【天華百剣】( ^ω^)ビンビン敏感!!乳首一本釣りのようです【ブーン系】

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1 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/09/28(土) 21:06:55.55 ID:7zR2kMu80
御華見衆の参羽鴉シリーズ

(´・ω・`) 信じられねぇくらいギチギチに三人同時に落とし穴にハマったようです
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1517198071/

('A`) 大事なことは全部春画が教えてくれたようです
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1559137734


関連作品 ※同世界線

【艦これ】艦天って略すとカロリー低い食材みたい 第一章【天華百剣】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1520554882/

【艦これ】艦天って略すとカロリー低い食材みたい 第二章【天華百剣】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1528764244/

『艦天って略すとカロリー低い食材みたい』 幕間
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1531108177/

【艦これ】艦天って略すとカロリー低い食材みたい 第三章【天華百剣】
https://engawa.open2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1537917602/

【艦これ】艦天って略すとカロリー低い食材みたい 第四章【天華百剣】
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1552399367/

【艦これ】『Last one week & Epilogue』【天華百剣】
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1554717008/



前回の反省を活かしました。よろ乳首お願いします

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1569672415
2 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/09/28(土) 21:21:52.70 ID:7zR2kMu80
「死にたいのか?」


怒気を孕んだ蒼瞳に、自暴自棄になった自分を見透かされているようだった
お怒りは至極ご尤も。もう少しで俺は妖怪絵巻にでも出てきそうなバケモノの餌になってしまうところだったのだから


「英雄を気取って飛び出したのなら、浅はかとしか言いようがない。よもや、君の手に負える相手だとでもはき違えたか?」


その美女は尻餅をつく俺に手すら差し伸べてはくれない。鍔のない日本刀を鞘に納め、ただ静かに俺の行いを咎めている
只の女でない事は一目瞭然だ。特に目を引いたのは、恥ずかしげもなく曝け出す『脚』
筋肉の付き方を見ればわかる『土台』の凄さ。日々の鍛錬を繰り返した者だけが身につけられる代物だった


( ^ω^)「……」


「ハァ……すまない。少し熱くなった。とにかく、これからあのような怪物を目の当たりにしたのなら、一目散に逃げろ。今のように、間違っても助け舟など出さぬように」


きっと彼女は、あのバケモノとは違い『善き者』なのだろう。突き刺すような視線も、俺の身を案じてからのものに違いない
だけどその気遣いが、今の俺には、何より腹立たしい。ドロドロと煮えたぎった苛立ちは、止める間も無く口から溢れ出てしまう


( ^ω^)「贅沢やな……」

「……何と?」

( ^ω^)「足手まといやろうと何やろうと、『助け』を払いのけるその性根が」


これはただの、八つ当たりだ。『善き者』たる彼女には何の関係も
ましてや、問題の解決にも繋がらない、幼稚な行いだ


( ^ω^)「贅沢や言うてんや」


惨めな男の、遠吠えだ
3 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/09/28(土) 21:25:23.73 ID:7zR2kMu80
「……すまない」

( ^ω^)「……」


俺の気分を害したことに対する謝罪なんかじゃないのは直ぐにわかった
強い者は、例えその気がなくとも、少なからずの『傲慢さ』を抱いている。これも、その一種だ


「君にそのような行いをさせたのは、偏に拙者の力不足に他ならない。言葉が過ぎた。どうか許してくれ」

(#^ω^)「ッ……」


見惚れるほど美しく、反吐が出るほど高潔で、憧れるほど強靭で、憎々しいほど誇り高い
『英雄』とは、そんなものなんだろう。だからこそ、凡人の気持ちなど少しも鑑みれない


(#^ω^)「……ほな」

「っ……ああ」


だが、俺の気に障ってしまったのは理解出来たのだろう。それが何故なのかまでは、未だ疑問のようだが
本当なら無様に駆け出して少しでも早くこの女から離れたかったが、残った酒がそうはさせてくれなかった


