えられない現実を前に嘆き狂ってしまった、英雄の成れの果て。 人類絶対悪ビースト位階総序列第八位[。 『異端』の悪徳を体現する人類絶対悪。人の身でありながら神に成り代わろうとし、歴史を、因果を、当たり前を覆す、『黄金』と同等の魔術組織。そのあまりにも苛烈で過激で加虐な思想から地球上全魔術組織から『異端認定』を受けた最悪の魔術組織。罪状、老若男女879520人を用いた魔術的人体実験の実行、既存の魔術体系に対する反逆、十字教三大宗派本部襲撃など。 神を求めるがあまり神をすら[ピーーー ]、本末転倒な組織。 故にその名は『大いなる業の憲章アルス=マグナ=カルタ』。 凡ての神を否定する、黄金の錬金術師の魔術結社。 人類絶対悪ビースト位階総序列第九位\。 『虐待』の悪徳を体現する人類絶対悪。無意味に力を揮い、無作為に命を消費し、無駄に血を流す、残酷で残虐で残忍なテロ集団。世界各地でテロ行為を行う目的の全く見えない組織。罪状、善悪最終生存戦争ファイナルデッドエンドゲームの表向きの首魁、スレブレニツァの虐殺及びジョージア民族浄化等多数の虐殺事件の扇動、他の人類絶対悪ビーストに対する人員、武器、殺人ノウハウ等の輸出など。 人の数を減らすことそのものを目的とした人間の形をした異星人エイリアン、会話は出来ても話の通じない絶対悪。 故にその名は『国境なきテロリストTerroristes Sans Frontières』。 自らの心しか信じない、極悪非道な絶対正義。 人類絶対悪ビースト位階総序列第十位]。 『復讐』の悪徳を体現する人類絶対悪。人類史史上最大の謎といわれる『幻想島フィクションアイランド』の謎の答えを探すためだけに生きているたった5人のダークヒーロー。罪状(なお全て間接罪)、ベルリンの壁再建事件の教唆、米国所属空母ロナルド・レーガン強奪事件教唆、ストックホルム大炎上事件教唆など。 命の尊さを他の誰よりも知っていながら、己のエゴで人殺しを強要する善の皮を被った絶対悪。 故にその名は『復讐同盟』。 誰かの復讐を教唆する、外道の集まり。 人類絶対悪ビースト位階総序列第十一位Ⅺ。 『冒涜』の悪徳を体現する人類絶対悪。生命というモノを完全に理解し、命を、魂を、魂魄を、生きるということそのものを数式化した空前絶後の大天才。そしてその天才性を誤った方向に成長させた未曽有の大天災。罪状、ラスベガスゾンビ出現事件の実行、複数の死体を繋ぎ合わせた新生命体『ドリット・メンシュハイト』の制作、全世界同時生放送での人体解体の実行など。 死を恐れるがあまり死を拒絶した、人類最後の夢である不死を現実にした絶対悪。 故にその名は『死体繋したいつなぎ屍しかばね』。 終わりを終わりで終わらせない、永遠の呪いを与える屑。 人類絶対悪ビースト位階総序列第十二位Ⅻ。 『進化』の悪徳を体現する人類絶対悪。人でない故がに存在する永遠の時間をもって自己進化を繰り返し、ついには開発者自身ですら制御不可能になった0と1の産物。罪状、G7各国全インフラ一斉混乱事件の実行、多数の国家の機密情報の外部流出の実行、新生命体『シュタール・ゲシュペンスト』の創造など。 人でないが故にどうあっても人を理解できない、無限の平行線の果てにいる絶対悪。 故にその名は『電脳生命体α』。 人の傲慢が生み出した、電子の怪物。 人類絶対悪ビースト位階総序列第十三位XIII。 『蒐集』の悪徳を体現する人類絶対悪。物欲に支配された、最も人間らしき集団。奪い、盗み、集め、観賞し、そして満足する甚だ迷惑な強盗集団。罪状、霊装カーテナ=セカンド強奪事件の実行、紀元前観測断絶事件の実行、三原色喪失事件の実行など。 盗むことに特化した、この世の全てを不確かにする絶対悪。 故にその名は『極悪博物館』。 積み重ねてきた歴史をすら盗む、断絶した資料館。
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/12(土) 13:06:32.32 ID:LWtzbtr60 人類絶対悪ビースト位階総序列第十四位XIV。 『暴力』の悪徳を体現する人類絶対悪。子供のお使いから大規模テロの鎮圧、要人警護、ゴーストライター、無差別殺人、戦争行為、大虐殺、暗殺まで依頼されればなんでもこなす傭兵組織。罪状、ホワイトハウス襲撃事件の実働部隊、スエズ運河封鎖事件の実行、魔科学融合兵器『FAMSFusion Arm of Magic and Science』の開発など。 あらゆる行為の前提条件に『暴力』が存在する、血の雨の中でしか生きられない絶対悪。 故にその名は『悪意と殺意の傭兵団デッドエンドレッド』。 善も悪も同列に扱う、大戦が生み出した負の遺産。 人類絶対悪ビースト位階総序列第十五位XV。 『選別』の悪徳を体現する人類絶対悪。自分たちに都合の良いことだけを信じ、自分たちに都合の悪いことは一切聞く耳を持たない永遠の弱者。罪状、善悪最終生存競争ファイナルデッドエンドゲームの補佐、偽最終審判判定未遂事件の実行、陸海往来断絶事件の主犯など。 なまじ力を持ったばかりに世界を見なくなった、成長できない子供のままの絶対悪。 故にその名は『聖なるカナン』。 神に選ばれた使徒を自称する、自意識過剰な現実逃避者。 人類絶対悪ビースト位階総序列第十六位XVI。 『廃頽』の悪徳を体現する人類絶対悪。便利になった現世界よりも不便だった過去を尊ぶ時代遅れの老害。反論できない詭弁と反論を許さない欺瞞で正論を煙に巻く、回想に浸る集団。罪状、全国家一斉インフラ停止事件の実行、超広域電磁パルスEMP攻撃未遂事件の実行、文明のゆりかご再誕事件の実行など。 現代の人類を否定する、積み重ねてきた歴史を否定する絶対悪。 故にその名は『神時代へ逆行する古代人』。 過ぎ去った栄光に縋りつく、置いていかれた古代人。 人類絶対悪ビースト位階総序列第十七位XVII。 『偽悪』の悪徳を体現する人類絶対悪。まだ誕生していない唯一の人類絶対悪ビースト。誰かのための自己犠牲で人の歩みを阻害する、高貴な者の義務ノブレス・オブリージュを理由に全ての責任を被る、傷つきながらも笑う悪。罪状、彼は罪を犯した、彼は罪を犯した、彼は罪を犯したなど。 しなくてもいいことをして誰かの成長を妨げる、正義の皮を被った絶対悪。 故にその名は『上×勢力』。 存在しない8つ目の罪の象徴、平和のための尊い犠牲。 人の生み出した、人の業。 以上、十一の組織と三の人外、三の人間をもって全人類絶対悪ビーストとされた。 この絶望こそが、パトリシアのような主人公ヒーローが戦うべき最終敵ラスボスであった。 「人類絶対悪ビースト、かぁ…………」 とはいっても第四物語フォースストーリーの主人公ヒーロー、誰も救えない英雄ガラクタヒーローパトリシア=バードウェイといえども全ての人類絶対悪ビーストに関わったことはない。パトリシアが関わったことがあるのは善悪最終生存戦争ファイナルデッドエンドゲームの時に敵対した国境なきテロリストTerroristes Sans Frontièresと聖なるカナンと極悪博物館の連中、そしてそれが『完結』した後の世界を旅する間に出会った断罪の七大罪、不思議の国の御伽噺フェアリーテイルワンダーランド、電脳生命体α、復讐同盟の連中くらいだ。 それも結局パトリシアはどの人類絶対悪ビーストも殺しきることができていない。 それはパトリシアが弱いからではなく、人類絶対悪ビーストが強いからではなく、世界に護れている、『加護』がある状態の登場人物キャラクターは条件が調わないと勝負すら出来ないからだ。 だから、 「…………………やっと終われるよ、お姉さん」 だから、パトリシアは微笑む。 確信していた。 やっと、ようやく、ついに、『物語』が『始まった』。 七連物語セブンスストーリーズの第七物語セブンスストーリー、全ての物語を本当の『完結』へ導く最後の物語ファイナルストーリーが始まった。 これで人類絶対悪ビーストが持っていた『加護』は消える。人類絶対悪ビーストの絶対性はなくなる。勝てるようになる。 本当に、やっとだ。 待っていた。 待っていた。 ずっと、待っていた。 この瞬間を、この時間を、このトキを。
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/12(土) 13:07:24.06 ID:LWtzbtr60 「私はきっと、お姉さんたちと同じ所にはいけないけど」 呟く。 語る。 話す。 灰・色・の・墓・石・の・前・で・パ・ト・リ・シ・ア・=・バ・ー・ド・ウ・ェ・イ・は・涙・を・流・さ・ず・泣・い・て・い・た・。 「それでも、ね」 天国や地獄の概念を信じているわけではない。善行を為したモノは楽園へ行き、悪行を為したモノは煉獄に堕ちる。そんなことを盲信しているわけではない。 しかしやはり自分のようなゴミクズと姉のような指導者が同じ場所に行くのはおかしいとパトリシアは思うのだ。 努力すれば成果が出る。怠惰ならば成功しない。当然のことだ。 だから、仮に死後の世界があっても転生しても自分と姉が出会うことはない。 パトリシア=バードウェイという少女は罪を犯し過ぎた。 パトリシア=バードウェイという女はあまりにも弱すぎた。 パトリシア=バードウェイという個人はどうしようもなく愚かだった。 「全部終わったら、少しくらいは褒めてほしいかな」 だから、パトリシアは泣く。 この戯言が姉の魂に届いていないことを、願いながら。 矛盾した言動で、泣く。 十七の人類絶対悪ビースト。 人類が人類である限り避けられない、滅亡の使者。 終焉の擬人化、破滅の具体化、絶望の具現化。 彼ら彼女らが斃すべき、『悪』の御名。 次の更新は9月上旬までにです。 ようやく風呂敷を広げきったぞ、後は畳むだけだ。
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/12(土) 21:44:31.17 ID:MrpGFk25O 禁書3期の特典のSS読んでる猛者おる?多分全国でも3000人くらいしかいないと思われるんだが
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/13(日) 02:33:33.74 ID:s2et/WF+0 >>7 読んだ つまらなかった
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/13(日) 06:58:04.75 ID:6icUbYosO どんな話? 時系列はどこの話?
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 17:57:59.57 ID:yAhm9urX0 https://syosetu.org/novel/158074/72.html 惨劇最悪バッドエンドA あなた達が間違えた選択の果てに、世界は滅亡しました 終わった。 (終わった) 終わった。終わった。終わった。 (終わった。終わった!終わったあァァっっっ!) だが、はたして何が終わった? 佐天の歯を噛み千切ることが? もちろんそれは終わった。 佐天との間にあった信頼関係が? それは修復は可能なほどに終わってしまった。 上条の精神性は? それもまた、終わってしまったモノの1つだろう。 いくつもの出来事が終わり、モノとして存在しない目に見えない何かもまたいくつも終わってしまった。 それが良いか悪いかはまだ分からない。もしかしたら上条の行動が後の災厄に繋がるのかもしれない。 けれど、確かに此処に1つの事象は終了したのだ。 上条が終わらせた。 「はっ、はふっ……はぁーっ、ははっ!はぶ、げふッ!…………あ゛、…………ぁ゛」 唾液と血液でぐちゃぐちゃになった佐天の左手親指を掌の上に吐き出して、上条は荒い息のまま何とか佐天に話しかけた。 「さ、てん……大丈夫、か……?」 「……………………………」 返答はない。 「佐天……?」 膝に手をついて息を落ち着けながら、上条は顔を上げて佐天を見上げた。 佐天は、恐怖に歪んだ顔のままぐったりと頭を下にしていた。 「っ!……ぅ」 ピクリとも動かない佐天。 気絶している、のだろう。 全身から力が抜けている。だらりと下がった四肢に半開きになった口、開いた瞳孔。全てが佐天が正常ではない状態であることを示している。 言うまでもなく、上条がそうした。 (仕方なかった……仕方なかったんだ!) そう、思うしかない。今はまだ、罪悪感を抱くわけにはいかない。 やらなければならないことがある。 佐天の痛みを、その犠牲を、無駄にするわけにはいかない。 「Aえー!」 と上条は食蜂を呼んだ。 佐天の左手親指が手に入った以上、後必要なのは刀夜の右目だけだ。つまり食蜂が刀夜の右目を抉りだせていれば、事態の全ては解決する。 はずなのに、 「何してるんだ……?」 奇妙なことに、食蜂は刀夜の右目に手を伸ばしたまま静止していた。 「大丈夫、か?」 緊張しているのだろうか。 躊躇しているのだろうか。 それも仕方ないと思う。上条だって、躊躇いの中で覚悟を決めて佐天の指を噛み千切ったのだ。だから食蜂が出来なくても仕方ない。 (いざとなったら) いざとなったら、上条が食蜂の代わりをやるしかないだろう。 けれどまず、上条は食蜂を励ますためにその左肩に手を置いた。 「変わろうか?」 と声をかけて、 ドン、と食蜂の身体が倒れた。 「……………………………………………………………………………………………は?」 一瞬、停止。 だが、すぐに動き出す。 「食蜂!?」 倒れ伏した食蜂に上条はすぐさま駆け寄った。 何だ?何が起きている?どうして食蜂が倒れた? 「おいっ、どうした!?しっか」 呼吸が、停止していた。 心拍が、無かった。 「――――――――――――――――――――――しょく、ほう?」 一般的には、呼吸をせず心臓も停止している人間のことは死体と呼ぶ。 つまり、食蜂は死んでいた。 「待てよ」 死んでいた。 「起きろよ!何、何で……食蜂ッ!」 ガチャリと音がして、誰かが上条の背に凭れ掛かってきた。 「ぐっ、痛ッ!?」 背中に奔った衝撃を振り払うかのように、上条は食蜂の身体を支えたまま片腕を背に手をやった。 何かが上条の背中に墜ちてきた。 何かが上条の背中に降ってきた。 それを背中から降ろして、上条は降ってきた何かを確認し、 上条刀夜が死んでいた。
