【BLEACH×ロンパV3】キーボ 「砕かれた先にある世界」【後編】

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297 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 22:49:58.30 ID:pwF/1nuYO



アンジー(……そうだよ。誰だって、価値を信じて、向き合える)




アンジー(どんなに砕かれて、闇に消えたとしてもーーー)




アンジー(ーーー自分にとっては、人で、かけがえのない、たったひとりを、護りたい……)








アンジー(……そう、想うことが、できるから……!)




キーボ「………」


298 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 22:50:47.26 ID:pwF/1nuYO



アンジー(……そうして、心のままに、信じてーーー)




アンジー(ーーー今みたいに踏み越えることもできたんだね……)




キーボ(アンジーさん……!)




アンジー(信じて、必要としてくれた、 “ 心 ” ーーー)




アンジー(ーーーその『想い』が、 “ ここに ” ーーーー)


299 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 22:51:34.38 ID:pwF/1nuYO






アンジー(ーーーあぁ……)








アンジー(あたたかい、なぁ……)





300 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 22:52:29.14 ID:pwF/1nuYO



アンジー(…… “ ここに ” ある、もうひとつの『想い』ーーー)




アンジー(ーーー心のままに、歩んで手を、伸ばせばーーー)




キーボ「ーーーーーーーーーーーーーーー」




アンジー(ーーーきっと、その先はーーーー)


301 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 22:53:03.52 ID:pwF/1nuYO









……ぎゅううっ








302 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 22:54:20.77 ID:pwF/1nuYO



キーボ「………」パチリッ

アンジー「………」



キーボ「ーーーえっ?」

アンジー「………」



キーボ「アンジー、さん、?」

キーボ「何をーーー」



アンジー「ーーー大丈夫だよ、キーボ」

キーボ「!」


303 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 22:55:35.95 ID:pwF/1nuYO



アンジー「キーボの心は、アンジーの中に入ったよ」

アンジー「キーボの『想い』は、アンジーの心で受け止めた」

アンジー「これで、アンジーは、キーボとアンジーの『想い』、込められる」



キーボ「!!」



アンジー「……だから、アンジーからもお願い」



アンジー「アンジーの心も、キーボの中に入れて……」



アンジー「アンジーの『想い』も、キーボの心に受け止めて欲しいの」


304 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 22:56:29.84 ID:pwF/1nuYO



キーボ「……!!」



アンジー「それから、キーボも、アンジーと一緒に絵を描いてーーー」







アンジー「ーーーふたりの『想い』、込めて欲しい」


305 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 22:57:06.12 ID:pwF/1nuYO









キーボ「ーーーーーーーーーーーーーーー」








306 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 22:58:03.35 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……お願い」

アンジー「お願いだよ、キーボ」

アンジー「どうか、アンジーとーーー」



キーボ「ーーーもちろんですよ、アンジーさん!」



アンジー「!」



キーボ「アンジーさんの心は、『想い』は、ボクの中に、心で受け止めます!」



アンジー「………!」



キーボ「一緒に込めましょう!」

キーボ「アンジーさんとボクの想い、ふたりの『想い』を! 一緒に!」



アンジー「……ありがとう、キーボ」


307 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 23:00:24.73 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……描こう、一緒にーーー」







アンジー「ーーー “ 夜空 ” を」


308 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 23:01:41.38 ID:pwF/1nuYO



キーボ「 “ 夜空 ” ……もしかして、それがーーー」



アンジー「そう、それが、アンジーとキーボの、絵のテーマ」



アンジー「お星さまの光に、お星さまの闇ーーー」



アンジー「ーーー夜風、花火、見上げる人ーーー」






アンジー「ーーーそして、神さまーーーー」


309 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 23:02:45.93 ID:pwF/1nuYO



アンジー「ーーー全部、全部、描きたい」



アンジー「アンジーは、キーボと、 “ 夜空 ” を描きたい」



キーボ「アンジーさん……!」



アンジー「……描けたら、一緒に見よう?」



キーボ「!」



アンジー「ーーーそれからは、尸魂界(こっち)に来たみんなにーーー」






アンジー「ーーーいつかは、現世(あっち)で生き残ったみんなにも、見せたいな」


310 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 23:04:00.68 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……いろんな人に、見せたい」

アンジー「それは、同じ学園のみんなに、だけじゃない」

アンジー「空鶴たち、空吾たち、ユウイチたち、喜助、神さまにもーーー」



アンジー「ーーーいろんな『人』に見せたい」



アンジー「アンジーとキーボの絵を……」



アンジー「自慢、したい」



アンジー「胸を、張りたいな」


311 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 23:04:54.22 ID:pwF/1nuYO



キーボ「……同感です!」



キーボ「そのためにも、描きましょう! 一緒に!」



アンジー「……そうだよ、キーボとアンジーで “ 描いて魅せる ” 」



キーボ「ええ! 他ならないーーーー」


312 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 23:05:42.95 ID:pwF/1nuYO









「「 “ 夜空 ” を!!」」








313 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 23:06:55.20 ID:pwF/1nuYO




(ーーー其れは、闇)






(全に届く、光の輪と双翼を持たない、姿無き闇)






(だけど、胸に刻まれたこの想いは、誰にも奪えない。それが、罪であっても、 “ 死 ” を名乗る神であっても)






(かけがえのない価値を信じて、光と闇を想い描く)






(ふたつが混じり合う人の心に、夜空が届くように)



314 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 23:07:58.40 ID:pwF/1nuYO









