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絵里「例え偽物だとしても」

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402 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:27:59.01 ID:7iMNu1YO0
絵里「かよ……はなよ…」


花陽『だからまた今度、お会いした時はもっといっぱいお話しましょう♪』


絵里(あの人もすごい人なんだなって思う、こんな退廃的都市を彩る歌声とその煌きは威力そのものは無いけれど心を揺さぶる波状攻撃として今も広がり続けている)

絵里(今、花陽さんは何をしているのだろうか。あの時会ってから今に至るまで、花陽さんは立ち位置があやふやでイマイチ考えてることがよく分からない不思議な人だった)

絵里(ただ分かるのは、アイドルってだけ。なのになんであの人は私を助けたんだろうか)

曜「じゃあ行けるといいね、かよちゃんのライブに」

花丸「はいずら!」
403 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:31:21.48 ID:7iMNu1YO0
〜???

「おーい、おーいってばー!」

絵里「…ん、誰?」

凛「凛だよー星空凛」

絵里「…!?なんであなたがいるの!?」

凛「ん?なんでってどういうこと?」

絵里「だって死んだんじゃ…!」

凛「あははっ勝手に殺さないでよ」

絵里「え、え…?」

絵里(目が覚めれば外は暗く周りを見ればそこは真姫の別荘の寝室だった、そして隣を見れば死んだはずの凛がニッコリ笑顔で座ってた)
404 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/09/29(日) 22:33:06.57 ID:7iMNu1YO0
絵里「…なんであなたはここにいるの?」

凛「んー?なんでだろう、凛もよく分からないや」

絵里「…私とあなたは敵でしょう?」

凛「んーどうしてだろう、もう敵じゃない気がするんだよね」

絵里「…意味が分からないんだけど」

凛「こう…気持ちの問題なのかな!しかもほらっ今の凛は武器も何も持ってないし」

絵里「…じゃああなたは何でここに来たの?」

凛「だから言ってるじゃん、よく分からないって」

絵里「はぁ?」

絵里(戦う気はないみたいだけど、その分返す答えも理解させてくれないくらいに適当なものだった)

絵里(それに今思えば曜や果南はどこに行ったんだろう、曜と果南は私と一緒に寝てたはずなのに何故か今は姿が見えなかった)
405 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:34:21.57 ID:7iMNu1YO0
絵里「果南と曜はどこ?」

凛「知らないよ、凛はここにいるだけだもん」

絵里「いや意味分からないわよ…」

絵里「…とりあえず来て、リビングに行くわよ」

ギュッ

凛「…ダメ」

絵里「え?どうして?」

凛「…いや、よく分からないけどその扉は開けちゃダメな気がして」

絵里「何よそれ、とりあえず開けるわね?」

凛「…っだめ、やっぱりダメ」

絵里「どうしてよ、ここは安全よ?」

凛「そういう問題じゃない、凛もこう…なんて説明すればいいか分からないけどとにかくダメ!」

絵里「じゃあどうしろっていうのよ?このまま疑問を残して寝室にいるのは私いやだわ」

凛「…で、でも」

絵里「大丈夫だから、みんな優しいから仲良くしてくれるわ」
406 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:35:36.95 ID:7iMNu1YO0

ガチャッ


バリバリバリ!


絵里「っ!?」

絵里(暗い部屋の暗い扉を開ければその先から飛んでくる聞きなれた銃声と数えきれないほどの弾丸に心臓が止まりそうなほどに驚いた)

絵里「くっ…!」シュッ

絵里(幸いにも横へ跳躍すれば廊下から見て死角へと移れる、だからダメージは無かったけど安心したのも束の間、私は死を悟った)


絵里「…凛?」


絵里(…直立不動の凛に呼びかけた、けど何も返事は無かった)

凛「…ぁ」

バタッ


絵里「! 凛!」タッ


絵里(……そう、凛の死を悟った。膝から倒れる凛を抱きかかえると私のお腹に伝ってくる大量の血は焼けてしまいそうなほどに熱かった)
407 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:36:44.08 ID:7iMNu1YO0


絵里「ッ!? わぁあああっ!?」


絵里(そうして凛から離れて凛のお腹を見れば、服越しだろうとすぐ分かるほど無惨に貫かれたお腹の穴が私の恐怖を煽った)

絵里(お腹の穴からぽろっと出てくるほっそい弾丸は吐き気を催し、このお腹に空いた無数の穴とその死体はとてもじゃないけど見てたものじゃなかった)

絵里「うっ…ぷっ……」


スクッ


絵里「!」

絵里(お腹から沸き上がってくるものを抑えようとしてると後ろから聞こえる服と銃が擦れる音)


絵里「あなた…あッ!?」


絵里(振り返ればもうすぐそばにまで近づいたマチェットを持ったもう一人の私がいた)

絵里(この距離からして避けるのはほぼ不可能で、私は死あるのみだった)
408 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:38:26.31 ID:7iMNu1YO0
絵里「ぁ…!」

絵里(振り返ってそして死に際に、目に光を通していないであろう濁った瞳に理解などとうに無さそうな気味の悪い無表情、私だけど私じゃないそんな姿をしたこのもう一人を見たら出る言葉も凍ってしまうでしょう?)


絵里(私の最期は、あまりにもホラーで最悪な最期だった)



絵里「わああああああぁぁぁぁあぁあぁああ!?」バサッ



曜「うわぁ!?何々!?」バサッ

果南「何っ!?敵!?」シュッ

絵里「はぁ…はぁ…はぁ……」

果南「ど、どうしたのさ絵里…」

絵里「ご、ごめん起こしちゃったかしら…」

曜「う、うん…それよりどうしたの?」

絵里「…夢…?を見たのかしら…?」

果南「なんで疑問形?」

絵里「いや…ごめんなさい。多分夢現なんだと思うわ、ちょっと冷静になれないかも…」

絵里(叫べばそこはあの時と同じ寝室、横には果南も曜もいるし多分ここが現実であの凛のいた世界が夢なんだと思う)
409 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:39:12.30 ID:7iMNu1YO0
曜「それで何を見たの?」

絵里「それは……」

絵里「………」

絵里(喋ることに何が邪魔をしたのかしら、意識することもない頭のどこかでくだらないことって思ってしまったのかしら)

絵里(いくら内容が奇妙とはいえたかが夢、現実とはかけ離れた空想の世界の話をさも現実かのように語るのは確かにくだらないしバカバカしい)

絵里(だからこの口から、その夢が出ることは無かった)

果南「…?何?何を見たの?」

絵里「……いや、なんでもない」

曜「えぇ…あんな叫び声まで出してそれはないよ絵里さん…」

果南「そうだよ!」
410 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:39:39.82 ID:7iMNu1YO0
絵里「…でもたかが夢でしょ?別になんでもない話じゃない」

果南「そういう問題じゃないよ、私はただ単純に絵里の夢の話が聞きたいだけ」

曜「そうそう、私も同じ」

絵里「………」

絵里(それを言うのをくだらないと私は思っているのに……しかもあの夢をどう説明すればいい?)

絵里(短い時間だったけど話せばきっと長くなる、あんな僅かな時間でどれだけの情報が交差としたというのかしら。あの夢に追及をしても何も無いと私は思う)

絵里(だから私はただの悪夢で終わらせることにした)




果南「ぶー……」

曜「んー……」


善子「…何?あれは」

ことり「いや、私は何も…」

花丸「何かあったんですか?」

絵里「あはは…私が原因かしら…」
411 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:40:32.15 ID:7iMNu1YO0
善子「何やったの?」

絵里「いや…ちょっとね…」

善子「…?」

果南「あー!モヤモヤする!絵里!いい加減教えてよ!」

絵里「いやだから何でもないって…」

曜「その一点張りが私たちのモヤモヤを加速させるの!」

ことり「え、え?意味が分からないんだけど…」

善子「誰か堕天使ヨハネに説明をよこしたまえ…!」

果南「絵里が昨日見た夢を教えてくれないんだよ」

ことり「昨日見た夢?どうして急にそんな」

曜「絵里さん、悲鳴をあげて起き上がったんだよ。それで私も果南ちゃんも起きちゃって」

果南「そうそう、なのに夢の内容を教えてくれないんだよ!?」
412 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:41:11.18 ID:7iMNu1YO0


善子「…くだらな」


果南「くない!夜中に突然悲鳴をあげて起き上がるなんてどんな夢を見たか気になるでしょ!?」

曜「そうだ!心を持つ者の性だよこれは!」

ことり「そこまで大げさに言う?」

花丸「でも確かに気になるところもあるずら」

曜「もちろんだよ!」

ことり「絵里ちゃんはどうしてそこまで口を割らないの?ここまで引っ張るんだったら言ってあげればいいじゃん」

絵里「いや…別に……」

ことり「んー…?」

善子「言いたくない理由があるのよ、察しさない」

果南「知らないモノがあるのなら知りたくなるのは普通でしょ?つまりはそういうことなんだよ」

善子「だからそこは相手の気持ちを尊重しなさいよ…」

曜「んー…どっちもどっちだね」
413 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:42:12.30 ID:7iMNu1YO0
ことり「…まぁ絵里ちゃんも訳ありみたいだし我慢した方がいいんじゃない?」

果南「むー……」

曜「…まぁいいよ、そうだね。相手の気持ちも尊重しないとだよね」

絵里「え、ええごめんなさいね」

曜「いいよ、でも言ってくれる時があったら言ってね!」

絵里「ええもちろんよ」

果南「……仕方ないね、言うことは曜と同じ。言ってくれる時があったら言ってね?」

絵里「ええ」

絵里(次の日の朝、機嫌を悪くして起きる二人だったけどなんとか腹をくくってくれたみたいで助かったわ)

絵里(その後は朝ごはんを作って食べるのだけど、ことりも果南もだいぶ動けるようになったみたいでことりは自ら料理に参加するし果南は皿を運んでくれたりで戦線の復帰も見込めそうだった)
414 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:43:54.75 ID:7iMNu1YO0


ことかな「おぉ〜!」


善子「…何してんの?」

果南「漫画を見てるんだよ、善子も見る?」

善子「いや…なんか表紙からして絶対私に合ってないやつだからいい」

曜「表紙?あぁあれは恋愛モノだね」

花丸「恋愛モノならいいと思いますけど…」

絵里「善子はバトルモノが好きなのよ」

花丸「そうなんですか」

ことり「この漫画ヒロインが複数いるからドキドキしちゃって…」

果南「ことりも戦いじゃ鬼みたいな顔してるけどなんだかんだ乙女だよね」クスクス


ことり「あ?」


果南「鬼だ…」

曜「あははは……にしてもここの書物はすごいよね、私もちらっと覗いたけど図書館じゃんあれ」

花丸「あれは学校の図書室より大きかったずら…」
415 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:47:32.29 ID:7iMNu1YO0
絵里「ここの別荘は山奥だから山奥でも楽しめるようにって真姫が本を蓄えた場所なの、その分家の面積も増えたしある意味で言えば真姫の図書館、或いは図書室かもね」

曜「へぇ…真姫さんってすごいんだね…」

花丸「真姫さんってそんなすごい人だったんですか…」

絵里「ええ、超お金持ちよ」

善子「そして絵里のパートナーよ」

絵里「あはは…どうかしらね…」

曜「ん?どっち?」

絵里「私も真姫もそのつもりはないけど、そう呼ばれてるだけなのよ」

善子「授業と短い休み時間以外はほぼ全部の時間一緒にいるからね」

ことり「なんで?」

絵里「んー…まぁ昔色々あってね」

果南「はい始まったよ、絵里の適当誤魔化し芸」

絵里「何よそれ…」

果南「絵里は人に言えないことがありすぎるんだよ、抱えないで言ってよ?私たち親友でしょ?」

絵里「んーまぁ確かに否定は出来ないけど…いいの、これは胸の内にしまっておきたいから」

果南「えー…」
416 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:49:25.52 ID:7iMNu1YO0
ことり「…なんか思ってた以上に複雑そうだね、絵里ちゃんの過去って」

絵里「まぁ色々あるのよ」

花丸「ずらっ」

果南「んあー!もう!なんか隠してることがあるって分かるとモヤモヤが止まらない!ちょっと射撃場で乱射してくる!」タッタッタッ

曜「あ、ちょっと弾撃ち過ぎないでね?いくらここに貯蓄されてるとはいえ有限なんだから」

果南「分かってるー!」

ことり「じゃあ私外でちょっと体を動かしてくるよ」

善子「体を動かす?」

ことり「私は中国武術の心得があるから、型通りに技を繰り出したりで体を慣らすんだよ」

曜「そうだよね、初めて見た時からキレッキレの身のこなしに惚れ惚れしちゃったけどやっぱり中国武術だよねあれは」

ことり「そうだよ」

花丸「ことりさんの近接戦法は希ちゃんもマークしてて、あそこまで丁寧で綺麗な動きが出来るアンドロイド、ましてや人間でさえ見たことがないってすごい嬉しそうに言ってたのを覚えてるずら」

