【BLEACH×ロンパV3】キーボ 「砕かれた先にある世界」【前編】

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439 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/29(日) 00:00:10.04 ID:N/vkYi+RO



アンジー「ーーーえっ、?」ジワッ…



ポロ……ポロポロ……



アンジー「……あっ、あれ?」ポロポロ…

アンジー「……おかしいなー? なんでかなー……」ガクッ…

アンジー「……あれれ?」ガクガク…

アンジー「あれれー……?」ガクガクブルブル…



キーボ「………」

真宮寺「………」



アンジー「……うーん、寒くて、身体ヘンになってるのなー?」ブルブル…

アンジー「キーボみたいには、いかないねー、にゃはははー!」ガクガク…



キーボ「アンジーさん……」


440 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/29(日) 00:01:52.17 ID:N/vkYi+RO



アンジー「……ごめんねー? ちょっと、アンジーの部屋で落ち着いてくるねー?」ブルブル…

キーボ「えっ……」

真宮寺「………」

アンジー「……大丈夫だよー! ちょっと、落ち着けば、なんとかなるからー!」ガクガク…

アンジー「……ぐっばいならー! にゃはははー!」タッタッ…

キーボ「あっ、アンジーさんーーー」ダッ…



ガシッ!!



キーボ「!?」

真宮寺「………」ググッ


441 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/29(日) 00:05:58.63 ID:N/vkYi+RO



キーボ「……なんですか、真宮寺クン? この手は」

真宮寺「……今の時点で、君を夜長さんのところに行かせるわけにはいかない」



真宮寺「そう、思っただけだヨ」



キーボ「……どうして、そう思ったんですか?」

真宮寺「……逆に聞くけど、君は夜長さんがああなった理由がわかるかい?」

キーボ「それは……」

真宮寺「わからないのなら、行くべきではないヨ」


442 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/29(日) 00:07:25.74 ID:N/vkYi+RO



キーボ「………」



真宮寺「……よくわからないまま、不用意なことを言ってしまえば、それで相手の心を傷つけてしまうかもしれない」

真宮寺「場合によっては……最悪の結果で終わりを迎えることになるかもしれない」



キーボ「……!!」



真宮寺「コトダマは時に、 “ 死 ” を生み出す凶器にもなり得るのだから」



真宮寺「そうだろう、キーボ君?」


443 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/29(日) 00:09:38.86 ID:N/vkYi+RO



キーボ「……だったら、キミはわかるんですか?」

キーボ「アンジーさんの、あの様子について」

真宮寺「……少なくとも、今の君よりはわかるつもりだヨ」

真宮寺「夜長さんとは、今の君よりもずっと長く時間を共有していたわけだからネ」



キーボ「………」



真宮寺「一応言っておくけど、夜長さんがどうしてああなったのかは、自分で考えて欲しい」

真宮寺「……君が今それをわからないのは、夜長さんと再会したことによって得られた、安心感による油断が原因だとは思うけどーーー」



真宮寺「ーーー逆に言えば、こうして自分と夜長さんの関係に不安を感じている今であれば、気づけるはずだヨ」



キーボ「………」


444 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/29(日) 00:11:15.37 ID:N/vkYi+RO



真宮寺「……キーボ君、僕が斬魄刀の話をしていた時には、君は自分に心が与えられた理由に、気づくことができたじゃないか」

真宮寺「……少なくとも、僕の出した問題に、答えることができたじゃないか」

真宮寺「僕が用意していた解答と同じ答えを自力で見出すことができたじゃないか」

真宮寺「それができるのなら、夜長さんがああなってしまった理由にだって……僕の出した結論以上のものを見出せるはずだ」



真宮寺「……自力で気づけるはずなんだ」



真宮寺「違うかい?」



キーボ「………」


445 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/29(日) 00:14:20.23 ID:N/vkYi+RO



真宮寺「……もし、どうしても自分から理由に気づけないというのなら、ある程度は僕から話しても良い」

真宮寺「だけど、自力で気づくことすらできない身の程で、夜長さんに対して、何をしてあげられるだろうか?」

真宮寺「自力で気づくことすらできない者がーーーどうやって人の複雑な気持ちに……夜長さんの心に向き合えるというのだろうか?」



キーボ「………」



真宮寺「……そのことを踏まえた上で、よく考えて欲しいんだ」



真宮寺「夜長さんが、ああなってしまった……その理由を、ネ」


446 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/29(日) 00:15:52.21 ID:N/vkYi+RO



キーボ「………」






キーボ「…………」









キーボ「………………」



ーーーーーーーーーー


ーーーーーー


ーーーー


ーー


447 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 08:06:32.69 ID:h3Y4QDXJO



キーボ(ーーー真宮寺クンにああ言われてから、約半日が過ぎました……)


キーボ(今日は休日であったため、充分な時間が用意されていました)


キーボ(その間に、ボクは思考を繰り返し、それをまとめーーー)




キーボ(ーーーボクとしての “ 解 ” を出した)




キーボ(なぜ、アンジーさんが、ああなってしまったのか?)


キーボ(その解を携えて、今のボクは、修練場の扉の前にいる)


キーボ(ボクが、 “ 解を出した ” と、真宮寺クンにメールを送った後に、 “ 指定した時間に修練場で話そう ” と返信されたのです)


キーボ(故に、今のボクは、修練場の扉の前にいる)




キーボ(……ボクの出した解が、完全に正しいとは限らない。いや、完全とは到底言えないものでしょう)




キーボ(だからこそ、より正しい解を、見出すために、ここにいる)




キーボ(最良の結果を求めて、こうしてここにいる)


448 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 08:08:02.20 ID:h3Y4QDXJO






キーボ(……ボクに、痛覚は無いはずなのに……)









キーボ(……また、こんな、気持ちになるだなんて……)





449 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 08:09:24.44 ID:h3Y4QDXJO



キーボ(ーーーそれでも、ボクは歩み続ける)


キーボ(そうしないと、前に進めないから)


キーボ(辿り着けないものがあるから)


キーボ(向き合えないものがあるから)




キーボ(だから、ボクは歩む)




キーボ(今ここで……)


キーボ(……ボクの中にある、みんなの『想い』と共にーーー)




キーボ(ーーーいざーーーー)




ガチャッ……


450 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 08:10:57.63 ID:h3Y4QDXJO



真宮寺「ーーー来たようだネ」

キーボ「……ええ、来ましたよ」

キーボ「ボクとしての、解を携えて」



バタンッ……ガチャッ!



真宮寺「ーーーそれなら、さっそく聞かせて貰うヨ? キーボ君」

キーボ「………」

真宮寺「なぜ、夜長さんは、ああなってしまったのか?」



真宮寺「その解をーーー」



真宮寺「ーーー他ならない、君の推理を、ネ」


451 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 08:12:47.24 ID:h3Y4QDXJO



キーボ「……結論から言わせて頂きます」



真宮寺「………」



キーボ「アンジーさんが、ああなってしまったのはーーーー」









キーボ「ーーー “ こわいから ” です」


452 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 08:14:09.52 ID:h3Y4QDXJO



真宮寺「ーーーこわい、ネ……」



キーボ「………」



真宮寺「……一応確認しておくけど、夜長さんが、何をこわがっていると言うんだい?」



真宮寺「まさかとは思うけど、君が瀞霊廷に住むことで離れ離れになってしまうことーーー」



真宮寺「ーーー “ それだけ ” が、こわいなんて、言うつもりはないよネ?」


453 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 08:15:42.34 ID:h3Y4QDXJO



キーボ「……そうですね」

キーボ「 “ それだけ ” ではありませんよ」

真宮寺「………」

キーボ「 “ それだけ ” ならば、あんな風に、震えたりはしない……」

キーボ「ならば、アンジーさんがこわがる理由は、他にもある。いや、むしろ、それこそが、あんな風に震えてしまう最大の理由なのでしょう」

キーボ「……あの身体の震えは、その理由が根幹となったものでありーーー」

キーボ「ーーーボクが瀞霊廷に住めるという事実が、震えを誘発してしまった」

キーボ「こわがる、最大の理由を、想起させてしまった」

キーボ「そういうこと、なのでしょう」


454 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 08:16:24.89 ID:h3Y4QDXJO