アンジー「ーーーあーあ、キーボがロボットやってなかったらなー!」








315 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 23:09:18.20 ID:pwF/1nuYO



キーボ「ーーーなっ、ここで、まさかのロボット差別ですか!?」



アンジー「ノーノー、これは、神ッターでの、つぶやきだよー!」



キーボ「神ッター!? つぶやき!?」

アンジー「そうだよー」



アンジー「……もし、キーボがロボットやってなかったらーーー」









アンジー「ーーーこのまま一緒に……ドロドロに神っちゃうのも、悪くないかなー、って」


316 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 23:11:04.66 ID:pwF/1nuYO



キーボ「? ドロドロに、神る?」

キーボ「泥を用いて、神さまを模した美術品を造形するということですか?」

アンジー「………」

キーボ「だとしたら、確かにボクは控えた方が良いかもしれませんね」

キーボ「いかに頑丈な設計であるとはいえーーー泥を侮るわけにはいきません。万が一、故障でもすれば、迷惑がかかりますからね」



キーボ「……あっ、ですが、入間さんに頼んで、対泥用のコーティングをして貰えばーーー」



アンジー「ーーーなるなるー! その手があったかー!」



キーボ「ええ、入間さんならできるはずです!」



アンジー「そうだねー! 美兎なら、 “ そういうこと ” 喜んでやってくれそうだからねー!」

アンジー「キーボのアイデアは神ってるねー! おかげでアンジーも閃いたよー!」



キーボ「いえ、こちらこそ、新たな作品作りのお誘い! ありがとうございます、アンジーさん!」



キーボ「ドロドロに神る、その時を……今から楽しみにしています!」


317 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 23:12:31.77 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……んーとねー? 悪いけど、それはもうちょっと後かなー?」



キーボ「? まあ、確かにそれは、入間さんに頼まないとできないことですからね」



キーボ「いや、浦原さんにやって貰えばーーー」



アンジー「……そうじゃなくてねー?」


318 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 23:13:46.62 ID:pwF/1nuYO



キーボ「?」

アンジー「……それは、まだ早いから」

キーボ「……早い?」

アンジー「そうだよー」

アンジー「……それをするなら、アンジーにはまだまだやらなくちゃいけないことがあるから……」



キーボ「………」



アンジー「……全ては、それが、終わった後ーーー」






アンジー「ーーー終わった後に、ね?」


319 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 23:15:07.15 ID:pwF/1nuYO



アンジー(……そう、アンジーは、みんなに向けて、やらなくちゃいけないことがある)






アンジー(それが、終わった後、キーボが、受け入れてくれる時が来たらーーー)






アンジー(ーーーその時に、思いっきりーーーー)


320 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 23:16:35.90 ID:pwF/1nuYO



キーボ「ーーーわかりました! アンジーさんに準備が必要というのなら、ボクはそれを待たせて頂きます!」



アンジー「……ありがとねー、キーボ!」



キーボ「いえいえ! 元はと言えば! ボクがアンジーさんに、一緒の、作品作りをお願いしたわけでーーーー」



ーーーーーーーーーー


ーーーーーー


ーーーー


ーー


321 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/24(木) 21:36:04.12 ID:l52JXZ7WO



ー修練場・天井裏(亜空間)ー



空鶴「………」

銀城「……おい」

空鶴「………」

銀城「……おい、アンタ」

空鶴「………」

銀城「……ったく、返事も無しかよ。浦原が言うには、この部屋の音は、絶対外に漏れねえんだろ?」

銀城「中に入ろうにも、アンジーとキーボは、この部屋のこと知らねえし……それ以前にこの部屋は、アンタと “ もう一人 ” が認めた存在しか入れねえ仕組みだそうじゃねえか」

空鶴「………」

銀城「だったら、音が外に漏れることは絶対に無いはずだろ?」

銀城「押し黙る理由もねえだろうに」


322 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/24(木) 21:37:37.49 ID:l52JXZ7WO



空鶴「……黙る?」

空鶴「バカ言いやがれ、そんな理由、ハナからねえよ」



空鶴「ここはおれの家だ。おれはここの家主だ」

空鶴「いつ何を言おうが言うまいが、おれの自由だ」



空鶴「コソコソする理由なんざ、どこにもねえ」



銀城「……そうかい、アンタらしいな」


323 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/24(木) 21:39:14.21 ID:l52JXZ7WO



空鶴「ーーーで、なんのつもりだ、元居候? おれは、テメエが “ 今日おれの家に泊まりたい ” って言うから泊めてやったし、 “ テメエも ” 、この部屋に入れてやった」



空鶴「テメエがウロチョロして、おれの家の邪魔にならねえようにな」



銀城「………」



空鶴「だが、おれはアンジー達が下に来た時、 “ テメエには ” 出て行くよう、何度か命じたはずだ」

空鶴「なのに、シカトこいて残りやがった」



空鶴「……覚悟は、できているんだろうな?」


324 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/24(木) 21:40:51.95 ID:l52JXZ7WO



銀城「……それを言うなら、アンタこそ、覚悟はできてんのか?」



空鶴「………」



銀城「……あいつらのやりとりを、勝手に見て、聞いちまってる」

銀城「それは、アンタだって同じのはずだ」



空鶴「………」


325 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/24(木) 21:41:43.22 ID:l52JXZ7WO



空鶴「……覚悟も雑煮もあるかよ」



銀城「………」



空鶴「ここは、おれの家だ。ここの主は、おれだ」



空鶴「何を見ようが、何を聞こうが、おれの自由だ」


326 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/24(木) 21:44:04.47 ID:l52JXZ7WO