花丸「でも不思議ずら、どうして中国武術なの?」

絵里「そういえばそうね」

善子「確かにね、近接といえば私や絵里みたいな特に特化したものがなくて、ナイフでも持たない限り近接だけじゃ相手を殺めることのないCQCが基本なんだけどことりのそれは少し違うわね」
417 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:50:42.59 ID:7iMNu1YO0
ことり「私、力がないから柔道みたいな投げたり固めたりみたいな近接は全然扱えなくてましてや絵里ちゃんや善子ちゃんみたいなシンプルなのも私には厳しかった」

絵里「えっ……」

絵里(ことりの飛び膝蹴りをもろに受けた私には力がないとか厳しいとか言われても正直困惑した)

ことり「だから中国武術っていう工夫されたモノを心得たんだよ、特定の構えをすることで力が手に集中して、仮にそれが胸にでも当たれば心臓を止めることも出来る殺人拳法へと変わるの」

曜「へー…恐ろしいねそれは」

絵里「ええ…そんな食らわなくてよかったわ…」

ことり「…まぁそんなところだよ」

花丸「そっか、理解したずら」

ことり「じゃあ私は行くね」

曜「あ、じゃあ私もことりちゃんのところ行ってもいいかな?ことりちゃんの公式の型が見れるのなら見に行かないわけがないからね!」

ことり「いいけど邪魔しないでね?」

曜「了解であります!」ビシッ
418 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:51:22.48 ID:7iMNu1YO0

スタスタスタ

絵里「…行っちゃった」

善子「まぁ動けるようになった果南とことりは動きたいでしょうに」

花丸「あ、じゃあマルはあの本がいっぱいの部屋に行ってきてもいいですか?もしかしたら面白い本が見つかるかもしれないので…」

絵里「ええ、行ってらっしゃい」

花丸「はいずらっ!」

スタスタスタ

善子「……みんなやりたいことがあるのね」

絵里「…善子はないの?」

善子「驚くほどにないわね」
419 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:52:28.87 ID:7iMNu1YO0
絵里「ゲームは?」

善子「一人でやっても面白くないわ」

絵里「漫画は?」

善子「見たいのがない」

絵里「リハビリは?」

善子「横っ腹撃たれただけの私にリハビリもクソもないわよ」

絵里「………」

善子「はぁ…暇ね」

絵里「私たちがレジスタンスである以上は娯楽にも行けないしね」

善子「堕天使になって空を飛びたいわ…」

絵里「堕天使は飛べないんじゃないの?」

善子「そんな決まりはどこにもないわ」

絵里「…そうね」

絵里(蒸し暑い夏の朝、クーラーのかかった部屋で二人ソファでだらけるだけだった)
420 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:53:06.85 ID:7iMNu1YO0
善子「……羨ましいわ」

絵里「何がよ?」

善子「あの鳥よ」

絵里「青いわね、あの鳥」

善子「幸せを運んでくれてるのかしら」

絵里「そうだといいけど」

善子「…あの鳥のように自由に未来を羽ばたきたいわ」

絵里「……それは誰しも望むことよ、そして誰しもが諦める届かない存在」

絵里「前を向いた者は現実に押しつぶされて、後ろを向いた者は潔く夢を捨て去るのよ。そうやってこの都市のアンドロイドたちは記憶を失ってきた」

絵里「それはもはや理想郷ですらない、残された選択がNOかいいえかの違いなだけ」


絵里「…そうと分かってる私たちは一秒でも早くそこにはいかYESの選択を創らなきゃいけないのよ」


善子「…ええ、その通りね」
421 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 22:54:08.43 ID:7iMNu1YO0
絵里「………」

善子「………」


ミンミンミンミンミン ジリジリジリジリ


絵里(蝉が沈黙を嫌って辺りを漂う何とも言えない空気に唄を混ぜ始めた。元はといえば始める気の無かったこの戦争も、何故か今では自分から始めた気になってしまっているくらいに心が戦いで沁み渡っていた)


絵里(造られた命は果たして命であったのか)


絵里(きっと世の中がもっと平等であったら私もこんなこと思わずに済んだのに、どうして私はこんなことを考えてるのかしら)

絵里「………」

絵里(鞠莉————どうしてあなたは私たちを生んだの?私という心を持った存在を創れたというのならあなたにも私たちを見下す意味があるのでしょう?)

絵里(…分からないわね、鞠莉の考えてることが)


絵里(…いや、鞠莉の全てが分からない)

422 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 23:00:47.08 ID:7iMNu1YO0
善子「…まだ気にしてるの?」

絵里「何の話?」

善子「とぼけないでよ、真姫のことよ」

絵里「…お互い様でしょ」

善子「ルビィは……仕方ないじゃない、真姫とは訳が違うんだから」

絵里「…そうね、真姫がルビィと同じであったらきっと私も善子と同じだったと思う」

絵里(ルビィと真姫は違って、私と善子もまた違う存在だった。そしてそれはAかBかの平等的な違いではなくて1か10かの優劣のある違いだった)

善子「…絵里は真姫に何をした?」

絵里「命を助けたわ」

善子「…そう、だけど真姫にとってはそれ以上の事がいくつもあった」

善子「絵里が気にしてるのは、五年前のことでしょ?」

絵里「…ええ」
423 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 23:03:50.22 ID:7iMNu1YO0
善子「……アンドロイドには理解出来ない心よね」


善子「恋心って」


絵里「…ちょっと違うかしら、理解出来ないんじゃないわ、私たちはそもそも恋愛というモノを知らないの」

絵里「恋愛をしたことがないから恋愛がどういうモノか学習が出来ない、恋愛が見て学べるモノであるなら私たちは恋愛を知ってるはずだし、恋愛っていうのはきっと複雑なモノなんだと思う」

絵里「……だからこそ、あの時はこう返すしかなかったでしょ?」



絵里「私は真姫に興味がない、と」



善子「……うん、間違ってない。けど、言い方は間違ってる」

絵里「…それは今なら私でも思う、だから気にしてるのよ」

善子「気負う必要はないと思うわ、私たちは恋愛というモノを知らないんだもの。真姫に対して好きという感情が無ければ興味も沸くはずがない」
424 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 23:05:56.48 ID:7iMNu1YO0
絵里「……昔、小説で読んだわ。恋愛とは異なる性を持った者がし合う愛情表現の連なりと」

絵里「私と真姫は異なる性を持ってたのかしら?」

善子「……残念だけど同じ性ね、だって絵里は女なんだから」

絵里「…そうよね、私もそう思う」

善子「だからそういう視点から見ても絵里のその言葉は正しかった、女が女を好きになるのはもしかしたらあり得ないことではないのかもしれない」

善子「けど少なくとも男女がやるべき行為であるのは確かなはず、それはバトル漫画を見てる時に学んだから」

絵里「…ことりや果南が見てた恋愛モノも表紙は確か男女だったしね」

善子「ええ」

絵里「それから真姫、だいぶ控えめになったなって感じるの」

絵里「滅多に感情的にならないしいつも冷静でクールになったわ、それは劇的に変わったって程でもないけど変わったことを違和として感じることが出来るくらいには変わった」

絵里「だからもしかしたら…いやもしかしたらでもなく今でもあの時の事気にしてるんじゃないかしらって真姫と私の過去を問われると思うの」

絵里「私としては封印したい記憶だけど、それを封印したら真姫に失礼な気がしてね」

善子「…多分今でも気にしてると思うわ、だって過去は絶対に消えないモノなんだから」

絵里「…ええ、そうよね」
425 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 23:07:41.92 ID:7iMNu1YO0
絵里「………」

善子「………」


カタッ


絵里「!」

花丸「ずらっ…ごめんなさい、なんか重い話で入りづらくてどうしようって思って…」

絵里「そ、そう…ごめんなさいね、こんな話をしてて」

花丸「い、いえ…」

絵里「どうしてここ?真姫の図書室に行ったんじゃないの?」

花丸「あ、はい。行ったんですけどあそこで本を読むには少し暑すぎて…だからここで読もうかと思って…」

絵里「あぁなるほど…クーラーあるから勝手につけてもよかったのに」

花丸「い、いえマルにもちゃんと礼儀ってモノがありますから」

絵里「そ、そう」
426 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 23:08:27.65 ID:7iMNu1YO0
善子「…聞いたのよね?」

花丸「え?」

善子「絵里と真姫の過去のこと、聞いたのよね?」

花丸「えっ…あ、は、はい……」

絵里「…気にしないでね?でも、誰にも言わないであげて?」

花丸「も、もちろんずら!」

善子「いや、この際聞かれたことに関してはどうでもいいわ。私が花丸さんに言いたいのはただ一つ」


善子「同性に告白をする真姫をどう思うか、それよ」


善子「私たちはアンドロイド、でも花丸さんは人間よ」

善子「だから人間としての意見が聞きたい」

絵里「ちょ、ちょっと善子…」

花丸「い、いえ絵里さん、答えさせてください」

絵里「え、いいの?」

花丸「はいっ」
427 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 23:12:15.51 ID:7iMNu1YO0
善子「………」

花丸「マルは…別に良いと思う……ずら」

花丸「せつ菜ちゃんもこういう漫画は大好きだったし、真姫さんは間違ったことをしてるわけではないと思います」

花丸「だけど、珍しくて一般的に受け入れ難いモノであるのもまた事実」


花丸「女が女を好きになるというイレギュラーを弁えて絵里さんに告白した真姫さんは、振られたことで今までにないダメージを負った」


花丸「人間もアンドロイドと同じで学習する生き物だからその時の真姫さんはきっと初めて失恋を体験した」

花丸「だからどうやったってもその時の記憶を消すのは無理…だけど、絵里さんのしてることは間違ってはないずら」

花丸「好きでもない人に好きっていう行為こそ恋愛への冒涜だし、きっと絵里さんはそこで恋愛を知ることで狂うモノがいくつもあったと思うから…」

花丸「マルは…絵里さんのファンクラブの存在も知ってたからそのままの絵里さんでいてほしいずら」

花丸「あの希ちゃんでさえ…絵里さんの事を色々気にかけてたくらいなんだからそのカッコよさは維持するべきモノだと思う」

絵里「…そう、ありがとう」

花丸「このくらい全然ずら!」

絵里「……やっぱり真姫は気にしてるのね」

花丸「…はい、それはもう確実に」

絵里「…そう」
428 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 23:16:09.71 ID:7iMNu1YO0
善子「……何かしようと思ってる?」

絵里「いや、そういうことは考えてない」

絵里「ただ…曜と戦って帰ってきた時に電話で泣いてくれた時は嬉しかったなって……」

善子「嬉しい?」

絵里「さっきもいったけど、真姫は滅多に感情的にならないからそんな真姫が私の為に涙まで流してくれて嬉しくて…」

花丸「…素敵なことだと思う、真姫さんは昔の事を気にしながらも今の絵里さんの事を真摯に受け止めて真っ直ぐに立ち向かおうとしてる証拠ずら」

絵里「…なら、いいんだけどね」

花丸「きっと…ううん、もう確実にそうずら!」

絵里「……ふふふっありがとう」

花丸「えへへ…」

絵里(私と真姫の過去は複雑なモノだった)

絵里(五年前に突然告白をされて、私は少し考えてからあのような発言をして真姫を振った)

絵里(当時から今に至るまで恋愛というモノがよく分からなかったけど、私の稚拙な知識と考えでも同性である相手から告白をされるというのは何かがおかしいというのは分かっていた)

絵里(それにきっと告白っていうのはデリケートな問題なんだと思う、もしそうでないのならわざわざ人気のない帰り道なんて貧相でつまらない場所を告白の場所にするはずがない)

絵里(だからこれは真姫と私の問題だと思って胸の内に秘めておいた。最も善子には知られちゃったけどね)

絵里(でも、そんな過去を解き放てば花丸さんが答えに等しいモノをくれた。それを聞いて今まで頭にあったモヤモヤが消えた、そして気が楽になった)


絵里(だからもっと真姫の事を大切にしなきゃ、そう思うばかりだった)

429 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 23:24:14.97 ID:7iMNu1YO0
〜???

