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絵里「例え偽物だとしても」

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620 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/03(木) 20:36:54.11 ID:Kb3Xmjfp0
絵里「探してる人?」

曜「一人は東京で大規模な銃撃戦が発生した時に民間人側として参加してた殺し屋の異名を持つスナイパー」

曜「そしてもう一人は————」


曜「——鞠莉ちゃんだけしか正体を知らない標準型アンドロイドXと称されたアンドロイド」


絵里「!!」

曜「そのアンドロイドはまだ全然情報が無かった、だから希ちゃんもある程度情報が揃うまでは希ちゃんと花丸ちゃんだけの秘密にしておいたらしい」

曜「だけど如何せん何も手がかりがないもんで、私にまで希ちゃんのその話が来たわけだけど」

曜「一つそのアンドロイドで確実に言える事があるならね」


曜「そのアンドロイド、金髪なんだよね」


絵里「えっ……」
621 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/03(木) 20:38:34.75 ID:Kb3Xmjfp0
曜「デバイスを開いて」

絵里「え、うん…」


ピコンッ♪


絵里「…?これは?」

絵里(曜から送られてきたのは何らかの画像のデータだった)

曜「花丸ちゃんと希ちゃんが一ヶ月鞠莉ちゃんのPCとサイバー戦争をして手に入れたって言ってた画像データだよ、あまりにも複雑なプログラムとセキュリティを通り越してきたデータだからノイズ化しちゃってるんだけど、それでもその左上のところ、髪の色だけ分かるんだよ」

絵里「…!ホントだ、金髪ね」

絵里(いつかに花丸さんから見せてもらったアンドロイドのデータと同じようにそこには“誰か”が描かれてた。体系もどんな顔をしてるかも分からないけど金髪だ。横にある説明文らしきところには“標貅門梛繧「繝ン繝峨ΟイドX”と名前欄と思わしきところに書かれていて、その下の説明文は読めたものじゃなかった)

曜「そういう文字化けってやつは解読ができるんだけど、どういうわけかその文字化けは特殊なプログラムが張り巡らされてて解読出来ないんだ」

曜「こう…画像を開くたびに文字が違って、それを解読しても支離滅裂な言葉しか出てこない」

曜「だからすごく厳重に保管されてるんだろうね…」

絵里「………」
622 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/03(木) 20:40:11.34 ID:Kb3Xmjfp0
曜「…でもまぁその標準型アンドロイドXと呼ばれるアンドロイドが金髪だと分かっても金髪の標準型アンドロイドなんて世の中たくさんいる、それをしらみつぶしに探し回ってたらキリがないって希ちゃんも半分諦めかけてた」

曜「でもよくよく考えて思ったよ、多分希ちゃんも同じこと思ってたと思う」

絵里「………」

絵里(次曜の口から出てくる言葉はなんとなく分かってた。私もきっと曜やその希って人と同じことを想ってるはずだから)


曜「標準型アンドロイドXっていうのは絵里さんのことなんじゃないか、と」


絵里「…そうよね、そうなるわよね」

曜「元々標準型アンドロイドXっていうのは鞠莉さんしか正体を知らない特別なアンドロイドということしか知らない、だから希ちゃんも会ってみたかったんだと思う」

曜「…絵里さんには何か特別なモノがあるの?」

絵里「私に……」

絵里(どうだろう、少し考える。だけど考えて出てくる特別なモノはこれといってなかった。確かに標準型なのに凛や果南とまともにやり合える私はおかしい、けどそれしかない。それ以外、他にない)
623 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/03(木) 20:40:53.35 ID:Kb3Xmjfp0


絵里「…!」


絵里(いやまって…これを特別と言っていいのかは分からないけどあった)


絵里「…えりち」


曜「ん?」

絵里(私より強いもう一人の私。私の心の中に住み着く謎の————ある意味特別な存在が私には宿ってた)

絵里(…でも、それを言葉にするのはどうだろうか。別に言いたくないわけじゃないけど、言うのを躊躇ってしまう。何かが私の口を開かなくさせていた)

絵里「…ごめんなさい、やっぱり私には分からないわ」
624 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/03(木) 20:42:55.58 ID:Kb3Xmjfp0
曜「…そっか、でもやっぱり標準型アンドロイドは絵里さんなのかな…」

絵里「…多分ね、よくよく考えればおかしいものね。私標準型なのに」

曜「ううん、聞きたかっただけだから気にしないで」

曜「それじゃあ私寝室戻るね!」

絵里「え、ええ」

スタスタスタ

絵里「………」

絵里(もし、本当に私が標準型アンドロイドXだとしたら私の正体ってやつは一体なんなのかしら)

絵里(鞠莉の人形なのかしら、それとも新型なのかしら)

絵里(……当たり前だけど、考えて分かる問題ではなかった)
625 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/03(木) 20:45:00.02 ID:Kb3Xmjfp0
今日はここで中断。
再開は明日か明後日やります
626 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/04(金) 12:25:59.30 ID:reThwItbO
いよいよえりちの正体に近づいてくる?
展開が目まぐるしくて飽きないな
627 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/05(土) 18:37:53.95 ID:dIWqa2t10
〜次の日

絵里「ふぁー……っていったっ!?」

絵里(眩しい光を受け瞼を閉じて、それに負けじと無理矢理瞼を開けて背伸びをした直後、私に激痛が走る)

絵里(お腹を中心とした痛みが体の中で広がっていく。すぐさまお腹を見れば包帯越しでも赤く染まっているのが分かる)

絵里「…果南か」

絵里(果南の遺した傷は随分と痛い。それは直接的でもあって精神的でもあった)

絵里(今頃果南と善子が生きてれば戦況はどうなってたのかしら、在りもしない希望を掲げた絶望がイマジネーションを発生させた。鞠莉という一人の人物を殺すのになんでこんな想いをしないといけないんだろう、世界は常に理不尽で謎しかない)

絵里「……変な顔」

絵里(誰もいない寝室のテーブル、さりげなく置かれた誰かの鏡を見ると私の瞳とその周りは赤かった)

絵里(泣いたのかしら、でもいつ泣いたのかしら?)

絵里(果南と善子が死んで冷静でいる自分が少しおかしく感じてはいたけど、やっぱり無意識の中の私はとてもつもなく悲しいのよね、分かるわよ)


絵里(こんな退廃的世界で次は何をしてけばいいのかしら)


絵里(エンドロールに向かっていくはずの私は、足を動かすことも憂鬱だった)

628 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 18:40:23.44 ID:dIWqa2t10


絵里(エンドロールに向かっていくはずの私は、足を動かすことも憂鬱だった)


スタ…スタ…スタ…


ことり「! 絵里ちゃん!」

花丸「絵里さん!?」

せつ菜「絵里さん!」

絵里(二足歩行で歩くのが辛くて、壁に寄り添いながら少しずつ歩いてリビングへ向かった。昨日の深夜とは違って痛みは鮮明に感じる、だから今の身体はものすごく不自由だった)

スタスタスタ

絵里「ありがとうことり、せつ菜」

ことり「いいよっ絵里ちゃんは無理しないで」

せつ菜「その通りです!」

絵里(二人の肩を借りて一緒に歩いてもらった。そうすればだいぶ楽に歩けるようになった)

絵里「よいしょっいたたっ…」ストンッ

真姫「あんまり無理しないようにしなさいよ?」

絵里「え、ええ…」
629 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 18:41:19.06 ID:dIWqa2t10
ことり「…曜ちゃんから聞いてたけど、やっと起きたんだね」

曜「今回は二週間で起きれたね」

絵里「に、二週間!?」

せつ菜「穂乃果さんはまだ目覚めません…」

絵里「そ、そんな経ってたの…」


ルビィ「おはようございま…ってぴぎっ!?」


絵里「ルビィ!」

ルビィ「絵里さん!」


ギューッ


絵里「…あの時はありがとう」

ルビィ「…いいんです」
630 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 18:42:55.60 ID:dIWqa2t10
ことり「…どういう状況?」

絵里「ルビィは私を助けてくれたの」

ことり「…じゃあやっぱりあの時は助けた後だったんだ」

ルビィ「あ、はい…」

ことり「そっか…ごめん」

ルビィ「大丈夫です、焦る気持ちはルビィも分かるので!」

絵里「…そういえば果南と善子の事は話したの?」

曜「いや…まだ…」

花丸「…?果南さんと善子さんがどうなったかを知ってるんですか?」

絵里「あぁ…うん……」

絵里(私の口からはあまり言いたくない事実だった。でも、当然よね。過去は消せないけど、あんな忌々しい記憶はそうと分かっていても消したくなるものよ)

曜「あ、えっとね…私の口から言うと善子ちゃんと果南ちゃんは…死んじゃったんだ」

ことり「っ!?」

せつ菜「ど、どうしてですか!?」

曜「それは————」

絵里(それ以降は昨日の深夜私が話したのと同じだった、初めて聞くせつ菜とことりは昨日の真姫と曜と同じ反応をしてた)
631 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 18:45:54.14 ID:dIWqa2t10
ことり「……やっぱり」

曜「やっぱり?」

ことり「連絡がつかなくなった時、何かやらかすなら絶対に松浦果南だと思った。だから私は急いで絵里ちゃんを探しに行ったんだよ」

曜「…今見返せばもっと気にするべきだったのかな」

ことり「……いや、気にするのは多分無理だよ、だって仲間だもん」

せつ菜「…そうやって、穂乃果さんも一度死にましたからね」

ことり「うん……」

絵里「………」

曜「これは最近知ったことなんだけど、対アンドロイド特殊部隊も今著しい戦力の低下が起こってるらしいんだ」

絵里「どういうこと?」

曜「海未さんとにこさんが死んだらしいんだ」

せつ菜「………」

絵里「えっ…」

ことり「…内紛を起こして共倒れしたんだって」

絵里「そんなことが…」
632 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 18:47:02.62 ID:dIWqa2t10
せつ菜「にこさん…海未さんを倒せるほど強かったんですね…」

曜「…それは私も思った、確かににこさんは強いけどまさかあの生命力お化けの海未さんを殺すなんて……」


ルビィ「…殺してないよ」


花丸「え?」

ルビィ「にこさんは確かに海未さんに勝ってた、けど最後に油断したせいで海未さんに殺された。だから結果的に海未さんの勝利だった」

せつ菜「ど、どうしてそんなことが分かるんですか?」

ルビィ「…だってルビィいたもん、その時そこに」

曜「えっ…じゃあ海未さんって……」


ルビィ「ルビィが殺した」

633 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 18:48:16.78 ID:dIWqa2t10
ことり「……やっぱりあなた只者じゃないよね、あの時の戦闘といい何かの戦闘員でしょ」

ことり「あの時のハンドガンだって随分と持ち慣れてた、少なくとも私は穂乃果ちゃんや曜ちゃんとも対等に戦える強さだと思った」

曜「最初はずっと泣いてたからあまり気に留めてなかったけど…」

せつ菜「あなたは一体…?」

絵里「…それは私から話すわ」ガタッ

絵里「ルビィはね……」

スタ…スタ…

絵里「昔東京で起こった大規模な銃撃戦で民間人として参加した————」

スタ…スタ…


絵里「——殺し屋という異名を持つ子なの」ポンッ

634 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 18:49:23.12 ID:dIWqa2t10
曜「っ!?」

せつ菜「殺し屋って…!」

花丸「希ちゃんが探してた人ずら!!」

ことり「殺し屋ってこんな人だったんだ…」

真姫「…名前は聞いてたけどこんな身近にいたなんてね」

絵里「元々ルビィは善子とタッグを組んで日々悪と戦うまさに正義の味方だった」

絵里「善子は持前の接近戦の強さを活かして突っ込んで、ルビィはそのカバーをスナイパーでするのと同時に善子の後に続く。たった二人だけというのに恐ろしく強かったわ」

絵里「ルビィは恐ろしく才能に恵まれた子よ、モノの動きを完璧に捉えることが出来る目の良さで相手を必ず射貫くわ」

花丸「…!それがいわゆる偏差撃ちの所以…?」

絵里「ええ、百発百中のその腕は敵に回したら死はほぼ間違いないものよ」
635 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 18:50:45.15 ID:dIWqa2t10
絵里「だけどルビィの強さはそこだけじゃない。ルビィは姉の才能をも受け継いでるの」