真宮寺「……それで、結局それは、何なのかな? キーボ君?」



キーボ「………」



真宮寺「夜長さんが、他に、こわがっていることって、サ」


455 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 08:17:19.97 ID:h3Y4QDXJO



キーボ「……アンジーさんがこわがっているものーーー」






真宮寺「………」









キーボ「ーーーそれは、 “ 死 ” です」


456 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 08:21:10.19 ID:h3Y4QDXJO



真宮寺「………」



キーボ「……これは、事故や事件などに巻き込まれて “ 死 ” を迎えることだけを恐れているのではなくーーー寿命による “ 死 ” をも恐れているんです」



真宮寺「寿命、ネ」



キーボ「ええ、寿命です」

キーボ「事実として、流魂街の住民には、寿命があります」

キーボ「それも、【瀞霊廷に住める者達とは異なり】【短い時間の中で】【新しい命に生まれ変わらなければならない】ーーー」



キーボ「ーーーそんな寿命が」



真宮寺「………」



キーボ「……生まれ変わりとは、言い換えるのならば、現在有している自己が喪われ、全く違う新しい自分に存在を書き換えられるということです」

キーボ「ボクは、それを、ある意味での “ 死 ” であると考えています」


457 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 08:23:26.23 ID:h3Y4QDXJO



キーボ「……アンジーさんもまた、同じように考えている」

キーボ「故に、それをこわがっている」

キーボ「しかも、この流魂街では、いつ自分が輪廻の輪を通り、生まれ変わることになるかわからない」



真宮寺「………」



キーボ「……現世の出生率が増加した場合は、尸魂界の魂魄には輪廻の輪を通って現世の生命に生まれ変わって貰う必要が出て来ますしーーー」

キーボ「ーーー現世で多数の死亡者が出て、その魂魄が尸魂界に来た場合は、それによる世界バランスの変化を修正する必要がある。つまりは、これまで尸魂界にいた魂魄は輪廻の輪を通らなくてはならない」

キーボ「そう、現世の状況次第では、いつ自分が輪廻の輪を通らされるか、わからない」



キーボ「……いつ、輪廻の輪の中で、自己を喪うことになるか、わからない」

キーボ「いつ、現世のどこの誰に生まれ変わることになるか、わからない」



キーボ「そうした、 “ 死 ” を、いつ迎えても、おかしくはない」



キーボ「それを思えば、アンジーさんがあんな風に震えて、こわがるのは当然の反応でしょう」


458 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 08:31:00.30 ID:h3Y4QDXJO



真宮寺「……転生はある意味での “ 死 ” であり、それをこわがっている、ネ……」

キーボ「………」

真宮寺「……だけど、なんで夜長さんまでこわがるんだい?」

真宮寺「……彼女には、神さまがついているんだヨ?」

真宮寺「その神さまから、元気の出る言葉をかけて貰って……それで勇気を湧き上がらせればーーー」



キーボ「ーーーそういうわけにもいかなかったのでしょう」


459 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 08:32:10.78 ID:h3Y4QDXJO



キーボ「……なぜなら、今のアンジーさんはーーー」



真宮寺「………」












キーボ「ーーー神さまの声を、しっかりと聞くことができないのでしょうから……」


460 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 08:33:48.28 ID:h3Y4QDXJO