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 17:58:29.86 ID:yAhm9urX0 「……、…………?」 今度は言葉すらも出なかった。ただ、ふらふらと開いている方の手が刀夜の頬に伸びた。ふらふら、ふらふら、ふらふらと。 「父、さん……?」 動かない。 ピクリとも、動かない。 触らなくても分かる。 触れなくても分かる。 上条刀夜は死んでいる。 「あ」 呆けたように口を開きっぱなしにして、食蜂を横たえ、上条は立ち上がった。何が起こっているのかわからない。何が起こっているのか分からない。何が起こっているのか分からない。 でも何かが起こってるのなら、と上条は立ち上がった。 四つの枷から解放され、倒れ伏した佐天が視界に入った。 「は」 確かにそうだ。食蜂が死んだ。刀夜が死んだ。ならば佐天だって死んでいるだろう。全くそうだ。非常に納得できる。 「なら、ジャーニーも……」 佐天と刀夜が解放されたなら、もちろんジャーニーも死んでいる。見る必要もない。だって、12のルールにはこうあった。『ジャーニーが培養器の外に出るか、ジャーニーが死亡した時点で2人の拘束は解かれる。』、なら当然ジャーニーは死んでいる。 4人とも死んだ。 此処で生きているのは上条だけだ。 「……外に」 なら、もう此処に居ても意味はない。外に出て、助けを呼ばなければ……。 ふらふらと頼りない足取りで階段を上り、部屋を出る。 その部屋の外では、少女が死んでいた。 「…………………、蜜蟻、……か?」 その顔には見覚えがあった。 蜜蟻と名乗る少女と同じ顔をしていた。 ……待っていた、のだろうか。 ジャーニーを救出した後の上条に会いに来るつもりだったのだろうか。 死体は黙して語らないから、真実はもう分からない。 「……………………………、…………」 歩く。 ただ、歩く。 とにかく外に行かなければ何も始まらない。外に行けば助けを呼べる。助けを呼んで駆動鎧パワードスーツを止められる。だから、まずスタジアムの地下から出なければならない。 「…………もう、ちょっと」 後数歩でスタジアムの外に出られる。 後2歩でスタジアムの外に出られる。 スタジアムの外に出られた。 「っ」 太陽光の眩しさで僅かに目が眩む。だが徐々にその明るさに慣れて、視界が開けた。 インデックスが死んでいた。 「――――――――――――――――――――――――――――――」 ひどい、酷い様だった。 片腕を切り落とされ、半ばまで切断された胴からは内臓が零れ落ちている。白を基調とした修道服はあちこち裂かれ、穴が空き、そこから今もなお流れ出る血が、修道服を赤黒く変色させていた。数えることすらも馬鹿馬鹿しくなるほどにインデックスの体の傷は多かった。 何度も、何度も、何度も。 誰かがインデックスの体を切り裂き、斬り付け、痛めつけ、命を弄び、尊厳を凌辱し、生き様を侮辱し、そして突き立てて、消えない傷を残したのだろう。 永遠に消えない、傷跡を。 どうして、そこまでされなければならなかったのか。 どうして、そこまでしなければならなかったのか。 「―――――――――――――――――――――――」 苦痛に満ちた顔を、 恐怖に歪んだ顔を、 せめて、せめて、せめて、少しくらい安らかにしたい。 だから上条は死にきったインデックスに近づいて、その瞳を閉じさせてあげた。 それくらいしか、出来なかった。 「……………………」 そうして、上条は携帯電話を取り出して病院に電話した。119番。死体を病院に渡さないといけない。 通話がつながる。 「あの」 自分でも驚くほどに冷たい声が出た。 なのに、 『―――――――――――――――――――』 「あの!」 通話口からの返答がない。 話しかけてこない。 「……仕事してくれよ」 119番からの返答がないなら自分で歩いて病院に行くしかない。 どこの病院が良いだろうか?一番近い所なら、やはりカエル顔の医者の所か? 「歩けば、いつか辿り着くか」 そう言って、上条はスタジアムの外に出る。
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 17:59:02.25 ID:yAhm9urX0 スタジアムの外には、輝の死体があった。 「……勝てなかったのか」 それだけ言って、上条は大通りに向けて歩き始める。大丈夫だ。死体が1つ増えただけだ。病院に連絡する手間が増えたけれど、それぐらい上条が負担するべきだろう。 10分ほど歩き、上条はようやく大通りに出た。 燃え盛る炎がいくつもあった。 「熱っ!」 炎上しているのは車だ。 交通事故が起こっているのだ。この大通りだけで何件も。 「……警察に、連絡しないと」 もう一度、上条は携帯電話を取り出して警察に電話した。 110番。 通話がつながる。 「あの」 『―――――――――――――――――――』 通話口からの返答がない。 話しかけてこない。 「……………………」 仕方がないから上条は電話を切って再び歩きだした。 どいつもこいつも仕事をせずにさぼっていて、学園都市は大丈夫なのだろうか? 「…………………………」 歩き続ける。 車の中で見知らぬ誰かが死んでいた。 歩き続ける。 歩道にある椅子の上で誰かが寝転がっていた。 歩き続ける。 道端でカップルが抱き合ったまま動かずにいた。 歩き続ける。 青髪ピアスが家に寄り掛かっていた。 歩き続ける。 炎の中に誰かが立っていた。 歩き続け、 「青髪ピアス……?」 振り返った上条は来た道を戻って青髪ピアスに近づいた。 近づいて、その瞳が何も映していないことに気が付いた。 「―――――――――――――――――――――――う」 一歩、下がる。 足が誰かの肉に当たる。 下を見る。 倒れ伏した吹寄と目が合った。 「うあああああぁぁぁぁぁぁぁッ――――――!!!」」 もう、我慢できなかった。 無茶苦茶に走り回る。 滅茶苦茶に叫ぶ。 「あああああああああああああああああっ!!!!!くがあああああああああああああああ!!!!!ぎあああああああああああああああああああああ!!!!!!!」 両の目から流れ落ちる涙が視界を歪ませる。 あらゆるところにある血液がびちゃびちゃと上条の足元で跳ねる。 どうしようもない。 もう、どうしようも、ない。 「何なんだよ、これ…………」 全て、死んでいた。 「何なんだよ、これっ!?」 死が、溢れていた。 「何なんだよ!これは!?」 ここには死しか、なかった。 「誰か、誰かいないのかよ!!!」 もう恥も外聞もなく上条は走り回った。ようやく、脳が現実を直視した。 死んでいる。死んでいる。死んでいる。 「誰か!誰かァッ!誰でもいいから、返事してくれよ!!!」 死んでいる。死んでいる。死んでいる。 「ふざけんなよ!どうしてこんなことになってるんだよ!!!俺が、俺……ああああああああああああっ!」 死んでいる。死んでいる。死んでいる。 「なんで、……なんで……っ、インデックス……インデックスぅ……うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」 全てが終わって滅んでいる。 視界を埋め尽くす赫と無数の死体だけが、上条が今ここにいる証明だった。 膝をつく。 何もかもが死に尽くした世界で、徐々に上条の正気が薄れていく。 なにもわからない。 なにもかんがえたくない。 精神を犯し尽す絶望が上条の中から希望を消し去っていき、五感すら奪い去ってく。 消える。消える。消え失せる。 意識が、思考が、感情が、何も残らない。
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 17:59:29.97 ID:yAhm9urX0 はずだったのに。 ざっ、と上条の後ろで足音がした。 「ッ!?」 その音を聞いた上条はまるで今にでも消えそうな蝋燭の明かりを必死に維持しようとするかのように振り向いた。 生きている人がいる? 誰かがまだ、生きている? そう思って、上条は振り向いて、 白過ぎる腕に、首を掴まれた。 「あぎぃッ!?」 絞まる。しまる。しまっていく。 首が徐々に絞めつけられていき、呼吸が出来なくなっていく。 「だ……に……」 誰が上条の首を絞めているのか分からない。 何で上条が首を絞められなければならないのか分からない。 だが、 「時間、掛けすぎだよ」 全てが死に犯された世界に色を喪った呟きが響き、 ――――――上条当麻の生命活動は、完全に停止した。 これで『とある暗部の御坂美琴』は完結となります! 3年モノ長い期間の連載となりましたが、今まで付き合ってくれた方には非常に感謝です。本当にありがとう! 後日にあとがきを投稿させてもらいますが、本編はこれで終わりです。 本当に、本当に、ありがとうございました! セーブデータをロードしますか? はい← いいえ
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 18:00:01.70 ID:yAhm9urX0 https://syosetu.org/novel/158074/73.html とある暗部の御坂美琴(1周目) 作:一二三四五六 << 前の話 目 次 次の話 >> 73 / 74 1周目における第一部第二章は惨劇最悪バッドエンドで終了したため現段階においては取得ポイントを計上できません。 ご了承下さい。 とある暗部の御坂美琴(1周目) 総合評価 第一部第一章 評価 第1評価 話数 111話……条件未達成。 合計文字数 562569文字……条件未達成。 平均文字数 5114文字……条件達成。 UA 57781……条件達成。 お気に入り 157件……条件達成。 感想 104件……条件達成。 総合評価 266pt……条件達成。 平均評価 6.41……条件達成。 調整平均 6.60……条件達成。 第1評価値算出 ―111―5625―114+5778+157×10+104×10+266×10+6.41×100+6.60×100=6499 条件達成 7 条件未達成 2 二章開始時における難易度がハードになりました。 条件達成と認定。 取得ポイント 6499SP
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/13(日) 18:00:48.72 ID:CbVbJ8plo ここそういうことする場所じゃないんで 空気読め
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 18:00:59.16 ID:yAhm9urX0 第2評価 誤字指摘……54箇所。 読者による設定不備指摘……8箇所。 能力名が四文字では無いモノがあることに関する伏線……指摘済み。 アレイスター=クロウリーによる絶対能力進化実験レベル6シフトの干渉に関する伏線……指摘済み。 初まりの領域に関する伏線……指摘済み。 全体個体『御坂美琴』に関する伏線……指摘済み。 世界物語理論に関する伏線……指摘済み。 裂ヶ淵瞑娥さくがぶちめいがによる位相斬りに関する伏線……指摘済み。 千疋百目の地下下水道脱出行動に関する伏線……指摘済み。 木葉桜十五夜の召喚した武装に関する伏線……指摘済み。 『神』になった一方通行アクセラレータに関する伏線……指摘済み。 もう1つの絶対能力進化実験レベル6シフトに関する伏線……指摘済み。 千疋百目が地下下水道の崩落から白井黒子を助けた理由に関する伏線……指摘済み。 伏線を『貼る』が誤字ではない理由に関する伏線……指摘済み。 【】に関する伏線……指摘済み。 初春飾利の所属に関する伏線……指摘済み。 一方通行アクセラレータの魔神化を想定内とした存在に関する伏線……指摘済み。 御坂美琴が一方通行アクセラレータを拷問した理由に関する伏線……指摘済み。 アレイスター=クロウリーの進める『計画プラン』に関する伏線……指摘済み。 『死』の定義に関する伏線……指摘済み。 上条当麻が敗北したことに関する伏線……指摘済み。 風紀委員本部セントラルジャッジメントに所属する人間に関する伏線……指摘済み。 全体個体『御坂美琴』の思考矛盾に関する伏線……指摘済み。 風紀委員本部セントラルジャッジメントという組織構造に関する伏線……指摘済み。 見捨てられた女グレイレディの正体に関する伏線……指摘済み。 ミサカネットワーク総体の気付きに関する伏線……指摘済み。 風紀委員本部セントラルジャッジメントと滞空回線アンダーラインに関する伏線……指摘済み。 原作では気づくことのできたぬいぐるみに関する伏線……指摘済み。 上里翔流に関する伏線……指摘済み。 アルフの発言に関する伏線……指摘済み。 占卜卜占に関する伏線……指摘済み。 アレイスター=クロウリーの上条達へのバックアップに関する伏線……指摘済み。 第2評価値算出 54×0.5+8×5+30×1=97 『真実解明トゥルーエンド』ルートへルート分岐。 ――――――世界物語キャラクターストーリー理論による正史認定を行いました。 以下、第一部第一章は『真実解明トゥルーエンド』ルートで固定されます。 条件達成と認定。 取得ポイント 9700SP 第3評価 御坂美琴VS死縁鬼苦罠……勝者 死縁鬼苦罠 御坂美琴VS一方通行アクセラレータ……勝者 全体個体『御坂美琴』 木葉桜十五夜VS罪罰贖&波並波狂濤……勝者 木葉桜十五夜 木葉桜十五夜VS矛盾矛盾&鳳仙花蝶々……勝者 木葉桜十五夜 木葉桜十五夜VS一本線点々……勝者 一本線点々 ミサカ10032号VS一方通行アクセラレータ……勝者 一方通行アクセラレータ 白井黒子VS千疋百目……勝者 千疋百目 白白白VSアレイスター=クロウリー……勝者 不明 上条当麻VS扼ヶ淵埋娥……勝者 扼ヶ淵埋娥 神亡島刹威VS浣熊四不象……勝者 浣熊四不象 一方通行アクセラレータVS『空白の主』……勝者 『空白の主』 常世涯最果VS木原脳幹……決着つかず 木葉桜十五夜VS『空白の主』……決着つかず 木葉桜十五夜VS『空白の主』VS木原脳幹……引き分け 常世涯最果VS裂ヶ淵瞑娥……勝者 常世涯最果 ミサカ19090号&ミサカネットワーク総体VS死縁鬼苦罠&天埜郭夜……勝負中 アレイスタークロウリーVS白白白……勝負中 佐天涙子……敗北者
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 18:01:36.56 ID:yAhm9urX0 第3評価値算出 ―1+0+0+0+0+0―1+0―1+0―1+0+0+0.5+0+0.5+0.5+1=−1.5 侵略者インベーダーによる侵蝕が1段階進みました。 条件未達成と認定。 取得ポイント ―1500SP 第一部第一章総合取得ポイント算出 6499+9700−1500=14699 合計取得ポイント 14699SP 上条当麻のステータスを表示します 上条当麻……性別 男 年齢 15歳 特殊能力 幻想殺しイマジンブレイカー 称号 主役級メインキャラクター、主人公ヒーロー、救済者ヒーロー(未覚醒状態) 称号スキル 主人公補正(真)、なるようにならない最悪If nothing is bad、カリスマ(弱) 固有スキル 前兆の感知(兆)、不幸、不撓不屈(弱) 買い物 何を買いますか? 特殊文字(認識不可状態)の可視化(第一部第一章のみ)……100000SP イベント絵……各50000SP スキル……各10000SP 記憶の引継ぎ……10000SP サブストーリー……各5000SP アイテムの引継ぎ……5000SP 経験値の引継ぎ……1000SP 友好度の引継ぎ……1000SP TIPS……各100SP イベント絵詳細 頂にて君臨する風紀委員本部セントラルジャッジメント 汝、人を捨てても護りたいモノがあるか?
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 18:02:16.81 ID:yAhm9urX0 スキル詳細 前兆の感知 説得 女たらし サブストーリー詳細 御坂美琴初めてのお仕事 たぶん最終章にならないと意味の分からない会話劇 上里勢力結成譚 第一幕 TIPS詳細 オリジナル単語1つに付き100SP 記憶の引継ぎ……10000SP ← 記憶の引継ぎ……10000SP を買いますか? はい ← いいえ 使ったSPは二度と戻りません。それでも 記憶の引継ぎ……10000SP を買いますか? はい ← いいえ 記憶の引継ぎ……10000SP を買いました。1周目の記憶が2周目に引き継がれます。 取得ポイントが4699SPに減少しました。 他には何を買いますか? 特殊文字(認識不可状態)の可視化……100000SP ← 特殊文字(認識不可状態)の可視化……100000SP を買いますか? はい ← いいえ 特殊文字(認識不可状態)の可視化……100000SP を買うためにはSPが足りません。 取得ポイントは4699SPのままです。 他に何を買いますか?
