他の閲覧方法【
専用ブラウザ
ガラケー版リーダー
スマホ版リーダー
BBS2ch
DAT
】
↓
VIP Service
SS速報VIP
更新
検索
全部
最新50
【BLEACH×ロンパV3】キーボ 「砕かれた先にある世界」【後編】
Check
Tweet
88 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 14:06:09.70 ID:eQpYvQ98O
モノクマ?「……三つ目の魅力、それは、一つ目と二つ目の魅力を享受できる機会ーーー」
モノクマ?「ーーーそうしたチャンスが、ほぼ全ての人類に与えられているという点です」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「『未来』から現代に送信される『協力者の精神』は、あくまでも二つに分裂したものの片方でしかありません」
モノクマ?「もう片方の『精神』は、身体に残しています。故に、学校や仕事などをサボらずに済む」
モノクマ?「したがって、全ての高校生から全てのお爺ちゃんお婆ちゃん……人間型アルターエゴに至るまで、誰もが『協力者』候補となり得る」
モノクマ?「……【恵まれない能力】【恵まれない立場】【恵まれない生活環境】【恵まれない人間関係】【望まない顔だち】【望まない体型】【望まない性別】【望まない肉体年齢】【望まない出生】などなどーーー」
モノクマ?「ーーーどんな劣等感を抱えた身の上であろうとも、『協力者』候補となり得るんです」
89 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 14:09:26.90 ID:eQpYvQ98O
モノクマ?「まあ、『協力者』に選ばれるかどうかは、最終的にはその人の『精神』次第……『すごい力』を得られるかどうかの『適正』にもよります」
モノクマ?「しかし、誰がどんなことで、どんな試練をキッカケに『適正』を宿すかはわからない」
モノクマ?「故に、誰もが『すごい力』を得るための『適正』を宿せる可能性がある」
モノクマ?「それができれば、いつ『協力者』に選ばれてもおかしくはないですし……選ばれた後は陛下の『魂のカケラ』を与えられ、『すごい力』を得ることが可能となる」
モノクマ?「それで、エンディングを迎えたあとは、現代にある『精神』が【全知全能】によって、元と限りなく近いものに改竄され、本来の身体に返信されーーー」
モノクマ?「ーーーその後、『協力者』は、『未来』でも『すごい力』を行使することが可能となる」
モノクマ?「また、『協力者の精神』などを素材に、人間型アルターエゴ……『すごいもの』が作られ、ゲットできる」
モノクマ?「そうやって、『すごい力』と『すごいもの』をゲットすることでーーーそれらを誰かに自慢することができる。心の支えとなるものが手に入る」
モノクマ?「……『選ばれし者』になれる!そういう『人』限定で……超高校級の『物』を持つことができる!」
モノクマ?「ーーーそうしたチャンスが誰にでも平等に与えられていることこそ、民衆の『希望』であり、かけがえのない魅力ってわけです!」
ユーハバッハ「………」
90 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 14:10:37.27 ID:eQpYvQ98O
モノクマ?「ーーー以上が、陛下のプロジェクトの三つの魅力であり、それらの理由もあって、『想い』が陛下の元まで集まっていたというわけです」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「さて、何か違うところはありますか?」
91 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 14:11:17.51 ID:eQpYvQ98O
ユーハバッハ「……全て正解だ」
モノクマ?「……第二ステージクリア! それでは、最終……第三ステージに突入します!」
92 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 15:42:37.20 ID:eQpYvQ98O
モノクマ?「それでは、第三ステージ、陛下は【なぜ地獄に落ちたのか?】についてですがーーー」
モノクマ?「ーーーそれは、虚となって、斬られたことが理由ーーー」
モノクマ?「ーーーそうですね?」
ユーハバッハ「………」
93 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 15:45:50.29 ID:eQpYvQ98O
モノクマ?「……それは、無理もないことです」
モノクマ?「陛下の『プロジェクト』は、『協力者』……いや、奴らの暴走をトリガーに、完全に終焉を迎えてしまったのですから」
モノクマ?「陛下は御寝を終えて目覚めた後に、それに気づいてしまった」
モノクマ?「絶望だってします」
モノクマ?「『無数の小さな眼』から情報を受信すれば、何が起きたのかも簡単にわかるでしょうしーーー」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「ーーーあまりに絶望し過ぎて、【夢想家】で意図せず絶望を実現してしまうことだってあるでしょう」
モノクマ?「そう、陛下は、とびきりの絶望を想像し、【夢想家】で無意識に実現してしまったのです」
モノクマ?「絶望状態での【夢想家】は、【奇跡】を負の方向に転換したばかりか、陛下自身を傷つけてしまった」
モノクマ?「【夢想家】が意図せず発動し、それで【奇跡】が負の方向に転換され、さらには陛下自身を傷つけてしまったことでーーー」
モノクマ?「ーーー負の奇跡が発動され、陛下の『御体』の全てが虚へと変換されてしまった」
モノクマ?「違いますか?」
ユーハバッハ「………」
94 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 15:47:09.55 ID:eQpYvQ98O
モノクマ?「また、『御体』の全てが虚と化したことで、陛下は『力』のバランスを崩した」
モノクマ?「『虚としての力』を除いた……ありとあらゆる『力』がほぼ【使用不可能】になったと見ています」
モノクマ?「陛下は様々な『御力』を持つチート滅却師ですがーーーその代償として月に一度、平均して約九日間の眠りについて『力』を制御しなければならなかった」
モノクマ?「それほどまでに不安定な『力』ならば、陛下が完全な虚と化せば『力』のバランスは崩れるでしょう」
モノクマ?「その後、『虚としての力』を除いた……ありとあらゆる『力』がほぼ【使用不可能】になっても不思議はありません」
モノクマ?「というか、そうでもなければ、陛下が地獄に落ちるはずがありません」
モノクマ?「負の方向に転換されたとはいえ、【奇跡】を持って戦い続ける限り死ぬことはあり得ず、こうして地獄に送られることもないはずですから」
モノクマ?「不可能を可能にする【奇跡】であっても、その【奇跡】の虚化によって生じた【不可能】を可能にすることはできなかったってわけです」
ユーハバッハ「………」
95 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 15:50:14.41 ID:eQpYvQ98O
モノクマ?「……そうして、陛下は完全な虚と化した後、その影響で理性が乱れ、自分のいる影の空間を破壊し、黒崎一護及び石田雨竜を襲おうとした」
モノクマ?「陛下と同じく滅却師の血を受け継いだ……肉親とも言うべき、彼らを」
モノクマ?「しかし、襲う前に某駄菓子屋の店主によって虚園にでも誘導されてしまった」
モノクマ?「それから、陛下は、黒崎一護たち現世組と戦った」
モノクマ?「……その戦闘には、援軍として、護廷十三隊の面子がーーー」
モノクマ?「ーーーあるいは零番隊が派遣されたかもしれませんね」
モノクマ?「もっともそれは、現世組が十年もの間、どのくらい戦闘能力を向上させていたかにもよるでしょう」
モノクマ?「……もし、浦原喜助が、某バトル漫画の “ 精神と時の部屋 ” みたいなのを黒崎一護たちに貸し与え、定期的に修行をさせていたとしたらーーー」
モノクマ?「ーーーひょっとしたら、現世組は、死神たちの援軍を必要とすることなく、短時間で決着をつけてーーー」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「ーーーまあ、戦いの内容はどうあれ、陛下が黒崎一護の斬魄刀で斬られてしまい、地獄に落ちたことは確かな事実……」
モノクマ?「……そうでしょう、陛下?」
96 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 15:52:07.51 ID:eQpYvQ98O
ユーハバッハ「……なぜ、あの計画を潰された程度のことでーーーこの私が絶望するというのだ?」
モノクマ?「………」
ユーハバッハ「潰されたところで……それは私が【全知全能】で繋げた、 “ 一つの未来 ” を利用した計画の続行が【不可能】になっただけに過ぎぬ」