真宮寺「………」



キーボ「……神さまの声が生前と同様に聞こえていれば、その神さまに元気の出る言葉をかけて貰い、勇気を湧き上がらせることもできたかもしれません」



キーボ「そうした勇気をもって、生まれ変わりという “ 死 ” を、受け入れることもできたかもしれない……」



キーボ「……しかし、この尸魂界では、アンジーさんの定義する神さまの声を、生前のように聞くことができない」



キーボ「だから、生まれ変わりを……今の自分の “ 死 ” を、受け入れることはできなかった」



キーボ「だから、ああして、こわがっているんです」


461 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:04:09.67 ID:h3Y4QDXJO



真宮寺「……神さまの声が聞こえない、ネ……」

キーボ「……ええ、そうです」

真宮寺「そう思う根拠は、何かあるのかい?」

キーボ「……主に二つあります」

真宮寺「………」

キーボ「一つ目の根拠、それは、アンジーさんがこの世界で神さまの言葉を述べる際に、『きっと神さまは〜』という表現を何度も使っているということです」

キーボ「もし、生前と同じように、神さまの声がしっかりと聞こえるのであればーーー何度もああいった言い回しはしないでしょう」



真宮寺「……なるほど、ネ」



キーボ「そして、二つ目の根拠ですがーーーー」






キーボ「ーーーそれは、この屋敷に来た当初、アンジーさんの部屋に美術品の一切がなかったことです」


462 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:06:06.28 ID:h3Y4QDXJO



真宮寺「………」



キーボ「……生前のアンジーさんは、自分が美術品を作ることが可能なのは、神さまのおかげであるかのような発言をしていました」

キーボ「それはすなわち、アンジーさんの “ 才能を発揮できる条件 ” には、 “ 神さまの声が聞こえること ” が含まれていたということになります」

キーボ「逆に言えば、神さまの声が聞こえない場所では、才能を発揮できず、納得のいく作品が作れないということでもあります」

キーボ「そして、アンジーさんの部屋には美術品の一切がなかった」

キーボ「それは、アンジーさんが自分で納得のいく作品を作ることができない、すなわち才能を発揮できる状態にないことを意味している」

キーボ「そう、その才能を発揮する上で、必要となる神さまの声が聞こえないからーーー」



真宮寺「………」



キーボ「ーーーそうして、神さまの声が聞こえないが故に、神さまに元気の出る言葉をかけて貰うことができない」

キーボ「神さまのもたらす勇気をもって、恐怖を、抑え込むことができない」

キーボ「それでは、生まれ変わりという “ 死 ” を受け入れるなど、到底できやしない」



キーボ「そういうことなのでは、ありませんか?」


463 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:07:55.61 ID:h3Y4QDXJO



真宮寺「……神さまの声が聞こえないのならーーーどうして神さまの声が今でも聞こえているかのような発言をする必要があるんだい?」



キーボ「………」



真宮寺「どうして、素直に神さまの声が聞こえないと、言わないんだい?」



キーボ「……そんなの決まっているじゃないですか」

キーボ「そうしないと、耐えられなかったからです」



キーボ「死の恐怖に」



真宮寺「………」


464 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:09:32.90 ID:h3Y4QDXJO



キーボ「……今のアンジーさんは、生前の時とは違う」

キーボ「常に自分を導いてくれて、なおかつ最大級に信頼を寄せる神さまの声を、生前のように聞くことができなくなった」

キーボ「才能を振るうことも叶わなくなった」

キーボ「ただ、この流魂街で、生まれ変わりという名の “ 死 ” を待ち続けるだけ」



キーボ「……こわいに決まっています」



キーボ「そのこわさに耐えるためには、神さまに頼るしかなかった」



キーボ「だから、アンジーさんは【神さまの声が】【生前と同様に】【聞こえていることにする】しかなかったんです」



真宮寺「………」


465 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:10:45.10 ID:h3Y4QDXJO



キーボ「……いえ、ああして身体を震わせているところを見るに、完全に耐えきれているわけではないのでしょう」



キーボ「ですが、それでも耐えるために、今でも【神さまの声が】【生前と同様に】【聞こえていることにする】しかなかったんです」



真宮寺「………」



キーボ「……キミがそうして、正気でいられることがその証明でしょう」


466 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:12:36.35 ID:h3Y4QDXJO



真宮寺「……どういう意味かな?」

真宮寺「どうして、そこで、僕が出てくるんだい?」



キーボ「……人は、【一歩離れた場所から】【落ち着いていない誰かを見ることによって】【自分を落ち着かせることのできる】存在でもあるーーー」



キーボ「ーーーキミにも、よくわかる理屈だと思いますが」



真宮寺「………」



キーボ「実際にキミは、アンジーさんが、【神さまの声を】【聞こえていることにした】ーーーその姿を見ていたのではありませんか?」



真宮寺「!!」



キーボ「……見ていたからこそ、自分の “ 過去 ” と向き合うことができた」

キーボ「……冷静に見つめ直すことができた」

キーボ「だからこそ、そうして正気を保てている」



キーボ「そう、でしょう?」


467 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:14:23.72 ID:h3Y4QDXJO



真宮寺「………」






真宮寺「…………」









真宮寺「………………」


468 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:15:59.83 ID:h3Y4QDXJO



真宮寺「……そうだネ。その通りだヨ」

キーボ「!」

真宮寺「……僕は、この世界に来たばかりの頃、正気を保つのが困難だった」

真宮寺「死神からこの世界に関する説明を受ける際は、医療所の中で行われーーー」

真宮寺「ーーー途中で何度も鎮静剤を投与され、安静にするよう言われたり、妙な医療機器を頭に取り付けられたりもした」

キーボ「………」

真宮寺「それから……親切な死神からカウンセリングを受けるなどして、いくらか落ち着いたけどーーー」



真宮寺「ーーーそれでも、ずっと正気を保っていられるわけじゃあなかったんだ」


469 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:17:27.06 ID:h3Y4QDXJO



真宮寺「……そんな中で、この世界に来た他のみんなから、キーボ君が言うような状態の夜長さんを、見せられた……」

真宮寺「それで……いろいろと、思い、知らされた、ん、だヨ……」

キーボ「………」

真宮寺「……その後、茶柱さんに投げ飛ばされたり、百田君に何発か殴られたりもした」

真宮寺「だけど、その二人を含めたみんなと対話して、支えられてーーー」



真宮寺「ーーーその結果、どうにか今のように、正気を保ち続けることができるようになった」



真宮寺「……だから、僕が正気でいられるのは、君の言う通り、夜長さんのことがあるからなんだ」

真宮寺「それは、確かな事実だヨ」



キーボ「……やはり、そうでしたか」


470 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:20:41.55 ID:h3Y4QDXJO



真宮寺「……一応言っておくけどサ……」

真宮寺「……百田君達は、決して夜長さんを見捨てて、自分達だけ別の場所に行ったわけじゃないからネ?」



キーボ「……わかっていますよ。そのくらい」

キーボ「百田クン達は、アンジーさんのためにここに残るだなんて、できるはずがなかった」

キーボ「なぜなら、残ってしまえば、アンジーさんの心を殺してしまうことになるのですから」



真宮寺「………」


471 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:23:11.82 ID:h3Y4QDXJO



キーボ「……アンジーさんだって、生前のことを何も振り返らなかったわけではないのでしょう」

キーボ「きっと、アンジーさんは、自分の抱える過去と向き合った」

キーボ「だからこそ、百田クン達を引き止めるようなことはしなかったしーーーそれどころか、笑顔で送り出した」



キーボ「そうやって、みんなを、瀞霊廷へと……誰もが憧れる世界へと送り出したのでしょう」



キーボ「ボクを瀞霊廷へと、送り出そうとした時のように……」



真宮寺「………」



キーボ「……そんな中で、百田クン達が空鶴さん達に無理を言って、この屋敷に居座ったりすれば、どうなるか?」

キーボ「アンジーさんのために、百田クン達が自分の可能性を閉ざしてしまったら、何がどうなるか?」

キーボ「それは、アンジーさんに罪悪感を募らせ……最終的に心を殺してしまいかねない」

キーボ「故に、百田クン達は、アンジーさんを残して、瀞霊廷に行くしかなかったのでしょう」


472 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:26:12.04 ID:h3Y4QDXJO



キーボ「……もちろん、百田クン達もアンジーさんのために何かできることはないか必死に考えたとは思います」

キーボ「彼らが、真宮寺クンが言っていたような夢を想い描き、それを目指すようになった理由ーーー」

キーボ「ーーーそれは、彼ら自身の純粋な夢ということもあるでしょうが、アンジーさんに元気になって欲しいという気持ちもあったはずです」



真宮寺「………」



キーボ「だからこそ、東条さん、茶柱さん、ゴン太クンの三人は、人の心をケアする方法を学び、それをもってアンジーさんに元気になって貰えないかと考え、救護部隊を目指した」