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 18:02:52.15 ID:yAhm9urX0 https://syosetu.org/novel/158074/74.html とある暗部の御坂美琴(1周目) 作:一二三四五六 << 前の話 目 次 × 74 / 74 私はいつも一人だった。 だから願った。愛されたいと。 私は多くの人から愛された。 だから思った。一人がいいと。 そして私は独りになった。 だから悟った。これが幸福だと。 ――――――二九七 それでも僕は、明日が欲しかった 裏お茶会~1周目~ 崩れ落ちる上条ヒーローの身体を睥睨しながら、230万の死体で溢れる学園都市の中で僕は溜息をついた。 「わりと、期待してたんだけどね……」 言葉にすることで僕は僕自身の考えを再認識する。 そう、期待していた。本当に期待していたんだ。 上条当麻なら、あるいはこの僕を上回ることが出来るかもしれない、と。 「いや、……矛盾だな」 僕の世界の人類を護るためには、いずれ上条当麻は必ず[ピーーー ]ことになる。それが早いか遅いかの違いだ。 「…………遅かったね、アレイスター」 「殺したのか」 「どのみち、間に合わなかったさ。彼はあまりにも遅すぎた」 男にも女にも、子供にも老人にも、聖人にも囚人にも見える『人間』、そう評されるアレイスターの方に視線を投げかけて、僕はこの全てが終わった世界を見通す。 70億の、そして数百の死体しか存在しないこの世界でただ1人、僕だけは違うから。 結局すべてが絵空事の虚言でしかないと知っているから。 「それを分かっていたからこそ、君も滅亡齎す七の子羊セプテム・アニュスの対策を発動させなかったんだろ」 「あの程度の術式に気付けないのならば、どのみちヤツは救済者ヒーローには相応しくないだろう」 「随分な言い様だ……。君の、君達の主人公ヒーローだろう?」 「違うな。私達の主人公ヒーローは彼ではない。上条当麻だ」 「厳しいね……。彼だって、僕がいる中頑張ってると思うけど」 「結果世界が滅んだが?」 「……………………もう少し、サポートしてあげれば良かったのに」 フラグが立たなかったのは確かに上条の責任だが、たった1回で完全な救済を為せだなんて難易度が高すぎるだろう。今回は解決しなければならなかったことが多すぎる。瞬を倒して、蜜蟻をどうにかして、学究会防衛作戦を成功させ、咎負虐殺を止める。 そんなの無理だ。 僕だって、サポートなしで出来るとは思ってなかった。 「それは」 「呼ばれてないのにじゃんじゃじゃ〜〜〜ん!!!」 空から純正の人類絶対悪が降ってきた。 「五行……。今結構重要な話してたんだけど」 「あぁ、あぁ、あ〜あ。まさかこんな結末になっちゃうなんてなぁ〜」 「聞けよ」 いや、五行が人の話を聞かないのはいつものことなんだけど、今だけは邪魔しないでほしかった。アレイスターと一対一で、互いの本当の立場を曝け出して話せるのなんて、今ぐらいしかないだろうから。 「木原五行、全能存在パントクラトールか」 ほら話が次に移った。 「……………はぁ」 僕の隣に立つ少女を見て、アレイスターが言った。 当然、調べられている、か。 「くきっ、くききッ!!!ま〜さっか!第六物語シックススストーリーの主人公ヒーローが死んじゃうなんて。フラグの立て方ミスっちゃった?」 「あぁ、ラスボスとの交戦フラグを立てないでサブイベントに入れ込んだんだ。馬鹿なことにね」 「くきっ!なら私のしたことの意味がなくなっちゃうな〜。せっかく、第七物語セブンスストーリーの主人公ヒーロー連れてきて物語交錯クロスオーバーさせてあげようと思ったのに」 わざとらしい口調でアレイスターを挑発する五行を僕は止められない。権限自体は僕の方が上だし、立場も僕の方が上だけど、物語を進める役トリックスターの自発的な動きを止めることは僕には出来ないし、しようとも思わない。 そういう称号キャラクター性の持ち主の行動はどのみち止められないモノだし。 「ふん、たかが全能如きが私と の話を邪魔をするのか」 だいたい、物語を進める役トリックスターは自由だからこそ意味があるんだ。 「くきぃ!たかがっ、たかがだってさリーダー!……このあてをたかがだなんて、さすがにムカつくかなあああああああああああああ!!!!!」 だからほら、また勝手に手の内を晒す。 「超克科学オルディニスクレアーレ――――――完全無欠ウルトラ、十全十美スーパー、常勝不敗アンリミテッド、絶対究極パーフェクトガール、故に私は全知全能の絶対神イズミー!」 超克科学オルディニスクレアーレ。覚醒ブルートソウルした極点突破者デスペラードのみが使う事の出来る世界物語キャラクターストーリー理論の最終到達地点。人類最終到達地点候補生たちの目指すべき場所。 といっても今回五行が使ったのは見る限りただの即興術に過ぎないのだけれど、出来れば勝手に使わないでほしかったなぁ……。 「あれ?発動しない……?……うん?」 まぁ、当然邪魔されるんだけど。 「全能の逆説オムニポテント・パラドックス。……まさか知らないわけではあるまい」 二言だった。そして、その事実がアレイスター=クロウリーという魔術師にして科学者の強さを示しているんだ。 「……ぶ〜、つまんなぁ〜い」 がっかりと肩を下げて、興がそがれたように超克科学オルディニスクレアーレの発動を止めた五行。まさか、全能の逆説オムニポテント・パラドックスを、全能者は全能であるが故に全能ではないという一学説を忘れたわけではないだろうに。 いや、五行のことだから本当に忘れていたのかもしれないけど。 「殺しちゃう?殺っちゃう?ねぇリーダー!」 「落ち着けよ五行。いや頼むから落ち着いてくれ。だいたい彼を殺したところで」 空から剣が降ってきた。
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 18:04:07.38 ID:yAhm9urX0 「死を晒せよ、侵略者インベーダー」 そんな声と共に、全長数十キロメートルにもわたる長大な剣が五行の脳天に向かって振り下ろされる。誰が、どうやって?そんな疑問が浮かぶ……、 「痛い」 だなんてことは当然なかった。 当たり前のことだ。僕は知っている。僕は識しっている。その剣がどんなもので、その剣を操るのが誰なのかを。 「痛い痛い痛い!痛いよリーダー助けて!」 「はいはい。ちょっと待ってろ」 剣が直撃してるのに傷一つついてないくせにそんな泣き言を言う五行に呆れながら僕は軽く剣に触れる。それだけで、剣は消え去る。 干渉。 無限に修正され続ける罪深き世界5Re:worldbreakerを使う僕からすればこの程度のことは当然だ。 「出てきなよ。いるんだろ?」 「無傷か」 いつの間にかアレイスター=クロウリーの隣に立っている男を僕は知っている。 「右方のフィアンマ。あいつの下位互換程度が今更何の用?というか、この大絶滅リセットから生き残ってたんだ」 「……俺様も舐められたモノだ」 僕のあからさまな挑発に、右方のフィアンマはあからさまに怒りを見せた。まぁ、下位互換と言われていい気になるような人間はいないだろう。 「あいつ、それって僕様のこと言ってるの、主あるじ?」 そいつは右方のフィアンマと同じように突然現れた。 これで3VS2。 「『神の代行人』GE13か」 「……下位互換程度が僕様に話しかけるなよ。ウザいんだよ代替品」 GE13が右方のフィアンマを睨みつける。仕方がない事とはいえこの2人は相変わらず相性が悪い。といっても聖なる右を持つ右方のフィアンマが『神の代行人』であるGE13の劣化レプリカなのは周知の事実だ。そして自分の劣化レプリカ、クローンのようなモノが勝手に造られたというのは確かに気分の良いモノではないだろう。 「なんだ、還してほしいか?GE13オリジナル?」 誰が見ても分かるくらい上から目線だった。 その挑発には、当然GE13は耐えられない。 「――――――調子にっ」 「やめろ」 だから僕は止めに入った。やれやれ、いくら『核』が固まっていないとはいえ、安易に行動するのはやめてほしいモノだ。 「あひゃひゃ!怒られてやんの〜!」 「……主」 縋るように目を向ける13を、それでも僕は静止する。 「13、別に聖なる右を使われたところで君がオリジナルであるという事実は揺らがないさ。だから簡単な挑発に乗るなよ。……まだ、底を見せるな」 「了承したよ、主」 底が知られても強さが変わらない先住民センチネルにとって強さを示すことは恐怖ではない。彼らの強さの限界点は1度知られている、だからこそその『上』にいけるんだ。底が暴かれれば弱くなる僕ら侵略者インベーダーとは違う。僕らは安易に力を晒せない。そうすれば、終わってしまうから。 「それにしても、本当に君達はこれで良かったのかい?」 「何がだ」 「大絶滅リセットで利するのは言うまでもなく侵略者インベーダーたる僕らだ。先住民センチネルたる君達からしたら、大絶滅リセットだけはどんな手段を使っても回避したかったんじゃないのかい?」 少しの沈黙の後にアレイスター=クロウリーが口を開いた。 「ある意味ではそうかもしれない」 肯定が返ってきた。 「だがある意味ではそうではないだろう」 否定も返ってきた。 そして後に続くように右方のフィアンマが言った。 「俺様達ももはや純粋な先住民センチネルとは言えまい。ならば妥協はするべきだ、というのが俺様達の出した結論だ。大絶滅リセット程度ならば、完全閉鎖アーカイブスルーや中断事象リアルが起きないのならば、やりようはいくらでもある」 「ふぅん……そう。だったらまぁ、初お披露目はこの程度でいいかな」 そう言って僕は、諦めたように言う。そういうしかないから、言う。 「愛し子よMary、愛し子よMary、僕の愛するMy fair愛しき世界よMary Sue。 その運命を改変しておくれCambiare il destino、 その物語を書き換えておくれFare una storia。 我が神のお望みとあらばWenn es meines Gottes Wille、 我らが神のお望みとあらばWenn es unsere Gottes Wille、 過去など無いに等しいのだDie Vergangenheit ist vorbei。 すべての可能性を内包した書の中でO mundo onde há esperança e o desespero ただ一つの意志のみがEle destruiu何もかもを無に帰すのだo mundo」 何度も言ってきた初めての詠唱を、僕は紡ぐ。 「絶対不変の絶対法則アンチェンジナブルラウ――――――無限に修正され続ける罪深き世界5Re:worldbreaker」 「さあ、やり直そうか」 「次は、失敗しないようにね」 一つ言っておこうか。 愛がないのならば、この物語の真実には辿り着けない。
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 18:05:41.64 ID:yAhm9urX0 https://syosetu.org/novel/56774/151.html とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六 << 前の話 目 次 次の話 >> 151 / 178 セーブデータをロードしました。 ここは2周目の世界です。 意味が分からない人はhttps://syosetu.org/novel/158074/に行ってください。 パスワードはURLの数字です。 久し振りの更新ですね、なんて言ってみたり。 第二部 第二章 第四節 革命未明《サイレントパーティー》〜それでも諦めないと叫べよ愚者共〜 上条当麻@ Welcomehomeおかえりなさい,heroヒーロー. 「……ハッ!?」 上条はそこで目を覚ました。 だがすぐに苦しみが襲った。 冷たい。あまりにも冷たい。 苦しい。あまりにも苦しい。 耐えられないほどに痛く、痛い。 喉が、絞まる。 「はっ、はぁっ!はぎ……ぃっ!」 絞まる絞まる絞まる。 喉に加えられた力が咽頭を潰す。 呼吸すらもままならない。 鼻から息を吸って鼻から息を吐いて、そんな単純作業すらできない。 「ぁ――っ!…………ぁッ!」 眩む。沈む。落ちる。狂う。 ダメだ。ダメだダメだダメだ。 手の力が抜けてきた。瞼が下がってきた。意識がなくなってきた。 終わる。死ぬ。終焉を迎える。 そんなことは、認められない。 (…………………………[ピーーー ]、るか) 例え全てが終わってしまっていたとしても。 もう今から何かを初めても何の意味もなかったとしても。 この地球上に生存している人間が上条当麻1人だけしか存在しなかったとしても。 それでも、生きなければならない。 (……………………………[ピーーー ]るか) 何が起きたのかなんて当然わからない。 何か起きたのだということは当然わかる。 全てが終わった後でしかないというのは直感出来る。 もう遅いのだ。遅すぎるのだ。誰かが何かをして、それを誰も止められなくて、だから皆死んだ。 そう、死んだのだ。 皆死んだ。 (…………………終われるか) 佐天涙子は死んだ。 上条刀夜は死んだ。 食蜂操祈少女Aは死んだ。 蜜蟻愛愉と思われる少女は死んだ。 煌輝は死んだ。 見知らぬ男は死んだ。 見知らぬ女は死んだ。 見知らぬカップルは死んだ。 青髪ピアスは死んだ。 吹寄制理は死んだ。 …………インデックスは、死んだ。 (こんな終わりを、認められるか!) 理不尽に、 不条理に、 無作為に、 死んだ。 (こんなっ、こんな、こんな、ァ!)
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 18:06:33.58 ID:yAhm9urX0 だから、だから、だけど。 諦めるわけにはいかない。 終わらせるわけにはいかない。 諦めたくない。 終わらせたくない。 だから、だから、だから! (動けよ) この首を絞める手が誰のモノなのかは分からない。世界を滅ぼした犯人が幻想殺しイマジンブレイカーによって難を逃れた上条を直接殺しに来たのかもしれないし、そうではないのかもしれない。 けれど、その手に殺意があるのは確かで、 何もしなければ上条はここで死んでしまうから。 (動けよ、俺!!!) 死にたくない。 [ピーーー ]ない。 ここで、こんな、これで、終わり? そんなの嫌だ! だから動け、動け、動け。 手に力が入らない? あぁ、そうだよ。拳を握りしめることすら重労働だよ! 瞼が重くて下がりそう? その通りだよ。眠くて眠くて仕方がないんだ。今すぐにでも眠りたいんだよ! 意識がなくなってきた? 暗くて寒くて怖いんだよ! でも、でもっ、でもっ! 「――――――ぅ、が」 意志力の限りを尽くして、魂から力を引き絞って、今限界を超えなければいつ超えるんだと思いの限りをもって、 上条は、 上条当麻は、 「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 死力を尽くして首に掛けられている手を払っ 急に圧迫感が消えた。 「ぁ、ふっ!?はっ、はひ……っ!ひ、ふぁ――ぜっ、ヒュ――ッ!?」 首を絞めていた誰かの手が消えて、上条は思わず膝をつく。新鮮な空気を求め、喘ぐ様にして息をする。 「ぜぇ……っ、ぜはッ、ヒュ――ッ。……はぁっ、はぁ……っ!」 息、息が出来る。 足りない酸素を補うことがこんなに難しいなんて上条は知らなかった。 (く、空気を) 世界に満ち溢れている空気を吸って、吐いて、鼻から吸って、口から吸って、吐いて、そうやってどうにか自分自身の体調を正常に戻そうとする上条。絞められた首は未だに痛く、気管が圧迫された影響は色濃く残っている。まだ、まだまだ全然辛い。痛い。息が吸えない。吐いて、吐くことしかできない。 吐くことしか 「上・条・さ・ん・ッッッ!!!???」 吐くこと、しか……? (―――――――――――――――) 呼吸が止まった。 今度は誰かに首を絞められているからではなく、上条自身が呼吸を止めた。 (…………待て) 今、誰の声がした? (ちょっと待て) 今の声は誰のモノだった? (待てよ!) 誰が、上条当麻の名前を呼んだ。 (―――――――――――――――――) 心臓の鼓動が激しさを増す。身体が震える。いや、あり得ない。あり得ないはずだ。あり得ないはずなのに、上条はその声の主が誰か知っているのに、だからこそ否定できるはずのなのに。 いないはずだ。その声の主は、その声で上条の名を呼ぶ人間は今四肢を捻じ切られて病院にいるはずで、よしんば抜け出してきたとしてもこの凄惨な現実の中で生き残ることが出来ているとは思えない。 希望はない。 奇蹟は起きない。 一条の光すらも存在しない。 そのはずなのだ。 (―――――――――――――――――――――――――――――――――――) 確かめなければならない。 だから覚悟を決めなければならない。 そう、その声の主は、誰だ? 上条の名を呼んだのは、誰だ? 「……………………」 息をのむ様な気配がして、それはつまりそこに誰かがいるということの証明だから、 ゆっくりと上条は顔を上げる。 ゆっくりと上条は視線を上げる。 まず、初めに見えたのは靴。そして生足が視界に入り、スカート、ブレザー、そして、 そしてその顔が、 「し……らい?」