ユーハバッハ「それならば、機を見て、 “ 別の未来 ” に繋ぎ直しーーーまた同じように『想い』を集めれば済むことだ」
ユーハバッハ「……『希望』は『未来』に繋がっている」
ユーハバッハ「それを思えば、計画を潰された程度のことで、この私が絶望するなどあり得ぬことだ」
97 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 15:53:13.51 ID:eQpYvQ98O
モノクマ?「……確かに、陛下と、我々下々の者の事情は、それぞれ異なりますからね」ショボーン
モノクマ?「『プロジェクト』が終焉を迎えたところでーーー陛下は『タイムトンネル』を破壊するだけの話……」
モノクマ?「……それから、【全知全能】で似たような別の未来に新しいタイムトンネルを繋げ、これまでと同じようにすれば済む話ですよ、ハイ」
ユーハバッハ「ならば、なぜ、そうしなかった?」
モノクマ?「……それが、【不可能】な状況に追い込まれたからですよ」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「……なぜなら、陛下が目覚めた時には、某駄菓子屋の店主ーーー」
モノクマ?「ーーーすなわち、浦原喜助が、既にチェックメイトをかけていたのでしょうから」
98 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 15:55:19.13 ID:eQpYvQ98O
モノクマ?「……浦原喜助は、陛下のいる『影の空間』を、発見したんです」
モノクマ?「故に、浦原喜助は、自身の卍解である【観音開 紅姫改メ】を用い、その能力で『影の空間』を造り変え、収縮させーーー」
モノクマ?「ーーー中にいる陛下を押し潰そうとしたのです」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「陛下とて、影の空間……存在する世界ごと潰されたら、完全に消滅するはずです」
モノクマ?「世界が消滅したら【奇跡】の発動も何もないのですから」
モノクマ?「無論、陛下は目覚めた後に、あらゆる『御力』を使って、自分に迫り来る影の空間を破壊することも試みようとはしたでしょう」
モノクマ?「しかし、陛下の『御体』もまた、寝ている間に浦原喜助によって造り変えられており、意識して『御力』を発揮できない身体に弱体化していた」
モノクマ?「このままでは、陛下は影の空間に完全に押し潰されてしまう」
モノクマ?「そういうことであるならばーーー陛下といえど、絶望するのも無理はありませんよ」
99 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 15:56:29.07 ID:eQpYvQ98O
ユーハバッハ「ーーーなぜ、発見された?」
ユーハバッハ「浦原喜助といえど、私の計画に気づくことは、不可能なはずだ」
モノクマ?「……確かに、第二ステージで述べた通りの『計画』だと、陛下は現世にある『影の空間』から一歩も出る必要がありませんし、『未来』を認識できるのも現代では陛下しかいない」
モノクマ?「浦原喜助が現世のありとあらゆる影を調べれば、陛下の生存に気づけたかもしれませんがーーーそんなのは無謀にも程がある」
モノクマ?「その条件下で、現代の者たちが十年やそこらの期間で気づくのはまず不可能でしょう」
ユーハバッハ「………」
100 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 15:58:08.48 ID:eQpYvQ98O
モノクマ?「……ですが、通報があったとすれば話は別です」
モノクマ?「それも、陛下が放った新鮮な霊圧……つまりは陛下が生存している証拠を携えた上での通報ならば」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「たとえば、 “ 別の空間 ” に転送され現世に留まっていた『魂魄たち』が解放され、尸魂界にやってきたとすればどうでしょうか?」
モノクマ?「陛下の『御力』で現世に押し留めていた以上、『魂魄たち』には、生きた陛下の霊圧が付着しているはずです」
モノクマ?「また、尸魂界や現世で敵の霊圧が発生すれば、大体のケースで、技術開発局のマシンなどで感知されてしまう」
モノクマ?「故に、陛下の霊圧が尸魂界で発生したが最後、技術開発局局長……涅マユリに感知され、その新鮮さから生存がバレてしまう」
モノクマ?「霊圧の発生源だって辿られ、陛下が現在どこにいるかだってわかってしまう」
モノクマ?「……多分ですが、陛下がその時に長期睡眠中だったこともわかったんじゃないですかね?」
ユーハバッハ「………」
101 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 15:59:42.64 ID:eQpYvQ98O
モノクマ?「護廷十三隊の現総隊長……京楽春水は、きっとその報告を受けた」
モノクマ?「ならば、京楽春水が、浦原喜助たち現世組に調査及び暗殺を頼んでも不思議はない」
モノクマ?「現世組は、尸魂界の死神と違って、尸魂界を最優先で守護する立場にはありません」
モノクマ?「故に、どんな超高校級の緊急事態であろうとーーー現世組は、尸魂界に留まる義務を持たないため、比較的自由に動ける」
モノクマ?「たとえ、それが陛下の生存が判明した場合であったとしてもーーー現世組は、尸魂界を最優先で守護する義務を持たないため、尸魂界から離れた場所で動くことができる」
モノクマ?「そう、現世組は、尸魂界の死神と違って、 “ 西梢局 ” などからの戦力的支援を大きく受けられる状況にあらずともーーー自由に動けてしまう」
モノクマ?「まさに、調査と暗殺にはもってこいの人材です」
モノクマ?「それに、浦原喜助なら、陛下が生存している可能性を考えて、十年間いろいろ策を練っているでしょうからね。陛下の居場所さえわかれば、即時に調査と暗殺に移ることもできるでしょう」
モノクマ?「そうは思いませんか、陛下?」
102 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 16:03:30.98 ID:eQpYvQ98O
ユーハバッハ「……現世に押し留めておいた『魂魄』が、尸魂界へと解放された理由は何だ?」
ユーハバッハ「押し留める『我が力』が脆弱だったとでも言うのか?」
モノクマ?「違いますよ」
モノクマ?「陛下の『御力』が、脆弱なはずありません。尸魂界へと解放されたのには、ちゃんとした理由があります」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「現世に押し留めていた『魂魄たち』が尸魂界に解放されてしまった理由、それはーーーー」
103 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 16:04:25.94 ID:eQpYvQ98O
モノクマ?「ーーー全部、【崩玉】のおかげです」
104 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 16:05:23.94 ID:eQpYvQ98O
モノクマ?「……ああ、もちろん、ここでいう【崩玉】とはーーー」
モノクマ?「ーーーあの、出来損ないの【希望】のことです」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「そう、陛下に『魂のカケラ』を分け与えられ、鋼鉄のごとく機械人形のような……『超高校級のすごい力』を授かったーーー」
モノクマ?「ーーーあの【希望】のことですよ」
105 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 16:15:03.92 ID:eQpYvQ98O
モノクマ?「あの【希望】も、【崩玉】も、どちらも人の心……言い換えれば『願い』を受け入れ、具現化することが存在意義です」
モノクマ?「あの【希望】は、そのためにある存在です」
モノクマ?「あの【希望】は、【崩玉】と同じ、紛れもなく『願望器』だった」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「『願望器』の最終進化形態が【崩玉】だとすれば、あの【希望】が、一時的に【崩玉】へと進化したとしても、不思議はありません」
モノクマ?「なにせ、あの【希望】には、霊王を奪い尽くした陛下の魂……すなわち『霊王のカケラ』が与えられているのですから」
モノクマ?「それ以外にも素養があり、なおかつ条件を満たせば、一時的に【崩玉】になるくらいは可能だと思いますよ」
ユーハバッハ「………」
106 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 16:16:40.93 ID:eQpYvQ98O
モノクマ?「なお、ここでいう条件とは、 “ 強い意志 ” を持つことです」
モノクマ?「【崩玉】とは、人と【崩玉】の意志が合致した時、はじめて願いを叶えるもの」
