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【BLEACH×ロンパV3】キーボ 「砕かれた先にある世界」【前編】
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52 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/10(火) 21:23:47.39 ID:D9Mxdk9oO
キーボ「……条件、ですか」
真宮寺「そう、条件」
真宮寺「その条件こそが、 “ 霊力 ” を有していることであり、それがあれば瀞霊廷の居住を許されるのサ」
キーボ「……霊力?」
真宮寺「霊力とは、霊的な力……いわゆる霊能力の略称サ」
真宮寺「また、そうした霊能力を扱う際に消費されるエネルギーの名称も、同じように霊力と名付けられている」
真宮寺「そうした力を、赤松さん達は死後に目覚めさせていた」
キーボ「……?」
キーボ「待ってください。どうして、赤松さん達にそんな力がーーーー」
53 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/10(火) 21:25:32.20 ID:D9Mxdk9oO
真宮寺「ーーーそれは、わからない」
真宮寺「ただ、少なくとも、二ヶ月前、君を除いた僕達全員がこの世界に来た時には目覚めていたそうだヨ」
キーボ「………」
アンジー「………」
真宮寺「……僕達全員が、尸魂界の同じ時間の同じ場所に送られた時に、ネ」
54 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/10(火) 21:28:03.02 ID:D9Mxdk9oO
キーボ「……時間や場所が同じだった?」
真宮寺「その通りだヨ」
真宮寺「……後から聞いた話だけど、【心中でもしない限り】【送られる時間や場所が同じになるなんて】【まずありえない】らしいんだ」
真宮寺「だけど、どういうわけか、僕達は全員、同じ時間の同じ場所にいたんだ」
真宮寺「それぞれ、死亡した時、はたまた死亡して肉体から魂魄が出て少し経った時に、意識を失いーーー」
真宮寺「ーーー気づいた時には尸魂界に来ていた」
真宮寺「……みんな、同じように、霊力が目覚めた状態で、ネ」
アンジー「………」
55 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/10(火) 21:29:18.82 ID:D9Mxdk9oO
キーボ「……どうして、そんなことがーーー」
真宮寺「ーーーそれも、わからない」
キーボ「………」
真宮寺「……いま、わかることは、たった一つ」
真宮寺「君もまた霊力を持っているということだ」
56 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/10(火) 21:30:20.91 ID:D9Mxdk9oO
キーボ「……はい?」
アンジー「………」
真宮寺「………」
キーボ「それは、どういうーーーー」
57 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/10(火) 22:06:41.71 ID:DZOh/mOeO
岩鷲「おおーい、オメーら! 帰ったぞー!!」バタンッ!
キーボ「!?」
岩鷲「………っ、!?!?」
キーボ「えっ、あっ……」
岩鷲「………」
キーボ「キ、キミはいったいーーー」
岩鷲「うおおおおおおおおおおおおお!!!」
58 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/10(火) 22:08:06.00 ID:DZOh/mOeO
キーボ「!?」
岩鷲「オメーか!」ダダッ
キーボ「!?!」
岩鷲「オメーが、アンジーちゃんと真宮寺の言ってた “ ろぼっと ” って奴だな!?」ガシッ
キーボ「え、あ、その……」
岩鷲「そうなんだな!?」キラキラ…
59 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/10(火) 22:15:19.72 ID:DZOh/mOeO
アンジー「……そうだよー! キーボはロボットなんだよー!」
真宮寺「……彼こそが、 “ 超高校級のロボット ” キーボ君。紛れもなく僕達が話した存在サ」
岩鷲「……そうかそうか! よろしくな、キーボ!!」ガシッ
キーボ「えっ、あっ……」
岩鷲「いやー、それにしても、スゲーなおい! こんなスゲー “ ろぼっと ” なんて、俺はじめて見たぞ!」ベタベタ
キーボ「いや、ちょっと……」
岩鷲「この白髪! ゴテゴテヒヤヒヤした鉄の身体と服! 全部、アンジーちゃん達の言ってた通りだ!」ベタベタ
60 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/10(火) 22:19:08.18 ID:DZOh/mOeO
キーボ「あっ、うっ……」
岩鷲「……ああ、そうだ! 俺の自己紹介がまだだったな!」
岩鷲「俺こそ、自称【西流魂街のーーー」
空鶴「うるっせえぞ、岩鷲!」ヒュンッ
ドゴオッッッ!!!
岩鷲「ぶほおっ、!?」
バッターンッッッ!!!
61 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/10(火) 22:21:09.81 ID:DZOh/mOeO
岩鷲「……いてて、姉ちゃん! 何すんだよ、いきなり!?」ガバァッ
キーボ「………!?!」
空鶴「それはこっちのセリフだ!」
空鶴「汚ねえ手でベタベタ触ってんじゃねえ!! 礼儀を忘れたのか!? ああ!!」
岩鷲「あっ……!?」
キーボ「」ポカーン
岩鷲「……す、すまねえ! “ ろぼっと ” さん! この通りだ! 許してくれ!」ババッ
62 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/10(火) 22:26:11.53 ID:DZOh/mOeO
キーボ(……この光景は、現実なのでしょうか?)
キーボ(細身の女性が一瞬で部屋の中に回り込み、体格の良い男性を一撃で部屋の外まで殴り飛ばすだなんてーーー)
キーボ(ーーーしかも、それだけの力を身に受けた男性の方もまた、すぐに立ち上がった……)
キーボ(……なるほど、この人達がーーー)
空鶴「おい、聞いてるか? “ ろぼっと ” っての」
63 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/10(火) 22:28:01.55 ID:DZOh/mOeO
キーボ「……あっ……」
空鶴「……安心しろ。コイツには、おれがよーく言い聞かせておく」
岩鷲「………」
キーボ「……あー、はい。まあ、彼も謝っていることですし、ボクはもう別にーーー」
岩鷲「……お、おう! ありがとな、 “ ろぼっと ” さんーーー」
空鶴「黙ってろ」ゲシッ
岩鷲「ぶふぉう!?」ドザアッ!