鞠莉「……とうとう動き出しちゃったのね、政府が」

海未「この際私たちは他のアンドロイドには目もくれずに絢瀬絵里たちを全力で殺しに行きます、いいですか?」

鞠莉「別に構わないわ」

鞠莉「いつかこうして大きな力を持ったアンドロイドたちが結託して反乱を起こすとは思ってたけど、案外早いものね」

海未「AIというものは常に人間の理解の範囲を超えている未知の存在です、人工的とはいえ心というモノを創れたのならそれはもはや天然と瓜二つの人の心なのです」

海未「アンドロイドがあなたの事を不服に思うのなら反乱を起こしても不思議ではないでしょう」

鞠莉「…ええ、そうね」
430 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 23:27:19.98 ID:7iMNu1YO0
鞠莉「ねえ、海未に聞きたいことがあるの」

海未「なんですか?」

鞠莉「希が死んだらしいけど、希の下にいた穂乃果とせつ菜を知らない?」

海未「知りませんけどおそらくは絢瀬絵里のところにいるでしょう」

海未「というか希をご存じで?」

鞠莉「ええ、だって希はアンドロイド制作においてアンドロイドの心を創った人なのよ?そりゃあ知ってるわよ」

海未「こ、心!?そんな人だったのですか!?」

鞠莉「希は心が広くて寛容だったわ、だからほぼ全てのアンドロイドの性格を優しく作った。だけどそこで勝手に生まれたのが猜疑心と敵愾心だった」

鞠莉「元々ね、私や希が当初作ったアンドロイドは平和を望むアンドロイドだったのよ。戦いは好きじゃないし運動神経もほとんどない臆病なアンドロイド、だけど優しくて人一倍感受性に長けた寛容なアンドロイド」


鞠莉「でも、結果は違った」


鞠莉「私から見てアンドロイドは人間と全く同じだけど、されどアンドロイドは造られた命。機械仕掛けのその体と心は勝手に進化を遂げて新たな感情を作り出した」

鞠莉「AIというアンドロイドなら誰しもが持ってるその心で自ら運動神経を作り上げて、気に入らない相手に対抗する手段を作り上げた」

鞠莉「ねぇ、なんで対アンドロイド特殊部隊が女しかいないか分かる?」

海未「…分かりませんね」
431 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/09/29(日) 23:30:51.94 ID:7iMNu1YO0
鞠莉「アンドロイドは頭が良すぎるのよ、何を見て学んだのかは知らないけどもう処分されてる初期型の獰猛なアンドロイドはハニートラップってやつで戦闘慣れした男共を何百人と殺害してったの」

海未「…!なるほどだから…!」

鞠莉「そう、だから対アンドロイド特殊部隊は女しかいないの」

鞠莉「…それからアンドロイドは私の意図しなかった方向へ発展していった」

海未「………」

鞠莉「ごめんなさい、話が逸れたわね」

海未「い、いえ」

鞠莉「話を戻すけど、穂乃果とせつ菜はいくら戦闘の鬼とはいえ腐っても業務用アンドロイドよ、それは主がいないと生きていけないアンドロイド」

鞠莉「しかしあの二人は全アンドロイドの中でもかなりプライドが高いアンドロイドよ、主が死んで、そう易々と主をとっかえるほどあの二人は薄情じゃないわ」

鞠莉「……だからあの二人は今フリーである可能性が高い」


鞠莉「私から提案するなら、今はそっちをspotした方が後々有利に立ち回れるかもしれないわ」


海未「ふむ…なるほど、分かりました。少し検討してみます」

432 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 23:32:35.99 ID:7iMNu1YO0
鞠莉「ええ、よろしくね」

海未「はい、では私はこれで」

ガチャッ


ドンッ!


鞠莉「……Fuck you」


鞠莉「…私はこんな結末を望んでアンドロイドを作ったわけじゃないのに」


鞠莉「………なんで死んだのよ」


鞠莉「希……」

433 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 23:39:17.91 ID:7iMNu1YO0
〜???

ツバサ「はーあっ疲れちゃった、あの殺し屋三人を殺そうかと思ったのにとんだ邪魔が入っちゃったわよ」

英玲奈「まったくだ、おまけに傷まで負わされて最悪だな」

ツバサ「あなたはいいわよねぇスナイパーだから遠くでチクチクやってるだけでいいんだから」


「いやいやそんな言い方はないと思うけどぉ」


英玲奈「よせっツバサ、あんじゅ、スナイパーの強みはアサルトライフルやマークスマンライフルでも対応の難しい距離から一方的に撃てることだ、むしろ傷を受けてないのは当然だ」

ツバサ「そんなの知ってるわよ、ただムカつくのよね」

あんじゅ「私が?」

ツバサ「違う、あの黒髪と青髪の女よ」

英玲奈「確か一人はダイヤ、と言っていたな」

あんじゅ「あぁあの清楚っぽい人?動きが特徴的よねー動くっていうよりかは舞ってると言った方がいいのかも」
434 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 23:41:05.04 ID:7iMNu1YO0
あんじゅ「…ってその二人がムカついてなんで私に当たるの?」

ツバサ「……ムカつくから」

あんじゅ「答えになってない…」

英玲奈「あのまま戦ってたら共倒れだったかもな、幸いにももう一つの戦場で大きな変化があったようで私たちはフリーになったから逃げさせてもらったが…」

ツバサ「私たちもあの殺し屋と結託して黒髪と青髪を殺した方がよかったかしら」

英玲奈「…合理的に考えるのでいえばそうかもしれないが、後々の事を考えるとそれは悪手だな」

あんじゅ「まぁ今更何言ったって変わるわけじゃないんだし次の事でも考えたら?」

ツバサ「……ええそうね、あの殺し屋はいずれ殺すとして他にも目的があるのよね。忘れてたわ」

英玲奈「おいおい…」

ツバサ「いいわ、この際私たちのやるべきことにあの黒髪と青髪へのお返しも兼ねましょうか」


バンッ!


英玲奈「…おい、その銃で花瓶を割るな。水も垂れてるし花が可哀想だろう」

ツバサ「はっむしり取られた花に可哀想もクソもないわよ、地から離れた時点で死んだも同然なんだから」

英玲奈「………」


ツバサ「次会った時があなたの最期よ」


ツバサ「……待ってなさい」ニタァ…
435 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 23:42:47.62 ID:7iMNu1YO0
〜深夜、別荘

ピコンッ♪ピコンッ♪

絵里「……ん」

絵里「誰…?」

絵里(深夜、それは突然として誰かからメールが送られてきた)

絵里「……! 亜里沙…!」

絵里(そしてそのメールの送り主は私の妹である亜里沙だった)

『お姉ちゃん、元気ですか?

お姉ちゃんの事情は分かっています、亜里沙は一人でも大丈夫だから余裕が出来た時に連絡ください。
何かお姉ちゃんの力になれることがあると思います』

絵里「亜里沙……」

絵里(流石は私の妹と言いたい)

絵里(あんな純粋無垢な子がこんな真面目な事を言ってくるのだから世の中怖いモノが減らないのよ、ここまで頼りになる妹を持って私が誇りに思う)

絵里「………」

ピッ

絵里(ただ、頼り甲斐があっても頼るとは言っていない)

絵里(亜里沙を危険な目にあわせるわけにはいかない、亜里沙は平和に暮らすべきなの。まだ戦いの味も知らない純白のままでいてほしいの)

絵里(だから私は静かにデバイスの電源を落とした)
436 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 23:43:27.26 ID:7iMNu1YO0


果南「メール、返さないの?」


絵里「っ!?って果南か…脅かさないでよ…」

果南「ごめんごめん、ガサガサ音が聞こえたもので」

絵里「どんだけ音に敏感なのよ…」

果南「あははっ寝込みに襲われるっていうのは王道パターンだからなんか警戒が解けなくて」

絵里「何よそれ…」

果南「そんなことより返信しないの?」

絵里「え、ええ亜里沙には心配かけれないわ」

果南「メールを送らないことでもっと心配するかもよ?」

絵里「危険な目にあわせるよりかはマシよ、言っとくけど亜里沙は戦闘型アンドロイドなのに一回も戦ったことがないんだからね」

果南「あははっ珍しいよね、戦闘型アンドロイドなのに」

絵里「ええホントよ、血の味も知らない子なんだからずっとこのまま純粋な子でいてほしいの」

果南「んーまぁ綺麗なら綺麗のままでいてほしいのは分かるよ」

絵里「でしょう?」

果南「まぁね」
437 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 23:45:14.74 ID:7iMNu1YO0


ドカッ


果南「痛っ…」

善子「んー…だからヨハネだって……zzz」

果南「善子か…酷い寝相だね…」

絵里「今日は珍しくみんな一緒に寝てるからやっぱり狭いわね…」

果南「まぁね、親睦を深めるとかどうのだけど私はいっつもこうでいいんだけどなー」

絵里「それは流石に狭くて寝苦しいんじゃない?」

果南「くっつけば大丈夫!」

絵里「…夏なのに?」

果南「大丈夫!」ピース

絵里「…そういえば善子がみんなと寝たがらないのって……」

果南「…寝相が悪いから、なのかもね」クスクス

絵里「ふふふっ可愛らしいわね」クスッ
438 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 23:46:14.22 ID:7iMNu1YO0


曜「くかー…zzz」

ことり「すぅ……zzz」


絵里「曜はこう…場所を取る寝方をしてるわよね」

果南「大体大の字で寝てるからね、起きる時はいつも私のお腹か背中に曜の手が乗ってるよ」

絵里「ふふふっいいじゃない」

果南「まぁね」

絵里「ことりは見た目通り寝てる時もキュートよね」

果南「あははっ枕なんて抱いちゃってこのこのっ」ツンツン

ことり「んんー…殺してやるー……zzz」

果南「……あはは…ことりらしい寝言だね」

絵里「いやいやどんな寝言よ……」
439 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 23:47:16.60 ID:7iMNu1YO0


花丸「ずらー…zzz」


絵里「花丸さんはすごいらしさがあるわよね、こじんまりとしてて」

果南「んーどうなんだろう、私はこの子のことよく知らないから何とも言えないかな」

絵里「そっか、そうよね。花丸さんと果南はほぼ初対面みたいなものだもんね」

果南「そうそう。あ、でも銃が撃てないってのは知ってるよ、それは前に聞いた」

絵里「ええ、花丸さんは銃が撃てないらしいの」

果南「へーなんでだろ?」

絵里「うーん…過去に何かあったんじゃない?」

果南「んーまぁそんなところか」

絵里「でも、過去の詮索はやめてあげて?ここの人たちの過去は語り継ぐものではないから」

果南「分かってるよ、それ私は興味がある人しかそういうことしないし」

絵里「…興味のある人って例えば誰よ?」

果南「絵里に決まってるじゃん、むしろ絵里しかいないよ」
440 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 23:49:16.86 ID:7iMNu1YO0
絵里「…なんで私?」

果南「あははっ昔っからいるのに謎なところが多いし、どこからともなく発生する自信や強さの源が知りたくてね」

絵里「そんなの私でも知らないわよ?」

果南「だからこそ第三者である私が客観的に見る必要があるんだよ」ジロジロ

絵里「…やっなんか恥ずかしいから見ないで」

果南「なんで!?」

絵里「ぷっふふふ…ごめんなさいね」

絵里(今もどこかで何かが動いてるかもしれない、そんな変わりゆく戦場で私たちは真姫の別荘で平和に今を過ごしていた)

絵里(戦争は終わりなき季節、その中で私は暑い夏を過ごしている。外の世界で何が起ころうともまずは羽休めをするしかなかった)

絵里(今、亜里沙はどうしてるのだろう。今、私が殺めてしまった天国にいる凛はどうしているのだろう)

絵里「……今、何をしているのかしら」


絵里(…みんなは)

441 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 23:51:16.51 ID:7iMNu1YO0
〜三日後、夜

にこ「はぁ?私を主にしたい?」

せつ菜「はい、私たちはにこさんを主にしたいんです」

穂乃果「………」

にこ「はっ無理ね、私は希とは違ってあんたらを部下に迎え入れるほどの余裕と器がないの」

せつ菜「それでもいいんです!何もしなくても私たちの主っていう権利とにこさんからの導があればいいんです!」

にこ「冗談言わないで、私には妹のちびたちだけでも精一杯よ」

せつ菜「そんな……」

穂乃果「………」


カチャッ


にこ「…なんで私に銃を向ける?」

穂乃果「やっぱり人間は愚かだね、希ちゃんとせつ菜ちゃんと花丸ちゃん以外は信用するに値しないよ」

穂乃果「私は最初からあなたを主にしたいとは思ってなかった、だから変な期待しないでよかったよ」

にこ「なら私は変な期待されなくてよかったわ」
442 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 23:55:53.58 ID:7iMNu1YO0
せつ菜「ちょ、ちょっと待ってください、にこさんは良い人じゃないですか!」

穂乃果「良い人なのは分かるよ、でもそれで?」

せつ菜「そ、それでって…」

穂乃果「確かに業務用アンドロイドは主がいないとやっていけない、けど主をすぐに入れ替えるほど私たちは薄情じゃないし見ず知らず他人を主にするほど能無しじゃない」

穂乃果「例え昔希ちゃんと一緒に戦ってたと言われる仲間だとしても理由がないんじゃ私は受け入れられない」

せつ菜「……でも」

にこ「やめときなさい、あんたらは二人で一人なんでしょ?私が原因で仲違いするならおとなしく引き下がって新しい主を見つけなさい」

せつ菜「で、でも新しい主なんて……」

にこ「…思ったんだけど絢瀬絵里じゃダメなの?絵里は曜やことりを扱う寛容なアンドロイドよ?それにあんたらも知ってるあの凶暴な松浦果南や昔問題を起こした堕天使と親友の仲よ、今主にするなら間違いなく絵里にするべきだと私は思うけど」