真姫「姉の才能?」


曜「…分かった、ダイヤさんでしょ」


絵里「正解、ダイヤの才能を受け継いでるの」

せつ菜「ダイヤさんの才能ってなんですか?」

絵里「ダイヤはね、近接戦闘がものすごく得意なの。元々ダイヤは小さい頃から薙刀とか刀を嗜んでいた身だったから体術に関しては指折りで、でもそういうの関係無く黒澤の血を引く者としてダイヤはその刀や体術の才能に恵まれた」


絵里「…そして、ルビィもそれ同様に」


ことり「…なるほど、ようやく分かったよ。アンドロイドの私を超える反応速度の原因が」

ことり「薬だけじゃどう考えてもあんな動き出来ないからね」

ルビィ「…近接戦闘は奥の手だからあまり使いたくなかったんだけどね」
636 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 18:52:52.77 ID:dIWqa2t10
曜「ダイヤさんはナイフの使い方がものすごい上手い人だったよ、梨子ちゃんや私がヘイト集めてダイヤさんがそそくさに近づいて近接戦闘持ち込んではい終わりっていうムーブを何十回とやったことか」

花丸「はぇ〜…」

絵里「…とりあえずそういうことよ、以後ルビィとも仲良くしてあげて、普段は大人しい子だから」

ルビィ「改めてよろしくお願いします」ペコリッ

曜「うんっ!頼もしい仲間が来てくれて嬉しいよ!」

せつ菜「はいっ!私も考えは同じです!」

真姫「ええ、困ったことがあったらちゃんと言うのよ」

ことり「あの戦いでは驚かされるばかりだったよ、よろしくね」

花丸「ルビィちゃん!よろしくずら!」

ルビィ「!」パアアア

ルビィ「うんっ!」

絵里「…ふふふっ」

絵里(ルビィは大人しい子よ、そして故に大人しいから姉であるダイヤにも自分の強さがばれなかった)

絵里(大人しいから人と話すのが苦手だった、だからあの大規模な銃撃戦の時は誰とも話さなかった)

絵里(…でも、今はこうしてみんなが優しくしてくれてるのを見るとなんだか安心した。真姫に出逢う前は善子と私とルビィと果南と千歌の五人がいつものメンバーだったんだから……その中でも妹のように可愛がったルビィが幸せだと私も何故か幸せな気持ちになれた)
637 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 18:54:09.01 ID:dIWqa2t10
ことり「はいっことり特製朝ごはんですっ」

曜「あれ?今は思考が攻撃寄りなの?」

ことり「そんな伝わるか伝わらないか微妙なこと言わなくていいから早く食べて!」

曜「はーい」

花丸「チーズケーキ……」

ことり「どうしたの?」

花丸「いや…朝なのにデザートが出てくるなんてちょっと驚きずら…」

ことり「そうなの?ことりは普通だと思うんだけどなぁ」

せつ菜「花丸さんはいつも希さんに頼んでちゃんとした朝食を食べてますもんね、それに比べて希さんなんて夜以外大体菓子パンですし」

真姫「それは甘いわね…」

絵里「…うん、おいしいじゃない」
638 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 18:56:13.85 ID:dIWqa2t10
ことり「当然だよ、ことりはデザート作りが好きなんだからっ」

絵里「えっ…」

ことり「…何その顔!?ことりだって女の子だよ!?」

曜「あはは…ことりちゃんってすごく可愛いけど戦闘になると鬼になるし……」

せつ菜「…間違ってないです」

花丸「異論無しずら」

ルビィ「?」

ことり「えぇ…じゃあもうちょっと女の子らしくしなきゃっ」

絵里(いつもは私が朝ごはんを作ってるのだけど、まともに動けない今はことりが朝ごはんを作ってくれた)

絵里(…ただ朝ごはんと呼ぶにケーキは少し重い気がするけど味は一級品なので文句は言わないでおく)

絵里(まぁそんなおいしいチーズケーキを口に運ぶ中で、話は進む)

絵里「あれから何か変わった?」

真姫「特に変わってないわ、Y.O.L.Oも対アンドロイド特殊部隊も何も起こしてない」

ことり「それどころか政府すら何も変わった動きを見せてないんだよね、やる気あるのかな?」

花丸「…何かありそうずら」

せつ菜「私もそう思います」
639 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 18:57:11.59 ID:dIWqa2t10
曜「……でも何かって何だろう」

曜「政府の武器庫と呼ばれるY.O.L.Oが攻撃を受けそうになったというのに追撃が来ない、政府は本当に何をしてるんだろう?本当なら今頃私たちは政府に追われててもおかしくないはずなのに」

絵里「行動を起こさないことで起こる相手側のメリットは何?」

曜「ないよ、だってどう考えたって私たちと、対アンドロイド特殊部隊と結託してる政府じゃ相手側に軍配があがるじゃん。なのに攻めてこないなんて私たちに復活のチャンスを与えてるだけだよ?」

絵里「…ということは向こうで何かが起きてるんじゃない?」

真姫「例えば?」

絵里「例えば…?えーっと…」



絵里「内紛とか」


640 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 19:04:19.04 ID:dIWqa2t10
〜四十分後

曜「そういえばルビィちゃんは何のスナイパーを使ってるの?」

ルビィ「L115A3っていうスナイパーだよ」

ことり「…うわっ」

花丸「おお、なるほど」

真姫「趣味がいいのね」

絵里「…え?何?私全然分からないんだけど……」

曜「L115A3っていうのは超簡単に言うと命中精度がものすごく高いボルトアクション式のスナイパーライフルだよ」

曜「スナイパーだから重いのは変わりないんだけど、その中でもこのスナイパーは軽くて他のスナイパーと比べて理論的にコッキングにかかる時間が短いとされてるんだ」

絵里「コッキング?」

花丸「とっても簡単に言うとチャージハンドルを引くことを意味していて、ボルトアクション式のスナイパーは一発弾を撃つたび絶対にコッキングをしないといけない特徴があるずら」

花丸「また、ボルトアクション式のスナイパーっていうのは他の武器と比べてたった一つの弾を撃つに手間がかかるものの、威力はやはり最高級の一言で、相手を一撃で仕留めるのに適した武器種ずら」

花丸「その中でルビィちゃんという偏差撃ちが得意で目がいい人がこのL115A3を持つことは鬼に金棒ともいえるずら!」

曜「その通り」ウンウン

絵里「へ、へぇ…」

絵里(毎回この銃の説明になると面食らって返答が引け気味になってしまう、銃のことはこれからの為にもっと知りたいとは思うけどこういう銃一つの知識というか…専門的な知識を目の当たりにすると銃の世界が広いことを思い知らされる)
641 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/05(土) 19:05:17.54 ID:dIWqa2t10
せつ菜「これからの戦いでスナイパーがいてくれるのはとても頼もしいですね」

曜「そうだね、相手がアンドロイドだろうと人間だろうと効果は絶大だからね」

絵里「…というか勝手にルビィは戦いに参戦することなってるけどルビィはいいの?」

ルビィ「もちろん任せて、善子ちゃんの意志はルビィが受け継ぐよ」

絵里「…そう、ルビィがそう言うなら私は何も言わないわ」

絵里(果南と善子が消えて、新たなに加わったルビィという最強の矛)

絵里(それは即戦力どころか一種のモンスターであり、何か異常がない限り百発百中を保つルビィの腕は頼もしいってレベルじゃない)

曜「…しっかしこうしてみると私たち色んな武器持ってるんだねぇ」

絵里「人が増えた証拠ね」

絵里(ダイニングのテーブルやその辺に床に転がってる武器の数々を見てこの家の住居者もふえたことを実感できる。ホントなら後三人ここにいるはずだったのに、どうしてその三人はいないのかしら。分かっていながら疑問に思う)

絵里(エンドロールへ歩く私たちのそのエンドロールも、悪い意味だとしても良い意味だとしても終わりが近いように思える)

絵里(その中で最初は四人だったのに、次第に増えていって今じゃ八人もいるなんて感慨深いにも程がある)


絵里(この八人で、どう乗り越えていくのか)


絵里(果たして革命は起こせるのかしら)
642 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 19:06:14.02 ID:dIWqa2t10
絵里「…あれ?ルビィはもう動けるの?リハビリとか必要じゃないの?」

ルビィ「うん、必要だよ。まだ歩けるってだけで全然動けない」


ルビィ「でもスナイパーは撃てるよ!」


絵里「なるほど、でもそれじゃあ戦線の復帰は無理ね」

ことり「人の事いえたことじゃないけどね」

絵里「わ、私はなんとかするわよ!アンドロイドだし…」

曜「…だけど傷が治ってもちゃんと対策も考えないとね」

せつ菜「その通りです、新型アンドロイドはただのズルです。私たちに出来ないことを平然とやってのける疑似的な魔法を持っています」

せつ菜「その魔法にどう立ち向かっていくか検討していく必要があります」

曜「私が戦ったアンドロイドは命が複数ある…或いは記憶保存領域が別の場所にある。もしかしたら痛みを感じないなんてこともあるよ」

せつ菜「私と穂乃果さんが戦ったアンドロイド二人は喋らずに会話が出来る、或いは意思疎通がとれるはずです」

せつ菜「近づいて作戦を取ることも必要とせず思い立った瞬間すぐに二人共理想の行動に移せるのは驚異的です」

真姫「そうね…」
643 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 19:07:57.29 ID:dIWqa2t10
曜「まず前提条件として数で勝っていこう、こっちは戦える人が六人いる。でも向こうは三人、こっちには三人のアドバンテージがあるんだからそれをどう使うにせよこの三人のアドバンテージは活かしていこう」

絵里「もちろんよ」

曜「次に」


花丸「待ってほしいずら」


曜「ん?どうしたの?」

花丸「…次Y.O.L.Oに行くときはマルも連れていってほしいずら」

せつ菜「だ、ダメです!あそこはとっても危険な場所なんですよ?花丸さんが行っていいところではありません!」

花丸「それでもマルは行きたい、真姫さんには失礼かもしれないけどこのまま家で待ってるだけの人間にはなりたくない」


花丸「それにマルも戦えるよ」


花丸「銃は撃てなくても、投げ物は扱えるしナイフでなら人を殺せる。マルだって一応は希ちゃんの部下だもん」


花丸「希ちゃんに評価されたのは情報だけじゃないずら」

644 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 19:09:39.89 ID:dIWqa2t10
曜「…んまぁその辺はまた考えよう」

曜「それで————」

絵里(その日は来る次の戦いに向けてずっと話し合いだった。そんな戦いなんてまだ遠い話————)


絵里(——そう思っていたけど、あの別荘で何かしてる度に時は加速していき最初は人の手を借りないと歩けない私も気付いたら自分で歩けるようになっていて、みんな囲む食卓には穂乃果もいた)

絵里(その長い期間…そうね、一ヶ月半くらいかしら。それだけ長い期間が空いてるというのに政府も対アンドロイド特殊部隊も何もしてこない。一体なぜ?)