キーボ「ーーーあのー……もしかして、あなた達がーーーー」
64 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/10(火) 22:29:32.13 ID:DZOh/mOeO
空鶴「……おれの名は志波空鶴! この志波家の家主、そして流魂街一の花火師だ!」
キーボ「やはりあなたが、クウカクさん……」
空鶴「ああ、ついでに、この土下座してるのが、弟の岩鷲だ」カラッ
岩鷲「つ、ついで、って……」
キーボ「………」
65 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/10(火) 22:31:31.12 ID:DZOh/mOeO
空鶴「……事情は真宮寺から全部聞いてる」
キーボ「……はい?」
真宮寺「……あァ、実はここに向かう途中で、空鶴さん達に連絡しておいたんだヨ」
キーボ「……なっ、!? そんなの、いつの間にーーー」
空鶴「ーーーしばらく、この家に泊めてやる」
キーボ「ーーー!?」
アンジー「!」
真宮寺「………」
空鶴「寝床は真宮寺に貸してる部屋を二人で使いな」
66 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/10(火) 22:32:58.75 ID:DZOh/mOeO
キーボ「……いや、ちょっとーーー」
岩鷲「ん? ちょっと待ってくれよ、姉ちゃん。まずは俺の部屋じゃねえのか? 真宮寺の時はーーー」
空鶴「ベタベタ触る奴とされた奴を同じ部屋にできるか、バカ」
岩鷲「うっ……」
キーボ「……あのーーー」
空鶴「気にすんな、死神とのゴチャゴチャした手続きはこっちでやっておく」
67 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/10(火) 22:36:05.00 ID:DZOh/mOeO
キーボ「……えっ、?」
空鶴「……今のテメエが、死神と会うわけにはいかねえだろ?」
空鶴「足元を示す手型一つ持たねえ今のテメエが死神と接触してみろ。不審者扱いで無駄に時間がかかることは目に見えてる」
キーボ「……ふ、不審者……」
空鶴「手続きが終われば、おれの元に通知が来る」
空鶴「テメエの手型が、おれのもとに来るんだ」
キーボ「………」
アンジー「………」
空鶴「瀞霊廷に住めるかどうかも、そこでわかるーーー」
空鶴「ーーーそんで住めるってなったら、実際に住める日まで、泊めてやる」
空鶴「……まあ、手続きなんざ普通は即日で済むんだが、テメエの場合はそうもいかねえだろうからな……」
68 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/10(火) 22:38:12.50 ID:DZOh/mOeO
キーボ「……えーと……」
空鶴「実際に、テメエが瀞霊廷に住めるかどうかはわからねえがーーー」
空鶴「ーーーもし、この流魂街に住み続けることになったら、転生の日まで正式に居候させてやるよ」
アンジー「!!」
真宮寺「………」
キーボ「……あっ、えっ、?」
空鶴「……何年か前までは、居候が三人もいたんだ。また居候が三人になろうが、大したことでもねえ」
空鶴「まっ、なんにしろ、ここで食って寝る以上は、みっちり働いて貰う! そこは覚悟しとけ!」
69 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/10(火) 22:40:58.33 ID:DZOh/mOeO
キーボ「ち、ちょっと待ってください!」
キーボ「ここに住むって、いきなりそんなーーー」
空鶴「ああ? なんだ、テメエ、おれの家に住めねえってか?」
キーボ「ーーーあっ、いや、そうではなく……」
アンジー「……キーボ、ここは空鶴の言う通りにした方が良いって、きっと神さまも言ってるよー?」
真宮寺「……そうだネ。彼女には逆らわないことを勧めるヨ」
岩鷲「そうだ! “ ろぼっと ” さん……いや、キーボ! 姉ちゃんに逆らったらそれはもう恐ろしいことにーーーぶべえっ!?」ドザアッ!
空鶴「雑音はともかく、住むか住まねえかハッキリしな」ゲシゲシッ
空鶴「それで、テメエの今後が決まる……!」ゴオオッ
70 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/10(火) 22:45:15.54 ID:DZOh/mOeO
キーボ「ーーーわ、わかりました! わかりましたから! どうか、ボクをここに住まわせてください!」
空鶴「よしっ、そんじゃあ、決まりだな!」
キーボ(……ううっ、勢いで言ってしまいましたが、大丈夫なんでしょうか………)
空鶴「……ただ、今日はもう夕飯時だ、ゆっくりしていけ。それに、今日はお前ら居候の休みの日でもあるしな」
キーボ「あっ、はい……」
アンジー「………」
真宮寺「………」
71 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/10(火) 22:46:39.50 ID:DZOh/mOeO
空鶴「……しばらくしたら飯にすんぞ」
キーボ「………」
真宮寺「………」
アンジー「………」
空鶴「……おい、岩鷲! いつまでも土下座してねえで、しゃんと立ちやがれ! そんで、ベタベタした罰として飯の準備手伝え!」グイッ
岩鷲「わ、わかったよ、姉ちゃん! いてて! そんな引っ張んなって!」ズルズル…
72 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/10(火) 22:48:57.25 ID:DZOh/mOeO
キーボ「………」
アンジー「……あらら! キーボ、また固まっちゃってるねー」
アンジー「今度は、ゼンマイがほどけちゃったりー?」
キーボ「………」
アンジー「……うんうん、ホントにカチコチだよー、何も返さないしー」
真宮寺「……まァ、空鶴さんも岩鷲君も、強烈な個性の持ち主だからネ。思考処理のために動作を停止させてしまうのも無理はないヨ」
真宮寺「ただ、彼女が言っていた通り、キーボ君にはしばらく、僕が貸して貰ってるこの部屋に寝泊まりして貰うからネ」
真宮寺「そこは記憶領域に残して欲しいかな。なぜなら僕らは空鶴さんにーーー」
キーボ「ーーーわかってますよ! あのクウカクさんに逆らうわけにはいかないのでしょう?」
キーボ「……だったら、泊まりますよ! 誰の部屋であっても!」
真宮寺「ククク……助かるヨ」
73 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/10(火) 22:51:12.21 ID:DZOh/mOeO
浦原「……あー、あー、スイマセ〜ン! ちょおっと、お時間よろしいでしょうか〜?」トテトテ
キーボ「!?」
アンジー「……あー、喜助ー!」
真宮寺「これはこれは……もう到着したのかい?」
浦原「ええ、ただいま到着しました〜! 毎度ご贔屓に〜!」
真宮寺「今日は、商品を買うわけではないんだけれどネ」
浦原「わかってますよ〜! これは、毎度、ウチを贔屓にして貰ってる真宮寺サンに対する特別サービスでもあるんスから!」
74 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/10(火) 22:52:30.89 ID:DZOh/mOeO
キーボ「……え、えーと、すみません?ーーー」
浦原「………」
キーボ「ーーーあなたは、いったいーーー」
浦原「……ああっ、これは失礼しました!」
浦原「アタシ、浦原喜助という者っス!しがない駄菓子屋の店主ではありますがーーーどうぞ、よろしく!」パッパラ〜!