( ^ω^)「……」


こんな時、自分の意固地さが嫌になる。『長い物には巻かれろ』『郷に入りては郷に従え』
身の丈に合った生き方が出来れば、こんな嫌な気持ちになりはしない。自棄になることもない


( ^ω^)「……」


『死にたいのか?』


ああ、死にたかったよ。自分を曲げられず、圧力と理不尽を飲み込めない子供のままでいるのなら
いっそのこと、綺麗さっぱり『新しい人生』をやり直したかったよ―――――
4 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/09/28(土) 21:30:59.69 ID:7zR2kMu80
―――――
―――




「負けてくれ」

( ^ω^)「は……?」


大棚の次男として産まれ、不自由の無い暮らしを送ってきた
両親は、家を継ぐ兄と共に店を繁盛させて欲しかったのだと思う。だけど、俺には夢があった

『お相撲さん』になりたかった

ガキの頃から親父譲りの膨よかな身体だった俺は、自分の醜い姿が嫌いだった
よく近所の子供に虐められては、歳の離れた兄貴に助けられた
兄貴は情けの無い俺に対して叱咤をするどころか、いつも『気にするな』と優しく慰めてくれた


『人には誰しも個性がある。嫌なら失くしてしまってもええが、ワシはありのままの個性を好きになってくれた方がええな』


無責任な言葉だ。今、その個性に悩まされてるガキに掛ける言葉か?
俺は癇癪を起こして兄貴の脛を蹴り飛ばし、その晩、親父にクソほど叱られてしまった
なので、深酒をして寝た親父のでっぷりとした腹に鬼の顔を描いて仕返しした。翌朝、軒先に吊るされた


兄貴はそんな俺を見て、やれやれとため息を吐くと、とある場所へと連れて行ってくれた
それが、二町ほど離れた『相撲部屋』だった
5 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/09/28(土) 21:33:41.91 ID:7zR2kMu80
取引先の一つとして、数日に一度食料品を卸していたのだった。仕事の手伝いはこの頃からやらされていたが、初めて赴く場所だった
兄が親方と話している最中、熱気と人の肌がぶつかり合う稽古の様子を眺めた
張り手の強烈な破裂音。四股を踏む度揺れる地面、そして何より、土俵際でせめぎ合う力士の勇ましさ
俺と同じく、醜い肉の塊でありながら、その姿はまさに『力士』に相応しく、『かっこよかった』


『これも、個性を活かす道や』


兄は夢中で齧り付く俺の頭を撫でながら、優しく説いてくれた
今を思えば、腐っていた俺を立ち直らせる安易な誤魔化しだったのかもしれない。だけど、この瞬間に俺の人生の指針が決まった
『お相撲さんになろう』。ありのままの自分の『個性』を活かし、魅せ、そして好きになれる人生を歩もうと決めたのだ

齢十四になって、俺は両親と兄に頭を下げ、その相撲部屋に入門させてもらった
幸いにも、俺は家族に恵まれていた。家を継がないのは寂しいし残念だが、目一杯応援すると激励を受けた
兄貴からは厳しい言葉を賜った。『天辺を取れ。それまで家の敷居を跨げると思うな』
望むところだった。必ず、家に錦を上げて帰ってくる。そう返すと、兄貴はキツく俺を抱き締めてくれた
最後に涙を流したのは、これきりだったな。この日から俺の親は『親方』になり、俺の兄は『兄弟子』に変わった

どこの世界もそうだが、新入りの洗礼というものは苛烈極まりない。日が昇る前に目を覚まし、兄弟子の仕度や掃除、洗濯を行い、飯を炊く
事が済んだら稽古が始まり、最早『私刑』と大差のない『可愛がり』を受ける。土を舐めたのは一度や二度どころでは無く、毎日だった
稽古が済めばまた家事を行い、兄弟子達にあん摩を施す。塩梅が悪ければ張り手や蹴りが飛んできた
辛い毎日だったが、挫けることは無かった。家族の言葉……というより、『いずれ俺が天辺を取るんだから今の内にいい気になってろクソボケ』という、報復ありきの意地と野望からだ
そうして毎日を繰り返す内に、少しずつ、少しずつ、痛みや疲労が減っていき、代わりに『力』が付いていった
強くなる実感は、俺の背中をより強く後押しする。二年が経ち、三年が経ち、身体が子供から大人へと変わっていき