絵里(疑問だらけの世界は今日も謎を置いていく、しかしそんな謎に振り回されずにこの家は動いていく。地下の射撃場では今日も銃弾が飛ぶし、図書室の本は今日も複数抜かれ複数戻ってくる)

絵里(こんなのうのうと暮らしてていいのかしら、流石の私も平和ボケしてるわけじゃない、危機感は充分なほどにある。だけどそんな危機感も空回りしてしまうほどその時は何もなくて、逆に心配になってる私がいた)

絵里(テレビをつけても大したニュースはやってないし私たちの事も何も載ってない、真姫や花丸さんが情報を集めに行ってもそれらしい情報は一切なし)


絵里(戦いの合間に平和があるのか、平和の合間に戦争があるのか)


絵里(…違う、どちらもそうだとも肯定できなくはないけどこの一ヶ月半の沈黙は何を言おう戦争の真っ最中よ)

絵里(決して平和などではなく“何か”が動き出してた、だから来る日はみんなが動けるようになってすぐに来た)
645 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 19:10:49.88 ID:dIWqa2t10
〜夜、リビング

せつ菜「………」

ことり「………」

曜「………」

絵里「…それじゃあこれからY.O.L.O強襲作戦を実行するわ」

花丸「…了解ずら」

絵里「今回も前回同様グループ三つに別れて行動するわ、一つは姉妹のアンドロイドと対峙、一つは命が複数あるといわれるアンドロイドと対峙、そして最後の一つはY.O.L.Oの破壊を担当する」

絵里「それで姉妹のアンドロイドを担当するのは穂乃果、せつ菜」


絵里「そして花丸よ」


花丸「…はい!」

せつ菜「ホントに大丈夫なんですか?」

穂乃果「…助けれる保証はないよ」

花丸「もちろん、任せてほしいずら」

穂乃果「………」
646 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 19:12:15.91 ID:dIWqa2t10
絵里「そして命が複数あるアンドロイドを担当するのが私とルビィよ」

ルビィ「よろしくね、絵里さん」

絵里「ええ、よろしくね」

絵里「最後にY.O.L.Oの破壊を行うのが曜とことりよ、じゃんじゃん破壊しちゃって」

曜「もちろんっ!任せといて!」

絵里「…正直、今回はアンドロイドを殺すことが目標じゃない。Y.O.L.Oの破壊が出来た場合は撤退した方がいいわ、だから殺さずとも耐えるだけでもいいわ」

せつ菜「分かりました、ですが」


穂乃果「そんなつまらないことはしたくない」


穂乃果「…お返ししないとね」

せつ菜「その通りです」

絵里「…ほどほどにね」

絵里(大都会の街も少しだけ賑わいが落ち着く深夜、また再び私たちは戦闘服へと着替えて銃を持つ。今度こそとリベンジの思いを胸に秘めてみんな銃のチャージハンドルを引いた)


絵里(もう銃のセーフティーは要らない)

647 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/05(土) 19:14:47.70 ID:dIWqa2t10
穂乃果「じゃあ私たちは行くね」

絵里「ええ、死なないようにね」

穂乃果「大丈夫、もう負けない」

絵里(また銃弾で物語を語るのね、私は私自身に呆れた。けどこれも必要なストーリーだ、既に銃についてる弾倉の確認と持ち物の確認をして大丈夫なグループから好きなルートを使って動き出した)

絵里「じゃあ私たちも行きましょうか」

ルビィ「はいっ!」

絵里(準備が出来た私とルビィも動き出す。後は曜とことりだけで、真姫はここには呼ばずに家で待機してもらった)

タッタッタッタッ

ルビィ「……絵里さん」

絵里「何?」

ルビィ「…ルビィ、負けないよ」


ルビィ「……だから善子ちゃんとの約束は多分守れないや」


絵里「………」
648 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 19:15:34.63 ID:dIWqa2t10


善子『……私はルビィとの約束を守れない』


絵里「…許してくれるわよ、あの善子よ?」

ルビィ「…うん、そうだよね」

絵里(やはり善子とルビィは同じ気持ちを通わせてるのね。やはりあなたたちは二人であるべきだった)

絵里(善子とルビィが交わした約束——それはもう絶対に戦わないということだった)

絵里(善子から聞いた、数年前ルビィが数年眠ることの原因となったデパートの事件でルビィは倒れる前に善子と約束したらしい)


絵里(もうルビィみたいにならないように戦うのをやめて平和に生きて、と)


絵里(善子はそれを数年守った、そう…数年ね)

絵里(だけどこのアンドロイド隔離都市でその約束をずっと守るのは無理にも程がある、そんなルビィと善子の平和条約は今日完全に破綻した)
649 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 19:16:09.91 ID:dIWqa2t10
絵里「…もうすぐなの、もうすぐで鞠莉のところまで届くと思うの」

絵里(最初こそ月を目指す地上の兎というくらいに遠かったのに、今では手を伸ばせば届きそうなほど近くなった。ここを乗り越えればきっとそこに目指していた場所がある)


絵里(果たしてそこは天国か地獄か)


絵里(…行ってみるまで分からないけど、おそらくそこは地獄だろう)

絵里(でも、その先にユートピアが待っていることを私は知ってる。だからそこへ向かうの)

絵里(その為にも…)


絵里「……ここが正念場よ、頑張っていきましょう」


ルビィ「うんっ!」
650 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 19:18:04.64 ID:dIWqa2t10
〜路地裏

絵里「…また来ちゃったわね」

ルビィ「………」

絵里(私にとって最悪の場所。今も果南と善子の死体は転がってるのかしら、それとももう回収されたのかしら。分からないけどあの時通ったルートを通るのはやめよう、そう私の中で答えが出た)

絵里「…監視カメラは壊して行きましょう、もう隠密である必要は全くないわ」

ルビィ「分かったよ」

絵里(あの時とは違って今回は時間との勝負、いくらY.O.L.Oのアンドロイドが魔法のようなものが使えても人数は増やせない。銃の世界において数に勝てるステータスは無くて、それなら私たちは数で勝つしかない)

絵里(その為にも命が複数あるといわれるアンドロイドには負けてもらわないとね)


タッタッタッタッ


絵里「…!」ピタッ

ルビィ「!!」ピタッ

絵里(目に映る監視カメラはハンドガンで撃ち抜いて颯爽と路地裏を駆け抜ける私たちに待ち受ける一つの影。消えかけている防犯灯がその相手にスポットライトを当てていた)
651 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 19:19:42.14 ID:dIWqa2t10
絵里「…わざわざ待ってくれてたの?」


歩夢「うん、戦闘型アンドロイドは耳がいいからね」


絵里「…そう」

ルビィ「………」カチャッ

歩夢「前回のMSMC使いと戦えないのは残念だけど、あなたたちもあなたたちで侮れなさそうだね」

絵里「私たちを高く評価してくれてありがとう、その期待に応えるべくあなたを殺してあげるわ」

歩夢「…殺せたらいいね」

絵里「ええ、そっちは生きれたらいいわね」

歩夢「…あまり標準型が大きな口叩かないほうがいいよ、弱く見えるから」

ルビィ「じゃあルビィから言ってあげるよ」


ルビィ「せいぜい死なないように頑張ってね」

652 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 19:21:24.11 ID:dIWqa2t10
歩夢「…人間?またあのMSMC使いと同じパターン?」

ルビィ「別に曜さんより強いというつもりはないけど、あまりルビィを舐めないほうがいいよ」

歩夢「舐めてるつもりなんてないよ、あのMSMC使いは強かったからね。きっと私が新型じゃなければ瞬殺だったもん」

歩夢「…だからこそ私はそこの標準型アンドロイドよりあなたを警戒してるんだよ?」

ルビィ「…そっか」

歩夢「…そんなことより始めよっか、時間稼ぎとかされたらたまったものじゃないし」

絵里「そうね、じゃあ————」


「——始めましょうか?」


絵里「っ!?」

ルビィ「!」


歩夢「何っ!?」

653 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 19:23:13.57 ID:dIWqa2t10

ドドドド!

歩夢「ちっ…」シュッ

絵里「あれは…梨子…!?果林!?」


果林「可愛い可愛いY.O.L.Oの新型アンドロイドちゃんは私たちと遊びましょう?」


絵里「何…!?なんで…?」

絵里(どこからともなく聞こえた声と共に飛ぶ銃弾は歩夢に一直線で、梨子と果林が私の前に現れてもその殺意はずっと歩夢に向けられたままだった)

果林「は〜いごめんなさいね、絵里と可愛い赤髪ちゃん、この子の相手は私たちがするから」

絵里「…何が目的?」

歩夢「…それは私も知りたいです」

果林「鞠莉が人を模して作ってないアンドロイドは要らないっていってるの、その結果私たちの殺害対象は絵里やことりよりダントツであなたが上ってわけ」

梨子「私も人の形を投げだしたアンドロイドに興味はないかなぁ」
654 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 19:24:29.07 ID:dIWqa2t10
絵里「…それで信用出来ると思う?」

果林「別にいいわよ、信用しなくて。でもあなたたちにとってこの子と私たちを相手するなら信用出来ない私たちにこの子を相手してもらった方が嬉しいでしょ?」

果林「それに今回のこの戦いには鞠莉も一枚噛んでるのよ?今までの一ヶ月半何も無かったのなんでか知ってる?」

絵里「…知らないわ」

梨子「鞠莉さんがずっと政府にサイバー攻撃仕掛けてたからですよ、政府が持ってるデータのほとんどが今ノイズ化してるからてんてこ舞い状態で今もまともに機能してないんですよ」

絵里「…! そんなことが…」

果林「…だからね、本当簡単に言っちゃえば」


果林「今の私たちは相対的にあなたたちの味方になってるの」


絵里「………」

ルビィ「…信じて良いと思いますよ、絵里さん。その青い髪が出してる人の殺意は本物だしそこの紫色の髪の人が出してる気だるい感じも本物、人間は完璧には感情を偽れないんだよ、ルビィがそうだから」

果林「あはは、全然気にしてなかったけどもしかして赤髪ちゃんものすごい強い感じ?その観察眼は目を配りたいわね」

梨子「将来的に戦う事になったらまずはあの子狙いたいね」

ルビィ「………」
655 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 19:26:17.64 ID:dIWqa2t10
果林「…まぁいいわ、それより絵里」

絵里「何よ?」

果林「これは鞠莉からの伝言だと思って聞いて」

絵里「…?」


果林「どうやらY.O.L.Oを守ってるアンドロイドは三人じゃなくて五人いるらしいわ」


絵里「…それホント?」

果林「ええ、だからここで一人殺してあげるからその四人目五人目を殺してきなさい。私たちと絵里たちの目標は利害の一致で同じよ、後々私たちと戦うとしても今は私たちに任せて先に向かうのが頭の良い選択だと私は思うんだけど?」

絵里「……ええ、そうね。そうしてくれるならそうさせてもらうわ」

果林「ありがとう」ニコッ

絵里「…行きましょう」

絵里(あまり納得は出来ないけど、ルビィもあまり警戒はしてなさそうだったから静かにルビィに耳打ちをして私たちはY.O.L.Oへ向かった)
656 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 19:27:35.41 ID:dIWqa2t10
果林「…はーあ、対アンドロイド特殊部隊も人数減っちゃったわねぇ」

梨子「ダイヤさんはいつまでもしょげてるから実質二人ですよ今」

果林「ここに凛ちゃんとにこがいてくれたらもっと楽になるんだけどねぇ…」

梨子「はぁ……」

果林「ちょっと私の溜め息吐かないでよ、先に私が吐きたかったのに」

梨子「私が初めて対アンドロイド特殊部隊の人たちと会った時は負ける気がしないなんて思ってましたけど、二人しか残ってない現状を見ればそりゃあ溜め息の一つや二つも出ますよ」

果林「海未は強かったわねぇ、あんなのと戦ったら絶対に死ぬわよ、だから実は一番戦いたくなかった相手だったり」

梨子「私も凛ちゃんとは戦いたくなかったですよ、あの本能的に動く姿は対処のしようがないですから」

果林「うんうん、行動の読みにくさで言えば凛ちゃんが圧倒的だもの。戦いにくいに決まってるわ」

梨子「単純に強い曜ちゃんとも戦いたくないし対アンドロイド特殊部隊一の戦闘のセンスを持ったダイヤさんとも戦いたくないですね…ってもう全員ですね」
657 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 19:29:31.54 ID:dIWqa2t10
果林「にこを忘れてない?」

梨子「にこさんは…まだマシかなって思いますよ」

果林「そう?私はにこと戦うのもイヤだけどね、確かに対アンドロイド特殊部隊ではそこまでだけど、それはあくまでも対アンドロイドだからであって」


果林「にこは対人間でなら一番強いと思うわよ」


梨子「…それが本当ならにこさんと敵ではなくてよかったです」

果林「にこの相手をした海未は可哀想ね、また逆も然りで海未の相手をしたにこも可哀想だわ」

梨子「こうもドミノみたいに対アンドロイド特殊部隊が崩壊してくとアンドロイドって一生厄介のままなんだなって思いますよ、同時に私たちみたいな殺しの過激集団も同じように」


梨子「いずれ私たちも死ぬのかな…」


果林「…まっいずれは死ぬでしょうね」

果林「でも、死ぬ前に最新型のアンドロイド一人くらいは殺しておきたいかしら」

梨子「その通りですね」カチャッ
658 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 19:30:53.46 ID:dIWqa2t10
歩夢「…お話は終わった?」

果林「待たせてごめんなさいね」

果林「鞠莉というアンドロイドの母があなたは要らないって言ってるの、これは罪でもなければ罰でもなくて理なのよ」

歩夢「そのバッチ…あなたたちはY.O.L.Oとも友好な関係であった小原社直属の部隊と認識したよ、そんなところが私を傷つけていいの?」

梨子「残念だけどその友好な関係にある小原社の社長が命令したことなの、鞠莉さんにとってアンドロイドというのは子供みたいな存在と聞いてるので、そんな中で異形の子供が生まれたら殺したくなると私は思うな」

果林「回りくどい言い方をするつもりはないわ、単純に新型アンドロイドっていう人の域から外れたアンドロイドがムカつくから殺したいだけよ。そこに友好も敵対も関係無く、それで関係が悪くなるならそこまでの関係ってことよ」


果林「鞠莉は本気よ」


梨子「私もそろそろあの金髪美人のアンドロイドの下につく準備はしておいた方がいいのかな」

果林「冗談は死んでからにしなさい」

梨子「残念ですけど死ぬつもりはありませんよ」
659 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 19:32:29.68 ID:dIWqa2t10
歩夢「……そっか、ならやることは一つだね」

果林「ええそうね」


カチャッ


果林「……梨子」

梨子「分かってます、心配しないでください」

歩夢「………」


果林「…今!」



バァンッ!