キーボ「だからこそ、赤松さん、王馬クン、天海クン、星クンの四人は、アンジーさんの心に届いて元気になれるような演奏や芸を編み出そうと考え、音楽芸人を目指した」



キーボ「だからこそ、百田クンは科学者の道を選んだ」



キーボ「そうした道の上で、入間さんやその発明品から発想力というものを学び、それを我が物とすることに決めた」

キーボ「アンジーさんの心に届くような言葉を、そのための手法を、発想できるようになるために」

キーボ「入間さんは、それにできる限り協力して、百田クンを支える形で、アンジーさんに元気になって貰おうとした」



キーボ「そうして、それぞれ、アンジーさんが元気になるためには、どうすれば良いかを考え、実行に移したのでしょう」



真宮寺「………」



キーボ「……ですが、現状それは上手くいっていない」

キーボ「故に、アンジーさんは現在、ああなってしまっている」

キーボ「……ただ、それだけのことなのでしょう」


473 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:27:44.96 ID:h3Y4QDXJO



真宮寺「……君の言う通りだヨ、キーボ君」

真宮寺「百田君達は、決して、夜長さんを見捨てたわけじゃない」

真宮寺「それどころか、時間さえあれば、夜長さんに対して何かできないかを考えている」

真宮寺「それをわかってくれたようで何よりだヨ……」



キーボ「………」



真宮寺「……そう、だからこそ、夜長さんは、ああなった」

真宮寺「彼女の抱える死の恐怖を、誰も退けることができなかったが故に、ああなってしまった」

真宮寺「……これまで、聞こえるようにした神さまの声と、君の存在で抑えていた死の恐怖ーーー」



真宮寺「ーーーそれが、君が瀞霊廷に住めると知った瞬間に、吹き出してしまった」



真宮寺「君と離れ離れになることの淋しさのあまり、死の恐怖が吹き出してしまった」

真宮寺「だから、夜長さんは、ああなってしまったんだヨ」


474 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:28:56.27 ID:h3Y4QDXJO



キーボ「ーーーアンジーさんは、自分と誰かとの間に、深い繋がりが欲しかったんですね」

キーボ「それこそ、空鶴さんと岩鷲クンの関係のようなーーー」



キーボ「ーーー他者が入り込めない程の、深い繋がりが」



真宮寺「………」



キーボ「……アンジーさんは、生まれ変わりという名の、今の自分の “ 死 ” に怯えていた」

キーボ「故に、それを抑えようと、誰かを求めた」

キーボ「誰かとの、深い繋がりを持とうとした」

キーボ「そして、その対象は、最初は真宮寺クンだった」



真宮寺「………」


475 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:31:32.89 ID:h3Y4QDXJO



キーボ「……キミにそれを求めることは、アンジーさんとしても迷いがあったでしょうがーーー」



キーボ「ーーーあの学園での、当時の状況を考慮すれば、アンジーさんは、キミのことをトラウマになるレベルで恐怖はしていないはずです」



真宮寺「………」



キーボ「それに加えて、今のキミは信頼できる言動を取っている」

キーボ「アンジーさんもまた、キミと一緒にいたい思えるくらいには、今のキミを信頼していた」

キーボ「故に、アンジーさんは、今のキミならば、死の恐怖を抑えるに足る存在であると考え、キミを居候させることを空鶴さんに頼み込んだ」

キーボ「そうして、可能な限り、二人、一緒にいることにした」

キーボ「ボク達が再会したばかりの時、一人で渡しに行くことも可能な回覧板を、二人で渡しに行っていたくらいには」



真宮寺「………」


476 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:32:34.65 ID:h3Y4QDXJO



キーボ「……ですが、やはり、どこか上手くいかなかった」

キーボ「……まあ、無理もないことですね」



真宮寺「………」



キーボ「……そこで、新たに現れた存在が、ボクでーーー」

キーボ「ーーーそれが、百田クン達と同じように瀞霊廷に住めるとなればーーー」






キーボ「ーーー戸惑いも、しますよ」


477 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:35:36.22 ID:h3Y4QDXJO



真宮寺「ーーー君は、本当によく、わかっているようだネ……」

真宮寺「そう、君は間違いなく夜長さんの希望だった」

キーボ「………」

真宮寺「君はロボット。常識的に考えて瀞霊廷に住めるはずのない存在だ」

キーボ「……ええ、まあ……」

真宮寺「故に、流魂街……この志波邸に留まり続けることになると考えるのが自然だ」



真宮寺「……しかも、君がこの志波邸に留まれば、どうなるか?」

真宮寺「君は今後、誰を最優先対象とすることになるか?」

真宮寺「言うまでもなく、夜長さんだ」



キーボ「………」



真宮寺「それは、夜長さんにとっても同じこと」

真宮寺「お互いを、これ以上にないほど大切にできる関係を築き上げることができる」

真宮寺「夜長さんは、そう考えたはずだ」


478 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:36:50.47 ID:h3Y4QDXJO



真宮寺「だけど、君が瀞霊廷に住めるとなると話は変わる」

真宮寺「瀞霊廷に住めるなら、ここにいる理由はなくなる」

真宮寺「夜長さんは、君を送り出さなくてはならない」



真宮寺「自分の抱える過去を、理由に」



キーボ「………」



真宮寺「そうして、君は夜長さんから離れ、入間さん達と一緒にいることになる」

真宮寺「そんな中で、君が夜長さん個人を最優先対象にするのは難しい」

真宮寺「そうだよネ?」


479 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:38:24.48 ID:h3Y4QDXJO



キーボ「……そうですね」



キーボ「アンジーさんと一緒に住めるのは、今日来た通知によれば、あと一週間しかない」



真宮寺「………」



キーボ「……もちろん、空間転移装置がある以上は、ボクが瀞霊廷に住んだ後も定期的にアンジーさんと会うことはできるでしょうがーーー」







キーボ「ーーー流石に、アンジーさんだけを最優先で……というのは困難であると言わざるを得ません……」


480 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:39:59.82 ID:h3Y4QDXJO



真宮寺「ーーーそれに加えて、君は瀞霊廷に住むことによる特権を享受できることになる」



真宮寺「輪廻転生の輪から逃れることが可能となる、特権を、ネ」



キーボ「………」



真宮寺「それは、生まれ変わりという名の “ 死 ” に怯える夜長さんにとって、羨みの対象となり得るんだ」


481 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:41:51.35 ID:h3Y4QDXJO



キーボ「羨み、ですか……」

真宮寺「……それも、百田君達に対するものよりも、ずっと大きな、ネ」

キーボ「……まあ、確かに、ボクは百田クン達とは違いますからね……」

真宮寺「………」

キーボ「……百田クン達は、瀞霊廷に住めるため、かなりの長生きが可能ですがーーーそれでも寿命はある」



キーボ「……だけど、ボクは、違う」



真宮寺「………」



キーボ「それは、否定できないことです」


482 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:42:48.94 ID:h3Y4QDXJO



真宮寺「……そうだネ。その通りだヨ、キーボ君」



キーボ「………」



真宮寺「君には寿命がない」



真宮寺「君は、永遠を持っている」



真宮寺「ロボットであるが故に」


483 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:45:08.69 ID:h3Y4QDXJO



真宮寺「……もちろん、機械的な寿命はあるかもしれないけどーーー悪くなった部分は取り替えれば済む話だ」

真宮寺「入間さんに頼めば、そういったことを自動でしてくれる発明品を作ってくれるんじゃないかな?」



キーボ「………」



真宮寺「……そうなれば、君は永遠だ」

真宮寺「君は、永遠の存在となり得るんだ」



真宮寺「……瀞霊廷の霊力ある魂魄が、倫理を廃した時、寿命を超越し永遠になれる可能性を持つ存在だとするならばーーー」



真宮寺「ーーー君は倫理を廃さずとも、永遠になれる存在であると言える」



キーボ「………」



真宮寺「……短い時間の中でしか生きられない、夜長さんとは、真逆の存在だ」

真宮寺「それが、夜長さんにとって、どう見えるか?」

真宮寺「その相手と、深い繋がりを持つことができるだろうか?」

真宮寺「一緒にいて、死の恐怖を抑えられるだろうか?」



真宮寺「……想像に難くない話だヨ」



真宮寺「期待と現実のあまりのギャップに、夜長さんがああなってしまうのは、無理もないことだろうネ……」


484 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:46:19.79 ID:h3Y4QDXJO



真宮寺「……そんな中で、君がそこまで現状を理解している」

真宮寺「それほどまでの進化を、君は遂げている」

キーボ「………」

真宮寺「それは、霊体という自由度の高い身体になって電子頭脳が活性化したが故なのかーーー」

真宮寺「ーーーそれとも、単純に “ 頼れる誰か ” がいないが故に成長したのかはわからないけどーーー」

真宮寺「ーーーそうして、君が進化したことは、今の状況において、とても喜ばしいことだヨ」



キーボ「………」



真宮寺「……うん、この分なら、君が夜長さんの神さまを全否定することはなさそうだネ……」


485 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:48:00.68 ID:h3Y4QDXJO



キーボ「……そんなこと、するはずがないでしょう」



真宮寺「………」



キーボ「神さまを、全否定する?」

キーボ「それは、人の心の基盤を破壊するということですよ」


486 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:49:27.67 ID:h3Y4QDXJO



キーボ「……人には、それぞれ、心の基盤としている過去があります」

キーボ「家族、友人、恩師、恋人、夢……人によって内容は変わるでしょうが、それでも基盤としている過去がある」



真宮寺「………」



キーボ「アンジーさんの場合、それが神さまだった」



キーボ「……そう、神さまは、人によっては、かけがえのない心の基盤、立派な過去なんです」

キーボ「なのに、その神さまが存在する可能性を奪い尽くせばどうなるか?」

キーボ「そうやって心の基盤を破壊するような真似をすれば、人に何を与えることになるか?」



キーボ「……計算するまでもないことです」



キーボ「ボクは、そういった行為に手を染めたくなどありません」



真宮寺「………」


487 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:50:51.68 ID:h3Y4QDXJO



キーボ「……もちろん、場合によっては、そうした行為に手を染めねばならない時もあるでしょう」

キーボ「……神さまの存在を盾に、誰かの人生を搾取したりーーー」

キーボ「ーーー人の首を集めまわる人物がいたのであれば、ボクは全身全霊を込めて破壊することでしょう……」



真宮寺「………」



キーボ「……しかし、アンジーさんは違う」

キーボ「アンジーさんが、それも過去と向き合い、生前のことを振り返ったアンジーさんが、そうした行為に手を染めるはずがない」

キーボ「……仮に、それをしているのならば、あの空鶴さん達に気づかれないとは思えない」

キーボ「そして、空鶴さん達に気づかれているのなら、空鶴さんの元に、未だアンジーさんがいられるはずがない。既に罪人として、死神の管理する施設に拘束されているはずです」

キーボ「それらの事実を考慮すれば、今のアンジーさんは、何もしていない」

キーボ「ならば、ボクに、ボクらに、アンジーさんの神さまを全否定する権利などない」



キーボ「そうでしょう?」


488 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:53:05.01 ID:h3Y4QDXJO



真宮寺「……その通りだと思うヨ」

真宮寺「その言葉は、王馬君達の主張と同じだ」

真宮寺「彼らと同じことを話してくれて、僕は本当に嬉しいヨ」



キーボ「………」



真宮寺「……彼らは、たった一つしかないとされる真実が、どういった結末を生み出すか知っている」

真宮寺「それを知っている彼らが、誰かの命がかかっているわけでもない状況でーーー」



真宮寺「ーーー誰かが傷つくわけでもない状況で、不用意に神さまを全否定するような言葉を放つはずがなかった」



真宮寺「そして、それは君もまた同じ」



キーボ「………」



真宮寺「……君が彼らと同じで、夜長さんと向き合うに足る存在で、僕は本当に嬉しいヨ」


489 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:54:09.03 ID:h3Y4QDXJO






キーボ「ーーーそうは言っても、まだ、どうしてもわからないことが残っているんですけどね……」






真宮寺「……?」





490 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:54:59.52 ID:h3Y4QDXJO









キーボ「……そもそも、なぜ、アンジーさんは瀞霊廷に住めないのでしょうか?」








491 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:57:52.23 ID:h3Y4QDXJO



真宮寺「………」



キーボ「……入間さんの【パワーセンサー】に反応した以上、アンジーさんには霊力があるはずです」

キーボ「しかし、瀞霊廷に住むことはできない」

キーボ「住めるのであれば、流魂街に留まっていないでしょうし……こうして空鶴さんのお世話になることもなかったでしょうから」

キーボ「ならば、瀞霊廷に住めない、相応の理由があるはずです」



真宮寺「………」



キーボ「……教えてください、真宮寺クン」

キーボ「これは、アンジーさんと向き合うために必要な情報なんです」

キーボ「不用意なことを言わないようにするためにも、知識が必要なんです」

キーボ「どうか、教えてくれませんか……?」







キーボ「真宮寺クン……!」


492 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:58:51.57 ID:h3Y4QDXJO









真宮寺「…………」








493 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 10:00:20.59 ID:h3Y4QDXJO