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 18:07:00.58 ID:yAhm9urX0 白・井・黒・子・が・心・配・そ・う・に・上・条・当・麻・を・見・て・い・た・。・ 「………………、……、……………………………………………」 果たして自分が今見ている光景が現実なのか幻想なのか、上条には判断がつかなかった。 これが何者かによる精神攻撃によって見せられた幻覚ならば、その敵は大したモノだとすら思ってしまった。 「っ、上条さん!しっかりしてくださいまし!いったいどうしたと言うんですの!?」 「上条さん……?」 ふらり、と揺れる。 先ほどとは違う意味で視界が揺れる。 (なん……だ……) 「上条さん!重軽っ、今すぐ医者を――――――」 「だから結界で区切られてるんですよ!後十分わ無理です!」 白井がいて、重軽がいて、佐天がいて。 上条が蹲っている場所は病院の一室だった。 「なんだ、……これ……?」 ここがどこか上条は知っている。 見覚えがある。 だからこそ分からない。 「なんだよ……これっ!?」 意味が分からない意味が分からない意味が分からない意味が分からない意味が分からない意味が分からない意味が分からない意味が分からない意味が分からない意味が分からない意味が分からない意味が分からない意味が分からない意味が分からない意味が分からない意味が分からない意味が分からない意味が分からない意味が分からない意味が分からない!!!!! なんだ、これ!? 「……上条さん?」 状況をよく理解していない佐天は4人の中で唯一混乱していなかった。そんな佐天を見て、少しだけ上条の心が落ち着く。 佐天は凡人で、平均以下だ。そういうと悪い意味に囚われてしまうだろうが、それは決して悪い意味だけではない。 天才を騙すことは容易く、馬鹿を騙すことは難解で、豚を騙すことはできないのだ。 「佐天!」 「ひぇ!はっ、はい!何ですか上条さん!」 「今日っていつだ?」 「……………はい?」 4人の中で一番頭が悪いから佐天は白井や重軽ほど騒がなかったし上条ほど動揺しなかった。 4人の中で一番判断力がないから佐天は白井や重軽のようにすぐに行動できなかったし、上条のように蹲らなかった。 凡人、平凡、平均未満。その鈍さはこの場において何よりも有用だった。 「今日って何月何日でっ、今って何時何分なんだ!答えてくれ!」 「えっ、と……」 少し、逡巡して、 「今日は8月29日で、時間はたぶん午後2時くらい、……です」 「8月29日……」 8月29日は8月31日の2日前で8月28日の1日後だ。 「8月、29日……っ?」 8月28日は御坂美琴が行方不明になってからちょうど1週間がたった日でフェブリを保護して白井が倒れた日で、8月31日は超能力者予備集団セブンバックアップ第七位瞬瞬と屋上で戦い風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキング第8位千疋百目の運転するアクロバイクに乗って『スタディ』の異常に乗り込んで御坂美琴と再会しその死をまじかで見て蜜蟻の『復讐』にあって全てが死滅した日で、 そして8月29日と言えば風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキング第16位重軽石と共にフェブリの件について話し合った日だ。 (戻ってる……?) 「――――――!?」 「――――――っ、――――――!?」 遠い。こんなに近いのに、あまりにも遠すぎる。 聞こえない。こんなに大声を出しているのに2人の声が聞こえない。 何で、何が起きてるんだ? 「上条さん?」 「どうして、……なんでっ……?」 ふらふらと、夢遊病患者のように立ち上がって、上条時は病室のドアに近づいた。 その手を扉にかける。 蒼白な顔で、震えを抑えられない腕で、目は虚ろ、足は竦む。 それでも、 「何をっ」 確認しなければならない。 確かめなければならない。 ここはどこで、今はいつで、世界はどうなっているのか。 そして、 「…………インデックス」 片腕は切り落とされて、半ばまで切断された胴からは醜悪な内臓が零れ落ちていた。白を基調とした修道服はあちこち切り裂かれ、穴が開いて、そこから流れる血が修道服を赤黒く変色させていた。 数えるのも馬鹿馬鹿しいほどの傷がインデックスの身体を冒していたのを上条は見ていた。 外傷の無かった佐天や刀夜、食蜂に青髪ピアス、吹寄、輝と違ってインデックスの身体はズタボロだった。 今の上条当麻が知らない過去の上条当麻がその命を懸けて、記憶を喪ってまで助けた少女は原形を留めないほどに切り刻まれて死んでいた。 そうなっていた。 「インデックス!!!」 扉を開けた。
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 18:07:27.95 ID:yAhm9urX0 もう抑えきれなかった。 「どこに行くつもりですのッッッ!!!???」 全力で廊下を走って、走って、走って、結界で区切られていた空間から抜けた上条は病院の喧騒の中に放り込まれた。 「――――――あ」 ざわざわざわざわと各所から聞こえる人々の声。それは例えば看護師と病人のやり取りで、それは例えば受付をする人の声で、それは例えば電話をしている人々の声で、それは例えば友人と会話をしている人の声で。 そこは『平穏』だった。 「――――――っ!」 何かを否定するかのように上条は再び走り出す。 病院を出て、街の中に飛び込む。 すぐに目に入った。 「…………嘘だ」 顔が引き攣るのが分かった。 一瞬全ての色が消え去った。 何が、ではなく、何で、ではなく、何を、ではなく。 目の前の現実を見つめることが上条にはできなかった。 そんなはずがない、なんて。 こんなのはうそだ、なんて。 誰にも共感されない思いを上条は抱いていた。 「――――――ッ!!!」 また走り出す。 何かから逃げ出すように、何かに耐えられなかったから。 (違う違う違うっ!) 右を見れば誰かが恋人と楽しいひと時を過ごしていた。 ――――――走り出す。 左を見ればオシャレなカフェテラスで誰かが紅茶を嗜んでいた。 ――――――走り出す。 前を見れば赤になった信号機を見て皆が立ち止っていた。 ――――――走り出す。 後ろから喧騒が襲ってきていた。 ――――――走り出す。 「違う違う違う違う違う違う!!!!!」 何処をどう走っているのかもう分からなかった。ただ、人の目から逃れるように、人の声から逃れるように、そこにある『日常』から逃げ出した。 暴力的だ。 凶暴すぎる。 あまりにも目に毒だ。 「はぁっ……、くっ、あああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」 これが現実? それとも幻想? 何を信じればいい? 何が確かなんだ? 「何なんだよこれはああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 走って走って走って。 狂って狂って狂って。 そして、 そして、 そして、 「ぁ」 上条はいつの間にか自分の部屋の扉の前に立っていた。 「……………」 勇気。 勇気がいる。 この扉を開けるには、莫大な勇気が必要だ。 「………………、行く、……ぞ」 手に力を込めた。 ドアノブを握って、回した。 そして、上条当麻はその扉を――――――。
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 18:07:59.19 ID:yAhm9urX0 https://syosetu.org/novel/56774/152.html とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六 << 前の話 目 次 次の話 >> 152 / 178 お前は嘘吐きだ。 地球は球体に決まっている。 お前は嘘吐きだ。 1+1は2に決まっている。 お前は嘘吐きだ。 世界は只の一度も滅んでなどいない。 ――――――二九七 上条当麻とインデックス@ 世界で一番大切な人 作戦会議@ 前史ではいなかった人 「あれ、どうしたの当麻?」 「――――――――――――――――――――――――――――――――――」 はたしてその時の自分の心情をなんといえばいいのか、上条には分からなかった。 安心?そうなのかもしれない。 切情?そうなのかもしれない。 親愛?そうなのかもしれない。 溢れんばかりの感情の奔流に飲み込まれる。それを自覚した。 「とっ、当麻!?」 だから、上条は全力でインデックスのことを抱きしめた。 涙が流れるのを自覚した。 大切な、本当に大切な人。 記憶を喪った上条当麻でも、それだけは覚えていた。 記憶を亡くしても、心は覚えていたから。 「―――――――」 「……どうしたの、当麻?」 「……良かった……」 意味が分からないだろう。 けどそれでもいい。 自己満足に過ぎないだろう。 でも無事でよかった。 優先順位を付けたいわけではないけれど、上条にとってインデックスは命よりも大切な人で、他の誰よりも大切な人で、本当に、本当に大切な人で。 「よかった……、ちくしょうっ、本当によかった……っ!」 「当麻……」 その激情を抑えることが出来ない。しない。 膝をついて、ぐしゃぐしゃになった顔をインデックスの肩に埋め、上条は泣いた。それほどまでに、あの時受けたショックは大きかった。 血みどろの姿で死んでいたインデックスは、腹の内から内臓が零れ落ちていたインデックスは、あの時助けられなかったインデックスは、 生きている。 生きていた。 今、腕の中にいる。 「大丈夫。大丈夫なんだよ当麻。私は、ここにいるから」 慈しみをもってインデックスは上条を抱きしめ返した。今にも壊れてしまいそうなほどに弱弱しく、優しく触れないと崩れてしまいそうなほど羸弱るいじゃくに見えた。 上条とは思えないほどだった。 「――――――っ!」 返すようにもう一度上条はインデックスを抱きしめる。縋るように、頼るように。 あの時死んだインデックスがいないくなったわけではない。上条がインデックスをたすけられなかった事実がなくなったわけではない。 けれど、今は、今だけは泣いていいだろう。喜んでいいだろう。 上条はまだ、15歳の少年なのだから。 「当麻、何かあったの?」 インデックスは上条のこんな表情を見たことがなかった。インデックスの知っている上条はどんな時でも優しくて、他者を気づかえて、そして『強い』人だった。 「世界が、……滅んでたんだ」 「?」 今の上条はいつになく弱気だった。 「みんな、……死んでたんだよ」 だから本当に珍しいことに上条は弱音を吐いた。よりにもよってインデックスに対して弱音を吐いた。 あの光景は、全てが死で終わってしまっていたあの世界は、それほどまでに上条の心を蝕み、蹂躙し、冒し尽したのだ。 「俺……っ、俺は!お前のことを護れなかったんだ……っ!!!」 誰かを頼るという事を上条はしたことがなかった。それは決して他者を信じていないからではなく、頼ることで巻き込みたくなかったからで、だからインデックスの事を気づかって、護りたくて、上条は今まで関わってきた事件についてインデックスに話したことはなかった。 三沢塾の事件の時、魔術師が相手にも関わらず上条はインデックスに頼らなかった。 1人で出来ると思ったわけではない。脅威を理解していなかったわけではない。ただ、それでもいやだった。 その『枷』が崩壊する。 その『枠』が超越される。 救済者ヒーローの『意識』が崩壊していく。 けれど、 「ぁ」 ゆっくりと、壊れモノを扱うかのようにインデックスは上条の頭を撫でた。 それはまるで聖母のような、 それはまるで聖人のような、 救いの赦し。
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 18:09:08.27 ID:yAhm9urX0 「落ち着いた、当麻?」 「イン、……デックス」 「よくわからないけど、世界は滅んでないし、誰も死んでないんだよ」 安心させるような柔らかい微笑みを浮かべて、インデックスは上条の顔を真っ直ぐ見つめた。よくわからないけど、本当によくわからないけれど、何が起きているのか分からないけど、シスターとして他者を癒すことはインデックスの義務だ。 インデックスは魔導書図書館である以前にイギリス清教必要悪の教会ネセサリウスのシスターなのだ。 「私も、ここに居るから」 それが安心をもたらせるかは分からない。ただ、何かに怯え、何かを後悔する上条を安心させようとインデックスは懸命に上条に話しかけた。 「っ、う、っぁあ!!!」 焦らせるようなことはせず、聞き質すようなこともせず、糾弾するようなことも当然せず、インデックスはただ上条を抱きしめ、撫でた。 「大丈夫、……大丈夫だから」 それが赦し。 上条当麻はインデックスに赦された。 …………もう永遠に会うことのできない、もう永劫に失われてしまった、1周目のインデックスの代わりに、2周目のインデックスに、 赦された。 たぶん、この場で1番混乱していたのは白井だった。 「…………どういうことですの?」 「…………誓って言いますけど、私わ何もしてません」 そして白井の次に混乱していたのは重軽だった。 『ストロビラ』を抜いて白井が暴走した時はこんなはずじゃなかったなんて思っても冷静だったが、上条が理解不能な行動をとった今はさしもの重軽とて混乱していた。 「『ストロビラ』を埋め込んだのは風紀委員本部セントラルジャッジメントですわよね。上条さんが急に何処かに行ってしまったのも、あなた方に原因があるのでは」 「それわ違うっ、……違うはず」 咄嗟に否定してしまったが、重軽は断言をすることが出来ない。風紀委員本部セントラルジャッジメント。風紀委員ジャッジメントの最上位機関。重軽はそこに所属しているわけだが、風紀委員本部セントラルジャッジメントの全貌を知らない。 風紀委員本部セントラルジャッジメントは秘密が多い組織なのだ。 『外』から風紀委員本部セントラルジャッジメントを探ることはもちろん、『中』から風紀委員本部セントラルジャッジメントを探ることも出来ないほどに情報管理が厳格で、メンバーの動向は常に監視されていているほどに秘密が多い。 だから重軽石は風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキング第16位の上位序列者ハイランカーであり、風紀委員本部セントラルジャッジメント諜報部隊第二班班長の立場をとり、聴覚強化アコースティックストリングスの強能力者レベル3で、専用装備として『可聴外音出入力式完全完殺兵器BDYブレイドダンスユニット48』を与えられているのにも関わらず、白井の問いに確信をもって答えられない。 重軽の立場では無理なのだ。風紀委員本部セントラルジャッジメントの全てを知る人間は委員長である人間操者パペットマスター白白白だけ。委員長補佐である木葉桜十五夜や5人の総隊長ですら、風紀委員本部セントラルジャッジメントの全てを知っているわけではない。 特に計画スケジュールに関することは。 「だったら何が!?」 「誰かの能力による精神攻撃……?それとも私達にわ見えないモノでも見た……?」 重軽には分からなかった。 上条は『特別』。あの委員長すら己と同格と認める『特別』。 だとしたら、 上条当麻は何を見た? 上条当麻は何を知った? 「あの、追いかけた方が」 「結界があるって言ったでしょ。私達に上条当麻わ追えません。もう少し時間がたたないと」 結界。『スタディ』による学究会襲撃に関する防衛作戦を説明する間に邪魔が入らないように場を区切る結界。 超能力ではないもう1つの力によって張られた結界。 それを越えることは重軽達にはできない。 「携帯で連絡はとれないんですか?」 「外界とのやり取りわ完全に遮断されてますよ。通信や念話能力テレパスも含めてね」 「……ならば外部から上条さんに干渉するのは不可能ではありませんの」 上条の異常行動の理由として2人は『誰かが上条に何らかの干渉をしたから』だと考えようとしていた。確かに、それが1番納得のできる理由だ。 この場において上条だけに異常行動が見られたのだから、上条だけに何かがされたと考えるのが一番納得がいく。 あまりにも少ない情報の中では、そう考えるしかなかった。 「そう、その通り、上条当麻に外界から干渉することわ不可能なはず……」 だから行き詰まる。 正解に辿り着けない。 「私達の中に、……いるとでも?」 「……あり得ないでしょう。メリットがない。デメリットしかない」 「ならなぜですの?」 「なぜ……?こっちが聞きたい!」 上条が異常なのではなく、重軽と白井と佐天が異常な可能性。上条が間違っているのではなく、重軽と白井と佐天が間違っている可能性。 上条だけが『正解』を知っている可能性。 「っ、くそっ、これじゃ計画が」 所詮、理外人外でもなく、幻想殺しイマジンブレイカーすら持たない登場人物キャラクターでは、いくら称号持ちネームドでもこの程度であった。 「…………計画?」 ほんの少し、白井の瞳が鋭くなる。 「なんでもないです。……とにかく上条当麻を連れ戻さないとっ、彼がいないと話しても意味がない!」 重軽の任務は上条と白井を『スタディ』の件に参加させること。だから上条がいなければ説明しても意味がない。佐天はいなくなっても別にかまわないが、上条に替えが効かない。 対面して会話して接触して実感した。上条は特別だ。個性がある。そしておそらく特別な称号キャラクター性もある。 いなくなっていい人じゃない。
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/13(日) 18:09:45.40 ID:r0uYJLf+o 止めろガイジ