力士として認められ、親方から新しい名前を賜った
6 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/09/28(土) 21:36:35.50 ID:7zR2kMu80
『武雲』。『雲』のように厚く、大きな『武人』という意味が込められた四股名
ガキの頃に憧れた存在へと、昇華した瞬間だった。あの日の誇らしさは、我が生涯の宝だ
だがこれで終わりでは無い。俺は家族に、兄貴に応えられるような力士にならねばならない

追い風は強く吹いていた。誰よりも強く、かっこいい『漢』への道を、流れる雲のように進んだ
四年、五年、六年。数多の強豪と競い、ある時は辛酸を舐めさせられたりもしたが、弛まぬ努力と持ち前の粘着質な意地で、番付を上げていった
そして遂に、名のある力士との取組にまで持ち込んだ。いよいよ、我が家に錦を飾れる時が訪れた―――――


(;^ω^)「は……え?」

「……」


高揚収まらぬ大勝負の一週間前、親方から持ちかけられた話は『八百長』であった


(;^ω^)「なん……なんでですか……?」

「……とある、デカい組が絡んでてな。巨額の銭が動くんや」

(;^ω^)「は……」


あの厳しい親方が、怯えた子猫のように縮こまる姿を見るのは初めてで
これは決してタチの悪い冗談なのでは無いと理解できた。俺は、どう反応すれば判らず、ただ意味の伴わない単音を繰り返すだけだった
7 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/09/28(土) 21:38:16.03 ID:7zR2kMu80
「この一番だけ、手ぇ抜いてくれ。頼む、これきりや。最悪の場合、『お取り潰し』もあり得る」

(;^ω^)「……」

「意地っ張りなお前のことや。きっと納得は出来へんと思う。やけど、『こういう世界』なんや。いずれ分かる時が来る」


『ふざけた事を抜かすな』『そんなの了承できるか』。今すぐにでも激昂して、張り倒してやろうかと思った
だが、親方をこれほどまでに萎縮させる存在の恐ろしさが怒りを上回る。もしかすると、家族にまで手を出されるかもしれない
恐怖、怒り、夢、意地、家族。頭の中でゴチャゴチャと混ざり合い、吐き気と共に絞り出した答えは結局


(;^ω^)「わかり……ました……」


『安牌』なものと成った


「……これ、貰うとけ」


『ちゃり』と甲高い音を立てる巾着を握らされる。きっと、親方もいくつか『包まれて』いるのだろう
受け取ってしまった時点で、俺は『共犯者』となってしまった。『口止め料』としての意もあるだろうが、恐らく俺がバカしちまった時の為の『保険』も兼ねている


(;^ω^)「……おおきに」

「堪忍な……」

(;^ω^)「……」


部屋に戻る気も慣れず、便所へと向かって中身を確かめた
二月は贅沢が出来る額が入っている。これが、俺の意地と誇りの値段だ


(#^ω^)「……ッ!!!!」


たったこれっぽっちで、俺は俺を売った。それが許せなくて、金を糞と小便の中へと捨てようとした


巾着は、手の中から離れなかった―――――
8 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/09/28(土) 21:40:39.21 ID:7zR2kMu80
( ^ω^)「……」


ここまでガムシャラに突っ走ってきた。誰にも頼らず、誰にも媚びず、兄貴の想いに応えようと、俺の人生に価値をもたらそうと努力してきた
結果、俺は『助け』の求め方を忘れてしまった。誰にそれを求めればいい?警察か?それとも、馬鹿正直に『組』とやらに頭を下げるか?
どれも上手く行くとは到底思えない。結局、強くなろうとも俺はただの惨めな豚に過ぎなかった