真宮寺「……わかった。教えるヨ」



キーボ「!」



真宮寺「どうして、夜長さんが瀞霊廷に住むことができないのか?」



真宮寺「その理由を、ネ」



キーボ「……お願いします!」


494 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 10:02:19.23 ID:h3Y4QDXJO



真宮寺「……実は言うと、夜長さんは瀞霊廷に住める条件を満たしている」



キーボ「!」



真宮寺「夜長さんは君の言う通り霊力を持っているし、僕と違って失われることもなく、今も保たれ続けている」

真宮寺「手続き上は、住むことが可能なはずだヨ」


495 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 10:03:02.22 ID:h3Y4QDXJO



キーボ「……それなら、どうしてーーー」



真宮寺「それは、夜長さんの霊力の形に問題があるからサ」



キーボ「……形……?」



真宮寺「……夜長さん、彼女はーーーー」


496 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 10:03:47.74 ID:h3Y4QDXJO









真宮寺「ーーー滅却師(クインシー)だ」








497 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 13:30:34.19 ID:uI7ZOlQMO



キーボ「……クインシー?」



真宮寺「……滅却師とは、種族単位で特殊な霊力を宿すに至ったーーー人間の突然変異種のことサ」



キーボ「ーーー!!?」



真宮寺「突然変異種である滅却師は、DNAレベルで特殊な霊力を宿している」

真宮寺「その霊力の強さによっては、生前の時点から、幽霊を見ることもできるしーーー」






真宮寺「ーーー霊子を操作することも可能だという話だ」


498 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 13:33:35.04 ID:uI7ZOlQMO



キーボ「……霊子を操作?」

真宮寺「……まァ、念動力のような力で霊子を集めて、弓矢のような武器を構築したりだとかーーーそういうことができると思ってくれれば良いヨ」

キーボ「えっ、いや、しかし、アンジーさんにそんな力はーーー」

真宮寺「そうだネ。夜長さんは昔も今もそんな力は一切扱えない」



キーボ「………」



真宮寺「……もっとも、夜長さんの場合は、種族としては滅却師でも、滅却師として育てられていたわけではないようだからネ」

真宮寺「滅却師としての、鍛錬もしていない」

真宮寺「それでは、霊力や霊圧の質が滅却師というだけの人間の魂魄でしかない」



真宮寺「故に、夜長さんに滅却師の力が扱えないのは当然だヨ」


499 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 13:39:09.71 ID:uI7ZOlQMO



キーボ「……鍛錬が必要なんですね」

真宮寺「そう、滅却師がその力を扱うためには、滅却師の力をコントロールする鍛錬をしなければならないんだ」

真宮寺「もっとも、純血の滅却師は、そのあまりに強い霊力のおかげか、鍛錬せずとも一部の力を行使できるみたいだけどーーー」



真宮寺「ーーー夜長さんは、通常の人間との混血のようでネ……」

キーボ「………」



真宮寺「……混血の滅却師は、通常の人間の血が混じっている分だけ、霊力の強さは抑え気味になる傾向にあるらしくてネ。そのため、鍛錬抜きで滅却師の力を扱うなんて、まず不可能」

真宮寺「そして、夜長さんが滅却師として育てられていたわけではないということは、鍛錬を一切していないことになる」



真宮寺「それは、今も同じ」

キーボ「………」



真宮寺「……夜長さんは、その鍛錬をするために、 “ どうにか瀞霊廷の図書館などを利用して鍛錬の仕方を調べられないか ” とも思ったようだけれどーーー」



真宮寺「ーーーそういった情報が記載された文献は、死神や貴族以外が閲覧することを禁止されているという話でネ。結局、鍛錬は諦めざるを得なかったのサ」


500 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 13:41:18.98 ID:uI7ZOlQMO



キーボ「……それで、アンジーさんがそのクインシーだったとして、いったい何が問題なんですか?」

真宮寺「……滅却師が、死神と相容れない種族だから、かな?」

キーボ「……どういうことですか?」

真宮寺「……滅却師はDNAレベルで霊力を宿している人間で、当然その魂魄も霊力を宿している」

真宮寺「そして、霊力ある魂魄は、悪霊に襲われやすい」

真宮寺「だから、滅却師が身を守るためには、霊子を操作する力で悪霊を倒す必要があるのだけれどーーーそれを死神が受け入れるわけにはいかないんだ」

キーボ「……?」

真宮寺「……滅却師は、その力で悪霊に攻撃すると、悪霊の魂魄が崩壊して、消滅してしまう」

キーボ「消滅……」

真宮寺「そう、昇華ではなく、消滅」

真宮寺「故に、その魂魄が、尸魂界に送られることはない……」



キーボ「なっーーー」



真宮寺「だけど、そんなことをすれば、その魂魄は救われないしーーー」



真宮寺「ーーーそれに加えて、現世と尸魂界にある魂魄の全体量が減少し、世界のバランスを崩してしまう」



キーボ「………」



真宮寺「滅却師が身を守るための行動が、魂魄の救済を妨げ、世界のバランスを崩してしまうことになるんだ」


501 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 13:45:10.54 ID:uI7ZOlQMO



真宮寺「故に、滅却師と死神は永きに渡り、対立を続けていた」

真宮寺「その結果、死神は滅却師と三度、戦争をすることになった」

キーボ「戦争……」

真宮寺「そう、戦争」

真宮寺「身もふたもないことを言えば、殺し合いだネ」



キーボ「………」



真宮寺「……前に、死神とは、 “ 生きている人を殺して、無理やりあの世に連れて行く ” ような存在ではないと説明したけどーーー」

真宮寺「ーーーそれはあくまでも、 “ 現在の死神が、生者を積極的に殺害することを目的とした集団ではない ” という意味で言ったこと」

真宮寺「相手が自分達にとって、害となるのであれば、例外的にその命を奪う選択をすることもある……」



真宮寺「……時には、肉体だけでなく、その魂魄ごと、ネ」



キーボ「…………」


502 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 13:51:28.93 ID:uI7ZOlQMO



真宮寺「……そうした殺し合い、戦争は、とても残酷なものだ」

真宮寺「中でも、十年近く前、 “ ユーハバッハ ” という滅却師の王が引き起こした戦争は、相当凄惨なものだったようでネ」

真宮寺「 “ 見えざる帝国 ” という、霊体に進化した滅却師の群勢が、瀞霊廷の中にまで侵攻しーーー護廷十三隊の死神の約半数を、殺害するに至ったそうだ」



キーボ「………!!?」



キーボ「ま、待ってください!!」

キーボ「瀞霊廷……赤松さん達は、盤石なセキュリティで守られているんじゃーーー」



真宮寺「当時は、瀞霊壁と遮魂膜の性能が現在ほど高くなかったらしい」

真宮寺「また、瀞霊廷の門番達も、まだ特殊な結界霊術を扱いきれなかったとのことだ」



キーボ「結界霊術……?」



真宮寺「……僕も詳しくは知らないんだけどーーー現在は門番達の霊圧などを媒介に、特殊な結界霊術が常時発動されているようでネ」

真宮寺「無意識に発動されし “ 見えない結界 ” が、瀞霊廷やその付近を覆い、特殊な形で守っているらしいんだ……」



キーボ「………」


503 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 13:55:10.67 ID:uI7ZOlQMO