穂乃果「…あいつはイヤだ」

にこ「なんで?」

穂乃果「……とにかくイヤ」

にこ「…何?何かあるの?」
443 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 23:58:17.12 ID:7iMNu1YO0
穂乃果「………」

せつ菜「…とにかくにこさんが無理なら分かりました、私たちは新たな主を探しに行きます」

にこ「……でも」


海未「なら、私があなたたちの主になってさしあげましょうか?」


にこ「!」

穂乃果「っ!?」

せつ菜「あなたですか…」

海未「お久しぶりですね、にこ。そしてあなたたちも」

にこ「海未…」

穂乃果「……目的は何?」

海未「そんなの言わなくても分かるでしょう?軍神とトリックスターを殺しに来たんですよ」

せつ菜「…どこまでもしつこいお方なんですね」

にこ「やめときなさい、海未。いくらあんたが再生能力お化けとはいえこいつらもアンドロイドよ、再生能力は人間より上の存在だからある程度は戦える。ある程度戦える軍神とトリックスター相手じゃ流石の海未でも分が悪いでしょう?」

海未「確かにその通りですが、私は即死でもない限りは死にませんからね、勝つ勝たないというところに観点を置くより戦うか戦わないかが私にとっては重要なんですよ」
444 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/30(月) 00:01:17.15 ID:GdeG3AG80
穂乃果「…消耗戦がしたいんだね」

海未「ご名答」

にこ「なるほどね、でもそれは消耗戦じゃなくてただの八百長ね。海未相手に消耗戦で勝てるわけないじゃない」

海未「ええその通りですよ、そんなの私と戦えばすぐに分かるでしょう?私の意図が、消耗戦がしたいっていう私の目的が」

穂乃果「…なら尚更戦うわけにはいかないよね」

せつ菜「周りを見る限り今日は仲間の方もいないようですし逃げようと思えばすぐに逃げれますよ」

海未「ええ、ですが戦ってもらいます。逃げられるとしても、ダメージはちゃんとダメージとして残りますからね」

にこ「…呆れたわ、海未」

海未「はい?」

にこ「穂乃果、せつ菜、あんたらは絵里のところへ行きなさい」

せつ菜「え?」

穂乃果「なんで?」

にこ「一度海未とは本気で殺し合いをしてみたかったの。最強相手にどこまで私の実力が通用するのかやってみたかったの」

海未「………」
445 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/30(月) 00:02:52.15 ID:GdeG3AG80
にこ「だからあんたらは絵里のところで傷を癒すべきよ、そして絵里を主にしなさい」

穂乃果「……あいつはイヤだ」


にこ「なら今ここで死になさい!穂乃果っ!」ドドドド!


穂乃果「っ!?」シュッ

にこ(我が儘をいう穂乃果に向かって私の愛銃——MP5で発砲した)

穂乃果「っあ……!」

にこ(そして見事私の放った銃弾は穂乃果の横っ腹を貫き、穂乃果は力なく倒れた)

穂乃果「んくっ…!」

せつ菜「穂乃果さん大丈夫ですか!?」アセアセ


せつ菜「にこさんは何をやってるのですか!?」


にこ「それで反抗する余裕はなくなったでしょ?出血を止める術なく今ここで死ぬか、絵里のところへ行って無様に助けてもらうかどちらかにしなさい」


せつ菜「にこさん…!流石の私でも怒りますよ…?」

海未「……正直、敵である私からしてもにこの行動は理解出来ないのですが」

海未「裏切ったっていうなら話は早いですが、にこから私に向けられているのは殺意と敵意、一体何がしたいのですか?」

にこ「穂乃果とせつ菜は一度底辺まで落ちるべきよ、プライドが高すぎるからね」
446 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/30(月) 00:04:11.50 ID:GdeG3AG80
にこ「それでどうする?せつ菜」

せつ菜「…何がですか?」

穂乃果「く…そっ……!」

にこ「血を流すアンドロイドを助けてくれる人がいたらいいわね、まぁこんなクソみたいな都市で助けてくれる人なんていないと思うけど」

せつ菜「………」

にこ「もし助かりたいんだったら絵里のところに行くことね、あそこなら助けてくれるわよ」

にこ「それとも、今ここでせつ菜も死ぬ?せつ菜が死にたいのなら今だけは海未と手を組んで殺してあげるわ」

せつ菜「…いえ、それならそうさせてもらいます」

穂乃果「せつ菜ちゃ……」

せつ菜「穂乃果さんは喋らないでください、私にとって穂乃果さんは家族なんですから死なれては困るんです」

穂乃果「………」

せつ菜「……感謝します、にこさん」

にこ「感謝される義理はないわよ」

タッタッタッ

にこ(穂乃果はともかく、せつ菜は気付けたのかしら)

にこ(私の不器用なやり方に)
447 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/30(月) 00:05:32.00 ID:GdeG3AG80
海未「…驚きましたね、まさか軍神を撃つなんて。流石の私でも呆気に取られてトリガーを引くことが出来ませんでしたよ」

にこ「そうね、私もきっと狂ってるんだわ」

海未「私も、ですか」

にこ「ええ、所詮海未も鞠莉の犬なのね」

海未「鞠莉の犬ですか…そうなのかもしれませんね。それは強ち否めないかもしれません」

にこ「ええ、海未には事情があるのだもの。知ってるわ」

海未「ええ、ですから残念ですよ。私に理解のある人と殺し合いをしないといけないなんて」

にこ「私も残念ね、もっと海未のこと知りたかったわ」

海未「…それは遺言ですか?」

にこ「どうかしらね」カチャッ
448 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/30(月) 00:06:20.94 ID:GdeG3AG80
海未「…いつもより軽装なんですね」

にこ「私、基本的に小さい銃しか持たないの」

にこ「グレネードランチャーを背中にかけるための幅が無くなっちゃうからね」

海未「知ってますよ、いつも持ってますよね。そのグレネードランチャーは」

にこ「サブマシンガンとハンドガンだけじゃ火力と射程がないからね、それをグレネードランチャーでカバーするのよ」

海未「トレードオフの破棄ですか、ですがまぁ確かにグレネードランチャーなら狙いが外れても遠方へと広がる爆発でなんとかなりますしね」

にこ「そんなところよ、それじゃあやりましょうか。お互い曜の作ったガジェットを使う者同士アンドロイドをも驚かせる戦いをしようじゃない」

海未「望むところですよ、にこ相手なら正々堂々と殺してあげますよ」カチャッ
449 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/30(月) 00:08:42.75 ID:GdeG3AG80
にこ「……そっちこそ変わった銃を持ってるのよね」

海未「私はこの銃声が好きなんですよ」

にこ「…そう」

にこ(海未は対アンドロイドに長けすぎた人間だった、人間離れした運動神経と人間離れした再生能力、もちろん不死身じゃないしアニメでよくある即時回復でもなければただの道から屋根へ飛び移るなんて漫画みたいなことは出来ないけどそれでも普通の域はとっくに超えてた)

にこ(私が対アンドロイド特殊部隊に入った時、一番最初に仲良くなったのは海未だった)

にこ(銃を持たない海未は一般人より可愛いだけのただそれだけの女の子だった、でも銃を持つことで海未は全てを変える、性格も何もかも)
450 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/30(月) 00:11:08.40 ID:GdeG3AG80
にこ「最後に聞きたいわ」

海未「なんですか?」

にこ「…海未は鞠莉を恨んでないの?」

海未「…恨んでないって言ったら嘘になるかもしれません、ですが私に鞠莉は恨めません」

海未「助けてもらった身ですし、鞠莉は優しいお方です」

にこ「…そう」

にこ(…海未は孤児だった。親を産まれて間もない時に亡くしたせいで、奴隷のような生活を送っていた。しかし海未は産まれた瞬間そうなる運命にあった)

にこ(何故なら海未は人間とは思えない生命力を有していたから。本当ならその親と一緒に死ぬはずであった海未はその自らの生命力で命を繋ぎ止めた、だから海未は孤児として生きることが決まっていた)

にこ(そしてそんな苦しい生活を送り、海未が十歳辺りになった頃に鞠莉が海未を引き取った)

にこ(そこからかしら、海未の始まりは)

にこ(海未的には助けてもらったことに感謝してるけど、鞠莉から見ればきっと海未も駒に過ぎなかった。私はそう考える)

にこ(対アンドロイド特殊部隊には少数ながら様々な理由でこの部隊に入っている、その中でも海未は実に単純な理由だったわ)

にこ(命の恩人であった鞠莉直属の部隊だったから入っただけ、そこに曜やダイヤのような何かを求めて入った理由は無くて、凛や果林のような実力を買われたわけでもない)

にこ「……残念ね」

にこ(この残念の意味はきっと私にしか分からない)
451 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/09/30(月) 00:13:31.97 ID:GdeG3AG80
海未「…何がですか?」

にこ「いや、なんでもない」

にこ「じゃあ始めましょうか」

海未「……ええ」

にこ(戦いの意識を研ぎ澄まして、MP5を下げて姿勢を低く構えた)

にこ(私の戦闘スタイルは身軽さに重点を置き、柔道のような投げと至近距離での射撃を主体にしたスパイのようなもの、サブマシンガンであるMP5とハンドガンで対応出来ない距離は背中にかけてあるこのグレネードランチャーで対処する、それが私のやり方よ)

海未「………」

にこ「………」

にこ(それに比べ海未は実にバランスのいい戦術を用いている、海未の使ってるアサルトライフル——AN-94は初弾と二発目の発射レートだけが非常に速く…ううんもっと簡単に言えば初弾を撃ってから二発目を撃つまでの間隔が非常に短いから初弾を避けても二発目で命中してしまうなんていうのを海未と仲間として戦場に立った時はよく見てた)

にこ(この性質は連射速度が速いスコーピオンとよく似ているけど、海未の持つ銃の連射速度が速いのは初段と二発目だけで、スコーピオンみたいに暴れ馬のような性能ではない。初段と二発目という瞬時火力を備えながらもアサルトライフルとして相応しい高い命中精度を誇る火力寄りのバランス型——これが海未の持つ銃の特徴だ)

にこ(また、アサルトライフルは遠距離を主体とした武器でなければ大体対応出来る射程を持ってるから間合いで悩むことはほとんどない)
452 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/30(月) 00:15:07.11 ID:GdeG3AG80


海未「はぁっ!」ダッ

にこ「おっと」シュッ


にこ(そして、今私が躱したこの一閃が海未の最大の特徴だ)

にこ(こんな銃社会において剣を嗜む珍しいやつだからね、海未は。銃剣ってやつでサブマシンガンにもショットガンにも劣らない近距離の強さを発揮してるわ)


にこ「相変わらずの音ねっ!」

海未「この風切り音が聞こえるんですね!ならお分かりでしょうが食らえば死にますよ!」


にこ(正直、海未相手に近距離は分が悪すぎる。素早いステップとちょっと不快な風切り音と白い軌跡を残す海未の一振り一振りは避けるのに必死になっちゃってトリガーを引く余裕を与えてくれない)

にこ(…でも、私も近距離は得意なんでね。この近距離戦が不利になるのかと言われたらそれはNOかしら)


にこ「もらいっ!」


にこ(海未の横斬りをちょっと姿勢を低くすることで躱し、海未の腹部に向けて肘打ちをした。ここで海未の横切りが躱せたのは背の低さがあったからね、だから今だけはこの背の低さに感謝しないといけない)


にこ(今だけは…ね)

453 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/30(月) 00:21:16.07 ID:GdeG3AG80
海未「ぐっ…」

にこ(そうして怯んだ海未の左手を掴んでそのまま強く引っ張って離し後ろに流す——そして私はよろめく海未の後頭部に向かって旋風脚を放った)

にこ「休んでる暇はないわよ!」

にこ(私の蹴りを受け倒れる海未に向かってMP5で発砲、そうすれば海未は機械みたいに銃弾へ反応して横へと半回転した後、足の裏と手のひらを地につけてブリッチのような体勢から後方へと跳躍した)

にこ「でたっ…」

にこ(やはり海未の運動神経には目を配るモノがある、跳躍した海未は空中で一回転した後に綺麗に着地して息を切らした)

海未「はぁ…はぁ…はぁ……」

にこ「曜のガジェットの恩恵は大きいわね、海未」

海未「ええ…曜は偉大ですよ……」

にこ(曜のガジェットが無ければ海未はここで弾を避けきれずに死んでいた。私や海未が履いてる靴は跳躍をすることで曲がる足首を察知することで、足元の重力の働きをほぼ一瞬だけ改変させ跳躍にブーストをかける機能がある。私たち人間の技術じゃ重力を変えることは出来ないけど、一瞬無敵というように一瞬だけならそれも可能なの)

にこ(だからそれを使って普通じゃ出来ない動きを可能にしてる)
454 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/30(月) 00:24:48.95 ID:GdeG3AG80
にこ「今まで何回も海未は実はアンドロイドなんじゃないかって思ったけど、やっぱり海未も人間ね」

海未「私は元から人間って言ってましたけどね」

にこ「ええ、でも口は信用出来ないから」

海未「…そうですね」

海未「ですが……」

にこ「…?」


海未「できれば私もアンドロイドとして生まれたかったですよ!!」ドドドド!