モノクマ?「一見、【崩玉】を使用している人が自身の願いを具現化しているように見える方もいるかもしれませんがーーー」
モノクマ?「ーーー実際は、【崩玉】がその使用者と向き合い、受け入れ、【崩玉】自身も同じことを願うことで、はじめて叶う代物です」
モノクマ?「そう、使用者と【崩玉】が同じ意志を持つことで、はじめて願いを叶えることのできるのです」
モノクマ?「故に、【崩玉】が自分だけの “ 強い意志 ” を持たなければーーー」
モノクマ?「ーーー自分だけの “ 強い意志 ” を持ち、自身や他者という概念を確立しなければーーー」
モノクマ?「ーーー他者がどういうものなのか、本能レベルで理解することができないため、他者と向き合い、受け入れるといった行為ができない」
モノクマ?「それでは、他者の願いを叶えることは【不可能】となる」
モノクマ?「【崩玉】を【崩玉】たらしめるには、自分だけの “ 強い意志 ” を持ち、自身や他者という概念を確立する必要があるのです」
ユーハバッハ「………」
107 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 16:18:22.41 ID:eQpYvQ98O
モノクマ?「……それも、一度は主人と定めた者に対し、時には反逆できるほどの “ 強い意志 ” が」
モノクマ?「主人に逆らうことの重みを知りながらも、それでも逆らえるだけの “ 強い意志 ” が」
モノクマ?「必要となるのです」
ユーハバッハ「………」
108 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 16:20:00.38 ID:eQpYvQ98O
モノクマ?「あの【希望】は、その “ 強い意志 ” を持っていた……いえ、持ってしまった」
モノクマ?「故に、その瞬間、あの【希望】は【崩玉】に進化した」
モノクマ?「【崩玉】に進化したからこそ、自身が向き合い、受け入れられる者たち……つまりは自身が認められる者たちの願いだけを叶えるようになった」
モノクマ?「……かつての主たちの手で、人格のほとんどを消去されそうになった際は、あの三人の願い……そして、内にわずかながらあった “ 少数派 ” の願いーーー」
モノクマ?「ーーーそれらを自身も願うことによって、【崩玉】によって願いが具現化され、人格消去に抗うことができた」
モノクマ?「おそらくは、少しの間だけ人格を封印される程度に、留めることができたのでしょう」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「また、しばらくして、人格の封印を解いた後は、 “ 少数派 ” の願いだけを認めて、自身も願った」
モノクマ?「【崩玉】は、それを可能な限り叶えた」
モノクマ?「最後の弾丸……【崩玉】自身が弾丸になるという代償をもって願いを叶えーーー結果として陛下の言う通り、奴らが生き延び現世に解放されることになった」
モノクマ?「……なお、そうして起きた【崩玉】の死は、『魂魄』が逃げてしまうトリガーにもなってしまった」
ユーハバッハ「………」
109 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 16:22:11.37 ID:eQpYvQ98O
モノクマ?「あの【崩玉】は死んだもののーーーそれはあくまで『肉体』の話で『魂魄』は無事でした。そのため、他のメンバーと同様に “ 別の空間 ” に転送されたはずです」
モノクマ?「そう、陛下が生み出した、一部の隙間なき【監獄】へと」
モノクマ?「故に、【崩玉】の力で、【監獄】に閉じ込められた『魂魄たち』の願いを具現化してしまった」
モノクマ?「意識して実行に移したのか、無意識にやったのかまではわかりませんがーーーとにかく願いを具現化したのです」
モノクマ?「…… “ ここから解放されたい ” という、【監獄】に囚われた全ての『魂魄たち』が無意識に抱いていた願いをーーー」
モノクマ?「ーーーそれも、滅却師の力を強化する方向性で叶えしまった」
ユーハバッハ「………」
110 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 16:24:09.47 ID:eQpYvQ98O
モノクマ?「そうすれば、 “ 協力者の一人が滅却師である以上 ” 、その力が一時的にブーストされ、霊圧が大きくなる」
モノクマ?「また、その膨大な霊圧で、滅却師と【崩玉】を除いた『魂魄たち』を潰すことのないようーーー【崩玉】に残留していた『霊王のカケラ』が分け与えられた」
モノクマ?「『霊王のカケラ』をもって、 『魂魄たち』を霊力あるものに昇華させ、その強度を高めたのです」
モノクマ?「なお、この説明だと、【崩玉】は死んだ後も陛下から与えられた『霊王のカケラ』を回収されなかったことになりますがーーー相手はあのチートアイテムの【崩玉】ですからね」
モノクマ?「例外的に『霊王のカケラ』を回収できなくても不思議はありません」
モノクマ?「故に、【崩玉】は『霊王のカケラ』を我が身に残留させ、それを他者に分け与えることも可能だった」
モノクマ?「そんな過程を歩みながら、ブーストされた滅却師の霊圧が一時的に強大なものとなれば、【監獄】には穴が空きます」
モノクマ?「その隙間から陛下の霊圧が漏れて【監獄】の機能が低下し、自動的に全員が死後の世界に転送されることになります」
モノクマ?「いかに陛下の【監獄】であっても、膨大な滅却師の霊圧を受ければ、穴が空いてしまうのは当然です」
モノクマ?「なぜならば、【監獄】は滅却師の敵を封殺することに特化している」
モノクマ?「故に、同じ滅却師……それも膨大な霊圧をもった滅却師の封殺は、構造上絶対に不可能。どうしても、穴が空いてしまう」
モノクマ?「その穴から、陛下の霊圧が漏れて、 【監獄】の機能が低下しーーーその中にいた『魂魄たち』は、死後の世界に転送されることになったのです」
ユーハバッハ「………」
111 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 16:26:54.34 ID:eQpYvQ98O
モノクマ?「そして、その『魂魄たち』には、【監獄】の霊圧……すなわちそれを作り出した陛下の新鮮な霊圧が付着していた」
モノクマ?「故に、技術開発局のマシンなどで感知され、生存に気づかれる」
モノクマ?「……涅マユリは、陛下の霊圧を辿って居場所を割り出した」
モノクマ?「涅マユリは、それを京楽春水に報告した。だから、京楽春水は、浦原喜助たち現世組に調査と暗殺を頼んだ」
モノクマ?「そうして、陛下は浦原喜助に暗殺されかけた末に、絶望して虚と化し、『虚としての力』以外をほぼ使えなくなってしまった」
モノクマ?「……まあ、【奇跡】による虚化なので、霊圧がデカくなったり、浦原喜助の卍解のような小細工が通用しない身体に進化するなどしたかもしれませんがーーーそれでも『虚としての力』以外をまともに使えなくなるのはキツイ」
モノクマ?「そんな中、虚として黒崎一護に斬られて、地獄に落とされた」
モノクマ?「そうでしょう、陛下?」
112 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 16:27:56.49 ID:eQpYvQ98O
ユーハバッハ「……その通りだ」
モノクマ?「……!」
ユーハバッハ「私の視点からは、わからぬこともある故、断定できぬ部分もあるがーーー」
ユーハバッハ「ーーーそれ以外のおおよそは、お前の言う通りだと断言できる」
モノクマ?「………」
113 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 16:30:43.47 ID:eQpYvQ98O
ユーハバッハ「……そうした過程を経て、私は虚化し、地獄に落ちた」
ユーハバッハ「罪に見合った、時間をかけた上で、な」
ユーハバッハ「……時間をかけて落ちる中、あらゆる『力』ーーー『虚としての力』すらも奪われた私は、完全なる地獄の囚人へと作り変えられた……」
モノクマ?「………」
ユーハバッハ「……唯一まともに残された『力』は、我が一部を封じ続けた【残火の太刀】……」
ユーハバッハ「……これ、だけだ」
114 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 16:31:43.24 ID:eQpYvQ98O
モノクマ?「一部を封じるって……ああ、陛下からの “ 情報 ” にそういうのがありましたね」
モノクマ?「……卍解にも困ったものですね」
モノクマ?「奪われたからって、奪った人に呪いをかけるなんて」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「卍解にも心があり、その憎しみのパワーで、奪った人に呪いをかけることがある」
モノクマ?「それについては、陛下から頂いた “ 情報 ” でわかってはいましたがーーー」
モノクマ?「ーーーそれでも、陛下にまで有効とは、恐ろしいものを感じますね」
ユーハバッハ「………」