真宮寺「……亡くなった死神達とその関係者の名誉のためにも言っておくけどーーー別に当時のセキュリティが脆弱だったわけじゃない」

真宮寺「当時の瀞霊壁や遮魂膜だって、大概のものなら決して通さなかったしーーー」



真宮寺「ーーー瀞霊廷への不法侵入を試みる者が現れた時には、まるでそれを予知していたかのように、瀞霊壁は降り注いだ」

真宮寺「不法侵入されるより前のタイミングで、必ずと言っていいほど空から降り注ぎーーーその壁の効力で、門以外からの侵入をほとんど阻止し守ってくれた」

真宮寺「門を任された門番達だって、大概の相手ならば一撃で倒していたという話だ」



キーボ「………」



真宮寺「……ただ、滅却師が何枚か上手で、僅かな隙を突かれてしまった」

真宮寺「それだけのことに過ぎないのサ……」


504 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 13:57:14.40 ID:uI7ZOlQMO



真宮寺「……そうして僅かな隙を突かれた結果、滅却師の群勢が瀞霊廷の中にまで侵攻してしまった」



キーボ「………」



真宮寺「……もっとも、それは、死神達によって返り討ちにしたもののーーーそれでも被害が甚大なことに変わりはない」

真宮寺「かつての護廷十三隊のトップ……総隊長を殺され、その副官を含め、最終的には約半数もの死神を殺されるに至った……」



キーボ「…………」



真宮寺「……そうした前代未聞の大被害は、人手不足など多数の問題を生み出し、今も死神達に多大な影響を与えているんだ」


505 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 14:02:00.39 ID:uI7ZOlQMO



真宮寺「……もちろん、今では、多少は人手も回復しているし、セキュリティもより盤石と呼べる状態に昇華されている」



キーボ「………」



真宮寺「……ただ、どんなに頑張って外側を埋め直したとしても、人の心まで同じように直るとは限らない」



真宮寺「戦争でつけられた心の傷は未だ残っており……油断すれば、傷口から負の感情が吹き出してしまいそうになる」


506 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 14:04:45.77 ID:uI7ZOlQMO



真宮寺「そう、仲間を、大切な人を奪われる……取り返しのつかない痛み……」

真宮寺「……そうした痛みが、死神の心から強い恐怖と憎しみを生じさせることになった」



キーボ「………」



真宮寺「….…そうして生まれた感情は、今だけではなくこれからも強く残り続けるだろう」



真宮寺「死神の寿命が長い以上、そうなるのが自然だ」



真宮寺「そうしたこともあってか、夜長さんと僕、他のみんなが尸魂界に辿り着いたばかりの時、大勢の死神に囲まれた」

真宮寺「その時の僕は冷静じゃなかったから具体的には覚えていないけどーーー星君が言うには、死神から相当の憎悪を感じたそうだヨ」



キーボ「………」


507 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 14:06:10.85 ID:uI7ZOlQMO



真宮寺「そう、死神達は、それほどまでの憎悪……いや、あらゆる負の感情を、滅却師に抱いてしまっている」

真宮寺「そんな中で滅却師が瀞霊廷に住んだりしたらーーーいつ嬲り殺しにされてもおかしくはない」



キーボ「………」



真宮寺「たとえ、滅却師であることを黙っていても同じこと」

真宮寺「滅却師は存在するだけで滅却師としての霊力や霊圧を発生させてしまうし、死神はそうしたものを見分ける感知能力を有しているのだから」



キーボ「………」



真宮寺「そうした状況で、滅却師である夜長さんが瀞霊廷に住めばどうなるか?」



真宮寺「死神達の近くにいれば、何が起きてしまうか?」



真宮寺「……想像に難くない話サ」


508 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 14:07:48.76 ID:uI7ZOlQMO



キーボ「……戦争をしたのは、そのクインシーの人達でアンジーさんではないでしょうに……」

真宮寺「……そうだネ」

キーボ「それに、クインシーとしての力を扱えないアンジーさんに、悪霊を消滅させたり、死神を殺したりなんて、できるはずがないのに……」

真宮寺「……君の言う通りだと思うヨ」



真宮寺「夜長さんは、そういったことはしていない」



真宮寺「だから、死神が夜長さんに危害を加えるような真似をすれば、その死神は自分達の法で厳重に罰せられるというリスクを背負うことになるはずだ」

真宮寺「きっと、いや間違いなく、死神の力と称号を剥奪され、名実共に死神でいられなくなるだろうネ」



キーボ「………」


509 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 14:09:17.10 ID:uI7ZOlQMO



真宮寺「夜長さんに危害を加えるだなんて、大間違いも良いところだと思うけどーーー」

真宮寺「ーーー死神の全てが、己が恐怖や憎しみを御しきれるとは限らないしーーー」



真宮寺「ーーーなにより、人は、間違いを犯す存在だ」



真宮寺「時には、間違いをも超える……大間違いに手を染めることもある……」



キーボ「………」



真宮寺「……どんなにルールで縛り付けられてもそれを破り……程度の差はあれ、人を傷つける者がいるように、ネ」



キーボ「…………その通りですね」


510 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 14:10:15.91 ID:uI7ZOlQMO



真宮寺「……人によっては、死神であることを捨ててでも、大間違いに手を染めるかもしれない……」

真宮寺「……目の前に恐怖、憎しみの対象が存在するとなれば、尚更……」



キーボ「………」



真宮寺「……よほどの人格者、あるいは、 “ 間違わないよう、支えてくれる誰か ” を持つ者であれば、目の前の恐怖や憎しみにも対抗できるかもしれない」

真宮寺「だけど、世界は必ずしも、そんな存在ばかりではない……」



キーボ「………」


511 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 14:12:28.82 ID:uI7ZOlQMO



真宮寺「……もちろん、夜長さんは、種族が滅却師というだけで、恐怖や憎しみの対象となるようなことはしていない」

真宮寺「だけど、人は、対象と同一性があるというだけで、関係のない誰かに対しても同様の感情を抱いてしまうこともある」

真宮寺「故に、人によっては、滅却師である夜長さんは恐怖や憎しみの対象となってしまうかもしれない」



キーボ「………」



真宮寺「……人が罪を犯せば、その当人だけでなく、その家族まで恐怖され、憎まれることがあるように」

真宮寺「一つの種族が殺人などの罪を犯せばーーーそれと同じ種族の全てが、まるで同罪かのように扱われてしまいかねないんだ」



キーボ「………」


512 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 14:14:03.07 ID:uI7ZOlQMO



真宮寺「そして、恐怖や憎しみ……負の感情は、人を苦しめる」

真宮寺「そうした苦しみから目を逸らし、苦しみを感じることから逃げ出したくもなる」

真宮寺「そうやって逃げ出したい気持ちに駆られておかしくなってしまえばーーー恐怖や憎しみの対象となる存在に、暴言を吐くこともあり得る」



キーボ「………」



真宮寺「【暴言を吐いて追い詰めて】【対象を “ 死 ” に近づければ】ーーー」



真宮寺「ーーー【そうやって近づけた分だけ】【自分の気持ちは晴れるだろう】……」



真宮寺「……【我が身の安全は保障され】【苦しみは消えるだろう】….…」



真宮寺「……そんな間違った認識をしてーーーその認識のままに、大間違いを犯してしまうこともあり得る」

真宮寺「それが、人という存在でもあるんだヨ」



キーボ「………」


513 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 14:15:50.72 ID:uI7ZOlQMO



真宮寺「……あァ、断っておくけど、夜長さんは、これまで死神から危害を加えられたことはないからネ?」

キーボ「……わかってます」

キーボ「キミがアンジーさんの前で死神の話をしていたことから考えるにーーーアンジーさんは、死神から感情のままに暴言を吐かれたりなど、危害を加えられたことはないのでしょう」

キーボ「そうでもなければ、キミは、アンジーさんの前で、死神の話をするだなんて、できなかったでしょうから」

真宮寺「………」

キーボ「それに、ボクらが再会したばかりの時、アンジーさんが外を出歩いていたことから考えてーーーアンジーさんの行動範囲に出向いている死神は、人格者ばかりなのでしょう」

キーボ「ただ、それでも、アンジーさんはクインシーであり、その事実は、アンジーさんの心に不満を生じさせてしまう」

キーボ「……瀞霊廷に住めないという、不満を」



真宮寺「………」



キーボ「……そういうこと、なのでしょう」


514 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 14:18:25.04 ID:uI7ZOlQMO