75 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/10(火) 22:54:53.78 ID:DZOh/mOeO
キーボ「あっ、これは、どうも……」
浦原「どうか、キーボさんも! アタクシ共、浦原商店をご贔屓に〜!」
真宮寺「ククク……浦原さん、商売も良いけど、まずはメールで頼んだことをお願いするヨ」
浦原「わかってますよ〜! それでは、キーボさん、さっそくーーー」スッ
キーボ「ち、ちょっと、急になんですか? 近づいてきてーーー」
浦原「……あー、スイマセン、失礼ながらこれから検査をさせて頂きます」
キーボ「……検査?」
浦原「ええ、検査です」
浦原「……そのステキなボディの中に、危険物でもあれば、大事になりかねませんから」
76 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/10(火) 22:56:39.39 ID:DZOh/mOeO
キーボ「!?」
キーボ「き、危険物ってーーー」
浦原「ーーーいやあ〜、だって、ロボットと言ったらドリルやミサイルってイメージあるじゃないっスか?」
キーボ「……あっ……」
浦原「そういったものが付いていたら、日常生活も大変でしょう?」
キーボ「……っ、」
浦原「……それにアタシ、こんな成りしてますが、科学者の端くれではありましてね」
77 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/10(火) 22:58:50.48 ID:DZOh/mOeO
キーボ「科学者……?」
浦原「ええ、科学者です」
キーボ「……ここは、オカルトな死後の世界ではなかったのですか?」
浦原「確かにここは、オカルト現象の吹き荒れる死後の世界ではありますがーーー科学者は普通に存在していますよ」
浦原「実際に、入間サンという科学者の方が、こちらに来ているじゃないっスか♪」
キーボ「………」
浦原「それで、もしキーボさんの身に何か危険があれば、アタシの力でどうにか解決できたら、と思っています」
真宮寺「……大丈夫だとは思うけど、一応ネ」
アンジー「アンジーも、やった方が良いと思うなー」
78 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/10(火) 23:01:08.21 ID:DZOh/mOeO
浦原「……というわけで、検査させては、頂けませんか?」
キーボ「っ、しかしーーー」
アンジー「……キーボ、大丈夫だよー」
キーボ「……アンジーさん?」
アンジー「……喜助はねー? ものすごーく、うさんくさいけど、信頼できる人だからー!」
真宮寺「そうだネ。非常に怪しい人物ではあるけど、信頼は大切にする人だヨ」
浦原「信頼第一、商売人として当然っス!」
キーボ「………」
真宮寺「ーーーどうか、彼を信じて、検査を受け入れてくれないかな、キーボ君?」
79 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/10(火) 23:03:11.00 ID:DZOh/mOeO
キーボ「……わかりました」
浦原「!」
キーボ「……確かに、危険物をそのままにしては、迷惑をかけかねませんからね」
キーボ「検査、お願いします」
浦原「……ありがとうございます! それではーーー」
キーボ「ーーーただし!」
真宮寺&アンジー「「!?」」
浦原「………」
キーボ「……ボクの記憶領域には、決して干渉しないでください。それが検査の条件です」
80 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/10(火) 23:04:05.22 ID:DZOh/mOeO
真宮寺「………」
アンジー「………」
浦原「………」
キーボ「……良いですね?」
81 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/10(火) 23:07:03.72 ID:DZOh/mOeO
浦原「……もちろんっス。キーボさんの記憶領域には一切触れません。その条件で検査させて頂きます」
キーボ「……それでは、検査をーーー」
浦原「ーーーっと、その前に、場所を変えようと思います」
キーボ「えっ……」
浦原「……いやー、万が一、ここで “ ドガン! ” ってなったら大変でしょう? なので修練場……広く頑丈な部屋の方まで移動してから、検査させて頂こうかと思いましてね」
浦原「修練場とその付近の部屋は、現在、防音設備も充実していたりしますからねえ。音が廊下に漏れることは無い……」
浦原「……いろいろ話しやすくもあると思うっスよ?」
キーボ「………」
浦原「……構わないっスよね?」
82 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/10(火) 23:08:40.47 ID:DZOh/mOeO
キーボ「……わかりました。移動しましょう」
浦原「……ありがとうございます! それでは、修練場まで、レッツゴーといきましょう!」
キーボ「………」
ーーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーーー
ーー
83 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 03:00:37.72 ID:xIUq6BSMO
キーボ(そうして、ボクは、アンジーさん達といったん別れて、浦原さんと共に修練場に行った)
キーボ(それから、検査が始まるーーー)
キーボ(ーーーそのはずだったんですがーーーー)
84 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 03:04:23.34 ID:xIUq6BSMO
ー志波家の屋敷・修練場ー
キーボ「………」
浦原「………」
キーボ「……あの、すみません」
浦原「……なんでしょう?」
キーボ「さっきからボク、浦原さんに言われた通り、ずっと目を閉じているんですけどーーーいつ検査は始まるんでしょうか?」
85 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 03:05:32.32 ID:xIUq6BSMO
浦原「……ああ、もう大丈夫っス」
キーボ「……? それはどういうーーー」
浦原「……既に検査は終わりましたから」
86 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 03:07:51.41 ID:xIUq6BSMO
キーボ「!?」パチリ
浦原「………」
キーボ「そんな、いつの間にーーー」
浦原「一応言っておきますが、インチキとかサギとかではありませんよ」
浦原「アタシは確かに、さっきキーボさんが目を閉じている間、検査させて頂きました」
浦原「というか、そうでもなければ、あのお強い空鶴さんからどんな目に遭わされるかわかりませんから」
浦原「いいかげんな商売は、できません」
浦原「……まっ、具体的な方法は、企業秘密っスけどね♪」
キーボ「………」
浦原「その上で検査結果を報告させて頂きますがーーーー」
87 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 03:09:32.61 ID:xIUq6BSMO
浦原「ーーー今のキーボさんには、危険な機能は、何一つ付いていませんでした」
キーボ「……!?」
浦原「入間サンからお聞きしていた通りの設計っス」
浦原「人と一緒に生活していても、何ら危険の生じない、安全安心の設計っスよ!」
キーボ「……ま、待ってください! そんなはずーーー」
浦原「おや、何かおかしなことでもあるんスか?」
キーボ「……っ、」
浦原「何か危険なものを取り付けたご記憶でも?」
キーボ「……っっ、!!」
88 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 03:22:40.62 ID:xIUq6BSMO
浦原「……ちなみに、尸魂界(こっち)で “ それら ” が付いていない状態になっていたとしても、何ら不思議は無いっスよ」
キーボ「……どういうことですか?」
浦原「尸魂界には、持っていけるものとそうでないものがあるんス」
浦原「最近着用したもの……いわゆる “ 外付け ” したような、身体との繋がりの小さいものは、基本的に持っていけない仕組みなんスよ」
キーボ「………」
浦原「……まあ、それが、生命活動の維持や精神の安定などに必要不可欠なものである場合、話は別なんスけどね」
浦原「それなら、身体との繋がりも別の意味で大きくなりますし、尸魂界への持ち込みも不可能では無くなるっスけどーーー」
浦原「ーーーそうした事情を持たない、身体との繋がりが小さい “ 外付け ” アイテムは、基本的に持ち込めないってわけっス」
89 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 03:25:34.83 ID:xIUq6BSMO
キーボ「……なるほど」
キーボ「しかし、そうなると、衣服なども持ち込めないということになりますけど……」
浦原「おっしゃる通り、衣服を持ち込むことはできません」
キーボ「………」
浦原「衣服は、定期的に着脱を繰り返すものですし、魂魄にその情報が完全に定着するだなんて、よほどのことが無い限り、あり得ない……」
浦原「まず、持ち込めないっスね」
浦原「故に、キーボさんのおっしゃる通り、衣服は尸魂界に持ち込めず、基本的に誰もが、ありのままの姿で送られるってわけっス」
90 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 03:28:26.47 ID:xIUq6BSMO
キーボ「ありのまま……つまりは、裸ってことですね」
浦原「ええ、現世で亡くなり魂魄となった者は、現世では魂魄が衣服を着た状態にありますがーーー」
浦原「ーーーその情報定着が不完全なため、現世から尸魂界に移動する際、衣服の情報が形を保てなくなってしまう場合がほとんど……」
浦原「そうして、裸になってしまう、ってわけっス」
キーボ「………」
浦原「とは言っても、別に人が目を覆うような、あられもない、ふしだらな事態にはなりません」
浦原「きちんと、衣服は自動的に着用されることになります」
キーボ「……?」
浦原「……尸魂界には、魂魄が来た瞬間、自動で和服を着用してくれるシステムがあるんスよ」
キーボ「!?」
91 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 03:33:55.99 ID:xIUq6BSMO
浦原(……まあ、魂魄に自動着用される和服は、色やデザインの統一された簡素なものになるのが普通なんスけどね)
浦原(逆に言えば、霊力を有する特殊な魂魄である場合、その人に合った色やデザインの和服が自動で着用されることになる……)
浦原(……そう、真宮寺サンとアンジーさんが現在着ているような、その人に合った色やデザインをした和服は、霊力ある魂魄のみ着用される仕組みというわけでして……)
キーボ「………」
浦原「……とにかく、そうした風に、瞬間的に服が着用されるシステムを、修多羅千手丸(しゅたら せんじゅまる)サンという科学者の方が形にしてくれたんス」
92 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 03:37:29.26 ID:xIUq6BSMO
キーボ「瞬間的に、着用……」
浦原「………」
キーボ「……そんなこと、どうやってーーー」
浦原「……残念ながら、秘匿技術でして、アタシも詳しくはわかりません」
キーボ「……そうですか」
浦原「ーーーですが、何はともあれ、無償で和服を貰えて、あられもない姿を晒すことが無くなったわけっスからね」
浦原「現世で亡くなられた方たちにとっては安心できる話だと思うっスよ」
93 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 03:39:34.01 ID:xIUq6BSMO
キーボ「……あれ? でも、さっきの真宮寺クンは、浦原さんの言う和服以外にも、マスクやバンダナを付けていたようなーーー」
浦原「ああ! あれはウチの商品っス!」
キーボ「……商品? 駄菓子屋ではなかったんですか?」
浦原「フフフ……駄菓子屋だからと言って、その名の通りのことばかりしていれば、時代に取り残されてしまいます」キラーンッ
浦原「浦原商店では、マスクやバンダナ……パンツだって売ってるんスからねー!」パッパラ〜!