梨子「はっ!」ダッ

梨子(果林さんの持つハンドガンの銃声を皮切りに私の足は動き出す。果林さんは後衛をやって私は近接で攻める前衛をやる——それが私と果林さんの攻めパターンだ)
660 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 19:34:13.14 ID:dIWqa2t10
歩夢「1と1の動きだね!何回も見たことあるよ!」

梨子「果たしてその何回がどこまで通じるかな!」

歩夢「経験だけが全てじゃないよ!」

梨子(私が右ストレートの体勢を走りながらとれば相手はたちまち受け止めるか回避のどちらかの準備をした、本当だったらここで私はこの体勢通りに右ストレートを打つのだけど、二対一なら話は違う)

梨子「よっと」ピョーン

歩夢「なにっ!?なんで人間がそんな高く…!」


果南「驚いてる暇はないわよ?」


歩夢「!!」

梨子(曜ちゃんが作った靴の恩恵は大きかったよ、凛ちゃんのような勢いだけのフェイントはアンドロイド相手でも効果的で、パンチを振る直前まで気迫を出し相手をその気にさせて回避に専念して空回りさせる、そうして出来た隙を他の人がカバーする。それが今回の動きの目的)

梨子(まさか私がアンドロイドの上を跳ぶようなジャンプをするなんて思ってなかっただろうし、ましてやこれがフェイントとすら思ってなかったと私は思う。そうして大きな大きな空回りをした相手にもう余裕はない)
661 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 19:35:25.80 ID:dIWqa2t10
歩夢「くっ…」シュッ

梨子「こっちも見てね人間やめたアンドロイドさん!」ババババッ!


歩夢「あッ……!」


梨子「ヒット♪」

梨子(果林さんの放った銃弾をだいぶ反応が遅れた状態で回避した上で私の放つ銃弾を回避出来るはずがない。それに私の持つ銃はサブマシンガンな上に連射速度も速い、そんな近距離特化ともいえる銃の弾丸を回避するのはいくら最新型でも無理みたいだった)

歩夢「また……」


バタッ


果林「…呆気ないわね」

梨子「機械は単純な動きに対しては強いですけど特殊な動きに対応できませんからね」

果林「にしてもこれが最新型なんて片腹痛いわね、まだ旧型の方が強いわよ」

梨子「私もそう思います、穂乃果ちゃんの次世代機とか言ってますけど全然穂乃果ちゃんの方が強いですよ」
662 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 19:36:57.68 ID:dIWqa2t10


歩夢「………期待外れなのは否定しないけど、私にもプライドがある」


果林「あら?」

梨子「これが鞠莉さんの言ってたやつかな?」

歩夢「不死身は死なないことだけが取り柄じゃない」


歩夢「やられ役はもう飽き飽きだよ」


歩夢「私だってこんな人の道外したアンドロイドに生まれたくて生まれたわけじゃない。でも私のこの力があなたたちを亡ぼせるというのなら私は喜んでこの力を肯定するよ」


歩夢「始めよう?夢への一歩はもう歩んでる」


歩夢「私、最強のアンドロイドになりたいから」


果林「…皮肉なものね、最強になりたいのは私も分かるけど射撃の腕前でもなければ身体能力の高さでもなくて」


果林「複数ある命で強さを誇るなんて」


果林「…これには海未も失笑でしょうね」

梨子「………」
663 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 19:38:25.25 ID:dIWqa2t10
歩夢「これが私のチカラなので」

果林「ええ、とっても素敵なチカラだと思うわ。でも最強のアンドロイドになる為には穂乃果やことりを殺さないとなれないでしょうね」

歩夢「…私の下位互換のアンドロイドが私より強いの?」

果林「総合的な腕前はどう考えても穂乃果ね、あなたは相対的に他のアンドロイドより強いとしか言いようがない、頂点に立ちたいその心意気は私すっごく好きだけど弱い子は私好きじゃないの」

歩夢「…そっか、ならあなたの持つ強さを教えてよ」


歩夢「それで世界の広さを推し量るから」


果林「…そう、ならせいぜいがっかりさせないように頑張るとするわ」

果林「…梨子」

梨子「準備は出来てますよ、命が複数あるのは知ってます。焦る必要はありません」

果林「もちろんよ」

梨子(穂乃果ちゃんの次世代機と呼ばれるアンドロイドに命が複数あるのは鞠莉さんから聞いてた)

梨子(それを聞いた時から私は思った、鞠莉さんから言われるまでもなくね)


梨子(…命が複数あるとは言っても爆発物で殺せば体をもぎ取れるって)

664 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 19:40:30.63 ID:dIWqa2t10


ジャランッ


梨子(私と果林さんの腰回りにぶら下がる投擲物が威嚇をしだした。今回の戦いに備えて投擲物をたくさん用意した、このアンドロイドを殺すには万全すぎるくらい)

梨子(それに今回の戦いには絶対に負けられない理由がある)


梨子(新型アンドロイドとはいえど私たちは対アンドロイド特殊部隊————そんなところがアンドロイドに完全敗北なんてしたら名が廃るでしょ?)


梨子(あのアンドロイドにもプライドがあるというのなら私にだってそれ相応のプライドがある。だからこれは正義対悪なんかじゃない)



梨子(一方的な正義 vs 一方的な正義の戦いなんだ)



梨子(…正直、そんな戦いではまだどちらが勝つかなんて分からない)

梨子(だからこそ私たちは勝つよ、勝たなきゃいけない)


スタッ


梨子(静かに果林さんはその一歩を踏み出す。第二ラウンドの合図はもう鳴った、だから後の私たちは————)



梨子(————勝利を持ち帰るだけ)タッ


665 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/05(土) 19:41:36.38 ID:dIWqa2t10



ドドドドド!


聖良「何度戦っても結果は変わりませんよ二人とも!」


せつ菜「あなたたちの仕組みは理解したつもりです、今日という日は少し展開が違うかもしれませんよ?」シュッ


理亞「でも、防戦一方なのはどうして?」ドドドドッ


穂乃果「理解する必要はないと思うよ」


せつ菜(現在私と穂乃果さんは前回戦った森ではなく既にY.O.L.Oの中にありました。射線や物音には気を遣ったのですが敵の様子はなくそのまま進めば内部で待ち構えてるあの二人)

せつ菜(ここは拳銃を並大抵使える研究員とY.O.L.Oを守るアンドロイドしかいません。内部とはいえどそのアンドロイドと私たちが戦ってる中では野次から飛ぶ銃弾はどちらの立場からしても邪魔でしかありません)

せつ菜(ですから敵の本拠地とはいえど結局は私たちとあの姉妹アンドロイドだけのフィールド。誰も邪魔は出来ません)
666 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 19:43:07.40 ID:dIWqa2t10
せつ菜「ほっと」タッ

聖良「物陰に隠れても無駄ですよ」シュッ


せつ菜「果たしてそうでしょうか?」ニヤリッ


聖良「っ!?またっ!?」


ドカーン!


せつ菜(コンテナが多いこの場所ではとにかく銃弾が貫通しない遮蔽物が多い、そんな中でとにかく引いて引いて誘い受けのような戦法で戦う私たちの牙が今光った)

せつ菜(コンテナに隠れればそれはもう相手から見たら死角——私がその死角へと移れば相手は決め撃ちのような形で跳躍と共にやってくる)

せつ菜(そうと分かれば私はそこにグレネードを転がすだけ、そうすれば必ず避けなきゃいけない状況が出来て————)


穂乃果「今っ!」ドドドド!


せつ菜「これで終わりです!」パサパサパサッ

聖良「きゃっ…」

理亞「姉様!」

せつ菜(グレネードが転がったタイミングで穂乃果さんが私の相手をしている聖良さんに発砲、そして私はその聖良さんの逃げ場を無くすように発砲。これには妹の理亞さんも焦ってるのを見て手応えが感じた)
667 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 19:44:51.07 ID:dIWqa2t10


聖良「いあっ…!」


穂乃果「ちっ…腿だ…」

せつ菜「腿ですね…」

せつ菜(命中したのは胸でも頭でもなくて腿。もちろん致命的なダメージではあるのですがここは仕留めたかった)


せつ菜「でも、今度こそ終わりです!」ダッ


せつ菜(アサルトライフルの弾は切れた、だからハンドガンを持って聖良さんに突っ走った)

理亞「させない!」ババババッ!

穂乃果「私の方も見てほしいな!」ドドドドッ

理亞「このっ…こんな時に…!」シュッ


タッタッタッタッ


せつ菜「さあどうしますか!」バンッ!バンッ!

聖良「くっ…」シュッ

せつ菜(苦し紛れに回避をするけどもう遅い)
668 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 19:46:36.00 ID:dIWqa2t10


穂乃果「はっ!」バンッ!


聖良「ぐああああっ…!」

せつ菜(穂乃果さんが左肩を貫いた時点でもう勝負は決まってた、膝をついて左肩を抑える相手に容赦などしない。私はすぐそばまで近づいてナイフを首元に————)


ガキンッ!


せつ菜「っ!?!?」

聖良「……くっ」

理亞「姉様に近寄らないで!」ババババッ!

せつ菜「きゃっ!あっ…」

穂乃果「せつ菜ちゃん!?」

せつ菜(ナイフを首元に振った直後に当たる固い何か。フルスイングで振っただけに“それ”に当たれば私のナイフを持った手は反動で飛び跳ねて無防備な状態になり、その状態のまま別方向から飛んでくる銃弾は————)


せつ菜「いやあああああああああああああああああああっ!?」



せつ菜(——私の胸を貫いた)


669 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 19:47:59.73 ID:dIWqa2t10
せつ菜(なんだろうこの感覚。私の胸から明らかに何かが離れていった、激痛で辺り全ての人間とアンドロイドの耳を塞げそうな甲高い悲鳴を上げれば、波を感じることが出来る電波のようなモノが私の身体中を駆け巡った)


せつ菜(…あ、そうだ。私死ぬんだ)


せつ菜(力が抜けて、膝をつき、口も手も動かせなくなって倒れるその最後の一秒まで痛いのかすらも分からないような強烈な電撃が私には走って、頭がずっと真っ白のままだった)


『感情保管領域で深刻な損傷が発生————記憶保存領域の稼働が出来ません。システムオールダウン、機能を停止します』


せつ菜(私の頭に直接響いた何かのアナウンス。それすらも分からない私は目を開けたまま仰向けになって倒れた)


バタッ


穂乃果「せつ菜…ちゃん?」

せつ菜「………」

穂乃果「せつ菜ちゃん!!」ダッ
670 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 19:49:51.65 ID:dIWqa2t10


ババババッ!