真宮寺「……そうだネ」



真宮寺「夜長さんは、滅却師だった」

真宮寺「そしてそれは、死神の管理する尸魂界において、デメリットの塊だった」

真宮寺「この辺りでは、まともな扱いをされてはいるけれどーーーそれ以外の場所では、どう扱われるかわからない」



キーボ「………」



真宮寺「滅却師であることのメリット……特別な力を持っているということを活かし、その力を鍛えて自らを誇ることもできない」

真宮寺「それに加えて、霊力ある身でありながら、死神全体の感情の問題から、瀞霊廷に住むこともできない」



真宮寺「どんな力も、それを御しきれないのならば、本人にとっては何の意味もない」



真宮寺「夜長さんが置かれている状況は、その証明であるとも言える」

真宮寺「……たとえ、自分がどんなにすごい超能力を持っているかもしれなくても、実際に超能力を扱えなければ、その超能力はないも同然ーーー」



真宮寺「ーーーいや、夜長さんの場合、完全になかった方がまだメリットがある」



真宮寺「完全になければ、瀞霊廷に出入りするくらいは普通にできただろうからネ……」


515 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 14:20:12.40 ID:uI7ZOlQMO



キーボ「……だからこそ、アンジーさんは、ああなってしまったわけですね」



真宮寺「……そうだネ」



真宮寺「滅却師という、自分にはよくわからないことを理由に、世界の管理者である死神から睨まれるという現実」

真宮寺「そのせいで、瀞霊廷に住めず、輪廻転生から逃れられないという現実」

真宮寺「神さまの声を生前のように聞くことが叶わず、才能を行使できないという現実」

真宮寺「そんな残酷な状況下で、いつ転生を迎えるかわからないという現実」

真宮寺「そうして、いずれ、今の自分が終わり、 “ 死 ” を迎えることになるという現実」



真宮寺「……それらの現実は、夜長さんにとって、あまりにあまりだった」


516 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 14:21:39.65 ID:uI7ZOlQMO






キーボ「……故に、アンジーさんは、死の恐怖を抑えるために、深く繋がれる誰かを求めーーー」






キーボ「ーーーそれが叶わなくなったと感じ、ああなってしまった……」





517 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 14:23:09.77 ID:uI7ZOlQMO



真宮寺「……解決し難い、根深い問題だヨ」

真宮寺「生前の……今までの常識が通用しない世界に突如として放り込まれ、上手く適応することができない……」

真宮寺「さらには、瀞霊廷という誰もが憧れる世界に住むことも叶わず……生まれ変わりを待って生きるしかない」



真宮寺「そうして、 “ 死 ” に、怯え続けることになる」



真宮寺「それも、生前に抱いていた信仰を揺るがされ、生前に最も信頼していた相手(神さま)と語らうこともできずに、ネ….…」



キーボ「………」


518 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 14:24:39.17 ID:uI7ZOlQMO



真宮寺「……そうした一面を切り取ってみれば、程度の差はあれ、この尸魂界では当たり前のように起きていることでもあるけれどーーー」



真宮寺「ーーーだからこそ、解決の目処が立たない、根深い問題でもあるのサ」



真宮寺「決して、目を逸らしてはいけない程に、ネ」



キーボ「………」


519 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 14:25:52.52 ID:uI7ZOlQMO



真宮寺「……ねェ、キーボ君?」



キーボ「………」



真宮寺「君はこの問題とーーー」









真宮寺「ーーー夜長さんと、どう向き合うつもりなんだい?」


520 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 14:26:59.65 ID:uI7ZOlQMO



キーボ「………」



キーボ「…………」






キーボ「………………」









キーボ「……………………」



ーーーーーーーーーー


ーーーーーー


ーーーー


ーー


521 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/01(火) 21:46:18.41 ID:cZTh89m1O



これで前編は終了です。下記の次スレから後編に突入します。


【BLEACH×ロンパV3】キーボ 「砕かれた先にある世界」【後編】
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1569933726/


よろしければお読みください。



522 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/01(火) 21:52:48.00 ID:cZTh89m1O



真宮寺「……あァ、断っておくけど、夜長さんは、これまで死神から危害を加えられたことはないからネ?」

キーボ「……わかっています」

キーボ「キミがアンジーさんの前で死神の話をしていたことから考えるにーーーアンジーさんは、死神から感情のままに暴言を吐かれたりなど、危害を加えられたことはないのでしょう」

キーボ「そうでもなければ、キミは、アンジーさんの前で、死神の話をするだなんて、できなかったでしょうから」

真宮寺「………」

キーボ「それに、ボクらが再会したばかりの時、アンジーさんが外を出歩いていましたからね」

キーボ「そのことから考えて……アンジーさんの行動範囲に出向いている死神は、よほど負の感情を抑えるのに長けた人達かーーー」



キーボ「ーーーあるいは、アンジーさんと十年前のクインシーを完全に区別できる、そんなサッパリした人達ばかりなのでしょう」



真宮寺「………」



キーボ「ただ、それでも、アンジーさんはクインシーであり、その事実はアンジーさんの心に不安や不満を生じさせてしまう」



キーボ「……クインシーというイレギュラーな身の上で、死神の世界を生きるしかないという不安を」

キーボ「……霊力があるのに瀞霊廷に住むこと叶わず、いつ生まれ変わることになるか、わからないという不満を」



キーボ「生じさせて、しまう」



真宮寺「………」



キーボ「……そういうこと、なのでしょう」


523 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/01(火) 21:54:20.12 ID:cZTh89m1O



>>513>>522に差し替えます。


また、後で同じように、他の部分を差し替えるかもしれません。なので、このスレは埋め立てないようにお願いします。


それでは次スレで。



524 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/03(木) 18:07:57.46 ID:mG1LC3nJO



キーボ「……なんですか、それらは?」

真宮寺「まず、瀞霊壁についてだけどーーー瀞霊廷の外側を取り囲む巨大な壁のことサ」

真宮寺「その壁は、本来、霊王宮を取り囲んでいるんだけどーーー」

真宮寺「ーーー瀞霊廷への不法侵入を試みる者が現れた場合などに限り、地上まで降って瀞霊廷を囲み、侵入を防いでくれるんだ」

キーボ「!?」

真宮寺「……たとえ、空間転移を悪用して不法侵入を試みようとも、光の速度で不法侵入を試みようともーーー」

真宮寺「ーーー瀞霊壁はそれらを何らかの方法で察知し、自らを地上へと降り注がせるそうだ」

真宮寺「……不思議なことに、侵入が完了する前に地上に到達する」

真宮寺「そして、その壁の機能によって、瀞霊廷外部からの空間転移などは阻害されーーー超スピードなどによる侵入さえも不可能にしてくれるんだ」



キーボ「?!?!?」



真宮寺「……あァ、もちろん、不法侵入以外の場合でも、瀞霊壁は降り注ぐ」

真宮寺「瀞霊廷に危機が迫っている時ーーーあるいは、ここしばらくのように、瀞霊壁が地上でも機能するか、入念な定期チェックを行う場合などに限りーーー」

真宮寺「ーーー必ず降って、瀞霊廷を取り囲んでくれるんだヨ」



キーボ「…………ち、ちょ、ちょっと待ってください!?!」

キーボ「……た、確か、霊王宮の下には、七十二以上の障壁があるのではーーー」

真宮寺「大丈夫。瀞霊壁が降る場合、霊王様の御力で自動的に障壁などを透過するようになっているから」

キーボ「……!!?」

真宮寺「……もっとも、障壁を破壊することなく地上まで届けられるかは、体調次第らしいけどーーー」

真宮寺「ーーー現在、霊王様の体調が急激に悪化することはないらしくてネ。それ故に、どんな時もオートで可能とされている」

真宮寺「まァ、いくらか制限はあるようだけどーーーそれに引っかからなければ、万物を透過する力を一時的に付与するくらいは、可能らしい」


525 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/03(木) 18:11:18.46 ID:mG1LC3nJO
>>286>>524に差し替えます。


……もう、あまり差し替えはしたくないのですが、個人的にどうしても許容できない部分があったので。差し替えさせて頂きます。


すみません。
526 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/22(火) 23:11:42.44 ID:Lvdsr++LO