キーボ「……服屋も兼ねているってことですか」
浦原「服だけじゃあないんスけど……まあ、わかりやすく言うなら、そんな感じにはなるっスね」
94 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 03:43:26.42 ID:xIUq6BSMO
キーボ「……ですが、気になることがあります」
浦原「……なんでしょう?」
キーボ「なぜ、ボクは、この装甲を着用したままなのでしょうか?」
浦原「………」
キーボ「先ほど、あなたの返答から、このソウル・ソサエティに衣服を持ち込めないということを確認しました」
浦原「……ええ、そうっスね」
キーボ「しかし、そうだとすると、なぜボクは、この装甲を着用したままなのか……」
浦原「………」
キーボ「この装甲は、ボクからしてみれば服のようなものでーーー生前はメンテナンスのために定期的に着脱だってしていました」
キーボ「なのに、どうして、ソウル・ソサエティに来た今でも、着用したままなのかーーーー」
95 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 03:45:24.36 ID:xIUq6BSMO
浦原「……そこは、まあ、アレじゃないですかね?」
キーボ「…… “ アレ ” ? アレとはいったいーーー」
浦原「いや、単純に “ ロボットだから ” じゃないんスかね?」
キーボ「ーーーあなたも、ロボット差別ですか」
浦原「とんでもありません! アタクシ共、浦原商店では、ロボットだろうと宇宙人だろうとーーーお客様である限り、ステキな商品をお届けさせて頂く所存っスよ!」
96 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 03:47:12.50 ID:xIUq6BSMO
浦原「ーーーああ、それはそうとお気づきかもしれませんが……」
キーボ「?」
浦原「……キーボさんの、目のカメラと耳の集音器、どちらも情報伝達の際のフィルターがあったようですが、その両方が撤去されていますね」
キーボ「……フィルター、ですか」
浦原「ええ、キーボさんは、視力と聴力に関しては元から規格外の性能をお持ちだったようなのですがーーー」
キーボ「………」
浦原「ーーーそこから電子頭脳に伝達される情報が、フィルターを介して大幅に制限されていたそうです」
浦原「実際問題、入間サンから教えて貰った内部構造には、フィルターの存在がありましたから」
浦原「それが、どういうわけか、撤去されているという話です」
97 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 03:49:01.36 ID:xIUq6BSMO
キーボ「……なぜ、フィルターなんてあったのでしょうね?」
浦原「………」
キーボ「なぜ、視力と聴力だけ、元から規格外の性能があったのでしょう?」
浦原「……なぜ、それをアタシに聞くんですか? アタシに答えられるはずがないじゃないですか」
キーボ「………」
浦原「【キーボさんの製作者が】【どういう目的で】【視力と聴力だけ】【規格外の性能にして】【さらにはフィルターをかけて情報制限していたか】なんて、それこそ製作者の方しか答えられないことでしょう」
浦原「その辺りについて、アタシから答えられることは何もありません」
キーボ「……それもそうですね」
98 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 03:50:30.57 ID:xIUq6BSMO
浦原「……ともかく、ここで大切なのは、【なぜ規格外の性能があったか?】【なぜフィルターがかけられていたのか?】などではなくーーー」
浦原「ーーー【規格外の性能を制限するフィルターが取り付けられていたものの】【それが撤去された状態にある】ってことっス」
浦原「実際に、今のキーボさんは、非常に高い視力と聴力を有し続けているのでは?」
キーボ「………」
浦原「キーボさん……アナタはその気になれば、この屋敷にいる小さな生き物たちの姿とその鳴き声がわかるんじゃないっスか?」
99 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 03:53:05.80 ID:xIUq6BSMO
キーボ「……言われてみれば、確かに、この屋敷では、小さな虫のような生き物の群れがさえずっているようですね」キュルキュル
キーボ「それらは主に、天井の穴と両わきの木枠の上にある植物らしきものから発生しているようですがーーー」ジー…
浦原「ご名答! その天井にあるのは、【ホタルカズラO】と言いまして、発光型の植物に品種改良を重ねて作り出した、浦原商店の自信作なんスよ!」
キーボ「発光……ああ、だから、こちらの屋敷は電球もなしにここまで明るいのですね」
浦原「その通り! ここが地下にありながらこうまで明るいのも、全ては【ホタルカズラO】のお陰っス!」
浦原「そして、そのOの花粉から生まれる変種の菌が、この空気中を漂う小さな虫みたいな生き物なんスよ!」
100 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 03:56:19.14 ID:xIUq6BSMO
キーボ「菌……」
浦原「この菌は、人の肉眼ではまず見えないサイズですがーーー」
浦原「ーーー有害となるような悪い菌、人や植物に悪影響を与える菌を捕食し、一瞬で無害なものに変換して取り込んでくれる良菌なんス!」
キーボ「………」
浦原「さらには、O本体の購入者の言葉一つで、本体の発光を止めるよう働きかけることもできます!」
浦原「【ホタルカズラO】! 少々、お値段は張りますが、当店イチオシの商品ですよ!」
キーボ「……あー、その、申し訳ないのですが、今はお金の持ち合わせはおろか、ゲームに使用するようなメダルすら持っていない状況でしてーーー」
浦原「いえいえ! 今回はあくまでキーボさんの視力や聴力が上がっていることの証明を兼ねて宣伝しただけっスから! 購入するかどうか決めるのはまた別の機会です!」
浦原「志波家で働けばご給金は充分に出ますしーーー」
浦原「ーーーもし、キーボさんにも個室が与えられる時があれば、ぜひ、ご一考を!」
キーボ「はあ……」
101 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 03:58:26.66 ID:xIUq6BSMO
浦原「さて、話を元に戻しますがーーーこの空気中の菌を、意識一つ切り替えることでキチンと認識できるくらいには、キーボさんの視力と聴力が規格外のレベルに達していることは証明されたわけです」
浦原「フィルターが撤去されたことについて、納得して頂けましたでしょうか?」
キーボ「……ええ、とてもよく理解しました」
浦原「……どうっスかね? 今なら、サービスで、無料で似たようなフィルターを付け直すこともーーー」
キーボ「結構です」
浦原「……良いんスか? 本当に」
キーボ「ええ、構いません」
キーボ「……このカメラと集音器の機能は、オート及びマニュアルの両方でいろいろと調整可能な状態にありますしーーー」キュルキュル
キーボ「ーーーそれに、今はむしろ、機能の高い状態がデフォルトである方が好都合ですから」
浦原「……そうっスか。それじゃあ、今回のサービスはーーー」
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ーーーーーー
ーーーー
ーー
102 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 06:37:43.37 ID:xIUq6BSMO
キーボ(ーーーあれから、さらなるサービスとして無料でボクの身体を洗浄してくれた後、浦原さんは帰り、ボクは真宮寺クンの部屋に戻りました)
真宮寺(……布団には予備があるし、一応それも敷いた方が良いかな……)
真宮寺(そして、それからーーー)
キーボ(また、浦原さんは帰り際に、 “ 伝令神機 ” ……いわゆる携帯電話のプレゼントをしてくれました)
キーボ(もし、ボクの【機械の身体に異常が発生した時】【いつでも電話してくれて構いません】【いつでも修理に駆けつけます】と言伝と取扱説明書を残してーーー)
キーボ(ーーー浦原さん、あの人にはいずれ、しっかりとお礼をしなくてはなりませんね)
キーボ(……浦原さんに検査をお願いしてくれた真宮寺クンにもお礼をするべきでしょうかーーー)チラッ