銀城「……そいつはどうかな」



空鶴「………」



銀城「あいつらが抱えていることは、あいつらの問題だ。アンタには関係ねえだろ?」

銀城「なのに、どうして、勝手に見てる?」

銀城「……どうして、勝手に聞いてやがんだ?」



空鶴「………」



銀城「……あいつらは見世物じゃねえぞ?」


327 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/24(木) 21:44:59.42 ID:l52JXZ7WO



空鶴「ーーーバカいえ、おれはお客様なんかじゃねえ」



銀城「………」



空鶴「……ただ、家主として、ケジメつけただけだ」


328 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/24(木) 21:45:43.18 ID:l52JXZ7WO






空鶴「ここは、おれの家だ」






空鶴「だから、居候に泣かれたままなのは、気に入らねえんだよ」





329 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/24(木) 21:47:25.16 ID:l52JXZ7WO



銀城「……まあ、泣かれたまま、 “ お別れ ” なんざ誰だって御免だな」

銀城「だから、 “ 万が一 ” を考えて、アンタも待機してたってわけだ……」



空鶴「………」



銀城「……アンタも割と、リアリストの部類だったんだな。意外だったぜ」


330 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/24(木) 21:48:50.16 ID:l52JXZ7WO



空鶴「……あいにくだが、おれは夢見る花火師。寝ても覚めても浪漫を忘れたことはねえ」

空鶴「だからこそ、たっぷり寝る必要がある。だったら、見れるもん、聞けるもんは、さっさと見聞きしてスッキリさせる。おれが今日ここにいたのは、それだけの理由だ」



銀城「………」



空鶴「……何があろうが、どんなに泣かれようが、おれの夢が湿気ることはねえ」



空鶴「絶対にな」


331 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/24(木) 21:51:31.30 ID:l52JXZ7WO



銀城「……はっ、 “ テメエらのことは、テメエらでケジメつけやがれ ” ってわけか」

銀銀「訂正するぜ、 “ アンタらしい ” 」



空鶴「……さっきから家主のやることなすこと、ケチばっかつけやがって…」

空鶴「あいつらでどうにかできるもんなら、あいつらにやらせるべきだろうが」



銀城「………」



空鶴「どこの誰だろうが、そいつらだけでケジメつけようとするからこそ、誇れるもんだってあるんだ」

空鶴「なのに、そうじゃねえ奴が、ハナから出しゃばったらどうなる?」

空鶴「まだ、身内でケリつけられるかもしれねえ話に、ズカズカ踏み込んだらどうなる?」

空鶴「あいつらでケジメ突き立てようって時に、横槍入れて別の得物で突き立りゃ、何が、どうなる?」



空鶴「誇りはどうなる?」



銀城「………」


332 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/24(木) 21:52:18.18 ID:l52JXZ7WO



空鶴「ーーー誇りを残せるに越したことはねえ」



空鶴「誇りを残せるから、応えられることもある……」



空鶴「……テメエだって、本当はそのくらい、わかってるはずだ」



銀城「………」


333 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/24(木) 22:00:23.35 ID:l52JXZ7WO



空鶴「ーーーって、んなことよりも、テメエこそ、どうしてここで出歯亀してんだ?」

空鶴「ここの家主はおれで、あいつらはおれの居候だがーーー今のテメエは違う……」



銀城「………」



空鶴「……なのに、 “ 危なくなったら ” 連絡するよう居候に頼んで、その通りに来てーーーいったい何のつもりだ?」



空鶴「 “ 万が一 ” が、そんなに気になんのか?」


334 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/24(木) 22:01:41.61 ID:l52JXZ7WO



銀城「……そういう問題じゃねえよ」

銀城「……ガキってのは、危なっかしいもんなんだよ」

銀城「信じる信じないの問題じゃねえ。気づいた時には目で追っちまってるもんなんだ」



空鶴「………」



銀城「……それだけ、ガキはどうなるかわからねえしーーー」



銀城「ーーー目を逸らすことはできねえ。誰が、何と言おうとな」



空鶴「………」



銀城「……それだけの話だ」


335 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/24(木) 22:02:55.83 ID:l52JXZ7WO



銀城「……あー、お互い、どうにも夜に酔い過ぎたようだな」

銀城「らしくねえぜ、こんなのはよーーー」



空鶴「ーーー最後通告だ」



銀城「………」



空鶴「出てけ、元居候」



空鶴「テメエの出る幕は、もう無え」


336 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/24(木) 22:03:28.96 ID:l52JXZ7WO









銀城「……あばよ」ヒュンッ








337 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/24(木) 22:04:08.10 ID:l52JXZ7WO



空鶴「………」






空鶴「…………」









空鶴「………………」


338 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/24(木) 22:05:16.90 ID:l52JXZ7WO



空鶴(…… “ ガキは、どうなるかわからねえ ” かーーー)




空鶴(ーーーそこだけは乗っかってやっても良いか)




空鶴(……光で闇を輝かせるのが、花火師だあ?)




空鶴(……テメエの心に、人の心が入っただあ?)