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 18:10:19.39 ID:yAhm9urX0 「とわいえ外部と接触する手段がないのも事実です。だから」 「邪魔するぜ」 それはまるで図っていたかのようなタイミング。 偶然にしては出来過ぎていて、重軽の意図を外した出来事。 ここで1人、メンバーが追加された。 前史ではいなかったはずのメンバーが、前史では関わらなかったはずのメンバーが、まるで上条の代わりに補充されたかのように病室の中に加わった。 「……誰、ですか?」 その風貌に佐天は気圧された。 左目が閉じられている。まるで漫画のキャラクターのように大きな刀傷のようなモノが額から左頬にかけて奔っている。戦いの結果として出来た傷なのだろう。それだけ壮絶な戦いだったのだろう。 佐天が今まで見たことの無い人種だった。 だから口元を手で覆う。直視できない。非日常。 「オレか?オレは」 「糸獅子宍しししし死屍しし、なぜあなたが?」 新たなメンバーの名は糸獅子宍しししし死屍しし。糸獅子宍ししししが名字で死屍ししが名前。 風紀委員本部セントラルジャッジメントのメンバーの1人。 白井の超能力チカラの暴走によって崩壊した病室の補修を頼んだ人間。 「うちの部隊のトップからの指示だぜ。重軽、オメェはここで待機だぜ」 「っ、待機!?今日中に計画を説明しないと間に合わなくなると言ったのわ風紀委員本部セントラルジャッジメント側ですよ!」 「んなこと知ってるぜ。その上で待機命令が出てんだぜ。まっ、きっと事情が変わったんだぜ」 「っ!?」 その事情が変わったのは重軽が上条と白井の首から『ストロビラ』を抜いたからか? それとも上条が酷く憔悴した様子で飛び出していったことを察知したからか? まさか重軽が冥土帰しヘヴンキャンセラーに頼んでいたことがばれたのか? 「そういや自己紹介がまだだったぜ」 ともかく『上』から待機命令が出た以上重軽はここで待機する必要がある。何せ『上』からの命令は、 そう風紀委員本部セントラルジャッジメントに所属している以上組織を乱すわけにはいかないからメンバーは『上』からの命令に絶対に、 何よりも優先すべきなのは『上』からの命令で、 重軽はそれに逆らうわけには、 「風紀委員本部セントラルジャッジメント支援部隊第一班班長、風紀委員本部セントラルジャッジメント序列ランキング第17位、原子分解ディスインテグレイトの異能力者レベル2、糸獅子宍死屍しししししししだぜ。たぶんもう会わねえと思うけど、よろしくだぜ」 いいや、 重軽はもう知っているはずだ。 出来るはずだ、重軽なら。 (私わ私っ!私わ自分の、今度こそ自分の意志で……っ!!!) 風紀委員本部セントラルジャッジメントメンバーの行動を制限する緊急装置ベイルアウト。右手首につけられたそれを睨みながら、重軽石は頭を侵す鈍い痛みに耐えていた。
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 18:13:29.86 ID:yAhm9urX0 https://syosetu.org/novel/56774/153.html とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六 << 前の話 目 次 次の話 >> 153 / 178 上条当麻とインデックスA 手掛かり いつまでも泣いているわけにはいかない。時間はもう、ほとんどないのだから。 「サンキュー、インデックス。……だいぶ落ち着いた」 「よかった。それで、どうしたの当麻?」 どうしたもこうしたもない。全てが終わって滅んで死んだのだ。そしてそれがなぜかなかったことになっているのだ。 何も分からないままに何かがあって、何も気づけないままに何かがあった。 そう、だから、まずその何かが何なのかを探ることからしなければならない。 「…………聞いてもいいか、インデックス」 全ての物事にには原因がある。その原因によって結果が起きる。 世界が滅んだのにも何か原因があるはずだ。 その理由を知らなければならない。 もはや四の五の言っていられない。上条の知識だけではあの滅びは回避できない。 巻き込みたくないとか護るために遠ざけるとかそんなことをして守れなかったら本末転倒もいいところだ。 絶対に、もう二度と、あんなことは起こさせない。 そのために、矜持を曲げる。 インデックスを頼る。 「何を」 「魔術で世界を滅ぼすことって、可能か?」 息をのむ音が聞こえた。 10万3000冊の魔導書を記憶したインデックスだからこそ、上条の問いに対して多くの想像が出来てしまった。 魔術。その可能性と幅の広さ。 奇蹟の体現。無能故の憧れ。神話の力を手に入れる行為。 魔まの術すべ。 「出来なくは無いんだよ」 「具体的にどんなモノがある?」 「具体的に……」 なぜ上条がそんな質問をしたのかインデックスには分からなかった。だが、その真剣さと恐怖に歪んだ顔から何かのっぴきならない事情があることは容易に想像できた。 追いつめられている。何かに怯えている。インデックスを頼るほどに。 それが分かるからインデックスは魔導書図書館としての己の知識を総動員して答えた。 「世界を丸ごと異世界に移す異界反転ファントムハウンドとか、地球の平均気温を氷河期レベルまで一気に下げる永久凍土コキュートスレプリカとか、宇宙から隕石を落下させる天球にて輝く星々よシューティングスターライト、 晦冥の中で失墜せよメティオライトフォールとか」 次々と出て来る滅亡級魔術を上条は前の世界の状況と照らし合わせ、検証する。 世界を丸ごと異世界に移す異界反転ファントムハウンド?違う。あの死の世界は異世界なんかじゃなくて確かに地球上だった。 地球の平均気温を氷河期レベルまで一気に下げる永久凍土コキュートスレプリカ?違う。気温が下がった様子は全くなかった。だいたいそこまで気温が下がったら上条だって死んでいる。 宇宙から隕石を落下させる天球にて輝く星々よシューティングスターライト、 晦冥の中で失墜せよメティオライトフォール?違う。隕石が落下したなら地上はもっと蹂躙されているはずだ。 「大陸を割るレベルの地殻変動を起こす極大地震アースシェイカーとか、既存の物理法則を改変する不自然律アナザープログラムとか、超規模の津波を起こす全海津波ダイタルウェイブとか」 大陸を割るレベルの地殻変動を起こす極大地震アースシェイカー?違う。地震が起きた様子なんて無かった。 既存の物理法則を改変する不自然律アナザープログラム?違う。判断は難しいが、あの死にざまは物理法則が改変されたモノではないはずだ。 超規模の津波を起こす全海津波ダイタルウェイブ?違う。水なんてどこにも無かった。 「後は、……外界との接触を一切断つ閉鎖世界ディストピアとか。今言った以外にも世界を滅ぼすだけの魔術ならいっぱいあるんだよ」 「………………………………」 10万3000冊の魔導書の知識をその身に保管した魔導書図書館Index-Librorum-Prohibitorumの知識は並みではない。間違いなく世界でも五指に入るレベルの魔術知識を保有している。そんなインデックスだからこそ滅亡級の魔術を次々と口に出すことが出来る。そしてそれは上条にとって大きな役に立っていた。 最も、インデックスとてこの世に存在する全ての魔術を知っているわけではないが。 「じゃあ、その中に」 ものすごく頼りになった。 だからさらに深く、鋭く、踏み込む。 この惑星ホシを今度こそ救うために。 「一瞬で、世界中の人を、外傷無く、[ピーーー ]魔術はあるか?」 「一瞬で、世界中の人を、外傷無く…………?」 一瞬つまる。しかしそれは上条の言うような魔術が思いつかなかったからではなく、むしろ逆で。 「それも割とたくさんあるんだよ」 魔術の幅は広いのだ。 インデックスの知識の幅もまた広いのだ。 「地脈を乱して地球上の生物に特定の影響を与える星による種の否定エンジェルボイスとか、『死』そのものを降臨させることのできる滅亡齎す七の子羊セプテム・アニュスとか、致死率100パーセントのウイルスをばら撒く致死病療666ウイルスとか」 地脈とは土地に起因するエネルギーのことだ。惑星の中を血流のように循環するエネルギーで、この地脈を利用することによって人払いのような魔術を使う事も出来る。そしてその地脈を上手く弄いじれば生命体を滅ぼすことも可能だ。
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 18:14:26.31 ID:yAhm9urX0 神話には様々な『死』がある。ギリシャ神話には死そのものを神格化したタナトスという神がいるし冥府の神であるハデスも存在する。また、メソポタミア神話には同じく死に関連するネルガルやエレキシュガルなどの神が存在する。そんな『死』が地上に来れば、生物など一瞬で滅ぶだろう。 ウイルスというももちろん侮れない。1918年~1919年に流行したスペイン風邪は死者5000万人~1億人と言われといるし、14世紀の黒死病ペストは当時のヨーロッパの人口を半減させたと言われている。致死率100パーセントの病がばら撒かれれば、人類など確実に滅亡するだろう。 「他には――――――」 「そんなに、あるのか……」 割と条件を限定したつもりだったが、上条が思っている以上に魔術というモノは多くの種類があるらしい。そしてだからこの現状は絶望的だ。インデックスの知識をあてにすれば前の世界が滅んだ理由を解明できると思った。どう考えても世界があんな風になった理由は魔術にあると思った。学園都市製の超能力ではあんなことは出来ない。範囲も威力も何もかも足りない。ならばあの異常はきっと魔術によるものだと結論付けるのはある意味当然の帰結。 にも拘らず謎は解明されない。出来ない。 絶望的だった。 時間がない。 時間がないというのに。 「でも当麻。はっきり言って今言った魔術が発動する事なんて絶対にないんだよ」 「は?なんで?」 「魔術を発動するには準備が必要なのは当麻も知ってるでしょ。ステイルがルーン魔術を使うためにルーンカードをばら撒くみたいに基本的に魔術を使うためにはそれ相応の準備がいる。もちろん大規模な魔術を使いたいなら、多くの時間と多くの費用と多くの準備が必要になるんだよ」 当然のことだ。学園都市の学生が使う超能力とて脳に電極を刺したり投薬を行ったりなどの準備がいる。それは魔術も変わらない。一部の例外、生まれた時から選ばれている聖人などを除けば魔術を使うにも準備がいることは当然の帰結。 そして大きな力を使うためには大きな準備がいる。 世界を滅ぼすほどの魔術を使うとなれば異常なほどの準備期間が必要だ。 「道具も、お金も、場所も、技術も、人手も、時間も、異常なくらいの質と量が必要になる。そんな準備を私達魔術師が見逃すわけがない」 魔術師というのは独善的で自己中心的な存在だ。 だがそれでも禁忌はある。過剰な人体実験を忌避したり、科学との融合を断罪したり、そして世界を滅ぼしす事もまたしかり。 それは絶対の禁止事項。 「普通ならどんな魔術師だって世界が滅んでいいとは思ってないんだよ。だから、世界を滅亡させるような魔術を使おうとする魔術師はその魔術の発動の予兆が見える前、その準備をした、しようとした段階で全員例外なく殺される」 「殺っ!?」 「仕方ないんだよ。世界を護るためには、そういう事もしないと……」 「…………そこまで」 そこまで、そこまでの体制をしいているのであればどうして世界は滅んだのか。 世界を滅亡させるような魔術を発動させるためには多大な準備が必要になる。その準備を魔術師は決して見逃さない。そして発見し次第対象の魔術師は殺される。 ではなぜ前の世界は滅んだ。 どうして誰も気づけなかった。 「当麻、私からも質問していい?」 「…………あぁ」 「何が、あったの?」 何があったか。決まっている。世界が滅んでいたのだ。そういうのは簡単だ。 しかしインデックスにそのことを説明するか迷う。 その選択が正しいのか否か、どんな選択をすればインデックスを助けられるのか、話すことでインデックスが死んでしまわないか。 嫌でも思い出す。インデックスの死にざ ま、を――? 「……………………………ぇ」 インデックスの死に様? インデックスはどう死んでいた? (待て、待て待て。思い出せ……っ!) 吐きそうになるくらい気分を悪くしながら上条は必死に思い出す。 そう。そうだ。あの時、スタジアムの中で死んでいたインデックスは……っ! 「そういう事かッ!」 分かった。手掛かりが分かった。 やっぱりインデックスが手掛かりだったのだ。気付いていた。分かっていた。インデックスは気付いていた。前の世界のインデックスはちゃんと気付いていて、止めようとしていた。そうだ。だからインデックスはあんなに傷ついて、凄惨な姿で死んでいたのだ。 凄惨な姿。 片腕を切り落とされ、 半ばまで胴を切断され、 その傷口から内臓が零れ落ち、 白を基調とした修道服はあちこち裂かれ穴が空き、 そこから今もなお流れ出る血が修道服を赤黒く変色させ、 数えることすらも馬鹿馬鹿しくなるほどに多くの傷がインデックスの体にはあった。 それが1周目のインデックスの死に方。 それこそがインデックスが残した手掛かり。 「当麻?」 「ちょっと付き合ってくれ」 立ち上がりながら、決意を込めた瞳でそう言って 「いいけど、どこに?」 「とあるスタジアムに一緒に行ってほしい。理由は道すがらに説明するから」 タイムリミットは後3日。 絶対に、人類を滅ぼさせはしない。
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 18:15:29.33 ID:yAhm9urX0 https://syosetu.org/novel/56774/154.html とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六 << 前の話 目 次 次の話 >> 154 / 178 イベント発生条件:8月31日以前にスタジアムを下見に行くこと。 上条当麻とインデックスB 隠しイベント発生 事情を話し終えると同時にスタジアムについた。 「―――――――てことがあったんだよ」 「……俄には信じられないんだよ」 インデックスが上条に聞かされたのは正気とは思えない内容だった。 世界が滅んだ?人類が滅亡した?それを上条だけが憶えている? 馬鹿かお前?と一笑できる内容だ。 普通なら、いくら優しいインデックスといえども信じられない。 だがしかし、そうけれど、他でもない上条が言ったことなのだ。 命をかけてインデックスを救い、その右手にあらゆる異能を無効化する祝福の異能幻想殺しイマジンブレイカーを保有する上条当麻が言ったことなのだ。 一概に否定はできなかった。 「でも、当麻の言うことが本当なら……、魔術で…………。世界が滅びるなんて、そんなこと……」 不可能、ではないはずだ。だが限りなく不可能に近いのも事実。 先ほど上条にも語ったように事前準備や反抗勢力の多さから魔術で世界を滅ぼすなんて現実的ではない。けれどもしもそれが可能となるのならば、可能性は2つ。 全魔術師が見逃すほど術者が狡猾だったか、あるいは何・ら・か・の・理・由・で・わ・ざ・と・術・式・の・発・動・が・見・逃・さ・れ・た・か・だ。 「俺の考えが正しいなら、このスタジアムの中に『何か』があるはずなんだ」 「どうしてそう思うの?」 「……お前がこの中で死んでたからだよ、インデックス」 「?」 それはさっき聞いた話だ。上条がインデックスに話した内容をすべて鵜呑みにするのならば、上条が体験したことは次のようになる。 まず、時刻Xに上条と共にいた3人が死亡。その後地上に出る途中で1人の死体を確認。そして地上に出てからはインデックスの死体を確認。あてもなく歩いていると街中で全ての人間が死んでいるのを確認。最期に何者かに首を絞められて、原因不明で過去に遡った。 そしてそこから構築できる推論はこう。 時刻Xにおいて滅亡級魔術αが発動。滅亡級魔術αの影響で全人類は外傷無く死亡。その後上条は外に出て、生き残っていた人物#シャープによって首を絞められる。そして最後に誰かが何かしたか自然現象か何かにより時を遡った。 全く持って理解不能だ。魔導書図書館と呼ばれるインデックスをもってしても中々理解が追いつかない。 「お前だけなんだ。お前だけが、傷ついて死んでたんだ」 「…………それは」 「他の皆は外傷が無かったのに、お前だけは外傷があった。つまり、ここでお前の死だけは特別な過程を経たモノで、だからこの場所に何かヒントがあると思うんだ」 「……………………仮に」 少し、考える時間を挟んで、 「仮に、世界の滅亡が魔術によるものなら、その魔術が発動する前ならともかく発動途中かした後なら、私は絶対にその魔術を見逃さないんだよ」 その自信はある。インデックスは伊達や酔狂で魔導書図書館を名乗っているわけではない。そして、その答えは上条の推論を裏付けるモノだった。 つまり、前の世界でインデックスは滅亡級魔術の発動を察知して、滅亡級魔術を止めようとこのスタジアムに入った。そしてそこで何者かと、おそらく滅亡級魔術の術者と出会い、交戦し、敗北し、死亡した。 だからインデックスだけは全身血塗れで死んでいたのだ。 インデックスの死因だけは滅亡級魔術によるものでは無かった故に。 「何があるか分かるか?」 「まだ、分からないけど、……滅亡級魔術なら大規模な魔法陣とか貴重な霊装が必要なはず。それを見つけられれば」 「発動阻止も出来る、か」 この場所で滅亡級魔術発動の準備が行われていたのはほぼ確定と考えていいだろう。科学に支配された学園都市で魔術の準備を行えば魔術師の目にはとまりにくく、学園都市には魔術師も入りにくい。 まさに気付かれない絶好の場所だ。 「もし術者を見つけたらどうするつもり?」 「捕まえて止める」 「……出来るの?」 その問いは実力の問題を問いただしているのか、それとも覚悟の有無を聞いているのか。 「やるんだ」 どちらでも構わなかった。どちらにせよやらなければならないことは変わらないからだ。殴りつけてでも止める。気絶させてでも止める。説得が出来ないなら戦うしかない。その覚悟はある。 敵がどれだけ強くても、世界で十指に入るほどの強者でも、やることは変わらない。 敵にどんな理由があっても、悲惨極まりない過去があったとしても、そんなことは世界を滅ぼしていい理由にはならない。 「インデックス、もし戦うことになったらお前は」 「逃げないよ」 戦う覚悟を上条だけが決めていると思っているのならそれは大きな間違いだ。 汚れを一手に引き受けるモノとしてIndex-Librorum-Prohibitorumの名を持ち、献身的な子羊は強者の知識を守るdedicatus545の魔法名を掲げ、その身に10万3000冊の魔導書を記憶した魔導書図書館。 イギリス清教が誇る人間兵器。 インデックスとてその覚悟は決めている。上条についてきた時点で、とっくに。 「それに、敵が魔術師なら私も戦えないことはないんだよ」 確かに1周目のインデックスは殺されたかもしれない。 1人であったが故に、抵抗できなかったのかしれない。 だが今は2人だ。 人は互いに支え合うことが出来る生物なのだ。 「…………滅亡級魔術を発動しようとしてる人間に見つかったら、逃げられるとも思えないし」 「分かった」 上条はインデックスを説得するようなことはしなかった。その瞳に宿った覚悟は上条にその行為をやめさせるには十分な熱量をもっていたし、あまり時間を使いたくなかったし、どちらにしても滅亡級魔術を見つけるためにはインデックスの協力は必須だし、インデックスの言っていることも一理あると思ったからだ。 だから止めない。その代わりに。 「絶対に護ってやるから」 「分かってる」 その二言で相互理解は十二分だった。 踏み込む。 決戦場へとまず一歩。 短い、しかしとてつもなく長く感じる通路を通り抜けスタジアムの中へ。 「―――――――」 「っ」 視界が開ける。 暗がりから一気に光が燈された場所へと踏み出す。 「………………何か、ありそうか」