真宮寺「……いや、まァ、正確には、現世でも多かれ少なかれ超常現象は起こり得るんだけどネ。霊子は現世にもあるわけだからサ」

真宮寺「だけど、それらのものを、現世に生きる大多数が見て記憶することは “ 基本的に ” 無理だ」

真宮寺「霊子やそれによって引き起こされる超常現象を、認識しきれないのが現状なんだヨ」

アンジー「………」

真宮寺「……もちろん、【生前の時点から相応の霊力を持ち】【その影響で霊子などを】【ある程度知覚可能になっている】などといった状況にあれば話は別だ」

真宮寺「でも、そういうケースはとても少ないしーーー」



真宮寺「ーーーもしも、【なんらかの理由で】【本来霊力を持たない人達でも】【霊子などを知覚できる状況にあった】としても、それらを記憶し続けることはできないだろうネ」

キーボ「!?」

真宮寺「……死神が、混乱防止のため、別の記憶に書き換えてしまうだろうからサ」

真宮寺「記換神機(きかんしんき)と呼ばれる記憶操作技術を使って、ネ」

キーボ「………!」

真宮寺「だから、現世では、霊子やそれによる超常現象を、当たり前のものとされていない」

真宮寺「……もちろん、知らないもの、目に見えないものに対して、想像を働かせることはできるだろうけどーーー」



真宮寺「ーーー全容を知り、記憶する術を持たない以上、自分達の想像が実状と一致しているかどうか、死ぬまで確かめることはできない……」

真宮寺「……そう、実際に死を迎えて魂だけの状態になり、死の側の存在とならない限り、確かめることは不可能」

キーボ「………」

真宮寺「……多くの人達は、霊子やそれによる現象を、死ぬまで当たり前のものとして認識できない運命にあるのサ……」


527 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/22(火) 23:14:14.32 ID:Lvdsr++LO
>>251の内容を>>526の内容に修正します。
528 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/25(金) 16:54:05.57 ID:mgyLMstaO



キーボ「……もちろん、場合によっては、そうした行為に手を染めねばならない時もあるでしょう」

キーボ「……もしも現在、神さまの存在を盾に、誰かの人生を搾取したりーーー」

キーボ「ーーー人の首を集めまわる、とんでもない人物がいるのであれば、ボクは全身全霊を込めて破壊することでしょう……」



真宮寺「………」



キーボ「……しかし、アンジーさんは違う」

キーボ「アンジーさんが、それも過去と向き合い、生前のことを振り返ったアンジーさんが、神さまを盾に、とんでもないことをするはずがない」



キーボ「……仮に、それをしているのならば、あの空鶴さん達に気づかれないとは思えない」



キーボ「そして、空鶴さん達に気づかれているのなら、この家に、未だアンジーさんがいられるはずがない。既に罪人として、死神の管理する施設に拘束されているはずです」

キーボ「それらの事実を考慮すれば、今のアンジーさんは、何もしていない」

キーボ「ならば、ボクに、ボクらに、アンジーさんの神さまを全否定する権利などない」



キーボ「そうでしょう?」


529 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/25(金) 16:56:38.36 ID:mgyLMstaO
>>487>>528の内容に修正します。
530 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/11/03(日) 13:08:10.96 ID:D/3mEdeRO



真宮寺「……その通りだと思うヨ」

真宮寺「その言葉は、王馬君達の主張と同じだ」

真宮寺「彼らと同じことを話してくれて、僕は本当に嬉しいヨ」



キーボ「………」



真宮寺「……彼らは、たった一つしかないとされる真実が、どういった結末を生み出すか知っている」

真宮寺「それを知っている彼らが、神さまを全否定するはずがなかった」

真宮寺「……自分や他の誰かの命がかかっているような状況であれば、話も変わるだろうけどーーー少なくとも、現在はそうじゃない……」



真宮寺「……もちろん、個人の主義主張、心情的な理由などもあり、【神さまには従えない】【神さまに頼ることはできない】などと述べてはいたけどーーー」



キーボ「……っ、!!」



真宮寺「ーーーだけど、それでも、夜長さん本人を見守っている神さま……その存在を丸ごと否定することはなかったんだ」



真宮寺「……そんな彼らは、【キーボ君達がここに来たら】【自分達と同じように考え】【決して神さまを、全否定することはないだろう】とも言っていた」



キーボ「!」



真宮寺「彼らが、キーボ君に向けた信頼……やはりそれは間違いじゃなかった……」



真宮寺「君が彼らと同じで、夜長さんと向き合うに足る存在で……僕は本当に嬉しいヨ」


531 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/11/03(日) 13:10:10.98 ID:D/3mEdeRO
>>488>>530の内容に修正します。
532 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/11/03(日) 13:19:34.04 ID:D/3mEdeRO



キーボ「……そうは言っても、まだ、どうしてもわからないことが、二つ残っているんですけどね……」

真宮寺「……?」

キーボ「……まず、一つ目ですがーーーそれはキミの言動についてです」

真宮寺「!」

キーボ「……この世界でのキミの言動ーーーそれは、生前に暴露した “ あれ ” と比較して……信頼できるものではあります」

キーボ「ですが、それでも、思い返してみるとーーーいくらか無神経な部分が見受けられたように思います」

真宮寺「………」

キーボ「……いや、ボクもあまり、とやかく言えた身ではありませんがーーーそれでも、この世界でのキミの言動には、どこかおかしなところがあった」

キーボ「キミは当時のボクと違って、アンジーさんの精神が不安定な状態にあることを知っていたはずで……その理由も理解していたはずです」

キーボ「しかし、それにしては、言動にいくらか無神経な部分があったように思えるのですがーーー」



真宮寺「ーーーそれは、僕のミスだネ」



キーボ「………」



真宮寺「……それ以外に、答えようがない」



真宮寺「……どこがどういけなかったのか? 後で教えてくれると、助かるヨ……」



キーボ「…………わかりました。後でお教えします。これからは、ボクと一緒に、気をつけあっていきましょう」



真宮寺「………」



キーボ「……そして、最後、二つ目にわからない部分についてですがーーーー」


533 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/11/03(日) 13:22:31.99 ID:D/3mEdeRO
>>489>>532の内容に修正します。
534 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/11/06(水) 22:27:28.64 ID:MBqHbLacO



アンジー「……転子なら大丈夫だと思うよー?」



キーボ「……アンジーさん?」



アンジー「……転子は、すごい子だからねー」



アンジー「そんな転子なら……守りたい女の子のため、どんなことだってできちゃうよー!」


535 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/11/06(水) 22:28:11.27 ID:MBqHbLacO
>>334>>534の内容に修正します。
536 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/11/06(水) 22:49:17.33 ID:MBqHbLacO



キーボ「…………そう、でしたか…………」



アンジー(……あー、やっぱり、謝らないんだねー、キーボ。きのうやおととい、言ったこと……)


アンジー(……もう、神さまに頼る気はない。従う主がいないーーー)


アンジー(ーーーそうした言葉を……キーボは謝らない)



キーボ「………」



アンジー(……まあ、そうなるよねー……)


アンジー(…… “ キーボたちは ” 、アンジーの神さまに頼ってーーーそのために、アンジーを、止められなかった)


アンジー(……だから、アンジーは、こうしてーーー)


アンジー(ーーーそれを思えば、キーボは、もう神さまにーーー)


アンジー(ーーーその選択を、謝るなんて……キーボには、できなかったんだ……)


アンジー(……だって、そんなことをしたら、アンジーはーーー)



キーボ「………」



アンジー(ーーーうん、この話、これ以上はヤメだね。イヤな気持ちが、酷くなる)


アンジー(……それに、いまはもっと前向きでいかないとー……!)


アンジー(……そうだよ。せっかく、キーボがアンジーのところまで来てくれたんだからさー!)




アンジー(……だったら、アンジーは、もっともっと、キーボにーーー)




アンジー(ーーーアンジーの、気持ちをーーーー)


537 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/11/06(水) 22:50:53.68 ID:MBqHbLacO
>>411>>536の内容に修正します。
538 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/11/07(木) 20:26:00.81 ID:N3Dty6MdO



キーボ「……別の、神さまーーー」



キーボ「ーーーその存在を、ボクが頼りにすることは、ないでしょう……」



アンジー「………」



キーボ「……なぜなら、ボクはーーー」









キーボ「ーーー神さまに、頼ることが……できません、から……」


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