空鶴(ーーーあんなガキ共が、あんな言霊吐き出すとはな……)




空鶴(……世の中、いったい全体どうなってんだろうな……)




空鶴「……なあ、 “ あんた ” はどう思うよーーーー」


339 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/24(木) 22:05:50.00 ID:l52JXZ7WO









空鶴「ーーー海燕(アニキ)ーーーー」








340 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/25(金) 22:11:48.52 ID:dexucHa3O



ー志波家の屋敷・廊下ー



キーボ(ーーーあれから翌日)


キーボ(ボクとアンジーさんは、いつも通りに起きて、いつも通りに朝食を摂りました)


キーボ(……厳密に言えば、ボクは寝なかったので、起きたという表現は何か違うかもしれませんがーーー)


キーボ(ーーーそれでも、寝る時間を用いて、アンジーさんのこと、これから描く絵のことを、考えることができました)


キーボ(どういった風に描くか、今から楽しみです)


キーボ(ただ、今日は、この後の時間、どういうわけか真宮寺クンから修練場まで来るよう呼び出しを受けています)


キーボ(朝食が終わった後に、急に言われました)


キーボ(それは、アンジーさんも一緒……)


341 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/25(金) 22:23:14.86 ID:dexucHa3O



キーボ(ーーーそして、そのアンジーさんは、現在、朝風呂の真っ最中です)


キーボ(なんでも、アンジーさんは今日、“ やらなければいけないこと ” があるらしく、そのため心身ともにスッキリした気持ちで臨みたいのだそうです)


キーボ(朝風呂は有料なので、ご給金を使うことになりますがーーーそれでもとアンジーさんはお金を支払い、ひと風呂浴びることにしました)


キーボ(それが終わったら、ボクと一緒に修練場まで行くことになっています)


キーボ(お風呂に入った時間を考慮すれば、おそらくは、ちょうどいい時間で修練場まで到着できるでしょう)


キーボ(それにしても、真宮寺クン、この休日にいったい何の話を……)


342 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 21:00:38.13 ID:o8QAgG30O



キーボ(……もしかしたら、百田クン達に関わることでしょうか?)


キーボ(百田クン達は、現在アルバイトや勉強などで多忙のようですがーーー)


キーボ(ーーーそろそろ、落ち着ける頃合なのかもしれません)


キーボ(いくら超高校級といえど、ある程度の休息がなければ、参ってしまう)


キーボ(それを考えれば、丸一日休める日が、定期的に必要となる)




キーボ(もっとも、 “ その日がいつになるか ” までは、真宮寺クン達もわからないようで……具体的な日にちまでは述べてくれませんでしたがーーー)




キーボ(ーーーそれは、この間までの話。昨日の夜中辺りに、休む日がいつになるか決まったのかもしれませんね)


キーボ(その日が、近づいているということ ーーーそれを、真宮寺クンはボクらに伝えようとしている)


キーボ(百田クン達がこちらに来れるかもしれない)


キーボ(そんな日が近いとわかればーーーその時に向けた準備もしやすくなりますからね……)


343 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 21:03:20.72 ID:o8QAgG30O



キーボ(……百田クン達も、真宮寺クンも……苦しんでいるはずです)




キーボ(自分達が、作り物なのではないか?)




キーボ(そのことに、きっと苦しんでいる……)


キーボ(……真宮寺クンは、その苦しみを、なんとかしたいと考えた)


キーボ(だから、ボクらを呼び出し、百田クン達が丸一日休める日について、伝えると同時にーーー)




キーボ(ーーー昨日、ボクがアンジーさんに話したことを、今日この場で詳しく聞くことにした)


キーボ(……それを参考にすれば、他の全員が抱える苦しみもなんとかできるのではないか?ーーー)




キーボ(ーーーおそらくは、そう考えた)


344 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 21:07:00.38 ID:o8QAgG30O



キーボ(……だとすれば、渡りに船ですね)


キーボ(昨日、最後に修練場を出てから今日の朝食前に至るまで、真宮寺クンはどういうわけか自室におらずーーー)


キーボ(ーーー空鶴さんいわく、別の部屋で、 “ 何か ” をしており、そこで寝落ちしていたという話でした)


キーボ(故に、アンジーさんと話したことを、真宮寺クンに詳しく伝えることはできなかった)


キーボ(ですが、今からであれば、しっかり伝えられる)


キーボ(伝えれば、真宮寺クンの苦しみも、良い方向に和らぐかもしれませんしーーー)




キーボ(ーーーその後、ボクら三人で、百田クン達に同じ話をすればーーー)




キーボ(ーーーもしかしたら、全員の苦しみをーーー)






岩鷲「おー、どうした、キーボ? こんなとこでよ?」


345 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 21:10:05.01 ID:o8QAgG30O



キーボ「あっ、岩鷲クン」

岩鷲「ここは女風呂の近くだぞ? そんなとこで、なんで突っ立ってるんだ?」

キーボ「ああ、それはーーー」



岩鷲「ーーーまさか、覗きか?」



キーボ「なっ、やめてください! ボクはそんなことしませんよ!」



岩鷲「……じゃあ、なんで、こんなとこに突っ立ってるんだ?」


346 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/26(土) 21:12:55.39 ID:o8QAgG30O



キーボ「それは、念のためにです」

岩鷲「? どういうことだ?」

キーボ「ああ、いえ……ちょっと真宮寺クンと待ち合わせをしておりましてーーー」

キーボ「ーーーそれで、万が一その時間に遅れることがないよう、一定時間を過ぎたら大声でアンジーさんに伝えることにしたんです」



キーボ「念のために」



岩鷲「ああ……そういうことか」



キーボ「あまり必要はないとは思いますがーーーそれでも念には念を入れておくことに越したことはない」



キーボ「そう、ボクとアンジーさんは考えたんです」


347 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 21:14:17.45 ID:o8QAgG30O