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 18:16:46.12 ID:yAhm9urX0 そこは見る限り『普通』の場所だった。 半径100メートルほどの円形グラウンドに異変は見られず、観客席辺りに何か仕掛けられているということもなさそうだ。壁面、屋根、外に通じている通路にも特に異常は見られない。 科学的な視点を持つ上条の目では異常は分からない。 「今の所違和感はないけど……」 そしてインデックスも何ら異変を見つける事は出来なかった。 何処かに魔法陣が刻まれているという事もない。何らかの魔術が今展開しているという事もない。霊装も特に設置されていない。地脈の流れがおかしいという事もない。 普通だ。 この場所に魔術的な異常は見られない。 「本当にここで私が死んでたの?」 「あぁ、絶対にここで死んでた。その辺に血塗れで倒れ伏してたんだ」 インデックスが死んでいた場所に指をさして、上条は悔恨の表情のまま言った。 「…………なら地上には何もないのかも」 「地上には?」 そう言って、インデックスは指を下に向ける。 「まだ、地下に仕掛けてる可能性があるから」 「…………………………地下、か」 地下。 地下にはなるべくなら行きたくない。 今此処に上条達がいる事さえ実を言うとギリギリなのだ。 忘れてはならない。忘れてはいない。この場所は、このスタジアムの地下には暗部組織『スタディ』の居城がある。彼らが何をどこまで把握しているかは分からないが、上条が自分たちの居城の上にいて何かを調べていることは監視カメラか何かで当然把握しているだろう。 まさかとは思うが『スタディ』がこの瞬間にも襲撃してくる可能性はゼロではない。 その点を考えれば、『スタディ』にさらなる警戒をさせる可能性のある地下への潜入はあまり進められるものではない。 いくら『スタディ』の操る駆動鎧パワードスーツに対する絶対的ジョーカーを上条が持っているとはいえ、だ。 「当麻の言いたいことは分かるけど、世界を滅ぼす滅亡級魔術を地下で準備するのは十分にあり得るよ。滅亡級魔術は見つからないのが第一条件だし」 「……なら、行くしかないのか」 あと一歩のところで見逃してしまいました。その結果世界は再び滅びました。なんて笑い話にもならない。時には賭けに出ることも必要だろう。 「この惑星ホシを終わらせるわけにはいかないし」 「うん、多少のリスクは負わないと」 「だったらまずこっちに」 『スタディ』を必要以上に警戒する必要はない。自分たちはたまたまこのスタジアムにやってきた一般人だ、という体を装って上条はインデックスを地下に通じる通路の一つに案内する。 だが最悪は常に人の予想の上をいくものだ。 ――――――ガリッッッ、と、 何か、肩口から嫌な音がした。 「…………ぎ、っ?」 二撃目を避けることが出来たのは、一撃目が直撃したことで体勢を崩していたからだった。すなわち完全なる運で、そこに上条自身の意志は関与していなかった。 マグマに浸かったかのような熱さ、いやそれはもはや熱いというよりもただの違和感でしかなかった。 体勢が崩れる。足から力が抜け、それが結果的に頭を狙った二撃目を回避することに繋がった。 「――――――――――――」 今この場の時空間は完全に凍ってしまっていた。停止した時空間の中でインデックスの視線が上条の視線と交差する。何が起きたのか二人は分からなかった。分かっていても理解が追いつかなかった。 上条が膝をつく。 肩口から流れ出る鮮血は1周前と同じように上条の学生服を赤黒く染めていた。 その顔は苦痛に歪んでいる。 「にィ……っ、」 「と」
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 18:17:56.10 ID:yAhm9urX0 インデックスは魔術を使えない。 最も過去にインデックスが魔術を使えなかったのはインデックスに掛けられていた『首輪』や『自動書記ヨハネのペン』という霊装の維持にインデックスの全魔翌力が使われていたからであり、つまり現在のインデックスは魔翌力が練れる状態にはあるのだ。だからインデックスがその気になりさえすれば、現在のインデックスは魔術を使うことが出来るはずだ。 が、それでもインデックスは魔術が使えない。 インデックスという兵器に掛けられたリミッターは『首輪』と『自動書記ヨハネのペン』だけではない故に。 だからインデックスは何もできない。 上条は魔術を受け付けない。 その右手に幻想殺しイマジンブレイカーが宿っている限り、上条には回復魔術が通用しない。部位指定可能な回復魔術ならともかく全身を対象とした回復魔術を使うことは上条には出来ない。 右手を切り落としでもしない限り、上条に魔術は通用しない。 だから上条の身体を治癒する事は出来ない。 「当麻ぁっっっ!!!」 そして戦いが始まる。 上条にとって初めてとなる、人類絶悪暗部組織との戦いが。 現在は2周目の世界のため全体にマイナス補正がかかります。 2018/06/22 03:35時点で上位世界による干渉を確認しました。 2018/06/22 03:35時点で神の手により因果律を改変します。 2018/06/23 14:19時点で上位世界による更なる干渉を確認しました。 2018/06/23 14:19時点で神の手によりさらに因果律を改変します。 舞台設定完了 舞台『『スタディ』のメイン基地であるスタジアムの地上部』 問題確認 問題『突如として襲撃していた人類絶対悪残虐な狩り人による愉悦の狩猟』 物語進行率2% イベント名『滅びを回避するための事前戦闘未来を護り抜くための第一試練』 イベント難度ASBC- 特殊イベント難度ステージ3432 イベント完全成功報酬『対咎負虐殺戦における『明け色の陽射し』からの援軍』 イベント成功報酬『滅亡齎す七の子羊セプテム・アニュスの解析成功』 イベント失敗ペナルティ『未来における佐天涙子強化イベントの未発生』 イベント文『なぜ人類が死滅したのかあなたには分かりますか?』 これより特殊イベントを開始します。 さぁ、始めよう。上条当麻にインデックス。 人に仇為す悪を退治する時間だ。 ゲーム風に言うならこのイベントは2周目以降に解放される特殊イベントって感じです。 次の更新は6月中にです。 うっひょひょひょ!ひょほひゃああああああああああああ!!!!! 読みました?新約20巻読みました!? 私は読んじゃいましたよ!!!!! まさかね、まさか、ねぇ……っ!? 魔術と科学の全面戦争第二部が始まるとはねぇッッッ!? ふはっ!しかしプロットの修正は必要なさそうでよかった。神様ごちゃまぜ魔術とかイギリスを護る結界とかは私の妄想と見事に合致してたし、上手く使えそう……。 新約21巻でVS魔術、22巻でコロンゾン編決着!って感じだろうか? なるべく早くお願いしますよ!鎌池先生ッッッ!!! ………………しかし鎌池先生はいつも私の期待をぶち抜いていきますね。いいぞもっとやれ!
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 18:18:44.70 ID:yAhm9urX0 https://syosetu.org/novel/56774/155.html とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六 << 前の話 目 次 次の話 >> 155 / 178 上条当麻とインデックスC 隣に立たないという選択 あるいは上条が1周目の経験を受け継いでいればその攻撃を喰らうことはなかったかもしれない。 あるいはインデックスがもう少しだけ常識外れの考えをしていればその攻撃に干渉することが出来たかもしれない。 だが歴史にifもしもはない。そしてもしもがない以上、過去は覆らない。 だから、戦いが始まる。 「跳べえッ!!!」 「ッ!?」 反応出来たのは奇蹟に近かった。 避けることが出来たのも完全なる奇蹟だった。 二重の奇蹟が奇蹟的にインデックスの命を救った。 「うぁっ!」 声に咄嗟に飛び退く。一瞬前までインデックスがいた地面を何かが穿っていた。小さい、速い、これは何……弾丸、か? 「どっかに隠れてろ!」 「当麻は!?」 「なんとかっ」 ダンッ!、と空間を揺るがすほどの音が響いた。貫かれた右肩を庇いながら全力で横に転がる。誰が、どんな手段で、どうして上条達を襲撃してきたのか、全く分からない。 『スタディ』ではない、はずだ。 敵が『スタディ』なら襲撃してくるのはケミカロイド計画によって造られた人造生命体が操る駆動鎧パワードスーツのはず。だからこの襲撃は『スタディ』以外の手によるモノ。 だとすれば襲撃者の正体はきっと……。 「人類死滅の実行犯……っ!」 すなわち1周目の世界で滅亡級魔術を発動させた人間。そいつが上条達を襲ってきている可能性が高い。 音が聞こえる。ダンッ!、と空気を引き裂く死音が。姿の見えない何者かが上条に向けて超速で何かを放っているのだ。 「っい、ぐ」 見えない襲撃者。見えない攻撃手段。 だが、放たれているもの自体の体積が小さく底面積もまた小さい。それは穿たれた地面を見ればわかる。故に避けることはそう難しくない。速度も視認できない超速ではあるがかなりの距離が離れているのか発射音を聞いてから全力で行動すれば避けられる程度のモノだ。 上条当麻であれば避けられる。 (逃げるか、進むか) 此処にある選択肢は2つ。 どちらを選ぶのが正しいか、そもそも正解などあるのか。 時間は過去に逆行することがないというのであれば、上条が選べる選択肢は1つだけ。 生き残るため、生き残らせるため、何を選べばいい? 「お」 退く?退くか?退却か?撤退か? 否、否否、否否否! それが正しい選択とは上条にはどうしても思えない。 (進め) 恐怖心がないわけではない。 むしろ懼おそれは心の底から感じている。相手は十中八九前の世界を滅ぼした存在。上条が今まで相手にしてきた敵の中でも格が違う悪。そんな敵に怖さを感じないでいるなんて平凡な高校生である上条には不可能だ。 が、 「おお」 恐れ以上に感じるのは使命感。そして義勇。 あの悲惨をもう二度と起こさせてはならない。あの悲壮をもう二度と体験したくはない。一度やり直すことが出来たからといって、二度やり直すことが出来るとは限らないのだから。 (立ち向かえ) 故にこれは千載一遇の大チャンス。二度と来ないかもしれない機会。今を逃せばもう二度と上条が人類死滅の犯人に巡り合うことはないかもしれない。そう考えたら逃げ出す選択肢は悪手以外何物でもない。 今、この瞬間、現在が、絶対の好機。 「おおおおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああああああああああああああああッッッッッ!!!!!」 手の届く場所といったら遠すぎるが、それでも足の届く場所にいるはずだ。攻撃を受けているということは相手がこちらを認識できているという事。であるならば上条が相手を確認できないはずもない。 (攻撃が来てるのは前方っ!だったら敵は今――――――) 前方にいるはずだ。 前から攻撃が来ている以上その解は絶対的に正しい正答であると上条は判断する。 だから走れ、走れ、走る。 足を廻して腕を廻して頭を廻して只前に前に前に。 敵の攻撃の嵐にその身を晒されながらも、上条は必死に前に走る。 ――――――熱い。 「あぎ!?」 頬から一筋の鮮血が流れる。掠った。最短経路ではダメだ。直線だと当たる。ジグザグに走ってなるべく敵の狙いが定まらないようにっ! 左・足・が・何・か・に・当・た・っ・た・。 「――――――――――――」 躓く。 体勢が崩れる。 一瞬で悟った。 次の攻撃を避けることは、不可能だと。 (――――――――――――――――――――) 何が、悪かったのだろうか? 何が、いけなかったのだろうか? 最善を尽くしても届かないのだろうか? それほどまでに、敵との実力差は大きかったのだろうか? 見えない攻撃。圧倒的物量の弾幕。貫かれた右肩。 その全てが、上条の『敗北』を暗示していたのか。
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 18:19:29.78 ID:yAhm9urX0 「ぁ」 声にならない声は破滅を予感させるけれど、此処では違う。今はまだ、破滅は訪れない。 1人なら、これで終わっていたかもしれないけれど。 上条だけなら、これで負けていたかもしれないけれど。 今の上条は孤独1人ではなく、それが良い事なのか悪い事なのかは分からないけれど、 声が聞こえる。 泣き叫んでいるような、張り詰めた声が。 「左方へ歪曲せよTTTL!!!」 スタジアムの入り口付近まで下がったインデックスが強制詠唱スペルインターセプトを使う。ダダンッッッ!!!、と上条を襲う何かの嵐を少しでも和らげることが出来たらと、そんな思いで。 なのに、 「干渉、できない!?」 全くの無意味。効果なし。 (魔術的な狙撃じゃないっ?別の力……、科学的な狙撃!?) 強制詠唱スペルインターセプトはあくまで魔術を使用する魔術師の頭に言語によって割り込みを掛け、その魔術の暴走や発動のキャンセルなどの誤作動を起こさせることのできる魔翌力を必要としない魔術技術である。それ故に、敵が魔術を使っていないのならば、純粋な科学しか使っていないのならば、例えば狙撃銃を用いた狙撃とかには全く役に立たない。 つまりインデックスでは荒れ狂う弾幕の暴風雨に干渉する事は出来ないということだ。 「っ」 そして故に誰もどうすることも出来ない。 最初から分かっていたことだ。 敵の正体もわからず、どんな術式を使って世界を滅ぼしたのかもわからず、敵の攻撃の正体も分からず、そもそも本当に敵が魔術師なのかもわからず。 何もかもが分からない状態で戦いを挑んだって、勝てるわけがない。 勇者が魔王を倒すためには聖剣というキーパーツ伏線が必要で、鋼の剣で魔王に挑んだところで殺されるのが関の山だ。 準備をして、仲間を集めて、覚悟を決めて、能力を極めて、そうやって戦うべき相手だった。 焦りがあった。恐怖があった。それらが上条を前のめりにさせた。 逃げるべきだった。一度撤退するべきだった。 彼我の実力差を把握して二度目のチャンスを掴むことを画策するべきだったのに。 「ぃや」 インデックスの足が前に出る。 上条の傍に近寄ろうと、無意識のうちに走り始める。 間に合わない。間に合わない。間に合うはずがないと知っていても。 「いや」 逃げた自分を責め立てて、全てを見下す神様■■に嗤われながら、インデックスは走る。 隣に立っていれば、上条を突き飛ばして助けることが出来たかもしれない。 前に立っていれば、上条を庇って助けることが出来たかもしれない。 一緒に戦っていれば、上条が集中的な攻撃を受けることはなかったかもしれない。 かもしれない。かもしれない。かもしれない。 でも違った。それをしなかった。だから今懸命に走っている。 届かないと分かる。 彼我の距離は十数メートル。ただの女の子でしかないインデックスではその距離を詰め切るのに数秒かかる。 数秒あれば、敵の攻撃が上条を貫くには十分だ。十分すぎる。 だから、 だから、 だから、 「嫌ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!!」 普段のインデックスが絶対上げないような絶叫が、 10キロ離れても聞こえてしまいそうな音量で、 ……例えそれがどれだけ無意味なものだったとしてもインデックスにはもうそれしかできないから。 敵の一欠片の善性に訴えかけるかのように、心の中の祈り願いを声に出した。 「ご、ふ……」 だが、もちろん、至極当然のことだが、 祈って願いが可能のならばこの世に努力は必要ない。 神を信じて全てが救われるのならばとっくの昔にこの世から悲劇は消滅している。 物事を為すには努力が必要不可欠だ。 RPGでレベル上げもせずにボスキャラに挑んだところで敗北は必至。 音ゲーの初見プレイで最高難易度の曲をプレイしたところで失敗は必然。 普段を運動をしたことの無い人間がオリンピックに出れるわけがない。 成功には努力が不可欠で、その努力の質が高ければ高いほど成長できる。 だから、勝てるわけがなかったのだ。 人類絶対悪と呼ばれる最重要指名手配EX存在に、ちょっと戦闘経験があるだけの上条が、魔術を使う事も出来ないインデックスが勝てるわけがなかったのだ。 最初から分かっていた。 最初から分かっていた。 最初から分かっていた。 そんなことは最初から分かっていたことだ。 から、 「――――――――――――」 刹那にも満たない永劫の沈黙が重なった。 「――――――――――――」 そして事態は動き出す。