真宮寺(ーーーよし、後は、この発明品をキーボ君にーーー)スッ
キーボ(ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー)
岩鷲「おーい! オメーら、飯ができたぞ!」バタンッ
103 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 06:39:58.60 ID:xIUq6BSMO
真宮寺「……ありがとう、岩鷲君。すぐにでも行かせて貰うヨ」
岩鷲「おう! 先に行ってるぞ、オメーら!」スタスタ
真宮寺「さァ、キーボ君も」
キーボ「……ボクも行って良いんでしょうか?」
真宮寺「………」
キーボ「キミも、知っているはずでしょう……?」
キーボ「……ボクは、みなさんのように、食事をーーー」
真宮寺「ーーー大丈夫だヨ、キーボ君」
キーボ「……?」
真宮寺「この発明品があれば、ネ」スッ
キーボ「? それはーーー」
真宮寺「はい、キーボ君」ポンッ
104 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 06:41:44.87 ID:xIUq6BSMO
キーボ「……なんですか、この、メカメカしい蚊取り線香みたいなものは?」ジー…
真宮寺「……これは、入間さんが瀞霊廷で発明した、物質電力変換装置ーーー」
真宮寺「ーーーその名も【エレキイーター】だヨ」
キーボ「【エレキイーター】……ですか?」
真宮寺「……これが君の近くにあれば、特殊な波動が発生し、その影響で君は食事が可能となる」
キーボ「………」
キーボ「……はい?」
105 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 06:43:10.60 ID:xIUq6BSMO
真宮寺「……そして、君の口の中にある一定の物質……すなわち食料を電力に変換し、そのまま君の魂魄のエネルギーにできるのサ」
キーボ「………!?!?」
キーボ「ーーーな、なんなんですか!? その発明は!?」
キーボ「入間さんはそんなものまで発明したって言うんですか!?」
真宮寺「……そうだネ。入間さんの発明品であることに間違いないヨ」
106 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 06:45:03.43 ID:xIUq6BSMO
キーボ「………」
真宮寺「……本当に食事が可能かどうか気になるのであれば、食事場まで向かうことだヨ」
真宮寺「僕が案内するからサ」
ーーーーーーーーーー
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ーー
107 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 06:47:22.20 ID:xIUq6BSMO
ー志波家の屋敷・食事場ー
金彦「食事の準備が」
銀彦「整いました」
キーボ「………」
空鶴「よし! 飯の時間だ、テメエら!」
空鶴「全員でーーー」
岩鷲「いっただっきまーす!」
アンジー「いただきまーす、だよー!」
真宮寺「ククク……今日も美味しく頂かせて貰うヨ」
キーボ「ーーーいただきます!」
108 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 06:49:11.98 ID:xIUq6BSMO
キーボ「………」ジー…
アンジー「……うんうん、ちゃんと美兎の機械持ってきてるね、キーボ」
キーボ「アンジーさん……」
アンジー「……でもでもー、食べないと、ご飯も機械ももったいないよー?」
岩鷲「そうだぞ、キーボ! この料理はウチの金彦(こがねひこ)と銀彦(しろがねひこ)が俺達のために! その機械は入間ちゃんがオメーのために! それぞれ真心込めて作ったもんだ!」
岩鷲「なのに、食わないってのは、人の心を大切にしないってことだ! 俺の目の黒いうちは、そんな真似、させやしねえぞ!」
109 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 06:50:37.29 ID:xIUq6BSMO
キーボ「……そうですね。キミ達の言う通りです」
キーボ「ありがたく、食べさせて頂きます!」
岩鷲「よく言った! さあ、食え! 遠慮はいらねえぞ!」
アンジー「パクッといっちゃえー! キーボ!」
キーボ「……はい!」
真宮寺「………」
110 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 06:52:10.66 ID:xIUq6BSMO
キーボ(……これで本当に食事がーーー)
キーボ(ーーーまずは、一口、いきましょうか)スッ…
キーボ「………」パクッ
キーボ「……はっーーーー」
111 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 06:54:02.51 ID:xIUq6BSMO
キーボ「………」
アンジー「んー? どうしちゃったー、キーボ?」
真宮寺「……もし、何か不具合が起きたのなら、浦原さんに修理を頼んでーーー」
キーボ「ーーー食える」
アンジー「……んんー、?」
キーボ「食えますよ……! 食えますよ、入間さん……!」
真宮寺「……キーボ君?」
112 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 06:55:35.39 ID:xIUq6BSMO
キーボ「ふはははははははははははははは!!!」
キーボ「食える、食える、食える、食えますよ!!!」
キーボ「これが、甘味か!!」パクパク
キーボ「これが、辛味か!!」ガツガツ
キーボ「これが、旨味か!!!」
113 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 06:57:11.41 ID:xIUq6BSMO
キーボ「そして、これが、旨味の染み渡る感覚……!」モグモグ
キーボ「ああ、思っていた以上に……」
キーボ「……素晴らしいーーー」
アンジー「ーーー静かにして、キーボ」
真宮寺「流石に叫ばれるのは、ちょっとネ」
キーボ「……すみません」
ーーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーーー
ーー
114 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 06:59:47.64 ID:xIUq6BSMO
空鶴「……食い終わったな、テメエら! それならーーー」
岩鷲「ーーーごちそうさまでした!」
アンジー「神ったごちそう、ありがとー! にゃはははー!」
真宮寺「ごちそうさま、だヨ」
キーボ「……ごちそうさまでした!」
空鶴「ーーーよし! あとは身体休めて明日に備えな! そんで、みっちり働いて貰うからな!」
115 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 07:02:05.62 ID:xIUq6BSMO
真宮寺「ククク……どうだい? 初めて食事を摂ったことに対する気持ちは?」
キーボ「………」
真宮寺「食事の終わった今なら、多少は声を張り上げても許されると思うヨ?」
アンジー「そうだねー。それに美兎が言うには、その機械で食べるとお口の中にご飯がぜんぜん残んないんだってー! 口の中が錆びるとか、それで異臭が発生するとか、気にしなくて良いんだってー!」
キーボ「………」
アンジー「だから、今なら口を大きく開けて元気な声出しても、大丈夫なんだよー!」
116 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 07:04:25.75 ID:xIUq6BSMO
キーボ「……冷静になってみると居た堪れなくなるので、声のボリュームは上げませんがーーー食事を摂ったことへの気持ちについては答えます」
アンジー「……どんな気持ちー?」
キーボ「……嬉しいに決まってるじゃないですか。初めての食事ですよ?」
キーボ「……どうも、ありがとうございました。コガネヒコさん……シロガネヒコさん」
金彦「……こちらこそ、味わって頂き光栄の極みです」
銀彦「それと、お礼の言葉は彼女の方にもお願いします」
キーボ「……そうですね」
キーボ「この美味しいという感覚……それをボクに味わって貰うため、入間さんはこの発明品を作ってくれたーーー」