岩鷲「……まっ、時間を守ろうとするってのは良いことだと思うぜ」

岩鷲「それに、キーボなら、アンジーちゃんに声を届けるのにピッタリだしな」



キーボ「ええ、ボクには声のボリュームを大きくする機能がありますからね」

キーボ「これならば、浴槽まで充分に伝わるでしょう」

キーボ「ロボットとして機能をもって、人の役に立てる。嬉しい限りですよ」


348 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 21:15:05.74 ID:o8QAgG30O



岩鷲「………」



キーボ「ーーー?」



キーボ「どうかしましたか? 岩鷲クン?」


349 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 21:17:00.92 ID:o8QAgG30O



岩鷲「……あー、いや、キーボ、オメーはよーーー」



キーボ「……?」









岩鷲「ーーーなんだか良い面構えになったな」


350 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 21:17:53.92 ID:o8QAgG30O



キーボ「……そうですか?」

岩鷲「ああ、昨日の時は、なんだか元気ねえ感じだったがよーーー」

岩鷲「ーーー今じゃ、だいぶスッキリしてるように見えるぜ」

キーボ「………」

岩鷲「そして、それは、オメーだけじゃねえ」

岩鷲「朝会った時、アンジーちゃんも、真宮寺も “ 吹っ切れた ” って感じだった」

岩鷲「しかも、オメーよりも、ずっとだ」

キーボ「………」

岩鷲「昨日も今日も休日、元気のたまる日には違いねえがーーーそれだけで、そこまで吹っ切れた感じを出せるとも思えねえ」

岩鷲「なんか、あったのか?」


351 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 21:18:53.34 ID:o8QAgG30O



キーボ「……ええ、実はアンジーさんと、昨日いろいろと話をしましてね」



キーボ「それで、お互いに知らなかったことを知れたんです」



岩鷲「………」



キーボ「……そうして、いろいろな、わだかまりが解けたんです」

キーボ「そうなったという “ 結果 ” は、真宮寺クンにも伝えました」

キーボ「それが、ボクらが吹っ切れたように見える、理由なのでしょうね」


352 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 21:19:44.90 ID:o8QAgG30O



岩鷲「……なんにしろ、良かったぜ」



岩鷲「居候の元気な面構えが見れてよ」



岩鷲「やっぱ我が家ってのは、こうでなくっちゃな!」



キーボ「岩鷲クン……」


353 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 21:25:01.33 ID:o8QAgG30O



岩鷲「……それと、キーボ」



キーボ「?」



岩鷲「……今のオメーが、胸に込めてるその気持ちだがよーーー」







岩鷲「ーーー大事にとっとけ」


354 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 21:27:05.84 ID:o8QAgG30O






キーボ「………」






岩鷲「………」





355 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 21:29:50.82 ID:o8QAgG30O



岩鷲「ーーー詳しいことまで、こっちから詮索するつもりはねえが……オメー達は、何かを知ることで良い面構えに変わった」



キーボ「……そうですね」



岩鷲「……そいつは、 “ てめえが知るべきことを知れた ” ってことだ」

岩鷲「その上での答えを “ てめえ自身で見出した ” ってことだ」



キーボ「………」



岩鷲「……その生き様は、一生もんの、 “ 誇り ” になる」



岩鷲「誇れる自分がいれば、その自分を、掴み続けようって気持ちにもなれる」

岩鷲「そうだ、そんな自分を信じて、前に進んでいくことだって、できるんだ」

岩鷲「今のオメーが、胸に抱いているのは、そういう気持ちなんじゃねえのか?」



キーボ「………」


356 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 21:31:50.81 ID:o8QAgG30O



岩鷲「……その気持ちを胸に残す」

岩鷲「そうすりゃあ、これからも、 “ てめえが知るべきことを知る ” ために、 “ てめえ自身で答えを見出す ” ためにーーー」



岩鷲「ーーーこの手を伸ばそうって気になれる」



岩鷲「何度だって、てめえが知るべきことを知れる」

岩鷲「何度だって、てめえ自身で答えを見出せる」

岩鷲「何度だってーーー想いの価値を、信じてやれる……」



キーボ「………」



岩鷲「……そういうもんなんだ」


357 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 21:33:45.64 ID:o8QAgG30O



岩鷲「……だから、オメーがいま胸に込めてる気持ちーーー大事にとっとけ」



キーボ「………」



岩鷲「……この俺! 自称【元・流魂街一の死神嫌い】にして! 自称【西流魂街の深紅の弾丸】にしてーーー」







岩鷲「ーーー自称【西流魂街のアニキと呼びたい人】【ナンバーワン】からの言葉だ! 間違いねえぜ!」


358 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 21:35:13.31 ID:o8QAgG30O



キーボ「……そうですね。キミの言う通りです」

キーボ「……ありがとうございます! キミの気持ち、ボクの心に受け止めます!」



岩鷲「ははっ、そいつは嬉しいな!」

岩鷲「よしっ、なら俺もオメーのその気持ち、ありがたく受け取っておくぜ!」



キーボ「岩鷲クン……」



ガララッ……!