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 18:20:03.76 ID:yAhm9urX0 見た。 見たくない。 嫌だ。 赫い。 遠い。 もっと早く。 遅い。 もっと速く。 誰か……。 誰がいる? どうして離れたの? だって魔術を使えない私じゃ邪魔だから。 なんで1人にしたの? 隣に立つことだけが共に戦う手段じゃないよ。 どうして一緒にいなかったの。 私を庇いながら戦うことになるよりも、安全圏から援護したほうがいいと思いました。 それで? ……それで? それで? ――――――それで? それで? (……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………そ れ で ) それで、どうなった? それで、何が起きた? どうして? どうして? どうして? (どうして、私は……) 上条当麻彼の傍で戦う事を選ばなかったのだろうか、というあまりにも遅すぎる後悔を抱く。でもあの時は離れることが最善だと思った。当麻の指示だってそうだった。 だってインデックスは弱い。ナイフで刺されれば動けなくなる、殴られたら立てなくなる、魔術が直撃したら死んでしまう。それくらいインデックスは弱い。魔術さえ使えればその弱さも少しは解消できるのだろうが、しかし現実としてインデックスが魔術を使えない以上その議論に意味はない。 インデックスは弱い。 上条のようには戦えない。ステイルのようには戦えない。神裂のようには戦えない。 である以上、仕方がない事なのだ。 その逃げは酷く合理的な選択だ。 (間違えた) ただ、合理的な選択肢が正答であるとは限らない。 そう、インデックスは間違えた。 傍にいるべきだった。 隣に立って、本当の意味で共に戦うべきだった。 (まちがえた) 不正解を選んだ末がこのありさま。 これが結果。 だからこれで終わり。 順当な終末。 「……………………………は、はは」 ふらふら、ふらふら、ふらふら、と、 莫大な時間をかけてインデックスは上条の傍まで来ることが出来た。 その間、なぜか敵の攻撃は無かった。 情けをかけてくれたのか、気を使ってくれたのか、最期の別れくらいはゆっくりさせてあげようという憐みの思考か。 その行為こそがインデックスの絶望をさらに深くするモノだと知っているのか。 一思いに殺されて、人思いに殺された方がよかったのかもしれない。 その方が間違いなくインデックスは幸せだった。 幸せに[ピーーー ]た。 現実から目を晒して[ピーーー ]た。 でももう無理だ。もう、無理だ。 「は、はは、ははは、はははは」 膝をつく。 下を見る。 左腹と右胸に大穴を開けた上条が倒れたいた。 身動ぎひとつせずに、倒れ伏していた。 それが、この戦いの結末だった。
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 18:46:42.94 ID:yAhm9urX0 https://syosetu.org/novel/56774/156.html とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六 << 前の話 目 次 次の話 >> 156 / 178 ちょっと短いけど。 上条当麻とインデックスD 能無しの無能者 何もできない。 何もできることなどない。 無力だ。 あまりにも力がなさすぎる。 だから、何もできることなどない。 インデックスヒロインには上条当麻ヒーローを救えない。 「ひ、いやっ……当麻ぁ!」 血が、血が止まらない。 うつ伏せに倒れた上条はピクリとも動かないし、右肩と左腹と右胸に開いた大穴からはとめどなく血が流れている。穴に手を当てて血を抑えようとしても、そんなことが出来るはずもない。ハンカチ、修道服、その他すべて、血で染まっていく、血に染まっていく、赤くなっていく。 インデックスには何も出来ない。 だから焦りだけがインデックスの胸中を満たす。 失血死。その三文字がインデックスの脳裏を専有する。 「起きて、起きてよっ!ねぇッ、当麻!」 手と腕が赫く染まることも厭わずに、インデックスは上条の腹の下に腕を入れた。見たくない、見たくない、見たくない、けれど、確かめないといけない。だって認めたくない、認めたくない、認めたくない、なら、うつ伏せでは何も分からない。 (軽) 少しだけ、普段よりほんの少しだけ上条の身体が軽いようにインデックスは思えた。それは本当に少しの差で、だから一瞬気のせいだと思ったけれど、すぐに気が付く。 軽くなっているのは当然なのだ。 だってそうだろう。喪った血の分だけ、流れ出た血の量だけ上条の身体は軽くなっている。血液量の総重量は体重の約1/13程度であり、喪った血液の分だけ上条の身体は空ろになっている。 そしてそれ以上に、上条はいまだに身動ぎひとつしない。 「うそ、うそうそっ!こんなの……、こんな」 力を入れて上条の体勢を反転させる。うつ伏せの状態から仰向けの状態へと変える。そうすれば、そうすれば見える。顔が見える目が合う表情が分かる。そう、だからまだ希望はあるのだ。 動かないのは受けたダメージが大きすぎるからだと。決して死んだわけじゃない。 声を上げないのは痛みに呻くことすらできないほどに傷ついているだけだと。まさか死んだわけじゃないだろう。 身体が冷たい気がするのはただの気のせいだと。大丈夫十分に温かい体温は平熱だ。 呼吸音が聞こえないのは……、呼吸音が聞こえないのは、……きっとインデックスの耳が悪いだけ。呼吸をしてない訳じゃない。 だから大丈夫。大丈夫大丈夫。生きているに決まっているいつもそうだったインデックスはちゃんと知ってる。 (当麻は、強いんだよ) 最初に会ったあの日、上条は何の事情も知らないくせにインデックスのことを助けてくれた。 4日後の7月21日、上条は聖人に襲われても生き残ることが出来た。 そして7月28日、上条はインデックスに仕掛けられていた首輪を破壊し、インデックスを完膚なきまでに救った。 8月8日には錬金術師アウレオルス=イザードに浚われたインデックスを右腕を断ち切られながらも助けてくれた。 だからきっと今回も大丈夫なんて根拠のない理論に縋ってしまうほどにインデックスは弱くなってしまっていた。 前回、前々回と無事だったからといって次も無事とは限らない。そんなことインデックスはよく知っているはずなのに。 そしてインデックスは上条を仰向けの体勢にした。 「当麻」 呼ぶ声に応える声はない。 その瞳が映すモノはもはやない。 描かれた表情は最後の最期まで上条がインデックスの身を案じていたという事を物語っていて、 だから、分かった。 否が応でも理解した。 するしかなかった。 「当麻」 返事がなくて、おかしいな、とインデックスは思った。それが何を意味しているのか理解していても、納得なんてしたくなかった。 上条はいつもインデックスを気づかってくれた。 上条は家族を知らないインデックスを養ってくれた。 上条はインデックスの我儘を聞いてくれた。 上条はインデックスのために戦ってくれた。 上条はインデックス助けてくれた。 出会ってからたった1月程度の時間しかたっていなかったが、それでも十分すぎる時間だった。 「起きて、当麻」 誰かと共にいることがこんなに楽しいのだと、インデックスは初めて知った。 帰る場所があるということがこんなにも満たされることなのだと、インデックスは初めて知った。 記憶を喪う恐怖に怯えなくてもいいということがこんなにも安心できることなのだと、インデックスは初めて知った。 全部、上条がインデックスに教えてくれたのだ。言葉ではなく態度で、教えてくれたのだ。 「起きてよ、当麻」 幸せだった。 間違いなく幸せだった。 人生で最も幸福な1カ月であったと断言できる。 全てを鮮明に憶えている。それはまるで永劫に色あせない写真。想い出という名のアルバムに瞬間という名の幸福を挟んでいる。 一緒に食べたご飯は美味しかった。 久しぶりに入ったお風呂は温かかった。 記憶を喪わないでくれて嬉しかった。 初めて食べたシェイクは美味しかった。 野良猫を飼う事を許してくれて嬉しかった。 なんでもない毎日は、なんでもないからこそ輝いていたのだ。 「返事をしてよ、当麻」 それはこれから先も続いていく幸福だ。突然途切れたりしない。1年後も、10年後も、20年後も、50年後でも続いていく幸福。そうに決まっている。 禍福は糾える縄の如し。因果応報。沈む瀬あれば浮かぶ瀬あり。 不幸があれば幸福があり、善い行いをすれば善い結果が得られ、不運なことばかりが続くことはない。 だから上条もインデックスもこれからもっと幸せになれるはずなのだ。 今までが不孝だった分、これから先の未来は幸福になれるはずなのだ。 笑いあって、楽しんで、喜んで、満たされた人生を送れるはずなのだ。
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 18:47:14.67 ID:yAhm9urX0 だから、 だけど……、 なのに……っ! 「当麻」 返事はない。 返事がない。 返事はない。 だって、上条当麻は、もう、もう、もう、 「……………………………………………ぁ」 唐突に、 インデックスは受け入れてしまった。 受け入れがたい事実を、認めてしまった。 動かないのは、上条がもう動かないから。 返事がないのは、上条がもう声を出せないから。 呼吸音が聞こえないのは、上条がもう呼吸をしていないから。 それらが意味することは、上条がもう、 「は、ヒュ、ひァ……、と、ひ、ふぐっ、とうぇ……っ!!!ぁ、いひひ、ひは、ぅっ、げァ……は……はは……はっ??????????????????」 縋りつくように、抱きしめた。仰向けになった上条の血みどろの身体を抱きしめた。鉄臭い血の匂いに包まれながら、インデックスの全身も赤く染まる。着ていた修道服はそれまで以上に真っ赤に染まって、顔も、髪も、手も、足も、何もかもが紅くなった。 それでも離さない。 そんなことはもう、どうでもよかった。 「…………やだ、やだよっ!当麻ぁ、私を、やだあ!私を……っ、おいていかないで…………」 それは人間兵器として造られた存在であるインデックスが見せた弱さ。 世界で一番大切な、自分自身の命よりも大切な、記憶している一〇万三〇〇〇冊の魔導書なんかよりもはるかに大切な上条当麻という唯一を喪ったと思ったが故に見せた弱さ。 自らの弱さが招いた結果にインデックスは慟哭する。 「一人に、しないで……」 憐れな叫びは虚空に虚しく響いて、 そんな言葉を言っても上条が起き上がることなどないとどこかでインデックスは知っていたから、 「とう、まぁ」 頬を伝う冷たい何かを感じることすらできず、インデックスは只嘆く。 助ける術なんて知らない。 救うための手段なんて分からない。 魔術を使えても、上条は助けられない。 だからそれはあまりにも虚しい嘆きの声。 目の前で死ぬ逝く上条を見つめることしかできないというインデックスの絶望。 そこに追い打ちがかかるように、 ダンッ、という軽い音が聞こえた。 「ぁ」 背中が熱くなった。 攻撃をされた、という事実に三拍遅れて気が付く。 でも、インデックスは抵抗しなかった。抵抗する気力すらわかなかった。 もう、インデックスに生きる理由なんて、欠片もなかったから。 「―――――ね」 あまりにも遅すぎた後悔がインデックスの胸を満たして、 そして、インデックスの運命は確定した。
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 18:53:10.95 ID:yAhm9urX0 https://syosetu.org/novel/56774/157.html とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六 << 前の話 目 次 次の話 >> 157 / 178 今回展開超速いよ。 なぜって? 速く次のシーンが書きたかったからだよ! 今話にあぶりだしはない 弓箭猟虎@ 異なる世界の敵 見えざる敵は思考する。 (で、この2人はいったい何者なんでしょうね?) 学園都市には3つの世界がある。主となるのは『表』と『裏』、あるいは『光』と『闇』と呼ばれる2つの世界。一般人たちが暮らす日常の世界と暗部に所属するモノが暮らす血みどろの世界。 そしてその2つを繋ぐ様にあるのが灰色の世界である。 灰色の世界とは前述したように『表』と『裏』を繋ぐ世界のことだ。具体的に言えば暗部組織と薄い繋がりを持つような武装無能力集団スキルアウト、暗部すら動けないような非常にデリケートな案件を扱う傭兵集団、学園都市の『外』と関係性を持つような組織。そういった『外れきってはいない』世界。 黒に染まりきってはいないが、かといって純白とも言えない。そんな微妙なラインに存在する世界。それが『灰色の世界』だ。 そして上条とインデックスを襲撃したのはもちろん『闇』の、『裏』の、暗部の人間だった。 (ただの暗部組織の人間、……とも思えませんが) 暗部組織『スクール』。 現在の学園都市においては事実上最強の能力者である未元物質ダークマターの超能力者レベル5、垣根帝督をリーダーとしたチームネーム付きの暗部組織。 そんな第一級の暗部組織に所属するスナイパー、弓箭猟虎ゆみやらっこが上条らを襲った敵の正体だった。 「――――――――――――」 「……ぁ、……ゅー、……と、ま」 背から腹へと貫通する弾丸を受けて、インデックスが息も絶え絶えになっている。まさに死に体、三途の川を渡る直前。 だがそもそも、なぜ上条とインデックスには弓箭のことが分からなかったのだろうか? (…………撃ってよかったんですよね?) 上条と戦っている時、弓箭は上条の前方8メートルの位置にいた。 インデックスを撃った時、弓箭はインデックスの後方1メートルの位置にいた。 なのにもかかわらず、2人が2人とも弓箭のことには気が付けなかった。間違いなく視界内にいたはずなのに敵が見えなかった。 それはなぜ? 「――――――ひゅ、……っ………………ひ、――――――ぅ」 答えは周囲同化服カメレオンスーツ。 死縁鬼苦罠が御坂美琴と会う際にも部下に使用させた、周囲の景色と同化し視覚ではとらえられないようになる暗部特製の服。弓箭はそれを着ることで視覚ではとらえられない存在になったのだ。 最も周囲同化服カメレオンスーツには弱点も多い。 誤魔化せるのは五感の内視覚だけ。嗅覚、聴覚、味覚、触覚、そして第六感以上の感覚を誤魔化す事は出来ない。だから本当の一流、弓箭と同じチームネーム付きの暗部組織に所属する人間であったり、統括理事会メンバーの上位護衛であったり、学園都市特記戦力であったりにはほとんど効果がない。 とはいえ『スタディ』のような三流や無機物、上条やインデックスなどの『表』の住人には効果抜群な装備だが。 (……………………………『スタディ』じゃ、ないはず) 弓箭は暗部組織『スクール』のリーダー垣帝督の指示でこの場所にいる。 指示の内容は単純明快で、監視と排除。 『スタディ』の本拠地があるこのスタジアムの地上部分から『スタディ』の動きを監視する事。 そして、学究会以前に『スタディ』に手を出そうとする組織を排除する事。 『スタディ』は『スクール』に喧嘩をうった。ならその代償は払わせないといけない。他の組織に舐められないためにも『スクール』が『スタディ』を潰す必要がある。だから他組織の干渉はさせない。『スタディ』は『スクール』の獲物だ。誰に手を出したのか思い知らせる必要がある。 そう、『スクール』のリーダー垣根帝督は言った。 だから弓箭は必至に他組織を排除している。垣根が手を出す以前に他組織に『スタディ』が潰されてしまえば垣根に何をされるか分からない。殺されるならまだいい。しかし殺してくれないかもしれない。そう考えれば、どう考えても弓箭には垣根の命令に逆らうという思考はなかった。 「―――――――――――――――――――――」 袖に仕込んだ狙撃銃を浅い呼吸を繰り返す少女に向ける。 [ピーーー ]。[ピーーー ]。[ピーーー ]。 そこに疑問や葛藤は一切ない。殺人なんて今までいくらでもやってきたし、そもそも弓箭は獲物が苦しむ様を見ることで喜悦する狂人だ。苦しそうな顔で必死に少年を抱きしめる少女を前にして浮かぶ感情など歓びに決まっていて、それ以外ない。 そう、そうっ、そうっ! 弓箭は己の顔が歪むのを実感していた。 (全部無駄でしたね!誰かさんッ!) 少年が少女を護ろうとしていたのは分かった。 少女が少年をサポートしていたのは分かった。 だから先に少年を叩き潰した。 少女が叫び声をあげたのが分かった。 少年が地に倒れ伏したのが分かった。 だから弓箭は追い打ちをかけた。 少女が少年の傍に入り寄ってきた。 少女はとめどなく涙を流していた。 だから少女のことを撃った。 それで2人とも終わり。もう動けない。もう動かない。垣根の命令は果たされる。 (さよなら) すべて無駄で無意味で無価値な行動。 実力の伴っていない行動ほど滑稽なモノはない。