キーボ「ーーー次にあなたに会った時には、必ずお礼を言わせて頂きます、入間さん!」
117 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 07:06:09.00 ID:xIUq6BSMO
金彦「……ふふふ、それでは、我々はこれで」
銀彦「仕事がまだ残っておりますゆえ、申し訳ありませんが、この場を離れさせて頂きます」
キーボ「いえ、こちらこそ、お忙しい中、引き止めてしまって申し訳ありません」
キーボ「これからも、よろしくお願いします! コガネヒコさん!シロガネヒコさん!」
金彦「……ええ!」
銀彦「こちらからも、よろしくお願いします、キーボ殿!」
118 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 07:09:51.97 ID:xIUq6BSMO
スタスタ……
真宮寺「……礼儀正しいんだネ、君って」
キーボ「……相手は知り合ったばかりで、さらには立派な社会人の方々でもあります」
キーボ「だとすれば、親しい関係になるプログラムではなく、礼儀を尽くすプログラムに切り替えるのは当然でしょう」
アンジー「……うんうん、ここで、そういうこと言っちゃうところ、キーボらしいねー」
真宮寺「……まさかとは思うけど、君は自分から行動するのを怠けて、そのプログラムに任せて機械的かつ自動的に礼義正しく振る舞っていたのかい?」
キーボ「そんなことしませんよ! 礼儀のプログラムも親しい関係になるプログラムも、あくまでも参考にしただけで、ボクはボク自身の意志によるマニュアル操作で動いています! 怠けてなんていません!」
真宮寺「……そう、それなら良かったヨ」
アンジー「そうだねー! そこでサボってたら、きっと神さまも罰を当ててたよー!」
119 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 07:16:44.17 ID:Pk9jS6GpO
キーボ「ーーーしかし、入間さんも、よくこんな、すごい発明ができましたね」
真宮寺「? まァ、確かに、すごい発明ではあるけど……」
アンジー「でもでもー、美兎ならこのくらい普通にできるんじゃないのー?」
キーボ「いや、入間さんがすごいことはボクも同感ですがーーー死後の世界でも生前と同じように発明できたことに驚いたんです」
キーボ「いくら、入間さんでも、自分の研究教室も無しに、ここまでの発明ができるとは思えません」
キーボ「……いったい、どうやって発明をーーー」
真宮寺「あァ……その説明は簡単だヨ」
キーボ「?」
真宮寺「さっきの人……浦原さんから、器具や機材を貸して貰ったんだヨ」
120 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 07:19:46.65 ID:Pk9jS6GpO
キーボ「浦原さんに、ですか?」
アンジー「そうだよー、喜助が美兎にサービスしてくれたのだー!」
キーボ「………」
真宮寺「……浦原さんは、入間さんに興味を持っていてネ」
真宮寺「自分の目の前で、入間さんの才能を確認させて貰う代わりに、霊的科学に関する知識を教え、器具や機材を貸して……つまりは、ほぼ無償で提供してあげたのサ」
真宮寺「そうして提供された知識……並びに器具や機材を用いて誕生した発明の一つが、【エレキイーター】なんだヨ」
121 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 07:23:13.88 ID:Pk9jS6GpO
キーボ「……発明の、一つ?」
キーボ「まさか、他にも発明があるんですか?」
真宮寺「そうだネ。たとえば、装着するだけで、片手の指の動きだけでメールを打てるようにするバングルがあるヨ」
キーボ「……なっ、!?」
真宮寺「バングルから読み取られた片手の動きでメールが作成され、その内容は脳内に転送され、内容を確認してからは伝令神機に転送後、そこからメール送信ができる」
真宮寺「これは、視覚や聴覚を阻害しないから、慣れてしまえば歩いている時に息をするようにメールの送信が可能となる」
キーボ「そんなものまで……って、まさか、それはーーー」
真宮寺「そう、僕が気づかれることなく、空鶴さん達と浦原さんにキーボ君のことを伝えることができたのは、その方法を使ったからなんだヨ」
キーボ「……なるほど、入間さんの発明品ならば納得です」
アンジー「………」
122 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 07:27:15.25 ID:Pk9jS6GpO
真宮寺「……他にも、君の身体を自動で洗浄する【ロボットウォッシャー】、自動でメンテナンスを行う【ロボットメンテ】にーーー」
真宮寺「ーーー最近発明したものの中には、霊力ある存在を感知する装置、【パワーセンサー】があるヨ」
キーボ「……【パワーセンサー】……」
真宮寺「……それは、モノパッドを小さくしたような形状をしていてネ。霊力ある存在が比較的近くにいれば、反応して振動しーーー」
真宮寺「ーーー霊力ある存在を示す印が、液晶画面の細かな地図の中に、映し出されるようになっている」
キーボ「!?」
真宮寺「……僕らはその装置を使って、君に霊力があることを確認したのサ」
123 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 07:30:59.48 ID:Pk9jS6GpO
アンジー「………」
キーボ「……ん? ちょっと待ってください。それって、もしかして今日、キミ達がボクと再会した時にーーー」
真宮寺「ーーーそうだネ。だいたい、君が察している通りだヨ」
真宮寺「僕らは今日、君に再会する直前の時、【パワーセンサー】で反応を確認した」
真宮寺「突如、流魂街の、あの場所に現れた、君の霊力反応を、ネ」
キーボ「………」
真宮寺「……普段は服の中にしまっている “ それ ” で、君に霊力が宿っていることを確認したのサ」
キーボ「……なるほど」
124 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 07:34:01.45 ID:Pk9jS6GpO
キーボ「……しかし、そのようなものまで発明するとはーーー」
アンジー「………」
キーボ「ーーー流石としか言いようがありませんね」
125 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 07:36:15.95 ID:Pk9jS6GpO
真宮寺(……本当に、彼女には恐れ入るヨ)
真宮寺(今の忙しい中、必死に時間をやりくりして、霊力ある存在を感知する装置を発明するなんてネ)
真宮寺(……僕達が持っている伝令神機にも似たような機能はあるけれどーーー)
真宮寺(ーーーあれで反応するのは、悪霊だけだからネ。他の魂魄……ましてやロボットの霊力感知なんてできるはずがない)
真宮寺(……他の発明と言い、ここに来るかどうかもわからないキーボ君がために、ここまでするとはネ……)
真宮寺(入間さん、彼女は、本当にーーーー)
126 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 07:37:20.83 ID:Pk9jS6GpO
キーボ「ーーーまた、それとは別に、驚きましたよ」
アンジー「………」
キーボ「まさか、ボクに、霊力などというものが宿っているとは……」
真宮寺「……どういう理由かまでは、わからないけどネ」
127 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 07:39:14.05 ID:Pk9jS6GpO
キーボ(……なぜ、霊力などというものがボクに、ひいては赤松さん達に宿っているのか大変気になるところですがーーー)
キーボ(ーーーここで思考を重ねたところで、おそらく結論は出ないでしょう)
キーボ(そういったことに時間を費やすくらいならば、そうーーー)
キーボ(ーーー赤松さん達の現状、それに加えてこの死後の世界のことを、もっと深く知るべきでしょう)
キーボ(その内容次第では、ボクがこの死後の世界でどう行動するべきかも変わってくるでしょうから)
キーボ(……これからしばらくは、情報収集に集中した方が良さそうですね)
キーボ(そうなると、まず聞くべきはーーーー)
128 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 07:40:37.44 ID:Pk9jS6GpO