359 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 21:36:08.46 ID:o8QAgG30O



アンジー「……ふいー、サッパリしたよー!」ホカホカ

キーボ「あっ、アンジーさん!」

岩鷲「おおっ、アンジーちゃん! 風呂は終わったのか!」

アンジー「そうだねー、終わってポカポカだよー」ポカポカ

アンジー「待っててくれて、ありがとねー! キーボ!」ガララッピシャンッ

キーボ「いえ、このくらい、朝飯前ですよ!」

岩鷲「朝飯は食ったばかりだけどな!」

アンジー「にゃはははー! そうだねー!」

キーボ「……まったく、ロボットじゃないんですから、変なところで揚げ足を取らないでください!」


360 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 21:37:53.31 ID:o8QAgG30O



キーボ「……って、アンジーさん、そろそろーーー」

アンジー「わかってるよー、是清のことでしょー?」

アンジー「今から行くよー! にゃはははー!」

キーボ「それでは、岩鷲クン! 行ってきます!」

アンジー「行ってくるくるー!」

岩鷲「おう、行ってこい!」



スタスタ……



ーーーーーーーーーー


ーーーーーー


ーーーー


ーー


361 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 21:41:17.47 ID:o8QAgG30O



ー志波家の屋敷・修練場ー



バタンッ……ガチャッ!



真宮寺「ーーー来てくれて、ありがとう。二人とも」



キーボ「……それで、今日はどういった要件なのでしょうか?」



アンジー「そうだねー。大事な話だとは思うけど、何なのかなー?」


362 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 21:44:29.42 ID:o8QAgG30O



真宮寺「……実のところを言うとネーーー」



キーボ「………」



アンジー「………」



真宮寺「ーーー今日、百田君達が、ここに来る」


363 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 21:46:14.75 ID:o8QAgG30O



キーボ&アンジー「「!?」」



真宮寺「そうなったのは、僕が映像と音声付きのメールを送ったからだ」



キーボ「? 映像と音声の付きのーーー」

アンジー「ーーーメール?」



真宮寺「……実は、聞いていたんだヨ」



キーボ「? 何をーーー」



真宮寺「君達が昨日、この修練場でした会話を、ネ」



キーボ&アンジー「「!?」」



真宮寺「それを僕は、聞いていたんだヨ」

真宮寺「……それも、最初の方から」

真宮寺「天井裏に、潜んで、覗き見ながらーーー」


364 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 21:47:57.88 ID:o8QAgG30O



キーボ「……何を言っているんですか? そんなはずはーーー」



真宮寺「………」ピッ



キーボ&アンジー「「………!」」



ヒュウンッ……!



ーーーーーーーーーー


ーーーーーー


ーーーー


ーー


365 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 21:49:29.10 ID:o8QAgG30O



ー志波家の屋敷・天井裏(亜空間)ー



キーボ「なっーーー」

アンジー「ここはーーー」



真宮寺「この空間こそが、僕が潜伏していた天井裏部屋サ」



キーボ&アンジー「「!?」」



真宮寺「……このリモコンを使って、下の修練場から空間転移したのサ」スッ



アンジー「……下ってーーー」

キーボ「ーーー!?」


366 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 21:50:50.60 ID:o8QAgG30O



キーボ(ま、間違いない……!)




アンジー「……!」




キーボ(この空間の下側にある景色ーーー)




キーボ(ーーー間違いなく、修練場のーーーー)


367 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 21:53:19.00 ID:o8QAgG30O



真宮寺「昨日、僕はこの空間に潜伏し、君達のやりとりを見聞きした」

真宮寺「……それと同時に、その内容を撮影し、録音した」



キーボ&アンジー「「!?」」



真宮寺「それを、メールと一緒に百田君達に送信したんだ」



アンジー「なっーーー」



真宮寺「ーーーあァ…… “ ロボットやってなかったら ” から先は、送る前に削除しておいたから」



真宮寺「そこは、安心して欲しいかな……」



アンジー「〜〜〜っっ、!!」


368 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 21:54:25.22 ID:5pLn/D61O



キーボ「ち、ちょっと、どういうつもりですか!? 真宮寺クン!?」



キーボ「こんな急にみんなが来るなんて……いや、それ以前に、なんて勝手なことをーーー」



真宮寺「……ごめんヨ。キーボ君、夜長さん」



真宮寺「本当に、ごめんヨ」


369 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 21:55:18.70 ID:5pLn/D61O



アンジー「……謝る、くらいなら、最初からーーー」ギラッ



真宮寺「ーーーだけど、どれも必要があると思ってそうしたことだ」



キーボ「必要!? どういうーーー」



真宮寺「ーーー目を逸らすわけには、いかなかったからサ」


370 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 22:45:41.85 ID:5pLn/D61O



キーボ「!?」



真宮寺「……こんなことをした理由、それはキーボ君が夜長さんとの対話にーーー」



真宮寺「ーーー “ 万が一 ” 、失敗した場合を、考えたからだ」



真宮寺「……失敗した時の資料、すなわち映像と音声のデータが残っていれば、今後に活かすことができるからネ」



キーボ「………」



真宮寺「無論、それはキーボ君に聞けば解決することかもしれない」

真宮寺「だけど、それは、あくまでもキーボ君の視点での情報でしかないし……その時のキーボくんと夜長さんの様子の全てが、わかるとは限らない」

真宮寺「その時の様子の全て、それを客観的に見聞きすることで、気づけることもある」



アンジー「………」



真宮寺「だから、僕は、君達のやりとりを見聞きすることにした」



真宮寺「……撮影し、録音することに、決めたというわけサ」


371 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 22:47:57.46 ID:5pLn/D61O



キーボ「ーーーそれで?」



真宮寺「………」



キーボ「そうして、撮影し、録音したものをーーーなんで百田君達に送ったんですか?」


372 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 22:49:12.76 ID:5pLn/D61O



真宮寺「……それはもちろんーーー」



キーボ「………」



真宮寺「ーーーあの会話は、百田君達に、すぐにでも見せるべき、聞かせるべき内容だと、判断したからサ」



アンジー「………」


373 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 22:51:02.11 ID:5pLn/D61O