穂乃果「!」シュッ

理亞「…絶対に許さない」

理亞「姉様を傷つけた罪は重いよ」カチャッ

穂乃果「…これほどまでに頭がおかしくなりそうな感情はないね」

穂乃果「希ちゃんが死んだ時もそうだったよ、無限に湧き上がる怒りが抑えられずにイライラしてた」

穂乃果「そして今もそうだよ、せつ菜ちゃんを傷つけたあなたが憎い。痛めつけたい、泣かせたい」


穂乃果「殺したい」


穂乃果「だからもうブレーキは要らないね」


穂乃果「“穂乃果”も許さないから」


理亞「…初期型ってやつは一人称を変えると行動パターンが変わるんだっけ、分かりやすいね」
671 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 19:50:32.69 ID:dIWqa2t10
穂乃果「…そっちは随分と分かりにくい特徴があるんだね」


聖良「……あまり使いたくなかったんですけどね」


穂乃果「ナイフを弾く腕って何?アンドロイドの域から外れてるよね?」

穂乃果(もしせつ菜ちゃんが振ったナイフの先が普通のアンドロイドか人間であったら勝負はついてた、けどこの相手は違う)

穂乃果(最新型のアンドロイド——最先端の技術がコーティングされたアンドロイドは何故かせつ菜ちゃんのナイフを腕だけで弾いた)

穂乃果(……それはつまり腕が硬かったからナイフを弾いたんだ)
672 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 19:53:27.19 ID:dIWqa2t10
穂乃果「…気持ち悪いね」


ババババッ!


穂乃果「!」シュッツ

理亞「御託はいいよ」

穂乃果「…そうだね」


穂乃果「じゃあやろうか!」ドドドドッ


穂乃果(確かに相手の言う通りだ、御託はいい、さっさとけりをつけてしまいたいのはどちらも同じ)

穂乃果(せつ菜ちゃんは胸を貫かれただけでまだ死んではいない、相手のお姉ちゃんも動けないだけで生きてはいる。ならどっちも早くけりをつけて早く相方を安静な状態にさせたいに決まってる)

穂乃果(だから穂乃果も相手も長期決戦は望んでなかっただろう、相手は武器の軽さを活かして突貫してきてるしこの戦いはすぐに決着がつくと思った)
673 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 19:57:01.63 ID:dIWqa2t10


タッタッタッタッ


穂乃果(相手がこちらへ突っ走ってくるならこっちはしっぺ返しを狙うのみ、こちらへ飛んでくる銃弾は横へ跳躍して躱しそれでも近づいてくる相手に私はナイフを逆手で横に振って応戦した)

穂乃果「はっ!」ブンッ

理亞「分かりやすいね」シュッ

穂乃果(だけど相手はしゃがんで軽々しく避けてくる、でもそれは予想済み。第二の攻撃はもう用意してた)


穂乃果「いつも上から目線なのがむかつくね」


穂乃果(ナイフを振った後は飛び膝蹴りで相手の顎を狙った)


理亞「だって上だからね」シュッ


穂乃果(だけどそれすらも横への跳躍で避けてきた、可能性の一つとしてこの攻撃を避けるっていうのはちゃんと予想してたけどいざ避けられると少しこの戦いがイヤになる)

穂乃果(…だけどイヤになってても仕方ない、避けられた後飛んでくる蹴りは飛び膝蹴りの隙で避けることが出来ない。だから腕でガードすることを選んだ)
674 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 19:58:34.11 ID:dIWqa2t10



穂乃果「ぎっあああああっ!?」



穂乃果(…ガードはした…けど、骨にまで届くような打撃は声に出してしまうほどの激痛だった。今まで受けた蹴りとは比べ物にならない痛み——痛すぎて腕が動かなかった)

理亞「勝負あったね」ドカッ!


穂乃果「がっ……」


理亞「軍神とはいえ初期型が最新型に勝とうなんて片腹痛いね」

穂乃果(痛みで怯む私に止めの蹴りが私のお腹に当たった。そうすればどうなったんだろう。まるで魔法でも使われたみたいに体が宙に浮いて十数メートル離れたコンテナに叩きつけられ、たちまち口からは悲劇的な血が噴射される、最新型の近接威力は桁外れでそれを熟知してなかった私はこのインフレの波に呑まれてしまった)


スタスタスタ


理亞「色々言いたいことはあるけど、今は時間惜しい。だからさよなら」カチャッ


穂乃果(穂乃果に向けられた銃口————感じる射線はどうすることも出来ずただ見守って死を待つだけだった。また負けるんだ、なんて不甲斐ない終わり方なんだろう)

穂乃果(後十秒でもあれば痛みが引いてまた動けるようにはなるはずだけど、そんなたったの十秒が長くて長くて生き延びるのは絶望的。せめて道連れにでもしていきたいけど、していける手段がない)

穂乃果(……ごめん、絵里ちゃん。せつ菜ちゃん。希ちゃん。)


穂乃果(穂乃果……勝てなかった………)

675 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 20:00:12.18 ID:dIWqa2t10



「待つずらっ!」バンバンバンッ!



理亞「!」シュッ

穂乃果「はな…まる…ちゃん……!?」

穂乃果(信じられない光景だった。穂乃果の一番身近なところにいた人で、この人の事はよく知ってるつもりだったから尚更目を疑ったんだ)


穂乃果(銃を発砲出来ないはずの花丸ちゃんがショットガンを連射してたんだ)


理亞「何…!?」

花丸「あなたの相手はマルずら!」

穂乃果「は、花丸ちゃんっ…はダメだよ…!」

穂乃果(あの姉妹と戦闘を起こす前、このコンテナが多い場所に来た時明らかに罠だと確信し、花丸ちゃんを待機させた。その行動は今振り返ってみれば正解だったと思う、この姉妹との戦いに花丸ちゃんがいたらきっと花丸ちゃんは死んでしまうから)
676 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/05(土) 20:02:02.39 ID:dIWqa2t10
花丸「食らえっ!」ポイッ

穂乃果(だけど、花丸ちゃんは命を失う恐怖に臆することなく果敢にも攻めた)

穂乃果(近距離特化である希ちゃんのショットガン——AA-12は至近距離でやり合えば相手に反撃の隙も与えない超高火力だ、だから相手を一度引かせて追撃に花丸ちゃんはグレネードを投げた)

穂乃果(そして花丸ちゃんはAA-12を二丁下げて希ちゃんの面影を感じさせてくれる背中を穂乃果に見せた)

花丸「穂乃果ちゃん、マル分かってたよ」

穂乃果「な、何が…?」

花丸「穂乃果ちゃんとせつ菜ちゃんじゃあの二人には勝てないって」

穂乃果「ど、どうして!?だって…うぅ…けほっ…」

花丸「無理しないで黙って聞いてほしいずら、時間も無いし」

穂乃果「………」
677 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 20:03:49.55 ID:dIWqa2t10
花丸「確かに穂乃果ちゃんやせつ菜ちゃんはアンドロイドという枠の中ならトップレベルで性能が良くて強いアンドロイド…だけど最新型アンドロイドは人の子をやめたアンドロイドずら」

花丸「常識に囚われない強さを持っていて、その常識に囚われない強さが何なのかも分からない状態で逃げ道のない殺し合いをしたら死ぬに決まってるずら」


花丸「穂乃果ちゃんたちとあの二人じゃ持ってるカードの枚数が違いすぎるんだよ」


穂乃果「………」

花丸「…だけどマルはそれを言わなかった、だってそれを言ってもプライドが高い穂乃果ちゃんには逆効果だったからね。むきになって冷静に立ち回れなくなっちゃうと思ったずら」

花丸「だから少しは穂乃果ちゃんたちが勝てるかもって期待したけどやっぱり無理だよね、ただ安心して?今回のこの負けは負けには加算されないよ、だって相手が異常すぎるから…」


花丸「————それに、今ここでマルが勝つからね」


穂乃果「…!けほっ…それってどういう————」
678 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 20:04:45.33 ID:dIWqa2t10
花丸「喋らなくていいずら、だけど“最後に”言わせてほしいずら」


花丸「マル、希ちゃんの下に就けたり穂乃果ちゃんやせつ菜ちゃんと戦線を共にする仲間になれて幸せだったずら!」ニコッ


穂乃果「……ぇ?」

花丸「じゃあね、マルいってくるよ」ダッ

穂乃果「え、ま、まっ…ぐっ…けはっ……!」

穂乃果(意味深な事を言って花丸ちゃんはさっきのグレネードで発生した煙の中に突っ込んでいった。動転した気と切羽詰まったこの感情と再発しだす痛みは私の口から汚れたモノを出して花丸ちゃんを追うのを許してくれなかった)
679 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 20:06:04.87 ID:dIWqa2t10


タッタッタッタッ


花丸「………」

花丸(…マルは銃が使えなかった)


花丸(まず第一にトリガーを引くのが怖かった)


花丸(これを引いたら人が死ぬ、そう考えるだけで銃の何もかもが怖くなる)

花丸(でも、銃は好きだった。小さい頃はモデルガンをよく買ってもらったりして遊んでた。だけどマルの家はお寺だったからお寺外で尚且つお寺のイメージを崩さないよう人にばれないよう静かに遊べという決まりはあった)


花丸(…そして第二に、トリガーを引いた後鳴る甲高い銃声と跳ね上がる肩の感覚が嫌いだった)


花丸(銃はカッコいい、けど所詮それは人を殺める道具に過ぎない。普通の人間じゃ回避不可能な弾速で飛び殺されたことに気が付けないまま人が死んでいく、その一瞬で起こる悲劇を見てしまったからマルはトリガーを引くのが怖かった)


花丸(……そしてその悲劇のトリガーを引いたのはマルだった)

680 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 20:07:39.10 ID:dIWqa2t10




花丸(最後…第三に、マルは拳銃で親を殺したことがあるから銃が怖かった)




花丸(…ある日お母さんの買い物ついでに銀行に寄った時だったよ、架空の作品でもよく見る絵に描いたような銀行強盗がやってきて場は騒然で、マルもその騒ぐ一人だった)

花丸(その後は色々あったけど、簡単に言ってしまえば立てこもりみたいな膠着状態になってそこで動いたのがマルだった)


花丸(強盗の数は全員で五人、その五人全員がマルを視界から外した瞬間を狙って一人の男の拳銃を奪った。強盗が持ってた銃はM45 MEUで装弾数は八発、手に持った瞬間それが分かった)

花丸(だからこれで充分と思った、次の瞬間には一秒で二人殺す流れで強盗を全員殺した。モデルガンやエアガンで射撃は飽きるほどした、だから拳銃もエアガンなんかのそれらと感覚は全く同じで放った弾丸は面白いように相手の胸を突き抜けた)

花丸(その時はトリガーを引く感覚が快感でたまらなかったけど、またその次の瞬間にはそれが吐き気になった)


花丸(一人の強盗を貫いた先にマルのお母さんがいた)


花丸(…結果としてその事件の死人は六人だった。強盗五人と————)


花丸(——マルのお母さんが死んだ)

681 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 20:09:26.06 ID:dIWqa2t10
花丸(…マルがまだ子供だったってこともあってその時は正当防衛で認められたけど、その後のマルの生活は酷いものだった。大量の記者が押し掛けるし、学校ではいじめが発生するし、近くの住民からは恐れられるし、とても精神を正常にして生きていくには困難な環境下に陥った)

花丸(だからマルはある日決意したよ、ここを出ようって。小さい頃の弱い頭を使いお小遣いを全部持ってどこか遠くへ行ってしまおう、そうすれば何か変わる。そう思ったずら)

花丸(…だけど現実はそう甘くない、マルの行った先はここ東京。マルの地元静岡から丁度よく離れたところだったからここでいいやって思った。けど如何せんここは危ないところで水準物価もバラバラ、街中には怪しげな人がズラズラ。とても弱いマルが生きていけるところじゃなかった)


花丸「………」カチャッ


花丸(だから次第に残り少ないお小遣いは尽き無一文になって生きるための力を失った、もう静岡へ帰るお金も無くなってしまったから)


『帰るところに困ってるなら、ウチの下に就かない?』


花丸「…ありがとう、希ちゃん」

花丸(そこでマルは運命の人に出逢った。希ちゃんが死にかけのマルを助けてくれた)
682 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 20:10:37.09 ID:dIWqa2t10


『困ったことがあったらこの私にお任せです!』

『花丸ちゃんは情報収集をして、私は花丸ちゃんと希ちゃんの為に殺害をするから』


花丸「…ありがとう、穂乃果ちゃん、せつ菜ちゃん」


花丸(そして希ちゃんとマルのところに来た二人のアンドロイドはとても優しくて強かった。夏は海に行って楽しんだ、冬はこたつにくるまってみかんを食べてた。そんな普通の生活の中でみんなといるのが幸せで幸せで仕方がなかった)


花丸「さて……」スタスタ


花丸(…だけどそれも今日で終わり。これでマルのお話はおしまい)

花丸(続きはもうないからさっさと終わらせるずら)


花丸(エンドロールをね)

683 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 20:12:20.09 ID:dIWqa2t10


タッタッタッタッ


理亞「あなたよくも…ッ!?」

花丸「最悪ずら、せっかく明日かよちゃんのライブに行こうと思ってたのにこんなことしなきゃなんて」バンッ!