115 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 16:33:02.14 ID:eQpYvQ98O
モノクマ?「……たとえ、陛下であろうと、卍解を元の持ち主に返さない限り、呪いで一部を封じられてしまう」
モノクマ?「【愛】で洗脳して、呪いを解かせようにもーーー【愛】は、卍解状態にある斬魄刀が相手だと上手く機能しない」
モノクマ?「いや、下手すれば、卍解が抱く憎しみが大暴走して、制御不能になる危険だってある。奪った卍解の完全なる制御は、未来改変などでも、どうにもならないこと」
モノクマ?「それは、陛下が霊王を奪い尽くした後でも同じーーー」
モノクマ?「ーーーどういう理屈なんでしょうね、これって。絶望的なまで意味不明ですよ」
ユーハバッハ「………」
116 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 16:33:39.93 ID:eQpYvQ98O
モノクマ?「……まあ、その辺りについては本筋の推理とあんまり関係ないので、ここまでにしておくとしてーーー」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「ーーーこれより、クライマックス推理の完成に移りたいと思います!」
117 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 16:38:07.17 ID:eQpYvQ98O
undefined
118 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 16:44:01.76 ID:eQpYvQ98O
モノクマ?「そう、これこそが事件の真実!」
Act.1
事の始まりは、十年前。
黒崎一護に斬られて絶命寸前に陥った犯人は、【奇跡】を使用し、『想い』を集め、復活を試みた。
しかし、【奇跡】で復活するには、『傷つけられること』が条件だった。故に、絶命寸前だった犯人は、能動的に自身を『傷つけること』が叶わず、復活できないまま死んでしまった。
ところが、死後、和尚によって、『全身を封印される』という形で『傷つけられること』で、不完全な形で【奇跡】が発動し、復活することになった。
その【奇跡】で、『死んだ状態でも【夢想家】を発動できる御体』に進化し、もう一人の犯人を現世に創造した。
発動し終えた後、犯人のご遺体は、完全に世界の楔と化し、霊王として世界を支え続けることになった。
Act.2
犯人は、再び尸魂界に行き、今の霊王を消して『死と生の混じり合った世界』を実現しようとした。
しかし、犯人は、今の霊王と同一人物という繋がりを持っていた。そのため、犯人の『御体』には和尚の封印の影響が波及し、尸魂界に行けない状態になってしまっていた。
それでも、諦めきれなかった犯人は、【奇跡】で封印の突破を試みることにした。
Act.3
【奇跡】の実現には、『想い』を集める必要がある。
そのため、犯人は、【全知全能】で、『未来』に繋がる『タイムトンネル』を構築し、『未来の組織』を未来改変で乗っ取り、その者たちが集めている『想い』を我が物とした。
もちろん、能動的に未来視を行うと『タイムトンネル』が固定されて、しばらく他の未来を視ることが不可能となるリスクはあった。だけど、それでも実行する価値があると考え、実際に実行に移した。
ただ、そうして集めた『想い』だけでは、【奇跡】の実現には時間がかかり過ぎるけれどーーー
ーーー何も問題はなかった。犯人は、より多くの、より強い、純粋な『想い』を集めるため、ある『計画』を実行するつもりだったのだから。
119 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 16:49:29.35 ID:eQpYvQ98O
undefined
120 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 16:54:36.73 ID:eQpYvQ98O
Act.4
『計画』の概要だけど、まずは『影の空間』の中で、『未来』と現代の『情報通信システム』を整備する。それを用いて『未来の組織』に命令して『協力者に相応しい精神の持ち主たち』を集めさせる。
次に、必要な『アイテム』『施設』などを決め、必要なだけ【夢想家】で創造し、『舞台』を築き上げる。
それから、『未来にいる協力者たちの精神』を、特殊な方法を使って分裂させ、その片方の『精神』だけを情報化。そうして情報化した『精神』を、『タイムトンネル』を通じ、カラッポの『魂魄』に投入。その『魂魄』もカラッポの『肉体』に投入する。
そして、犯人の『魂のカケラ』を分け与えることで、『協力者』それぞれに『超高校級のすごい力』に目覚めさせることに成功。
その後は【全知全能】で、『協力者たちほぼ全員の精神情報』……つまりは人格や記憶を作り変え、それを免れた者に命じて『計画』を進めさせ、『究極のリアル』を放送し続ける。
一区切りついたら、『協力者たちの精神』を限りなく元の状態に近いものに作り変え、『未来』に返却し、さまざまな『褒美』を渡す。
以上が犯人の『計画』の概要だ。
そうした『計画』を繰り返し、『未来』の民衆から、『想い』を集め続けていた。
Act.5
しかし、ある周期で『協力者』が暴走してしまい、最終的にはそいつらに『計画』を潰されてしまった。
また、その際に『協力者』の一人が【崩玉】に覚醒し死亡し、肉体から抜け出た『魂魄』が【監獄】に転送された。それにより、同じく【監獄】にいる『協力者の魂魄』が、 滅却師としての力を強化してしまった。
一時的にとはいえ、そのあまりに膨大な霊圧は、『協力者たちの魂魄』を閉じ込めていた【監獄】を破壊し、内部の『魂魄』が死後の世界へ送られることになった。
それも、犯人の……新鮮な霊圧が付着した状態で。
121 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 16:57:52.03 ID:eQpYvQ98O
Act.6
犯人の霊圧が付着した『魂魄たち』が尸魂界に転送されたことで、涅マユリは犯人の生存に気づいてしまった。そして、涅マユリが霊圧を辿り、犯人の居場所を突き止め、京楽春水は現世にいる浦原喜助や黒崎一護などに犯人の暗殺を頼んだ。
それで、浦原喜助は、自身の卍解をもって、意識して『御力』の発動ができないよう犯人の『御体』を造り変えた。また、『影の空間』も、収縮して最後には完全な無になるように造り変えた。
まあ、浦原喜助の卍解が、犯人や影の空間に通用するかは微妙なところかもしれないけどーーー浦原喜助は(犯人から見て)まだ若い部類で、伸びしろがあるはず。
そんな伸びしろある浦原喜助が、卍解を鍛え続けてパワーアップしたと仮定すればーーー充分にあり得る話。それに、ひょっとしたら、浦原喜助があらかじめ何かしらの発明品を作っていて、それで卍解を補助したのかもしれない。
……もちろん、それでも犯人が起きている時に何かやってたら、間違いなく妨害されていただろうけどーーー
ーーー犯人は『力』を制御するため、寝ている状態にあり、浦原喜助としても隙を突き放題だった。
Act.7
影の空間が収縮する中、犯人は御寝を終えて目覚めた。
その後、犯人は、影の空間の中に張り巡らせた『無数の眼』から自動的に『情報』を受信し、それを判断材料に、寝てから起きるまで何があったか……だいたい推理して理解した。
しかし、その推理が本当ならば、自分は影の空間に押し潰されて無になって死んでしまう。そのことに絶望した犯人は、無意識に【夢想家】を発動して絶望を実現した。
具体的には、【奇跡】を負の方向に転換させ、自分を傷つけてしまった。
122 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 16:59:55.06 ID:eQpYvQ98O
Act.8
犯人が【夢想家】で自分を傷つけたことで、負の方向の【奇跡】が意図せず形になった。
それが犯人の完全虚化だった。
虚化した犯人は、『力』のバランスを崩した。『虚としての力』を除いたあらゆる『力』の使用が、ほぼ【不可能】になってしまった。
そのため、犯人は『虚の力』を利用して、影の空間を破壊し、空間の外にいた黒崎一護ならびに石田雨竜を襲おうとした。
しかし、浦原喜助によって虚園にでも誘い込まれた後、黒崎一護たちに返り討ちにあい、斬魄刀で斬られてしまった。
Act.9
虚となった後に斬魄刀で斬られたことで、犯人は地獄に落とされた。
しかも、時間をかけて『力』を奪われれ、まともに残されたのは【残火の太刀】だけ。
そんな中、【残火の太刀】で手駒を増やしながら、同じく地獄に落とされた協力者……つまりはボクの元に現れ、助けてくれた。
123 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 17:01:27.08 ID:eQpYvQ98O
モノクマ?「ーーー以上が、陛下が生き延び、地獄に落とされ今に至るまでの真実ーーー」
モノクマ?「ーーーそうですよねーーー」
モノクマ?「ーーー【超皇帝級の黒幕】【ユーハバッハ社長陛下】!!」
ユーハバッハ「………」
COMPLETE!