真宮寺「……百田君達もまた、苦しんでいるんだ」



真宮寺「自分達が、物であるかもしれないということに苦しんでいる」

真宮寺「それを証明しているかのような世界を前に、苦しんでいる」

真宮寺「自分達が、物であるということを裏付けるかような……大多数の認識に苦しんでいる」



真宮寺「まるで、世界全体が自分達を人と認めず……物だと言っているかのような感覚に、とても苦しんでいるんだ」



アンジー「………」

キーボ「………」


374 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 22:52:19.29 ID:5pLn/D61O



真宮寺「……それで、物だと思い込まされて、終わりを迎えたが最後ーーー待っているは “ 死 ” なのだから」

真宮寺「そうした痛みに……死の恐怖に、百田君達は、心を呑まれそうになっている」



アンジー「………」

キーボ「………」



真宮寺「恐怖を退けるには、あの会話を見聞きして貰うのが一番」



真宮寺「そう判断したからこそ、撮影し、録音したものをーーーさっき百田君達に送ったというわけサ」


375 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 22:53:51.02 ID:5pLn/D61O



真宮寺「……実際、あの会話は、心に響いた」

キーボ「!」

真宮寺「……どんな自分であろうと、その心と想いは本物」

真宮寺「どのような存在でも本物であり、そこに込められた心と想いもまた本物。その意味が変わることはない」

真宮寺「その言葉が響いたからこそ、君達のあの会話を、何度も繰り返しーーー再生した」



真宮寺「その果てに、僕は、心の底から信じられるようになった」



真宮寺「……たとえ、僕のような存在でもーーー心はあり、想いがある」

真宮寺「そんな僕の中にもーーー誰かの心と想いがある」

真宮寺「その全てが、信じられるものなのだと、誰もが『想い』として昇華しーーー僕の中に込められるものなのだと」



アンジー「………」


376 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 22:55:09.51 ID:5pLn/D61O



真宮寺「……みんなは、こんな僕に、想いを向けてくれた」

真宮寺「こんな僕だって、変われると信じーーー『想い』を向けてくれたはずなんだ」



真宮寺「ならば、それは、絶対に意味あることだったんだって」



真宮寺「……自分がいかなる存在だろうと、それに心を呑まれなければーーー人を人として、大切にできるって」

真宮寺「そうやって信じれば、『想い』を背負うことができるーーー」



真宮寺「ーーーきっとみんなは、そう想ってくれた」



真宮寺「僕も……心の底からそう想えるようになったんだ」


377 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 22:55:44.42 ID:5pLn/D61O






キーボ「………」






アンジー「………」





378 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 22:56:54.42 ID:5pLn/D61O



真宮寺「断っておくけど……僕はもう、かつて僕の中にいた、 “ あの人 ” に頼る気はない」

真宮寺「かつての僕が、 “ あの人 ” を理由に為したことを、正当化する気もない」

真宮寺「……それでは、絶対に、誰にも報いることができないしーーー」



真宮寺「ーーーさよならは、したくないからネ」



キーボ&アンジー「「………?」」



真宮寺「……僕はきっと、浅ましくて、恥知らずなことを言っている」

真宮寺「だけど、それは、確かな僕の気持ちなんだ」



キーボ「………」

アンジー「………」



真宮寺「君達と、みんなと、さよならをしたく、ないんだヨ」


379 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 22:57:50.65 ID:5pLn/D61O



キーボ&アンジー「「!?」」



真宮寺「……僕は、みんなが、君達が、愛しくてたまらない」

真宮寺「……今日この日まで、関わることを認めてくれた信頼がーーー『想い』が、とても嬉しかったから」

真宮寺「僕さえも、人として扱い、大切にしてくれたその意志にーーー心を動かされたから」

真宮寺「……それを為すこともできる、人の心と想いが、とても美しいから」



キーボ「………」

アンジー「………」


380 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 22:58:38.16 ID:5pLn/D61O



真宮寺「だから、僕は、人の心と想い……その全てを、大切にできるようにならなくてはいけない」



真宮寺「……勝手な価値観や幻想をもって、想いを踏み躙ることーーー」



真宮寺「ーーーそんなことに、もう、 “ 意味は無い ”」



真宮寺「そうした “ 意味 ” を、見出さなくてはならない」


381 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 22:59:35.64 ID:5pLn/D61O



真宮寺「……僕はもう “ あの人 ” に頼らない」

真宮寺「少なくとも……以前のような形で頼るわけにはいかない」

真宮寺「そう、君達が、以前とは違う形で、神さまと向き合うことにしたようにーーー」



キーボ「………」

アンジー「………」



真宮寺「ーーー僕も、 “ あの人 ” と、違う形で向き合わなくては、ならない」



真宮寺「これ以上、心を離したくない、から……」


382 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 23:02:17.52 ID:5pLn/D61O



真宮寺(……いずれーーー)




キーボ「………」




真宮寺(ーーーいずれ、別れるとしてもーーー)




アンジー「………」




真宮寺(ーーーそれでも、僕はーーーー)


383 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 23:03:13.13 ID:5pLn/D61O



真宮寺「……わかってる。生前、あんなことをして、今さら何を言っているんだって話だヨ」

真宮寺「今回も……結局は勝手な考えで、おかしなことをした」

真宮寺「……生前や今回だけじゃない。他にも、間違えてるところがある、あるはずだ」



真宮寺「それもきっと、たくさん」



真宮寺「僕はどこかでーーー間違え続けているんだ……」



キーボ「………」

アンジー「………」


384 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 23:04:22.89 ID:5pLn/D61O