花丸(煙が無くなる頃にはもうマルと相手との距離はほぼゼロに等しかった。その中で希ちゃんのショットガンを二丁使って連射する。アンドロイドとはいえ魔法は使えない、だからこのマルと相手にある距離を伸ばすことは出来ない)

花丸「あなたの使ってる銃はミニ UZIずら、軽い分機動力が上がるけど銃から放たれる弾丸の威力の期待値はそこまで無くて人を殺すには充分だけど脅威として認識させるには不充分ずら」

花丸「今ここでそれを撃ってみるずら、弾切れが起こったら今度はマルのショットガンを避け続けるだけのゲームになるね」バンバンバンッ!

理亞「なにこいつ…!」シュッ


理亞「…でもいい、そこまで言うなら撃ってあげるよ」


理亞「人間風情があまり調子にのらないで!」ババババッ!
684 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 20:13:01.59 ID:dIWqa2t10
花丸「はっ!」シュッ


穂乃果「!」


理亜「その靴…!」


花丸「曜ちゃんに貸してもらったずら!」バンッ!


花丸(マルだってそこまでバカじゃない、ちゃんと対策くらいはしてる。けど、これはある意味賭けだった)

花丸(銃弾は避けれても銃弾の射線は見えない、だからどこに避けるかはマルのセンス次第だった)


花丸「後はマルのゲームだね!」バンバンバンッ!


花丸(…そしてその賭けに勝った今、マルのしたいことがようやく出来るずら)

花丸「はっ!」

花丸(マルの本来の戦い方であるナイフを使って相手に吐息が感じれる距離まで顔を詰めた。反撃も何もかもを恐れずにナイフを振れば、それに恐怖を覚える顔を相手はした)
685 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 20:14:29.08 ID:dIWqa2t10


ガキンッ!


花丸「!」

花丸(だけどそんなフルスイングのナイフもたった一つの腕で弾かれる)

理亞「勢いだけは今までで一番すごかったけど、それが私に通るかと言われたら無理だね」


花丸「…知ってる」


理亞「あ?」

花丸「きっと単純な銃の撃ち合いや近接のやりとりじゃどうやってもマルはあなたに勝てない、なら単純なことをしなければいいだけの話ずら」


ガシッ


理亞「っ!?何っ!?」

花丸「はっ!」

花丸(弾かれたマルはすぐに体勢を立て直し相手の腕を掴んで姉の方向へ流した、マル自身あんまり力が強くないからそこまで距離は伸びなかったけど姉の近くにやれただけでも充分)
686 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 20:16:17.93 ID:dIWqa2t10


タッタッタッタッ


花丸「ずらっ!」

花丸(そうして流した妹の方へ突っ走った、相手はすぐに体勢を立て直し“近接”で応戦する準備をしてる。きっとここで相手に弾があったらマルの負け。だけど相手には弾がない————サブとしてハンドガンを持ってない相手には近接でマルの攻撃を対応するしかないんだ)


花丸「これで終わりずらっ!」タッタッタッタッ


理亞「近接なら負けない!」



ギューッ



理亞「…え?」


花丸(近づいた瞬間飛んでくる右ストレートを避けてマルは相手に抱き着いた)

花丸(きっとここにいる誰もがマルの行動の意味を理解してなかったと思う、例え最新型の知能でも、経験を積み過ぎた穂乃果ちゃんでも誰もマルのしたかったことが分からなかったはず)
687 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 20:17:40.33 ID:dIWqa2t10


理亞「…っ!?グレネード!?」



花丸「…これでおしまいずら」



ドカーン!!



花丸(マルが抱き着き相手と密着する中で擦れる丸い物体——それに気付いた時にはもう遅い)

花丸(きっとこのアンドロイドも命が複数ある、なら話は早い)


花丸(爆発物で一気に命を削ればいいだけ)


花丸(でも最新型とは言わずアンドロイドという相手に爆発物を当てるのは至難の業。一対一じゃまず無理、だけどマルはみんなとの戦いにはついていけない、だからこうするしかなかった)

花丸(穂乃果ちゃんでもせつ菜ちゃんでも勝てない相手に勝つ唯一の方法。抱き着くことで私と相手の位置を固定してその間にピンを抜いたグレネード挟む、そうなった時にはどんな抵抗をしてももう遅い。暴れてもマルを殺してももう遅い、遅すぎるずら)

花丸(マルと相手の間で起きた爆発はすぐに私と相手とその近くにいた姉を呑んだ。ただそれだけでこの戦いは終わった)
688 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/05(土) 20:19:08.17 ID:dIWqa2t10


穂乃果「うそ………」


穂乃果「ウソ…だよね…?嘘だよね…!?」

穂乃果「ねえ!嘘だよね!嘘って言ってよ!ねえ花丸ちゃんッ!!」


穂乃果「………」


穂乃果「そんなっ……!」

穂乃果(目の前で起こった爆発が消えれば無惨な死体が三つ出来上がってた。敵であったアンドロイド二人は中身である部品が出てきててとても見れたものじゃない)


穂乃果「花丸…ちゃん…!」


穂乃果(…だけどこの花丸ちゃんの死体はもっと見るに堪えないモノだった。全身のほとんどが黒く変色して、片腕がもげてもう花丸ちゃんとして原形をとどめていなかった)
689 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 20:20:06.28 ID:dIWqa2t10
穂乃果「…こんなのって」


ポロポロ……


穂乃果(思わずひざをついた。これが勝利?そんなのあり得ない)

穂乃果(これじゃあ何もかもが希ちゃんの時と同じ)


穂乃果(穂乃果はまた大切な人を守れなかったの?)


穂乃果(そう思うと、自分の軍神という異名がイヤになる。なんだ、穂乃果全然強くないじゃん…)

穂乃果「!」

穂乃果(悲しんでれば飛んでくる射線、名前も顔も知らないここの研究員が穂乃果に拳銃を向けてた)

穂乃果「………」

穂乃果(それを見て我に返った。悲しむのは後、今はこのせつ菜ちゃんを持ち帰るのみ。だから穂乃果はすぐに行動に移した)
690 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 20:20:32.19 ID:dIWqa2t10


穂乃果「…こちら穂乃果、聞こえる?」


曜『聞こえるよーどうしたの?』

ことり『聞こえてるよ』


穂乃果「新型アンドロイドの二人はやった、けど……」


曜『けど?』


穂乃果「…花丸ちゃんが死んだ、せつ菜ちゃんは生きてるか死んでるかも分からない重傷だから穂乃果とせつ菜ちゃんは戦線を離脱するよ」

ことり『え、う、うん…』

曜『…そっか、でも悲しむのは後だね。とりあえず了解だよ』
691 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 20:20:59.54 ID:dIWqa2t10


穂乃果「今無線拒否してる絵里ちゃんにも伝えといて」


曜『了解、帰るまでが遠足だよ、最後の最後まで死なないようにね』

ことり『遠足じゃないけどね…』


穂乃果「分かってるよ、それじゃあ」


ピッ


穂乃果「………」


ダッ

692 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 20:22:46.65 ID:dIWqa2t10
〜一方その頃、十分前

スタスタスタ

絵里「…Y.O.L.Oってこんな迷路みたいな場所なのね」

ルビィ「迷子になっちゃいそうだね…」


果林『どうやらY.O.L.Oを守ってるアンドロイドは三人じゃなくて五人いるらしいわ』


絵里「四人目と五人目のアンドロイド…本当にいるのかしら」

ルビィ「あまりウソを言ってるようには見えなかったけど…」

絵里「でも入ってアンドロイドどころか人すらいないのよね…」

ルビィ「…曜さんや穂乃果さんたちが荒らしてるからかもね」

絵里「…そういえば他のみんなは何してるのかしら」

絵里「無事だといいけど…」

ルビィ「………」

絵里(あれからして私とルビィは何事もなくY.O.L.Oへ入った。曜とことりには連絡したけど曜とことりはどうやらその四人目と五人目のアンドロイドには会ってないらしくてますます謎は深まるばかり)

絵里(それに私たちのいるところにはアンドロイドどころか人すらいない、意味不明な機械が並ぶだけのこの空間で人一人いない静まり返った雰囲気は実に不気味だった)
693 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 20:24:21.01 ID:dIWqa2t10
ルビィ「…こういう機械も破壊しておいた方がいいんじゃないかな……」

絵里「確かに……」

絵里「じゃあ破壊しときましょうか」

ルビィ「うん、そうしよっか」

絵里(私は曜やことりとは違って爆発物を用意してない。もちろんグレネードはあるんだけどこれは用途がまた違う)

絵里(それにこの辺の機械だけ壊すって言うなら爆発物に頼らなくてもハンドガン一丁で充分。そう考えた私は謎多き機械にハンドガンの銃口を向けた)


「お姉ちゃん?」


絵里「!!」

ルビィ「!」

絵里(そんな時声がした。後ろ——すぐ後ろから聞こえるこの声はどこかで聞いたことがある、随分と久しぶりで心地の良い声。この場所で声が聞こえるっていうのは不気味かもだけど、私にとっては心地の良い声だった)

絵里(その声の人物は————)
694 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 20:26:18.90 ID:dIWqa2t10


絵里「亜里沙!?」


亜里沙「お姉ちゃん!!」

絵里(そこには私の妹である亜里沙がいた。数か月ぶりに見た私の妹は相変わらず可愛くて、家でもよく見る私服姿だった)


亜里沙「お姉ちゃーん!」ダッ

絵里「亜里沙ー!」ダッ


絵里(感動的ではないけど、この再開を嬉しくないと思う私と亜里沙はいない。お互いがお互いの方向へ走り出し、私は一秒でも早く亜里沙の肌に触れたかった)

ルビィ「…!」ダッ


亜里沙「お姉ちゃん会いたかったよー!」

絵里「私もよ亜里沙っ!」

695 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/05(土) 20:30:19.66 ID:dIWqa2t10


ルビィ「させないっ!」


ガキンッ!


絵里「っ!?」

絵里(私と亜里沙が抱き合う直前、それは当然横から来たルビィが私たちの間に入り亜里沙とルビィの間で甲高い音が鳴った)


ギギギギ……


ルビィ「…その刃物は何?」

亜里沙「………」

絵里「えっ…え?ど、どういうこと…?」

絵里(突然の状況に頭がついていけてなくて混乱を起こす一方で、少し経つとルビィの持つ刃物と亜里沙が持ってる刃物が軋んでるのが確認出来た)
696 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/05(土) 20:33:06.54 ID:dIWqa2t10
ルビィ「…ルビィの目が正しいならその刃物は明らかに絵里さんに対しての殺意が込められてたと思うんだけど」

亜里沙「………」

絵里「亜里沙…?一体どういうことなの…?」


絵里「! ルビィ後ろへ跳躍して!」


ルビィ「っ! うんっ!」シュツ


バァン!