にこ「っと…!」シュッ

にこ(息を切らす海未が突然放つ無数の弾丸、この後の展開を先に説明するなら私はその銃弾を避けるのだけど、人間対人間っていうのはアンドロイドとはちょっと違う)

にこ(きっとアンドロイドなら横方向へ大きく跳躍して反撃をしてた、けどそれはアンドロイドが射線を見ることのできる生き物だから)

にこ(相手が人間だと分かっている私たちはアンドロイドと同じ動きをすると偏差撃ちによって死ぬ、人間である以上はそれが定め)

にこ(だから人間である私が取った行動は————)

にこ「ほっ!たぁっ!」


ズサー


にこ(前方向へギザギザを作るよう左斜め前へ跳躍して次に私の胸へと向かう銃弾を右斜め前へスライディングして躱す、そしてそれと同時にMP5で発砲…うん、完璧)

にこ(人間は横幅ではなくて高低差を生かして銃弾を避けるの、死角もないフィールドなら戦いはそう長くはならない)
455 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/30(月) 00:26:21.16 ID:GdeG3AG80


海未「ああああああぁああ!?がぁあ…ッ!!」


にこ(そう、人間相手ならすぐに決着がつく。跳躍しながら発砲は出来るけど発砲しながら跳躍は出来ない、それは人間もアンドロイドも同じ)

にこ(棒立ちで発砲は死亡フラグが立つわ、それを見事に回収した海未は胸と腹、そして腕に数発ぶち込まれて俯けに倒れた)


にこ(ゲームセット、私の勝ちね)


にこ「……あっけなかったわね、海未」

海未「ぁ……」

にこ「海未、あなたは強いわ。でもあなたが強いのは多人数戦と対特殊部隊アンドロイド以外の人物よ、海未がどれだけ頑張っても果林やダイヤにはおそらく勝てないわ」
456 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/30(月) 00:27:43.04 ID:GdeG3AG80
海未「…ぁ……?」

にこ「何故?という顔をしてるわね、いいわよ答えてあげる」

にこ「言っとくけどね海未、対アンドロイド特殊部隊に入ってるやつは狂ってるけどそれ相応の強さがあるの、あんたみたいに孤児として生まれ才能を持つ故に、そして鞠莉の犬だから入ったとかそんな軽い気持ちで入ったやつはいないのよ」

にこ「小さい頃から戦闘の経験があって、その様々な経験で培った技術や知識がある。みんな海未と同じスタートラインを切ってるわけじゃない、銃声が好きとか適当な理由抜かして武器を手に取ってるわけじゃないのよ」

にこ「それだけの話、そう…それが海未と私の————」


ドスッ!


にこ「……ぇ?」

にこ(それは一瞬の出来事だった、銃を下げ人差し指を立てて海未に説明をして最後の一言を言おうと思ったその時、私の心臓に深く入り込む一つの刃)

にこ(するとどうなる?私の胸から、そして口から出てくるこの赤が私には何なのか分からなかった)


にこ(それが分からないまま私は———————)


海未「……私とにこの…なんですか?」

にこ「………」
457 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/30(月) 00:29:18.99 ID:GdeG3AG80
海未「……きっ、けほっ………」

スタ…スタ…スタ……

海未「はや…く戻って……休まない…と………」


スタ…スタ…スタ…



タッ……タッタッタッタッ……!


海未「…っ!?」

「ふんっ!」

海未「ぐあッ!?」

海未(両手でお腹を押さえながら歩いていれば、後ろから聞こえる足音。そうして振り返った瞬間には襟を掴まれてフルパワーで地面に叩きつけられた)

海未「な——————」
458 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/30(月) 00:31:02.99 ID:GdeG3AG80


カチャッ


「ごめんね刑事さん」



ルビィ「ルビィ、悪い子だから」



ドオン!


459 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/30(月) 00:33:22.93 ID:GdeG3AG80
ここで一旦中断。
再開は明日か明後日にします
460 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/30(月) 08:45:57.26 ID:IIeKG0yEO
一気に犠牲者増えたな……
461 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/01(火) 18:09:19.53 ID:ViazdTd70
ルビィ「…うぅ……ホントならあんな至近距離でスナイパーなんて使いたくなかったんだけどな…」

ルビィ(青い髪の刑事さんを殺すべくしてルビィはその刑事さんの脳天に向かってゼロ距離でスナイパーをぶっ放した)

ルビィ(流石の人間とは思えない生命力でも脳をスナイパーの弾丸で撃ち抜けば死に至ると思う…そう考えた私ちゃんと息と脈を確認したけどしっかり死亡していた)

ルビィ「いたた……」

ルビィ(病院を抜け出してまだ数日しか経ってなくて、ルビィの怪我も完治してない。だから時々足が痛むし、ルビィの頭を————ううん、記憶を蝕むような痛みが発生する)

ルビィ(数年の歳月を経て動き出す体はリハビリでもしないとまともに動いてくれない、けど私は無理矢理体を動かした)

ルビィ(そして、ルビィはスナイパーを両手で下げて闇へと消える)


ルビィ(ルビィが戦える以上は、戦って生きていく)


ルビィ(————それが、ルビィが信じた未来だから)

462 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/01(火) 18:10:46.78 ID:ViazdTd70
〜別荘


穂乃果「すぅ…すぅ……」


善子「…まさか帰ってくるなんてね」

せつ菜「…私だってここへ帰りたくて帰ってきたわけじゃありません」

善子「なら今から帰ったら?その矢澤にこのところへ」

絵里「ちょ、ちょっと善子それは流石に酷いわよ…」

善子「私、色んな人を見てきたけどあなたたちみたいなプライドの塊とはどうも仲良く出来ないのよね。普通にしてれば可愛いのに、命が関わる時にまで意地張ってるんじゃさっさと死ねって私は思う」

曜「うわー…強烈……」

善子「その不本意ながらっていう態度、私ものすごい気にくわない。申し訳ないけど信じられないなら救えない、信仰心がなきゃ加護を与えてくれる神なんていないわよ、業務用アンドロイドにはそれが分からないの?」

花丸「………」

絵里「あちゃー……」

絵里(夜、この別荘に死にかけの穂乃果を連れたせつ菜がやってきた)

絵里(横っ腹を撃たれたみたいで、それを見たことりがすぐに手当てをした)

絵里(けど如何せんこの二人はプライドが高いもので穂乃果も眠りにつく最後の最後まで反抗的だしせつ菜も相変わらず否定しかしない)

絵里(その二人の様に怒りを覚えてしまった善子はとうとう口から爆弾を吐き出した)
463 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/01(火) 18:12:16.26 ID:ViazdTd70
せつ菜「………」ウルウル

せつ菜「……だって」

善子「…だって?」

せつ菜「だってムカつくじゃないですか!希さんが気に入ってた相手なんですよ!?」

果南「気に入ってた相手?なにそれ?」

せつ菜「希さんは基本的に他人に無関心なんですよ、それ以上もそれ以下もない一定の接し方で誰とでも仲良く出来る人でしたから私たちは我が子を可愛がるようなそんな態度でした」

果南「え?それって良くない?というか絵里と何の関係が?」

せつ菜「違うんですよ…絵里さん、あなたは希さんの興味を引いてしまったんですよ」

絵里「興味?」

せつ菜「言いましたよね、他人に無関心って。私や穂乃果さんにも見せなかった感情を絵里さん相手に示して、挙句の果てにはウチの部下にしたいっておかしくありません?なんで初めて会うはずの絵里さんに?私には分かりません」

ことり「……それってさ」

曜「…あ、待って私も同じ事思ったかも」


ことよう「……嫉妬だよね?」


せつ菜「……そうですよ」

せつ菜「だって…ムカつくじゃないですか…」

善子「…それはさっきも聞いた」
464 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/01(火) 18:15:40.77 ID:ViazdTd70
花丸「…確かに希ちゃんが他人に興味を示すのはすごく珍しいことずら、いつも何考えてるか分からないような人だったからどうして急にウチの部下にしたいなんて言ったのかマルにも分からないずら」

果南「それは絵里が心の広い持ち主で尚且つ強いからだよ、そうとしか私は考えられない」

善子「………」

曜「う、うーん…よく分からないけど希ちゃんが興味を示すならもっとちゃんとした理由があると思うよ」

ことり「ちゃんとした理由って?」

曜「それは私にも…」

せつ菜「私たちは業務用アンドロイドなんですよ、穂乃果さんはこんなこと言いませんけどね、業務用アンドロイドっていうのは所詮主に好かれたいだけの生き物なんですよ。主が与えてくれる導に沿っていって主に褒めてもらうことが業務用アンドロイドとしての生き甲斐なんです」

せつ菜「きっと私たちの気持ちは戦闘型にも標準型にも分からないでしょう、ましてや人間にも。でも、私たちに見せてくれなかった感情をまだ関りの薄い人に見せるっていうのは私たちに興味がないっていう死刑宣告みたいなものなんですよ…」

絵里「………」

絵里(せつ菜の言う通り、きっと私には業務用アンドロイドの気持ちは分からない。だって私には主がいないし、褒めてもらうっていう以外にも生き甲斐はちゃんとある)

絵里(しかし、せつ菜の気持ちは分からなくてもせつ菜の感じてる感情はきっと分かる。悲しいとか怒りとかそんな簡単で些細なモノだけど、きっとそれなら私にも分かる)

絵里(だから私は————)


絵里「そう…ごめんなさい」ギュッ


絵里(私も成長したのね、知らない内に小難しい話を乗り越えられる強さを手にしてた)

絵里(きっとこんな生易しい解決の仕方じゃいつか綻びしてしまうのだと私は思う、けど戦いをこの先で語るのはきっと違うでしょう)

絵里(ただ、今は“熱さ”に対する表現として、せつ菜を力いっぱい抱きしめた)
465 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/01(火) 18:17:51.07 ID:ViazdTd70
絵里「…きっと私にあなたの気持ちは理解出来ないわ。でも私はあなたと仲良くしたいの、だからこの際言っちゃうけど」


絵里「私じゃ主は務まらないのかしら?」


せつ菜「…!」

絵里「あの時、穂乃果に威圧された時は言葉も出せなかったけど今ならちゃんと返せるわ」


絵里「知ってる命を失うことの意味と怖さ、私はそれを知ってる」


絵里「誰も死なせたくない、私は誰にも死んでほしくないの」

絵里(…私は千歌を失った、その死はホントに些細な出来事からで、いつ振り返ってみても儚くて呆気ないものだった感じるの)

絵里(きっと銃を持つということは人を殺す意思表示なんだと思う、けれど私はそう思いながら銃を持つのではない)

絵里(目指すところはもっと別にあって、もっともっと近くにある)

絵里(平和を夢見るのなら、戦いが避けれないのならせめて命を失わないようにしてほしい)

絵里(だから他人とはいえ、他人な気がしないせつ菜と穂乃果には死んでほしくなかった)

絵里(二人が業務用アンドロイドというのなら、私が主になって私が生きる為の導を与えたかったのよ)
466 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/01(火) 18:19:18.85 ID:ViazdTd70
ことり「……ずるい」

曜「あはは、ずるいね」

果南「やっぱり絵里はこうでなくっちゃ!」

せつ菜「………」ウルウル

せつ菜「…そうですね、なんか希さんが言ってたこと分かる気がします」

曜「希ちゃんの言ってたこと?」

せつ菜「はい、あの金髪の子の事が信用出来なくてもついていけばいつか絶対に信頼出来る時が来るって」


せつ菜「もしウチが死んだらあの金髪の子を主にしな、と」


絵里「私!?」

せつ菜「はい、だから穂乃果さんは絵里さんに気に入らないって言ったんです」


穂乃果『私はあなたが気に入らない』


せつ菜「理由は私と同じ嫉妬です、希さんに絶対に信用出来るなんて言われたら私たちにはない何らかの感情や関係があるに違いありません、そう思って穂乃果さんは絵里さんを毛嫌いしたんです」

絵里「何らかの感情については知らないけど、私その希って人と関係はないわよ?」

せつ菜「ですが絶対に信用出来るって希さんは言ってましたよ?」

絵里「えっ…なんでかしら…」
467 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/01(火) 18:19:55.78 ID:ViazdTd70
善子「戦ってて強いって思ったからじゃないの?曜を殺しに行く時に戦った絵里には確かに驚かされることが多かったわ」