真宮寺「……ごめんなさい」



キーボ&アンジー「「!?」」



真宮寺「夜長さん、キーボ君、ごめんなさい」

真宮寺「君達を……人を、人として、大切にできなくて、ごめんなさい」

真宮寺「君達を、見世物にして、ごめんなさい」

真宮寺「死んでも自分を変えられなくてごめんなさい。間違いばかりで、言い訳して、ごめんなさい」

真宮寺「人の心と想いに、報いることができなくて、ごめんなさい」



真宮寺「……君達の、みんなの信頼にーーー」









真宮寺「ーーー『想い』に、報いることができなくてーーー本当にごめんなさい」


385 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 23:06:01.09 ID:5pLn/D61O









真宮寺「……ごめ、ん、なさい……っっ、!!」








386 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 23:07:32.23 ID:5pLn/D61O






キーボ「………」






アンジー「………」





387 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 23:09:20.69 ID:5pLn/D61O



アンジー「……是清?」



真宮寺「……夜長、さん、?」



アンジー「……謝るのは、アンジーたちにだけじゃないよね?」



真宮寺「!」

キーボ「………」



アンジー「……今日でなくても良い。時間がある時、いろいろ思い出したり、考えてからでも良い」



アンジー「……アンジーや他の人と、相談してからでも良い」


388 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 23:11:27.27 ID:5pLn/D61O



アンジー「……誰だって、間違える」

キーボ「………」

アンジー「そうなる理由は……いっぱいあるから」

真宮寺「………」

アンジー「……予想外なこと、誰かと一緒にいられる嬉しさ、そのふたつが混乱や油断を招くことだってあるしーーー」



アンジー「ーーーあるいは、望んだ “ 結果 ” を求めるあまり、おかしくもなってしまう」



キーボ「……!」

真宮寺「……っ、」


389 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 23:12:57.10 ID:5pLn/D61O



アンジー「……そうした間違いの何もかもに、自力で気づけるとは限らない」



真宮寺「……!」



アンジー「何がどこまでいけなかったのか? その上で、自分にこれから何ができるのか?」

アンジー「ひとりじゃ気づけないことだってある」

アンジー「 “ 死 ” という不安を前に、心が追い詰められていたのなら、なおさら……」



真宮寺「………っっ、!!」

キーボ「………」



アンジー「……だから、少し時間をかけても良いし、アンジーや他の人と相談してからでも良い……」



アンジー「……それから、いつか全員に、しっかり謝らないとねー?」



アンジー「でないと……罰が当たっちゃうんだよ?」


390 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 23:14:15.93 ID:5pLn/D61O



真宮寺「…………そう、だネ」



アンジー「………」



真宮寺「君の言う通りだヨ、夜長さん……」



キーボ「………」



真宮寺「……僕は、謝る」



真宮寺「自分の、何がどこまでいけなかったのか? その上で、自分にこれから何ができるのか? 考え続けなくてはならない……」



真宮寺「……そうして、いつか必ずーーーー」


391 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 23:15:04.93 ID:5pLn/D61O









真宮寺「ーーー謝る、ヨ……」








392 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 23:17:07.29 ID:5pLn/D61O



アンジー「……落ち着いたら、また 【鰤清劇場】お願いね?」



真宮寺「!」

キーボ「………」



アンジー「キーボが来る前にも言ったけどーーーアンジーは是清の劇場がとても嬉しい」

アンジー「……是清は、聴く人を想って、自分なりに、何かをわかりやすく説明しようとしてくれてる」

アンジー「それが、アンジーはとても嬉しいの」



真宮寺「……!」



アンジー「ーーーそれに、是清は、もっと人の心を……想いを大切にできるようになりたいんでしょ?」



アンジー「だったら、お客さんの期待を裏切ったらダメだよ?」


393 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 23:18:09.69 ID:5pLn/D61O



アンジー「……それも、一緒の家に住む、お客さんの期待でーーー」



アンジー「ーーーこれからも、一緒に住み続けるんだからーーー」



真宮寺「……!!」



アンジー「ーーー楽しみに、してるから……」



真宮寺「………」


394 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 23:20:25.67 ID:5pLn/D61O



キーボ「…………これだけは、言わせて貰います」



真宮寺「……キーボ、君、?」



キーボ「キミが見聞きしていたあの会話ーーー」



キーボ「ーーーそれができたのは、キミの気持ちが、ボクの心の奥深くに、残っていたからでもあるんです」



真宮寺「!!」



キーボ「生前のキミと、死後のキミーーー」



キーボ「ーーーその両方の、気持ちが残っていた」



キーボ「他ならない、今のボクの心の、奥深くに、です」



真宮寺「………」

アンジー「………」


395 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 23:21:28.68 ID:5pLn/D61O



キーボ「だからこそ、ボクはコトダマが時に “ 死 ” を招くと理解した上でーーー」



キーボ「ーーー【どう向き合い】【どう生きるか】ーーー」



キーボ「ーーー【その答えを見出し】【表現することができた】」



キーボ「……ボクは、これからも、そうあり続けようと思います」



キーボ「それが、報いることでもある」



真宮寺「………」

アンジー「………」



キーボ「……先ほど、この場に放たれた気持ちーーー」



キーボ「ーーーその全ては、既にもう、この心の中にーーーー」


396 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 23:22:25.14 ID:5pLn/D61O



アンジー「………」






真宮寺「……キーボ、君……」






キーボ「……それだけ、です」


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