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 18:54:08.93 ID:yAhm9urX0 『闇』の奥底。チームネーム付きの暗部組織。その狙撃翌要員。周囲同化服カメレオンスーツによる擬態に気付けなかった時点で勝敗は決まっていた。 だからこれで終わり。 インデックスも上条当麻も弓箭には勝てない。絶対に勝てない。くぐった修羅場の数、狂気の質と覚悟の有無、『表』と『裏』、『光』と『闇』の間にある世界の差、それが実力差という形で現れるが故に。 ご都合主義なんて起きない。 彼と彼女の身に起こるのはむしろご都合悪い主義。 神に愛された人間と神に嫌われた人間。 弓箭猟虎と上条当麻&インデックス。 「――――――――――――――――――ぁ」 パシュ、と軽い音がして、胸に強大な違和感が奔った。 続けるようにして、肺から全ての空気が吐き出されたような音がインデックスの口内から発せられた。 いつのまにか痛みは感じなくなっていた。 けれど痛い。身体ではなく心が、どうしようもなく痛い。 これで終わり。これが終わり。インデックスという兵器人間の命の終焉。それをどうしようもなく自覚してしまったからなお痛い。 結局インデックスは何もできなかった。 インデックスがもう少し有能で優秀だったのならば全てが上手くいっていたかもしれない。そう考えると、最後の最期の瞬間だというのに後悔しか浮かばなかった。 何が魔導書図書館。何がイギリス清教が誇る人間兵器。大切な人の1人も救えないで、世界を滅ぼす滅亡級魔術を発見することも出来ないで、一体何が禁書目録インデックス。 お笑い草だ。誇大妄想だ。自意識過剰もいいところだ。 どうしようもない。 本当に――――――どうしようもない。 (……と…………………ま…………う………ま…………………と、う………ま………………) 意識が途切れる。霧に紛れてすぐ目の前にいる人の姿すら見えなくなるように、インデックスの目に映る全てが不明瞭になっていく。 ああけれど、だがしかし、それでもまだ1つ、たった1つだけ確かに感じられるものがある。 インデックスの身体の下にある上条当麻の姿態。その温かさだけはまだ感じ取れる。 それは罰か、それとも褒美か。 せめて一緒に[ピーーー ]て幸せだったのか、愛する人を護れなかったことを強く感じてしまえて不幸だったのか。 そんなことは分からないけれど、最後の最期のさいごのサイゴの刹那よりも遥かに短い永劫の涅槃寂静の時にインデックスが思ったことはたった一言だった。 至極単純な言葉愛を、人間兵器インデックスは囁いた。 「―――――――大好き) そして、そこでインデックスの人間としての生は終わった。無力な少女の無駄な人生が幕を下ろした。 それを、弓箭は只楽しそうに見ていた。 人でなしだから。 イカレテいるから。 頭のおかしい狂人だから。 弓箭は同年代の少女の凄惨な肢体を目にしても、何の感慨も抱かない。 殺したのは弓や自身なのに、そのことに何も思わない。 慣れているから。慣れてしまったから。 最初はそうではなかったはずなのに、内部進化アイデアルにいた時は優しい少女だったのに、 時間は人を変え、環境は人を変え、絆は人を変え、執着は人を変え、経験は人を変え、強制は人を変え、絶望は人を変え、仲間は人を変え、家族は人を変え、未来は人を変え、過去は人を変え、嘘は人を変え、希望は人を変え、恐怖は人を変え、依存は人を変え、約束は人を変える。 だから弓箭はもう壊れていた。『闇』に適応するためには、そうならなければならなかった。 殺したくない以上に生きたくて、奪いたくない以上に生きたくて、死にたい以上に生きたかった。 だから弓箭は『こう』なった。 『これ』が弓箭の行きついた生き方だった。 「中々愉しい狩りでした」 その在り方はもう変えられないだろう。白を黒く染めることは容易いが、黒を白く染めることはひどく難しい。汚れた心根と穢れた精神をまともに戻すなど、英雄でも不可能だ。 である以上弓箭の人生は今後一生絶黒だ。闇黒無光の中で懸命に歩いていくしかない。 それを不幸と思うかどうかは弓箭次第だが、しかしまともから外れた生き方は客観的には幸福ではない。多数決をとるのならば、この世に溢れているのはまともな人間、すなわちどうしようもないほどの狂人達なのだから。 ドシャ。
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 18:54:37.08 ID:yAhm9urX0 「ん?」 違和感を感じていなかったと言えば嘘になる。 おかしいと思っていなかったと言えば偽りになる。 分からないことはあった。 そもそもあの少年と少女はどこの組織の人間で何の目的があってこのスタジアムに来たのかということだ。 最深部の人間なら『スタディ』程度の組織には興味も示さない。深部の人間なら『スタディ』には手を出さない。中部の人間なら『スクール』が『スタディ』を狙っているという情報に怯えて『スタディ』には手を出さない。『スタディ』に手を出すとすれば暗部の何たるかを理解していない浅部の人間だが、少年少女はそれにしては強かった。 だから弓箭は分からなかった。少年少女がどこの組織の人間で、何の目的で此処に来たのか。 スタジアム地上部を探り、地下へ行こうとしていた以上少年少女の目的が『スタディ』であることは間違いない。だから弓箭は少年少女を『闇』側の人間と判断した。 そもそもそこが間違っているとは弓箭は絶対に思えない。『闇』につかりすぎた弓箭にはその発想は存在しない。なまじ『表』の人間と関わりがあるが故に、『表』の人間が『闇』に関わるという発想が出来ない。 だから弓箭には理解できない。 あまりにも情報が足りなくて、弓箭にはたどり着けない。 音がした。 振り返る。 立っていた。 誰が。 お前は。 瞳が捉える。 そこに、いた、のは……。 「――――――警告、魔導書図書館Index-Librorum-Prohibitorumの生命活動に深刻な弊害が生じています。――――――現状ではIndex-Librorum-Prohibitorumがその生命活動を維持するのは困難と判断。原因を後方2メートルに存在する人間による攻撃と推定。――――――一〇万三〇〇〇冊の『書庫』の保護のため、これより脅威の排除を開始します」 魔導書図書館インデックスの危機=自動書記ヨハネのペンの発動。これに気付けた人はどれくらいいたかな? 次の更新は7月中です。
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 19:01:24.74 ID:yAhm9urX0 https://syosetu.org/novel/56774/158.html とある暗部の御坂美琴(2周目) 作:一二三四五六 << 前の話 目 次 次の話 >> 158 / 178 なんか最近あまり筆がのらない……。 最近の話はあまり出来もよくない……。 気分転換が必要か……? インデックスと大悪魔と空白の主@ 理を外れ人を外れた存在 その場所は地球上のどこでもなく、それでいて地球という世界を見上げることのできる場所であった。白く、白く、白く、ただひたすらに白いその場所で、1人の少女が佇んでいた。 「……………………………………」 呆然と、まるで信心深い宗教家が神に見放されたと自覚した時のように茫然と、その少女は立ち尽くしていた。 何が起こってるのか分からないというのか、この場所がどこなのか分からないのか。 いや、いいや、違う。そうじゃない。そんなモノじゃない。 「…………………………………………………………」 ただ見えていないだけだ。ただ分かっていないだけだ。ただ受け入れていないだけだ。 少女の世界は終わっていた。少女の世界は崩壊していた。少女の世界は破壊されていた。 たった一人の少年の死によって、少女の自我は完全に終焉を迎えていた。 だから少女はもはや廃人。 ただ酸素を吸って二酸化炭素を吐くだけの人型物体。 「…………………………………………………………………………………………」 それだけ大切な少年だったのだろう。 それだけ喪いたくない人だったのだろう。 己の命よりも、己の所蔵する10万と3000冊の魔導書よりも大切な存在だったのだろう。 だから壊れた。 よりもよってその死に様を直視してしまったから壊れた。 己の無力が少年の死を招いたと誰に言われるまでもなく自覚していたから壊れた。 魔神にすら至れる可能性を持つ幼き少女は、もう完膚なきまでに狂って終わって壊れた。 そんな少女の名をインデックスという。 「――――――ごふっ」 唐突にインデックスは吐血した。 ただでさえ赤い紅い朱い修道服が、さらに赫く染まる。 ただでさえ青い碧い藍い顔面が、さらに蒼く染まる。 「あ、ふっ……ひ」 血を吐いて、血を吐いて、血を吐いて、白しか存在しない世界を少しだけ赤く染めて、インデックスは喉を抑えるようにして蹲った。どうでもいい、ひどくどうでもいいことでしかないが、喉奥に何かが引っかかっている。 血溜でも引っかかっているのか。だとすればこのままでは窒息死してしまうかもしれない。 窒息死。 それはどれだけ苦しい死に様だろうか。 上条の億分の一でも、当麻の兆分の一でも、救済者ヒーローの京分の一でも苦しいのだろうか。 「か、――――――ひぅ、ぐ、はひーっ、ひーーっ……ふ、……ひゅー、――――――」 息が詰まる。 それはきっと二重の意味での苦しみ。 肉体的な、そしてそれを上回る精神的な苦しみ。 後悔。 後ろの悔い。 痛い。 痛い痛い。 痛い痛い痛い痛い痛い痛い。 堪らない。 耐えられる程度の、傷み。 「はっ、ははっ、……当麻、……当麻ぁ」 時間の感覚なんてとっくの昔に無くなっていた。時節フラッシュバックするする現実を痛感しながら、インデックスはただ記憶の中の想い出後悔に浸る。立ち尽くして、血を吐いては蹲り、涙を流して顔を手で覆い、発狂した様に髪の毛を毟って爪を噛み、肌を引っ掻いてまた泣く。 この白に埋め尽くされた空間を赤色で染めながら、インデックスはもうずっとそうしていた。 「…………あ゛………………………ひっ、ひくっ…………………ごふっ」 そしてまた血を吐く。 「……………………………………………………………」。 そしてまた沈黙する。 痛いくらいの沈黙が白き空間を満たす。 呆然と、まるで信心深い宗教家が神に見放されたと自覚した時のように茫然と、その少女は立ち尽くしていた。 「……………………当麻……………………………………」 立ち尽くす。泣く。血を吐く。呻く。記憶のフラッシュバック。そのサイクル。 ここが何処かもわからず、ここが何かも知らず、己が何をしているのかもわからず、ただ機械のように繰り返すそのサイクル。 そ・こ・に・突・然・、異・物・が・雑・じ・る・。 「酷い様なりけるのよ」 あり得ないことが起こった。 あり得ざる存在が存在した。 「力ある存在キャラクターが、己の称号キャラクター性すらたもてなきとは」 異物が雑じる。 この白き空間には存在しないはずの存在が現れる。 「………………………………………………………………――――――――――――――――――――――――」 その女は見た目18歳程度でありながら老齢な雰囲気を宿す矛盾した成り立ちをしていた。 その女は背丈の2.5倍ほどある宝石店に売られていてもおかしくないような黄金色をした髪を持っていた。 その女はベージュ色という本来では修道服としては相応しくない色をした修道服を着ていた。 ……その女のことをきっとインデックスは知っていた。 「されとて、まさか『初まりの領域』にまで堕ちたりけるとはね」
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/13(日) 19:02:27.62 ID:yAhm9urX0 呆れたように、女はそんな台詞を口にする。予想外、とまではいかないが予定外の事態だった。上条当麻ヒーローの敗北とインデックスヒロインの崩壊。いくらこれが嘘だからといってそれはまだ早いだろうと僕は思うのだけど。その辺、お前らはどう思う?それも敵が人類絶対悪ビーストであるのならばともかく、ただの暗部組織が相手と来た。 期待しすぎたか、と女は少しだけ反省する。 だがある意味では仕方がないというか、当然の期待でもあったのだろう。 彼らは本来ならば出来たはずなのだ。 敗北をすることなく、勝利を掴めたはずなのだ。 積み重ねた10年以上の時が、彼らが暗部組織程度の敵を、悪を蹴散らせる事実を保証しているはずなのに。 それでも負けた。 それでも負けたのは……やはり……。 「当麻……………………………………ぐすっ、………ひぅ……っ!…………当麻あ゛……………ぅうぅぅ……………………」 「ここまで近づきても気付けぬか……。………………潮時なるかな」 距離50センチメートルでも反応無し。 わりと大きな声を出しても反応無し。 直接触ってみても、 「……………――――――――――――――――――……………………………――――――…………………………………………………………」 直接触ってみても反応無し。 だから女は決断する。 幾つもの出来事イベントを乗り越え、10年以上の時をかけ積み重ねてきた全てを切り捨てる覚悟を持つ。 「仕方なき、か」 「…………………………………………………………………」 見切りをつけた。 インデックスは此処で終わりだ。ここまで上条当麻に依存していたことは完全に予想外だった。こんな廃人はもう役に立たない。どれだけ素晴らしい能力を持っていても、どれだけ貴重な役割ポジションをもっていても、どれだけ代替の効かない称号持ちネームドでも、この程度でいちいちいちいちメンタルケアを必要とするなら、ここまではともかく、これから少し先はともかく、全ての役者が揃った後では絶対に役に立たない。 必要となるのは能力よりも技術よりも友人関係よりも金銭よりも精神なのだ。 だからインデックスはもういらない。 幸いにも変わりはもうきちんと登場している。 だから躊躇いはなかった。 勝つための最善手を、女は打つ。 「根源魔術オルディニスデーストルークティオー―――――― 揺らぎゆく自己同ドッペルゲン 「クラウ・ソラス+グングニル=万物貫九輝煌の剣クラウ・グングニル・ソラス」 バグドダッッッ!!!!!、と轟音が響いた。 第五宇宙速度をもって顕現した神話の武具が女に向かって直進する。 人間では見ることも出来ないほどの速さ。 人外でも追いつけないほどの速度。 それが銀河集団脱出速度である第五宇宙速度。 光速には届かないが、それでも十分すぎる。 秒速にして1000キロメートルの攻撃を避けることなど、どんな生物でもできる訳がない。 故に、 「…………………空白の主」 女は避けなかった。 いや、正確に言うなら避ける必要すらなかった。 万物貫く輝煌の剣クラウ・グングニル・ソラス。 アイルランド民話に登場する剣と北欧神話に登場する槍の特徴を合成させた融合神話武器。あらゆる敵を貫き、追尾し、切り裂く絶対の武器。 それも敵がそれ以上の力を持つのなら意味はない。 「からからから、かかかからからからからからから!!!初めま四十のひ三四ぶりっ、大悪魔五六ンゾンンンンンンンンンン!!!!!!!!!」 万物貫く輝煌の剣クラウ・グングニル・ソラスは女に、いやコロンゾンに刺さりもしなかった。当たる直前でコロンゾンの霊媒アバターであるローラ=ザザの左手が 万物貫く輝煌の剣クラウ・グングニル・ソラスを掴み取っていた。 そしてそのまま握りつぶす。 「取り戻四二来たのか七守り二来たのか七助け二来たのか七救一二来たのか七ぁ!」 ついでとばかりに放たれる空白の主の追撃。 フラガラッハ+ブリューナク+天下五剣=天下に轟く雷速絶貫の回答者天剣・フラガラック・ブリューナク。 レーヴァティン+如意金箍棒にゅいきんこぼう=伸縮自在の全焼枝金棒・レーヴァティン。 ハデスの兜+トリシューラ=不可視三叉槍トリシューラ・ハデス。 それをコロンゾンローラは弾く、捌く、消す。 その程度の武器ではコロンゾンは傷つけられない。 「遅一遅一遅一四遅すぎる!今ッ更ァッ、出来る訳が七一の二一!」 コロンゾンを殺したいのであればそれこそ外世界の存在でも連れてこなければならないだろう。 例えばタングラムとか。 「同士討ち!自爆!フ零ンドリーッッッ、ファ一アアアアアア!!!無自覚十八一え憐零だ四ね。仲間同士で潰四合う七ん十ッッッ!!!」 威圧するかのように顔を歪ませる空白の主をコロンゾンローラは真正面から見つめる。 まだ、敗けていない。 ここからの逆転はあると信じている。 「勝ち誇るには早きけるのよ、空白の主」 「からから、勝ち誇る二八早きける?勝ち誇りもするよ。何せ、君達の最重要駒が一つ脱落四たんだからからからから!!!」 「まだ確定はせざりたるわ!」 反撃。 反抗。 反対。 「禁書目録インデックスは七連物語セブンスストーリーズ第六物語シックスストーリーの庇護対象ヒロインであろうぞ!」 「からからから。禁書目録一ンデッ九スの絶対性八まだ保障さ零十一七一。彼女八まだ庇護対象ヒ六一ンであっ十隣二並び立つ者メ一ンヒ六一ンじゃ七一」 言葉と言葉の応酬おうしゅうはそれでも彼女たちが行えば全く別物へと変化する。 片やこの世界においても十二指に入る単一存在。『333』の数字を等価に持ち、拡散という本質にそって世界に汚泥と悪逆を撒き散らす大悪魔であり、世の理の結合を妨げる人外。単純戦闘能力ではかのアレイスター=クロウリーですら敵わないとされる絶対にして先住民センチネル側の理外人外の1人。 イギリス清教最大教主アークビショップ、必要悪の教会ネセサリウストップ、ローラ=スチュアートコロンゾン。 片やこの世界においても十二指に入る始源存在。人類が生み出した文明の全てを無効化し、人類が殺害することは絶対不可能である人外。人類が生み出した文明の全てを支配し、操作し、隷属させる罪人。時空間を超越し、運命論からも抜け出し、神話を体現する原初の片割れにして侵略者インベーダー側の理外人外の1人。 『初まりの領域』の主、本名未だ不明、『空白の主』。 この二人――――――人ではないから二人という数え方が適切かは分からないが、二人からすれば言葉は十分に武器足りえる。 なにせ二人が口にする言葉はただの言葉ではない。相手の称号キャラクター性に対する攻撃だ。
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