キーボ「ーーーこれまでの話を振り返ると、赤松さん達は現在、セイレイテイという場所に住んでいて、忙しいんですよね?」
真宮寺「……まァ、そうだネ」
アンジー「………」
キーボ「……赤松さん達は、具体的に、いま何をしているのでしょうか?」
129 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 07:41:49.75 ID:Pk9jS6GpO
真宮寺「………」
アンジー「………」
キーボ「………?」
キーボ「真宮寺クン? アンジーさん? どうかしたんですかーーー」
真宮寺「ーーー赤松さん達は、目指すもののために、日夜努力しているのサ」
130 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 07:44:19.28 ID:Pk9jS6GpO
キーボ「……目指すもの、ですか?」
真宮寺「そうだネ。それぞれ目指すものがある」
真宮寺「それを、この世界での生活基盤にして生きていくために、今を懸命に頑張っているんだ」
アンジー「………」
キーボ「……なんなんですか? 赤松さん達が目指すものって」
真宮寺「……本来ならば、そう簡単に話すようなことでもないけどーーー」
キーボ「………」
真宮寺「ーーー赤松さん達は、【もし仲間が来たら】【無用な心配をかけることのないよう】【自分達のことについて話してくれて構わない】って言ってたからネ」
真宮寺「だから、今回は特例で話すことにするヨ」
キーボ「……わかりました。ぜひ、お願いします」
131 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 07:45:53.80 ID:Pk9jS6GpO
真宮寺「……ただ、その話は、僕が空鶴さんから貸して貰ってる、あの部屋で行うとするヨ」
真宮寺「いつまでも、食事場で話すわけにはいかないからネ」
キーボ「……そうですね。それでは移動するとしましょう」
アンジー「………」
ーーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーーー
ーー
132 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 13:06:17.51 ID:Pk9jS6GpO
ー志波家の屋敷・真宮寺の部屋ー
真宮寺「ーーー部屋に戻ったし、さっそく、みんなについて順番に説明するネ」
キーボ「はい、お願いします」
アンジー「………」
真宮寺「まず……茶柱さん、東条さん、ゴン太君、入間さん、百田君の五人についてだけどーーー」
真宮寺「ーーー彼女達は、死神を目指しているヨ」
キーボ「……そうですか、死神にーーーー」
133 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 13:08:31.79 ID:Pk9jS6GpO
キーボ「ーーーって、死神!?」
アンジー「……んー? どうした、キーボ?」
アンジー「ここは死後の世界だよー?」
アンジー「しにがみがいても、おかしくはーーー」
キーボ「そういうことじゃありませんよ!?」
キーボ「確かに、ここは死後の世界! 死神がいてもおかしくはないでしょう!」
キーボ「ですが、死神って言ったら、生きている人を無理やりあの世に連れて行く恐ろしい存在じゃないですか!?」
アンジー「……あー、なるほどねー」
キーボ「なぜ、彼女達はそんな存在になろうとするんです!? というか、人が死神になれるんですか!!?」
真宮寺「……そうだネ。まずはそこから説明しないとネ」
134 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 13:12:44.73 ID:Pk9jS6GpO
キーボ「? どういうことですか?」
真宮寺「キーボ君、この世界の死神とは、君が想像しているようなものじゃあないんだヨ」
キーボ「???」
真宮寺「……この尸魂界における死神とは、尸魂界、ひいては現世を護るための存在ーーー」
真宮寺「ーーーいわゆる、世界の管理者なんだヨ」
キーボ「管理者……」
真宮寺「この世界が一つの国だとするならば、死神は兵士に該当するネ」
キーボ「………」
真宮寺「人をあの世に連れて行くというのも間違いではないけれどーーー」
真宮寺「ーーーそれは、何らかの理由で魂魄に不具合を起こし、現世に残ってしまった魂を昇華……わかりやすく言い換えれば、成仏させるということなんだ」
真宮寺「あの世に連れて行くのは、あくまでも、既に肉体が死んでいる人の魂魄だけサ」
真宮寺「だから、生きている人を殺して、無理やりあの世に連れて行くだとかーーー間違ってもそんな存在ではないヨ」
135 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 13:17:12.99 ID:Vk1V6IAHO
キーボ「ーーーですが、茶柱さん達は、あくまでも人であって、妖怪などではありませんよね?」
アンジー「………」
キーボ「それが、死神になれるんですか?」
真宮寺「おそらく君は、死神とは……大鎌を手にした黒装束の骸骨であると、想像していると思うけどーーー」
キーボ「? 違うんですか?」
真宮寺「ーーー違うんだヨ」
136 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 13:19:38.97 ID:Vk1V6IAHO
真宮寺「確かに、死覇装(しはくしょう)と呼ばれる黒い和服は着ているけれどーーー大鎌を手にしているとは限らないし、骸骨でもない」
真宮寺「なぜなら、この、尸魂界における死神とは、人の魂魄が進化した存在を指すのだから」
キーボ「進化?」
真宮寺「そう、進化」
アンジー「………」
真宮寺「人の魂魄は、 “ 真央霊術院 ” ……死神の学校に入学して六年かけることで、死神の魂魄へと、進化を遂げることができる」
真宮寺「基本的に、ネ」
真宮寺「故に、人の魂魄である茶柱さん達も、死神になることは可能だしーーー」
真宮寺「ーーー元が人である以上、人と変わらない姿をしているってわけだヨ」
キーボ「………」
137 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/09/17(火) 13:22:20.55 ID:Vk1V6IAHO
真宮寺「キーボ君にもわかりやすく言うならーーー尸魂界における死神とは、バージョンアップした人の魂魄なのサ」
キーボ「……人のバージョンアップって、サイボーグか何かですか?」
真宮寺「……サイボーグというよりも、エスパーと呼んだ方が、僕としては適切だと思うネ」
キーボ「……エスパー?」
真宮寺「人から死神への昇華、それは人の魂魄が持つ霊能力、すなわち超能力を鍛えた末に起こる進化現象だ」
真宮寺「たとえば、霊能力を鍛えると、自らの霊力を消費することで、霊術……と呼ばれる超常能力を、扱えるようになる……」
キーボ「!」
真宮寺「……他にも【パワーセンサー】のようなものがなくとも、身体の感覚だけで、周囲に霊力ある魂魄がいるか感知することが可能になるしーーー」
真宮寺「ーーーその相手の霊力の “ 質 ” を感じ取り、相手が死神かそれとも別の存在か、細かく区別することも可能となる」
真宮寺「……それこそ、その霊力ある魂魄がどこの誰か? 個人レベルで区別することだって可能となるのサ」
キーボ「………」
アンジー「………」
真宮寺「……ならば、それはサイボーグというよりもエスパーと言った方が近い」
真宮寺「僕はそう思うヨ」
138 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 13:23:54.54 ID:Vk1V6IAHO
キーボ「ーーーなるほど、勉強になります」
真宮寺「……僕の説明が役に立ったようで何よりだヨ」
アンジー「………」
キーボ「……しかし、なぜ茶柱さん達は死神になろうとしているのでしょうか?」
139 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 13:25:16.19 ID:Vk1V6IAHO
真宮寺「ーーーそうだネ。それについても詳しく説明するヨ」
キーボ「お願いします」
アンジー「………」
真宮寺「……まずは、茶柱さん、東条さん、ゴン太くんの三人について説明させて貰うネ」
キーボ「………」