稽古も身に付かず、俺は貰った金で酒を浴びるように呑み、女を買い、博打に興じた
喉元過ぎればなんとやらと言う。たった一度、負ければそれで済む話だ。それで楽しく遊べるなら、良いじゃないかと飲み込もうとした

そんな矢先に、あの女と出会った

酔いに任せてバケモノとの戦いの場に飛び出し、テメーの無力さを突き付けられ、強き者との差を思い知らされた
やっぱり、思い返しても腹立たしい。だが、一つだけ感謝すべき点を挙げるとするならば


(#^ω^)「……ああァッ!!」


燻り、消える寸前だった俺の中の『火』を、再び燃え上がらせた事だろうか
9 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/09/28(土) 21:42:35.15 ID:7zR2kMu80
大一番の決着は一瞬だった。勝利を確信し、ニヤつく顔面に強烈な一発をお見舞いし、まわしを掴んで土俵から投げ落とした
観客は皆、名力士の秒殺にポカンと口を開き、『グル』だった行司は唇を戦慄かせながら祝儀を差し出す。それを払い除けて、俺は土俵を降りた
これが最後の取組だろう。この場所に、泥を塗らなくて良かった。俺の個性を輝かせてくれた事に感謝をし、深々と頭を下げる
親方は全てを悟ったかのように唇を固く結び、静かに手を差し出した。理不尽に屈し、理不尽に屈する事を強いた男だったが、彼も俺の『親』に変わりない


( ^ω^)「世話に、なりました」

「……早よ逃げえ。どっか遠くに」

( ^ω^)「いえ、これ以上無様は晒せまへん。ご迷惑をお掛けして申し訳ない」

「武雲……!!」

( ^ω^)「……親方がくれた名を、穢さずに済んで良かった。悔いはありません」


涙を堪え歯を食いしばった親方に笑顔を返し、騒つく会場を足早に去った
不安はある。だがそれ以上に、肩の荷が下りた清々しさが俺の胸を満たした。後は、自分の始末をつけるだけだ


「……」

( ^ω^)「ん……?」


ふと、見知った顔が通り過ぎたような気がして振り返ったが
どうやら見間違いだったようだ。そりゃ、そうだよな


『あの女』が、わざわざ俺みたいな弱者の取組を見に来るはずがないものな
10 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/09/28(土) 22:21:00.91 ID:7zR2kMu80
『お迎え』が来るのはそう遅くはないと踏んでいたが、人生を振り返る時間は与えられたようだ
出店で団子と冷たい茶を買って、川辺でのんびりと水の流れを眺めながら、最後になるであろう食事をした
悔いは無いと言ったが、やっぱり心残りはある。家族に迷惑を掛けてしまうからだ
でも多分、あの兄貴の事だ。脅しに屈した方が余程怒るに決まっているし、許しもしてくれない
だから、やっぱりこの方法しか残っていなかったのだろう。情けの無い弟を、少しは誇りに想ってくれたら良いのだが


( ^ω^)「……」


日が赤く染まり、人の気配が少なくなっていく。徐々に薄暗くなっていく空模様は、俺の人生の終幕を表しているようだった
やがて太陽は沈み切り、辺りは遠くで聞こえる喧噪と虫の声だけが支配する。ゆっくりと食んでいた団子も、全て胃の中へと納まった


「……たぞ……探……って……」


雑草を踏み分ける音と、何人かの男の会話が近づいてくる。いよいよ『旅立ち』の時だ
しかし、死に場所が『川』とは。我ながら気が利いた場所を選んだものだ。これで彼岸花でも咲いてれば、もう少し様になっただろうが


( ^ω^)「……」


『コツリ』と後頭部に硬いものが押し当てられる。一瞬で済ませてくれるのはありがたい
不思議と、恐怖は湧かなかった。諦念もあっただろうが、汚点を背負ったまま生き永らえるよりもよっぽど気が楽だったからだ