花丸「…希ちゃんの事だから何か理由があったと思うずら、感覚とかじゃなくてちゃんとした理由が」

曜「理由か…分からないな…希ちゃん死んじゃったし」

せつ菜「…私がいれば」

花丸「そ、そんなせつ菜ちゃんのせいじゃないよ」

せつ菜「……例えそうだとしても私があの時いればもしかしたら希さんは助かったんじゃないかって思えるんです」

ことり「…確かにそうだけど、そう思っても仕方ないでしょ?」

果南「ことりの言う通りだよ、過去を悔やむならそれを今に繋げなきゃ」

せつ菜「……はい」
468 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/01(火) 18:23:32.98 ID:ViazdTd70
善子「…とにかくあんたら二人は絵里を主にするの?」

せつ菜「…そうさせてもらいます」

ことり「主っていうけど主にするために何かするの?」

せつ菜「特にしませんよ、システム的に業務用アンドロイドが主と認めた人がこれからの主になります」

果南「システム的?」

せつ菜「本能みたいなモノです、基本的には主の入れ替えはないんですけど主がその人を主って思えばなんとなーく思考に補正がかかるんです、この人が主だと。でも業務用アンドロイドはそんなこと滅多にしませんよ、一番最初の主に思い入れがあるのは当たり前ですから」

善子「へぇ…なんか特殊ね…」

せつ菜「所詮業務用アンドロイドはペットみたいなモノですからね、誰かの支えがないと正しく生きていけません」

曜「業務用アンドロイドは自立出来ない生き物とは言われてたけど本当なんだね、てっきりバカにされてるだけかと思ってたよ」

果南「戦闘型は完全自立、標準型は自立的、業務用は自立不可って聞くよね」

花丸「…それがそれぞれアンドロイドのコンセプトだからずら」

絵里「知ってるの?」

花丸「希ちゃんから貰ったアンドロイドの本で学んだずら、最初に作られたのは型が決められていない何型でもないアンドロイドで、そのアンドロイドは揃いも揃って危険思想を抱いてたみたいで、アンドロイドはやることがないと今目の前にある物を破壊しようとする危険なシステムが勝手に生まれてしまうみたいずら」

花丸「だから人間を模して造られたと言われる標準型アンドロイドだけではなくて、標準型アンドロイドの上位互換である戦闘型アンドロイドっていう標準型が万が一破壊衝動を抱いても自由に戦闘を起こさないようにする抑制の存在と、標準型アンドロイドの下位互換である業務用アンドロイドっていう助けるべく存在を生んで破壊衝動の消化に努めたと記されていたずら」

善子「上位互換ねぇ…」

せつ菜「下位互換ですか…」

ことり「そんな作られ方してたんだ…」

絵里「なんか複雑ね…」
469 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/01(火) 18:27:15.95 ID:ViazdTd70
せつ菜「……とにかくよろしくお願いしますね、絵里さん」

絵里「え、ええ。よろしくね」


ギュッ


絵里(いまいち実感はないけど、とりあえず私はせつ菜と穂乃果の主となった)

絵里(あの時は勢いとかで私が主になるって言ったけど、私に主が務まるのかしら?)

絵里(私は人の道を決めるほど偉くないし強くない、むしろ私は頼ってばっかの生き物だ)

果南「いやートリックスターと軍神が一緒に戦ってくれるんじゃ心強いね!さっそくY.O.L.Oってところに行く?」

絵里「いやそれはいきすぎじゃ…」

曜「…いや、そうでもないかもしれない」

絵里「えっ?」

曜「もし行くのなら流石にみんなの傷が癒えてからだけど、この戦力なら充分勝てるよ」

ことり「…確かに勝てる、対アンドロイド特殊部隊は今四人、そこに誰かが入ったとしてもこっちは八人、矢澤にこを入れれば九人になるよ」

曜「Y.O.L.Oには三人超一流の腕を持ったのがいるけどそれをプラスしても六人だから数で勝てる」

善子「確かに…」
470 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/01(火) 18:29:35.16 ID:ViazdTd70
花丸「でもそれは超一流の数で勝ってるだけだよ?あそこには訓練された人が何十人もいるよ?」

果南「そんなザコは数に含まれないよ」

善子「同じこと言おうとした」

絵里「えぇ…」

曜「…でも実際そのくらいなら私たちの敵じゃないよ、私たちだって真正面からやり合うつもりは更々ないからね」

せつ菜「アンドロイドを人一人と加算するのが間違ってますね」

花丸「…確かにそれはそうずら」

果南「よしっなら次の作戦はY.O.L.Oに強襲だね、そこを潰せば政府の勢いも少しは落ちるでしょ」

ことり「そうだね、私は絵里ちゃんのやることについていこうって思ったけどなんかいよいよ終わりも見えてきたような気がするよ」

善子「確かにね、そこを落とせばいよいよ鞠莉のところだもの」

絵里「…鞠莉か」

絵里(鞠莉に会えばきっと何かが変わる、アンドロイドが蔑まれる根源を潰せば何かが変わるはず)

絵里(そう願って、そう思って戦ってきたけどその頂への道は長いようで短かった)

絵里(最初は私と善子と果南と真姫だけのレジスタンスだったのに、今じゃ曜やことり、そしてせつ菜や穂乃果まで仲間について勢力も大きくなったものよ)
471 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/01(火) 18:33:26.10 ID:ViazdTd70
曜「確かに近いかもだけど、決してすぐそばにあるとは言えないよ。油断は出来ない、これだけは忘れないで」

せつ菜「その通りですよ!人数の差なんてひっくり返そうと思えばすぐにひっくり返るんですから油断はできません」

絵里「そうね、その通りだわ」


ピコンッ♪ピコンッ♪


絵里「ん、真姫から電話だわ」

果南「どうしたんだろう?」

絵里「さぁ…?」

ピッ

絵里「もしもし?」

真姫『絵里!ルビィが消えたの!』

絵里「は…は?どういうこと?」

真姫『そのままの意味よ!ルビィが病室からいなくなってる!ルビィの病室は一番下の階だったからご丁寧に窓から逃げたよと言わんばかりに窓が全開になって空いてたわよ!』


絵里「そ、それってルビィが意識を取り戻したってこと?」


善子「えっ…ルビィが起きたの…?」
472 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/01(火) 18:35:06.41 ID:ViazdTd70
真姫『…分からない、そうとも言えるしもしかしたら誰かが攫って行ったのかもしれない…』

真姫『いずれにせよルビィの姿が消えたわ』

真姫『今監視カメラを見てもらって調べ————って、え!?やっぱりルビィ一人で逃げたの!?』

絵里「…善子、どうやらルビィは起きたらしいわよ」

善子「っ!今すぐ病院に行くわ!」ダッ

絵里「待って!でもルビィはもう病院にはいないって、病院から逃げたらしいわ」

善子「に、逃げたって数年も寝てたのにそんなすぐに動けるわけないじゃない!」

曜「確かに…」

善子「アンドロイドならともかくルビィは人間よ?特別な力もないのにどう動くのよ」

絵里「…真姫聞いてた?」

真姫『ええ、でもごめんなさい。私にもそれは分からないわ』

真姫『可能性を考えるなら、何か薬品を使ったか、それともルビィの体は常人と比べて強かったか、この二つかしら』

絵里「…どっちも可能性は低いと思うけど」

真姫『…ええ、私もそう思う』
473 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/01(火) 18:37:29.77 ID:ViazdTd70
絵里「………」

絵里(果たしてそれは朗報であったのか悲報であったのか)

絵里(数年眠りについていた眠り姫ことルビィがついに目覚めた——けど、姿はとうに闇の中だった)

絵里(それを聞いた上で私たちはどうすればよかったんだろう)

絵里(…迷ってる私の傍らで答えはとうに出かけていた)

善子「…いい、ならルビィを探しにいくわ」

花丸「む、無茶だよ!だって今は政府も動き出してるんだよ?死にに行くようなものずら!」

善子「さっき言ったわよね、訓練された人間のようなザコは数に含まないって」

善子「別に恐怖でもないわ」

ことり「でもその傷じゃ辛いよ…」

善子「へっちゃらよ、ルビィの為だもの」

曜「…無理だよ、やめた方がいい」

善子「…ならどうしろと?」

曜「諦めるんだよ、私たちが出るより向こうにいる真姫さんや病院の人が探しに行った方が安全で効率がいい」

曜「監視の目を避けつつルビィちゃんを探すなんて無理だよ…隔離都市東京を舐めちゃいけない」
474 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/01(火) 18:39:02.76 ID:ViazdTd70
ことり「…ごめん善子ちゃん、それは私も同意したい」

ことり「むしろここでのこのこ作戦会議をしてる私たちがいるのが異常なくらいだよ、日本で一番賑やかな都市がちんけな警備を施してるはずがないんだよ」

花丸「…その通りずら、あなたがアンドロイドなら分かるはずだよ、なんせアンドロイドは人間と違って自分の状況を数値化出来るんだから」

善子「………」

絵里「…善子……」

絵里(みんなから諦めの圧をかけられていた)

絵里(けど、それもそうでしょう。だって相手は政府なのよ?勝てる勝てないじゃなくてこの行為は今まで積み上げたものを崩すものとなる、監視の目が濃くなった以上もう迂闊に外出は出来ない。次誰かに見つかった時がこの別荘の捨て時かもしれない)

絵里(それをルビィ一人の為だけに私たち全員の運命を善子に託すことは到底不可能だ、こういっちゃなんだけどルビィの命と私たちの命じゃ重さが何百倍にも違うのだから)

絵里(…だから、ここは私も諦めろというしかなかった)

絵里(それが善子の為の選択でもあったのだから)
475 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/01(火) 18:40:30.92 ID:ViazdTd70
善子「…ちっ……私寝る」

スタスタスタ

ことり「…行っちゃったね」

果南「善子の気持ちは分からなくもないよ、けど今が今だから仕方ないよ」

せつ菜「…ですね、こういう時当事者だったらって考えるんですけど、善子さんの気持ちもよく分かります」

絵里「……ごめんなさい、真姫。ちょっと大きな仕事になりそうだわ」

真姫『いいわよこのくらい、見つけたらまた連絡するわ』

絵里「ええ、お願い」

真姫『それじゃあね、そっちも気を付けて。いざという時は私も力になるわ』

絵里「ええ、それじゃあ」

真姫『ばいばい』

ピッ

絵里「…後は真姫に任せましょう、今の私たちに善子の気持ちを尊重する余裕はないわ」

ことり「…そうだね」

果南「流石にルビィって子一人の為だけに私たちも動けないしね…」

絵里「……本当に申し訳ないけど我慢してもらいましょう」

絵里(次の目標はY.O.L.Oであってルビィじゃない、この傷が癒えるまで私たちは動くことを許されない)

絵里(だから本当にごめんなさい善子……ルビィに会えるのはまだ先みたい…)
476 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/01(火) 18:42:08.72 ID:ViazdTd70
絵里「…みんなはこれからどうする?」

せつ菜「私は穂乃果さんが目覚めるまで穂乃果さんの近くでじっとしてます」

果南「暇だし漫画でも読もうかなー」

ことり「あ、私も」

曜「んー私はY.O.L.Oに向けて色々準備するよ、傷は癒えてないけどね」

花丸「マルは……」

曜「花丸ちゃんも本でも読んでれば?」

花丸「んーじゃあそうするずら」

果南「じゃあ私たちはあの本の部屋にいくよ、何か面白そうなの見つけたら戻ってくるね」

ことり「同じく」

スタスタスタ

花丸「…あ、マルも!」

タッタッタッ

曜「じゃあ私もここの武器保管庫に行って何か面白い物がないか探してくるよ」

絵里「え、ええ」

曜「それじゃっ!」

スタスタスタ
477 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/01(火) 18:43:40.71 ID:ViazdTd70
絵里「…行っちゃった」

せつ菜「みんなやることがあるんですね」

絵里「ことりと果南はやることないと思うけど…」アハハ

せつ菜「でも、楽しめるものがあるのはいいことです」

絵里「せつ菜は本好きじゃないの?」

せつ菜「大好きですよ、でも穂乃果さんの方が好きですから」

絵里「…なるほど、なら一緒にいないとね」

せつ菜「はいっ」

穂乃果「すぅ…すぅ……」

絵里「これからどうなっちゃうのかしら」

せつ菜「…毎日生きるか死ぬか、ですよ」

せつ菜「今はこれで良くても明日はきっとダメになるんです、自分の持つ強さが。そして考えが」

絵里「…そうね、その通りだわ」
478 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/01(火) 18:45:48.61 ID:ViazdTd70
せつ菜「…戦えないっていうのは分かってるんですけど、今もこうしてる間に何かが動いてるって思うとじっとしてられないんです」