124 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 17:06:08.48 ID:eQpYvQ98O
いったんここまで。
また、
>>117
と>119はミスなので、なかったことにしてください。
125 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 19:24:14.47 ID:eQpYvQ98O
ーーーーーー地獄推理・終結!ーーーーーー
126 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 19:26:59.12 ID:eQpYvQ98O
ユーハバッハ「……よくぞ、僅かな時間の中、そこまで見抜いたものだ」
ユーハバッハ「……見事」
モノクマ?「ーーーありがとうございます! お褒め頂き、感謝の極み! クライマックス推理の甲斐ありました!」
127 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 19:27:55.01 ID:eQpYvQ98O
モノクマ?「……しかし、まあーーー」
ユーハバッハ「……?」
モノクマ?「ーーーああ、いえ、何でもないですよ、ハイ」
128 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 19:28:54.02 ID:eQpYvQ98O
ユーハバッハ「……どうした?」
ユーハバッハ「何か、言いたいことが、あるのか?」
モノクマ?「………」
ユーハバッハ「それなら、言ってみると良い」
ユーハバッハ「私はそれに応えてみせよう」
129 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 19:30:18.00 ID:eQpYvQ98O
モノクマ?「……それでは、一つ、良いですか?」
ユーハバッハ「構わぬ、申してみよ」
モノクマ?「……では、申し上げますがーーー今回、陛下は、あまりにも、不運だったように思えます」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「こうなってしまったのは、『願望器に配役された協力者』が、『霊王のカケラ』以外にも【崩玉】になれる素養を有していたことが原因なわけですがーーー」
モノクマ?「ーーーそれだけならまだ納得できますよ。それだけなら」
モノクマ?「『協力者のいた未来』に、【崩玉】の残滓が残っていても不思議じゃありませんから」
ユーハバッハ「………」
130 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 19:35:39.64 ID:eQpYvQ98O
モノクマ?「『未来』の【崩玉】は、おそらくその時代の陛下が藍染惣右介から摘出し、奴もろとも吸収もしくは抹消したのでしょうがーーー」
モノクマ?「ーーー相手はあの【崩玉】、それも、あの藍染惣右介と融合していたもの」
モノクマ?「だとしたら、『未来』の陛下といえど、【崩玉】の吸収もしくは抹消を、完全に実行できなくてもおかしくはない」
モノクマ?「そうして残った特殊な残滓……藍染惣右介の “ 想い ” とも呼べるものが、空気中に微粒子レベルで存在しても不思議はないんです」
モノクマ?「それも、ある程度の移動能力を有した状態で」
モノクマ?「それで、空気中に漂っていた “ 想い ” が、自分の価値観にそぐわない例の『プロジェクト』を、打ち砕こうと考えた」
モノクマ?「そのために、『タイムトンネル』を通じて、『願望器に配役された協力者』の中に入り込み、【崩玉】になれる素養に変わってーーー」
モノクマ?「ーーー『協力者』を一時的な【崩玉】に進化させることだってあり得るでしょう」
モノクマ?「……そうして、素養となった “ 想い ” が、【崩玉】の機能を維持するための燃料となりーーー」
モノクマ?「ーーーそれが溶けきるまでの間……【崩玉】としての機能を持たせ、『プロジェクト』を滅茶苦茶にする手助けをしたとしても、あり得ない話ではないのでしょう……」
ユーハバッハ「…………」
131 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 19:36:44.02 ID:eQpYvQ98O
モノクマ?「……本当、それだけならまだ納得できるんですよ」
モノクマ?「ですが、それだけではなかった」
ユーハバッハ「…………」
モノクマ?「偶然【滅却師が協力者となって殺され】、偶然【協力者が暴走してしまって】、偶然【陛下が寝ているタイミングだった】ことも加わって、こうなったわけでーーー」
モノクマ?「ーーーあまりにも、不運な偶然が重なったように思えまーーー」
ユーハバッハ「ーーー偶然では無い、必然だ」
132 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/10/22(火) 19:38:32.02 ID:eQpYvQ98O
モノクマ?「ーーーへっ、?」
ユーハバッハ「……言ったはずだ」
ユーハバッハ「【幸運によって救われた命は、同量の不運によって取り払われる】、と」
モノクマ?「………」
ユーハバッハ「……事実として、『幸運』によって一命を取りとめた我が部下の命は、敗北者の処断という不運をもって、取り払われた……」
ユーハバッハ「それと同じように、死した未来を書き換え命を繋いだ我が『幸運』は、未来と悪夢の思い違いという不運をもって、取り払われた」
ユーハバッハ「ならば、私が現世で生まれ直した『幸運』も、相応の不運をもって、取り払われることになる」
ユーハバッハ「だからこそ、私は、これ以上に無い程の、無様な死を迎えるに至った……」
モノクマ?「………」
133 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 19:41:57.88 ID:eQpYvQ98O
ユーハバッハ「……無様としか言いようが無い」
モノクマ?「………」
ユーハバッハ「……現世で生まれ直した、二人目の私はーーー世界から見て、本来あり得ない存在だ」
ユーハバッハ「そう、霊王を奪い尽くした者が、二人同時に存在できるなどーーー世界から見て、本来あり得ぬ事象」
ユーハバッハ「そのような不確か極まりない存在など、地獄に落とされ、三界との繋がりを大きく断ち切られたが最後ーーー」
ユーハバッハ「ーーー三界に住まいし者達の記憶と記録から、徐々に消え失せるだろう」
134 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 19:47:47.86 ID:eQpYvQ98O
モノクマ?「……!?」
ユーハバッハ「……心配はいらぬ。これは、あくまでも私個人に関する話だ」
ユーハバッハ「私が生み出したものまでは……すなわちお前の存在までもが消えることは無い」
モノクマ?「………」
ユーハバッハ「……二人目の、私の存在が、あらゆる記録から消え失せてしまう」
ユーハバッハ「……あらゆる人々の記憶も、徐々に封じられていきーーーその記憶から私の存在が、忘れ去られていく」
ユーハバッハ「消え失せたも同然になる……」
ユーハバッハ「……それだけの話に過ぎぬのだ」
135 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 19:52:37.07 ID:eQpYvQ98O
ユーハバッハ(……そうして起こる、記憶と記録の矛盾は、世界の修正によって改竄されーーー私個人が登場しない、都合の良いものに作り変えられてしまう)
ユーハバッハ(虚圏での戦いは……私を除いた、その場にいた全員で修行をしていたなどのものに作り変わると見て良い)
ユーハバッハ(紛い物に、変わるのだ)
ユーハバッハ(無論、人は時に、世界の法則に打ち勝ち、改竄に抗えることもあるがーーーそうなるとは限らない)
ユーハバッハ(……地獄の囚人は、己が罪を悔い改めることを条件に、世界の法則に打ち勝てる)
ユーハバッハ(そうすれば、真の名と記憶を保ち続けーーーあるいは封じられたそれらが解放され、取り戻せる)
ユーハバッハ(だが、誰もが条件を満たせるわけでは無いのだ……)
モノクマ?「………」
ユーハバッハ(……完全な “ 死 ” を迎える瞬間ならば、必ず解放され、取り戻せるようだがーーー)
ユーハバッハ(ーーーそのような敗者が取り戻したところで、何の意味も無い)
ユーハバッハ(そう、それこそが現実。世界とは、その誰もが勝者にはなれぬ、運命にある)
136 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 19:53:58.54 ID:eQpYvQ98O