「あちゃー外しちゃったかー」

絵里(目の前の出来事が私の頭の中で段々と整理されていき、その答えが見えると私の心臓が大きく悲鳴を上げだした。そんな中で見えた射線はルビィの頭を貫いてた)


ルビィ「くっ……」


絵里(私の警告が後少しでも遅かったらルビィは死んでただろう、逃げ遅れたルビィの可愛らしいツインテールの一つが銃弾によってほどけた)
697 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/05(土) 20:35:52.13 ID:dIWqa2t10
絵里「…亜里沙、説明しなさい。これはどういうこと?」

亜里沙「………」


亜里沙「はーあっこれでお姉ちゃんはやれると思ったんだけどなー」


絵里「…!」

絵里(私の妹である亜里沙から出る言葉は絶望への一言だった。無邪気な亜里沙が今とんでもないことを口にした、それを聞くだけで全身が震えて吐き気がする)

ルビィ「…やっぱりあなたたちなんだ」


ルビィ「ここの四人目と五人目のアンドロイドって」


亜里沙「そう、でも普段はこんなところこないよ、来たくないもん」

亜里沙「でも最近は色々ありすぎて私たちはいつもここで寝泊まりだったよ」

絵里「………」

ルビィ「絵里さんしっかりして…」

絵里「え、ええ……」
698 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 20:38:03.20 ID:dIWqa2t10
亜里沙「安心してお姉ちゃん、亜里沙とお姉ちゃんは姉妹————殺すことはしないよ」


亜里沙「半殺しで済むから」


絵里「………」クラッ

ルビィ「絵里さんしっかり!」

絵里(これは夢よ、夢なのよ)

絵里(そう信じたくて目を瞑っても世界は変わらない。戦いが辛いことばかりなのは知ってる、けどこんなの聞いてない)


絵里(私が最も信頼してる存在から裏切れた)


絵里(その真実が——事実が辛すぎて目眩が止まらない。私の本能がこの現実から逃げようとしてる)
699 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 20:39:30.47 ID:dIWqa2t10
「…私、あまり一方的な戦いは好きじゃないんだけど」

亜里沙「いいよ、お姉ちゃんは亜里沙がやるからあの人をやってよ——」


亜里沙「————雪穂」


雪穂「分かってるって、すぐに片付け…られればいいんだけどね」

ルビィ「…あなたは相手を舐めてかからないんだね」

雪穂「真剣勝負が好きだからね、下に見るなんてダーティーなことはしないよ」
700 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 20:40:48.09 ID:dIWqa2t10
絵里「……ルビィ」

ルビィ「! 絵里さん大丈夫?」

絵里「…ええ、なんとか。ルビィは亜里沙じゃないほうをやって。私は亜里沙をなんとかするから」

ルビィ「分かったよ、でもみねうちとか考えてるんだったらそれはやめたほうがいいよ…そんな余裕は絶対にないよ」

絵里「……覚悟してるつもりだわ」

絵里(現実はイヤでも変わらない)

絵里(私がレジスタンスとなってから今に至るまでいっぱい現実から逃げたくなる出来事があった、それと比較すればこの一件もその一つに過ぎない。いくら現実がイヤになってもそのまま一方的に殺される運命を辿る私はどこにもいない)


絵里(このアンドロイド隔離都市東京を変えたくて私は動いてるのよ、何があったって死ぬまでは挫けちゃいけない)


絵里(…峰打ちなんて甘いことを考えてるわけじゃない、けど亜里沙と戦うのにまだ覚悟は足りてない。だけどここまで来て絶望には負けたくない)

701 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 20:43:10.56 ID:dIWqa2t10


亜里沙「…行くよ、お姉ちゃん」


絵里「……ええそうよね、行かなくちゃよね」

絵里(…結局私と亜里沙の関係も銃弾で語るのね。いくら私の敵とはいえ亜里沙は私の妹、そんな亜里沙も私と戦う事には覚悟と躊躇があるように見えた)

絵里(でも、お互い譲れない思いがある。それに従って今ここで最悪の戦いが始まるのでしょう)

絵里「………」


カチャッ


絵里(覚悟を決めた私はスコーピオンEVOを手に持った)

絵里(横を見れば既にルビィと雪穂って子が戦っててこちらも数秒後には戦いが始まるらしい)

702 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 20:44:01.80 ID:dIWqa2t10


千歌『果南ちゃん! っあ……』

善子『…ぁっ!?』

果南『あ…れっ……?』


絵里(…私の始めた戦争でもう三人死んだ。だからその死を無駄にはしたくない)

絵里(元はといえば私は亜里沙の姉————姉である私が妹に負けるわけにはいかない)

絵里(可愛い姿だけど、強さはきっと並外れたモノだ。だからそう——)


絵里「————お手並み拝見と行きましょうか」


絵里(そう言い鳴らす始まりの合図。スコーピオンのトリガーを引けば亜里沙は跳躍をするんだけど穂乃果や果南ほど跳躍は鋭くないしその時の亜里沙の顔は苦しそうで他の新型ほど余裕が感じられなかった)
703 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 20:46:55.63 ID:dIWqa2t10
絵里「リロード! ルビィ!」


ルビィ「任せてっ!」ドオーン!


亜里沙「くっ…」シュツ

絵里(ルビィに宿った才能は全部で四つあった)

絵里(一つは射撃術、一つは空間認識能力、一つは近接戦闘センス)


雪穂「私と戦ってる合間に…!しかもスナイパーで…」


ルビィ「出し惜しみなんて器用なことルビィ出来ないから」


絵里(そして最後が親譲りの判断力よ)


絵里(黒澤家は銃が主流の現代でも剣術を嗜むところよ、私は武道をよく知らないから何とも言えないのだけど武士は迷わないらしい)

絵里(それは死ぬことも厭わぬ覚悟を持った行動を常に行うという意味であり、ルビィは私の声を聞き多少の無理をしてでも亜里沙へスナイパーの発砲を行った。ルビィの百発百中の腕前とこの肯定まっしらぐらな判断力は相性が良すぎる)

絵里(…正直、私たちレジスタンスの中で一番強いのは穂乃果でもなければ曜でもなく)


絵里(ルビィなんだと思う)


絵里(…少なくとも私はルビィを敵に回したら勝てる自信がないわ)

704 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 20:48:59.40 ID:dIWqa2t10
絵里「はっ!」バリバリバリバリ!

亜里沙「んっ!きつっ…!」


雪穂「亜里沙!」


亜里沙「きっ…」シュッ

絵里(物陰やアンドロイド特有の瞬発力でスコーピオンの弾を回避するけど、それでも私の放つ銃弾は亜里沙の皮膚を剥いでいく。腿、腕、横っ腹、頬と様々なところから赤い涙が出てきているのが確認出来た)

亜里沙「亜里沙だって負けてないよお姉ちゃん!」ドドドド!

絵里「ええっ!でも曜や凛と比べたらまだまだね亜里沙っ!」ダッ

絵里(向かう射線は随分と分かりやすいもので、私の頭に一直線だった。亜里沙がトリガーを引けば私に銃弾が飛んでくるんだけどそれも変則撃ちでもなければ偏差撃ちでもないただ動く私へ向けての射撃)


絵里「…?」


絵里(…あれ?私今Y.O.L.Oを守るアンドロイドと戦ってるのよね?)

絵里(なんだろう…亜里沙の行動があまりにも普通すぎて何かおかしく感じてしまう)
705 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/05(土) 20:51:49.41 ID:dIWqa2t10


絵里「接近戦はどう?亜里沙!」ブンッ!

亜里沙「全然いけるよ!」シュッ


絵里(腰にかけてたマチェットを横に振れば亜里沙は姿勢を低くして回避する、そして次に亜里沙がやるのは私のお腹に向かっての掌底だった)


絵里「!!」


絵里(…なんだろう、この既視感。どこかで見たことある気がする)

絵里(なんでか分からないけど、でもこれは気のせいじゃない。絶対にどこかで見たことある)


絵里「ふっ」


絵里(…まぁ何はともあれ私はその掌底をヒット直前に、両手で手首を掴むことで止めた)
706 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 20:52:51.11 ID:dIWqa2t10


絵里「随分と分かりやすいのね!」ドカッ!


亜里沙「がっ…!」

絵里(そしてお返しとして間髪入れずにお腹に向かって飛び膝蹴りで亜里沙を後方へ吹っ飛ばした)

亜里沙「うっ…げほっ…」

絵里「………」

絵里(跳ね飛ばされ機械に叩きつけられだらしなく涎を垂らす亜里沙を見ると心が痛くなる。愛すべき妹を痛めつけてるというのだからとてもそこで普通にしてはいられない)

絵里「…亜里沙?もうやめにしない?きっと他の道があるはずよ、私と亜里沙は戦うべきじゃないでしょ?」

亜里沙「おね…げほっ……お姉ちゃんが降伏してくれるならそうだね、戦うべきじゃない」

絵里「……それは無理ね」

亜里沙「ならこの話は無しだね、亜里沙がY.O.L.Oを守るアンドロイドで、お姉ちゃんがそれを倒すべく動いてるなら亜里沙とお姉ちゃんは一生敵のままだよ」

絵里「………」
707 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 20:53:52.77 ID:dIWqa2t10
亜里沙「にしてもお姉ちゃんは強いね、亜里沙びっくりしちゃったよ」

亜里沙「亜里沙一応戦闘型アンドロイドなのに押され気味でどうしようって今必死に考えてるんだよ?」ウーン

絵里「…!」

絵里(…そうだ、亜里沙は戦闘型アンドロイド。なのにどうして動きがこんなにも鈍いの?)

絵里(確かに戦闘型アンドロイドは強さに個体差がある、けどそれ以前にこれじゃあY.O.L.Oを守るどころか自分を守ることすらできない)

絵里(それに亜里沙は私より後に生まれた私より性能の良いアンドロイド、なのになんでこうも私が一方的に勝ってるの?)


絵里「…いいわ、なら再開しましょう。待たせてたら向こうでやってるルビィに申し訳ないからね!」ダッ


絵里(こうして会話をして亜里沙の体力が回復するのはよくない、決めるなら即行——これに限る。だってその方が亜里沙が苦しむ姿を見ずに済む)
708 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 20:55:19.51 ID:dIWqa2t10


タッタッタッタッ


絵里(走りながら弾倉に約20発残ったスコーピオンの銃弾を放つ、連射するとすぐに弾がきれるけどその短い時間で近づければ何の問題もない。私の中で攻めるなら近接と亜里沙への戦い方が決まってるからね)

絵里「はっ!」

絵里(亜里沙へ近づいた私は上段回し蹴りで一気にノックアウトを狙った)


亜里沙「それくらいなら亜里沙も躱せるよ!」

絵里「ええ、そうよね」


絵里「だからこそそれは読めてたわ」


絵里(私の上段蹴りに対して亜里沙はしゃがみの一手、だけどそんなよく見る回避の仕方をするんならこっちにだって対処法がある)


絵里「こっちは躱せるかしらッ!!」


絵里(躱された直後に後ろ回し蹴り——亜里沙がしゃがんだ直後だったから狙わずとも私の蹴りは亜里沙の頭に当たる)
709 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 20:56:55.20 ID:dIWqa2t10


亜里沙「ッ…!」クラッ


絵里(多少の躊躇はあったけどそれでも強烈だった私の蹴りは亜里沙に脳震盪を与えた。戦闘型アンドロイドの戦闘センスとも言われるモノは頭に蹴りを食らっても切り返しの早さと絶妙なバランス感覚で倒れないけど、脳震盪による怯みは避けれない)

絵里(片手で頭を押さえる亜里沙を見れば勝利はほぼ確実だった、次に私はマチェットを取り出して心臓目掛けてマチェットを突き出した)


亜里沙「んくっ…!」シュッ


絵里「!」

絵里(でも亜里沙は苦し紛れに横方向への跳躍を行い私の突き刺しを躱し、頭を押さえながらもう片方の手に持ってたサブマシンガンのトリガーを引いた)

絵里「浅いわね…」

絵里(しかし思わず言葉に出してしまうほど亜里沙の射撃は拙かった、脳震盪で麻痺してるのは分かる。けどいくらなんでも動かなくて大丈夫っていうのは少しまずい気がする)

絵里「…もういいわ」

絵里(これ以上亜里沙の苦しむ姿を見たくない。だからもう楽にしてあげようと思った…いや、峰打ちで済ませようと思った。これくらいの相手なら峰打ちだって可能なはず、だからスコーピオンのリロードをして亜里沙に向かって走ればばらつく射線が飛んでくるけどほとんどが回避する必要のない射線でその射線をかいくぐりながらスコーピオンで亜里沙の足元に向かって発砲した)
710 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 20:57:57.33 ID:dIWqa2t10


亜里沙「んっ…」シュツ


絵里「! また……」

絵里(そろそろ脳震盪の影響も軽くはなると思うんだけど、それでもまだ目眩とか起こるはず、それなのにスコーピオンの弾をなんとか回避して機械の物陰に隠れてみせた。やけに粘るわね…)


絵里「隠れても無駄よ!」

亜里沙「そんなの分かってる!」


絵里(でも隠れて場が膠着するほど緊張感はない、あるのはむしろ緊張感を切り裂く戦いへのボルテージだ。その熱に巻かれた私は隠れた亜里沙の元へ突っ走って跳躍と同時に決め撃ちをした)


亜里沙「えいっ!」ポイッ!