絵里「……そんな強く穂乃果の手を握ったら穂乃果も苦しいわよ?」

せつ菜「あ、ご、ごめんなさい…」

絵里「…確かにもどかしいかもだけど今はここでゆっくりするのが一番だわ」

せつ菜「それは分かってます…」

絵里「ならいいじゃない、ここは果南や曜とか一緒に遊んでくれる人もいるんだし」

せつ菜「そんなゆるゆるなんですかここは…」

絵里「戦いの時以外はね」

せつ菜「そうですか…しかしここに籠るのなら外の情報が欲しいところですね」


穂乃果「……花丸ちゃんに任せたら?」


絵里「うわぁ!?」

せつ菜「お、起きてたんですか!?」

穂乃果「今起きたの、いってて……」

せつ菜「そ、そうですか…でもよかったです。無事目覚めてくれて」ギュッ

穂乃果「うん、なんとか命を繋ぎ留められたよ」エヘヘ
479 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/01(火) 18:47:53.20 ID:ViazdTd70
穂乃果「…それでこれはどういう状況なの?」

せつ菜「…私たちは絵里さんを主にして生きていくことにしました」

穂乃果「…それでいいの?せつ菜ちゃんは」

せつ菜「私は構いません、それに絵里さんならなんとなく信用出来そうなんです」

穂乃果「……なら私も何も言わない。いくら気に入らなくてもこの状況で自らみんなと離れることはしたくない…にこちゃんに教えられたよ、今は余裕がない」

せつ菜「…そうですか、納得してもらえるならよかったです」

せつ菜「ですが穂乃果さん、案外絵里さんも悪くないかもしれません」ボソボソ

穂乃果「なんで?」ボソボソ

せつ菜「ちゃんと思いやりがあるからですよ、私たちをモノとして見ないその様は信用出来るものがあります」

穂乃果「…そっか」

せつ菜「はいっ」
480 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/01(火) 18:49:58.21 ID:ViazdTd70
果南「ただいー…ってあれ?穂乃果がいるじゃん!」

穂乃果「か、果南ちゃ」

果南「丁度よかった!今暇してたんだよ!穂乃果も一緒に本探してよ!こう…バトルモノでがががっとしたもの!」グイッ

穂乃果「えっちょ、ちょっと待ってよ!」

果南「待たない!よしいこうすぐ行こう!穂乃果イチオシのバトルを教えてよ!」


タッタッタッ


穂乃果「せつ菜ちゃん!」アセアセ

せつ菜「果南さんといるのも意外に楽しいものですよっ」

果南「よーし相方のせつ菜から許可が下りたことだから行こう!」グイッ

穂乃果「せつ菜ちゃーん!!!?」

タッタッタッ

絵里「…相変わらず嵐のようなやつね、果南は」

せつ菜「穂乃果さん、すごくクールそうですけど実はそうでもないんでああやって無理矢理引っ張った方が本当の穂乃果さんが見れて楽しいんですよ」

絵里「へえせつ菜も悪い子ね」

せつ菜「私は怖い穂乃果さんより可愛い穂乃果さんが見たいんですからっ」

絵里「ふふふっそうね」
481 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/01(火) 18:50:48.70 ID:ViazdTd70
絵里「…そういえば穂乃果の言ってた花丸ちゃんを使ったら?っていうのは何なの?」

せつ菜「花丸さんは戦えないんですけど情報を集める情報屋として非常に優秀な方なんですよ」

絵里「え?でも花丸さんは銃が撃てないんでしょ?いざ戦いが起こった時どうやって戦うのよ?逃げてるだけじゃこの都市は生きることはほぼ不可能よ?」

せつ菜「銃を使わなきゃいいんですよ、ああ見えても花丸さんはナイフを用いた接近戦ならそこらの有象無象より全然強いんですよ」

絵里「へぇ…でもなんか戦法がアナログね…」

せつ菜「銃が使えない花丸さんにとっては本で蓄えた知識とそのナイフ裁きだけが武器ですからね、花丸さんは人間ですし運動神経もそこまでよくありません。だからそれで戦ってくしか花丸さんは出来ないのですよ」

絵里「難しいものね…」

せつ菜「でも、花丸さんは弱い人じゃありません。頭は誰よりもいいですから殺し屋の私たちにとって花丸さんの持ってくる情報はすごく役立ちました」

せつ菜「だから今回も花丸さんに任せるのがいいかもしれませんね」
482 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/01(火) 18:52:17.95 ID:ViazdTd70
絵里「うーん…でもなんか危なくない?」

せつ菜「大丈夫なはずです、花丸さんだって素人じゃありませんから」

絵里「そう?でもうーん…」

せつ菜「…絵里さんは優しいんですね、希さんはそこは“任せた”って言って笑顔で見送ってました」

絵里「…きっと花丸さんの強さを見たことないっていうのが原因なんだと思う」


絵里「それに知ってる人の命を失いたくないの」


絵里「ここで私が花丸さんに任せたって言って花丸さんが戦いで死んでしまったらきっと後悔すると思うの、行かせなきゃよかったって」

絵里「…それに今は政府も動いてるわ、いくら花丸さんが対象外とはいえ対アンドロイド特殊部隊には目をつけられている。それだけでも充分危険だわ」

せつ菜「……そうですね、その通りです」

絵里「……時が来るまではみんなでゆっくりしてましょう?私はみんなと一緒にいたいの」

せつ菜「…分かりました、絵里さんが主である以上はそれに従います」
483 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/01(火) 18:54:16.16 ID:ViazdTd70
絵里「…それは構わないけど、イヤならイヤって言ってほしいわ。無理に従う必要はないし…」

せつ菜「分かりました、でも今回は私も賛成したいです。花丸さんに死んでほしくないのは私も同じですから」

絵里「…そう、ならよかったわ」

せつ菜「はいっえへへ」

絵里「ふふふっ」

絵里(私が標準型である故に、なのかしら)

絵里(私が望むのはリスクと対になるリターンではなくて、みんなが安心していられる安寧の場所だった)

絵里(ここに緊張感は欲しくない、だから穂乃果が私が主になるっていうのに納得してくれて正直心底安心した)

絵里(この硝子みたいにすぐに壊れてしまいそうな安心感をずっと心に秘めたままにしておきたくて、その上で穂乃果とせつ菜のプライドは実にひやひやさせてくれるものだった)

絵里(…だから今となってはその脱力感が体を巡ってる気がした)
484 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/01(火) 19:00:21.13 ID:ViazdTd70


タッタッタッ

果南「ほらほらこっち!」

穂乃果「わぁああぁわあ!」

ガチャッ!

果南「ふーとうちゃーく」

穂乃果「急に引っ張って走らないでよー!」

果南「あははっいいじゃん」

穂乃果「私は怪我してるの!」

果南「元気そうじゃん」

穂乃果「うぬぬ…」

ことり「あ、果南ちゃん」

ことり「…!ほ、穂乃果ちゃん……」

穂乃果「…ことりちゃん」

果南「ことり……」

果南(私には分かる、ことりが穂乃果に対して控えめになる理由が)

果南(一度は殺されかけた相手、旧友でもあった穂乃果に初対面のような初々しさはことりにはないだろう)
485 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/01(火) 19:01:58.88 ID:ViazdTd70
穂乃果「…前にも思ったけど、やっぱりあなたと会うのは初めてじゃない気がする」

ことり「!!」

穂乃果「あなたの雰囲気、私の探してる人にすごく似てる。同じ人なんじゃないかって思えるくらいにそっくり」

スタスタスタ

穂乃果「ちょっと手貸して」

ことり「え、うん」


ギュッ


穂乃果「…やっぱりあなたの温もりは私の探してる人にそっくりだね」

ことり「…そうなんだ」

果南「………」


ことり『…私の親友だったアンドロイドも人探しで活動してるんだって、だから方向性の一致で協力してるんだとか』


果南(ことり本人から聞いた、穂乃果のことを。穂乃果の探してる人————今の穂乃果の発言を聞けばすぐにでも分かるよ)


果南(穂乃果の探してる人はことりなんだって)


果南(記憶を失っても微かに残ってたのかな。雰囲気とか温もりとかそんなものが体に焼き付いてるのかもしれない)
486 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/01(火) 19:02:52.43 ID:ViazdTd70
ことり「…見つかるといいね、その探してる人」

果南「ことり…?」

ことり「………」フルフル

果南(…だけどことりは首を横に振って、その話題を膨らませずに流した)

果南(不器用で見知らぬ感情を機械の心に宿した私からすればことりの行為には理解が出来なかった、そしてことりの考えてることが分からなかった)

穂乃果「…うん、ありがとう」

ことり「………うん、頑張ってね」

果南「ことり……」

果南(そして、穂乃果に対しての返事に間が空く理由も私は分かる)

果南(ことりは私があの時に胸を撃ち抜いたことで感情の欠如が発生して笑えなくなった。きっと今の場面はことりが笑う場面だった、けど異常を来した機械の体は笑うことを許さなかった)
487 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/01(火) 19:04:19.25 ID:ViazdTd70
穂乃果「そういえばなんで私の事知ってるの?」

ことり「あぁいや…私も戦闘型アンドロイドだから軍神の事は分かるよ」

穂乃果「……そっか」

ことり「うん、そうそう」

花丸「あれ!?穂乃果ちゃん目覚めたんだ」

穂乃果「うん、ついさっき」

花丸「どうしてここに?」

穂乃果「この人に連れてこられたんだよ」

果南「えーこの人呼ばわりは納得いかないなー」

花丸「なんで穂乃果ちゃんをここに?」

果南「ん?いやー向こうでせつ菜と絵里と穂乃果が変な話始めそうだったから無理矢理こっちに穂乃果を引っ張って強制終了させたんだよ」

穂乃果「変な話…?そんなことの為に止めたの?」

果南「そんなことって言うけど絵里にとってはとっても大事な話なんだよ、絵里と一番長くいる私はよく分かる」

果南(穂乃果に本を選んでもらうっていう体で進めた話だけど、そんな気はない)

果南(花丸単身で監視の目と銃弾が飛び交う街へ向かわせるのはきっと絵里にとって不安で胸が張り裂けてしまうほどの出来事だろう)

果南(戦闘型アンドロイドは耳がいいもので、本の部屋の扉を開けてると絵里とせつ菜の声が自然と聞こえてくる)

果南(だから話が大きくならないうちに楔を打っておいた)
488 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/01(火) 19:06:00.52 ID:ViazdTd70
ことり「…?何の話?」

花丸「同じく…」

果南「なんでもないさ、もう終わった話だから」

穂乃果「…そうなの?」

果南「そうそう」

ことり「…?」

花丸「気になるずら…」

ことり「……そういえば、絵里ちゃんと一番付き合い長いんだね」

果南「そうそう、だから絵里の事は私にお任せ!」

穂乃果「絵里さんってどんな人?」

果南「うーん聡明で、頭が良くて、強い人かなぁ」

ことり「果南ちゃんより強いの?」

果南「うーんどうだろうね〜」
489 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/01(火) 19:07:11.36 ID:ViazdTd70
花丸「気になるの?絵里さんが主なのが」

穂乃果「…うん、だってあの人のこと全然知らないし」

ことり「絵里ちゃんは命の使い方がバカな人だよ」

花丸「…?どういうことですか?」

ことり「絵里ちゃんはバカだよ、殺し合いという命を賭けた戦いをしてるのに、相手の命を尊重するバカだよ」

穂乃果「なにそれ…」

ことり「…でも、そのバカのおかげで私は救われた。私を助けても戦力にはならないし、むしろ自分の命を危険に晒すだけだったのに私を助けてくれた」

ことり「戦いに損得を求めないその姿勢は、何より最もな信頼になるの」


ことり「穂乃果ちゃんの主だって、そういう人でしょ?」


穂乃果「…うん、私とせつ菜ちゃんも善意だけで助けてもらった」

ことり「…そういう人だよ、絵里ちゃんは」

果南「…ことりにしては珍しい発言だけど、間違ってはいないかな」
490 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/01(火) 19:12:28.47 ID:ViazdTd70


曜「そうだね、間違ってないよ」


穂乃果「!」

果南「あれ、曜じゃん。どうしたの?」

曜「ん、いやーY.O.L.Oに備えて敵の情報をおさらいしてこうと思ったんだけどここにもしかしたらアンドロイドの本があるかもって思ってさ」

ことり「アンドロイドの本?」

曜「希ちゃんから聞いたことあるんだ、実在するアンドロイドをまとめた図鑑のようなものがあるって」

花丸「あ、マルも持ってるよ。ただマルが持ってるのはデジタルデータだけどね。希ちゃんから貰ったずら」

曜「ホント!?よかったらそれ貸してほしいな」

果南「ず、図鑑ってそんなものがあるの…?」

ことり「なんか気持ち悪い…」

花丸「図鑑は言い方が悪いけど、戦闘型アンドロイドをまとめたデータならあるずら」

花丸「希ちゃんの話によると開発者用にまとめられたものらしくて、世には出回ってないらしいずら」

穂乃果「…なんでそんなものを希ちゃんが持ってるの?」

花丸「それはマルにも…」
491 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/01(火) 19:15:32.13 ID:ViazdTd70
果南「その希って人がアンドロイドの開発者だったりして」