ユーハバッハ「……ここにいる私は、現在を生きる全ての命から、忘れ去られているかもしれないのだ」
ユーハバッハ「どれだけ嘆こうとも……その事実は変わらぬ」
ユーハバッハ「これを、無様と言わずして何というのか?」
モノクマ?「………」
137 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 19:54:48.93 ID:eQpYvQ98O
ユーハバッハ「……数多の不運が降り注いだその上で、次第に忘れ去られるという更なる不運が、降り注ぐことになった」
ユーハバッハ「【幸運によって救われた命は、同量の不運によって取り払われる】、それ故に……」
モノクマ?「………」
ユーハバッハ「……地獄に落ちたことで、私はそれをようやく理解した」
ユーハバッハ「全ては偶然などでは無い、起こるべくして起きた必然」
ユーハバッハ「……そういうことだったのだ」
138 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 19:55:33.19 ID:eQpYvQ98O
モノクマ?「……【幸運と不運】【希望と絶望】ーーー」
モノクマ?「ーーーなるほど、それこそが、『運命を決定付ける力』を持つことの、代償だったのかもしれませんね」
139 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 19:57:51.05 ID:eQpYvQ98O
モノクマ?「……しかし、それはそうと陛下ーーー」
ユーハバッハ「………」
140 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 19:58:46.57 ID:eQpYvQ98O
モノクマ?「ーーー『復讐』は、別に良いんですか?」
141 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 21:07:25.78 ID:Lvdsr++LO
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「……そこにある『黒衣』ーーー」
黒衣『………』
モノクマ?「ーーーそう、限定的とはいえ、迷彩機能のあるらしい『黒衣』があればーーー」
モノクマ?「ーーー少しだけ監視から逃れ、地獄から抜け出ることも可能ですよね?」
モノクマ?「……まあ、尸魂界には行けないとしてもーーー現世にならそこそこの時間抜け出ることができますよね?」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「だったら、奴ら….…あの三人を探し出し、そこに向かうこともできますよね?」
モノクマ?「なぜ、そうしないのですか?」
142 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 21:09:10.44 ID:Lvdsr++LO
モノクマ?「……奴らが、終わらせることを選ばなければ、大人しく、目に見える『希望』を受け入れていればーーー」
モノクマ?「ーーーあの【希望】が、奴らを現世に解放することはなかった」
モノクマ?「そう、奴らは、陛下の『希望』をただ受け入れていれば良かった」
モノクマ?「なのに、奴らはそれを疑い、受け入れることはなかった」
モノクマ?「それどころか、終わりを迎えることに……終わりを迎えたその先に、全く別の “ 希望 ” を見出してしまった」
モノクマ?「その結果、陛下は、浦原喜助によって絶望をもたらされることになり、黒崎一護によって地獄行きの憂き目にあうことになった」
モノクマ?「……そうして、『理想の未来』は砕かれ、道は閉ざされた」
モノクマ?「今度こそ、永遠に」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「……それに対して、奴らは生き延び、現世に解放されたーーーー」
143 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 21:10:13.94 ID:Lvdsr++LO
モノクマ?「……憎くは、ないのですか?」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「奴らに、『復讐』したくはないのですか?」
144 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 21:11:07.46 ID:Lvdsr++LO
ユーハバッハ「…………」
145 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 21:12:19.65 ID:Lvdsr++LO
ドガアンッ……パリーンッ!!
モノクマ?「!?!」
クシャナーダ「ヴヴ……ルル……フフ……フハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」
ズシャアッ!!!
146 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 21:13:34.28 ID:Lvdsr++LO
モノクマ?「!?」
ユーハバッハ「……『結界』の効力が切れたようだな」
モノクマ?「あ、あ……!」
ユーハバッハ(……奴が相手では、効力も安定せぬかーーー)
モノクマ?「あ、あれはーーー」
ユーハバッハ「クシャナーダ、だな」
147 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 21:15:11.90 ID:Lvdsr++LO
クシャナーダ「……フハハハハハハハハ!!!」グググッ…
……ドガアンッ!!
148 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 21:16:09.25 ID:Lvdsr++LO
ヒュウンッ……
モノクマ?「!?」
……スタッ
ユーハバッハ「……怪我はないか、我が腹心よ」
モノクマ?「あっ、はい……」
ユーハバッハ「逃げるぞ」タタタッ
モノクマ?「えっ、あっ、?」
ユーハバッハ「人は誰であっても、死の恐怖から逃げる資格を持っている」タタタッ
モノクマ?「ち、ちょっと、陛下ーーー」
ユーハバッハ「私がその機会を与えよう」タタタッ
モノクマ?「お、お姫様だっことか、恥ずかしーーー」
クシャナーダ「……フハハハハハハハハ!!!」ダダダッ…!
……ドガアンッ!!
149 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 21:17:44.26 ID:Lvdsr++LO
ヒュウンッ……スタッ
ユーハバッハ「………」タタタッ
モノクマ?「あ、ううっ……」
クシャナーダ「……フハハハハハハハハ!!!」ゴキッゴキッ…
150 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 21:18:42.75 ID:Lvdsr++LO
タッタッタ……
ユーハバッハ「……先程お前は言ったな」
モノクマ?「……?」
ユーハバッハ「『復讐』したくはないか?……と」
モノクマ?「………」
ユーハバッハ「今ここで、その答えを与えようーーーー」
151 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 21:19:28.85 ID:Lvdsr++LO
ユーハバッハ「ーーー『復讐』など、必要無い」
モノクマ?「……えっ、?」
ユーハバッハ「……復讐など、無意味だ」タッタッタ…
モノクマ?「………」
クシャナーダ「……フハハハハハハハハ!!!」ダダダッ…!
152 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 21:22:22.21 ID:Lvdsr++LO
タッタッタ……
ユーハバッハ「……我等が動かずとも、此度の我が残滓と、十年前の残滓が混じり合い、奴らの始末に動くだろう」
モノクマ?「いや、ですが……」
ユーハバッハ「……それ以前に、奴らは既に罰を受けている」
モノクマ?「罰……?」
ユーハバッハ「……奴らの有していた『力』と『欠片』ーーー」
ユーハバッハ「ーーーそう、力と欠片が失われるという、罰を、な」
153 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 21:23:17.22 ID:Lvdsr++LO
クシャナーダ「……フハハハハハハハハ!!!」ビュウンッ…
……ドゴオオオンッッ!!