( ^ω^)「……ハッ」


忌々しいものだ。この期に及んで頭を過るのは、『あの女』の事だとは
惚れた腫れたの情念では断じてない。ただ、叶うのならば


( ‐ω‐)「……」


一言、礼が言いたかった
11 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/09/28(土) 22:23:23.55 ID:7zR2kMu80


( ‐ω‐)「……」


『どさ、どさ』


( ^ω^)「ん……?」


いつまで経っても引き金は引かれなかった。代わりに、何かが倒れこむ音が聞こえた
堪らなくなって振り返ると、そこには月明かりに照らされる『蒼眼』が二つ、星のように浮かんでいた


「はぁっ……間に合った、か」


強面の男を二人、当身か何かで気絶させたのだろう『あの女』は、落ちた拳銃を拾い上げると川へと投げ捨てる
そして、許可も無く俺の隣に腰を下ろした


( ^ω^)「……何のつもりでっか?」

「いや、何……その、平気か?」

( ^ω^)「見ての通りピンピンしとりますわ……俺にご入用で?」


女はバツが悪そうに頬を掻くと、真剣な眼差しで俺の目を覗き込んだ


「……少し、考えてな。何故君が、拙者の言動に腹を立てたのかと」

( ^ω^)「ほーう」

「なので、それとなく君の事を調べさせてもらった……置かれている立場も含めてな」

( ^ω^)「こーんな別嬪な追っかけが出来るとは、色男も楽やないな」

「茶化さないでくれ……その、君は、ずっと一人で抱え込んでいたのだな」


随分としおらしくなったものだ。多少の可愛げは持ち合わせているらしい


「君は拙者にこう言ったな。『助けを払いのけるその性根が贅沢』と」

( ^ω^)「売り言葉に買い言葉や。気にせんでもええ」

「生憎、拙者は不器用でな……そうもいかないのだよ」

( ^ω^)「難儀な性格やな。そんで、わざわざ死にぞこないのツラ、拝みにきたんかいな」
12 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/09/28(土) 22:24:59.07 ID:7zR2kMu80
「……君の助けになるものは、誰もいなかったのか?」

( ^ω^)「……おったかもしれへん。ただ、それに縋り付けば俺はもう『力士』やいられんようになる」


手持無沙汰だったので、そこらの石を掴んで水面に鋭く投げつける
ぴょん、ぴょんと何度か軽快に跳ねた後、ぽちゃんと川の底へ沈んでいった


( ^ω^)「俺もな、アンタと出会って踏ん切りがついたんや。アンタのようにバケモンに敵うような力は無い」

( ^ω^)「せやけど、一寸虫にも魂と誇りはある。それを他でもない『俺自身』に証明したろうと思ったんや」

「……命を落とすことになっても、か?」

( ^ω^)「生き恥晒すよりマシや」


もう一発、石を投げようと手探りで探す。すると、石とは別の冷たさをもつ『あるモノ』を掴んだ
そういや、女が投げた代物は『一つ』だけだったな。男の数と勘定が合わない


「フフ……『武士道とは、死ぬ事と見つけたり』、だな」

( ^ω^)「んな大したもんやあらへん……おおきにな、姉ちゃん」

「ん?」

( ^ω^)「介錯はいらへんから、気にしなさんな。ほな、お先に」

「ッ!?待……」


仏さんは慈悲深い。最後の願いを叶えさせてくれるとは
これ以上の贅沢は望まない。俺を迎えに来た男たちも、これで溜飲が下がるだろう
顎下に銃口を突き付け、躊躇わずに引き金を引いた――――
13 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/09/28(土) 22:28:15.53 ID:7zR2kMu80