絵里「甘いっ!」


ピカーン!


絵里「くっ…」

絵里(私と亜里沙が目が合う頃に飛んできたスタングレネードは私のスコーピオンで跳ね飛ばした、けど着弾と同時に強い閃光を辺りにばらまき一時的に私と亜里沙の動きを止めた)
711 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 21:00:01.34 ID:dIWqa2t10


タッタッタッタッ


亜里沙「そこだ!」


絵里「っ!?亜里沙っ!?」

亜里沙「亜里沙だってやれば出来るんだからねッ!」

絵里(だけど閃光の中で私の元へ突っ走ってくる亜里沙に焦らずにはいられない、足を止めるほど眩い閃光の中でどうやってここまで来たのか確かめるために腕と腕の隙間から前を見れば亜里沙は目を瞑ってた。だから音だけでここまで来たんだろう)


亜里沙「まずは一撃っ!」ドカッ!


絵里「っ……けはっ…」

絵里(ゼロ距離で姿を現した亜里沙を前に回避の術はなくて、未だに私の視界を奪う閃光に腕を奪われ無防備な私のお腹に入る強烈なパンチはとても可愛い亜里沙からは想像できない威力だった)

絵里(しかしそれで倒れてなんかいられない、痛いなんて感じていれば次の瞬間には上段回し蹴りが飛んできてそれを回避するためにしゃがめば追撃に後ろ回し蹴りが飛んできた)
712 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 21:02:03.45 ID:dIWqa2t10


絵里「ッ…!!」


亜里沙「今度は亜里沙のターンだね!」


絵里(…なんだろう、この違和感。亜里沙の蹴りは私の頬にヒットし頭にダメージが入りさっきの亜里沙と同じように脳震盪を起こした。けどそんな中で感じるこの何とも言い難い感覚は何?)

絵里(ここまで戦って亜里沙はそこまで強くないと思った、けど後一歩——殺すまでがなぜか遠く感じる。それは殺すことへの躊躇いとかではなく後一歩のところで亜里沙が謎の粘りを見せてくるから中々仕留められない)

絵里(それに違和感はそれだけじゃない……でも、その違和感が何なのかが全く分からない。亜里沙と戦ってると何かがおかしいと感じる、でもその正体がずっと掴めないままでいる)


亜里沙「亜里沙は耐えたんだもん!お姉ちゃんも耐えてよね!」


亜里沙「雪穂!手伝って!」

雪穂「はいはいっ」バンッ!


絵里「くっ…!」シュッ


絵里(亜里沙とは別に雪穂から飛んでくる銃弾を苦し紛れに躱した、けどここで私はイヤな感覚を覚える)
713 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 21:03:02.33 ID:dIWqa2t10
絵里「あっ…」ズコッ

絵里(跳躍の着地際で酷い目眩が起こり私のバランス感覚が決壊した。その結果目眩と相まって立ってるのが困難になり這いつくばるような状態で私は倒れた)


亜里沙「チャンス!亜里沙のヒッサツの一撃をお見舞いしてあげる!」ダッ


絵里(すぐに起き上がろうとしながら後ろを振り返れば刃渡り十数センチのナイフを両手で持った亜里沙が宙に浮いていて死のタイミングが近いと察した)


絵里「…!!」


絵里(まただ、この違和感。なんなのかしら……)



凛『これは凛の全てを込めたお返しだよッ!!!』



絵里「…見たことある」


絵里「その攻撃は見たことあるッ!!」バンッ!


亜里沙「っ!?」

絵里(酷い既視感だった。記憶を辿った時に見える凛のあの時の姿と今の亜里沙の姿は酷似してる)

絵里(それ故に、私は一方的にはやられなかった。一回見たことがあったから対処法が分かった、ほとばしる違和感からの解放感が私の脳震盪を一瞬でかき消した。目眩が消えた瞬間定まる亜里沙への心臓のフォーカスに私は銃弾を放った)
714 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 21:06:38.53 ID:dIWqa2t10


亜里沙「っ!でもこれならっ!」ブンッ!


絵里「!!!」


果南『でも私相手じゃ“いつも通り”は通用しない!絵里には絶対に戦ってもらうよ!』ブンッ!


絵里「またっ…!」

絵里(まただ。宙に浮く亜里沙は咄嗟に体を捻り横方向へ高速回転し、空中で体が横方向へ動く慣性を作り銃弾を回避した、そしてその慣性を利用して横方向にもう一回転し、振り向きざまに既に持ってたナイフと回転途中腰にかけてた二本のナイフの計三本を指と指の間に挟んで投げてきた)

絵里(そうして感じるのは回避の意識ではなくて激しい既視感。ナイフを投げるまでの行動は違えど投げる時の姿は果南そのものでそんな姿を見れば飛んでくるナイフを見ずともナイフの場所が分かってしまう)


絵里「ならこうすればよかったのね果南!」


絵里(あの時は暗かったのもあって超すれすれで避けた、けど一度見た後だとこの時の対処法が自然と浮かんでくる、分かっている)

絵里(飛んでくる三本のナイフに対してする行動はこうよ)
715 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 21:08:44.44 ID:dIWqa2t10


絵里「銃に比べたら弾速が遅すぎるわね!」ズサー


亜里沙「なんでっ!?なんでそれを避けれるの!?」

絵里(スライディングで躱す、きっとあの時もこれで対処して発砲していれば私は勝っていただろう)

絵里(そしてそうと分かってるこの状況ではこのフィールドは私のモノ。スライディングと同時に残弾数10発のスコーピオンを発砲、そうすればどうなったかしら、その銃弾は亜里沙の胸を————)


亜里沙「まだ終わってない!」


絵里「それはっ…!」


絵里『まだ終わってないッ!』


絵里「………」

絵里(あの時の私と全く同じだった。丁度左手がハンドガンがかけてある左腰にあったのを良いことに、着地際で右へ跳躍し左方向へハンドガンを発砲。そうすれば“あの時”と同じように跳躍にブーストがかかりその後の着地は困難なものにはなるものの銃弾は避けれるモノへと変わる)
716 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 21:10:23.45 ID:dIWqa2t10
亜里沙「ぐっ…」

絵里(跳躍した後の展開も私と全く同じだ、力んだ顔が固まって背中から地面へと不時着した)

絵里「亜里沙…!」

亜里沙「はぁ…はぁ…はぁ…」

絵里「…一つ聞いてもいいかしら?」

絵里(しかし私は追撃にいかなかった、亜里沙が起き上がる時間にスコーピオンをリロードして亜里沙の息が落ち着くのを待った)

絵里(…それが舐めた行動だったとか慈悲だったとかそういうのではなかった)

絵里(死人に口なし————ここで知っておきたいことを知る為に私は今亜里沙に問う)

亜里沙「はぁ…はぁ………何?」

絵里「…今のハンドガンで跳躍にブーストをかける技術、どこかで学んだの?」

亜里沙「まさか、亜里沙のアドリブだよ。いくら相手が亜里沙より強いお姉ちゃんとはいえこんなすぐには終わりたくないもん、だから例え無理だとしても強引にやらなきゃお姉ちゃんには勝てないよ」

絵里「………」

亜里沙「それに諦めたくないんだよ、最後の最後まで抗ってカッコいいままでいたい」


亜里沙「一人の妹として、お姉ちゃんに負けたくない」


絵里「…そう」

絵里(…ダメ、何も分からない。何か掴めそうだったにも関わらず掴めたのは疑問符だけ、こんなことなら追撃すればよかった————なんて言うわけじゃないけどリターンが無さすぎるのは何とももったいない気持ちになる)
717 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 21:11:20.93 ID:dIWqa2t10
絵里「…ふぅ」

絵里(しかし切り替えは大事、こんな相手にチャンスを与えるような甘いことをしてるけどこれは遊びなんかじゃない、正真正銘の殺し合いなんだから次に放つのは私の言葉じゃなくて殺意のこもった銃弾でしょう)


ルビィ「隙ありっ!」バァン!


絵里(小休止する亜里沙に飛んでくるのはルビィのスナイパー弾、スナイパーにとって——いや、銃火器を持つ者にとって動かない相手はただの的。不意をつけばそれに反応してすぐさま対応しないといけなくなるので余分な体力を使わせることが出来るから当たっても当たらなくても出し得だったでしょうに)

絵里(…でも、次の瞬間は何かがおかしかった)


亜里沙「それはさっき見た!」シュッ


バンッ!


ルビィ「っ!?」シュッ

絵里「ルビィ!」


雪穂「ナイス亜里沙!私も負けてられないね!」ババババッ!


ルビィ「この子……!」ダッ

絵里(アンドロイドは射線が見えるとはいえ完全な不意打ちだった。それなのに亜里沙は回避と同時に射撃という完璧な対応をしてみせた)

絵里(これにはルビィもビックリしてた上に、回避もかなりギリギリだった。これは曜の跳躍ブーストの靴がなければおそらくルビィは死んでたでしょう)
718 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 21:12:05.62 ID:dIWqa2t10
絵里「…いや」

絵里(…違う、そんなことを言いたいわけじゃない)

絵里(今一番焦点を当てるべき点はどう考えても————)


亜里沙『それはさっき見た!』


絵里(——亜里沙のその驚異的な対応力だろう)

絵里(見たかも怪しいくらいの攻撃を一回で回避し、攻撃に転じるまでした。最初こそ予想を大きく下回る実力に浅い考えが出てきてたけどこの潜在的な力には少し目を配る必要がありそうね…)


絵里『その攻撃は見たことあるッ!!』


絵里「……あれ?」

絵里(待って、違う。見たことある、その亜里沙の様さえも見たことがある)

絵里(一度見た行動を次見た時には完璧な対応で対処するその様……)
719 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/05(土) 21:13:08.52 ID:dIWqa2t10


亜里沙『今度は亜里沙のターンだね!』


絵里(それにあの亜里沙の上段回し蹴りからの後ろ回し蹴りは私が最初にやった攻撃……)


絵里『こっちは躱せるかしらッ!!』


絵里(さっき私がやった攻撃パターンにそっくり……)

絵里「…!!」

亜里沙「…?」


絵里「A-0613…!!」


絵里(いや分かってた、亜里沙の識別コードくらいはね。でもそうよ、識別コードの英語の次の数字が0だとそれは誰かの後継機とされていて、その後継機のオリジナルは0の後のコードと花丸は言っていた)

絵里(それに従えばもちろん亜里沙は私の後継機になる、私のコードはF-613——亜里沙のコードはA-0613…それが何を意味するのかといえば)


絵里(私と亜里沙は同じなんだ、やることや特徴、そして性能が)

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