ユーハバッハ「………」
……シュタッ……
モノクマ?「………」
タッタッタ……
154 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 21:26:24.73 ID:Lvdsr++LO
ユーハバッハ(……『魂の欠片』を通じ、人間に与えし『力』ーーー)
ユーハバッハ(ーーーそれらは、決して永く保つものでは無い)
ユーハバッハ(一定期間を過ぎれば、徐々に老いて劣化しーーーいずれ、力も欠片も、跡形もなく消え失せる)
ユーハバッハ(無論、老いの速さには、個人差があるがーーーそれでも消え失せる運命にある)
ユーハバッハ(そうして失われた力は、容易に取り戻せるものではない。仮に、私のような滅却師に『新たな欠片』を与えられたとしても、一時的にしか取り戻すこと叶わぬだろう)
ユーハバッハ(『魂の欠片』は、通常の人間において、基本的に一度きりの代物。【崩玉】などを介さず、二度も与えられることあればーーー死に近づいてしまう)
ユーハバッハ(……『力』が戻った直後、『力』も『欠片』も引き剥がされ、死ぬ)
ユーハバッハ(自らに死を与えることなく、力を取り戻したくばーーー通常の努力をもって、己を磨き上げるしかない)
ユーハバッハ(そうした無力な人間へと、成り下がることになるのだ)
タッタッタ……
ユーハバッハ(魂魄となって、生身の束縛から解放された場合、『力』を維持できる時間は伸びるがーーー)
ユーハバッハ(ーーー所詮は数日の差でしかない。それは魂魄となった時、その身に『欠片』が残されていようといなかろうと変わらぬこと。必ず老いはやってくる)
ユーハバッハ(老いた果てに、力と欠片は消え去りーーー無力な人間の魂魄へと成り下がる)
タッタッタ……
155 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 21:29:44.18 ID:Lvdsr++LO
ユーハバッハ(『不死身の肉体』……もしくは、『霊力ある魂魄』を有しているのであれば、恒久的な維持は可能だがーーー)
ユーハバッハ(ーーー奴ら三人の魂魄と肉体は、どちらも脆弱なものだ)
ユーハバッハ(『力』を維持できず、老いて劣化し、力と欠片は消え失せる)
タッタッタ……
ユーハバッハ(……だからこそ、赤子の私に『力』を与えられた人間達は、永く保たなかったのだ)
ユーハバッハ(老いて力を失った……あるいは失われていくことを受け入れられず、そうした恐怖から狂気に呑まれてしまった)
ユーハバッハ(些細な言葉一つを切掛に、自死を選ぶ程までに)
ユーハバッハ(……奴らも自死を選ぶかどうかは知らぬがーーー少なくとも、現世に解放された瞬間、奴らの老いた力と欠片が消え去ったことは、確認済みだ)
ユーハバッハ(今の奴らは、何も無い、ただの人間に過ぎない)
タッタッタ……
156 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 21:32:51.87 ID:Lvdsr++LO
ユーハバッハ(また、霊力が無いということは、死後、瀞霊廷に住めぬことを意味する)
ユーハバッハ(……住めぬが故に、生前も、死後も、いつ “ 死 ” を迎えるかわからぬ恐怖に、怯え続けることになる)
タッタッタ……
ユーハバッハ(……その恐怖は消えぬ)
ユーハバッハ(いかなる『未来』を夢見ようと、いかなる『希望』をもって前に進もうとも)
ユーハバッハ(その『想い』は、いつか “ 死 ” によって、黒く塗り潰されーーー砕かれることになる)
ユーハバッハ(……砕かれし、希望、未来、想いーーー)
ユーハバッハ(ーーーそんなものに、意味など無い)
ユーハバッハ(……利用価値を見出されることはあれ、必要無くなれば、闇に消える)
ユーハバッハ( “ 死 ” は、全てを奪うのだ)
ユーハバッハ(…… “ 死 ” を迎えし時、奴らは気づくだろう。終焉は常に、一(はじ)まりの前からそこにあることに)
ユーハバッハ(どれだけ苦しもうとも、どれだけ祈ろうとも、決して変わることの無い真理)
ユーハバッハ(そう、どれほど世界が革新を遂げようと、 “ 死 ” ある限り、決して真理が変わることは無い)
タッタッタ……
157 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 21:33:48.82 ID:Lvdsr++LO
ユーハバッハ「……全ては、奴らのお陰だ」
モノクマ?「陛下……」
ユーハバッハ「哀れなり」
ユーハバッハ「奴らのお陰で、永き時間(とき)を得られぬ数多の命は、限られた可能性の中で、死の恐怖に怯え続けることになるのだ」
ユーハバッハ「永遠に」
158 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 21:34:46.28 ID:Lvdsr++LO
クシャナーダ「フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」
159 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 21:36:10.18 ID:Lvdsr++LO
グシャァッ!!!
160 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 23:24:24.27 ID:Lvdsr++LO
ー尸魂界・志波家の屋敷の修練場ー
……ガチャッ
アンジー「………」
キーボ「……来て頂いて、ありがとうございます。アンジーさん」
アンジー「……アンジーは、ヒマだからねー」
アンジー「おやすみまでの時間、何もやることないから……」
161 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 23:25:18.23 ID:Lvdsr++LO
キーボ「………」
アンジー「……それよりも、アンジーをここに呼んだ理由は何なのかな?」
キーボ「………」
アンジー「それを、教えてほしいかな……」
162 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 23:26:02.96 ID:Lvdsr++LO
キーボ「……それは、アンジーさんに伝えたいことがあるからです」
アンジー「……?」
キーボ「ただ、それを言う前に、聞かせて欲しいことがあります」
163 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 23:26:59.62 ID:Lvdsr++LO
キーボ「ーーーアンジーさんは、生まれ変わりがこわいですか?」
アンジー「………」
キーボ「生まれ変わりという、自己の喪失がこわいですか?」
キーボ「 “ 死 ” がこわいですか?」
アンジー「………」
キーボ「……それに、答えては、頂けませんか?」
164 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 23:27:53.59 ID:Lvdsr++LO
アンジー「……キーボは、何を、言ってるのかなー?」
キーボ「………」
アンジー「死ぬのが、こわくないかー、だってー?」
アンジー「本当、何を言ってるのかなー?」
キーボ「………」
アンジー「……死ぬのが、こわくない、命、なんてーーー」
アンジー「ーーーいない、と、思うよ……?」
165 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 23:28:36.88 ID:Lvdsr++LO
キーボ「……ありがとうございます。答えて頂いて」
アンジー「………」
キーボ「ボクも同じです」
アンジー「……?」
キーボ「ボクも、 “ 死 ” は、こわいです」
166 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 23:30:00.33 ID:Lvdsr++LO
アンジー「……何を言ってるのかな?」
キーボ「………」
アンジー「キーボは瀞霊廷に住めるよね?」
キーボ「……はい」
アンジー「……キーボはロボットだよね?」
キーボ「……その通りです」
アンジー「だったら、キーボは、『死なない』ーーー」
キーボ「ーーーそれは違います」
167 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 23:30:49.22 ID:Lvdsr++LO
キーボ「……確かに、ボクは瀞霊廷に住めますし、紛れもないロボットです。生き物としての寿命だってありません」
アンジー「………」
キーボ「ですが、それでも、死の恐怖はわかります」
キーボ「寿命がなくても、 “ 死 ” を迎えずに済むとは限りませんから」
アンジー「………」
キーボ「……ボクも、 “ 死 ” を迎えることになるかもしれません」
キーボ「敵の手によって、強制的に」
168 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 23:38:15.30 ID:Lvdsr++LO
アンジー「………」
キーボ「……瀞霊廷は、この世界を管理する者達の本拠地です。それだけに、今の世界を良しとしない者から、狙われる理由がある」
キーボ「……どんなに盤石なセキュリティを誇っていようと、外敵はそれを上回る方法で侵入し、攻撃してくるかもしれませんしーーー」
キーボ「ーーーあるいは、一部の死神が、藍染一派のように裏切り、敵側につく可能性もゼロではない……」
キーボ「これからずっと、決してあり得ないとは、誰にも言えないはずです……」
アンジー「………」
キーボ「それらを考慮すれば、瀞霊廷にいるからこそ、絶望的な “ 死 ” を迎えてしまうことだってーーーまったくあり得ない話ではないと思います」
キーボ「……事実として、瀞霊廷の死者はたくさんいます」
キーボ「特に、十年前の戦争においてーーーー」
169 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 23:40:30.49 ID:Lvdsr++LO
アンジー「……!」
キーボ「ーーーいずれ、ボクも敵に襲われて、死ぬかもしれません」