(  ω )「」







「つっ……」


(  ω )「……」


どうして


(  ω )「どうして、楽にさせてくれへんのや」
14 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/09/28(土) 22:29:50.41 ID:7zR2kMu80
目にも止まらぬ早さで銃身を掴まれ、常人離れした握力で軌道を逸らされた銃口は
火薬の音と共に、誰も貫くことなく無駄になった銃弾を夜空へと吐き出した


「死ぬ事だけが、武士道ではない!!」

(  ω )「なんやさっきから武士道やなんやて……お侍の時代はとうに終わっとんのや」

「聞け!!拙者は今日、君の取組を見た!!見事な一番だった!!拙者と形は違えど、『武道』を歩む者の矜持を感じた!!」

(  ω )「ッ……今更、何やねん……」

「拙者はっ!!惜しいのだ!!君のように真っすぐな男が、下らない八百長の始末で居なくなってしまうのが!!」

(  ω )「……」


可笑しい。彼女は片手で掴んでいるだけなのに、こうも銃口の位置が戻らないとは。これでは力士の名も形無しだ


「君は言ったな、『贅沢』と!!なら、自分の言葉に責任を持ってみろ!!」

「拙者が『助け』だ!!先に啖呵を切ったのならば、君が手本になってみせろ!!」


どうして、どうしてこの女は


(  ω )「……」


見ず知らずの俺なんかに、ここまで親身になってくれるのだろうか
15 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/09/28(土) 22:33:09.38 ID:7zR2kMu80
:(  ω ):「ヒグッ……うぐ……」


ああ、チクショウ。家に帰るまで取っとく筈だったもんが溢れ出てくる
やっぱり、忌々しい女だ。俺が一番欲しかったものを


:( ;ω;):「……『助けて』」


何故こうも的確に、与えてくれるのだろうか


「勿論だ。我々『巫剣』は、その為に存在する」


力の抜けた手の平から拳銃が抜き取られ、それもまた、川に投げ捨てられる
見惚れるほど美しく、反吐が出るほど高潔で、憧れるほど強靭で、憎々しいほど誇り高い女は


「ふむ……だが、君の手も少々借りるとしよう。拙者もまだまだ修行の身、力不足だ。『助け』がいる時も来るだろう」


まるで暖炉で揺れる炎のように、温かかった


「さ、泣くのはそこまでにしておけ。男の子だろう?」

( うω;)「や、や、やかましいわ……ちょお待てや」


全く情けがない。まさか女の目の前で泣いてしまうとは
袖で目元を乱暴に拭うと、掌が差し伸べられる。今度は優しい視線と、微笑みを携えて


( ^ω^)「……内藤、地平。四股名は『武雲』や」

「聞き及んでいるよ。武雲、良い名だ」


掌を握り返すと、女はピクリと形の良い眉を動かし、上品に笑った


( ^ω^)「なんやねん……」

「いいや、『縁』とは面白いものだと思ってな……君とは、思っていたよりも長い付き合いになりそうだ」

( ^ω^)「さよけ。ほんで?」

「ああ、申し遅れた。拙者は『天光丸』。これから、よろしく頼む」


このけったいな名前が、源氏の宝刀だと知ることになるのはもう少し先の話だった
16 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/09/28(土) 22:34:30.43 ID:7zR2kMu80
( ^ω^)「で、これからどないするんや?俺は……まぁ、ヤーさんらのお尋ねもんになっちまったんやけど」

「そうだな……では早速、後顧の憂いを断ちに行くとしようか」

( ^ω^)「は?」

「君に八百長を持ち掛けたとある組織は、『禍憑』と関与している疑いがある。実の所、今回の拙者の任務はその調査と討伐でな」

( ^ω^)「ちょ、待てや。展開早すぎてついて行かれへんのやけど」

「百聞は一見に如かず、習うより慣れよ、だ。キビキビと動け。置いていくぞ」

(;^ω^)「待てって!!あーもう!!」


やっぱり気に食わない女だ。だが、凛と歩く背中に着いて行くのは、不思議と悪い気がしなかった―――――
17 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/09/28(土) 22:36:20.73 ID:7zR2kMu80
























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