真宮寺「茶柱さん達三人が死神になろうとしている理由ーーーそれは、恐怖で心の弱った人達を助けたいと思ったからサ」
140 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 13:27:17.27 ID:Vk1V6IAHO
キーボ「恐怖、ですか?」
真宮寺「……そう、恐怖」
真宮寺「死神の仕事には、悪霊との戦いも含まれているからネ」
キーボ「………」
真宮寺「……魂魄は、何の処置もされないまま現世に残り続けてしまうと……どういうわけか悪霊に変化することがある」
真宮寺「また、そうして悪霊に変わった魂魄は、なぜか怪物のような姿となり強大な霊力に目覚め、強力な……霊術を扱えることもある」
真宮寺「そうした相手との戦いには、死の危険がつきまとうし、現実として殉職率も高い」
真宮寺「故に、恐怖に呑まれてしまう死神は、決して少なくないんだ」
アンジー「………」
141 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 13:28:58.53 ID:Vk1V6IAHO
キーボ「……死神って、真宮寺クンが言うには、死者の魂が進化した存在ですよね? 既に死んでいる人が死ぬとはどういうことなのでしょうか?」
真宮寺「……確かにおかしな話に感じるかもしれないけど、死者でも死ぬことはあるんだヨ」
真宮寺「そして、死者が死ぬということは、生身の肉体ではなく魂魄の死を意味している」
真宮寺「魂魄が死すれば、転生することも不可能だ」
アンジー「………」
142 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 13:31:31.79 ID:Vk1V6IAHO
真宮寺「……これが、動植物の魂魄なら、話は別なんだけどネ」
真宮寺「それなら、死んだ動植物の魂魄を食べるなりーーーもしくは、死んだ魂魄を取り込ませる……霊術の使用が許される」
真宮寺「そうして魂魄を、深く大きく、人体に取り込ませることが可能となる」
真宮寺「そういった風に、動植物の魂魄を、自分の魂魄が有するエネルギーなどに溶かして、混ぜ合わせることでーーー」
真宮寺「ーーーその人が転生する際、その人が体内に取り込んだ動植物も一緒に転生させることもできる」
アンジー「………」
真宮寺「……だけど、倫理上、人を動植物と同じように扱うわけにはいかないからネ」
真宮寺「故に、この尸魂界では、人の魂魄が転生する前に死んだ場合、基本的に火葬される決まりとなっている」
真宮寺「そうして、焼かれ、骨と灰だけが残りーーーそれ以外は空気と溶け合い、風に吹かれることになる」
キーボ「………」
143 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 13:34:07.50 ID:Vk1V6IAHO
真宮寺「……そういった死を、死神達は恐れている」
真宮寺「自分達が、骨と灰を残して……風に吹かれるだけの存在になることを恐れている」
真宮寺「絶望的な “ 死 ” を……終わりを迎えることを、とても恐れているんだ」
真宮寺「故に、その恐怖でおかしくなることだってあるし、時に間違いを犯してしまう人だっている」
キーボ「………」
アンジー「………」
真宮寺「それは、覆しようのない、確かな事実なのサ」
144 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 13:37:01.73 ID:Vk1V6IAHO
真宮寺「……だからこそ、茶柱さん達は、誰よりも “ 死 ” を恐れる死神達のために、自分達も死神になろうとしているんだヨ」
キーボ「それは、茶柱さん達も、悪霊と戦う……ということですか?」
真宮寺「それも視野に入れているという話だけどーーー第一志望は死神を救護する部隊に入ることみたいだネ」
キーボ「救護部隊、ですか」
真宮寺「そうだネ。さっき述べた通り、死神と言っても決して不死ではない」
真宮寺「故に、死なせないよう、壊さないよう……霊術や話術で心身ともに支え、全身全霊を込めて救護する部隊も存在する」
真宮寺「そこを、茶柱さん達は第一志望として、入ろうとしているのサ」
キーボ「………」
真宮寺「茶柱さん達……彼女ら三人は、生前の時点で高い戦闘能力を有していた」
真宮寺「それに加えて霊力を持ち、恐怖から人を守ることの大切さを知っている人達でもある」
真宮寺「そんな自分達だからこそ、自分達も死神となり、他の死神達の気持ちと向き合って理解して、支えることも、できるはずだと……」
真宮寺「……そう、信じてーーーー」
145 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 13:39:10.97 ID:Vk1V6IAHO
キーボ「……茶柱さんらしいですね。生前も死後も、前向きに真っ直ぐ生きているなんて」
キーボ「彼女が死神になれば、影響されて元気になる人も、きっと多く現れることでしょうね」
真宮寺「……そうだネ。その通りだと思うヨ」
キーボ「………」
真宮寺「実際、東条さんも、ゴン太君も……茶柱さんに影響されて元気になった結果、同じ道を選んだわけだからネ」
アンジー「………」
146 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 13:40:53.22 ID:Vk1V6IAHO
キーボ「……やはり、そうだったんですか」
真宮寺「……そうだネ。君が察している通りだヨ」
真宮寺「東条さんも、ゴン太君も、茶柱さんに影響されて元気になった結果、自分達も同じ道を歩むことに決めたんだ」
キーボ「………」
真宮寺「……だけど、それは決して流されたわけじゃない」
真宮寺「東条さん達が、熟慮の末に、決めたことだ」
真宮寺「それは、わかって欲しい」
147 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 13:42:44.47 ID:Vk1V6IAHO
キーボ「ーーーわかってますよ」
キーボ「東条さんも、ゴン太クンも、それぞれ懸命に、必死になって考え抜こうとする人です」
キーボ「そうした上で、茶柱さんと、そして多くの死神達と協力しあいながら、人を恐怖から守ることに決めたーーー」
キーボ「ーーー少なくとも、ボクはそう思っています」
真宮寺「……そうーーー」
アンジー「………」
148 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 13:44:00.61 ID:Vk1V6IAHO
真宮寺「ーーー以上が、茶柱さん達が死神を目指す主な理由だネーーー」
キーボ「………」
真宮寺「ーーーそして、次は、入間さんと百田君が死神を目指す理由について、説明させて貰うヨ」
キーボ「……お願いします」
149 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 13:46:25.27 ID:Vk1V6IAHO
真宮寺「それで、入間さん達が死神を目指す理由だけどーーーそれは、尸魂界の科学者となるためだヨ」
キーボ「……科学者? なぜ、科学者になるために死神になる必要があるんですか?」
真宮寺「それは、尸魂界の科学は、基本的に死神が発展させているからだネ」
真宮寺「……霊術を扱える死神でないと、物理的に不可能な実験もあるからサ」
150 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 13:48:07.07 ID:Vk1V6IAHO
キーボ(なるほど、そういうことでしたか……)
キーボ(……だとすれば、浦原さんも、おそらくは死神でーーー)
真宮寺「……霊術を用いた実験ーーーそうした研究を行う代表的な場所が、瀞霊廷の “ 技術開発局 ” であり、死神しか局員になることを許されない」
アンジー「………」
真宮寺「だから、入間さん達は、科学者になるため、死神を目指すことにしたのサ」
151 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 13:49:13.38 ID:Vk1V6IAHO
キーボ「……入間さんらしいですね。死後の世界でも研究に打ち込むだなんて」
真宮寺「………」
キーボ「研究のためなら、死神という未知数の存在にだってなれる……」
キーボ「流石は入間さんです」
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