ことり「まさかそれはないよ」

花丸「その通りずら」

穂乃果「………」

曜「…まぁとりあえず借りてもいい?」

花丸「分かりました、ちょっと待っててください」

スタスタスタ

曜「…にしても、絵里さんの話をしてたんだね」

果南「うん、穂乃果が絵里の事がよく分からないからって」

曜「んーそっか、そうだねぇ〜絵里さんは優しい人だよ、でもちょっと優しすぎる人なんだよ」

曜「お人好しで、ことりちゃんの言う通り相手の命まで尊重しちゃうくらいに優しい人、だから放っておけないんだよ」

曜「希ちゃんもそうだったでしょ?毎回危なっかしい行動ばっかで、最初のうちは放っておけなくてついていったんでしょ?」

穂乃果「…!どうしてそれを…」

曜「あはは、分かるよ。私も希ちゃんに初めて会った時はそんな感じだったもん」
492 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/01(火) 19:19:52.93 ID:ViazdTd70
曜「まぁ私は希ちゃんとは立場上敵だったから共同戦線をすることは少なかったけど、でも放っておけなかったかな」

曜「…だから、絵里さんは希ちゃんに似てるんだよ」

曜「行動に損得をつけず相手の命を尊重する、だから放っておけない人なんだよ。穂乃果ちゃんもせつ菜ちゃんも絵里さんの下に就けば、とりあえずは安心だよ?」

曜「私——曜やことりちゃんが言うんだもん、少しは絵里さんの事、分かってもらえたかな?」

果南「曜…」

曜「えへへ、今は私も絵里さんの部下だからね」

穂乃果「……そっか、曜ちゃんがそこまで言うならそうなんだね」

曜「うんっ!」

果南「…ん?曜と穂乃果を知り合いなの?」

曜「んーとそうだね、元々希ちゃんと私が知り合いだったから穂乃果ちゃんとは意図せずともよく会ってたよ」

曜「希ちゃんと会う時は大体後ろに穂乃果ちゃんがいたからね、希ちゃんが離れると寂しそうな顔して私が慰めるとちょっと気を遣って笑ってたのを覚えてるよ」

穂乃果「あ、それは言わないで!」

果南「へー可愛いところあるじゃん」クスクス

ことり「可愛いねっ」

穂乃果「もーっ!」

果南(穂乃果はプライドがお高いとは聞いてたけど可愛いところもあってなんかちょっと気が抜けた)

果南(これならこの先も心配はなさそうだね)
493 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/01(火) 19:22:50.04 ID:ViazdTd70
花丸「曜さーん、はいっどうぞ」

曜「お、ありがとう花丸ちゃん」

ことり「…そういえばそれアンドロイドのデータなんだよね?」

曜「そうだよ」

ことり「なんでアンドロイドのデータなんか見るの?私たちの敵は対アンドロイド特殊部隊でしょ?」

曜「んーまぁそうなんだけど実はY.O.L.Oには戦闘型アンドロイドが三人いるみたいなんだ」

果南「へー強いの?」

曜「それが分からないから調べるんだよ」

果南「え?だってY.O.L.Oって曜の施設でしょ?」

曜「そうなんだけど私はあそこにたまに通うだけの人だったからあそこのことはよく知らないんだ、私のしてることといったら何かの設計図をあそこに渡して帰るだけだし」

果南「そ、そうなんだ…」

穂乃果「…でも敵の事何も分からないんじゃ探しようがないんじゃないの?」

曜「まぁそうなんだけど一人だけ分かってるんだ、型番はA-083って」

果南「ふーん…A-083ってことは初期型?」

曜「いや、これがA-83だったら初期型だけどA-083は違うんだよ」

果南「へーそうなんだ」
494 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/01(火) 19:24:34.92 ID:ViazdTd70
曜「んーとA-083はっと……」

曜「あ、あった」

ことり「A-083…」

果南「可愛いじゃん」

果南(型番と一緒におそらくイメージと思われるイラストが描いてあった。髪は肩くらいまで届くくらいのセミロングで右の耳元に善子みたいなお団子を作っててちょっと特徴的な髪型、それ以外はごく普通の女の子だけど、これが戦闘型アンドロイドなのかと思うとやっぱりか弱そうにも見える)

花丸「この子がY.O.L.Oに?」

曜「みたいだよ」

穂乃果「…!この子…!」

ことり「どうしたの?」

穂乃果「P-83の次世代モデル、または戦闘型アンドロイドへと変形させた後継機って私の後継機じゃん……」

曜「えっ…ってホントだ…穂乃果ちゃんってP-83じゃん…」

ことり「穂乃果ちゃんの後継機…」

穂乃果「後継機なんてあるの…?」

花丸「マル……聞いたことがあるずら、型番は基本的にAとFとPの三種類があって戦闘型アンドロイドはA、標準型はF、業務用アンドロイドはPとアンドロイドの種類によって最初につくアルファベットが違うずら」

ことり「それはなんとなく分かってたよ、今まで戦ってきたアンドロイドは揃いも揃ってAの人ばっかだったから」

穂乃果「そうだね、少し戦えばある程度法則性が見えてくるね」
495 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/01(火) 19:27:17.28 ID:ViazdTd70
花丸「そう、そこまでならほとんどの人が気付くことが出来る」

花丸「ただここからが問題で、英語の次の数字が0のアンドロイドは何かの後継機と希ちゃんから聞いたことがあるずら」

果南「私はA-822だから誰の後継機でもないなぁ」

ことり「…あれ?そういえば果南ちゃんってそんな型番の数字が大きいんだ」

曜「型番の数字は作られた順じゃないよ、最もことりちゃんや穂乃果ちゃんみたいな初期型の時代は作られた順だったけどね」

ことり「そうなんだ…初めて知ったよ」

果南「絵里はF-613だし善子はA-710だし絵里も善子も違うね」

穂乃果「せつ菜ちゃんはP-101だし案外いないね、後継機って」

曜「きっとレアな存在なんだよ」

曜「…というかやっぱりアンドロイドによってわざと性能分けてるんだね、分かってはいたけど再確認して納得したよ」

果南「…ホントだ、得意武器とか書いてあるじゃん。特徴…P-83の後継機に相応しい射撃テクニックと近接戦闘…か」

穂乃果「……なんかイラつくね」

ことり「穂乃果ちゃんの後継機だもんね…」
496 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/01(火) 19:33:03.98 ID:ViazdTd70
穂乃果「…この子の相手は私がしたい、次世代モデルとかいうんならこの手で殺して次世代を上回るよ」

果南「いいじゃん、私は応援するよ」

曜「え、でも単純に考えてこのA-083は穂乃果ちゃんより性能がいいよ?正直穂乃果ちゃんが戦うのは分が悪い気がする…」

穂乃果「…それでも戦うよ、後継機がいる以上負けた気がしてならないから」

曜「うーん…」

果南「いいじゃん、曜だって自分の上位互換がいるとか言われたらいやでしょ?」

曜「まぁそれはそうだけど……」

穂乃果「……そういえばそのデータって戦闘型アンドロイドが載ってるんだよね?」

花丸「そうだよ」

穂乃果「なら果南ちゃんとかもいるんでしょ?」

果南「えっ……」

曜「あ、いいね!面白そう!」

ことり「私も気になる!」

果南「ちょ、ちょっとやめようよ、私のなんて見ても面白くないよ?」

曜「へー果南ちゃんがそう言うんなら尚更見たくなったよ」ペラペラ

果南「こいつ…」
497 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/01(火) 19:35:27.10 ID:ViazdTd70
曜「あ、あった。A-822…ってあれ?これ果南ちゃんだよね?」

ことり「果南ちゃん、最初は髪下ろしてたんだね」

果南「まぁね」

穂乃果「どうして変えたの?」

果南「髪が長いと戦いづらいんだよ、だから私からすればせつ菜やことりはよくそんな髪伸ばして戦えるなって思うよ」

ことり「んー私髪の事は気になったことないなぁ」

曜「同じく」

穂乃果「そうだね」

果南「へー羨ましいよ」

曜「まぁいいやA-083の情報を把握出来たから私はまた準備に戻るよ!花丸ちゃんありがとね!」

花丸「あ、はい!」

曜「それじゃあ!みんなもばいばいっ!」

ことり「う、うんばいばい」

穂乃果「ばいばい」
498 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/01(火) 19:36:03.49 ID:ViazdTd70
タッタッタッ

果南「よーし、それじゃあそろそろ本題に移ろうか」

穂乃果「本題?」

果南「え?何?忘れたの?穂乃果に本を選んでもらうって言ったじゃん」

穂乃果「えぇ…私本読まないよ…」

果南「そこはもう感覚で選ぶんだよ!ほらっ!さっさと選ぶ!」

穂乃果「んもー」

花丸「ふふふっ」クスッ

ことり「私も見つからないから穂乃果ちゃんに選んでもらおっ」

スタスタスタ
499 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/01(火) 19:39:00.01 ID:ViazdTd70
〜???

梨子「えっ…海未さんが死んだ…?」

鞠莉「ええ、にこと共倒れらしいわ」

梨子「にこさんと共倒れって…」

鞠莉「……ねぇ梨子」

梨子「なんですか?」

鞠莉「なんで私はアンドロイドを作ったんだと思う?」

梨子「えっ…」

鞠莉「だって、おかしいと思わない?私が作ったのよ?なのに私がそれを壊すの?」

梨子「別におかしいことじゃないと思いますけど…だって神話にもいましたよね、破壊と創造両方を司る神が」

鞠莉「…そう言われては返す言葉がないわね」

梨子「………」

鞠莉「アンドロイド————それは今思えば私の失敗作でしかなかった」

梨子「どうしてですか?」

鞠莉「………語るに及ばないわ。それに話せば長くなる」
500 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/01(火) 19:40:38.64 ID:ViazdTd70
梨子「…いえ、対アンドロイド特殊部隊所属である私にはそれを知る義務と権利がある。そう思っています」

鞠莉「……ならそこに座りなさい、立ってると疲れるわよ」

梨子「…分かりました」

スタスタスタ ストンッ

鞠莉「……アンドロイドはそうね、それはいい意味でも悪い意味でもつまらない運命を変えた存在だった」

鞠莉「私は恵まれた環境で育ち、恵まれた才能を持っていた」

鞠莉「それは12歳にしてアンドロイドのシステムを作り上げた頭脳と常識に囚われない無限の世界を述べる想像力、またの名はクリエイターとしての素質…それはまさに天が私に二物を与えたと言っても過言じゃなかった、私の才能は多くの人間を虜にして世界の人々の目を惹かせた」

鞠莉「人間そのものとしか思えないロボットを作るなんてすごすぎるって、そういう言葉を初めてとして私の技術とアンドロイドの性能は高く評価された」

鞠莉「……今振り返ってみれば、そういう単純なことだけ私に来てればよかったのにって思うの」

梨子「…何の話ですか?」

鞠莉「…みんな……いや具体的には悪知恵が働く、あるいは合理主義者であった人間というのはアンドロイドは戦争で使えるだとか、少子化問題の解消に繋がるんじゃないかとか本来私の意図せぬ方向でアンドロイドの興味を引いた」

梨子「………」

鞠莉「…まぁね、いいのよ別に。アンドロイドには心があるから好きな人が出来たら結婚でも性行為でもなんでもしていいし、戦いたいだとか強くなりたいだとか自分の志すものに通じているのなら自衛隊にでもなればいい」
501 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/01(火) 19:42:24.07 ID:ViazdTd70
鞠莉「だけど、アンドロイドを瞳に映し関心を覚える人々は不思議なことに、本来考えるべきである“一つの焦点
”にfocusを当てないの」



鞠莉「何故私がアンドロイドを作ったのかを」



梨子「……!」

鞠莉「…何故だと思う?」

梨子「…護衛の為だと思います、もし私が鞠莉さん本人の立場であったなら自分の才能を狙う人物が絶対に出てくると思います。だったら自分を守ってくれる優秀なボディーガードを作ったと思います」

鞠莉「なら——」

梨子「そうです、私たちの存在がおかしいですよね。もし私の言ったことが正解ならなんでわざわざ人間なんか雇ってボディーガードをさせるんだって話になります」

梨子「だからこれは違います、なので私には分かりません」

鞠莉「…そう、でもごめんなさい。答えを言う気は最初から無いわ。あくまで梨子がどう思ってるか、それを聞きたかっただけだから」

梨子「…そうですか」

鞠莉「ええ、ごめんなさいね?」

梨子「……大丈夫ですよ」
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