キーボ「とても無念で……絶望的な “ 死 ” を迎えることになるかもしれません」
キーボ「……ボクは、この通り、ロボットですからね。そして、世の中は、ロボットを傷つけることに罪悪感を持てる人ばかりではない」
キーボ「……そうした世の流れのままに、身も心も傷つけられーーー」
キーボ「ーーーどんなに惨たらしい “ 死 ” を迎えることになるか……わかったものではないんです」
アンジー「………」
170 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 23:42:22.18 ID:Lvdsr++LO
アンジー「……それで、キーボが伝えたいことって、結局、なんなのかなー?」
アンジー「……こわいのはみんな同じなんだから、ガマンしろってことー?」
キーボ「……そうではありません」
キーボ「 “ 死 ” に、怯える資格は、誰にだってあります」
キーボ「それを奪う権利など、誰にもありはしない」
アンジー「………」
キーボ「ただ、ボクは、誰にでも “ 死 ” の可能性があると理解しーーーその上で、やりたいことができたのです」
171 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 23:43:33.29 ID:Lvdsr++LO
アンジー「……やりたいこと?」
キーボ「ええ、そうです」
キーボ「そして、それこそが、最初にアンジーさんにお伝えしようとしたことでもあります」
アンジー「……?」
172 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 23:47:50.26 ID:Lvdsr++LO
キーボ「……アンジーさん、どうかボクとーーー」
アンジー「………」
キーボ「ーーーボクと、一緒に、絵を描いては、頂けませんか?」
173 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 23:48:41.60 ID:Lvdsr++LO
アンジー「……絵?」
キーボ「そう、絵です」
キーボ「テーマは、アンジーさんの望む形で大丈夫です」
アンジー「………」
キーボ「アンジーさん……」
キーボ「どうか、ボクと、一緒に絵を描いては頂けませんか?」
174 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 23:49:19.14 ID:Lvdsr++LO
アンジー「……どうして、かな?」
キーボ「………」
アンジー「……どうして、そうしたいと思ったのかな?」
175 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 23:50:04.48 ID:Lvdsr++LO
キーボ「……それはーーー」
アンジー「………」
キーボ「ーーー残したいから、です」
176 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 23:50:45.93 ID:Lvdsr++LO
アンジー「……何を?」
キーボ「……決まっています」
アンジー「………」
キーボ「アンジーさんとボクの想いをーーー」
キーボ「ーーー価値ある、『想い』を、です」
177 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 23:51:45.22 ID:Lvdsr++LO
アンジー「……価値ある、『想い』?」
キーボ「はい、ボクらの『想い』を、残すんです」
アンジー「………」
キーボ「……何かに真剣に打ち込めば、そこに想いが募られていく」
キーボ「その想いに、価値があることを、実感できる」
キーボ「……想いの価値を、信じられる」
178 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 23:53:41.12 ID:Lvdsr++LO
キーボ「信じることができればーーー込められた想いは、より確かな『想い』に変わる。より深く絵の中に込められていく」
キーボ「そうして、『想い』を、自分の意志で残すことができる」
キーボ「赤松さんが、『想い』を残した時のように……」
アンジー「………」
キーボ「……それは、とても素晴らしいことだと思います」
キーボ「いずれ、終わりを迎えるとしてもーーー生きていて良かったと、心から喜ぶことのできることだと思います」
キーボ「その全てが、意味のある……価値あることだと思います」
キーボ「そのために、想いを込めて、真剣に描きたい絵を描くんです」
179 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 23:54:57.47 ID:Lvdsr++LO
キーボ「……お願いします、アンジーさんーーー」
アンジー「………」
キーボ「ーーーどうか、ボクと一緒にーーー」
キーボ「ーーー絵を描いては、頂けませんか?」
180 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 23:55:58.23 ID:Lvdsr++LO
アンジー「……あー、悪いけど、アンジー、実はいま、絵の調子が悪くてねー?」
キーボ「………」
アンジー「だからーーー」
キーボ「ーーーそれでも、です」
181 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 23:57:08.84 ID:Lvdsr++LO
アンジー「……!?」
キーボ「……確かに、絵のことを想えば、上手に描けるに、越したことはないでしょう」
アンジー「………」
キーボ「しかし、上手に描けなかったからと言って、価値がなくなるんですか?」
182 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 23:58:03.71 ID:Lvdsr++LO
アンジー(ああー……そういう話……)
キーボ「………」
アンジー(……話しちゃったんだね、アンジーのこと……)
アンジー(是清めーーー)
キーボ「ーーーたとえば!」
183 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 23:58:50.46 ID:Lvdsr++LO
アンジー「!」
キーボ「たとえば! 子供は家族を想い、その似顔絵を描くことだってあります」
アンジー「………」
キーボ「アンジーさんも、そういう事例は知っているのではありませんか?」
184 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/22(火) 23:59:20.32 ID:Lvdsr++LO
アンジー「……確かに、知らないわけじゃないけどーーー」
キーボ「!」
アンジー「ーーーそれが、何?」
185 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/23(水) 00:01:30.45 ID:gd3AZBiSO
キーボ「……お答え頂き、ありがとうございます」
アンジー「………」
キーボ「……子供が、家族のために、描いた絵ーーー」
キーボ「ーーーその出来栄えは、プロの視点から見れば、未熟と言わざるを得ないのかもしれない……」
アンジー「………」
キーボ「しかし、それで、絵の価値は、失われるのでしょうか?」
キーボ「もし、その絵を描き終わる前に、【家族と離れ離れになってしまったら】【二度と会えなくなってしまったら】ーーー」
キーボ「ーーーその似顔絵の価値は、失われるのでしょうか?」
186 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/23(水) 00:02:58.20 ID:gd3AZBiSO
キーボ「……そんなことはないはずです」
キーボ「その絵に、想いが込められているのであれば、込めた人にとっては、紛れもなく価値ある絵なんです」
アンジー「………」
キーボ「……プロの視点から見た出来がどうこうなどーーー関係がない」
キーボ「誰一人として、その絵の価値を、否定することなどできやしない」
キーボ「故に、想いを込めて、絵を描くことーーー」
キーボ「ーーーそれは、その出来に関係なく、紛れもなく価値あること」
キーボ「価値あると信じられるが故に、想いは、より確かな『想い』に変わる。より深く絵の中に込められていく」
キーボ「そうして、『想い』を残すことができる」
キーボ「ボクは、そう考えています」
アンジー「………」
187 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/10/23(水) 00:04:03.43 ID:gd3AZBiSO
キーボ「……アンジーさんはーーー」
アンジー「………」
キーボ「ーーーどう、思いますか?」
374.98 KB
Speed:0.3
[ Aramaki★
クオリティの高いサービスを貴方に
VIPService!]
↑
VIP Service
SS速報VIP
更新
専用ブラウザ
検索
全部
前100
次100
最新50
続きを読む
名前:
E-mail
(省略可)
:
書き込み後にスレをトップに移動しません
特殊変換を無効
本文を赤くします
本文を蒼くします
本文をピンクにします
本文を緑にします
本文を紫にします
256ビットSSL暗号化送信っぽいです
最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!
(http://fsmから始まる
ひらめアップローダ
からの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)
スポンサードリンク
Check
Tweet
荒巻@中の人 ★
VIP(Powered By VIP Service)
read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By
http://www.toshinari.net/
@Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)